説明

電気自動車給電システム

【課題】他の電気機器を使用する際の利便性の低下を抑えつつ、消費電流のピーク値を制限でき、既設の住宅にも導入可能な電気自動車給電システムを提供する。
【解決手段】本システムは、電気自動車50に交流電源を供給し、電気自動車50の充電回路51によりバッテリ52を充電させるものであり、主幹ブレーカ11及び分岐ブレーカ12を内器として備える分電盤1と、主幹ブレーカ11に流れる主幹電流の電流値を測定する電流測定部2と、主幹電流の測定値が第1閾値を超えると給電制限信号を発生するコントロールボックス3と、電気自動車50側のコネクタ53に着脱自在に接続されるコネクタ5を具備し、分岐ブレーカ12を介して入力される交流電源をコネクタ5,53を介して電気自動車50の充電回路51に供給するとともに、コントロールボックス3が給電制限信号を発生すると電気自動車50への給電電流を制限する自動車給電部4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラグインハイブリッド車(PHV:Plug-in Hybrid Vehicle)や電池自動車(BEV:Barttery Electric Viecle)などの電気自動車の開発が進められており、電気自動車への充電方法として、住戸のコンセントから電気自動車に商用交流電源を給電して、電気自動車を充電することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−33121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気自動車の充電電流は200Vで20A〜30Aになると予想され、一般的な住戸においては、消費電流の中で大きな割合を占めると考えられる。また、一般家庭での電気機器の使用状況を想定すると、電気自動車に充電するのと同時に、消費電流の大きい電気調理機器やエアコンディショナなどの冷暖房機器が使用される場合も有り得るが、このような使用状況に対応するためには、住戸への引き込み電線や主幹ブレーカに大電流に対応したものを使用する必要があり、既設の住宅に電気自動車の充電設備を導入することは現実的には難しかった。また地域全体に電気自動車が普及した場合に、各住戸で電気自動車に充電されるのと同時に、消費電流の大きい電気機器が使用されると、地域全体で商用電源の電圧低下や停電を招く可能性もあった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、他の電気機器を使用する際の利便性の低下を抑えつつ、消費電流のピーク値を制限でき、既設の住宅にも導入可能な電気自動車給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、走行用のバッテリと当該バッテリを充電する充電回路を備えた電気自動車に交流電源を供給して、電気自動車の充電回路によりバッテリを充電させる電気自動車給電システムであって、主幹ブレーカ及び分岐ブレーカを内器として備える分電盤と、主幹ブレーカに流れる主幹電流の電流値を測定する電流測定部と、主幹電流の測定値が第1閾値を超えると、電気自動車側への給電を制限する給電制限信号を発生する制御装置と、電気自動車側のコネクタに着脱自在に接続されるコネクタを具備し、分岐ブレーカを介して入力される交流電源をコネクタを介して電気自動車側の充電回路に供給するとともに、制御装置が給電制限信号を発生すると電気自動車側への給電電流を制限する自動車給電部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、自動車給電部は、電気自動車への給電路を遮断する断路部を備え、制御装置が給電制限信号を発生すると、断路部に給電路を遮断させることによって、電気自動車側への給電電流を制限することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、自動車給電部が、給電路に流れる電流をもとに漏電の発生を検知する漏電検知部を備え、当該漏電検知部が漏電を検知すると断路部に給電路を遮断させることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、自動車給電部が、コネクタを介して電気自動車側の充電回路に信号を送信する信号送信部を備え、制御装置が給電制限信号を発生すると、充電を停止させる充電停止信号を信号送信部から充電回路へ送信させることによって、電気自動車側への給電電流を制限することを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、自動車給電部が、コネクタを介して電気自動車側の充電回路に信号を送信する信号送信部を備え、制御装置が給電制限信号を発生すると、充電電流を低下させる電流低下信号を信号送信部から充電回路へ送信させることによって、電気自動車側への給電電流を制限することを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、制御装置は、第1閾値よりも低い第2閾値を電流測定部の測定値が超える状態が所定時間継続すると、給電制限信号を自動車給電部に出力することを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、自動車給電部が電気自動車側への給電電流を低下させた状態で、第1閾値よりも低い所定の第3閾値を電流測定部の測定値が下回る状態が一定時間継続すると、制御装置は、電気自動車側への給電制限を解除する給電制限解除信号を発生し、当該給電制限解除信号に基づいて自動車給電部が電気自動車側への給電制限を解除することを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1の発明において、自動車給電部が電気自動車側への給電電流を停止させた状態で、第1閾値よりも低い所定の第3閾値を電流測定部の測定値が下回る状態が一定時間継続すると、制御装置は、電気自動車側への給電制限を解除する給電制限解除信号を発生し、当該給電制限解除信号に基づいて自動車給電部が電気自動車側への給電制限を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、主幹電流が第1閾値を超えると、制御装置が自動車給電部に給電制限信号を出力し、自動車給電部が給電制限信号に基づいて電気自動車側への給電電流を制限しているので、住戸内の電気機器の使用を優先させることができる。長時間をかけてバッテリを充電する電気自動車の場合は、例えば電気調理器具のように一時的な使用で、生活に与える影響度合いが高い電気機器に比べて、給電を短時間制限したとしても影響は小さく、したがって、主幹電流が第1閾値を超えた場合には、電気自動車への給電を制限し、住戸内の電気機器に優先的に給電することによって、主幹電流のピークを抑制しつつ、生活の利便性が低下するのを抑制することができる。また主幹電流のピークを抑制することによって、地域全体に電気自動車が普及した場合でも地域全体の消費電流のピーク値を低減できるから、安定した電力給電を行うことができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、自動車給電部は、自身が備える断路部に給電路を遮断させることによって、給電電流を制限しているので、電気自動車の充電回路で充電電流を制限させる場合に比べて、電気自動車の充電回路との間で通信する通信回路を備える必要が無く、低コストの自動車給電部を実現できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、漏電検知部が漏電を検知した際に給電路を断路する手段として断路部を兼用することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、自動車給電部から電気自動車の充電回路へ充電停止信号を送信して、充電回路に充電を停止させることによって、電気自動車側への給電を停止させることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、自動車給電部から電気自動車の充電回路へ電流低下信号を送信し、充電回路に充電電流を低下させることによって、電気自動車側への給電を制限することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、主幹電流が第1閾値より低い場合でも、第1閾値より低い第2閾値以上の電流が所定時間継続して流れると、電気自動車側への給電が制限されるので、主幹電流のピーク値をさらに低減できる。
【0020】
請求項7の発明によれば、電気自動車側への給電電流を低下させた状態で、主幹電流が第3閾値を下回る状態が一定時間継続すると、給電制限を解除することによって、電気自動車を制限以前の充電電流で充電することができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、電気自動車側への給電電流を停止させた状態で、主幹電流が第3閾値を下回る状態が一定時間継続すると、給電制限を解除することによって、電気自動車を制限以前の充電電流で充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1のシステム構成図である。
【図2】(a)〜(e)は同上の各部の波形図である。
【図3】実施形態2のシステム構成図である。
【図4】(a)〜(d)は同上の各部の波形図である。
【図5】(a)〜(d)は実施形態3の各部の波形図である。
【図6】(a)〜(d)は実施形態4の各部の波形図である。
【図7】実施形態5のシステム構成図である。
【図8】実施形態6のシステム構成図である。
【図9】(a)〜(f)は同上の各部の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1及び図2に基づいて説明する。図1は本実施形態の電気自動車給電システムのブロック図であり、住戸Hに配置され、主幹ブレーカ11及び分岐ブレーカ12を内器として備える分電盤1と、例えばカレントトランスからなり主幹ブレーカ11に流れる主幹電流I1を測定する電流測定部2と、電流測定部2によって測定された電流値が所定の第1閾値を超えると、電気自動車50側への給電を制限する給電制限信号を発生するコントロールボックス(制御装置)3と、分電盤1から供給された商用交流電源を電気自動車50に給電してバッテリの充電を行わせる自動車給電部4を主要な構成として備えている。
【0025】
電気自動車50には、電池自動車やプラグインハイブリッド車などがあり、車体に設けたコネクタ53に自動車給電部4からのコネクタ5が着脱自在に接続され、自動車給電部4からコネクタ5,53を介して入力される商用交流電源を充電回路51により直流に変換して、バッテリ52(例えばリチウムイオン電池からなる)を充電する。
【0026】
分電盤1は、住戸Hの要所に設置され、外部から住戸Hに引き込まれた幹線L1が接続される主幹ブレーカ11と、主幹ブレーカ11の二次側に導電バー13を介して接続された複数個の分岐ブレーカ12とを備える。
【0027】
コントロールボックス3は、電流測定部2によって測定された主幹電流値と第1閾値との高低を比較し、電流測定部2の測定電流値が第1閾値を超えた状態が所定時間継続すると、信号線を介して自動車給電部4に給電を停止させる給電制限信号を出力する。例えばコントロールボックス3では、主幹ブレーカ11の定格電流である50Aに対して、定格電流の110%に相当する55Aが第1閾値Th1として設定され、電流測定部2の測定電流値が55A以上となる状態が1秒間継続すると、電気自動車50への給電を停止させる給電制限信号を自動車給電部4に出力する。
【0028】
自動車給電部4は、例えば電気自動車50の駐車スペースに隣接した住戸Hの外壁などに設置され、分電盤1内の分岐ブレーカ12から分岐配線L2を介して商用交流電源(例えばAC200V)が供給される。また自動車給電部4からは、電力線L3および信号線L4よりなる充電ケーブルCAが導出されており、充電ケーブルCAの端末には電気自動車50側のコネクタ53に着脱自在に接続されるコネクタ5が設けられている。尚、充電ケーブルCAのケーブル長は、駐車スペースに駐車された電気自動車50まで十分届く長さに設定されており、例えば巻取りドラム(図示せず)に巻き取られた状態で収納され、巻取りドラムから送り出されて使用される。
【0029】
この自動車給電部4は、分岐配線L2と電力線L3の間を電気的に接続する内部配線40の途中に設けられて電気自動車50側への給電を入切するリレー41と、内部配線40に流れる不平衡電流を検出する零相変流器(ZCT)42と、零相変流器42に誘導される誘導電流に基づいて漏電を検出するとともに、漏電が検出されたときにはリレー41をオフさせる漏電検知部43とを備える。また自動車給電部4は、コントロールボックス3からの信号に基づいて電気自動車50の充電を制御する充電制御信号SAを発生する制御部44と、制御部44が発生した充電制御信号SAを、自動車業界で規定された信号(例えば米国自動車技術者協会(SAE(登録商標))規格で規格化された信号など)に変換する信号変換部45と、信号変換部45で信号形式が変換された充電制御信号SAを信号線L4を介して電気自動車50側に出力する信号出力部46と、分電盤1から商用交流電源の供給を受けて各部43〜46の動作電源を生成する電源部47とを備える。尚、信号出力部46から出力される充電制御信号SAはデューティ比が可変のパルス信号からなり、電気自動車50の充電回路51では、充電制御信号SAのデューティ比に比例して、充電電流値の制限値が設定される(図2(e)参照)。
【0030】
ここで、本実施形態の動作について図2を参照して説明する。尚、図2(a)は電流測定部2による主幹電流I1の測定値、同図(b)はコントロールボックス3の出力信号、同図(c)は自動車給電部4から電気自動車50に出力される充電制御信号SAのデューティ比、同図(d)は充電電流I2をそれぞれ示している。また図2(a)中の斜線部分は、主幹電流I1の内、電気自動車50に充電される充電電流I2の部分を示している。
【0031】
時刻t0〜t1においては、自動車給電部4から電気自動車50に電力供給が行われて電気自動車50側でバッテリへの充電が行われるとともに、住戸H内で電気機器が使用されているが、住戸H内の電気機器による消費電流と充電電流I2の合計である主幹電流I1の測定値は第1閾値Th1よりも低いので、コントロールボックス3からは給電制限信号は出力されない。尚、本実施形態では第1閾値Th1が、主幹ブレーカ11の定格電流(50A)の110%に相当する電流(55A)に設定されている。
【0032】
時刻t1において住戸H内で高容量の電気機器の使用が開始されると、主幹電流I1の測定値が第1閾値Th1(55A)を上回る。コントロールボックス3は主幹電流I1の測定値と第1閾値Th1との高低を逐次比較しており、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた状態が所定時間ΔT1継続した時刻t2において、電気自動車50への充電を停止させる給電制限信号S1を自動車給電部4に出力する。
【0033】
自動車給電部4の制御部44は、時刻t2において給電制限信号S1を受信すると、充電電流I2をゼロにする充電制御信号(充電停止信号)SAを作成し、この充電制御信号SAは信号変換部45によって信号形式が変換された後、信号出力部46から電気自動車50へ出力される。
【0034】
電気自動車50の充電回路51は、自動車給電部4から受信した充電制御信号SAのデューティ比にしたがって充電電流I2の電流値を制御しており、時刻t2において充電制御信号SAのデューティ比が0%に切り替わると、充電電流I2をゼロにする。このように、主幹ブレーカ11の定格電流を超える第1閾値Th1(55A)の電流が1秒間流れると、コントロールボックス3からの給電制限信号S1に基づいて自動車給電部4が電気自動車50への充電を停止させているので、時刻t2以後は主幹電流I1が定格内に収まり、主幹ブレーカ11が過電流によって遮断してしまうのを防止することができる。
【0035】
また、電気自動車50の充電を停止させた後の時刻t3において、住戸H内の電気機器が停止されることによって、主幹電流I1が所定の第3閾値Th3(復帰電流)を下回り、主幹電流I1が第3閾値Th3を下回る状態が一定時間ΔT2継続すると、コントロールボックス3は、電気自動車50への給電制限を解除する給電制限解除信号S2を発生する。
【0036】
自動車給電部4の制御部44は、時刻t4において給電制限解除信号S2を受信すると、充電電流I2を停止前の電流値に制御する充電制御信号SAを作成し、この制御信号は信号変換部45によって信号形式が変換された後、信号出力部46から電気自動車50へ出力される。電気自動車50の充電回路51では、時刻t4において充電制御信号SAのデューティ比が停止前(時刻t2以前)と同じ値に切り替わると、充電電流I2の電流値を停止前と同じ電流値に変化させ、停止前と同じ電流値でバッテリ52を充電する。この時、充電電流I2を増加させても、住戸H内の電気機器による消費電流が低下していることから、主幹電流I1は第1閾値Th1を下回っており、電気自動車50への給電が継続される。
【0037】
ここにおいて、第3閾値Th3としては、例えば主幹ブレーカ11の定格が50Aで、電気自動車50の充電電流の最大値が24Aの場合、50−24=26(A)に設定すればよいが、2Aの余裕を設けて24Aに設定してある。尚、第1閾値Th1及び第3閾値Th3の設定は、住戸側の配電設備の仕様や電気自動車50の仕様などを考慮してユーザ側で適宜設定すればよい。
【0038】
上述のように本実施形態の電気自動車給電システムでは、主幹電流I1の測定値が第1閾値Th1を超えると、制御装置たるコントロールボックス3が自動車給電部4に給電制限信号を出力し、自動車給電部4が給電制限信号に基づいて電気自動車50への給電を制限しているので、住戸H内の電気機器の使用を優先させることができる。長時間をかけてバッテリを充電する電気自動車の場合は、例えば電気調理器具のように、一時的な使用で生活に与える影響度合いが高い電気機器に比べて、給電を短時間停止することによる影響は小さく、したがって、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた場合には、電気自動車50への給電を制限し、住戸H内の電気機器に優先的に給電することによって、主幹電流のピークを抑制しつつ、生活の利便性が低下するのを抑制することができる。また主幹電流I1のピークを抑制することによって、地域全体に電気自動車が普及した場合でも地域全体の消費電流のピーク値を低減できるから、安定した電力給電を行うことができる。
【0039】
尚、本実施形態では主幹電流I1が第1閾値Th1を超える状態が一定時間継続すると、電気自動車50への給電を停止させているが、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた時点で、電気自動車50への給電を即座に停止させてもよい。
【0040】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図3及び図4に基づいて説明する。図3は本実施形態のシステム構成図であり、実施形態1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0041】
実施形態1では、自動車給電部4が、コントロールボックス3から入力される給電制限信号に基づいて電気自動車50に充電制御信号SAを送信し、電気自動車50の充電回路51により充電電流I2を制限させているのに対して、本実施形態では、自動車給電部4に電気自動車50への給電をオン/オフするリレー41を備え、自動車給電部4の制御部44が、コントロールボックス3からの給電制限信号に応じて、リレー41をオフさせることで電気自動車50への充電を停止させている。
【0042】
ここで、本実施形態の動作について図4を参照して説明する。尚、図4(a)は電流測定部2による主幹電流I1の測定値、同図(b)はコントロールボックス3の出力信号、同図(c)はリレー41のオン/オフ状態をそれぞれ示している。また図4(a)中の斜線部分は、主幹電流I1の内、電気自動車50に充電される充電電流I2の部分を示している。
【0043】
時刻t0〜t1においては、自動車給電部4のリレー41がオン状態となっており、自動車給電部4から電気自動車50に電力供給が行われて電気自動車50側でバッテリ52への充電が行われるとともに、住戸H内で電気機器が使用されているが、住戸H内の電気機器による消費電流と充電電流I2の合計である主幹電流I1の測定値は第1閾値Th1よりも低いので、コントロールボックス3からは給電制限信号は出力されない。尚、本実施形態では第1閾値Th1が、主幹ブレーカ11の定格電流である50Aの110%に相当する電流(55A)に設定されている。
【0044】
時刻t1において住戸H内で高容量の電気機器の使用が開始されると、主幹電流I1の測定値が第1閾値Th1(55A)を上回る。コントロールボックス3は主幹電流I1の測定値と第1閾値Th1との高低を逐次比較しており、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた状態が所定時間ΔT1継続した時刻t2において、電気自動車50への充電を停止させる給電制限信号S1を自動車給電部4に出力する。自動車給電部4の制御部44では、時刻t2において給電制限信号S1を受信すると、リレー41をオフさせて、電気自動車50への充電を停止させる。
【0045】
このように、第1閾値Th1(55A)を上回る電流が1秒間流れると、コントロールボックス3からの給電制限信号S1に基づいて自動車給電部4が電気自動車50側に流れる充電電流I2を停止させているので、主幹電流I1が定格内に収まり、主幹ブレーカ11が過電流によって遮断してしまうのを防止することができる。
【0046】
また、電気自動車50の充電を停止させた後の時刻t3において、住戸H内の電気機器が停止されることによって、主幹電流I1が所定の第3閾値Th3(復帰電流)を下回り、主幹電流I1が第3閾値Th3を下回る状態が一定時間ΔT2継続すると、コントロールボックス3は、電気自動車50側への給電制限を解除する給電制限解除信号S2を発生する。自動車給電部4の制御部44は、時刻t4において給電制限解除信号S2を受信すると、リレー41をオンさせて電気自動車50に給電し、電気自動車50の充電回路51によりバッテリ52の充電を再開させる。この時、充電電流I2が増加しても、住戸H内の電気機器による消費電流が低下していることから、主幹電流I1は第1閾値Th1を下回っており、電気自動車50への給電が継続される。
【0047】
ここにおいて、第3閾値Th3としては、例えば主幹ブレーカ11の定格が50Aで、電気自動車50の充電電流の最大値が24Vの場合、26Aに設定すればよいが、2Aの余裕を設けて24Aに設定してある。尚、第1閾値Th1及び第3閾値Th3の設定は、住戸側の配電設備の仕様や電気自動車50の仕様などを考慮してユーザ側で適宜設定すればよい。
【0048】
上述のように本実施形態の電気自動車給電システムでは、主幹電流I1の測定値が第1閾値Th1を超えると、制御装置たるコントロールボックス3が自動車給電部4に給電制限信号を出力し、自動車給電部4が、給電制限信号に基づいて内蔵するリレー41をオフさせることで電気自動車50への給電を停止しているので、住戸H内の電気機器の使用を優先させることができる。長時間をかけてバッテリを充電する電気自動車の場合、例えば電気調理器具のように、一時的な使用で生活に与える影響度合いが高い電気機器に比べて、給電を短時間停止することによる影響は小さく、したがって、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた場合には、電気自動車50への給電を制限し、住戸H内の電気機器に優先的に給電することによって、主幹電流のピークを抑制しつつ、生活の利便性が低下するのを抑制することができる。また主幹電流I1のピークを抑制することによって、地域全体に電気自動車が普及した場合でも地域全体の消費電流のピーク値を低減できるから、安定した電力給電を行うことができる。
【0049】
尚、本実施形態では主幹電流I1が第1閾値Th1を超える状態が一定時間継続すると、電気自動車50への給電を停止させているが、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた時点で、電気自動車50への給電を即座に停止させてもよい。
【0050】
(実施形態3)
本発明の実施形態3を図5に基づいて説明する。尚、本実施形態のシステム構成は実施形態1と同じであるから、システム構成についての図示および説明は省略する。
【0051】
実施形態1では、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた状態が一定時間継続すると、自動車給電部4が電気自動車50への給電を停止させているのに対して、本実施形態では、電気自動車50への充電電流I2の電流値を低下させている。
【0052】
ここで、本実施形態の動作について図5を参照して説明する。尚、図5(a)は電流測定部2による主幹電流I1の測定値、同図(b)はコントロールボックス3の出力信号、同図(c)は自動車給電部4から電気自動車50に出力される充電制御信号SAのデューティ比、同図(d)は充電電流I2をそれぞれ示す。
【0053】
時刻t0〜t1においては、自動車給電部4から電気自動車50に電力供給が行われて電気自動車50側でバッテリへの充電が行われるとともに、住戸H内で電気機器が使用されているが、住戸H内の電気機器による消費電流と充電電流I2の合計である主幹電流I1の測定値は第1閾値Th1よりも低いので、コントロールボックス3からは給電制限信号は出力されない。尚、本実施形態では第1閾値Th1が、主幹ブレーカ11の定格電流(50A)の110%に相当する電流(55A)を上回る電流値(例えば60A)に設定されている。
【0054】
時刻t1において住戸H内で高容量の電気機器の使用が開始されると、主幹電流I1の測定値が第1閾値Th1(60A)を上回る。コントロールボックス3は主幹電流I1の測定値と第1閾値Th1との高低を逐次比較しており、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた状態が所定時間ΔT1継続した時刻t2において、電気自動車50への充電電流I2を低下させる給電制限信号S3を自動車給電部4に出力する。
【0055】
自動車給電部4の制御部44は、時刻t2において給電制限信号S3を受信すると、充電電流I2を現在の電流値からdI1だけ低下させる充電制御信号SA(電流低下信号)を作成する。尚、第1閾値Th1は主幹ブレーカ11の定格電流よりも10A高い電流に設定されているので、充電電流I2の低下幅dI1は、2Aの余裕を設けて12Aに設定されている。ここで、時刻t1までの期間において、自動車給電部4から、30Aまで充電を許可する信号が送出されていた場合に、電気自動車50の充電回路51では30A以下で充電を行っているので、自動車給電部4では、例えばカレントトランスからなる電流センサ48を用いて内部配線40に流れる電流を検出し、その検出結果をもとに、現在の充電電流値(例えば25A)よりもdI1だけ低下させた電流値(25−12=13[A])に充電電流I2を制御する充電制御信号SAを作成する。この充電制御信号SAは信号変換部45によって信号形式が変換された後、信号出力部46から電気自動車50へ出力される。
【0056】
電気自動車50の充電回路51では、自動車給電部4から受信した充電制御信号SAのデューティ比にしたがって充電電流I2の電流値を制御しており、時刻t2において充電制御信号SAのデューティ比が変化すると、変化後のデューティ比にしたがって充電電流I2をdI1だけ低下させる。このように、主幹ブレーカ11の定格を10A超える第1閾値Th1(60A)の電流が1秒間流れると、コントロールボックス3からの給電制限信号S3に基づいて自動車給電部4が電気自動車50側に流れる充電電流I2をdI1だけ低下させているので、主幹電流I1がdI1だけ低下して48A以下となり、定格内に収まるから、主幹ブレーカ11が過電流によって遮断してしまうのを防止することができる。また電気自動車50側でも、充電電流値は下がるものの、充電が停止されることはなく、継続して充電を行うことができる。
【0057】
そして、電気自動車50の充電電流I2を低下させた後の時刻t3において、住戸H内の電気機器が停止されることによって、主幹電流I1が所定の第3閾値Th3(復帰電流)を下回り、主幹電流I1が第3閾値Th3を下回る状態が一定時間ΔT2継続すると、コントロールボックス3は、電気自動車50への給電制限を解除する給電制限解除信号S4を発生する。
【0058】
自動車給電部4の制御部44は、時刻t4において給電制限解除信号S4を受信すると、充電電流I2を現在の電流値からdI1だけ増加させる充電制御信号SAを作成し、この制御信号は信号変換部45によって信号形式が変換された後、信号出力部46から電気自動車50へ出力される。この時、電気自動車50の充電回路51では、自動車給電部4から受信した充電制御信号SAのデューティ比にしたがって充電電流を制御しており、時刻t4において充電制御信号SAのデューティ比が低下前(時刻t2以前)と同じ値に切り替わると、電気自動車50の充電回路51は充電電流をdI1だけ増加させ、時刻t2以前と同じ電流値でバッテリ52を充電する。この時、充電電流I2を増加させても、住戸H内の電気機器による消費電流が低下していることから、主幹電流I1は第1閾値Th1を下回っており、電気自動車50への給電が継続される。
【0059】
上述のように本実施形態の電気自動車給電システムでは、主幹電流I1の測定値が第1閾値Th1を超えると、制御装置たるコントロールボックス3が自動車給電部4に給電制限信号を出力し、この給電制限信号に基づいて自動車給電部4が電気自動車50への充電電流I2を低下させているので、住戸H内の電気機器の使用を優先させることができる。長時間をかけてバッテリを充電する電気自動車の場合は、例えば電気調理器具のように、一時的な使用で生活に与える影響度合いが高い電気機器に比べて、給電を短時間制限することによる影響は小さく、したがって、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた場合には、電気自動車50への充電電流を低下させ、住戸H内の電気機器に優先的に給電することによって、主幹電流のピークを抑制しつつ、生活の利便性が低下するのを抑制することができる。また主幹電流I1のピークを抑制することによって、地域全体に電気自動車が普及した場合でも地域全体の消費電流のピーク値を低減できるから、安定した電力給電を行うことができる。
【0060】
尚、本実施形態では主幹電流I1が第1閾値Th1を超える状態が一定時間継続すると、電気自動車50への充電電流I2を低下させているが、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた時点で、電気自動車50への充電電流I2を即座に低下させてもよい。
【0061】
(実施形態4)
本発明の実施形態4を図6に基づいて説明する。尚、本実施形態のシステム構成は実施形態1と同じであるから、図示および説明は省略する。
【0062】
実施形態3では、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた状態が一定時間ΔT1継続すると、自動車給電部4が電気自動車50への給電を制限しているのに対して、本実施形態では、第1閾値Th1よりも小さい第2閾値Th2を主幹電流I1が超えた状態が、上記一定時間ΔT1よりも長い所定時間ΔT3継続すると、自動車給電部4が電気自動車50への給電を制限する。
【0063】
ここで、本実施形態の動作について図6を参照して説明する。尚、図6(a)は電流測定部2による主幹電流I1の測定値、同図(b)はコントロールボックス3の出力信号、同図(c)は自動車給電部4から電気自動車50に出力される充電制御信号SAのデューティ比、同図(d)は充電電流I2をそれぞれ示す。
【0064】
時刻t0〜t1においては、自動車給電部4から電気自動車50に電力供給が行われて電気自動車50側でバッテリへの充電が行われるとともに、住戸H内で電気機器が使用されている。コントロールボックス3は、電流測定部2による主幹電流I1の測定値と第1閾値Th1,第2閾値Th2との高低をそれぞれ比較しており、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた状態が所定時間ΔT1継続するか、又は、主幹電流I1が第2閾値Th2を超えた状態が所定時間ΔT3(>ΔT1)継続すると、電気自動車50への充電電流I2を低下させる給電制限信号S3を自動車給電部4に出力する。ここで、時刻t0〜t1においては、住戸H内の電気機器による消費電流と充電電流I2の合計である主幹電流I1の測定値は第1閾値Th1よりも低く且つ第2閾値Th2よりも低いので、コントロールボックス3からは給電制限信号は出力されない。尚、本実施形態では第1閾値Th1が、主幹ブレーカ11の定格電流(50A)の110%に相当する電流(55A)に、第2閾値Th2が主幹ブレーカ11の定格電流(50A)に設定されている。
【0065】
時刻t1において住戸H内で高容量の電気機器の使用が開始されると、主幹電流I1の測定値が第2閾値(50A)を上回り且つ第1閾値(55A)以下の状態となる。そして、主幹電流I1が第2閾値Th2を上回り且つ第1閾値Th1以下となる状態が所定時間ΔT3(例えば5分間)継続すると、時刻t2においてコントロールボックス3は、電気自動車50への充電電流I2を低下させる給電制限信号S3を自動車給電部4に出力する。
【0066】
自動車給電部4の制御部44は、時刻t2において給電制限信号S3を受信すると、充電電流I2を現在の電流値からdI2だけ低下させる充電制御信号(電流低下信号)SAを作成する。尚、第1閾値Th1は主幹ブレーカ11の定格電流(55A)よりも5A高い電流に設定され、第2閾値Th2は主幹ブレーカ11の定格電流(50A)に設定されているので、第2閾値Th2を超えた時の充電電流I2の低下幅dI2は、2Aの余裕を設けて7Aに設定されている。ここで、時刻t1までの期間において、自動車給電部4から、30Aまで充電を許可する信号が送出されていた場合に、電気自動車50の充電回路51では30A以下で充電を行っているので、自動車給電部4では、内部配線40に流れる電流を検出するカレントトランスからなる電流センサ48の検出結果をもとに、現在の充電電流値(例えば25A)よりもdI2だけ低下させた電流値(25−7=18[A])に充電電流I2を制御する充電制御信号SAを作成する。この充電制御信号SAは信号変換部45によって信号形式が変換された後、信号出力部46から電気自動車50へ出力される。
【0067】
電気自動車50の充電回路51では、自動車給電部4から受信した充電制御信号SAのデューティ比にしたがって充電電流I2の電流値を制御しており、時刻t2において充電制御信号SAのデューティ比が変化すると、変化後のデューティ比にしたがって充電電流I2をdI2だけ低下させるので、充電電流I2は18A以下となる。また、主幹電流I1は48A以下になり、主幹ブレーカ11の定格電流内に収めることができる。
【0068】
このように、主幹ブレーカ11に、第2閾値Th2を超え且つ第1閾値Th1以下となる電流(すなわち主幹ブレーカ11の定格に対する超過分が5A以内である電流)が5分間流れると、コントロールボックス3からの給電制限信号S3に基づいて自動車給電部4が電気自動車50側に流れる充電電流I2をdI2だけ低下させているので、主幹電流I1がdI2だけ低下して48A以下となり、定格内に収まるから、主幹ブレーカ11が過電流によって遮断してしまうのを防止することができる。また電気自動車50側でも、充電電流値は下がるものの、充電が停止されることはなく、継続して充電を行うことができる。
【0069】
そして、電気自動車50の充電電流I2を低下させた後の時刻t3において、住戸H内の電気機器が停止されることによって、主幹電流I1が所定の第3閾値Th3(復帰電流)を下回り、主幹電流I1が第3閾値Th3を下回る状態が一定時間ΔT4継続すると、コントロールボックス3は、電気自動車50への給電制限を解除する給電制限解除信号S4を発生する。
【0070】
自動車給電部4の制御部44は、時刻t4において給電制限解除信号S4を受信すると、充電電流I2を現在の電流値からdI2だけ増加させる充電制御信号SAを作成し、この制御信号は信号変換部45によって信号形式が変換された後、信号出力部46から電気自動車50へ出力される。電気自動車50の充電回路51では、時刻t4において充電制御信号SAのデューティ比が低下前(時刻t2以前)と同じ値に切り替わると、充電電流I2をdI2だけ増加させ、時刻t2以前と同じ電流値でバッテリ52を充電する。この時、充電電流I2を増加させても、住戸H内の電気機器による消費電流が低下していることから、主幹電流I1は第1閾値Th1,第2閾値Th2をそれぞれ下回っており、電気自動車50への給電が継続される。
【0071】
このように本実施形態では、主幹ブレーカ11に流れる主幹電流I1が第1閾値Th1より小さい場合であっても、第1閾値Th1より低い第2閾値Th2以上の電流が所定時間ΔT3だけ継続して流れると、電気自動車50側への給電が制限されるので、主幹電流I1のピーク値をさらに低減できる。
【0072】
(実施形態5)
本発明の実施形態5を図7に基づいて説明する。尚、本実施形態のシステム構成は、コントロールボックス3を無くした点を除けば、実施形態1と同じであるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0073】
上述の実施形態1では、コントロールボックス3が、電流測定部2により測定された主幹電流I1の電流値と第1閾値Th1との高低を比較し、主幹電流I1の電流値が第1閾値Th1を超える状態が一定時間ΔT継続すると、電気自動車50への給電を制限する給電制御信号を自動車給電部4に出力して、自動車給電部4に電気自動車50側への給電電流を制限させているが、本実施形態ではコントロールボックス3の機能を自動車給電部4の制御部44に持たせている。
【0074】
すなわち、自動車給電部4の制御部44が、電流測定部2により測定された主幹電流I1の電流値と第1閾値Th1との高低を逐次比較し、主幹電流I1の電流値が第1閾値Th1を超える状態が一定時間ΔT1継続すると、充電を停止させる充電制御信号SA(充電停止信号)を作成し、信号変換部45により信号形式を変換させた後、信号出力部46から電気自動車50側へ送信させている。また電気自動車50への給電を停止させた後は、自動車給電部4の制御部44が、電流測定部2により測定された主幹電流I1の電流値と第3閾値Th3との高低を比較し、主幹電流I1の電流値が第3閾値Th3を下回る状態が一定時間ΔT2継続すると、充電を再開させる充電制御信号SAを作成し、信号変換部45により信号形式を変換させた後、信号出力部46から電気自動車50側へ送信させている。このように、本実施形態では自動車給電部4の制御部44が、コントロールボックス3の機能を併せ持っているので、コントロールボックス3が不要になり、システム構成を簡素化できる。
【0075】
尚、上述した他の実施形態2−4においても、本実施形態と同様にコントロールボックス3の機能を、自動車給電部4の制御部44に持たせることによって、コントロールボックス3を無くすことができる。
【0076】
(実施形態6)
本発明の実施形態6を図8及び図9に基づいて説明する。
【0077】
本実施形態の電気自動車給電システムは、日本電機工業会規格で規定されたJEM−A端子を有するエアコンディショナ7a,7bと、コントロールボックス3から入力される制御信号をJEM−A端子に対応した信号に変換してエアコンディショナ7a,7bに出力するインターフェイスユニット(IFU)6a,6bとを備えた点を除いては、実施形態3のシステムと同様であり、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0078】
上述した実施形態3の自動車給電システムでは、主幹電流が所定の第1閾値を超えると電気自動車50への給電を制限しているが、本実施形態では、主幹電流I1が閾値を超えた際に給電を制限する対象として、電気自動車50とエアコンディショナ7a,7bを設定するとともに、電気自動車50とエアコンディショナ7a,7bとに優先順位を設けてある。ここで、電気自動車50<エアコンディショナ7a<エアコンディショナ7bの順番で優先順位が高くなっており、優先順位の低いものから給電が停止される。すなわち、主幹電流が所定の第1閾値を超えると、優先度が最も低い電気自動車50への給電が制限され、その後主幹電流I1が所定の閾値を超えると、次に優先度が低いエアコンディショナ7aへの給電が停止され、その後更に主幹電流I1が所定の閾値を超えると、次に優先度が低いエアコンディショナ7bへの給電が停止されるようになっている。
【0079】
ここで、本実施形態の動作について図9を参照して説明する。尚、図9(a)は電流測定部2による主幹電流I1の測定値、同図(b)はコントロールボックス3の出力信号、同図(c)は自動車給電部4から電気自動車50に出力される充電制御信号SAのデューティ比、同図(d)は充電電流I2、同図(e)はエアコンディショナ7aに与えられるJEMA信号、同図(f)はエアコンディショナ7aのオン/オフをそれぞれ示す。また、図9(a)中の斜線部Aは、主幹電流I1のうち電気自動車50への充電電流I2の部分を示し、斜線部Bはエアコンディショナ7aによる消費電流分を示している。
【0080】
時刻t0〜t1においては、自動車給電部4から電気自動車50に電力供給が行われて電気自動車50側でバッテリへの充電が行われるとともに、住戸H内で電気機器が使用されているが、住戸H内の電気機器による消費電流と充電電流I2の合計である主幹電流I1の測定値は第1閾値Th1よりも低いので、コントロールボックス3からは給電制限信号は出力されない。尚、本実施形態では第1閾値Th1が、主幹ブレーカ11の定格電流(50A)の110%に相当する電流(55A)に設定されている。
【0081】
時刻t1において住戸H内で高容量の電気機器の使用が開始されると、主幹電流I1の測定値が第1閾値Th1(55A)を上回る。コントロールボックス3は主幹電流I1の測定値と第1閾値Th1との高低を逐次比較しており、主幹電流I1が第1閾値Th1を超えた状態が所定時間ΔT1継続した時刻t2において、電気自動車50への充電電流I2を低下させる給電制限信号S3を自動車給電部4に出力する。
【0082】
自動車給電部4の制御部44は、時刻t2において給電制限信号S3を受信すると、充電電流I2を現在の電流値からdI1だけ低下させる充電制御信号(電流低下信号)SAを作成する。尚、第1閾値Th1は主幹ブレーカ11の定格電流よりも5A高い電流に設定されているので、充電電流I2の低下幅dI1は、2Aの余裕を設けて7Aに設定されている。ここで、時刻t1までの期間において、自動車給電部4から、30Aまで充電を許可する信号が送出されていた場合に、電気自動車50の充電回路51では30A以下で充電を行っているので、自動車給電部4では、カレントトランスからなる電流センサ48により内部配線40に流れる電流を検出し、この検出結果をもとに、現在の充電電流値(例えば25A)よりもdI1だけ低下させた電流値(25−7=18[A])に充電電流I2を制御する充電制御信号SAを作成する。この充電制御信号SAは信号変換部45によって信号形式が変換された後、信号出力部46から電気自動車50へ出力される。
【0083】
電気自動車50の充電回路51では、自動車給電部4から受信した充電制御信号SAのデューティ比にしたがって充電電流I2の電流値を制御しており、時刻t2において充電制御信号SAのデューティ比が変化すると、変化後のデューティ比にしたがって充電電流I2をdI1だけ低下させる。このように、第1閾値Th1(55A)を超える電流が1秒間流れると、コントロールボックス3からの給電制限信号S3に基づいて自動車給電部4が電気自動車50側に流れる充電電流I2をdI1だけ低下させるのであるが、主幹電流I1がdI1だけ低下しても依然として定格電流(50A)を超えている場合、定格電流を超える電流が所定時間ΔT4だけ継続して流れた時刻t3において、コントロールボックス3は、次に優先順位が低いエアコンディショナ7aを停止させる信号をIFU6aに出力し、IFU6aが、JEMA信号からなる停止命令S5をエアコンディショナ7aに出力する。この時、エアコンディショナ7aは、IFU6aから入力されたJEMA信号により動作を停止し、これによって主幹電流I1が定格内に収まるから、主幹ブレーカ11が過電流によって遮断してしまうのを防止することができる。また電気自動車50側でも、充電電流値は下がるものの、充電が停止されることはなく、継続して充電を行うことができる。
【0084】
また、電気自動車50の充電電流I2を低下させるとともにエアコンディショナ7aを停止させた後の時刻t4において、住戸H内の電気機器が停止されることによって、主幹電流I1が所定の第3閾値Th3(復帰電流)を下回り、主幹電流I1が第3閾値Th3を下回る状態が一定時間ΔT2継続すると、コントロールボックス3は、エアコンディショナ7aを起動させる信号をIFU6aに出力し、IFU6aが、JEMA信号によって起動命令S6をエアコンディショナ7aに出力する。この時、エアコンディショナ7aは、IFU6aから入力されたJEMA信号により動作を再開し、エアコンディショナ7aの消費電流分だけ主幹電流I1が増加するが、増加後の主幹電流I1が依然として第3閾値Th3を下回っていれば、所定時間ΔT5が経過した時刻t6において、コントロールボックス3は電気自動車50への給電制限を解除する給電制限解除信号S4を発生する。
【0085】
自動車給電部4の制御部44は、時刻t6において給電制限解除信号S4を受信すると、充電電流I2を現在の電流値からdI1だけ増加させる充電制御信号SAを作成し、この制御信号は信号変換部45によって信号形式が変換された後、信号出力部46から電気自動車50へ出力される。この時、電気自動車50の充電回路51では、自動車給電部4から受信した充電制御信号SAのデューティ比にしたがって充電電流を制御しており、時刻t6において充電制御信号SAのデューティ比が低下前(時刻t2以前)と同じ値に切り替わると、電気自動車50の充電回路51は充電電流をdI1だけ増加させ、時刻t2以前と同じ電流値でバッテリ52を充電する。この時、充電電流I2を増加させても、住戸H内の電気機器による消費電流が低下していることから、主幹電流I1は第1閾値Th1を下回っており、電気自動車50への給電が継続される。
【0086】
尚、実施形態3以外の他の実施形態においても、エアコンディショナなどのJEM−A端子を有する電気機器と電気自動車50とを組み合わせて給電を制御してもよく、本実施形態と同様の効果がある。また、本実施形態ではJEM−A端子を有する電気機器としてエアコンディショナ7a,7bを例に説明を行ったが、JEM−A端子を有する電気機器であれば電気床暖房装置などの電気機器にも本実施形態を適用することは可能である。
【0087】
また上述の各実施形態では、分電盤1から電気自動車50に商用交流電源を給電しているが、電気自動車50が直流電力に対応し、直流電力の給電を受けてバッテリ52を充電できるのであれば、住戸内に直流電力を配電する分電盤から、電気自動車50へ直流電力を供給してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 分電盤
2 電流測定部
3 コントロールボックス(制御装置)
4 自動車給電部
5 コネクタ
11 主幹ブレーカ
12 分岐ブレーカ
50 電気自動車
51 充電回路
52 バッテリ
53 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用のバッテリと当該バッテリを充電する充電回路を備えた電気自動車に交流電源を供給して、電気自動車の充電回路によりバッテリを充電させる電気自動車給電システムであって、
主幹ブレーカ及び分岐ブレーカを内器として備える分電盤と、
主幹ブレーカに流れる主幹電流の電流値を測定する電流測定部と、
主幹電流の測定値が第1閾値を超えると、電気自動車側への給電を制限する給電制限信号を発生する制御装置と、
電気自動車側のコネクタに着脱自在に接続されるコネクタを具備し、分岐ブレーカを介して入力される交流電源を前記コネクタを介して電気自動車側の充電回路に供給するとともに、制御装置が給電制限信号を発生すると電気自動車側への給電電流を制限する自動車給電部とを備えたことを特徴とする電気自動車給電システム。
【請求項2】
前記自動車給電部は、前記電気自動車への給電路を遮断する断路部を備え、前記制御装置が前記給電制限信号を発生すると、断路部に給電路を遮断させることによって、電気自動車側への給電電流を制限することを特徴とする請求項1記載の電気自動車給電システム。
【請求項3】
前記自動車給電部が、前記給電路に流れる電流をもとに漏電の発生を検知する漏電検知部を備え、当該漏電検知部が漏電を検知すると前記断路部に給電路を遮断させることを特徴とする請求項2記載の電気自動車給電システム。
【請求項4】
前記自動車給電部が、前記コネクタを介して電気自動車側の充電回路に信号を送信する信号送信部を備え、前記制御装置が前記給電制限信号を発生すると、充電を停止させる充電停止信号を信号送信部から充電回路へ送信させることによって、電気自動車側への給電電流を制限することを特徴とする請求項1記載の電気自動車給電システム。
【請求項5】
前記自動車給電部が、前記コネクタを介して電気自動車側の充電回路に信号を送信する信号送信部を備え、前記制御装置が前記給電制限信号を発生すると、充電電流を低下させる電流低下信号を信号送信部から充電回路へ送信させることによって、電気自動車側への給電電流を制限することを特徴とする請求項1記載の電気自動車給電システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1閾値よりも低い第2閾値を前記電流測定部の測定値が超える状態が所定時間継続すると、前記給電制限信号を前記自動車給電部に出力することを特徴とする請求項1記載の電気自動車給電システム。
【請求項7】
前記自動車給電部が前記電気自動車側への給電電流を低下させた状態で、前記第1閾値よりも低い所定の第3閾値を前記電流測定部の測定値が下回る状態が一定時間継続すると、前記制御装置は、電気自動車側への給電制限を解除する給電制限解除信号を発生し、当該給電制限解除信号に基づいて前記自動車給電部が電気自動車側への給電制限を解除することを特徴とする請求項1記載の電気自動車給電システム。
【請求項8】
前記自動車給電部が前記電気自動車側への給電電流を停止させた状態で、前記第1閾値よりも低い所定の第3閾値を前記電流測定部の測定値が下回る状態が一定時間継続すると、前記制御装置は、電気自動車側への給電制限を解除する給電制限解除信号を発生し、当該給電制限解除信号に基づいて前記自動車給電部が電気自動車側への給電制限を解除することを特徴とする請求項1記載の電気自動車給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−130648(P2011−130648A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289707(P2009−289707)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】