電気自動車
【課題】バッテリーパックの高電圧ケーブルがバッテリーパックの側方でフロアパネルを貫通した構造を備える電気自動車において、車両の側面衝突時にフロア貫通穴が衝突物とバッテリーパックとの間で圧壊されてしまっても高電圧ケーブルが大きな損傷を受ける可能性を低くする。
【解決手段】フロアパネル6上に設置されたバッテリーパック7と、バッテリーパック7に接続された高電圧ケーブル11と、フロアパネル6のバッテリー7の側方に形成されて、高電圧ケーブル11が挿通されたフロア貫通穴61と、を備える。そして、フロア貫通穴61が圧壊する時に、高電圧ケーブル11がフロア貫通穴61の周縁から受ける接触面圧を低減する保護手段として、フロア貫通穴61の周縁においてフロアパネル6から筒状に突出した筒状壁部13が設けられている。
【解決手段】フロアパネル6上に設置されたバッテリーパック7と、バッテリーパック7に接続された高電圧ケーブル11と、フロアパネル6のバッテリー7の側方に形成されて、高電圧ケーブル11が挿通されたフロア貫通穴61と、を備える。そして、フロア貫通穴61が圧壊する時に、高電圧ケーブル11がフロア貫通穴61の周縁から受ける接触面圧を低減する保護手段として、フロア貫通穴61の周縁においてフロアパネル6から筒状に突出した筒状壁部13が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの電力でモータを駆動して走行する電気自動車に関する。特に、バッテリーのケーブルが車体のフロアを貫通した構造を有する電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に優しい自動車として、蓄電池、燃料電池等のバッテリーの電力でモータを駆動して走行する電気自動車が注目されている。この電気自動車には、駆動源として専らモータのみを有する電気自動車のほか、駆動源としてモータおよび内燃機関を有するハイブリッド車両なども含まれる。
【0003】
図9は、バッテリーパック(バッテリー)7と、バッテリーパック7に接続された高電圧ケーブル11と、駆動源としてのモータMG1,MG2およびエンジン(内燃機関)2と、を備えたハイブリッド車両20の概略構成を示している。
【0004】
この図9に示すハイブリッド車両20は、後輪5R,5Rの後方に大きなラッゲージスペースを備えており、このラッゲージスペース21にバッテリーパック7が設置されている。バッテリーパック7に接続された高電圧ケーブル11は、フロアパネル22に形成されたフロア貫通穴221を上から下に貫通して車両前方に向けて配置され、その先でインバータ10に接続されている。上記バッテリーパック7の電力は、高電圧ケーブル11およびインバータ10を介してモータMG1,M2に供給される。なお、符号3は動力分割機構であり、符号4はトランスアクスルであり、符号5F,5Fは前輪である。
【0005】
このように、バッテリーパックに接続された高電圧ケーブルがフロアパネルを貫通した構造を有する電気自動車は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−247064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図10に示すように、コンパクトカー20Aでは、ラッゲージスペース21が狭いため、ラッゲージスペース21に十分な大きさのバッテリーパック7を設置することができない。この場合、バッテリーパック7はリヤシートの下などに設置される。また、スペースの制約により、高電圧ケーブル11を挿通するフロア貫通穴221もリヤシートの下などに設けられ、しかも、そのフロア貫通穴221はバッテリーパック7の側方に設けられることがある。
【0008】
ところが、フロア貫通穴221がバッテリーパック7の側方に設けられると、車両の側面衝突時に、そのフロア貫通穴221は、衝突物とバッテリーパック7との間で圧壊し易くなる。また、高電圧ケーブル11は、図11に示すように、フロア貫通穴221の尖った周縁に囲まれているため、フロア貫通穴221が圧壊すると、フロア貫通穴221の尖った周縁が高電圧ケーブル11に食い込んで、その高電圧ケーブル11は、断線などの大きな損傷を受け易くなる。
【0009】
本発明はかかる問題に鑑みて創案されたものであり、バッテリーのケーブルがそのバッテリーの側方で車体のフロアを貫通した構造を備える電気自動車において、車両の側面衝突時にフロア貫通穴が衝突物とバッテリーパックとの間で圧壊されてしまっても、ケーブルが断線等の大きな損傷を受け難くすることができる電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するための手段として、本発明の電気自動車は、以下のように構成されている。
【0011】
すなわち、本発明の電気自動車は、車体のフロア上に設置されたバッテリーと、前記バッテリーに接続されたケーブルと、前記車体のフロアの前記バッテリーの側方に形成されて、前記ケーブルが挿通されたフロア貫通穴と、を備えており、前記フロア貫通穴が圧壊する時に、前記ケーブルが前記フロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧を低減する保護手段が設けられたことを特徴としている。
【0012】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴が圧壊しても保護手段によってケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減されるので、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【0013】
また、前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁において前記車体のフロアから筒状に突出した筒状壁部であることが好ましい。
【0014】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴の周縁に筒状壁部が形成されているため、フロア貫通穴が圧壊してもケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減され、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【0015】
また、前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁にバーリング加工が施されることにより形成されたバーリング加工部であることが好ましい。
【0016】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴の周縁にバーリング加工部が形成されているため、フロア貫通穴が圧壊してもケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減され、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【0017】
また、前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁において穴径方向へ巻き返された巻き返し部であることが好ましい。
【0018】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴の周縁に巻き返し部が形成されているため、フロア貫通穴が圧壊してもケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減され、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【0019】
また、前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁にカーリング加工が施されることにより形成されたカーリング加工部であることが好ましい。
【0020】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴の周縁にカーリング加工部が形成されているため、フロア貫通穴が圧壊してもケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減され、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【0021】
また、前記保護手段は、前記フロア貫通穴内で前記ケーブルを被覆した被覆部材であることが好ましい。
【0022】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴内で、被覆部材がケーブルを被覆しているため、フロア貫通穴が圧壊してもケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減され、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電気自動車によれば、フロア貫通穴が圧壊しても保護手段によってケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減されるので、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両(電気自動車)における各部の配置を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に関する、図1のA―A断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両(電気自動車)における各部の配置を示す図であって、側面衝突時の状態を示す図である。
【図4】第1の実施の形態に関する、図3のB―B断面図である。
【図5】第2の実施の形態に関する、図1のA―A断面図である。
【図6】第2の実施の形態に関する、図3のB―B断面図である。
【図7】第3の実施の形態に関する、図1のA―A断面図である。
【図8】第3の実施の形態に関する、図3のB―B断面図である。
【図9】従来例のハイブリッド車両(電気自動車)における各部の配置を示す図である。
【図10】コンパクト型ハイブリッド車両(電気自動車)における各部の配置を示す図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の電気自動車について図面を参照して説明する。ここで、電気自動車はバッテリーと駆動源としてのモータとを搭載し、バッテリーが供給する電力によりモータを駆動して走行する車両を意味する。また、モータ以外の駆動源を有する車両も上記電気自動車に含まれる。例えば、モータの他に内燃機関を搭載し、その内燃機関の駆動力も利用して走行するハイブリッド車両なども上記電気自動車に含まれる。
【0026】
本実施形態では、駆動源としてモータおよび内燃機関を搭載したハイブリッド車両を上記電気自動車の例に挙げて説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両1における各部の配置を示す図である。この図1に示すハイブリッド車両1は、駆動源としてエンジン2およびモータ・ジェネレータMG1,MG2を備えている。エンジン2およびモータ・ジェネレータMG1,MG2が発生する駆動力は、動力分配機構3、トランスアクスル4等を介して駆動輪5F,5Fに伝達される。なお、モータ・ジェネレータMG1は主に発電機として機能し、モータ・ジェネレータMG2は主にモータとして機能する。
【0028】
ハイブリッド車両1のリヤシート8の下の床面を形成するフロアパネル(車体のフロア)6上に、バッテリーパック(バッテリー)7が設置されている。このバッテリーパック7は、高電圧ケーブル11を介してインバータ10と接続されている。バッテリーパック7内には、バッテリー等が収容されている。
【0029】
上記高電圧ケーブル11は、フロアパネル6において上記バッテリーパック7の側方に形成されたフロア貫通穴61に挿通されている。バッテリーパック7に接続された高電圧ケーブル11は、フロア貫通穴61を上から下へ挿通されてフロアパネル6の下に配置され、車両前方のインバータ10に接続されている。
【0030】
図3に示すように、フロア貫通穴61は、車両の側面衝突時、つまり、このハイブリッド車両1の側面に他の車両などの物体が衝突する時、衝突物12とバッテリーパック7との間で圧壊する可能性がある。
【0031】
しかし、このハイブリッド車両1では、フロア貫通穴61が圧壊する時に、当該フロア貫通穴61の周縁が高電圧ケーブル11に与える接触面圧を低減する保護手段が設けられており、この保護手段によって高電圧ケーブル11が断線等の大きな損傷を受ける可能性が低減されるようになっている。以下、この保護手段について複数の実施形態を例に挙げてより具体的に説明する。
【0032】
[第1の実施形態]
本実施形態では、図2に示すように、フロア貫通穴61の周縁においてフロアパネル6から筒状(例えば円筒状)に突出した筒状壁部13が形成されており、この筒状壁部13が上記保護手段として機能する。
【0033】
上記筒状壁部13は、例えば、フロアパネル6に貫通穴を明けて、バーリング加工を施すことにより形成されるバーリング加工部とすることができる。図2においては、筒状壁部13はフロアパネル6の上方に突出しているが、フロアパネル6の下方に突出させた筒状壁部としてもよい。
【0034】
上記のように、フロア貫通穴61の周縁には、筒状壁部13が形成されているため、図3および図4に示すように、車両の側面衝突時に、フロア貫通穴61が衝突物12とバッテリーパック7との間で圧壊されることがあっても、高電圧ケーブル11がフロア貫通穴61の周縁から受ける接触面圧が低減される。このため、高電圧ケーブル11が断線等の大きな損傷を受ける可能性も低減される。
【0035】
[第2の実施形態]
本実施形態では、図5に示すように、フロア貫通穴61の周縁において穴径方向へ巻き返された巻き返し部14が形成されており、この巻き返し部14が上記保護手段として機能する。
【0036】
上記巻き返し部14は、例えば、フロアパネル6に貫通穴を明けて、カーリング加工を施すことにより設けられるカーリング加工部とすることができる。図5においては、巻き返し部14はフロアパネル6の上方に形成されているが、フロアパネル6の下方に形成した巻き返し部としてもよい。
【0037】
上記のように、フロア貫通穴61の周縁には、巻き返し部14が形成されているため、図3および図6に示すように、車両の側面衝突時に、フロア貫通穴61が衝突物12とバッテリーパック7との間で圧壊されることがあっても、高電圧ケーブル11がフロア貫通穴61の周縁から受ける接触面圧が低減される。このため、高電圧ケーブル11が断線等の大きな損傷を受ける可能性も低減される。
【0038】
[第3の実施形態]
本実施形態では、図7に示すように、フロア貫通穴61は従来例のフロア貫通穴221と同様であるが、フロア貫通穴61内で、被覆部材15が高電圧ケーブル11を被覆している。この被覆部材15が上記保護手段として機能する。
【0039】
被覆部材15の材料は、例えば、フロアパネル6との相性が良く、対候性、強度に優れた樹脂材を用いることが望ましい。しかし、この樹脂材に限定されることなくその他の材料を用いてもよい。
【0040】
被覆部材15は、常にフロア貫通穴61内に留まって高電圧ケーブル11を保護できるように、高電圧ケーブル11に対して固定されていることが望ましい。被覆部材15の高電圧ケーブル11への固定は、例えば接着剤にて行うことができる。
【0041】
上記のように、フロア貫通穴61内で、被覆部材15が高電圧ケーブル11を被覆しているため、図3および図8に示すように、車両の側面衝突時に、フロア貫通穴61が衝突物12とバッテリーパック7との間で圧壊されることがあっても、フロア貫通穴61の周縁は被覆部材15を介して高電圧ケーブル11を圧迫することとなる。このため、高電圧ケーブル11がフロア貫通穴61の周縁から受ける接触面圧は低減され、高電圧ケーブル11が断線等の大きな損傷を受ける可能性も低減される。
【0042】
[他の実施形態]
第1の実施の形態において説明した筒状壁部13は、バーリング加工以外の施工によっても設けることができる。例えば、フロアパネル6に貫通穴を明けて、その貫通穴に筒状部材を溶接等により固着することによって筒状壁部13を設けることもできる。この場合、突出方向はフロアパネル6の上方または下方の何れでもよい。また、フロアパネル6に明けた貫通穴に筒状部材を挿入し、この筒状部材を溶接等により上記貫通穴に固着することで筒状壁部をフロアパネル6の上下に突出したものとすることもできる。
【0043】
また、フロア貫通穴61の周縁において既述の筒状壁部13又は巻き返し部14を設けるとともに、フロア貫通穴61内で、高電圧ケーブル11を被覆部材15で被覆したものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、バッテリーとモータを搭載し、バッテリーが供給する電力でモータを駆動して走行する電気自動車であって、バッテリーのケーブルがフロアパネルを貫通した構造を有する電気自動車に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 ハイブリッド車両(電気自動車)
6 フロアパネル(車体のフロア)
7 バッテリーパック(バッテリー)
11 高電圧ケーブル(ケーブル)
13 筒状壁部、バーリング加工部(保護手段)
14 巻き返し部、カーリング加工部(保護手段)
15 被覆部材(保護手段)
61 フロア貫通穴
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの電力でモータを駆動して走行する電気自動車に関する。特に、バッテリーのケーブルが車体のフロアを貫通した構造を有する電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に優しい自動車として、蓄電池、燃料電池等のバッテリーの電力でモータを駆動して走行する電気自動車が注目されている。この電気自動車には、駆動源として専らモータのみを有する電気自動車のほか、駆動源としてモータおよび内燃機関を有するハイブリッド車両なども含まれる。
【0003】
図9は、バッテリーパック(バッテリー)7と、バッテリーパック7に接続された高電圧ケーブル11と、駆動源としてのモータMG1,MG2およびエンジン(内燃機関)2と、を備えたハイブリッド車両20の概略構成を示している。
【0004】
この図9に示すハイブリッド車両20は、後輪5R,5Rの後方に大きなラッゲージスペースを備えており、このラッゲージスペース21にバッテリーパック7が設置されている。バッテリーパック7に接続された高電圧ケーブル11は、フロアパネル22に形成されたフロア貫通穴221を上から下に貫通して車両前方に向けて配置され、その先でインバータ10に接続されている。上記バッテリーパック7の電力は、高電圧ケーブル11およびインバータ10を介してモータMG1,M2に供給される。なお、符号3は動力分割機構であり、符号4はトランスアクスルであり、符号5F,5Fは前輪である。
【0005】
このように、バッテリーパックに接続された高電圧ケーブルがフロアパネルを貫通した構造を有する電気自動車は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−247064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図10に示すように、コンパクトカー20Aでは、ラッゲージスペース21が狭いため、ラッゲージスペース21に十分な大きさのバッテリーパック7を設置することができない。この場合、バッテリーパック7はリヤシートの下などに設置される。また、スペースの制約により、高電圧ケーブル11を挿通するフロア貫通穴221もリヤシートの下などに設けられ、しかも、そのフロア貫通穴221はバッテリーパック7の側方に設けられることがある。
【0008】
ところが、フロア貫通穴221がバッテリーパック7の側方に設けられると、車両の側面衝突時に、そのフロア貫通穴221は、衝突物とバッテリーパック7との間で圧壊し易くなる。また、高電圧ケーブル11は、図11に示すように、フロア貫通穴221の尖った周縁に囲まれているため、フロア貫通穴221が圧壊すると、フロア貫通穴221の尖った周縁が高電圧ケーブル11に食い込んで、その高電圧ケーブル11は、断線などの大きな損傷を受け易くなる。
【0009】
本発明はかかる問題に鑑みて創案されたものであり、バッテリーのケーブルがそのバッテリーの側方で車体のフロアを貫通した構造を備える電気自動車において、車両の側面衝突時にフロア貫通穴が衝突物とバッテリーパックとの間で圧壊されてしまっても、ケーブルが断線等の大きな損傷を受け難くすることができる電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するための手段として、本発明の電気自動車は、以下のように構成されている。
【0011】
すなわち、本発明の電気自動車は、車体のフロア上に設置されたバッテリーと、前記バッテリーに接続されたケーブルと、前記車体のフロアの前記バッテリーの側方に形成されて、前記ケーブルが挿通されたフロア貫通穴と、を備えており、前記フロア貫通穴が圧壊する時に、前記ケーブルが前記フロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧を低減する保護手段が設けられたことを特徴としている。
【0012】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴が圧壊しても保護手段によってケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減されるので、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【0013】
また、前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁において前記車体のフロアから筒状に突出した筒状壁部であることが好ましい。
【0014】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴の周縁に筒状壁部が形成されているため、フロア貫通穴が圧壊してもケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減され、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【0015】
また、前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁にバーリング加工が施されることにより形成されたバーリング加工部であることが好ましい。
【0016】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴の周縁にバーリング加工部が形成されているため、フロア貫通穴が圧壊してもケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減され、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【0017】
また、前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁において穴径方向へ巻き返された巻き返し部であることが好ましい。
【0018】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴の周縁に巻き返し部が形成されているため、フロア貫通穴が圧壊してもケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減され、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【0019】
また、前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁にカーリング加工が施されることにより形成されたカーリング加工部であることが好ましい。
【0020】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴の周縁にカーリング加工部が形成されているため、フロア貫通穴が圧壊してもケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減され、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【0021】
また、前記保護手段は、前記フロア貫通穴内で前記ケーブルを被覆した被覆部材であることが好ましい。
【0022】
かかる構成を備える電気自動車によれば、フロア貫通穴内で、被覆部材がケーブルを被覆しているため、フロア貫通穴が圧壊してもケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減され、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電気自動車によれば、フロア貫通穴が圧壊しても保護手段によってケーブルがフロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧が低減されるので、ケーブルが大きな損傷を受ける可能性が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両(電気自動車)における各部の配置を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に関する、図1のA―A断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両(電気自動車)における各部の配置を示す図であって、側面衝突時の状態を示す図である。
【図4】第1の実施の形態に関する、図3のB―B断面図である。
【図5】第2の実施の形態に関する、図1のA―A断面図である。
【図6】第2の実施の形態に関する、図3のB―B断面図である。
【図7】第3の実施の形態に関する、図1のA―A断面図である。
【図8】第3の実施の形態に関する、図3のB―B断面図である。
【図9】従来例のハイブリッド車両(電気自動車)における各部の配置を示す図である。
【図10】コンパクト型ハイブリッド車両(電気自動車)における各部の配置を示す図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の電気自動車について図面を参照して説明する。ここで、電気自動車はバッテリーと駆動源としてのモータとを搭載し、バッテリーが供給する電力によりモータを駆動して走行する車両を意味する。また、モータ以外の駆動源を有する車両も上記電気自動車に含まれる。例えば、モータの他に内燃機関を搭載し、その内燃機関の駆動力も利用して走行するハイブリッド車両なども上記電気自動車に含まれる。
【0026】
本実施形態では、駆動源としてモータおよび内燃機関を搭載したハイブリッド車両を上記電気自動車の例に挙げて説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両1における各部の配置を示す図である。この図1に示すハイブリッド車両1は、駆動源としてエンジン2およびモータ・ジェネレータMG1,MG2を備えている。エンジン2およびモータ・ジェネレータMG1,MG2が発生する駆動力は、動力分配機構3、トランスアクスル4等を介して駆動輪5F,5Fに伝達される。なお、モータ・ジェネレータMG1は主に発電機として機能し、モータ・ジェネレータMG2は主にモータとして機能する。
【0028】
ハイブリッド車両1のリヤシート8の下の床面を形成するフロアパネル(車体のフロア)6上に、バッテリーパック(バッテリー)7が設置されている。このバッテリーパック7は、高電圧ケーブル11を介してインバータ10と接続されている。バッテリーパック7内には、バッテリー等が収容されている。
【0029】
上記高電圧ケーブル11は、フロアパネル6において上記バッテリーパック7の側方に形成されたフロア貫通穴61に挿通されている。バッテリーパック7に接続された高電圧ケーブル11は、フロア貫通穴61を上から下へ挿通されてフロアパネル6の下に配置され、車両前方のインバータ10に接続されている。
【0030】
図3に示すように、フロア貫通穴61は、車両の側面衝突時、つまり、このハイブリッド車両1の側面に他の車両などの物体が衝突する時、衝突物12とバッテリーパック7との間で圧壊する可能性がある。
【0031】
しかし、このハイブリッド車両1では、フロア貫通穴61が圧壊する時に、当該フロア貫通穴61の周縁が高電圧ケーブル11に与える接触面圧を低減する保護手段が設けられており、この保護手段によって高電圧ケーブル11が断線等の大きな損傷を受ける可能性が低減されるようになっている。以下、この保護手段について複数の実施形態を例に挙げてより具体的に説明する。
【0032】
[第1の実施形態]
本実施形態では、図2に示すように、フロア貫通穴61の周縁においてフロアパネル6から筒状(例えば円筒状)に突出した筒状壁部13が形成されており、この筒状壁部13が上記保護手段として機能する。
【0033】
上記筒状壁部13は、例えば、フロアパネル6に貫通穴を明けて、バーリング加工を施すことにより形成されるバーリング加工部とすることができる。図2においては、筒状壁部13はフロアパネル6の上方に突出しているが、フロアパネル6の下方に突出させた筒状壁部としてもよい。
【0034】
上記のように、フロア貫通穴61の周縁には、筒状壁部13が形成されているため、図3および図4に示すように、車両の側面衝突時に、フロア貫通穴61が衝突物12とバッテリーパック7との間で圧壊されることがあっても、高電圧ケーブル11がフロア貫通穴61の周縁から受ける接触面圧が低減される。このため、高電圧ケーブル11が断線等の大きな損傷を受ける可能性も低減される。
【0035】
[第2の実施形態]
本実施形態では、図5に示すように、フロア貫通穴61の周縁において穴径方向へ巻き返された巻き返し部14が形成されており、この巻き返し部14が上記保護手段として機能する。
【0036】
上記巻き返し部14は、例えば、フロアパネル6に貫通穴を明けて、カーリング加工を施すことにより設けられるカーリング加工部とすることができる。図5においては、巻き返し部14はフロアパネル6の上方に形成されているが、フロアパネル6の下方に形成した巻き返し部としてもよい。
【0037】
上記のように、フロア貫通穴61の周縁には、巻き返し部14が形成されているため、図3および図6に示すように、車両の側面衝突時に、フロア貫通穴61が衝突物12とバッテリーパック7との間で圧壊されることがあっても、高電圧ケーブル11がフロア貫通穴61の周縁から受ける接触面圧が低減される。このため、高電圧ケーブル11が断線等の大きな損傷を受ける可能性も低減される。
【0038】
[第3の実施形態]
本実施形態では、図7に示すように、フロア貫通穴61は従来例のフロア貫通穴221と同様であるが、フロア貫通穴61内で、被覆部材15が高電圧ケーブル11を被覆している。この被覆部材15が上記保護手段として機能する。
【0039】
被覆部材15の材料は、例えば、フロアパネル6との相性が良く、対候性、強度に優れた樹脂材を用いることが望ましい。しかし、この樹脂材に限定されることなくその他の材料を用いてもよい。
【0040】
被覆部材15は、常にフロア貫通穴61内に留まって高電圧ケーブル11を保護できるように、高電圧ケーブル11に対して固定されていることが望ましい。被覆部材15の高電圧ケーブル11への固定は、例えば接着剤にて行うことができる。
【0041】
上記のように、フロア貫通穴61内で、被覆部材15が高電圧ケーブル11を被覆しているため、図3および図8に示すように、車両の側面衝突時に、フロア貫通穴61が衝突物12とバッテリーパック7との間で圧壊されることがあっても、フロア貫通穴61の周縁は被覆部材15を介して高電圧ケーブル11を圧迫することとなる。このため、高電圧ケーブル11がフロア貫通穴61の周縁から受ける接触面圧は低減され、高電圧ケーブル11が断線等の大きな損傷を受ける可能性も低減される。
【0042】
[他の実施形態]
第1の実施の形態において説明した筒状壁部13は、バーリング加工以外の施工によっても設けることができる。例えば、フロアパネル6に貫通穴を明けて、その貫通穴に筒状部材を溶接等により固着することによって筒状壁部13を設けることもできる。この場合、突出方向はフロアパネル6の上方または下方の何れでもよい。また、フロアパネル6に明けた貫通穴に筒状部材を挿入し、この筒状部材を溶接等により上記貫通穴に固着することで筒状壁部をフロアパネル6の上下に突出したものとすることもできる。
【0043】
また、フロア貫通穴61の周縁において既述の筒状壁部13又は巻き返し部14を設けるとともに、フロア貫通穴61内で、高電圧ケーブル11を被覆部材15で被覆したものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、バッテリーとモータを搭載し、バッテリーが供給する電力でモータを駆動して走行する電気自動車であって、バッテリーのケーブルがフロアパネルを貫通した構造を有する電気自動車に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 ハイブリッド車両(電気自動車)
6 フロアパネル(車体のフロア)
7 バッテリーパック(バッテリー)
11 高電圧ケーブル(ケーブル)
13 筒状壁部、バーリング加工部(保護手段)
14 巻き返し部、カーリング加工部(保護手段)
15 被覆部材(保護手段)
61 フロア貫通穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロア上に設置されたバッテリーと、
前記バッテリーに接続されたケーブルと、
前記車体のフロアの前記バッテリーの側方に形成されて、前記ケーブルが挿通されたフロア貫通穴と、
を備える電気自動車であって、
前記フロア貫通穴が圧壊する時に、前記ケーブルが前記フロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧を低減する保護手段が設けられたことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
請求項1に記載の電気自動車において、
前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁において前記車体のフロアから筒状に突出した筒状壁部であることを特徴とする電気自動車。
【請求項3】
請求項1に記載の電気自動車において、
前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁にバーリング加工が施されることにより形成されたバーリング加工部であることを特徴とする電気自動車。
【請求項4】
請求項1に記載の電気自動車において、
前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁において穴径方向へ巻き返された巻き返し部であることを特徴とする電気自動車。
【請求項5】
請求項1に記載の電気自動車において、
前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁にカーリング加工が施されることにより形成されたカーリング加工部であることを特徴とする電気自動車。
【請求項6】
請求項1に記載の電気自動車において、
前記保護手段は、前記フロア貫通穴内で前記ケーブルを被覆した被覆部材であることを特徴とする電気自動車。
【請求項1】
車体のフロア上に設置されたバッテリーと、
前記バッテリーに接続されたケーブルと、
前記車体のフロアの前記バッテリーの側方に形成されて、前記ケーブルが挿通されたフロア貫通穴と、
を備える電気自動車であって、
前記フロア貫通穴が圧壊する時に、前記ケーブルが前記フロア貫通穴の周縁から受ける接触面圧を低減する保護手段が設けられたことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
請求項1に記載の電気自動車において、
前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁において前記車体のフロアから筒状に突出した筒状壁部であることを特徴とする電気自動車。
【請求項3】
請求項1に記載の電気自動車において、
前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁にバーリング加工が施されることにより形成されたバーリング加工部であることを特徴とする電気自動車。
【請求項4】
請求項1に記載の電気自動車において、
前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁において穴径方向へ巻き返された巻き返し部であることを特徴とする電気自動車。
【請求項5】
請求項1に記載の電気自動車において、
前記保護手段は、前記フロア貫通穴の周縁にカーリング加工が施されることにより形成されたカーリング加工部であることを特徴とする電気自動車。
【請求項6】
請求項1に記載の電気自動車において、
前記保護手段は、前記フロア貫通穴内で前記ケーブルを被覆した被覆部材であることを特徴とする電気自動車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−25863(P2011−25863A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175204(P2009−175204)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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