説明

電気貯湯容器

【課題】真空断熱材による断熱効果を十分に発揮した省エネが図れるようにする。
【解決手段】外ケース2に内容器3として真空二重容器を収容して器体1をなし、器体1の開口12を内容器3の口部3aと併せ開閉する蓋体13と、内容器3内の内容液を加熱する加熱源11と、内容器3の外まわりに設けられた真空断熱材131と、を備え、真空断熱材131と内容器3との間に所定の隙間201を設けたことにより、上記の目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外ケースに内容器を収容して器体をなし、この器体の開口を内容器の口部と併せ開閉する蓋体と、内容器内の内容液を加熱する加熱源と、内容器の外まわりに設けられた真空断熱材とを備えた電気貯湯容器に関するものであり、例えば家庭用の電気ポットなどに利用される。
【背景技術】
【0002】
電気ポットは家庭や職場、食堂などで広く使用され、四六時中使用状態に置かれることもある。一方では、環境問題や省資源の面から省エネルギーが叫ばれるなか、電気ポットでのヒータによる高い消費電力が改善の対象になってきている。
【0003】
そこで、収容した内容液を加熱源で加熱し湯沸しや保温を行う内容器の外まわりに真空断熱材を設けることが行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。このように特許文献1〜3に記載のものは内容器を真空断熱材で囲うので、非真空断熱材で囲うものよりは保温性がよくその分省エネ性を高められる。
【特許文献1】特許第3513006号公報
【特許文献2】特許第3596486号公報
【特許文献3】特開2001−161565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記のような真空断熱材は、心材を外袋で覆って内部を真空にしたもので、外袋は樹脂フィルム、樹脂・金属箔ラミネートフィルム(例えば、ナイロン・PET・アルミ箔・無延伸ポリプロピレン)などで構成され、心材にはシリカやパーライトなどの無機粉末、あるいはグラスウールなどの無機繊維、硬質ウレタンフォーム、発泡フェノール樹脂などが用いられている。
【0005】
しかし、真空断熱材は内容器に密着していて、内容器側と外ケース側とで大きな温度差ができ、加熱源、内容器、真空断熱材の内容器側部分まわりで温められた高温空気が、真空断熱材の低温な外ケース側部分に接すると結露し、これが下方へ伝い落ちて電装部の機能を損ないかねない問題がある。
【0006】
また、真空断熱材は組み付ける際などの取り扱い時に外力によって外袋が損傷したり穴があいてしまい、真空断熱効果が失われてしまうことがときとしてあるが、そのような事態の発生は確認しにくくそのような製品が万一にも市場に出回ればユーザへの信用にかかわる。そこで、外袋には金属箔をラメネートしたフィルムが多用されるが、特許文献1〜3に記載のもののように内容器の胴回りに巻きつけるように設けるのでは、内容器の熱が真空断熱材の外袋に直接伝わり、金属箔の層にて反内容器側に拡がり、外まわりに放熱してしまいやすい。このため、せっかくの真空断熱材の真空による断熱効果を保温性の向上に生かしきれないものとなっている。
【0007】
しかも、真空断熱材は内容器に密着しているので、予め筒形に保形したものを嵌め合わせるのは困難で作業能率が低下するし、真空断熱材の外袋を損傷しかねない。これを、真空断熱材を内容器に巻き付けて装着するのでは巻き付け状態に保持する付帯作業なしには、内容器と他の部材との組み合わせ作業が困難になるし、真空断熱材を損傷しかねない問題がある。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の真空断熱材は、断熱性を有しない金属製で胴部がストレートなまま開口した内容器と組み合わせただけのもので、蓋体内に断熱材を設けた例を示しているが、内容器の口部を通じた上方への熱の逃げを防止しにくい。しかも、真空断熱材は内容器の胴部外まわりに配置しただけであるため、内容器の上側および下側に逃げやすい熱が四方へ逸散するのを防止することはできない。
【0009】
本発明の目的は、真空断熱材による断熱効果を十分に発揮した省エネが図れる電気貯湯容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の電気貯湯容器は、外ケースに内容器として真空二重容器を収容して器体をなし、この器体の開口を内容器の口部と併せ開閉する蓋体と、内容器内の内容液を加熱する加熱源と、内容器の外まわりに設けられた真空断熱材と、を備え、真空断熱材と内容器との間に所定の隙間を設けたことを特徴としている。
【0011】
このような構成の電気貯湯容器では、真空二重容器である内容器自体と、その外まわりにある真空断熱材とによる二重の真空断熱に、内容器および真空断熱材間の所定の隙間での空気断熱が加わって格段に高い保温性を発揮しながら、真空断熱材は前記隙間によって内容器からの熱伝導を受けて内容器と反対の側に熱を逃がすようなことがない分だけさらに保温性が高まり、しかも、真空断熱材の内容器側の内周面と反内容器側の外周面とに温度差が生じるのを低減して真空断熱材の外周面に結露するような問題を回避することができ、真空断熱材が組み立て上内容器と接触し合うことを避けやすい。
【0012】
真空二重容器である内容器の胴部内径よりも小さく絞った口部の内径側への張り出しによる内容器内から口部を通じた熱の上方への放射域を制限する第1制限部に加え、真空断熱材の内容器の口部よりも高くする上方への延長によって内容器の口部外での熱の側方まわりへの放射域を制限する第2制限部を設けると、
内容器の口部に設けた第1制限部が内容器の胴部内径から内側へ張り出している範囲で内容器内の熱が上方に放散するのを真空二重構造にて遮断し、内容器内からその口部を通じた上方への熱の放射域を制限することができ、真空断熱材の第2制限部が内容器の口部よりも上方へ延長している範囲で、内容器の口部外に出た熱が側方まわりへ放散するのを真空断熱構造にて遮断し、内容器の口部外での熱の側方への放射域を制限することができる。
【0013】
真空二重容器である内容器は、一重底部に当がった加熱源よりも真空空間を下方に延長した環状凸部を有し、この環状凸部よりも真空断熱材を低くする下方への延長により加熱源から側方まわりへの熱の放熱域を制限する第3制限部を設けると、
内容器は一重底部に加熱源を当がっていることで内容液を加熱するのに真空二重構造が邪魔して加熱効率が低下するのを防止するのに併せ、真空空間を下方に延長した環状凸部によって加熱源からの熱を環状凸部の内側に篭らせやすくしながら、真空断熱材の第3制限部が前記環状凸部よりも下方に延長している範囲で加熱源および環状凸部内側の熱の篭り域から側方まわりへの熱の放散を真空断熱構造にて遮断し、加熱源および環状凸部内側の熱の篭り域から側方まわりへの熱の放射域を制限することができる。
【0014】
真空断熱材の第2制限部の真空二重容器である内容器に対する上方への張り出し量Bは、内容器の第1制限部の内側への張り出し量Aよりも大きく設定すると、
内容器の口部での第1制限部の内側への張り出し量Aは、内容器の胴部内径Dとの差が大きいほど内容器の口部を通じた上方への熱の放散域を大きく制限することはできるが、張り出し量Aを大きくする分だけ、内容器口部の張り出し端が真空断熱材の第2制限部上端とでなす、口部外での熱の側方への熱の放散を二重に遮断する口部外での水平線からの遮断角度が低くなるのを、張り出し量Aよりも張り出し量Bが大きいことにより、前記遮断角度αがほぼ45°を上まわって、内容器軸線との間の熱放射域βを90°−αの範囲に狭めることができる。
【0015】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明で明らかになる。本発明の各特徴は、それ単独で、あるいは可能な限り種々な組合せで複合して用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電気貯湯容器によれば、内容器自体と真空断熱材による二重の真空断熱に、それらの間の隙間での空気断熱が加わり、しかも、内容器から真空断熱材への熱伝導による熱の反内容器側への逃げを抑えて、特許文献1〜3に記載のものに比し保温性が格段に高く省エネ性に優れたものとなる。また、真空断熱材の外周面側が内周側に比し温度が低くなって結露しその結露水が伝い落ちて器体内底部の電装部を損なうことや漏電する危険を防止できる。さらに、真空断熱材が組み立て上内容器と接触し合うことを避け損傷しにくくし、また組み立てやすいものとなる。
【0017】
内容器の口部の第1制限部が内側へ張り出した遮熱作用により口部を通じた上方への熱の放射域を制限し、真空断熱材の第2制限部が内容器の口部から上方へ延長した遮熱作用により口部外に出た熱の側方への放射域を制限するので、保温性、省エネ性がさらに高まる。
【0018】
内容器において一重底部に加熱源を当がって真空二重容器での加熱効率を高めながら、真空空間を下方に延長した環状凸部により加熱源からの熱を篭らせやすく、真空断熱材の第3制限部が環状凸部から下方へ延長した遮熱作用により加熱源および環状凸部での熱の篭り域から側方まわりへの熱の放射域を制限するので、保温性、省エネ性がさらに高まる。
【0019】
口部での第1制限部の内側への張り出し量Aを可及的に大きくして、しかも、この張り出し量Aよりも第3制限部の張り出し量Bの方が大きいことで、第1、第2制限部による内容器内からの熱の遮断角度αが45°を上まわって、保温性、省エネ性がさらに高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態について図1〜図6を参照しながら詳細に説明し、本発明の理解に供する。
【0021】
本実施の形態は、家庭用の電気ポットの場合の一例であり、断熱容器、具体的にはステンレス鋼製の真空二重容器を内容器として外ケースに収容して器体を構成し、蓋体により開閉できるようにした基本構成を有したものとしている。しかし、本発明はこれに限定されることはなく、内容器自体の断熱構造の有無は自由に選択することができる。もっとも、ステンレス鋼は金属の中で熱伝導性が低く真空二重容器とすることで内容器自体の保温性を高めるのに有効であり、かつ曲げ剛性、強度が十分であり、しかも防錆効果を持つので、飲料用の電気貯湯容器には好適である。
【0022】
本実施の形態の電気ポットは既述し図1、図2に示すように、外ケース2に内容器3として真空二重容器を収容して器体1をなしているが、この器体1の開口12を内容器3の口部3aと併せ開閉する蓋体13と、内容器3内の内容液を加熱する加熱源としてのヒータ11と、内容器3の外まわりに設けられた真空断熱材131と、を備え、真空断熱材131と内容器3との間に所定の隙間201を設けている。これにより、真空二重容器である内容器3自体と、その外まわりにある真空断熱材131とによる二重の真空断熱に、内容器3および真空断熱材131間の所定の隙間201での空気断熱が加わって格段に高い保温性を発揮しながら、真空断熱材131は前記隙間201によって内容器3からの熱伝導を受けて内容器3と反対の側に熱を逃がすようなことがない分だけさらに保温性が高まる。しかも、真空断熱材131の内容器3側の内周面と反内容器3側の外周面とに温度差が生じるのを低減して真空断熱材131の外周面に結露するような問題を回避することができる。また、真空断熱材131が組み立て上内容器3と接触し合うことを避けやすい。この結果、内容器3自体と真空断熱材131による二重の真空断熱に、それらの間の隙間201での空気断熱が加わり、しかも、内容器3から真空断熱材131への熱伝導による熱の反内容器3側への逃げを抑えて、特許文献1〜3に記載のものに比し保温性が格段に高く省エネ性に優れたものとなる。また、真空断熱材131の外周面側が内周側に比し温度が低くなって結露が生じその結露水が伝い落ちて器体1内底部の電装部を損なうことや漏電する危険を防止できる。さらに、真空断熱材131が組み立て上内容器3と接触し合うことを避け損傷しにくくし、また組み立てやすいものとなる。
【0023】
特に、真空断熱材131と内容器3との間に所定の隙間201を形成するための位置決め部203を器体1の非金属部202に設けている。それには、真空断熱材131の内径は内容器3の外形よりも大きいことが必須となり、位置決め部203の外径も内容器3の外径よりも大きくすることで、真空断熱材131と位置決め部203との軸線方向での嵌まり合いないしは係合を邪魔することなく簡単に実現する。
【0024】
以上のようにして、内容器3の外まわりに設けられる真空断熱材131が、内容器3との間に形成される所定の隙間201での内容器3からの熱伝導のない空気断熱との二重断熱構造を、器体1の非金属部202がなす位置決め部203による内容器3からの熱伝導を抑えられる位置決めにて、空気断熱に有利なより小さな所定の隙間201を確保して実現するので、内容器3まわりでの真空断熱材131による断熱効果を高められる。しかも、位置決めは真空断熱材131と内容器3と接触なく位置決め部203との限られた接触によって達成されるので、予め筒状に保形したものを組み付けて損傷を及ぼすことなく簡単に位置決めし保持できる。従って、本実施の形態では、内容器3の外まわりに真空断熱材131と隙間201による空気断熱との二重断熱構造を、内容器3からの熱伝導を抑えられる位置決めにて空気断熱に有利なより小さな所定の隙間201を確保して実現でき、内容器3まわりでの真空断熱材131による従来よりも高い断熱効果にてさらなる省エネが図れる。また、位置決めは予め筒状に保形したものを組み付けて損傷を及ぼすことなく簡単に位置決めし保持できるので、真空断熱材131を使用するにもその安全を図りやすい利点がある。そして、真空構造を有した真空断熱材131および断熱性のある金属製の真空二重容器からなる内容器3の併用によって保温性をさらに高められる。
【0025】
また、位置決め部203は、器体1の外ケース2と内容器3とを連絡する非金属部202である合成樹脂製の肩部材6により真空断熱材131を径方向に位置決めし、前記肩部材6と器体1の外ケース2の非金属製部202である合成樹脂製の底部材111との間で真空断熱材131を上下方向に位置決めするものである。これにより、器体1の組み立て工程での底部材111を組み付ける前の倒立状態にて筒状に保形した真空断熱材131を肩部材6の位置決め部203への軸線方向の嵌め合わせを伴い受止められるようにして径方向の位置決めと上端側の保持が無理無く簡単に達成され、その後の底部材111の組み付けによって真空断熱材131の下端側を肩部材6との間で保持して上下方向の位置決めが無理無く簡単に達成される。しかも、真空断熱材131の上下方向での位置決めを利用して真空断熱材131と内容器3との間の隙間201を上下で塞いで空気の対流をさらに抑制することができる。また、真空断熱材131のガタツキや位置ずれを防止することができる。
【0026】
これにより、本実施の形態では、また、径方向と上下方向との位置決めにより真空断熱材131のガタツキや位置ずれを防止して内容器3まわりの断熱性をそこなったり、真空断熱材131が損傷するようなことを防止するのに併せ、真空断熱材131と内容器3との間の隙間201を上下で塞いで空気の対流を抑制し保温性、省エネ性をさらに高められる。
【0027】
以上のような本実施の形態において、真空断熱材131とステンレス鋼製の内容器3との組み合わせにおいて、本発明者のした実験からは0.8W/h程度の省エネ効果が得られ、従来の外ケース2にステンレス鋼製の内容器3を組み合わせた電気ポットの場合、内容液を沸騰させた後加熱を停止したままでも6時間経過後でなお60℃程度の温度を確保できる保温性能を有し省エネ効果は0.5W/h程度であったのに対して格段に向上している。
【0028】
本実施の形態では、さらに、図4、図5に示すように、真空断熱材131に対する径方向の位置決め部203は、器体1の外ケース2と内容器3とを連絡する肩部材6がなす外ケース2側の外周壁6aの直径線上2箇所に設けられてハンドル204を起伏できるように軸受するハンドル軸受部205の内側突出部205aとしての左右のリブ形状部分を含んでおり、既設のハンドル軸受部205を真空断熱材131の径方向の位置決めに共用できる。また、図3、図5に示すように、器体1内に内容器3の底部から延びて内容器3と外ケース2との胴部間を立ちあがり、器体1内の前部上方に固定された異常姿勢時止水部134を経て器体1外に下向きに臨む吐出口25dに通じ、電動ポンプ26や手動ポンプであるベローズポンプ50などのポンプによる、あるいは器体1を前傾させるなどによる吐出操作に応じ内容液を器体1外に吐出する吐出路25を備え、真空断熱材131に対する径方向の位置決め部203として、器体1の外ケース2と内容器3とを連絡する肩部材6がなす外ケース2側の内周壁6bの前記蓋体13の後部を開閉できるようにヒンジピン120によりヒンジ連結する蓋軸受部122の内側突出部122aと、前記異常姿勢時止水部134とを含んでいて、既設の蓋軸受部122と吐出路25における異常姿勢時止水部134とを真空断熱材131の径方向の位置決めに共用できる。
【0029】
ここに、一対のハンドル軸受部205、205と、蓋軸受部122および異常姿勢時止水部134と、は図5に示すように互いに直交する位置にあって、真空断熱材131を径方向に位置決めするのに十分であり、他の径方向の位置決め部203は省略することができる。この結果、位置決め部203が周方向に少なくなる分だけ、筒状の真空断熱材131を周方向に並ぶ位置決め部203との軸線方向の嵌め合い部が少なくなりその分位置決め作業が楽になるし、真空断熱材131を損傷しにくいものとなる。
【0030】
さらに詳述すると、内容器3が曲げ剛性および強度共に高い金属製、それもステンレス鋼製であることにより壁厚および真空空間63の層が小さくてよくスリムであり、かつ上記のように内容器3との間に極小さな隙間201を設定して設けられる真空断熱材131が、既述した位置決めによって外ケース2との間の最小隙間も小さくして、全体の嵩ばりを抑えながら上記のようなそ高い保温力、省エネ性を発揮することができる。ヒータ11は内容器3の一重底部3cに当てがわれることで加熱効率を高め、一重底部3cに吐出路25を接続することで内容器3との接続構造を簡略化している。この吐出路25の途中に前記電動ポンプ26が設けられ、内容液を電動にて吐出できるようにしている。これに併せ、前記ベローズポンプ50を内容器3の口部3aに通じる器体1の開口12を開閉できるように覆う蓋体13に設けて、押圧板61による押圧操作で内容器3内に加圧空気を吹き込み内容液を加圧して吐出路25を通じ押し出し外部に吐出させられるようにしている。
【0031】
吐出路25の立上がり部25aは透明管としてそこでの液量が器体1の図2に示す液量表示窓62から透視できるようにしている。しかし、吐出路25の立ち上がり部25aの上部に吐出流によって回転する羽根125aとこの羽根125aの回転数を検出するフォトカプラ125bとからなる流量センサ125を設け、吐出の開始、終了、吐出流量、吐出量、残量などが自動的に検出できるようにしている。
【0032】
ところで、内容器3を持った電気ポットにおいて沸騰した内容液をヒータ11による加熱なしに放置したときの魔法瓶保温状態での保温特性は、口部3aの開口径の大きさにほぼ反比例し、保温力増大の面からは口部3aの開口径を極力小さくするのが好適である。しかし、それには制限がある。例えば内容器3内を洗浄や拭き取りなどのお手入れをすることを考えると、大人の人の手、特にこぶしが入るには80mm程度が限度であり、100mm程度になると作業しやすく、120mm程度を越えると作業が自由になる。また、蓋体13のベローズポンプ50を収容している部分を進入部13aとして口部3a内に進入させることにより、内容器3内の空気を口部3a外からできるだけ遠ざけて熱が上部へ逃げるのを抑え、かつ、ベローズポンプ50を収容した蓋体13が外方に大きく張り出さないようにできる。さらに、口部3aの開口径が内容器3の胴よりも小さくなる部分は絞り加工により形成するが、口部3aの開口径が小さければ小さいほど絞り加工が困難である。
【0033】
また、内筒4の内面にフッ素コーティングや研磨処理などを施すのに、ガンやノズルなどの器具が入らないといけないし、処理が均一であるためには器具を自由に動かせることも必要である。従って、口部3aの開口径Dが小さいほど処理は困難になるし、処理できても時間が掛かったり均一に処理できないといった問題がある。また、フッ素コーティング前の内面をブラスト処理して荒らしフッ素コート層の付着力を高める工程においては、内筒4の内に吹き付けたブラスト材が内筒4外に戻り難く作業性が悪くなる。例えば、口部3aの開口径が100mmを切るとコーティング材を吹き付けるガンが内筒4内に入らなくなり、フッ素コーティングは不可能になる。
【0034】
このような事情から従来は、保温特性および各種良し悪し性との関係を総合判断して、お手入れ性、小型化性、絞り加工性・コスト性、および内筒4の内面の加工・処理の容易性のいずれも満足できる限度となる120mmを開口径の下限とするのが好適として、内筒4を既述した問題のある大きい角度で立ち上がる絞り形状として実現している。
【0035】
これに対して、本実施の形態では図3に示すように、内容器3の口部3aが胴部3bの内径よりも小さい開口径にて器体1の樹脂製の肩部材6がなす開口12に接続され、器体1の開口12部に設けた前記蓋体13で開閉されるものとするのに、内容器3は真空空間63を胴部3bの上端から胴部3bの内側へほぼ横向きに肩部3dをなして屈曲し胴部3b内径よりも小さい口部3aを形成したものとしている。このように、曲げ剛性および強度共に高い金属製であることにより壁厚および真空空間63の層が小さくてよくスリムでありながら高い保温力を発揮する金属製の内容器3を採用するのに、内容器3の胴部3bの上端から胴部3bの内側へほぼ横向きに肩部3dをなして屈曲し、胴部3b内径よりも小さい口部3aを形成していることにより、口部3aの絞り度を従来程度とし、あるいはそれより大きくして保温性の大きなものとしても、従来のもののように内筒胴から口部に向けて大きな角度で立ち上がり内容器3の上部容積を狭める絞り形状に比し、内容器3の上部容積を狭めるようなことのない鉤型形状となるので、満水位101から口部3aまでの高さHを従来のものよりも小さくして、満水位101と蓋体13との間の空間を大きくし自然吐出を防止できる。
【0036】
内容器3の肩部3dは、その内筒胴4aと内筒肩部4b3との境界部に内側に凹陥した段部4b2を形成している。これにより、内容器3の口部3aに押圧力が働くと胴部3b上端から口部3aまでほぼ横向きに延びる肩部3dの基部に応力が集中しやすいところを、内筒胴4aと内筒肩部4b3との境界部にて内側に凹陥した段部4b2によって肩部3dの基部の曲げ剛性を高められるので、肩部3dがその基部を基点にして伏倒するような変形を防止することができる。
【0037】
内容器3の肩部3dは、内筒胴4aに接合される前記内筒肩部4b3、段部4b2を持った内筒肩部材4bと、外筒胴5bと接合される外筒肩部材5cとの2部材よりなり、相互で前記口部3aをなして接合している。これにより、内容器3の肩部3dが胴部3bとは独立した2部材の接合によって中空形状の容器肩部材3d1に容易に形成され、それら2部材が内筒胴4aおよび外筒胴5bに接合されることで真空空間63を胴部3b上端から内側にほぼ横向きに延ばす肩部3dが胴部3bとの間の絞り加工なしに簡単に形成できる。
【0038】
また、内筒肩部材4bに形成した上向きの内周壁4b1が外筒肩部材5cに形成した下向きの内周壁5c1の外面に嵌合して接合され前記口部3aを形成している。これにより、内筒肩部材4bの上向きの内周壁4b1と外筒肩部材5cの下向きの内周壁5c1との接合が位置あわせ、位置調節しやすい重ね合わせ接合にして、しかも口部3a内周にできる重ね合わせによる接合段部3a2が下向きとなって口部3aを通じ外部から目視されない利点があり、この接合段部3a2が口部3aの蓋体13により閉じられる部分よりも内側となって蓋体13とのシールに隙間ができるようなことを回避することができる。
【0039】
また、内容器3は図1に示すように真空空間63の胴部3bから一重底部3cの外まわりまで達する底部への回り込み部63aを有し、その内側がヒータ11を当てがった一重底部3cとなっている。この一重底部3cは上方へ窪ませた下向きの凹部3eとしてあり、この凹部3eの深さ分だけヒータ11の位置が内容液側に突出するし、ヒータ11の設置域の内容液との接触面積が多くなって加熱効率がさらに向上する。前記凹部3eによる内筒4内への突出部と回り込み部63aとの間に上向きの凹部84が環状に形成されており、吐出路25を通じて吐出される内容液がその凹部84内に幾分残されるように吐出路25の流入端25eを一重底部3cの上に適度な高さで開口させてある。これによって、流入端25eが内筒4内に突出している分だけ内容液が吐出されずに残り、空焚き防止になる。
【0040】
一重底部3cに当てがったヒータ11の背部には、図1に示すように金属製の遮熱板87が設けられ、内容器3の外筒5の環状底部5eの下面に溶接などして取り付けた取付金具88にねじ89によりねじ止めし、遮熱板87とヒータ11との間に金属製のバックアップ板92および図示しないばね部材を挟み込み、このばね部材によってヒータ11を一重底部3cに押し付け密着させている。
【0041】
外ケース2は樹脂製の底部材111と前記肩部材6との間に金属製の胴部112を挟み込む組み立て構造と、肩部材6が形成する器体1の図3に示すような開口12の内周下部に設けたフランジ113に対し、内容器3をその肩部3dに溶接付けなどした取り付け金具114を介しねじ115により上方から取り付けた取り付け構造と、内容器3の底部と底部材111とを溶接付けなどした取付金具88およびねじ89を共用することにより連結した連結構造とで外ケース2を一体化し、また、分離可能としている。
【0042】
図示する例では、さらに、図3、図4に示すように肩部材6の開口12のフランジ113の上部に前記取り付け構造部の上方からあてがってフック118aによって係合させたカバーリング118により容器口3a1の天面外周半部にまで跨って覆ってある。カバーリング118は外周部にシール部材119を装着して肩部材6の開口12の内周との間をシールするとともに、開口12の内周途中に形成した内側に向け下る傾斜段部12aに連続した1段階または2段階傾斜上面を持つようにしてあり、開口12内に落ち、あるいは流れ入る内容液などは肩部材6の開口12の傾斜段部12aからカバーリング118上へと流れ、容器口3a1の内周半部の上に落ちて内容器3内に案内できるようにしている。
【0043】
図1に示すように肩部材6の後部の蓋軸受部122には蓋体13に設けたヒンジピン120を着脱できるように受け入れて軸受する開放部122a1と、この開放部122a1をばね123の付勢で閉じるストッパ124を設けてあり、ストッパ124を開にすると蓋体13を半開きにした状態でヒンジピン120を蓋軸受部122から蓋体13を伴い出し入れでき、これが蓋体13の着脱となる。また、蓋体13は既述し図1、図2に示すように内容器3の口部3a内への進入部13aを有し、口部3aは蓋体13が開閉されるときに進入部13aが描く包絡線に対する最近接位置にあるようにしている。このように、蓋体13の一部を進入部13aとして内容器3の口部3a内への進入を図ることによって、口部3aから熱が逃げるのを邪魔して保温力を高めるのと同時に、蓋体13に設ける蒸気通路225や手動ポンプであるベローズポンプ50を収容するなどで蓋体13に必要となる大きな容量を十分に確保しながら器体1外部への膨らみを抑えられる。しかも、内容器3の前記のように開口径を小さくした口部3aが、蓋体13の開閉時に前記進入部13aの輪郭が描く包絡線の直近にあるので、蓋体13の開閉を邪魔しない限度一杯まで開口径を小さくして熱をより逃げにくくすることができる。
【0044】
また、蓋体13の前記進入部13aの基部まわりには蓋体13と進入部13aに当てがった金属製の内蓋126との間に挟み込んだシール部材127が設けられ、口部3aの天面内周側半部ないしは天面内周側半部と口部3aの内周のコーナ部に圧接して口部3aを閉じるようにしている。これにより、満水位101と進入部13aとの間の蒸気通路225の内側開口225aを内容液が閉じないための安全空間に位置する空気が口部3aよりも外部へ大きく広がって熱が逃げやすくなるのを防止するので、保温力が向上する。
【0045】
また、前記電動ポンプ26およびベローズポンプ50などの手動ポンプの少なくとも一方を備えていると、電気貯湯容器を定置したまま内容液を吐出して使用することができ、近時大型化し持ち上げ難くなっている大型タイプのものに好適である。特に手動ポンプを備えているとヒータ11で加熱しない魔法瓶保温状態での使用時に通電なしに定置したままでの内容液の吐出ができ、省エネルギーや電源のないところでの使用に好適である。
【0046】
蓋体13は内容器3からの蒸気を外部に逃がす蒸気通路225が形成され、蓋体13の内容器3内に面する位置の内側開口225aと、外部に露出する外面に形成された外側開口225bとの間で通じるように形成されている。蒸気通路225の途中には、器体1が横転して内容液が進入してきた場合にそれを一時溜め込み、あるいは迂回させて、外側開口225bに至るのを遅らせる安全経路225cを設けてある。これにより、器体1が横転して内容液が蒸気通路225を通じて外部に流出するまでに器体1を起こすなどの処置ができるようになる。また、蒸気通路225には器体1の横転時に、蒸気通路225に進入しようとし、あるいは進入した内容液が先に進むのを阻止するように自重などで働く転倒時止水弁225dが適所に設けられている。図示する実施例では内側開口225aの直ぐ内側の一か所に設けてある。
【0047】
蓋体13の前部には閉じ位置で肩部材6側の係止部19に係合して蓋体13を閉じ位置にロックするロック部材21が設けられ、蓋体13が閉じられたときに係止部19に自動的に係合するようにばね22の付勢によってロック位置に常時突出するようにしている。これに対応して蓋体13にはロック部材21を後退操作して前記ロックを解除するロック解除部材23が設けられている。ロック解除部材23は図1に示すように軸24によって蓋体13に枢支されたレバータイプのものとされ、前端23aを親指などで押し下げて反時計回りに回動させることでロック部材21をばね22に抗して後退させてロックを解除し、続いてロック解除操作で起き上がった後端23bを他の指で引き上げることによりロックを解除された蓋体13を持ち上げこれを開くことができる。
【0048】
なお、図示していないが、外ケース2の底部と内容器3の底部との間の空間、あるいは外ケース2の胴部112と内容器3の胴部3bとの間に、前記電動ポンプ26とともにヒータ11を通電制御する制御基板を収容する一方、内容器3の一重の底部3cの中央には温度センサ9が下方から当てがわれ、内容液のその時々の温度を検出して、湯沸しや保温モードで内容液を加熱制御する場合の温度情報を得るようにしている。
【0049】
器体1の肩部材6の前部に嘴状に突出する突出部31の上面には操作パネル32が設けられ、モード設定などの操作部や、操作に対応する表示、あるいは動作状態を示す表示を行うようにしてある。操作パネル32の下方、つまり内側には前記操作および表示に対応する信号の授受および動作を行う操作基板33が設けられて操作パネル32と協働して外部からの操作や外部への表示が行えるようにする。吐出路25の上部は器体1の突出部31と外ケース2側のパイプカバー部2dとの間に入った部分で逆U字状のユニット25cを構成し、このユニット25cに異常姿勢時止水部134としての転倒時止水弁134aおよび前傾時止水弁134bと、吐出路25の吐出口25dを設けている。吐出口25dはパイプカバー部2dを通じて下向きに外部に開口している。
【0050】
外ケース2の底部材111の下向きの凹部111a内には下方から回転座環37が回転できるように嵌め合せて設けられ、器体1がテーブル面などに定置されたときに回転座環37の上で軽く回転して向きを変えられるようにしてある。
【0051】
このような具体的な構造を有した器体1において、特に、真空断熱材131の上端部を径方向に位置決めする非金属部202である肩部材6に形成する位置決め部203としては、肩部材6の器体1の開口12に内容器3の口部3aを接続する内容器3側の内周壁6bの上部に向け拡径する外周面に軸線方向から嵌め合せて最上部で隙間なく嵌合し合い、その全周において径方向の位置決めを達成しており、この隙間の生じない嵌合を真空断熱材131の上端部に接着、溶着などして取り付けた樹脂製の枠材207の内周と肩部材6の内周壁6bの外周とでなし、肩部材6の内外外周壁6a、6b間に下向きに形成した複数の放射状のリブ6cによって真空断熱材131の上端部を前記の嵌合位置の受け止め、傾斜面との嵌合に過不足が生じるのを防止している。また、この位置にて真空断熱材131の上端部に対するハンドル軸受部205、205と、異常姿勢時止水部134および蓋軸受部122とによる外径での径方向の位置決めとが行われるようにしている。この位置決めも真空断熱材131の上端に付帯している枠材207の外周との間で行っている。従って、真空断熱材131が柔軟な材料にて形成されていても、その径方向の位置決めは枠材207を介し確固に行えるので位置決めによる位置精度は格段に高く、真空断熱材131と内容器3との間の隙間201を空気の対流を抑制するのに適した微小隙間として組立上の取り扱い時や使用上の外力による振れなどに対し位置ずれして隙間が片寄ったり、他に接触したり引っかかったりして損傷するような問題を回避することができる。しかも、真空断熱材131に対する径方向の位置決めは内周側か外周側かの一方として有効である。
【0052】
さらに、真空断熱材131の下端部は底部材111の凹部111aを形成している部分の上面とその内周側に一体形成している凸壁111cとが形成している鉤型段部111bによって、それに保持している環状の発泡ウレタンゴムなどよりなる弾性リング208によって弾性的に受け止め、上記肩部材6のリブ6cとの間で弾性的に上下方向にも無理無く位置決めできるようにしている。これにより、上下方向の位置決めが甘くて真空断熱材131にガタツキが生じたり位置ずれしたりすることがなく、また位置決めが過剰で真空断熱材131に歪みが生じて内容器3や外ケース2に接触したり、またそれによって損傷したりするようなことを確実に防止することができる。特に、弾性リング208が独立発泡組織を有したものであると、真空断熱材131に併せた断熱性を発揮することができ省エネの向上に繋がる。また、弾性リング208は底部材111の前記鉤型段部111bに続く放射状のリブ111dによっても支持されより安定化が図られている。しかも、底部材111は前記鉤型段部111bから立ち上がる放射状のリブ111eを真空断熱材131の下端部の内周に係合させて真空断熱材131を径方向にも位置決めしている。しかし、これに代えてリブ111dの一部を立ち上げ真空断熱材131の外周に係合させることで真空断熱材131の下端部を外径側から径方向に位置決めするようにもできる。
【0053】
しかし、このような真空断熱材131の下端部での径方向の位置決めを省略することもでき、その結果、底部材111を装着する前の器体1を倒立させた姿勢で、真空断熱材131を挿入して下向きの上端部を肩部材6側の位置決め部203に嵌め合わせた後、底部材111を装着する際に真空断熱材131の下端部を径方向の嵌め合いなしに弾性リング208により押圧保持すればよいだけでよく、組み立てが簡単になる。このためには、肩部材6側での真空断熱材131の上端部に対する径方向の位置決めによって真空断熱材131の軸線が振れない嵌め合わせとするのが好適であり、それには、真空断熱材131と肩部材6側の位置決め部203との軸線方向の嵌合代寸法をある程度長くし、また周方向にも安定する嵌まり合い幅を有しているのが好適となる。
【0054】
なお、弾性リング208が発泡ウレタン樹脂、特に独立発泡組織の発泡樹脂であると、真空断熱材131に併せ高い断熱性を発揮して保温性、省エネ性の向上に貢献することができる。
【0055】
ここで、真空断熱材131は既に知られ、以後に開発される種々の真空断熱構造のものを採用できるが、図3に示すように真空二重容器である内容器3において、その胴部3b内径よりも小さく絞った口部3aの内径側への張り出しによる内容器3内から口部3aを通じた熱の上方への放射域を制限する第1制限部Eとしているのに対し、真空断熱材131の内容器3の口部3aよりも高くする上方への延長によって内容器3の口部3a外での熱の側方まわりへの放射域を制限する第2制限部Fを形成している。これにより、内容器3の口部3aに設けた第1制限部Eが内容器3の胴部3b内径から内側へ張り出している範囲で内容器3内の熱が上方に放散するのを真空二重構造にて遮断し、内容器3内からその口部3aを通じた上方への熱の放射域を制限することができ、真空断熱材131の第2制限部Fが内容器の口部よりも上方へ延長している範囲で、内容器3の口部3a外に出た熱が側方まわりへ放散するのを真空断熱構造にて遮断し、内容器3の口部3a外での熱の側方への放射域を制限することができる。この結果、内容器3の口部3aの第1制限部Eが内側へ張り出した遮熱作用により口部3aを通じた上方への熱の放射域を制限し、真空断熱材131の第2制限部Fが内容器3の口部3aから上方へ延長した遮熱作用により口部3a外に出た熱の側方への放射域を制限するので、保温性、省エネ性がさらに高まる。
【0056】
さらに、真空断熱材131の第2制限部Fの真空二重容器である内容器3に対する上方への張り出し量Bは、内容器3の第1制限部Eの内側への張り出し量Aよりも大きく設定してある。これにより、内容器3の口部3aでの第1制限部Eの内側への張り出し量Aは、内容器3の胴部3bの内径Dとの差が大きいほど内容器3の口部3aを通じた上方への熱の放散域を大きく制限することはできるが、張り出し量Aを大きくする分だけ、内容器3の口部3aの内側への張り出し部である第1制限部Eの張り出し端が真空断熱材131の第2遮断部F上端とでなす、口部3a外での熱の側方への熱の放散を二重に遮断する口部3a外での水平線からの遮断角度αが低くなるのを、張り出し量Aよりも張り出し量Bが大きいA<Bの関係であることにより、前記遮断角度αがほぼ45°を上まわって、内容器3の軸線との間の熱放射域βを90°−αの範囲に狭めることができる。しかも、熱放射域βが狭まった上にその内容器3の軸線への収束点は満水位101近くまで上昇し、より放熱し難い条件となっている。ここに、軸線上の収束点の高さは内容器3の口部3aの口径の大きさに依存し、口径が小さいほど収束点は上側に移動する。
【0057】
また、図6に示すように真空二重容器である内容器3は、一重底部3cに当がった加熱源としてのヒータ11よりも真空空間63を下方に延長した環状凸部5eを外筒5に有し、この環状凸部5eよりも真空断熱材131を低くする下方への延長によりヒータ11から側方まわりへの熱の放熱域を制限する第3制限部Gとしている。これにより、内容器3は一重底部3cにヒータ11を当がっていることで内容液を加熱するのに真空二重構造が邪魔して加熱効率が低下するのを防止するのに併せ、真空空間63を下方に延長した環状凸部5eによってヒータ11からの熱を環状凸部5eの内側に篭らせやすくしながら、真空断熱材131の第3制限部Gが環状凸部5eよりも下方に延長している範囲でヒータ11および環状凸部5e内側の熱の篭り域から側方まわりへの熱の放散を真空断熱構造にて遮断し、ヒータ11および環状凸部5e内側の熱の篭り域から側方まわりへの熱の放射域を制限することができる。
【0058】
この結果、内容器3において一重底部3cにヒータ11を当がって内容器3での加熱効率を真空空間63の邪魔なしに高めながら、真空空間63を下方に延長した環状凸部eによりヒータ11からの熱を篭らせやすく、真空断熱材131の第3制限部Gが環状凸部5eから下方へ延長した遮熱作用によりヒータ11および環状凸部5eでの熱の篭り域から側方まわりへの熱の放射域を制限するので、保温性、省エネ性がさらに高まる。
【0059】
以上から図2に示す内容器3の高さH1と真空断熱材131の高さH2との関係はH1<H2となっている。ここで、弾性リング208は発泡樹脂、特に独立発泡樹脂であることにより、真空断熱材131に匹敵する断熱特性を発揮でき、図6に示す下方への延長量Gに含めて保温効果を評価することもできる。
【0060】
なお、真空断熱材131の環状凸部5eに対する下方への延長量を図6に示すようにCとすると、熱の逃げが内容器3の下部よりも上部の方が大きいことから、B>Cとして器体1の同じ高さ制限内において内容器3の上部での側方まわりへの放熱制限がより大きく保温性、省エネ性に有利なものとすることができ、張り出し量Bは蓋体13における器体1の開口12内での厚さ分を利用して高さスペースのロスなく実現でき、器体1の高さが特に大きくなるようなことがない。この結果、以上の実施の形態ではA<B>Cの関係となる。しかし、器体1のさらなるコンパクト化や蓋体13の厚みの違いに対してはA>B>Cの関係とすることもできる。
【0061】
また、器体1のスリム化には内容器3が金属製で変形強度が高く真空空間63を極く狭く設定して問題がない上、内容器3と真空断熱材131との間の隙間201の間隔L1もより小さくして空気の対流阻止による空気断熱効果を高めながら器体1のスリム化に貢献でき、真空断熱材131と外ケース2との間隔L2も空気断熱にはなるが、内容器3、隙間201、真空断熱材131によって十分な保温性が確保できるので、むしろ器体1の取り扱い上万一にも真空断熱材131胴部と外ケース2胴部とが接触して熱伝導による外部への放熱が生じたり、真空断熱材131に外力が及んで損傷し真空断熱を失してしまうのを防止する上で、L2>L1の関係とするのが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は家庭用の電気ポットに実用して、保温性、省エネ性のさらなる向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る電気貯湯容器の1つの例としての電気ポットを示す断面図である。
【図2】図1の電気ポットの半部を断面して見た正面図である。
【図3】図1の電気ポットの上部の断面図である。
【図4】図2の電気ポットの上部の一部断面図である。
【図5】図1の電気ポットの胴部を横断して見た下面図である。
【図6】図2の電気ポットの底部の一部断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 器体
2 外ケース
3 内容器
3a 口部
3b 胴部
4 内筒
5 外筒
11 ヒータ
12 開口
13 蓋体
63 真空空間
120 ヒンジピン
131 真空断熱材
201 隙間
E 第1制限部
F 第2制限部
G 第3制限部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外ケースに内容器として真空二重容器を収容して器体をなし、この器体の開口を内容器の口部と併せ開閉する蓋体と、内容器内の内容液を加熱する加熱源と、内容器の外まわりに設けられた真空断熱材と、を備え、真空断熱材と内容器との間に所定の隙間を設けたことを特徴とする電気貯湯容器。
【請求項2】
真空二重容器である内容器の胴部内径よりも小さく絞った口部の内径側への張り出しによる内容器内から口部を通じた熱の上方への放射域を制限する第1制限部に加え、真空断熱材の内容器の口部よりも高くする上方への延長によって内容器の口部外での熱の側方まわりへの放射域を制限する第2制限部を設けた請求項1に記載の電気貯湯容器。
【請求項3】
真空二重容器である内容器は、一重底部に当がった加熱源よりも真空空間を下方に延長した環状凸部を有し、この環状凸部よりも真空断熱材を低くする下方への延長により加熱源から側方まわりへの熱の放熱域を制限する第3制限部を設けた請求項1、2のいずれか1項に記載の電気貯湯容器。
【請求項4】
真空断熱材の第2制限部の真空二重容器である内容器に対する上方への張り出し量Bは、内容器の第1制限部の内側への張り出し量Aよりも大きく設定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気貯湯容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−5950(P2008−5950A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177542(P2006−177542)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】