説明

電気部品の製造方法

【課題】接続端子をケースから引き出す際の作業性を大幅に向上し、そのため製造コストを大幅に低減することが可能な電気部品の製造方法を提供する。また、従来のようにコストアップを招くことなく、数多くの接続端子を引き出すことが可能な電気部品の製造方法を提供する。
【解決手段】ケース本体11にコネクタ部4を取着して構成されるケース1内に電子部品2、3を収納して樹脂を充填する電気部品の製造方法である。連結部22で連結された複数の接続端子21をコネクタ部4の開口部8に圧入する。この状態で連結部22を分離することによって単数または複数の接続端子21を電気的に独立させる。独立した連結部22を、電子部品2、3を接続するための接合部25として機能させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンデンサ素子や抵抗などの電気部品を収納したケースに一体的にコネクタ部を形成した電気部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ素子のような電気部品を収納したケースに一体的にコネクタ部を形成した電気部品は、公知である(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1の電気部品は、コンデンサ素子に一対の接続端子を接続し、ケース底部に設けた導出開口部に、接続端子を挿入してケース外部へと導出すると共に、ケース内部に樹脂を充填した構造のものである。また、特許文献2の電気部品は、ケースを、両側の開口したケース本体と、その両側壁とに別体に構成し、両側壁に接続端子を圧入した状態で、両側壁をケース本体に取着し、コンデンサ素子と接続端子とを接続して樹脂を充填した構造のものである。
【特許文献1】特開平2002−83735号公報
【特許文献2】実公平2−29706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の電気部品は、いずれも接続端子が、ケース底部、あるいはケース側壁に設けた導出開口部から外部へと引き出される。これら従来例において、各導出開口部から引き出されるのは、いずれの場合にも、一本の接続端子であるが、接続端子は、通常は、剛性の低いものである。そのため、導出開口部からの接続端子の引き出し作業に際しては、その折曲、変形を防止するのに細心の注意を必要とし、引き出し作業に多くの手数を要していた。特に、特許文献2の従来例では、接続端子を導出開口部に圧入しているので、圧入作業に細心の注意と多大な手数を要することになる。また、数多くの接続端子を引き出してその利便性を向上しようとしても、それに応じた本数の接続端子を個々に引き出す必要があるので、このような要請に応えようとすると、大幅なコストアップを招くこととなっていた。
【0004】
この発明は上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、接続端子をケースから引き出す際の作業性を大幅に向上し、そのため製造コストを大幅に低減することが可能な電気部品の製造方法を提供することにある。また、従来のようにコストアップを招くことなく、数多くの接続端子を引き出すことが可能な電気部品の製造方法を提供することもこの発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこでこの発明の電気部品の製造方法は、ケース本体11にコネクタ部4を取着して構成されるケース1内に電子部品2、3を収納して樹脂を充填する電気部品の製造方法において、連結部22で連結された複数の接続端子21をコネクタ部4の開口部8に圧入し、この状態で連結部22を分離することによって単数または複数の接続端子21を電気的に独立させると共に、独立した連結部22を、電子部品2、3を接続するための接合部25としていることを特徴としている。
【0006】
また、上記電気部品の製造方法では、連結部22を分離して接合部25とした後、接合部25を折り曲げ加工することを特徴としている。
【0007】
さらに、上記電気部品の製造方法では、上記接続端子21は、開口部8に圧入される圧入部23が、先端側の接続部24よりも幅広に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明の電気部品の製造方法によれば、各接続端子21を開口部8に圧入する際には、各接続端子21は連結部22によって相互に連結された状態となっている。そのため、圧入される部分23の剛性が従来よりも高くなることから、各接続端子21をケース1から引き出す際の作業性が向上し、製造コストを低減することが可能となる。それに加えて、一回の圧入作業で複数の接続端子21を圧入しているため、その製造を能率よく行うことができ、製造コストを低減することが可能となる。
【0009】
また、接続端子21において、圧入部23を接続部22よりも幅広にしているので、圧入時の剛性は、この点においても向上することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、この発明の電気部品の製造方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、図5に基づいて、概略構成について説明すると、この電気部品は、例えば、PBT樹脂製のケース1内にコンデンサ素子2と抵抗3とを収納し、エポキシ樹脂10を充填すると共に、ケース1に一体的にコネクタ部4を設けた構造を有している。
【0011】
上記コネクタ部4は、図1に示すように、端子部材20と、コネクタケース5(例えば、PBT樹脂製)とから成るものである。上記端子部材20は、図1(a)に示すように、並設された複数(図においては、5本)の接続端子21と、各接続端子21を一体的に連結する平板状の連結部22とから成るものである。すなわち、端子部材20は、平板から打ち抜き形成されたもので、連結部22から櫛歯状に複数の接続端子21が延設された形状のもので、各接続端子21においては、連結部22側に位置する基端部が幅広の圧入部23として形成され、また、それよりも先端側に位置する先端部が狭幅の接続部24として形成されている。一方、上記コネクタケース5は、図1(b)に示すように、上記端子部材20を取着する取付壁面6と、各接続端子21を取り囲む筒状ケース部7とを有し、上記取付壁面6には、上記端子部材20に設けた各接続端子21の圧入部23が圧入される導出開口部8が穿設されている。また、上記取付壁面6には、両側方及び下方に向けて、嵌合突縁9が突設されている。そして、上記端子部材20の各圧入部23を、上記コネクタケース5の導出開口部8に圧入することで、上記接続部24を、筒状ケース部7内に突出させた状態で上記コネクタ部4が組み立てられる。ここで留意する点は、図1(b)に示すように、端子部材20を取付壁面6に圧入した状態において、連結部22における接続端子21の延設側の端面と取付壁面6とは、連結部22の両端部では密接するものの、それ以外の内側においては、両者間に隙間Sが形成されているということである。これは、次に説明するスリット26の形成時に加工手段の逃げを設けておき、加工を容易化するためである。
【0012】
上記のような状態において、図1(c)のように、端子部材20の連結部22に複数のスリット26を設け、連結部22を各接続端子21毎に分離する。この作業によって、各接続端子21が電気的に分離され、分離された連結部22は、各接続端子21における接合部25として機能することになる。なお、図の実施形態においては、一組の接続端子21、21間の連結部22は分離されておらず、これら一組の接続端子21、21は連結部22によって共通接続された状態となっている。そして次いで、図2に示すように、特定の接合部25に必要な折り曲げ加工を施し、その後、図3に示すように、各接続端子21間において、所定の接合部25にコンデンサ素子2と抵抗3とを半田付けなどによって接続する。上記のように特定の接合部25に折り曲げ加工を施すのは、コンデンサ素子2と抵抗3とを上下に段差を設けた状態で取り付けるためである。
【0013】
図4、及び図5に示すように、ケース1を構成するケース本体11(例えば、PBT樹脂製)は、上記コネクタ部4の取り付けられる一方の側方が開口した概略直方体をした構造のもので、底壁12と、左右一対の側壁13、13と、上記コネクタ部4とは相対向する側壁14とを有している。上記コネクタ部4の取り付けられる開口部周りには、嵌合溝15が形成されている。そして、上記コネクタ部4の嵌合突縁9を、ケース本体11の嵌合溝15に嵌入することで、上記コネクタ部4をケース本体11に取り付ける。この場合、コネクタ部4の取付壁面6が、ケース本体11の側方開口部を覆い、ケース本体11と取付壁面(ケース壁面部)6とでケース1を構成する。そして、図5に示すように、ケース1内にエポキシ樹脂10を充填し、電気部品を構成する。
【0014】
上記電気部品の製造方法によれば、各接続端子21を導出開口部8に圧入する際には、各接続端子21は連結部22によって相互に連結された状態となっている。そのため、圧入される部分23の剛性が従来よりも高くなり、この結果、各接続端子21の接続部24をケース1から引き出す際の作業性が大幅に向上し、製造コストを大幅に低減することが可能となる。それに加えて、一度の圧入作業で複数の接続端子21を圧入しているため、その製造を能率よく行うことができ、製造コストを大幅に低減することが可能となる。しかも、ケース本体11とは別体に形成した取付壁面6に対して、接続端子21の圧入作業、連結部22の分離作業及び曲げ作業、コンデンサ素子2や抵抗3などの電子部品の接続作業を行うので、作業空間がケース内部のようには制限されず、そのためこの点においても製造作業能率を向上することが可能である。また、接続端子21において、圧入部23を接続部22よりも幅広にしているので、圧入時の剛性は、この点においても向上することになる。
【0015】
以上にこの発明の電気部品の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施形態においては、コネクタ部4は、ケース1の一方の側部にだけ設けた例を示しているが、コネクタ部4を、ケース1の両側に設けてもよい。また、電子部品としては、コンデンサ素子2や抵抗3に限らず、種々の部品を用いることができ、その個数も2個に限られる訳ではない。さらに、上記実施形態においては、コンデンサ素子2、抵抗3を各端子部材21に接続した状態で、ケース本体11にコネクタ部4を取り付けているが、ケース本体11にコネクタ部4を取り付けた状態でコンデンサ素子2、抵抗3を端子部材21に接続してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態である電気部品におけるコネクタ部の組み立て状態を示す図で、(a)は組み立て前の平面図、(b)は組み立て後の横断面図、(c)は連結部の分離後の横断面図である。
【図2】上記実施の形態の電気部品におけるコネクタ部の組み立て状態において接続端子の接合部の折り曲げ状態を示す図で、(a)は一部を断面で示す正面図、(b)一部を断面で示す平面図である。
【図3】上記実施の形態の電気部品におけるコネクタ部の組み立て完了状態を示す図で、(a)は一部を断面で示す正面図、(b)一部を断面で示す平面図である。
【図4】上記実施の形態の電気部品におけるコネクタ部とケース本体との組み立て状態を一部断面で示す平面図である。
【図5】上記実施の形態の電気部品における組み立て後(樹脂充填後)の状態を示す図で、(a)は一部を断面で示す正面図、(b)一部を断面で示す平面図である。
【符号の説明】
【0017】
1・・・ケース、2・・・コンデンサ素子、3・・・抵抗、4・・・コネクタ部、8・・・開口部、10・・・樹脂、11・・・ケース本体、21・・・接続端子、22・・・連結部、25・・・接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体(11)にコネクタ部(4)を取着して構成されるケース(1)内に電子部品(2)(3)を収納して樹脂を充填する電気部品の製造方法において、連結部(22)で連結された複数の接続端子(21)をコネクタ部(4)の開口部(8)に圧入し、この状態で連結部(22)を分離することによって単数または複数の接続端子(21)を電気的に独立させると共に、独立した連結部(22)を、電子部品(2)(3)を接続するための接合部(25)としていることを特徴とする電気部品の製造方法。
【請求項2】
連結部(22)を分離して接合部(25)とした後、接合部(25)を折り曲げ加工することを特徴とする請求項1の電気部品の製造方法。
【請求項3】
上記接続端子(21)は、開口部(8)に圧入される圧入部(23)が、先端側の接続部(24)よりも幅広に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2の電気部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−204879(P2008−204879A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41709(P2007−41709)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(390022460)株式会社指月電機製作所 (99)
【Fターム(参考)】