説明

電池システム

【課題】組電池ケースに発生した異常を簡便に検知することが可能な、電池システムを提供する。
【解決手段】複数の固体型素電池を有する組電池と、組電池を収納する組電池ケースと、組電池ケース内に充填された気体とを含み、気体によって組電池ケース内に生じた静水圧を用いて素電池を加圧する電池システムであって、組電池ケースに異常が発生した場合に組電池ケースの一部に変形を生じる変形手段と、変形を検知する検知手段とを備える、電池システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に収容された電池セルを加圧する電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の小型機器から自動車等の大型機器に至るまで、電源としての二次電池の需要が拡大しており、その性能の向上、特に大容量化が図られている。
【0003】
上記用途に用いられる二次電池には、少なくとも、正極及び負極、並びに、当該正極と負極との間に介在する電解質が備えられる。このうち電解質は、正極及び負極間のイオン伝導を行う媒体であり、液体の電解質又は固体の電解質が用いられている。
【0004】
二次電池の電解質として液体の電解質(以下において、「電解液」ということがある。)を用いた場合には、電解液が正極層や負極層の内部へと浸透しやすい。そのため、正極層や負極層に含有されている活物質と電解液との界面が形成されやすく、性能を向上させやすい。ところが、広く用いられている電解液は一般に可燃性であるため、安全性を確保するための措置を講じる必要がある。このほか、電解液が筐体から漏れ出す事態(液漏れ)を防止する措置等も講じる必要がある。
【0005】
一方、固体の電解質(以下において、「固体電解質」ということがある。)を用いる電池においては、上記液漏れの虞がない。また、固体電解質は一般に難燃性である。よって、上記措置を簡素化又は省略することが可能である。それゆえ、難燃性である固体電解質を含有する層(以下において、「固体電解質層」ということがある。)が備えられる形態の二次電池(以下において、「固体電池」ということがある。)が提案されている。さらに、内部抵抗を低減するために、正極層、固体電解質層、及び負極層が積層された方向に圧力をかけて上記各層をより強く密着させることにより、界面抵抗を低減する技術が提示されている。
【0006】
このような電池に関する技術として、例えば特許文献1には、リチウムを挿入脱離できる負極及び正極、非水電解液とこれらを収納するケースで構成された素電池(電池セル)を複数個組み合わせて組電池ケース(筐体)に収納してなる組電池において、上記素電池ケース外で、上記組電池ケース内の空間に気体、液体または固体粉末の少なくとも1種類、もしくはそれらの混合物質を充填することで組電池ケース内に生じる静水圧を用いて素電池を加圧することを特徴とするリチウムイオン二次電池が開示されている。特許文献1に開示されている電池によれば、ケース内に生じる静水圧を用いて素電池を加圧するため、各素電池にかかる圧力にばらつきが生じる事態を抑制できるとされる。よって一部の素電池が他の素電池よりも早く劣化する事態(局部劣化)を抑制できるので、組電池全体の性能低下、特にサイクル特性の低下を低減できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−214638号公報
【特許文献2】特開2006−128122号公報
【特許文献3】特開2007−66612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような静水圧を利用して素電池を加圧する電池においては、素電池が受ける圧力の値によって素電池の内部抵抗は変化し得る。よって、電池の性能を高めるためには、組電池ケース内部の静水圧を一定値以上とすることが好ましい。一方、電池の安全性を高める等の観点からは、上記静水圧を一定値以下とすることが好ましい。したがって、組電池ケース内の静水圧を所定の範囲内に管理することが求められる。特許文献1に開示されている電池においては、組電池ケース内の静水圧の管理を、歪みゲージを張り付けた密閉筐体を別途作製して組電池ケース内に配置し、当該密閉筐体の歪み量を計測することにより行っている。しかし、このような方法により静水圧を管理することは、システムを複雑化させ、コストの増大を招くという問題があった。かかる問題は、特許文献2や特許文献3に記載の技術を組み合わせたとしても、解決することが困難であった。
【0009】
そこで本発明は、組電池ケースに発生した異常を簡便に検知することが可能な、電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明は、複数の固体型素電池を有する組電池と、組電池を収納する組電池ケースと、組電池ケース内に充填された気体とを含み、気体によって組電池ケース内に生じた静水圧を用いて素電池を加圧する、電池システムであって、組電池ケースに異常が発生した場合に組電池ケースの一部に変形を生じる、変形手段と、変形を検知する、検知手段とを備えることを特徴とする、電池システムである。
【0011】
ここに、本発明において、「素電池」とは、一対の電極層と、該一対の電極層の間に配設された電解質層とを有する単位セルを意味する概念であり、複数の単位セルが接続及び/又は積層された集合体は含まない概念である。「一対の電極層」とは、正極層及び負極層の対を意味する。「間に配設され」とは、正極層と負極層との間に、電解質層が存在していることを意味し、電解質層と正極層及び/又は負極層との間に、イオン伝導性を有する他の層が介在していてもよいことを意味する。「固体型素電池」とは、素電池を構成する全ての層が固体状である素電池を意味する。すなわち固体型素電池が有する電解質層は、固体電解質層である。「組電池」とは、複数の素電池が直列及び/又は並列に接続されたことにより、一の電池として作用する電池を意味する。また、「静水圧」とは、気体によって、当該気体中に存在する任意の一点に対して全ての方向から付与される圧力を意味する。また、組電池ケースにおける「異常」とは、組電池ケース内部の圧力が所定の範囲を外れる事態を少なくとも包含する概念である。
【0012】
本発明において、検知手段が、接触作動型のセンサを有し、該センサが、変形手段により組電池ケースの一部が変形を生じた場合に、接触を発生する部位に備えられていることが好ましい。
【0013】
ここで、本発明において、センサが「接触作動型」であるとは、センサが検知対象に接触するための部位(接触子)を備え、接触子が検知対象と接触したこと、又は、接触子が検知対象に接触するとともに接触子に付与された外力によって接触子が変位したことに反応して、信号を出力するセンサであることを意味する。また、センサが「変形手段により組電池ケースの一部が変形を生じた場合に、変形を生じた箇所と接触する部位に備えられている」とは、組電池ケースが変形したときに初めてセンサが接触を検知して作動するような部位にセンサが備えられていることを意味する。
【0014】
また、本発明において、変形手段が、組電池ケースの一部において剛性を他の部位より低下させた部位であることが好ましい。
【0015】
また、本発明において、変形手段が反応する異常が、組電池ケース内部の圧力が所定の範囲から外れた事態であることが好ましい。
【0016】
また、検知手段が、接触により作動するセンサを有し、該センサが、変形手段により組電池ケースの一部が変形を生じた場合に、変形を生じた箇所と接触する部位に備えられている態様の本発明において、センサを、組電池ケース内部に配設してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、組電池ケースの変形を検知するので、組電池ケースに発生した異常を簡便に検知することが可能な、電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電池システム100を模式的に説明する断面図である。
【図2】固体型素電池10を模式的に説明する断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態にかかる電池システム200を模式的に説明する断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態にかかる電池システム300を模式的に説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明について、リチウムイオン二次電池を有し、一の筐体内に一の組電池ケースを備える形態を主に例にとって説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。図面では、一部符号の記載を省略することがある。また、以下において、特に断らない限り、「A〜B」とはA以上B以下を意味するものとする。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態にかかる電池システム100を模式的に説明する断面図である。図1に示すように、電池システム100は、組電池20と、組電池20を収容する組電池ケース30と、組電池ケース30の内部に充填された気体40と、組電池ケース30に備えられた変形手段50と、組電池ケース30を収容する筐体60と、筐体60に配設された接触作動型センサ70(検知手段)と、接触作動型センサ70に接続された制御手段80と、制御手段80に接続された通知手段90と、を有する。接触作動型センサ70は、筐体60内面に、変形手段50と近接するように配設されている。組電池20は、N個(N≧2)の固体型素電池10、…、10を有し、正極端子25及び負極端子26に接続されている。正極端子25及び負極端子26は、組電池ケース30に固定されており、少なくとも一部が組電池ケース30の外側に露出している。
【0021】
組電池20は、N個の固体型素電池10、…、10が積層により接続された、積層型の組電池である。図2は、一の固体型素電池10(k=1、…、N)を模式的に説明する断面図である。図2に示すように、固体型素電池10は、固体電解質層1と、固体電解質層1を挟持するように配設された正極層2及び負極層3と、正極層2の表面に配設された正極集電体4と、負極層3の表面に配設された負極集電体5と、を有する。組電池20においては、N個の固体型素電池10、…、10が、図2の紙面上下方向に、図2の紙面上側から下側へ向けて10、…、10と順に積層されたことにより、直列に接続されている。電池システム100においては、組電池20の最も外側の固体型素電池10の正極集電体4が正極端子25に接続されており、組電池20の最も外側の固体型素電池10の負極集電体5が負極端子26に接続されている。
なお、以下において、下付き添え字k(k=1、…、N)を省略することがある。
【0022】
固体電解質層1は、例えば固体電解質をプレス成型して作製したものを用いることができる。このほか、固体電解質を溶媒と混合してスラリー状にしたものを塗布して乾燥させることによって作製したものを用いることもできる。固体電解質層1は、独立して作製したものを用いることができるほか、後述する正極層2又は負極層3の表面に形成したものを用いることもできる。固体電解質層1が含有する固体電解質としては、リチウムイオン伝導性を有する公知の固体電解質を特に制限なく用いることができる。例えば、LiS−P等の硫化物固体電解質や、LiPO等の酸化物固体電解質等を用いることができる。
【0023】
正極層2は正極活物質を含有していれば良く、正極活物質に加えて、固体電解質を含有していてもよい。正極層2に含有される正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウムを用いることができ、固体電解質としては、リチウムイオン伝導性を有する公知の固体電解質(例えば、LiS−P等の硫化物固体電解質や、LiPO等の酸化物固体電解質)を用いることができる。正極層2にはこの他に、電子伝導パスを形成しやすくする公知の導電助剤(例えばアセチレンブラック)、及び、これらの物質を結着させる公知の結着剤(例えばポリフッ化ビニリデン)等が含有されていても良い。正極層2は、公知の方法によって作製することができる。正極層2は、後述する正極集電体4の表面に適切に形成されていれば、その形態は特に限定されるものではない。正極層2の厚さは、例えば5μm〜500μm程度とすることができる。
【0024】
負極層3は負極活物質を含有していれば良く、負極活物質に加えて、固体電解質を含有していてもよい。負極層3に含有される負極活物質としては、例えばグラファイトカーボンを用いることができ、固体電解質としては、リチウムイオン伝導性を有する公知の固体電解質(例えば、LiS−P等の硫化物固体電解質や、LiPO等の酸化物固体電解質)を用いることができる。負極層3にはこの他に、電子伝導パスを形成しやすくする公知の導電助剤(例えばアセチレンブラック)、及び、これらの物質を結着させる公知の結着剤(例えばポリフッ化ビニリデン)等が含有されていても良い。負極層3は、公知の方法によって作製することができる。負極層3は、後述する負極集電体5の表面に適切に形成されていれば、その形態は特に限定されるものではない。負極層3の厚さは、例えば5μm〜500μm程度とすることができる。
【0025】
正極集電体4や負極集電体5としては、固体状の電解質層を有する電池の正極集電体や負極集電体として適用できる集電体であればその材質等は特に限定されるものではなく、金属箔や金属メッシュ、金属蒸着フィルム等を用いることができる。例えば、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Cr、Zn、Ge、Inからなる群から選択される一以上の元素を含む金属材料からなる金属箔やメッシュ、或いは、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリプロピレンなどのフィルムやガラス、シリコン板等の上に上記金属材料を蒸着したもの等を用いることができる。正極集電体4及び負極集電体5の形態は特に限定されるものではなく、厚さは、例えば5μm〜500μm程度とすることができる。
【0026】
正極端子25や負極端子26としては、リチウムイオン二次電池の端子として適用できる端子であればその形態は特に限定されるものではなく、金属板や金属棒等を用いることができる。例えば、Cu、Au等の良好な導電性を有する公知の材料を用いることができる。
【0027】
組電池ケース30は、組電池20を収容し、かつ、後述する気体40を漏れ出さないように保持する部材である。気体40の圧力に耐えつつ、電池システム100全体を軽量化することを容易にする等の観点からは、組電池ケース30を構成する材料として、例えばアルミニウム等の金属材料を好ましく用いることができる。組電池ケース30には、後述する変形手段50が備えられる。
【0028】
気体40は、組電池20を静水圧によって加圧するために、組電池ケース30内部に充填された気体である。気体40は、組電池20の構成材料に対して不活性な気体であることが好ましい。そのような気体40としては、例えばアルゴン等を挙げることができる。気体40には、複数の気体成分を混合して用いてもよい。気体40の圧力は、20℃において0.1kgf/cm〜40kgf/cmとすることが好ましい。20℃における気体40の圧力を0.1kgf/cm以上とすることにより、組電池20を構成する各層間の密着度を高めることができるので、組電池20の内部抵抗を低減することが容易になる。また、20℃における気体40の圧力を40kgf/cm以下とすることにより、組電池ケース30が内部から圧壊して気体40が漏れ出す結果、組電池20に付与される静水圧が低下して組電池20の内部抵抗が増大する事態を抑制することが容易になる。
【0029】
変形手段50は、組電池ケース30の外板に設けられた、剛性を一部低下させた部分である。すなわち、変形手段50は、組電池ケース30の一部であって、組電池ケース30の他の部分よりも低い剛性を有する部分である。電池システム100においては、変形手段50は、例えば組電池ケース30を組み立てる前に、組電池ケース30を構成すべき外板の一部をプレスによって押し上げて凸部とすることにより形成することができる。該凸部の板厚は、プレスの際に板が引き伸ばされて周囲の板厚より薄くなる。そのため変形手段50は周囲よりも低い剛性を有する。
【0030】
上述のように、変形手段50は、組電池ケース30の外板において周囲よりも低い剛性を有する。よって、例えば、組電池ケース30内部の圧力(以下において、「内圧」ということがある。)が異常に上昇して、組電池ケース30の外部の圧力(以下において、「外圧」ということがある。)との差が所定の閾値を越えると、変形手段50は組電池ケース30の他の部分に優先して、組電池ケース30の外側に向けて膨らむように変形する。ここで、変形手段50が変形を開始するときの閾値となる、組電池ケース30の内圧と外圧との差(内圧−外圧。以下において、「内外圧力差」ということがある。)は、外圧の10%以上の値とすることが好ましい。すなわち、内圧が外圧よりも10%以上高くなったときに変形手段50が作動することが好ましい。内圧が外圧を10%以上上回ったときに変形手段50を稼働させることにより、温度等の外部要因により内外圧力差に変動が発生したときの誤作動を軽減させることが可能となる。
【0031】
筐体60は、組電池ケース30を収容して適切な位置に保持し、且つ、後述する接触作動型センサ70を適切な位置に保持する部材である。筐体60を構成する材料は特に制限されるものではないが、組電池20の充放電に伴って発生する熱を効率的に逃がす観点からは、良好な熱伝導率を有する材料を用いることが好ましい。そのような材料としては、アルミニウム等を例示することができる。
【0032】
接触作動型センサ70は、筐体60の内側に配設され、変形手段50の変形を検知する、検知手段である。このように接触作動型センサ70(検知手段)を組電池ケース30の表面以外の箇所に配設することにより、変形手段50の微小な変形をも検知することが容易になる。接触作動型センサ70は、後述する制御手段80に接続されており、接触作動型センサ70の出力は制御手段80に伝達される。接触作動型センサ70が作動に際し電源を必要とする場合には、組電池20が接続されている正極端子25及び負極端子26から、不図示の電源線を介して接触作動型センサ70に電力が供給される。接触作動型センサ70は、変形手段50に近接して配設されている。すなわち、接触作動型センサ70は、上述した組電池ケース30に備えられる変形手段50が変形した際に、当該変形手段50に係る部分と接触する位置に配設されている。平常時において、接触作動型センサ70と変形手段50との間には、所定の間隙が設けられていることが好ましく、当該間隙は、例えば1mm〜10mmとすることが好ましい。間隙を1mm以上とすることにより、異常によらない温度変化による組電池ケース30の自然な膨張を異常として誤検出する事態を抑制することが容易になる。また、間隙を10mm以下とすることにより、変形手段50の変形を迅速に検知することが容易になるので、組電池ケース30の内圧が異常に上昇したことを迅速に検知することが容易になる。
【0033】
制御手段80は、接触作動型センサ70、及び、後述する通知手段90を制御する。そのために、制御手段80は、接触作動型センサ70及び通知手段90の双方に接続されている。具体的には、制御手段80は、接触作動型センサ70からの出力信号を受け取って処理し、該出力信号が変形手段50の変形を検出したものであった場合には、後述する通知手段90にその旨を出力する。制御手段80がその作動に際して電源を必要とする場合には、組電池20が接続されている正極端子25及び負極端子26から、不図示の電源線を介して制御手段80に電力が供給される。制御手段80としては、マイクロコントローラ(マイコン)等の公知の制御手段を特に制限なく用いることができる。
【0034】
通知手段90は、制御手段80に接続されており、制御手段80の出力に従って、組電池ケース30に異常が検出された旨を使用者に通知する。通知手段90が作動に際し電源を必要とする場合には、組電池20が接続されている正極端子25及び負極端子26から、不図示の電源線を介して通知手段90に電力が供給される。通知手段90としては:電球、発光ダイオード(LED)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)等の発光素子;液晶モジュール、液晶パネル等の文字表示素子;圧電ブザー等の音響素子;振動素子;等を単独で、又は複数組み合わせて用いることができる。
【0035】
電池システム100においては、組電池ケース30内部における圧力の異常な上昇を、変形手段50の変形を接触作動型センサ70により検知することによって検出し、通知手段90によって使用者に通知する。ここで、組電池ケース30内部において圧力が異常に上昇し得る原因としては、過酷な高温環境での使用に伴う過熱や、短絡等の故障によって過大な電流が流れたことによる異常発熱によって気体40の示す圧力自体が上昇する事態のほか、組電池20内部での異常反応によってガスが発生し気密性の組電池ケース30の内圧を上昇させる事態等が考えられる。以下に、組電池ケース30内部において圧力が異常に上昇した場合における電池システム100の動作について説明する。
【0036】
何らかの原因により組電池ケース30内部の圧力が異常に上昇し、内外圧力差が上記所定の閾値を上回ると、組電池ケース30に設けられた変形手段50が、組電池ケース30の他の部位に優先して、外側に膨らむように変形する。変形手段50が変形すると、変形前の変形手段50に近接して筐体60に配設されていた接触作動型センサ70と、変形手段50とが接触を起こす。接触作動型センサ70が接触を検知すると、接触作動型センサ70の出力信号に変化が生じ、該変化を接触作動型センサ70に接続された制御手段80が検出する。制御手段80は、接触作動型センサ70から入力される信号に変化を検出すると、制御手段80に接続された通知手段90に信号を出力する。通知手段90は制御手段80からの出力に従い、組電池ケース30内部の圧力が異常に上昇した旨を使用者に通知する。電池システム100においては、組電池ケース30内部の圧力を直接監視する代わりに、組電池ケース30に備えられた変形手段50の変形を検知するので、組電池ケース30内部の圧力異常を簡便に検知することが可能となる。
【0037】
本発明に関する上記説明では、リチウムイオン二次電池である固体型素電池10、…、10を含む組電池20を有する形態の電池システム100を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。組電池を構成する各素電池を、リチウムイオン二次電池である固体型素電池以外の素電池とすることも可能である。例えば、高分子体に電解質ばかりでなく、溶媒まで保持させたいわゆるゲル状電解質タイプのリチウム二次電池である複数の素電池を含む組電池を有する形態の電池システムとすることも可能である。
【0038】
また、本発明に関する上記説明では、固体型素電池10、…、10が直列に接続された組電池20を有する形態の電池システム100を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。組電池を固体型素電池の並列接続によって構成された組電池を有する形態とすることも可能である。このほか、直列接続と並列接続とを組み合わせて構成された組電池を有する形態とすることも可能である。
【0039】
また、本発明に関する上記説明では、組電池ケース30を構成すべき外板の一部をプレスによって凸型に形成して剛性を一部低下させることにより構成された変形手段50を有する形態の電池システム100を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。本発明の電池システムにおける変形手段は、上記したプレス加工の他、異なる材料同士の溶接等による接合等の方法によって剛性を周囲より低下させることによっても構成することが可能である。また、組電池ケースの一の面について他の面よりも板厚を薄くすることにより、当該一の面の剛性を低下させることによって構成することも可能である。その場合、当該一の面が変形手段となる。すなわち、組電池ケース内圧の異常上昇によって、当該一の面の全体が組電池ケース外側に向かって膨らむように変形する。このほか、組電池ケースの剛性を一部低下させることをせず、組電池ケースを構成する全ての面を等しい板厚で構成することも可能であって、この場合には組電池ケース全体が変形手段となる。すなわち、組電池ケース内圧の異常上昇により、組電池ケース全体が外側に向かって膨らむように変形する。
【0040】
また、本発明に関する上記説明では、検知手段として接触作動型センサ70を有する形態の電池システム100を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。本発明の電池システムにおいては、検知手段が接触作動型センサ以外のセンサを有する形態とすることも可能である。接触作動型センサ以外に検知手段を構成し得るセンサとしては、例えば、ビームセンサ等の非接触型センサ等を挙げることができる。
【0041】
また、本発明に関する上記説明では、接触作動型センサ70(検知手段)が筐体60の内面に配設される形態の電池システム100を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。本発明の電子システムにおいては、検知手段は変形手段の変形を検知可能に配設されていればよい。したがって、センサと変形手段との所望の位置関係に応じて、筐体の内面に配設されたスペーサー等の位置決め手段を介してセンサが保持される形態とすることも可能である。
【0042】
また、本発明に関する上記説明では、接触作動型センサ70(検知手段)から制御手段80を介して通知手段90に信号が出力される形態の電池システム100を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。検知手段を構成するセンサ、及び通知手段の形態によっては、制御手段を介さずに検知手段から直接通知手段に信号が伝達されて通知手段が作動する形態とすることも可能である。例えば、検知手段が接触により導通状態となる形態のスイッチ型センサにより構成され、通知手段が通電により発光するLEDにより構成される場合、センサ(検知手段)とLED(通知手段)とを、制御手段を介さずに直接接続しても、センサ(検知手段)が接触を検知した際にLED(通知手段)を発光させることが可能である。
【0043】
また、本発明に関する上記説明では、接触作動型センサ70(検知手段)、制御手段80、及び通知手段90が必要とする電源が組電池20から供給される形態の電池システム100を例示した。当該形態によれば、部品点数を削減することが容易になり好ましい。ただし、本発明は当該形態に限定されるものではない。検知手段、制御手段、及び通知手段が必要とする電源を、本発明の電池システムが備える組電池以外の電源供給手段から供給する形態とすることも可能である。そのような電源供給手段としては、例えば、空気電池、液型電池や太陽電池等を挙げることができる。このような形態によれば、電池システムが備える組電池の充電状態に影響されることなく、組電池ケースの内圧の異常等の検知を行うことが可能となる。
【0044】
また、本発明に関する上記説明では、一の筐体60内部に一の組電池ケース30が備えられる形態の電池システム100を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。一の筐体内に、複数の組電池ケースが備えられる形態とすることも可能である。一の筐体内に複数の組電池ケースを備える場合、それぞれの組電池ケースが変形手段を備え、それぞれの変形手段に対応して、一の筐体内に複数個の検知手段が備えられることが好ましい。
【0045】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態にかかる電池システム200を模式的に説明する断面図である。図3に示すように、電池システム200は、組電池20と、組電池20を収容する組電池ケース30と、組電池ケース30の内部に充填された気体40と、組電池ケース30に備えられた変形手段50と、変形手段50に配設された接触作動型センサ71と、組電池ケース30を収容する筐体60と、筐体60に備えられた接触作動型センサ作動手段72と、接触作動型センサ71に接続された制御手段80と、制御手段80に接続された通知手段90と、を有する。接触作動型センサ作動手段72は、筐体60内面に、接触作動型センサ71に近接するように配設されている。組電池20は、正極端子25及び負極端子26に接続されている。正極端子25及び負極端子26は、組電池ケース30に固定されており、少なくとも一部が組電池ケース30の外側に露出している。
【0046】
電池システム200は、接触作動型センサ71を配設する位置を筐体60側ではなく変形手段50側(組電池ケース30側)とし、筐体60側には接触作動型センサ71を作動させるための部材である接触作動型センサ作動手段72を配設した以外は、上記した第1実施形態に係る電池システム100と同様の構成を有する。電池システム200においては、接触作動型センサ71及び接触作動型センサ作動手段72によって検知手段が構成されている。以下、電池システム200が上記した電池システム100と異なる点について、図3を参照しつつ説明する。
【0047】
接触作動型センサ71は、上記した接触作動型センサ70と同様の構成を有する接触作動型のセンサである。図3に示すように、接触作動型センサ71は、組電池ケース30に備えられた変形手段50の、組電池ケース30外側の表面に、接触子を外側に向けるように配設されている。接触作動型センサ71は、その出力信号を制御装置80に伝達できるように、制御装置80に接続されている。接触作動型センサ71がその作動に際し電源を必要とする場合には、組電池20が接続されている正極端子25及び負極端子26から、不図示の電源線を介して接触作動型センサ71に電力が供給される。
【0048】
接触作動型センサ作動手段72は、変形手段50が変形を生じた際に、上記した接触作動型センサ71と接触を生じ、接触作動型センサ71を作動させるための部材である。接触作動型センサ72は、接触作動型センサ71の接触子と接触を生じた際に接触作動型センサ71を確実に作動させることができればよく、例えば金属製や樹脂製の棒状部材等を用いることができる。接触作動型センサ作動手段72は、筐体60の内面において、接触作動型センサ71と近接した位置に配設されている。すなわち、接触作動型センサ作動手段72は、筐体60の内面において、変形手段50が変形を生じた際に、変形手段50の変形に伴って変位を生じる接触作動型センサ71と接触を生じる位置に配設されている。接触作動型センサ71と接触作動型センサ作動手段72との間には、平常時において所定の間隙が設けられていることが好ましい。当該間隙の好ましい範囲は、上記した電池システム100において接触作動型センサ70と変形手段50との間に設けられる間隙の好ましい範囲と同様である。
【0049】
以下に、組電池ケース30内部において圧力が異常に上昇した場合における電池システム200の動作について説明する。
【0050】
何らかの原因により組電池ケース30内部の圧力が異常に上昇し、内外圧力差が上記所定の閾値を上回ると、組電池ケース30に設けられた変形手段50が、組電池ケース30の他の部位に優先して、外側に膨らむように変形する。変形手段50が変形すると、当該変形に伴って、変形手段50に配設されている接触作動型センサ71が変位する。接触作動型センサ71が変位することにより、接触作動型センサ71と、接触作動型センサ71に近接して配置されていた接触作動型センサ作動手段72とが接触を起こす。接触作動型センサ71が接触を検知すると、接触作動型センサ71の出力信号に変化が生じ、該変化を接触作動型センサ71に接続された制御手段80が検出する。制御手段80は、接触作動型センサ71から入力される信号に変化を検出すると、制御手段80に接続された通知手段90に信号を出力する。通知手段90は制御手段80からの出力に従い、組電池ケース30内部の圧力が異常に上昇した旨を使用者に通知する。電池システム200においては、組電池ケース30内部の圧力を直接監視する代わりに、組電池ケース30に備えられた変形手段50の変形を検知するので、組電池ケース30内部の圧力異常を簡便に検知することが可能となる。
【0051】
本発明に関する上記説明では、リチウムイオン二次電池である固体型素電池10、…、10を含む組電池20を有する形態の電池システム200を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。組電池を構成する各素電池を、リチウムイオン二次電池である固体型素電池以外の素電池とすることも可能である。例えば、高分子体に電解質ばかりでなく、溶媒まで保持させたいわゆるゲル状電解質タイプのリチウム二次電池である複数の素電池を含む組電池を有する形態の電池システムとすることも可能である。
【0052】
また、本発明に関する上記説明では、固体型素電池10、…、10が直列に接続された組電池20を有する形態の電池システム200を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。組電池を固体型素電池の並列接続によって構成された組電池を有する形態とすることも可能である。このほか、直列接続と並列接続とを組み合わせて構成された組電池を有する形態とすることも可能である。
【0053】
また、本発明に関する上記説明では、組電池ケース30を構成すべき外板の一部をプレスによって凸型に形成して剛性を一部低下させることにより構成された変形手段50を有する形態の電池システム200を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。本発明の電池システムにおける変形手段は、上記したプレス加工の他、異なる材料同士の溶接等による接合等の方法によって剛性を周囲より低下させることによっても構成することが可能である。また、組電池ケースの一の面について他の面よりも板厚を薄くすることにより、当該一の面の剛性を低下させることによって構成することも可能である。その場合、当該一の面が変形手段となる。すなわち、組電池ケース内圧の異常上昇によって、当該一の面の全体が組電池ケース外側に向かって膨らむように変形する。このほか、組電池ケースの剛性を一部低下させることをせず、組電池ケースを構成する全ての面を等しい板厚で構成することも可能であって、この場合には組電池ケース全体が変形手段となる。すなわち、組電池ケース内圧の異常上昇により、組電池ケース全体が外側に向かって膨らむように変形する。
【0054】
また、本発明に関する上記説明では、検知手段として接触作動型センサ71を有する形態の電池システム200を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。本発明の電池システムにおいては、検知手段が接触作動型センサ以外のセンサを有する形態とすることも可能である。接触作動型センサ以外に検知手段を構成し得るセンサとしては、例えば、ビームセンサ等の非接触型センサ等を挙げることができる。
【0055】
また、本発明に関する上記説明では、接触作動型センサ71(検知手段)から制御手段80を介して通知手段90に信号が出力される形態の電池システム200を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。検知手段を構成するセンサ、及び通知手段の形態によっては、制御手段を介さずに検知手段から直接通知手段に信号が伝達されて通知手段が作動する形態とすることも可能である。例えば、検知手段が接触により導通状態となる形態のスイッチ型センサにより構成され、通知手段が通電により発光するLEDにより構成される場合、センサ(検知手段)とLED(通知手段)とを、制御手段を介さずに直接接続しても、センサ(検知手段)が接触を検知した際にLED(通知手段)を発光させることが可能である。
【0056】
また、本発明に関する上記説明では、接触作動型センサ71(検知手段)、制御手段80、及び通知手段90が必要とする電源が組電池20から供給される形態の電池システム200を例示した。当該形態によれば、部品点数を削減することが容易になり好ましい。ただし、本発明は当該形態に限定されるものではない。検知手段、制御手段、及び通知手段が必要とする電源を、本発明の電池システムが備える組電池以外の電源供給手段から供給する形態とすることも可能である。そのような電源供給手段としては、例えば、空気電池、液型電池や太陽電池等を挙げることができる。このような形態によれば、電池システムが備える組電池の充電状態に影響されることなく、組電池ケースの内圧の異常等の検知を行うことが可能となる。
【0057】
また、本発明に関する上記説明では、一の筐体60内部に一の組電池ケース30が備えられる形態の電池システム200を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。一の筐体内に、複数の組電池ケースが備えられる形態とすることも可能である。一の筐体内に複数の組電池ケースを備える場合、それぞれの組電池ケースが変形手段を備え、それぞれの変形手段に対応して、一の筐体内に複数個の検知手段が備えられることが好ましい。
【0058】
<第3実施形態>
図4は、本発明の第3実施形態にかかる電池システム300を模式的に説明する断面図である。図4に示すように、電池システム300は、組電池20と、組電池20を収容する組電池ケース31と、組電池ケース31の内部に充填された気体40と、組電池ケース31に備えられた変形手段51と、組電池ケース31を収容する筐体61と、筐体61に配設された第1接触作動型センサ73と、組電池ケース31内面に配設された第2接触作動型センサ保持手段75と、第2接触作動型センサ保持手段75に保持されて配設された第2接触作動型センサ74と、第1接触作動型センサ73及び第2接触作動型センサ74に接続された制御手段81と、制御手段81に接続された通知手段91と、を有する。第1接触作動型センサ73は、筐体61内面に、変形手段51と近接するように配設されている。また、第2接触作動型センサ74は、変形手段51と近接するように、第2接触作動型センサ保持手段75によって組電池ケース31の内側に保持されている。組電池20は、正極端子25及び負極端子26に接続されている。正極端子25及び負極端子26は、組電池ケース31に固定されており、少なくとも一部が組電池ケース30の外側に露出している。
【0059】
組電池20は、上記した構成を有する組電池であり、正極端子25及び負極端子26に接続されている。
【0060】
組電池ケース31は、組電池20を収容し、かつ、気体40を漏れ出さないように保持する部材である。組電池ケース31は、上記した組電池ケース30とは異なり、気体40を内部に加圧充填することにより膨らんで所定の形状となる組電池ケースである。このような組電池ケース31は、例えば折りたたみ箇所を設けた組立式アルミニウムケース等により構成することができる。組電池ケース31には、後述する変形手段51及び第2接触作動型センサ保持手段75が備えられる。
【0061】
気体40は、上記した構成を有する気体であり、組電池ケース31に加圧充填され、静水圧によって組電池20を加圧しつつ、組電池ケース31を所定の形状に保つ役割を有する。
【0062】
変形手段51は、組電池ケース31に設けられた、剛性を一部低下させた部分である。すなわち、変形手段51は、組電池ケース31の一部であって、組電池ケース31の他の部分よりも低い剛性を有する部分である。電池システム300においては、変形手段51は、例えば組電池ケース31を組み立てる前に、組電池ケース31を構成すべき外板の一部をプレスによって押し上げて凸部とすることにより形成することができる。該凸部の板厚は、プレスの際に板が引き伸ばされて周囲の板厚より薄くなる。そのため変形手段51は周囲よりも低い剛性を有する。
【0063】
上述のように、変形手段51は、組電池ケース31の外板において周囲よりも低い剛性を有する。よって、組電池ケース31の内圧が異常に上昇して、組電池ケース31の外圧との差が所定の閾値を越えると、変形手段51は組電池ケース31の他の部分に優先して、組電池ケース31の外側に向けて膨らむように変形(以下において、「膨張変形」ということがある。)する。ここで、変形手段51が膨張変形を開始するときの閾値となる、組電池ケース31の内圧と外圧との差(内外圧力差)は、外圧の10%以上の値とすることが好ましい。すなわち、内圧が外圧よりも10%以上高くなったときに変形手段51が膨張変形することが好ましい。内圧が外圧を10%以上上回ったときに変形手段51を膨張変形させることにより、温度等の外部要因により内外圧力差に変動が発生したときの誤作動を軽減させることが可能となる。
【0064】
また、組電池ケース31の内圧が異常に低下して、組電池ケース31の内圧と外圧との差(内圧−外圧)が所定の閾値を下回ると、変形手段51は組電池ケース31の他の部分に優先して、組電池ケース31の内側に向けてへこむように変形(以下において、「収縮変形」ということがある。)する。ここで、変形手段51が収縮変形を開始するときの閾値となる、組電池ケース31の内圧と外圧との差(内外圧力差)は、外圧の10%以上の値とすることが好ましい。すなわち、内圧が外圧よりも10%以上低くなったときに変形手段51が収縮変形することが好ましい。内圧が外圧を10%以上下回ったときに変形手段51を収縮変形させることにより、温度等の外部要因により内外圧力差に変動が発生したときの誤作動を軽減させることが可能となる。
【0065】
筐体61は、組電池ケース31を収容して適切な位置に保持し、且つ、第1接触作動型センサ73を適切な位置に保持する部材である。筐体61としては、上記した筐体60と同様の構成を有する筐体を用いることができる。
【0066】
第1接触作動型センサ73は、筐体61の内側に配設され、変形手段51の膨張変形を検知するセンサである。第1接触作動型センサ73は、後述する制御手段81に接続されており、第1接触作動型センサ73の出力は制御手段81に伝達される。第1接触作動型センサ73が作動に際し電源を必要とする場合には、組電池20が接続されている正極端子25及び負極端子26から、不図示の電源線を介して電力が供給される。第1接触作動型センサ73は、筐体61の内面に、変形手段51に近接して配設されている。すなわち、第1接触作動型センサ73は、上述した組電池ケース31に備えられる変形手段51が外側に向けて膨らむように変形(膨張変形)した際に、当該変形手段51に係る部分と接触する位置に配設されている。第1接触作動型センサ73としては、上記した接触作動型センサ70と同様の構成を有するセンサを用いることができる。平常時において、第1接触作動型センサ73と変形手段51との間には、所定の間隙が設けられていることが好ましく、当該間隙の大きさは、上記した電池システム100における接触作動型センサ70と変形手段50との間の間隙と同様の大きさとすることができる。
【0067】
第2接触作動型センサ74は、組電池ケース31の内部に、後述する第2接触作動型センサ保持手段75に保持されて配設され、変形手段51の収縮変形を検知するセンサである。電池システム300においては、第1接触作動型センサ73と第2接触作動型センサ74とで検知手段が構成されている。第2接触作動型センサ74は、後述する制御手段81に接続されており、第2接触作動型センサ74の出力は制御手段81に伝達される。第2接触作動型センサ74が作動に際し電源を必要とする場合には、組電池20が接続されている正極端子25及び負極端子26から、不図示の電源線を介して電力が供給される。第2接触作動型センサ74は、組電池ケース31の内部において、変形手段51に近接して配設されている。すなわち、第2接触作動型センサ74は、組電池ケース31の内部において、組電池ケース31に備えられる上記した変形手段51が内側に向けてへこむように変形(収縮変形)した際に、当該変形手段51に係る部分と接触する位置に配設されている。第2接触作動型センサ74としては、上記した接触作動型センサ70と同様の構成を有するセンサを用いることができる。平常時において、第2接触作動型センサ74と変形手段51との間には、所定の間隙が設けられていることが好ましく、当該間隙の大きさは、上記した電池システム100における接触作動型センサ70と変形手段50との間の間隙と同様の大きさとすることができる。
【0068】
第2接触作動型センサ保持手段75は、組電池ケース31内面に配設され、上記した第2接触作動型センサ74を所定の位置に保持する部材である。第2接触作動型センサ保持手段75は、収縮変形した変形手段51と第2接触作動型センサ74とが接触を生じた時に第2接触作動型センサ74が確実に作動するように第2接触作動型センサ74を保持できればよい。そのような第2接触作動型センサ保持手段75は、例えば金属板等により構成することができる。
【0069】
制御手段81は、第1接触作動型センサ73、第2接触作動型センサ74、及び、後述する通知手段91を制御する。そのために、制御手段81は、第1接触作動型センサ73、第2接触作動型センサ74、及び通知手段90のいずれにも接続されている。具体的には、制御手段81は、第1接触作動型センサ73及び第2接触作動型センサ74からの出力信号を受け取って処理し、該出力信号が変形手段51の変形を検出したものであった場合には、後述する通知手段91にその旨を出力する。制御手段81が通知手段91に対して出力する内容は、第1接触作動型センサ73及び第2接触作動型センサ74のいずれが作動した場合であっても同一としてもよく、第1接触作動型センサ73が接触を検知した場合と第2接触作動型センサ74が接触を検知した場合とで異なった内容であってもよい。制御手段81がその作動に際して電源を必要とする場合には、組電池20が接続されている正極端子25及び負極端子26から、不図示の電源線を介して制御手段81に電力が供給される。制御手段81としては、マイクロコントローラ(マイコン)等の公知の制御手段を特に制限なく用いることができる。
【0070】
通知手段91は、制御手段81に接続されており、制御手段81の出力に従って、組電池ケース31に異常が検出された旨を使用者に通知する。通知手段91が作動に際し電源を必要とする場合には、組電池20が接続されている正極端子25及び負極端子26から、不図示の電源線を介して電力が供給される。通知手段91としては:電球、発光ダイオード(LED)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)等の発光素子;液晶モジュール、液晶パネル等の文字表示素子;圧電ブザー等の音響素子;振動素子;等を単独で、又は複数組み合わせて用いることができる。また、制御手段81からの出力信号をカーナビゲーションシステム等の車内情報システムに送り、そちらで通知を行ってもよい。その場合は当該車内情報システムが通知手段91として作用する。なお、上記した制御手段81が、第1接触作動型センサ73が接触を検知した場合と第2接触作動型センサ74が接触を検知した場合とで異なる内容を出力する場合には、通知手段91は、当該異なる内容の出力に併せて2種類の異常を通知できることが好ましい。そのような通知手段91としては、例えば複数のLEDを組み合わせた表示装置を挙げることができる。
【0071】
電池システム300において、変形手段51が膨張変形を生じる場合、すなわち、組電池ケース31内部において圧力が異常に上昇し得る原因としては、過酷な高温環境での使用に伴う過熱や、短絡等の故障によって過大な電流が流れたことによる異常発熱によって気体40の示す圧力自体が上昇する事態のほか、組電池20内部での異常反応によってガスが発生し気密性の組電池ケース31の内圧を上昇させる事態等が考えられる。以下に、組電池ケース31内部において圧力が異常に上昇した場合における電池システム300の動作について説明する。
【0072】
何らかの原因により組電池ケース31内部の圧力が異常に上昇し、内外圧力差が上記所定の膨張変形閾値を上回ると、組電池ケース31に設けられた変形手段51が、組電池ケース31の他の部位に優先して、外側に膨らむように変形(膨張変形)を生じる。変形手段51が膨張変形すると、変形前の変形手段51に近接して筐体61に配設されていた第1接触作動型センサ73と、変形手段51とが接触を起こす。第1接触作動型センサ73が接触を検知すると、第1接触作動型センサ73の出力信号に変化が生じ、該変化を第1接触作動型センサ73に接続された制御手段81が検出する。制御手段81は、第1接触作動型センサ73から入力される信号に変化を検出すると、制御手段81に接続された通知手段91に信号を出力する。通知手段91は制御手段81からの出力に従い、組電池ケース31内部の圧力に異常が発生した旨、又は、組電池ケース31内部の圧力が異常に上昇した旨を使用者に通知する。電池システム300においては、組電池ケース31内部の圧力を直接監視する代わりに、変形手段51の膨張変形を検知するので、組電池ケース31内部の圧力異常又は圧力の異常な上昇を簡便に検知することが可能となる。
【0073】
電池システム300において、変形手段51が収縮変形を生じる場合、すなわち、組電池ケース31内部において圧力が異常に低下し得る原因としては、過酷な低温環境での使用に伴う過冷却等によって気体40の示す圧力自体が低下する事態のほか、組電池ケース31の気密が何らかの原因によって破壊されて気体40が組電池ケース31の外部に漏れ出す結果組電池ケース31の内圧が低下する事態等が考えられる。以下に、組電池ケース31内部において圧力が異常に低下した場合における電池システム300の動作について説明する。
【0074】
何らかの原因により組電池ケース31内部の圧力が異常に低下し、内外圧力差が上記所定の収縮変形閾値を下回ると、組電池ケース31に設けられた変形手段51が、組電池ケース31の他の部位に優先して、内側にへこむように変形(収縮変形)を生じる。変形手段51が収縮変形すると、変形前の変形手段51に近接して組電池ケース31の内部に配設されていた第2接触作動型センサ74と、変形手段51とが接触を起こす。第2接触作動型センサ74が接触を検知すると、第2接触作動型センサ74の出力信号に変化が生じ、該変化を第2接触作動型センサ74に接続された制御手段81が検出する。制御手段81は、第2接触作動型センサ74から入力される信号に変化を検出すると、制御手段81に接続された通知手段91に信号を出力する。通知手段91は制御手段81からの出力に従い、組電池ケース31内部の圧力に異常が発生した旨、又は、組電池ケース31内部の圧力が異常に低下した旨を使用者に通知する。電池システム300においては、組電池ケース31内部の圧力を直接監視する代わりに、変形手段51の収縮変形を検知するので、組電池ケース31内部の圧力異常又は圧力の異常な低下を簡便に検知することが可能となる。
【0075】
上述したように、電池システム300は、組電池ケース31の外部及び内部の両方に、それぞれ第1接触作動型センサ73及び第2接触作動型センサ74を有する。よって、電池システム300によれば、組電池ケース31内部の圧力の異常な上昇、及び異常な低下の両方を簡便に検知することが可能となる。したがって、電池システム300が有する組電池20の性能が低下する虞のある事態や、電池システム300自体の安全性が脅かされる虞のある事態を簡便に検知することが容易になる。
【0076】
本発明に関する上記説明では、リチウムイオン二次電池である固体型素電池10、…、10を含む組電池20を有する形態の電池システム300を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。組電池を構成する各素電池を、リチウムイオン二次電池である固体型素電池以外の素電池とすることも可能である。例えば、高分子体に電解質ばかりでなく、溶媒まで保持させたいわゆるゲル状電解質タイプのリチウム二次電池である複数の素電池を含む組電池を有する形態の電池システムとすることも可能である。
【0077】
また、本発明に関する上記説明では、固体型素電池10、…、10が直列に接続された組電池20を有する形態の電池システム300を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。組電池を固体型素電池の並列接続によって構成された組電池を有する形態とすることも可能である。このほか、直列接続と並列接続とを組み合わせて構成された組電池を有する形態とすることも可能である。
【0078】
また、本発明に関する上記説明では、組電池ケース31を構成すべき外板の一部をプレスによって凸型に形成して剛性を一部低下させることにより構成された変形手段51を有する形態の電池システム300を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。本発明の電池システムにおける変形手段は、上記したプレス加工の他、異なる材料同士の溶接等による接合等の方法によって剛性を周囲より低下させることによっても構成することが可能である。また、組電池ケースの一の面について他の面よりも板厚を薄くすることにより、当該一の面の剛性を低下させることによって構成することも可能である。その場合、当該一の面が変形手段となる。すなわち、組電池ケース内圧が異常に上昇すると、当該一の面の全体が組電池ケース外側に向かって膨らむように変形(膨張変形)する。また、組電池ケース内圧が異常に低下すると、当該一の面の全体が組電池ケース内側に向かってへこむように変形(収縮変形)する。このほか、組電池ケースの剛性を一部低下させることをせず、組電池ケースを構成する全ての面を等しい板厚で構成することも可能であって、この場合には組電池ケース全体が変形手段となる。すなわち、組電池ケース内圧が異常に上昇すると、組電池ケース全体が外側に向かって膨らむように変形(膨張変形)し、組電池ケース内圧が異常に低下すると、組電池ケース全体が内側に向かってへこむように変形(収縮変形)する。
【0079】
また、本発明に関する上記説明では、検知手段として第1接触作動型センサ73及び第2接触作動型センサ74を有する形態の電池システム300を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。本発明の電池システムにおいては、検知手段が接触作動型センサ以外のセンサを有する形態とすることも可能である。接触作動型センサ以外に検知手段を構成し得るセンサとしては、例えば、ビームセンサ等の非接触型センサ等を挙げることができる。
【0080】
また、本発明に関する上記説明では、検知手段を構成する第1接触作動型センサ73が筐体61の内面に配設される形態の電池システム300を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。本発明の電子システムにおいては、検知手段は変形手段の変形を検知可能に配設されていればよい。したがって、第1接触作動型センサと変形手段との所望の位置関係に応じて、筐体の内面に配設されたスペーサー等の位置決め手段を介して第1接触作動型センサが保持される形態とすることも可能である。
【0081】
また、本発明に関する上記説明では、第1接触作動型センサ73及び第2接触作動型センサ74(検知手段)から制御手段81を介して通知手段91に信号が出力される形態の電池システム300を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。検知手段を構成するセンサ、及び通知手段の形態によっては、制御手段を介さずに検知手段から直接通知手段に信号が伝達されて通知手段が作動する形態とすることも可能である。例えば、検知手段を構成する第1接触作動型センサ及び第2接触作動型センサの両方が、接触により導通状態となる形態のスイッチ型センサにより構成され、通知手段が通電により発光する2個のLEDにより構成される場合、第1接触作動型センサと一方のLEDとを、制御手段を介さずに直接接続し、第2接触作動型センサと他方のLEDとを、制御手段を介さずに直接接続することによっても、各センサ(検知手段)が接触を検知した際にいずれかのLED(通知手段)を発光させ、利用者に通知を行うことが可能である。
【0082】
また、本発明に関する上記説明では、第1接触作動型センサ73及び第2接触作動型センサ74(検知手段)、制御手段81、並びに通知手段91が必要とする電源が組電池20から供給される形態の電池システム300を例示した。当該形態によれば、部品点数を削減することが容易になり好ましい。ただし、本発明は当該形態に限定されるものではない。検知手段、制御手段、及び通知手段が必要とする電源を、本発明の電池システムが備える組電池以外の電源供給手段から供給する形態とすることも可能である。そのような電源供給手段としては、例えば、空気電池、液型電池や太陽電池等を挙げることができる。このような形態によれば、電池システムが備える組電池の充電状態に影響されることなく、組電池ケースの内圧の異常等の検知を行うことが可能となる。
【0083】
また、本発明に関する上記説明では、一の筐体61内部に一の組電池ケース31が備えられる形態の電池システム300を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。一の筐体内に、複数の組電池ケースが備えられる形態とすることも可能である。一の筐体内に複数の組電池ケースを備える場合、それぞれの組電池ケースが変形手段を備え、それぞれの変形手段に対応して、一の筐体内に複数個の検知手段が備えられることが好ましい。
【0084】
また、本発明に関する上記説明では、内部に気体40を加圧充填されることにより所定の形状になる形態の組電池ケース31を有する形態の電池システム300を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば組電池ケースの内部だけでなく、組電池ケースの外部であって筐体の内部である空間にも気体を加圧充填する形態の電池システムとすることも可能であり、そのような形態の電池システムにおいては、内部加圧によって所定の形状になる組電池ケースでなくとも、組電池ケースの内部圧力の低下によって変形手段が収縮変形を生じ得る。したがって、そのような形態の電池システムにおいても、組電池ケースの内部及び外部の両方に検知手段を有することにより、組電池ケースの内部圧力の異常上昇及び異常低下を共に簡便に検出することが可能となる。
【0085】
また、本発明に関する上記説明では、組電池ケース31の内部及び外部の両方に検知手段(第1接触作動型センサ73及び第2接触作動型センサ74)を備える形態の電池システム300を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば組電池ケースの内部にのみ検知手段を備える形態の電池システムとすることも可能である。このような形態によれば、組電池ケースの内圧低下を簡便に検知することが可能であり、また同時に部品点数及びコストの削減を図ることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の電池システムは、電気自動車やハイブリッド自動車用等に備えられる電池システムに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
1…固体電解質層
2…正極層
3…負極層
4…正極集電体
5…負極集電体
10…固体型素電池
20…組電池
25…正極端子
26…負極端子
30…組電池ケース
31…組電池ケース
40…気体
50…変形手段
51…変形手段
60…筐体
61…筐体
70…接触作動型センサ(検知手段)
71…接触作動型センサ(検知手段)
72…接触作動型センサ作動手段(検知手段)
73…第1接触作動型センサ(検知手段)
74…第2接触作動型センサ(検知手段)
75…第2接触作動型センサ保持手段(検知手段)
80…制御手段
81…制御手段
90…通知手段
91…通知手段
100…電池システム
200…電池システム
300…電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固体型素電池を有する組電池と、前記組電池を収納する組電池ケースと、前記組電池ケース内に充填された気体とを含み、前記気体によって前記組電池ケース内に生じた静水圧を用いて前記素電池を加圧する、電池システムであって、
前記組電池ケースに異常が発生した場合に、前記異常に反応して前記組電池ケースの一部に変形を生じる、変形手段と、
前記変形を検知する、検知手段とを備えることを特徴とする、電池システム。
【請求項2】
前記検知手段が、接触作動型のセンサを有し、
該センサが、前記変形手段により前記組電池ケースの一部が変形を生じた場合に、接触を発生する部位に備えられている、請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記変形手段が、前記組電池ケースの一部において剛性を他の部位より低下させた部位である、請求項1又は2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記変形手段が反応する前記異常が、前記組電池ケース内部の圧力が所定の範囲から外れた事態である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池システム。
【請求項5】
前記センサが、前記組電池ケース内部に配設されている、請求項2〜4のいずれか一項に記載の電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−195143(P2012−195143A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57839(P2011−57839)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】