説明

電池システム

【課題】放電用スイッチの診断を専用の信号線を設けることなく実現する。
【解決手段】複数の電池101が直列に接続された組電池102と、それぞれの電池101と並列に接続されてそれぞれの電池101の放電を行う放電回路であって、第一の抵抗203と放電用スイッチ202とが直列に接続された放電回路と、第一の抵抗203を介してそれぞれの電池101の電圧を所定の電圧と比較する比較器204と、比較器204による比較結果に基づいて放電用スイッチ202の故障診断を行う診断回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池を複数個接続した組電池は、単電池に比べ高電圧や大電流、大電力を得やすいという利点があるため、ハイブリッド自動車や電気自動車、ハイブリッド鉄道車両、UPSなどの蓄電手段として実用に供されている。
組電池を構成する各二次電池の特性には製造時などで生じるばらつきが存在するため、電池の種類によっては使用時に各電池の充電量のばらつきを監視し、充電量のばらつきが所定の範囲内に収まるように制御する必要がある。この制御方法としては、充電量が他より多い電池を抵抗およびスイッチを介して放電する方式が知られている。この方式を用いた電池制御装置では、部品点数を削減するため前記スイッチや充電量のばらつきを監視するための計測回路をICに集積することが行われている。ところが、前記スイッチが短絡故障した場合には、電池を過放電させてしまう。また、前記スイッチが開放故障した場合には、電池の充電量のばらつきを制御不能となる。そのため、前記スイッチが故障していないかどうかを診断する必要がある。電池制御装置の前記ICの中には、前記スイッチを診断する機能を持つものがある。尚、充電量調整用スイッチを診断するICとしては、例えば特許文献1,2に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-318750号公報(段落0038,図2参照)
【特許文献2】特開2005-318751号公報(段落0039,図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、電池の容量が増大しており、充電量のばらつきを均等化するための放電に必要な電流量が増加している。このため、前記スイッチをICに集積することが困難になり、スイッチをICに外付けする必要が出てきた。しかしながら、スイッチの診断を行うには専用の信号線を設ける必要が有り、ICのピン数が増えてしまうという問題がある。ICのピン数が増えると、コストの増大やハンダ付け箇所増大による信頼性の低下、基板面積の増大が生じるため、ICのピン数は極力減らす必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明は、複数の電池が直列に接続された組電池と、それぞれの前記電池と並列に接続されてそれぞれの前記電池の放電を行う放電回路であって、第一の抵抗と放電用スイッチとが直列に接続された放電回路と、前記第一の抵抗を介してそれぞれの前記電池の電圧を所定の電圧と比較する比較器と、前記比較器による比較結果に基づいて前記放電用スイッチの故障診断を行う診断回路とを備える電池システムである。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載の電池システムにおいて、前記診断回路は、前記放電用スイッチの断続を行ったときの前記比較器による比較結果に基づいて前記第一のスイッチの故障診断を行う。
(3) 請求項3の発明は、請求項2に記載の電池システムにおいて、前記診断回路は、前記放電用スイッチの断続を行ったときに前記比較器の出力が変化しなかった場合は前記放電用スイッチの故障と診断する。
(4) 請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池システムにおいて、それぞれの前記電池の電圧を計測する電圧計測回路を備え、前記電池と前記放電回路とを接続する配線と、前記電池と前記電圧計測回路とを接続する配線の一部とを共通化した第一の共通部を設けたものである。
(5) 請求項5の発明は、請求項4に記載の電池システムにおいて、前記電池と前記電圧計測回路とを接続する配線の一部と、前記放電回路を制御するための配線とを共通化した第二の共通部を設けたものである。
(6) 請求項6の発明は、請求項5に記載の電池システムにおいて、前記第一の共通部と前記第二の共通部との間に第二の抵抗を設けたものである。
(7) 請求項7の発明は、請求項6に記載の電池システムにおいて、前記第一の抵抗と前記放電用スイッチとの間に第三の抵抗を設け、前記第一の抵抗と前記第三の抵抗との接続点に前記比較器を接続したものである。
(8) 請求項8の発明は、請求項7に記載の電池システムにおいて、前記第一の抵抗と前記第三の抵抗との接続点から第四の抵抗を介して前記比較器を接続したものである。
(9) 請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電池システムにおいて、前記診断回路は、電池システムの起動時に前記放電用スイッチの故障診断を行うようにしたものである。
(10) 請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電池システムにおいて、前記比較器の前記所定の電圧に、前記電池が過放電状態のときの電圧を設定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ICに外付けされた、充電量のばらつきを均等化する放電用スイッチの診断を、専用の信号線を設けることなく実現可能な電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施の形態の電池制御装置とそれを用いた電池システムの概略構成を示す図
【図2】IC201を説明する図
【図3】放電用スイッチ202の動作と検知電圧の関係を示す図
【図4】電池制御装置103の他の構成を示す図
【図5】電池制御装置の他の構成を示す図
【図6】図5に示す放電用スイッチ311〜313の駆動手順を示す図
【図7】電池制御装置103の概略構成を示すブロック図
【図8】ハイブリッド型電気自動車の概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、一実施の形態の電池制御装置とそれを用いた電池システムの概略構成を示す。一実施の形態の電池システムは、複数個の電池101を電気的に直列に接続した組電池102と、各電池101に電気的に接続されて電池101の電圧や温度を計測し、各電池101を個別に放電可能な一個または複数個の電池制御装置103と、この電池制御装置103と信号線104を介して信号の授受を行い、電池101の状態推定や放電の制御を行う電池システム制御装置105とから構成される。この一実施の形態では電池101としてリチウムイオン電池を用いた例を示すが、電池101の種別はリチウムイオン電池に限定されるものではない。
【0009】
電池システム制御装置105は、電池制御装置103が計測した各電池101の電圧や温度情報を信号線104を介して受信し、これに基づき各電池101の充電量のばらつきを推定する。これにより、各電池101の充電量のばらつきをなくすために必要な各電池101の放電量を計算できる。電池システム制御装置105は、この計算結果に基づき信号線104を介して各電池制御装置103に対し各電池101を放電する指示を出す。以上により、各電池101の充電量のばらつきが均等化され、使用可能な電池101の充放電範囲を広げることが可能となる。
【0010】
図7は一実施の形態の電池制御装置103の概略構成を示す。図7に示す例では、電池制御装置103の入力側端子は、4つの電池101に電気的に接続されている。各電池101の正極側および負極側は、電池制御装置103の入力回路116に電気的に接続されている。この入力回路116は、マルチプレクサを含む。電源回路121は、たとえばDC/DCコンバータ等で構成され、各電池101からの電力を所定の定電圧に変換し、電池制御装置103内の各回路に駆動電源として供給する。また、電源回路121からの電圧は、状態を判断するための比較回路に比較基準電圧として供給される。
【0011】
電圧検出回路122は、各電池101の端子間電圧をデジタル値に変換する回路を有しており、デジタル値に変換された各端子間電圧は制御回路123に送られ、内部の記憶回路125に保持される。これらの電圧情報は診断などに利用されたり、図1に示す電池システム制御装置105に信号線104を介して送信されたりする。
【0012】
制御回路123は、演算機能を有すると共に、記憶回路125、電源管理回路124、各種電圧の検知や状態診断を周期的に行うタイミング制御回路252を有している。記憶回路125は、例えばレジスタ回路で構成されており、電圧検出回路122で検出した各電池101の各端子間電圧を各電池101に対応づけて記憶し、また、その他の検出値を、予め定められたアドレスに読出し可能に保持する。電源管理回路124は、電源回路121における状態を管理するように構成されている。
【0013】
制御回路123には、通信回路127が接続されている。制御回路123は、この通信回路127を介して当該電池制御装置103の外部から信号を受信することができる。例えば、電池システム制御装置105からの通信コマンドを、RX端子で受信する。通信コマンドは通信回路127から制御回路123に送られ、ここで通信コマンドの内容が解読され、通信コマンド内容に応じた処理が行われる。例えば通信コマンドは、各電池101の端子間電圧の計測値を要求する通信コマンド、各電池101の充電状態を調整するための放電動作を要求する通信コマンド、当該電池制御装置103の動作を開始する通信コマンド(Wake UP)、動作を停止する通信コマンド(スリープ)、アドレス設定を要求する通信コマンド、等を含んでいる。
【0014】
図7に示す一番上の電池101の正極側は、第一の抵抗203を介して電池制御装置103の放電用スイッチ202の一端に電気的に接続されている。放電用スイッチ202の他端は、対応する前記電池101の負極側に電気的に接続されている。第一の抵抗203と放電用スイッチ202との直列回路は、放電回路を構成している。同様に、他の電池101に対しても、放電用スイッチ202と第1の抵抗203の直列回路から成る放電回路が設けられている。電池制御装置103には、各電池101に対して設けられた放電回路の制御と診断を行うIC201を備えている。IC201の詳細は後述する。
【0015】
IC201は放電回路が異常であると診断すると、その診断結果を制御回路123に出力する。制御回路123は、放電回路の異常を表す信号を通信回路127の1ビット送信端子FFOから出力する。出力された異常信号は、信号線104を介して電池システム制御装置105へと送信される。
【0016】
図2はIC201を説明する図である。上述したように、電池制御装置103は、放電用スイッチ202と第一の抵抗203の直列回路から成る放電回路と、この放電回路の制御と診断を行うIC201とを備えている。このようにIC201の外部に放電回路を設置することによって、放電回路の発熱によるIC201の破損を防ぐことができる。なお、この一実施の形態では放電用スイッチにFETを用いた例を示すが、放電用スイッチはFETに限定されない。
【0017】
放電用スイッチ202と第一の抵抗203とが電気的に直列に接続された放電回路において、第一の抵抗203の一端は放電用スイッチ202の一端と電気的に接続され、第一の抵抗203の他端は電池101の一端に電気的に接続されている。また、放電用スイッチ202の他端は電池101の他端に電気的に接続されている。このような構成とすることによって、放電用スイッチ202を用いて電池101の放電量を制御することが可能となる。また、第一の抵抗203により放電電流量を制限しながら、電池101の充電エネルギーを熱に変換して放出することが可能となる。第一の抵抗203の値は例えば12Ωである。
【0018】
尚、ハイブリッド自動車の作動中(電池システムを電源とする電動発電機の作動中)、電池システムの起動中(無負荷状態)や作動中(負荷状態)において行われる、電気的に直列に接続された複数の電池101の充電状態(端子電圧)の均等化調整は、例えば次のような手順によって実施される(例えば特開2003−284253号公報参照)。
【0019】
まず、電池制御装置103では、複数の電池101のそれぞれの端子電圧を周期的に検出し、この検出された各電池101の端子電圧をレジスタに書き換えながら保持している。電池システム制御装置105から各電池101の端子電圧の送信要求指令信号が送信されると電池制御装置103は、検出されてレジスタに保持されている各電池101の端子電圧を読み出して電池システム制御装置105に送信する。
【0020】
次に、電池システム制御装置105は、電池制御装置103から送信されてきた各電池101の端子電圧のうちの最高端子電圧と最低端子電圧との差分をとってその中間値を演算し、この演算された中間値と、電池制御装置103から送信されてきた各電池101の端子電圧とを比較し、両者の差分が所定値以上の場合には、その電池101を第一の抵抗203による充電状態調整対象とすると共に、その差分に基づいて第一の抵抗203による放電時間を演算する。そして、電池システム制御装置105は、演算された充電状態調整対象の電池101の放電時間に基づいて、充電状態調整対象の電池101を放電させるための放電用スイッチ202のスイッチング指令信号を生成し、このスイッチング指令信号を、充電状態調整対象の電池101に対応する電池制御装置103に送信する。
【0021】
スイッチング指令信号を受けた電池制御装置103は、スイッチング指令信号に基づいてスイッチング駆動信号を生成して、充電状態調整対象の電池101を放電させるための放電用スイッチ202に出力し、そのスイッチの駆動(オンオフ)を制御する。これにより、充電状態調整対象の電池101に対応する放電用スイッチ202がオンしている間、充電状態調整対象の電池101は第一の抵抗203に対して電気エネルギーを放電する。この放電により、充電状態調整対象の電池101に充電された電気エネルギーが第一の抵抗203によって熱として消費され、充電状態調整対象の電池101の充電状態(端子電圧)が調整される。
【0022】
IC201は比較器204、しきい値生成回路205、比較結果出力206、スイッチ制御回路207、端子208を備えている。スイッチ制御回路207は放電用スイッチ202をオン・オフするための信号を生成する。これにより、電池制御装置103は充電量が他より多い電池101を放電し、充電量のばらつきを制御することが可能となる。
【0023】
ここで、抵抗203にかかる電圧は放電用スイッチ202に流れる電流により変化する。このため、比較器204にかかる電圧も放電用スイッチ202に流れる電流により変化する。比較器204は、放電用スイッチ202にかかっている電圧と、しきい値生成回路205の出力電圧、例えば2.5Vとを比較し、後者の方が大きかった場合に比較結果出力206に真を出力、前者の方が大きかった場合に偽を出力する。なお、一実施の形態のリチウムイオン電池101の定格電圧は3.6Vであり、正常な状態では両端電圧が3V以下に低下することはない。したがって、しきい値生成回路205のしきい値電圧2.5Vは、一実施の形態のリチウムイオン電池101が異常な過放電状態の両端電圧に相当する。
【0024】
図3に放電用スイッチ202の動作と検知電圧の関係を示す。放電用スイッチ202が正常に動作しているとき、比較器204にかかる電圧は放電用スイッチ202がオフのときはしきい値以上となり、比較結果出力206に偽が出力される。放電用スイッチ202がオンのときは比較器204にかかる電圧はしきい値以下となり、比較結果出力206に真が出力される。
【0025】
一方、放電用スイッチ202が例えば開放故障している場合は、放電用スイッチ202がオンしても比較器204にかかる電圧はしきい値以上となる。このため、この場合は放電用スイッチ202のオン、オフに関わらず比較結果出力206への出力は偽のままとなる。また、放電用スイッチ202が短絡故障している場合は、放電用スイッチ202をオフにしても比較器204にかかる電圧はしきい値以下となる。このため、放電用スイッチ202のオン・オフに関わらず比較結果出力206へ真が出力される。
【0026】
このように、電池システムが正常に動作しているとき、この比較結果出力206はスイッチ制御回路207の出力に応じて変化し、放電用スイッチ202が故障した場合は変化しない。そこで、この変化の有無により放電用スイッチ202の故障を検出できる。この比較結果出力206に基づく放電用スイッチ202の故障判定は、電池制御装置103のマイコンで実施してもよいし、電池システム制御装置105のマイコンで実施してもよい。
【0027】
図4は電池制御装置103の他の構成を示す。この構成は図2に示す構成より部品点数は増加するが、放電用スイッチ202の自由度やシステムの信頼性が向上している。
【0028】
図4に示す構成では、図2に示す構成に加え、放電用スイッチ202の選択に自由度を与える第二の抵抗211および第三の抵抗210や、スイッチ制御回路207の設計に自由度を与える第四の抵抗209を有する。このように、第三の抵抗210を設けることによって、放電電流と比較のためのしきい値との関係を自由に設定することが可能となる。また、第二の抵抗211と第四の抵抗209を設けることによって、スイッチ駆動回路219の動作電位や放電用スイッチ202の動作電位を調整することが可能となり、これらスイッチの選択の自由度を大きくすることができる。
【0029】
また、電池の放電経路と電池の電圧計測線の一部が第一の共通部215として共通化されており、配線の本数が減っている。このような構成では、電池電圧の計測時に放電用スイッチ202がオンになっていると、第一の抵抗203に生じる電圧降下により正確な電池電圧の計測が困難になる。そこで、電池電圧を計測する場合はスイッチ制御回路207により放電用スイッチ202をオフにし、電圧降下量を0にする。これにより、電池電圧を正確に計測することが可能となる。
【0030】
図4に示す構成では、図2に示す比較器204に代えてアナログ・デジタル変換器212とデジタルコンパレータ214により構成される。これにより、放電用スイッチ202の故障診断を行う回路と、電池101の電圧を計測する回路とを共通化することが可能となり、回路規模を減らすことが可能となる。しきい値生成回路205は、デジタルコンパレータ214に対応するため、デジタル値を出力する。
【0031】
信号変換器220は比較結果出力206を変換するものである。信号変換器220からの出力は、例えば比較結果出力206が偽の時は1Hzで周期的に変動する信号、真の時は周期的変動の無い信号である。このようにすることで信号出力の張り付きや、信号線の断線による誤判断を防ぐことが可能となる。
【0032】
また、図4に示す構成によれば、スイッチ制御回路207の出力をアナログ・デジタル変換器212の入力に接続し、第二の共通部216を有することでICの端子208の数を削減している。これにより、ICのチップ面積を削減可能としている。
【0033】
図5は電池制御装置の他の構成を示す。この構成は、図2に示す構成に対して第二の比較器217と第二のしきい値生成回路218を追加したものである。この構成において、放電用スイッチ311、312、313を適切な順番で動作させることによって、放電用スイッチ311、312、313の故障検知に加え配線302、303の断線検知も可能となる。さらに、比較器217の出力を用いて電池101の過放電と放電用スイッチ311〜313の短絡とを区別することが可能となる。
【0034】
図5に示す構成では、放電用スイッチ311、312、313の一端は、電池制御装置103と組電池102を結ぶ配線301〜304と、第一の抵抗203との間に電気的に接続される。これにより、例えば比較器204は放電用スイッチ311のオン・オフに関係なく、電池101の電圧としきい値生成回路205の電圧を比較することができる。なお、図4に示す構成のように、放電用スイッチ311の一端を第一の抵抗203とIC201との間に電気的に接続してもよい。これにより、放電による発熱部位が分散され、熱的要求が緩和される。
【0035】
図5に示す構成では、IC201はスイッチ制御回路207を介して放電用スイッチ311〜313を例えば図6に示す順番で駆動し、放電用スイッチ311〜313の故障診断や配線302〜303の断線検知を行う。放電用スイッチ311〜313の診断方法は、他の構成と同様である。断線検知は、例えばステップ3からステップ4に進んだときに、比較結果出力322が真のままであり、更にステップ5に進んだときに、比較結果出力323が偽となった場合、配線302が断線していると診断する。
【0036】
また、図5に示す構成では、図4に示す構成に加え、第二の比較器217と第二のしきい値生成回路218を備えている。第二のしきい値生成回路218の出力を、例えばしきい値生成回路205の約半分とすることによって、放電用スイッチ311〜313の変化により電圧変動が起きたか検知可能となる。これにより、放電用スイッチ311〜313の短絡故障と、配線302〜303の断線とを区別することが可能となる。上述した例では、例えばステップ3において比較結果出力322が真、332が偽の場合、放電用スイッチ312の短絡故障であると診断する。逆に、比較結果出力322、332が共に真の場合、配線302が断線していると診断する。
【0037】
なお、図6に示すような放電用スイッチの駆動は、システムの起動時や終了時、システムの動作中のいずれの時点に行ってもよい。同駆動を起動時に行うことで、システムの使用者はシステムを本格動作させる前に異常の有無を確認し、安心して使用することが可能となる。また、終了時に行うことで、例えば放電用スイッチの短絡有無を確認することができ、システムを長期放置しても良いか判断可能となる。そして、システムの動作中に行うことで、例えば断線の有無を確認し、各電池101の電圧を正しく読める状態にあることを確認可能となる。
【0038】
本発明の電池システムは、ハイブリッド自動車や電気自動車、ハイブリッド鉄道車両などの交通手段用電源、電動工具、ノートパソコンなどの携帯機器用電源、UPSなどのバックアップ電源等、組蓄電手段を利用する様々な機器に対し用いることができる。
【0039】
図8は、本発明の電池システムが適用されたハイブリッド型電気自動に適用した場合を示す図である。車両1000には、エンジン1120と第1の回転電機1200と第2の回転電機1202とバッテリ1180とが搭載されている。バッテリ1180には上述した電池システムが採用され、組電池102および電池制御装置103が含まれている。バッテリ1180は、回転電機1200,1202による駆動力が必要な場合には電力変換装置1600を介して回転電機1200,1202に直流電力を供給し、回生走行時には回転電機1200,1202から直流電力を受ける。バッテリ1810と回転電機1200,1202との間の直流電力の授受は、電力変換装置1600を介して行われる。また、図示していないが、車両には低電圧電力(例えば、14ボルト系電力)を供給するバッテリが搭載されており、以下に説明する制御回路に直流電力を供給する。
【0040】
エンジン1120および回転電機1200,1202による回転トルクは、変速機1130とデファレンシャルギア1160を介して前輪1110に伝達される。変速機1130は変速機制御装置1134により制御され、エンジン1120はエンジン制御装置1124により制御される。バッテリ1180は、電池システム制御装置105により制御される。変速機制御装置1134、エンジン制御装置1124、電池システム制御装置105、電力変換装置1600および統合制御装置1170は、通信回線1174によって接続されている。
【0041】
統合制御装置1170は、変速機制御装置1134,エンジン制御装置1124,電力変換装置1600および電池システム制御装置105よりも上位の制御装置であり、変速機制御装置1134,エンジン制御装置1124,電力変換装置1600および電池システム制御装置105の各状態を表す情報を、通信回線1174を介してそれらからそれぞれ受け取る。統合制御装置1170は、取得したそれらの情報に基づき各制御装置の制御指令を演算する。演算された制御指令は通信回線1174を介してそれぞれの制御装置へ送信される。
【0042】
電池システム制御装置105は、バッテリ1180の充放電状況やバッテリ1180を構成する各単位セル電池の状態を、通信回線1174を介して統合制御装置170に出力する。統合制御装置1170は、電池システム制御装置105からの情報に基づいてバッテリ1180の充電が必要と判断すると、電力変換装置1600に発電運転の指示を出す。また、統合制御装置1170は、主に、エンジン1120および回転電機1200,1202の出力トルクの管理、エンジン1120の出力トルクと回転電機1200,1202の出力トルクとの総合トルクやトルク分配比の演算処理を行い、その演算処理結果に基づく制御指令を、変速機制御装置1134,エンジン制御装置1124および電力変換装置1600へ送信する。電力変換装置1600は、統合制御装置1170からのトルク指令に基づき、指令通りのトルク出力あるいは発電電力が発生するように回転電機1200,1202を制御する。
【0043】
電力変換装置1600には、回転電機1200,1202を運転するためのインバータを構成するパワー半導体が設けられている。電力変換装置1600は、統合制御装置1170からの指令に基づきパワー半導体のスイッチング動作を制御する。このパワー半導体のスイッチング動作により、回転電機1200,1202は電動機としてあるいは発電機として運転される。
【0044】
回転電機1200,1202を電動機として運転する場合は、高電圧のバッテリ1180からの直流電力が電力変換装置1600のインバータの直流端子に供給される。電力変換装置1600は、パワー半導体のスイッチング動作を制御して供給された直流電力を3相交流電力に変換し、回転電機1200,1202に供給する。一方、回転電機1200,1202を発電機として運転する場合には、回転電機1200,1202の回転子が外部から加えられる回転トルクで回転駆動され、回転電機1200,1202の固定子巻線に3相交流電力が発生する。発生した3相交流電力は電力変換装置1600で直流電力に変換され、その直流電力が高電圧のバッテリ1180に供給されることにより、バッテリ1180が充電される。
【0045】
なお、上述した実施の形態とそれらの変形例において、実施の形態どうし、または実施の形態と変形例とのあらゆる組み合わせが可能である。
【0046】
上述した実施の形態とその変形例によれば以下のような作用効果を奏することができる。複数の電池101が電気的に直列に接続された組電池102と、それぞれの電池101と電気的に並列に接続されてそれぞれの電池101の放電を行う放電回路であって、第一の抵抗203と放電用スイッチ202とが電気的に直列に接続された放電回路と、第一の抵抗203を介してそれぞれの電池101の電圧を所定の電圧と比較する比較器204,214と、比較器204,214による比較結果に基づいて放電用スイッチ202の故障診断を行う診断回路(103または105)とを備えたので、ICに外付けされた、充電量のばらつきを均等化する放電用スイッチ202に流れている電流の大小を、ICに内蔵した比較器204,214により判断できるようになる。さらに、比較器204,214に必要な配線と、電池電圧の計測や過放電の判定に必要な既存配線とを共通化できるため、放電用スイッチ202の診断がICのピン数を増やすことなく実現可能となる。
【符号の説明】
【0047】
101;電池、102;組電池、103;電池制御装置、105;電池システム制御装置、201;IC、202;放電用スイッチ、203;第一の抵抗、204,214;比較器、209;第四の抵抗、210;第三の抵抗、211;第二の抵抗、212;アナログ・デジタル変換器、215;第一の共通部、216;第二の共通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池が直列に接続された組電池と、
それぞれの前記電池と並列に接続されてそれぞれの前記電池の放電を行う放電回路であって、第一の抵抗と放電用スイッチとが直列に接続された放電回路と、
前記第一の抵抗を介してそれぞれの前記電池の電圧を所定の電圧と比較する比較器と、
前記比較器による比較結果に基づいて前記放電用スイッチの故障診断を行う診断回路とを備えることを特徴とする電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電池システムにおいて、
前記診断回路は、前記放電用スイッチの断続を行ったときの前記比較器による比較結果に基づいて前記第一のスイッチの故障診断を行うことを特徴とする電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電池システムにおいて、
前記診断回路は、前記放電用スイッチの断続を行ったときに前記比較器の出力が変化しなかった場合は前記放電用スイッチの故障と診断することを特徴とする電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池システムにおいて、
それぞれの前記電池の電圧を計測する電圧計測回路を備え、
前記電池と前記放電回路とを接続する配線と、前記電池と前記電圧計測回路とを接続する配線の一部とを共通化した第一の共通部を設けたことを特徴とする電池システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電池システムにおいて、
前記電池と前記電圧計測回路とを接続する配線の一部と、前記放電回路を制御するための配線とを共通化した第二の共通部を設けたことを特徴とする電池システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電池システムにおいて、
前記第一の共通部と前記第二の共通部との間に第二の抵抗を設けたことを特徴とする電池システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電池システムにおいて、
前記第一の抵抗と前記放電用スイッチとの間に第三の抵抗を設け、前記第一の抵抗と前記第三の抵抗との接続点に前記比較器を接続したことを特徴とする電池システム。
【請求項8】
請求項7に記載の電池システムにおいて、
前記第一の抵抗と前記第三の抵抗との接続点から第四の抵抗を介して前記比較器を接続したことを特徴とする電池システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の電池システムにおいて、
前記診断回路は、電池システムの起動時に前記放電用スイッチの故障診断を行うことを特徴とする電池システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の電池システムにおいて、
前記比較器の前記所定の電圧に、前記電池が過放電状態のときの電圧を設定することを特徴とする電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−90474(P2012−90474A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236472(P2010−236472)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】