説明

電池パック、電子機器、充電器、電池駆動式電子機器システム

【課題】 電池パックにより携帯型の電子機器内を冷却する。
【解決手段】 デジタルカメラ3の電源として用いられる電池パック4に、蓄熱材料で形成された冷却部48を一体に設ける。電池パック4は、充電器5によって充電される際に、冷却部48が充電器5のペルチェ素子60に接触し、このペルチェ素子60が吸熱動作を行なうことにより冷却部48を冷却する。冷却部48が冷却された電池パック4をデジタルカメラ3の電池室7に収納すると、冷却部48はデジタルカメラ3内で冷気を放出し、基板や固体撮像装置等の発熱する部品を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を電力源として用いる電子機器の冷却技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDやC−MOS等の固体撮像装置で被写体光を撮像し、これによって得た撮像信号をデジタルの画像データに変換してメモリ等の記憶媒体に記憶するデジタルスチルカメラ(以下、デジタルカメラと略称する)が普及している。デジタルカメラでは、撮像を行なうことによって固体撮像装置や、固体撮像装置の駆動回路等の温度が上昇する。これは、固体撮像装置に設けられた多数の受光素子に蓄積された電荷を転送路を用いて転送する際に起こる発熱が原因であり、撮像時間に比例して温度の上昇が大きくなる。
【0003】
固体撮像装置では、受光していないときにも受光素子に電荷が蓄積される、いわゆる暗電流が発生する。この暗電流は、受光素子によって実際に受光することにより蓄積された電荷に取り込まれてしまうため、スローシャッタ等で夜景を撮影したときには、暗電流の乗った受光素子に相当する画素が光点となり、撮影画像のS/N比を悪化させてしまう。この暗電流は、固体撮像装置の温度上昇にともなって増加することが知られており、例えば、固体撮像装置の温度が10°上昇すると暗電流は2倍以上に増加する。
【0004】
上記固体撮像装置の温度上昇による暗電流の悪影響を解消するために、本体ケース内の空気を電動ファンによって強制的に排気し、空冷するようにしたビデオカメラが発明されている(例えば、特許文献1参照)。また、冷却ユニットの熱伝導板を挿入して固体撮像装置に接触させ、熱伝導板を介してペルチェ素子により固体撮像装置を冷却するようにしたデジタルカメラが発明されている(例えば、特許文献2参照)。その他、物品を冷却する装置として、ドライアイス等の冷媒を用いた保冷コンテナ(例えば、特許文献3参照)や、ペルチェ素子を用いた保冷装置(例えば、特許文献4参照)等が知られている。
【特許文献1】特開平10−285441号公報
【特許文献2】特開2003−304420号公報
【特許文献3】特開2004−150735号公報
【特許文献4】特開2001−021249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の発明は、カメラ内の空気の循環を良くするために筐体を大型化する必要がある。更に、電動ファンの騒音や、消費電力の増加による電池の消耗等も問題となる。また、特許文献2記載の発明は、冷却ユニットを携行していないときには、固体撮像装置を冷却することができず、デジタルカメラと冷却ユニットとを携行する場合には、携行物の増加により煩雑さが増してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記各問題点を解決するためのもので、機器の大型化、消費電力の増加、不携行時の使用不能、取り扱いの煩雑さ等の問題を発生させずに、デジタルカメラ等の電子機器内の冷却を行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明の電池パックは、バッテリーセルと、蓄熱材料で形成された冷却部と、バッテリーセルを収納し、冷却部の一部が外部に露呈されるように保持するケースとから構成した。冷却部の冷却は、電池パックごと冷蔵庫等で冷やしてもよいし、冷却部がケースから着脱できるように構成して、冷却部だけを冷蔵庫で冷やしてからケースに取り付けてもよい。更に、バッテリーセルと冷却部との間に断熱材を配することにより、バッテリーセルの温度が低下しないようにした。
【0008】
また、電池パックのケースの少なくとも一部を蓄熱材料で形成して、冷却ケースとした。この場合にも、バッテリーセルと冷却ケースとの間に断熱材を配した。
【0009】
更に、冷却部または冷却ケースの蓄熱量を、バッテリーセルの電力から発生する熱量と相殺し得る程度とした。
【0010】
次に、本発明の電子機器は、冷却部または冷却ケースが冷却された電池パックが収納される電池室を設け、この電池室の壁面に、電池パックの冷却部または冷却ケースから放出された冷気を電子機器内に送り込む通気孔を設けた。また、電池パックが電池室に収納された際に、冷却部、または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分が電子機器の内側を向くように、該電池パックの収納方向を規定する手段を設けた。更に、通気孔は、電池パックの冷却部または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分に対面する位置に設けた。また、通気孔は、発熱する部品や、発熱する部品を取り付けた基板の近傍に配置した。
【0011】
また、本発明の別の電子機器では、冷却部または冷却ケースが冷却された電池パックが収納される電池室を設け、この電池室の壁面に、冷却部または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分と、電子機器内に組み込まれた発熱する部品とに接触する熱伝達部材を設けた。熱伝達部材に接触される発熱する部品としては、固体撮像装置や、多数の電子部品が取り付けられたプリント基板を用いた。
【0012】
更に、電子機器の外形形状を形成する外装部品に断熱性を付与した。
【0013】
更に、本発明の充電器は、冷却部または冷却ケースを備えた電池パックが収納される電池収納部と、電池パック内のバッテリーセルに充電を行なう充電回路と、冷却部または冷却ケースの冷却を行なう冷却手段と、充電回路と冷却手段とを制御する制御部とを設けた。
【0014】
上記制御部により、電池パックのバッテリーセルへの充電と同時にまたは順次に冷却手段を作動させ、冷却部または冷却ケースの冷却を行なうようにした。また、バッテリーセルへの充電完了後に充電回路を停止、または補助充電状態に切り換え、冷却手段による冷却部または冷却ケースの冷却を継続するようにした。更に、冷却部または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分の温度を測定する温度センサを設け、温度センサの測定結果に基づいて冷却手段を制御し、冷却部または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分を予め設定された温度に保つようにした。
【0015】
また、冷却手段としてペルチェ素子を用い、冷却部または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分に接触させて冷却を行なうようにした。また、別の冷却手段としては、熱交換機を用い、電池パックの周囲の温度下げて冷却部または冷却ケースの冷却を行なうようにした。
【0016】
以上で説明した電池パック、電子機器、充電器を組み合わせ、電池駆動式電子機器システムを構成した。
【発明の効果】
【0017】
以上で説明した電池パック、電子機器、充電器、電池駆動式電子機器システムによれば、電子機器に電池パックをセットするだけで電子機器内を冷却することができるので、電子機器のサイズが大型化することはない。また、外付けの冷却ユニットのように使用したいときに携行していなかったり、携行時に煩雑さが増す等の問題も発生しない。
【0018】
更に、冷却部として蓄熱材料を用いたので、冷却時の騒音や、消費電力の増加等の問題も発生しない。また、冷却部を取り外せるようにしたので、冷却部だけを冷蔵庫等で冷やして使用することができる。更には、バッテリーセルと冷却部との間に断熱材を配した。これらにより、バッテリーセルの温度が必要以上に低くなるのを防止することができるので、電池パックの出力電圧が低下するようなことはない。なお、電池パックのケースを蓄熱材料で形成すれば、冷却部を設けることによる電池パックの大型化を防ぐことができる。
【0019】
また、電池パックを交換する際に、冷却部も十分に冷えたものと交換されるため、バッテリーセルの電力から発生する熱量を相殺し得る蓄熱量を備えた冷却部や冷却ケースを使用すれば、電池パックを交換しながら長時間使用しても、電子機器内の温度上昇を防止することができる。
【0020】
更に、電子機器の電池室内に通気孔を設ける、冷却部または冷却カバーの蓄熱材料で形成された部分を電子機器の内側に向ける、通気孔を冷却部または冷却カバーの蓄熱材料で形成された部分に対面させる、通気孔を発熱する部品または発熱する部品を取り付けた基板の近傍に設ける等の工夫を施したので、冷却部または冷却ケースから放出された冷気を電子機器内に適切に供給することができる。
【0021】
また、電池パックの冷却部と、固体撮像装置やプリント基板等の発熱する部品との間に熱伝達部材を配置し、この熱伝達部材を介して直接冷却することもできるので、発熱量の大きな部品であっても効果的に冷却することができる。
【0022】
また、電池パックの充電器に、冷却部または冷却ケースを冷却する冷却手段を設けたので、電池パックの充電と同時に冷却部の冷却も行なうことができる。これにより、充電済みの電池パックを電子機器にセットすることにより、必ず電子機器内の冷却を行なうことができる。更に、充電器では、バッテリーセルへの充電が完了した後も冷却部または冷却ケースの冷却は継続して行なわれるため、常に適正に冷却された冷却部または冷却ケースを有する電池パックを使用することができる。なお、温度センサで冷却部または冷却ケースの温度を測定し、所定の温度に保つようにしたので、冷却不足や過冷却は発生しない。
【0023】
更に、電池パックの冷却部の冷却には、ペルチェ素子や熱交換機等の一般に普及している冷却手段を用いたので、比較的低コストに採用することができる。特に、熱交換機を使用した場合には、電池パック全体を冷却することができるので、充電効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の電池駆動式電子機器システムの一例である、デジタルカメラシステムの構成を示す概略図である。デジタルカメラシステム2は、デジタルカメラ3と、このデジタルカメラ3の電源として用いられる電池パック4と、この電池パック4を充電する充電器5とから構成されている。電池パック4は、冷却部48を備えており、充電器5によって充電を行なう際に同時に冷却部48が冷却される。この電池パック4をデジタルカメラの電池室7に収納すると、電源の供給と同時に内部の冷却を行なうことができる。
【0025】
図2(A),(B)は、デジタルカメラ3の外観形状を示す斜視図である。デジタルカメラ3の前面及び上面には、撮影レンズ10が組み込まれた鏡筒部11,対物側ファインダ窓12,ストロボ発光部13と、シャッタボタン14,モード選択ダイヤル15等が設けられている。モード選択ダイヤル15は、デジタルカメラ3の動作モードを静止画撮影モード,動画撮影モード,再生モード等の各種モード間で切り換え、かつデジタルカメラ3の電源をオン/オフする操作に用いられる。
【0026】
デジタルカメラ3の背面及び側面には、接眼側ファインダ窓18,画像表示部19,各種操作ボタン20と、メモリカードスロット21等が設けられている。画像表示部19は、例えば、液晶ディスプレイパネル(LCDパネル)からなり、撮影中または撮影済みの画像や各種設定メニュー等を表示する。各種操作ボタン20は、デジタルカメラ3による撮影時または再生時の各種操作に用いられる。メモリカードスロット21の奥には、挿入されたメモリカード22と電気的に接続するメモリカードコネクタが組み込まれている。
【0027】
デジタルカメラ3を正面から見て左方側には、デジタルカメラ3の電源となる電池パック4が収納されている。図3に示すように、デジタルカメラ3の底面には、電池パック4が収納される電池室7にアクセスするための開口25が設けられている。この開口25は、回動自在に軸支された電池蓋26によって開閉される。
【0028】
デジタルカメラ3の断面図である図4に示すように、デジタルカメラ3内には、撮影レンズ10を組み込んで鏡筒部11内に収納されたレンズ鏡筒30と、固体撮像装置31と、対物側ファインダ窓12と接眼側ファインダ窓18との間に配置された光学ファインダ32と、ストロボ発光部13を含むストロボ装置33と、メイン基板34,電源基板35等が組み込まれている。
【0029】
固体撮像装置31は、CCDやCMOS等のイメージセンサであり、レンズ鏡筒30の背後に配置されて撮影レンズ10よって結像された被写体光を撮像し、この被写体光の光量に応じた撮像信号を出力する。メイン基板34には、CPUやメモリ等の各種電子部品が取り付けられ、デジタルカメラ3の各部を制御する制御回路や、固体撮像装置を駆動する駆動回路等が設けられている。このメイン基板34は、電池室7の側方に配置されている。電源基板35には、電池パック4から供給された電気を変圧し、デジタルカメラ3の各部に給電する電源回路が設けられている。この電源基板35は、電池室7の上方に配置されている。
【0030】
電池室7の上面には穴7aが形成され、電源基板35に接続された金属接片36が挿入されている。電池室7のデジタルカメラ2の内側を向いている側面には、図5(A)に示すように、矩形状の開口からなる通気孔39が形成されている。
【0031】
デジタルカメラ2の外形形状を構成する外装部材42は、金属やプラスチック等で形成された外殻部43と、この外殻部の外側に配された断熱部44とから構成されている。断熱部44は、断熱性を有する金属や合成樹脂等の断熱材料によって形成されている。なお、外殻部43の内側に断熱部44を配してもよいし、外装部材自体を断熱材料で形成してもよい。
【0032】
電池パック4の断面図である図6に示すように、電池パック4は、二次電池であるバッテリーセル47と、略板状に形成された冷却部48と、この冷却部48とバッテリーセル47との間を断熱する断熱材49と、バッテリーセル47に電気的に接続された金属製の接点50と、これらを収納する例えばプラスチックで形成されたケース51とから構成されている。ケース51には、冷却部48の一方の面48aを外部に露呈させる開口51aが形成されている。また、電池パック4のデジタルカメラ3への誤装填を防止するため、ケース51の側面で厚み方向の中心からずれた位置には一対の突起51bが、電池室7の端部には突起51bが嵌合する凹部7bが形成されている。
【0033】
冷却部48は、蓄熱材料で形成されており、電池パック4ごと冷やされることによって冷熱を蓄積する。蓄熱材料としては、蓄熱効果の高い金属や合成樹脂を使用してもよいし、液体状またはゲル状等の蓄熱材料を密閉収納した、いわゆる保冷材を用いてもよい。この冷却部48には、フル充電時のバッテリーセル47の電力から発生する熱量と相殺し得る程度の蓄熱量が与えられている。
【0034】
充電及び冷却された電池パック4をデジタルカメラ3の電池室7に収納すると、ケース51の突起51bと電池室7の凹部7bとの嵌合により、冷却部48が必ずデジタルカメラ3の内側を向く。電池室7の側面で、冷却部48に対面する位置には通気孔39が設けられているため、冷却部48から放出された冷気は通気孔39を通ってデジタルカメラ3内に導入される。通気孔39の近傍には、メイン基板34や電源基板35が配置されているため、冷却部48の冷気によって効果的に冷却することができる。また、デジタルカメラ3の外装部材42に断熱性が付与されているため、デジタルカメラ3内に放出された冷気の温度が下がりにくくなる。そのため、通気孔39から離れた位置にある固体撮像装置31やストロボ装置33も冷却することができる。
【0035】
また、電池パック4に冷却部48を組み込むことによって電池パック4のサイズは僅かに大きくなるが、デジタルカメラ3内に冷却ユニットや電動ファンを組み込む場合のように、デジタルカメラ3のサイズが極端に大型化することはなく、騒音や消費電力の増加も発生しない。
【0036】
また、冷却部48は、バッテリーセル47の電力から発生する熱量を相殺し得る蓄熱量を備えているため、電池パック4を交換しながら長時間の撮影を行なっても、内部の温度上昇を防止することができ、暗電流の増加による画像劣化も発生しない。更に、バッテリーセル47と冷却部48との間には断熱材49が配されているため、冷却部48によってバッテリーセル47が冷やされて出力電圧が低下するようなことはない。
【0037】
更に、電池室7の通気孔の形状としては、前述した大きな矩形のもの以外に、図5(B)に示すように、多数の小さな開口からなる通気孔40を用いてもよいし、同図(C)に示すように、多数のスリット状の開口からなる通気孔41を用いてもよい。
【0038】
図7に示すように、充電器5は、略矩形形状をした外装部材の上面に電池パック4が収納される凹状の電池収納部55と、充電ボタン56及び冷却ボタン57と、充電状況及び冷却状態を表すインジケータ58等が設けられている。電池収納部55内の側面には、電池パック4の接点50に接触する複数の金属接片59が設けられている。また、電池収納部55の底面には、冷却部48に接触して冷却を行なう冷却手段であるペルチェ素子60とが配置されている。
【0039】
充電器5の断面図である図8に示すように、ペルチェ素子60は電池収納部55の底面に形成された凹部63内に組み込まれている。周知のようにペルチェ素子60は、P型素子とN型素子からなる二種類の熱電半導体素子を金属電極でπ型に接合したもので、N型素子からP型素子に向かって電流を流すと、ペルチェ効果により一方の面(吸熱面)から吸熱して他方の面(放熱面)から放熱する素子である。充電器5に組み込まれているペルチェ素子60は、電池パック4の冷却部48に接触する上面に吸熱面60aが配置されている。そのため、反対側の放熱面60bに対面する部分には、放熱用の開口64が形成されている。
【0040】
ペルチェ素子60の近傍には、電池収納部55に収納された電池パック4の冷却部48の温度を測定する温度センサ67が設けられている。また、充電器5内には、バッテリーセル47に充電を行なう充電回路68と、ペルチェ素子60を駆動するペルチェ駆動回路69と、これらの回路を制御する制御回路70とが設けられたプリント基板71が設置されている。
【0041】
図8は、充電器5の構成を示すブロック図である。制御回路70は、例えばCPUやプログラムROM,データRAM等からなるマイクロコンピュータからなる。この制御回路70には、前述の充電回路,ペルチェ駆動回路69とともに、充電ボタン56及び冷却ボタン57の操作を検出する各スイッチ74、インジケータ58を構成するLED76、温度センサ67等が接続されている。充電回路68及びペルチェ駆動回路69には、それぞれ金属接片59、及びペルチェ素子60が接続されている。
【0042】
充電器5、例えば、図9のフローチャートに示す手順にしたがって電池パック4の充電及び冷却を行なう。充電器5の電池収納部55に電池パック4が収納され、接点50が金属接片59に接触すると、制御回路70は、例えば金属接片59の抵抗変化等によって電池パック4がセットされたことを検出する。制御回路70は、充電回路68を制御してバッテリーセル47への充電を開始させる。この充電は、バッテリーセル47の充電状態を監視しながら行なわれ、充電完了後には充電回路68による充電が停止される。なお、充電を停止させずに、バッテリーセル47からの自然放電分を常時充電する補助充電に切り換えてもよい。
【0043】
制御回路70は、充電と同時にペルチェ駆動回路69を制御して、ペルチェ素子60に冷却動作を開始させる。図11のフローチャートに示すように、ペルチェ駆動回路69の冷却動作は、温度センサ67で冷却部48の温度を測定し、この測定温度が予め設定されている温度になるようにペルチェ素子60の駆動をオン/オフする能動的な制御である。冷却部48の冷却は、バッテリーセル47への充電が完了した後も継続して行なわれるが、温度が一定になるように制御するので、冷却部48の温度が低下したり、過冷却されることもない。
【0044】
このように、充電と冷却とを自動的に行なうようにしたので、冷却するのを忘れてしまうことはなく、電池パック4の収納によりデジタルカメラ3内を確実に冷却することができる。また、断熱材49によって冷却部48が断熱されているため、充電及び冷却中にバッテリーセル47の温度が低下することもない。
【0045】
なお、電池パック4のセットを検知して自動的に充電と冷却とを行なう動作について説明したが、上記充電器5は、充電停止中や冷却停止中に充電ボタン56や冷却ボタン57が操作されると、強制的に充電や冷却が行なわれる。
【0046】
本実施形態のデジタルカメラシステム2において、予備の電池パック4を携行する際には、予備の電池パック4をクーラーボックスや保冷袋等に収納するとよい。クーラーボックス内で冷却部48により電池パック4全体の温度が低下するが、バッテリーセル47は断熱材49によって保温されるため、電圧が極端に低下することはない。また、バッテリーセル47と冷却部48との間に断熱材49を配したが、バッテリーセル47全体を断熱材で包んでもよい。
【0047】
上記実施形態では、メイン基板や電源基板を効果的に冷却するようにしたが、デジタルカメラにおいて発熱量が大きく、画像に影響を及ぼす部品は固体撮像装置である。そのため、図12の断面図に示すように、デジタルカメラ80のレンズ鏡筒81に取り付けられた固体撮像装置82の背後に、冷却部83が対面するように電池パック84を装填し、電池室85の側壁に、固体撮像装置82と冷却部83とを対面させる通気孔86を設けてもよい。この実施形態の場合、デジタルカメラ80の背後にLCDパネルを組み込むスペースがなくなるため、アイビューファインダ(EVF)87を組み込むとよい。
【0048】
また、上記各実施形態では、冷却部から放出される冷気によって冷却を行なうようにしたが、図13に断面図を示すデジタルカメラ90のように、固体撮像装置91と電池パック92の冷却部93とを熱伝導率の高い材質で形成された熱伝達部材94に接触させ、この熱伝達部材94を介して固体撮像装置91を直接冷却してもよい。これによれば、より効率よく固体撮像装置91を冷却することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、熱伝達部材を介して固体撮像装置を冷却したが、例えば、図14(A),(B)に示すパーソナルコンピュータ100のように、キーボード101が取り付けられたプリント基板102の裏面にシリコン等の薄いシート状の熱伝達シート103を貼り付け、この熱伝達シート103に電池パック104の冷却部105を接触させて、プリント基板102を冷却することもできる。この場合に、熱伝達シート103の面積を大きくしてハードディスク106等に接触させれば、CPU等とともに発熱量の大きなハードディスク106も冷却することができる。
【0050】
更に、上記実施形態では、電池パック内に冷却部を組み込んだが、電池パックと冷却部とを別々に構成し、電池パックに冷却部を着脱自在にしてもよい。例えば、図15(A)に示すように、冷却部の設けられていない電池パック110の上面に、端部に面ファスナー111が設けられた保持ベルト112が取り付けられている。この電池パック110は、同図(D)に示すように、充電器113にセットされて充電される。同図(B)には、電池パック110とともに使用される冷却材114が描かれている。この冷却材114は、柔軟なプラスチック製のパック内に蓄熱剤が密封されたもので、同図(E)に示すように、冷蔵庫115内に収納されて冷却される。
【0051】
図15(C)に示すように、冷却が完了した冷却材114は、充電が完了した電池パック110の上に載置され、保持ベルト112によって電池パック110上に取り付けられる。電池パック110及び冷却材114は、前述の実施形態と同様に、同図(F)に示すデジタルカメラ117の電池室内に収納されて給電及び冷却を行なう。本実施形態によれば、充電器113に冷却手段を設ける必要がないため、デジタルカメラシステムのコストを下げることができる。また、冷却材114だけを冷却することができるため、電池パック110の電圧低下は発生しない。なお、デジタルカメラ117内において電池パック110と冷却材114とが近接することにより、電池パック110の温度が低下するので、電池パック110内に断熱材を組み込んでおくとよい。
【0052】
電池パックへの冷却材の取り付け方法としては、前述の保持ベルトを使った方法以外に、電池パック内に組み込めるようにしてもよい。図16に示す電池パック120は、上面に板状の冷却材121を収納するための凹部122が形成されている。この凹部122の側面には、一対の係止爪123が形成されており、図中2点鎖線で示すように、凹部122内に収納された冷却剤121を係止することができる。本実施形態によれば、電池パック120と冷却材121とを組み合わせたときの一体感が増すため、デジタルカメラへの収納が容易になる。
【0053】
更に、上記実施形態では、電池パックに冷却部を別途設けたが、図17に示す電池パック130のように、蓄熱材料で形成された冷却ケース131内に断熱材132で包まれたバッテリーセル133を収納して、電池パック130を構成してもよい。この電池パック130によれば、冷却部を別に設ける必要がないため、電池パックのサイズが大きくなることはない。また、電池パック130全体から冷気を放射することができるため、冷却効率を向上させることができる。
【0054】
電池パック130の冷却ケース131を効率よく冷却するには、ペルチェ素子で部分的に冷却するよりも全体を冷却するのがよい。図18は、電池パック130の冷却に適した冷却手段を有する充電器140である。この充電器140は、開閉ドア145によって開閉自在とされた充電室141内に電池パック130を垂直方向に向けて収納し、下方に配置された充電回路142によってバッテリーセル133に充電を行なっている。充電室141の上方には、充電室141の上面に設けられた複数個の通気孔143から冷気を送り込む熱交換機144が組み込まれている。充電室141内は、送り込まれた冷気によって温度が下がるため、電池パック130の冷却ケース131を全体的に冷却することができる。
【0055】
なお、上記各実施形態は、デジタルカメラやパーソナルコンピュータを例に説明したが、ポータブルDVDプレーヤーや、シリコンオーディオプレーヤー、携帯電話機等の各種電池駆動式電子機器にも適用することができる。また、冷却部を一体に設ける装置は、電池パックに限定されるものではなく、電池パックに代表される電子機器の付属装置や拡張装置、例えばメモリカード等に冷却部を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のデジタルカメラシステムの構成を示す外観斜視図である。
【図2】デジタルカメラの外観形状を示す斜視図である。
【図3】電池パック及び電池室の形状を示す斜視図である。
【図4】デジタルカメラの構成を示す正面側断面図である。
【図5】通気孔の形状を示す斜視図である。
【図6】電池パックの構成を示す断面図である。
【図7】電池パック及び充電器の外観形状を示す斜視図である。
【図8】充電器の側面断面図である。
【図9】充電器の構成を示すブロック図である。
【図10】充電器の充電及び冷却手順を示すフローチャートである。
【図11】冷却動作の手順を示すフローチャートである。
【図12】本発明の別の実施形態のデジタルカメラの構成を示す側面断面図である。
【図13】本発明の更に別の実施形態のデジタルカメラの構成を示す側面断面図である。
【図14】本発明を実施したパーソナルコンピュータの外観斜視図及び側面断面図である。
【図15】本発明の別の実施形態のデジタルカメラシステムを示す説明図である。
【図16】本発明の別の実施形態の電池パックを示す外観斜視図である。
【図17】本発明の更に別の実施形態の電池パックを示す側面断面図である。
【図18】本発明の別の実施形態の充電器の構成を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0057】
2 デジタルカメラシステム
3,117 デジタルカメラ
4,84,92,104,110,120,130 電池パック
5,113,140 充電器
7,85 電池室
31,82,91 固体撮像装置
39〜42 通気孔
42 外装部材
47,133 バッテリーセル
48,83,93,105 冷却部
49,132 断熱材
51 ケース
55 電池収納部
60 ペルチェ素子
67 温度センサ
70 制御回路
94 熱伝達部材
103 熱伝達シート
114,121 冷却材
131 冷却ケース
144 熱交換機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセルと、蓄熱材料で形成された冷却部と、該バッテリーセルを収納し冷却部の一部が外部に露呈されるように保持するケースとを備えたことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記冷却部は、ケースに対して着脱自在であることを特徴とする請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
前記バッテリーセルと冷却部との間に断熱材を配したことを特徴とする請求項1または2記載の電池パック。
【請求項4】
バッテリーセルと、このバッテリーセルを収納するとともに、少なくとも一部が蓄熱材料で形成された冷却ケースとを備えたことを特徴とする電池パック。
【請求項5】
前記バッテリーセルと冷却ケースとの間に断熱材を配したことを特徴とする請求項4記載の電池パック。
【請求項6】
前記冷却部または冷却ケースは、バッテリーセルの電力から発生する熱量と相殺し得る蓄熱量を備えていることを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の電池パック。
【請求項7】
前記請求項1ないし6いずれか記載の電池パックが、前記冷却部または冷却ケースが冷却された状態で収納される電池室と、この電池室の壁面に形成され、該電池パックの冷却部または冷却ケースから放出された冷気を電子機器内に送り込む通気孔とを設けたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
前記電池パックが電池室に収納された際に、冷却部、または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分が電子機器の内側を向くように、該電池パックの収納方向を規定する手段を設けたことを特徴とする請求項7記載の電子機器。
【請求項9】
前記通気孔は、電池パックの冷却部、または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分に対面する位置に設けられていることを特徴とする請求項7または8記載の電子機器。
【請求項10】
前記通気孔は、発熱する部品、または発熱する部品を取り付けた基板の近傍に設けられていることを特徴とする請求項7ないし9いずれか記載の電子機器。
【請求項11】
前記請求項1ないし6いずれか記載の電池パックが、前記冷却部または冷却ケースが冷却された状態で収納される電池室と、この電池室の壁面に設けられ、電池パックの冷却部または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分と電子機器内に組み込まれた発熱する部品とに接触する熱伝達部材とを設けたことを特徴とする電子機器。
【請求項12】
前記発熱する部品は、固体撮像装置であることを特徴とする請求項10または11記載の電子機器。
【請求項13】
前記発熱する部品は、多数の電子部品が取り付けられたプリント基板であることを特徴とする請求項11記載の電子機器。
【請求項14】
前記電子機器の外形形状を形成する外装部品に断熱性を付与したことを特徴とする請求項7ないし13いずれか記載の電子機器。
【請求項15】
前記請求項1ないし6いずれか記載の電池パックが収納される電池収納部と、電池パック内のバッテリーセルに充電を行なう充電回路と、冷却部または冷却ケースの冷却を行なう冷却手段と、充電回路と冷却手段とを制御する制御部とを設けたことを特徴とする充電器。
【請求項16】
前記制御部は、電池パックのバッテリーセルへの充電と同時にまたは順次に冷却手段を作動させ、冷却部または冷却ケースの冷却を行なうことを特徴とする請求項15記載の充電器。
【請求項17】
前記制御部は、バッテリーセルへの充電完了後に充電回路を停止、または補助充電状態に切り換え、冷却手段による冷却部または冷却ケースの冷却を継続することを特徴とする請求項15または16記載の充電器。
【請求項18】
前記冷却部または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分の温度を測定する温度センサを設け、前記制御部は、温度センサの測定結果に基づいて冷却手段を制御し、冷却部または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分を予め設定された温度に保つことを特徴とする請求項15ないし17いずれか記載の充電器。
【請求項19】
前記冷却手段としてペルチェ素子を用い、冷却部または冷却ケースの蓄熱材料で形成された部分に接触させて冷却を行なうことを特徴とする請求項15ないし18いずれか記載の充電器。
【請求項20】
前記冷却手段として熱交換機を用い、電池パックの周囲の温度を下げて冷却部または冷却ケースの冷却を行なうことを特徴とする請求項15ないし19いずれか記載の充電器。
【請求項21】
前記請求項1ないし6いずれか記載の電池パックと、請求項7ないし14いずれか記載の電子機器と、請求項15ないし20いずれか記載の充電器とから構成したことを特徴とする電池駆動式電子機器システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−92894(P2006−92894A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276540(P2004−276540)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】