電池パック、電子機器、電力システムおよび電動車両
【課題】電圧、電流、温度の測定データを利用するだけで劣化予測が可能な電池パックと、電池パックを使用する電子機器、電力システムおよび電動車両を提供する。
【解決手段】満充電容量算出部は、1または複数の電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、電力量から前記電池の劣化の度合いを算出し、算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出する。満充電容量更新部は、補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、補正された満充電容量によって、設定満充電容量を更新する。満充電容量算出部および満充電容量更新部は、電池パックに搭載されたマイクロコンピュータの機能により実現される。
【解決手段】満充電容量算出部は、1または複数の電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、電力量から前記電池の劣化の度合いを算出し、算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出する。満充電容量更新部は、補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、補正された満充電容量によって、設定満充電容量を更新する。満充電容量算出部および満充電容量更新部は、電池パックに搭載されたマイクロコンピュータの機能により実現される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば2次電池の電池パックと、電池パックを使用する電子機器、電力システムおよび電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池等の電池を含む電池パックは、モバイル電子機器、電動車両、バックアップ電源等として広く使用されている。電池パックは、1または複数の2次電池と、電池の電圧、電流、温度を検出する検出部を含む保護回路とがラミネートフィルム、合成樹脂ケース等の外装によって一体化されている構成と定義される。電池パックは、認証回路を有する場合もある。
【0003】
電池パックは、電子機器本体に電池パックの残容量を発光ダイオード等の点滅でユーザに知らせることが広くなされている。しかしながら、より正確な残容量表示が要請される場合もある。電子機器として、例えば放送局用のカムコーダ(Camcorder: Camera and recorderの略)の場合では、業務用である関係で、正確な残容量表示が必要である。
【0004】
2次電池の残容量を検出する方法として、電流または電力量を積算することにより充電容量を求める積算方式が知られている。2次電池使用時に電圧と電流を測定し、電圧×電流により使用した電力を積算する。積算電力と2次電池の満充電容量との割合を求め、2次電池の容量保持率または残容量率が算出される。
【0005】
一般的に、リチウムイオン2次電池は、劣化により満充電容量が減少する。電池パックは使用していくにつれて劣化が進み満充電にしても新品(未使用品)のものより放電できる容量は減少していく。電池パックに搭載されたマイクロコンピュータにおいて残容量算出している場合は、劣化により満充電容量、残容量等のデータ信頼性が低くなる。
【0006】
バッテリー劣化状態による残容量の精度の低下を防止するために、充電回数やサイクルカウントと、容量の劣化の関係を予め試験データにより取得し、その充電回数やサイクルカウントに追従して満充電容量値を更新している。しかしながら、電池パックの劣化状態は、ユーザの使用頻度や使用環境の影響によって一定ではない。そのため、単に使用回数だけでは正確な劣化状態を求めることができない。
【0007】
さらに、一度残容量を0まで放電してから満充電状態まで充電することによって正確な満充電容量を測定できる。しかしながら、この方法では、ユーザが意図的に満充電状態の電池パックを最後まで放電する必要があり、ユーザに対して余計な負担をかける問題がある。
【0008】
特許文献1には、劣化により電池の内部インピーダンスが上昇する特性を利用して正確に残容量を算出することが記載されている。特許文献1では、電池をいったん休止状態においた後、一定電流で短時間放電、または充電し、その放電または充電前後の端子電圧の変化から内部抵抗を求め、残容量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−67932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のものは、休止状態においた後に、短時間の放電および充電を行う必要があり、通常の充電・放電動作と別の動作(処理)を行うことが必要とされる。
【0011】
したがって、本開示の目的は、内部インピーダンスを測定するための特別な回路、システムを構築する必要はなく、電圧、電流、温度の測定データを利用するだけで劣化予測が可能な電池パックと、電池パックを使用する電子機器、電力システムおよび電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、1または複数の電池と、
電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、電力量から電池の劣化の度合いを算出し、算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出する満充電容量算出部と、
補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、補正された満充電容量によって、設定満充電容量を更新する満充電容量更新部とを備える電池パックである。
好ましくは、満充電容量算出部は、期間における温度上昇による熱損失を補正した電力量を算出する。
【0013】
本開示の方法は、1または複数の電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、電力量から電池の劣化の度合いを算出し、
算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出し、
補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、補正された満充電容量によって、設定満充電容量を更新する満充電容量算出方法である。
【0014】
本開示は、上述した電池パックを有し、電池パックから電力の供給を受ける電子機器である。
本開示は、上述した電池パックが再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって充電される電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから、電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、電池パックに関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。
本開示は、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を備え、
電力情報送受信部が受信した情報に基づき、上述した電池パックの充放電制御を行う電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから、電力の供給を受け、発電装置または電力網から電池パックに電力を供給する電力システムである。
【発明の効果】
【0015】
実施の形態によれば、電池の内部抵抗を測定するための特別な回路、システムを構築する必要はなく、電池パックの残容量算出システムで一般的に利用される電圧、電流、温度の測定データを利用するだけで劣化の度合いの情報を得ることが可能となる。ユーザの特別な操作を必要とせず、自動的に劣化の度合いを測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】劣化状態が異なる電池パックの放電電圧の変化を示す略線図である。
【図2】電力量と容量保持率の関係を示す略線図である。
【図3】劣化率と環境温度と放電負荷とを異ならせた場合の電力量を示すデータの一例である。
【図4】図3のデータに対して温度上昇のデータを追加した略線図である。
【図5】図4のデータに対して熱損失補正後の電力量を追加した略線図である。
【図6】熱損失補正後の電力量と容量保持率との関係を示す略線図である。
【図7】熱損失補正後の電力量から計算された容量保持率を示す略線図である。
【図8】一実施の形態の電池パックの構成例を示すブロック図である。
【図9】残容量表示部による表示の一例を示す略線図である。
【図10】一実施の形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】一実施の形態の変形例の処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】電池パックの応用例を説明するためのブロック図である。
【図13】電池パックの応用例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<劣化の度合いの検出と設定満充電容量値の更新>
<電池パックの構成>
<電池パックにおける処理の流れ>
<応用例>
<変形例>
なお、以下に説明する実施の形態は、好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この開示の範囲は、以下の説明において、特にこの開示を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0018】
<劣化の度合いの検出と設定満充電容量値の更新>
電池パックには、マイクロコンピュータが搭載されており、マイクロコンピュータには、周期的に測定された電圧、電流、温度の情報が供給される。マイクロコンピュータが電池パックに保持されている満充電容量値から例えば放電電流の積算値(mAh)を減算することによって残容量が、算出される。新品の電池パックの場合では、公称の満充電容量がマイクロコンピュータのプログラム上または不揮発性メモリに記憶されている。
【0019】
図1は、劣化の程度が異なる複数の電池パックの放電電圧の変化の一例を示す。図1において、参照符号Caは、新品の電池パックの放電電圧の変化曲線を示す。満充電容量が1950mAhである。参照符号Cbは、劣化率が30%の電池パックの放電電圧の変化曲線を示す。満充電容量が(1950mAh×0.7=1365mAh)である。参照符号Ccは、劣化率が50%の電池パックの放電電圧の変化曲線を示す。満充電容量が(1950mAh×0.5=975mAh)である。
【0020】
マイクロコンピュータは、「電流×電圧」による電力を積算することによって電力量を算出する。本開示では、満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量が求められる。一例として、所定の放電容量が400mAhとされる。図1において斜線領域が電力量と対応している。新品の電池パックに比して劣化の度合いが進行するほど、この電力量が減少する。この電力量の差は、劣化により電池の内部インピーダンスが上昇するために生じる。
【0021】
所定の放電容量の値としては、適正な値が設定される。本開示では、ユーザが使用時に、特別な操作をせずに残容量を自動的に算出できるものであり、所定の放電容量の値が大きすぎると、ユーザの使用時にその値に到達することが少ないために、残容量を算出できない問題が生じる。逆に、所定の放電容量の値が小さすぎると、算出された残容量の精度が低下する問題が生じる。このような点から例えば所定の放電容量が400mAhに設定されている。この値は、一例であって、上述した問題を生じないような値であれば、他の値を設定できる。
【0022】
満充電状態において放電を開始してから400mAhの放電容量までの期間の電力量(以下、測定電力量と適宜称する)が測定される。この測定電力量と容量保持率との関係は、図2に示すように、ほぼ線形の関係を有する。容量保持率は、新品(未使用)の電池パックの満充電容量を100%とした時の割合である。劣化率(%)は、新品の電池パックからの満充電容量の低下の割合である。さらに、図1および図2は、電池パックのある種類に関しての特性である。同じ種類の電池パックにおいての特性のバラツキは、殆どない。したがって、電力量を測定することによって、容量保持率(劣化率)を求めることができる。
【0023】
しかしながら、電力量は放電負荷、温度(電池パック内部でサーミスタ等の温度検出素子によって測定された温度であり、以下、環境温度と適宜称する)により変化するので、400mAh放電するまでの期間の電力量をそのまま使用することができない。図3に環境温度および放電負荷による電力量の変化を示す。図3Aは、新品の電池パックに関するもので、図3Bは、劣化率30%の電池パックに関するもので、図3Cは、劣化率50%の電池パックに関するものである。図3に示す試験データの内で、例えば(環境温度=23℃、放電負荷=15Wの場合)の3個のデータを(容量保持率対電力量)のグラフ上にプロットしたものが図2のグラフである。
【0024】
図3から分かるように、劣化率が同じ電池パックの場合では、環境温度が高いほど、電力量が多くなり、放電負荷が大きいほど、電力量が少なくなる。しかしながら、劣化率が大きいほど、電力量が減少するので、電力量のみからは、劣化率を正確に求めることができない。例えば新品の電池パック(図3A)の場合、(環境温度=15℃、放電負荷=25W)の場合(対応する行に*を付加する)では、電力量=6.0382Whとなる。一方、劣化率30%の電池パック(図3B)の場合(対応する行に*を付加する)、(環境温度=35℃、放電負荷=10W)の場合では、電力量=6.0397Whとなる。したがって、電力量は、ほぼ等しいものとなり、電力量のみでは、劣化の度合いを判断することができない。
【0025】
外部環境による電力量の変化を詳しく解析していくと、温度による影響が関係していることが分かった。図4は、図3のデータに対して、満充電状態で放電を開始してから放電容量が400mAhとなるまでの温度上昇のデータを追加したものを示す。上述した条件の二つのデータ(図4Aおよび図4Bにおいてそれぞれ*を付加した行のデータ)を比較すると、電力量が殆ど同一であるが、温度上昇が(6℃および3.3℃)と約3℃の差が発生している。
【0026】
すなわち、同じ電力量であっても、温度上昇による電力の損失量が相違している。この温度上昇による電力損失を電力量測定に加味することによって、より正確に劣化率を測定することが可能となる。具体的な温度補正は、温度上昇[℃]に対して電池毎に設定される係数との積である熱損失を電力量に加算することでなされる。この係数は、実験によって得られた温度上昇から算出された値であって、電池の種類によって異なる値である。一例として、温度上昇[℃]×0.066を熱損失として電力量(図3、図4)に加算する。図5は、熱損失補正後の電力量を示す。この熱損失補正後の電力量から劣化の度合いが求められる。
【0027】
図5に示す試験データから熱損失補正後の電力量と容量保持率との関係が求められる。さらに、1次式に近似した算出式が得られる。例えば(環境温度=23℃、放電負荷=15Wの場合)の3個のデータを図6に示す(容量保持率対電力量)のグラフ上にプロットする。3個の点を結ぶ線は、ほぼ直線となる。この直線は、下記の1次式でもって近似される。この式は、使用する電池パックの種類によって異なるので、電池パック毎に適宜式を設定し、電池パック内のメモリ等に予め記憶させておくようになされる。
容量保持率[%]y=226.13×電力量x[Wh]−1346.3 (式1)
但し、上式で求まった容量保持率が50%以下の場合は、50%とし、100%以上の場合は、100%とする。
【0028】
満充電容量[mAh]は、下記のように求められる。
満充電容量[mAh]=公称容量×容量保持率[%]/100 (式2)
公称容量は、新品時の満充電容量である。公称容量は、例えば1950mAhである。
【0029】
図3〜図5に示す試験データでは、放電負荷が10W〜25Wの範囲とされ、環境温度が15℃〜35℃の範囲とされている。すなわち、環境温度と放電負荷との組合せが12通り存在する。しかしながら、この一実施の形態では、(環境温度=23℃、放電負荷=15W)以外の組合せに関しても、上述した一つの1次式(式1)を使用して容量保持率を計算するようにしている。
【0030】
計算された容量保持率の値を図7に示す。(環境温度=23℃、放電負荷=15W)の場合の容量保持率は、誤差が小さい。他の環境温度および放電負荷の組合せに関しても、誤差を許容範囲内のものと扱っている。約±10%の誤差範囲内で、容量保持率を算出することができる。しかしながら、環境温度が設定範囲を超えた値例えば0℃および45℃の場合では、誤差が許容範囲を超えたものとなる。放電負荷についても同様である。したがって、容量保持率を計算する処理は、放電負荷および環境温度が所定の範囲内のみ行われるようになされている。なお、放電負荷および環境温度の設定範囲の具体的値は、一例である。
【0031】
他の方法として、環境温度および放電負荷の12通りの組合せに関して、図6のグラフおよび上述した1次式を予め得ておき、電力量の測定時の環境温度および放電負荷に応じて一つの1次式を選択して、容量保持率を算出することも可能である。この方法は、精度が向上するが、処理の負担が増える。
【0032】
さらに、計算された容量保持率によって、満充電容量が式2にしたがって補正される。補正後の満充電容量を補正された満充電容量と称する。残容量計算のために、マイクロコンピュータ(プログラム)または不揮発性メモリ内に満充電容量が記憶されている。この満充電容量を設定満充電容量と称する。補正された満充電容量が現在の設定満充電容量に比して小の場合に、補正された満充電容量が設定満充電容量となるように、設定満充電容量が減少するように更新される。更新を行う場合、設定満充電容量が徐々に変化するようになされる。例えば1回の更新で、設定満充電容量の変化の量が公称満充電容量の0.5%に固定される。これは、算出誤差による満充電容量の過度な変化を抑えると共に、スムーズに満充電容量が更新されることによってユーザに違和感を与えないようにするためである。
【0033】
更新された設定満充電容量は、常温(25℃)、放電負荷(15W)時に放電可能な容量とされる。これは、満充電から常温環境下で標準放電した時の放電容量を満充電容量と定義しているためである。今回の標準放電は、15Wを放電負荷としている。残容量算出時は、この満充電容量値を基にして温度、放電負荷を加味して残容量が計算される。
【0034】
上述した容量保持率の算出動作は、放電負荷および環境温度が設定範囲内の値であり、放電容量400mAhまでの放電がなされると、自動的にマイクロコンピュータが処理を行う。したがって、ユーザは特別な操作をする必要はなく、通常の使用範囲で自動的に容量劣化が検出可能となる。
【0035】
得られた設定満充電容量を使用して、既存の電流または電力量を積算することにより充電容量を求める積算方式によって、mAhの単位で残容量をマイクロコンピュータが計算することができる。電池パックと接続された本体機器、または充電器は、電池パックとの通信によって、残容量データ、設定満充電容量データを取得する。この設定満充電容量データを参照することによって、どの程度劣化が進んでいるかが判断できる。
【0036】
<電池パックの構成>
図8は、2次電池例えばリチウムイオン電池を使用した電池パックの構成を示す。電池パックは、充電時には充電器に装着され、+端子1と−端子2がそれぞれ充電器の+端子、−端子に接続され、充電が行われる。電子機器使用時には充電時と同様に、+端子1と−端子2が電子機器の+端子、−端子に接続され、放電が行われる。電子機器は、業務用カムコーダ、携帯電話、ノートPC(パーソナルコンピュータ)等である。さらに、後述するように、携帯機器以外に電動車両、家庭内電力システムと接続される場合もある。
【0037】
電池パックは主に、電池7、マイクロコンピュータ10、アナログフロントエンド11、保護回路12、スイッチ部4、通信端子3a,3bで構成されている。電池7は、リチウムイオン電池等の2次電池で、4個の2次電池を直列に接続したものである。但し、4個の電池の直列接続に限らず、1または複数の電池を直列および/または並列に接続した構成に対しても本開示を適用できる。
【0038】
マイクロコンピュータ10は、劣化の度合いを算出し、劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出する満充電容量算出部としての機能と、補正された満充電容量によって設定満充電容量を更新する満充電容量更新部としての機能とを有する。マイクロコンピュータ10は、具体的には、例えばMCU(Micro Controller Unit)の構成とされる。M
CUは、一つの集積回路にコンピュータシステムをまとめた、組み込み用のマイクロプロセッサのことである。MCUは、一般的なマイクロプロセッサと異なり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ、I/O関連等の多くの周辺機能をMCU自体に搭載している。
【0039】
マイクロコンピュータ10は、アナログフロントエンド11から入力された電圧値、電流値を使用して上述したような容量保持率の算出、残容量の算出等の処理を行うようになされている。温度検出素子(例えばサーミスタ)8によって環境温度(電池温度)を測定する。測定された環境温度のデータがマイクロコンピュータ10に供給される。さらに、不揮発性メモリ例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory )13がマイクロコンピュータ10に接続されている。EEPROM13によって、マイクロコンピュータ10に対する電源供給の停止によるデータ消滅が回避される。
【0040】
アナログフロントエンド11は、電池パック内の電池7の各電池の電圧を測定し、マイクロコンピュータ10に測定値を供給する。また、電流検出抵抗9を使用して電流が検出され、検出された電流が電流積算部14に供給される。電流積算部14が放電電流を積算し、放電容量を検出する。放電容量がマイクロコンピュータ10に供給される。さらに、アナログフロントエンド11は、電池7の電圧を安定化して電源電圧を発生するレギュレータとしての機能も有する。
【0041】
保護回路12は、電池7のいずれかの電池の電圧が過充電検出電圧になったとき、または、電池7の電圧が過放電検出電圧以下になったとき、スイッチ部4に制御信号を送ることにより、過充電、過放電を防止する。リチウムイオン電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.2V±0.5Vと定められ、過放電検出電圧が2.4V±0.1Vと定められる。さらに、保護回路12によって過電流保護動作がなされる。
【0042】
スイッチ部4は、充電制御FET(Field Effect Transistor)5と、放電制御FET
6とから構成されている。電池電圧が過充電検出電圧となったときは、充電制御FET5をOFFとし、充電電流が流れないように制御される。なお、充電制御FET5のOFF後は寄生ダイオード5aを介することによって放電のみが可能となる。
【0043】
電池電圧が過放電検出電圧となったときは、放電制御FET6をOFFとし、放電電流が流れないように制御される。なお、放電制御FET6のOFF後は寄生ダイオード6aを介することによって充電のみが可能となる。
【0044】
通信端子3a,3bは、電子機器に装着された際、電池容量の情報を機器に送信するためのものである。電池パックと電子機器との間を結ぶ通信路としては、標準方式としてSMBus(System Management Bus)が使用される。さらに、端子3cは、ID抵抗16と接続された端子である。ID抵抗16の抵抗値によって、電池パックが正規なものか否かが充電器または電子機器において判定される。
【0045】
さらに、マイクロコンピュータ10に対して、4個のLED(Light Emitting Diode)L1〜L4からなる残容量表示部15が接続されている。残容量表示部15は、例えば電池パックと接続される電子機器に設けられた残容量スイッチの操作によって点灯する。電池パックの残容量表示部15は、電子機器に装着された状態でも外部から見えるように、電池パックの筐体の一部に設けられている。スイッチの押し下げは、通信で電池パックに知らされる。
【0046】
図9に示すように、残容量表示部15のLEDは、絶対充電率に応じて選択的に発光される。絶対充電率は、公称容量に対しての充電率である。残容量表示部15の表示によって、例えば20%〜40%の劣化が進んでいる電池の場合では、満充電にしても、3個のLED(L1〜L3)しか点灯しないので、ユーザが劣化の程度を一瞬で判断することが可能となる。
【0047】
<電池パックにおける処理の流れ>
図10に示すフローチャートを参照して電池パックの動作について説明する。図示されている一連の処理は、所定の周期例えば1秒でもって繰り返しなされる。すなわち、マイコンプログラム内にて無限ループ処理とする。なお、特別な記載がない限り、以下の処理は、マイクロコンピュータ10においてなされるものである。
【0048】
満充電状態から放電を開始すると、処理が始まる。処理の最初のステップS1において、アナログフロントエンド11を介してマイクロコンピュータ10が電圧、電流、温度を測定する。測定周期が1秒とされる。ステップS2において、測定周期毎に「電流×電圧」にて電力が算出される。温度上昇が発生した場合は、温度上昇[℃]×0.66の結果が熱損失として電力量に対して加算される。
【0049】
ステップS3において残容量が算出される。例えば設定満充電容量から放電容量を減算することで残容量が算出される。
【0050】
ステップS4以降の処理によって、劣化の度合いが調べられる。ステップS4では、満充電から放電を開始して所定の放電容量(例えば400mAh)に達したか否かが判定される。判定結果が否定であれば、処理がステップS1(電圧、電流、温度の測定)に戻る。ステップS4の判定結果が肯定であれば、ステップS5に処理が移る。
【0051】
ステップS5では、ステップS1において測定された環境温度が範囲(15℃〜35℃)内であるか否かが判定される。判定結果が否定であれば、処理がステップS1(電圧、電流、温度の測定)に戻る。ステップS5の判定結果が肯定であれば、ステップS6に処理が移る。
【0052】
ステップS6では、ステップS1において測定された電圧および電流から求められた放電負荷が範囲(10W〜25W)内であるか否かが判定される。判定結果が否定であれば、処理がステップS1(電圧、電流、温度の測定)に戻る。ステップS6の判定結果が肯定であれば、ステップS7に処理が移る。
【0053】
ステップS7では、上述した式1によって、容量保持率[%]が算出され、求まった容量保持率から式2によって、劣化が補正された満充電容量[mAh]が算出される。ステップS8において、劣化が補正された満充電容量と現在の設定満充電容量とが比較される。すなわち、劣化が補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小さいか否かが判定される。判定結果が否定であれば、処理がステップS1(電圧、電流、温度の測定)に戻る。ステップS8の判定結果が肯定であれば、ステップS9に処理が移る。
【0054】
ステップS9において、公称満充電容量の0.5%が現在の設定満充電容量から減算される。但し、算出される満充電容量の最小値は、公称満充電容量の50%とされ、これより小さい値とならないようにされる。若し、50%以下となった場合は、50%以下となったことをユーザに対して通知する表示等のアラームを設けても良い。公称満充電容量が例えば1950mAhの場合、9.75mAhのステップで設定満充電容量が減少される。この場合の下限値は、975mAh(劣化率が50%)である。このようにマイクロコンピュータ10のプログラム上または不揮発性メモリ13に保持されている設定満充電容量が更新される。
【0055】
さらに、図10では、省略されているが、マイクロコンピュータ10が残容量スイッチの操作を受け付けると、4個のLEDの選択的発光によって、残容量表示部15が公称満充電容量に対しての充電率を表示する。これにより、例えば劣化の程度をユーザに対して知らせることができる。
【0056】
さらに、電動工具、電動車両等のアプリケーションでは、負荷変動が大きい。例えば放電容量が400mAhになる直前まで100Wの大きな負荷で放電しており、400mAhになったところで負荷が10W〜25Wの範囲内の値となった場合には、劣化算出の結果が大きな誤差を持つ問題がある。
【0057】
このような問題に対して図11に示すように、ステップS6(図10)の代わりにステップS11を設ける処理を行うようにしても良い。ステップS11以外の他の処理は、図10と同一である。ステップS11は、400mAhに達するまでの間の負荷が範囲(10W〜25W)内であるか否かを判定する処理である。判定結果が否定であれば、処理がステップS1(電圧、電流、温度の測定)に戻る。ステップS11の判定結果が肯定であれば、ステップS7の処理(劣化算出と満充電容量の算出)に処理が移る。
【0058】
上述した本開示による電池パックは、以下のような利点を有する。
・ユーザは特別な操作をする必要はなく、通常の使用範囲で自動的に容量劣化が検出可能となる。
・電力量測定時の放電負荷が一定の負荷でなくても良い。上述した例では、放電負荷が10W〜25Wの範囲とされる。
・電力量測定時の環境温度が所定の温度の必要がなく、上述した例では、15℃〜35℃の範囲内であれば良い。
・電圧、電流、温度データのみを使用して、予め算出した1次式により容量保持率を算出することができる。新たに、データテーブルをマイクロコンピュータの内部または不揮発性メモリ内に持つ必要がない。
・劣化状態の更新は、設定満充電容量を書き換えることであり、公称満充電容量の0.5%の値を設定満充電容量から減算することで更新がなされる。したがって、満充電容量の過度な変化を抑え、ユーザに違和感を与えないスムーズな更新を行うことができる。
・設定満充電容量の精度が高くなり、設定満充電容量を使用した残容量の算出の精度を高くすることができる。
・ユーザ側で残容量表示部15の表示によって、劣化状態を判断できる。したがって、電池パックの故障か、寿命に達したのかを容易に判断ができる。
.電池パックの容量不足による本体機器使用上でのトラブルを未然に予防できる。
【0059】
なお、本開示は、以下のような構成も取ることができる。
(1)1または複数の電池と、
前記電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、前記電力量から前記電池の劣化の度合いを算出し、算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出する満充電容量算出部と、
前記補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、前記補正された満充電容量によって、前記設定満充電容量を更新する満充電容量更新部とを備える電池パック。
(2)前記満充電容量算出部は、前記期間における温度上昇による熱損失によって前記電力量を補正する前記(1)に記載の電池パック。
(3)前記満充電容量算出部は、前記期間における温度上昇値と前記電池毎に設定される係数との積によって熱損失を求め、該熱損失によって前記電力量を補正する前記(1)または(2)に記載の電池パック。
(4)前記満充電容量算出部は、環境温度が予め設定した範囲内にある場合に、前記満充電容量を算出する前記(1)、(2)または(3)に記載の電池パック。
(5)前記満充電容量算出部は、放電負荷が予め設定した範囲内にある場合に、前記満充電容量を算出する前記(1)、(2)、(3)または(4)に記載の電池パック。
(6)前記満充電容量更新部は、設定満充電容量値が徐々に変化するように、前記設定満充電容量値を補正する前記(1)、(2)、(3)、(4)または(5)に記載の電池パック。
(7)前記満充電容量算出部は、前記電力量と予め求められた値AおよびBとによる近似式(A×電力量−B)によって、前記電池の劣化の度合いを算出する前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)または(6)に記載の電池パック。
【0060】
<応用例>
本開示は、上述した電池パックを有し、電池パックから電力の供給を受ける電子機器である。
本開示は、上述した電池パックが再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって充電される電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから、電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、電池パックに関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。
本開示は、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した電池パックの充放電制御を行う電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから、電力の供給を受け、発電装置または電力網から電池パックに電力を供給する電力システムである。
「応用例としての住宅における蓄電システム」
本開示を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図12を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108等を介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104等の独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0061】
住宅101には、発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサー111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。発電装置104として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105d等である。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。
【0062】
蓄電装置103に対して、上述した本開示の電池パックが適用される。蓄電装置103は、2次電池又はキャパシタから構成されている。例えば、リチウムイオン電池によって構成されている。リチウムイオン電池は、定置型であっても、電動車両106で使用されるものでも良い。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0063】
各種のセンサー111は、例えば人感センサー、照度センサー、物体検知センサー、消費電力センサー、振動センサー、接触センサー、温度センサー、赤外線センサー等である。各種センサー111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサー111からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0064】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchron
ous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェー
スを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0065】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表
示されても良い。
【0066】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、家庭内発電装置104、電力消費装置105、各種センサー111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0067】
以上のように、電力が火力102a、原子力102b、水力102c等の集中型電力系統102のみならず、家庭内発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0068】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0069】
「応用例としての車両における蓄電システム」
本開示を車両用の蓄電システムに適用した例について、図13を参照して説明する。図13に、本開示が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれを電池に一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0070】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、電池208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。電池208に対して、上述した本開示の電池パックが適用される。
【0071】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。電池208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0072】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力を電池208に蓄積することが可能である。
【0073】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力が電池208に蓄積される。
【0074】
電池208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0075】
図示しないが、2次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残容量に関する情報に基づき、電池残容量表示を行う情報処理装置などがある。
【0076】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれを電池に一旦貯めておいた電力を用いて、モーターで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモーターの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モーターのみで走行、エンジンとモーター走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本開示は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本開示は有効に適用可能である。
【0077】
<変形例>
以上、本願の実施形態について具体的に説明したが、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば図10に示すフローチャートにおいて、環境温度または放電負荷が所定の範囲内か否かの判断をステップS9の設定満充電容量の更新の前の処理として行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0078】
4・・・スイッチ部
7・・・電池
8・・・温度検出素子
9・・・電流検出抵抗
10・・・マイクロコンピュータ
14・・・電流積算部
15・・・残容量表示部
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば2次電池の電池パックと、電池パックを使用する電子機器、電力システムおよび電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池等の電池を含む電池パックは、モバイル電子機器、電動車両、バックアップ電源等として広く使用されている。電池パックは、1または複数の2次電池と、電池の電圧、電流、温度を検出する検出部を含む保護回路とがラミネートフィルム、合成樹脂ケース等の外装によって一体化されている構成と定義される。電池パックは、認証回路を有する場合もある。
【0003】
電池パックは、電子機器本体に電池パックの残容量を発光ダイオード等の点滅でユーザに知らせることが広くなされている。しかしながら、より正確な残容量表示が要請される場合もある。電子機器として、例えば放送局用のカムコーダ(Camcorder: Camera and recorderの略)の場合では、業務用である関係で、正確な残容量表示が必要である。
【0004】
2次電池の残容量を検出する方法として、電流または電力量を積算することにより充電容量を求める積算方式が知られている。2次電池使用時に電圧と電流を測定し、電圧×電流により使用した電力を積算する。積算電力と2次電池の満充電容量との割合を求め、2次電池の容量保持率または残容量率が算出される。
【0005】
一般的に、リチウムイオン2次電池は、劣化により満充電容量が減少する。電池パックは使用していくにつれて劣化が進み満充電にしても新品(未使用品)のものより放電できる容量は減少していく。電池パックに搭載されたマイクロコンピュータにおいて残容量算出している場合は、劣化により満充電容量、残容量等のデータ信頼性が低くなる。
【0006】
バッテリー劣化状態による残容量の精度の低下を防止するために、充電回数やサイクルカウントと、容量の劣化の関係を予め試験データにより取得し、その充電回数やサイクルカウントに追従して満充電容量値を更新している。しかしながら、電池パックの劣化状態は、ユーザの使用頻度や使用環境の影響によって一定ではない。そのため、単に使用回数だけでは正確な劣化状態を求めることができない。
【0007】
さらに、一度残容量を0まで放電してから満充電状態まで充電することによって正確な満充電容量を測定できる。しかしながら、この方法では、ユーザが意図的に満充電状態の電池パックを最後まで放電する必要があり、ユーザに対して余計な負担をかける問題がある。
【0008】
特許文献1には、劣化により電池の内部インピーダンスが上昇する特性を利用して正確に残容量を算出することが記載されている。特許文献1では、電池をいったん休止状態においた後、一定電流で短時間放電、または充電し、その放電または充電前後の端子電圧の変化から内部抵抗を求め、残容量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−67932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のものは、休止状態においた後に、短時間の放電および充電を行う必要があり、通常の充電・放電動作と別の動作(処理)を行うことが必要とされる。
【0011】
したがって、本開示の目的は、内部インピーダンスを測定するための特別な回路、システムを構築する必要はなく、電圧、電流、温度の測定データを利用するだけで劣化予測が可能な電池パックと、電池パックを使用する電子機器、電力システムおよび電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、1または複数の電池と、
電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、電力量から電池の劣化の度合いを算出し、算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出する満充電容量算出部と、
補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、補正された満充電容量によって、設定満充電容量を更新する満充電容量更新部とを備える電池パックである。
好ましくは、満充電容量算出部は、期間における温度上昇による熱損失を補正した電力量を算出する。
【0013】
本開示の方法は、1または複数の電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、電力量から電池の劣化の度合いを算出し、
算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出し、
補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、補正された満充電容量によって、設定満充電容量を更新する満充電容量算出方法である。
【0014】
本開示は、上述した電池パックを有し、電池パックから電力の供給を受ける電子機器である。
本開示は、上述した電池パックが再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって充電される電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから、電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、電池パックに関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。
本開示は、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を備え、
電力情報送受信部が受信した情報に基づき、上述した電池パックの充放電制御を行う電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから、電力の供給を受け、発電装置または電力網から電池パックに電力を供給する電力システムである。
【発明の効果】
【0015】
実施の形態によれば、電池の内部抵抗を測定するための特別な回路、システムを構築する必要はなく、電池パックの残容量算出システムで一般的に利用される電圧、電流、温度の測定データを利用するだけで劣化の度合いの情報を得ることが可能となる。ユーザの特別な操作を必要とせず、自動的に劣化の度合いを測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】劣化状態が異なる電池パックの放電電圧の変化を示す略線図である。
【図2】電力量と容量保持率の関係を示す略線図である。
【図3】劣化率と環境温度と放電負荷とを異ならせた場合の電力量を示すデータの一例である。
【図4】図3のデータに対して温度上昇のデータを追加した略線図である。
【図5】図4のデータに対して熱損失補正後の電力量を追加した略線図である。
【図6】熱損失補正後の電力量と容量保持率との関係を示す略線図である。
【図7】熱損失補正後の電力量から計算された容量保持率を示す略線図である。
【図8】一実施の形態の電池パックの構成例を示すブロック図である。
【図9】残容量表示部による表示の一例を示す略線図である。
【図10】一実施の形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】一実施の形態の変形例の処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】電池パックの応用例を説明するためのブロック図である。
【図13】電池パックの応用例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<劣化の度合いの検出と設定満充電容量値の更新>
<電池パックの構成>
<電池パックにおける処理の流れ>
<応用例>
<変形例>
なお、以下に説明する実施の形態は、好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この開示の範囲は、以下の説明において、特にこの開示を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0018】
<劣化の度合いの検出と設定満充電容量値の更新>
電池パックには、マイクロコンピュータが搭載されており、マイクロコンピュータには、周期的に測定された電圧、電流、温度の情報が供給される。マイクロコンピュータが電池パックに保持されている満充電容量値から例えば放電電流の積算値(mAh)を減算することによって残容量が、算出される。新品の電池パックの場合では、公称の満充電容量がマイクロコンピュータのプログラム上または不揮発性メモリに記憶されている。
【0019】
図1は、劣化の程度が異なる複数の電池パックの放電電圧の変化の一例を示す。図1において、参照符号Caは、新品の電池パックの放電電圧の変化曲線を示す。満充電容量が1950mAhである。参照符号Cbは、劣化率が30%の電池パックの放電電圧の変化曲線を示す。満充電容量が(1950mAh×0.7=1365mAh)である。参照符号Ccは、劣化率が50%の電池パックの放電電圧の変化曲線を示す。満充電容量が(1950mAh×0.5=975mAh)である。
【0020】
マイクロコンピュータは、「電流×電圧」による電力を積算することによって電力量を算出する。本開示では、満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量が求められる。一例として、所定の放電容量が400mAhとされる。図1において斜線領域が電力量と対応している。新品の電池パックに比して劣化の度合いが進行するほど、この電力量が減少する。この電力量の差は、劣化により電池の内部インピーダンスが上昇するために生じる。
【0021】
所定の放電容量の値としては、適正な値が設定される。本開示では、ユーザが使用時に、特別な操作をせずに残容量を自動的に算出できるものであり、所定の放電容量の値が大きすぎると、ユーザの使用時にその値に到達することが少ないために、残容量を算出できない問題が生じる。逆に、所定の放電容量の値が小さすぎると、算出された残容量の精度が低下する問題が生じる。このような点から例えば所定の放電容量が400mAhに設定されている。この値は、一例であって、上述した問題を生じないような値であれば、他の値を設定できる。
【0022】
満充電状態において放電を開始してから400mAhの放電容量までの期間の電力量(以下、測定電力量と適宜称する)が測定される。この測定電力量と容量保持率との関係は、図2に示すように、ほぼ線形の関係を有する。容量保持率は、新品(未使用)の電池パックの満充電容量を100%とした時の割合である。劣化率(%)は、新品の電池パックからの満充電容量の低下の割合である。さらに、図1および図2は、電池パックのある種類に関しての特性である。同じ種類の電池パックにおいての特性のバラツキは、殆どない。したがって、電力量を測定することによって、容量保持率(劣化率)を求めることができる。
【0023】
しかしながら、電力量は放電負荷、温度(電池パック内部でサーミスタ等の温度検出素子によって測定された温度であり、以下、環境温度と適宜称する)により変化するので、400mAh放電するまでの期間の電力量をそのまま使用することができない。図3に環境温度および放電負荷による電力量の変化を示す。図3Aは、新品の電池パックに関するもので、図3Bは、劣化率30%の電池パックに関するもので、図3Cは、劣化率50%の電池パックに関するものである。図3に示す試験データの内で、例えば(環境温度=23℃、放電負荷=15Wの場合)の3個のデータを(容量保持率対電力量)のグラフ上にプロットしたものが図2のグラフである。
【0024】
図3から分かるように、劣化率が同じ電池パックの場合では、環境温度が高いほど、電力量が多くなり、放電負荷が大きいほど、電力量が少なくなる。しかしながら、劣化率が大きいほど、電力量が減少するので、電力量のみからは、劣化率を正確に求めることができない。例えば新品の電池パック(図3A)の場合、(環境温度=15℃、放電負荷=25W)の場合(対応する行に*を付加する)では、電力量=6.0382Whとなる。一方、劣化率30%の電池パック(図3B)の場合(対応する行に*を付加する)、(環境温度=35℃、放電負荷=10W)の場合では、電力量=6.0397Whとなる。したがって、電力量は、ほぼ等しいものとなり、電力量のみでは、劣化の度合いを判断することができない。
【0025】
外部環境による電力量の変化を詳しく解析していくと、温度による影響が関係していることが分かった。図4は、図3のデータに対して、満充電状態で放電を開始してから放電容量が400mAhとなるまでの温度上昇のデータを追加したものを示す。上述した条件の二つのデータ(図4Aおよび図4Bにおいてそれぞれ*を付加した行のデータ)を比較すると、電力量が殆ど同一であるが、温度上昇が(6℃および3.3℃)と約3℃の差が発生している。
【0026】
すなわち、同じ電力量であっても、温度上昇による電力の損失量が相違している。この温度上昇による電力損失を電力量測定に加味することによって、より正確に劣化率を測定することが可能となる。具体的な温度補正は、温度上昇[℃]に対して電池毎に設定される係数との積である熱損失を電力量に加算することでなされる。この係数は、実験によって得られた温度上昇から算出された値であって、電池の種類によって異なる値である。一例として、温度上昇[℃]×0.066を熱損失として電力量(図3、図4)に加算する。図5は、熱損失補正後の電力量を示す。この熱損失補正後の電力量から劣化の度合いが求められる。
【0027】
図5に示す試験データから熱損失補正後の電力量と容量保持率との関係が求められる。さらに、1次式に近似した算出式が得られる。例えば(環境温度=23℃、放電負荷=15Wの場合)の3個のデータを図6に示す(容量保持率対電力量)のグラフ上にプロットする。3個の点を結ぶ線は、ほぼ直線となる。この直線は、下記の1次式でもって近似される。この式は、使用する電池パックの種類によって異なるので、電池パック毎に適宜式を設定し、電池パック内のメモリ等に予め記憶させておくようになされる。
容量保持率[%]y=226.13×電力量x[Wh]−1346.3 (式1)
但し、上式で求まった容量保持率が50%以下の場合は、50%とし、100%以上の場合は、100%とする。
【0028】
満充電容量[mAh]は、下記のように求められる。
満充電容量[mAh]=公称容量×容量保持率[%]/100 (式2)
公称容量は、新品時の満充電容量である。公称容量は、例えば1950mAhである。
【0029】
図3〜図5に示す試験データでは、放電負荷が10W〜25Wの範囲とされ、環境温度が15℃〜35℃の範囲とされている。すなわち、環境温度と放電負荷との組合せが12通り存在する。しかしながら、この一実施の形態では、(環境温度=23℃、放電負荷=15W)以外の組合せに関しても、上述した一つの1次式(式1)を使用して容量保持率を計算するようにしている。
【0030】
計算された容量保持率の値を図7に示す。(環境温度=23℃、放電負荷=15W)の場合の容量保持率は、誤差が小さい。他の環境温度および放電負荷の組合せに関しても、誤差を許容範囲内のものと扱っている。約±10%の誤差範囲内で、容量保持率を算出することができる。しかしながら、環境温度が設定範囲を超えた値例えば0℃および45℃の場合では、誤差が許容範囲を超えたものとなる。放電負荷についても同様である。したがって、容量保持率を計算する処理は、放電負荷および環境温度が所定の範囲内のみ行われるようになされている。なお、放電負荷および環境温度の設定範囲の具体的値は、一例である。
【0031】
他の方法として、環境温度および放電負荷の12通りの組合せに関して、図6のグラフおよび上述した1次式を予め得ておき、電力量の測定時の環境温度および放電負荷に応じて一つの1次式を選択して、容量保持率を算出することも可能である。この方法は、精度が向上するが、処理の負担が増える。
【0032】
さらに、計算された容量保持率によって、満充電容量が式2にしたがって補正される。補正後の満充電容量を補正された満充電容量と称する。残容量計算のために、マイクロコンピュータ(プログラム)または不揮発性メモリ内に満充電容量が記憶されている。この満充電容量を設定満充電容量と称する。補正された満充電容量が現在の設定満充電容量に比して小の場合に、補正された満充電容量が設定満充電容量となるように、設定満充電容量が減少するように更新される。更新を行う場合、設定満充電容量が徐々に変化するようになされる。例えば1回の更新で、設定満充電容量の変化の量が公称満充電容量の0.5%に固定される。これは、算出誤差による満充電容量の過度な変化を抑えると共に、スムーズに満充電容量が更新されることによってユーザに違和感を与えないようにするためである。
【0033】
更新された設定満充電容量は、常温(25℃)、放電負荷(15W)時に放電可能な容量とされる。これは、満充電から常温環境下で標準放電した時の放電容量を満充電容量と定義しているためである。今回の標準放電は、15Wを放電負荷としている。残容量算出時は、この満充電容量値を基にして温度、放電負荷を加味して残容量が計算される。
【0034】
上述した容量保持率の算出動作は、放電負荷および環境温度が設定範囲内の値であり、放電容量400mAhまでの放電がなされると、自動的にマイクロコンピュータが処理を行う。したがって、ユーザは特別な操作をする必要はなく、通常の使用範囲で自動的に容量劣化が検出可能となる。
【0035】
得られた設定満充電容量を使用して、既存の電流または電力量を積算することにより充電容量を求める積算方式によって、mAhの単位で残容量をマイクロコンピュータが計算することができる。電池パックと接続された本体機器、または充電器は、電池パックとの通信によって、残容量データ、設定満充電容量データを取得する。この設定満充電容量データを参照することによって、どの程度劣化が進んでいるかが判断できる。
【0036】
<電池パックの構成>
図8は、2次電池例えばリチウムイオン電池を使用した電池パックの構成を示す。電池パックは、充電時には充電器に装着され、+端子1と−端子2がそれぞれ充電器の+端子、−端子に接続され、充電が行われる。電子機器使用時には充電時と同様に、+端子1と−端子2が電子機器の+端子、−端子に接続され、放電が行われる。電子機器は、業務用カムコーダ、携帯電話、ノートPC(パーソナルコンピュータ)等である。さらに、後述するように、携帯機器以外に電動車両、家庭内電力システムと接続される場合もある。
【0037】
電池パックは主に、電池7、マイクロコンピュータ10、アナログフロントエンド11、保護回路12、スイッチ部4、通信端子3a,3bで構成されている。電池7は、リチウムイオン電池等の2次電池で、4個の2次電池を直列に接続したものである。但し、4個の電池の直列接続に限らず、1または複数の電池を直列および/または並列に接続した構成に対しても本開示を適用できる。
【0038】
マイクロコンピュータ10は、劣化の度合いを算出し、劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出する満充電容量算出部としての機能と、補正された満充電容量によって設定満充電容量を更新する満充電容量更新部としての機能とを有する。マイクロコンピュータ10は、具体的には、例えばMCU(Micro Controller Unit)の構成とされる。M
CUは、一つの集積回路にコンピュータシステムをまとめた、組み込み用のマイクロプロセッサのことである。MCUは、一般的なマイクロプロセッサと異なり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ、I/O関連等の多くの周辺機能をMCU自体に搭載している。
【0039】
マイクロコンピュータ10は、アナログフロントエンド11から入力された電圧値、電流値を使用して上述したような容量保持率の算出、残容量の算出等の処理を行うようになされている。温度検出素子(例えばサーミスタ)8によって環境温度(電池温度)を測定する。測定された環境温度のデータがマイクロコンピュータ10に供給される。さらに、不揮発性メモリ例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory )13がマイクロコンピュータ10に接続されている。EEPROM13によって、マイクロコンピュータ10に対する電源供給の停止によるデータ消滅が回避される。
【0040】
アナログフロントエンド11は、電池パック内の電池7の各電池の電圧を測定し、マイクロコンピュータ10に測定値を供給する。また、電流検出抵抗9を使用して電流が検出され、検出された電流が電流積算部14に供給される。電流積算部14が放電電流を積算し、放電容量を検出する。放電容量がマイクロコンピュータ10に供給される。さらに、アナログフロントエンド11は、電池7の電圧を安定化して電源電圧を発生するレギュレータとしての機能も有する。
【0041】
保護回路12は、電池7のいずれかの電池の電圧が過充電検出電圧になったとき、または、電池7の電圧が過放電検出電圧以下になったとき、スイッチ部4に制御信号を送ることにより、過充電、過放電を防止する。リチウムイオン電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.2V±0.5Vと定められ、過放電検出電圧が2.4V±0.1Vと定められる。さらに、保護回路12によって過電流保護動作がなされる。
【0042】
スイッチ部4は、充電制御FET(Field Effect Transistor)5と、放電制御FET
6とから構成されている。電池電圧が過充電検出電圧となったときは、充電制御FET5をOFFとし、充電電流が流れないように制御される。なお、充電制御FET5のOFF後は寄生ダイオード5aを介することによって放電のみが可能となる。
【0043】
電池電圧が過放電検出電圧となったときは、放電制御FET6をOFFとし、放電電流が流れないように制御される。なお、放電制御FET6のOFF後は寄生ダイオード6aを介することによって充電のみが可能となる。
【0044】
通信端子3a,3bは、電子機器に装着された際、電池容量の情報を機器に送信するためのものである。電池パックと電子機器との間を結ぶ通信路としては、標準方式としてSMBus(System Management Bus)が使用される。さらに、端子3cは、ID抵抗16と接続された端子である。ID抵抗16の抵抗値によって、電池パックが正規なものか否かが充電器または電子機器において判定される。
【0045】
さらに、マイクロコンピュータ10に対して、4個のLED(Light Emitting Diode)L1〜L4からなる残容量表示部15が接続されている。残容量表示部15は、例えば電池パックと接続される電子機器に設けられた残容量スイッチの操作によって点灯する。電池パックの残容量表示部15は、電子機器に装着された状態でも外部から見えるように、電池パックの筐体の一部に設けられている。スイッチの押し下げは、通信で電池パックに知らされる。
【0046】
図9に示すように、残容量表示部15のLEDは、絶対充電率に応じて選択的に発光される。絶対充電率は、公称容量に対しての充電率である。残容量表示部15の表示によって、例えば20%〜40%の劣化が進んでいる電池の場合では、満充電にしても、3個のLED(L1〜L3)しか点灯しないので、ユーザが劣化の程度を一瞬で判断することが可能となる。
【0047】
<電池パックにおける処理の流れ>
図10に示すフローチャートを参照して電池パックの動作について説明する。図示されている一連の処理は、所定の周期例えば1秒でもって繰り返しなされる。すなわち、マイコンプログラム内にて無限ループ処理とする。なお、特別な記載がない限り、以下の処理は、マイクロコンピュータ10においてなされるものである。
【0048】
満充電状態から放電を開始すると、処理が始まる。処理の最初のステップS1において、アナログフロントエンド11を介してマイクロコンピュータ10が電圧、電流、温度を測定する。測定周期が1秒とされる。ステップS2において、測定周期毎に「電流×電圧」にて電力が算出される。温度上昇が発生した場合は、温度上昇[℃]×0.66の結果が熱損失として電力量に対して加算される。
【0049】
ステップS3において残容量が算出される。例えば設定満充電容量から放電容量を減算することで残容量が算出される。
【0050】
ステップS4以降の処理によって、劣化の度合いが調べられる。ステップS4では、満充電から放電を開始して所定の放電容量(例えば400mAh)に達したか否かが判定される。判定結果が否定であれば、処理がステップS1(電圧、電流、温度の測定)に戻る。ステップS4の判定結果が肯定であれば、ステップS5に処理が移る。
【0051】
ステップS5では、ステップS1において測定された環境温度が範囲(15℃〜35℃)内であるか否かが判定される。判定結果が否定であれば、処理がステップS1(電圧、電流、温度の測定)に戻る。ステップS5の判定結果が肯定であれば、ステップS6に処理が移る。
【0052】
ステップS6では、ステップS1において測定された電圧および電流から求められた放電負荷が範囲(10W〜25W)内であるか否かが判定される。判定結果が否定であれば、処理がステップS1(電圧、電流、温度の測定)に戻る。ステップS6の判定結果が肯定であれば、ステップS7に処理が移る。
【0053】
ステップS7では、上述した式1によって、容量保持率[%]が算出され、求まった容量保持率から式2によって、劣化が補正された満充電容量[mAh]が算出される。ステップS8において、劣化が補正された満充電容量と現在の設定満充電容量とが比較される。すなわち、劣化が補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小さいか否かが判定される。判定結果が否定であれば、処理がステップS1(電圧、電流、温度の測定)に戻る。ステップS8の判定結果が肯定であれば、ステップS9に処理が移る。
【0054】
ステップS9において、公称満充電容量の0.5%が現在の設定満充電容量から減算される。但し、算出される満充電容量の最小値は、公称満充電容量の50%とされ、これより小さい値とならないようにされる。若し、50%以下となった場合は、50%以下となったことをユーザに対して通知する表示等のアラームを設けても良い。公称満充電容量が例えば1950mAhの場合、9.75mAhのステップで設定満充電容量が減少される。この場合の下限値は、975mAh(劣化率が50%)である。このようにマイクロコンピュータ10のプログラム上または不揮発性メモリ13に保持されている設定満充電容量が更新される。
【0055】
さらに、図10では、省略されているが、マイクロコンピュータ10が残容量スイッチの操作を受け付けると、4個のLEDの選択的発光によって、残容量表示部15が公称満充電容量に対しての充電率を表示する。これにより、例えば劣化の程度をユーザに対して知らせることができる。
【0056】
さらに、電動工具、電動車両等のアプリケーションでは、負荷変動が大きい。例えば放電容量が400mAhになる直前まで100Wの大きな負荷で放電しており、400mAhになったところで負荷が10W〜25Wの範囲内の値となった場合には、劣化算出の結果が大きな誤差を持つ問題がある。
【0057】
このような問題に対して図11に示すように、ステップS6(図10)の代わりにステップS11を設ける処理を行うようにしても良い。ステップS11以外の他の処理は、図10と同一である。ステップS11は、400mAhに達するまでの間の負荷が範囲(10W〜25W)内であるか否かを判定する処理である。判定結果が否定であれば、処理がステップS1(電圧、電流、温度の測定)に戻る。ステップS11の判定結果が肯定であれば、ステップS7の処理(劣化算出と満充電容量の算出)に処理が移る。
【0058】
上述した本開示による電池パックは、以下のような利点を有する。
・ユーザは特別な操作をする必要はなく、通常の使用範囲で自動的に容量劣化が検出可能となる。
・電力量測定時の放電負荷が一定の負荷でなくても良い。上述した例では、放電負荷が10W〜25Wの範囲とされる。
・電力量測定時の環境温度が所定の温度の必要がなく、上述した例では、15℃〜35℃の範囲内であれば良い。
・電圧、電流、温度データのみを使用して、予め算出した1次式により容量保持率を算出することができる。新たに、データテーブルをマイクロコンピュータの内部または不揮発性メモリ内に持つ必要がない。
・劣化状態の更新は、設定満充電容量を書き換えることであり、公称満充電容量の0.5%の値を設定満充電容量から減算することで更新がなされる。したがって、満充電容量の過度な変化を抑え、ユーザに違和感を与えないスムーズな更新を行うことができる。
・設定満充電容量の精度が高くなり、設定満充電容量を使用した残容量の算出の精度を高くすることができる。
・ユーザ側で残容量表示部15の表示によって、劣化状態を判断できる。したがって、電池パックの故障か、寿命に達したのかを容易に判断ができる。
.電池パックの容量不足による本体機器使用上でのトラブルを未然に予防できる。
【0059】
なお、本開示は、以下のような構成も取ることができる。
(1)1または複数の電池と、
前記電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、前記電力量から前記電池の劣化の度合いを算出し、算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出する満充電容量算出部と、
前記補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、前記補正された満充電容量によって、前記設定満充電容量を更新する満充電容量更新部とを備える電池パック。
(2)前記満充電容量算出部は、前記期間における温度上昇による熱損失によって前記電力量を補正する前記(1)に記載の電池パック。
(3)前記満充電容量算出部は、前記期間における温度上昇値と前記電池毎に設定される係数との積によって熱損失を求め、該熱損失によって前記電力量を補正する前記(1)または(2)に記載の電池パック。
(4)前記満充電容量算出部は、環境温度が予め設定した範囲内にある場合に、前記満充電容量を算出する前記(1)、(2)または(3)に記載の電池パック。
(5)前記満充電容量算出部は、放電負荷が予め設定した範囲内にある場合に、前記満充電容量を算出する前記(1)、(2)、(3)または(4)に記載の電池パック。
(6)前記満充電容量更新部は、設定満充電容量値が徐々に変化するように、前記設定満充電容量値を補正する前記(1)、(2)、(3)、(4)または(5)に記載の電池パック。
(7)前記満充電容量算出部は、前記電力量と予め求められた値AおよびBとによる近似式(A×電力量−B)によって、前記電池の劣化の度合いを算出する前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)または(6)に記載の電池パック。
【0060】
<応用例>
本開示は、上述した電池パックを有し、電池パックから電力の供給を受ける電子機器である。
本開示は、上述した電池パックが再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって充電される電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから、電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、電池パックに関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。
本開示は、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した電池パックの充放電制御を行う電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから、電力の供給を受け、発電装置または電力網から電池パックに電力を供給する電力システムである。
「応用例としての住宅における蓄電システム」
本開示を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図12を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108等を介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104等の独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0061】
住宅101には、発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサー111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。発電装置104として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105d等である。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。
【0062】
蓄電装置103に対して、上述した本開示の電池パックが適用される。蓄電装置103は、2次電池又はキャパシタから構成されている。例えば、リチウムイオン電池によって構成されている。リチウムイオン電池は、定置型であっても、電動車両106で使用されるものでも良い。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0063】
各種のセンサー111は、例えば人感センサー、照度センサー、物体検知センサー、消費電力センサー、振動センサー、接触センサー、温度センサー、赤外線センサー等である。各種センサー111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサー111からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0064】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchron
ous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェー
スを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0065】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表
示されても良い。
【0066】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、家庭内発電装置104、電力消費装置105、各種センサー111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0067】
以上のように、電力が火力102a、原子力102b、水力102c等の集中型電力系統102のみならず、家庭内発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0068】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0069】
「応用例としての車両における蓄電システム」
本開示を車両用の蓄電システムに適用した例について、図13を参照して説明する。図13に、本開示が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれを電池に一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0070】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、電池208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。電池208に対して、上述した本開示の電池パックが適用される。
【0071】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。電池208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0072】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力を電池208に蓄積することが可能である。
【0073】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力が電池208に蓄積される。
【0074】
電池208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0075】
図示しないが、2次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残容量に関する情報に基づき、電池残容量表示を行う情報処理装置などがある。
【0076】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれを電池に一旦貯めておいた電力を用いて、モーターで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモーターの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モーターのみで走行、エンジンとモーター走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本開示は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本開示は有効に適用可能である。
【0077】
<変形例>
以上、本願の実施形態について具体的に説明したが、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば図10に示すフローチャートにおいて、環境温度または放電負荷が所定の範囲内か否かの判断をステップS9の設定満充電容量の更新の前の処理として行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0078】
4・・・スイッチ部
7・・・電池
8・・・温度検出素子
9・・・電流検出抵抗
10・・・マイクロコンピュータ
14・・・電流積算部
15・・・残容量表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の電池と、
前記電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、前記電力量から前記電池の劣化の度合いを算出し、算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出する満充電容量算出部と、
前記補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、前記補正された満充電容量によって、前記設定満充電容量を更新する満充電容量更新部とを備える電池パック。
【請求項2】
前記満充電容量算出部は、前記期間における温度上昇による熱損失によって前記電力量を補正する請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記満充電容量算出部は、前記期間における温度上昇値と前記電池毎に設定される係数との積によって熱損失を求め、該熱損失によって前記電力量を補正する請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記満充電容量算出部は、環境温度が予め設定した範囲内にある場合に、前記満充電容量を算出する請求項1に記載の電池パック。
【請求項5】
前記満充電容量算出部は、放電負荷が予め設定した範囲内にある場合に、前記満充電容量を算出する請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
前記満充電容量更新部は、設定満充電容量値が徐々に変化するように、前記設定満充電容量値を補正する請求項1に記載の電池パック。
【請求項7】
前記満充電容量算出部は、前記電力量と予め求められた値AおよびBとによる近似式(A×電力量−B)によって、前記電池の劣化の度合いを算出する請求項1に記載の電池パック。
【請求項8】
1または複数の電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、前記電力量から前記電池の劣化の度合いを算出し、
算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出し、
前記補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、前記補正された満充電容量によって、前記設定満充電容量を更新する満充電容量算出方法。
【請求項9】
請求項1〜7の何れかに記載の電池パックを有し、前記電池パックから電力の供給を受ける電子機器。
【請求項10】
請求項1〜7の何れかに記載の電池パックが再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって充電される電力システム。
【請求項11】
請求項1〜7の何れかに記載の電池パックから、電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、前記電池パックに関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両。
【請求項12】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を備え、
前記電力情報送受信部が受信した情報に基づき、請求項1〜7の何れかに記載の電池パックの充放電制御を行う電力システム。
【請求項13】
請求項1〜7の何れかに記載の電池パックから、電力の供給を受け、発電装置または電力網から前記電池パックに電力を供給する電力システム。
【請求項1】
1または複数の電池と、
前記電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、前記電力量から前記電池の劣化の度合いを算出し、算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出する満充電容量算出部と、
前記補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、前記補正された満充電容量によって、前記設定満充電容量を更新する満充電容量更新部とを備える電池パック。
【請求項2】
前記満充電容量算出部は、前記期間における温度上昇による熱損失によって前記電力量を補正する請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記満充電容量算出部は、前記期間における温度上昇値と前記電池毎に設定される係数との積によって熱損失を求め、該熱損失によって前記電力量を補正する請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記満充電容量算出部は、環境温度が予め設定した範囲内にある場合に、前記満充電容量を算出する請求項1に記載の電池パック。
【請求項5】
前記満充電容量算出部は、放電負荷が予め設定した範囲内にある場合に、前記満充電容量を算出する請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
前記満充電容量更新部は、設定満充電容量値が徐々に変化するように、前記設定満充電容量値を補正する請求項1に記載の電池パック。
【請求項7】
前記満充電容量算出部は、前記電力量と予め求められた値AおよびBとによる近似式(A×電力量−B)によって、前記電池の劣化の度合いを算出する請求項1に記載の電池パック。
【請求項8】
1または複数の電池の満充電の状態から所定の放電容量を検出した時までの期間の電力量を求め、前記電力量から前記電池の劣化の度合いを算出し、
算出された劣化の度合いによって補正された満充電容量を算出し、
前記補正された満充電容量が現在の設定満充電容量より小の場合に、前記補正された満充電容量によって、前記設定満充電容量を更新する満充電容量算出方法。
【請求項9】
請求項1〜7の何れかに記載の電池パックを有し、前記電池パックから電力の供給を受ける電子機器。
【請求項10】
請求項1〜7の何れかに記載の電池パックが再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって充電される電力システム。
【請求項11】
請求項1〜7の何れかに記載の電池パックから、電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、前記電池パックに関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両。
【請求項12】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を備え、
前記電力情報送受信部が受信した情報に基づき、請求項1〜7の何れかに記載の電池パックの充放電制御を行う電力システム。
【請求項13】
請求項1〜7の何れかに記載の電池パックから、電力の供給を受け、発電装置または電力網から前記電池パックに電力を供給する電力システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−239357(P2012−239357A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108355(P2011−108355)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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