説明

電池モジュール

【課題】フレキシブルプリント基板をベースとした配線モジュールの適用を可能とした電池モジュールを提供する。
【解決手段】正負一対の電極端子14P,14Nを有する複数の単電池11が直列接続されて並べられた単電池群10と、各単電池11の出力電圧を測定するべく電極端子14に設けられた検知部16と個別に接触される複数の電圧検知端子40と、各電圧検知端子40と接続される導電路38を有するフレキシブルプリント基板31と、各電圧検知端子40と相手の検知部16とをフレキシブルプリント基板31を挟んで締結する複数組のボルト20・ナット25と、が具備され、かつフレキシブルプリント基板31における各電圧検知端子40の当接面35には、当該電圧検知端子におけるナット25が当接する領域を相手の検知部16に対して開口する開口部36が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極端子を備えた単電池を複数並べた単電池群に配線モジュールが取り付けられた電池モジュールとして、特許文献1に記載のものが知られている。この種の電池モジュールは、電気自動車やハイブリッド車等の車両に取り付けられて、車両の駆動源として使用される。
上記の配線モジュールは、電極端子間を接続する複数のバスバーと、このバスバーを保持する樹脂プロテクタとを備えており、各バスバーには電圧検知線である電線の一端が接続されているとともに、同電線の他端はECUに接続されていて、ECUが各単電池の出力電圧を監視するようになっている。
【0003】
係る従来の配線モジュールは端的には、樹脂プロテクタに対して各バスバーに接続された複数の電線が配線された構造であるため、単電池の個数が増えてバスバーの個数も増大すると、バスバーに接続される電線の本数も増大し、その結果配線モジュールが全体として大型化する嫌いがある。
そこで電線に代えて、複数の導電路が形成されたフレキシブルプリント基板によってバスバーとECUとを接続することが提案され、これにより配線密度を向上できるとともに、配線モジュールの小型化が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−49047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように配線モジュールにフレキシブルプリント基板を適用した場合は、各単電池の出力電圧を検知する部分の構造が、バスバーと電気的に接触される電圧検知端子を備えて、同電圧検知端子をフレキシブルプリント基板を挟んでバスバーに重ね、バスバーと電圧検知端子とをボルト・ナットで締結することが考えられる。
【0006】
ここで、フレキシブルプリント基板は基部が合成樹脂で形成されているために、締結された箇所でクリープが生じやすいという事情がある。一方、車両に積載される電池モジュールでは振動を受けることが避けられず、そのため上記のクリープに起因してボルト・ナットが緩むことが懸念され、実用化の妨げとなっていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、フレキシブルプリント基板をベースとした配線モジュールの適用を可能とした電池モジュールを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電池モジュールは、正負一対の電極端子を有する複数の単電池が直列接続されて並べられた単電池群と、前記各単電池の出力電圧を測定するべく前記電極端子に設けられた検知部と個別に接触される複数の電圧検知端子と、前記各電圧検知端子と接続される導電路を有するフレキシブルプリント基板と、前記各電圧検知端子と相手の前記検知部とを前記フレキシブルプリント基板を挟んで締結する複数組のボルト・ナットと、が具備され、かつ前記フレキシブルプリント基板における前記各電圧検知端子の当接面には、当該電圧検知端子における少なくとも前記ナットまたは前記ボルトの頭部が当接する領域を相手の前記検知部に対して開口する開口部が形成されているところに特徴を有する。
【0008】
フレキシブルプリント基板は、各開口部を電極端子の検知部に対応させた形態で単電池群に被せられ、各開口部の位置に電圧検知端子が重ねられたのち各電圧検知端子と相手の検知部とがボルト・ナットで締結され、これにより電池モジュールにおける電圧検知回路が構築される。
フレキシブルプリント基板に開口部を設けることで、電圧検知端子における少なくともボルトの頭部とナットとで挟持される領域は、フレキシブルプリント基板を挟むことなく直接に相手の検知部と接触した状態で締め付けられる。そのため、締結部分におけるフレキシブルプリント基板のクリープが回避され、同クリープに起因したボルト・ナットの緩みを未然に防止することができる。
【0009】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記電圧検知端子における前記フレキシブルプリント基板の前記開口部の口縁部に重ねられる周縁部が、前記フレキシブルプリント基板から離間する方向に段差状に曲げ形成されている。
ボルト・ナットで締結した場合に、フレキシブルプリント基板の開口部の口縁部についても挟圧されることが回避され、クリープをより広範囲に亘って抑制できる。
【0010】
(2)前記ボルトと前記ナットのいずれか一方が前記電極端子の検知部側において回転不能な形態で設けられ、前記電圧検知端子が重ねられたのちに他方が螺合されて締め付けられるようになっており、前記電圧検知端子には前記フレキシブルプリント基板の前記開口部を通して前記検知部に係止することで回り止めする回り止め機構が設けられている。ナットまたはボルトの締め込みに伴って電圧検知端子が連れ回りすることが規制され、ボルト・ナットの締め込み動作を効率良く行うことができる。
【0011】
(3)前記電極端子の検知部に形成されたボルト挿通孔は、その周縁の一部に直線部が備えられる一方、前記電圧検知端子に形成されたボルト挿通孔の周縁からは、前記直線部に当接する平板状の係止片が突出形成されることで前記回り止め機構が構成されている。電極端子の検知部側のボルト挿通孔における周縁の一部に直線部を設ける一方、電圧検知端子のボルト挿通孔の周縁に平板状の係止片を形成するといった簡単な構造でもって、電圧検知端子の連れ回りを有効に防ぐことができる。
【0012】
(4)前記単電池の前記電極端子は、当該単電池の上面から立ち上がったのち隣の単電池側に向けて屈曲されたL型板状に形成され、隣り合う電極端子の屈曲部同士が重ねられる一方、この重畳部に前記フレキシブルプリント基板を挟んで前記電圧検知端子が重ねられて前記ボルト・ナットにより共締めされている。隣り合う単電池の電極同士の接続と、同電極に対する電圧検知端子の接続とを併せて行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配線モジュールについてフレキシブルプリント基板をベースとしたものを適用することが可能となり、ひいては一層小型化された電池モジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る単電池群の斜視図
【図2】同正面図
【図3】同平面図
【図4】FPCの斜視図
【図5】同正面図
【図6】同平面図
【図7】同部分拡大平面図
【図8】検知用端子の斜視図
【図9】同正面図
【図10】同平面図
【図11】配線モジュールの斜視図
【図12】同平面図
【図13】同部分拡大平面図
【図14】配線モジュールが単電池群の上面に装着された状態の平面図
【図15】電池モジュールの斜視図
【図16】同正面図
【図17】同平面図
【図18】同平面図
【図19】ボルト・ナットの締結部分の正面視拡大断面図
【図20】その側面視拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図20に基づいて説明する。本実施形態に係る電池モジュールBMは、例えば電気自動車またはハイブリッド自動車等の駆動源として使用される。電池モジュールBMは、図15に示すように、複数(本実施形態では12個)の単電池11が横並びに配置された単電池群10と、単電池群10の上面に装着される配線モジュール30とから構成されている。
【0016】
図1ないし図3によって、単電池群10を説明する。単電池11は、扁平な略直方体状をなす本体部12を備えており、本体部12の上面における長さ方向の中央部には、一対の電極端子14が所定間隔を開けて設けられている。
単電池11は2種類が備えられており、一方の単電池11A(以下、第1単電池11A)では、図1の手前側が正極の電極端子14P、奥側が負極の電極端子14Nであり、他方の単電池11B(以下、第2単電池11B)では逆に、手前側が負極の電極端子14N、奥側が正極の電極端子14Pとなっている。
【0017】
正極の電極端子14Pは、本体部12の上面における図2の正面視で右側縁寄りの位置から所定寸法立ち上がったのち(立ち上がり部15P)、先端部が左側に直角曲げされ(屈曲部16P)、同屈曲部16Pの先端が、単電池11の本体部12の左側面から所定寸法(単電池11の厚さの半分強)突出したL型に形成されている。
負極の電極端子14Nは、同じく本体部12の上面における左側縁寄りの位置から所定寸法立ち上がったのち(立ち上がり部15N)、先端部が右側に直角曲げされ(屈曲部16N)、同屈曲部16Nの先端が、単電池11の本体部12の右側面から同寸法突出したL型に形成されている。
各電極端子14P,14Nの屈曲部16P,16Nが本発明の検知部に相当する。
【0018】
ここで、負極の電極端子14Nの立ち上がり部15Nの立ち上がり寸法の方が、正極の電極端子14Pの立ち上がり部15Pの立ち上がり寸法よりも、電極端子14の板厚分大きく、言い換えると、負極の電極端子14Nの屈曲部16Nの方が、正極の電極端子14Pの屈曲部16Pと比べて、電極端子14の板厚分だけ一段高い位置に形成されている。
正極の電極端子14Pの屈曲部16Pと負極の電極端子14Nの屈曲部16Nには、図19にも示すように、幅方向の中央部において、それぞれボルト挿通孔17(以下、単に挿通孔17)が開口されている。
【0019】
各挿通孔17は、図3に示すように、単電池11の並列方向に長い平面長方形に形成されている。また、正極の電極端子14Pの屈曲部16Pにおける挿通孔17は、その中心が単電池11の左側面の位置と対応し、負極の電極端子14Nの屈曲部16Nにおける挿通孔17は、その中心が単電池11の右側面の位置と対応する。
したがって、各単電池11A,11Bが側面同士を接触させて並べられると、第2単電池11Bの負極の電極端子14Nの屈曲部16Nと、第1単電池11Aの正極の電極端子14Pの屈曲部16Pとが上下に重ねられ、かつ挿通孔17同士が整合されるようになっている。
【0020】
本実施形態では、各単電池11の正極の電極端子14Pについてスタッドボルト20が溶接により固定され、軸部21が屈曲部16Pの上面に突出している。なお、図1おける右奥に配される第1単電池11Aについては、負極の電極端子14Nについてもスタッドボルト20が固定されている。
スタッドボルト20の軸部21には、ナット25(図15参照)が螺着されるようになっている。ナット25は座面にフランジ26が形成されたフランジ付きナットである。このスタッドボルト20とナット25により、本発明の締結部材が構成されている。
【0021】
単電池群10は、以下のようにして組み付けられる。2種類の単電池11A,11Bが6個ずつ交互に横方向に重ねて並べられる。例えば、図1の一番奥の第1単電池11Aが組付台上に設置されたら、次の第2単電池11Bは、その手前側の負極の電極端子14Nにおける屈曲部16Nの挿通孔17を、第1単電池11Aの手前側の正極の電極端子14Pに立てられたスタッドボルト20に挿通しつつ、その第1単電池11Aの左側面に沿って下動させて左側に密接して並べる。
【0022】
続いて、第1単電池11Aが、奥側の負極の電極端子14Nにおける屈曲部16Nの挿通孔17を、第2単電池11Bの奥側の正極の電極端子14Pに立てられたスタッドボルト20に挿通しつつ、その第2単電池11Bの左側面に沿って下動させて左側に密接して並べる。
それ以降、上記と同様にして、負極の電極端子14Nの屈曲部16Nの挿通孔17を、対応する正極の電極端子14Pの屈曲部16Pに立てられたスタッドボルト20に挿通しつつ、第2単電池11Bと第1単電池11Aとが交互に左側に並べられることで、単電池群10が形成される。
【0023】
このように形成された単電池群10では、上面における奥行の中心の少し手前位置に沿った6箇所において、第1単電池11Aにおける正極の電極端子14Pの屈曲部16Pの上面に、第2単電池11Bにおける負極の電極端子14Nの屈曲部16Nが重ねられ、かつ負極の電極端子14Nの屈曲部16Nの上面からスタッドボルト20の軸部21が突出した形態を採り、これらが一列に並んで配される(手前側の電極端子列18A)。
【0024】
一方、奥行の中心の少し奥側位置に沿った中央の5箇所において、第2単電池11Bにおける正極の電極端子14Pの屈曲部16Pの上面に、第1単電池11Aにおける負極の電極端子14Nの屈曲部16Nが重ねられ、かつ負極の電極端子14Nの屈曲部16Nの上面からスタッドボルト20の軸部21が突出した形態となる。なお、右端の第1単電池11Aの奥側に設けられた負極の電極端子14Nは、正極の電極端子14Pと重なることなくその屈曲部16Nにスタッドボルト20が立てられ、また、左端の第2単電池11Bの奥側に設けられた正極の電極端子14Pは、負極の電極端子14Nが重ねられることなく、単体でスタッドボルト20が立ち上げられた形態を採る。これらが一列に並んで配される(奥側の電極端子列18B)。
【0025】
改めると、単電池群10の上面において、手前側の電極端子列18Aでは、正負の電極端子14P,14Nの重なり部分から立ち上げられた形態の6本のスタッドボルト20が一定ピッチで配設され、一方、奥側の電極端子列18Bでは、正負の電極端子14P,14Nの重なり部分から立ち上げられた形態の5本のスタッドボルト20と、正極の単体の電極端子14P並びに負極の単体の電極端子14Nからそれぞれ立ち上げられた2本のスタッドボルト20との合計7本のスタッドボルト20が上記と同じピッチで配設されている。ただし、手前側のスタッドボルト20と奥側のスタッドボルト20とは、単電池11の1枚分だけピッチがずれた千鳥状に配されている。
【0026】
次に、配線モジュール30について説明する。この配線モジュール30は、フレキシブルプリント基板31(以下、単にFPC31という。)を備えている。
FPC31は、ポリイミド等の合成樹脂製のベースフィルムに、プリント配線技術により導電路やランドが形成された構造である。
FPC31は全体としては、図4ないし図6に示すように、単電池群10の上面に設けられた2列の電極端子列18A,18Bの配設領域を覆うことが可能なように、単電池群10の並び方向の長さよりも大きい長さ寸法と、両電極端子列18A,18Bの間隔よりも広い幅寸法とを持った帯状に形成されている。
【0027】
FPC31の表面は、電子部品32と後記する電圧検知端子40とがそれぞれ表面実装される実装面となっており、幅方向の中央部が電子部品32の実装領域33Aに、また、幅方向の両側縁部が電圧検知端子40の実装領域33Bとなっている。
電子部品32の実装領域33Aには、複数の電子部品32が複数組に分けられた上でリフロー半田付けによって導電路に対して接続されている。
【0028】
FPC31における電圧検知端子40の両実装領域33Bは、上記した単電池群10における電極端子14の配設位置と対応して、T字形のスリット34が適宜に入れられることで複数の単位領域35に分けられている。詳細には、手前側の実装領域33Bでは、手前側の電極端子列18Aにおける重なった電極端子14の組と対応して6個の単位領域35に分けられており、奥側の実装領域33Bでは、奥側の電極端子列18Bにおける重なった電極端子14の組(両端のみは電極端子14が単体)と対応して7個の単位領域35に分けられている。
【0029】
各単位領域35には個別に電圧検知端子40が実装されるようになっており、各単位領域35には、電圧検知端子40の平面形状よりも一回り小さい正方形をなす開口部36が形成されている。これらの開口部36は言い換えると、上記した単電池群10の上面に立てられたスタッドボルト20と対応した配置で形成されている。
【0030】
開口部36はまた、図13に示すように、一辺の長さが、スタッドボルト20に螺合されるナット25のフランジ26の直径よりも少し大きい寸法を持った正方形状に形成され、言い換えると、ナット25のフランジ26が開口部36内にすっぽりと入る大きさとなっている。
各開口部36の口縁部36Aには、図7に示すように、全周に亘ってランド37が形成されており、同ランド37における内側の縁辺から引き出された導電路38が、電子部品32の実装領域33Aに向けて形成されて同領域33Aの導電路と接続形成されている。
【0031】
電圧検知端子40について説明する。この電圧検知端子40は、銅、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等の金属板をプレス加工して形成されており、図8ないし図10に示すように、FPC31の単位領域35に形成された開口部36よりも一回り大きい正方形に形成され、言い換えると、ランド37の外形形状とほぼ整合した平面正方形に形成されている。
【0032】
電圧検知端子40の中心には、上記したスタッドボルト20の軸部21を挿通可能なボルト挿通孔として機能する中心孔41が開口されている。この中心孔41は、図10に示すように、全体として少し横長となった八角形状に形成されている。同中心孔41における互いに平行をなして対向した左右の縁辺からは、下向きに直角曲げされた一対の係止片42が形成されている。
左右一対の係止片42は、図19に示すように、単電池11の上面に立てられた電極端子14の屈曲部16に形成された挿通孔17における互いに平行姿勢で対向した左右の短辺17Aの直ぐ内側に入り込むことが可能な間隔を開けて形成されている。
【0033】
電圧検知端子40の周縁部43、より詳細には開口部36の口縁部36Aに形成されたランド37に重ねられる周縁部43は、同じく図19に示すように、FPC31から離れる方向である上方に小寸法段差状に曲げ形成されている。段差の寸法は、FPC31におけるランド37の形成部分の厚さに、半田付けする場合の半田の厚さを加えた程度が好適である。
【0034】
続いて、本実施形態の電池モジュールBMの組付手順の一例を説明する。
まず、既述した要領により、図1ないし図3に示すように、単電池群10が組み付けられる。単電池群10は改めると、その上面における手前側と奥側にそれぞれ電極端子列18A,18Bが形成され、手前側の電極端子列18Aでは、正負の電極端子14P,14Nの重なり部分から立ち上げられた形態の6本のスタッドボルト20が一定ピッチで配設され、一方、奥側の電極端子列18Bでは、正負の電極端子14P,14Nの重なり部分から立ち上げられた形態の5本のスタッドボルト20と、正極の単体の電極端子14P並びに負極の単体の電極端子14Nからそれぞれ立ち上げられた2本のスタッドボルト20との合計7本のスタッドボルト20が上記と同じピッチで配設され、かつ手前側のスタッドボルト20と奥側のスタッドボルト20とは千鳥状に配される。
このように形成された単電池群10は、詳しくは図示しないが、保持板等の公知の固定手段により固定される。
【0035】
一方、配線モジュール30が作成される。それにはまず、図4ないし図6に示すように、FPC31における電子部品32の実装領域33Aに、電子部品32がリフロー半田によって表面実装される。
それとともに、FPC31における電圧検知端子40の両実装領域33Bでは、各単位領域35ごとに電圧検知端子40が表面実装される。
詳細には、各単位領域35において、開口部36の口縁部36Aに形成されたランド37に半田ペーストが塗布されたのち、図13に示すように、同開口部36を覆うようにして電圧検知端子40がそれぞれ載置される。すなわち電圧検知端子40は所定の姿勢とされたのち、一対の係止片42を開口部36の左右の辺の内側に入れつつ、その段差状に曲げ形成された周縁部43がランド37(半田ペースト)に載せられる。係る状態でリフロー炉に通してリフロー半田付けを行うことにより、電圧検知端子40がその周縁部43を対応するランド37に接続した状態で表面実装される。
これにより、図11及び図12に示すように、配線モジュール30が形成される。なお、FPC31に対して、電子部品32と電圧検知端子40とを同時にリフロー半田によって表面実装するようにしてもよい。
【0036】
以上のように作成された配線モジュール30は、図14に示すように、単電池群10の上面における手前側と奥側の両電極端子列18A,18Bに亘って被せられる。
詳細には、図19及び図20に参照して示すように、各スタッドボルト20の軸部21が中心孔41に挿通されつつ、電圧検知端子40が重なった電極端子14P,14Nのうち負極の屈曲部16Nの上に載せられる。それとともに、左右一対の係止片42が、同屈曲部16Nの挿通孔17における左右の短辺17Aの内側に入り込む。
なお、奥側における右端の電圧検知端子40は、単体である負極の電極端子14Nの屈曲部16N上に、また左端の電圧検知端子40は、単体である正極の電極端子14Pの屈曲部16P上に同様の形態で載せられる。
【0037】
このように、配線モジュール30が単電池群10の上面に被せられたら、各スタッドボルト20の軸部21の先端にそれぞれナット25(フランジ付きナット)が螺合され、図示しない工具を利用して締め付けられる。
これにより、図19及び図20に示すように、手前側の6箇所の電極端子14の配設箇所と、奥側における中央の5箇所の電極端子14の配設箇所においては、ナット25のフランジ26が、電圧検知端子40における周縁部43を除いた中央部のみに当てられ、同電圧検知端子40の中央部並びに負極と正極の電極端子14N,14Pの屈曲部16N,16Pの3枚が上下に重なった形態で、ナット25のフランジ26と、スタッドボルト20の頭部22とによって挟み付けられる。
なお、奥側の右端では、電圧検知端子40の中央部と負極の電極端子14Nの屈曲部16Nとが重なり、また左端では、電圧検知端子40の中央部と正極の電極端子14Pの屈曲部16Pとが重なって、それぞれナット25のフランジ26と、スタッドボルト20の頭部22とによって挟み付けられる。
【0038】
以上のように電池モジュールBMが組み付けられると、隣り合う単電池11の正極と負極の電極端子14P,14Nが順次に接続されることで、単電池11が直列接続された単電池群10が構成されるとともに、単電池群10を構成する各単電池11の出力電圧を検知する電圧検知回路が構築される。
【0039】
ここで、ナット25が締め付けられる際、電圧検知端子40を負極の電極端子14Nの屈曲部16N(一部では正極の電極端子14Pの屈曲部16P)に押し付けながら締め付けられることになるが、電圧検知端子40の中心孔41に設けられた一対の平板状の係止片42が、負極の電極端子14Nの屈曲部16N(一部では正極の電極端子14Pの屈曲部16P)の挿通孔17における左右の短辺17Aの内側に入り込んでいて、直線部分同士が対向した形態にあるから、ナット25を締め込んだときに電圧検知端子40が連れ回りすることが規制され、ナット25の締め込みを効率良く行うことができる。
【0040】
またスタッドボルト20とナット25との締結部分では、電圧検知端子40、FPC31の単位領域35並びに正負の電極端子14の屈曲部16(一部では正極または負極の電極端子14の屈曲部16のみ)が重なって挟み付けられるのであるが、FPC31の単位領域35では、ナット25のフランジ26よりも大きい開口部36が開けられているから、図19及び図20に示すように、電圧検知端子40における開口部36と対応した部分(ナット25のフランジ26が押し付けられる部分)は、FPC31を挟むことなく直接に相手の電極端子14の屈曲部16と接触した状態で締め付けられる。そのため、締結部分におけるFPC31のクリープが回避され、同クリープに起因したスタッドボルト20とナット25の緩みを未然に防止することができる。
【0041】
また、電圧検知端子40の周縁部43は、FPC31の単位領域35の開口部36の口縁部36Aを挟んで相手の電極端子14の屈曲部16に当接しており、ナット25の締め付けに伴い電圧検知端子40の周縁部43が開口部36の口縁部36A(ランド37の形成部分)を押し付けることになるが、図19及び図20に示すように、電圧検知端子40の周縁部43は、上面側に逃げるように段差状に形成されているから、同口縁部36Aも挟圧することが避けられ、クリープの発生がより広範囲に亘って抑制される。
【0042】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
スタッドボルト20とナット25との締結部分では、電圧検知端子40、FPC31の単位領域35並びに電極端子14の屈曲部16が重なって挟み付けられるのであるが、FPC31の単位領域35では、ナット25のフランジ26よりも大きい開口部36が開けられているから、電圧検知端子40における開口部36と対応した部分は、FPC31を挟むことなく直接に相手の電極端子14の屈曲部16と接触した状態で締め付けられる。そのため、締結部分におけるFPC31のクリープが回避され、同クリープに起因したスタッドボルト20とナット25の緩みを未然に防止することができる。
【0043】
さらに、電圧検知端子40の周縁部43は、上面側に逃げるように段差状に形成されているから、上記の締結時において開口部36の口縁部36Aについても挟圧されることが回避され、クリープの発生をより広範囲に亘って抑制できる。
このように、FPC31のクリープの発生を防止できたことにより、FPC31をベースとした配線モジュール30の適用が可能となり、ひいては一層小型化された電池モジュールBMを得ることができる。
【0044】
ナット25が締め付けられる際、電圧検知端子40を電極端子14の屈曲部16に押し付けながら締め付けられることになるが、電圧検知端子40の中心孔41に設けられた一対の平板状の係止片42が、電極端子の屈曲部16の挿通孔17における左右の短辺17Aの内側に入り込んでいて、直線部分同士が対向した形態にあるから、ナット25を締め込んだときに電圧検知端子40が連れ回りすることが規制され、ナット25の締め込みを効率良く行うことができる。
【0045】
隣り合う単電池11の電極端子14を接続する部分の構造が、両電極端子14P,14NがL型に形成されて屈曲部16P,16N同士が重ねられ、この重なり合った部分が、上記したスタッドボルト20とナット25により電圧検知端子40と共締めされるようになっているから、隣り合う単電池11を接続する作業も併せて行うことができて、組付作業がより高能率化される。
【0046】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)正負の電極端子と電圧検知端子とを共締めする部分の構造としては、重ねられる下側の屈曲部の下面にナットを溶接等で固定し、電圧検知端子の中心孔から両屈曲部に挿通したボルトをナットに螺合して締め付けるようにしてもよい。この場合、FPCの各単位領域に形成する開口部は、ボルトの頭部がすっぽりと入る大きさとすることが望ましい。
【0047】
(2)上記実施形態では、FPCの開口部の口縁部におけるクリープをも完全に防止するべく、電圧検知端子の周縁部を逃げるように段差状に曲げ形成したのであるが、開口部の口縁部のクリープの影響については無視できるのであれば、電圧検知端子の周縁部に段差部分を形成することは割愛してもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、電圧検知端子の回り止め機構として、一対の平板状係止片を、相手の電極端子の挿通孔における一対の直線状の辺に対向させる構成を採用したが、1枚の係止片を1本の辺に対向させる等、直線部同士を対向させた組の数は任意である。
(4)さらに回り止め機構としては、電圧検知端子の中心孔の内周から係止部を垂下して設ける一方、重ねられる相手の電極端子の屈曲部に形成された挿通孔の内周に、上記の係止部に係止して周方向の移動を規制する凹凸部を設ける等、他の構造を採ってもよい。
【0049】
(5)上記実施形態では、電圧検知端子をFPCに予め表面実装した場合を例示したが、電圧検知端子はボルト・ナットの締結前にFPCに載せられ、ボルト・ナットの締結に伴いFPCの導電路と接続される形態のものであってもよく、このような電圧検知端子を後から装着する形態のものについても、本発明は同様に適用することができる。
(6)また本発明は、単電池が上面に一対の雄ねじ状の電極端子を備えた構造であって、複数個並べられた隣り合う単電池の正負の電極端子間にバスバーが渡されてナットで締め込むことにより直列接続された単電池群が形成されるものについても同様に適用できる。この場合は、単電池群にFPCを被せて、同FPCに表面実装された電圧検知端子、若しくは後から載置された電圧検知端子を、対応するバスバーに対して共締めして接触させることにより、電圧検知回路が構築されることになる。バスバーが本発明にいう検知部となる。
【符号の説明】
【0050】
BM…電池モジュール
10…単電池群
11,11A,11B…単電池
14,14P,14N…電極端子
15P,15N…立ち上がり部
16P,16N…屈曲部(検知部)
17…挿通孔(ボルト挿通孔)
17A…(挿通孔17の)短辺(直線部/回り止め機構)
20…スタッドボルト(ボルト)
25…ナット
26…フランジ
30…配線モジュール
31…FPC(フレキシブルプリント基板)
35…単位領域(当接面)
36…開口部
36A…(開口部36の)口縁部
37…ランド
38…導電路
40…電圧検知端子
41…(電圧検知端子40の)中心孔(ボルト挿通孔)
42…係止片(回り止め機構)
43…(電圧検知端子40の)周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正負一対の電極端子を有する複数の単電池が直列接続されて並べられた単電池群と、
前記各単電池の出力電圧を測定するべく前記電極端子に設けられた検知部と個別に接触される複数の電圧検知端子と、
前記各電圧検知端子と接続される導電路を有するフレキシブルプリント基板と、
前記各電圧検知端子と相手の前記検知部とを前記フレキシブルプリント基板を挟んで締結する複数組のボルト・ナットと、
が具備され、
かつ前記フレキシブルプリント基板における前記各電圧検知端子の当接面には、当該電圧検知端子における少なくとも前記ナットまたは前記ボルトの頭部が当接する領域を相手の前記検知部に対して開口する開口部が形成されていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記電圧検知端子における前記フレキシブルプリント基板の前記開口部の口縁部に重ねられる周縁部が、前記フレキシブルプリント基板から離間する方向に段差状に曲げ形成されていることを特徴とする請求項1記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記ボルトと前記ナットのいずれか一方が前記電極端子の検知部側において回転不能な形態で設けられ、前記電圧検知端子が重ねられたのちに他方が螺合されて締め付けられるようになっており、前記電圧検知端子には前記フレキシブルプリント基板の前記開口部を通して前記検知部に係止することで回り止めする回り止め機構が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記電極端子の検知部に形成されたボルト挿通孔は、その周縁の一部に直線部が備えられる一方、前記電圧検知端子に形成されたボルト挿通孔の周縁からは、前記直線部に当接する平板状の係止片が突出形成されることで前記回り止め機構が構成されていることを特徴とする請求項3記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記単電池の前記電極端子は、当該単電池の上面から立ち上がったのち隣の単電池側に向けて屈曲されたL型板状に形成され、隣り合う電極端子の屈曲部同士が重ねられる一方、この重畳部に前記フレキシブルプリント基板を挟んで前記電圧検知端子が重ねられて前記ボルト・ナットにより共締めされていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−84368(P2013−84368A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221882(P2011−221882)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】