説明

電池配線モジュール

【課題】バスバーに接続された検知電線を電線収容溝に簡単に収容でき、かつ、収容された検知電線が収容溝内からはみ出し難い構成の電池配線モジュールを提供する。
【解決手段】単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、電池の電極端子間を接続する複数個のバスバーと、単位連結ユニットを複数個連結してなる樹脂プロテクタと、単電池群の状態を検出するための検知電線とを備えたものにおいて、単位連結ユニットにはバスバーを保持するバスバー保持部と検知電線を収容する電線収容溝とが設けられており、バスバー保持部側から溝壁部の電線挿通部を通して導出された検知電線が電線収容溝からはみ出すことを防止する電線押さえ片が、電線挿通部近傍ではバスバー保持部とは反対側の溝壁部側から突設されているとともに、その他の位置ではバスバー保持部側の溝壁部から突設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車用の電池モジュールにおいては、正極および負極の電極端子を有する複数の単電池が並んで配置されている。このような電池モジュールにおいては、正極の電極端子(正極端子)および負極の電極端子(負極端子)とが、合成樹脂製の基板部に保持されたバスバーによって接続されることにより複数の単電池が電気的に接続されるようになっている。
複数の単電池を電気的に接続するために、例えば特許文献1に記載されているような電池配線モジュールが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−8955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電池モジュールにおいては、各単電池の状態が検知されるようになっている。その一例として、バスバーに各単電池の端子電圧を測定するための電圧検知電線を個々に接続し、電池配線モジュールの外に導出して、例えばECU等により電圧検知を行う構成が知られている。このような構成では、複数の検知電線を合成樹脂製の基板部に設けられた電線収容部に簡単に、かつ、収容部内からはみ出すことなくすっきり収容することが求められているが、その構造には未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、バスバーに接続された電圧検知用の検知電線を電線収容部に簡単に収容でき、かつ、収容された検知電線が収容部内からはみ出し難い構成の電池配線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明は、正極及び負極の電極端子を有する単電池を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、前記電極端子間を接続する複数個のバスバーと、前記バスバーを保持するための複数のバスバー保持部を有する樹脂プロテクタと、前記単電池群の状態を検出するための検知電線と前記樹脂プロテクタに一対の溝壁部を有して前記バスバー保持部に沿って設けられ前記溝壁部間に前記検知電線を収容する電線収容溝と、前記電線収容溝に形成され前記検知電線を前記電線収容溝内から前記バスバー保持部側に導入するための電線挿通部と、前記電線収容溝の前記溝壁部の一方および他方から反対側の溝壁部側に向けて突設され前記検知電線の押し込み時に弾性変形して前記検知電線の前記電線収容溝内への通過を許容する複数の電線押さえ片と、を備え、前記電線押さえ片のうち少なくとも前記電線挿通部の近傍のものは、前記バスバー保持部とは反対側の前記溝壁部側から突設されているところに特徴を有する。
【0007】
本発明によれば、電線挿通部を通って電線収容溝内に向かう電線は、対向した溝壁部にぶつかって横方向に導出されるが、この時対向した溝壁部の近傍に電線押さえ片が形成されているから、電線収容溝から溝外へはみ出そうとする検知電線を溝内に押さえ込むことが可能となる。また、その他の位置においては、電線押さえ片は反対側の溝壁部に設ける構成としたから、電線収容溝内の検知電線をはみ出し易い位置において押さえ込むこととなり、検知電線がはみ出すことを効果的に防止することができる。
【0008】
また、検知電線は電線押さえ片を弾性変形させて電線収容溝内に押し込むだけで電線収容溝内に収容されるから、検知電線の配設作業が簡単で作業性に優れる。
【0009】
また、前記樹脂プロテクタに前記電線収容溝を塞ぐ蓋部をヒンジを介して開閉回動可能に設ける構成としてもよい。このような構成とすると、電線収容溝内の検知電線をよりはみ出し難くすることができる。
【0010】
前記樹脂プロテクタは単位連結ユニットを複数個連結して構成してもよい。さらに、前記検知電線の先端に前記バスバーに接続される電圧検知端子が設け、検知電線とバスバーとを接続する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バスバーに接続された検知電線を電線収容溝に簡単に収容でき、かつ、収容された検知電線が収容溝内からはみ出し難い構成の電池配線モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の電池モジュールの斜視図
【図2】同じく電池モジュールの平面図
【図3】同じく電池配線モジュール(樹脂プロテクタ)の正面図
【図4】同じく連結ユニットの斜視図
【図5】同じく連結ユニットの平面図
【図6】同じく連結ユニットにバスバーを設置した状態の斜視図
【図7】同じく連結ユニットにバスバーを設置した状態の平面図
【図8】図7のA−A断面図
【図9】図7のB−B断面図
【図10】同じく連結ユニットにバスバーを設置した状態の正面図
【図11】図10のC−C断面図
【図12】同じく電圧検知端子の斜視図
【図13】同じく連結ユニットにバスバー、電圧検知端子、および検知電線を設置した状態の平面図
【図14】図13のD−D断面図
【図15】図13のD−D’断面図
【図16】本発明の他の実施形態の電池モジュールの平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明を電池モジュール10に適用した一実施形態を、図1ないし図15を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る電池モジュール10は、電気自動車又はハイブリッド自動車等の車両(図示せず)に搭載されて、車両を駆動するための電源として使用される。電池モジュール10は、正極および負極の電極端子11を備えた複数の単電池12が並べて配された単電池群13を有する。複数の電極端子11間は、電池配線モジュール20によって電気的に接続されている。
【0014】
なお、以下の説明において、複数の同一部材については、一の部材に符号を付し、他の部材については符号を省略することがある。
【0015】
(単電池12)
図1に示すように、単電池12は扁平な略直方体形状をなしている。単電池12の内部には図示しない発電要素が収容されている。単電池12の上面には、長手方向の両端部寄りの位置に、一対の電極端子11,11が上方に突出して形成されている。単電池12の上面は電極面とされる。電極端子11の一方は正極端子であり、他方は負極端子である。正極端子を構成する電極端子11と、負極端子を構成する電極端子11とは同形、同大である。電極端子11は、金属製の端子台(図示せず)から上方に向かって丸棒状に突出する電極ポスト14を備え、その電極ポスト14の外面にはねじ山が形成されている。単電池12は、隣り合う電極端子11が異なる極性となるように配置されている。複数の単電池12は図1中左右方向に並べられて単電池群13を構成している。
【0016】
(電池配線モジュール20)
電池配線モジュール20は、単電池12の正極および負極の電極端子11の電極ポスト14にそれぞれ挿通されて接続される一対の端子貫通孔22,22(接続部)を有する金属製の複数のバスバー21と、バスバー21を保持するバスバー保持部32を有する合成樹脂製の樹脂プロテクタ30と、バスバー21に重ねて電気的に接続される電圧検知端子50と、電圧検知端子50に接続される検知電線60と、を備える。
【0017】
(樹脂プロテクタ30)
樹脂プロテクタ30は、複数の連結ユニット31をバスバー21によって連結してなり、図1ないし図3に示すように、単電池12の並び方向(図1中左右方向)に細長い形状をなしている。
【0018】
(バスバー21)
バスバー21は、銅、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等からなる金属製の板材を所定の形状にプレス加工することにより形成され、図6、図7、および図11に示すように、全体として略長方形状をなしている。バスバー21の表面には、スズ、ニッケル等の金属がメッキされていてもよい。バスバー21には、電極端子11の電極ポスト14が挿通される円形状をなす一対の端子貫通孔22,22が、バスバー21を貫通して形成されている。この端子貫通孔22は、電極ポスト14の径よりも若干大きく設定されている。端子貫通孔22内に電極ポスト14が貫通された状態でナット15が螺合されて、ナット15と端子台との間にバスバー21が挟まれることにより、電極端子11とバスバー21とが電気的に接続される。
【0019】
バスバー21には、各端子貫通孔22,22と並んで、一対のスリット23,23がバスバー21の長辺に沿って形成されている。このスリット23は、後述する電圧検知端子50をバスバー21に固定するためのものである。
【0020】
また、バスバー21の一対の長辺のうち、スリット23が形成されている側の長辺の両端付近の縁部には、それぞれ、バスバー21を連結ユニット31に対して抜け止めするための抜止突部24,24が、板面から突出するように形成されている。これらの抜止突部24は、上方から見て三角形状に形成されている。
【0021】
また、バスバー21の一対の長辺の長さ方向の中央端縁部には、方形状に切り欠かれた凹部25,26がそれぞれ形成されている。これらの凹部25,26のうち、上述した抜止突部24が設けられている長辺と反対側の長辺に設けられる凹部25は、抜止突部24側の凹部26よりも若干幅広とされており、ここに後述する連結ユニット31の係止突部41が係止されるようになっている(図11参照)。
【0022】
(連結ユニット31)
複数のバスバー21は、図6および図7に示すように、それぞれ連結ユニット31のバスバー保持部32に保持されている。複数の連結ユニット31のうち、一の連結ユニット31とその隣に位置する連結ユニット31とは、バスバー21を介して相互に連結されている。
【0023】
連結ユニット31は、図4および図5に示すように、上方に開口すると共にバスバー21を収容し保持する2つのバスバー保持部32,32と、電圧検知端子50に接続される検知電線60を収容する電線収容溝42と、を備える。なお、図1および図2において、手前側の電池配線モジュール20における左右の端部には、バスバー保持部32を1つだけ有した端部連結ユニット31A,31Aが配置されている。
【0024】
バスバー保持部32は、概ねバスバー21の略半分が収容される大きさに形成されている。バスバー保持部32の底部33は、図4および図5に示すように、バスバー21の周縁部が載置される載置部33を残して下方に開口されている。また、2つのバスバー保持部32,32の間には、隣り合うバスバー21を仕切る絶縁壁34が上方に立ち上がって形成されている。バスバー保持部32は絶縁壁34と、図4における奥側の壁35(後壁35)、図4における左右の側方の壁36(側壁36)、図4における手前側の壁37(前壁37)、後壁35と側壁36の間の面取り壁35Aを備える。なお、図4における右側のバスバー保持部32の前壁37はその一部が切り欠かれており、後述するバレル保持部44に連結されている。
【0025】
バスバー保持部32の絶縁壁34、後壁35、面取り壁35A、側壁36、および前壁37は、1つの電極端子11を取り囲むように設けられている。本実施形態では、これらの壁34,35,35A、36,37が1の電極端子11ごとに設けられており、電極端子11を保護する機能を有している。絶縁壁34は隣接する2つの電極端子11,11の間に配されており、双方の電極端子11,11の保護壁として機能する。
【0026】
これらの壁のうち、絶縁壁34、後壁35、および面取り壁35Aの高さ寸法は、電池配線モジュール20が単電池群13に接続された状態において、電極端子11の電極ポスト14の上端部よりも高く設定されている。これにより、工具等が電極端子11に接触して、正極および負極の電極端子11,11が工具等を介して短絡することを抑制できるようになっている。本実施形態においては、バスバー保持部32の後壁35および面取り壁35Aの高さと、絶縁壁34の高さとは同じに設定されているが、必要に応じて異なっていてもよい。
【0027】
絶縁壁34には、図4および図5に示すように、バスバー保持部32内に収容されたバスバー21の上側に配されて、載置部33とともにバスバー21を保持する機能を有する2つの保持突部38A,38Bが、各バスバー保持部32の内部に向かって突出形成されている。絶縁壁34の下端部には、図5に示すように、2つの保持突部38A,38Bの直下からずれた位置に、バスバー21を載置する載置突部39,39が形成されており、保持突部38A,38Bと載置突部39との間には、図6ないし図8に示すように、バスバー21の短辺部分が配置される。
【0028】
バスバー保持部32の壁部35,35A,36と、底部33(載置部33)との間には図4および図8に示すように、バスバー挿入口40が形成されている。本実施形態では、バスバー挿入口40は、バスバー21を、バスバー保持部32の後壁35から、前壁37方向(図8における左方向)に挿入可能に設けられている。
【0029】
バスバー保持部32の前壁37の両端部の下端には、図11に示すように、バスバー21の凹部25に係止される係止突部41が、バスバー保持部32の内部方向に突出形成されている。バスバー保持部32の係止突部41とバスバー21の凹部25との間には、図11に示すように、連結ユニット31の連結方向におけるクリアランスが形成されており、これにより、連結ユニット31がバスバー21に対して相対的に移動可能となっている。
【0030】
また連結ユニット31には、後述する電圧検知端子50に接続される検知電線60が収容される電線収容溝42が、一対の溝壁部42A,42Bおよび底部42Cを有して2つのバスバー保持部32、32の並び方向に沿って設けられている。この電線収容溝42内には、複数の検知電線60が収容可能である。一対の溝壁部42A,42Bのうちバスバー保持部32側の溝壁部42Aには、一方のバスバー保持部32側(図5の右側)から検知電線60を電線収容溝42内に導入するための電線挿通部43が設けられており、この電線挿通部43とバスバー保持部32との間に、後述する電圧検知端子50の電線接続部52を保持する溝状のバレル保持部44が、電線収容溝42に対して垂直方向に伸びて設けられて、これにより電線収容溝42とバスバー保持部32とが連結状態とされている。
【0031】
また、バレル保持部44の一対の溝壁部44A,44Aのうち電線挿通部43側の端部には、その上端縁からバレル保持部44の内側に向けて一対の電線押さえ片45,45が、互いに対向するように設けられている。これらの電線押さえ片45,45の先端部は所定の距離を隔てており、それら間に検知電線60の通過を許容している。また、バレル保持部44の底部44Cであって、これらの電線押さえ片45,45の真下には、溝幅にわたる電線逃がし孔44Dが形成されている。さらに、図15に示すように、バレル保持部44の底部44Cの高さは、バスバー21がバスバー保持部32に保持された際のバスバー21の上面と同等の高さに設定されており、これにより、バスバー21に重ねられた電圧検知端子50が上下方向にがたつくことが防止されている。
【0032】
また、電線収容溝42の一対の溝壁部42A,42Bのそれぞれの上端縁には、検知電線60を上方から電線収容溝42内に保持する一対の電線押さえ片46A,46Bが、交互に逆の溝壁部42A,42Bに、対向する溝壁部42B,42Aに向けて突設されている。これら一対の電線押さえ片46A,46Bのうち、電線挿通部43の近傍側に設けられる電線押さえ片46Bは、バスバー保持部32側とは反対側の溝壁部42Bからバスバー保持部32側の溝壁部42Aに向けて突設されている。また、他方の電線押さえ片46Aは、バスバー保持部32側の溝壁部42Aから対向する溝壁部42Bに向けて突設されている。これらの電線押さえ片46A,46Bは弾性変形可能とされており、検知電線60の電線収容溝42内への押し込み時に、弾性変形された電線押さえ片46の先端部と対向する溝壁部42との間に検知電線60の通過が許容可能な長さに設定されている。
【0033】
また、電線収容溝42の底部42Cのうち電線押さえ片46A,46Bの真下には、図5に示すように、電線押さえ片46の面積よりもひとまわり大きい面積の電線逃がし孔47,47が設けられている。これらの電線逃がし孔47は、多数の検知電線60が電線収容溝42内に配設されて電線押さえ片46により押さえ込こまれた場合に、検知電線60の一部をその孔内に逃がすことにより、検知電線60が電線収容溝42の上方から外部にはみ出し難くするものである。
【0034】
さらに、電線収容溝42のバスバー保持部32側とは反対側の溝壁部42Bの外面であって、一対の電線押さえ片46A,46Bの間には、電線収容溝41の一部を上方から覆って検知電線60のはみ出しを防止する蓋部48が、溝壁部42Bの上端付近にヒンジ48Aを介して開閉回動可能に設けられている。この蓋部48の先端には係合爪48Bが設けられており、この係合爪48Bが、バスバー保持部32側の溝壁部42Aの外面に設けられた係合孔49に係合されることにより、電線収容溝42の一部をその開放面(上面)側から閉塞可能としている。
【0035】
(電圧検知端子50)
連結ユニット31の一対のバスバー保持部32、32のうち、電線挿通部43が形成されている一方のバスバー保持部32(図13の右側)内には、バスバー21に重ねられて、単電池12の電圧を検知するための電圧検知端子50が配される。電圧検知端子50は、銅、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。電圧検知端子50の表面は、スズ、ニッケル等の金属によってメッキされていてもよい。
【0036】
本実施形態においては、図12に示すように、電圧検知端子50は略五角形をなす端子本体部51と、この端子本体部51に延設される電線接続部52とを備える。電線接続部52は、端子本体部51に隣接して設けられて検知電線60の露出された芯線にかしめ圧着されるワイヤバレル52Aと、ワイヤバレル52Aと並んで設けられ、検知電線60の絶縁被覆にかしめ圧着されるインシュレーションバレル13Bとを備えており、それぞれ端子本体部51の一面側から一方向(同方向)に向けて立ち上がるように形成されている。
【0037】
端子本体部51の中央付近には、正極または負極の電極端子11の電極ポスト14が挿通される端子挿通孔53がバスバー21の端子貫通孔22と重なるように形成されており、その径は電極ポスト14の径よりも若干大きく、かつ、バスバー21の端子貫通孔22よりも若干小さく設定されている。また、端子本体部51には、上述したバスバー21のスリット23に差し込んで電圧検知端子50を固定するための差入部54が、電線接続部52の反対側の端縁部から電線接続部52の立ち上がり方向とは反対側に突出するように設けられている。
【0038】
さらに、端子本体部51のうち、電線接続部52の基部を挟んだ両側には、一対の弾性片55,55が電線接続部52の立ち上がり方向と同方向にほぼ垂直に立ち上がって設けられている。
【0039】
電圧検知端子50は、電線接続部52のワイヤバレル52Aが検知電線60の芯線に巻き付くようにかしめられることにより、検知電線60と電気的に接続される。また、電圧検知端子50は、ナット15とバスバー21との間に挟まれることにより、電極端子11に電気的に接続される。検知電線60の反対側の端部は、図示しないECU等に接続され、このECU等により、単電池12の電圧が検知される。
【0040】
(電池配線モジュールの組立方法)
上述した本実施形態の電池配線モジュール20を組み立てる際には、まず、バスバー21を連結ユニット31のバスバー挿入口40からバスバー保持部32内に挿入する。バスバー挿入口40から挿入されたバスバー21は、バスバー保持部32の底部33(載置部33)と保持突部38,38Bとの間で挿入方向に対して略平行な姿勢を保ちつつ、前壁37方向に案内される。
【0041】
バスバー21の抜止突部24が連結ユニット31のバスバー保持部32の後壁35の下端部に当接すると、抜止突部24が下方へ弾性変形する。バスバー21の凹部25内に連結ユニット31のバスバー保持部32の係止突部41が配されると、バスバー21の抜止突部24がバスバー保持部32内に配されて弾性復帰し、バスバー21がバスバー保持部32の後壁35により抜け止めされる。このときバスバー21の凹部25と、連結ユニット31のバスバー保持部32の係止突部41との間には、図8に示すように、連結ユニット31の連結方向におけるクリアランスが形成されており、これにより、連結ユニット31がバスバー21に対して相対的に移動可能となっている。
【0042】
このように、全てのバスバー21を連結ユニット31のバスバー挿入部40に挿入して取り付け、複数の連結ユニット31を連結状態とする(図3参照)。
【0043】
次に、電圧検知端子50を連結ユニット31に取り付ける。具体的には、電圧検知端子50のワイヤバレル52Aを検知電線60の露出された芯線61の端部にかしめ付けるとともに、インシュレーションバレル52Bを絶縁被覆にかしめ付けた状態とし、連結ユニット31に形成された2つのバスバー保持部32,32のうち、バレル保持部44と連結された一方のバスバー保持部32内に、電圧検知端子50を上方から収容してバスバー21に重ね合わせる。この重ね合わせ作業の際には、まず電圧検知端子50を差入部54側が下となるようにバスバー21に対して若干傾けつつ近づけ、この差入部54をバスバー21のスリット23内に差し込んだ後に、電線接続部52側を重ね合せる。すると、電圧検知端子50の弾性片55,55がバスバー保持部32の前壁37側に設けられた保持突部38Bの壁面に当接し、端子本体部51を後壁35側へ押し戻す。これにより、差入部54とスリット23とが安定した係止状態とされる。またこれと同時に、電圧検知端子50の電線接続部52は、連結ユニット31のバレル保持部44内に検知電線60とともに保持される。
【0044】
この時、連結ユニット31のバレル保持部44から導出された検知電線60は、電線挿通部43から電線収容溝42内に導入され、収容されるのであるが、その場合検知電線60が延びる方向は、図13に示すように、電線挿通部43内においては電線収容溝42に対して垂直方向となる。このため、検知電線60は電線挿通部43近傍において、電線挿通部43に対向する溝壁部42Bに突き当たるように伸びた後に、横方向(本実施形態においては図13における左方向)に弾性変形して湾曲して配設される。
【0045】
この場合、湾曲した状態の検知電線60が弾性復帰する力によって電線収容溝42から外部へはみ出すことが懸念されるが、本実施形態においては、電線押さえ片46A,46Bは、検知電線60を効果的に押さえ込む位置に設けられている。すなわち、検知電線60が電線挿通部43に対向する溝壁部42Bに突き当たる電線挿通部43の近傍において、電線押さえ片46Bをその溝壁部42B側のうち検知電線60が通過する側の上方に設ける構成としたから、その突き当たり付近において電線収容溝42からはみ出そうとする検知電線60を溝内に確実に押さえ込むことが可能である。また、他方の電線押さえ片46Aは、電線挿通部43から離れた位置に設けられており、溝壁部42Bに突き当たった後電線挿通部43側の溝壁部42Aに押し戻された検知電線60を、その溝壁部42A側において押さえ込むことが可能なように、電線挿通部43側(バスバー保持部32側)の溝壁部42Aに設ける構成とされている。
【0046】
すなわち、検知電線60は、一対の溝壁部42A,42Bの両側から、それぞれ最もはみ出し易い位置において電線押さえ片46A,46Bによって押さえ込まれる構成とされているから、電線収容溝42から検知電線60がはみ出すことが防止される。
【0047】
しかも本実施形態においては、電線収容溝42の底部42Cのうち、電線押さえ片46A,46Bの真下に電線逃がし孔47が設けられている。従って、電線収容溝42に多数の検知電線60が配設される箇所においては、検知電線60は電線押さえ片46によって電線逃がし孔47内に押し込まれることとなり、電線収容溝42からよりはみ出し難くされる。
【0048】
さらに、検知電線60を電線収容溝42内に収容した後、蓋部48を回動させて電線収容溝42の開放面(上面)を閉塞することによっても、より確実に検知電線60のはみ出しが防止される。
【0049】
また、検知電線60を電線収容溝42内に配設する場合には、電線押さえ片46A,46Bは弾性変形可能とされており、弾性変形した際にその先端部は対向する溝壁部46B,46Aとの間に検知電線60が通過可能な距離を有するように設定されているから、検知電線60を押し込むだけで簡単に電線収容溝42内に配設することができて作業効率がよい。
【0050】
このようにして組み立てられた本実施形態の電池配線モジュール20は、電極端子11を上に向けた状態で並べられた単電池群13の上面側に取り付けられる。すなわち、電池配線モジュール20を単電池群13の上側に載置し、電極端子11の電極ポスト14をバスバー21(および検知端子50)の端子貫通孔22(および端子挿通孔53)に挿通させる。そして、電極ポスト14にナット15を螺合させることにより、隣り合う正極および負極の電極端子11を接続させて、電池モジュール10が完成する。
【0051】
(実施形態の作用、効果)
上述したように、電線挿通部43から電線収容溝42に対して垂直方向に導入された検知電線60は、電線挿通部43に対向した溝壁部42B側にぶつかった後に横方向(溝の長さ方向)に配設されるが、本実施形態の電池配線モジュール20によれば、電線挿通部43近傍の電線挿通部43に対向する溝壁部42B側に電線押さえ片46Bが形成されているから、溝壁部42Bに突き当たって電線収容溝42の外部へはみ出そうとする検知電線60を溝内に確実に押さえ込むことが可能となる。一方、電線挿通部43から離れた位置に設けられる電線押さえ片46Aは、電線挿通部43側(バスバー保持部32側)の溝壁部42Aに設ける構成としたから、溝壁部42Bに突き当たって対向する溝壁部42A側に押し戻された検知電線60を、はみ出しやすい位置において溝内に押さえ込むことができる。結果的に、電線収容溝42内の検知電線60は両側の溝壁部42A,42Bの上部からはみ出しやすい位置において押さえ込まれることとなるから、検知電線60の電線収容溝42からのはみ出しが効果的に防止される。
【0052】
また、検知電線60を電線収容溝42内に収容する際には、電線押さえ片46A,46Bの先端部と溝壁部42B,42Aとの間に検知電線の60を載置して押し込むだけで、電線押さえ片46A、46Bが弾性変形して検知電線の通過を許容し、検知電線60は電線収容溝42内に収容されるので、配設作業が簡単で作業効率に優れる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
(1)上記実施形態では、単電池群の一方の電極端子群を電気的に接続する電池配線モジュールと、他方の電極端子群を電気的に接続する電池配線モジュールとで同一の連結ユニットを使用し、検知電線をそれぞれ単電池群の反対方向に引き出す例を示した(図2参照)が、例えば図16に示すように、バレル保持部および電線押さえ片が反対側に形成された対称型の連結ユニットを用いて種類の異なる電池配線モジュールを作製し、検知電線を単電池群の同方向に引き出す構成としてもよい。
【0054】
(2)上記実施形態では、単一連結ユニットにおける一方のバスバー保持部から電線収容溝内に導入された検知電線を、他方のバスバー保持部側に配設する構成(図13における左方向)としたが、これに限らず、隣り合う連結ユニットのバスバー保持部側(図13における右方向)に引き出す構成としてもよい。この場合には、電線押さえ片は本実施形態とは反対側の溝壁部に設ける構成とすることにより、上記実施形態と同様に、電線挿通部から電線収容溝に対して垂直方向に導入された検知電線を電線挿通部と対向する溝壁部側で押さえ込むことが可能となる。
【0055】
(3)蓋部は必ずしも必要でなく、不要な場合は設けなくてもよいし、設ける場合でも電線収容溝の全体を覆うに限らず、部分的にのみ覆う構成であってもよい。
【0056】
(4)上記実施形態では、電線収容溝を塞ぐ電線押さえ片を各連結ユニットにつき一対設ける構成としたが、電線押さえ片はいくつ設けてもよい。また、必ずしも一つづつ反対側の溝壁部から突出する構成に限らず、二つづつ反対側の溝壁部から突出する構成であってもよく、さらには、電線挿通部の近傍においてのみバスバー保持部とは反対側の溝壁部側から突設して、他の電線押さえ片は逆にバスバー保持部側の溝壁部から突出する構成としてもよい。
【0057】
(5)電圧検知端子は必ずしも必要ではなく、例えば検知電線をバスバーに直接溶接したり、バスバーに設けた挟持部に挟持したりしてもよく、要は検知電線とバスバーとが導通可能な構成であればどのような構成でもよい。また、検知電線は必ずしも電圧を検知するための電線でなくてもよく、例えば温度センサに接続される温度検知用の電線であってもよい。
【0058】
(6)樹脂プロテクタは、合成樹脂からなる1つの樹脂プレートに複数のバスバーが保持される構成としてもよい。
【0059】
(7)電線収容部の底部に設けた逃がし孔は必ずしも設けなくてもよい。また、その形状は上記実施形態に限らない。
【0060】
(8)本実施形態においては、複数の単電池12は直列に接続される構成としたが、これに限られず、複数の単電池群13は並列に接続される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…電池モジュール
11…電極端子
12…単電池
13…単電池群
14…電極ポスト
20…電池配線モジュール
21…バスバー
22…端子貫通孔
24…抜止突部
25、26…凹部
30…樹脂プロテクタ
31…連結ユニット(単位連結ユニット)
32…バスバー保持部
34…絶縁壁
35…後壁
35A…面取り壁
36…側壁
37…前壁
40…バスバー挿入口
42…電線収容溝
42A,42B…溝壁部
43…電線挿通部
46A,46B…電線押さえ片
48…蓋部
48A…ヒンジ
50…電圧検知端子
52…電線接続部
52A…ワイヤバレル
52B…インシュレーションバレル
53…端子挿通孔
60…検知電線
61…芯線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極の電極端子を有する単電池を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、
前記電極端子間を接続する複数個のバスバーと、
前記バスバーを保持するための複数のバスバー保持部を有する樹脂プロテクタと、
前記単電池群の状態を検出するための検知電線と
前記樹脂プロテクタに一対の溝壁部を有して前記バスバー保持部に沿って設けられ前記溝壁部間に前記検知電線を収容する電線収容溝と、
前記電線収容溝に形成され前記検知電線を前記電線収容溝内から前記バスバー保持部側に導入するための電線挿通部と、
前記電線収容溝の前記溝壁部の一方および他方から反対側の溝壁部側に向けて突設され前記検知電線の押し込み時に弾性変形して前記検知電線の前記電線収容溝内への通過を許容する複数の電線押さえ片と、を備え、
前記電線押さえ片のうち少なくとも前記電線挿通部の近傍のものは、前記バスバー保持部とは反対側の前記溝壁部側から突設されていることを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項2】
前記樹脂プロテクタには前記電線収容溝を塞ぐ蓋部がヒンジを介して開閉回動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池配線モジュール。
【請求項3】
前記樹脂プロテクタは単位連結ユニットを複数個連結して構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池配線モジュール。
【請求項4】
前記検知電線の先端には前記バスバーに接続される電圧検知端子が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電池配線モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−252781(P2012−252781A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122142(P2011−122142)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】