電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置
【課題】電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、コストを抑制して速度フィードバックを可能とすることである。
【解決手段】気体圧サーボ弁の位置決め制御システム10において、スプール24の位置を変位センサ42で検出し、位置指令52と比較してその偏差に対し、ゲインG1を乗じて速度指令とし、速度指令と制御対象の速度と比較し、その偏差に対しゲインG2を乗じて駆動指令とし、これを電流ブースタ62に出力する。電流ブースタ62は、駆動指令を駆動電流に変換してフォースモータ40の可動線輪36に供給し、スプール24を移動させる。電流ブースタ62の出力は速度演算器66によって積分演算されて速度情報に変換され、速度フィードバックループ67によって減算器58に戻される。振動除去装置に置いても同様に速度演算器による速度フィードバックを行うことができる。
【解決手段】気体圧サーボ弁の位置決め制御システム10において、スプール24の位置を変位センサ42で検出し、位置指令52と比較してその偏差に対し、ゲインG1を乗じて速度指令とし、速度指令と制御対象の速度と比較し、その偏差に対しゲインG2を乗じて駆動指令とし、これを電流ブースタ62に出力する。電流ブースタ62は、駆動指令を駆動電流に変換してフォースモータ40の可動線輪36に供給し、スプール24を移動させる。電流ブースタ62の出力は速度演算器66によって積分演算されて速度情報に変換され、速度フィードバックループ67によって減算器58に戻される。振動除去装置に置いても同様に速度演算器による速度フィードバックを行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置に係り、特に、速度フィードバックを行う電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象の位置決めを行う位置決めサーボコントローラ、すなわち位置決め制御装置としては、位置フィードバックの他に速度フィードバック等を行って制御性を改善することが行われる。例えば、特許文献1には、気体圧サーボ弁の位置決めにおいて、モータによって駆動されるスプールの動きを変位センサで検出して制御対象の位置データとし、位置指令と位置データとの間の偏差を位置ループゲインで増幅して速度指令とし、位置データを微分した速度データと速度指令との偏差を速度ループゲインで増幅して駆動指令とし、駆動指令を電流ブースタに出力してモータを駆動することが述べられている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−063205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に述べられているように、位置決め制御を行う際に、速度フィードバックを行うには、制御対象の位置データを取得し、これを微分処理して速度データとし、これを速度指令に戻すことが行われている。
【0005】
この方法によれば、速度センサを別に設けることなく、例えば位置データに対して微分演算処理を施すことで速度フィードバックを行うことができる。しかしながら、微分演算処理は、周波数の高い領域でゲインが高くなるので、高周波成分のノイズも増幅されることになる。したがって、ノイズ増幅を抑制するために、複雑な演算を要し、アナログ回路の微分では不十分となり、複雑なディジタル演算が必要となり、コストが高くなることが多い。
【0006】
本発明の目的は、コストを抑制して速度フィードバックを可能とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置は、電流駆動型アクチュエータを制御対象とする駆動制御装置であって、制御対象に対する指令に基づく速度指令と制御対象の速度との間の偏差である速度偏差に基づいて駆動電流指令を出力する速度制御手段と、駆動電流指令に基づく駆動電流によって制御対象を駆動するドライバと、ドライバの実駆動電流の積分演算によって速度フィードバック信号を生成し、速度制御手段に制御対象の速度としてフィードバックする積分フィードバック手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、制御対象をMs2+Ds+kのモデルとして、ドライバの実駆動電流値にs/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、制御対象をMs2と近似して、ドライバの実駆動電流に1/a1sの演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、アナログ回路によって積分演算を行うことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、制御対象の位置を検出する位置検出手段と、制御対象に対する位置指令と、位置検出手段によって検出された制御対象の位置との間の位置偏差に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段と、を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、制御対象の駆動方向に設けられ、制御対象の中立位置を設定する位置バランスバネと、位置指令と中立位置との間の偏差である位置偏差に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段と、を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、電流駆動型アクチュエータは、振動抑制対象物に取り付けられ、振動抑制対象の加速度を補償する補償加速度を制御対象に対する加速度指令とし、その制御対象に対する加速度指令に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、電流駆動型アクチュエータは、振動抑制対象物に取り付けられ、ドライバは、速度制御手段からの駆動電流指令と、振動抑制対象の加速度を補償する補償加速度に基づく補償駆動電流指令と、に基づく駆動電流によって制御対象を駆動することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成の少なくとも1つにより、電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置は、ドライバの実駆動電流の積分演算によって速度フィードバック信号を生成して、速度制御手段に制御対象の速度としてフィードバックする。電流駆動型アクチュエータの場合、ドライバの実駆動電流は、加速度指令に対応する値となるので、それを積分演算したものは制御対象の速度に対応するものとなる。上記構成によれば、速度フィードバックは、位置の微分によって行うのでなく、ドライバの実駆動電流の積分演算によって行われる。微分処理は、周波数が高周波となるにつれ利得が増大するので高周波ノイズも増幅されるが、積分演算処理は周波数が高周波となるにつれ利得が抑制されるので、高周波ノイズが抑制される。したがって、ノイズ処理を要せずに速度フィードバックを行うことができ、コストを抑制することができる。
【0016】
また、電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、制御対象をMs2+Ds+kのモデルとして、ドライバの実駆動電流値にs/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とする。この演算は、積分の次元を有する処理である。これにより、積分対象の物理モデルに忠実な速度フィードバック信号とできる。
【0017】
また、電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、制御対象をMs2と近似して、ドライバの実駆動電流に1/a1sの演算を行い、これを速度フィードバック信号とする。これにより、簡単な単純積分演算のみで速度フィードバック信号を生成することができる。
【0018】
また、電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、アナログ回路によって積分演算を行う。これにより、ディジタル回路によって積分演算を行う場合に比べ、コストを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、電流駆動型アクチュエータを有する駆動制御対象として、位置決め制御を行う気体圧サーボ弁と、慣性体の駆動制御によって振動抑制対象の振動を除去する振動除去装置とを説明するが、これは説明のための例示である。駆動制御対象としては、電流駆動型アクチュエータを有するものであればよい。例えば、気体圧サーボ弁以外のものとして、気体圧サーボシリンダであってもよい。また、気体圧を用いないXYテーブルのような移動機構であってもよい。振動除去装置においても、電流駆動型アクチュエータも有するものであれば、気体圧を利用していない構成のものであってもよい。
【0020】
また、以下では電流駆動型アクチュエータとして、可動線輪型のフォースモータを説明するが、これ以外の電流駆動型アクチュエータであってもよい。例えば、リニア型のアクチュエータ、可動磁石型のモータ等であってもよい。また、位置センサとして差動トランス型位置検出器を説明するが、それ以外の原理の位置検出手段であってもよい。例えば、静電容量型位置センサ、磁気的位置検出センサ、光学的位置検出センサ、あるいは、やや複雑な構成となるが、磁気的速度センサを用いてこれを積分して位置情報として用いるものとしてもよい。
【0021】
また、駆動制御装置のフィードバックループとして、少なくとも速度フィードバックループとを有する場合を説明するが、このほかに、さらに加速度フィードバックを有してもよく、また、これらのフィードバックループのほかに他の制御要素、例えばフィードフォワードループ等が設けられるものであってもよい。また、外乱オブザーバ等の他の制御方法と組み合わせるものとしてもよい。また、制御対象を駆動するドライバの動作に飽和現象が現れないようにするゲインリミッタを有するものであってもよい。
【実施例1】
【0022】
図1は、電流駆動型アクチュエータとして、可動線輪型フォースモータを用い、位置検出センサを有する気体圧サーボ弁に関する位置決め制御システム10の構成図である。図2は、位置決め制御システム10の制御ブロック線図である。この位置決め制御システム10は、気体圧サーボ弁20と、気体圧サーボ弁20から出力される位置信号と位置指令52とを比較して気体圧サーボ弁20の動作を制御する制御部50とを含んで構成される。
【0023】
気体圧サーボ弁20は、ハウジング又はスリーブ22と、スリーブ22の内壁により軸方向に移動可能に支持されるスプール24とを有し、スリーブ22とスプール24の相対位置を制御することにより、スリーブ22の外部から供給された気体圧を調整して、所望の負荷圧を有する気体を出力する機能を有するサーボ弁である。図1において軸方向をX方向として矢印で示した。
【0024】
スリーブ22は、概略円筒状の部材で、その内周は、スプール24が軸方向に滑らかに移動できるように精密に加工される。スリーブ22の外周から内周との間には、図示されていない気体源に接続され1次側気体圧を有する気体をスプール24側に供給する供給口26と、スプール24側からの気体を大気側に排気する排気口28と、スプール24側から2次側気体圧を有する気体を取出して図示されていない負荷に出力する負荷口30とが設けられる。
【0025】
スプール24は、より太い外形を有するランドと呼ばれる部分と、より細い外形を有するステムと呼ばれる部分を軸方向に複数配列して構成される部材である。各ランドの外径は、スリーブ22の内径との間で気密かつ滑らかに移動可能なように精密に加工される。図1の例ではランドは3つ配置されるが、中央のランドの幅が負荷口30のスプール側開口の幅とほぼ同じに設定される。さらに、供給口26のスプール側開口と排気口28のスプール側開口との間隔が中央のランドの幅より十分広く設定される。
【0026】
すなわち、図1に示す位置関係においては、中央のランドの幅がちょうど負荷口30のスプール側開口の幅を覆い、負荷口30には供給口26における1次側気体圧や排気口28における大気圧の影響が及ばない。ここでスプール24が図1に示す+X方向に移動すると、中央のランドの幅が負荷口30のスプール側開口の幅からずれて、供給口26における1次側気体圧が負荷口30に現れ、2次側気体圧が上昇する。+X方向と逆の方向にスプール24が移動すると、排気口28における大気圧が負荷口30に現れ、2次側気体圧が低下する。このように、スリーブ22とスプール24の相対位置を変えることにより、所望の負荷圧を有する気体を負荷口30から出力させることができる。
【0027】
スリーブ22の一端側に設けられるフォースモータ40は、制御部50の制御下にある電流ブースタ62(図2参照)から出力される電流に従い、スプール24を軸方向に駆動する機能を有する可動線輪型アクチュエータである。具体的には、スリーブ22の一端側に固定して取り付けられ磁束を通すヨーク32と、スプール24の一端側に取り付けられる駆動アーム34と、駆動アーム34の先に巻かれた可動線輪36と、可動線輪36の軸方向移動を受け入れるようにヨーク32に設けられた隙間に取り付けられ、可動線輪36と向かい合う磁石38とを含んでフォースモータ40が構成される。可動線輪36は、図2に示されるように、電流ブースタ62の出力と接続される。
【0028】
スプール24及びスリーブ22の一方端に設けられる変位センサ42は、フォースモータ40により駆動されるスプールの位置を検出し、制御部50に出力する機能を有する位置検出手段である。具体的にはスプール24の一方端に取り付けられたプローブ鉄心軸と、スリーブ22に取り付けられプローブ鉄心軸の周囲に配置される差動トランスを含んで構成することができる。この場合、差動トランスのX軸方向の空心に挿入されるプローブ鉄心軸の挿入長さに応じて、差動コイルの出力電圧が異なるので、この出力電圧に基づいてスプール24の位置を求めることができる。
【0029】
制御部50の詳細な構成は図2の制御ブロック線図に示される。なお、以下では図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では図1の符号を用いて説明する。
【0030】
図2に示されるように、この気体圧サーボ弁の位置決め制御システム10の概略の動作は以下の通りである。すなわち、スプール24の位置を変位センサ42で検出し、制御対象の位置として制御部50に戻し、制御部50により外部からの位置指令52と、変位センサ42に基づく制御対象の位置と比較し、その偏差である位置偏差に対し適当なゲインG1を乗じて速度指令とし、速度指令と制御対象の速度と比較し、その偏差である速度偏差に対し適当なゲインG2を乗じて駆動指令とし、これを電流ブースタ62に出力する。そして、電流ブースタ62は、駆動指令を駆動電流に変換してフォースモータ40の可動線輪36に供給し、可動線輪36は駆動電流に応じたトルクを発生してスプール24を移動させる。
【0031】
このスプール24の位置が変位センサ42を介して制御部50に戻され、位置演算器64によって位置情報に変換され、減算器54によって位置指令52と比較される。このフィードバックのループが位置フィードバックループ65である。また、電流ブースタ62の出力が速度演算器66によって演算されて速度情報に変換され、減算器58によって、速度指令と比較される。このフィードバックのループが速度フィードバックループ67である。
【0032】
制御部50は、気体圧により位置決めを行う気体圧サーボ弁20、より具体的には、可動線輪36、スプール24を制御対象としてその動作を制御する気体圧位置決めサーボコントローラ、すなわち電流駆動型アクチュエータ位置決め制御装置である。制御部50は、位置指令52が入力される減算器54と、減算器54から順次位置制御器56−減算器58−速度制御器60−電流ブースタ62と、直列に接続されるメイン制御ルートを有し、さらにスプール24の変位を位置に変換して減算器54に戻す位置演算器64と、電流ブースタ62の出力を速度に変換して減算器58に戻す速度演算器66とを含む。かかる制御部50は、アナログ電子回路で構成することができる。また、必要に応じ、一部を簡単なディジタル回路で補うこととすることもできる。
【0033】
減算器54は、位置指令52と制御対象の位置とを入力し、位置偏差=(位置指令と制御対象の位置)を出力する機能を有する回路である。制御対象の位置データとしては、上記のように、変位センサ42の出力データを位置演算器64によって適当に変換して、位置指令52とレベルを適合させたものを用いることができる。
【0034】
位置制御器56は、ゲインG1によって位置偏差をG1倍して速度指令として減算器58に出力する増幅器としての機能を有する速度指令出力手段であり、また位置制御手段である。ゲインG1は、いわゆる位置ループゲインである。かかる位置制御器56は、前段の減算器54と合わせて、例えば、アナログ差動増幅器で構成することができる。
【0035】
減算器58は、位置制御器56の出力である速度指令と、制御対象の速度とを入力し、速度偏差=(速度指令と制御対象の速度)を出力する機能を有する回路である。制御対象の速度データとしては、後述のように、電流ブースタ62の出力データを速度演算器66によって適当な積分演算によって変換して、速度指令とレベルを適合させたものを用いることができる。
【0036】
速度制御器60は、ゲインG2によって速度偏差をG2倍し、駆動指令として電流ブースタ62に入力する増幅器としての機能を有する速度制御手段である。ゲインG2は、いわゆる速度ループゲインである。かかる速度制御器60は、前段の減算器58と合わせて、例えば、アナログ差動増幅器で構成することができる。
【0037】
電流ブースタ62は、制御対象である気体圧サーボ弁20を駆動指令に基づく駆動電流によって駆動する機能を有するドライバ回路である。具体的には、気体圧サーボ弁20の駆動部である可動線輪36に供給する駆動電流を発生する駆動回路である。電流ブースタ62の出力電力能は、気体圧サーボ弁20の制御システムの目標応答速度を満たすように十分大きく設定されることが好ましい。かかる電流ブースタ62としては、電圧信号を入力し、入力信号に応じた電流信号を出力するアナログ電圧・電流変換回路で構成することができる。
【0038】
電流ブースタ62の出力は可動線輪36に供給され、可動線輪36に流れる電流と、磁石38からの磁束との協働により、駆動力が生じ、スプール24を軸方向に移動させる。このスプール24の移動した位置は変位センサ42により検出される。
【0039】
位置演算器64は、上記のように、変位センサ42の出力を、位置指令52のデータレベルに合わせた位置データに変換する機能を有する回路である。変位センサ42がスプール24の位置を直接検出するタイプのものであるときは、必要に応じデータのレベル調整を行うレベルシフタ回路で位置演算器64を構成することができる。
【0040】
位置演算器64の出力は上記のように減算器54に入力され、スプール24−変位センサ42−位置演算器64−減算器54−位置制御器56−減算器58−速度制御器60−電流ブースタ62−可動線輪36−スプール24のループで、位置フィードバックループ65が形成される。
【0041】
速度演算器66は、電流ブースタ62の出力を、速度指令のデータレベルに合わせた速度データに変換する機能を有する回路である。電流ブースタ62に入力されるのは速度制御器60の出力で、加速度指令であるので、電流ブースタ62の出力は加速度指令に応じた電流データとなる。したがって、これを積分演算することで、速度に相当するデータとなることになる。
【0042】
具体的には、気体圧サーボ弁20の可動部の物理モデルに応じて、電流ブースタ62の電流データを変換して、可動部の速度に相当するデータとすることが好ましい。気体圧サーボ弁20の可動部は、可動線輪36とスプール24であるので、この部分の物理モデルは、一般的に、Ms2+Ds+kで表すことができる。ここでMは、質量または慣性であり、Dは粘性係数またはダンピング定数であり、kはバネ定数である。このモデルを用いて、速度演算器66は、フォースモータ40の可動線輪36に対するドライバである電流ブースタ62の実駆動電流値に、s/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることができる。
【0043】
s/(a1s2+a2s+a3)の演算は、積分の次元を有する演算であり、これを模擬的な積分演算、あるいは単に積分演算と呼ぶことができる。かかる積分演算機能を有する速度演算器66としては、アナログ積分回路等で構成することができる。すなわち、速度演算器66は、ドライバである電流ブースタ62の実駆動電流の積分演算によって速度フィードバック信号を生成する積分フィードバック手段である。
【0044】
速度演算器66の出力は上記のように減算器58に入力され、速度制御器60−電流ブースタ62−速度演算器66のループで、速度フィードバックループ67が形成される。
【0045】
上記構成により、位置フィードバックループと速度フィードバックループとを有する気体圧サーボ弁における可動線輪型フォースモータの位置決めシステムにおいて、速度フィードバックを微分演算でなく、積分演算によって実行することができるので、微分演算による場合に比べ、高周波成分のノイズを抑制できる。また、速度フィードバックに関する回路構成をアナログ回路で構成できるので、ディジタル回路で構成する場合に比べ、コストを抑制することができる。
【0046】
特に、気体圧サーボ弁20の可動部の物理モデルが、Ms2の項が他のDs+kの項に比べ支配的な場合は、速度演算器の構成が簡単になる。その様子を図3に示す。以下では、図1、図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では図1、図2の符号を用いて説明する。
【0047】
図3は、気体圧サーボ弁20の可動部である可動線輪36とスプール24の部分の物理モデルにおいて、Ms2の項が他の(Ds+k)の項に比較して支配的な場合の気体圧サーボ弁に対する位置決め制御システム11の制御ブロック線図である。ここでは、制御部51において、速度演算器68が、(s/a1s2)=(1/a1s)という演算機能を有することで十分であることが示される。この演算機能は、単純積分であり、例えば、適当な容量素子で実現できる。
【0048】
さらに、速度演算器68に適当なレベルカット機能を付加して、例えば{b/(Ts+1)}等の演算を実行させるものとすることができる。この場合でも、簡単なアナログ回路によって、これらの機能を実現することができる。
【0049】
このように、電流駆動型アクチュエータの物理モデルにおいて、質量項がダンピング項あるいはバネ定数項に比べ支配的な場合、速度演算器68が適当な容量素子等で構成することができ、高周波ノイズを抑制できると共に、回路構成のコストを大幅に抑制することができる。
【実施例2】
【0050】
上記では、電流駆動型アクチュエータの変位を検出する位置センサを用いて、位置指令に対し、位置フィードバックループを用いて帰還が行われている。これ以外に、位置検出センサを設けず、制御対象の駆動方向に設けられ、制御対象の中立位置を設定する位置バランスバネを用いて、位置制御システムを構成することができる。図4は、そのような位置バランスバネを用いる気体圧サーボ弁に対する位置決め制御システム12の構成を説明する図である。以下では、図1から図3と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では図1から図3の符号を用いて説明する。
【0051】
図4の気体圧サーボ弁の位置決め制御システム12は、フォースモータ40によってX方向に駆動されるスプール24の他方端に位置バランスバネ44が設けられる。位置バランスバネ44は、スプール24のフォースモータ40が設けられる側と反対側の他方端と、スリーブ22との間に配置され、スリーブ22側には、調整ネジ46が設けられる。この調整ネジ46をX軸方向に移動させることで、スプール24の初期位置である中立位置を正確に設定することができる。
【0052】
スプール24の初期位置である中立位置としては、図4に示されるように、スプール24における中央のランドの幅がちょうど負荷口30のスプール側開口の幅を覆う位置であって、負荷口30には供給口26における1次側気体圧や排気口28における大気圧の影響が及ばない位置とすることができる。
【0053】
制御部70は、図2、図3の場合に比べ、位置検出センサを有しないため、位置フィードバックループがなく、その分、簡単な構成となっている。すなわち、制御部70は、位置指令52を適当なゲインG1によって増幅して速度指令として出力する速度指令出力手段である位置制御器57と、以後、減算器58−速度制御器60−電流ブースタ62と、直列に接続されるメイン制御ルートを有し、さらに、電流ブースタ62の出力を速度に変換して減算器58に戻す速度演算器66とを含む。図4では、このフィードバックループが速度フィードバックループ67として示されている。
【0054】
ここで、電流ブースタ62の出力が可動線輪36に伝達され、これによってスプール24が位置バランスバネ44の復元力に抗して移動される。位置指令52は、この位置バランスバネ44の復元力に釣り合うスプール24の目標位置であり、位置制御器57のゲインG1と、速度制御器60のゲインG2は、この目標位置における位置バランスバネ44の復元力に釣り合う駆動力をフォースモータ40に与えるための駆動電流を電流ブースタ62から出力させるように、設定される。
【0055】
速度演算器66は、図2と同様な内容で、電流ブースタ62の実駆動電流値に、s/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とするものである。なお、気体圧サーボ弁21の可動部である可動線輪36とスプール24と位置バランスバネ44の部分の物理モデルにおいて、Ms2の項が他の(Ds+k)の項に比較して支配的となる場合には、図3で説明したように、電流ブースタ62の実駆動電流値に、(1/a1s)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることができる。
【実施例3】
【0056】
次に、電流駆動型電流駆動型アクチュエータを振動抑制対象に取り付けて振動除去装置として構成する例を説明する。図5は、振動除去装置110の構成を説明する図である。図5には、振動除去装置110の構成要素ではないが、振動除去の対象である定盤8と、定盤8が空気バネ等で据え付けられる基台6が図示されている。振動除去装置110は、振動除去の対象である対象物に取り付けて、その対象物の微小振動を除去する機能を有する。微小振動とは、対象物の変位に換算して、nmからμm程度の大きさの振動で、対象物の機能、例えば、精密測定、精密加工、精密組立等の観点から無視できない振動である。なお、図5に示すY方向は、重力方向で、X方向は重力方向に垂直な水平方向である。以下の各図においても同様である。以下では、定盤8について除去対象の振動の加速度方向は、定盤8の面に平行な方向としてある。図5においては、定盤8の面は水平面であるので、除去対象の微小振動の加速度方向は、X方向である。
【0057】
振動除去装置110は、振動除去対象物である定盤8の加速度を検出する加速度センサ112と、後述する慣性体と慣性体を駆動するアクチュエータ機構とを含んで構成される装置本体部150と、加速度センサ112の検出値に応じて装置本体部150のアクチュエータ機構を駆動制御する制御部120と、装置本体部150において慣性体を流体支持等するための流体を供給する流体供給部114とを含んで構成される。
【0058】
加速度センサ112は、定盤8の加速度を検出できるものであればよく、例えば、適当な半導体加速度センサ等を用いることができる。あるいは、レーザ変位測定器の検出データを処理して、加速度として出力する精密加速度検出システムを用いてもよい。図5においては、加速度センサ112によって検出された加速度を(−α)122として示してある。これに対し、装置本体部150が定盤8に及ぼす補償加速度は(+α)126として示されている。すなわち、装置本体部150は、定盤8の振動加速度に対し、方向が逆方向で、同じ大きさの加速度を補償加速度として出力する機能を有するものである。
【0059】
流体供給部114は、装置本体部150において、慣性体を流体支持するために適当な流体圧に制御された流体を生成する機能を有する装置で、例えば、気体源とレギュレータ等で構成することができる。さらに精密な流体圧を必要とするときは、流体圧制御弁等を用いることができる。流体としては、例えば、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥不活性ガス等の気体を用いることができるほか、場合によっては、オイル、水等の液体を用いることができる。
【0060】
図6は、装置本体部150の構成を示す図である。装置本体部150は、筐体152と、筐体152の内部に、流体支持される慣性体160と、慣性体160をX方向に移動駆動するアクチュエータ170を含んで構成される。
【0061】
筐体152は、外形がほぼ直方体の部材で、その内部には、慣性体160をX方向に移動可能に流体支持するための断面円形の空間が形成されている。筐体152は、中央部154と、その両側をふさぐ側板156,158とから構成される。中央部154と、側板156,158とは、流体を内部に保持し、漏らさないように、しっかりシールされて組立固定される。
【0062】
中央部154は、直方体外形で、慣性体160を流体支持するための穴を有する部材である。その穴の直径は、慣性体160の外径よりやや大きめに設定される。穴の内壁面は、慣性体160の外周とで、流体軸受機構を形成する面であり、滑らかに表面処理が施される。
【0063】
筐体152の一方の側板156と、慣性体160の一方端側との間に設けられるアクチュエータ170は、制御部120の制御の下で、筐体152に対し、慣性体160を所定の加速度で移動駆動する機能を有し、電流駆動型アクチュエータとして、フォースモータの構成を有する。すなわち、アクチュエータ170は、筐体152の側板に、固定子としてコイル172が取り付けられ、慣性体160の一方端側に可動子である永久磁石174が取り付けられる。ここでは、コイル172は可動線輪ではなく、永久磁石174に駆動力を与える機能を有し、永久磁石174が設けられる慣性体160が可動子となる。コイル172の各端子は、筐体152に設けられた端子台を経由して制御部120に接続される。
【0064】
慣性体160は、円柱状の部材で、比質量の比較的大きな材料で形成される質量体である。例えば、ステンレス鋼等を円柱状に加工し、さらに必要な形状加工を加えたものを用いることができる。慣性体160の円柱状外周面は、筐体152の内壁面との間で流体軸受機構を形成する面であるので、滑らかに精度よく加工される。
【0065】
慣性体160の両端部と、筐体152の側板156,158との間に設けられる保持バネ180,182は、慣性体160を筐体152に対し、X方向について中立位置に支持するための支持部材であり、いわゆる位置バランスバネである。保持バネ180,182は、その両端部においてボール座によって支持されている。これによって、保持バネ180,182と、慣性体160、両側板156,158との間の摩擦を低減することができる。なお、保持バネ182と側板158との間には、中立位置を微調整するための調整ネジ184が設けられる。
【0066】
保持バネ180,182は、振動特性的に弱いバネとして構成される。具体的には、慣性体160の質量Mと、保持バネ180,182のバネ定数kとで定まる固有振動数が、0.1Hzから10Hz程度となるように、バネ定数kが設定される。好ましくは、固有振動数が1Hz程度となるバネ定数がよい。このようにすることで、アクチュエータ170によって慣性体160がX方向に移動駆動されるときに、保持バネ180,182の付勢力の影響を抑制することができる。つまり、慣性体160をαの加速度で移動させるためには、保持バネ180,182の影響を考慮せずに、アクチュエータ170が、慣性体160にMαの駆動力を与えればよい。したがって、慣性体160の移動駆動の制御が簡単になる。
【0067】
筐体152の外側に設けられるマニフォールド190は、流体供給部114に接続され、流体を筐体152の内部に導き、筐体152の内部から外部に排出する機能を有する部材である。マニフォールド190には、筐体152の中央部154におけるほぼ中央の側面に設けられる流体供給貫通穴195に対応して、供給流路192が設けられ、筐体152の中央部154の端部に設けられる流体排出貫通穴に対応して、排出流路194が設けられる。供給流路192、排出流路194には、必要に応じ、適当な絞り機構を設けることができる。
【0068】
筐体152の中央部154の流体供給貫通穴195から供給される流体は、筐体152の内壁面と慣性体160の外周面との間の隙間196に吹き出し、いわゆる流体軸受機構によって、慣性体160を筐体152の内壁面から浮上させる。このようにして、慣性体160は、筐体152との間で流体支持され、アクチュエータ170によって、滑らかにX方向に移動駆動されることができる。
【0069】
筐体152の中央部154の流体供給貫通穴195に対応して、慣性体160に設けられる内部流路198は、アクチュエータ170のコイル172のところに流体を導く機能を有する。これによって、コイル172の発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0070】
また、慣性体160の内部をX方向に貫通して設けられるマニフォールド190は、慣性体160の両端部と、筐体152との間に形成される流体室202,204を連通する機能を有する。これにより、両流体室202,204の流体圧を同じにすることができ、慣性体160のX方向の移動に対する流体圧の影響を抑制することができる。
【0071】
再び図5に戻り、制御部120は、加速度センサ112の検出値である(−α)122に応じて、アクチュエータ170のコイル172に駆動電流を供給して、慣性体160をX方向に移動駆動させ、振動抑制対象である定盤8に補償加速度である(+α)126を与える機能を有する。
【0072】
制御部120の詳細な構成は図7の制御ブロック線図に示される。なお、以下では図1から図6と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では図1から図6の符号を用いて説明する。
【0073】
図7に示されるように、この振動除去装置110の制御ブロック図は、図4で説明した
位置バランスバネを用いる気体圧サーボ弁に対する位置決め制御システム12に似ている。相違する点は、図4では位置指令が入力されるが、図7では、加速度指令として(−α)122が与えられる。したがって、図7におけるゲインG1を有する位置制御器に代わって、ゲインG3を有する制御器124が加速度指令と減算器58との間に設けられる。そして、図4では、可動線輪とスプールで示されている部分が、アクチュエータ170と慣性体160となる。アクチュエータ170と慣性体160の運動により、補償加速度(+α)126が出力されることになる。
【0074】
この振動除去装置110の概略の動作は以下の通りである。すなわち、振動抑制対象である定盤8の振動を加速度センサ112によって加速度(−α)122として検出し、加速度指令として制御部120に戻し、制御器124において適当なゲインG3を乗じて速度指令とする。すなわち、制御器124は、速度指令出力手段である。そして、減算器58において、速度指令と制御対象であるアクチュエータ170の慣性体160の速度と比較し、その偏差である速度偏差に対し速度制御器60において適当なゲインG2を乗じて駆動電流指令とし、これを電流ブースタ62に出力する。そして、電流ブースタ62は、駆動電流指令を駆動電流に変換してアクチュエータ170のコイル172に供給し、永久磁石174と協働して駆動電流に応じたトルクを発生して慣性体160を移動させる。そして慣性体160の移動の反力によって、装置本体部150が取り付けられる定盤8に補償加速度(+α)126を与え、これにより、定盤8の振動の加速度(−α)122を補償して振動を抑制または除去する。
【0075】
ここで、電流ブースタ62の出力が速度演算器66によって演算されて速度情報に変換され、減算器58によって、速度指令と比較される。このフィードバックのループが速度フィードバックループ67である。
【0076】
このように、速度演算器66は、電流ブースタ62の出力を、速度指令のデータレベルに合わせた速度データに変換する機能を有する回路である。電流ブースタ62に入力されるのは速度制御器60の出力で、加速度指令であるので、電流ブースタ62の出力は加速度指令に応じた電流データとなる。したがって、これを積分演算することで、速度に相当するデータとなることになる。
【0077】
具体的には、アクチュエータ170と慣性体160における可動部の物理モデルに応じて、電流ブースタ62の電流データを変換して、可動部の速度に相当するデータとすることが好ましい。アクチュエータ170と慣性体160の可動部は、永久磁石174を含む慣性体160と、保持バネ180,182と、慣性体160を支持する流体軸受部分であるので、この部分の物理モデルは、一般的に、Ms2+Ds+kで表すことができる。ここでMは、質量または慣性であり、Dは粘性係数またはダンピング定数であり、kはバネ定数である。このモデルを用いて、速度演算器66は、フォースモータ40の可動線輪36に対するドライバである電流ブースタ62の実駆動電流値に、s/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることができる。
【0078】
s/(a1s2+a2s+a3)の演算は、積分の次元を有する演算であり、これを模擬的な積分演算、あるいは単に積分演算と呼ぶことができる。かかる積分演算機能を有する速度演算器66としては、アナログ積分回路等で構成することができる。すなわち、速度演算器66は、ドライバである電流ブースタ62の実駆動電流の積分演算によって速度フィードバック信号を生成する積分フィードバック手段である。
【0079】
上記構成により、位置フィードバックループと速度フィードバックループとを有する気体圧サーボ弁における可動線輪型フォースモータの位置決めシステムにおいて、速度フィードバックを微分演算でなく、積分演算によって実行することができるので、微分演算による場合に比べ、高周波成分のノイズを抑制できる。また、速度フィードバックに関する回路構成をアナログ回路で構成できるので、ディジタル回路で構成する場合に比べ、コストを抑制することができる。
【0080】
特に、気体圧サーボ弁20の可動部の物理モデルが、Ms2の項が他のDs+kの項に比べ支配的な場合は、速度演算器の構成が簡単になる。その様子を図8に示す。上記のように、保持バネ180,182は振動特性的に弱いバネで十分で、慣性体160の質量Mと、保持バネ180,182のバネ定数kとで定まる固有振動数が、0.1Hzから10Hz程度である。したがって、流体軸受部分における慣性体160の速度も低速であり、Ds+kの項は、Ms2の項に比べ小さいことが多い。この場合には、速度演算器68が、(s/a1s2)=(1/a1s)という演算機能を有することで十分となる。この演算機能は、単純積分であり、例えば、適当な容量素子で実現できる。
【0081】
さらに、速度演算器68に適当なレベルカット機能を付加して、例えば{b/(Ts+1)}等の演算を実行させるものとすることができる。この場合でも、簡単なアナログ回路によって、これらの機能を実現することができる。
【0082】
このように、電流駆動型アクチュエータの物理モデルにおいて、質量項がダンピング項あるいはバネ定数項に比べ支配的な場合、速度演算器68が適当な容量素子等で構成することができ、高周波ノイズを抑制できると共に、回路構成のコストを大幅に抑制することができる。
【実施例4】
【0083】
図9は、振動除去対象の定盤8の面がY方向、すなわち、重力方向である場合の装置本体部210の構成を示す図である。装置本体部210以外の構成要素は、図5と同様の内容である。なお、以下では、図5、図6と共通の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。ここでは、除去すべき定盤8の振動加速度方向をY方向とする。
【0084】
この場合、装置本体部210も、慣性体160がY方向に移動駆動されるように、図6の場合に対し、角度にして90度回転して、筐体152が定盤8に取り付けられる。このように取り付けると、慣性体160の移動が重力の影響を受けるので、新しく、慣性体160の内部に、釣合流体用流路212が設けられる。釣合流体用流路212は、内部流路198から分岐して、慣性体160の下部側に位置する流体室204に開口する流路である。これにより、流体供給部114から、流体室204に、適当な圧力の流体が供給され、慣性体160を重力方向と逆方向に浮上させることができる。したがって、慣性体160のY方向移動に対する重力の影響を抑制することができる。
【0085】
なお、図9の場合における制御部120の構成、作用は、図7又は図8で説明したものと同じである。すなわち、ここでも、電流ブースタ62の実駆動電流の積分演算によって、速度フィードバックが行われる。
【実施例5】
【0086】
上記では、慣性体160の中立位置の保持及び調整は、保持バネ180,182で行うものとして説明した。慣性体160の中立位置の調整方向は、アクチュエータ170の駆動方向と同じ方向であるので、アクチュエータ170に対する加速度指令を修正することで、保持バネ180,182を用いずに、慣性体160の中立位置の保持を行うことができる。この場合には、慣性体160は、流体軸受機構と、アクチュエータ170からの支持加速度による支持力によって、中立位置に保持されることになる。
【0087】
図10は、保持バネを用いずに慣性体160を中立位置に保持する装置本体部220の構成を示す図である。図1から図9と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では図1から図9の符号を用いて説明する。この装置本体部220は、図6の装置本体部150から保持バネ180,182を省略し、慣性体160の端部と、側板158との間にX方向の変位を検出する変位センサ42を設けたものである。
【0088】
変位センサ42は、慣性体160側に取り付けられるプローブ鉄心軸224と、側板158に取り付けられプローブ鉄心軸224の周囲に配置される差動トランス226を含んで構成することができる。この場合、差動トランスのX軸方向の空心に挿入されるプローブ鉄心軸の挿入長さに応じて、差動コイルの出力電圧が異なるので、この出力電圧に基づいて慣性体160の位置を求めることができる。変位センサ42の出力は、筐体152に設けられる端子台を経由して、制御部120に伝送される。
【0089】
図11は、変位センサ42のフィードバックを含む慣性体160の駆動制御を示すブロックダイアグラムである。以下では、図2、図3、図7、図8と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。このブロックダイアグラムは、主ルートとしてのオープンループと、変位または位置をフィードバックする位置フィードバックループ65と、速度をフィードバックする速度フィードバックループ67とを有する。主ループは、加速度指令である(−α)122を入力として、慣性体160を移動駆動するオープンループ制御に相当する。すなわち、加速度指令である(−α)122は、制御器132によって駆動電流指令に変換され、電流ブースタ116によって駆動電流値に変換されてアクチュエータ170に供給され、これによって慣性体160を移動駆動すると共に、定盤8に振動除去のための補償加速度(+α)126を与える。このように、制御器132の出力は加速度指令である(−α)122を補償する駆動電流指令を出力する機能を有するので、この駆動電流指令を、補償駆動電流指令と呼ぶことができる。
【0090】
位置フィードバックループ65は、慣性体160に中立位置の保持のための保持力を与えるためのものである。すなわち、加速度指令である(−α)122は、制御器134によって適当なゲインG5が乗じられて位置指令に変換され、この位置指令に対し、慣性体160の変位がフィードバックされる。ここでは、慣性体160の変位は変位センサ42によって検出され、位置演算器64によって適当に変換されて、位置指令とレベルが適合される。位置演算器64の出力と制御器134の出力は、減算器54によって比較され、位置制御器56において適当なゲインG1が乗じられて速度指令となる。このようにして、慣性体160が初期位置でもある中立位置に保持されるように、位置フィードバックが行われる。
【0091】
速度フィードバックループ67は、図7、図8で説明したと同様に、電流ブースタ62の実駆動電流を速度演算器66または速度演算器68によって積分演算されたものが、速度指令と比較されることで行われる。図11では、単純積分演算を行う速度演算器68が示されているが、アクチュエータ170と慣性体160のモデルに応じて、速度演算器66を用いるものとすることができる。
【0092】
減算器58は、速度指令出力手段である位置制御器56の出力、すなわち速度指令と、速度演算器68で変換された実速度とを比較し、速度偏差として、速度制御器60に入力する機能を有する。速度フィードバックループ67を用いた速度偏差は、速度制御器60において適当なゲインG2が乗じられて、駆動電流指令として、加算器138に一方側の入力信号として入力される。この駆動電流指令は、フィードバックによる駆動電流指令であるので、制御器132の出力である補償駆動電流指令と区別して、帰還駆動電流指令、あるいは単に、駆動電流指令と呼ぶことができる。
【0093】
加算器138は、帰還駆動電流指令と、補償駆動電流指令とを加算演算し、電流ブースタ62に供給する機能を有する。したがって、電流ブースタ62がアクチュエータ170に供給する実駆動電流は、加速度指令(−α)122に基づく加速度補償のために慣性体160を移動駆動する成分と、慣性体160が中立位置から偏移したときに元の位置に戻すための帰還電流の成分とを含む。
【0094】
換言すれば、図11の制御は、変位センサ42を用いた位置フィードバックループ65によって慣性体160を中立位置に保持し、速度演算器68を用いた速度フィードバックループ67によってノイズ低減等が図られた慣性体中立位置保持運動系に、加速度指令(−α)122を与えて、慣性体160を移動駆動して、その反力によって定盤8に補償加速度(+α)126を与え、振動抑制対象である定盤8の振動を除去するシステムである。
【0095】
なお、図10、図11のシステムに、さらに保持バネを設けることができる。その場合、保持バネは、慣性体160の移動方向の片側端にのみ設けてもよく、移動方向の両側端にそれぞれ設けるものとしてもよい。この場合、保持バネの特性等に応じ、速度演算器68に代えて、速度演算器66を用いるものとできる。また、図10のシステムについて、振動除去対象の定盤8の面をY方向、すなわち、重力方向としてもよい。その場合には、慣性体160の重力方向の保持について、保持バネまたは図9で説明した流体室204を設けるものとできる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置は、上記のように気体圧サーボ弁に用いられるほか、気体圧サーボシリンダにも用いることができる。また、気体圧を用いないXYテーブルのような移動機構、振動を抑制する振動キャンセラ機構等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る実施の形態において、気体圧サーボ弁に関する位置決め制御システムの構成図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、位置決め制御システムの制御ブロック線図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、速度演算器の構成が簡単化される例を説明する図である。
【図4】他の実施の形態における気体圧サーボ弁に関する位置決め制御システムの構成図である。
【図5】別の実施の形態において、振動除去装置の構成を説明する図である。
【図6】図5について、装置本体部の構成を示す図である。
【図7】図5における制御ブロック線図である。
【図8】図7において、速度演算器の構成が簡単化される例を説明する図である。
【図9】他の振動除去装置の例における装置本体部の構成を示す図である。
【図10】さらに他の振動除去装置における装置本体部の構成を示す図である。
【図11】図10における制御ブロック線図である。
【符号の説明】
【0098】
6 基台、8 定盤、10,11,12 位置決め制御システム、20,21 気体圧サーボ弁、22 スリーブ、24 スプール、26 供給口、28 排気口、30 負荷口、32 ヨーク、34 駆動アーム、36 可動線輪、38 磁石、40 フォースモータ、42 変位センサ、44 位置バランスバネ、46,184 調整ネジ、50,51,70,120 制御部、52 位置指令、54,58 減算器、56,57 位置制御器、60 速度制御器、62,116 電流ブースタ、64 位置演算器、65 位置フィードバックループ、66,68 速度演算器、67 速度フィードバックループ、110 振動除去装置、112 加速度センサ、114 流体供給部、122 (−α)、126 (+α)、124,132,134 制御器、138 加算器、150,210,220 装置本体部、152 筐体、154 中央部、156,158 側板、160 慣性体、170 アクチュエータ、172 コイル、174 永久磁石、180,182 保持バネ、190 マニフォールド、192 供給流路、194 排出流路、195 流体供給貫通穴、196 隙間、198 内部流路、202,204 流体室、212 釣合流体用流路、224 プローブ鉄心軸、226 差動トランス。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置に係り、特に、速度フィードバックを行う電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象の位置決めを行う位置決めサーボコントローラ、すなわち位置決め制御装置としては、位置フィードバックの他に速度フィードバック等を行って制御性を改善することが行われる。例えば、特許文献1には、気体圧サーボ弁の位置決めにおいて、モータによって駆動されるスプールの動きを変位センサで検出して制御対象の位置データとし、位置指令と位置データとの間の偏差を位置ループゲインで増幅して速度指令とし、位置データを微分した速度データと速度指令との偏差を速度ループゲインで増幅して駆動指令とし、駆動指令を電流ブースタに出力してモータを駆動することが述べられている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−063205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に述べられているように、位置決め制御を行う際に、速度フィードバックを行うには、制御対象の位置データを取得し、これを微分処理して速度データとし、これを速度指令に戻すことが行われている。
【0005】
この方法によれば、速度センサを別に設けることなく、例えば位置データに対して微分演算処理を施すことで速度フィードバックを行うことができる。しかしながら、微分演算処理は、周波数の高い領域でゲインが高くなるので、高周波成分のノイズも増幅されることになる。したがって、ノイズ増幅を抑制するために、複雑な演算を要し、アナログ回路の微分では不十分となり、複雑なディジタル演算が必要となり、コストが高くなることが多い。
【0006】
本発明の目的は、コストを抑制して速度フィードバックを可能とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置は、電流駆動型アクチュエータを制御対象とする駆動制御装置であって、制御対象に対する指令に基づく速度指令と制御対象の速度との間の偏差である速度偏差に基づいて駆動電流指令を出力する速度制御手段と、駆動電流指令に基づく駆動電流によって制御対象を駆動するドライバと、ドライバの実駆動電流の積分演算によって速度フィードバック信号を生成し、速度制御手段に制御対象の速度としてフィードバックする積分フィードバック手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、制御対象をMs2+Ds+kのモデルとして、ドライバの実駆動電流値にs/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、制御対象をMs2と近似して、ドライバの実駆動電流に1/a1sの演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、アナログ回路によって積分演算を行うことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、制御対象の位置を検出する位置検出手段と、制御対象に対する位置指令と、位置検出手段によって検出された制御対象の位置との間の位置偏差に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段と、を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、制御対象の駆動方向に設けられ、制御対象の中立位置を設定する位置バランスバネと、位置指令と中立位置との間の偏差である位置偏差に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段と、を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、電流駆動型アクチュエータは、振動抑制対象物に取り付けられ、振動抑制対象の加速度を補償する補償加速度を制御対象に対する加速度指令とし、その制御対象に対する加速度指令に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、電流駆動型アクチュエータは、振動抑制対象物に取り付けられ、ドライバは、速度制御手段からの駆動電流指令と、振動抑制対象の加速度を補償する補償加速度に基づく補償駆動電流指令と、に基づく駆動電流によって制御対象を駆動することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成の少なくとも1つにより、電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置は、ドライバの実駆動電流の積分演算によって速度フィードバック信号を生成して、速度制御手段に制御対象の速度としてフィードバックする。電流駆動型アクチュエータの場合、ドライバの実駆動電流は、加速度指令に対応する値となるので、それを積分演算したものは制御対象の速度に対応するものとなる。上記構成によれば、速度フィードバックは、位置の微分によって行うのでなく、ドライバの実駆動電流の積分演算によって行われる。微分処理は、周波数が高周波となるにつれ利得が増大するので高周波ノイズも増幅されるが、積分演算処理は周波数が高周波となるにつれ利得が抑制されるので、高周波ノイズが抑制される。したがって、ノイズ処理を要せずに速度フィードバックを行うことができ、コストを抑制することができる。
【0016】
また、電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、制御対象をMs2+Ds+kのモデルとして、ドライバの実駆動電流値にs/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とする。この演算は、積分の次元を有する処理である。これにより、積分対象の物理モデルに忠実な速度フィードバック信号とできる。
【0017】
また、電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、制御対象をMs2と近似して、ドライバの実駆動電流に1/a1sの演算を行い、これを速度フィードバック信号とする。これにより、簡単な単純積分演算のみで速度フィードバック信号を生成することができる。
【0018】
また、電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、積分フィードバック手段は、アナログ回路によって積分演算を行う。これにより、ディジタル回路によって積分演算を行う場合に比べ、コストを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、電流駆動型アクチュエータを有する駆動制御対象として、位置決め制御を行う気体圧サーボ弁と、慣性体の駆動制御によって振動抑制対象の振動を除去する振動除去装置とを説明するが、これは説明のための例示である。駆動制御対象としては、電流駆動型アクチュエータを有するものであればよい。例えば、気体圧サーボ弁以外のものとして、気体圧サーボシリンダであってもよい。また、気体圧を用いないXYテーブルのような移動機構であってもよい。振動除去装置においても、電流駆動型アクチュエータも有するものであれば、気体圧を利用していない構成のものであってもよい。
【0020】
また、以下では電流駆動型アクチュエータとして、可動線輪型のフォースモータを説明するが、これ以外の電流駆動型アクチュエータであってもよい。例えば、リニア型のアクチュエータ、可動磁石型のモータ等であってもよい。また、位置センサとして差動トランス型位置検出器を説明するが、それ以外の原理の位置検出手段であってもよい。例えば、静電容量型位置センサ、磁気的位置検出センサ、光学的位置検出センサ、あるいは、やや複雑な構成となるが、磁気的速度センサを用いてこれを積分して位置情報として用いるものとしてもよい。
【0021】
また、駆動制御装置のフィードバックループとして、少なくとも速度フィードバックループとを有する場合を説明するが、このほかに、さらに加速度フィードバックを有してもよく、また、これらのフィードバックループのほかに他の制御要素、例えばフィードフォワードループ等が設けられるものであってもよい。また、外乱オブザーバ等の他の制御方法と組み合わせるものとしてもよい。また、制御対象を駆動するドライバの動作に飽和現象が現れないようにするゲインリミッタを有するものであってもよい。
【実施例1】
【0022】
図1は、電流駆動型アクチュエータとして、可動線輪型フォースモータを用い、位置検出センサを有する気体圧サーボ弁に関する位置決め制御システム10の構成図である。図2は、位置決め制御システム10の制御ブロック線図である。この位置決め制御システム10は、気体圧サーボ弁20と、気体圧サーボ弁20から出力される位置信号と位置指令52とを比較して気体圧サーボ弁20の動作を制御する制御部50とを含んで構成される。
【0023】
気体圧サーボ弁20は、ハウジング又はスリーブ22と、スリーブ22の内壁により軸方向に移動可能に支持されるスプール24とを有し、スリーブ22とスプール24の相対位置を制御することにより、スリーブ22の外部から供給された気体圧を調整して、所望の負荷圧を有する気体を出力する機能を有するサーボ弁である。図1において軸方向をX方向として矢印で示した。
【0024】
スリーブ22は、概略円筒状の部材で、その内周は、スプール24が軸方向に滑らかに移動できるように精密に加工される。スリーブ22の外周から内周との間には、図示されていない気体源に接続され1次側気体圧を有する気体をスプール24側に供給する供給口26と、スプール24側からの気体を大気側に排気する排気口28と、スプール24側から2次側気体圧を有する気体を取出して図示されていない負荷に出力する負荷口30とが設けられる。
【0025】
スプール24は、より太い外形を有するランドと呼ばれる部分と、より細い外形を有するステムと呼ばれる部分を軸方向に複数配列して構成される部材である。各ランドの外径は、スリーブ22の内径との間で気密かつ滑らかに移動可能なように精密に加工される。図1の例ではランドは3つ配置されるが、中央のランドの幅が負荷口30のスプール側開口の幅とほぼ同じに設定される。さらに、供給口26のスプール側開口と排気口28のスプール側開口との間隔が中央のランドの幅より十分広く設定される。
【0026】
すなわち、図1に示す位置関係においては、中央のランドの幅がちょうど負荷口30のスプール側開口の幅を覆い、負荷口30には供給口26における1次側気体圧や排気口28における大気圧の影響が及ばない。ここでスプール24が図1に示す+X方向に移動すると、中央のランドの幅が負荷口30のスプール側開口の幅からずれて、供給口26における1次側気体圧が負荷口30に現れ、2次側気体圧が上昇する。+X方向と逆の方向にスプール24が移動すると、排気口28における大気圧が負荷口30に現れ、2次側気体圧が低下する。このように、スリーブ22とスプール24の相対位置を変えることにより、所望の負荷圧を有する気体を負荷口30から出力させることができる。
【0027】
スリーブ22の一端側に設けられるフォースモータ40は、制御部50の制御下にある電流ブースタ62(図2参照)から出力される電流に従い、スプール24を軸方向に駆動する機能を有する可動線輪型アクチュエータである。具体的には、スリーブ22の一端側に固定して取り付けられ磁束を通すヨーク32と、スプール24の一端側に取り付けられる駆動アーム34と、駆動アーム34の先に巻かれた可動線輪36と、可動線輪36の軸方向移動を受け入れるようにヨーク32に設けられた隙間に取り付けられ、可動線輪36と向かい合う磁石38とを含んでフォースモータ40が構成される。可動線輪36は、図2に示されるように、電流ブースタ62の出力と接続される。
【0028】
スプール24及びスリーブ22の一方端に設けられる変位センサ42は、フォースモータ40により駆動されるスプールの位置を検出し、制御部50に出力する機能を有する位置検出手段である。具体的にはスプール24の一方端に取り付けられたプローブ鉄心軸と、スリーブ22に取り付けられプローブ鉄心軸の周囲に配置される差動トランスを含んで構成することができる。この場合、差動トランスのX軸方向の空心に挿入されるプローブ鉄心軸の挿入長さに応じて、差動コイルの出力電圧が異なるので、この出力電圧に基づいてスプール24の位置を求めることができる。
【0029】
制御部50の詳細な構成は図2の制御ブロック線図に示される。なお、以下では図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では図1の符号を用いて説明する。
【0030】
図2に示されるように、この気体圧サーボ弁の位置決め制御システム10の概略の動作は以下の通りである。すなわち、スプール24の位置を変位センサ42で検出し、制御対象の位置として制御部50に戻し、制御部50により外部からの位置指令52と、変位センサ42に基づく制御対象の位置と比較し、その偏差である位置偏差に対し適当なゲインG1を乗じて速度指令とし、速度指令と制御対象の速度と比較し、その偏差である速度偏差に対し適当なゲインG2を乗じて駆動指令とし、これを電流ブースタ62に出力する。そして、電流ブースタ62は、駆動指令を駆動電流に変換してフォースモータ40の可動線輪36に供給し、可動線輪36は駆動電流に応じたトルクを発生してスプール24を移動させる。
【0031】
このスプール24の位置が変位センサ42を介して制御部50に戻され、位置演算器64によって位置情報に変換され、減算器54によって位置指令52と比較される。このフィードバックのループが位置フィードバックループ65である。また、電流ブースタ62の出力が速度演算器66によって演算されて速度情報に変換され、減算器58によって、速度指令と比較される。このフィードバックのループが速度フィードバックループ67である。
【0032】
制御部50は、気体圧により位置決めを行う気体圧サーボ弁20、より具体的には、可動線輪36、スプール24を制御対象としてその動作を制御する気体圧位置決めサーボコントローラ、すなわち電流駆動型アクチュエータ位置決め制御装置である。制御部50は、位置指令52が入力される減算器54と、減算器54から順次位置制御器56−減算器58−速度制御器60−電流ブースタ62と、直列に接続されるメイン制御ルートを有し、さらにスプール24の変位を位置に変換して減算器54に戻す位置演算器64と、電流ブースタ62の出力を速度に変換して減算器58に戻す速度演算器66とを含む。かかる制御部50は、アナログ電子回路で構成することができる。また、必要に応じ、一部を簡単なディジタル回路で補うこととすることもできる。
【0033】
減算器54は、位置指令52と制御対象の位置とを入力し、位置偏差=(位置指令と制御対象の位置)を出力する機能を有する回路である。制御対象の位置データとしては、上記のように、変位センサ42の出力データを位置演算器64によって適当に変換して、位置指令52とレベルを適合させたものを用いることができる。
【0034】
位置制御器56は、ゲインG1によって位置偏差をG1倍して速度指令として減算器58に出力する増幅器としての機能を有する速度指令出力手段であり、また位置制御手段である。ゲインG1は、いわゆる位置ループゲインである。かかる位置制御器56は、前段の減算器54と合わせて、例えば、アナログ差動増幅器で構成することができる。
【0035】
減算器58は、位置制御器56の出力である速度指令と、制御対象の速度とを入力し、速度偏差=(速度指令と制御対象の速度)を出力する機能を有する回路である。制御対象の速度データとしては、後述のように、電流ブースタ62の出力データを速度演算器66によって適当な積分演算によって変換して、速度指令とレベルを適合させたものを用いることができる。
【0036】
速度制御器60は、ゲインG2によって速度偏差をG2倍し、駆動指令として電流ブースタ62に入力する増幅器としての機能を有する速度制御手段である。ゲインG2は、いわゆる速度ループゲインである。かかる速度制御器60は、前段の減算器58と合わせて、例えば、アナログ差動増幅器で構成することができる。
【0037】
電流ブースタ62は、制御対象である気体圧サーボ弁20を駆動指令に基づく駆動電流によって駆動する機能を有するドライバ回路である。具体的には、気体圧サーボ弁20の駆動部である可動線輪36に供給する駆動電流を発生する駆動回路である。電流ブースタ62の出力電力能は、気体圧サーボ弁20の制御システムの目標応答速度を満たすように十分大きく設定されることが好ましい。かかる電流ブースタ62としては、電圧信号を入力し、入力信号に応じた電流信号を出力するアナログ電圧・電流変換回路で構成することができる。
【0038】
電流ブースタ62の出力は可動線輪36に供給され、可動線輪36に流れる電流と、磁石38からの磁束との協働により、駆動力が生じ、スプール24を軸方向に移動させる。このスプール24の移動した位置は変位センサ42により検出される。
【0039】
位置演算器64は、上記のように、変位センサ42の出力を、位置指令52のデータレベルに合わせた位置データに変換する機能を有する回路である。変位センサ42がスプール24の位置を直接検出するタイプのものであるときは、必要に応じデータのレベル調整を行うレベルシフタ回路で位置演算器64を構成することができる。
【0040】
位置演算器64の出力は上記のように減算器54に入力され、スプール24−変位センサ42−位置演算器64−減算器54−位置制御器56−減算器58−速度制御器60−電流ブースタ62−可動線輪36−スプール24のループで、位置フィードバックループ65が形成される。
【0041】
速度演算器66は、電流ブースタ62の出力を、速度指令のデータレベルに合わせた速度データに変換する機能を有する回路である。電流ブースタ62に入力されるのは速度制御器60の出力で、加速度指令であるので、電流ブースタ62の出力は加速度指令に応じた電流データとなる。したがって、これを積分演算することで、速度に相当するデータとなることになる。
【0042】
具体的には、気体圧サーボ弁20の可動部の物理モデルに応じて、電流ブースタ62の電流データを変換して、可動部の速度に相当するデータとすることが好ましい。気体圧サーボ弁20の可動部は、可動線輪36とスプール24であるので、この部分の物理モデルは、一般的に、Ms2+Ds+kで表すことができる。ここでMは、質量または慣性であり、Dは粘性係数またはダンピング定数であり、kはバネ定数である。このモデルを用いて、速度演算器66は、フォースモータ40の可動線輪36に対するドライバである電流ブースタ62の実駆動電流値に、s/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることができる。
【0043】
s/(a1s2+a2s+a3)の演算は、積分の次元を有する演算であり、これを模擬的な積分演算、あるいは単に積分演算と呼ぶことができる。かかる積分演算機能を有する速度演算器66としては、アナログ積分回路等で構成することができる。すなわち、速度演算器66は、ドライバである電流ブースタ62の実駆動電流の積分演算によって速度フィードバック信号を生成する積分フィードバック手段である。
【0044】
速度演算器66の出力は上記のように減算器58に入力され、速度制御器60−電流ブースタ62−速度演算器66のループで、速度フィードバックループ67が形成される。
【0045】
上記構成により、位置フィードバックループと速度フィードバックループとを有する気体圧サーボ弁における可動線輪型フォースモータの位置決めシステムにおいて、速度フィードバックを微分演算でなく、積分演算によって実行することができるので、微分演算による場合に比べ、高周波成分のノイズを抑制できる。また、速度フィードバックに関する回路構成をアナログ回路で構成できるので、ディジタル回路で構成する場合に比べ、コストを抑制することができる。
【0046】
特に、気体圧サーボ弁20の可動部の物理モデルが、Ms2の項が他のDs+kの項に比べ支配的な場合は、速度演算器の構成が簡単になる。その様子を図3に示す。以下では、図1、図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では図1、図2の符号を用いて説明する。
【0047】
図3は、気体圧サーボ弁20の可動部である可動線輪36とスプール24の部分の物理モデルにおいて、Ms2の項が他の(Ds+k)の項に比較して支配的な場合の気体圧サーボ弁に対する位置決め制御システム11の制御ブロック線図である。ここでは、制御部51において、速度演算器68が、(s/a1s2)=(1/a1s)という演算機能を有することで十分であることが示される。この演算機能は、単純積分であり、例えば、適当な容量素子で実現できる。
【0048】
さらに、速度演算器68に適当なレベルカット機能を付加して、例えば{b/(Ts+1)}等の演算を実行させるものとすることができる。この場合でも、簡単なアナログ回路によって、これらの機能を実現することができる。
【0049】
このように、電流駆動型アクチュエータの物理モデルにおいて、質量項がダンピング項あるいはバネ定数項に比べ支配的な場合、速度演算器68が適当な容量素子等で構成することができ、高周波ノイズを抑制できると共に、回路構成のコストを大幅に抑制することができる。
【実施例2】
【0050】
上記では、電流駆動型アクチュエータの変位を検出する位置センサを用いて、位置指令に対し、位置フィードバックループを用いて帰還が行われている。これ以外に、位置検出センサを設けず、制御対象の駆動方向に設けられ、制御対象の中立位置を設定する位置バランスバネを用いて、位置制御システムを構成することができる。図4は、そのような位置バランスバネを用いる気体圧サーボ弁に対する位置決め制御システム12の構成を説明する図である。以下では、図1から図3と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では図1から図3の符号を用いて説明する。
【0051】
図4の気体圧サーボ弁の位置決め制御システム12は、フォースモータ40によってX方向に駆動されるスプール24の他方端に位置バランスバネ44が設けられる。位置バランスバネ44は、スプール24のフォースモータ40が設けられる側と反対側の他方端と、スリーブ22との間に配置され、スリーブ22側には、調整ネジ46が設けられる。この調整ネジ46をX軸方向に移動させることで、スプール24の初期位置である中立位置を正確に設定することができる。
【0052】
スプール24の初期位置である中立位置としては、図4に示されるように、スプール24における中央のランドの幅がちょうど負荷口30のスプール側開口の幅を覆う位置であって、負荷口30には供給口26における1次側気体圧や排気口28における大気圧の影響が及ばない位置とすることができる。
【0053】
制御部70は、図2、図3の場合に比べ、位置検出センサを有しないため、位置フィードバックループがなく、その分、簡単な構成となっている。すなわち、制御部70は、位置指令52を適当なゲインG1によって増幅して速度指令として出力する速度指令出力手段である位置制御器57と、以後、減算器58−速度制御器60−電流ブースタ62と、直列に接続されるメイン制御ルートを有し、さらに、電流ブースタ62の出力を速度に変換して減算器58に戻す速度演算器66とを含む。図4では、このフィードバックループが速度フィードバックループ67として示されている。
【0054】
ここで、電流ブースタ62の出力が可動線輪36に伝達され、これによってスプール24が位置バランスバネ44の復元力に抗して移動される。位置指令52は、この位置バランスバネ44の復元力に釣り合うスプール24の目標位置であり、位置制御器57のゲインG1と、速度制御器60のゲインG2は、この目標位置における位置バランスバネ44の復元力に釣り合う駆動力をフォースモータ40に与えるための駆動電流を電流ブースタ62から出力させるように、設定される。
【0055】
速度演算器66は、図2と同様な内容で、電流ブースタ62の実駆動電流値に、s/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とするものである。なお、気体圧サーボ弁21の可動部である可動線輪36とスプール24と位置バランスバネ44の部分の物理モデルにおいて、Ms2の項が他の(Ds+k)の項に比較して支配的となる場合には、図3で説明したように、電流ブースタ62の実駆動電流値に、(1/a1s)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることができる。
【実施例3】
【0056】
次に、電流駆動型電流駆動型アクチュエータを振動抑制対象に取り付けて振動除去装置として構成する例を説明する。図5は、振動除去装置110の構成を説明する図である。図5には、振動除去装置110の構成要素ではないが、振動除去の対象である定盤8と、定盤8が空気バネ等で据え付けられる基台6が図示されている。振動除去装置110は、振動除去の対象である対象物に取り付けて、その対象物の微小振動を除去する機能を有する。微小振動とは、対象物の変位に換算して、nmからμm程度の大きさの振動で、対象物の機能、例えば、精密測定、精密加工、精密組立等の観点から無視できない振動である。なお、図5に示すY方向は、重力方向で、X方向は重力方向に垂直な水平方向である。以下の各図においても同様である。以下では、定盤8について除去対象の振動の加速度方向は、定盤8の面に平行な方向としてある。図5においては、定盤8の面は水平面であるので、除去対象の微小振動の加速度方向は、X方向である。
【0057】
振動除去装置110は、振動除去対象物である定盤8の加速度を検出する加速度センサ112と、後述する慣性体と慣性体を駆動するアクチュエータ機構とを含んで構成される装置本体部150と、加速度センサ112の検出値に応じて装置本体部150のアクチュエータ機構を駆動制御する制御部120と、装置本体部150において慣性体を流体支持等するための流体を供給する流体供給部114とを含んで構成される。
【0058】
加速度センサ112は、定盤8の加速度を検出できるものであればよく、例えば、適当な半導体加速度センサ等を用いることができる。あるいは、レーザ変位測定器の検出データを処理して、加速度として出力する精密加速度検出システムを用いてもよい。図5においては、加速度センサ112によって検出された加速度を(−α)122として示してある。これに対し、装置本体部150が定盤8に及ぼす補償加速度は(+α)126として示されている。すなわち、装置本体部150は、定盤8の振動加速度に対し、方向が逆方向で、同じ大きさの加速度を補償加速度として出力する機能を有するものである。
【0059】
流体供給部114は、装置本体部150において、慣性体を流体支持するために適当な流体圧に制御された流体を生成する機能を有する装置で、例えば、気体源とレギュレータ等で構成することができる。さらに精密な流体圧を必要とするときは、流体圧制御弁等を用いることができる。流体としては、例えば、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥不活性ガス等の気体を用いることができるほか、場合によっては、オイル、水等の液体を用いることができる。
【0060】
図6は、装置本体部150の構成を示す図である。装置本体部150は、筐体152と、筐体152の内部に、流体支持される慣性体160と、慣性体160をX方向に移動駆動するアクチュエータ170を含んで構成される。
【0061】
筐体152は、外形がほぼ直方体の部材で、その内部には、慣性体160をX方向に移動可能に流体支持するための断面円形の空間が形成されている。筐体152は、中央部154と、その両側をふさぐ側板156,158とから構成される。中央部154と、側板156,158とは、流体を内部に保持し、漏らさないように、しっかりシールされて組立固定される。
【0062】
中央部154は、直方体外形で、慣性体160を流体支持するための穴を有する部材である。その穴の直径は、慣性体160の外径よりやや大きめに設定される。穴の内壁面は、慣性体160の外周とで、流体軸受機構を形成する面であり、滑らかに表面処理が施される。
【0063】
筐体152の一方の側板156と、慣性体160の一方端側との間に設けられるアクチュエータ170は、制御部120の制御の下で、筐体152に対し、慣性体160を所定の加速度で移動駆動する機能を有し、電流駆動型アクチュエータとして、フォースモータの構成を有する。すなわち、アクチュエータ170は、筐体152の側板に、固定子としてコイル172が取り付けられ、慣性体160の一方端側に可動子である永久磁石174が取り付けられる。ここでは、コイル172は可動線輪ではなく、永久磁石174に駆動力を与える機能を有し、永久磁石174が設けられる慣性体160が可動子となる。コイル172の各端子は、筐体152に設けられた端子台を経由して制御部120に接続される。
【0064】
慣性体160は、円柱状の部材で、比質量の比較的大きな材料で形成される質量体である。例えば、ステンレス鋼等を円柱状に加工し、さらに必要な形状加工を加えたものを用いることができる。慣性体160の円柱状外周面は、筐体152の内壁面との間で流体軸受機構を形成する面であるので、滑らかに精度よく加工される。
【0065】
慣性体160の両端部と、筐体152の側板156,158との間に設けられる保持バネ180,182は、慣性体160を筐体152に対し、X方向について中立位置に支持するための支持部材であり、いわゆる位置バランスバネである。保持バネ180,182は、その両端部においてボール座によって支持されている。これによって、保持バネ180,182と、慣性体160、両側板156,158との間の摩擦を低減することができる。なお、保持バネ182と側板158との間には、中立位置を微調整するための調整ネジ184が設けられる。
【0066】
保持バネ180,182は、振動特性的に弱いバネとして構成される。具体的には、慣性体160の質量Mと、保持バネ180,182のバネ定数kとで定まる固有振動数が、0.1Hzから10Hz程度となるように、バネ定数kが設定される。好ましくは、固有振動数が1Hz程度となるバネ定数がよい。このようにすることで、アクチュエータ170によって慣性体160がX方向に移動駆動されるときに、保持バネ180,182の付勢力の影響を抑制することができる。つまり、慣性体160をαの加速度で移動させるためには、保持バネ180,182の影響を考慮せずに、アクチュエータ170が、慣性体160にMαの駆動力を与えればよい。したがって、慣性体160の移動駆動の制御が簡単になる。
【0067】
筐体152の外側に設けられるマニフォールド190は、流体供給部114に接続され、流体を筐体152の内部に導き、筐体152の内部から外部に排出する機能を有する部材である。マニフォールド190には、筐体152の中央部154におけるほぼ中央の側面に設けられる流体供給貫通穴195に対応して、供給流路192が設けられ、筐体152の中央部154の端部に設けられる流体排出貫通穴に対応して、排出流路194が設けられる。供給流路192、排出流路194には、必要に応じ、適当な絞り機構を設けることができる。
【0068】
筐体152の中央部154の流体供給貫通穴195から供給される流体は、筐体152の内壁面と慣性体160の外周面との間の隙間196に吹き出し、いわゆる流体軸受機構によって、慣性体160を筐体152の内壁面から浮上させる。このようにして、慣性体160は、筐体152との間で流体支持され、アクチュエータ170によって、滑らかにX方向に移動駆動されることができる。
【0069】
筐体152の中央部154の流体供給貫通穴195に対応して、慣性体160に設けられる内部流路198は、アクチュエータ170のコイル172のところに流体を導く機能を有する。これによって、コイル172の発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0070】
また、慣性体160の内部をX方向に貫通して設けられるマニフォールド190は、慣性体160の両端部と、筐体152との間に形成される流体室202,204を連通する機能を有する。これにより、両流体室202,204の流体圧を同じにすることができ、慣性体160のX方向の移動に対する流体圧の影響を抑制することができる。
【0071】
再び図5に戻り、制御部120は、加速度センサ112の検出値である(−α)122に応じて、アクチュエータ170のコイル172に駆動電流を供給して、慣性体160をX方向に移動駆動させ、振動抑制対象である定盤8に補償加速度である(+α)126を与える機能を有する。
【0072】
制御部120の詳細な構成は図7の制御ブロック線図に示される。なお、以下では図1から図6と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では図1から図6の符号を用いて説明する。
【0073】
図7に示されるように、この振動除去装置110の制御ブロック図は、図4で説明した
位置バランスバネを用いる気体圧サーボ弁に対する位置決め制御システム12に似ている。相違する点は、図4では位置指令が入力されるが、図7では、加速度指令として(−α)122が与えられる。したがって、図7におけるゲインG1を有する位置制御器に代わって、ゲインG3を有する制御器124が加速度指令と減算器58との間に設けられる。そして、図4では、可動線輪とスプールで示されている部分が、アクチュエータ170と慣性体160となる。アクチュエータ170と慣性体160の運動により、補償加速度(+α)126が出力されることになる。
【0074】
この振動除去装置110の概略の動作は以下の通りである。すなわち、振動抑制対象である定盤8の振動を加速度センサ112によって加速度(−α)122として検出し、加速度指令として制御部120に戻し、制御器124において適当なゲインG3を乗じて速度指令とする。すなわち、制御器124は、速度指令出力手段である。そして、減算器58において、速度指令と制御対象であるアクチュエータ170の慣性体160の速度と比較し、その偏差である速度偏差に対し速度制御器60において適当なゲインG2を乗じて駆動電流指令とし、これを電流ブースタ62に出力する。そして、電流ブースタ62は、駆動電流指令を駆動電流に変換してアクチュエータ170のコイル172に供給し、永久磁石174と協働して駆動電流に応じたトルクを発生して慣性体160を移動させる。そして慣性体160の移動の反力によって、装置本体部150が取り付けられる定盤8に補償加速度(+α)126を与え、これにより、定盤8の振動の加速度(−α)122を補償して振動を抑制または除去する。
【0075】
ここで、電流ブースタ62の出力が速度演算器66によって演算されて速度情報に変換され、減算器58によって、速度指令と比較される。このフィードバックのループが速度フィードバックループ67である。
【0076】
このように、速度演算器66は、電流ブースタ62の出力を、速度指令のデータレベルに合わせた速度データに変換する機能を有する回路である。電流ブースタ62に入力されるのは速度制御器60の出力で、加速度指令であるので、電流ブースタ62の出力は加速度指令に応じた電流データとなる。したがって、これを積分演算することで、速度に相当するデータとなることになる。
【0077】
具体的には、アクチュエータ170と慣性体160における可動部の物理モデルに応じて、電流ブースタ62の電流データを変換して、可動部の速度に相当するデータとすることが好ましい。アクチュエータ170と慣性体160の可動部は、永久磁石174を含む慣性体160と、保持バネ180,182と、慣性体160を支持する流体軸受部分であるので、この部分の物理モデルは、一般的に、Ms2+Ds+kで表すことができる。ここでMは、質量または慣性であり、Dは粘性係数またはダンピング定数であり、kはバネ定数である。このモデルを用いて、速度演算器66は、フォースモータ40の可動線輪36に対するドライバである電流ブースタ62の実駆動電流値に、s/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることができる。
【0078】
s/(a1s2+a2s+a3)の演算は、積分の次元を有する演算であり、これを模擬的な積分演算、あるいは単に積分演算と呼ぶことができる。かかる積分演算機能を有する速度演算器66としては、アナログ積分回路等で構成することができる。すなわち、速度演算器66は、ドライバである電流ブースタ62の実駆動電流の積分演算によって速度フィードバック信号を生成する積分フィードバック手段である。
【0079】
上記構成により、位置フィードバックループと速度フィードバックループとを有する気体圧サーボ弁における可動線輪型フォースモータの位置決めシステムにおいて、速度フィードバックを微分演算でなく、積分演算によって実行することができるので、微分演算による場合に比べ、高周波成分のノイズを抑制できる。また、速度フィードバックに関する回路構成をアナログ回路で構成できるので、ディジタル回路で構成する場合に比べ、コストを抑制することができる。
【0080】
特に、気体圧サーボ弁20の可動部の物理モデルが、Ms2の項が他のDs+kの項に比べ支配的な場合は、速度演算器の構成が簡単になる。その様子を図8に示す。上記のように、保持バネ180,182は振動特性的に弱いバネで十分で、慣性体160の質量Mと、保持バネ180,182のバネ定数kとで定まる固有振動数が、0.1Hzから10Hz程度である。したがって、流体軸受部分における慣性体160の速度も低速であり、Ds+kの項は、Ms2の項に比べ小さいことが多い。この場合には、速度演算器68が、(s/a1s2)=(1/a1s)という演算機能を有することで十分となる。この演算機能は、単純積分であり、例えば、適当な容量素子で実現できる。
【0081】
さらに、速度演算器68に適当なレベルカット機能を付加して、例えば{b/(Ts+1)}等の演算を実行させるものとすることができる。この場合でも、簡単なアナログ回路によって、これらの機能を実現することができる。
【0082】
このように、電流駆動型アクチュエータの物理モデルにおいて、質量項がダンピング項あるいはバネ定数項に比べ支配的な場合、速度演算器68が適当な容量素子等で構成することができ、高周波ノイズを抑制できると共に、回路構成のコストを大幅に抑制することができる。
【実施例4】
【0083】
図9は、振動除去対象の定盤8の面がY方向、すなわち、重力方向である場合の装置本体部210の構成を示す図である。装置本体部210以外の構成要素は、図5と同様の内容である。なお、以下では、図5、図6と共通の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。ここでは、除去すべき定盤8の振動加速度方向をY方向とする。
【0084】
この場合、装置本体部210も、慣性体160がY方向に移動駆動されるように、図6の場合に対し、角度にして90度回転して、筐体152が定盤8に取り付けられる。このように取り付けると、慣性体160の移動が重力の影響を受けるので、新しく、慣性体160の内部に、釣合流体用流路212が設けられる。釣合流体用流路212は、内部流路198から分岐して、慣性体160の下部側に位置する流体室204に開口する流路である。これにより、流体供給部114から、流体室204に、適当な圧力の流体が供給され、慣性体160を重力方向と逆方向に浮上させることができる。したがって、慣性体160のY方向移動に対する重力の影響を抑制することができる。
【0085】
なお、図9の場合における制御部120の構成、作用は、図7又は図8で説明したものと同じである。すなわち、ここでも、電流ブースタ62の実駆動電流の積分演算によって、速度フィードバックが行われる。
【実施例5】
【0086】
上記では、慣性体160の中立位置の保持及び調整は、保持バネ180,182で行うものとして説明した。慣性体160の中立位置の調整方向は、アクチュエータ170の駆動方向と同じ方向であるので、アクチュエータ170に対する加速度指令を修正することで、保持バネ180,182を用いずに、慣性体160の中立位置の保持を行うことができる。この場合には、慣性体160は、流体軸受機構と、アクチュエータ170からの支持加速度による支持力によって、中立位置に保持されることになる。
【0087】
図10は、保持バネを用いずに慣性体160を中立位置に保持する装置本体部220の構成を示す図である。図1から図9と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下では図1から図9の符号を用いて説明する。この装置本体部220は、図6の装置本体部150から保持バネ180,182を省略し、慣性体160の端部と、側板158との間にX方向の変位を検出する変位センサ42を設けたものである。
【0088】
変位センサ42は、慣性体160側に取り付けられるプローブ鉄心軸224と、側板158に取り付けられプローブ鉄心軸224の周囲に配置される差動トランス226を含んで構成することができる。この場合、差動トランスのX軸方向の空心に挿入されるプローブ鉄心軸の挿入長さに応じて、差動コイルの出力電圧が異なるので、この出力電圧に基づいて慣性体160の位置を求めることができる。変位センサ42の出力は、筐体152に設けられる端子台を経由して、制御部120に伝送される。
【0089】
図11は、変位センサ42のフィードバックを含む慣性体160の駆動制御を示すブロックダイアグラムである。以下では、図2、図3、図7、図8と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。このブロックダイアグラムは、主ルートとしてのオープンループと、変位または位置をフィードバックする位置フィードバックループ65と、速度をフィードバックする速度フィードバックループ67とを有する。主ループは、加速度指令である(−α)122を入力として、慣性体160を移動駆動するオープンループ制御に相当する。すなわち、加速度指令である(−α)122は、制御器132によって駆動電流指令に変換され、電流ブースタ116によって駆動電流値に変換されてアクチュエータ170に供給され、これによって慣性体160を移動駆動すると共に、定盤8に振動除去のための補償加速度(+α)126を与える。このように、制御器132の出力は加速度指令である(−α)122を補償する駆動電流指令を出力する機能を有するので、この駆動電流指令を、補償駆動電流指令と呼ぶことができる。
【0090】
位置フィードバックループ65は、慣性体160に中立位置の保持のための保持力を与えるためのものである。すなわち、加速度指令である(−α)122は、制御器134によって適当なゲインG5が乗じられて位置指令に変換され、この位置指令に対し、慣性体160の変位がフィードバックされる。ここでは、慣性体160の変位は変位センサ42によって検出され、位置演算器64によって適当に変換されて、位置指令とレベルが適合される。位置演算器64の出力と制御器134の出力は、減算器54によって比較され、位置制御器56において適当なゲインG1が乗じられて速度指令となる。このようにして、慣性体160が初期位置でもある中立位置に保持されるように、位置フィードバックが行われる。
【0091】
速度フィードバックループ67は、図7、図8で説明したと同様に、電流ブースタ62の実駆動電流を速度演算器66または速度演算器68によって積分演算されたものが、速度指令と比較されることで行われる。図11では、単純積分演算を行う速度演算器68が示されているが、アクチュエータ170と慣性体160のモデルに応じて、速度演算器66を用いるものとすることができる。
【0092】
減算器58は、速度指令出力手段である位置制御器56の出力、すなわち速度指令と、速度演算器68で変換された実速度とを比較し、速度偏差として、速度制御器60に入力する機能を有する。速度フィードバックループ67を用いた速度偏差は、速度制御器60において適当なゲインG2が乗じられて、駆動電流指令として、加算器138に一方側の入力信号として入力される。この駆動電流指令は、フィードバックによる駆動電流指令であるので、制御器132の出力である補償駆動電流指令と区別して、帰還駆動電流指令、あるいは単に、駆動電流指令と呼ぶことができる。
【0093】
加算器138は、帰還駆動電流指令と、補償駆動電流指令とを加算演算し、電流ブースタ62に供給する機能を有する。したがって、電流ブースタ62がアクチュエータ170に供給する実駆動電流は、加速度指令(−α)122に基づく加速度補償のために慣性体160を移動駆動する成分と、慣性体160が中立位置から偏移したときに元の位置に戻すための帰還電流の成分とを含む。
【0094】
換言すれば、図11の制御は、変位センサ42を用いた位置フィードバックループ65によって慣性体160を中立位置に保持し、速度演算器68を用いた速度フィードバックループ67によってノイズ低減等が図られた慣性体中立位置保持運動系に、加速度指令(−α)122を与えて、慣性体160を移動駆動して、その反力によって定盤8に補償加速度(+α)126を与え、振動抑制対象である定盤8の振動を除去するシステムである。
【0095】
なお、図10、図11のシステムに、さらに保持バネを設けることができる。その場合、保持バネは、慣性体160の移動方向の片側端にのみ設けてもよく、移動方向の両側端にそれぞれ設けるものとしてもよい。この場合、保持バネの特性等に応じ、速度演算器68に代えて、速度演算器66を用いるものとできる。また、図10のシステムについて、振動除去対象の定盤8の面をY方向、すなわち、重力方向としてもよい。その場合には、慣性体160の重力方向の保持について、保持バネまたは図9で説明した流体室204を設けるものとできる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係る電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置は、上記のように気体圧サーボ弁に用いられるほか、気体圧サーボシリンダにも用いることができる。また、気体圧を用いないXYテーブルのような移動機構、振動を抑制する振動キャンセラ機構等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る実施の形態において、気体圧サーボ弁に関する位置決め制御システムの構成図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、位置決め制御システムの制御ブロック線図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、速度演算器の構成が簡単化される例を説明する図である。
【図4】他の実施の形態における気体圧サーボ弁に関する位置決め制御システムの構成図である。
【図5】別の実施の形態において、振動除去装置の構成を説明する図である。
【図6】図5について、装置本体部の構成を示す図である。
【図7】図5における制御ブロック線図である。
【図8】図7において、速度演算器の構成が簡単化される例を説明する図である。
【図9】他の振動除去装置の例における装置本体部の構成を示す図である。
【図10】さらに他の振動除去装置における装置本体部の構成を示す図である。
【図11】図10における制御ブロック線図である。
【符号の説明】
【0098】
6 基台、8 定盤、10,11,12 位置決め制御システム、20,21 気体圧サーボ弁、22 スリーブ、24 スプール、26 供給口、28 排気口、30 負荷口、32 ヨーク、34 駆動アーム、36 可動線輪、38 磁石、40 フォースモータ、42 変位センサ、44 位置バランスバネ、46,184 調整ネジ、50,51,70,120 制御部、52 位置指令、54,58 減算器、56,57 位置制御器、60 速度制御器、62,116 電流ブースタ、64 位置演算器、65 位置フィードバックループ、66,68 速度演算器、67 速度フィードバックループ、110 振動除去装置、112 加速度センサ、114 流体供給部、122 (−α)、126 (+α)、124,132,134 制御器、138 加算器、150,210,220 装置本体部、152 筐体、154 中央部、156,158 側板、160 慣性体、170 アクチュエータ、172 コイル、174 永久磁石、180,182 保持バネ、190 マニフォールド、192 供給流路、194 排出流路、195 流体供給貫通穴、196 隙間、198 内部流路、202,204 流体室、212 釣合流体用流路、224 プローブ鉄心軸、226 差動トランス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流駆動型アクチュエータを制御対象とする駆動制御装置であって、
制御対象に対する指令に基づく速度指令と制御対象の速度との間の偏差である速度偏差に基づいて駆動電流指令を出力する速度制御手段と、
駆動電流指令に基づく駆動電流によって制御対象を駆動するドライバと、
ドライバの実駆動電流の積分演算によって速度フィードバック信号を生成し、速度制御手段に制御対象の速度としてフィードバックする積分フィードバック手段と、
を有することを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
積分フィードバック手段は、
制御対象をMs2+Ds+kのモデルとして、ドライバの実駆動電流値にs/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
積分フィードバック手段は、
制御対象をMs2と近似して、ドライバの実駆動電流に1/a1sの演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
積分フィードバック手段は、アナログ回路によって積分演算を行うことを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
制御対象の位置を検出する位置検出手段と、
制御対象に対する位置指令と、位置検出手段によって検出された制御対象の位置との間の位置偏差に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段と、
を有することを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
制御対象の駆動方向に設けられ、制御対象の中立位置を設定する位置バランスバネと、
位置指令と中立位置との間の偏差である位置偏差に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段と、
を有することを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
電流駆動型アクチュエータは、振動抑制対象物に取り付けられ、
振動抑制対象の加速度を補償する補償加速度を制御対象に対する加速度指令とし、その制御対象に対する加速度指令に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段を有することを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
電流駆動型アクチュエータは、振動抑制対象物に取り付けられ、
ドライバは、
速度制御手段からの駆動電流指令と、
振動抑制対象の加速度を補償する補償加速度に基づく補償駆動電流指令と、
に基づく駆動電流によって制御対象を駆動することを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項1】
電流駆動型アクチュエータを制御対象とする駆動制御装置であって、
制御対象に対する指令に基づく速度指令と制御対象の速度との間の偏差である速度偏差に基づいて駆動電流指令を出力する速度制御手段と、
駆動電流指令に基づく駆動電流によって制御対象を駆動するドライバと、
ドライバの実駆動電流の積分演算によって速度フィードバック信号を生成し、速度制御手段に制御対象の速度としてフィードバックする積分フィードバック手段と、
を有することを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
積分フィードバック手段は、
制御対象をMs2+Ds+kのモデルとして、ドライバの実駆動電流値にs/(a1s2+a2s+a3)の演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
積分フィードバック手段は、
制御対象をMs2と近似して、ドライバの実駆動電流に1/a1sの演算を行い、これを速度フィードバック信号とすることを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
積分フィードバック手段は、アナログ回路によって積分演算を行うことを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
制御対象の位置を検出する位置検出手段と、
制御対象に対する位置指令と、位置検出手段によって検出された制御対象の位置との間の位置偏差に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段と、
を有することを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
制御対象の駆動方向に設けられ、制御対象の中立位置を設定する位置バランスバネと、
位置指令と中立位置との間の偏差である位置偏差に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段と、
を有することを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
電流駆動型アクチュエータは、振動抑制対象物に取り付けられ、
振動抑制対象の加速度を補償する補償加速度を制御対象に対する加速度指令とし、その制御対象に対する加速度指令に基づいて速度指令を出力する速度指令出力手段を有することを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置において、
電流駆動型アクチュエータは、振動抑制対象物に取り付けられ、
ドライバは、
速度制御手段からの駆動電流指令と、
振動抑制対象の加速度を補償する補償加速度に基づく補償駆動電流指令と、
に基づく駆動電流によって制御対象を駆動することを特徴とする電流駆動型アクチュエータ駆動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−71930(P2009−71930A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235394(P2007−235394)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(503094070)ピー・エス・シー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(503094070)ピー・エス・シー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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