説明

電源回路およびそれを用いたディスプレイ装置

【課題】正常に起動可能な液晶パネル用の電源回路を提供する。
【解決手段】スイッチングレギュレータ制御部40は、スイッチングレギュレータ102のスイッチング動作を制御するとともに、そのスイッチングに応じたパルス信号LX_AVDDを、本電源回路100に外付けされる負電圧チャージポンプ回路24に出力する。ロジック部30は、(a)電源回路100の動作開始が指示されると、ハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2をともにオフとし、レベルシフタ22の出力端子をハイインピーダンス状態とし、(b)入力電圧VINが所定レベルに達すると、スイッチングレギュレータ制御部40にスイッチング動作の開始を指示し、(c)電源回路100の起動が完了するとレベルシフタ22のハイインピーダンス状態を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、液晶パネル2を備えるディスプレイ装置1の構成示すブロック図である。液晶パネル2は、複数のデータ線(不図示)と、データ線と直交するように配置される複数の走査線(不図示)と、データ線および走査線の交点にマトリクス状に配置された複数の画素回路TFT(Thin Film Transistor)を備える。
【0003】
タイミングコントローラ10は、液晶パネル2に表示すべき画像データを生成する外部機器から、画像データおよび同期用のクロック信号を受信する。タイミングコントローラ10は、各データ線の輝度を示す輝度データを、タイミングを調節してソースドライバ6に供給するとともに、各種の同期信号S1を生成して、ゲートドライバ4に供給する。EEPROM12には、液晶パネル2の解像度など、ディスプレイ装置1に固有の情報(EDID)が格納されている。外部機器は、起動時、ディスプレイ装置1の接続時などに、EEPROM12に格納されたEDIDを取得する。
【0004】
ゲートドライバ4は、タイミングコントローラ10からの同期信号S1にもとづき、液晶パネル2の走査線を順次選択する。図1の液晶パネル2はいわゆるGIP(Gate in Panel)であり、ゲートドライバ4は液晶パネル2に内蔵されている。ソースドライバ6は、タイミングコントローラ10からの輝度データにガンマ補正を施し、液晶パネル2のデータ線に、輝度データに応じた駆動電圧を印加する。
【0005】
液晶パネル2の背面には、バックライト用光源として、LEDアレイが配置され、LEDドライバ8は、LEDアレイを駆動する。
【0006】
電源ブロック20は、タイミングコントローラ10からの同期信号S1に応じて、ゲートドライバ4に対する駆動信号S2を発生するともに、ディスプレイ装置1の内部で必要とされる各種電源電圧を発生する。
【0007】
スイッチング電源26は、
(1)ソースドライバ6に対する電源電圧VDD(12.5V)
(2)EEPROM12およびタイミングコントローラ10に対する電源電圧VCC(3.3V)
(3)レベルシフタ22に対するハイレベル電圧VGH(30V)
を生成する。
【0008】
VCOMアンプ28は、電源電圧VDDを受け、それを分圧してコモン電圧VCOM(6.25V)を生成し、ソースドライバ6に供給する。またスイッチング電源26は、チャージポンプ回路24に対して、所定の周波数でハイレベルとローレベルを交互に繰り返すパルス信号LXを出力する。
【0009】
チャージポンプ回路24は、パルス信号LXにもとづき、負電圧のローレベル電圧VGL(−6.2V)を生成し、レベルシフタ22に供給する。
【0010】
タイミングコントローラ10が生成する同期信号S1は、接地電圧(0V)と電源電圧VCC(3.3V)の間をスイングする。レベルシフタ22は、同期信号S1を、ローレベル電圧VGL(−6.2V)とハイレベル電圧VGH(30V)の間でスイングするようにレベルシフトする。
【0011】
図2は、本発明者が検討したレベルシフタ22およびゲートドライバ4の構成例を示す回路図である。
チャージポンプ回路24は、キャパシタC51〜C53、ダイオードD51〜D53、抵抗R51、R52を有する。入力キャパシタC51にパルス信号LXが印加されると、チャージポンプ回路24の出力キャパシタC53には、負電圧VGLが発生する。
【0012】
レベルシフタ22の上側電圧端子P1には、ハイレベル電圧VGHが、下側電圧端子P2には、ローレベル電圧VGLが印加される。レベルシフタ22の出力段には、上側電圧端子P1と下側電圧端子P2の間に直列に設けられたハイサイドトランジスタM1とローサイドトランジスタM2が設けられる。同期信号S1がハイレベルのとき、ハイサイドトランジスタM1がオン、ローサイドトランジスタM2がオフとなり、レベルシフタ22からはハイレベル電圧VGHが出力される。同期信号S1がローレベルのとき、ハイサイドトランジスタM1がオフ、ローサイドトランジスタM2がオンとなり、レベルシフタ22からはローレベル電圧VGLが出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−320674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者は、図2のレベルシフタ22およびチャージポンプ回路24について検討し、以下の課題を認識するに至った。
【0015】
ディスプレイ装置1が動作しているときに、ユーザがディスプレイ装置1の電源をオフしたとする。オフ直後、液晶パネル2のパネル容量Cには電荷が残留している。そして、パネル容量Cの電荷が抜けきる前に、ユーザがディスプレイ装置1の電源を再びオンしたとする。このとき、ローサイドトランジスタM2がオンすると、パネル容量Cの電荷が、ローサイドトランジスタM2およびダイオードD53を介して接地端子に流れる。つまり、本来負電圧であるべきチャージポンプ回路24の出力電圧VGLが、0.7V程度の正の電圧となってしまう。これにより、電源ブロック20が正常に起動せず、液晶パネル2に意図しない画像が表示されるなどの問題が生ずる。
【0016】
本発明は係る状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、正常に起動可能な液晶パネル用の電源回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のある態様は、液晶ディスプレイ用の電源回路に関する。電源回路は、正のハイレベル電圧が入力される上側電圧端子と、負のローレベル電圧が入力される下側電圧端子と、レベルシフタと、スイッチングレギュレータ制御部と、ロジック部と、を備える。レベルシフタは、上側電圧端子と下側電圧端子の間に順に直列に設けられたハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含み、ロジックレベルで遷移する制御信号に応じてハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを相補的にオンすることにより、ハイレベル電圧とローレベル電圧のいずれかのレベルをとる駆動信号を生成し、ゲートドライバに出力する。スイッチングレギュレータ制御部は、入力電圧を昇圧または降圧するスイッチングレギュレータのスイッチング動作を制御するとともに、スイッチングレギュレータのスイッチングに応じたパルス信号を、本電源回路に外付けされる前記ローレベル電圧を生成するように構成された負電圧チャージポンプ回路に出力する。ロジック部は、(a)本電源回路の動作開始が指示されると、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタをともにオフとし、レベルシフタの出力端子をハイインピーダンス状態とし、(b)入力電圧が所定レベルに達すると、スイッチングレギュレータ制御部にスイッチング動作の開始を指示し、(c)本電源回路の起動が完了するとレベルシフタのハイインピーダンス状態を解除する。
【0018】
この態様によると、起動直後に、レベルシフタのハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタをオフとし、チャージポンプ回路の出力端子と液晶パネルの間の放電経路を遮断することにより、チャージポンプ回路の出力端子に正の電圧が発生するのを防止できる。
【0019】
本発明の別の態様も、液晶ディスプレイ用の電源回路に関する。電源回路は、正のハイレベル電圧が入力される上側電圧端子と、レベルシフタと、パルス信号生成部と、ロジック部と、を備える。レベルシフタは、上側電圧端子と下側電圧端子の間に順に直列に設けられたハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含み、ロジックレベルで遷移する制御信号に応じてハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを相補的にオンすることにより、ハイレベル電圧とローレベル電圧のいずれかのレベルをとる駆動信号を生成し、ゲートドライバに出力する。パルス信号生成部は、本電源回路に外付けされるローレベル電圧を生成するように構成された負電圧チャージポンプ回路にパルス信号を出力する。ロジック部は、(a)本電源回路の動作開始が指示されると、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタをともにオフとし、レベルシフタの出力端子をハイインピーダンス状態とし、(b)本電源回路に対する入力電圧が所定レベルに達すると、パルス信号生成部によるパルス信号の生成の開始を指示し、(c)本電源回路の起動が完了するとレベルシフタのハイインピーダンス状態を解除する。
【0020】
この態様によると、起動直後に、レベルシフタのハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタをオフとし、チャージポンプ回路の出力端子と液晶パネルの間の放電経路を遮断することにより、チャージポンプ回路の出力端子に正の電圧が発生するのを防止できる。
【0021】
ある態様の電源回路は、入力電圧を昇圧または降圧するスイッチングレギュレータのスイッチング動作を制御するとともに、スイッチングレギュレータのスイッチングに応じて生成される信号を、パルス信号として負電圧チャージポンプ回路に出力するスイッチングレギュレータ制御部をさらに備えてもよい。ロジック部は、(b)入力電圧が所定レベルに達すると、スイッチングレギュレータ制御部にスイッチング動作の開始を指示してもよい。
【0022】
ある態様の電源回路は、下側電圧端子と接地端子の間に設けられた放電スイッチをさらに備えてもよい。ロジック部は、(d)本電源回路の動作開始が指示されると、放電スイッチをオン状態とし、(e)本電源回路の起動が完了すると放電スイッチをオフしてもよい。
起動時に、放電スイッチをオンすることにより、チャージポンプ回路の動作開始前に、下側電圧端子の電位を、確実に接地電圧に固定することができる。
【0023】
ロジック部は、(f)本電源回路のシャットダウン時に、放電スイッチをオンしてもよい。
これにより、シャットダウン以前に、負電圧に保たれていたチャージポンプ回路の出力電圧を、急速に接地電圧に戻すことができる。
【0024】
ある態様の電源回路は、下側電圧端子と接地端子の間に、放電スイッチと直列に設けられた制限用抵抗をさらに備えてもよい。
制限用抵抗によって、シャットダウン時の放電速度を制限することができる。
【0025】
本発明の別の態様は、ディスプレイ装置である。この装置は、液晶パネルと、液晶パネルの走査線を駆動するゲートドライバと、ゲートドライバに駆動信号を出力する上述のいずれかの態様の電源回路と、電源回路からのパルス信号を受けてローレベル電圧を生成する負電圧チャージポンプ回路と、を備える。
【0026】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、液晶パネル用の電源回路を正常に起動できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】液晶パネルを備えるディスプレイ装置の構成示すブロック図である。
【図2】本発明者が検討したレベルシフタおよびゲートドライバの構成例を示す回路図である。
【図3】実施の形態に係る電源回路を有するディスプレイ装置の構成の一部を示す回路図である。
【図4】図3の電源回路のレベルシフタの周辺の構成を示す回路図である。
【図5】図3のディスプレイ装置の動作を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0030】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0031】
図3は、実施の形態に係る電源回路100を有するディスプレイ装置1の構成の一部を示す回路図である。ディスプレイ装置1の基本的な機能は図1を用いて説明した通りである。
【0032】
電源回路100は、ひとつの半導体基板上に集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。図3においては、理解の容易化と説明の簡潔化のため、本発明と関係の無い回路ブロックや端子、周辺部品は省略している。具体的には位相補償用の部品、過電流保護回路、過電流保護回路、特性調整用の部品等が省略される。
【0033】
昇圧型の第1スイッチングレギュレータ102、昇圧型の第2スイッチングレギュレータ104、降圧型の第3スイッチングレギュレータ106、負電圧生成用のチャージポンプ回路24、およびそれらを制御する電源回路100は、図1の電源ブロック20に対応する。
【0034】
入力端子PINには、5V程度の入力電圧VINが入力される。入力電圧VINは、電源回路100の電源端子VIN_1に入力される。電源回路100のイネーブル端子EN(4番ピン)には、キャパシタC8が接続されるとともに、抵抗R8を介して入力電圧VINが入力される。電源回路100は、イネーブル端子ENの電位にもとづき、入力電圧VINが立ち上がっているか否かを判定する。
【0035】
電源回路100のクロック端子SCL(9番ピン)およびデータ端子SDA(10番ピン)は、ICバスを介してマイコン14と接続される。ロジック部30は、マイコン14からのデータを受けるインタフェース機能と、電源回路100全体を制御する機能とを有する。
【0036】
電源回路100のCLK1端子(11番ピン)、オンクロック端子CKL2(12番ピン)、オフクロック端子(13番ピン)、CLK4端子(14番ピン)には、タイミングコントローラ10からの制御信号S1(CLK1、CLK2、CLK3、CLK4)が入力される。
【0037】
オシレータ32は、周波数設定端子FREQ(47番ピン)に外付けされる抵抗R14の抵抗値に応じた周波数で発振する。オシレータ32の出力は、スイッチングレギュレータ102、104、106に供給され、それらのスイッチング動作に利用される。
【0038】
第1スイッチングレギュレータ102は、入力電圧VINを受け、それを昇圧して、12.5V程度の電源電圧AVDDを生成する。第1スイッチングレギュレータ102は、たとえばインダクタL1、整流用ダイオードD1、出力キャパシタC1、スイッチングトランジスタM11、第1制御部40を備える。接地端子PGND_3(40、41番ピン)は接地される。スイッチングトランジスタM11は、スイッチング端子LX_AVDD(42、43番ピン)と接地端子PGND_3の間に設けられる。電源電圧AVDDは、抵抗R11、R12によって分圧され、フィードバック端子FB_AVDD(39番ピン)にフィードバックされる。第1制御部40は、フィードバックされた電圧が目標電圧と近づくように、スイッチングトランジスタM11のスイッチングのデューティ比を調節する。
【0039】
第1スイッチングレギュレータ102が生成した電源電圧AVDDは、ソースドライバ6に供給されるとともに、電源回路100の電源端子AVDD(39番ピン)に供給される。
【0040】
第1制御部40がスイッチングトランジスタM11をスイッチング制御することにより、スイッチング端子LX_AVDDには、スイッチング動作と同期したパルス信号LXが発生する。このパルス信号LXは、負電圧を生成するチャージポンプ回路24に供給される。その結果、チャージポンプ回路24の出力端子には、負のローレベル電圧VGLが発生する。このローレベル電圧VGLは、電源回路100の下側電圧端子VGL(24番ピン)に供給される。
【0041】
VCOMアンプ28は、電源電圧AVDDを分圧し、液晶パネル2の共通電極に供給すべきコモン電圧VCOMを生成し、VCOM端子(35番ピン)から出力する。VCOMアンプ28が生成するコモン電圧VCOMのレベルは、ロジック部30がマイコン14から受信したデータに応じて設定可能となっている。
【0042】
第2スイッチングレギュレータ104は、第1スイッチングレギュレータ102により生成した電源電圧AVDDを受け、それをさらに昇圧し、30V程度のハイレベル電圧VGHを生成する。
【0043】
第2スイッチングレギュレータ104は、インダクタL2、整流用ダイオードD2、出力キャパシタC2、スイッチングトランジスタM21、第2制御部42を備え、第1スイッチングレギュレータ102と同様に構成される。
接地端子PGND_2(28、29番ピン)は接地される。スイッチングトランジスタM21は、スイッチング端子LX_VGH(28番ピン)と接地端子PGND_3の間に設けられる。ハイレベル電圧VGHは、抵抗R21、R22によって分圧され、フィードバック端子FB_VGH(30番ピン)にフィードバックされる。第2制御部42は、フィードバックされた電圧が目標電圧と近づくように、スイッチングトランジスタM21のデューティ比を調節する。
【0044】
第3スイッチングレギュレータ106は、入力電圧VINを受け、それを降圧して3.3V程度の電源電圧VCCを生成する。
【0045】
第3スイッチングレギュレータ106は、インダクタL3、出力キャパシタC3、スイッチングトランジスタM31、同期整流用トランジスタM32、第3制御部44を備える。
接地端子PGND_1(5番ピン)は接地される。スイッチングトランジスタM31は、電源端子VIN_1とスイッチング端子LX_VCC(3番ピン)の間に設けられ、同期整流用トランジスタM32は、スイッチング端子LX_VCCと接地端子PGND_1の間に設けられる。電源電圧VCCは、抵抗R31、R32によって分圧され、フィードバック端子FB_VCC(6番ピン)にフィードバックされる。第3制御部44は、フィードバックされた電圧が目標電圧と近づくように、スイッチングトランジスタM31および同期整流用トランジスタM32のデューティ比を調節する。
【0046】
第3スイッチングレギュレータ106が生成した電源電圧VCCは、タイミングコントローラ10およびEEPROM12に供給される。
【0047】
電源回路100は、8チャンネルのレベルシフタを備え、ロジックレベルで遷移する制御信号S1を受け、それらにもとづいて、ハイレベル電圧VGHとローレベル電圧VGLのいずれかのレベルをとる駆動信号S2(OUT1、OUT2、OUT3〜OUT6、OUT7、OUT8)を生成し、液晶パネル2に対して出力する。
【0048】
駆動信号OUT1〜OUT8は、駆動対象の液晶パネルの仕様に応じて規定される信号であり、特に限定されるものではない。
【0049】
一例として、OUT1信号は、液晶パネル2の放電を制御するための信号である。電源回路100の検出端子VSENSE(2番ピン)には、抵抗R41、R42によって分圧された入力電圧VINが印加される。検出回路46は、検出端子VSENSEの電圧が所定のしきい値電圧VTHより高いか低いかを判定する。OUT1信号を生成するレベルシフタ22は、電圧VSENSEが第1しきい値電圧VTH1(=1.33V)以上になると、OUT1出力をローレベル電圧VGLとし、電圧VSENSEが第2しきい値電圧VTH2(1.21V)以下になると、OUT1出力をハイレベル電圧VGHとする。
【0050】
図4は、図3の電源回路100のレベルシフタ22の周辺の構成を示す回路図である。各チャンネルのレベルシフタ22は同様に構成され、それぞれが、上側電圧端子VGHと下側電圧端子VGLの間に直列に設けられたハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2を含む。
【0051】
また、下側電圧端子VGLと接地端子の間には、放電スイッチM3、制限抵抗R3が直列に設けられ、さらに下側電圧端子VGLと接地端子の間には、保護ダイオードD4が設けられる。
【0052】
チャージポンプ回路24の構成は、図2のそれと同様である。
【0053】
図3に戻る。ロジック部30は、(a)電源回路100の動作開始が指示されると、全チャンネルのレベルシフタ22において、ハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2をともにオフとし、レベルシフタ22の出力端子(16〜23番ピン)をハイインピーダンス状態とする。そしてロジック部30は、(b)入力電圧VINが所定レベルに達すると、第1制御部40にスイッチング動作の開始を指示する。このときあわせて第2制御部42および第3制御部44に対してスイッチング動作の開始を指示してもよい。ロジック部30は、(c)電源回路100の起動が完了すると、レベルシフタ22の出力ハイインピーダンス状態を解除する。
【0054】
また、ロジック部30は、(d)電源回路100の動作開始が指示されると、放電スイッチM3をオン状態とし、(e)本電源回路の起動が完了すると放電スイッチM3をオフする。
さらにロジック部30は、(f)電源回路100のシャットダウン時に、放電スイッチM3をオンするとともに、レベルシフタ22のハイサイドトランジスタM1をオンする。
【0055】
ロジック部30は、CLK4信号もしくはCLK1信号の発生をトリガーとして起動完了と判定し、レベルシフタ22のハイインピーダンス状態を解除してもよい。またロジック部30は、電圧VSENSEが第2しきい値電圧VTH2を下回ったことをトリガーとして、放電スイッチM3をオンしてもよい。
【0056】
以上が電源回路100の構成である。続いてその動作を説明する。図5は、図3のディスプレイ装置1の動作を示す波形図である。
【0057】
図5の波形図は、OUT1信号を出力信号するレベルシフタ22に着目している。
【0058】
時刻t0に、ユーザがディスプレイ装置1の電源をオンすると、入力電圧VINが立ち上がり始める。ロジック部30は、起動が完了する時刻t5までの期間、放電スイッチM3をオンするとともに、全チャンネルのレベルシフタ22の出力をハイインピーダンス状態とする。
【0059】
起動時に放電スイッチM3をオンしておくことにより、チャージポンプ回路24の出力電圧VGLを接地電位に固定しておくことができる。
【0060】
入力電圧VINの上昇にともない、検出端子VSENSEの電位も上昇し、時刻t1に第1しきい値電圧VTH1より高くなる。ロジック部30によるレベルシフタ22の制御がなければ、OUT1信号は、時刻t1に直ちにローレベル電圧VGLとなるはずであるが、実施の形態では、レベルシフタ22の出力がハイインピーダンス状態とされているため、OUT1信号は、接地電圧付近のレベルを維持する。
【0061】
起動直後、第1スイッチングレギュレータ102は停止しているが、入力端子PINとAVDD端子の間は、インダクタL1および整流用ダイオードD1で接続されるため、電源電圧AVDDは、VIN−VFを保ちながら上昇する。VFは、整流用ダイオードD1の順方向電圧である。また第2スイッチングレギュレータ104は停止しているが、AVDD端子とVGH端子の間は、インダクタL2と整流用ダイオードD2で接続されているため、ハイレベル電圧VGHは、AVDD−VFを保ちながら上昇する。
【0062】
入力電圧VINが所定値に立ち上がった後の時刻t3に、ロジック部30は、第1スイッチングレギュレータ102のスイッチング動作の開始を指示する。これにより、電源電圧AVDDは目標値まで上昇する。第1スイッチングレギュレータ102の動作開始にともない、チャージポンプ回路24にパルス信号LXが供給され、負のローレベル電圧VGLが生成される。
【0063】
電源電圧AVDDが目標値まで上昇した後の時刻t4に、ロジック部30は第2スイッチングレギュレータ104のスイッチング動作の開始を指示する。これにより、ハイレベル電圧VGHが上昇する。
【0064】
時刻t5に、タイミングコントローラ10からのCLK4信号もしくはCLK1信号が発生すると、ロジック部30は、これをトリガーとして起動完了と判定し、レベルシフタ22のハイインピーダンス状態を解除する。このとき、VSENSE>VTH1であるため、ハイインピーダンス状態が解除されたレベルシフタ22の出力OUT1はローレベル電圧VGLに遷移する。
【0065】
時刻t6に、ユーザがディスプレイ装置1の電源をオフする。これにより、入力電圧VINが低下しはじめ、時刻t7に、検出電圧VSENSEが第2しきい値電圧VTHを下回る。その結果、ハイサイドトランジスタM1がオン、ローサイドトランジスタM2がオフ状態となり、OUT1信号の電圧レベルは、ハイレベル電圧VGHまで上昇する。これにより液晶パネル2の電荷が放電される。
【0066】
また時刻t7においてロジック部30は放電スイッチM3をオンする。これにより、シャットダウン時に、それまで負電圧に保たれていたチャージポンプ回路24の出力電圧VGLを、急速に接地電圧(0V)に戻すことができる。
【0067】
放電スイッチM3を設けない場合、あるいはシャットダウン時にオンさせない場合、チャージポンプ回路24の出力キャパシタC53の電荷は、抵抗R52を介して放電されることになる。抵抗R53の抵抗値は非常に大きく、それを介した放電には長時間を有するため、ディスプレイ装置1がシャットダウンしているにもかかわらず、下側電圧端子P2に負電圧が生ずることになる。これは、意図せぬ誤動作を引き起こすことになりかねないが、放電スイッチM3をオンすることにより、こうした誤動作を防止できる。
【0068】
時刻t7に、スイッチングレギュレータ102、104、106の動作が停止するため、その後はハイレベル電圧VGH、電源電圧AVDDは時間とともに低下する。その結果、OUT1信号の電圧レベルも、ハイレベル電圧VGHに追従して低下する。
【0069】
以上がディスプレイ装置1の動作である。
【0070】
電源回路100によれば、起動直後にレベルシフタ22の出力をハイインピーダンスとするため、液晶パネル2の容量からの放電経路が遮断され、ローレベル電圧VGLが正電圧となるのを防止できる。これにより、液晶パネル2に意図せぬノイズや画像が表示されるのを防止できる。
【0071】
また、放電スイッチM3を設け、シャットダウン時にオンさせることにより、チャージポンプ回路24の出力電圧VGLを、すみやかに接地電圧に戻すことができる。
【0072】
上記実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0073】
たとえばチャージポンプ回路24の構成は、実施例のそれには限定されず、公知のさまざまな構成のチャージポンプ回路が利用しうる。なお本発明が解決しようとする課題、すなわちディスプレイ装置1の起動時にチャージポンプ回路の出力電圧が正電圧となるという課題は、出力ダイオードD53を有するトポロジーにおいて顕著に発生するが、出力ダイオードD53を有さないトポロジーにおいても、それと対応する素子によって同様の課題が生じうることは、当業者に理解される。
【0074】
実施の形態では、第1制御部40およびハイサイドトランジスタM1が発生するパルス信号LX_AVDDを、チャージポンプ回路24を駆動するためのパルス信号として利用する場合を説明したが、本発明はそれに限定されない。たとえば、第2制御部42あるいは第3制御部44により生成されるパルス信号を、チャージポンプ回路24に供給してもよい。
【0075】
あるいは制御部40、42、44とは別に、チャージポンプ回路24に供給すべきパルス信号LXを生成するパルス信号発生器を設けてもよい。この場合、ロジック部30は、起動開始後、(a)ハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2をともにオフとし、レベルシフタ22の出力端子をハイインピーダンス状態とし、(b)入力電圧VINが所定レベルに達すると、パルス信号生成部によるパルス信号LXの生成の開始を指示し、(c)電源回路100の起動が完了するとレベルシフタ22のハイインピーダンス状態を解除すればよい。
【0076】
実施の形態では、レベルシフタ22が8チャンネル設けられる場合を説明したが、チャンネル数ならびに、各レベルシフタが発生する信号の種類、機能は特に限定されない。
【0077】
以上、実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもなく、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1…ディスプレイ装置、2…液晶パネル、4…ゲートドライバ、6…ソースドライバ、8…LEDドライバ、10…タイミングコントローラ、12…EEPROM、20…電源ブロック、22…レベルシフタ、24…チャージポンプ回路、26…スイッチング電源、28…VCOMアンプ、30…ロジック部、40…第1制御部、42…第2制御部、44…第3制御部、M1…ハイサイドトランジスタ、M2…ローサイドトランジスタ、M3…放電スイッチ、100…電源回路、102…第1スイッチングレギュレータ、104…第2スイッチングレギュレータ、106…第3スイッチングレギュレータ、P1…上側電圧端子、P2…下側電圧端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ディスプレイ用の電源回路であって、
正のハイレベル電圧が入力される上側電圧端子と、
負のローレベル電圧が入力される下側電圧端子と、
前記上側電圧端子と前記下側電圧端子の間に順に直列に設けられたハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含み、ロジックレベルで遷移する制御信号に応じて前記ハイサイドトランジスタおよび前記ローサイドトランジスタを相補的にオンすることにより、前記ハイレベル電圧と前記ローレベル電圧のいずれかのレベルをとる駆動信号を生成し、ゲートドライバに出力するレベルシフタと、
入力電圧を昇圧または降圧するスイッチングレギュレータのスイッチング動作を制御するとともに、前記スイッチングレギュレータのスイッチングに応じたパルス信号を、本電源回路に外付けされる前記ローレベル電圧を生成するように構成された負電圧チャージポンプ回路に出力するスイッチングレギュレータ制御部と、
(a)本電源回路の動作開始が指示されると、前記ハイサイドトランジスタおよび前記ローサイドトランジスタをともにオフとし、前記レベルシフタの出力端子をハイインピーダンス状態とし、(b)前記入力電圧が所定レベルに達すると、前記スイッチングレギュレータ制御部にスイッチング動作の開始を指示し、(c)本電源回路の起動が完了すると前記レベルシフタのハイインピーダンス状態を解除する、ロジック部と、
を備えることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
液晶ディスプレイ用の電源回路であって、
正のハイレベル電圧が入力される上側電圧端子と、
負のローレベル電圧が入力される下側電圧端子と、
前記上側電圧端子と前記下側電圧端子の間に順に直列に設けられたハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含み、ロジックレベルで遷移する制御信号に応じて前記ハイサイドトランジスタおよび前記ローサイドトランジスタを相補的にオンすることにより、前記ハイレベル電圧と前記ローレベル電圧のいずれかのレベルをとる駆動信号を生成し、ゲートドライバに出力するレベルシフタと、
本電源回路に外付けされる前記ローレベル電圧を生成するように構成された負電圧チャージポンプ回路にパルス信号を出力するパルス信号生成部と、
(a)本電源回路の動作開始が指示されると、前記ハイサイドトランジスタおよび前記ローサイドトランジスタをともにオフとし、前記レベルシフタの出力端子をハイインピーダンス状態とし、(b)本電源回路に対する入力電圧が所定レベルに達すると、前記パルス信号生成部による前記パルス信号の生成の開始を指示し、(c)本電源回路の起動が完了すると前記レベルシフタのハイインピーダンス状態を解除する、ロジック部と、
を備えることを特徴とする電源回路。
【請求項3】
入力電圧を昇圧または降圧するスイッチングレギュレータのスイッチング動作を制御するとともに、前記スイッチングレギュレータのスイッチングに応じて生成される信号を、前記パルス信号として前記負電圧チャージポンプ回路に出力するスイッチングレギュレータ制御部をさらに備え、
前記ロジック部は、
(b)前記入力電圧が所定レベルに達すると、前記スイッチングレギュレータ制御部にスイッチング動作の開始を指示することを特徴とする請求項2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記下側電圧端子と接地端子の間に設けられた放電スイッチをさらに備え、
前記ロジック部は、(d)本電源回路の動作開始が指示されると、前記放電スイッチをオン状態とし、(e)本電源回路の起動が完了すると前記放電スイッチをオフすることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電源回路。
【請求項5】
前記ロジック部は、(f)本電源回路のシャットダウン時に、前記放電スイッチをオンすることを特徴とする請求項4に記載の電源回路。
【請求項6】
前記下側電圧端子と接地端子の間に、前記放電スイッチと直列に設けられた制限用抵抗をさらに備えることを特徴とする請求項4または5に記載の電源回路。
【請求項7】
液晶パネルと、
前記液晶パネルの走査線を駆動するゲートドライバと、
前記ゲートドライバに制御信号を出力する請求項1から6のいずれかに記載の電源回路と、
前記電源回路からの前記パルス信号を受けて前記ローレベル電圧を生成する負電圧チャージポンプ回路と、
を備えることを特徴とするディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−9535(P2013−9535A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141040(P2011−141040)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】