説明

電源装置及び電源管理方法

【課題】無駄なスペースが不要で、コストアップにならないと共に、エネルギーの無駄を生じることなく、瞬時停電発生時にも、電源を供給できる電源装置を提供する。
【解決手段】通常運転時には、電磁クラッチ機構16によりモータ兼発電機15の回転軸51と冷却ファン13とを連結させ、商用交流電源17からの電源により負荷回路2を給電する。モータ兼発電機15により冷却ファン13を回転させ、電源モジュール1を冷却する。瞬時停電発生時には、フライホイール14により、モータ兼発電機15の回転を保持し、モータ兼発電機15で発生した電源により負荷回路2を給電する。このとき、電磁クラッチ機構16により、モータ兼発電機15の回転軸51と冷却ファン13とを離間させる。これにより、冷却ファン13の風の抵抗によるエネルギーロスが発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ等に用いる電源装置及び電源管理方法に関するもので、特に、瞬時停電が発生しても負荷への電源の供給が確保できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
UPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)は、入力電源に停電などの異常が発生しても、一定時間は停電することなく電力を供給し続ける電源装置である。ネットワークサーバ等では、停電等に備えて、UPSが備えられていることが多い。従来のUPSでは、停電時の補助電源として、二次電池やキャパシタなどが使用されている。特に二次電池として鉛蓄電池を用いたものは、重量が重く、また、高価なものとなっている。また、二次電池やキャパシタを用いず、フライホイールの回転により停電時の電源を確保するようにしたものも提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−235179号公報
【特許文献2】特開昭62−196027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、従来のUPSは、二次電池やキャパシタなどを使用するものであり、高価なものである。例えば、停電発生時に発電機に切り替えて給電するため、商用交流電源から発電機へ切り替える数サイクルの間に給電を継続できれば十分であるような場合、UPSは設備として過剰であり、必要以上にスペースを占有し、コスト増加の原因となる。また、二次電池として鉛蓄電池を用いたものは、重量が重く、また、高価であると共に、バッテリのチェック等のメインテナンスが必要である。
【0004】
また、特許文献1及び特許文献2に示されているような、フライホイールの回転により停電時の電源を確保するようにしたものでは、動作中、絶えずフライホイールが回転している。このように、停電に備えてフライホイールだけを回転させているのでは、エネルギーの無駄である。
【0005】
上述の課題を鑑み、本発明は、無駄なスペースが不要で、コストアップにならないと共に、エネルギーの無駄を生じることなく、瞬時停電発生時にも、電源を供給できる電源装置及び電源管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明に係る電源装置は、モータ兼発電機と、モータ兼発電機の回転軸に取り付けられたフライホイール及び冷却ファンと、通常運転時に、商用交流電源を所望の電源に変換して負荷回路に給電すると共にモータ兼発電機を回転させる第1の電源制御回路と、停電発生時に、フライホイールに保持された回転力によりモータ兼発電機から発電された電源を所望の電源に変換して負荷回路に給電する第2の電源制御回路と、通常運転時に、モータ兼発電機の回転軸と冷却ファンとを連結させ、停電発生時に、モータ兼発電機の回転軸と冷却ファンとを離間させるクラッチ機構とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る電源管理方法は、モータ兼発電機の回転軸にフライホイールを取り付けると共に、クラッチ機構を介して冷却ファンを取り付け、通常運転時には、モータ兼発電機の回転軸と冷却ファンとをクラッチ機構により連結させ、第1の電源制御回路により商用交流電源を所望の電源に変換して負荷回路に給電すると共に、モータ兼発電機を回転させ、停電発生時には、第2の電源制御回路によりフライホイールに保持された回転力によりモータ兼発電機から発電された電源を所望の電源に変換して負荷回路に給電すると共に、クラッチ機構によりモータ兼発電機の回転軸と冷却ファンとを離間させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二次電池やキャパシタなどを用いることなく、瞬時停電対策をすることができる。このため、電源品質が良くない場所でも装置を使用することができる。また、フライホイールを用いているため、バッテリのような定期的なメインテナンスも不要であり、運用の手間が少ない。
【0009】
また、本発明によれば、通常運転時に、モータ兼発電機の回転軸と冷却ファンとを連結させ、停電発生時に、モータ兼発電機の回転軸と冷却ファンとを離間させるクラッチ機構が設けられているので、通常運転時には、モータ兼発電機の回転を電源モジュールを冷却する冷却ファンとして利用でき、瞬停発生時に冷却ファンを切り離すことによって、フライホイールの回転エネルギーを有効に使用できることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態を示すものである。
【0011】
図1において、電源モジュール1は、通常運転時に商用交流電源17を所望の電源に変換して負荷回路2に給電する第1の電源制御回路11と、停電発生時に、モータ兼発電機15から発電された電源を所望の電源に変換して負荷回路2に給電する第2の電源制御回路12と、電源モジュール1内を冷却する冷却ファン13と、回転エネルギーを保存するフライホイール14と、モータ兼発電機15と、電磁クラッチ機構16とで構成される。電源制御回路11及び12は、AC−DCコンバータにより実現できる。
【0012】
冷却ファン13及びフライホイール14は、モータ兼発電機15の回転軸51に取り付けられている。また、冷却ファン13とモータ兼発電機15の回転軸51との間には、電磁クラッチ機構16が設けられている。
【0013】
通常運転時には、電源制御回路11からの電源により電磁クラッチ機構16に電流が流され、モータ兼発電機15の回転軸51と冷却ファン13とが電磁クラッチ機構16により連結される。停電発生時には、商用交流電源17からの電源が止められ、モータ兼発電機15の回転軸51と冷却ファン13とが電磁クラッチ機構16により離間される。
【0014】
通常運転時には、商用交流電源17からの電源は、電源制御回路11により所望の電圧の直流電源に変換され、負荷回路2に給電される。また、電源制御回路11からの直流電源は、ダイオード20を介して、モータ兼発電機15に供給される。これにより、モータ兼発電機15がモータとして回転される。このとき、上述のように、電磁クラッチ機構16により、モータ兼発電機15の回転軸51と冷却ファン13とが連結されている。このため、モータ兼発電機15が回転すると、冷却ファン13及びフライホイール14が共に回転し、冷却ファン13の回転により電源モジュール1が冷却される。
【0015】
瞬時停電が発生すると、電源制御回路11からの直流電源が止まり、モータ兼発電機15に電源が供給されなくなる。停電によりモータ兼発電機15への電源の供給が止められても、フライホイール14により保存された回転エネルギーにより、モータ兼発電機15の回転軸51は回転を保持する。このときには、上述のように、電磁クラッチ機構16により、モータ兼発電機15の回転軸51と冷却ファン13とが離間される。このため、冷却ファン13の風の抵抗によるエネルギーロスが発生せず、フライホイール14によりモータ兼発電機15が長く回転を続ける。
【0016】
フライホイール14の回転によりモータ兼発電機15の回転軸51が回転されると、モータ兼発電機15は発電機として働く。このモータ兼発電機15からの電源は、コンデンサ21を介して、電源制御回路12に供給される。電源制御回路12で、このモータ兼発電機15からの電源が所望の電圧の直流電源に変換され、この電源制御回路12からの直流電源が負荷回路2に給電される。
【0017】
上述のように、本発明の第1の実施の形態では、冷却ファン13及びフライホイール14がモータ兼発電機15の回転軸51の取り付けられ、電磁クラッチ機構16により、冷却ファン13をモータ兼発電機15の回転軸51に結合/離間できるようにしている。これにより、通常運転時には、冷却ファン13をモータ兼発電機15の回転軸51に結合させ、モータ兼発電機15の回転により冷却ファン13を回転させて電源モジュール1を冷却し、また、瞬時停電時には、冷却ファン13をモータ兼発電機15の回転軸51から離間させ、冷却ファン13の回転による空気抵抗の負荷を軽減させ、フライホイール14の回転を長く維持できるようにしている。このような構造について、以下に説明する。
【0018】
図2は、冷却ファン13及びフライホイール14の取り付け機構を示す分解斜視図である。
【0019】
図2において、モータ兼発電機15の回転軸51には、フライホイール14が取り付けられ、さらに、円板上の電磁石52が取り付けられる。
【0020】
冷却ファン13のハブ61には、円筒形の凹部62が設けられる。この凹部62の中心に、軸挿入口63が形成される。また、凹部62の底面には、円板上の強磁性体部材53が固着される。電磁石52と強磁性体部材53とは対向し、電磁クラッチ機構16を構成する。強磁性体部材53は例えば鉄板である。
【0021】
軸挿入口63に、スプリング54が挿入され、さらに、この軸挿入口63に、モータ兼発電機15の回転軸51が挿入される。これにより、図3に示すように、モータ兼発電機15の回転軸51に、冷却ファン13及びフライホイール14が取り付けられる。
【0022】
図4(A)及び図4(B)は、冷却ファン13とモータ兼発電機15の回転軸51との間を結合/離間する電磁クラッチ機構16の動作を示すものである。
【0023】
前述したように、通常運転時には、電磁石52に電源が供給される。このため、図4(A)に示すように、電磁石52の磁力により引力が発生し、電磁石52と強磁性体部材53とが結合する。電磁石52と強磁性体部材53とが結合すると、モータ兼発電機15の回転軸51の回転は、電磁石52、強磁性体部材53を介して、冷却ファン13に伝えられ、冷却ファン13が回転する。
【0024】
瞬時停電時には、電磁石52に電源が止められ、電磁石52から磁力が発生しなくなる。このときには、図4(B)に示すように、スプリング54により付勢され、電磁石52と強磁性体部材53とが離間する。電磁石52と強磁性体部材53とが離間すると、モータ兼発電機15の回転軸51が回転しても、その回転が強磁性体部材53に伝えられなくなり、冷却ファン13は回転しなくなる。
【0025】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態では、フライホイール14を用いることで、瞬時停電発生時にも、負荷回路2に電源を供給することができる。本発明の第1の実施形態では、二次電池やキャパシタなどを用いていないため、コストアップにならず、また、特別なスペースも不要である。また、定期的なメインテナンスも不要であり、運用の手間が少ない。
【0026】
さらに、本発明の第1の実施形態では、通常運転時に、モータ兼発電機15の回転軸51と冷却ファン13とを連結させ、停電発生時に、モータ兼発電機15の回転軸51と冷却ファン13とを離間させる電磁クラッチ機構16が設けられているので、通常運転時には、モータ兼発電機15の回転を、電源モジュール1を冷却する冷却ファン13の回転に利用でき、瞬停発生時には、冷却ファン13を切り離すことによって、フライホイール14の回転エネルギーを有効に使用できることができる。
【0027】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の電源装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の電源装置における冷却ファンとフライホイールとの取り付け機構を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態の電源装置における冷却ファンとフライホイールの一例の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の電源装置における電磁クラッチ機構の動作を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1:電源モジュール
2:負荷回路
11:電源制御回路
12:電源制御回路
13:冷却ファン
14:フライホイール
15:モータ兼発電機
16:電磁クラッチ機構
17:商用交流電源
20:ダイオード
21:コンデンサ
51:回転軸
52:電磁石
53:強磁性体部材
54:スプリング
61:ハブ
62:凹部
63:軸挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ兼発電機と、
前記モータ兼発電機の回転軸に取り付けられたフライホイール及び冷却ファンと、
通常運転時に、商用交流電源を所望の電源に変換して負荷回路に給電すると共に前記モータ兼発電機を回転させる第1の電源制御回路と、
停電発生時に、前記フライホイールに保持された回転力により前記モータ兼発電機から発電された電源を所望の電源に変換して前記負荷回路に給電する第2の電源制御回路と、
通常運転時に、前記モータ兼発電機の回転軸と前記冷却ファンとを連結させ、停電発生時に、前記モータ兼発電機の回転軸と前記冷却ファンとを離間させるクラッチ機構と
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記クラッチ機構は、前記モータ兼発電機の回転軸の取り付けられた電磁石と、前記冷却ファンに固着された強磁性体部材とからなり、
通常運転時に前記電磁石に電源を供給すると、前記電磁石による磁力により、前記電磁石と前記強磁性体部材が結合し、前記モータ兼発電機の回転軸と前記冷却ファンとが連結された状態となり、
停電発生時に前記電磁石の電源を止めると、前記電磁石と前記強磁性体部材とが離間し、前記モータ兼発電機の回転軸と前記冷却ファンとが離間された状態となる
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
モータ兼発電機の回転軸にフライホイールを取り付けると共に、クラッチ機構を介して冷却ファンを取り付け、
通常運転時には、前記モータ兼発電機の回転軸と前記冷却ファンとを前記クラッチ機構により連結させ、第1の電源制御回路により商用交流電源を所望の電源に変換して負荷回路に給電すると共に、前記モータ兼発電機を回転させ、
停電発生時には、第2の電源制御回路により前記フライホイールに保持された回転力により前記モータ兼発電機から発電された電源を所望の電源に変換して前記負荷回路に給電すると共に、前記クラッチ機構により前記モータ兼発電機の回転軸と前記冷却ファンとを離間させる
ことを特徴とする電源管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−115007(P2010−115007A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285272(P2008−285272)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】