説明

電源装置

【課題】簡単な回路構成としながら、速やかに電圧検出ラインの断線を検出する。
【解決手段】電源装置は、直列に接続された複数の電池モジュール1と、各電池モジュール1の電極端子に電圧検出ライン9を介して接続されて、各電池モジュール1の電圧を検出すると共に、検出電圧から電圧検出ライン9の断線を判定する電圧検出回路2と、電圧検出回路2の入力側を一時的に短絡するショート回路3とを備える。ショート回路3は、電圧検出回路2の入力側にコレクターとエミッターとを接続してなる短絡トランジスタ4と、この短絡トランジスタ4のベースに接続してなるミラー回路5とを備える。ミラー回路5は、電圧検出ライン9の非断線状態で短絡トランジスタ4のベース電流を遮断してオフ状態とし、電圧検出ライン9の断線状態では、短絡トランジスタ4のベース電流を遮断することなく短絡トランジスタ4をオン状態に切り換えて電圧検出回路2の入力側を短絡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてハイブリッドカーや電気自動車等の電動車両を走行させるモータを駆動する電源装置に関し、とくに、互いに直列に接続している電池モジュールの電圧を検出する電圧検出回路を備える電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大出力が要求される電源装置、たとえば電動車両を走行させるモータに電力を供給する電源装置は、出力を大きくするために、多数の電池モジュールを直列に接続して出力電圧を高くしている。ハイブリッドカーや電気自動車を走行させる電源装置は、出力電圧を200V以上と高くして、モータに供給できる電力を大きくしている。
【0003】
多数の電池モジュールを直列に接続しているバッテリは、各々の電池モジュールの過充電と過放電を防止しながら充放電することが大切である。過充電と過放電が電池の電気性能を低下させると共に、劣化させて寿命を短くするからである。電源装置は、電池モジュールの過充電や過放電を防止するために、電池モジュールの電圧を検出する電圧検出回路を備えており、検出する電圧で電池モジュールの充放電の電流をコントロールしている。
【0004】
電圧検出回路は、リード線やコネクタで構成された電圧検出ラインを介して各々の電池モジュールの正負の電極に接続される。電圧検出ラインは、一端を電池モジュールの正負の電極に、他端を電圧検出回路の入力側に接続している。リード線の断線やコネクタの接触不良など、電圧検出ラインの故障は、電池モジュールの電圧を正確に電圧検出回路に入力できなくする。電圧検出回路が各々の電池モジュールの電圧を正確に検出できない状態になると、電圧の検出されない電池モジュールの過充電や過放電を検出できなくなる為、電池モジュールの充放電を正常にコントロールできない。
【0005】
この弊害を防止するために、電圧検出回路を電池モジュールの正負の電極に接続するリード線の断線を検出する電源装置が開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−25925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の電源装置は、直列に接続している各々の電池モジュールの電圧を検出して電圧検出ラインの断線を検出する。この電源装置は、電池モジュールの検出電圧が閾値電圧よりも低下したときに断線が発生したものと判断する。電圧検出ラインが断線すると、電池モジュールの電圧が電圧検出回路に入力されなくなって、検出電圧が低下するからである。この電源装置は、電池モジュールと並列にコンデンサーを接続しており、あるいは抵抗を介して所定の電圧が供給される回路構成となるので、電圧検出ラインが断線しても直ちに電池モジュールの検出電圧は0Vまで低下しない。電圧検出ラインが断線する状態で、コンデンサーは、電圧検出回路の入力抵抗や入力インピーダンスで放電される。しかしながら、入力抵抗や入力インピーダンスの電気抵抗は相当に大きく、コンデンサーを速やかに放電できない。このため、電圧検出ラインが断線しても、電圧の低下に時間がかかって速やかに断線を検出できない。この弊害は、電池モジュールと並列にスイッチング素子を接続し、断線を検出するタイミングでこのスイッチング素子をオンに切り換えてコンデンサーを速やかに放電できる。
【0008】
ただ、このスイッチング素子は、コンデンサーと電池モジュールの両方を放電するので、常にオン状態には保持できない。電池モジュールが無駄に放電されるからである。このため、断線を検出するタイミングに同期しながら、このスイッチング素子をオンオフに制御する制御回路が必要となり回路構成が複雑になる。
【0009】
さらに、スイッチング素子をオンオフに切り換えて、電圧検出ラインの断線を検出する電源装置は、スイッチング素子をオンに切り換える状態では、正確に電池モジュールの電圧を検出できない。電圧検出回路の入力側が短絡されて、電池モジュールの電圧が低く検出されるからである。このため、スイッチング素子をオフとする状態で、電池モジュールの電圧を検出する必要がある。また、スイッチング素子をオフに切り換える状態では、電圧検出ラインの断線を速やかに検出できないので、スイッチング素子をオンに切り換えた後に、電池モジュールの電圧を検出して電圧検出ラインの断線を判定する必要がある。したがって、この電源装置は、スイッチング素子をオフの状態として電池モジュールの電圧を検出し、スイッチング素子をオンに切り換えて電圧検出ラインの断線を検出する必要があり、電池モジュールの電圧を2回検出して電池モジュールの電圧と、電圧検出ラインの断線を検出する必要がある。このため、電池モジュールの電圧検出と、電圧検出ラインの断線検出とに時間がかかる欠点がある。とくに、多数の電池モジュールを備える電源装置は、各々の電池モジュールの電圧検出と、電圧検出ラインの断線検出とを処理するのに時間がかかる欠点がある。
【0010】
本発明は、さらに以上の欠点を解消することを目的として開発されたもので、簡単な回路構成としながら、速やかに電圧検出ラインの断線を検出して、電池モジュールを過充電や過放電から保護しながら充放電できる電源装置を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、電池モジュールの電圧を1回検出することで、電池モジュールの正確な電圧と、電圧検出ラインの断線の両方を同時に検出して、多数の電池モジュールの電圧や電圧検出ラインの断線を速やかに検出できる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0011】
本発明の電源装置は、互いに直列に接続してなる複数の電池モジュール1と、各々の電池モジュール1の正負の電極端子に電圧検出ライン9を介して接続されて、各々の電池モジュール1の電圧を検出すると共に、検出電圧から電圧検出ライン9の断線を判定する電圧検出回路2と、電圧検出回路2の入力側を一時的に短絡するショート回路3とを備えている。ショート回路3は、電圧検出回路2の入力側にコレクターとエミッターとを接続してなる短絡トランジスタ4と、この短絡トランジスタ4のベースに接続してなるミラー回路5とを備えている。ミラー回路5は、電圧検出ライン9の非断線状態で短絡トランジスタ4のベース電流を遮断してオフ状態とし、電圧検出ライン9の断線状態では、短絡トランジスタ4のベース電流を遮断することなく、短絡トランジスタ4にベース電流が流れる状態としてオン状態に切り換えて電圧検出回路2の入力側を短絡する。
【0012】
以上の電源装置は、簡単な回路構成としながら、電圧検出ラインの断線を速やかに検出して、電池モジュールを過充電や過放電から保護しながら充放電できる特徴がある。それは、制御回路でオンオフに制御することなく、電圧検出ラインの断線によって、ミラー回路が短絡トランジスタに流れるベース電流の遮断状態をコントロールして短絡トランジスタをオンに切り換えて、コンデンサーを速やかに放電するので、基準電圧が電源装置全体の中間電位に相当し、基準電圧に向かって収束しようとする回路構成であっても、基準電圧に対する電位の高低に関わらず、電池モジュールの検出電圧はほぼ0Vに低下させるからである。
【0013】
ミラー回路は、電圧検出ラインが断線しない状態で、短絡トランジスタにベース電流を供給しない。それは、短絡トランジスタのベースに流れようとする電流が、ミラー回路に引き込まれてベース電流を遮断するからである。ところが、電圧検出ラインが断線する状態になると、電池モジュールからミラー回路に電流が流れ込まなくなり、コンデンサーが短絡トランジスタにベース電流を流して短絡トランジスタをオン状態に切り換えて、電圧検出回路の入力側を短絡するからである。電圧検出回路の入力側が短絡されると、これと並列に接続しているコンデンサーは速やかに放電され、基準電圧と同等より低い電位の箇所であっても、短絡トランジスタによって検出電圧自体はほぼ0Vまで低下する。したがって、以上の電源装置は、電圧検出ラインの断線を検出するタイミングに合わせて短絡トランジスタをオンオフに制御する制御回路を設ける必要がなく、回路構成を簡単にできる。
【0014】
また、以上の電源装置は、電池モジュールの電圧を1回検出することで、電池モジュールの正確な電圧と、電圧検出ラインの断線の両方を同時に検出して、多数の電池モジュールの電圧や電圧検出ラインの断線を速やかに検出できる特徴も実現される。それは、電圧検出ラインが断線されない状態では、電圧検出回路が正確に電池モジュールの電圧を検出し、電圧検出ラインが断線される状態では、ミラー回路が短絡トランジスタ4のベース電流を遮断することなく、短絡トランジスタをオンに切り換えて電圧検出回路の入力側を短絡して電圧をほぼ0Vに低下させるからである。
【0015】
本発明の電源装置は、ミラー回路5が、コレクターとエミッターとを、負荷抵抗13、14を介して電圧検出回路2の入力側に接続して、互いにベースを接続してなる第1のトランジスタ11と第2のトランジスタ12を備え、第1のトランジスタ11と第2のトランジスタ12のベースを第1のトランジスタ11のコレクターと負荷抵抗13との間に接続し、第2のトランジスタ12のコレクターと負荷抵抗14との間を短絡トランジスタ4のベースに接続することができる。
以上の電源装置は、一対のトランジスタと負荷抵抗13、14からなる簡単な回路構成のミラー回路5でもって、電圧検出ライン9の断線状態において、短絡トランジスタ4をオンに切り換えて、断線を速やかに検出できる。
【0016】
本発明の電源装置は、電圧検出ライン9を直列抵抗15を介して電圧検出回路2の入力側に接続することができる。この直列抵抗15は、短絡トランジスタ4のコレクター側ではショート回路3と電圧検出回路2の入力側との間に接続し、短絡トランジスタ4のエミッター側ではショート回路3のミラー回路5と短絡トランジスタ4との間に接続することができる。
以上の電源装置は、電圧検出ラインの断線状態において、より速やかにショート回路が電圧検出回路の入力側の電圧を低下できる。それは、電圧検出ラインが断線して、電池モジュールからミラー回路に電流が供給されなくなる状態で、直列抵抗がミラー回路への電流供給を少なくして、短絡トランジスタを速やかにオン状態に切り換えるからである。
【0017】
本発明の電源装置は、電池モジュール1の正負の電極端子に接続された一対の電圧検出ライン9を、電圧検出回路2の入力側において、一対の入力端子25からなる入力端子対26に接続して電池モジュール1の電圧を検出することができる。さらに、電源装置は、直列に接続している電池モジュール1を、入力端子25間にショート回路3を接続している入力端子対26と、入力端子25間にショート回路3の接続されない入力端子対26とに交互に接続することができる。
以上の電源装置は、ショート回路の個数を少なくして、すなわち回路構成をより簡単にして、各々の電圧検出ラインの断線を検出できる。
【0018】
本発明の電源装置は、車両を走行させるモータに電力を供給する電源装置とすることができる。
以上の電源装置は、多数の電池モジュールで出力電圧を高くしながら、各々の電池モジュールの過充電や過放電を確実に検出しながら使用できる。
【0019】
本発明の電源装置は、電圧検出回路2が入力側にバイパスコンデンサー10を接続することができる。
以上の電源装置は、電圧検出回路の入力側に誘導される雑音を減衰して、電池モジュールの電圧を正確に検出すると共に、電圧検出ラインの断線状態において、バイパスコンデンサーの残留電荷が短絡トランジスタをオンに切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例にかかる電源装置のブロック回路図である。
【図2】図1に示す電源装置が電圧検出ラインの断線を検出する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置を例示するものであって、本発明は電源装置を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0022】
以下、本発明の電源装置がハイブリッドカーの電源装置として使用される具体例を実施例として詳述する。ただし、本発明の電源装置は、ハイブリッドカーの電源装置のみでなく、電気自動車やその他の大きな出力が要求される全ての用途に使用できる。
【0023】
図1に示す電源装置は、互いに直列に接続している複数の電池モジュール1と、各々の電池モジュール1の正負の電極端子に、電圧検出ライン9を介して接続されて、各々の電池モジュール1の電圧を検出すると共に、検出電圧から電圧検出ライン9の断線も判定する電圧検出回路2と、この電圧検出回路2の入力側を一時的に短絡するショート回路3とを備える。
【0024】
以上の電源装置は、車両のメインスイッチであるイグニッションスイッチをオンに切り換えている状態において、所定のタイミングで電圧検出ライン9の断線を検出し、あるいはイグニッションスイッチをオンに切り換えた直後の起動処理期間中において電圧検出ライン9の故障を検出する。
【0025】
電圧検出回路2は、各々の電池モジュール1の電圧を検出して、電池モジュール1の過充電と過放電を防止しながら充放電するために、電源装置に装備される回路である。電源装置は、各々の電池モジュール1の電極端子を直列に接続している接続点7の電圧を検出して、電池モジュール1の電圧を検出する。電圧検出回路2は、全ての接続点7の電圧を検出して、全ての電池モジュール1の電圧を検出することができるが、全点検出の必要性は電池の特性に依存する。直列に接続している複数の電池モジュールをひとつのユニットとして扱える場合は、ユニット間の接続点の電圧を検出して、複数の電池モジュールからなる1ユニットの電圧として検出することもできる。たとえば、50個の電池モジュールを直列に接続している電源装置は、好ましくは50個の全ての電池モジュールの電圧を各々独立して電圧検出回路で検出し、あるいは2個の電池モジュールを1ユニットとし、2個の電池モジュールのトータル電圧を1ユニットの電圧として、25ユニットの電圧を検出することもできる。
【0026】
検出された電池モジュール1の電圧は、電池モジュール1の残容量の検出に使用され、あるいは充放電の電流を積算して演算される残容量の補正に使用され、あるいはまた、残容量が0になって完全に放電されたことを検出して、過放電される状態では放電電流を遮断し、さらに満充電されたことを検出して、過充電される状態になると充電電流を遮断するために使用される。
【0027】
互いに直列に接続している複数の電池モジュール1は同じ電流で充放電される。したがって、全ての電池モジュール1の充電量と放電量は同じになる。しかしながら、必ずしも全ての電池モジュール1の電気特性は等しく揃って変化するわけではない。とくに、充放電の繰り返し回数が多くなると、各々の電池モジュール1は劣化する程度が異なって、満充電できる容量が変化する。この状態になると、満充電できる容量の減少した電池モジュール1は、過充電されやすく、また過放電もされやすくなる。電池モジュールは、過充電と過放電で著しく電気特性が劣化するので、満充電できる容量が減少した電池モジュールが過充電や過放電されると急激に劣化してしまう。このため、走行用バッテリ1は、多数の電池モジュール1を直列に接続しているが、全ての電池モジュール1の過充電と過放電を防止しながら、すなわち、電池モジュール1を保護しながら充放電することが大切となる。全ての電池モジュール1を保護しながら充放電するために、電圧検出回路2は、電池モジュール1の電圧を検出している。
【0028】
各々の電池モジュール1は、1個ないし数個の二次電池を直列又は並列に、あるいは直列と並列に接続している。電池モジュール1は、二次電池の種類によって、直列に接続する二次電池の個数が異なる。たとえば、二次電池をリチウムイオン電池とする電池モジュールは1個の二次電池からなり、二次電池をニッケル水素電池とする電池モジュールは、4個ないし6個の二次電池を直列に接続している。1個のリチウムイオン電池からなる電池モジュールは、20個の電池モジュールを直列に接続して出力電圧が約74Vとなる。5個のニッケル水素電池を直列に接続している電池モジュールは、これを50個直列に接続して、全体で250個のニッケル水素電池を直列に接続して、出力電圧を300Vとしている。
【0029】
電圧検出回路2は、電池モジュール1の接続点7をマルチプレクサ21で切り換えて、各々の接続点7の電圧を順番に検出する。各々の接続点7の電圧を検出し、検出した接続点7の電圧差から各々の電池モジュール1の電圧を演算する。各々の接続点7は、電圧検出ライン9を介して電圧検出回路2の入力側に接続される。電圧検出ライン9は、リード線を介して一端を電池モジュール1の接続点7に、他端を電圧検出回路2の入力端子25に接続している。
【0030】
電池モジュール1の電圧は、電池モジュール1の両端を接続している接続点7の電圧差として検出される。たとえば、図1において第2の電池モジュールM2の電圧E2は、V2−V1として検出され、第3の電池モジュールM3の電圧E3は、V3−V2で検出される。
【0031】
図の電圧検出回路2は、マルチプレクサ21の出力側に電圧検出部22を接続し、電圧検出部22の出力側にA/Dコンバータ23を接続している。この電圧検出回路2は、マルチプレクサ21で切り換えて電圧検出部22で接続点7の電圧を順番に検出し、電圧検出部22の出力をA/Dコンバータ23でデジタル信号に変換して制御回路20に入力する。制御回路20は、入力されるデジタル信号の電圧信号を演算して、電池モジュール1の電圧を検出する。
【0032】
以上の電圧検出回路2は、マルチプレクサ21で接続点7を切り換えて各々の電池モジュール1の電圧を検出するが、電圧検出回路は、電池モジュールの両端を入力側に接続している差動アンプで電池モジュールの電圧を検出することもできる。この電圧検出回路は、電圧を検出する電池モジュールの個数と同じ差動アンプを備え、各々の差動アンプの入力側を、電圧検出ラインを介して各々の電池モジュールの正負の電極端子に接続して、電池モジュールの電圧を検出する。
【0033】
電圧検出回路2は、電圧検出ライン9に誘導される雑音を除去し、また電圧検出回路2の入力側に大きな静電気が入力されるのを防止するために、入力側にバイパスコンデンサー10を接続している。バイパスコンデンサー10は、静電容量を大きくして雑音や静電気による弊害を有効に防止できる。バイパスコンデンサー10は、静電容量を、例えば0.05μF〜0.5μF、好ましくは0.22μFとして、雑音や静電気の弊害を防止できる。バイパスコンデンサー10は、電圧検出回路2の電圧検出の精度を向上するが、電圧検出ライン9が断線したときに、電圧検出回路2に入力される電圧の変化を遅らせる原因となる。バイパスコンデンサー10のチャージが速やかに放電されないからである。
【0034】
電圧検出回路2は、電池モジュール1の電圧を検出して電圧検出ライン9の断線を判定する。電圧検出ライン9が断線すると、電池モジュール1の電圧が電圧検出回路2に入力されなくなって入力電圧が低下するので、電池モジュール1の検出電圧を閾値電圧に比較して、電圧検出ライン9の断線を判定できる。ただ、バイパスコンデンサー10は電池モジュール1によって充電されているので、電圧検出ライン9が断線されてもバイパスコンデンサー10両端の電圧は直ちには低下しない。バイパスコンデンサー10に充電された電荷は、電圧検出ライン9の速やかな断線検出を阻害する原因となる。また、基準電圧が電源装置の中間電位に相当する電位で、かつ該当部が基準電位と同等より低い電位であった場合は、検出回路の入力インピーダンスでは放電されず、電池モジュール1の検出電圧は0Vに低下しない。
【0035】
この弊害を防止するために、本発明の電源装置は、電圧検出回路2の入力側にショート回路3を設けている。図のショート回路3は、2本の電圧検出ライン9を介して、電池モジュール1に並列に接続している。ショート回路3は、電圧検出ライン9が断線される状態で、電圧検出回路2の入力側をショートして端子間電圧をほぼ0Vまで低下させる。また、ショート回路3は、電圧検出ライン9が断線されない状態では、電圧検出回路2の入力側をショートすることなく、電池モジュール1の電圧を電圧検出回路2に入力させる。ショート回路3は、短絡トランジスタ4と、この短絡トランジスタ4をオンオフに制御するミラー回路5とからなる。短絡トランジスタ4は、コレクターとエミッターを電圧検出回路2の入力側に接続している。短絡トランジスタ4は、オン状態で電圧検出回路2の入力側を短絡して、電圧検出ライン9の断線状態で入力電圧をほぼ0Vに低下させる。
【0036】
ミラー回路5は、電圧検出ライン9の断線状態と非断線状態とで、短絡トランジスタ4をオンオフに制御する。このミラー回路5は、電圧検出ライン9の非断線状態にあっては短絡トランジスタ4のベース電流を遮断してオフ状態とし、電圧検出ライン9の断線状態においては、短絡トランジスタ4のベース電流を遮断することなく、短絡トランジスタ4にベース電流が流れる状態としてオン状態に切り換えて、電圧検出回路2の入力側を短絡する。
【0037】
図1のミラー回路5は、第1のトランジスタ11と第2のトランジスタ12を備える。図のミラー回路5は、2本の電圧検出ライン9を介して電池モジュール1に並列に接続している。第1のトランジスタ11と第2のトランジスタ12のコレクターは、負荷抵抗13を介して電圧検出回路2の第1の入力端子25aに接続している。図のミラー回路5は、並列に接続される電池モジュール1のプラス側に接続している電圧検出ライン9を介して電圧検出回路2の第1の入力端子25aに接続している。第1のトランジスタ11と第2のトランジスタ12のエミッターは、電圧検出回路2の第2の入力端子25bに接続している。図のミラー回路5は、並列に接続される電池モジュール1のマイナス側に接続している電圧検出ライン9を介して電圧検出回路2の第2の入力端子25bに接続している。さらに、第1のトランジスタ11と第2のトランジスタ12のベースは、第1のトランジスタ11のコレクターと負荷抵抗13との間に接続され、第2のトランジスタ12のコレクターと負荷抵抗14との間を短絡トランジスタ4のベースに接続している。
【0038】
以上のミラー回路5は、電圧検出ライン9が断線しない非断線状態において、第1のトランジスタ11と第2のトランジスタ12のコレクターに同じ電流が流れる。この状態において、第2のトランジスタ12のコレクターに流れる電流は、短絡トランジスタ4のベースに流れようとする電流をバイパスして、すなわち、短絡トランジスタ4のベース電流を第2のトランジスタ12が吸収する状態となって、短絡トランジスタ4のベース電流を遮断する。したがって、電圧検出ライン9の非断線状態において、ミラー回路5は正常に動作して、短絡トランジスタ4をオフ状態に保持する。
【0039】
電圧検出ライン9が断線すると、ミラー回路5を構成する第1のトランジスタ11と第2のトランジスタ12とに、電池モジュール1から同じ電流値となるコレクター電流を供給できなくなって、第2のトランジスタ12にコレクター電流が流れなくなる。この状態になると、第2のトランジスタ12のコレクター電流が、短絡トランジスタ4のベース電流をバイパスして吸収できなくなる。短絡トランジスタ4は、第2のトランジスタ12の負荷抵抗14を介して電圧検出回路2の第1の入力端子25a側、すなわち、バイパスコンデンサー10のプラス側にベースを接続しているので、この負荷抵抗14を介して短絡トランジスタ4のベースにバイパスコンデンサー10からベース電流が供給され、短絡トランジスタ4はオン状態に切り換えられる。すなわち、電圧検出ライン9が断線すると、短絡トランジスタ4はオン状態に切り換えられる。オン状態の短絡トランジスタ4は、バイパスコンデンサー10を放電し、また電圧検出回路2の入力側を短絡して、電圧検出回路2の入力側の電圧をほぼ0Vに低下させる。
【0040】
さらに、図1に示す電源装置は、電圧検出ライン9の一端を直列抵抗15を介して電圧検出回路2の入力側に接続している。図において、短絡トランジスタ4のコレクター側であって、電圧検出回路2の第1の入力端子25a側に接続される直列抵抗15は、ショート回路3と電圧検出回路2の入力端子25との間に接続される。また、短絡トランジスタ4のエミッター側であって、電圧検出回路2の第2の入力端子25b側に接続される直列抵抗15は、ショート回路3のミラー回路5と短絡トランジスタ4との間に接続される。直列抵抗15は、電圧検出回路2の入力インピーダンスに比較して充分に小さい電気抵抗として、電圧検出回路2の電圧検出誤差を防止する。電圧検出回路2の入力インピーダンスは、たとえば1MΩ〜100MΩと極めて大きいので、直列抵抗15は、入力インピーダンスの1/10〜1/100として、電圧検出の誤差を無視できる。短絡トランジスタ4のエミッター側に接続される直列抵抗15をミラー回路5と短絡トランジスタ4との間に接続している電源装置は、電圧検出ライン9の断線状態において、より速やかに短絡トランジスタ4をオンに切り換えできる。それは、電圧検出ライン9が断線して、電池モジュール1からミラー回路5に電流が供給されなくなる状態で、バイパスコンデンサー10からミラー回路5への電流供給を直列抵抗15が少なくして、短絡トランジスタ4を速やかにオンに切り換えるからである。ただ、短絡トランジスタのエミッター側に接続される直列抵抗は、必ずしもミラー回路と短絡トランジスタとの間に接続する必要はなく、ショート回路と電圧検出回路の入力端子との間に接続することもできる。また、直列抵抗は必ずしも必要でない。それは、直列抵抗を接続しない回路構成にあっても、電圧検出ラインが断線して、電池モジュールからミラー回路に電流が供給されない状態になると、バイパスコンデンサーが放電されて、バイパスコンデンサー側からミラー回路に供給される電流が減少すると、短絡トランジスタがオン状態に切り換えられるからである。
【0041】
電源装置は、図1と図2に示すように、電圧検出回路2の全ての入力側にショート回路3を接続することなく、全ての電圧検出ライン9の断線を検出できる。すなわち、直列に接続している複数段の電池モジュール1の内、奇数段の電池モジュール1の電圧を検出する一対の入力端子25間にショート回路3を接続して、偶数段の電池モジュール1の電圧を検出する一対の入力端子25間にはショート回路3を接続せず、あるいは、反対に、奇数段の電池モジュールの電圧を検出する一対の入力端子間にショート回路を接続せずに、偶数段の電池モジュールの電圧を検出する一対の入力端子間にショート回路を接続する。すなわち、直列に接続している複数の電池モジュール1は、一対の入力端子25間にショート回路3を接続している入力端子対26と、一対の入力端子25間にショート回路3を接続していない入力端子対26とに交互に接続されて、電圧検出回路2で電圧が検出されるようにして、全ての電圧検出ライン9の断線を検出できる。
【0042】
図2の電源装置は、直列に接続している3組の電池モジュール1の正負の電極端子を第1〜第4の電圧検出ライン9でもって、電圧検出回路2の第1〜第3の入力端子対26に接続して、各々の電池モジュール1の電圧を検出している。この図の電源装置は、第1の電池モジュールM1の電圧を検出する第1の入力端子対26Aと、第3の電池モジュールM3の電圧を検出する第3の入力端子対26Cにショート回路3を接続して、第2の電池モジュールM2の電圧を検出する第2の入力端子対26Bにはショート回路3を接続していないが、入力端子対26Bは、即ちモジュールM1の正極、M3の負極であり、M2で断線が発生した場合、M1またはM3のショート回路により全ての電圧検出ライン9の断線を速やかに検出できる。
【0043】
図2において、第1の電池モジュールM1のプラス側又はマイナス側に接続している電圧検出ライン9がA点又はB点で断線すると、第1の入力端子対26Aで検出される検出電圧はほぼ0Vとなる。しかしながら、図において、第1の電池モジュールM1のマイナス側の電圧検出ライン9のA点が断線すると、第1の入力端子対26Aの検出電圧は0Vとなるが、第2の入力端子対26Bの検出電圧からA点とB点のいずれの断線であるかを判定できる。それは、電圧検出ライン9がA点で断線すると、第2の入力端子対26Bの検出電圧は第2の電池モジュールM2の電圧となり、B点で断線すると、第1の電池モジュールM1と第2の電池モジュールM2の加算された電圧値となって、A点とB点の断線を判定できるからである。B点で断線すると、第2の入力端子対26Bでの検出電圧が第1の電池モジュールM1の電圧と第2の電池モジュールM2の電圧の加算値となるのは、ショート回路3を介して第2の入力端子対26Bのマイナス側が第1の電池モジュールM1のマイナス側に接続されるからである。
【0044】
また、第3の電池モジュールM3のマイナス側に接続している電圧検出ライン9がC点で断線し、あるいはプラス側に接続している電圧検出ライン9がD点で断線しても、第3の入力端子対26Cの検出電圧は0Vとなるが、第2の入力端子対26Bの検出電圧からC点とD点のいずれの電圧検出ライン9の断線かを判定できる。すなわち、電圧検出ライン9がC点で断線すると、第2の入力端子対26Bの検出電圧は第2の電池モジュールM2と第3の電池モジュールM3の電圧値の加算値となり、D点で断線すると、第2の入力端子対26Bの検出電圧は、第2の電池モジュールM2の電圧値となるからである。
【0045】
以上のように、図1と図2の電源装置は、電圧検出回路2の全ての入力端子対26に、ショート回路3を接続することなく、ショート回路3を接続する入力端子対26と、ショート回路3を接続しない入力端子対26とを交互に配置して、全ての電圧検出ライン9の断線を速やかに検出できる。
【0046】
さらに、電圧検出回路が任意の基準電圧に対する電位差を検出する回路構成の場合、基準電圧と同等より低い電位の箇所は、入力インピーダンスの大小に関らず断線時でも検出回路の基準電圧以下の電圧には低下しない。この状態では検出電圧から電圧低下と断線を識別できず、断線検出は不可能となる。短絡トランジスタを実装する事で、断線時は端子間電圧をほぼ0Vまで低下させ断線を識別し検出可能にする。
【符号の説明】
【0047】
1…電池モジュール
2…電圧検出回路
3…ショート回路
4…短絡トランジスタ
5…ミラー回路
7…接続点
9…電圧検出ライン
10…バイパスコンデンサー
11…第1のトランジスタ
12…第2のトランジスタ
13…負荷抵抗
14…負荷抵抗
15…直列抵抗
20…制御回路
21…マルチプレクサ
22…電圧検出部
23…A/Dコンバータ
25…入力端子 25a…第1の入力端子
25b…第2の入力端子
26…入力端子対 26A…第1の入力端子対
26B…第2の入力端子対
26C…第3の入力端子対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列に接続してなる複数の電池モジュール(1)と、
各々の電池モジュール(1)の正負の電極端子に、電圧検出ライン(9)を介して接続されて、各々の電池モジュール(1)の電圧を検出すると共に、検出電圧から電圧検出ライン(9)の断線を判定する電圧検出回路(2)と、
前記電圧検出回路(2)の入力側を一時的に短絡するショート回路(3)とを備える電源装置であって、
前記ショート回路(3)が、電圧検出回路(2)の入力側にコレクターとエミッターとを接続してなる短絡トランジスタ(4)と、この短絡トランジスタ(4)のベースに接続してなるミラー回路(5)とを備え、
前記ミラー回路(5)は、電圧検出ライン(9)の非断線状態で短絡トランジスタ(4)のベース電流を遮断してオフ状態とし、電圧検出ライン(9)の断線状態では、短絡トランジスタ(4)のベース電流を遮断することなく、短絡トランジスタ(4)にベース電流が流れる状態としてオン状態に切り換えて電圧検出回路(2)の入力側を短絡するようにしてなる電源装置。
【請求項2】
前記ミラー回路(5)が、コレクターとエミッターとを負荷抵抗(13;14)を介して電圧検出回路(2)の入力側に接続され、かつ互いにベースを接続してなる第1のトランジスタ(11)と第2のトランジスタ(12)を備え、第1のトランジスタ(11)と第2のトランジスタ(12)のベースは第1のトランジスタ(11)のコレクターと負荷抵抗(13)との間に接続され、第2のトランジスタ(12)のコレクターと負荷抵抗(14)との間を前記短絡トランジスタ(4)のベースに接続してなる請求項1に記載される電源装置。
【請求項3】
前記電圧検出ライン(9)が、直列抵抗(15)を介して電圧検出回路(2)の入力側に接続され、かつ、この直列抵抗(15)が、前記短絡トランジスタ(4)のコレクター側ではショート回路(3)と電圧検出回路(2)の入力側との間に接続され、短絡トランジスタ(4)のエミッター側ではショート回路(3)のミラー回路(5)と短絡トランジスタ(4)との間に接続されてなる請求項1又は2に記載される電源装置。
【請求項4】
前記電池モジュール(1)の正負の電極端子に接続された一対の電圧検出ライン(9)が、電圧検出回路(2)の入力側において、一対の入力端子(25)からなる入力端子対(26)に接続されて前記電池モジュール(1)の電圧が電圧検出回路(2)で検出されており、
直列に接続してなる前記電池モジュール(1)が、入力端子(25)間にショート回路(3)を接続している入力端子対(26)と、入力端子(25)間にショート回路(3)の接続されない入力端子対(26)とに交互に接続されてなる請求項1ないし3のいずれかに記載される電源装置。
【請求項5】
車両を走行させるモータに電力を供給する電源装置である請求項1ないし4のいずれかに記載される電源装置。
【請求項6】
前記電圧検出回路(2)が入力側にバイパスコンデンサー(10)を接続している請求項1ないし5のいずれかに記載される電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−84443(P2012−84443A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230887(P2010−230887)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】