説明

電界放出素子における空気中で焼成されたカソードアセンブリを製造する方法

本発明は、電界放出素子用のカソードアセンブリを製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2008年8月22日出願の米国仮特許出願第61/091114号および2008年8月22日出願の米国仮特許出願第61/091130号からの優先権を主張し、かつそれらの仮特許出願の利益を主張するものであり、上記の各仮特許出願の全体を本明細書において本明細書の一部として参照により援用する。
【0002】
本発明は、電界放出素子用のカソードアセンブリを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電界放出素子は、真空電子素子、フラットパネルコンピュータおよびテレビジョン用ディスプレイ、電界放出型ゲート増幅器、ならびにクライストロンなど様々なエレクトロニクス用途において、さらには照明において使用することができる。家庭用および業務用テレビジョン、ラップトップおよびデスクトップコンピュータ、ならびに屋内および屋外広告および情報提示など広範な用途で、ディスプレイ画面が使用されている。フラットパネルディスプレイは、多くのテレビジョンおよびデスクトップコンピュータで見られる奥行きのある陰極線管モニタとは対照的に、厚さを1インチ以下にすることができる。フラットパネルディスプレイは、ラップトップコンピュータに欠かせないものであるが、多くの他の用途でも重量およびサイズの面で有利である。
【0004】
現在、ラップトップコンピュータのフラットパネルディスプレイは液晶を使用し、液晶は、微弱な電気信号を印加することによって透明状態から不透明状態に切り替えることができる。液晶ディスプレイに代わるものとして、プラズマディスプレイが提案されている。プラズマディスプレイは、画像を生成するために荷電ガスの小さい画素セルを使用し、動作に必要な電力が比較的大きい。
【0005】
電子電界エミッタを含むカソードアセンブリを含む電界放出素子と、電界エミッタから放出された電子が衝突すると発光することができる蛍光体とを組み合わせることによってフラットパネルディスプレイを構成することが提案されている。そのようなディスプレイは、従来の陰極線管が備える視覚表示に関する利点と、他のタイプのフラットパネルディスプレイが備える奥行き、重量、および電力消費に関する利点とを共に備えることができる可能性がある。米国特許第4857799号明細書および第5015912号明細書は、タングステン、モリブデン、またはシリコンから構成される微小先端を有するエミッタを使用するマトリックスアドレス型フラットパネルディスプレイを開示する。国際公開第94/15352号パンフレット、国際公開第94/15350号パンフレット、および国際公開第94/28571号パンフレットは、カソードアセンブリが比較的平坦な放出面を有するフラットパネルディスプレイを開示する。
【0006】
電界放出は、2種類のカーボンナノチューブ構造で観察されている。Chernozatonskiiらは、Chem. Phys. Letters 233 (1995) 63およびMat. Res. Soc. Symp. Proc. 359 (1995) 99において、10−5〜10−6Torr(1.3×10−3〜1.3×10−4Pa)の雰囲気中でグラファイトを電子蒸発させることによって、様々な基板上にカーボンナノチューブ構造の被膜を形成している。これらの被膜は、互いに並ぶ整列されたチューブ状の炭素分子からなる。2つのタイプのチューブ状分子が形成される。1つは、A−チューブライト(tubelites)であり、それらの構造は、直径10〜30nmのフィラメント束を形成する単層のグラファイトライクチューブを含むものである。もう1つは、B−チューブライトであり、円錐またはドーム状の頂部を有する直径10〜30nmの、大抵は多層のグラファイトライクチューブを含む。Chernozatonskiiらは、これらの構造の表面からのかなり大きい電界電子放出を報告しており、ナノ次元の先端に電界が強く集中していることがその要因とみている。
【0007】
Rinzlerらは、Science 269 (1995) 1550において、レーザ蒸発または酸化エッチングによってナノチューブの先端が開かれるときにカーボンナノチューブからの電界放出が増すことを報告している。Zettlらは、米国特許第6057637号明細書において、ある体積のバインダと、バインダ中に懸濁されたある体積のB(ここでx、y、およびzは、ホウ素、炭素、および窒素の相対比率を示す)ナノチューブとを含む電子放出材料を開示している。
【0008】
ChoiらのAppl. Phys. Lett. 75 (1999) 3129およびChungらのJ. Vac. Sci. Technol. B 18(2)には、有機バインダ中の単層カーボンナノチューブを使用して4.5インチのフラットパネル電界ディスプレイを製造することが報告されている。この単層カーボンナノチューブは、金属メッシュを通してペーストを絞り出すことによって、表面ラビングによって、および/または電界による調整によって、垂直方向で整列された。多層カーボンナノチューブディスプレイも作製された。スラリ絞り出しおよび表面ラビング技法を使用して、均一性に優れたカーボンナノチューブ電子放出材料が開発されたと記載されている。エミッタの最上面から金属粉末を除去し、表面処理によってカーボンナノチューブを整列させることによって放出が増すことが見出された。単層カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブよりも良い放出特性を有することが判明したが、単層カーボンナノチューブ被膜は、多層カーボンナノチューブ被膜よりも低い放出安定性を示した。
【0009】
Yunjun Liらは、米国特許出願第07/117401号明細書において、電界放出素子を作製するために印刷プロセスによってインクとして定量供給することができるカーボンナノチューブの組成物を開示する。インク組成物が定量供給された後、ある温度条件にわたって1つまたは複数のステップで素子を加熱して、素子を乾燥させる、焼き締める、および/または焼成することができる。
【0010】
それにも関わらず、電子電界エミッタにおいて、カーボンナノチューブなど針状の電子放出材料を商業利用できるようにする技術が引き続き求められている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】三極管ディスプレイ素子用の完全にスクリーン印刷される電界放出カソードを形成する層を示す図である。
【図2】酸素を含む雰囲気中で420℃で焼成されるときの、カーボンナノチューブを含む厚膜エミッタ組成物に関するアルミナ添加量の関数としてのダイオード放出電流を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、本発明は、(a)基板を提供するステップと、(b)(i)カーボンナノチューブ、(ii)アルミナ粉末、および(iii)有機ビヒクルを含む成分を混合して、組成物を生成するステップと、(c)基板上に、組成物の厚膜のパターンを堆積するステップと、(d)空気または酸化雰囲気中で、300℃〜550℃の間の温度で、前記厚膜のパターンを加熱するステップとによって、基板上に電子放出材料を堆積する方法を提供する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、上述した方法のいずれかによって得られる、または得ることができる電界エミッタ、カソード、カソードアセンブリ、電界放出素子、またはフラットパネルディスプレイを提供する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、(i)熱化学気相成長によって形成される薄層のカーボンナノチューブと、(ii)有機ビヒクルとを含む組成物を提供する。
【0015】
カーボンナノチューブは、厚膜ペースト中に含まれる。好ましい一実施形態では、ペーストは、さらにアルミナ粉末を含む。熱化学気相成長によって形成されるカーボンナノチューブなど薄層カーボンナノチューブを提供してペースト中に混入することによって、ペーストが調製される。得られた厚膜組成物は、カソードアセンブリの製造プロセス中に、空気または酸化雰囲気中で加熱されることがある。カーボンナノチューブおよびアルミナ粉末から調製されたペーストから印刷された被膜は、窒素もしくは他の不活性雰囲気中または真空中で加熱する必要がなく、カーボンナノチューブによって提供される放出電流の低下を回避する。本発明の組成物は、空気または酸化雰囲気中で300℃〜550℃の間で、劣化させずに加熱することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、カーボンナノチューブ(「CNT」)など針状炭素電子放出材料をアセンブリ内の電子電界エミッタに含むカソードアセンブリを製造するための方法に関する。電子放出材料に加えて、電子電界エミッタは、任意選択の成分として無機フィラー粉末も含むことがあり、これは、アルミナなどの金属酸化物、ガラスフリット、および金属粉末もしくは金属塗料、またはそれらのうちの2つ以上の混合物を含み、それらすべてを以下でより詳細に説明する。
【0017】
電子電界エミッタにおいて本発明で使用される針状炭素電子放出材料は、様々なタイプのものでよい。針状材料は、10以上のアスペクト比を有する粒子によって特徴付けられる。単層、二層、多層、または薄層のカーボンナノチューブが、放出材料として特に好ましい。個々のカーボンナノチューブは非常に小さく、典型的には直径が約1.5nmである。カーボンナノチューブは、主にsp混成軌道をもつ炭素の存在に関連してグラファイトライク(graphite−like)と呼ばれることがある。カーボンナノチューブの層は、グラフェンシートを丸めることによって形成される筒形と考えることができる。様々な種類のカーボンナノチューブのブレンドを使用することもできる。
【0018】
CNTは、本発明での使用に好ましい針状炭素電子放出材料であるが、代替実施形態では、他の針状炭素の放出材料を使用することもでき、そのような放出材料としては、ポリアクリロニトリルベース(PANベース)炭素繊維およびピッチベース炭素繊維など様々なタイプの炭素繊維がある。本発明において有用な炭素繊維は、小さな金属粒子の上で炭素含有ガスの触媒分解から成長するものを含み、そのような繊維は、典型的には、繊維の軸線に対してある角度で配置されたグラフェン小板を有し、したがって炭素繊維の周縁が本質的にグラフェン小板の縁部からなる。この角度は、鋭角または90度となることがある。
【0019】
上述したような針状炭素電子放出材料の高いアスペクト比および曲がりの鋭い曲率半径により、エミッタの先端での印加電位に関して高い電界を生成することができる。これにより、高い電界放出電流を生成することができる。針状炭素材料は、例えば、有機ビヒクルおよび任意選択でアルミナ粉末を含む厚膜中に含まれることがある。基板への厚膜の塗布は、基板に電子放出材料をパターン形成して取り付け、電子放出材料を位置を基板上で定位置に固定し、所要の電位に合わせて放出材料の導電性を提供する簡便な方法である。スクリーン印刷などの技法によって放出材料を含む厚膜のパターンを堆積した後、厚膜のパターンを加熱して厚膜を固化し、有機ビヒクルの揮発成分を追い出す。
【0020】
上述した厚膜プロセスによって形成されるものなど、電子電界エミッタは、電界放出素子用のカソードアセンブリの一部として製造することができる。本発明で使用するのに適したカソードアセンブリに関する一設計が図1に示されており、この図は、三極管エミッタ素子用のスクリーン印刷される電界放出カソードアセンブリを形成する層を示す。層1はガラス基板であり、層2は、基板と接触するパターン形成されたカソード電極であり、層3は、層2と接触するバイア開口を有する誘電体層であり、層4は、誘電体層の上部に接触するゲート電極であり、層5は、誘電体層のバイア内に入る点として印刷された電子放出材料である。
【0021】
上述したような電界放出カソードアセンブリを製造するために、まず基板が提供される。基板は、電気絶縁体または電気絶縁性のある材料でよく、そのようなものであることが好ましく、ペースト組成物がそこに接着するいかなる材料でもよい。塗布される厚膜ペーストが非導電性であり、かつ非導電性基板が使用される場合、カソード電極となり、電子放出材料に電圧をかけるための導電体の被膜が必要とされる。シリコン、ガラス、金属、またはアルミナなどの耐火材料が、基板となり得る材料の例である。ディスプレイ用途では、好ましい基板はガラスであり、ソーダ石灰ガラスが特に好ましい。ガラス上での導電率を最適にするために、空気または窒素中で、しかし好ましくは空気中で、400〜550℃で銀ペーストをガラス上に予め焼成することができる。カソード電極としてこのようにして形成された導電層に、次いで、放出材料を含むペーストを重ねて印刷することができる。
【0022】
しかし、代替実施形態では、基板は導電性でよい。
【0023】
この段階で、パターン形成されたカソード電極の上に、パターン形成される誘電体層をスクリーン印刷して、パターン形成して、焼成することができる。次に、誘電体層の上に、パターン形成される導電性ゲート電極層をスクリーン印刷して、パターン形成して、焼成することができる。ゲート電極は、吹付け、スパッタリング、または任意の標準的な堆積プロセスなど様々な技法によって堆積することができる。あるいは、ゲート電極は、より後の段階で、カソードアセンブリの上に配置されるメッシュの形で提供することもできる。
【0024】
次のステップで、電子放出材料と、有機ビヒクルと、任意選択でアルミナ粉末とを含む厚膜ペースト組成物のパターンが、導電体のパターンの上に堆積される。三極管カソードアセンブリの場合、この厚膜ペーストは、典型的には誘電体層のバイア内に堆積される。誘電体層またはゲート層を有さないダイオードカソードアセンブリの場合、厚膜ペーストは、基板と接触するパターン形成された導体(すなわちカソード電極)の上に堆積される。有機ビヒクルは、スクリーン印刷可能でよく、または光重合性でよい。パターン形成された厚膜としてのペーストの塗布は、スクリーン印刷もしくはステンシル印刷、フォトイメージング、インクジェット堆積、または任意の標準的な堆積プロセスによって行うことができる。
【0025】
スクリーン印刷に使用される厚膜ペーストは、典型的には、電子放出材料に加えて、有機媒体と、溶媒と、界面活性剤と、任意選択で低軟化点のガラスフリット、金属粉末、もしくは金属塗料、またはそれらの混合物と、任意選択でアルミナ粉末とを含む。電子電界エミッタを形成することができる厚膜ペーストは、典型的には、ペーストの総重量に対して約5重量%〜約80重量%の固体を含む。これらの固体は、典型的には、電子放出材料と、ガラスフリットおよび/または金属成分と、任意選択でアルミナ粉末とを含む。印刷される被膜の粘性および最終的な厚さを調節するために、組成を変えることができる。
【0026】
アルミナ粉末は、厚膜ペースト中に存在するとき、好ましくは高い純度であり、粒径が小さい。例えば、約0.01〜約5ミクロンのd50、好ましくは約0.05〜約0.5ミクロンのd50である(ここでd50は、粉末粒子のメジアン粒径を表す)。それらの範囲内の粒径の組合せを使用することもできる。アルミナ粉末が厚膜ペースト中に存在するとき、厚膜ペーストの組成は、いずれもペースト組成物の全成分の総重量に基づいて、約0.001重量%〜約10重量%、または約0.01重量%〜約6.0重量%のカーボンナノチューブと、約0.1重量%〜約40重量%、または約1.0重量%〜約30重量%、または約5重量%〜約24重量%のアルミナ粉末とを含むことがある。また、追加のフィラー種をアルミナフィラー粉末と組み合わせることもできる。
【0027】
スクリーン印刷可能なペーストとして使用するのに好ましい組成は、固体中のカーボンナノチューブの含有量が、ペースト中の全固体の総重量に基づいて約9重量%未満、または約5重量%未満、または1重量%未満、または約0.01重量%〜約2重量%の範囲内のものである。
【0028】
厚膜ペースト組成物中の媒体および溶媒は、組成物中の微粒子成分を懸濁および分散するために使用され、すなわち、ペースト中の固体は、スクリーン印刷など典型的なパターン形成プロセスに適したレオロジー、粘性、および揮発性を与えられる。ペースト中の有機媒体として使用するのに適した材料の例としては、エチルセルロースなどのセルロース樹脂および様々な分子量のアルキド樹脂が挙げられる。溶媒としてペースト中で使用するのに適した材料の例としては、脂肪族アルコール;そのようなアルコールのエステル、例えばアセテートやプロピオネート;松根油およびα−またはβ−テルピネオールなどのテルペン、またはそれらの混合物;エチレングリコールおよびそのエステル、例えばエチレングリコールモノブチルエーテルおよびブチルセロソルブアセテート;カルビトールエステル、例えばブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジブチルカルビトール、ジブチルフタレート;およびTexanol(登録商標)(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)が挙げられる。ペースト中の粒子の分散を改良するために使用するのに適した界面活性剤の例としては、オレイン酸およびステアリル酸などの有機酸、およびレシチンなどの有機リン酸塩が挙げられる。
【0029】
厚膜ペーストがフォトイメージングされる場合、ペーストはまた、典型的には、光開始剤;現像可能なバインダ;アクリレートおよび/またはスチレン化合物を含めた重合可能なエチレン性不飽和化合物など光硬化性モノマー;および/またはC10アルキルアクリレート、C10アルキルメタクリレート、スチレン、置換スチレン、またはそれらの組合せなど非酸性コモノマーと、エチレン不飽和カルボン酸含有部分など酸性コモノマーとから調製されたコポリマーも含む。光開始剤系は、化学線によって活性化されたときに直に遊離基を発生する1つまたは複数の化合物を含む。本発明で使用するのに適した光開始剤の例としては、ベンゾフェノン、ミヒラー(Michler)のケトン、p−ジアルキルアミノベンゾエートアルキルエステル、多核キノン、チオキサントン、ヘキサアリールビスイミダゾール、α−アミノケトン、シクロヘキサジエノン、ベンゾイン、およびベンゾインジアルキルエーテルが挙げられる。また、この系は、スペクトル応答が可視領域に向かって広がっている、または可視範囲内まで広がっている増感剤を含むこともあり、そのような増感剤は、化学線によって活性化されて、遊離基を発生する光開始剤系にエネルギーを伝達する。増感剤の例としては、ビス(p−ジアルキルアミノベンジリデン)ケトン(米国特許第3652275号明細書に記載されるものなど)およびアリーリデンアリールケトン(米国特許第4162162号明細書に記載されるものなど)が挙げられる。
【0030】
厚膜ペーストは、典型的には、電子放出材料と、有機媒体と、界面活性剤と、溶媒と、無機金属酸化物粉末、他の不活性(耐火)フィラー粉末、低軟化点のガラスフリット、金属粉末、金属塗料、またはそれらの混合物と、任意選択でアルミナ粉末との混合物を3本ロールミルで処理することによって調製される。ペースト混合物は、よく知られているスクリーン印刷技法を使用して、例えば165〜400メッシュのステンレス鋼スクリーンを使用することによってスクリーン印刷することができる。ペーストは、連続する厚膜として、または所望のパターンの形で堆積することができる。
【0031】
カーボンナノチューブは、本発明で使用するのに好ましい電子放出材料である。本発明において使用するのに適したCNTは、SmalleyらによってScience 273 (1996) 483およびChem. Phys. Lett. 243 (1995) 49に、またPopovによってMater. Sci. Eng. R. 43 (2004) 61に記載されているようなレーザアブレーションによって調製されるものを含む。しかし、好ましい一実施形態では、厚膜ペーストを提供するために組成物中に混入するための電子放出材料として、熱化学気相成長(「CVD」)技法によって成長するCNTが使用される。熱化学気相成長は、熱触媒化学気相成長または熱化学蒸気分解とも呼ばれることがある。したがって、本文書においては、熱化学気相成長への言及またはそれに関する記述は、熱触媒化学気相成長または熱化学蒸気分解に関する言及またはそれに関する記述とも解され、逆も成り立つ。
【0032】
カーボンナノチューブの調製のための熱CVDプロセスは、炭化水素を炭素および水素に分解するために脱水素反応で気体炭化水素供給を分解することによって行うことができる。適切な供給ガス炭化水素は、メタン、エチレン、およびアセチレンを含む。反応は、鉄、ニッケル、またはコバルトなど遷移金属ナノ粒子を触媒として使用して行われる。触媒は、メソポーラスシリカ、グラファイト、ゼオライト、MgO、またはCaCOなどの基板上に担持することができる。反応は、炉内で約550℃〜約1000℃の範囲内または約750℃〜850℃の範囲内の温度で、約5〜約60分間または約20〜約30分間行うことができる。プロセスは、流動床内またはベルト炉上で静的環境中で行うことができる。その後、カーボンナノチューブを純化することが通例であり有益である。カーボンナノチューブの調製のための熱CVDプロセスの他の態様は、PopovによってMater. Sci. Eng. R. 43 (2004) 61に、またHarrisによってInd. Eng. Chem. Res. 46 (2007) 997に記載されている。
【0033】
本発明における使用に適した熱CVDカーボンナノチューブとしては、例えばXintek、Swan、CNI、およびCOCCから入手できるものが挙げられる。Xintek CNTは、Xintek Inc.(Chapel Hill NC)から入手できる直径の小さいCNTである。Swan CNTは、Thomas Swan & Co. Ltd.(Consett,England)から入手できるElicarb CNT(製品整理番号PRO925)である。CNI CNTは、Carbon Nanotechnologies Inc.(Houston TX)から入手できる多層CNTである。COCC CNTは、Chengdu Chemical Company of Chengdu(COCC)(Chengdu, China)から入手できる薄層カーボンナノチューブである。
【0034】
熱CVDカーボンナノチューブは、典型的には、約1.4nmよりも大きく約5ナノメートルまでの外径を有する薄層カーボンナノチューブである。それらは、典型的には、最多10層を含む薄層の多層カーボンナノチューブである。薄層CNTの透過型電子顕微鏡(TEM)画像は層数2〜10の範囲を示し、単層CNTはほとんどない。しかし、異なる種類の熱CVDカーボンナノチューブのブレンドを使用することもできる。
【0035】
レーザアブレーションされたCNTは、主に、約1.2〜約1.4nm(ナノメートル)未満の直径を有する単層CNTである。レーザCNTのカイラリティは、主に10,10(すなわち、n=10およびm=10がチューブカイラリティを表す)であり、チューブは主に(半導体特性ではなく)金属特性を有する。
【0036】
カソードアセンブリを形成するための本発明の方法の次のステップは、上述した基板に塗布されたパターン形成された厚膜ペーストを、空気または別の酸化雰囲気中で約300℃〜約550℃の範囲内の温度で加熱することである。酸化雰囲気は、酸素および/または他の気体酸化剤を含む気体または気体混合物である。気体酸化剤の例としては、オゾン、亜酸化窒素、および塩素が挙げられるが、酸素が格段に、最も一般的であり実用的な酸化剤である。酸化雰囲気は、約100ppm、約0.1重量%、または100重量%、およびそれらの間の範囲内の値など、幅広い量で酸化剤を含むことがある。使用される最も一般的な酸化雰囲気は空気であり、これは典型的には21体積パーセントの酸素である。
【0037】
ペーストの層が上に堆積されているカソードアセンブリの層は、ペーストを硬化するために、ピーク温度で典型的には約10〜約60分間加熱される。基板がガラスであるとき、アセンブリは、空気または他の酸化雰囲気中で約350℃〜約550℃の温度または約400℃〜約475℃の温度で約30分間、焼成することができる。最高約525℃に耐えることができる基板では、より高い焼成温度を使用することができる。しかし、ペースト中の有機成分は約350〜約400℃で効果的に揮発され、これにより、針状炭素と、含まれているときには無機金属酸化剤粉末(例えばアルミナ粉末)と、他の不活性(耐火)フィラー粉末、フィラーガラス、および/または金属導体と、非晶質炭素とを含む複合物の層が残る。300℃未満の焼成温度では、通常、有機ビヒクルの除去が不完全である。550℃を超える焼成温度では、電子電界エミッタの性能が低下することがある。さらに高い温度では、基板は、基板が形成される材料の熱特性に依存して変形を受けることがある。
【0038】
また、焼成は、約300℃以上、または約325℃以上、または約350℃以上、または約375℃以上、または約400℃以上、または約425℃以上、または約450℃以上、または約475℃以上、または約500℃以上、または約525℃以上の温度で、しかし約550℃以下、または約525℃以下、または約500℃以下、または約475℃以下、または約450℃以下、または約425℃以下、または約400℃以下、または約375℃以下、または約350℃以下、または約325℃以下の温度で行うことができる。
【0039】
一般に、従来、レーザアブレーションCNTを含むものなど厚膜ペーストは、温度が約300℃を超えるときには、窒素もしくは他の不活性雰囲気中または真空中で加熱されている。不活性雰囲気または真空を提供するにはチャンバが必要であり、したがって望ましくないことに、カソードアセンブリを製造する方法の複雑さおよびコストが増す。しかし、不活性雰囲気または真空中で従来の厚膜ペーストを加熱しない不利益は、典型的には電界エミッタの性能が低下されることであり、雰囲気中に約100ppm〜約0.1重量%の範囲内など非常に低レベルの酸素が存在するときでさえそのような結果になることがある。電界エミッタ性能の低下は、放出電流の減少もしくは動作電界の増加、またはそれら両方の形をとることがある。
【0040】
しかし、本発明の方法では、カソードアセンブリの製造は、空気または他の酸化雰囲気の存在下で300℃を超える温度に厚膜ペーストを加熱することを含むことができ、電子電界エミッタの性能を低下させることがない。すなわち、本発明におけるように300℃よりも高い温度で酸素中で焼成されたときに得られる電界エミッタの性能は、300℃未満で酸素中で焼成された、または300℃を超える温度で不活性雰囲気中で焼成された従来の電界エミッタから得られる性能と少なくとも同程度である。本発明のカソードアセンブリの電界エミッタでは、低い動作電界で高い放出電流を発生することができる性能を保つために、厚膜ペースト中の熱CVDカーボンナノチューブおよび/またはアルミナ粉末の存在により、空気または他の酸化雰囲気の存在下で300℃を超える温度への加熱に耐性のある材料が実現される。
【0041】
フォトイメージング可能な銀、誘電体材料、および上述したように調製されたカーボンナノチューブ/銀エミッタペーストを使用して、図1に示されるような概略設計を有する厚膜ベースの電界放出三極管アレイを構成することができる。図1に示されるような電界放出三極管(「通常のゲート三極管」)では、ゲート電極は、物理的に、電子電界エミッタであるカソードと、アノードとの間に位置される。そのような設計でのゲート電極は、カソードアセンブリの一部とみなされる。カソードアセンブリは、基板の表面に堆積された第1の層としてのカソード電流供給層からなる。円形またはスロット形のバイアを含む誘電体層が、素子の第2の層を形成する。電子放出材料の層は、バイア内部で導電性カソードと接触し、その厚さは、誘電体層の底部から上部まで延在することができる。誘電体の上に堆積され、しかし電子放出材料と接触しないゲート電極層が、カソードアセンブリの上層を形成する。このカソードアセンブリでは、三極管の最適化された低電圧スイッチングを実現するために、バイア直径、誘電体の厚さ、およびゲートと電子放出材料の距離の寸法が最小にされることが好ましい。
【0042】
図1に示される三極管アレイ用のカソードアセンブリは、以下のステップによって製造することができる。
【0043】
(a)基板上にフォトイメージング可能な銀カソード層を印刷し、銀カソード層をフォトイメージングして現像し、次いで焼成して、基板上に銀カソード給電線を製造するステップと、
(b)銀カソード給電線および露出された基板の上にフォトイメージング可能な電子電界エミッタ層を印刷し、電子電界エミッタ層を、銀カソード給電線上の点、長方形、または線内にフォトイメージングして現像するステップと、
(c)銀カソード給電線および電子電界エミッタ層の上に、1つまたは複数の均一なフォトイメージング可能な誘電体材料層を印刷し、誘電体を乾燥させるステップと、
(d)誘電体層の上にフォトイメージング可能な銀ゲート線の層を印刷し、この銀ゲート線層を乾燥させるステップと、
(e)電子電界エミッタ層が中に形成されている点、長方形、または線の真上にバイアを配置するために、バイアまたはスロットのパターンを含むフォトマスクを用いて、一回の露光で銀ゲートと誘電体層の両方をイメージングするステップと、
(f)銀ゲートおよび誘電体層を現像して、バイアの底部に電子電界エミッタ層を露出させ、上述した条件下で電子電界エミッタ、誘電体、および銀ゲート層を共焼成するステップ。
【0044】
上述したステップ(b)において、電子電界エミッタ層の点、長方形、または線のサイズが最終的なバイア寸法よりもかなり大きい場合、後続の誘電体およびゲート層の位置合わせを単純化することができる。あるいは、この電子電界エミッタ層は、アレイの所望のピッチ密度に関して使用できる場合には単純なスクリーン印刷によって製造することができ、フォトイメージング可能なエミッタペーストの使用は必要ない。ステップ(d)において、ピッチ密度が銀ゲート線の印刷には高すぎる場合、均一なフォトイメージング可能な銀の層を印刷することができ、その後、銀ゲート線およびバイアのパターンを有するマスクを使用してイメージングステップ(e)で線を形成することができる。
【0045】
上述したプロセスでは、フォトイメージング可能な厚膜が使用されるとき、位置合わせステップを行わずに、完全ではないにせよ優れたゲート、バイア、および電子電界エミッタの見当合わせを実現することができる。より重要なことには、このプロセスは、ゲートと電子電界エミッタ層の間での短絡の発生を防止し、それと同時にゲートとエミッタの最小離間距離を実現する。
【0046】
好ましいが必須ではない次のステップとして、カソードアセンブリは、カソードで使用される材料の他の要件に応じて以下の2つの方法の一方によって作動させることができる。第1の方法は、カソード電極上の放出材料層の上面に圧力下で接着テープを貼着し、その後、接着テープを剥離して、放出材料の上層を除去することによるものである。第2の作動方法は、放出材料の上面に液体エラストマー接着剤の層を塗布し、その層を熱もしくはUV放射またはそれら両方によって硬化させ、その後、接着剤層を剥離して、放出材料の上層を除去することによるものである。どちらの作動方法においても、放出材料が焼成された後に作動ステップを行うことがより一般的である。本発明における1つの好ましい厚膜ペースト組成物は、カーボンナノチューブと、任意選択のアルミナ粉末と、有機ビヒクルとを含むが、他の実施形態では、コロイダルシリカなど追加の無機粉末を組成物に添加することで、カーボンナノチューブの優れた接着性が得られる。
【0047】
カソードアセンブリは、製造されて作動された後、アノードと組み合わされ、それらが一体となって、封止されるパネルの上面および底面を構成する。この段階で、ゲートがカソードアセンブリ上に構築されていない場合、カソードアセンブリおよびアノードがパネルに封止される前に、カソード電極の上に配置された別個のグリッドとしてゲートを追加することができる。典型的には、パネルは、封止ガラスを使用して、封止ガラスが軟化する温度で封止され、この温度は500℃に近づくこともある。封止中および封止後にパネル上で排気することによって真空が生成される。所要の真空を得るために、ゲッターが使用されることもある。
【0048】
ここで、本発明は、上に厚膜ペーストが堆積されてパターン形成された基板、またはそのような基板を含むカソードアセンブリを電子電界エミッタに組み込むさらなるステップを含む。さらに、電子電界エミッタが作動される、および/または電界放出素子に組み込まれることがある。さらに、電界放出素子がフラットパネルディスプレイに組み込まれることがある。
【0049】
本発明の主題の有利な属性および効果は、以下に説明する一連の実施例からより完全に理解することができる。実施例が基づいている本発明の方法の実施形態は例示にすぎず、本発明を説明するためにそのような実施形態を選択するとき、それは、これらの実施例で説明しない材料、条件、成分、条件、反応物、または技法がこれらの方法を実施するのに適さないことを示すものではなく、また、これらの実施例で説明しない主題が添付の特許請求の範囲および本明細書の等価箇所の範囲から除外されることを示すものでもない。
【実施例】
【0050】
実施例1
4つの異なるフィラーから、4つの異なる厚膜エミッタ組成物を作成した。それぞれに異なるフィラーが使用されたことを除いて、すべてのペーストが同じ成分ロットおよび組成のものであった。各フィラー粉末から、50重量%の粉末と50重量%の有機媒体を含むフィラー前駆ペーストを作成した。これらの前駆ペーストを最終的なペースト中に混入し、これらはすべて同じ有機媒体(媒体1−1)を使用した。各フィラー前駆ペーストを、3本ロールミル上で最大300psiでロールミル処理した。
【0051】
【表1】

【0052】
Tamei TM−50アルミナ粉末は、大明化学工業株式会社(東京)から入手した(粒径d50=0.21ミクロン)。ZrO粉末Z83−500(ロット番号FKP981)は、Fisher Scientific(Springfield NJ)から入手した(粒径d50=12.3ミクロン)。炭化チタン粉末(ロット番号D24F36)は、Johnson Matthey companyグループの一社であるAlfa Aesar(Ward Hill MA)から入手した(粒径d50=2.27ミクロン)。炭化ケイ素粉末は、Johnson Matthey companyグループの一社であるAlfa Aesar(Ward Hill MA)から入手した(粒径d50=0.31ミクロン)。
【0053】
並行して、β−テルピネオール(2.5重量%)およびエチルアセテート(96.5重量%)中のCNT(1重量%)の溶液を超音波処理することによって、エチルアセテート中のCNTのスラリを調製した。CNTは、DuPont(Wilmington DE)からの、レーザアブレーションによって形成されたカーボンナノチューブであった。β−テルピネオールおよびエチルアセテートは、標準的な試薬グレードの化学剤であった。溶媒中のCNTの混合物は、1/2インチのホーンを有するVWR Sonifier 450を用いて超音波処理した。次いで、CNTスラリを、以下の配合に従って媒体およびフィラーペーストと混合した。4つのフィラー前駆ペーストそれぞれから、別個の最終的なペースト混合物を作成した。
【0054】
【表2】

【0055】
媒体1−1は、(メタ)アクリレートモノマーと、非酸性コモノマーと酸性コモノマーのコポリマーと、光開始剤と、溶媒とを含有する、UV光によってフォトイメージングすることができる媒体であった。フィラー粉末から、50重量%のアルミナ粉末と50重量%の有機媒体(媒体1−1)からなるフィラー前駆ペーストを作成した。フィラー前駆ペーストを、3本ロールミル上で最大300psiでロールミル処理した。各厚膜ペーストを調製する際にフィラー前駆ペーストを使用し、各厚膜ペーストが同じ有機媒体(媒体1−1)を使用した。エアパージで撹拌しながらホットプレート上で混合物を加熱することによって、最終的なペースト混合物からエチルアセテートを蒸発させた。次いで、3本ロールミル上で、0psiで3回、100psiで2回、試料をロールミル処理した。
【0056】
エアパージで撹拌しながらホットプレート上で混合物を加熱することによってエチルアセテートを蒸発させた。0psiで3回、100psiで2回、試料をロールミル処理した。1と3/4インチ平方のパターンを有する325メッシュのステンレス鋼の厚膜印刷スクリーンを通して、2インチ×2インチのITO被覆基板上に試料を印刷した。スクリーンは、0.6milE−11のエマルジョンと、20ミクロンの点のパターンを有していた。試料を、500ワットで27.5秒間イメージングし、4:1のNMP:H0で90秒現像した(NMPは、Johnson Matthey companyグループの一社であるAlfa Aesar(Ward Hill MA)から市販されている1−メチル−2−ピロリジノンである)。4ゾーンのベルト炉内で、0.1重量%の酸素を含む窒素雰囲気を使用して、420℃のピーク温度で6分間、試料を焼成した。
【0057】
電界放出を改善できるように、カソード上に被覆した液体エラストマー接着剤の層を適用することによって、カソード上の焼成されたエミッタ層を作動させた。液体エラストマーのドクターブレードコーティングを使用して、厚さ40ミクロンの層を被覆した。加熱またはUV曝露によって接着剤を硬化させて固体コーティングにした。焼成された電子電界エミッタ材料と接着剤コーティングの間の相対接着性が適切なバランスになったとき、硬化した接着剤層を引き剥がすことにより、カソードから接着剤コーティングが除去され、電子電界エミッタの放出が改善された。焼成された電子電界材料の表面層を、硬化された接着剤コーティングと共に除去した。
【0058】
上述したように生成されたカソードアセンブリを、事前選択された離隔距離でアノードと組み合わせ、真空チャンバ内でそれらの間に電圧を印加して、放出電流、または特定の電流を生成するのに必要な電界を測定することによって、ダイオード試験を行った。真空チャンバ内で5分間ダイオードパネルを動作させた後、5分後の放出電流を測定した。放出電流データを表1−1および1−2に示す。放出電流は、単位がマイクロアンペアである。
【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
0.1重量%の酸素を含む窒素雰囲気中で420℃で焼成したときに、アルミナを含む組成物は、他のフィラーのいずれを含む組成物よりも高い放出電流を示した。
【0062】
実施例2
実施例2におけるエミッタペースト組成物の調製および試験は、実施例1での組成物に関して説明したものと同様である。0.1重量%の酸素を含む窒素雰囲気中で焼成したときのエミッタ電流に対する効果を実証するために、様々なレベルのアルミナをエミッタ組成物に添加した。
【0063】
使用したCNTは、DuPont(Wilmington DE)がレーザアブレーションによって形成した。フリット粉末(d50=1.2ミクロン)は、Viox Corporation(Seattle WA)製のVioxガラス#24109から形成した。フィラーA−1は、大明化学工業株式会社(東京)から入手したTamei TM−50アルミナ粉末であった(粒径はd50=0.21ミクロン)。フィラーA−2は、住友化学社(東京)から入手したアルミナ粉末AKP−20であった(d50=0.5ミクロン)。酸化インジウム(「ITO」)粉末は、Indium Corporation of America(Utica NY)からのロット番号KS5112であった。
【0064】
4ゾーンのベルト炉内で、0.1重量%の酸素を含む窒素雰囲気を使用して、420℃のピーク温度で6分間、試料を焼成した。
【0065】
実施例1で説明したようにカソードアセンブリを形成し、各試料ごとに作動させた。各カソードアセンブリを、事前選択された離隔距離でアノードと組み合わせ、真空チャンバ内でそれらの間に電圧を印加して、放出電流、または特定の電流を生成するのに必要な電界を測定することによって、ダイオード試験を行った。真空チャンバ内で5分間ダイオードパネルを動作させた後、5分後の放出電流を測定した。放出電流データを表2−1および表2−2に示す。放出電流は、単位がマイクロアンペアである。
【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
実施例2からのデータを図2にプロットする。
【0069】
0.1重量%の酸素を含む窒素雰囲気中で420℃で焼成したとき、7.5重量%以上のアルミナを含む厚膜エミッタ組成物が、所望の通りに高い放出電流を示した。
【0070】
実施例3
エミッタペースト組成物の試料を調製し、ベルト炉内で0.1重量%の酸素を含む窒素雰囲気中で焼成した。ペースト組成物の調製および試験は、実施例1での組成物に関して説明したものと同様である。
【0071】
レーザCNTは、DuPont(Wilmington DE)がレーザアブレーションによって形成した。CNI CNTは、Carbon Nanotechnologies Inc.(Houston TX)から入手した電界放出グレードの多層CNTであった。Xintek CNTは、Xintek Inc.(Chapel Hill NC)から入手した電界放出特性を有する直径の小さいCNTであった。フリット粉末(d50=1.2ミクロン)は、Viox Corporation(Seattle WA)製のVioxガラス#24109から形成した。フィラーA−2は、住友化学社(東京)からのアルミナ粉末AKP−20であった(d50=0.5ミクロン)。
【0072】
実施例1で説明したようにカソードアセンブリを形成し、各試料ごとに作動させた。4ゾーンのベルト炉内で、0.1重量%の酸素を含む窒素雰囲気を使用して、420℃のピーク温度で6分間、試料を焼成した。各カソードアセンブリを、事前選択された離隔距離でアノードと組み合わせ、真空チャンバ内でそれらの間に電圧を印加して、放出電流、または特定の電流を生成するのに必要な電界を測定することによって、ダイオード試験を行った。放出電流データを表3−1および表3−2に示す。放出電流は、単位がマイクロアンペアである。
【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
同じフィラー添加量では、アルミナフィラーを含むレーザCNTに関する放出電流は、アルミナを含まないレーザCNTまたはアルミナを含まない2つの他のCNTタイプに関する放出電流よりも高い。
【0076】
実施例4
様々な製造元からのCNTを、アルミナ粉末を含む組成物中で試験し、窒素中で焼成した。これらの結果を、空気中での焼成と比較した。窒素焼成された結果を表4−1に示す。空気中での2つの異なる温度(400℃および450℃)での焼成からのデータを、表4−1および表4−2に示す。
【0077】
フィラー粉末から、25重量%のアルミナ微粉末と75重量%の有機媒体(媒体4−1−以下参照)からなるフィラー前駆ペーストを作成した。フィラー前駆ペーストを、3本ロールミル上で最大300psiでロールミル処理した。エミッタ厚膜ペーストを調製する際にこれらのフィラー前駆ペーストを使用した。ペーストを以下の配合によって調製し、これは実施例1の処置に従った。しかし、これらのペーストは、実施例1で使用したものとは異なるフィラーおよび有機媒体成分を有していた。
【0078】
【表9】

【0079】
CNI CNTは、Carbon Nanotechnologies Inc.(Houston TX)から入手した電界放出グレードの多層CNTであった。Xintek CNTは、Xintek Inc.(Chapel Hill NC)からの電界放出特性を有する直径の小さいCNTであった。Swan CNTは、Thomas Swan & Co.Ltd.(Consett,England)からのElicarb CNT(製品整理番号PRO925)であった。フィラー(A−3)は、Allied High Tech Products(Rancho Dominguez CA)からのアルミナ粉末であった(d50=0.05ミクロン)。媒体4−1は、テルピネオール中の10%N−22エチルセルロースであった(N−22エチルセルロースは、Dow Chemical Company(Midland MI)から入手した。媒体4−2は、テルピネオール中の13%Aqualon T−200エチルセルロースであった(T−200エチルセルロースは、Hercules Inc.(Wilmington DE)から入手した)。
【0080】
厚膜ペーストを、一連の100ミクロン幅の線でスクリーン印刷によってパターン形成した。基板は、2インチ×2インチのITO被覆ガラスであった。10ゾーンのベルト炉内で、窒素雰囲気を使用して、420℃のピーク温度で20分間、試料を焼成した。
【0081】
カソード電極上でエミッタ層の上面に圧力下で接着テープを貼着し、その後、接着テープを剥離して、焼成された放出材料の上層を除去することによって、カソードアセンブリを作動させた。接着テープは、Adhesives Research(Glen Rock PA)から入手した。カソードアセンブリを、事前選択された離隔距離でアノードと組み合わせ、真空チャンバ内でそれらの間に電圧を印加して、放出電流、または特定の電流を生成するのに必要な電界を測定することによって、ダイオード試験を行った。36マイクロアンペアの電流を発生するのに必要な電界を記録した。それらのデータを表4−1、表4−2、表4−3に示す。電界は、単位がボルト/ミクロンである。
【0082】
【表10】

【0083】
10ゾーンのベルト炉内で、空気雰囲気を使用して、400℃のピーク温度で20分間、追加のカソード試料を焼成した。36マイクロアンペアの電流を発生するのに必要な電界を、単位ボルト/ミクロンで示す。
【0084】
【表11】

【0085】
10ゾーンのベルト炉内で、空気雰囲気を使用して、450℃のピーク温度で20分間、追加のカソード試料を焼成した。36マイクロアンペアの電流を発生するのに必要な電界を、単位ボルト/ミクロンで示す。
【0086】
【表12】

【0087】
エミッタ材料が400〜450℃の温度で空気または窒素中で焼成されるか、420℃で窒素中で焼成されるかに関わらず、すべてアルミナ粉末を含むこれらの組成物に関して電界は同様であった。
【0088】
実施例5
実施例1の配合および処置に従ってエミッタ厚膜ペースト組成物を形成した。表5−1および表5−2で特定される成分のみを変更した。
【0089】
レーザCNTは、DuPont(Wilmington DE)がレーザアブレーションによって形成した。フリット粉末(d50=1.2ミクロン)は、Viox Corporation(Seattle WA)製のVioxガラス#24109から形成した。フィラーA−2は、住友化学社(東京)からのアルミナ粉末AKP−20であった(d50=0.5ミクロン)。
【0090】
実施例1で説明したようにカソードアセンブリを形成し、作動させた。4ゾーンのベルト炉内で、0.1重量%の酸素を含む窒素雰囲気を使用して、420℃のピーク温度で6分間、試料を焼成した。カソードアセンブリを、事前選択された離隔距離でアノードと組み合わせ、真空チャンバ内でそれらの間に電圧を印加して、放出電流、または特定の電流を生成するのに必要な電界を測定することによって、ダイオード試験を行った。真空チャンバ内で5分間ダイオードパネルを動作させた後、5分後の放出電流を測定した。放出電流データを表5−1および表5−2に示す。放出電流は、単位がマイクロアンペアである。
【0091】
【表13】

【0092】
【表14】

【0093】
アルミナ粉末を含むエミッタペーストに関する放出電流は、フィラーとしてフリットを含む組成物に関する放出電流よりも高かった。
【0094】
ある範囲の数値を本明細書で記載して設定する場合、その範囲は、その端点と、範囲内のすべての個々の整数および分数とを含み、また、明示された範囲内の比較的大きな値群の部分群を形成するために上記の端点と端点間にある整数および分数とのすべての様々な可能な組合せによって定められるより狭い各範囲を、それらのより狭い各範囲が明示的に記載されているかのように等価に包含する。本明細書において、ある範囲の数値が明示された値よりも大きいと記述される場合、その範囲はそれにも関わらず有限であり、その上限は、本明細書で説明した本発明の文脈内で動かすことができる値によって定められる。本明細書において、ある範囲の数値が明示された値よりも小さいと記述される場合、その範囲はそれにも関わらず、その下限はゼロでない値によって定められる。
【0095】
本明細書において、使用の文脈で明示的に別段の定めがない限り、またはそうでないことが示されていない限り、本発明の主題の実施形態が特定の機能または要素を備える、特定の機能または要素を含む、特定の機能または要素を含有する、特定の機能または要素を有する、特定の機能または要素から構成される、特定の機能または要素によって構成される、特定の機能または要素からなると記述または説明される場合、明示的に記述または説明されたものに加えて、1つまたは複数の機能または要素がその実施形態に含まれることがある。しかし、本発明の主題の代替実施形態は、特定の機能または要素から本質的になると記述または説明されることがあり、それらの実施形態においては、実施形態の動作原理および際立った特徴を実質的に変える機能または要素はそこに含まれない。本発明の主題のさらなる代替実施形態は、特定の機能または要素からなると記述または説明されることがあり、それらの実施形態においては、または本発明の本質的でない変形形態においては、特に記述または説明された機能または要素のみが存在する。
【0096】
本明細書では、使用の文脈によって明示的に別段の定めがない限り、またはそうでないことが示されていない限り、本明細書で引用する量、サイズ、範囲、配合、パラメータ、および他の量および特徴は、特に用語「約」によって修正されるときには正確であることもあるがそうである必要はなく、また、公差、変換係数、丸め、測定誤差などを反映して、近似であることもあり、および/または明示された値よりも(望みであれば)大きいまたは小さいこともあり、さらに、本発明の文脈において機能および/または動作上は明示された値と等価である明示されていない値が、明示された値の範疇に含まれることもある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電子放出材料を堆積する方法であって、
(a)基板を提供するステップと、
(b)(i)カーボンナノチューブ、(ii)アルミナ粉末、および(iii)有機ビヒクルを含む成分を混合して、組成物を生成するステップと、
(c)前記基板上に、前記組成物の厚膜のパターンを堆積するステップと、
(d)空気または酸化性雰囲気中で、300℃〜550℃の間の温度で、前記厚膜のパターンを加熱するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記基板が導電性である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物の厚膜のパターンを堆積するステップの前に、前記基板上に導電体のパターンを堆積するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板が電気的に絶縁性である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物の厚膜のパターンを堆積するステップの前に、前記電気的に絶縁性の基板上に導電体を堆積するステップをさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルミナ粉末は、d50が0.01〜5ミクロンの粒径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミナ粉末は、d50が0.05〜0.5ミクロンの粒径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物中のアルミナ粉末の濃度が、全組成物の重量に対して約5〜約30重量パーセントである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物中のカーボンナノチューブの濃度が、全組成物の重量に対して約0.01〜約2重量パーセントである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物のパターンを堆積するために、前記組成物をスクリーン印刷するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物のパターンを堆積するために、前記組成物を吹き付けるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物のパターンを形成するために、前記組成物をフォトイメージングするステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、さらにコロイダルシリカを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記基板を電子電界エミッタに組み込むステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記電子電界エミッタを作動させるステップをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電子電界エミッタを電界放出素子に組み込むステップをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記電界放出素子をフラットパネルディスプレイに組み込むステップをさらに含む請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−501048(P2012−501048A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523985(P2011−523985)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/054428
【国際公開番号】WO2010/022218
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】