説明

電界放出素子における空気焼成カソードアセンブリを作製する方法

本発明は、電界放出素子用のカソードアセンブリを製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2008年8月22日に出願された米国仮特許出願第61/091,114号明細書および2008年8月22日に出願された米国仮特許出願第61/091,130号明細書の優先権を主張し、それらの特典を請求するものであり、かかる出願の各々の全内容は、この参照によりあらゆる目的のため本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、電界放出素子用のカソードアセンブリを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電界放出素子は、真空電子装置、フラットパネルコンピュータおよびテレビのディスプレイ、放出ゲート増幅器、およびクライストロンなどの種々の電子アプリケーションにおいて、ならびに照明において用いることが可能である。ディスプレイ画面は、家庭用および商用テレビ、ラップトップおよびデスクトップコンピュータ、ならびに屋内および屋外の広告および情報の提示などの幅広いアプリケーションにおいて用いられている。フラットパネルディスプレイは、多くのテレビおよびデスクトップコンピュータに見られる奥行きがある陰極線管モニタとは対照的に、厚さを1インチ以下とすることが可能である。フラットパネルディスプレイは、ラップトップコンピュータには必需品であるが、他の多くのアプリケーションについても重量およびサイズの点で利点を提供する。
【0004】
現在、ラップトップコンピュータのフラットパネルディスプレイは、小電気信号の印加により透明な状態から不透明な状態に切り替えることが可能な液晶を用いている。液晶ディスプレイの代替品として、プラズマディスプレイが提案されている。プラズマディスプレイは、帯電したガスの微小な画素セルを用いて画像を発生させ、動作に比較的大きい電力を要する。
【0005】
電子電界エミッタを含むカソードアセンブリを含む電界放出素子を、電界エミッタにより放出された電子によるボンバードメントを受けると光を放出可能な燐光体と結合させることにより、フラットパネルディスプレイを構成することが提案されている。かかるディスプレイは、従来の陰極線管の視覚的表示の利点を、他の種類のフラットパネルディスプレイの奥行き、重量、および電力消費の利点とともに提供する潜在性を有する。米国特許第4,857,799号明細書および米国特許第5,015,912号明細書は、タングステン、モリブデン、またはシリコンで構成された微小な先端を有するエミッタを用いるマトリクスアドレス型フラットパネルディスプレイを開示している。国際公開第94/15352号パンフレット、国際公開第94/15350号パンフレット、および国際公開第94/28571号パンフレットは、カソードアセンブリが比較的平坦な放出面を有するフラットパネルディスプレイを開示している。
【0006】
電界放出は、2種類のカーボンナノチューブ構造において観測されている。Chernozatonskiiらは、Chem.Phys.Letters 233(1995)63およびMat.Res.Soc.Symp.Proc.359(1995)99において、10−5〜10−6torr(1.3×10−3〜1.3×10−4Pa)の雰囲気中でグラファイトの電子蒸着により様々な基板上にカーボンナノチューブ構造の膜を発生させている。これらの膜は、互いに隣り合って起立している整列されたチューブ状カーボン分子から成る。2種類のチューブ状分子が形成されている。すなわち、直径10〜30nmのフィラメント束を形成する単層のグラファイト状の細管を含む構造を有するA−チューブライトと、尖円状またはドーム状のキャップを有する直径10〜30nmの概ね多層のグラファイト状のチューブを含むB−チューブライトとである。Chernozatonskiiらは、これらの構造の表面から相当な電界電子が放出されることを報告しており、それをナノ寸法の先端に電界が高度に集中することに帰している。
【0007】
Rinzlerらは、Science 269(1995)1550において、カーボンナノチューブからの電界放出は、ナノチューブの先端がレーザ蒸着または酸化エッチングにより開かれると高められることを報告している。Zettlらは、米国特許第6,057,637号明細書において、一定量のバインダとバインダに懸濁された一定量のBナノチューブ(x、y、およびzはホウ素、炭素、および窒素の相対比を示す)とを含む電子放出物質を開示している。
【0008】
ChoiらによるAppl.Phys.Lett.75(1999)3129およびChungらによるJ.Vac.Sci.Technol.B 18(2)は、有機バインダ中で単壁カーボンナノチューブを用いる4.5インチフラットパネル電界ディスプレイの製作について報告している。ペーストを押し込んで金属メッシュを通過させることにより、表面を擦ることにより、および/または電界により調整することにより、単壁カーボンナノチューブを垂直に整列させている。また、多壁カーボンナノチューブディスプレイも作成されている。スラリを押し込むおよび表面を擦る手法を用いて、良好な均一性を有するカーボンナノチューブ電子放出物質を開発したと述べられている。エミッタの最上面から金属粉末を除去し、表面処理によりカーボンナノチューブを整列させることにより、放出が高められることが見出されている。単壁カーボンナノチューブは、多壁カーボンナノチューブよりも良好な放出特性を有することが見出されているが、単壁カーボンナノチューブ膜が示す放出安定性は、多壁カーボンナノチューブ膜よりも低かった。
【0009】
Yunjun Liらは、米国特許出願第07/117,401号明細書において、電界放出素子を作成するため印刷プロセスによりインクとして投与することができるカーボンナノチューブの組成物を開示している。インク組成物の投与後、1つ以上のステップにおいて一定の温度型で素子を加熱することで、素子を乾燥させ、焼き付けし、および/または焼成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、電子電界エミッタにおけるカーボンナノチューブなどの針状電子放出物質の商業的使用を可能にする技術に対して、継続的なニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態において、本発明は、(a)基板を提供するステップと、(b)カーボンナノチューブを有機ビヒクルと混合して組成物を形成するステップと、(c)基板上に組成物の厚膜のパターンを堆積させるステップと、(d)空気または酸化性雰囲気中で300℃〜550℃の温度で厚膜のパターンを加熱するステップとにより、基板上に電子放出物質を堆積させる方法に関連する。
【0012】
代替の実施形態において、上記の方法は、熱化学蒸着カーボンナノチューブを有機ビヒクルと混合して組成物を形成するステップ;または熱化学蒸着により得られるカーボンナノチューブを提供するステップおよびカーボンナノチューブを有機ビヒクルと混合して組成物を形成するステップ;または熱化学蒸着プロセスにより作製されたカーボンナノチューブを提供するステップおよびカーボンナノチューブを有機ビヒクルと混合して組成物を形成するステップを含んでもよい。
【0013】
さらなる実施形態において、本発明は、(a)基板を提供するステップと、(b)(i)熱化学蒸着により作製された薄壁カーボンナノチューブおよび(ii)有機ビヒクルを含む成分を混合して組成物を形成するステップと、(c)基板上に組成物の厚膜のパターンを堆積させるステップと、(d)空気または酸化性雰囲気中で300℃〜550℃の温度で厚膜のパターンを加熱するステップとにより、基板上に電子放出物質を堆積させる方法を提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、上記の方法のいずれかにより得られるまたは得ることが可能な電界エミッタ、カソード、カソードアセンブリ、電界放出素子、またはフラットパネルディスプレイを提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、(i)熱化学蒸着により作製された薄壁カーボンナノチューブおよび(ii)有機ビヒクルを含む組成物を提供する。
【0016】
カーボンナノチューブは、厚膜ペーストに含有されている。好適な実施形態において、ペーストは、さらに、アルミナ粉末を含む。ペーストは、ペーストに組み込まれる熱化学蒸着により作製された薄壁カーボンナノチューブを提供することにより調製される。結果的に得られる厚膜組成物は、カソードアセンブリ製造プロセス中に空気中または酸化性雰囲気中で加熱してもよい。CVDカーボンナノチューブおよびオプションでアルミナ粉末から調製されたペーストから印刷された膜は、窒素中もしくは他の不活性雰囲気中、または真空中で加熱する必要がなく、カーボンナノチューブにより提供される放出電流の劣化が回避される。本明細書の組成物は、劣化を伴わずに空気中または酸化性雰囲気中で300℃〜550℃まで加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】三極管表示素子用のフルスクリーン印刷電界放出カソードを形成する層を示す。
【図2】空気中で450℃で焼成されたカーボンナノチューブを含有する厚膜エミッタ組成物についてのカーボンナノチューブ種類の関数として二極管放出電流を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、カソードアセンブリにおける電子電界エミッタ中にカーボンナノチューブ(「CNT」)などの針状炭素電子放出物質を含有するカソードアセンブリを製作する方法に関連する。電子放出物質に加え、電子電界エミッタは、オプションの成分として、アルミナなどの金属酸化物を含む無機フィラー粉末;ガラスフリット;および金属粉末もしく金属塗料;またはそれらの2つ以上の混合物を含有してもよく、これらのすべてを以下でより詳細に説明する。
【0019】
電子電界エミッタ中の本明細書において用いる針状炭素電子放出物質は、様々な種類とすることが可能である。針状物質は、10以上のアスペクト比を有する粒子により特徴付けられる。放出物質としては、単壁、二重壁、多壁、または薄壁カーボンナノチューブが特に好適である。個々のカーボンナノチューブは、極めて小さく、典型的には直径約1.5nmである。カーボンナノチューブは、主としてその内部にsp混成炭素が存在することに照らして、時としてグラファイト状であると説明される。カーボンナノチューブの壁は、グラフィンシートを巻くことにより形成される円筒として想定することが可能である。また、異なる種類のカーボンナノチューブの混合物を用いてもよい。
【0020】
CNTが本発明において用いる好適な針状炭素電子放出物質であるが、代替の実施形態では、ポリアクリロニトリルベース(PANベース)炭素繊維およびピッチベース炭素繊維などの様々な種類の炭素繊維を含む、他の針状炭素放出物質を用いてもよい。本明細書において有用な炭素繊維は、小金属粒子による炭素含有ガスの触媒分解から成長したものを含み、かかる繊維は、典型的には、炭素繊維の周縁が本質的にグラフィン板状体の縁から成るように、繊維軸に対して一定の角度で編成されたグラフィン板状体を有する。角度は、鋭角または90度とすることができる。
【0021】
上記のような針状炭素電子放出物質の高いアスペクト比および鋭い曲率半径により、エミッタの先端における印加電位に対して高い電界を発生させることが可能である。これにより、高い電界放出電流を発生させることが可能である。針状炭素物質は、例えば、有機ビヒクルを含有しオプションでアルミナ粉末も含有する厚膜に含有されてもよい。厚膜を基板に塗布することにより、基板に電子放出物質をパターン化して付着させ、その位置を基板上で固定し、要求される電位への導電性を放出物質に供給することが簡便になされる。スクリーン印刷などの手法により放出物質を含有する厚膜のパターンを堆積させた後、厚膜のパターンを加熱して、厚膜を凝固させ、有機ビヒクルの揮発性成分を除去する。
【0022】
上記の厚膜プロセスなどにより形成された電子電界エミッタは、電界放出素子用のカソードアセンブリの一部として製作してもよい。本発明において用いるのに適したカソードアセンブリの1つの設計を図1に示し、かかる図は、三極管放出素子用のスクリーン印刷された電界放出カソードアセンブリを形成する層を示している。層1は、ガラス基板であり;層2は、基板に接触するパターン化されたカソード電極であり;層3は、層2に接触するバイア開口を有する誘電体層であり;層4は、誘電体層の上部に接触するゲート電極であり;層5は、誘電体層のバイアの内側のドットとして印刷された電子放出物質である。
【0023】
上記のような電界放出カソードアセンブリを製作するため、まず、基板を提供する。基板は、好ましくは電気絶縁体であるか電気的に絶縁性であってもよく、ペースト組成物が付着するいずれの物質とすることも可能である。塗布される厚膜ペーストが非導電性であり、非導電性基板が用いられるのであれば、カソード電極として供されるとともに電子放出物質に電圧を提供する導電体の膜が必要とされる。基板として供されることが可能な物質の例には、シリコン、ガラス、金属、またはアルミナなどの耐火物質がある。表示アプリケーションの場合、ガラス基板が好ましく、ソーダ石灰ガラスが特に好適である。ガラス上の導電性を最適にするため、空気中または窒素中、好ましくは空気中で、400〜550℃で銀ペーストをガラス上に事前に焼成することが可能である。次いで、このようにカソード電極として形成された導電層に、放出物質を含有するペーストを重ねて印刷する。
【0024】
しかし、代替の実施形態では、基板は導電性であってもよい。
【0025】
この段階で、パターン化されたカソード電極上に、パターン化された誘電体層をスクリーン印刷し、パターン化し、焼成することができる。次に、誘電体層上に、パターン化された導電性ゲート電極層をスクリーン印刷し、パターン化し、焼成することができる。ゲート電極は、噴霧、スパッタリング、またはいずれの標準的な堆積プロセスなどの種々の手法により堆積させることができる。代替として、ゲート電極は、後の段階においてカソードアセンブリの上部に配置されるメッシュの形態で提供してもよい。
【0026】
次のステップでは、導電体のパターン上に、電子放出物質、有機ビヒクル、およびオプションでアルミナ粉末を含有する厚膜ペースト組成物のパターンを堆積させる。三極管カソードアセンブリの場合は、この厚膜ペーストを、典型的には誘電体層におけるバイア内に堆積させる。誘電体層およびゲート層を有さない二極管カソードアセンブリの場合は、厚膜ペーストを、基板に接触するパターン化された導体(すなわち、カソード電極)上に堆積させる。有機ビヒクルは、スクリーン印刷可能であってもよいし、光重合可能であってもよい。パターン化された厚膜としてのペーストの塗布は、スクリーン印刷もしくはステンシル印刷、光画像形成、インクジェット堆積、またはいずれの標準的な堆積プロセスにより行ってもよい。
【0027】
スクリーン印刷に用いられる厚膜ペーストは、典型的には、電子放出物質に加え、有機媒体;溶媒;界面活性剤;オプションで低軟化点ガラスフリット、金属粉末、もしくは金属塗料、またはそれらの混合物のいずれか;およびオプションでアルミナ粉末を含有する。電子電界エミッタを形成することができる厚膜ペーストは、典型的には、ペーストの総重量に対して約5wt%〜約80wt%の固体を含有する。これらの固体は、典型的には、電子放出物質、ならびにガラスフリットおよび/または金属成分、ならびにオプションでアルミナ粉末を含む。組成を変化させることにより、粘度および印刷される膜の最終的な厚さを調節することが可能である。
【0028】
厚膜ペースト中にアルミナ粉末が存在する場合、純度が高く、粒子サイズが小さいのが好ましい。例えば、d50は、約0.01〜約5ミクロンであり、好ましくは約0.05〜約0.5ミクロンである(d50は粉末粒子の中央粒径を表す)。これらの範囲内の粒子サイズを組み合わせて用いてもよい。厚膜ペースト中にアルミナ粉末が存在する場合、厚膜ペーストの組成物は、ペースト組成物のすべての成分の総重量に対して、約0.001wt%〜約10wt%、または約0.01wt%〜約6.0wt%のカーボンナノチューブと、約0.1wt%〜約40wt%、または約1.0wt%〜約30wt%、または約5wt%〜約24wt%のアルミナ粉末とを含有してもよい。アルミナフィラー粉末に追加のフィラーの種類を組み合わせることも可能である。
【0029】
スクリーン印刷可能なペーストとして用いられる好適な組成物は、ペースト中のすべての固体の総重量に対して、固体におけるカーボンナノチューブの含有量が約9wt%未満、または約5wt%未満、または約1wt%未満、または約0.01wt%〜約2wt%の範囲である。
【0030】
厚膜ペースト組成物中の媒体および溶媒は、ペースト中の粒子状構成成分を懸濁および分散させるために用いられる、すなわち、ペースト中の固体に、スクリーン印刷などの典型的なパターン化プロセスに適した流動性、粘性、および揮発性が提供される。ペースト中で有機媒体として用いるのに適した物質の例には、エチルセルロースなどのセルロース樹脂および様々な分子量のアルキド樹脂が含まれる。ペースト中で溶媒として用いるのに適した物質の例には、脂肪族アルコール;かかるアルコールのエステル(例えばアセテートおよびプロピオナート等);パイン油およびアルファ−もしくはベータ−テルピネオールまたはそれらの混合物などのテルペン;エチレングリコールおよびそれらのエステル(エチレングリコールモノブチルエーテルおよびブチルセロソルブアセテート等);ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジブチルカルビトール、ジブチルフタレートなどのカルビトールエステル;ならびにTexanol(登録商標)(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチラート)が含まれる。ペースト中の粒子の分散を向上させるために用いるのに適した界面活性剤の例には、オレイン酸およびステアリン酸などの有機酸ならびにレシチンなどの有機リン酸塩が含まれる。
【0031】
厚膜ペーストに光画像形成が行われる場合、ペーストは、典型的には、光開始剤、現像可能なバインダ;例えばアクリレートおよび/もしくはスチレン化合物を含む重合可能なエチレン性不飽和化合物などの光硬化可能な単量体;ならびに/または炭素数1〜10のアクリル酸アルキル、炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル、スチレン、置換スチレン、もしくはそれらの組み合わせなどの非酸性コモノマー、および部分を含有するエチレン性不飽和カルボン酸などの酸性コモノマーから調製された共重合体を含有してもよい。光開始剤系は、化学線放射により活性化されると遊離基を直接供給する1つ以上の化合物を有する。本明細書において用いるのに適した光開始剤の例には、ベンゾフェノン、ミヒラーのケトン、p−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、多核キノン、チオキサントン、ヘキサアリールビイミダゾール、α−アミノケトン、シクロヘキサジエノン、ベンゾイン、およびベンゾインジアルキルエステルが含まれる。また、光開始剤系は、化学線放射により活性化されるとスペクトル応答を可視域に向けてまたは可視域に広げかつ遊離基を供給する光開始剤系にエネルギーを伝達する増感剤を含有してもよい。増感剤の例には、ビス(p−ジアルキルアミノベンジリデン)ケトン(米国特許第3,652,275号等に記載)およびアリリデンアリールケトン(米国特許第4,162,162号等に記載)が含まれる。
【0032】
厚膜ペーストは、典型的には、電子放出物質;有機媒体;界面活性剤;溶媒;無機金属酸化物粉末、他の不活性(耐火)フィラー粉末、低軟化点ガラスフリット、金属粉末、金属塗料、またはそれらの混合物;およびオプションでアルミナ粉末の混合物を3ロールミルで混練することにより調製される。ペースト混合物は、例えば165〜400−メッシュステンレス鋼スクリーンを用いることにより、周知のスクリーン印刷手法を用いてスクリーン印刷することが可能である。ペーストは、連続的な厚膜または所望されるパターンの形態で堆積させることが可能である。
【0033】
カーボンナノチューブは、本明細書の発明において用いるのに好適な電子放出物質である。本明細書において用いるのに適したCNTには、SmalleyらによりScience 273(1996)483およびChem.Phys.Lett.243(1995)49において;ならびにPopovによりMater.Sci.Eng.R.43(2004)61において記載されたものなどの、レーザアブレーションにより作成されたものが含まれる。しかし、好適な実施形態では、熱化学蒸着(「CVD」)法により成長させたCNTを、厚膜ペーストを提供するために組成物に組み込まれる電子放出物質として用いる。熱化学蒸着は、時として、熱触媒化学蒸着または熱化学蒸気分解とも呼ばれる。その結果、本文書の目的のため、熱化学蒸着についての参照または記述は、熱触媒化学蒸着または熱化学蒸気分解についての参照または記述とも解され、その逆方向にも解されるものとする。
【0034】
カーボンナノチューブを作成するための熱CVDプロセスは、脱水素反応においてガス状炭化水素フィードを分解して炭化水素を炭素および水素に分解することにより行うことができる。好適なフィードガス炭化水素には、メタン、エチレン、およびアセチレンが含まれる。反応は、鉄、ニッケル、またはコバルトなどの遷移金属ナノ粒子を触媒として用いて行われる。触媒は、メソ多孔性シリカ、グラファイト、ゼオライト、MgO、またはCaCOなどの基板上に支持してもよい。反応は、約5〜約60分間、または約20〜約30分間、約550℃〜約1000℃、または約750℃〜約850℃の範囲の温度の炉内で行ってもよい。プロセスは、静的環境において、流動床において、またはベルト炉で行ってもよい。続いて、カーボンナノチューブを精製するのが通常であり、かつ有益である。カーボンナノチューブを作成するための熱CVDプロセスの他の態様は、PopovによりMater.Sci.Eng.R.43(2004)61において、およびHarrisによりInd.Eng.Chem.Res.46(2007)997において記載されている。
【0035】
本明細書において用いるのに適した熱CVDカーボンナノチューブには、例えば、Xintek、Swan、CNI、およびCOCCから得られるものが含まれる。Xintek CNTは、Xintek,Inc.,Chapel Hill NCから得られる小径CNTである。Swan CNTは、Thomas Swan&Co.Ltd.,Consett,Englandから得られるElicarb CNT(製品参照番号:PRO925)である。CNI CNTは、Carbon Nanotechnologies Inc.,Houston TXから得られる多壁CNTである。COCC CNTは、Chengdu Chemical Company of Chengdu(COCC),Chengdu,Chinaから得られる薄壁カーボンナノチューブである。
【0036】
熱CVDカーボンナノチューブは、典型的には、約1.4nm〜約5ナノメートルよりも大きい外径を有する薄壁カーボンナノチューブである。かかるカーボンナノチューブは、典型的には、最大で10個の壁を含む薄壁の多壁カーボンナノチューブである。薄壁CNTの透過電子顕微鏡(TEM)画像は、壁の個数が2〜10の範囲であり、単壁CNTがごくわずかに存在することを示す。しかし、異なる種類の熱CVDカーボンナノチューブの混合物を用いてもよい。
【0037】
レーザアブレーションが施されたCNTは、主として約1.2〜約1.4(ナノメートル)未満の直径を有する単壁CNTである。レーザCNTのキラリティは、主として10、10(すなわち、n=10およびm=10がチューブのキラリティとなる)であり、チューブは、主として金属(半導体に対して)の性質を有する。
【0038】
本明細書のカソードアセンブリを作製する方法の次のステップは、上記のように基板に塗布されたパターン化された厚膜ペーストを、空気中または別の酸化性雰囲気中で約300℃〜約550℃の範囲の温度で加熱するステップである。酸化性雰囲気とは、酸素および/または他のガス状酸化剤を含有するガスまたはガスの混合物である。ガス状酸化剤の例には、オゾン、一酸化二窒素、および塩素があるが、酸素が断然最も一般的かつ実用的な酸化剤である。酸化性雰囲気は、約100ppm、約0.1重量%、または約100重量%、およびそれら値の間の範囲内の値などの幅広く変化する量の酸化剤を含有してもよい。用いられる最も一般的な酸化性雰囲気は、典型的には21容量パーセントが酸素である空気である。
【0039】
ペーストの層が堆積されたカソードアセンブリの層を加熱して、典型的には約10〜約60分間、ピーク温度でペーストを硬化させる。基板がガラスである場合は、空気または他の酸化性雰囲気中で約30分間、約350℃〜約550℃、または約400℃〜約475℃の温度でアセンブリを焼成してもよい。より高い焼成温度に耐え得る基板では、最高で約525℃の焼成温度を用いることが可能である。しかし、ペースト中の有機構成成分は、約350〜約400℃で効果的に揮発し、それにより、針状炭素、含まれる場合は無機金属酸化物粉末(アルミナ粉末等)、他の不活性(耐火)フィラー粉末、フィラーガラスおよび/または金属導体、ならびに非晶質炭素を含有する組成物の層が残される。300℃を下回る焼成温度では、通常、有機ビヒクルの除去が不完全となる。550℃を上回る焼成温度では、電子電界エミッタの性能が劣化し得る。さらに高い温度では、基板が作製される物質の熱特性によっては基板が変形し得る。
【0040】
また、焼成は、約300℃以上、または約325℃以上、または約350℃以上、または約375℃以上、または約400℃以上、または約425℃以上、または約450℃以上、または約475℃以上、または約500℃以上、または約525℃以上の温度、さらに、約550℃以下、または約525℃以下、または約500℃以下、または約475℃以下、または約450℃以下、または約425℃以下、または約400℃以下、または約375℃以下、または約350℃以下、または約325℃以下の温度で行ってもよい。
【0041】
一般に、レーザアブレーションCNTを含有するものなどの厚膜ペーストは、従来、温度が約300℃を超えるときに、窒素中もしくは他の不活性雰囲気中、または真空中で加熱されていた。不活性雰囲気または真空を提供する場合は、チャンバが要求され、従ってカソードアセンブリ製造方法の複雑さおよびコストが増加するため望ましくない。しかし、従来の厚膜ペーストを不活性雰囲気または真空中で加熱しない場合は、電界エミッタの性能が典型的には劣化するという不利益があり、このような結果は、約100ppm〜約0.1wt%の範囲などの非常に低レベルの酸素が雰囲気中に存在するときであっても現れ得る。電界エミッタの性能における劣化は、放出電流の減少もしくは動作電界の増加またはそれらの両方の形態を取り得る。
【0042】
しかし、本発明の方法では、カソードアセンブリの製作は、電子電界エミッタの性能における劣化を生じさせることなく、空気または他の酸化性雰囲気の存在下で300℃を超える温度まで厚膜ペーストを加熱するステップを含むことができる。すなわち、本明細書におけるような300℃を超える温度での酸素焼成により得られる電界エミッタの性能は、300℃未満での酸素焼成または300℃超の不活性雰囲気中での焼成のいずれかによる従来の電界エミッタから得られる性能と少なくとも同程度に良好である。本明細書のカソードアセンブリの電界エミッタでは、厚膜ペースト中の熱CVDカーボンナノチューブおよび/またはアルミナ粉末の存在により、空気または他の酸化性雰囲気の存在下で300℃を超える温度までの加熱に耐える物質が提供されるため、低い動作電界において高い放出電流を発生させるその能力が保持される。
【0043】
光画像形成可能な銀、誘電体物質、および上記のように調製されたカーボンナノチューブ/銀エミッタペーストを用いて、図1に示す概略設計を有する厚膜ベース電界放出三極管アレイを構成することができる。図1に示す電界放出三極管(「通常のゲート三極管」)では、ゲート電極が、電子電界エミッタであるカソードと、アノードとの間に物理的に配置されている。かかる設計におけるゲート電極は、カソードアセンブリの一部であると考えられる。カソードアセンブリは、基板の表面上に堆積された第1の層としてのカソード電流フィードから成る。円形状またはスロット状のバイアを含む誘電体層が、素子の第2の層を形成する。バイア内の導電性カソードに電子放出物質の層が接触し、その厚さは、誘電体層の基部から上部まで及び得る。誘電体上に堆積されるが電子放出物質に接触していないゲート電極層が、カソードアセンブリの上層を形成する。好ましくは、カソードアセンブリにおいて、バイアの直径、誘電体の厚さ、およびゲートと電子放出物質との間の距離の寸法は、三極管の低電圧スイッチングの最適化が達成されるように最小化される。
【0044】
図1に示す三極管アレイ用のカソードアセンブリは、以下のステップにより製作することができる:
(a)基板上に光画像形成可能な銀カソード層を印刷し、銀カソード層を光画像形成および現像し、次いでそれを焼成して基板上に銀カソードフィード線を形成するステップ;
(b)銀カソードフィード線および露出した基板の上部に光画像形成可能な電子電界エミッタ層を印刷し、銀カソードフィード線上でドット状、矩形状、または線状に電子電界エミッタ層を光画像形成および現像するステップ;
(c)銀カソードフィード線および電子電界エミッタ層の上部に誘電体物質の1つ以上の均一な光画像形成可能な層を印刷し、誘電体を乾燥させるステップ;
(d)誘電体層の上部に光画像形成可能な銀ゲート線の層を印刷し、この銀ゲート線の層を乾燥させるステップ;
(e)バイアまたはスロットのパターンを含むフォトマスクを用いて単一の露光で銀ゲートと誘電体層との両方を画像形成し、内部に電子電界エミッタ層が形成されたドット、矩形、または線の上部にバイアを直接配置するステップ;
(f)銀ゲートおよび誘電体層を現像してバイアの基部における電子電界エミッタ層を露わにし、上記の条件下で電子電界エミッタ、誘電体、および銀ゲート層をともに焼成するステップ。
【0045】
上記のステップ(b)において、電子電界エミッタ層のドット、矩形、または線のサイズが最終的なバイアの寸法よりもはるかに大きい場合は、後の誘電体およびゲート層の整列を簡略化することが可能である。代替として、この電子電界エミッタ層は、スクリーン印刷がアレイの所望されるピッチ密度で行うことが可能でありかつ光画像形成可能なエミッタペーストの使用を要求しない場合は、単純なスクリーン印刷により製作してもよい。ステップ(d)において、ピッチ密度が高すぎて銀ゲート線を印刷できない場合は、光画像形成可能な銀の均一な層を印刷し、後に画像形成ステップ(e)において銀ゲート線およびバイアのパターンを有するマスクを用いて線を形成することが可能である。
【0046】
上記のプロセスにおいて、光画像形成可能な厚膜が用いられる場合は、整列ステップを行うことなく、ゲート、バイア、および電子電界エミッタの成分を完璧でないにしても良好に位置合わせすることが可能である。より重要なこととして、このプロセスにより、ゲートからエミッタまでの離隔の最小化を達成しつつ、同時にゲート層と電子電界エミッタ層との間の短絡の形成が防止される。
【0047】
好適であるが必須でない次のステップとして、カソードにおいて用いられる物質の他の要件によっては、カソードアセンブリを2つの方法の一方により活性化させてもよい。第1の方法は、カソード電極上の放出物質の層の上面に粘着テープを圧着するステップと、続いてテープを剥がして放出物質の上層を除去するステップとによる。第2の活性化方法は、放出物質の上面に液状エラストマ接着剤を塗布するステップと、熱もしくはUV照射またはそれらの両方により接着剤を硬化させるステップと、続いて接着剤を剥がして放出物質の上層を除去するステップとによる。いずれの活性化方法においても、活性化ステップは、放出物質の焼成後に行うのがより一般的である。本明細書における1つの好適な厚膜ペースト組成物は、カーボンナノチューブ、オプションのアルミナ粉末、および有機ビヒクルを含有するが、他の実施形態では、組成物にコロイド状シリカなどの追加の無機粉末を追加することにより、カーボンナノチューブの優れた粘着性が提供される。
【0048】
カソードアセンブリの製作および活性化後、カソードアセンブリはアノードと結合され、それらはともに封止されたパネルの上部および底部を構成する。この段階で、カソードアセンブリ上にゲートが設けられていなければ、カソードアセンブリおよびアノードがパネルに封止される前にカソード電極上に配置された別個のグリッドとしてゲートを追加してもよい。典型的には、封止ガラスを用いて封止ガラスが軟化する温度(500℃付近に達し得る)でパネルを封止する。封止中および封止後、パネルに対して排気することにより真空を生成する。また、要求される真空を得るためにゲッタを用いてもよい。
【0049】
このように、本発明は、さらに、厚膜ペーストが堆積およびパターン化された基板、またはかかる基板を含むカソードアセンブリを、電子電界エミッタに組み込むステップを含む。そして、電子電界エミッタを活性化させてもよく、および/または電界放出素子に組み込んでもよい。そして、電界放出素子をフラットパネルディスプレイに組み込んでもよい。
【0050】
以下で説明する一連の実施例から、本明細書の主題の有益な特質および効果を十二分に理解することができる。実施例が基づく本明細書の方法の実施形態は、代表的なものに過ぎず、本発明を説明するそれらの実施形態における選択は、これらの実施例において説明されていない物質、条件、成分、型、反応物、もしくは手法がこれらの方法の実施に適さないこと、またはこれらの実施例において説明されていない主題が付帯の請求項およびその均等物の範囲から除外されることを示すものではない。
【実施例】
【0051】
実施例1
5つの異なるカーボンナノチューブから5つの異なる厚膜エミッタ組成物を作製した。各ペースト組成物中で異なるナノチューブを用いたことを除いて、すべてのペーストは同じ原料ロットおよび組成物を有するものとした。5つの異なるソースからのCNTを評価した。レーザCNTは、DuPontによりレーザアブレーションにより生成されたものを用いた。Xintek CNTは、Xintek,Inc.,Chapel Hill NCから得た小径CNTを用いた。Swan CNTは、Thomas Swan&Co.Ltd.,Consett,Englandから得たElicarb CNT(製品参照番号:PRO925)を用いた。CNI CNTは、Carbon Nanotechnologies Inc.,Houston TXから得た多壁電界放出グレードCNTを用いた。COCC CNTは、Chengdu Chemical Company of Chengdu,Chengdu,Chinaから得た薄壁カーボンナノチューブを用いた。
【0052】
カーボンナノチューブ粉末の各々から、1wt%がカーボンナノチューブ、2.5wt%がベータ−テルピネオール、および96.5wt%が酢酸エチルである超音波処理されたスラリを作製した。このスラリを、すべて同じ有機媒体を用いる最終的なペーストに組み込んだ。ベータ−テルピネオールおよび酢酸エチルは、標準的な試薬グレード化学物質を用いた。溶媒中のCNTの混合物には、1/2インチのホーンを有するVWRソニファイア450で超音波処理を施した。次いで、CNTスラリを、以下の配合により媒体およびフィラープレペーストと混ぜ合わせた。5つのCNTの種類の各々から、別々の最終的なペースト混合物を作製した。
【0053】
【表1】

【0054】
媒体1−1は、(メタ)アクリレート系単量体;非酸性コモノマーおよび酸性コモノマーの共重合体;光開始剤;ならびに媒体を含有する、UV光により光画像形成することが可能な媒体である。フィラー粉末から、50wt%がアルミナ粉末で50wt%が有機媒体(媒体1−1)であるフィラープレペーストを作製した。フィラープレペーストを、最大300psiで3ロールミルでロール混練した。フィラープレペーストを用いて各厚膜ペーストを調製し、厚膜ペーストの各々に同じ有機媒体(媒体1−1)を用いた。空気パージとともに攪拌しながらホットプレート上で混合物を加熱することにより、最終的なペースト混合物から酢酸エチルを蒸発させた。次いで、0psiで3回、100psiで2回、3ロールミルで試料をロール混練した。
【0055】
基板は、上部にパターン化されたレジストの層を有する2インチ×2インチのITO被覆基板を用いた。レジスト層には、20ミクロンのバイアのパターンを用いた。1・3/4インチの正方形のパターンを有する325メッシュステンレス鋼厚膜印刷スクリーンにより試料を印刷した。スクリーンには、0.6milのE−11乳剤を施した。試料は、27.5秒間、500ワットで画像形成し、90秒間、4:1のNMP対HO比で現像した(NMPは、Johnson Matthey companyのAlfa Aesar,Ward Hill MAから入手可能な1−メチル−2−ピロリジノンである)。現像された部分には、20ミクロンのドットのエミッタペーストパターンが設けられた。試料は、空気雰囲気を用いて20分間、450℃のピーク温度で10ゾーンベルト炉において焼成した。
【0056】
カソード上に被覆される液状エラストマ接着剤の層を塗布することにより、カソード上の焼成されたエミッタ物質を活性化させて、電界放出を向上させた。液状エラストマをドクターブレードコーティングすることにより、厚さ40ミクロンの層を被覆した。加熱またはUV露光により、接着剤物質を堅い被覆に硬化させた。焼成された電子電界エミッタ物質と接着剤被覆との間の相対的な接着力が適正に平衡化されると、硬化した接着剤層を剥離することによりカソードから接着剤被覆が除去され、電子電界エミッタの放出が向上する。焼成された電子電界物質の表面層は、硬化した接着剤被覆とともに除去された。
【0057】
説明したように作製される部分が、カソードアセンブリである。カソードアセンブリを所定の離隔距離でアノードと結合させ、真空チャンバ内でそれらの間に電圧を印加することにより二極管試験を行い、放出電流、または特定の電流を発生させるために必要な電界を測定した。二極管パネルを真空チャンバ内で5分間動作させた後に、5分放出電流を測定した。放出電流データを表1−1に提示し、図2に示す。放出電流は、マイクロアンペアで表している。
【0058】
【表2】

【0059】
空気雰囲気中で450℃で焼成されると、触媒熱化学蒸着により作製された薄壁カーボンナノチューブであるCOCC CNTを含有する組成物は、他のいずれのCNTを含有する組成物よりも高い放出電流を示した。
【0060】
窒素焼成の結果を表4−1に示す。次の2つの表(表4−1および表4−2)は、空気中で2つの異なる温度(400℃および450℃)で行われた焼成のデータを提示している。
【0061】
実施例2
異なるソースからのCNTを、アルミナ粉末を有し窒素中で焼成された組成物で試験した。
【0062】
フィラー粉末から、25wt%がオプションの微細アルミナ粉末で75wt%が有機媒体(媒体2−1:下記参照)であるフィラープレペーストを作製した。フィラープレペーストを、最大300psiで3ロールミルでロール混練した。これらのフィラープレペーストを用いて、エミッタ厚膜ペーストを調製した。ペーストは、実施例1の手順に従い、下記の配合により調製した。しかし、これらのペーストには、実施例1において用いたものとは異なるフィラーおよび有機媒体の原料を用いた。
【0063】
【表3】

【0064】
レーザCNTは、DuPontによりレーザアブレーションにより生成されたものを用いた。CNI CNTは、Carbon Nanotechnologies Inc.,Houston TXの多壁電界放出グレードCNTを用いた。Xintek CNTは、Xintek,Inc.,Chapel Hill NCの電界放出特性を有する小径CNTを用いた。Swan CNTは、Thomas Swan&Co.Ltd.,Consett,EnglandのElicarb CNT(製品参照番号:PRO925)を用いた。COCC CNTは、Chengdu Chemical Company of Chengdu,Chengdu,Chinaの薄壁カーボンナノチューブを用いた。微細アルミナ粉末は、Allied High Tech Products,Rancho Dominguez CAのもの(d50=0.05ミクロン)を用いた。
【0065】
媒体2−1は、The Dow Chemical Company,Midland MIのテルピネオール中の10%のN−22エチルセルロース溶液を用いた。媒体2−2は、Hercules Inc.,Wilmington DEのテルピネオール中の13%のAqualon T−200エチルセルロース溶液を用いた。
【0066】
厚膜ペーストは、スクリーン印刷によりパターン化した。一連の幅100ミクロンの線のパターンを印刷した。基板は、2インチ×2インチのITO被覆基板を用いた。試料は、窒素雰囲気を用いて20分間、420℃のピーク温度で10ゾーンベルト炉において焼成した。
【0067】
実施例1において説明したように、カソードアセンブリを作製し、活性化させた。カソードを事前に選択された離隔距離でアノードと結合させ、真空チャンバ内でそれらの間に電圧を印加することにより二極管試験を行った。36マイクロアンペアの電流を生成するために必要な電界を記録し、データを表2−1、表2−2、および表2−3に示す。電界は、ミクロン当たりのボルトで表している。
【0068】
窒素中で420℃で焼成されたカソードアセンブリについての結果を表2−1に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
レーザチューブについての電界は、他のいずれのカーボンナノチューブよりも高かった。COCCについての電界が最も低かった。
【0071】
空気雰囲気を用いて20分間、400℃のピーク温度で10ゾーンベルト炉において追加のカソード試料を焼成した。36マイクロアンペアの電流を生成するために必要な電界を、ミクロン当たりのボルトで表している。電界は、ミクロン当たりのボルトで表している。結果を表2−2に示す。
【0072】
【表5】

【0073】
レーザチューブについての電界は、他のいずれのカーボンナノチューブよりも高かった。用いた装置で測定可能な最大値は、5.0V/ミクロンの読み取り値であり、実際の値はそれよりも高かった。COCCについての電界が最も低かった。
【0074】
空気雰囲気を用いて20分間、450℃のピーク温度で10ゾーンベルト炉において追加のカソード試料を焼成した。36マイクロアンペアの電流を生成するために必要な電界を、ミクロン当たりのボルトで表している。電界は、ミクロン当たりのボルトで表している。結果を表2−3に示す。
【0075】
【表6】

【0076】
レーザチューブについての電界は、他のいずれのカーボンナノチューブよりも高かった。用いた装置で測定可能な最大値は、5.0V/ミクロンの読み取り値であり、実際の値はそれよりも高かった。COCCについての電界が最も低かった。これらのエミッタ厚膜物質のすべてが、アルミナ粉末を含有していた。COCCのCNTを含有する組成物は、すべての3つの焼成条件下で同様の結果を示したことに留意されたい。
【0077】
カソードアセンブリが製作されるスクリーンパターン化可能な厚膜ペースト組成物中にアルミナ粉末および/または熱CVDナノチューブが含まれるときは、カーボンナノチューブを含有する空気焼成電界エミッタ組成物について良好な放出を得ることが可能である。厚膜ペースト中にそれらの成分の一方または両方が存在する状態で空気中で焼成を行うことにより得られる結果は、窒素中での焼成から得られる結果と同等に良好である。
【0078】
本明細書において数値の範囲が記載または設定されている場合、かかる範囲は、その範囲の端点ならびにその範囲内のすべての個々の整数および端数を含み、また、言及された範囲内の値のより大きいグループのサブグループを形成する端点ならびに内部の整数および端数のすべての様々な可能性のある組み合わせにより形成されるその範囲におけるより狭い範囲の各々も、それらのより狭い範囲の各々が明示的に記載されているかのように含む。本明細書において数値の範囲が言及された値よりも大きいと述べられている場合、かかる範囲は、有限であり、その上端が本明細書に記載のように本発明の文脈内で動作可能な値により制限される。本明細書において数値の範囲が言及された値未満であると述べられている場合、かかる範囲は、その下端が非ゼロ値により制限される。
【0079】
本明細書において、そうでないことが明示的に述べられているかまたは用いられている文脈により反対であることが示されているのでない限り、本明細書の主題の実施形態が、特定のフィーチャもしくは要素を備える、含む、含有する、有する、またはそれらで構成される、それらにより構成される、もしくはそれらから構成されることが述べられるかまたは記載されている場合、それらの明示的に述べられたまたは記載されたものに加えて1つ以上のフィーチャまたは要素が実施形態において存在してもよい。しかし、本明細書の主題の代替の実施形態は、本質的に特定のフィーチャまたは要素から成ると述べられるかまたは記載されてもよく、かかる実施形態においては、実施形態の動作原理または弁別的特徴を実質的に変更してしまうフィーチャまたは要素が存在しない。本明細書の主題のさらなる代替の実施形態は、特定のフィーチャまたは要素から成ると述べられるかまたは記載されてもよく、かかる実施形態またはそれを多少変形したものにおいては、具体的に述べられたかまたは記載されたフィーチャまたは要素のみが存在する。
【0080】
本明細書において、そうでないことが明示的に述べられているかまたは用いられている文脈により反対であることが示されていない限り、本明細書に記載の量、サイズ、範囲、式、パラメータ、ならびに他の数量および特徴は、特に「約」との用語により修飾されているときは、必ずしも正確でなくてもよく、また、許容差、換算係数、端数処理、測定誤差などを反映して、近似値である、および/または、記載のものよりも(所望されるように)大きいもしくは小さくてもよく、さらに、記載された値が、その値ではないが本発明の文脈中で記載された値に機能的および/または動作的に等価性を有する値を含んでもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板を提供するステップと、
(b)カーボンナノチューブを有機ビヒクルと混合して組成物を形成するステップと、
(c)前記基板上に前記組成物の厚膜のパターンを堆積させるステップと、
(d)空気または酸化性雰囲気中で300℃〜550℃の温度で前記厚膜の前記パターンを加熱するステップと
を含む、基板上に電子放出物質を堆積させる方法。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブは、5ナノメートル未満の外径を有しかつ最大で10個の壁を含む薄壁カーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板は導電性である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物の厚膜のパターンを堆積させる前に、前記基板上に導電体のパターンを堆積させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板は電気的に絶縁性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物の厚膜のパターンを堆積させる前に、前記電気的に絶縁性の基板上に導電体を堆積させるステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記厚膜は、ドット、矩形、または線のパターンとして堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物は、さらに、アルミナ粉末を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基板を電子電界エミッタに組み込むステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電子電界エミッタを活性化させるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電子電界エミッタを電界放出素子に組み込むステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記電界放出素子をフラットパネルディスプレイに組み込むステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−501047(P2012−501047A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523977(P2011−523977)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/054402
【国際公開番号】WO2010/022203
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】