説明

電界発光材料

【課題】真空蒸着によって薄膜の形で蒸着させることができ、有機発光装置(OLED)において効果的なドーパントとして用いることができる素材に関する。
【解決手段】ドーパントとして式Iの構造を有する発光分子などを用いた電界発光を発生させる有機発光装置における発光層。式中、Mはプラチナを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光材料に関し、真空蒸着によって薄膜の形で蒸着させることができ、有機発光装置(OLED)において効果的なドーパントとして用いることができる、という素材に関する。
【背景技術】
【0002】
過去20年にわたる発光ダイオード(LED)の進歩は、もっぱら無機系のものに集中している。これは、初期に開発された有機発光装置(OLED)が、加工や実装の点では貧弱であり製品寿命も短い、という結果にとどまったためである。今日、市場に出ているガリウム砒素ベースのLEDは広く利用でき、ある波長域においては、通常のフィルタ蛍光ランプを超える効率を示す。しかしながら、ディスプレイ技術に用いられる発光材料が進歩する中で、無機半導体素材は、面積の広いアセンブルディスプレイ(assembled display)には合わなくなっている。
【0003】
1960年代、New York Universityにおいて、Popeらは、アントラセン材料を基本とした有機電界発光の論証を行った(J. Chem. Phys. 38, 2042,(1963年))。また、Kodakにおいて、C. W. Tangらがtris(8-hydroxyquinolato)aluminum(Alq3)ベースの薄膜技術を発見した後にも(Appl. Phys. Lett. 51, 913,(1987年))、大きな進歩があった。これらのおかげで、新しく、より優れた電界発光材料が連続して発見されることになった。低蛍光分子から複合ポリマーまで、充分な輝度、優れた効率、良好な動作製品寿命、そして、望ましい発色範囲を示すOLEDは数多くある。
【0004】
金属複合体を含む有機発光装置は、それらが珍しい化学特性および電気特性を有するため、特別な意味を持つ。重金属を含有する化合物のいくつかは、その高い内部量子効率により、OLEDに関する潜在的利点を示す。従来技術の蛍光物質は、発光ホスト(emissive host)においてドーパントとして用いられている。単一励起子(理論上の最大内部量子効率=25%)は、孔(hole)と電子との再結合の後に形成されて、フォルスタ(Forster)機構を介し双極子間相互作用によって、電界発光を発する(米国特許:6,310,360号)。一方、重金属複合体については、強力なスピン軌道結合によって、1重項−3重項状態混合を得ることができ、さらにその結果として、OLEDで効率の高い電気燐光(理論上の内部量子効率は最大で100%)が得られる。(Nature,395,151,(1998年);Synthetic Metals,93,245,(1998年);Appl.Phys.Lett.77,904,(2000年))。
【0005】
しかしながら、一部の燐光素材には問題が内在する。その問題は放出サイトの飽和などであるが、これは、ドーピングレベルが高い場合に強力な分子間相互作用から生じる濃度消光、そして、1重−3重消滅、ならびに過度に長い寿命に起因する(Phys.Rev.B.60,14422,(1999年))。
例えば、quadridentateなアゾメチン−亜鉛複合体は、有機発光装置の青色光エミッタとして用いられてきたが、その輝度は、最高でも約1000cd/m2に過ぎなかった(Jpn.J.Appl.Phys.,32,L511(1993年);米国特許:第5,432,014号)。
【0006】
また、アゾメチン−アルミニウム/ガリウム複合体は、OLEDにおける発光材料として採用されているが、アゾメチン−ガリウム複合体を含む装置の電流密度は、10Vにおいて1mA/cm2であり、電気発光は緑がかった青となる(米国特許:第6,316,130号)。
以上のことから、OLEDにおけるホストとドーパントとの間で効率の良いエネルギー転移を可能とし、その一方で、かなり高いドーピング濃度においても自己消滅をほとんど又は全く生じさせない、という発光ドーパント素材を開発すことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許:6,310,360号
【特許文献2】米国特許:第5,432,014号
【特許文献3】米国特許:第6,316,130号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Chem. Phys. 38, 2042,(1963年)
【非特許文献2】Appl. Phys. Lett. 51, 913,(1987年)
【非特許文献3】Nature,395,151,(1998年)
【非特許文献4】Synthetic Metals,93,245,(1998年)
【非特許文献5】Appl.Phys.Lett.77,904,(2000年)
【非特許文献6】Phys.Rev.B.60,14422,(1999年)
【非特許文献7】Jpn.J.Appl.Phys.,32,L511(1993年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が、その実施の形態において目的とすることには、以下のようなものがある。
先ず、本発明の主たる目的は、新しい発光素材でドーピングした有機発光装置(OLED)を提供することである。当該装置は、ターンオン電圧が低く、輝度および効率が高いものとなる。
また、本発明は、熱的に安定した耐湿性の金属キレート素材であって、公知の厚みの薄い層の形で、蒸着プロセスによって塗布することが可能である、という素材を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、発光装置において低濃度レベルでも使用できる、という高輝度ドーパントの設計に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は、以下の式Iおよび式IIに示すように、quadridentateなONNO型配位子および10族金属(プラチナを含む)から得られる新しい発光材料を用意した。
【0012】
【化1】



【0013】
【化2】

【0014】
上記の式において、Mは10族金属(プラチナを含む)を表す。
R1〜R14はそれぞれ、水素;ハロゲン;アルキル;置換アルキル;アリール;置換アリールから成るグループから個別に選択されるが、置換基が、ハロゲン、炭素数1乃至4の低級アルキル、そして、認証された(recognized)供与体・受容体基からなるグループから選択される。例えば、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ビニル、ニトロ、シアノ、炭酸、酸クロリドからなるグループから選択される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施の形態は以下のものを含む(ただし、これらに限定はされない)。すなわち、電界発光を生成するためのヘテロ構造を有するOLEDであって、アノード(ITOガラス基板)、正孔輸送層(NPB(α−naphthylphenylbiphenyl amine))、マトリックス発光層[ホスト素材(beryllium bis(2-(2´-hydroxyphenyl) pyridine) (Bepp2))であって、本文の式Iおよび式IIに示す、異なる濃度のドーパントを伴うもの]、電荷輸送層(フッ化リチウム)、そしてカソード(アルミニウム金属)を含むものである。
【0016】
ここでのOLEDにおいて、有効なドーパントとなる好適な実施の形態を以下に示す。
【0017】
【化3】

【0018】
本発明は、電界発光装置における発光ドーパントとして利用できる、新しい素材を提供する。また、本発明は、こうした新規な複合体の合成方法に加え、発光素材としてのそれらの用途も含んでいる。本発明の装置は、ディスプレイ、発光体、標識灯用のディスプレイボード、あるいは、液晶ディスプレイ用の光源の分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】複合体1b、2bのCH2Cl2内での吸収スペクトルを示す図である。
【図2】CH2Cl2内で298Kの条件において、薄膜の形での複合体1bの発光スペクトルを示す図である。
【図3】CH2Cl2内で298Kの条件において、薄膜の形での複合体2bの発光スペクトルを示す図である。
【図4】窒素および空気の下での複合体1b、2bのTGAサーモグラムである。
【図5】本発明におけるOLEDの概略図である。
【図6】(a)複合体1b(ドーピングレベル0.3wt%)を含む装置Aの電界発光スペクトルを示す図である。 (b)複合体1b(ドーピングレベル0.3wt%)を含む装置Aの電流密度−電圧−輝度曲線を示す図である。
【図7】(a)複合体1b(ドーピングレベル1.0wt%)を含む装置Bの電界発光スペクトルを示す図である。 (b)複合体1b(ドーピングレベル1.0wt%)を含む装置Bの電流密度−電圧−輝度曲線を示す図である。
【図8】複合体1b(ドーピングレベル2.0wt%)を含む装置Cの電界発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、一般的には、新しい発光材料の合成、スペクトル特性、燐光、発光特性、および、OLEDへのそれらの適用に関する。ここで示す例は、本発明の理解を助けるために示すものであり、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものではなく、限定すると解釈されるべきでもない。本発明の範囲は、別途示す特許請求の範囲によって定められる。
ここでの例が示すのは、配位子1a、2aおよびプラチナ複合体1b、2bの合成方法である。QuadridentateなONNO型配位子1a、2aについては、文献(J.Chem.Soc.,Perkin Trans.2,863,(1998年))にある手順を変更して実施することで用意したものである。ONNO型配位子を用意する方法については、別の例が「米国特許:第6,177,419号」で報告されている。
(例1)
・1aの合成
【0021】
【化4】

【0022】
臭化水素酸(47%,20mL)内で6, 6' - bis (2 - methoxyphenyl) - 4, 4' - bis (tert-butyl) - 2, 2' -bipyridine (1 g) 混合物を12時間還流させた。これを室温まで冷却し、さらに、水飽和Na2CO3溶液を用いて室温で中和させた。有機生成物はクロロホルムを用いて抽出し、その抽出物は、脱イオン水(50mL×2)で洗浄してから、無水Na2CO3の上で乾燥させた。その上で、溶剤を取り除き、固体の残留物を得た。1aの結晶生成物は、メタノール/ジクロロメタン溶液からの再結晶によって得られた。
【0023】
EL-MS(m/z):452[M]+.1H NMR(CDCl3,δ,ppm):14.45(2H,s,OH),8.16(2H,d,J=1.4Hz,ArH),7.97(2H,d,J=1.3Hz,ArH),7.90(2H,dd,J=8.0Hz,J=1.4Hz,ArH),7.34(2H,td,J=8.4Hz,J=1.5Hz,ArH),7.07(2H,dd,J=8.2Hz,J=1.6Hz,ArH),6.96(2H,td,J=8.1Hz,J=1.2Hz,ArH),1.47(18H,s,tBu).13C NMR(CDCl3,δ,ppm);163.3,159.7,157.5,152.2,131.5,126.5,119.2,118.9,118.4,116.4,35.6,30.6 から再結晶によって得られたものである。
(例2)
・1bの合成
【0024】
【化5】

【0025】
金属複合体1bの合成方法を以下に示す。先ず、NaOMe(0.014g,0.25nmol)と配位子1a(0.113g,0.25nmol)との混合物をメタノール(20mL)の中で2時間かくはんする。このメタノールの懸濁液に、Pt(CH3CN)2Cl2(0.25nmol)のアセトニトリル溶液(20mL)を加え、それを24時間の間還流させた。その結果得られる懸濁液を濾過してから、5mLになるまで濃縮した。そして、ジエチルエーテルを加えると、茶黄色の固体が得られた。ジエチルエーテルをジクロロメタン溶液内に拡散させることで、その粗生成物を再結晶化させると、黄色の結晶がもたらされた。
【0026】
FAB−MS(m/z):645[M]+,1292(2M++2),1938(3M++3).1H NMR(CDCl3,δ,ppm):8.32(d,2H,J=1.41Hz,ArH),8.01(d,2H,J=7.25Hz,ArH),7.85(d,2H,J=1.68Hz,ArH),7.48(dd,2H,J=7.38Hz,J=1.13Hz,ArH),7.38(td,2H,J=5.35,1.61Hz,ArH),6.79(td,2H,J=5.40,1.35Hz,ArH),1.54(s,18H,tBu).13C NMR(CDCl3,δ,ppm):162.745,159.105,155.291,149.851,131.269,128.005,124.060,120.465,120.402,116.302,116.148,30.402,29.715.FTIR(KBr,cm-1):3086w,2953m,1612w,1528s,1351s,1034m,885w,723m。
(例3)
・2aの合成
【0027】
【化6】

【0028】
還流凝縮器を備えた100mLの丸底フラスコの中で、2, 9-bis (2-methoxyphenyl)-4, 7-diphenyl-1, 10-phenanthroline(細かく砕いた状態で、2g,3.7nmol)とピリジニウム塩酸基(4.23g,37nmol)とを混合した。混合物を窒素流のもとで210℃まで加熱し、その時間は36時間とした。冷却した後に水(30mL)を加え、その水溶液をクロロフォルム(3×30mL)で蒸留した。
【0029】
化合有機抽出物を、飽和重炭酸ナトリウム溶液(5×30mL)と水(3×30mL)とで洗浄してから、無水硫酸マグネシウムの上で乾燥させ脱水すると、明るい黄色の固体が得られた。シリカゲル上でnヘキサン:ジクロロメタン(1:2)を溶離液として用いたクロマトグラフィにより、0.99gの黄色固体がもたらされた。
FAB−MS(m/z):517[M+H]+1H NMR(300MHz,CDCl3,δ,ppm):14.69(2H,s,OH),8.52(2H,s,ArH),8.41(2H,dd,J=8.0,1.3Hz,ArH),7.90(2H,s,ArH),7.71(4H,d,J=7.4Hz),7.64(6H,m,ArH),7.43(2H,td,J=7.7,1.5Hz,ArH),7.10(2H,dd,J=7.4Hz,1.3Hz,ArH),7.04(2H,td,J=7.5,1.3Hz,ArH).13C NMR(600MHz,CDCl3):δ=160.5,157.7,150.3,142.8,137.8,132.2,129.6,128.9,128.8,127.1,125.7,123.7,120.6,119.4,119.2,118.9.
(例4)
・2bの合成
【0030】
【化7】

【0031】
2PtCl4(0.08g,0.19nmol)と2a(0.1g,0.19nmol)とを、氷酢酸(10mL)の中で2日間還流させた。冷却の後、生じた懸濁液は、ろ過によって凝縮してから、酢酸および水の順で洗浄し、その後、真空状態で乾燥させた。それによって、茶色の固体が得られた。この粗生成物については、溶離液としてジクロロメタンを用いながら、シリカゲルカラム上でクロマトグラフィによって精製した。生成物を、ジクロロメタン溶液の低速蒸発によって再結晶することで赤色の結晶が得られた。
【0032】
FAB−MS:m/z=710[M+H]+1H NMR(270MHz,DMSO−d6)8.81(2H,s,ArH),8.56(2H,d,J=8.9Hz,ArH),8.01(2H,s,ArH),7.86(4H,m,ArH),7.71(6H,dd,J=4.9,2.0Hz,ArH),7.44(2H,t,J=7.4Hz,ArH),7.24(2H,d,J=8.2Hz,ArH),6.80(2H,t,J=7.6Hz,ArH).
本発明によるプラチナ複合体1b、2bのスペクトル特性を表1に示す。
【0033】
複合体1bの場合、250〜350nm(ε=38400−17500dm3mol-1cm-1)に強力な吸収帯が、λmax398nm(ε=10800dm3mol-1cm-1)にやや強い吸収帯が見られる(図1参照)。加えて、ca.480nm(2800dm3mol-1cm-1)にも広い吸収帯が見られる。複合体2bの場合(図1参照)、CH2Cl2の中で、291〜375nm(ε=39200−24700dm3mol-1cm-1)にいくつかの振動遷移が見られ、504nm(ε=7200dm3mol-1cm-1)に広い帯域が見られる。
【0034】
【表1】

【0035】
溶液中での、そして薄膜の形でのプラチナ複合体1b、2bの光ルミネセンス(PL)を表2にまとめた。図2では、複合体1bの298K無構造発光が、CH2Cl2内にある場合は595nmに、薄膜の形では599nmに、それぞれ見られる。
複合体2bの、溶液内での、そして薄膜の形でのPL特性は、図3に示してある。薄膜の形での2bの発光最大値は、溶液内にある場合に比べて1704cm-1だけシフトしている。一方、複合体1b、2bの寿命は、CH2Cl2内ではそれぞれ1.9μs、5.3μsとなり、発光量子量は(参照基準をRu(bpy)3Cl2とした場合)それぞれ0.1、0.6となる。
【0036】
【表2】

【0037】
図4に示すのは、複合体1b、2bのTGAサーモグラフである。これら複合体は両方とも、加熱率15℃/分の空気やニトロゲンの中でも高い耐熱性を示す。複合体2bは、ニトロゲンの中では536℃まで、空気の中では379℃まで安定している。1bのオンセット温度は、ニトロゲンの中では438℃、空気の中では382℃である。これらの観測値から分かるのは、これらの発光材料が、OLED準備時の真空蒸着条件では、昇華でき、安定した状態ともなりうる、ということである。
【0038】
図5は、本発明による電界発光装置を概略的に示している。本発明の例として、以下の構造を有するOLEDを用意した。すなわち、ITO/NPB (α-naphthylphenylbiphenyl amine) (500Å)/[複合体1bの0.3wt% (装置A), 1wt% (装置B), または2wt% (装置C)]:Bepp2 (400Å)/LiF (15Å)/Al (2000Å) である。装置A(1bの0.3wt%)の組立について以下に述べる。
(例5)
装置Aは以下のように組み立てる。先ず、ガラス基板の上に、20Ω/squareの面積抵抗を備えるインジウムスズ酸化物(ITO)の電極を設ける。そこに、500Åの厚みを有する正孔輸送素材NPB(α-naphthylphenylbiphenyl amine)を設ける。さらに、0.3wt%の複合体1bと青色発光材料Bepp2(beryllium bis(2-(2´-hydroxyphenyl) pyridine)との混合物で成る発光層を400Åの厚みで設ける。そして、15Åの厚みを有する強化電荷移動層LiF、2000Åの厚みを有するアルミニウム層を設ける。
【0039】
金属層および有機層は順番に、5×10-6ミリバールの環境で積層させられ、別々に行われる複数の真空蒸着プロセスにおいては、プロセスとプロセスとの間で真空状態が保たれるようにした。各層は、1秒当たり2Åまたは5Åの速度で蒸着させた。装置の発光領域はカソードとアノードとが重なった領域によって形作られており、3×3mm2の大きさとなった。
【0040】
ITOでコートしたガラス製スライドは、有機溶剤(アセトン・イソプロパノール・メタノール)、脱イオン水、それに続いて紫外線オゾンクリーナを用いて洗浄した。装置のELスペクトルおよび「電流密度−電圧−輝度」の特性については、分光光度計とコンピュータ制御直流電源とを用い、それぞれ室温で計測した。
これらの例の場合、装置外部効率が向上するのは、複合体1bのドーピング濃度レベルが2から0.3wt%に調整された場合である。特定の例について、以下の部分でさらに説明する。
(例6)
図6(a)および図6(b)は、複合体1bのドーピングレベルが0.3wt%の場合の装置Aの性能を示す。装置が順バイアスの元で駆動される場合には、453nmと540nmの2箇所で強いEL発光が見られる。また、装置Aに関する電流密度−電圧−輝度特性の曲線も示してある。ターンオン電圧は約6〜7Vである。装置の最大効率は、2849cd/m2の輝度において4.1cd/Aであった。最大輝度である9325cd/m2は、10Vの駆動電圧において得られた。装置AのEL色は黄色(CIE座標:x=0.33,y=0.47)である。
(例7)
図7(a)および図7(b)は、複合体1bのドーピングレベルが1.0wt%の場合の装置Bの性能を示す。本装置が示す強いEL発光のピークは546nmにあり、457nmには弱発光が見られる。装置Bのオンセット電圧は約6〜7Vであった。効率および最大輝度はそれぞれ、輝度1927cd/m2において1.9cd/A、9.5Vの駆動電圧において6563cd/m2であった。装置BのEL色は黄色(CIE座標:x=0.39,y=0.54)である。
(例8)
複合体1bのドーピングレベルが2.0wt%である装置Cでは、強いEL発光のピークは548nmに見られ、非常に弱い発光が450nm周辺に見られる(図8)。EL効率は1.5cd/Aと検知された。12Vの駆動電圧では、6450cd/m2の輝度が観測された。装置CのEL色は黄色(CIE座標:x=0.42,y=0.56)である。
【0041】
一般に、5%を超えるドーピングレベルは、有機型または高分子型の発光装置においてドーパント発光を実現すると報告されている。本発明におけるOLEDは、ドーピングレベルが2%の周辺である場合に、実質的に完全な複合体1bの発光を示す。そして、装置の効率は、複合体のドーピングレベルが2.0wt%から3.0wt%に下げられると、1.5cd/Aから4.1cd/Aに高まる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと正孔輸送層とマトリックス発光層と電荷輸送層とカソードとを少なくとも有し、電界発光を発生させる有機発光装置における発光層であって、少なくともホスト素材と発光分子とを有し、前記発光分子は前記ホスト素材の中でドーパントとして存在する、という発光層であり、
前記発光分子の化学構造は、下に示す式Iおよび式IIで表すことができ、
【化8】

【化9】


Mはプラチナを表し、R1〜R14はそれぞれ、水素;ハロゲン;アルキル;置換アルキル;アリール;置換アリールから成るグループから個別に選択され、また、置換基が、ハロゲン、炭素数1乃至4の低級アルキル、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ビニル、ニトロ、シアノ、炭酸、そして酸クロリドのグループで成るグループから選択されること、を特徴とする発光層。
【請求項2】
前記発光分子は、前記ホスト素材の中に低濃度のドーパントとして提供され、ホスト素材の重量を基準として0.3から2.0重量%を有すること、を特徴とする請求項1に記載の発光層。
【請求項3】
黄色の電界発光を生じること、を特徴とする請求項1に記載の発光層。
【請求項4】
前記ホスト素材は、beryllium bis(2-(2´-hydroxyphenyl) pyridine) (Bepp2)であること、を特徴とする請求項1に記載の発光層。
【請求項5】
前記ホスト素材および前記発光分子は、昇華蒸着または真空蒸着、または蒸気蒸着、またはスピンコートによって、薄膜の形で蒸着することが可能であること、を特徴とする請求項1に記載の発光層。
【請求項6】
請求項1に記載の式Iで表される発光分子であって、R1〜R5、R7〜R8およびR10〜R14のグループはプロトン原子であり、R6およびR9グループはtert-butylのグループであり、Mはプラチナであり、すなわち、
【化10】


であること、を特徴とする発光分子。
【請求項7】
請求項1に記載の式IIで表される発光分子であって、R1〜R5、R7〜R8およびR10〜R14のグループはプロトン原子であり、R6およびR9グループはフェニルのグループであり、Mはプラチナであり、すなわち、
【化11】


であること、を特徴とする発光分子。
【請求項8】
下に示す式Iによって表される構造を有する発光材料を製造する方法であって、
【化12】

Mはプラチナを表し、R1〜R14はそれぞれ、水素;ハロゲン;アルキル;置換アルキル;アリール;置換アリールから成るグループから個別に選択され、また、置換基が、ハロゲン、炭素数1乃至4の低級アルキル、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ビニル、ニトロ、シアノ、炭酸、そして酸クロリドのグループで成るグループから選択されること、を特徴とする方法。
【請求項9】
R1〜R5、R7〜R8およびR10〜R14のグループはプロトン原子であり、R6およびR9グループはtert-butylのグループであり、Mはプラチナであり、すなわち、
【化13】


であること、を特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
下に示す式IIによって表される構造を有する発光材料を製造する方法であって、
【化14】


Mはプラチナを表し、R1〜R14はそれぞれ、水素;ハロゲン;アルキル;置換アルキル;アリール;置換アリールから成るグループから個別に選択され、また、置換基が、ハロゲン、炭素数1乃至4の低級アルキル、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ビニル、ニトロ、シアノ、炭酸、そして酸クロリドのグループで成るグループから選択されること、を特徴とする方法。
【請求項11】
R1〜R5、R7〜R8およびR10〜R14のグループはプロトン原子であり、R6およびR9グループはフェニルのグループであり、Mはプラチナであり、すなわち、
【化15】


であること、を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項2に記載の発光層を有する有機発光装置によって発せられる光(CIE座標)を、ドーパントとして提供される前記発光分子の重量%を変化させることによって調節する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−50451(P2010−50451A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185012(P2009−185012)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【分割の表示】特願2004−501422(P2004−501422)の分割
【原出願日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【出願人】(504404227)ザ ユニバーシティ オブ ホンコン (5)
【Fターム(参考)】