電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造
【課題】チューブ状フレームの剛性などを損なうことなく該チューブ状フレームの中に侵入した電着塗装液を円滑に排出させる。
【解決手段】板材30の上方に膨出した中間部分30aを下方に押圧して偏平化することで、左右部分30bが揺動変位して起立し、そして、左右の屈曲端部分30cの端面が互いに対向した状態になる。そして、この左右の屈曲部分30cを互いに突き合わせた後に、この突き合わせ部分をワイヤーレーザ溶接などの片側連続溶接法によって接合することによりフロントサイドフレーム8を作ることができる。フロントサイドフレーム8の水平部8aにおいてサブフレームSFを搭載するためのブラケット24を設置した部位には、電着塗装液Wを排出するための第1通孔56が形成され、また、ブラケット24にも第2通孔58が形成されている。
【解決手段】板材30の上方に膨出した中間部分30aを下方に押圧して偏平化することで、左右部分30bが揺動変位して起立し、そして、左右の屈曲端部分30cの端面が互いに対向した状態になる。そして、この左右の屈曲部分30cを互いに突き合わせた後に、この突き合わせ部分をワイヤーレーザ溶接などの片側連続溶接法によって接合することによりフロントサイドフレーム8を作ることができる。フロントサイドフレーム8の水平部8aにおいてサブフレームSFを搭載するためのブラケット24を設置した部位には、電着塗装液Wを排出するための第1通孔56が形成され、また、ブラケット24にも第2通孔58が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ状フレーム構造の自動車車体に関し、電着塗装の際に、チューブ状フレーム構造の剛性を損なうことなく、フレームを構成するチューブ内に侵入した塗装液を円滑に排出することのできる電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディの下地塗装の塗装方法として電着塗装法が採用されている。電着塗装は、電気メッキと同じ原理に基づいて、自動車ボディを塗料槽の中に漬け込むことで塗装を行う。このことから、塗料槽から自動車ボディを引き上げる際に、自動車ボディの各部の中に入り込んでいる塗料が円滑に排出するように、車体構造を設計することが必要となる。
【0003】
特許文献1は、ルーフサイドレールに関する電着塗装液の液抜き構造を提案している。具体的には、特許文献1に開示の発明は、ルーフサイドレールアウタと、該ルールサイドレールアウタにスポット溶接されたルーフドリップとの間に、上下に開放したドレーン通路を設けることを提案している。
【0004】
ところで、特許文献2に見られるようにハイドロフォーム成形法によって閉断面の中空部材を一体成形し、この中空部材の外側にアウターパネルを取り付けてフロントピラーを構成することが提案されている。
【0005】
同じように、特許文献3には、パイプ状の高張力鋼板を用いてハイドロフォーム成形法によって成形された補強部材を平面視コ字状に形作って、これを左右のフロントピラー、左右のルーフサイド、リヤヘッダに配設して車両のルーフのフレームを作ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−173378号公報
【特許文献2】特開2006−182079号公報
【特許文献3】特開2002−145117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近時の車両の車体構造は「モノコック」と呼ばれる手法に基づいて設計されるのが殆どである。本願発明者らは、上述した中空部材を使って車両のチューブ状フレーム構造を作り、そして、このチューブ状フレーム構造にアウタパネルを接合することで車体を作る研究を行っているが、中空部材で車体のフレームを構築するチューブ状フレーム構造を採用して電着塗装を施したところ、塗装液槽から車両を引き上げた際にフレームを構成する中空部材の中に入り込んだ塗装液の抜けが悪いことが確認できた。
【0008】
この問題は、特に、従来のモノコックボディのフロントサイドフレーム、ルーフサイドフレーム、サイドシルに相当する略水平方向に延びる中空部材において顕著であり、この問題を解消するために中空部材に数多くの塗装液排出孔を設けたときには、チューブ状フレーム構造の利点である剛性向上効果が低減してしまうことになる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、チューブ状フレーム構造を採用した自動車車体において、チューブ状フレームの剛性などを損なうことなく該チューブ状フレームの中に侵入した電着塗装液を円滑に排出させることのできる自動車車体のチューブ状フレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
自動車の車体構造に含まれるチューブ状フレームであって、該フレームを作るために溶接を行うためのフランジを備えていない閉断面の中空部材からなるフレームに電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造において、
該フレームの最も低位に位置する部位に上下に開放した第1通孔が形成されていることを特徴とする電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造を提供することにより達成される。
【0011】
本発明によれば、閉断面であり且つフレームを作るのに溶接するフランジを備えていないチューブ状フレームにおいて最も低位に位置する部位に上記の上下に開放した第1通孔を設けることで、当該第1通孔を通じて、チューブ状フレームの内部に侵入した電着塗装液を円滑に排出することができる。また、この第1通孔を最も低位に位置する部位という限定的に特定した位置に設けることで、第1通孔を設けることに伴うチューブ状フレームの剛性などの低下を抑制することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態では、前記フレームにおいて、前記第1通孔が設けられた部位又はその近傍に内方又は外方に突出した隆起部が設けられている。この実施の形態によれば、第1通孔の部位又はその近傍が隆起部によって剛性が高められているため、第1通孔を設けることに伴うチューブ状フレームの剛性などの低下に対する抑制効果が確実になる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態では、前記フレームにおいて、前記第1通孔が設けられた部位にブラケットが設けられ、該ブラケットに上下に開放した第2通孔が設けられている。このブラケットは、例えば、フロントサイドフレームに設けられて、サスペンション機構が設置されるサブフレームをフロントサイドフレームに搭載するためのブラケットであり、このブラケットには、上下に開放した第2通孔が形成される。これによれば、平面視したときに、ブラケットを介してサブフレームと重複するフロントサイドフレームの部分に上述した第1通孔が設けられることになるため、このサブフレームによっても、第1通孔を設けることに伴うチューブ状フレームの剛性などの低下に対する抑制効果が確実になる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態では、また、前記フレームがフロントサイドフレームであり、そして、このフロントサイドフレームには、その外部又は内部に添設された補強部材が設けられ、該補強部材に前記第1通孔と整合して位置する第3通孔が形成される。その一つの例が、前記フロントサイドフレームにエンジンをマウントするボルトを受け入れるスリーブナットを受け入れるエンジンマウントブラケットによって前記補強部材が構成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電着塗装液排出孔を備えたチューブ状フレーム構造を採用した車体前部を斜め前方から見た斜視図である。
【図2】図1の車体前部の側面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】図3に図示のチューブ状フレームの作り方を説明するための図である。
【図5】図3のチューブ状フレームに対する第1変形例を示す図である。
【図6】図3のチューブ状フレームに対する第2変形例を示す図である。
【図7】図3のチューブ状フレームに対する第3変形例を示すと共に図6の第2変形例の更なる変形例を示す図である。
【図8】第2実施例のチューブ状フレーム及びこれに付随する構造を示す図である。
【図9】第2実施例の第1変形例を示す側面図であり、フレームにボックス状のブラケットを設けた例を示す。
【図10】図9に関連した底面図である。
【図11】図9に関連した斜視図である。
【図12】第2実施例の第2変形例を示す側面図であり、フレームの内部にボックス状のブラケットを設けた例を示す。
【図13】第2実施例の第3変形例を示す側面図であり、フレームの側壁部分にビードを設けた例を示す。
【図14】図13に関連した底面図である。
【図15】図13に関連した斜視図である。
【図16】第2実施例の第4変形例を示す一部切欠き側面図であり、フレームの底壁部分に下方に向けて隆起した隆起部を設けた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0017】
第1実施例(図1〜図4):
図1、図2は、本発明の電着塗装液排出孔を備えたチューブ状フレーム構造を適用した車体前部を示す。この車体前部は、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル2と、上記ダッシュパネル2の車幅方向両端つまり左右の端に連結された左右のヒンジピラー(フロントピラー)4と、このヒンジピラー4から前方に延びる左右のエプロンフレーム6と、ダッシュパネル2の左右の端部且つ下端部から前方に延びる左右のフロントサイドフレーム8とを有する。
【0018】
エプロンフレーム6の前端部は下方に屈曲する形状を有し、このエプロンフレーム6の垂下部分6aの下端はフロントサイドフレーム8の前端部に連結されている。左右のフロントサイドフレーム8の前端にはクラッシュボックス10が連結され、この左右のクラッシュボックス10は、車幅方向に延びるバンパーフレーム12によって連結されている。
【0019】
また、エプロンフレーム6及びフロントサイドフレーム8の前後方向中間部分には、これらの間にサスタワー14が配設され、サスタワー14の上端がエプロンフレーム6に連結され、他方、サスタワー14の下端がフロントサイドフレーム8に連結されている。サスタワー14には、既知のように、前輪用のサスペンション機構が配設される。なお、図1及び図2に図示の参照符号16は板状部材を示し、この板状部材16を介してサスタワー14とフロントサイドフレーム8とが連結されている。
【0020】
なお、左右のエプロンフレーム6の垂下部6aには、車幅方向に延びる角パイプ18の端がブラケット20を介して連結されている。また、ダッシュパネル2の上端部に沿って車幅方向に延びるダッシュクロスメンバ22が配設され、このダッシュクロスメンバ22の左右の端はヒンジピラー4に連結されている。
【0021】
左右のフロントサイドフレーム8は、図2から最も良く分かるように、前端からサスタワー14の部位まで水平方向に延びており、そして、各フロントサイドフレーム8は、水平部分8aの後端から後方に且つ斜め下方に延びる傾斜部分8bを有している。
【0022】
フロントサイドフレーム8の水平部分8aと傾斜部分8bとの境界部分には、フロントサイドフレーム8の両側面及び底面を覆うように接合されたブラケット24が配設され、このブラケット24を介してサブフレームSF(図2)が取り付けられるようになっている。このサブフレームは、ペリメータフレームと称される従来から周知のフレームであり、このサブフレームに前輪サスペンション機構に含まれるアームが連結される。
【0023】
図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。エプロンフレーム6及びフロントサイドフレーム8はチューブ状フレームが採用されている。このチューブ状フレームは、特許文献2、3に記載のハイドロフォーム成形法によって作った中空部材であってもよいが、図示の例では、図4に示す手法を使って作られた断面略矩形の中空部材が採用されている。
【0024】
図4は、一枚の鉄系金属の板材30を曲げ加工することにより作られている。具体的に説明すると、鉄系金属からなる板材30は、フロントサイドフレーム8(水平部8a)の底壁部分8cを構成する中間部分30aを有し、この中間部分30aは上方に向けて膨出する湾曲した形状に形作られている。中間部分30aを挟んで左右に延びる部分30bは、フロントサイドフレーム8の左右の部分8dを構成し、この左右の部分30bの自由端部は、直角に屈曲した屈曲端部分30cで終端している。この左右の屈曲端部分30cは、フロントサイドフレーム8の天井壁部分8eを構成する。
【0025】
上記の形状に成形した板材30を予備成型品として予め用意し、この板材30に対して、所定の加工治具で上記上方に膨出した中間部分30aを下方に押圧して偏平化することで、上記左右部分30bが矢印で示す方向に揺動変位して起立し、そして、左右の屈曲端部分30cの端面が互いに対向した状態になる。そして、この左右の屈曲部分30cを互いに突き合わせた後に、この突き合わせ部分をワイヤーレーザ溶接などの片側連続溶接法によって接合することによりチューブ状フレームである中空部材を作ることができる。図3の参照符号32はレーザ溶接部分を示している。
【0026】
従来のモノコックボディでの閉断面構造ではフランジ部分をスポット溶接することにより作られているが、この中空部材にあっては連続溶接法によって作られており、また、中空部材を作る溶接部としてのフランジを備えていない点に特徴を有している。したがって、フロントサイドフレーム8を構成する中空部材を「フレーム形成用フランジ無しフレーム」と呼ぶことにする。
【0027】
第1変形例(図5):
図5は、フレーム形成用フランジ無しフレームの第1の変形例36を示す。図5のフレーム形成用フランジ無しフレーム36は、左右の屈曲端部分30cの端部に突き合わせ用フランジ36aを備え、この左右の突き合わせ用フランジ36aはフレーム36の閉断面の内部で互いに対面した状態になる。
【0028】
第2変形例(図6):
図6は、フレーム形成用フランジ無しフレームの第2の変形例40を示す。図6のフレーム形成用フランジ無しフレーム40は、断面コ字状の対をなす第1、第2の2つの予備成形品42、44を有し、この2つの予備成型品42、44を互いに嵌合して、互いに重なり合った部分をレーザ溶接のような片側連続溶接法によって接合することにより作られている。すなわち、第1、第2の予備成型品42、44は、中央部分42a、44の両端から屈曲して延びる2つの端部分42b、42c、44b、44cを備えた断面コ字状の形状を有し、第1の予備成型品42の2つの端部分42b、42cの間の間隔L1は、第2の予備成型品44の2つの端部分44b、44cの間の間隔L2よりも若干大きく(L1>L2)、第1の予備成型品42の端部分42b、42cの一部と、第2の予備成型品44の端部分44b、44cの一部とが互いに上下に重なり合った状態にある。
【0029】
第3変形例(図7):
図7は、上述した図6のフレーム形成用フランジ無しフレーム40の更なる変形例50を示す。この図7のフレーム形成用フランジ無しフレーム50にあっては、第1の予備成型品42の2つの端部分42b、42cの間の間隔L1と、第2の予備成型品44の2つの端部分44b、44cの間の間隔L2とが等しく(L1=L2)、第1の予備成型品42の端部分42b、42cに段部52を設け、この段部52によって第2の予備成型品44を受け入れることで、第1の予備成型品42の端部分42b、42cの一部と、第2の予備成型品44の端部分44b、44cの一部とが互いに上下に重なり合った状態を作るようにしてある。
【0030】
図3に戻って、フロントサイドフレーム8の水平部8aには、その下方にペリメータフレームを締結するためのブラケット24が設置された部位において、フレーム8の底壁8cに、上下に開放した第1通孔56が形成されている。この第1通孔56は、電着塗装液を液抜きするための排出孔を構成するものである。また、図3から分かるように、ペリメータフレームを搭載するためのブラケット24にも上下に開放した第2通孔58が形成されており、この第2通孔58は、好ましくは、第1通孔56と整合しているのがよい。第1、第2の通孔56、58は、直径7〜15mmの円形孔や、これと実質的に同じ開口面積を備えた長円形の孔であってもよい。
【0031】
第1実施例を図示した図3に基づいて第1通孔56を説明したが、上述した第1〜第3変形例(図5〜図7)についても同様に適用できるのは言うまでもない。
【0032】
上述した第1実施例及びその変形例によれば、フロントサイドフレーム8の水平部8aにおいて、ペリメータフレームマウント用ブラケット24を設けた部位に、電着塗装液を排出するための第1通孔56を設け、また、ブラケット24にも第2通孔58を設けたことから、この第1、第2の通孔56、58を通じて電着塗装液Wを円滑に排出することができる(図3)。また、チューブ状フレームで構成されたフロントサイドフレーム8に第1通孔56を設けたことに伴う剛性や潰れ耐力の低下をブラケット24によって実質的に補完されることから、チューブ状フレーム構造の剛性などが低下するのを抑制することができる。
【0033】
第2実施例(図8):
上述した第1実施例では、チューブ状フレームの水平部において、ブラケットが設けられた部位に電着塗装液を排出するための通孔を設けることを提案したが、この第2実施例にあっては、チューブ状フレームを部分的に補強した部位に、電着塗装液を排出するための通孔を設けることを提案するものである。
【0034】
図8には例示的にフロントサイドフレーム8を図示してあるが、これは一例に過ぎず、自動車ボディに適用されるチューブ状フレームつまりフレーム形成用フランジ無しフレームであれば任意の部位に対して適用可能である。
【0035】
フロントサイドフレーム8の水平部8aには、その一部を包囲する補強部材60が添設され、この補強部材60はフロントサイドフレーム8に対してレーザ溶接のような連続溶接法によって固定される。勿論、補強部材60を上下又は左右に半割にして、左右又は上下の補強部材ハーフ同士をフランジ結合することで、フロントサイドフレーム8の全周を包囲する補強部材60を作ることができる。
【0036】
補強部材60には、上記第1通孔56に対応する部位において上下に開放した第3の通孔62が設けられている。すなわち、この第3の通孔62と対応する部位であって、フロントサイドフレーム8の底壁部分8cに上述した第1の通孔56が形成されている。
【0037】
この補強部材60が配設される部位として例えばエンジンを搭載するためのエンジンマウントブラケットを配設する部位を挙げることができる。このエンジンマウントブラケットは、エンジンマウントボルトが締結されるスリーブナットを受け入れる部位であり、このエンジンマウントブラケットで上述した補強部材60を構成してもよい。
【0038】
図8には、補強部材60をフロントサイドフレーム8の外側に配設した例を図示してあるが、これに代えて、補強部材60をフロントサイドフレーム8の内側に配設するようにしてもよいのは勿論である。また、補強部材60は、フロントサイドフレーム8の全周を包囲する以外に、フロントサイドフレーム8の一部に添設するものであってもよい。
【0039】
第1変形例(図9〜11):
フロントサイドフレーム8が、その底壁部分8cに溶接したボックス状のブラケット66を備えている場合には、このブラケット66に、その下面に上下に開放した第4の通孔68を設け、この第4の通孔68と対応する部位であって、フロントサイドフレーム8の底壁部分8cに上述した第1の通孔56を形成するようにしてもよい。
【0040】
第2変形例(図12):
この第2変形例は、上記第1変形例の更なる変形例でもある。図12に示すように、フロントサイドフレーム8の内部において、底壁部分8cにブラケット66が固設されており、このブラケット66に第4の通孔68が設けられている。なお、ボックス状のブラケット66の側壁に切欠きを設け、この切欠きを通じて電着塗装液を排出するようにしてもよい。
【0041】
第3変形例(図13〜図15):
この第3変形例は、チューブ状フレームに電着塗装液を排出するための通孔を設ける場合に、これに対応する側壁や天井壁にフレームから外方に突出又は内方に凹んだ隆起部であるビードを設けて部分的に補強する例を示す。
【0042】
図15を参照して、フロントサイドフレーム8の水平部8aには、その側壁部分8dに内方に隆起した(内方に向けて凸形状の)隆起部としてのビード70を有し、このビード70は、フロントサイドフレーム8の長手方向に長い長方形の形状を有している。そして、このビード70が設けられている部位に対応する部位つまりビード70の長手方向中間部分に相当する部位において、フロントサイドフレーム8の底壁部分8cに第1通孔56が形成されている。
【0043】
第4変形例(図16):
この第4変形例は上述した第3変形例の更なる変形例でもある。図16から分かるように、フロントサイドフレーム8の水平部分8aにおいて、その底壁部分8aには下方に向けて突出した隆起部としてのビード72が設けられており、このビード72に第1通孔56が形成されている。ビード72は、図示の例では、平面視したときに矩形の形状を有しているが、円形、長円形、長方形であってもよい。
【0044】
この第2実施例によれば、補強部材としての補強板60、ブラケット66、ビード70、72が設けられている部位に、電着塗装液を排出するための通孔56を設けてあるため、この通孔56を設けたことに伴うチューブ状フレーム構造の剛性などが低下するのを抑制することができる。
【0045】
補強板60やブラケット66などを設ける場合に、図3〜図7に例示した手法によって形成されるチューブ状フレームを採用するのが好適であるのは言うまでもない。また、第1、第2の実施例及びこれらの変形例に関してフロントサイドフレーム8を例に説明したが、チューブ状フレーム構造に用いられた各部のフレームに対して本発明を適用できるのは言うまでもない。
【0046】
また、第1、第2の実施例及びこれらの変形例において、フロントサイドフレーム8の水平部に第1通孔56を設けてあるが、これは、本発明が適用可能なチューブ状フレームの各部において最も低位に位置する部位に第1通孔56を設ける典型例であると理解すべきであり、従って、長さを有するチューブ状フレームにおいて最も低位に位置する部位に第1通孔56を設けるのに本発明が適用される。
【符号の説明】
【0047】
8 フロントサイドフレーム
8a フロントサイドフレームの水平部分
8c フロントサイドフレームの底壁部分
8d フロントサイドフレームの側壁部分
8e フロントサイドフレームの天井壁部分
24 ペリメータフレーム(サブフレーム)をマウントするためのブラケット
56 フロントサイドフレームの水平部分の底壁部分に設けた第1通孔
58 サブフレームマウント用のブラケットに設けた第2通孔
60 補強部材
62 補強部材に設けた第3通孔
70、72 隆起部(ビード)
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ状フレーム構造の自動車車体に関し、電着塗装の際に、チューブ状フレーム構造の剛性を損なうことなく、フレームを構成するチューブ内に侵入した塗装液を円滑に排出することのできる電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディの下地塗装の塗装方法として電着塗装法が採用されている。電着塗装は、電気メッキと同じ原理に基づいて、自動車ボディを塗料槽の中に漬け込むことで塗装を行う。このことから、塗料槽から自動車ボディを引き上げる際に、自動車ボディの各部の中に入り込んでいる塗料が円滑に排出するように、車体構造を設計することが必要となる。
【0003】
特許文献1は、ルーフサイドレールに関する電着塗装液の液抜き構造を提案している。具体的には、特許文献1に開示の発明は、ルーフサイドレールアウタと、該ルールサイドレールアウタにスポット溶接されたルーフドリップとの間に、上下に開放したドレーン通路を設けることを提案している。
【0004】
ところで、特許文献2に見られるようにハイドロフォーム成形法によって閉断面の中空部材を一体成形し、この中空部材の外側にアウターパネルを取り付けてフロントピラーを構成することが提案されている。
【0005】
同じように、特許文献3には、パイプ状の高張力鋼板を用いてハイドロフォーム成形法によって成形された補強部材を平面視コ字状に形作って、これを左右のフロントピラー、左右のルーフサイド、リヤヘッダに配設して車両のルーフのフレームを作ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−173378号公報
【特許文献2】特開2006−182079号公報
【特許文献3】特開2002−145117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近時の車両の車体構造は「モノコック」と呼ばれる手法に基づいて設計されるのが殆どである。本願発明者らは、上述した中空部材を使って車両のチューブ状フレーム構造を作り、そして、このチューブ状フレーム構造にアウタパネルを接合することで車体を作る研究を行っているが、中空部材で車体のフレームを構築するチューブ状フレーム構造を採用して電着塗装を施したところ、塗装液槽から車両を引き上げた際にフレームを構成する中空部材の中に入り込んだ塗装液の抜けが悪いことが確認できた。
【0008】
この問題は、特に、従来のモノコックボディのフロントサイドフレーム、ルーフサイドフレーム、サイドシルに相当する略水平方向に延びる中空部材において顕著であり、この問題を解消するために中空部材に数多くの塗装液排出孔を設けたときには、チューブ状フレーム構造の利点である剛性向上効果が低減してしまうことになる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、チューブ状フレーム構造を採用した自動車車体において、チューブ状フレームの剛性などを損なうことなく該チューブ状フレームの中に侵入した電着塗装液を円滑に排出させることのできる自動車車体のチューブ状フレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
自動車の車体構造に含まれるチューブ状フレームであって、該フレームを作るために溶接を行うためのフランジを備えていない閉断面の中空部材からなるフレームに電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造において、
該フレームの最も低位に位置する部位に上下に開放した第1通孔が形成されていることを特徴とする電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造を提供することにより達成される。
【0011】
本発明によれば、閉断面であり且つフレームを作るのに溶接するフランジを備えていないチューブ状フレームにおいて最も低位に位置する部位に上記の上下に開放した第1通孔を設けることで、当該第1通孔を通じて、チューブ状フレームの内部に侵入した電着塗装液を円滑に排出することができる。また、この第1通孔を最も低位に位置する部位という限定的に特定した位置に設けることで、第1通孔を設けることに伴うチューブ状フレームの剛性などの低下を抑制することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態では、前記フレームにおいて、前記第1通孔が設けられた部位又はその近傍に内方又は外方に突出した隆起部が設けられている。この実施の形態によれば、第1通孔の部位又はその近傍が隆起部によって剛性が高められているため、第1通孔を設けることに伴うチューブ状フレームの剛性などの低下に対する抑制効果が確実になる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態では、前記フレームにおいて、前記第1通孔が設けられた部位にブラケットが設けられ、該ブラケットに上下に開放した第2通孔が設けられている。このブラケットは、例えば、フロントサイドフレームに設けられて、サスペンション機構が設置されるサブフレームをフロントサイドフレームに搭載するためのブラケットであり、このブラケットには、上下に開放した第2通孔が形成される。これによれば、平面視したときに、ブラケットを介してサブフレームと重複するフロントサイドフレームの部分に上述した第1通孔が設けられることになるため、このサブフレームによっても、第1通孔を設けることに伴うチューブ状フレームの剛性などの低下に対する抑制効果が確実になる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態では、また、前記フレームがフロントサイドフレームであり、そして、このフロントサイドフレームには、その外部又は内部に添設された補強部材が設けられ、該補強部材に前記第1通孔と整合して位置する第3通孔が形成される。その一つの例が、前記フロントサイドフレームにエンジンをマウントするボルトを受け入れるスリーブナットを受け入れるエンジンマウントブラケットによって前記補強部材が構成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電着塗装液排出孔を備えたチューブ状フレーム構造を採用した車体前部を斜め前方から見た斜視図である。
【図2】図1の車体前部の側面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】図3に図示のチューブ状フレームの作り方を説明するための図である。
【図5】図3のチューブ状フレームに対する第1変形例を示す図である。
【図6】図3のチューブ状フレームに対する第2変形例を示す図である。
【図7】図3のチューブ状フレームに対する第3変形例を示すと共に図6の第2変形例の更なる変形例を示す図である。
【図8】第2実施例のチューブ状フレーム及びこれに付随する構造を示す図である。
【図9】第2実施例の第1変形例を示す側面図であり、フレームにボックス状のブラケットを設けた例を示す。
【図10】図9に関連した底面図である。
【図11】図9に関連した斜視図である。
【図12】第2実施例の第2変形例を示す側面図であり、フレームの内部にボックス状のブラケットを設けた例を示す。
【図13】第2実施例の第3変形例を示す側面図であり、フレームの側壁部分にビードを設けた例を示す。
【図14】図13に関連した底面図である。
【図15】図13に関連した斜視図である。
【図16】第2実施例の第4変形例を示す一部切欠き側面図であり、フレームの底壁部分に下方に向けて隆起した隆起部を設けた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0017】
第1実施例(図1〜図4):
図1、図2は、本発明の電着塗装液排出孔を備えたチューブ状フレーム構造を適用した車体前部を示す。この車体前部は、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル2と、上記ダッシュパネル2の車幅方向両端つまり左右の端に連結された左右のヒンジピラー(フロントピラー)4と、このヒンジピラー4から前方に延びる左右のエプロンフレーム6と、ダッシュパネル2の左右の端部且つ下端部から前方に延びる左右のフロントサイドフレーム8とを有する。
【0018】
エプロンフレーム6の前端部は下方に屈曲する形状を有し、このエプロンフレーム6の垂下部分6aの下端はフロントサイドフレーム8の前端部に連結されている。左右のフロントサイドフレーム8の前端にはクラッシュボックス10が連結され、この左右のクラッシュボックス10は、車幅方向に延びるバンパーフレーム12によって連結されている。
【0019】
また、エプロンフレーム6及びフロントサイドフレーム8の前後方向中間部分には、これらの間にサスタワー14が配設され、サスタワー14の上端がエプロンフレーム6に連結され、他方、サスタワー14の下端がフロントサイドフレーム8に連結されている。サスタワー14には、既知のように、前輪用のサスペンション機構が配設される。なお、図1及び図2に図示の参照符号16は板状部材を示し、この板状部材16を介してサスタワー14とフロントサイドフレーム8とが連結されている。
【0020】
なお、左右のエプロンフレーム6の垂下部6aには、車幅方向に延びる角パイプ18の端がブラケット20を介して連結されている。また、ダッシュパネル2の上端部に沿って車幅方向に延びるダッシュクロスメンバ22が配設され、このダッシュクロスメンバ22の左右の端はヒンジピラー4に連結されている。
【0021】
左右のフロントサイドフレーム8は、図2から最も良く分かるように、前端からサスタワー14の部位まで水平方向に延びており、そして、各フロントサイドフレーム8は、水平部分8aの後端から後方に且つ斜め下方に延びる傾斜部分8bを有している。
【0022】
フロントサイドフレーム8の水平部分8aと傾斜部分8bとの境界部分には、フロントサイドフレーム8の両側面及び底面を覆うように接合されたブラケット24が配設され、このブラケット24を介してサブフレームSF(図2)が取り付けられるようになっている。このサブフレームは、ペリメータフレームと称される従来から周知のフレームであり、このサブフレームに前輪サスペンション機構に含まれるアームが連結される。
【0023】
図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。エプロンフレーム6及びフロントサイドフレーム8はチューブ状フレームが採用されている。このチューブ状フレームは、特許文献2、3に記載のハイドロフォーム成形法によって作った中空部材であってもよいが、図示の例では、図4に示す手法を使って作られた断面略矩形の中空部材が採用されている。
【0024】
図4は、一枚の鉄系金属の板材30を曲げ加工することにより作られている。具体的に説明すると、鉄系金属からなる板材30は、フロントサイドフレーム8(水平部8a)の底壁部分8cを構成する中間部分30aを有し、この中間部分30aは上方に向けて膨出する湾曲した形状に形作られている。中間部分30aを挟んで左右に延びる部分30bは、フロントサイドフレーム8の左右の部分8dを構成し、この左右の部分30bの自由端部は、直角に屈曲した屈曲端部分30cで終端している。この左右の屈曲端部分30cは、フロントサイドフレーム8の天井壁部分8eを構成する。
【0025】
上記の形状に成形した板材30を予備成型品として予め用意し、この板材30に対して、所定の加工治具で上記上方に膨出した中間部分30aを下方に押圧して偏平化することで、上記左右部分30bが矢印で示す方向に揺動変位して起立し、そして、左右の屈曲端部分30cの端面が互いに対向した状態になる。そして、この左右の屈曲部分30cを互いに突き合わせた後に、この突き合わせ部分をワイヤーレーザ溶接などの片側連続溶接法によって接合することによりチューブ状フレームである中空部材を作ることができる。図3の参照符号32はレーザ溶接部分を示している。
【0026】
従来のモノコックボディでの閉断面構造ではフランジ部分をスポット溶接することにより作られているが、この中空部材にあっては連続溶接法によって作られており、また、中空部材を作る溶接部としてのフランジを備えていない点に特徴を有している。したがって、フロントサイドフレーム8を構成する中空部材を「フレーム形成用フランジ無しフレーム」と呼ぶことにする。
【0027】
第1変形例(図5):
図5は、フレーム形成用フランジ無しフレームの第1の変形例36を示す。図5のフレーム形成用フランジ無しフレーム36は、左右の屈曲端部分30cの端部に突き合わせ用フランジ36aを備え、この左右の突き合わせ用フランジ36aはフレーム36の閉断面の内部で互いに対面した状態になる。
【0028】
第2変形例(図6):
図6は、フレーム形成用フランジ無しフレームの第2の変形例40を示す。図6のフレーム形成用フランジ無しフレーム40は、断面コ字状の対をなす第1、第2の2つの予備成形品42、44を有し、この2つの予備成型品42、44を互いに嵌合して、互いに重なり合った部分をレーザ溶接のような片側連続溶接法によって接合することにより作られている。すなわち、第1、第2の予備成型品42、44は、中央部分42a、44の両端から屈曲して延びる2つの端部分42b、42c、44b、44cを備えた断面コ字状の形状を有し、第1の予備成型品42の2つの端部分42b、42cの間の間隔L1は、第2の予備成型品44の2つの端部分44b、44cの間の間隔L2よりも若干大きく(L1>L2)、第1の予備成型品42の端部分42b、42cの一部と、第2の予備成型品44の端部分44b、44cの一部とが互いに上下に重なり合った状態にある。
【0029】
第3変形例(図7):
図7は、上述した図6のフレーム形成用フランジ無しフレーム40の更なる変形例50を示す。この図7のフレーム形成用フランジ無しフレーム50にあっては、第1の予備成型品42の2つの端部分42b、42cの間の間隔L1と、第2の予備成型品44の2つの端部分44b、44cの間の間隔L2とが等しく(L1=L2)、第1の予備成型品42の端部分42b、42cに段部52を設け、この段部52によって第2の予備成型品44を受け入れることで、第1の予備成型品42の端部分42b、42cの一部と、第2の予備成型品44の端部分44b、44cの一部とが互いに上下に重なり合った状態を作るようにしてある。
【0030】
図3に戻って、フロントサイドフレーム8の水平部8aには、その下方にペリメータフレームを締結するためのブラケット24が設置された部位において、フレーム8の底壁8cに、上下に開放した第1通孔56が形成されている。この第1通孔56は、電着塗装液を液抜きするための排出孔を構成するものである。また、図3から分かるように、ペリメータフレームを搭載するためのブラケット24にも上下に開放した第2通孔58が形成されており、この第2通孔58は、好ましくは、第1通孔56と整合しているのがよい。第1、第2の通孔56、58は、直径7〜15mmの円形孔や、これと実質的に同じ開口面積を備えた長円形の孔であってもよい。
【0031】
第1実施例を図示した図3に基づいて第1通孔56を説明したが、上述した第1〜第3変形例(図5〜図7)についても同様に適用できるのは言うまでもない。
【0032】
上述した第1実施例及びその変形例によれば、フロントサイドフレーム8の水平部8aにおいて、ペリメータフレームマウント用ブラケット24を設けた部位に、電着塗装液を排出するための第1通孔56を設け、また、ブラケット24にも第2通孔58を設けたことから、この第1、第2の通孔56、58を通じて電着塗装液Wを円滑に排出することができる(図3)。また、チューブ状フレームで構成されたフロントサイドフレーム8に第1通孔56を設けたことに伴う剛性や潰れ耐力の低下をブラケット24によって実質的に補完されることから、チューブ状フレーム構造の剛性などが低下するのを抑制することができる。
【0033】
第2実施例(図8):
上述した第1実施例では、チューブ状フレームの水平部において、ブラケットが設けられた部位に電着塗装液を排出するための通孔を設けることを提案したが、この第2実施例にあっては、チューブ状フレームを部分的に補強した部位に、電着塗装液を排出するための通孔を設けることを提案するものである。
【0034】
図8には例示的にフロントサイドフレーム8を図示してあるが、これは一例に過ぎず、自動車ボディに適用されるチューブ状フレームつまりフレーム形成用フランジ無しフレームであれば任意の部位に対して適用可能である。
【0035】
フロントサイドフレーム8の水平部8aには、その一部を包囲する補強部材60が添設され、この補強部材60はフロントサイドフレーム8に対してレーザ溶接のような連続溶接法によって固定される。勿論、補強部材60を上下又は左右に半割にして、左右又は上下の補強部材ハーフ同士をフランジ結合することで、フロントサイドフレーム8の全周を包囲する補強部材60を作ることができる。
【0036】
補強部材60には、上記第1通孔56に対応する部位において上下に開放した第3の通孔62が設けられている。すなわち、この第3の通孔62と対応する部位であって、フロントサイドフレーム8の底壁部分8cに上述した第1の通孔56が形成されている。
【0037】
この補強部材60が配設される部位として例えばエンジンを搭載するためのエンジンマウントブラケットを配設する部位を挙げることができる。このエンジンマウントブラケットは、エンジンマウントボルトが締結されるスリーブナットを受け入れる部位であり、このエンジンマウントブラケットで上述した補強部材60を構成してもよい。
【0038】
図8には、補強部材60をフロントサイドフレーム8の外側に配設した例を図示してあるが、これに代えて、補強部材60をフロントサイドフレーム8の内側に配設するようにしてもよいのは勿論である。また、補強部材60は、フロントサイドフレーム8の全周を包囲する以外に、フロントサイドフレーム8の一部に添設するものであってもよい。
【0039】
第1変形例(図9〜11):
フロントサイドフレーム8が、その底壁部分8cに溶接したボックス状のブラケット66を備えている場合には、このブラケット66に、その下面に上下に開放した第4の通孔68を設け、この第4の通孔68と対応する部位であって、フロントサイドフレーム8の底壁部分8cに上述した第1の通孔56を形成するようにしてもよい。
【0040】
第2変形例(図12):
この第2変形例は、上記第1変形例の更なる変形例でもある。図12に示すように、フロントサイドフレーム8の内部において、底壁部分8cにブラケット66が固設されており、このブラケット66に第4の通孔68が設けられている。なお、ボックス状のブラケット66の側壁に切欠きを設け、この切欠きを通じて電着塗装液を排出するようにしてもよい。
【0041】
第3変形例(図13〜図15):
この第3変形例は、チューブ状フレームに電着塗装液を排出するための通孔を設ける場合に、これに対応する側壁や天井壁にフレームから外方に突出又は内方に凹んだ隆起部であるビードを設けて部分的に補強する例を示す。
【0042】
図15を参照して、フロントサイドフレーム8の水平部8aには、その側壁部分8dに内方に隆起した(内方に向けて凸形状の)隆起部としてのビード70を有し、このビード70は、フロントサイドフレーム8の長手方向に長い長方形の形状を有している。そして、このビード70が設けられている部位に対応する部位つまりビード70の長手方向中間部分に相当する部位において、フロントサイドフレーム8の底壁部分8cに第1通孔56が形成されている。
【0043】
第4変形例(図16):
この第4変形例は上述した第3変形例の更なる変形例でもある。図16から分かるように、フロントサイドフレーム8の水平部分8aにおいて、その底壁部分8aには下方に向けて突出した隆起部としてのビード72が設けられており、このビード72に第1通孔56が形成されている。ビード72は、図示の例では、平面視したときに矩形の形状を有しているが、円形、長円形、長方形であってもよい。
【0044】
この第2実施例によれば、補強部材としての補強板60、ブラケット66、ビード70、72が設けられている部位に、電着塗装液を排出するための通孔56を設けてあるため、この通孔56を設けたことに伴うチューブ状フレーム構造の剛性などが低下するのを抑制することができる。
【0045】
補強板60やブラケット66などを設ける場合に、図3〜図7に例示した手法によって形成されるチューブ状フレームを採用するのが好適であるのは言うまでもない。また、第1、第2の実施例及びこれらの変形例に関してフロントサイドフレーム8を例に説明したが、チューブ状フレーム構造に用いられた各部のフレームに対して本発明を適用できるのは言うまでもない。
【0046】
また、第1、第2の実施例及びこれらの変形例において、フロントサイドフレーム8の水平部に第1通孔56を設けてあるが、これは、本発明が適用可能なチューブ状フレームの各部において最も低位に位置する部位に第1通孔56を設ける典型例であると理解すべきであり、従って、長さを有するチューブ状フレームにおいて最も低位に位置する部位に第1通孔56を設けるのに本発明が適用される。
【符号の説明】
【0047】
8 フロントサイドフレーム
8a フロントサイドフレームの水平部分
8c フロントサイドフレームの底壁部分
8d フロントサイドフレームの側壁部分
8e フロントサイドフレームの天井壁部分
24 ペリメータフレーム(サブフレーム)をマウントするためのブラケット
56 フロントサイドフレームの水平部分の底壁部分に設けた第1通孔
58 サブフレームマウント用のブラケットに設けた第2通孔
60 補強部材
62 補強部材に設けた第3通孔
70、72 隆起部(ビード)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体構造に含まれるチューブ状フレームであって、該フレームを作るために溶接を行うためのフランジを備えていない閉断面の中空部材からなるフレームに電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造において、
該フレームの最も低位に位置する部位に上下に開放した第1通孔が形成されていることを特徴とする電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【請求項2】
前記フレームにおいて、前記第1通孔が設けられた部位又はその近傍に内方又は外方に突出した隆起部が設けられている、請求項1に記載の電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【請求項3】
前記フレームにおいて、前記第1通孔が設けられた部位にブラケットが設けられ、該ブラケットに上下に開放した第2通孔が設けられている、請求項1に記載の電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【請求項4】
前記フレームがフロントサイドフレームであり、
前記ブラケットが、サスペンション機構が設置されるサブフレームを前記フロントサイドフレームに搭載するためのブラケットであり、
該ブラケットに上下に開放した第2通孔が形成されている、請求項3に記載の電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【請求項5】
前記フレームがフロントサイドフレームであり、
前記フロントサイドフレームには、その外部又は内部に添設された補強部材が設けられ、該補強部材に前記第1通孔と整合して位置する第3通孔が形成されている、請求項1に記載の電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【請求項6】
前記フロントサイドフレームにエンジンをマウントするボルトを受け入れるスリーブナットを受け入れる部材によって前記補強部材が構成されている、請求項5に記載の電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【請求項1】
自動車の車体構造に含まれるチューブ状フレームであって、該フレームを作るために溶接を行うためのフランジを備えていない閉断面の中空部材からなるフレームに電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造において、
該フレームの最も低位に位置する部位に上下に開放した第1通孔が形成されていることを特徴とする電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【請求項2】
前記フレームにおいて、前記第1通孔が設けられた部位又はその近傍に内方又は外方に突出した隆起部が設けられている、請求項1に記載の電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【請求項3】
前記フレームにおいて、前記第1通孔が設けられた部位にブラケットが設けられ、該ブラケットに上下に開放した第2通孔が設けられている、請求項1に記載の電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【請求項4】
前記フレームがフロントサイドフレームであり、
前記ブラケットが、サスペンション機構が設置されるサブフレームを前記フロントサイドフレームに搭載するためのブラケットであり、
該ブラケットに上下に開放した第2通孔が形成されている、請求項3に記載の電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【請求項5】
前記フレームがフロントサイドフレームであり、
前記フロントサイドフレームには、その外部又は内部に添設された補強部材が設けられ、該補強部材に前記第1通孔と整合して位置する第3通孔が形成されている、請求項1に記載の電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【請求項6】
前記フロントサイドフレームにエンジンをマウントするボルトを受け入れるスリーブナットを受け入れる部材によって前記補強部材が構成されている、請求項5に記載の電着塗装液排出孔を備えた自動車車体のチューブ状フレーム構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−235012(P2010−235012A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86647(P2009−86647)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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