説明

電磁弁のソレノイドおよび該ソレノイドのコアおよび中間リングの製造方法

【課題】 コアに形成された吸引特性形状部の組み付け時における損傷を防止し、これによって、ソレノイドの組み付け作業性を向上させる。
【解決手段】 プランジャ18を吸引する磁性材よりなるコア15に吸引特性を決定する吸引特性形状部31を形成し、コア15と内筒(内側ヨーク部)の間の磁気遮蔽を行う中間リング25に吸引特性形状部31の補完形状からなる被覆部40を形成し、これら吸引特性形状部31と被覆部40とを密着させて一体的に焼結し、このコア15と中間リング25の一体焼結体を電磁コイル17の内周に挿入して内筒16の円筒部24端面と中間リング25端面を当接させる構成とした。この結果、コア15と中間リング25を電磁コイル17の内周に挿入する時に吸引特性形状部31を被覆部40によって保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁コイルの励磁によりプランジャを駆動する電磁弁のソレノイド、該ソレノイドのコアおよび中間リングの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に装備されたオートマチックトランスミッションのクラッチ圧を制御するために電磁弁が設けられており、その電磁弁によりクラッチ圧が所定の圧力に制御されるようになっている。この種の電磁弁では、ソレノイドのプランジャの吸引力を制御することにより、クラッチ圧を所定の圧力に制御している。
【0003】
従来、プランジャの吸引特性を決定するものとして、特許文献1に記載されているようなものが知られている。かかる特許文献1の電磁弁のソレノイドでは、特許文献1の図1に示されるように、環状のソレノイド(電磁コイル)6の周囲に磁性材からなるヨーク(内側ヨーク)8、コア7およびカバー(外側ヨーク)9等を備えている。ヨーク8は、円筒状を成し、電磁コイル6の内周に嵌挿されている。コア7は、円筒状を成し、ヨーク8に同軸上に直列に配置されている。コア7とヨーク8の間にはエアギャップが形成されている。このエアギャップは、コア7とヨーク8との間の磁気遮蔽の役目を果たし、ソレノイド6、コア7、ヨーク8、プランジャ12、およびカバー9とで構成される磁気回路におけるコア7とプランジャ12間の磁気受渡し部を構成している。かかる特許文献1の電磁弁のソレノイドにおいては、コア7の一端部に所定角度で傾斜するテーパ状の突出端部(吸引特性形状部)17aを形成し、起磁力の小さい低電流部では、プランジャ12のストロークに応じて、突出端部17aの磁気絞り部の面積が増加し、磁気抵抗が減少することから、磁気飽和の度合いが小さくなり、プランジャ12のストロークに対して吸引力の変化の少ないフラットな吸引力特性が得られるようにしている。
【特許文献1】特開平11―287348号公報(段落番号[0020]〜[0023]、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたソレノイドに形成された突出端部17aの形状は、上述したようにプランジャ12の吸引特性を決定するうえで重要である。ところが、突出端部17aは外部に剥き出しの状態で組み付けられるため、損傷する虞れがあった。また、損傷を防止するため、組付け時に細心の注意を払う必要があり、組付け作業を困難にしていた。
【0005】
さらに、コア7とヨーク8の間に形成されたエアギャップの幅もプランジャ12の吸引特性を決定するうえで重要である。このエアギャップの幅を確定するために特許文献1では、カバー9の両端に凹溝を形成し、この凹溝にコア7のフランジ部18およびヨーク8の各一端を嵌合してカバー9をかしめてコア7およびヨーク8を位置決め固定し、前記エアギャップの幅を確定していた。しかしながら、コア7のフランジ部18およびヨーク8の各一端は、前記エアギャップから離れた位置にあるうえ、位置決め固定のためにカバー9をかしめたときに、コア7およびヨーク8が移動して前記エアギャップの幅が変化してしまう虞れがあった。
【0006】
このため、図5に示すように、コア7およびヨーク8の外周側の電磁コイル6の内周面との間に薄肉リングAを介在する方法も考えられる。この場合には、薄肉リングAが、カバー9のかしめによるコア7およびヨーク8の接近を阻止し、エアギャップを所定の幅に管理できる。ところが、薄肉リングAがフランジ部18に当接することによってフランジ部18の内側角部に応力集中が生じ、フランジ部18が内側に撓んで傾いてしまい。フランジ部18の外周面とカバー9の内周面との間に隙間が形成され、磁気通路が狭くなる問題があった。
【0007】
本発明は、上述した従来の不具合を解消するためになされたもので、電磁弁のソレノイドにおいて、組み付け時における吸引特性形状部の損傷を防止するとともに、磁気通路を一定に確保して特性を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、磁性材のコアを円筒状に形成し、コアと非磁性材の中間リングおよび磁性材のヨークを同軸上に配置し、コア、ヨークおよび中間リングに穿設された内周穴に摺動自在にプランジャを挿入し、コアおよびヨークとの間に環状の電磁コイルを配置し、電磁コイルによってプランジャを吸引作動するようにした電磁弁のソレノイドにおいて、コアを、中間リング側一端部にプランジャの吸引特性を決定する吸引特性決定部を形成した焼結体とし、中間リングを、吸引特性形状部と補完形状の被覆部を端部に形成した焼結体とし、コアの吸引特性形状部と中間リングの被覆部とを密着させて一体的に結合し、中間リングの端面をヨークの端面に当接させたことである。
【0009】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1において、吸引特性形状部を、中間リングに近づくにつれて断面積が減少するテーパ部と、このテーパ部先端から突設され、テーパ部先端の外径より小径の薄肉円筒部にて構成したことである。
【0010】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1または請求項2において、ヨークを、電磁コイルの内周に嵌挿されるとともに、電磁コイルの後端面と対向するフランジ部を形成した内側ヨーク部と、電磁コイルの外周を包囲する外側ヨーク部とで構成し、円筒状のコアの中間リング側一端部と反対の他端部に径方向に突設する環状鍔部を外側ヨークの内周面に対向するとともに、電磁コイルの前端面と当接するように形成し、コアを内側ヨーク部側に押圧し、中間リングの端面を内側ヨーク部の端面に当接される固定部を外側ヨーク部のコア側開口端に形成したことである。
【0011】
請求項4に記載の発明の特徴は、磁性材のコアを円筒状に形成し、コアと非磁性材の中間リングおよび磁性材のヨークを同軸上に配置し、コア、ヨークおよび中間リングに穿設された内周穴に摺動自在にプランジャを挿入し、コアおよびヨークの間に環状の電磁コイルを配置し、電磁コイルによってプランジャを吸引作動するようにした電磁弁のソレノイドのコアおよび中間リングの製造方法において、円筒状のコアを、プランジャの吸引特性を決定する吸引特性形状部を一端部に形成して磁性焼結粉体にて成形する第1工程と、中間リングを、吸引特性形状部と補完形状の被覆部を端部に形成して非磁性焼結粉体にて成形する第2工程と、第1工程にて成形したコアの吸引特性形状部および第2工程にて成形した中間リングの被覆部を加工工具によってそれぞれ加工するとともに、コアまたは中間リングの外周面に内周穴の加工基準部を形成する第3工程と、コアの吸引特性形状部と中間リングの被覆部とを密着させ、コアおよび中間リングを一体的に焼結する第4工程と、加工基準部を基準にしてコアおよび中間リングの内周穴を共加工する第5工程とによって構成されることである。
【0012】
請求項5に記載の発明の特徴は、磁性材のコアを円筒状に形成し、コアと非磁性材の中間リングおよび磁性材のヨークを同軸上に配置し、コア、ヨークおよび中間リングに穿設された内周穴に摺動自在にプランジャを挿入し、コアおよびヨークの間に環状の電磁コイルを配置し、電磁コイルによってプランジャを吸引作動するようにした電磁弁のソレノイドのコアおよび中間リングの製造方法において、円筒状のコアを、プランジャの吸引特性を決定する吸引特性形状部を一端部に形成して磁性焼結粉体にて成形する第1工程と、 第1工程にて成形したコアの吸引特性形状部を加工工具によって加工するとともに、コアの外周面に内周穴の加工基準部を形成する第2工程と、 第2工程にて吸引特性形状部を加工したコアの吸引特性形状部を底面とする型枠に、非磁性粉体を型込めして中間リングをコアに連続して形成する第3工程と、コアおよび中間リングを一体焼結する第4工程と、加工基準部を基準にしてコアおよび中間リングの内周穴を共加工する第5工程とによって構成されることである。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、コアの一端部に形成された吸引特性形状部と補完形状にある被覆部を形成した非磁性材の焼結体で中間リングを形成し、前記吸引特性形状部と被覆部とを密着させ、コアと中間リングを一体結合したことにより、吸引特性形状部が中間リングの被覆部に保護されるので、組み付け時などに電磁コイル等の部品と衝突して損傷することを防止できる。
【0014】
また、コアと中間リングが一体結合されていることから、電磁コイルの内周にコアと中間リングを同時に挿入することができるので、組み付け時間を短縮することができる。
【0015】
さらに、中間リングの端面とヨークの端面を当接させることにより、従来のエアギャップの幅に相当するコアとヨークとの間の距離を維持することができるので、磁気通路を一定に確保して特性を安定させることができる。
【0016】
上記のように構成した請求項2に係る発明によれば、プランジャのストロークに対して吸引力の変化の少ないフラットな吸引力特性を得るために形成されたテーパ部に続き、起磁力の小さい低電流部において、磁気飽和の度合いを大きくしてストロークに対する吸引力を低下させる吸引力特性を得るための薄肉円筒部からなる吸引特性形状部を備えた場合においても、中間リングの被覆部がテーパ部および薄肉円筒部を保護するので、組み付け時などに電磁コイル等の部品と衝突して損傷することを防止できる。
【0017】
上記のように構成した請求項3に係る発明によれば、中間リングの端面と内側ヨークの端面を当接させることにより、従来のエアギャップの幅に相当するコアと内側ヨークとの間の距離を維持することができる。これにより、外側ヨーク部の固定部によりコアを中間リングの端面が内側ヨークの端面に当接するように押圧しても、従来のように前記薄肉リングが環状鍔部に当接し、集中応力が発生して環状鍔部が撓んで傾くことがなくなり、前記環状鍔部の外周面と外側ヨーク内周面との間の接触不良を防止することができる。
【0018】
上記のように構成した請求項4に係る発明によれば、コアと中間リングを一体焼結する以前の柔軟な状態に或る成形時に、吸引特性形状部、被覆部および内周穴の共加工の基準となる加工基準部を加工するので、容易に加工することができる。
【0019】
また、成形時に吸引特性形状部および被覆部を加工することにより、コアおよび中間リングの一体焼結時における吸引特性形状部および被覆部の密着性を向上させることができる。さらに、加工が容易な成形時に加工基準部を形成するので、一体焼結後に行われる共加工において、コアおよび中間リングに偏肉等が発生することを防止することができる。
【0020】
上記のように構成した請求項5に係る発明によれば、吸引特性形状部を型枠の一部として中間リングを成形するため、吸引特性形状部および被覆部を密着させる工程等の製造工程を短縮することができる。また、コアおよび中間リングの一体焼結時における吸引特性形状部および被覆部の密着性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図4に基づいて説明する。図1において、本実施の形態の電磁弁10は、主として、ソレノイド11と、そのソレノイド11の一端に設けられたスプール弁部12とによって構成されている。ソレノイド11は、ヨーク13、コア15、中間リング25、電磁コイル17、およびプランジャ18等を備えており、スプール弁部12は弁スリーブ19とスプール20等を備えている。
【0022】
ヨーク13は、磁性材からなるカバー14(外側ヨーク部)および内筒16(内側ヨーク部)から構成されている。カバー14は、有底円筒状に形成され、このカバー14の底部側に全体として筒状を成す内筒16が収納されている。また、カバー14の開口部側に磁性材の焼結体からなるコア15が収納されている。コア15には、円筒部22が形成され、円筒部22は、非磁性材の焼結体からなる中間リング25を挟んで内筒16と同軸上に配置されている。この円筒部22の中間リング25側の一端部には後述する吸引特性形状部31が形成され、他端部には、径方向に突出して環状鍔部21が形成されている。内筒16には他端が中間リング25の端面と当接する円筒部24が形成されるとともに、カバー14の底部側にフランジ部23が形成されている。内筒16のフランジ部23はカバー14の底部に嵌合され、コア15の環状鍔部21はカバー14の開口端に嵌合され、これら環状鍔部21とフランジ部23および、両円筒部22,24間に環状空間部26が形成されている。環状空間部26にはボビン27にコイルを巻回した電磁コイル17が嵌入されている。
【0023】
図2に示すように、内筒16の円筒部24には、貫通穴28が穿設され、貫通穴28内には磁性材からなるプランジャ18が摺動可能に挿入されている。中間リング25およびコア15の内筒16側の端面には、前記プランジャ18の外径より僅かに大きな内径の収容凹部30が所定の深さに亘って開口されている。収容凹部30にはプランジャ18の端部が収容可能となっており、収容凹部30の深さはプランジャ18に必要なストロークより僅かに大きく設定されている。これら収容凹部30、および貫通穴28によって内周穴38が構成されている。
【0024】
前記コア15の中間リング25側の一端部、収容凹部30の開口周縁には、中間リング25に近づくにつれて断面積が減少するテーパ部32が形成され、このテーパ部32の先端には、薄肉円筒部33が突設され、これら薄肉円筒部33およびテーパ部32により吸引特性形状部31が構成されている。薄肉円筒部33は、テーパ部32の先端の外径より小径に形成されている。かかる吸引特性形状部31は、電磁コイル17、コア15、内筒16、プランジャ18、およびカバー14とで構成される磁気回路におけるコア15とプランジャ18間の磁気受渡し部を構成している。
【0025】
中間リング25の吸引特性形状部31側端面には、吸引特性形状部31と補完形状の被覆部40が形成され、被覆部40および吸引特性形状部31は、密着して一体結合されている。コア15の円筒部22と内筒16の円筒部24は軸方向に中間リング25を挟んで配置され、この中間リング25によってコア15と内筒16は、磁気的に分離された状態にされている。
【0026】
カバー14の開口端側に位置するコア15の後端面には、スプール20を摺動可能に嵌装する弁スリーブ19が配設されている。そして、カバー14の開口側筒状端部14aを、弁スリーブ19に形成されたフランジ部34とコア15の環状鍔部21とを接合させた状態でかしめることにより、弁スリーブ19に対してソレノイド11を一体結合している。これにより、カバー14内に収納されたコア15と内筒16は、カバー14の底部と弁スリーブ19のフランジ部34との間で軸方向に固定されるようになっている。
【0027】
前記弁スリーブ19には、径の異なる第1の弁孔35と第2の弁孔36が形成されるとともに、この第2の弁孔36に接続するばね収容孔37が形成されている。これら各弁孔35、36およびばね収容孔37は、前記コア15およびプランジャ18と同軸上に延びるように形成されている。
【0028】
前記スプール20には、前記第1の弁孔35にそれぞれ嵌合する第1および第2のランド部41、42と、前記第2の弁孔36に嵌合する第3のランド部43が設けられている。第2のランド部42と第3のランド部43は互いに隣接して設けられ、その境界部に段差部44が設けられている。段差部44に連通するフィードバックポート45が弁スリーブ19に形成されている。
【0029】
前記第1および第2のランド部41、42は軸方向に所定量離間して設けられ、小径部46によって互いに連結されている。小径部46に対応して環状溝47が前記弁スリーブ19に形成され、この環状溝47に制御圧を出力する出力ポート48が連通されている。出力ポート48は、図略の連通路を介して前記フィードバックポート45に連通されている。また、前記弁スリーブ19には、前記第1および第2のランド部41、42の互いに対向する端面にそれぞれ対応して開口する排出ポート49および供給ポート50が形成されている。さらに、前記弁スリーブ19には、ばね収容孔37に開口するドレンポート51が形成されている。なお、前記スプール20の一端には、コア15の貫通穴を貫通してプランジャ18に当接するシャフト部52が突設されている。
【0030】
前記ばね収容孔37の開口端はその内周面に形成されたねじ孔に螺合するプラグ53によって閉塞され、このプラグ53とスプール20の間にばね54が設けられている。スプール20はばね54の付勢力によってプランジャ18に向けて押圧され、これにより、スプール20のシャフト部52を介してプランジャ18が、通常カバー14の底面に当接する初期位置に保持されている。かかるプランジャ18の初期位置において、図1および図2に示すように、コア15の吸引特性形状部31の端縁とプランジャ18の端縁とが軸方向にほぼ一致されている。
【0031】
次に、上記した構成の本実施の形態における作用について説明する。電磁コイル17が非励磁状態の場合には、スプール20は、ばね54の付勢力によりプランジャ18を図1の右方向に押圧し、プランジャ18をカバー14の底面に当接する初期位置に保持している。この非励磁状態においては、出力ポート48は、供給ポート50との連通が遮断されているとともに、排出ポート49に連通され、これによって出力ポート48は低圧に保持されている。
【0032】
電磁コイル17を励磁すると、プランジャ18がコア15側へ引き寄せられることにより前記ばね54の付勢力に抗してスプール20が変位する。その結果、第2のランド部42が供給ポート50を開口し始めるとともに、第1のランド部41が排出ポート49の開口面積を制限し始めるので、出力ポート48の制御圧は次第に上昇される。
【0033】
前記制御圧は、また、フィードバックポート45に導入され、第2のランド部42と第3のランド部43の境界部に設けられた段差部44に作用する。このため、第2のランド部42と第3のランド部43との面積差と制御圧との積によって求められるフィードバック力がばね54の付勢方向と同方向に作用する。
【0034】
すなわち、かかる電磁弁10においては、ソレノイド17に通電される電流値に応じてコア15がプランジャ18を吸引する吸引力と、ばね54の付勢力および前記フィードバック力の合力とがバランスする位置にスプール20が保持され、これによって制御圧はソレノイド17に通電された電流値に応じた圧力に制御される。
【0035】
本実施の形態においては、テーパ部32の先端に薄肉円筒部33を設けたことにより、起磁力の小さい低電流部においては、徐々に磁気飽和の度合いが大きくなり、プランジャ18のストロークに対して吸引力が低下する右下がりの吸引力特性が得られる。一方、プランジャ18が所定量ストロークして、プランジャ18の端縁が吸引特性形状部31のテーパ部32に達すると、テーパ部32の影響によって、プランジャ18のストロークに対して吸引力がほとんど変化しないほぼフラットな吸引力特性が得られる。
【0036】
上記した電磁弁のソレノイドは、以下のように組み付けられる。はじめに、内筒16の円筒部24が電磁コイル17の一方側から内周に挿入され、フランジ部23がボビン27の後端面と対向される。続いて一体化されたコア15と中間リング25が他方側から挿入され、中間リング25の端面が内筒16の円筒部24の端面に当接する。このとき、コア15の先端に形成された吸引特性形状部31は、中間リング25に保護されていることから、電磁コイル17などに接触して損傷することが防止できる。
【0037】
この後、内筒16、中間リング25およびコア15に形成された内周穴38にプランジャ18が挿入され、これら組み付けられた電磁コイル27、コア15、中間リング25、内筒16およびプランジャ18は、カバー14の内部に収納されてソレノイド11が組み付けられる。
【0038】
そして、別途組み付けられたスプール弁部12の弁スリーブ19に形成されたフランジ部34をカバー14の開口に挿入し、コア15の環状鍔部21とを接合させ、筒状端部14aをかしめてソレノイド11とスプール弁部12が一体化される。この筒状端部14aのかしめにより、弁スリーブ19のフランジ部34およびコア15の環状鍔部21は、内筒16側に押圧される。これにより、中間リング25の端面と内筒16の円筒部22端面とが当接されるので、従来のエアギャップの幅に相当するコア15と内筒16の円筒部22(内側ヨーク部)との間の距離を維持することができる。従って、カバー14の筒状端部14a(固定部)により環状鍔部21の側面を円筒部22側に押圧しても、従来のように薄肉リングが環状鍔部21に当接し、集中応力が発生して環状鍔部21が撓んで傾くことがなくなり、環状鍔部21の外周面とカバー14の内周面との間の接触不良を防止することができる。
【0039】
上記実施の形態において、ヨーク13を構成するカバー14と内筒16とをそれぞれ別々に形成したが、これらカバー14と内筒16とを一体的な構成としてもよい。
【0040】
次に、上記構成における電磁弁10のソレノイド11に用いられるコア15および中間リング25の製造方法を図3によって説明する。
【0041】
コア15および中間リング25は、それぞれ異なる材質の粉体から製造される。例えば、コア15は、鉄等の磁性材の粉体が用いられ、中間リング25は、ステンレス等の非磁性材の粉体を用いて製造される。
【0042】
第1工程では、図3(a)に示すように、磁性材の粉体を図略の金型に封入して加圧し、円筒部22の一端に、吸引特性形状部31が形成され、他端に環状鍔部21が形成されたコア15の成形体を成形する。
【0043】
第2工程では、図3(b)に示すように、非磁性材の粉体を図略の金型に不入して加圧し、一端に被覆部40が形成された中間リング25の成形体を形成する。
【0044】
第3工程では、形成された中間リング25の被覆部40およびコア15の吸引特性形状部31を図3(d)、(c)に示すようにバイト等の切削工具や砥石などの加工工具Tによって旋盤等の工作機械を用いて加工する。また、コア15の環状鍔部21の外周面を真円になるように加工し、収容凹部30を共加工する際の加工基準部を形成する。これによりコア15と中間リング25を一体焼結する以前の軟質な状態である成形時に、吸引特性形状部31、被覆部40および収容凹部30の共加工の基準となる加工基準部を加工するので、容易に加工することができる。
【0045】
また、成形時に、吸引特性形状部31および被覆部40を加工することにより、コア15および中間リング25を一体的に焼結するときにおける吸引特性形状部31および被覆部40の密着性を向上させることができる。さらに、加工が容易な成型時に加工基準部を形成するので、一体的に焼結した後に行われる共加工において、コア15および中間リング25に偏肉等が発生することを防止することができる。なお、加工基準部は、環状鍔部21の外周面以外に形成してもよいが、環状鍔部21の外周面を加工基準部とすれば、その面粗度が良好になってカバー15の内周面との密着性を向上して広い磁気通路を確保することができる。
【0046】
第4工程では、図3(e)に示すように、吸引特性形状部31と被覆部40を密着させて焼結する。これによりコア15および中間リング25が一体結合され、吸引特性形状部31が被覆部40に覆われる。このため、吸引特性形状部31を保護することができる。特に本実施の形態のように、損傷しやすい薄肉円筒部33を形成した場合には有効である。
【0047】
第5工程では、図3(f)に示すように、加工基準部をクランプして回転させて一体的に焼結されたコア15および中間リング25の収容凹部30をバイト等の加工工具Tを用いて共加工する。この共加工によってコア15および中間リング25の同心性を向上することができる。
【0048】
また、上記した製造方法以外にも中間リング25およびコア15を製造することができる。以下、他の製造方法を図4によって説明する。
【0049】
第1工程では、図4(a)に示すように、磁性材の粉体を図略の金型に封入して加圧し、コア15の成形体を成形する。第2工程では、成形されたコア15の吸引特性形状部31を図4(b)に示すようにバイト等の切削工具や砥石などの加工工具Tによって加工する。また、コア15の環状鍔部21の外周面を図4(b)に示すように加工し、収容凹部30を共加工する際の加工基準部を形成する。
【0050】
第3工程では、図4(c)に示すように、コア15を環状鍔部21が下を向くように配置し、環状鍔部21の外周面に円筒状の枠体60を嵌合する。さらに、コア15の収容凹部30に相当する穴部に円柱状の中子61が嵌合される。この状態において非磁性粉体を枠体60内に充填して加圧する。これによってコア15の吸引特性形状部31を底面とする型枠に、非磁性粉体を型込めして中間リング25をコア15に連続して成形することができる。これにより、上述の製造方法における吸引特性形状部31および被覆部40を加工する工程(図3(c)、(d))を省略できる。また、中間リング25の成形時点で吸引特性形状部31に被覆部40が密着していることから、コア15および中間リング25の一体焼結時における吸引特性形状部31および被覆部40の密着性を向上させることができる。その後、図4(d)に示すように、枠体60および中子61を取外し、図4(e)に示すように、第4工程において中間リング25とコア15を焼結する。そして、第5工程において、図4(f)に示すように、加工基準部をクランプして回転させて一体的に焼結されたコア15および中間リング25の収容凹部30をバイト等の加工工具Tを用いて共加工する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態を示す電磁弁の断面図である。
【図2】図1の要部を拡大した図である。
【図3】本発明の実施の形態を示すコアおよび中間リングの製造方法を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態を示すコアおよび中間リングの他の製造方法を説明する図である。
【図5】従来における電磁弁のソレノイドの断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10…電磁弁、11…ソレノイド、12…スプール弁部、14…カバー、15…コア、17…電磁コイル、18…プランジャ、19…弁スリーブ、20…スプール、21…環状鍔部、30…収容凹部、31…吸引特性形状部、32…テーパ部、33…薄肉円筒部、35,36…弁孔、34…被覆部、41,42,43…ランド部、45…フィードバックポート、48…出力ポート、49…排出ポート、50…供給ポート、54…ばね。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材のコアを円筒状に形成し、前記コアと非磁性材の中間リングおよび磁性材のヨークを同軸上に配置し、前記コア、ヨークおよび中間リングに穿設された内周穴に摺動自在にプランジャを挿入し、前記コアおよびヨークとの間に環状の電磁コイルを配置し、該電磁コイルによって前記プランジャを吸引作動するようにした電磁弁のソレノイドにおいて、
前記コアを、前記中間リング側一端部に前記プランジャの吸引特性を決定する吸引特性決定部を形成した焼結体とし、
前記中間リングを、前記吸引特性形状部と補完形状の被覆部を端部に形成した焼結体とし、
前記コアの吸引特性形状部と前記中間リングの被覆部とを密着させて一体的に結合し、
前記中間リングの端面を前記ヨークの端面に当接させたことを特徴とする電磁弁のソレノイド。
【請求項2】
請求項1において、前記吸引特性形状部を、前記中間リングに近づくにつれて断面積が減少するテーパ部と、このテーパ部先端から突設され、前記テーパ部先端の外径より小径の薄肉円筒部にて構成したことを特徴とする電磁弁のソレノイド。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記ヨークを、前記電磁コイルの内周に嵌挿されるとともに、該電磁コイルの後端面と対向するフランジ部を形成した内側ヨーク部と、前記電磁コイルの外周を包囲する外側ヨーク部とで構成し、
前記円筒状のコアの中間リング側一端部と反対の他端部に径方向に突設する環状鍔部を前記外側ヨークの内周面に対向するとともに、前記電磁コイルの前端面と当接するように形成し、
前記コアを前記内側ヨーク部側に押圧し、前記中間リングの端面を前記内側ヨーク部の端面に当接される固定部を前記外側ヨーク部の前記コア側開口端に形成したことを特徴とする電磁弁のソレノイド。
【請求項4】
磁性材のコアを円筒状に形成し、前記コアと非磁性材の中間リングおよび磁性材のヨークを同軸上に配置し、前記コア、ヨークおよび中間リングに穿設された内周穴に摺動自在にプランジャを挿入し、前記コアおよびヨークの間に環状の電磁コイルを配置し、該電磁コイルによって前記プランジャを吸引作動するようにした電磁弁のソレノイドの前記コアおよび中間リングの製造方法において、
前記円筒状のコアを、前記プランジャの吸引特性を決定する吸引特性形状部を一端部に形成して磁性焼結粉体にて成形する第1工程と、
前記中間リングを、前記吸引特性形状部と補完形状の被覆部を端部に形成して非磁性焼結粉体にて成形する第2工程と、
前記第1工程にて成形した前記コアの前記吸引特性形状部および前記第2工程にて成形した前記中間リングの被覆部を加工工具によってそれぞれ加工するとともに、前記コアまたは中間リングの外周面に前記内周穴の加工基準部を形成する第3工程と、
前記コアの前記吸引特性形状部と前記中間リングの被覆部とを密着させ、前記コアおよび中間リングを一体的に焼結する第4工程と、
前記加工基準部を基準にして前記コアおよび中間リングの内周穴を共加工する第5工程と、
によって構成されることを特徴とする電磁弁のソレノイドのコアおよび中間リングの製造方法。
【請求項5】
磁性材のコアを円筒状に形成し、前記コアと非磁性材の中間リングおよび磁性材のヨークを同軸上に配置し、前記コア、ヨークおよび中間リングに穿設された内周穴に摺動自在にプランジャを挿入し、前記コアおよびヨークの間に環状の電磁コイルを配置し、該電磁コイルによって前記プランジャを吸引作動するようにした電磁弁のソレノイドのコアおよび中間リングの製造方法において、
前記円筒状のコアを、一端部に前記プランジャの吸引特性を決定する吸引特性形状部を形成して磁性焼結粉体にて成形する第1工程と、
前記第1工程にて成形した前記コアの前記吸引特性形状部を加工工具によって加工するとともに、前記コアの外周面に前記内周穴の加工基準部を形成する第2工程と、
前記第2工程にて前記吸引特性形状部を加工した前記コアの該吸引特性形状部を底面とする型枠に、非磁性粉体を型込めして中間リングを前記コアに連続して形成する第3工程と、
前記コアおよび中間リングを一体焼結する第4工程と、
前記加工基準部を基準にして前記コアおよび中間リングの内周穴を共加工する第5工程と、
によって構成されることを特徴とする電磁弁のソレノイドのコアおよび中間リングの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−114625(P2006−114625A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299152(P2004−299152)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】