説明

電磁波シールド性フッ素ゴム−金属積層板

【課題】ゴム層のオーブン加硫が可能であり、柔軟で、電磁波シールド特性にもすぐれた電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板を提供する。
【解決手段】ポリオール加硫可能なフッ素ゴム100重量部当りポリエステル系可塑剤5〜40重量部、ポリオール系加硫剤0.5〜10重量部およびDBP吸油量が300cm3/100g以上でかつBET比表面積が700m2/g以上である導電性カーボンブラックを組成物中3〜20体積%となるように配合した導電性フッ素ゴム組成物を金属板上に積層し、フッ素ゴム層を加硫させた電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板。この電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板において、フッ素ゴム層の加硫はオーブン加硫によって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板に関する。さらに詳しくは、オーブン加硫が可能な電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器が高性能化するに従い、各機器は微小電流で作動するようになってきており、誤作動防止のための電磁波のシールドと、ちりや埃、水分等の侵入を防ぐためのシールとを、同時にみたすシール材が求められており、特許文献1〜2に記載されるような電磁波シールド性を備えたゴム材料が提案されている。しかしながら、これらの提案は組成物に関するものであり、このようなゴム組成物を用いてガスケット材を成形した場合には、形状によっては組み込みが困難となると考えられる。
【0003】
組み込み性の改善には、電磁波シールド性ゴム層を金属板等に積層させ、それをガスケット素材とすることが考えられる。特許文献3には、そのような電磁波シールド性ゴム積層板が提案されており、その作製手段としては、電磁波シールド性ゴム組成物溶液を金属板に塗布し、乾燥、プレス加硫後にガスケット形状に打ち抜く方法が示されている。しかしながら、このような一連の作製手順には、次のような問題点がみられる。
(1) プレス加硫では、加硫時にゴムが流れてしまう。
(2) 電磁波シールド性ゴム積層板の大部分が端材として廃棄されるため、材料コストがアップする。
(3) ゴム層が積層されているため、端材となった電磁波シールド性ゴムの再利用が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−105436号公報
【特許文献2】特開2002−359492号公報
【特許文献3】特開2003−232444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ゴム層のオーブン加硫が可能であり、柔軟で、電磁波シールド特性にもすぐれた電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明の目的は、ポリオール加硫可能なフッ素ゴム100重量部当りポリエステル系可塑剤5〜40重量部、ポリオール系加硫剤0.5〜10重量部およびDBP吸油量が300cm3/100g以上でかつBET比表面積が700m2/g以上である導電性カーボンブラックを組成物中3〜20体積%となるように配合した導電性フッ素ゴム組成物を金属板上に積層し、フッ素ゴム層を加硫させた電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板によって達成される。この電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板において、フッ素ゴム層の加硫はオーブン加硫によって行われる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板は、ゴム層のオーブン加硫が可能であり、ゴム硬度もデュロメーターAで90以下と柔軟であり、さらに同軸管法によるSパラメーター測定値が7dB以上と電磁波シールド特性の点でもすぐれている。
【0008】
また、金属板上への導電性フッ素ゴム溶液の適用がスクリーン印刷法によって行われた場合には、ゴム溶液の無駄をなくすと同時に、打ち抜かれた金属板端材の有効利用を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
電子機器への適用を考えると、加硫剤として硫黄を使用することは好ましくなく、また有機過酸化物を用いてオーブン架橋を行うには窒素置換などの設備が必要となるため、加工コストが上昇するという問題がみられる。このため、ポリマーの候補材としては、ポリオール加硫系フッ素ゴムやアミン加硫系アクリルゴムが考えられるが、耐水性や耐LLC(ロングライフクーラント)性にすぐれたポリオール加硫系フッ素ゴムがポリマーとして選定される。
【0010】
ポリオール架橋可能なフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、パーフルオロアクリル酸エステル、アクリル酸パーフルオロアルキル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等の単独重合体、相互共重合体またはこれらとプロピレンとの共重合体が挙げられ、好ましくはフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン-テトラフルオロエチレン3元共重合体、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体等が用いられ、一般には市販されているフッ素ゴムをそのまま使用することができる。
【0011】
ただし、フッ素ゴムは硬度が上昇し易く、電磁波シールド性付与のための導電性充填剤が少し配合しただけで硬度が上昇するので、電磁波シールド性とシール性とを同時に満足させるためには可塑剤を配合し、ベースとなるポリマーの硬度を下げることが絶対必要となる。
【0012】
フッ素ゴムの可塑剤としては、一般には液状フッ素ゴムが配合されて用いられているが、ゴム硬度を十分に低下させる迄液状フッ素ゴムを配合すると粘着してしまい、混練が困難となる。また、ポリエーテル系可塑剤を用いた場合には、オーブン加硫ができなくなる。これらの点を改善すべく検討を重ねた結果、エステル系可塑剤のみが所望の効果を達成せしめることを見出した。
【0013】
エステル系可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ポリアゼライン酸ネオペンチルグリコール等が用いられ、これらのエステル系可塑剤は、ポリオール加硫性フッ素ゴム100重量部当り約5〜40重量部、好ましくは約5〜25重量部の割合で用いることが特性上有効である。これ以上の割合で用いられると、柔軟性が高まり、ゴム硬度は低下するが、可塑剤がブリードする傾向がみられ、一方これ以下の割合で用いられると、オーブン加硫ができなくなったり、オーブン加硫で可能となってもゴム硬度の上昇が避けられない。
【0014】
ポリオール系加硫剤としては、例えば2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスノールA〕、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン〔ビスフェノールAF〕、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン〔ビスフェノールS〕、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン〔ビスフェノールF〕、ビスフェノールA-ビス(ジフェニルホスフェート)、4,4′-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン等が挙げられ、好ましくはビスフェノールA、ビスフェノールAFなどが用いられる。これらはまた、アルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩の形であってもよい。これらのポリオール系加硫剤は、一般にフッ素ゴム100重量部当り約0.5〜10重量部、好ましくは約0.5〜6重量部の割合で用いられる。
【0015】
ポリオール系加硫剤と共に、加硫促進剤としての第4級ホスホニウム塩または第4級アンモニウム塩である第4級オニウム塩化合物、好ましくは第4級ホスホニウム塩が用いられる。
【0016】
第4級ホスホニウム塩としては、次の一般式で示される化合物が用いられる。
(R1R2R3R4P)+X-
R1〜R4:炭素数1〜25のアルキル基、アルコキシル基、アリール基、アルキ
ルアリール基、アラルキル基またはポリオキシアルキレン基であり、ある
いはこれらの内2〜3個がNまたはPと共に複素環構造を形成することもでき

X-:Cl-、Br-、I-、HSO4-、H2PO4-、RCOO-、ROSO2-、CO3--等のアニオ

【0017】
具体的には、テトラフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、トリオクチルベンジルホスホニウムクロライド、トリオクチルメチルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムアセテート、テトラオクチルホスホニウムクロライド等が用いられる。これらの第4級ホスホニウム塩は、ポリオール加硫性フッ素ゴム100重量部当り約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜5重量部の割合で用いられる。
【0018】
また、ポリオール系加硫剤と共に、o-、m-またはp-クレゾール、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-または3,5-ジメチルフェノール、p-第3ブチルフェノール、p-n-オクチルフェノール、p-クミルフェノール、p-メトキシフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、p-フェニルフェノール等のモノフェノール系化合物を併用することも有効である。
【0019】
以上の各成分に加えて、ゴム材料に電磁波シールド性を付与するため、各種配合剤を配合したゴム組成物中3〜20体積%、好ましくは5〜15体積%を占める量(比重を参照して算出)の導電性カーボンブラックが必須成分として配合されて用いられる。このような導電性カーボンブラックの体積%の範囲は、電磁波シールド性の確保およびシール性を左右する必要なゴム硬度の確保という観点から選定される。
【0020】
導電性カーボンブラックとしては、DBP吸油量が300cm3/100g以上、好ましくは400cm3/100g以上で、かつBET比表面積が700m2/g以上、好ましくは1000m2/g以上のものが用いられる。これ以下のDBP吸油量およびBET比表面積がのものが用いられると、電磁波シール性を与えるためにより多くの添加量が必要となる。実際には、市販品であるライオン製品ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC600JD等がそのまま用いられる。
【0021】
必要な電磁波シールド性としては、同軸管法によるSパラメーターの測定で7dB以上であることが好ましく、またシール性を満足させるためには、デュロメーターAによるゴム硬度(JIS K6253準拠)が90以下であることが好ましい。
【0022】
以上の各成分を必須成分とするゴム組成物中には、受酸剤、その他の配合剤が必要に応じて配合される。受酸剤としては、加硫物の安定性および適切な加硫速度を与える2価金属の酸化物または水酸化物、例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、亜鉛華等やハイドロタルサイト類が好んで用いられるが、この他に炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の2価金属の炭酸塩等も用いられる。
【0023】
受酸剤以外の配合剤としては、通常ゴムに配合されている安定剤、滑剤、粘着性付与剤、内添離型剤、顔料、難燃剤等が挙げられ、また摩耗性、成形性などの改善のために少量の熱可塑性樹脂やゴムの添加、あるいは強度や剛性の向上のために短繊維等を添加することもできる。
【0024】
これらの各成分よりなる組成物は、通常のロール、ニーダ、インターミックス等のゴム混練機で混合することによって調製され、調製された導電性フッ素ゴム組成物は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン等のケトン系極性有機溶剤に溶解・分散させることにより、導電性ゴム溶液を形成させる。
【0025】
導電性ゴム溶液は、それをガスケット形状等所定の形状に打ち抜かれた金属板に塗布し、加硫することにより、電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板よりなるガスケット材を得ることができる。
【0026】
金属板としては、鉄、アルミニウム、銅等の金属板またはこれら合金の金属板が用いられ、一般にはSUS301、SUS301H、SUS304、SUS430等のステンレス鋼板が用いられる。電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板がガスケット素材として用いられる場合には、金属板の厚さは約0.05〜0.5mm程度に設定される。
【0027】
ガスケット形状等所定の形状に打ち抜かれた金属板への導電性ゴム溶液の塗布には、ガスケット素材向けであって、その大きさが比較的小さく、打ち抜き後の金属板に凹凸がなく、フラットな面を有する場合には、使用するゴム溶液が少量で済むという利点から、スクリーン印刷法が適用され、また打ち抜き後の金属板面に凹凸のあるビードが設けられているものに関しては、例えばフローコート法が適用される。
【0028】
金属板への導電性ゴム溶液の塗布に先立って、金属板にはプライマー塗布しておくことが好ましく、プライマーとしては、例えばクレゾールノボラック変性エポキシ樹脂の有機溶剤溶液を主剤とし、これにビスフェノールノボラックフェノール樹脂硬化剤およびイミダゾール系硬化触媒、好ましくは2-エチル-4-メチルイミダゾールを添加したエポキシフェノール樹脂および本発明で用いられる導電性フッ素ゴム組成物を有機溶剤に溶解させた有機溶剤溶液などが用いられる。この場合、有機溶剤としては好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン等のケトン系溶剤が用いられ、有機溶剤溶液中エポキシフェノール樹脂は約0.1〜10重量%、好ましくは約0.3〜7重量%の割合で、また導電性フッ素ゴム組成物は約1〜40重量%、好ましくは約3〜30重量%の割合で、それぞれ用いられる。
【0029】
プライマーの金属板への適用は、浸漬法などによって行われ、焼付け処理を約100〜180℃で約3〜30分間程度行うことによって、片面厚さ約0.5〜5μm程度のプライマー層が形成される。
【0030】
このようにして金属面上に形成されたプライマー層上に、前述の如く導電性ゴム溶液の塗布が行われるが、塗布がスクリーン印刷法で行われる場合には導電性ゴム溶液の有機溶剤としてはイソホロンのような高沸点の溶剤が用いられることが好ましく、またフローコート法で行われる場合にはメチルエチルケトンの如き低沸点溶剤を用いることが好ましい。
【0031】
プライマー層上に塗布された導電性ゴム溶液は、約80〜150℃で約1〜15分間程度乾燥させ、その厚さを約20〜100μm程度に設定した後、約120〜220℃で約1〜60分間無加圧でオーブン加硫することにより電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板が形成される。
【実施例】
【0032】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0033】
実施例1
ポリオール加硫性VdF-HFP共重合ゴム(ダイキン製品G-701) 100重量部
ポリエステル系可塑剤(ADEKA製品P-200) 10 〃
酸化マグネシウム 5 〃
ステアリン酸ナトリウム 0.5 〃
ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド 1 〃
(ロームアンドハース社製品BTPPCl)
ビスフェノールAF 3 〃
ケッチェンブラック(ライオン製品EC-600JD; 13.3 〃
DBP吸油量493cm3/100g、BET比表面積1270m2/g) (10体積%)
以上の各成分を12インチロールで混練し、得られたゴム組成物をメチルエチルケトン中に固形分濃度が20重量%となるように溶解、分散させ、導電性ゴム溶液を調製した。
SUS鋼板(厚さ0.2mm)上に、
エポキシフェノール樹脂 7重量%
(クレゾールノボラック変性エポキシ樹脂のメチルエチル
ケトン溶液を主剤とし、これにビスフェノールノボラック
樹脂硬化剤および2-エチル-4-メチルイミダゾール硬化触媒
を添加したもの)
前記導電性フッ素ゴム組成物 3 〃
メチルエチルケトン 90 〃
よりなるプライマーを鋼板の両面に浸漬塗布し、150℃のオーブン中で5分間程度加熱処理して、片面厚さ2.5μmのプライマー層を形成させた。
【0034】
プライマー層上には、さらに前記導電性ゴム溶液を塗布し、100℃で10分間乾燥させ、その厚さを50μmとなるように設定した。その後、180℃、10分間のオーブン加硫を行い、電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板を得た。
【0035】
得られた電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板について、次の各項目の評価または測定を行うと共に、
オーブン加硫の可否:目視で確認
表面状態:可塑剤ブリードの有無を目視で確認
電磁波シールド特性:同軸管法によるSパラメーター測定から1mm厚シールド特性
(S21)に変換
前記導電性フッ素ゴム組成物を180℃、8分間のプレス加硫を行って加硫シート(150×150×2mm)を作成し、これについて次の項目の測定を行った。
硬度:JIS K6253準拠(デュロメーターA)
【0036】
実施例2
実施例1において、ポリエステル系可塑剤(P-200)量を20重量部に変更した。これに伴い、ケッチェンブラック量は14.4重量部(10体積%)に変更された。
【0037】
実施例3
実施例1において、ポリエステル系可塑剤としてポリアゼライン酸ネオペンチルグリコール(UNICHEMA製品Priplast3142)が20重量部用いられた。これに伴いケッチェンブラック量は14.5重量部(10体積%)に変更された。
【0038】
参考例
実施例1において、VdF-HFP共重合ゴムとしてパーオキサイド架橋性VdF-HFP共重合ゴム(ダイキン製品G-801)を同量(100重量部)用い、加硫系として4級オニウム塩およびビスフェノールAFの代りに、有機過酸化物(日油製品パーヘキサ25B40)3重量部およびトリアリルイソシアヌレート(日本化成製品タイクM60)3重量部が用いられた。
【0039】
比較例1
実施例1において、ポリエステル可塑剤の代りに同量(10重量部)のポリエーテル系可塑剤(旭電化製品アデカサイザーRS735)が用いられた。
【0040】
比較例2
実施例1において、ポリエステル系可塑剤(P-200)が用いられなかった。これに伴い、ケッチェンブラック量は12.2重量部(10体積%)に変更された。
【0041】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。

評価・測定項目 実施例1 実施例2 実施例3 参考例 比較例1 比較例2
オーブン加硫 可 可 可 不可 不可 可
可塑剤のブリード なし なし なし なし あり なし
電磁波シールド特性(dB) 12.6 9.4 8.6 測定不可 測定不可 10.9
硬度(デュロメーターA) 88 77 83 − − −
【0042】
この結果から、次のようなことがいえる。
実施例1:オーブン加硫が可能であり、柔軟で、高い電磁波シールド特性が得られた
実施例2、3:オーブン加硫が可能であり、さらに柔軟で、電磁波シールド特性が得
られた
参考例:加硫剤が有機過酸化物のため、ゴム層が加硫しなかった
比較例1:可塑剤がブリードし、加硫阻害が確認された
比較例2:オーブン加硫が可能であるが、柔軟性に乏しい電磁波シールド材料が得ら
れた
【0043】
実施例4
実施例1において、溶剤をメチルエチルケトンからイソホロンに変更して、導電性ゴム溶液を調製した。さらに、実施例1と同様にして、ガスケット形状に打ち抜いた鋼板(SUS301)に、プライマーを塗布、焼付け処理を行った後、スクリーン印刷法で上記導電性ゴム溶液を塗布、乾燥およびオーブン加硫を行い、ガスケット形状の電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板を得た。得られた電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板には、ゴム流れや金属の露出部分はみられず、均一な導電性フッ素ゴム層がSUS鋼板上に形成されていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール加硫可能なフッ素ゴム100重量部当りエステル系可塑剤5〜40重量部、ポリオール系加硫剤0.5〜10重量部およびDBP吸油量が300cm3/100g以上でかつBET比表面積が700m2/g以上である導電性カーボンブラックを組成物中3〜20体積%となるように配合した導電性フッ素ゴム組成物を金属板上に積層し、フッ素ゴム層を加硫させた電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板。
【請求項2】
フッ素ゴム層の加硫がオーブン加硫によって行われた請求項1記載の電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板。
【請求項3】
所定の形状に打ち抜かれた金属板上に、導電性フッ素ゴム組成物を有機溶剤中に溶解および分散させた導電性フッ素ゴム溶液を用いてフッ素ゴム層を形成させた請求項1または2記載の電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板。
【請求項4】
金属板上への導電性フッ素ゴム溶液の適用がスクリーン印刷法によって行われた請求項3記載の電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板。
【請求項5】
同軸管法によるSパラメーター測定値が7dB以上であり、ゴム硬度がデュロメーターAで90以下である請求項1、2、3または4記載の電磁波シールド性フッ素ゴム-金属積層板。


【公開番号】特開2011−23511(P2011−23511A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166676(P2009−166676)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】