説明

電磁波透過性の金属複合材料及びその製造方法

【課題】インジウムのような高価な金属を用いなくとも電磁波(ミリ波)透過性を有し、装飾性にもすぐれた電磁波透過性の金属複合材料を提供すること。
【解決手段】樹脂基材(11)上に金属領域(14)が規則的な島状に形成された金属被膜(12)を有し、前記金属領域(14)の面積が0.001〜0.81mm、隣接した金属領域(14)、(14)の間隔が0.01〜0.06mmであり、1〜110GHzの電磁波に対し−5〜0dBの吸収率を有する電磁波透過性の金属複合材料(10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車レーダー等で用いられるミリ波などの電磁波を透過でき、且つ外観上は装飾的光沢を有する金属複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪、自動車等輸送機器の安全性を向上するため、様々なセンサー、電子システムの開発導入が進んでいるが、その中にミリ波などの電磁波を利用した自動車レーダーの搭載が進んでいる。
【0003】
自動車レーダーは車体の前方、あるいは後方に取り付けられ、適正な車間距離や、暗闇の中での前方、後方の対人、対物の障害物を認知することができる。
【0004】
この自動車レーダーの取り付け箇所は、低すぎると道路が妨害し、高すぎても目標点を外れてしまうので、精度を上げるため車体の中央に位置させており、前方に配置する場合はどうしてもエンブレムの背面かその付近になる。
【0005】
ところが、エンブレム及び、その付近のグリルには、装飾用金属光沢をした金属めっき、特にクロムめっきが施されており、この光沢金属めっきは、電波を透過しないため、単にエンブレムまたはその周辺に自動車レーダーのユニットを設置しても、電磁波の送信、受信ができなくなり性能が出ない問題がある。
【0006】
そこで、自動車レーダーをエンブレムの後方に配置できるように、樹脂フィルム上にインジウムを蒸着させ、このフィルムをインサートモールド法によって、エンブレム表層に取り付け、装飾的に金属光沢を持ち、且つインジウムの島状構造によって電磁波周波数帯で吸収域を持たないエンブレム等の外装部品を製造することが提案されている(特許文献1)。
【0007】
アルミニウム、錫、クロム等の通常エンブレム等に用いられている金属被膜では、樹脂フィルムとの濡れ性がインジウムよりも良いため、島状構造からすぐに連続皮膜になり、電磁波の通る隙間はできないが、インジウムは樹脂フィルムとの濡れ性が悪いため、真空蒸着で微細な島状構造を樹脂フィルム上に作りやすく、外観も通常の金属めっきと同じ均一な金属光沢フィルムとして見えることから、インジウムを用いたものである。
【0008】
しかしながら、インジウムは、真空蒸着で行なうため、蒸着時間、蒸着スピードをコントロールしないと厚ければ連続皮膜となり、薄ければ金属光沢の無い膜になってしまうので、蒸着面積が大きい場合、あるいは蒸着材が異形の場合、全体に均一な膜厚を作るのが難しい。そのため製品が歩留まりが悪く、更にインジウムが希少金属なため、コストが高くなる問題がある。
【0009】
さらに、インジウムの場合、融点が156℃と低く、インジウムの保護層としてインジウム上に射出成型で溶融樹脂を流し込む場合、200℃以上の粘性のある樹脂が流し込まれるため、容易に島状構造を破壊してしまう。このため、インジウム上へのインサートモールド成型を行う場合は、前処理として、低温硬化樹脂でインジウム皮膜を固めるという工程が必要になり、工程が複雑化するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−135030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みて提案されたもので、インジウムのような高価な金属を用いなくとも電磁波透過性を有し、装飾性にもすぐれた電磁波透過性の金属複合材料の提供を目的とし、また、このような電磁波透過性の金属複合材料を効率よく安価に生産できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述したように、従来用いられてきたインジウムには種々の欠点があることから、インジウムに代わる金属被膜として、76GHzにおける吸収率が−10dBのクロム蒸着フィルムに、装飾性を損なわないように、直径30〜40μmの開口を間隔を180〜730μmとした試料を用い、これら試料について電磁波透過性を試験したところ、直径が大きく、間隔が短いほど、電磁波透過性はよくなるが、それでも実用に耐える−5dBの吸収率を達成できないことから、その原因について調査した結果、開口を形成しても、金属薄膜の膜自体は連続膜であることから、金属薄膜が電磁波を吸収し、所望の電磁波透過性を達成できないことが判明した。
【0013】
そこで、さらに検討した結果、金属薄膜を島状構造、すなわち、金属領域を島とし、この島をとりまく無金属領域を海とした海島構造を人工的に規則性をもたせて形成し、それぞれの金属領域を無金属領域で互いに絶縁するとともに、金属領域の面積及び隣接する金属領域との間隔を制御すると、従来のインジウム被膜と遜色のない電磁波透過性の材料が得られることを見いだし、本発明に至ったものである。
【0014】
したがって、上記課題は、本発明の(1)「樹脂基材上に金属領域が規則的に島状に形成された金属被膜を有し、前記金属領域の面積が0.001〜0.81mm、隣接した金属領域の間隔が0.01〜0.06mmであり、1〜110GHzの電磁波に対し−5〜0dBの吸収率を有することを特徴とする電磁波透過性の金属複合材料」、(2)「前記金属領域は、同形で等間隔に配列されていることを特徴とする前記第(1)項に記載の電磁波透過性の金属複合材料」、(3)「76GHzの電磁波に対し−5〜0dBの吸収率を有することを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の電磁波透過性の金属複合材料」、(4)「前記金属領域の厚みが、50nm〜100μmであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の電磁波透過性の金属複合材料」により達成される。
【0015】
また、上記課題は、本発明の(5)「樹脂基材上に金属被膜を形成する工程と、形成された金属被膜の一部を除去して規則的な島状の金属領域を形成する工程を含み、前記金属領域の面積が0.001〜0.81mm、隣接した金属領域の間隔が0.01〜0.06mmであることを特徴とする電磁波透過性の金属複合材料の製造方法」、(6)「前記金属被膜の一部の除去を、レーザー照射により金属被膜を蒸発させることを特徴とする前記第(5)項に記載の電磁波透過性の金属複合材料の製造方法」、(7)「前記金属被膜の一部の除去を、前記金属被膜の金属領域に対応する部位をマスキングしてエッチングすることを特徴とする前記第(5)項に記載の電磁波透過性の金属複合材料の製造方法」により達成される。
【0016】
また、上記課題は、本発明の(8)「開口が規則的に配列され、該開口面積が0.001〜0.81mm、隣接した開口との間隔が0.01〜0.06mmであるマスキング部材を樹脂基材に配置する工程と、前記開口を介して樹脂基材に金属領域を形成する工程とを含むことを特徴とする電磁波透過性の金属複合材料の製造方法」、(9)「前記金属領域を形成工程が、前記マスキング部材を配置した樹脂基材にUVを照射し、前記開口を介して樹脂基材の表面改質を行なう工程、前記表面改質した部位を感受性化及び触媒化する工程及び触媒化した部位を無電解めっきする工程を含むことを特徴とする前記第(8)項に記載の電磁波透過性の金属複合材料の製造方法」により達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、樹脂基材上に金属領域が規則的に島状に形成された金属被膜を有し、該金属領域の面積が0.001〜0.81mm、隣接した金属領域の間隔が0.01〜0.06mmであるため、金属領域が互いに絶縁されるとともに、実用的の問題のないレベルである1〜110GHzの電磁波に対し−5〜0dBの吸収率とすることができ、そのため、アルミニウムやクロム等の安価な金属を用いても、1〜110GHzの電磁波を透過できるとともに、金属領域が規則的に島状に形成されているので、全域に亘ってほぼ均質な透過性となる。また、金属領域間の間隔が極めて小さく、間隙が視認できないため、視覚上通常の金属面と同様の光沢表面を保持できるので、電磁波透過膜として使われてきた高価なインジウム真空蒸着膜の代替技術として有用なものである。しかも、インジウムのような低融点金属を用いる必要はないことから、エンブレム等の部品とした場合においても、構成する樹脂や成形方法に制限がないため安価に生産できる。
【0018】
また、金属領域を、同形で等間隔に配置すると、電波透過性がさらに向上し、上記効果を一層改善できる。また、金属領域の膜厚を50μm以下とすることにより、レーザーで金属領域を島状に形成する際に、基材の損傷あるいは変形を防止でき、性能の優れた金属複合材料を得ることができる。
【0019】
さらに、本発明の電磁波透過性の金属複合材料の製造方法によれば、樹脂基材上に金属被膜を形成した後、レーザーあるいはエッチングにより金属被膜の一部を除去して島状の金属領域を多数形成し、あるいは、樹脂基材上にマスキングして、島状の金属領域を多数形成しているので、簡単の工程で、安価に電磁波透過性の金属複合材料を生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の金属複合材料の一部拡大断面を示したものである。
【図2】本発明の金属複合材料の第2の態様の一部拡大断面を示したものである
【図3】本発明の金属複合材料の金属被膜の一部を拡大した上面図である。
【図4】本発明の金属複合材料の第2の態様の金属被膜の一部を拡大した上面図である。
【図5】本発明の金属複合材料の第3の態様の上面図であり、金属被膜の一部を拡大して示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明を詳細に説明する。
本発明の電磁波透過性の金属複合材料(10)は、図1に示すように、樹脂基材(11)上に、金属領域(14)が島状に多数形成された金属被膜(12)を有し、金属領域(14)の面積が0.001〜0.81mm、隣接した金属領域(14)、(14)との間隔が0.01〜0.06mmであり、1〜110GHzの電磁波に対し−5〜0dBの吸収率を有することを基本構成とするものである。また、必要に応じて、金属被膜(12)に、保護層(13)を設けてもよい。
【0022】
金属領域は、規則的に配列されていれば、異なる面積の金属領域や異なる間隔のものとの組み合わせでもよく、また、金属領域の形状もいずれのものであってもよいが、製造の容易性や均一な電磁波透過性からは、図3に示す正方形状(14)、図4に示す円形状(24)、図5に示す三角形状(34)等の多角形や円形のものを等間隔で形成することが好ましい。
【0023】
金属領域は、美的感覚を有し、1〜110GHzの電磁波に対し−5〜0dBの吸収率を得るためには、面積を0.001〜0.81mm以下、好ましくは、0.25mm以下であり、かつ隣接する金属領域の間隔を0.01〜0.06mmの範囲とする必要がある。金属領域の面積が0.001mm未満であると、金属領域の間隔を0.01mmとしても、この間隔が視認できてしまい、美的感覚を損ね、0.81mmを超えると、電磁波透過性の実用的なレベルである吸収率−5dB以上とすることができない。特に、金属領域の面積を0.25mm以下とすると、吸収率が−2dB以上となり、電磁波透過性能を大幅に向上することができる。また、隣接する金属領域との間隔は、0.01mm未満では、電磁波透過性が劣るともに、商業的にもこのような間隔を形成するのは困難であり、0.06mmを超えると、間隙が容易に視認でき、美的感覚を損ねる。ここで、本願発明における隣接する金属領域との間隔とは、隣接する金属領域との最小間隔を意味する。
【0024】
また、金属領域の厚さは、電磁波の吸収帯を持たない厚さ、且つ金属光沢を維持する厚さが必要で、50nm〜100μm、好ましくは、100nm〜50μmである。厚さが50nm以下だと、薄すぎて金属光沢が出せなく、100μm以上では、レーザー描写を行う場合、大きなレーザーパワーが必要となり、入熱が大きくなるため、基材の樹脂フィルムが溶融したり、パッド間の微細幅のコントロールができなくなる。また、リソグラフィー法、UV露光法等を用いたエッチング法でも、エッチングでのパッド間の微細幅のコントロールが難しくなり、またエッチング時間も長くなるので実用的でない。
【0025】
次に、本発明の金属複合材料の製造方法を説明する。
まず、ABS、PP、PC、COP等の樹脂から構成され板状体あるいはフィルムを樹脂基材とし、その片面に金属被膜を形成する。
【0026】
この金属被膜は、スパッタリングや真空蒸着法あるいは無電解めっき法を用いて形成することができる。真空蒸着法では、樹脂基材上に直接金属被膜を形成できるが、無電解めっき法では、樹脂基体を表面改質、活性化及び触媒化した後、無電解めっきを行なう。
【0027】
金属被膜を構成する金属は、純金属又は合金のいずれのものでもかまわないが、真空蒸着法では、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Ga、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、In、Sn、Hf、Pt、Au及びその合金を使用できるが、安価で白色系のAl、Cr、Ni、Zn、Snが好ましい。無電解金属めっき法では、Ni、Cu、Sn、Au、Ag、Co、Fe及びその合金が使用できるが、Cuを用いた場合には、その上にSn、Ni、Cr等の白色系金属を電解あるいは無電解めっきで形成することが好ましい。
【0028】
このように形成された金属被膜をレーザービーム描写法により、金属被膜の一部を蒸発させて、島状に金属領域を形成して、金属領域(14)、(24)、(34)を、図3〜図5に示すような島状のパターンを形成するか、別法としては、リソグラフィー法等を用いて、島状の金属領域のパターンを形成したマスクを用い、金属被膜をマスキングして、エッチングにより金属領域の一部を除去し、金属領域が島状のパターンを形成する。形成後、金属被覆層上にクリアコートあるいはポリカーボネート等の樹脂で保護層(13)を形成してもよい。
【0029】
また、樹脂基材の上に、金属蒸着法あるいは無電解めっき法によって、上記金属領域のパターンを直接形成することもできる。この方法では、樹脂基材上に、金属領域となる部位を開口としたマスク材を配置し、蒸着法を用いて開口部位に金属を被着させることにより簡単に島状の金属領域を形成したパターンを有する金属被膜を形成することもできる。
【0030】
無電解めっき法では、上記マスク材を配置した樹脂基材をUV露光して、UV照射部位を表面改質し、常法にしたがって、表面改質した部位を感受性化、活性化した後、無電解めっき浴中に浸漬することで、金属領域部位のみがめっきされて、島状の金属領域が形成されたパターンを有する金属被膜を形成することができる。
【0031】
本発明では、金属被膜を2層以上の複合層とすることもできる。図2は、島状に多数形成された金属領域(24)を有する金属被膜(22)を、第1の金属被膜(22a)と第2の金属被膜(22b)とを積層して構成した電磁波透過性の金属複合材料(20)を示したものであり、樹脂基材(21)上に第1の金属被膜(22a)を形成し、その上に第2の金属被膜(22b)を形成して2層とし、前記の態様と同様に、この2層の被膜にレーザーあるいはエッチングにより、積層された金属被膜の金属領域を島状のパターンに形成する。また、別法として、樹脂基材上をマスキングし、マスキングの開口から、基材(21)上に複数の金属を順に積層することにより、金属領域(24)が島状のパターンとなった金属被膜(22)を得ることができる。
【0032】
この場合は、基材(21)は、樹脂で構成されているため、第1の金属被膜(22a)は無電解めっきあるいは蒸着で形成し、第2の金属被膜(22b)は電解あるいは無電解めっきまたは蒸着により形成できる。また、上記の態様と同様に、金属被膜(22)の上に保護層(23)を形成してもよい。
【0033】
本発明では、樹脂基材の一部を電磁波透過性の金属複合材料(30)で構成してよい。図5は、この態様を示したもので、樹脂基材(31)に、T字状の凹部(35)を形成し、この凹部(35)に、金属領域(34)を島状に有する金属被膜(32)を形成したもので、島状に金属領域を形成することは、上記の態様と同じである。また、上記の態様と同様に、金属被膜(22)の上に保護層を形成してもよい。この場合、保護層は、樹脂基材(31)の全面に形成してもよい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により、さらに説明する。
【実施例1】
【0035】
100mm×50mm、厚さ0.2mmのPCシート(ポリカーボネートシート)に、銅をターゲットとしたスパッタ装置を用い、チャンバー内を真空度が3×10−3Paにした後、アルゴンを導入し、真空度が1×10−2Paに達したら、電圧2kVをかけてアルゴン放電を開始し、放電が安定したら、銅を10分間スパッタリングして、厚さ500nmの銅被覆層を形成した。
【0036】
次に、PCシートの銅被覆面に厚さ25μmの感光性フィルムをラミネートした後、幅0.01mmでグリッド状(格子状)にトリミングした露光マスクを用いて露光、現像を行なった。次いで、塩化第二鉄エッチング液に浸漬し、露光・現像されたグリッド状にトリミングされた部位に対応する銅被膜を除去して、図4に示すような、一片が0.9mmで、面積0.81mmの正方形の金属領域(14)が、間隔0.01mmで等間隔に配列されたパターンを有する金属被膜を得た。この金属被膜をさらに無電解スズめっきして電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例2】
【0037】
金属領域の一辺を0.7mm、面積0.49mmとした以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例3】
【0038】
金属領域の一辺を0.5mm、面積0.25mmとした以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例4】
【0039】
金属領域の一辺を0.3mm、面積0.09mmとした以外は、実施例1と同様に処理して、実施例3の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例5】
【0040】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例1と同様に処理して、実施例5の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例6】
【0041】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例2と同様に処理して、実施例6の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例7】
【0042】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例3と同様に処理して、実施例7の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例8】
【0043】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例4と同様に処理して、実施例8の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【0044】
(比較例1、2)
実施例1〜8と同様に、隣接する金属領域との間隔を0.01mm及び0.06mmとし、金属領域の大きさを1mm(一片1.0mm)として、比較例1、2を作成した。
【0045】
〔実施例、比較例の特性評価〕
これら実施例1〜8、比較例1、2について、1〜110GHzの電波の吸収率を測定した。その結果を、金属領域の寸法及び間隔とともに表1に示す。
なお、電波透過率の測定装置はアジレントテクノロジーの8510XFネットワークアナライザを使用した。評価するフィルムは、長さ5cm、幅1cmの短冊状に切断し、導波管内に装着して、1〜110GHzの周波数帯で掃引して、平均吸収率を測定した。
ここで、吸収率が−5dB以上であれば電波透過フィルムとして実用上問題が無い。
【0046】
【表1】

【実施例9】
【0047】
100mm×100mm、厚さ0.2mmのCOP樹脂フィルムの表面に、直径0.1mmの円形開口が0.01mmの等間隔で配列されたパターンを有する露光マスクを配置し、UV装置で、波長184.9nm及び253.7nmの混合UVを、照射強度28mW/cmで10分照射して、COP樹脂フィルムの表面の一部を露光マスクのパターンと同じパターンに改質した。
【0048】
表面改質されたフィルムを50g/Lの苛性ソーダに45℃、2分浸漬した後、純水で洗浄し、液温45℃の表面調整剤に2分間浸漬させさた後、純水で洗浄した。次いで、液温45℃の塩化パラジウム溶液(0.5g/L)に3分間浸漬し、表面改質された部位に対し触媒化処理を行った。
【0049】
次に、触媒化処理されたフィルムを、次亜リン酸Naを還元剤とするCu−Ni−P合金めっき液に5分間浸漬し、円パターンに厚さ約0.2μmのCu−Ni−P合金めっきを施し、さらに、金属光沢を出すため、液温50℃の無電解スズめっき液(レイボルト社製SN30)に10分間浸漬させ、表面にスズめっきを施して、図5に示すような、直径1.0mm、面積約0.79mmの円形の金属領域(24)が、間隔0.01mmで等間隔に配列されたパターンを有する電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例10】
【0050】
金属領域の直径を0.8mm、面積約0.5mmとした以外は、実施例9と同様に処理して、実施例10の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例11】
【0051】
金属領域の直径を0.5mm、面積約0.2mmとした以外は、実施例9と同様に処理して、実施例11の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例12】
【0052】
金属領域の直径を0.3mm、面積約0.07mmとした以外は、実施例9と同様に処理して、実施例12の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例13】
【0053】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例9と同様に処理して、実施例13の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例14】
【0054】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例10と同様に処理して、実施例14の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例15】
【0055】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例11と同様に処理して、実施例15の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例16】
【0056】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例12と同様に処理して、実施例16の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【0057】
(比較例3、4)
実施例9〜16と同様に、隣接する金属領域との間隔を0.01mm及び0.06mmとし、金属領域の面積を約1.1mm(直径1.18mm)として、比較例3、4を作成した。
【0058】
〔実施例、比較例の特性評価〕
これら実施例9〜16、比較例3、4について、1〜110GHzの周波数帯での平均吸収率を測定した。その結果を、金属領域の寸法及び間隔とともに表2に示す。
なお、電波吸収率の測定装置は、アジレントテクノロジーの8510XFネットワークアナライザを使用した。評価するフィルムは、長さ5cm、幅1cmの短冊状に切断し、導波管内に装着して、1GHz〜110GHzの周波数帯で掃引し、平均の吸収率を測定した。
吸収率が−5dB以上であれば電波透過フィルムとして実用上問題が無い。
【0059】
【表2】

【実施例17】
【0060】
120mm×120mm、厚さ5mmのPC板(ポリカーボネート板)に、深さ2mmのT字状の凹部を切削加工して形成した。板全体の透明度を維持するように切削加工した部分を微細な研磨剤で磨いた後、切削側の面のT字状の凹部以外のところを、厚さ0.1mmの黒テープでマスキングを行った。
【0061】
次いで、切削側の面を上にしてスパッタリングした。スパッタリングは、ターゲットとしてアルミニウムとした以外は実施例1と同じスパッタ装置及びスパッタリング条件として、T字部に、金属光沢を有する厚さ約500nmのアルミニウム被膜を形成した。
【0062】
さらに、アルミニウムが蒸着されたPC板を、レーザー装置(IPG製ナノ秒レーザー)により、パワー0.5W、加工速度20m/minでレーザーを照射し、幅0.01mmでグリッド状にトリミングし、図5に示すような、一辺が1.35mm、面積約0.79mmの正三角形の金属領域(34)が、間隔0.01mmで等間隔に配列されたパターンを有する電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例18】
【0063】
金属領域の1辺を1.0mm、面積約0.43mmとした以外は、実施例17と同様に処理して、実施例18の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例19】
【0064】
金属領域の1辺を0.7mm、面積約0.21mmとした以外は、実施例17と同様に処理して、実施例19の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例20】
【0065】
金属領域の一辺を0.5mm、面積約0.11mmとした以外は、実施例17と同様に処理して、実施例20の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例21】
【0066】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例17と同様に処理して、実施例21の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例22】
【0067】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例18と同様に処理して、実施例22の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例23】
【0068】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例19と同様に処理して、実施例23の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【実施例24】
【0069】
隣接する金属領域との間隔を0.06mmとした以外は、実施例20と同様に処理して、実施例24の電磁波透過性金属複合材料を得た。
【0070】
(比較例5、6)
実施例17〜24と同様に、隣接する金属領域との間隔を0.01mm及び0.06mmとし、金属領域の面積を約0.97mm(一片1、5mm)として、比較例5、6を作成した。
【0071】
〔実施例、比較例の特性評価〕
これら実施例17〜24、比較例5、6について、1〜110GHzの周波数帯での平均の吸収率を測定した。その結果を、金属領域の寸法及び間隔とともに表3に示す。
なお、電波透過率の測定装置はアジレントテクノロジーの8510XFネットワークアナライザを使用した。評価は、上記実施例9〜16、比較例3、4と同様の金属被膜を設けたPCフィルムを、長さ5cm、幅1cmの短冊状に切断し、導波管内に装着して、1〜110GHzの周波数帯で掃引され、平均の吸収率を測定した。
吸収率が−5dB以上であれば電波透過フィルムとして実用上問題が無い。
【0072】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明は、外装上金属光沢表面を維持しながら、電磁波の電波を損失することなく透過することができるので、電磁波レーダーを備えた自動車等において、エンブレムやグリル等の外装部品として有効に利用できるものである。
【符号の説明】
【0074】
10、20、30…金属複合材料
11、21、31…樹脂基材
12、22、32…金属被覆層
13、23…保護層
14、24、34…金属領域
35…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材上に金属領域が規則的な島状に形成された金属被膜を有し、前記金属領域の面積が0.001〜0.81mm、隣接した金属領域の間隔が0.01〜0.06mmであり、1〜110GHzの電磁波に対し−5〜0dBの吸収率を有することを特徴とする電磁波透過性の金属複合材料。
【請求項2】
前記金属領域が、同形で等間隔で配列されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波透過性の金属複合材料。
【請求項3】
76GHzの電磁波に対し−5〜0dBの吸収率を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波透過性の金属複合材料。
【請求項4】
前記金属領域の厚みが、50nm〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁波透過性の金属複合材料。
【請求項5】
樹脂基材上に金属被膜を形成する工程と、形成された金属被膜の一部を除去して規則的な島状の金属領域を形成する工程を含み、前記金属領域の面積が0.001〜0.81mm、隣接した金属領域の間隔が0.01〜0.06mmであることを特徴とする電磁波透過性の金属複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記金属被膜の一部の除去を、レーザー照射により金属被膜を蒸発させることを特徴とする請求項5に記載の電磁波透過性の金属複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記金属被膜の一部の除去を、前記金属被膜の金属領域に対応する部位をマスキングしてエッチングすることを特徴とする請求項5に記載の電磁波透過性の金属複合材料の製造方法。
【請求項8】
開口が規則的に配列され、該開口面積が0.001〜0.81mm、隣接した開口との間隔が0.01〜0.06mmであるマスキング部材を樹脂基材に配置する工程と、前記開口を介して樹脂基材に金属領域を形成する工程とを含むことを特徴とする電磁波透過性の金属複合材料の製造方法。
【請求項9】
前記金属領域を形成工程が、前記マスキング部材を配置した樹脂基材にUVを照射し、前記開口を介して樹脂基材を表面改質を行なう工程、前記表面改質した部位を感受性化及び触媒化する工程及び触媒化した部位を無電解めっきする工程を含むことを特徴とする請求項8記載の電磁波透過性の金属複合材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−251899(P2010−251899A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96974(P2009−96974)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000175766)三恵技研工業株式会社 (50)
【出願人】(502273096)株式会社関東学院大学表面工学研究所 (52)
【出願人】(000157049)関東化成工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】