説明

電磁波遮蔽材及びそれを用いた画像表示装置

【課題】電磁波遮蔽材の導電体パターン層を導電性粒子と樹脂バインダからなる導電性組成物層として、プライマ層を介在さて透明基材上に引抜プラマイ方式凹版印刷法で形成した時に、凹版版面の鏡面加工の跡が開口部で露出するプライマ層表面に現れる筋が光学欠陥になるのを防ぐ。
【解決手段】透明基材1上にプライマ層2を介して導電体パターン層3が形成され、またプライマ層2の厚みが導電体パターン層の形成部で非形成部よりも厚く、非形成部である開口部4で露出するプライマ層表面に現れる互いに平行な多数の直線状の筋5について、鏡面加工時のバイトの送りピッチを調整して、筋が延びる方向に直交方向での筋周期Wが50μm以下となる様に設定する。画像表示装置はPDPの前面にこの電磁波遮蔽材をプライマ層面をPDP側にして間に空間を空けて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種の用途、中でも特にディスプレイの前面に配置するのに好適な電磁波遮蔽材に関し、特に、導電体パターン層に導電性粒子とバインダ樹脂からなる導電性組成物層を用いた場合に、低抵抗値にできて電磁波遮蔽性と透明性とを高度に両立出来る電磁波遮蔽材に関する。また、この電磁波遮蔽材を用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイ(画像表示装置とも言う)として、旧来のブラウン管(CRT)ディスプレイ以外に、フラットパネルディスプレイ(FPD)となる、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(以後PDPとも言う)、電界発光(EL)ディスプレイ等の各種ディスプレイが実用されている。これらの中でも、特に、PDPは不要な電磁波放出が強いため、ディスプレイの前面に電磁波遮蔽材を配置している。なお、VCCI規格では30MHz〜1GHz前後の電磁波が規制周波数となっている。
【0003】
また、ディスプレイ用途の電磁波遮蔽材では、優れた電磁波遮蔽性能と優れた光透過性とを高度に両立できる点で、導電体層には導電性に優れた金属層など結果として不透明となる層が好適であり、不透明性な導電体層でも光透過性を確保する為に、導電体層はメッシュ形状などのパターンで多数の開口部を設けた導電体パターン層として形成している。導電体パターン層には、金属箔をフォトエッチング法で形成するものもあるが、工程が煩雑となり製造コストも高価となる等のために、低コスト化が期待できる印刷法が注目されている。その印刷法として、最近開発され、優れた電磁波遮蔽性と優れた光透過性とを高度に両立できる凹版印刷法がある(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に開示の凹版印刷法は、透明基材上に施した流動状態のままのプライマ流動層上に導電性組成物のインキを凹版印刷する際に、版面上に透明基材が存在している間に、版面と透明基材間にあるプライマ流動層を紫外線照射などで固化させてプライマ層として固化させた後に透明基材を凹版から離版して、透明基材上にプライマ層を介してパターン状の導電性組成物層を導電体パターン層として印刷形成する方法である。このプライマ層は流動状態のときに、版から被印刷物へのインキの転移を促進する作用、言い換えると凹版の版面凹部内に充填されたインキを引き抜いて被印刷物に移す作用を有しており、この凹版印刷法は「引抜プライマ方式凹版印刷法」とでも呼べる印刷法である。そして、この凹版印刷法では、従来では不可能であった様な、細く且つ精細なパターン形成が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/149969号のパンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただ、特許文献1で開示された様な、「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、プライマ流動層が通常は凹版版面の非画線部も含めた全面に接触し、これが透明基材との間に存在する状態で固化させる為に、導電体パターン層の非形成部である開口部でも通常はプライマ層が存在する。この為、凹版版面に於ける非画線部である版面凸部上の表面の微細な凹凸形状も固化したプライマ層表面に転移される。すなわち、凹版版面形状が賦形される。
一方、電磁波遮蔽材に於いては、開口部での透明性が電磁波遮蔽材全体としての光透過性能に影響し、当然にプライマ層表面も平滑な面であることが、該表面での光の乱反射などが無い点で好ましい。そこで、凹版版面の非画線部は鏡面加工しておくことになる。
【0007】
一方、凹版において、凹版版面に於ける画線部である凹部は、メッシュ形状などのパターンの溝として設けられるが、凹部の深さの均一性は、導電体パターン層の表面抵抗率の面均一性に直接的に関係する。従って、凹部の深さの面均一性が当然要求される。この点で、凹部の形成は、ケミカルエッチングによらずに、円筒状の凹版をその回転軸で回転させながら、版表面をバイトで切削して溝状の凹部を形成するのが好まし。その際に、バイト切削前の版面をバフ研磨や砥石研磨等のポリシッングで鏡面加工すると優れた鏡面が得られるのだが、完全な円筒面とはならずに微妙なウネリが生じて、回転軸芯に対する版面半径の面均一性が得られない。一方、凹部をバイトによって旋盤で切削して形成すると、凹部の底面は回転軸芯に対して一定の距離、つまり一定の凹部半径となる様な位置に形成される。従って、凹部の深さとは、版面から凹部底面までの距離であるので、凹部の深さとしては面均一性が得られないことになる。そこで深さ一定の凹部を形成する為に、鏡面加工はパフ研磨などポリシッングではなく、鏡面の面出し用のバイトで切削すれば、回転軸芯に対する版面半径の均一性が得られるので、凹部の深さの面均一性が確保できる。また、見た目でも優れた鏡面性が得られる。この様にして、「引抜プライマ方式凹版印刷法」では、インキ転移量の面均一性を確保でき、表面抵抗率の面均一性も確保できることになる。
【0008】
ところで、電磁波遮蔽材の導電体パターン層側の面は凹凸面である。その為、導電体パターン層上に粘着剤等を介して光学フィルタを積層したり、導電体パターン層自体を外力から保護する為に保護層を形成したりする際に、該凹凸の凹部、つまり導電体パターン層非形成部の凹部(開口部)に、気泡が残留する。このことを防ぐ為に、従来は、該凹凸を平坦化する平坦化層を予め設けておくのが普通であった。しかし、平坦化層を設けるとその分コストが高くなるという問題があった。そこで、最近の低コスト化の要望に応える為に平坦化層を省略して、導電体パターン層及びプライマ層が露出した形態とする必要が生じて来た。そうすると、今度は「引抜プライマ方式凹版印刷法」を利用するが故の、新たな問題が生じることが判明した。それは、導電体パターン層の開口部に於けるプライマ層表面には、極微小ではあるが、鏡面加工で使用したバイトの切削跡が多数の筋状となって残っており、これがプライマ層表面に筋として賦形され、驚くべき事に、この筋が光学欠陥となって、光学特性の均一性が崩れる、つまり不均一性が生じる現象である。
【0009】
なお、ここで問題となる光学特性の不均一性とは、電磁波遮蔽材を組み込んだ画像表示装置において、表示面に垂直に立てた法線方向、つまり真正面から表示画像を見たときは問題ないが、法線方向から角度を傾けて斜めから見た時に、同じ傾き具合でも、画面の鉛直方向から水平方向に亘って視点を移動させつつ画面を見てみると(水平にした画面を回転させるかその周りを回って見ると良く判る)、鉛直方向(或いは水平方向)からの角度によって、画面の明るさが異なるという不均一性である。これは、所謂モアレ縞等の縞ではなく、観察角度に依存した輝度の高低の分布である。
【0010】
すなわち、本発明の課題は、特にPDPなど各種ディスプレイの前面(観察者側面)に配置する用途に好適な電磁波遮蔽材について、電磁波遮蔽性能と光透過性を高度に両立させる為に、「引抜プラマイ方式凹版印刷法」で導電性組成物層として形成した導電体パターン層の非形成部である開口部で露出するプライマ層表面に、凹版版面の鏡面加工の跡が賦形された多数の筋状の凹凸が存在しても、それが光学特性の不均一性(光学欠陥)となって悪影響するのを防げる電磁波遮蔽材を提供することである。
また、この様な電磁波遮蔽材を用いた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の電磁波遮蔽材は、透明基材上に、プライマ層を介して導電体パターン層が形成され、該導電体パターン層は導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性組成物層からなり且つその非形成部として多数の開口部が形成され、また、前記プライマ層は前記導電体パターン層の形成部での厚さが導電体パターン層の非形成部での厚さよりも厚い、電磁波遮蔽材において、前記開口部に於けるプライマ層の表面には互いに平行な多数の直線状の筋による凹凸が存在し、多数の筋が延びる方向に直交する方向での筋と筋との周期性を有する筋間隔である筋周期が50μm以下である構成とした。
【0012】
また、本発明の画像表示装置は、上記電磁波遮蔽材を、前記開口部に於けるプライマ層表面の筋による凹凸が該電磁波遮蔽材の表面に現れている状態で、プラズマディスプレイパネルの前面に、該電磁波遮蔽材と該プラズマディスプレイパネルとの間に空間を空けて、該電磁波遮蔽材のプライマ層表面側の面を該プラズマディスプレイ側に向けて、配置した構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、開口部のプライマ層表面に現出する、鏡面加工時のバイト跡である筋状凹凸群が表面に露出した状態であっても、その筋と筋の筋間隔の周期的な筋周期を50μm以下に設定することで、それが光学欠陥(光学特性の不均一性)となって表示画像表質に悪影響するのを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電磁波遮蔽材をその一形態で概念的に例示する断面図(a)と平面図(b)。
【図2】本発明の電磁波遮蔽材にて、導電体パターン層印刷用の凹版(a)と、電磁波遮蔽材(b)での筋5(乃至は版面での筋5A)を概念的に説明する説明図。
【図3】導電体パターン層を導電体組成物層として形成する引抜プライマ方式凹版印刷法をその一形態で概念的に示す説明図。
【図4】上記凹版印刷方法による導電体パターン層の凸部の一形態(導電体パターン層の非形成部よりも形成部でプライマ層が厚く、導電体パターン層の凸部内での導電性粒子の分布が凸部頂上部近くが密でプライマ層近くが疎)を概念的に示す断面図。
【図5】本発明の画像表示装置をその一形態で概念的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、本願発明の図面は、説明の便宜上、縦横の縮尺を適宜実物とは変え、又説明の対象となる部分は、適宜周囲のものよりも拡大して図示してある。
【0016】
《要旨》
先ず、本発明の電磁波遮蔽材の一形態を、図1(a)の断面図、及び図1(b)の平面図で説明する。同図の様に、本発明の電磁波遮蔽材10は、透明基材1の少なくとも片面に、プライマ層2が形成され、このプライマ層2の上に導電体パターン層3がその非形成部として多数の開口部4が設けられるようにパターン状に形成され、少なくとも透明基材1、プライマ層2及び導電体パターン層3の3層から構成されている。更に、電磁波遮蔽材10は、その開口部4に於けるプライマ層2の表面には多数の直線状の筋5が各筋が延びる方向が揃って並んでいる。筋5の並ぶ間隔は開口部のサイズよりも小さく、一つの開口部4内には多数の筋5が存在する。なお、筋5は、プライマ層表面が大気側に向かって膨らんでいる筋状凸部5aと、逆に表面が凹んでいる筋状凹部5bとがある。そして、本発明の電磁波遮蔽材10では、この筋5の並ぶ周期性を有する間隔、つまり筋周期W(筋ピッチとも言う)について、50μm以下に設定してある電磁波遮蔽材である。
【0017】
そして、本発明の画像表示装置は、例えば、図5の断面図で概念的に示す画像表示装置20の様に、少なくとも上記電磁波遮蔽材10を、その開口部4に於けるプライマ層2表面に存在する筋5による凹凸が該開口部4で大気露出した電磁波遮蔽材10表面に現れている状態で、プラズマディスプレイパネル6の前面に間に空間を空けて且つ電磁波遮蔽材10の導電体パターン層3側の面をプラズマディスプレイ6側に向けて、配置した表示装置である。
【0018】
この様に、電磁波遮蔽材10の開口部4のプライマ層2表面に現出する筋5について、筋が延びる方向に直交する方向での周期性を有する筋と筋との筋間隔である筋周期Wを、45μm以下と、特定の距離以下に設定しておくことで、たとえ筋5が存在しても、電磁波遮蔽材10をPDP6等のディスプレイの前面に配置して画像表示装置20として組み立てた時に、見る方向によって表示画像の輝度が異なるという光学特性の不均一性が生じる光学欠陥となる悪影響を抑制できる。
【0019】
以下、本発明の、電磁波遮蔽材と画像表示装置について、更に詳述する。
【0020】
《電磁波遮蔽材》
【0021】
[透明基材]
透明基材1には、公知の透明な材料を使用すれば良く、可視光線領域での透明性、耐熱性、機械的強度等を考慮すると、樹脂フィルム(乃至シート)が代表的である。樹脂フィルム(乃至シート)の樹脂は例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは好適な材料である。なお、透明基材の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は、12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
また、透明基材1は、ロール・ツー・ロール方式での生産適性の点でフレキシブルな(可撓性の)材料を選べる樹脂フィルムが好ましい。また、その点では、連続帯状の樹脂フィルムを用いるのが好ましい。
【0022】
[プライマ層]
プライマ層2は、後述導電体パターン層3のところで説明する引抜プライマ方式凹版印刷法に特有の層であり、ここでは、主にその材料面について説明する。プライマ層2は透明な樹脂層として形成され、その樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などを使用でき、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂を使用できる。ただ、該樹脂としては、凹版印刷時に、流動状態から固化状態への迅速な変化を制御できる点で、好ましくは電離放射線硬化性樹脂が使用される。なお、電離放射線硬化性樹脂としては公知のものから適宜選択できる。例えば、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。また、電離放射線としては、通常、紫外線、電子線などが使用される。
【0023】
[筋]
筋5は、開口部4に於けるプライマ層2表面に現れる、直線状に延びた互いに平行な多数の筋状凹凸群であり、その凸部が筋状凸部5aであり、凹部が筋状凹部5bである。筋状凸部5aを直線状の峰(稜線乃至尾根)とすれば筋状凹部5bは直線状の谷(乃至沢)である。なお、直線状とは完全な直線だけを意味せず、多少なりとも彎曲、蛇行、折線化したものも含む。また平行も完全な平行だけを意味せず略平行も含む。それは、鏡面加工の跡に起因するものであり、該跡としての版面上の筋は、図(b)に示す如く、各開口部内において長さが不均一の有限長のもので、この筋が賦形されたものがプライマ層表面の筋5だからである。また、開口部4内に現出するので、長さは最大でも開口部の端から他方の端までであり、端から他方の端まで延びていることもあるし、延びていないこともある。端から他方の端まで延びているのは相対的に大きな筋であり、端から他方の端まで延びていないのは相対的に小さな筋である。
なお、本明細書で「筋」という用語は、筋の1本1本を意味して使うこともあるし、これらの集合体としての、つまり筋状凹凸群を意味して使うこともあるが、混同する様なとき以外は、単に「筋」という用語を使う。
【0024】
筋5の具体的大きさの一例を述べれば、筋間隔(筋と筋の間隔)は10〜50μm、筋の高さ(筋状凸部5aと筋状凹部5bとの高低差)は、10〜100nm程度である。従って、おおよそ、裾野の広さが数十マイクロメータスケールに対して、高さが鏡面加工であるので、その約千分の一の数十ナノメータスケールの山が連なっているイメージである。なお、これは、この数値範囲以外のものが存在しないことを意味するものではなく、筋の実体を把握する一例としての数値である。
【0025】
筋間隔で周期性を有するものが筋周期Wであり、また、筋は鏡面加工の切削跡であるので、大きな筋の中に細かい筋が存在することもある。筋周期Wをもたらす筋は、相対的に大きな筋である。従って、上記した筋間隔が10〜50μm、筋の高さが10〜100nm程度の例示は、筋周期Wをもたらす筋についての例示である。そして、筋周期Wは、鏡面加工時のバイトの回転軸A方向での移動距離を、直前の加工位置を基準として測定したときのバイトの移動ピッチMb〔後述図2(a)参照〕と関係し、該移動ピッチMbを小さくすれば筋周期Wは小さくなる傾向にあり、該移動ピッチMbを大きくすれば筋周期Wは大きくなる傾向にある。従って、所定の筋周期Wは移動ピッチMbを調整することで得ることができる。
【0026】
また、筋の高さは、筋周期Wをもたらす筋について見れば、鏡面加工用に用いたバイトの先端形状が同じならば、筋間隔が小さくなる程、小さくなる傾向がある。つまり、同じバイトを用い移動ピッチを小さくすれば、筋の高さは小さくなる傾向がある。
なお、この様な縦横のアスペクト比が非常に小さい凹凸の筋は、走査型白色光干渉式顕微鏡(米国Zygo社等の市販製品有り)などで把握できる。
【0027】
そして、本発明では、この筋5の筋周期Wを50μm以下に設定しておけば、筋5が光学欠陥として、電磁波遮蔽材の光学的均一性に悪影響するのを防げる。筋周期Wが50μmを超えると、例えば60μmであると、光学欠陥として悪影響を及ぼす。また、悪影響をより確実に抑制するためには、筋周期Wは、より好ましくは45μm以下とするのが望ましい。なお、筋周期Wの下限値は特に制限はないが、小さくするほど、鏡面加工時の鏡面加工用のバイトの移動速度を遅くする必要があるので、加工速度低下による版作製時間が増加し、製造コストが高くなるので、コストを勘案して設定すると良い。
【0028】
ここで、図2を参照しながら更に説明する。図2(a)は導電体パターン層印刷用のシリンダ状の凹版31、図2(b)枚葉シート状態の電磁波遮蔽材10である。ここでは、導電体パターン層を印刷する透明基材が連続帯状シートであり、この透明基材にシリンダ状の凹版を用いて導電体パターン層を印刷して連続帯状状態の印刷物から、枚葉状態に切断した電磁波遮蔽材10を作製する場合である。また、図2では、筋5(乃至は筋5A)を強調して図示してあるので、導電体パターン層の図示は省略してある。
【0029】
図2(a)に示す様に、凹版版面を鏡面加工用のバイトで鏡面加工する時に、凹版31をその回転軸Aで円周方向Pcに回転させつつ、該バイトを一定の速度で回転軸A方向に移動させて行くと、版面には円周方向Pcに対して平行がずれて延びる方向が斜めとなった螺旋状の切削跡が筋状に残り筋5Aが生じる。なお、このとき、バイトの移動速度を、新たな鏡面加工面が、凹版が一回転した時に直前に切削した面の一部に重なる様な移動速度に設定して加工すると、版面の螺旋状の切削跡である筋5Aは殆ど円周方向Pcに平行になる。
図2(a)で言えば、版面上での筋5Aの延びる方向を、凹版版面での円周方向Pcに対する劣角で定義した傾斜角αが0°となる。そして、バイトの移動速度を適宜調整することで、版面上に於ける筋5Aが延びる方向に対して直交する方向での周期性を有する筋周期Wbを目的とする大きさで、筋5Aを形成することができる。
【0030】
ところで、バイトの円筒状の凹版の回転軸方向での移動速度は、該凹版を円周方向に一回転する間でのバイトの移動距離を移動ピッチMbとして定義して、該移動ピッチMbで捉えることができる。
一方、筋周期W、筋周期Wbは筋の延びる方向に直交する方向での距離である〔図1(b)、図2(a)参照〕。従って、円筒状の凹版を回転軸Aで回転させて連続的にバイトを回転軸A方向に移動させて鏡面加工(旋盤加工)すると、版面には円周方向とは完全には平行でない方向に延びる螺旋状の筋5Aが生じている。であるから、この筋5Aは該円周方向に対して傾斜している〔図2(a)では傾斜角αで示してある〕。傾斜角αが0°乃至は0°に近いときは、版面上での筋5Aの筋周期Wbは移動ピッチMbに等しいと見なすことができる。ただ、傾斜角αが大きいときは、傾斜角αによる影響を勘案して、目的とする筋周期Wとなる様なバイトの該回転軸方向での移動速度、乃至は移動ピッチMbを設定して鏡面加工すると良い。
【0031】
例えば、筋の延びる方向を該回転軸方向に45度傾斜させる場合では(傾斜角α=45°)、筋周期Wbは前記移動ピッチMbの約(1/1.4142)(ルート2分の1)となる。凹版版面上での筋周期Wbは、凹版の円周長と、凹版を一回転する間でのバイトの移動距離とから三角関数を使って算出できる。一般には、凹版版面上での筋周期Wb、及び凹版の回転軸A方向のバイト移動ピッチMbとの間には、図2(a)から幾何学的に明らかな様に、
Wb=Mb×cos(α)
なる関係を有する。
【0032】
そして、図2(a)の様な、版面上での筋5Aの筋周期Wbとなった凹版31を用いて導電体パターンを印刷すれば、図2(b)の様に、印刷結果物の電磁波遮蔽材10に於けるプライマ層表面での筋5の筋周期Wは、版面上での筋周期Wbと等しく形成される。すなわち、
W=Wb=Mb×cos(α)
である。
【0033】
なお、筋5が光学欠陥となる理由は定かいが、現実に筋周期Wの調整により光学欠陥が抑制されている事、を考えると、多数の細かい筋5の筋状凹凸群が何らかの光学的作用を及ぼしており、これが影響していることは確かであると想像される。
但し、プライマ層2上の筋5それ自体は高低差が数10〜数100nmの寸法であり目視で全く視認不能なこと、及びその光学欠陥の外観が縞状のパターンとは異なることから、モアレ縞とは別現象であると判断される。
【0034】
[導電体パターン層]
導電体パターン層3は、導電体層の非形成部として多数の開口部4を設けたパターン状の導電体層である。また、この導電体パターン層は、導電性粒子を樹脂バインダ中に分散させた導電性組成物層として形成される。形成には「引抜プライマ方式凹版印刷法」を利用する。なお、導電体パターン層の厚みは、電磁波遮蔽性能、形成法等の点から、通常は2〜100μm、より好ましくは5〜20μm程度である。
【0035】
上記導電性粒子としては、金、銀、白金、銅、錫、アルミニウム、ニッケルなど高導電性金属(乃至合金)粒子、或いは樹脂粒子や無機非金属物粒子の表面を金、銀など上記高導電性金属で被覆した金属被覆粒子、或いは黒鉛粒子などを用いてもよい。
また、上記樹脂バインダの樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを単独使用又は併用する。熱可塑性樹脂には熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂など、熱硬化性樹脂にはメラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などを使用する。また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。
【0036】
導電体パターン層3のパターンの平面視形状は、特に制限はなく公知の形状でよく、例えば、メッシュ形状(六角形や四角形などの格子模様)、ストライプ形状(直線状縞模様、螺旋模様など)などである。なかでもメッシュ形状、それも正方格子形状が代表的である。開口部4の形状は、メッシュ形状が例えば正方格子形状では正方形、ストライプ形状では帯形状となる。
なお、パターンの線幅、つまり導電体パターン層の形成部の線幅は、電磁波遮蔽性能などの観点から通常は5〜50μmである。又、導電体パターン層の開口率〔(導電体パターン層非形成部である開口部の合計面積/導電体パターン層の非形成部である開口部及び形成部を含めた全被覆面積)×100で定義〕は、電磁波遮蔽性能及び可視光透過性との両立の点から、50〜95%程度である。
【0037】
また、メッシュパターン乃至はストライプパターンとして導電体パターン層の形成部である線(ライン)が延びる方向は、適用するディスプレイの画素ピッチや発光特性を考慮して、モアレが出難い角度に設定するのが好ましい。例えば、長方形形状の枚葉シートの電磁波遮蔽材に於いて、該長方形の長辺に対する劣角としてバイアス角度γを定義すると、バイアス角度γを49°とする、等である。
【0038】
なお、導電体パターン層3の表面には、コントラスト向上の点では、黒化処理層を有するものとするのが好ましい。黒化処理層としては、電磁波遮蔽材において公知のものを適宜採用すれば良い。また、導電性組成物層としての導電体パターン層3自体では目的とする面積抵抗率が得られない場合は、表面に銅のめっき等により金属層を備えたものとしても良い。
また、本発明では導電体層として導電体パターン層を少なくとも有するが、例えば、電磁波遮蔽材の周囲に設ける接地用の領域などでは、連続面(ベタ面)で設けた導電体ベタ層が存在してもよい。但し、接地用の外周部を除く電磁波遮蔽材中央部は、前記した開口部が存在する導電体パターン層である。
【0039】
(導電体パターン層の「引抜プライマ方式凹版印刷法」による形成)
導電体パターン層3を導電性粒子を樹脂バインダ中に分散させた導電性組成物層として形成する為には、「引抜プライマ方式凹版印刷法」を利用する。この凹版印刷方法は、既に述べた様に、微細なパターンを高精度で形成できる印刷法であり、本出願人が国際公開WO2008/149969号公報に開示した印刷法でもある。この印刷法では、凹版版面の凹部内部に充填したインキを引き抜いて被印刷物へのインキの転移を促進させる、「転移促進層」とも言える「プライマ層」を、印刷の最中に流動状態で作用させる点に特徴がある凹版印刷法である。次に、図3を参照して「引抜プライマ方式凹版印刷法」をその一形態で更に説明しておく。なお、この形態は、プライマ層2を透明基材1側に流動状態のプライマ流動層2cとして施しておく形態である。
【0040】
図3に例示の引抜プライマ方式凹版印刷法では、透明基材準備工程、及び充填工程として、先ず、図3(a)の様に、透明基材1の片面(図面下方の面)に塗工などでプライマ流動層2cを積層し、一方、凹版31の版面(但し、版面の筋5は略して図示)の凹部には、導電体パターン層3を印刷する為の導電性ペーストなどの固化前の導電性組成物3cを充填する。充填は所謂グラビア印刷の様に版面の凹部以外の版面凸部上の導電性組成物はドクターブレードで掻き取るなどして除去するが、凹部に充填された導電性組成物3cの表面は版面(凸部)と完全な面一にならずに、図3(a)の様に僅かに窪んだ凹み32がある形状となる。
次に、圧着工程として、図3(b)の様に、透明基材1に形成されているプライマ流動層2cを、透明基材1と共に凹版31の該版面に圧着して、版面凹部内に充填済みの導電性組成物3cと隙間無く接触させ圧着させる。このとき、プライマ流動層2cは流動性を示すので、導電性組成物3cの凹み32に流れ込み凹み32を充填する。また、凹部以外の版面凸部の部分もプライマ流動層2cが覆う。
次に、プライマ固化工程として、図3(b)の状態のままで、プライマ流動層2cを固化してプライマ層2とする。固化手段は生産性の点で好ましくは紫外線、電子線などの電離放射線照射である。
次に、転移完了工程として、図3(c)の様に、透明基材1を凹版31から離版することで、透明基材1上にプライマ層2と、未硬化の導電性組成物3c或いは硬化済みの導電性組成物層からなる導電体パターン層3が積層された印刷物を得る。
【0041】
また、導電体層固化工程として、導電性組成物3cを固化させるが、この固化は、溶剤乾燥を含むときは当然に導電性組成物3cが凹部内から開放された転移完了工程の後であるが、無溶剤の場合は転移完了工程の前のプライマ固化工程と同時、又はプライマ固化工程と転移完了工程の間でもよい。そして、転移完了工程及び導電体層固化工程を経た後に、導電性組成物3cは導電性組成物層としての導電体パターン層3となって、プライマ層2の面に形成されることになる。
【0042】
そして、この様な、「引抜プライマ方式凹版印刷法」による印刷物が、他の印刷法に見られない大きな特徴は、図4の断面図(透明基材1は略して図示)で概念的に示す様に、プライマ層2と導電体パターン層3との界面について、プライマ層2は導電体パターン層3の形成部2aの厚さTaが導電体パターン層3の非形成部2bの厚さTbよりも厚い形状となることである。なお、非形成部2bの厚さTbは、形成部2aの厚さTaの影響のない非形成部2bつまり開口部4の中央部での厚さとする。
なお、図1(及び図5)では、プライマ層2表面の筋5に注目して筋5を強調して図示してあるので、この厚さTaと厚さTbとの関係に従った厚さの場所による変化は図示を省略してある。
【0043】
更に、プライマ層2と導電体パターン層3との界面は、次の(A)〜(C)のいずれかの1以上の断面形態を有する(但し、図4では図示は省略)。(A)プライマ層2と導電体パターン層3との界面が非直線状に入り組んでいる断面形態、(B)プライマ層2を構成する成分と導電体パターン層3を構成する成分とが混合している混合層を界面近傍に有する断面形態、(C)導電体パターン層3を構成する導電性組成物中にプライマ層2に含まれる成分が存在している断面形態。この様な、界面の断面形態は、プライマ層2がプライマ層2と導電体パターン層3との離版時の密着性を強化し、凹版からインキ(導電性組成物3c)の被印刷物(透明基材1)への転移を促進し高精度且つ高品質の凹版印刷を可能にしている理由であると思われる。
【0044】
また、導電体パターン層3の形成部である導電体パターン層自体の凸部の内部では、図4で概念的に示す様に、導電性粒子Cpが一様な均一な分布ではなく、導電性粒子Cpの分布が、相対的に、凸部の頂上部の近くが密でそれよりも頂上部から遠いプライマ層2の近くが疎である分布を持つ内部構造が好ましい。密とは単位体積中の導電性粒子Cpの粒子数で見た数密度である。つまり、凸部内部の導電性粒子Cpの数密度が、プライマ層2近くに比べて頂上部近くの方が大きくなる分布である。数密度が大きい方が導電性粒子Cp同士の電気的接触が行われ易い。従って、例え導電体パターン層3中の導電性粒子Cpの平均濃度が同じであっても、同じ数の導電性粒子Cpを数密度一様で分布させた場合に比べて、数密度が大きい部分での電気抵抗の低下が寄与して全体として電気抵抗が下がり、電磁波遮蔽性能が向上する。更に、プライマ層2との境界近傍での導電性粒子Cpの数密度が小さいことによって、導電体パターン層3とプライマ層2との密着性が向上する。
この様に凸部頂上部の方に導電性粒子Cpを偏在させるには、例えば、図3(b)の圧着工程にて圧着力を強くすると共に、導電性組成物3cは粘度は低めにし且つ凹版凹部内では固化させずに版面から離版後に固化させると良い。この他、固化前の導電性組成物3cの粘度(樹脂材料及び樹脂量、溶剤量、その他添加剤量、導電性粒子の形状、粒度分布、含有量など関係)、固化条件などにも依存するので、これらは適宜実験的に決定すると良い。
【0045】
[その他の層]
なお、本発明による電磁波遮蔽材は、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、上記した以外のその他の層を含んでもよい。例えば、導電体パターン層が積層された側とは反対側の透明基材の面に、ディスプレイ前面板などの被着体に貼り付ける為の粘着剤層やそのセパレータフィルム、光学フィルタなどの機能層である。なお、これら粘着剤層、セパレータ、機能層には公知のものを適宜使用すれば良い。
また、本発明は、開口部に於けるプライマ層表面の多数の筋をその凹凸を完全に埋め尽くす事なく、表面凹凸が残ったままで、それが光学欠陥となるのを抑制するものであるので、その凹凸が残る構成であれば、開口部に於けるプライマ層表面に他の層が積層されていても良い。例えば薄膜(例えば筋の高低差以下の膜厚のもの)などが積層されていても良い。この場合は、プライマ層表面は大気に直接的に接してはいないが、電磁波遮蔽材としては筋が在る開口部が大気に接している状態となり、本発明の前提となる課題が存在する為である。
【0046】
(機能層)
ここで、光学フィルタなどの機能層について更に説明しておく。
機能層には、公知のものを適宜選択する事ができるが、機能層の機能は、光学フィルタ機能(光学フィルタ)、電磁波遮蔽材の透明基材1表面に対する保護機能、或いはその他の機能などである。また、機能層は単層で複数の機能を兼用させることもできるし、多層とすることもできる。なお、機能層の厚みは単層での厚みで通常0.1〜800μm程度である。この様な機能層は、通常樹脂層として貼り合せ、塗工或いは印刷で形成できる。また、機能層は反射防止機能等として無機蒸着膜など薄膜も採用できる。
【0047】
光学フィルタ機能としては公知の光学フィルタ機能、例えば、近赤外線を吸収する近赤外線吸収機能、紫外線を吸収する紫外線吸収機能、或いは、視覚上の効果が得られる、PDPのネオン光を吸収するネオン光吸収機能、表示画像を好みの色調に補正する色補正機能などの特定光透過機能、反射防止機能(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)、特開2007−272161号公報などに記載の微小ルーバによる外光反射防止機能などである。なお光学フィルタ機能としては、これら機能の1又は2以上を、単層又は多層構成によって実現することができる。
これら各種の光学フィルタ機能を実現するには、例えば、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、色補正機能などは、これら機能に応じた色素(近赤外線吸収色素、ネオン光吸収色素、色補正色素)を用い、紫外線吸収機能は紫外線吸収剤を用いるなど、公知の材料・方法で実現できる。例えば、これら材料を樹脂中に分散させた樹脂層として機能層を塗工形成する。
【0048】
また、光学フィルタ機能以外のその他の機能層としては、電磁波遮蔽材に於いて公知の機能層、例えば、透明基材1表面や光学フィルタの表面を保護する表面保護層、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、或いは2層間を密着させる接着層(含む粘着層)、2層を接触させない或いは更に2層間の物質移動を防ぐバリア層などである。
【0049】
[用途]
本発明による電磁波遮蔽材は、特に、テレビジョン受像装置、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの各種画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。又、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等に於ける電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【0050】
《画像表示装置》
本発明の画像表示装置は、図5に一形態で例示する画像表示装置20の様に、上記した電磁波遮蔽材10を、プラズマディスプレイパネル(PDP)6の前面に、つまりプラズマディスプレイパネルの観察者側に、密着させずに間に空間を空けて配置した画像表示装置である。また、この際、電磁波遮蔽材10の導電体パターン層3側はプラズマディスプレイパネル側に向けて配置する。この様な画像表示装置とすることによって、開口部4自体による凹凸を埋める平坦化層が省略されており電磁波遮蔽材10の開口部4表面には筋5による凹凸が存在するが、それが光学欠陥となって悪影響するのを防いでいるので、画像品質を維持しつつ低コスト化が可能となる。
【0051】
また、電磁波遮蔽材10の向きを、導電体パターン層3を観察者側(図5で図面上方)に向けるよりも、上記の様にすることで、低コスト化の為に導電体パターン層を平坦化層や表面保護層で被覆しない形態でも、導電体パターン層を不意の外力による傷付き等から保護できる利点が得られる。
【0052】
なお、本発明の画像表示装置20は、少なくとも電磁波遮蔽材10、プラズマディスプレイパネル6を備えるものであり、その他の部材を適宜備えることができる。その他の部材としては、プラズマディスプレイパネルを用いた画像表示装置に於ける公知の各種部材が適宜選択される。例えば、ガラスや樹脂からなる透明剛直なディスプレイ前面板である。なお、図5では、これを一点鎖線のディスプレイ前面板7として示してあり、このディスプレイ前面板7は図示しない接着剤層(含む粘着剤層)によって、電磁波遮蔽材10がその透明基材1側の面で密着積層されている。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例によって更に詳述する。
【0054】
[実施例1]
(凹版の作製)
凹版には、円筒状のシリンダ版を用い、先ず版面凹部を形成する前に、版面を面出し用のバイトで鏡面加工した。その際、凹版を回転軸芯Aで回転させつつ回転軸芯A方向へバイトを一定の移動ピッチで移動させて鏡面加工した。なお、凹版版面上でのバイト切削跡である筋5Aの延びる方向は凹版円周方向に対して略平行で、円周方向に対する傾斜角αは略0°(0.5°未満)である〔図2(a)〕。
この鏡面加工の後、その版面に線幅20μmで深さ20μmの細線による正方格子状で繰返ピッチ300μmとなるメッシュパターンとなる溝状凹部を、バイトで切削して、目的とする凹版31を作製した。
【0055】
(導電体パターン層の凹版印刷)
次に、上記凹版31を用いた「引抜プライマ方式凹版印刷法」によって、2軸延伸透明ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた連続帯状の透明基材1の片面に、導電性組成物層からなる導電体パターン層3をシート流れ方向MDに連続面で形成して作製した連続帯状のシート状の電磁波遮蔽材から、枚葉のシート状の電磁波遮蔽材10を切り出して作製した〔図2(b)〕。
なお、凹版印刷時のプライマにはアクリレート系紫外線硬化性樹脂を用い、これをグラビアリバースロールコート法によって厚さ5μmとなるように透明基材上にシート流れ方向MDに連続面で形成した。なお、プライマ塗布後のプライマ流動層2cは流動性を呈するが透明基材から流れ落ちる程ではない。この透明基材1は巻き取らずにそのままシリンダ状の凹版31に供給した。
また、導電性組成物には、鱗片状銀粒子を導電性粒子Cpとして熱可塑性ポリエステルウレタン樹脂と溶剤を含む樹脂バインダに分散した銀ペーストを用いた。
そして、プライマ流動層の面に銀ペーストを凹版印刷し、溶剤分は加熱乾燥して導電体層を形成した。なお、プライマ流動層は透明基材が凹版の版面上にある間に高圧水銀灯で紫外線照射して硬化させ固化させてプライマ層2とした。次いで、凹版31の版面から透明基材1と共に硬化したプライマ層2及び未硬化状態の導電性組成物3cからなる導電体パターン層を離版させ、その後、該導電体パターン層中の殘留溶剤を乾燥させ硬化させて導電体パターン層3とした。
【0056】
電磁波遮蔽材10に於ける導電体パターン層3は、その直下の導電体パターン層の形成部のプライマ層2の厚みTaは導電体パターン層の非形成部の厚みTbよりも厚くなっている。
また、導電体パターン層3の断面を顕微鏡で拡大観察すると、図4の如く、導電体パターン層自体の形成部である凸部において、その頂上部近くでの導電性粒子Cpの数密度が相対的に大きく、プライマ層2との境界近傍での導電性粒子Cpの数密度が相対的に小さくなるように導電体粒子が分布している。
【0057】
そして、図1及び図2の如く開口部にて大気に露出しているプライマ層2の表面には、多数の直線状の筋5が互いに平行に存在しており、その延びる方向に直交する方向での筋周期Wは45μmとなっている。なお、筋周期Wをもたらす筋の高低差は平均(一つの開口部内での平均化)して18nmであった。
【0058】
(画像表示装置)
上記、枚葉の電磁波遮蔽材10を、図5を参照して説明したのと同一の、前後の配置、表裏の向きで、プラズマディスプレイパネルの前面に配置して、画像表示装置を作製した。このときの、表示画像の品質を目視にて観察して評価した。プラズマディスプレイパネルには42V型のパネルを用いた。
なお、筋の延びる方向は電磁波遮蔽材の短辺に平行であり、該短辺はディスプレイの鉛直方向に平行である。
【0059】
[実施例2]
実施例1に於いて、バイトの移動ピッチをより小さくして鏡面加工した結果、筋周期Wが10μmとなった以外は、実施例1同様にして、電磁波遮蔽材と画像表示装置を作製した。
【0060】
[比較例1]
実施例1に於いて、バイトの移動ピッチをより大きくして鏡面加工した結果、筋周期Wが60μmとなった以外は、実施例1同様にして、電磁波遮蔽材と画像表示装置を作製した。なお、筋周期Wをもたらす筋の高低差は実施例1同様に平均して40nmであった。
【0061】
[性能評価]
各実施例及び比較例にて、画像表示装置として組み立てた状態での、プライマ層表面の筋による光学欠陥(見る方向で画面の輝度が低下し輝度が不均一になる現象)の出具合を次の様にして評価した。結果は表1に纏めて示す。
評価は具体的には、画面の鉛直方向をY軸、水平方向をX軸、画面の法線方向(真正面から見る方向)をZ軸としたときに、水平方向(X軸)で画面左側に、法線方向(Z軸)から75°傾けた斜めの方向で、画面から1.0メートル離れた距離を観測位置として、この観測位置から、目視で画面を観察した。その際、観測位置を画面からの距離固定で、画面鉛直方向で(鉛直方向での画面の上辺に平行な観測位置と、下辺に平行な観測位置との間で)上下に振って、電磁波遮蔽材を通して見える画面の輝度が全体として、観測位置によらずに輝度が一定に保たれるか、或いは、観測位置で輝度が変化するか(輝度の不均一性)を目視観察し、実施例及び比較例を比較評価した。
【0062】
【表1】

【0063】
表1の様に、筋周期Wが45μmと10μmであった各実施例は、観測位置によらずに輝度が一定に保たれ(表1中、○で表示)、共に光学欠陥は全く見られず、光学欠陥として悪影響する筋ではなかったが、60μmの比較例1は、光学欠陥としての悪影響が顕著で不良レベル(表1中、×で表示)となる筋であった。
【符号の説明】
【0064】
1 透明基材
2 プライマ層
2a 導電体パターン層の形成部
2b 導電体パターン層の非形成部(開口部4)
2c プライマ流動層
3 導電体パターン層
3c 導電性組成物
4 開口部
5 筋
5a 筋状凸部
5b 筋状凹部
5A 版面上での筋
6 プラズマディスプレイパネル
7 ディスプレイ前面板
10 電磁波遮蔽材
20 画像表示装置
31 凹版
32 凹み
A 版の回転軸(芯)
Cp 導電性粒子
Pc 円周方向
W 筋周期
Wb 版面上で筋周期
Mb 鏡面加工時のバイトの移動ピッチ
α 凹版版面での筋の傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に、プライマ層を介して導電体パターン層が形成され、該導電体パターン層は導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性組成物層からなり且つその非形成部として多数の開口部が形成され、また、前記プライマ層は前記導電体パターン層の形成部での厚さが導電体パターン層の非形成部での厚さよりも厚い、電磁波遮蔽材において、
前記開口部に於けるプライマ層の表面には互いに平行な多数の直線状の筋による凹凸が存在し、多数の筋が延びる方向に直交する方向での筋と筋との周期性を有する筋間隔である筋周期が50μm以下である、電磁波遮蔽材。
【請求項2】
請求項1記載の電磁波遮蔽材を、前記開口部に於けるプライマ層表面の筋による凹凸が該電磁波遮蔽材の表面に現れている状態で、プラズマディスプレイパネルの前面に、該電磁波遮蔽材と該プラズマディスプレイパネルとの間に空間を空けて、該電磁波遮蔽材のプライマ層表面側の面を該プラズマディスプレイ側に向けて、配置した、画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−100851(P2011−100851A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254609(P2009−254609)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】