説明

電磁部への流体漏洩防止機能付き電磁振動型ダイヤフラムポンプ

【課題】ダイヤフラムポンプのダイヤフラムが損傷し、電磁駆動部に液体や可燃性ガスが浸入したとしても、安全な電磁振動型ダイヤフラムポンプの提供を目的とする。
【解決手段】ケーシング2内部にさらに、電磁コイル4を気密に収容する電磁コイル収容部7が設けられ、電磁コイル収容部7外部の空間に浸入した流体が、電磁コイル収容部7内部の空間に浸入しないように構成し、電磁コイル収容部7に、振動子5が往復運動するための通路Pが形成され、通路Pが、収容部7の外部の隔壁により形成され、通路P内の空間に浸入した流体が、電磁コイル収容部7内部の空間に浸入しないように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁部への流体漏洩防止機能付き電磁振動型ダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気を吐出するダイヤフラムポンプとして、特許文献1に開示される電磁振動式のダイヤフラムポンプが知られている。特許文献1に開示されたダイヤフラムポンプは、図5に示すように、一対の電磁コイル10と永久磁石11との磁気的相互作用により、永久磁石11を備えた振動子12の振動によりダイヤフラム13を駆動させることにより外部への気体の吸引、吐出を行うようにした駆動部14と、駆動部14の作用により、ポン吸入口17から吸入された気体が、ポンプケーシング16において圧縮され、吐出口15から吐出される。駆動部14には、振動子12を挟みこむように、一対の電磁コイル10が設けられており、交流電源電圧が電磁コイル10に印加されることにより、振動子12を駆動し、ポンプ作用を得るものである。このダイヤフラムポンプは、大気中の空気をはじめ、水等の流体や、ガス等の気体についても原理的には、吸入、吐出が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−343446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1に開示されたダイヤフラムポンプは、電磁コイル10がケーシング内に収容されており、外部からの水分等が浸入することを防止することができる。しかしながら、たとえば、水等の液体や可燃性ガスを吸入、吐出する場合、ダイヤフラム13が劣化して損傷し、電磁駆動部14内に液体や、可燃性ガスが浸入し、電磁コイル10の端子が設けられた活電部に接触すると、漏電や爆発の危険性がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる問題に鑑みて、ダイヤフラムポンプのダイヤフラムが損傷しても、電磁駆動部に液体や可燃性ガスが浸入しない、安全な電磁振動型ダイヤフラムポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電磁振動型ダイヤフラムポンプは、交流電源が接続される一対の対向する電磁コイルおよび該一対の電磁コイルの間に往復運動可能に配置された振動子が収容されたケーシングと、前記振動子の両端に固定されたダイヤフラムを介して該ケーシングの両側に固定され、前記振動子の往復運動およびダイヤフラムの弾性変形により外部から流体が吸入され、外部に吐出する一対のポンプケーシングとからなる電磁振動型ダイヤフラムポンプであって、前記ケーシング内部にさらに、前記電磁コイルを気密に収容する電磁コイル収容部が設けられ、前記電磁コイル収容部外部の空間に浸入した流体が、前記電磁コイル収容部内部の空間に浸入しないように構成され、前記電磁コイル収容部に、前記振動子が往復運動するための通路が形成され、通路が、前記電磁コイル収容部の外部の隔壁により形成され、前記通路内の空間に浸入した流体が、前記電磁コイル収容部内部の空間に浸入しないように構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記収容部の隔壁が、磁気透過性かつ非磁性体の材料からなることが好ましい。
【0008】
また、前記電磁振動型ダイヤフラムポンプが、液体または可燃性流体用電磁振動型ダイヤフラムポンプであることが好ましい。
【0009】
また、前記通路が、前記振動子の移動方向に沿って形成され、前記収容部の振動子の移動方向に垂直な断面形状が、略O字状または略U字状の形状を呈することが好ましい。
【0010】
また、前記収容部が、前記ケーシングと一体に形成されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電磁コイルが、ケーシング内部でさらに電磁コイル収容部に気密に収容されているので、ダイヤフラムの破損や、ケーシングの破損等により、ケーシング内に液体や、可燃性流体が流入しても、電磁コイルの端子等の活電部に接触することがない。したがって、漏電や爆発のリスクを減らすことができ、安全な電磁振動型ダイヤフラムポンプを提供することができる。また、吸入・吐出される流体を、ケーシング内を通して、ポンプケーシング内に送るような構造の電磁振動型ダイヤフラムポンプであっても、漏電や爆発のリスクを減らして、安全に駆動することができる。したがって、液体や可燃性ガス用の電磁振動型ダイヤフラムポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電磁振動型ポンプの概略を説明するための断面図である。
【図2】本発明の電磁振動型ポンプに用いられる電磁コイル収容部の一実施形態を示す組立斜視図である。
【図3】本発明の電磁振動型ポンプに用いられる電磁コイル収容部の他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明の電磁振動型ポンプに用いられる電磁コイル収容部をケーシングと一体とした他の実施形態を示す断面図である。
【図5】従来の電磁振動型ポンプの概略を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照し、本発明の電磁振動型ダイヤフラムポンプを詳細に説明する。図1に示されるように、本発明の電磁振動型ダイヤフラムポンプ(以下、単にポンプという)1は、ポンプ1を駆動するための要素が内部に収容されたケーシング2および吸入・吐出される流体の流路となるポンプケーシング3とを備えている。
【0014】
ケーシング2の内部には、図示しない交流電源が接続される一対の対向する電磁コイル4および一対の電磁コイル4の間に往復運動可能に配置された振動子5が収容されている。電磁コイル4に交流電源から交流電流電圧が印加されることにより、電磁コイル4、4の間の間隙に配置された、振動子5の永久磁石51、52と電磁コイル4、4との磁気的作用により、図1中左右方向に往復運動をする。
【0015】
往復運動をする振動子5の両端には、ダイヤフラム6が公知の固定手段により固定されており、振動子5の往復運動に伴い、ダイヤフラム6も弾性変形し、ポンプケーシング3の圧縮室31内の流体の圧力を昇降させることにより、流体を吸入・吐出する。ポンプケーシング3は、図1では、吸入口37から吸入室36、吸入弁35を介して圧縮室31に流体が流入し、圧縮室31から吐出弁34、吐出室33を介して吐出口32に流体が吐出される構成となっているが、ポンプケーシング3の構造は、図1に示す構造に限定されるものではなく、ダイヤフラム6の弾性変形により流体を流入・吐出させることができる構造であれば、特に限定されるものではない。したがって、外部からの流体の吸入が、ポンプケーシング3側からではなく、ケーシング2側から吸入し、ケーシング2側から吸入された流体をポンプケーシング3側に移送するものや、圧縮室31を介して吐出される流体を、ポンプケーシング3側からケーシング2側に移送した後、ケーシング2側から吐出する構成としても構わない。
【0016】
つぎに、本発明のポンプ1における電磁コイル4を収容する電磁コイル収容部(以下、単に収容部という)7について図1および図2を用いて説明する。図1に示されるように、電磁コイル4は、ケーシング2の内部の空間内において、さらに収容部7に気密に収容されている。
【0017】
収容部7は、図1および図2に示されるように、一対の電磁コイル4の両方をその内部に収容する。一実施形態において、収容部7は、振動子5の振動方向に沿って、振動子5が挿通される通路が形成された、筐体状を呈している。ケーシング2内部には、一対の電磁コイル4が収容され、開口した上部に蓋71が、ネジ等の固着手段Sにより密封され、電磁コイル4が収容部7の外部の流体と接触しないようにしている。収容部7は、蓋71や固着手段Sにより密封されているが、収容部7外部の空間に浸入した流体が、収容部7内部の空間に浸入しないように構成されていればよく、蓋71の位置は、収容部7の上部でも下部でも側面でもよく、また固着手段Sもネジに限られることはなく、接着剤や溶接等で密封しても構わない。
【0018】
また、蓋71と収容部7の開口部とは、図示していないが、パッキンなどのシール部材によりさらに気密性を高めることもでき、このようなシール部材を介在させて密封する構成も本発明に含まれる。なお、電磁コイル4の端子部(図示せず)は、収容部7内に収容され、端子部から電磁コイル4の電源までの配線は、図示はしていないが、蓋71にたとえば、ブッシングを設けることにより、収容部7の内部の気密性を確保する。
【0019】
また、収容部7には、振動子5の往復運動を確保するための振動子用通路(以下、単に通路という)Pが形成されている。図1および図2に示すように、収容部7の外部の隔壁により通路Pが画定されている。したがって、通路Pの内部の空間は、収容部7の内部の空間とは連通しておらず、通路P内に浸入した流体は、収容部7内部の空間に浸入しないように構成されている。
【0020】
このように、収容部7内の空間が、収容部7の外部の空間と遮断されていることにより、吸入・吐出される流体が、液体や可燃性ガスのような場合に、たとえばダイヤフラム6の破損等により、ケーシング2内部に液体や可燃性ガスが侵入した場合等であっても、収容部7により、電磁コイル4がそのような液体や可燃性ガスと接触することがないので、漏電や爆発のリスクを回避することができ、安全なポンプ1を提供することができる。
【0021】
また、1つの収容部7に一対の電磁コイル4を収容し、当該収容部7に振動子5の通路Pを形成することにより、ポンプ1のケーシング2に、収容部7を取り付けるだけで、電磁コイル4を含む電磁駆動部の取り付けが完了するので、一対の電磁コイル4同士の位置決めや、電磁コイル4と振動子5との間の位置決めや設置等が容易になる。さらに、電磁コイル4を1つの収容部7で液体や可燃性ガスから保護することができるので、部品点数も少なくて済む。
【0022】
収容部7の隔壁の材質は、特に限定されることはないが、電磁コイル4からの磁気を透過するために、合成樹脂や金属製であることが好ましい。この場合、磁気を透過しやすいように、隔壁の厚さは、1〜2mmであることが好ましいが、特にその厚さは限定されるものではない。また、ポンプ1の駆動が停止している状態で、振動子5の永久磁石51、52が吸着されないように、金属製の場合は、アルミ、銅、非磁性ステンレス等の非磁性金属であることが好ましい。
【0023】
収容部7の形状は、電磁コイル4を収容でき、振動子5の通路Pが形成されたものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、図2に示されるように、収容部7が密封された状態での振動子5の移動方向に対して垂直な断面が略O字状の形状や、図3に示すように、略U字状の形状とすることもできる。また、図3における収容部7を天地逆にした逆U字状とすることもできるし、図3においては、2枚の蓋71a、71bにより、収容部7の開口部を密封しているが、図3における2つの開口を1枚の蓋により閉じるものであってもよい。
【0024】
また、通路Pは、図2においては、断面が矩形状となっているが、振動子5の形状に応じて円形、楕円形とすることもできるし、多角形状とすることもできる。また、収容部7の外形形状も、図2および図3では、全体として、ほぼ直方体の輪郭を呈しているが、その外形形状は、電磁コイル4を収容することができれば特に限定されるものではなく、湾曲部分や、凹凸が形成されたものであってもよいことはいうまでもない。
【0025】
また、図1〜図3の態様においては、収容部7が、収容部7とは別体のケーシング2内部に収容され、収容部7をケーシング2にネジ等の固定手段により固定するものが記載されているが、本発明は、ダイヤフラムが破損したとき等に、収容部7内に圧縮室31に流入する流体が浸入しないようにすることができればよいため、図4に示すように、収容部7をケーシング2と一体に形成したものも本発明に含まれることはいうまでもない。図4に示す態様では、ケーシング2と収容部7とが一体になっているので、ポンプ1として部品点数をさらに減らすことができ、収容部7をケーシング2に取り付けるための固定手段も不要となる。また、図1〜図3の態様と同様に、電磁コイル4を、通路P側の隔壁に接するように配置しているので、ケーシング2をポンプケーシング3に取り付け、通路P内に振動子5を挿通するだけで、ポンプ1の組み立てを完了させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ポンプ
2 ケーシング
3 ポンプケーシング
31 圧縮室
32 吐出口
33 吐出室
34 吐出弁
35 吸入弁
36 吸入室
37 吸入口
4 電磁コイル
5 振動子
51、52 永久磁石
6 ダイヤフラム
7 収容部
71、71a、71b 蓋
S 固着手段
P 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源が接続される一対の対向する電磁コイルおよび該一対の電磁コイルの間に往復運動可能に配置された振動子が収容されたケーシングと、
前記振動子の両端に固定されたダイヤフラムを介して該ケーシングの両側に固定され、前記振動子の往復運動およびダイヤフラムの弾性変形により外部から流体が吸入され、外部に吐出する一対のポンプケーシングと
からなる電磁振動型ダイヤフラムポンプであって、
前記ケーシング内部にさらに、前記電磁コイルを気密に収容する電磁コイル収容部が設けられ、前記電磁コイル収容部外部の空間に浸入した流体が、前記電磁コイル収容部内部の空間に浸入しないように構成され、
前記電磁コイル収容部に、前記振動子が往復運動するための通路が形成され、通路が、前記電磁コイル収容部の外部の隔壁により形成され、前記通路内の空間に浸入した流体が、前記電磁コイル収容部内部の空間に浸入しないように構成されていることを特徴とする電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
前記収容部の隔壁が、磁気透過性かつ非磁性体の材料からなることを特徴とする請求項1記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
前記電磁振動型ダイヤフラムポンプが、液体または可燃性流体用電磁振動型ダイヤフラムポンプであることを特徴とする請求項1または2記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
前記通路が、前記振動子の移動方向に沿って形成され、前記収容部の振動子の移動方向に垂直な断面形状が、略O字状または略U字状の形状を呈することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。
【請求項5】
前記収容部が、前記ケーシングと一体に形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電磁振動型ダイヤフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−219722(P2012−219722A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86681(P2011−86681)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構・新エネルギーベンチャー技術革新事業/安全性と耐久性に優れた燃料電池用水素循環ブロワの技術開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(390006286)株式会社テクノ高槻 (17)
【Fターム(参考)】