説明

電解質組成物および電池

【課題】 イオン伝導性および電気化学特性が優れた電解質組成物を提供する。
【解決手段】 (A)(1)エーテル結合を有するポリマーと、(2)エチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物との少なくとも一方と
(B)リチウムメチド塩化合物
からなる電解質組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーテル結合を有するポリマーまたはエチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物にリチウムメチド塩化合物を含んでなる電解質組成物に関し、特に、電池、キャパシター、センサー等の電気化学デバイス用材料として好適な電解質組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池、キャパシター、センサーなどの電気化学デバイスを構成する電解質は、イオン伝導性の点から電解液または電解液を含有させてゲル状にしたポリマー電解質が用いられているが、電解液の液漏れによる機器の損傷の恐れがあること、また電解液が正極や負極と反応して、電気化学的特性が低下する等の問題点が指摘されている。これに対し無機結晶性物質、無機ガラス、有機高分子系物質などの固体電解質が提案されている。有機高分子系物質は一般に加工性、成形性に優れ、得られる固体電解質が柔軟性、曲げ加工性を有し、応用されるデバイスの設計の自由度が高くなることなどの点からその進展が期待されている。しかしながら、イオン伝導性の面では他の材質より劣っているのが現状である。
【0003】
エチレンオキシドの単独重合体とアルカリ金属イオン系におけるイオン伝導性の発見より、高分子固体電解質の研究は活発に行われるようになった。その結果、ポリマーマトリックスとしては、その運動性の高さ及び金属カチオンの溶解性の点でポリエチレンオキシドなどのポリエーテルが最も有望と考えられている。イオンの移動はポリマーの結晶部ではなくアモルファス部分で起こることが予測されている。それ以来、ポリエチレンオキシドの結晶性を低下させるために、種々のエポキシドとの共重合が行われてきている。米国特許4,818,644号公報にはエチレンオキシドとメチルグリシジルエーテルとの共重合体からなる固体電解質が示されている。しかしながら、いずれもイオン伝導度は必ずしも満足のいくものではなかった。
【0004】
このため、ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル−エチレンオキシド架橋体に特定のアルカリ金属塩を含有させて高分子固体電解質に応用する試みが特開平 9-324114号公報に提案されているが、実用的に充分な伝導度の値は得られていない。このイオン伝導度を更に向上させるために、非プロトン性有機溶媒または分岐型ポリエチレングリコールの誘導体などを含む高分子固体電解質も本出願人を含む WO98/07772 号公報に提案されている。しかし、これらの電解質は電極にリチウム金属を用いた場合、リチウム金属と反応あるいはリチウム金属の表面にデンドライドが析出し、電気化学的特性が著しく低下する。
【特許文献1】米国特許4,818,644号
【特許文献2】特開平 9-324114号
【特許文献3】WO98/07772号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、イオン伝導性および電気化学特性が優れた電解質組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)(1)エーテル結合を有するポリマーと、(2)エチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物の少なくとも一方と
(B)リチウムメチド塩化合物からなり、成分(1)および(2)の少なくとも一方が存在することを特徴とする電解質組成物を提供する。
また、(1)記載のエーテル結合を有するポリマーを架橋して得られる架橋電解質組成物をも提供する。
【0007】
加えて、本発明は、前記電解質組成物を用いた電池をも提供する。
【0008】
本発明の電解質組成物を用いると、サイクル特性に優れ、エネルギー密度の高い電池が得られることも見いだした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成分(1)を含む電解質組成物は加工性、成形性、機械的強度、柔軟性や耐熱性などに優れている。また、本発明の電解質組成物はリチウム金属への電気化学的特性が著しく改善されている。したがって電池(特に、二次電池)をはじめ、大容量コンデンサー、表示素子、例えばエレクトロクロミックディスプレイなど電子機器への応用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の電解質組成物は、ポリマー(1)および低分子エーテル化合物(2)の少なくとも一方を含む。電解質組成物は、ポリマー(1)と低分子エーテル化合物(2)の両方を含んでよい。
エーテル結合を有するポリマーの主鎖は、下記式(i)で表される構成単位と、下記式(ii)で表される構成単位とを有してなる共重合体、下記式(i)で表される構成単位と、下記式(iii)で表される架橋可能な構成単位とを有してなる共重合体、あるいは構成単位(i)、構成単位(ii)、および下記式(iii)で表される架橋可能な構成単位を有してなる共重合体であることが好ましい。更にはランダム共重合体の方が好ましい。
【化1】

【化2】

[式中、Rは炭素数 1〜6のアルキル基、フェニル基または -CHO-Rを表し、Rは炭素数 1〜6のアルキル基またはフェニル基または-(-CH-CH-O-)a-R2’または-CH[CH-O-(-CH-CH-O-)b-R2’]を表し、R2’ は炭素数 1〜6のアルキル基、aおよびb は 0〜12の整数である。]
【化3】

[式中、Rは(a)反応性ケイ素基、(b)メチルエポキシ基、(c)エチレン性不飽和基または(d)ハロゲン原子を有する反応性基を表す]
【0011】
ポリマー(1)における構成単位(i)を構成する単量体は、エチレンオキシドである。
【0012】
ポリマー(1)における構成単位(ii)を構成するオキシラン化合物には、置換基を有していてもよいアルキレンオキサイド、グリシジルエーテル化合物などがある。具体的には、プロピレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、1,2-エポキシヘキサンなどのオキシラン化合物、エチレングリコールメチルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル、1,3-ビス(2-メトキシエトキシ)プロパン 2-グリシジルエーテル、1,3-ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]プロパン2-グリシジルエーテルが挙げられる。
【0013】
ポリマー(1)における架橋可能な構成単位(iii)を形成するオキシラン化合物の反応性官能基は、(a)反応性ケイ素基、(b)メチルエポキシ基、(c)エチレン性不飽和基、または(d)ハロゲン原子である。
【0014】
反応性ケイ素基(a)を有するオキシラン化合物には、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4-グリシドキシブチルメチルトリメトキシシラン、3-(1,2−エポキシ)プロピルトリメトキシシラン、4-(1,2−エポキシ)ブチルトリメトキシシラン、5-(1,2−エポキシ)ペンチルトリメトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中で、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが特に好ましい。
【0015】
メチルエポキシ基(b)を有するオキシラン化合物には、2,3-エポキシプロピル-2',3'-エポキシ-2'-メチルプロピルエーテル、エチレングリコール-2,3-エポキシプロピル-2',3'-エポキシ-2'-メチルプロピルエーテル、及びジエチレングリコール-2,3-エポキシプロピル-2',3'-エポキシ-2'-メチルプロピルエーテル、2-メチル-1,2,3,4-ジエポキシブタン、2-メチル-1,2,4,5-ジエポキシペンタン、2-メチル-1,2,5,6-ジエポキシヘキサン、ヒドロキノン-2,3-エポキシプロピル-2',3'-エポキシ-2'-メチルプロピルエーテル、カテコール-2,3-エポキシプロピル-2',3'-エポキシ-2'-メチルプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0016】
その中でも、特に2,3-エポキシプロピル-2',3'-エポキシ-2'-メチルプロピルエーテル、及びエチレングリコール-2,3-エポキシプロピル-2',3'-エポキシ-2'-メチルプロピルエーテルが好ましい。
【0017】
エチレン性不飽和基(c)を有するオキシラン化合物には、アリルグリシジルエーテル、4-ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α-テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、4,5-エポキシ-2-ペンテン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエン、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロヘキセン、1,2-エポキシ-5-シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル-4-ヘキセノエートが用いられる。
好ましくは、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0018】
ハロゲン原子(d)を有するオキシラン化合物には、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、エピクロロヒドリンなどが挙げられる。
【0019】
エーテル結合を有するポリマーの重合法は、エチレンオキサイド部分の開環反応により共重合体を得る重合法であり、特開昭 63-154736号公報および特開昭 62-169823号公報に記載の方法と同様にして行われる。
【0020】
重合反応は次のようして行える。開環重合用触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系などを用いて、各モノマーを溶媒の存在下又は不存在下、反応温度 10〜80℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル共重合体が得られる。なかでも、重合度、あるいは作られる共重合体の性質などの点から、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系が特に好ましい。重合反応において反応性官能基は反応せず、反応性官能基を有するポリマー(1)が得られる。
【0021】
本発明の電解質組成物に使われるエーテル結合を有するポリマーに対して、構成単位(i)を構成するエチレンオキシドの割合は 10〜95重量%、好ましくは 20〜90重量%、例えば25〜80重量%、構成単位(ii)を構成するオキシラン化合物の量は 90〜5重量%、好ましくは 80〜10重量%、例えば70〜15重量%、架橋可能な構成単位(iii)を構成するオキシラン化合物は 0〜30重量%、好ましくは 0〜20重量%、例えば1〜15重量%である。
【0022】
架橋可能な構成単位(iii)を構成するオキシラン化合物の量が 30重量%以下である場合に、架橋されたポリマーは、イオン伝導度が良好である。
【0023】
構成単位(i)を構成するエチレンオキシドの量が 10重量%以上である場合に、低温でもリチウム塩化合物が溶けやすいために、イオン伝導度が高い。
一般にポリマー電解質はガラス転移温度を下げることによりイオン伝導性が向上することは知られているが、本発明のエーテル結合を有するポリマー(1)を含む電解質組成物の場合はイオン伝導性の向上効果が格段に大きいことがわかった。
【0024】
電解質組成物に使われるポリマーの分子量は、良好な加工性、成形性、機械的強度、柔軟性を得るために、重量平均分子量 10〜10の範囲内、好ましくは 10〜10の範囲内のものが適する。
【0025】
反応性官能基が反応性ケイ素基(a)であるポリマー(1)の架橋方法としては、反応性ケイ素基と水との反応によって架橋できる。反応性を高めるには、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレート等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等のアルミニウム等のアルミニウム化合物などの有機金属化合物、あるいは、ブチルアミン、オクチルアミン等のアミン系化合物などを触媒として用いても良い。
【0026】
反応性官能基がメチルエポキシ基(b)であるポリマー(1)の架橋方法においてはポリアミン類、酸無水物類などが用いられる。
ポリアミン類としては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミンなどの脂肪族ポリアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ポリアミン等が挙げられる。ポリアミンの添加量はポリアミンの種類により異なるが、通常、ポリマー(1)100重量部に対して 0.1〜10重量部の範囲である。
【0027】
酸無水物類としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラメチレン無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。酸無水物類の添加量は酸無水物の種類により異なるが、通常、ポリマー(1)100重量部に対して 0.1〜10重量部の範囲である。これらの架橋には促進剤を用いても良く、ポリアミン類の架橋反応にはフェノール、クレゾール、レゾルシンなどがあり、酸無水物類の架橋反応にはベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノエチル)フェノール、ジメチルアニリンなどがある。促進剤の添加量は促進剤により異なるが、通常、架橋剤 100重量部に対して 0.1〜10重量部の範囲である。
【0028】
反応性官能基がエチレン性不飽和基(c)であるポリマー(1)の架橋方法としては、有機過酸化物、アゾ化合物等から選ばれるラジカル開始剤、紫外線、電子線等の活性エネルギー線が用いられる。更には、水素化ケイ素を有する架橋剤を用いる事もできる。
【0029】
有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等、通常架橋用途に使用されているものが用いられ、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、等が挙げられる。有機過酸化物の添加量は有機過酸化物の種類により異なるが、通常、ポリマー(1)100重量部に対して 0.1〜10重量部の範囲内である。
【0030】
アゾ化合物としてはアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物等、通常架橋用途に使用されているものが用いられ、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。アゾ化合物の添加量はアゾ化合物の種類により異なるが、通常、ポリマー(1)100重量部に対して 0.1〜10重量部の範囲内である。
【0031】
紫外線等の活性エネルギー線照射による架橋においては、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、ケイ皮酸グリシジルエーテルが特に好ましい。また、増感助剤としてジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、フェニルケトン等のアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン等のチオキサントン類、3-スルホニルアジド安息香酸、4-スルホニルアジド安息香酸等のアジド類等を任意に用いることができる。
【0032】
架橋助剤としてエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタリクレート、アリルアクリレート、ジアリルマレート、トリアリルイソシアヌレート、ビスフェニルマレイミド、無水マレイン酸等を任意に用いることができる。
【0033】
エチレン性不飽和基(c)を架橋する水素化ケイ素を有する化合物としては、少なくとも2個の水素化ケイ素を有する化合物が用いられる。特にポリシロキサン化合物またはポリシラン化合物が良い。
【0034】
ヒドロシリル化反応の触媒の例としては、パラジウム、白金などの遷移金属あるいはそれらの化合物、錯体が挙げられる。また、過酸化物、アミン、ホスフィンも用いられる。最も一般的な触媒はジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、塩化白金酸が挙げられる。
【0035】
反応性官能基がハロゲン原子(d)であるエーテル結合を有するポリマー(1)の架橋方法としては、ポリアミン類、メルカプトイミダゾリン類、メルカプトピリミジン類、チオウレア類、ポリメルカプタン類等の架橋剤が用いられる。ポリアミン類としては、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。メルカプトイミダゾリン類としては2-メルカプトイミダゾリン、4-メチル-2-メルカプトイミダゾリン等が挙げられる。メルカプトピリミジン類としては2-メルカプトピリミジン、4,6-ジメチル-2-メルカプトピリミジン、等が挙げられる。チオウレア類としてはエチレンチオウレア、ジブチルチオウレアなどが挙げられる。ポリメルカプタン類としては2-ジブチルアミノ-4,6-ジメチルカプト-s-トリアジン、2-フェニルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、等が挙げられる。架橋剤の添加量は架橋剤の種類により異なるが、通常、ポリマー(1)100重量部に対して 0.1〜30重量部の範囲である。
【0036】
また、電解質組成物に更に受酸剤となる金属化合物を添加することは、ハロゲン含有ポリマーの熱安定性の見地から有効である。このような受酸剤となる金属酸化物としては、周期律表第II族金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期律表VIa族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等がある。具体的な例としては、マグネシア、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、鉛丹、ステアリン酸錫、等を挙げることができる。上記酸受酸剤となる金属化合物の配合量は種類により異なるが、通常、ポリマー(1)100重量部に対して 0.1〜30重量部の範囲である。
【0037】
エチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物(2)は、ポリマー(1)と併用する場合には可塑剤として機能する。ポリマー電解質組成物にエチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物(2)を添加すると、ポリマーの結晶化が抑制されガラス転移温度が低下し、低温でも無定形相が多く形成されるためにイオン伝導度が高くなる。
【0038】
エチレンオキシド単位を有するエーテル化合物を含む低分子エーテル化合物(2)は分子量3000以下のエーテル化合物が好ましい。低分子エーテル化合物の好ましい分子構造例は下記式(iv)〜(vii)のいずれかで表される低分子エーテル化合物が好ましい。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

[式中、R〜R18 は、炭素数 1〜6のアルキル基、c〜r は 0〜12の数である。]
【0039】
本発明において用いられるリチウムメチド塩化合物(B)は、電解質組成物を構成する成分(A)すなわち、ポリマー(1)、低分子エーテル化合物(2)、もしくはポリマー(1)と低分子エーテル化合物(2)の混合物に可溶であることが好ましい。リチウムメチド化合物の例は下記式(viii)であらわされるものが好ましい。
【化8】

[式中、R19 は SOCF2n+1 または CH2n+1, n は 1〜5 の整数である。]
リチウムメチド化合物の具体例としては、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、リチウムトリス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メチドが挙げられる。
また、他のリチウム塩化合物と併用することもできる。他のリチウム塩化合物としては、陽イオンのリチウムイオンと、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF、PF、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8-テトラシアノ-p-キノジメタンイオン、XSO、[(XSO)(XSO)N]から選ばれた陰イオンとからなる化合物が挙げられる。但し、X、X及び Yは電子吸引性基である。好ましくはX及びXは各々独立して炭素数が1から6迄のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアリール基であり、Yはニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基又はシアノ基である。X及びX2は各々同一であっても、異なっていてもよい。
【0040】
本発明において、リチウムメチド塩化合物(B)または他のリチウム塩化合物との合計使用量は(A)すなわちポリマー(1)、低分子エーテル化合物(2)、あるいは併用する場合には(1)および(2)の合計100重量部に対して1〜500重量部、好ましくは 3〜300重部の範囲がよい。この値が 500重量部以下にあると、電解質組成物がポリマー(1)を含む場合には加工性、成形性及び得られた電解質の機械的強度や柔軟性が高く、さらにイオン伝導性も高い。他のリチウム塩化合物の使用量はリチウムメチド塩化合物(B)100重量部に対して 0〜100,000重量部、好ましくは 0〜10,000重量部、例えば1〜2,000重量部の範囲がよい。
【0041】
電解質組成物を使用する際に難燃性が必要な場合には、難燃剤を使用できる。難燃剤として、臭素化エポキシ化合物、テトラブロムビスフェノールA、塩素化パラフィン等のハロゲン化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸エステル、ポリリン酸塩、及びホウ酸亜鉛から選択して有効量を添加する。
【0042】
電解質組成物を使用する際にリチウム金属との安定性が必要な場合には、安定剤を併用できる。安定剤として、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートなどの不飽和基を有する環状カーボネートを有効量添加する。
【0043】
リチウム金属電池の場合、リチウムメチド塩(B)は負極の金属リチウムに安定であり、リチウムのデンドライド成長を抑制する。
【0044】
本発明の電解質組成物の製造方法は特に制約はないが、通常夫々の成分を機械的に混合すればよい。電解質組成物を構成する成分(A)としてポリマー(1)を用いる場合には各種ニーダー類、オープンロール、押出機などを任意に使用できる。架橋を必要とするポリマー(1)の場合には、それぞれの成分を機械的に混合後、架橋させるなどの方法によって製造される。架橋後に低分子エーテル化合物(2)に長時間浸漬して含浸させても良い。
【0045】
リチウムメチド塩化合物(B)および低分子エーテル化合物(2)をポリマー(1)に混合する方法は特に制約されないが、リチウムメチド塩(B)および低分子エーテル化合物(2)を含む有機溶媒にポリマー(1)を長時間浸漬して含浸させる方法、リチウムメチド塩(B)および低分子エーテル化合物(2)をポリマー(1)へ機械的に混合させる方法、ポリマー(1)およびリチウムメチド塩(B)を低分子エーテル化合物(2)に溶かして混合させる方法あるいはポリマー(1)を一度他の有機溶媒に溶かした後、低分子エーテル化合物(2)を混合させる方法などがある。有機溶媒を使用して製造する場合は、各種の極性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が単独、或いは混合して用いられる。
【0046】
本発明で示された電解質組成物は蒸気圧が低く、特に、架橋した電解質組成物は機械的強度と柔軟性に優れており、その性質を利用して大面積薄膜形状の固体電解質とすることが容易に得られる。例えば本発明の電解質組成物を用いた電池の作製が可能である。この場合、正極材料としてはリチウムを吸蔵および脱離することが可能な正極材料であれば良く、リチウム酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当である。具体的にはリチウム-マンガン複合酸化物、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、五酸化バナジウム、オリビン型リン酸鉄、ポリアセチレン、ポリピレン、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリピロール、ポリフラン、ポリアズレン等がある。負極材料としてはリチウム金属を用いることが出来る。また、負極材料としてはリチウムを吸蔵および脱離することが可能な負極材料であれば良く、炭素材料、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体もしくは化合物、他の金属化合物あるいは高分子化合物が適当である。炭素材料の具体例としては黒鉛、難黒鉛化炭素および易黒鉛化炭素などが挙げられる。リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の具体例としては錫、アルミニウム、鉛、インジウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、ホウ素、ガリウム、ゲルマニウムなどが挙げられる。他の金属化合物の具体例としては酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデン等が挙げられる。高分子化合物の具体例としてはポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。また高いイオン伝導性を利用してアルカリ金属イオン、Cuイオン、Caイオン、及びMgイオン等の陽イオンのイオン電極の隔膜としての利用も考えられる。本発明の電解質組成物は特に電池、キャパシター、センサー等の電気化学デバイス用材料として好適である。
【0047】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明における電解質組成物と二次電池は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0048】
エーテル結合を有するポリマー(1)のモノマー換算組成は H NMRスペクトルにより求めた。エーテル結合を有するポリマーの分子量測定にはゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定を行い、標準ポリスチレン換算により分子量を算出した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定は(株)島津製作所の測定装置 RID-6A、昭和電工(株)製カラムのショウデックスKD-807、KD-806、KD-806M 及び KD-803、及び溶媒ジメチルホルムアミド(DMF)を用いて 60℃で行った。ガラス転移温度はセイコー電子工業(株)製 DSC 220 を用い、融解熱量はパーキンエルマー社製示差走査熱量計 DSC 7 を用い、窒素雰囲気中、温度範囲 -100〜80℃、昇温速度 10℃/minで測定した。導電率の測定はSUS製の電極をもちいて、10℃の恒温槽中にセルを設置し、印加電圧30mV、周波数範囲 10Hz〜10MHzの交流法を用い、複素インピーダンス法により算出した。
リチウム金属と本発明の電解質組成物の安定性評価には、リチウム析出溶解効率試験を行った。リチウム析出溶解効率試験には(株)ナガノ製充放電試験器 BTS-2004Wを用いた。銅箔と対極に金属リチウムを用い、両極間に電解質組成物を挟んで試験セルを作製した。電流密度 0.1mA/cm2で10時間リチウムを銅極上に析出させた後、電流密度 0.1mA/cm2で終止電圧 2.0Vまでリチウムを溶解する操作を繰り返し行った。リチウム析出溶解効率は以下の式より求めた。
リチウム析出溶解効率(%)=(nサイクル目の溶解に要した時間/nサイクル目の析出に要した時間)×100
【0049】
合成例(触媒の製造)
撹拌機、温度計及び蒸留装置を備えた3つ口フラスコにトリブチル錫クロライド 10g及びトリブチルホスフェート 35gを入れ、窒素気流下に撹拌しながら 250℃で 20分間加熱して留出物を留去させ残留物として固体状の縮合物質を得た。以後これを重合用触媒として使用した。
【0050】
重合例1(ポリマーの製造)
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として触媒の製造例で示した縮合物質 2gと水分 10ppm以下に調整したメタクリル酸グリシジル 60g 及び溶媒としてn−ヘキサン 1,000gを仕込み、エチレンオキシド 195g はメタクリル酸グリシジルの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下 40℃で 24時間、更に減圧下 45℃で 10時間乾燥してポリマー 207gを得た。この共重合体のガラス転移温度は -62℃、重量平均分子量は 120万、融解熱量は 65J/gであった。H NMRスペクトルによるこの共重合体のモノマー換算組成分析結果はエチレンオキシド80wt%、メタクリル酸グリシジル20wt%であった。
【0051】
重合例2(ポリマーの製造)
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として触媒の製造例で示した縮合物質 2gと水分 10ppm以下に調整したプロピレンオキシド 100g、メタクリル酸グリシジル 10g及び溶媒としてn−ヘキサン 1,000g を仕込み、エチレンオキシド 200g はプロピレンオキシドの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下 40℃で 24時間、更に減圧下 45℃で 10時間乾燥してポリマー 283gを得た。この共重合体のガラス転移温度は -68℃、重量平均分子量は 170万、融解熱量は 7J/gであった。H NMRスペクトルによるこの共重合体のモノマー換算組成分析結果はエチレンオキシド 67wt%、プロピレンオキシド 30wt%、メタクリル酸グリシジル 3wt%であった。
【0052】
重合例3(ポリマーの製造)
内容量 3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として触媒の製造例で示した縮合物質 2gと水分 10ppm以下に調整した下記式(x)のオキシラン化合物(GM) 100g、アリルグリシジルエーテル 10g及び溶媒としてn−ヘキサン 1,000g を仕込み、エチレンオキシド 120g は GMの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下 40℃で 24時間、更に減圧下 45℃で 10時間乾燥してポリマー 205g を得た。この共重合体のガラス転移温度は -74℃、重量平均分子量は 115万、融解熱量は 3J/g であった。H NMRスペクトルによるこの共重合体のモノマー換算組成分析結果はエチレンオキシド 53wt%、GM 43wt%、アリルグリシジルエーテル 4wt%であった。
【化9】

【0053】
重合例4(ポリマーの製造)
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として触媒の製造例で示した縮合物質 2gと水分 10ppm以下に調整した下記式(ix)のオキシラン化合物(EM) 180g、アリルグリシジルエーテル 20g及び溶媒としてn−ヘキサン 1,000g を仕込み、エチレンオキシド 120g は EM の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下 40℃で 24時間、更に減圧下 45℃で 10時間乾燥してポリマー 298gを得た。この共重合体のガラス転移温度は -72℃、重量平均分子量は 130万、融解熱量は 3J/gであった。H NMRスペクトルによるこの共重合体のモノマー換算組成分析結果はエチレンオキシド 37wt%、EM 57wt%、アリルグリシジルエーテル 6wt% であった。
【化10】

【0054】
実施例1
下記式(vii-1)のエチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物3g、リチウム塩化合物としてリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド 1.7gを均一になるまで混合させ、電解質組成物を得た。イオン導電率は1.8×10-4S/cm、リチウム析出溶解効率の平均値は 93%であった。その結果を表1に示す。
【化11】

【0055】
実施例2
下記式(iv-1)のエチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物3g、リチウム塩化合物としてリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド 1.7gを均一になるまで混合させ、電解質組成物を得た。イオン導電率は2.4×10-4S/cm、リチウム析出溶解効率の平均値は 95%であった。その結果を表1に示す。
【化12】

【0056】
実施例3
下記式(iv-2)のエチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物3g、リチウム塩化合物としてリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド 1.7gを均一になるまで混合させ、電解質組成物を得た。イオン導電率は3.6×10-4S/cm、リチウム析出溶解効率の平均値は 96%であった。その結果を表1に示す。
【化13】

【0057】
比較例1
上記式(vii-1)のエチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物3g、リチウム塩化合物としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI) 1.2gを均一になるまで混合させ、電解質組成物を得た。イオン導電率は3.2×10-4S/cm、リチウム析出溶解効率の平均値は 58%であった。その結果を表1に示す。
【0058】
比較例2
上記式(iv-1)のエチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物3g、リチウム塩化合物としてホウフッ化リチウム(LiBF4) 0.3gを均一になるまで混合させ、電解質組成物を得た。イオン導電率は2.1×10-4S/cm、リチウム析出溶解効率の平均値は 32%であった。その結果を表1に示す。
【0059】
比較例3
上記式(iv-2)のエチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物3g、リチウム塩化合物として過塩素酸リチウム(LiClO4) 0.3gを均一になるまで混合させ、電解質組成物を得た。イオン導電率は3.2×10-4S/cm、リチウム析出溶解効率の平均値は 30%であった。その結果を表1に示す。
【0060】
実施例4
重合例1で得られた重量平均分子量が 120万であるエチレンオキシド/メタクリル酸グリシジル2元共重合体 1g、上記式(vii-1)のエチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物5g、リチウム塩化合物としてリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド 3.4gをアセトニトリル 20g 中で均一になるまで混合させ、厚さ 16μmの多孔質膜(東燃化学株式会社製E16)に両面塗布した後、30℃で12時間減圧乾燥し、37μmの電解質フィルムを得た。リチウム析出溶解効率の平均値は 95%であった。その結果を表1に示す。
【0061】
比較例4
実施例4のリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドの代わりに、リチウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(LiTFSI) 2.4g を用いて、同様の操作で、32μmの電解質フィルムを得た。リチウム析出溶解効率の平均値は 62%であった。その結果を表1に示す。
【0062】
実施例5
重合例2で得られた重量平均分子量が 170万であるエチレンオキシド/プロピレンオキシド/メタクリル酸グリシジル3元共重合体 1g、上記式(iv-1)のエチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物2g、リチウム塩化合物としてリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド1.7g、開始剤として過酸化ベンゾイル 0.015g、架橋助剤としてエチレングリコールジアクリレート 0.3gをアセトニトリル 27g 中で均一になるまで混合させた後、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルムに均一に塗布した。その後、30℃で12時間減圧乾燥し、更に、100℃、3時間、窒素雰囲気下で加熱を行い、50μmの電解質架橋フィルムを得た。イオン導電率は1.1×10-4S/cm、リチウム析出溶解効率の平均値は 94%であった。その結果を表1に示す。
【0063】
比較例5
実施例5のリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドをホウフッ化リチウム(LiBF4)0.3gに置き換えて同様の操作で、45μmの電解質フィルムを得た。イオン導電率は9.3×10-5S/cm、リチウム析出溶解効率の平均値は 35%であった。その結果を表1に示す。
【0064】
実施例6
重合例3で得られた重量平均分子量が115万であるエチレンオキシド/GM/アリルグリシジルエーテル3元共重合体 1g、上記式(iv-2)のエチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物2g、リチウム塩化合物としてリチウムビス(パーフルオロエチルスルフォニル)イミド(LiBETI) 1.4g、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド0.17g、開始剤として過酸化ベンゾイル 0.015g、架橋助剤としてエチレングリコールジアクリレート 0.3gをアセトニトリル 50g 中で均一になるまで混合させた後、PETフィルムに均一に塗布した。その後、30℃で12時間減圧乾燥し、更に、100℃、3時間、窒素雰囲気下で加熱を行い、50μmの電解質架橋フィルムを得た。リチウム析出溶解効率の平均値は94%であった。その結果を表1に示す。
【0065】
比較例6
実施例6のリチウム塩をリチウムビス(パーフルオロエチルスルフォニル)イミド(LiBETI)1.6gに置き換えて同様の操作で、60μmの電解質フィルムを得た。リチウム析出溶解効率の平均値は 77%であった。その結果を表1に示す。
【0066】
実施例7
重合例4で得られた重量平均分子量が130万であるエチレンオキシド/EM/アリルグリシジルエーテル3元共重合体 3g、リチウム塩化合物としてリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド 1.7g、開始剤として過酸化ベンゾイル 0.015g、架橋助剤としてエチレングリコールジメタクリレート 0.15gをアセトニトリル 50g 中で均一になるまで混合させた後、PETフィルムに均一に塗布した。その後、30℃で12時間減圧乾燥し、更に、100℃、3時間、窒素雰囲気下で加熱を行い、50μmの電解質架橋フィルムを得た。イオン導電率は4.2×10-6S/cm、リチウム析出溶解効率の平均値は 97%であった。その結果を表1に示す。
【0067】
比較例7
実施例7のリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドを過塩素酸リチウム(LiClO4) 0.3gに置き換えて同様の操作で、43μmの電解質フィルムを得た。イオン導電率は2.8×10-6S/cm、リチウム析出溶解効率の平均値は 29%であった。その結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
正極の作製例1
コバルト酸リチウム粉末(本荘FMCエナジーシステムズ製) 90g、アセチレンブラック (電気化学工業株式会社製デンカブラック)4g、ポリフッ化ビニリデン(SOLVAY SOLEXIS社製 SOLEF 1015)6g、ジメチルホルムアミド 100g をディスパーを用いて混合した後、アルミニウム箔(厚さ 25μm)上に塗布後、減圧乾燥により、溶媒を除去した。二本ロールを用いてプレスを行った後、直径14mmの円盤状に切断を行った。切断した電極を減圧下で120℃に加熱乾燥し、アルゴン雰囲気のグローブボックス中で保管した。
【0070】
正極の作製例2
コバルト酸リチウム粉末(本荘FMCエナジーシステムズ製)83g、アセチレンブラック (電気化学工業株式会社製デンカブラック)5g、重合例4で得られたエチレンオキシド/EM/アリルグリシジルエーテル3元共重合体12gおよびリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド6.8gを加え、アセトニトリル分散液中で2時間混合し、ペースト状としてアルミニウム箔上に均一に塗布し、100℃で2時間乾燥後、ロールプレス機(サンク株式会社製チビロールプレス)でプレスした。直径14mmの円盤状に切断を行った後、切断した電極を減圧下で80℃に加熱乾燥し、アルゴン雰囲気のグローブボックス中で保管した。
【0071】
正極の作製例3
正極の作製例2のリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドの変わりにホウフッ化リチウム1.5gを用いて正極の作製例2と同様にして正極を作製した。
【0072】
実施例8
実施例2で得られた電解質組成物、負極として厚み30μmのリチウム金属箔、正極の作製例1で作製した正極、および電極間には厚み25μmのポリエチレン製微多孔膜を配して二次電池を構成した。
充電は4.2 Vまで0.1mA/cm2で定電流充電を行い、その後4.2Vの定電圧で電流値が0.005mA/cm2に低下するまで行った。放電は0.1mA/cm2の定電流で3Vまで行った。50サイクル目の放電容量は5サイクル目の放電容量の 90%を示した。
【0073】
比較例8
比較例2で得られた電解質組成物を用いた以外は実施例8と同様に二次電池を作製し、充放電試験を行ったところ17サイクル目に短絡した。
【0074】
実施例9
実施例5で得られた電解質架橋フィルム、負極として厚み30μmのリチウム金属箔、正極の作製例2で作製した正極を用いて二次電池を構成した。
充電は4.2 Vまで0.1mA/cm2で定電流充電を行い、その後4.2Vの定電圧で電流値が0.005mA/cm2に低下するまで行った。放電は0.1mA/cm2の定電流で3Vまで行った。50サイクル目の放電容量は5サイクル目の放電容量の 93%を示した。
【0075】
比較例9
比較例5で得られた電解質架橋フィルム、正極の作製例3で作製した正極を用いた以外は実施例9と同様にして二次電池を作成し、充放電試験を行ったところ14サイクル目に短絡した。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の電解質組成物はリチウム析出溶解効率が優れ、本電解質組成物を用いたリチウム電池はサイクル特性が優れている。したがって電池をはじめ、大容量コンデンサー、表示素子、例えばエレクトロクロミックディスプレイなど電子機器への応用、及びプラスチックの帯電防止剤としての応用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(1)エーテル結合を有するポリマーと、
(2)エチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物と
の少なくとも一方と
(B)リチウムメチド塩化合物
からなる電解質組成物。
【請求項2】
エーテル結合を有するポリマー(1)はエチレンオキシド単位を有するポリエーテルである請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項3】
エーテル結合を有するポリマー(1)の主鎖が、下記式(i)で表される構成単位と、下記式(ii)で表される構成単位とを有してなる共重合体、および/または構成単位(i)および下記式(iii)で表される架橋可能な構成単位を有してなる共重合体および/または構成単位(i)、構成単位(ii)、および下記式(iii)で表される架橋可能な構成単位を有してなる共重合体である請求項1または2に記載の電解質組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

[式中、R3 は(a)反応性ケイ素基、(b)メチルエポキシ基、(c)エチレン性不飽和基または(d)ハロゲン原子を有する反応性基を表す]
【請求項4】
エチレンオキシド単位を有する低分子エーテル化合物(2)は(iv)〜(vii)のいずれかで表される化合物である請求項1から3のいずれかに記載の電解質組成物。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

[式中、R〜R18 は、炭素数 1〜6のアルキル基、c〜r は 0〜12の数である。]
【請求項5】
リチウムメチド塩化合物(B)が、下記式(viii)で表される請求項1から4のいずれかに記載の電解質組成物。
【化8】

[式中、R19 は SOCF2n+1 または CH2n+1, n は 1〜5 の整数である。]
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のエーテル結合を有するポリマー(1)を架橋して得られる架橋電解質組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電解質組成物、正極および負極からなる電池。
【請求項8】
負極がリチウム金属である請求項7に記載の電池。

【公開番号】特開2006−134817(P2006−134817A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325356(P2004−325356)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000183255)住友スリーエム株式会社 (3)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】