説明

電解質組成物

電解質組成物は、(a)少なくとも1種のハイドロフルオロエーテル化合物を含む溶媒組成物であって、当該ハイドロフルオロエーテル化合物が2つの末端フルオロアルキル基及び鎖中に介在する置換又は非置換オキシメチレン基を含み、当該オキシメチレン基が非置換である場合は、当該末端フルオロアルキル基の少なくとも1つが分岐状である及び/又は鎖中で連結された少なくとも1つのヘテロ原子を含むことを条件として、当該フルオロアルキル基のそれぞれが水素原子を1つだけ含み、そして鎖中で連結された(即ち、鎖になっている)少なくとも1つのへテロ原子を含んでもよい、溶剤組成物と、(b)少なくとも1種の電解質塩とを含む、組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の部分フッ素化化合物及び少なくとも1種の電解質塩を含む電解質組成物に関する。他の態様では、本発明は、更に前記電解質組成物を含む電気化学的デバイスに関し、且つ当該電気化学的デバイスを含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの急速な発展により、燃料電池、キャパシタ、エレクトロクロミック窓、及び電池システムなどの電気化学的デバイスに対する市場の需要が増大した。電池システムに対する需要に対応して、特に、実用的な充電式リチウム電池が積極的に研究されてきた。これらのシステムは、典型的には、負極(アノード)としてのリチウム金属、リチウム化炭素、又はリチウム合金の使用に基づいている。
【0003】
リチウム電池は、1以上のリチウム電気化学セルから作製される。このようなセルは、電気的に分離され、間隙を介した、正極及び負極の間に挟入された非水性リチウムイオン伝導性電解質組成物で構成される。前記電解質組成物は、典型的には、リチウム電解質塩の非水非プロトン性有機電解質溶媒(多くの場合、溶媒混合液)溶液である。
【0004】
充電式リチウム電池のための電解質溶媒の選択は、最適な電池性能のために非常に重要であり、各種の異なった要因と関連している。しかし、大量の商業的用途においては、長期安定性、イオン伝導性、安全性、及び湿潤特性が、最も重要な選択因子となりがちである。
【0005】
長期安定性のためには、電解質溶媒が電池の使用温度及び使用電圧の範囲に亘って本質的に安定していることが要求され、且つ更に電極物質と非反応性であるか、良好なイオン伝導性を持つ表面保護膜を効果的に形成するかのいずれかである必要がある。イオン伝導性は、リチウム電解質塩を効果的に溶解し、且つリチウムイオン移動度を促進させる電解質溶媒を必要とする。安全性の観点から、低揮発性、低可燃性、低燃焼性、及び低毒性という特性の全てが高度に望ましい。電池の電極及びセパレータが、前記電解質溶媒によって素早く且つ完全に濡らされて、迅速な電池製造を促進し、且つ電池性能を最適化することもまた望ましい。
【0006】
非プロトン性液体有機化合物は、リチウム電池に最も一般的に使用されている電解質溶媒である。多くの場合、エーテル又は炭酸エステル(カーボネート)などの化合物が使用されてきたが、これは、これらの化合物が通常、Li/Liに対して約4.4V未満で作動する正極における酸化安定性、リチウム含有負極との低反応性、及びリチウムイオンとの熱力学的に有益な相互作用(電解質塩のアニオン及びリチウムカチオンの高度の解離として、電解質組成物内にて起こる)という望ましい性質を共有しているからである。
【0007】
リチウム電池に用いるために、最も一般的に使用されている非プロトン性有機電解質溶媒としては、環状エステル(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン)、直鎖エステル、環状エーテル(例えば、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン)、直鎖エーテル(例えば、1,2−ジメトキシエタン)、アミド、及びスルホキシドが挙げられる。混合溶媒が場合により好ましいが、これは前記電解質組成物の特性(伝導性、粘度、等)及びリチウムに対するそれの反応性を、多くの場合、最良性能を与えるために「必要に応じて調整」することができるためである。
【0008】
カルボン酸エステル、スルホキシド、スルホン、及びスルホンアミドなどのあまり一般的ではない溶媒が、様々な成功をもたらす電解質溶媒として使用されてきた。スルホンは通常、室温で固体である。しかし、テトラメチレンスルホン(スルホラン)及びエチルメチルスルホンなどのスルホンが、電解質溶媒として使用されてきた。ジメチルスルホンもまた使用されてきたが、107℃という融点のために、その利用は高温で(即ち、それより高温であれば前記電解質組成物が液体状態を維持できる温度にて)動作する電池に限定されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のリチウム電池電解質溶媒を使用する場合の欠点は、一般にそれらの低沸点及び高燃焼性又は高可燃性に関連している。環状カーボネート、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートなどの幾つかの溶媒は、200℃超の沸点を有する。しかし、多くの電解質溶媒は、大幅により低い沸点を有し、且つ38℃(100°F)未満の引火点を有する。このような揮発性溶媒は、例えば、短絡に起因する急速放電を受ける、完全に又は部分的に充電された電池の突発故障の間、発火する場合がある。更に、揮発性溶剤は、電解質組成物の調製及び保存、並びに製造工程中での前記組成物の電池への添加において問題を生じる。幾つかの従来の電解質溶媒に共通する別の問題は、それらが多くの場合、電池構成要素を自然に濡らすには高すぎる表面エネルギーを有していることである。
【0010】
従って、本発明者らは、当該技術分野において、揮発性、可燃性、及び可燃性を減少させ(従来の溶媒と比較して)、更に電解質塩を効果的に溶解させて、安定した電解質組成物(電気化学的デバイス構成要素を適切に濡らし、且つ動作温度範囲に亘って適切なイオン伝導率を示す)を形成する電解質溶媒に対する必要性が残っているものと考える。
【課題を解決するための手段】
【0011】
要約すると、一態様では、本発明は、部分フッ素化エーテル化合物を含む電解質組成物を提供する。前記電解質組成物は、(a)少なくとも1種のハイドロフルオロエーテル化合物(2個の末端フルオロアルキル基及び鎖中に介在する置換又は非置換のオキシメチレン基を含む)を含む溶媒組成物であって、当該ハイドロフルオロエーテル化合物のオキシメチレン基が非置換の場合である場合は(即ち、炭素に結合した水素原子が、鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含んでもよいアルキル基又はフルオロアルキル基のいずれによっても置き換えられていない)、当該末端フルオロアルキル基の少なくとも1つが、分岐状である及び/又は鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含むことを条件として、当該フルオロアルキル基が各々、1個の水素原子のみを含み、そして鎖中で連結された(即ち、鎖になっている)少なくとも1つのへテロ原子を含んでもよい、溶媒組成物と、
(b)少なくとも1種の電解質塩と
を含む組成物である。
【0012】
前記電解質塩は、好ましくはフッ素含有アニオンを含むリチウム塩である。上述した新規ハイドロフルオロエーテル化合物の少なくとも幾つかが、意外にも、高沸点及び低揮発性を有し、且つこのため、一般的に、従来の電解質溶媒よりも低引火性又は低可燃性であることが判明した。更に、前記化合物を含む溶媒組成物は、極めて効果的に電解質塩を溶解させて、適切に電気化学的デバイス構成要素(例えば、セパレータ)を濡らし、且つ電気化学的デバイスでの使用のための動作温度範囲に亘って(例えば、約20℃〜約80℃、又はそれ以上。特定用途のための所要電力に拠る)、適切なイオン伝導率を示す電解質組成物を提供する。前記溶媒組成物(及び当該溶媒組成物を含む電解質組成物)もまた、幾つかの従来の物質よりも、保存及び取り扱いにおける問題点を少なくできるが、これはハイドロフルオロエーテル化合物の低揮発性、低可燃性、及び/又は低可燃性に起因する。
【0013】
前記ハイドロフルオロエーテル化合物の少なくとも幾つかが、特に高温電池(例えば、約60℃超の温度で動作することを目的とした電池)での使用に大変都合が良い。このような電池においては、前記化合物を含む電解質組成物は、適切な伝導性を示すことができ、同時に電池の突発的故障の間の発火が、幾つかの従来の電解質組成物よりも生じにくい。
【0014】
従って、ハイドロフルオロエーテル化合物を含む少なくとも幾つかの溶媒組成物は、当該技術分野において、低揮発性、低可燃性、及び低燃焼性(従来の溶媒と比較して)を有する電解質溶媒に対する要求を満たし、更に電解質塩を効果的に溶解させて安定した電解質組成物(電気化学的デバイス構成要素を適切に濡らし、且つ動作温度範囲に亘って適切なイオン伝導率を示す)を形成する。
【0015】
他の態様では、本発明は更に前記電解質組成物を含む電気化学的デバイス(好ましくは、電池)、及び前記電気化学的デバイスを含む物品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
定義
以下で、本特許出願にて使用される幾つかの用語の定義を提供する。
【0017】
「付加可能」(フルオロカーボンアルコールに対して)とは、その内部の炭素に結合したフッ素が、出発化合物との付加反応を生じさせることができるように、ヒドロキシル基から十分に離れているアルコールを意味する。
【0018】
「鎖中で連結されたへテロ原子」とは、炭素−へテロ原子−炭素鎖となるように、炭素鎖中の炭素原子に結合した炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又はイオウ)を意味する。
【0019】
「フルオロ−」(例えば、「フルオロアルキレン」又は「フルオロアルキル」又は「フルオロカーボン」などの基又は部分に関して)又は「フッ素化された」とは、炭素に結合した水素原子が少なくとも1つはあるように、部分的にのみフッ素化されていることを意味する。
【0020】
「1官能性」又は「多官能性」(アルコールに関して)とは、アルコールが1個のみのヒドロキシル基又は少なくとも2個のヒドロキシル基を含有することをそれぞれ意味する。
【0021】
「通常は、液体」とは、温度及び圧力について周囲条件下(例えば、約20℃且つ約0.1MPa(1気圧))にある液体を意味する。
【0022】
「ペルフルオロ−」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」又は「ペルフルオロアルキル」又は「ペルフルオロカーボン」などの基又は部分に関して)又は「過フッ素化された」とは、別段に規定されている場合を除いて、炭素に結合した水素原子(フッ素で取り換え可能)が無いように完全にフッ素化されていることを意味する。そして、
「置換された」(基又は部分に関して)とは、炭素に結合した水素原子の少なくとも1つが、アルキル基又はフルオロアルキル基(鎖中で連結された1以上のヘテロ原子を含んでもよい)によって置き換えられていることを意味する。
【0023】
ハイドロフルオロエーテル化合物
本発明の電解質組成物にて使用される化合物は、2個の末端フルオロアルキル基及び鎖中に介在する置換又は非置換のオキシメチレン基(−CR−O−;式中、R及びRは独立して、水素又は以下で定義される置換基である)を含み、そして鎖中で連結された(即ち、鎖になっている)少なくとも1つのへテロ原子を含み、前記ハイドロフルオロエーテル化合物のオキシメチレン基が非置換(即ち、炭素に結合した水素原子がアルキル基又はフルオロアルキル基(鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含んでもよい)のいずれによっても置き換えられていない)の場合は、当該末端フルオロアルキル基の少なくとも1つが分岐状である及び/又は鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含むことを条件として、当該フルオロアルキル基のそれぞれが、水素原子(例えば、モノフルオロメチレン又はジフルオロメチル部分の一部として)を1つだけ含み、そして鎖中に連結された少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよい。フルオロアルキル基の水素原子は、好ましくはモノフルオロメチレン部分の一部である。
【0024】
前記化合物の部類は、次の一般式(I)で表わすことができるものである。
【0025】
'−CF(CFH−R'')−CR−O−CF(R')−CFH−R''' (I)
[式中、R'及びR'''はそれぞれ独立して、フッ素原子又は直鎖、分岐鎖、環状、若しくはそれらの組み合わせであって、且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいペルフルオロアルキル基であり;各Rf''は独立して、直鎖、分岐鎖、環状、又はそれらの組み合わせであって、且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいペルフルオロアルキル基であり;R及びRが独立して、水素原子、直鎖、分岐鎖、環状若しくはこれらの組み合わせであって且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいアルキル基、又は直鎖、分岐鎖、環状、若しくはこれらの組み合わせであって且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいフルオロアルキル基である。]好ましくは、Rは水素又は直鎖、分岐鎖、環状、若しくはこれらの組み合わせのアルキル基であり、且つRは水素又は直鎖、分岐鎖、環状、若しくはこれらの組み合わせのアルキル基であるか、又は化学式−(CR)n−O−CF(R')−CFH−R''で表わすことができる部分である[式中、Rは水素又は直鎖、分岐鎖、環状、若しくはこれらの組み合わせのアルキル基であるか、又は化学式−CF(R')−CFH−R''で表わすことができる部分であり、且つが、1〜約8の整数である]。より好ましくは、Rは水素又は直鎖、分岐鎖、環状、若しくはこれらの組み合わせのアルキル基であり、且つRは、直鎖、分岐鎖、環状、又はこれらの組み合わせのアルキル基である。最も好ましくは、Rは水素又は約3個までの炭素原子を有するアルキル基(好ましくは、当該アルキル基は、メチル基)であり、且つRは、約3個までの炭素原子を有するアルキル基(好ましくは、メチル基)である。好ましくは、各R'は独立して、フッ素又はC−(より好ましくは、フッ素)であり、前記R''が、各々独立して、CO−、CO−、COCO−、CFOCO−、及びCF−(より好ましくは、CF−)から選択され、且つR'''がフッ素であるか又はCO−、CO−、COCO−、CFOCO−、及びCF−(より好ましくは、R'''はCO−、CO−、COCO−、CFOCO−、又はCF−)から選択される。
【0026】
前記化合物の別部類は、次の一般式(II)で表わすことができるものである。
【0027】
H(CF−CR−O−CF(R')−CFH−R' (II)
[pは2〜約10の整数であり、且つR、R、及びR'は上述の如く、化学式(I)である。]
ハイドロフルオロエーテル化合物の代表的実施例は、次のものを含む。
【0028】
CFCFHCFCHOCFCFHOC、CFCFHCFCHOCFCFHOCOCF、CFCFHCFCHOCFCFHOCF、CFCFHCFCHOCFCFHOCFCF(CF)OC、CFCFHCFCHOCFCFHOC、CFCFHCFCHOCFCFHC、CFCF(CHOCFCFHCF)CFHCF(CF、CFCFHCF(CHOCFCFHCF)CF(CF、CFCF(CHOCFCFHCF)CFHCFCF、CFCFCF(CHOCFCFHCF)CFHCF、CFCFHCFCHOCF(CF)CFHC
CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOC、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOCOCF、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOCF、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOCFCF(CF)OC、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOC、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHC、CFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCF(CF、CFCFH[CH(CH)OCFCFHCF]CFCF(CF、CFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCFCF、CFCFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCF、CFCFHCFCH(CH)OCF(CF)CFHC
CFCFHCFC(CHOCFCFHCF、CFCFHCFC(CHOCFCFHOC、CFCFHCFC(CHOCFCFHOCOCF、CFCFHCFC(CHOCFCFHOCF、CFCFHCFC(CHOCFCFHOCFCF(CF)OC、CFCFHCFC(CHOCFCFHOC、CFCFHCFC(CH)2OCFCFHC、CFCF[C(CHOCFCFHCF]CFHCFCF、CFCFCF[C(CHOCFCFHCF]CFHCF
OCFHCFCHOCFCFHCF、COCFHCFCHOCFCFHOC、COCFHCFCHOCFCFHOCOCF、COCFHCFCHOCFCFHOCF、COCFHCFCHOCFCFHOCFCF(CF)OC、COCFHCFCHOCFCFHOC、COCFHCFCHOCFCFHC、CFCF(CHOCFCFHOC)CFHCF(CF、CFCF(CHOCFCFHOC)CFHCFCF、CFCFCF(CHOCFCFHOC)CFHCF
OCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、COCFHCFCH(CH)OCFCFHOC、COCFHCFCH(CH)OCFCFHOCOCF、COCFHCFCH(CH)OCFCFHOCF、COCFHCFCH(CH)OCFCFHOCFCF(CF)OC、COCFHCFCH(CH)OCFCFHOC、CF7OCFHCFCH(CH)OCFCFHC、CFCF(CH(CH)OCFCFHOC)CFHCF(CF、CFCF(CH(CH)OCFCFHOC)CFHCFCF、CFCFCF(CH(CH)OCFCFHOC)CFHCF
OCFHCFC(CHOCFCFHCF、COCFHCFC(CHOCFCFHOC、COCFHCFC(CHOCFCFHOCOCF、COCFHCFC(CHOCFCFHOCF、COCFHCFC(CHOCFCFHOCFCF(CF)OC、COCFHCFC(CHOCFCFHOC、COCFHCFC(CHOCFCFHC、CFCF(C(CHOCFCFHOC)CFHCF(CF、CFCF(C(CHOCFCFHOC)CFHCFCF、CFCFCF(C(CHOCFCFHOC)CFHCF
CFCFHCFCH(OCFCFHCF)CHOCFCFHCF、CFOCF(CF)CFOCFHCFC(CHOCFCFHCF、[CFCFHCFOCH(CFCFHCF)]CH、CFCFHCFOCHCHCH(CFCFHCF)OCFCFHCF、CCHCH(CFCFHCF)OCFCFHCF、CHC(OCFCFHCF3)(CFCFHCF)CHOCFCFHCF、CHCH(OCFCFHCF)CH(OCFCFHCF)CFCFHCF3、
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
CFCFHCFCH(CH)OCFCFH、HCCH(CH)OCFCFHCF、など、及びこれらの混合物。
【0032】
好ましいハイドロフルオロエーテル化合物としては、
CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、CFCFHCFCHOCFCFHOC、COCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、CFCFH[CH(CH)OCFCFHCF]CFCF(CF、CFCFHCFCH(OCFCFHCF)CHOCFCFHCF、CFCFHCFCHOCFCFHOC、CFCFHCFCHOCFCFHOCF、CFCF(CHOCFCFHCF)CFHCF(CF、CFCFHCF(CHOCFCFHCF)CF(CF、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOC、CFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCF(CF、CFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCFCF、CFCFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCF、CFCFHCFC(CHOCFCFHCF、CFCFHCFC(CHOCFCFHOC、COCFHCFCHOCFCFHCF、CFOCF(CF)CFOCFHCFC(CHOCFCFHCF、CFCFHCFOCHCHCH(CFCFHCF)OCFCFHCF、及びこれらの混合物が挙げられるが、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、CFCFH[CH(CH)OCFCFHCF]CFCF(CF、CFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCFCF、CFCFHCFCH(OCFCFHCF)CHOCFCFHCF、及びこれらの混合物が、より好ましい。
【0033】
ハイドロフルオロエーテル化合物は、疎水性であり、且つそれらのペルフルオロエーテル類似化合物よりもより疎油性が小さく、比較的化学的に非反応性、熱的に安定、非水溶性、且つ通常は、液体であり(例えば、20℃にて)、且つそれらは高収率、高純度、及び広範囲の分子量にて調製することができる。それらの炭素−水素共有結合は、一般に、大気光酸化によって分解可能であり、これにより、環境的に許容可能な又は適合性のある化合物を生じる。
【0034】
加えて、ハイドロフルオロエーテル化合物は、電池電解質溶媒としての使用に大変都合の良い特性を示す。例えば、前記化合物は一般に、高引火点;低粘度;対応する過フッ素化溶媒よりも高い、従来の電池電解質溶媒との混和性;フッ素含有電解質塩を溶解させる十分な能力(少なくとも、従来の電解質溶媒(単数又は複数)と混合した場合);及び金属リチウムに対する高安定性を有する。
【0035】
ハイドロフルオロエーテル化合物の調製
前記ハイドロフルオロエーテル化合物は、最初に少なくとも1種のペルフルオロオレフィン又はペルフルオロビニルエーテル出発化合物及び少なくとも1種の炭化水素又は付加可能フルオロカーボンアルコールのフリーラジカル付加を生じさせることによって調製可能である。これにより、少なくとも1種のフルオロアルコール中間体が形成される。次に、前記フルオロアルコール中間体をアニオン性にて少なくとも1種のペルフルオロオレフィン又はペルフルオロビニルエーテル仕上剤(上記第1付加反応にて使用されてペルフルオロオレフィン又はペルフルオロビニルエーテルからのものと同一であり又は異なっている)に添加して、少なくとも1種のハイドロフルオロエーテル化合物を形成することができる。或いは、アルコールが多官能性の場合、第1付加がアニオン性付加であり、且つ第2のものがフリーラジカル付加というふうに、付加反応の型は逆になる場合がある。従って、工程の順序は非限定的であり、所望の化学的組成を作り出すように変更することができる。
【0036】
本発明の調製プロセスの実施において有用なペルフルオロオレフィンとしては、オレフィン二重結合の炭素原子の1つに結合した炭素原子の少なくとも1つを含有するようなものが挙げられる。有用なペルフルオロビニルエーテルとしては、オレフィン二重結合の一部としての末端ジフルオロメチレン基を有するようなものが挙げられる。かかるペルフルオロオレフィン及びペルフルオロビニルエーテルは、鎖中で連結された1つ以上のヘテロ原子(ペルフルオロビニルエーテルのエーテル酸素に加えて)を更に含有してよい。
【0037】
前記ペルフルオロオレフィン出発化合物は、技術上周知である各種標準的合成手順の任意のものにより調製することができる。前記ペルフルオロビニルエーテル出発化合物は、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)を含む、過フッ素化アシルフッ化物又は過フッ素化ケトンの反応により調製して、中間体である分枝状アシルフッ化物付加化合物を形成することができる。次に、本付加化合物を塩基と反応させて、中間体であるカルボン酸塩を形成することができ、次に高温にて(所望により、不活性溶媒の存在下で)カルボキシル基を除去することができる。幾つかのペルフルオロオレフィン及びペルフルオロビニルエーテル(例えば、CF=CF、CFCF=CF、C11CF=CF、COCF=CF、COCF(CF)CFOCF=CF、CFCF=CFC、CFOCF=CF、(CFCFCF=CFCF、ペルフルオロシクロブテン、ペルフルオロシクロペンテン、及びペルフルオロシクロヘキセン)もまた市販されている(例えば、シンクエスト社(Synquest)又はアポロ・サイエンティフィック社(Apollo Scientific, Ltd.)より)。
【0038】
ハイドロフルオロエーテル化合物の調製において有用なペルフルオロオレフィンの代表的実施例としては、CF=CF、CFCF=CF、CCF=CF、COCFCF=CF、(CFNCOCFCF=CF、CFCFCF=CF、(CFCFCF=CFCF、CFCF=CFC、ペルフルオロシクロペンテン、ペルフルオロシクロブテン、ペルフルオロシクロヘキセンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。(所望する場合、出発化合物の混合物及び/又は仕上げ剤の混合物を使用することが可能であるが、精製が必要となる生成物混合物が結果として得られたために、混合物は一般により好ましくない。)好ましいペルフルオロオレフィンとしては、CF=CF、CFCF=CF、(CFCFCF=CFCF、CFCF=CFC、及びこれらの混合物が挙げられる。CFCF=CF、(CFCFCF=CFCF、及びこれらの混合物が、より好ましい。
【0039】
ハイドロフルオロエーテル化合物の調製において有用なペルフルオロビニルエーテルの代表的実施例としては、COCF=CF、COCF(CF)CFOCF=CF、CFOCF=CF、COCF=CF、CFOCOCF=CF、など、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましいペルフルオロビニルエーテルとしては、COCF=CF、COCF=CF、CFOCOCF=CF、及びこれらの混合物が挙げられる。COCF=CF、COCF=CF、及びこれらの混合物が、より好ましい。
【0040】
前記調製プロセスの実施において有用なアルコールとしては、フリーラジカルによって引き抜き可能な水素原子の少なくとも1つを、ヒドロキシル基のα位(即ち、ヒドロキシル基に結合した炭素原子に結合している)に有するようなものが挙げられる。かかるアルコールは、炭化水素アルコール及びフルオロカーボンアルコールの両方を含む(例えば、一般式ROHで表わすことができるようなものであり、式中、Rfは鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してよいペルフルオロアルキル又はフルオロアルキル基であり、好ましくは1〜約12個の炭素原子を含有する)。前記アルコールは、1官能性又は多官能性であることができ、差中で連結された1つ以上のヘテロ原子を含有してよい。
【0041】
かかるアルコールは一般に、市販されており且つ置換又は非置換のオキシメチレン基を含む生成物・ハイドロフルオロエーテル化合物を提供する。炭化水素アルコールは、それらが相対的に低コストであるが故に好まれる(フルオロカーボンアルコールと比較して)が、好ましいアルコールは一般に、不燃性の生成物であるHFE化合物を提供するようなものである。従って、より好ましいのは、約6個以下の炭素原子(最も好ましくは、約3個以下の炭素原子)を有する炭化水素アルコールである。
【0042】
好適なアルコールの代表的実施例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メトキシエタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセロール、(CHNCOH、CCHCHOH、CCHCHCHOH、C17CHCHCHOH、COCHCHOH、など、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましいアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール及びこれらの混合物が挙げられる。メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びこれらの混合物が、より好ましい。
【0043】
前記ラジカル付加反応は、ペルフルオロオレフィン又はペルフルオロビニルエーテル出発化合物とアルコール(又はフルオロアルコール中間体)とを、少なくとも1種のラジカル開始剤の存在下で混ぜ合わせることにより生じさせることができる。好適なラジカル開始剤としては、過酸化物、ペルオキシエステル、ペルオキシカルボネート、など、及びこれらの混合物が挙げられる。このような反応開始剤の例としては、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ社(Arkema)(テキサス州クロスビー)からルペロックス(LUPEROX)575として入手可能)、ラウリルペルオキシド、t−ブチルペルオキシド、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、及びこれらの混合物が挙げられるが、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートが、好ましい反応開始剤である。
【0044】
例えば、液体出発化合物、過剰アルコール、及び前記反応開始剤を反応装置(例えば、圧力反応器)内にて任意の順序で混合させることができ、次に、これを所望の反応温度(例えば、約50℃〜約120℃)まで、自己圧力下にて(且つ一般に、撹拌しながら又はかき混ぜながら)加熱することができる。必要に応じて、前記反応条件の下でそれ程反応性が高くない溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン又は3M社(ミネソタ州、セントポール)から入手可能なノヴェック(NOVEC)ブランドの流体などのハイドロフルオロエーテル化合物)を使用することが可能であるが、アルコール反応物質の存在故に、一般には必要ではない。
【0045】
ガス状出発化合物(例えば、ヘキサフルオロプロピレン又はCFOCF=CF)を使用する場合、アルコール及び反応開始剤を添加後且つ加熱に先立って、前記反応容器を密閉することができる。次に、前記ガス状出発化合物を、所望の反応温度にて、連続的に又は少しずつ、化学量論的量(又はそれ以上)の出発化合物を添加するまで、又は反応速度が大幅に低下するまで、添加することができる。
【0046】
出発化合物の添加完了後、又は反応終了後に、前記反応容器を冷却し、ガス抜きし、内容物を例えば蒸留によって精製する。一般に、前記反応は、ラジカル開始剤のほぼ10時間半減期(ten half lives)に相当する一定期間、行うことができる。或いは、ラジカル抑制剤(例えば、アスコルビン酸)を加えて、精製に先だって残存反応開始剤全てを分解させることができる。当業者は、特定の反応のための最適なプロセス条件及び手順が、選択された出発化合物、アルコール、及び反応開始剤の性質によって決定されることを理解するであろう。この種のラジカル付加反応は、例えば、J.Macromol.Sci.−Chem.(コスタ(Costa)ら著、A18(2)、299頁、1982年)に記載されている。
【0047】
前記アニオン性付加反応は、前記ペルフルオロオレフィン又はペルフルオロビニルエーテル出発化合物及び前記フルオロアルコール中間体(又は前記出発物質としてのアルコール(the starting alcohol))を、少なくとも1種のアニオン性付加触媒(例えば、ルイス塩基)の存在下で混ぜ合わせることにより生じさせることができる。有用な触媒としては、炭酸カリウム、セシウムカーボネート、フッ化カリウム、水酸化カリウム、カリウムメトキシド、トリエチルアミン、トリメチルアミン、カリウムシアネート、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、フッ化セシウム、重フッ化カリウム、酢酸カリウム、など、及びこれらの混合物が挙げられるが、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、及びこれらの混合物が好ましい。
【0048】
反応物質及び触媒を、反応器(例えば、圧力反応器)中で、任意の順序で混ぜ合わせて、反応を所望の温度(例えば、約30℃〜約50℃)にて、上記の圧力及び攪拌条件下にて行わせることができる。しかし、一般に、非反応性の極性溶媒(例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、グリム、又はこれらのうち2つ又はそれ以上のものの混合物)は、反応を促進することができる。結果として得られた生成物は、例えば、蒸留によって精製できる。オレフィン性反応副生成物は、オレフィン二重結合と優先的に反応する試薬との反応によって除去することができる。かかる試薬としては、例えば、無水フッ化水素;極性、非プロトン性溶媒中の重フッ化カリウム(相間移動触媒を含有又は非含有);アセトン中の過マンガン酸カリウム;及び元素状臭素(放射性又は非放射性)が挙げられる。この種のアニオン性付加反応は、例えば米国特許第3,962,348号(ベニンガー(Benninger)ら)、PCT国際公開特許WO 02/102858(ハネウェル・インターナショナル社(Honeywell International, Inc.))、及びK.チー(Chi)及びG.フーリン(Furin)共著、「韓国化学協会雑誌(Bull.Korean Chem. Soc.)」(第20巻、第2号、220頁、1999年)に記載されている。
【0049】
好ましくは、前記ラジカル付加反応が最初に、続いてアニオン性付加が実施される。しかし、多官能性アルコールを使用する場合には、前記2種類の付加反応は任意の順番で行うことができ、アニオン性付加反応を最初に行う場合には、反応物質の比率は、主たる反応生成物が所望の第1フルオロアルコール中間体となるように調整する。(多官能性アルコールとのアニオン性付加反応を最初に行う場合、前記プロセスは一般に、第3付加反応(種別としてはアニオン性)をも包含し、第2フルオロアルコール中間体(第2付加反応から生じ、種別としてはラジカル性)を所望のハイドロフルオロエーテル化合物へと変換する。)従って、前記プロセスは、付加工程の順番及び反応物質の性質を変えることによって、多種多様の異なったハイドロフルオロエーテル化合物を生成することができる。
【0050】
電解質組成物
前記ハイドロフルオロエーテル化合物を使用して、(a)少なくとも1のハイドロフルオロエーテル化合物を含む溶媒組成物及び(b)少なくとも1種の電解質塩を含む本発明の電解質組成物を調製することが可能である。
【0051】
本開示中に記載されたハイドロフルオロエーテル化合物は、優れた酸化安定性を有し、且つこれらの化合物が電解質組成物にて使用される場合には、結果として得られた組成物もまた、顕著な酸化安定性を有する。例えば、前記ハイドロフルオロエーテル化合物を電気化学的デバイスにて黒鉛化炭素電極と共に使用した場合、当該化合物及び/又は前記組成物は、Li/Li+に対して少なくとも5Vの且つ8Vまでの酸化安定性を有する。
【0052】
本明細書中に記載する電解質組成物を有する電気化学的デバイスは、優れた性能を有する。例えば、本明細書中に記載する電解質組成物を使用する電気化学的デバイスは、幾つかの実施形態では、50%より大きい、好ましくは80%より大きい放電容量を、12CmAまでの放電電流にて有してよい。本明細書中に記載する電解質組成物を含む電気化学的デバイスは、幾つかの実施形態では、約40%より大きい、好ましくは約60%より大きい充電容量を、6CmAまでの充電電流にて有してよい。本明細書中に記載する電解質組成物を含む電気化学的デバイスは、幾つかの実施形態では、優れた低温性能を有してよく、且つ0℃〜20℃の周囲温度にさらされた場合に、25℃におけるその放電容量の90%超を保持してよい。本明細書中に記載する電解質組成物を含む電気化学的デバイスは、幾つかの実施形態では、カソード1グラム当たり150mAhより大きい放電容量を、最大4.5Vにおける30回までの充電サイクルにわたり有してよい。
【0053】
本発明の電解質組成物の調製に用いるのに好適な電解質塩としては、少なくとも1種のカチオン及び少なくとも1種の弱配位アニオンを含むような塩(炭化水素スルホン酸(例えば、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミドイオン)の酸性度以上酸性度を有する上記アニオンの共役酸)が挙げられ、それは、選択されたハイドロフルオロエーテル化合物中にて(又はそれと1以上の他のハイドロフルオロエーテル化合物又は1以上の従来の電解質溶媒とのブレンド中にて)少なくとも部分的に可溶性であり、且つ少なくとも部分的に解離して、導電性電解質組成物を形成する。好ましくは、前記塩は動作電圧の範囲に亘って安定しており、非腐食性で、且つ熱的に及び加水分解に対し安定している。
【0054】
好適なカチオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族金属、IIIB族金属、遷移金属、希土類金属、及びアンモニウム(例えば、テトラアルキルアンモニウム又はトリアルキルアンモニウム)カチオン、並びにプロトンが挙げられる。電池用途のために好ましいカチオンとしては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属カチオンが挙げられる。
【0055】
好適なアニオンとしては、フッ素含有無機アニオン例えば、BF、PF、AsF、及びSbF;ClO;HSO;HPO;有機アニオン例えば、アルカン、アリール、及びアルカリールスルホネート;フッ素含有及び非フッ素化テトラアリールボレート;カルボラン及びメタロカルボランアニオンを含むハロゲン−、アルキル−、又はハロアルキル−置換カルボランアニオン;並びにフッ素含有有機アニオン例えば、ペルフルオロアルカンスルホネート、シアノペルフルオロアルカンスルホニルアミド、ビス(シアノ)ペルフルオロアルカンスルホニルメチド、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド、及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド;などが挙げられる。電池に使用するのに好ましいアニオンとしては、フッ素含有無機アニオン(例えば、BF、PF、及びAsF)並びにフッ素含有有機アニオン(例えば、ペルフルオロアルカンスルホネート、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド)が挙げられる。
【0056】
前記フッ素含有有機アニオンは、完全にフッ素化され、即ち過フッ素化されるか、あるいは部分的フッ素化(その有機部分内部が)されているかのいずれか一方があることができる。好ましくは、フッ素含有有機アニオンは、少なくとも約80%、フッ素化されている(即ち、アニオンの炭素に結合した置換基の少なくとも約80%が、フッ素原子である)。より好ましくは、前記アニオンは過フッ素化されている(即ち、完全にフッ素化され、炭素に結合した置換基の全てがフッ素原子である)。上記アニオン(好ましい過フッ素化アニオンを含む)は、鎖中で連結された1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、又はイオウなど)を含有することができる。
【0057】
好ましいフッ素含有有機アニオンとしては、ペルフルオロアルカンスルホネート、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチドが挙げられる。ペルフルオロアルカンスルホネート及びビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミドが、より好ましいアニオンであり、ペルフルオロアルカンスルホネートが最も好ましい。
【0058】
電池に使用するのに好ましい塩は、リチウム塩である。より好ましいのは、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ペルフルオロエタンスルホニル)イミド、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムパークロレート、リチウムヘキサフルオロアルセネート、リチウムトリフルオロメタンスルホネート、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、及びこれらのうちで2つ又はそれ以上のものの混合物である。
【0059】
本発明の電解質組成物は、少なくとも1種の電解質塩及び少なくとも1種のハイドロフルオロエーテル化合物を含む溶媒組成物を混ぜ合わせることにより調製することができ、当該塩は、所望の動作温度にて少なくとも部分的に溶媒組成物中に溶解している。ハイドロフルオロエーテル化合物(又は、通常は、それを含む、それから成る、又は主としてそれから成る液体組成物である)を、かかる調製にて使用することが可能である。
【0060】
前記電解質塩は、好ましくは前記電解質組成物にて、当該電解質組成物の伝導度がその最大値又は最大値付近になるような濃度にて用いられる(リチウム電池の電解質の場合、典型的には、例えば、おおよそ0.1〜2.0Mの、好ましくは約1.0MのLi+モル濃度)が、広範囲の他の濃度もまた使用できる。
【0061】
好ましくは、1以上の従来の電解質溶媒を、ハイドロフルオロエーテル化合物(単数又は複数)と混合する(例えば、ハイドロフルオロエーテル(単数又は複数)が、結果として得られた溶媒組成物の約20〜約80又は90%を構成するようにする)。有用な従来の電解質溶媒としては、有機及びフッ素含有電解質溶媒(例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、ジグリム(即ち、ジエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグリム(即ち、テトラエチレングリコールジメチルエーテル)、モノフルオロエチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、アルキル置換テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル置換1,3−ジオキソラン、テトラヒドロピラン、アルキル置換テトラヒドロピラン、など、及びこれらの混合物)が挙げられる。所望する場合、他の従来の添加剤(例えば、界面活性剤)もまた存在することができる。
【0062】
電気化学的デバイス
本発明の電解質組成物は、例えば燃料電池、電池、キャパシタ、及びエレクトロクロミック窓のようなデバイスを含む電気化学的デバイスの電解質として使用することが可能である。かかるデバイスは、通常、少なくとも1つの第1電極、少なくとも1つの第2電極、少なくとも1つのセパレータ、且つ本発明の電解質組成物を含む。
【0063】
各種の負極及び正極を、本発明のリチウムイオンセルに使用してもよい。代表的な負極としては、例えば、3.45Å>d002>3.354Åの(002)結晶面間隔(d002)を有し、且つ粉末、フレーク、繊維又は球状物(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)などの形態にて存在するようなものを有する黒鉛炭素;Li4/3Ti5/3;米国特許第6,203,944号(ターナー(Turner)`944)(表題:「リチウム電池用電極」)及びPCT国際公開特許WO 00103444(ターナー(Turner)PCT)(表題:「電極物質及び電極組成物」)に記載されているリチウム合金組成物;及びこれらの組み合わせが挙げられる。代表的な正極としては、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiMn、LiCoO及びこれらの組み合わせが挙げられる。前記負極又は正極は、例えば負極用カーボンブラック及び正極用カーボンブラック、一次黒鉛など、当業者によく知られている添加剤を含有してもよい。
【0064】
各種粉末状物質を使用して、電極組成物を作製してもよい。例示の粉末状物質は、例えばシリコン、銀、リチウム、スズ、ビスマス、鉛、アンチモン、ゲルマニウム、亜鉛、金、白金、パラジウム、ヒ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、前述の金属のうち任意のものを含有する合金又は半金属並びに当業者によく知られている、他の粉末状活性金属及び半金属を含有してよい。代表的な粉末は、60マイクロメートルを超えない、40マイクロメートルを超えない、又は20マイクロメートルを超えない最大寸法を有してよい。例えば、前記粉末は、サブミクロン、少なくとも1マイクロメートル、少なくとも2マイクロメートル、少なくとも5マイクロメートル、又は少なくとも10マイクロメートルの最大粒径を有してよい。例えば、好適な粉末は多くの場合、1〜60マイクロメートル、10〜60マイクロメートル、20〜60マイクロメートル、40〜60マイクロメートル、1〜40マイクロメートル、2〜40マイクロメートル、10〜40マイクロメートル、5〜20マイクロメートル、又は10〜20マイクロメートルの最大寸法を有する。前記粉末状物質は、粉末粒子内に任意のマトリックス形成剤を含有してもよい。当該粒子内に元々(即ち、第1リチウム化前)存在する各相は、粒子内の他の相と接触してもよい。例えば、シリコン/銅/銀−合金を主成分とした粒子内では、シリコン相が銅シリサイド相及び銀又は銀合金相の両方と接触してよい。粒子内の各相は、例えば500オングストローム、400オングストローム、300オングストローム、200オングストローム、又は150オングストローム未満の結晶粒径を有してよい。
【0065】
シリコン含有粉末状物質の1例示は、シリコン合金Si57Al28Fe15である。粉末状物質の他の例示としては、Li4/3Ti5/3、LiV、LiV、LiCo0.2Ni0.8、LiNiO、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiMn及びLiCoOなどのリチウム合金;リチウムコバルト二酸化物、リチウムニッケル二酸化物、及びリチウムマンガン二酸化物などのリチウム遷移金属酸化物内にインターカレートされたリチウム原子;米国特許第6,203,944号(ターナー `944)、米国特許第6,255,017B1号(ターナー `017)、米国特許第6,436,578B2号(ターナーら、`578)、米国特許第6,680,145B2号(オブロヴァック(Obrovac)ら)、及び米国特許第6,699,336B2号(ターナーら、`336)、米国特許出願公開第2003/0211390A1号(ダーン(Dahn)ら)、米国特許出願通し番号第10/637,412号(2003年8月8日出願、表題:「リチウムイオン電池のための多相、シリコン含有電極」)及び米国特許出願通し番号第10/962,703号(2004年10月12日出願、表題:「リチウムイオン電池のためのアノード組成物」)に記載されているリチウム合金組成物;例えば、3.45Å>d002>3.354Åの(002)結晶面間隔(d002)を有し、且つ粉末、フレーク、繊維又は球状物(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)などの形態にて存在するようなものを有する黒鉛炭素;これらの組み合わせ並びに当業者によく知られている他の粉末状物質が挙げられる。いくつかの粉末状合金粒子は、導電性コーティングを含んでよい。例えば、シリコン、銅、及び銀又は銀合金を含有する粒子が、導電性物質の層でコーティングされていてもよい(例えば、粒子中心部の合金組成物及び粒子殻の導電性物質)。好適な導電性物質としては、例えば炭素、銅、銀、又はニッケルが挙げられる。
【0066】
例示の粉末状合金物質は、例えば溶融紡糸プロセスを使用して調製してよい。このような方法は、一般に、例えば「非晶質金属合金(Amorphous Metallic Alloys)」(F・E・ルボルスキー(F.E. Luborsky)編、第2章、バターワース&Co社(Butterworth & Co., Ltd.)、1983年)に記載されている。本プロセスに従って、前記合金組成物を含有するインゴットを高周波電界内で溶融させ、次にノズルを通して回転ホイール(例えば、銅ホイール)の表面上へ射出させることができる。回転ホイールの表面温度が、実質的に溶解物の温度よりも低いために、回転ホイールの表面に接触すると、当該溶融物が急冷される。急冷が、電極性能に有害となり得る巨大晶子の形成を最小限に抑える。導電性コーティングを用いる場合、それらは電解メッキ、化学的気相成長、真空蒸着又はスパッタリングなどの技術を用いて形成され得る。
【0067】
例えば、リチウム電池の電極は、一般に、金属箔又は高分子材料結合剤に結合したカーボンブラック若しくはグラファイトなどの導電性希釈剤と混合された活性物質の粒子から成る。典型的な結合剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ターポリマー、及び乳化スチレンブタジエンゴム(SBR)が挙げられ、且つ当該結合剤は、架橋させることができる。前記結合剤はまた、例えば有機化合物の熱分解から形成された固体炭素マトリックスであることができる。金属箔又は複合電極物質は、一般に、コーティング、キャスティング、加圧成形又は押出成形などの各種プロセスのうち任意のものを使用して、エキスパンデッド金属スクリーン又は金属箔(好ましくは、アルミニウム、銅、ニッケル、又はステンレス鋼)集電体に適用される。
【0068】
好適な第1電極のいくつかの例は、リチウム金属、アルミニウム、リチウム金属合金、ナトリウム金属、白金及びパラジウム並びにこれらの合金、炭素系物質例えばグラファイト、コークス、炭素、ピッチ、遷移金属酸化物(例えば、LiTiO1及びLiWO)、並びにリチウム化酸化スズである。リチウムイオン電池の場合、リチウムは炭素(即ち、リチウム化炭素を与える)又は他の元素(シリコン、ホウ素又は窒素など)とアロイにした炭素、導電性ポリマー、又はインターカレート可能な無機ホスト(LiTi12など)などのホスト物質内へインターカレートすることができる。第1電極を含む物質は、ホイル(例えば、ニッケル及び銅)バック上に担持させたり、エキスパンデッド金属スクリーンに圧入して、様々な他の金属とのアロイにすることができる。
【0069】
活性第2電極物質は、一般に、完全充電状態にて、Li/Liに対して少なくとも約3.0ボルトのデバイス電圧を提供する。好適な第2電極物質としては、グラファイト;炭素;アルミニウム;MnO;白金、パラジウム、及びこれらの合金;Li及び遷移金属例えばLiCoO、LiNiO、LiV、LiMn、などを含む複合酸化物;V;V13;BaSmNiO;SmMnO;SmFe12;EuFeO;EuFe12;EuMnO;LaNiO;LaCoO及びLaMnO(これらの物質の充電及び放電形態を含む);ルテニウム又はタングステンの酸化物;酸化インジウムスズ;並びにポリピロール、多硫化物及びポリビニルフェロセンなどの導電性ポリマーが挙げられる。一次電池においては、第2電極はフッ素化炭素(例えば、(CF)n)、SOl2、Ag11、AgCrO、イオウ、多硫化物、又はO又はSO電極であることができる。
【0070】
リチウム電池は、一般に、第1及び第2電極間の短絡を防止するためのセパレータを含有する。前記セパレータは多くの場合、所定の長さ及び幅を有し、且つ約0.025mm(1.0ミル)未満の厚みを有する、一重又は多層シートのミクロ孔質ポリマー(典型的には、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの組み合わせ)から成る。例えば、米国特許第3,351,495号(ラルセン(Larsen)ら)、米国特許第4,539,256号(シップマン(Shipman)ら)、米国特許第4,731,304号(ランドクイスト(Lundquist)ら)及び米国特許第5,565,281号(ユー(Yu)ら)を参照のこと。これらのミクロ孔質膜の孔径は、典型的には、直径が約5ミクロンであり、イオンを運搬するには十分に大きいが、直接的な電極接触又は粒子透過若しくは電極上に形成され得る樹枝状結晶による電極接触を防止するには十分に小さい。
【0071】
本発明の電気化学的デバイスは、各種電子的物品、例えばコンピュータ、動力工具、自動車、通信機器、などにて使用することが可能である。
【実施例】
【0072】
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の物質及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。これらの実施例は、ただ単に例示のためだけのものであり、添付特許請求の範囲を制限しようとするものではない。
【0073】
実施例及び本明細書の残部における、すべての部分、割合、及び比率は、別段の定めがある場合を除き重量による。使用される溶媒及び他の試薬は、特に記載のない限り、アルドリッチケミカル社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手した。
【0074】
以下の化合物調製において、ジアステレオマー混合物は、分子内の2つ(又はそれ以上)の光学中心の存在によって得られた。これらのジアステレオマーは、お互いに非常に近い沸点を有し、従ってジアステレオマーは蒸留によって分離されなかった。しかし、多くの場合、かかるジアステレオマーはガスクロマトグラフィによって容易に分離することができる。
【0075】
試験方法
核磁気共鳴(NMR)
H&19F−NMRスペクトルを、バリアン社製ユニティプラス(UNITYplus)400・フーリエ変換NMRスペクトロメーター(バリアンNMRインスツルメンツ社(Varian NMR Instruments)(カルフォルニア州パロアルト)から入手可能)にて測定した。
【0076】
ガスクロマトグラフィ/質量分析(GCMS)
GCMS試料を、例えば、フィニガン(Finnigan)社製TSQ7000質量分析計(サーモ・エレクトロン社(Thermo Electron Corporation)(マサチューセッツ州ウォルサム)から入手可能)にて測定した。
【0077】
粘度測定
動粘度は、ウベローデ(Ubbelohde)社製ガラスキャピラリー粘度計(キャノン・インスツルメンツ社(Cannon Instrument Co.)(ペンシルベニア州ステートカレッジ)から入手可能)及びショット社(SCHOTT)製AVS350粘度計タイマー(北米・ショット社(SCHOTT)(ニューヨーク州エルムスフォード)から入手可能)を使用して測定した。温度は、ノヴェック(NOVEC)−7500(ハイドロフルオロエーテル;3M社(ミネソタ州、セントポール)から入手可能)を充填したローラー(Lawler)社製恒温槽(ローラー・マニュファクチャリング社(Lawler Manufacturing Company, Inc.)(インディアナ州インディアナポリス)から入手可能)を使用して制御した。前記ローラー(Lawler)社製恒温槽は、ユラボ(JULABO)社製F−83冷凍機(米国ユラボ社(ペンシルベニア州アレンタウン)から入手可能)によって冷却した。
【0078】
引火点測定
クローズドカップ式による引火点は、ASTM(米国材料試験協会)試験方法・D−3278−96 e−1、「小型クローズドカップ器具による液体の引火点(Flash Point of Liquids by Small Scale Closed-Cup Apparatus)」を使用して測定した。
【0079】
【表1】

【0080】
ハイドロフルオロエーテル化合物及び中間体の調製
化合物−1
OCFHCFCHOCFCFHCFの調製
OCFHCFCHOHは、ラジカル開始剤としてt−アミルペルオキシベンゾエート(1.0g)を使用して、COCF=CF(53g、0.2モル)をメタノール(63.7g、2.0モル)と、106℃にて反応させることにより調製した。生成反応混合物を水洗し、蒸留し、沸点範囲が115〜117℃の蒸留留分を次工程にて使用した。
【0081】
OCFHCFCHOH(18.5g、0.062モル)、炭酸カリウム(1.67g、0.012モル)、及び無水アセトニトリル(73.1g)を、電磁攪拌棒、ガス注入チューブ、及び固体二酸化炭素/アセトン冷却管を備えた500mL丸底フラスコ内に置いた。結果として得られた反応混合物を、攪拌下に45℃まで加熱し、前記ガス注入チューブを通してHFP(10g)の添加を開始した。10分後、反応混合物の内部温度は54℃に到達し、HFPの添加を中止した。45℃まで冷却後、追加のHFP10gを添加した。室温で16時間撹拌後、前記混合物を分液漏斗に注ぎ込んだ。結果として得られた下層にあるフルオロケミカル相を分離し、ブラインにて1回洗浄し、結果として得られた下側の相を分離して、25.1gを得た。本物質のGCMS分析は、約61%の生成物たるハイドロフルオロエーテルCOCFHCFCHOCFCFHCF及び21%の7種類のオレフィン(親化合物から1又は2モルのフッ化水素(HF)を失うことにより形成された)を含有することを示した。本混合物を無水HFと処理しても、HFを前記オレフィンに付加できなかった。反応が生じなかった。
【0082】
19.2gのエーテル/オレフィン混合物を、4.5gの重フッ化カリウム(KHF)、3.0gのアドゲン464の無水ジグリム中50重量%溶液、及び溶媒であるジグリム(55.4g)にて、110℃で16時間処理した。結果として得られた反応混合物を水に注ぎ込み、結果として得られた下層にあるフルオロケミカル相を分離し、次に同心円管分留装置(エース・ガラス社−カタログ番号9331、エース・ガラス社(Ace Glass Inc.)(ニュージャージー州ヴァインランド))で蒸留した。結果として得られた留出物を水洗し、共蒸留したジグリムを除去して、約94%の生成物たるハイドロフルオロエーテル及び6%の残りのオレフィンを有する生成物を提供した。
【0083】
化合物−2
CFCFHCFCHOHの調製
メタノール(150.0g、4.68モル)及びルペロックス(LUPEROX)575(6g、0.024モル)を、600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。HFPは、全部で190.0g(1.26モル)が添加されるまで、一定速度(continuous rate)で75℃の温度にて前記反応器に添加した。次に、結果として得られた反応混合物を、16時間75℃にて攪拌して、あらゆる残存ラジカル開始剤を分解した。次に、前記反応器の内容物を取り出し、余剰メタノールを回転蒸発によって除去した。
【0084】
化合物−3
CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCFの調製
エタノール(100g、2.17モル)及びルペロックス(LUPEROX)575(6g、0.024モル)を600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。反応器温度を75℃に設定し、HFPを一定速度にて(at a continuous rate)、総量が202.5g(1.35モル)になるまで添加した。結果として得られた反応混合物を、16時間75℃にて攪拌して、残存ラジカル開始剤を分解した。結果として得られたアルコールは、オルダーショウ型多孔板10段塔(沸点=120℃、97)を使用して精製した。
【0085】
200gの本アルコールを、炭酸カリウム(14.7g、0.102モル)及び100mLのアセトニトリルと、600mLのパール(Parr)社製反応器内にて混ぜ合わせた。上記反応器の温度を35℃に設定し、HFPを一定速度にて(at a continuous rate)、総量が170g(1.13モル)になるまで添加した。前記反応器の内容物を取り出し、アセトニトリルを回転蒸発により除去した。結果として得られた生成物は、所望のハイドロフルオロエーテルのオレフィンを含有し、これを無水HFと室温で処理することにより除去した(基本的には、米国特許公報第2005/0127322号(コステロ(Costello)ら)に記載されている通り)。次に、結果として得られた物質は、オルダーショウ型10段塔を使用して分留した(純度=99%、沸点=130℃)。粘度測定値、GCMSデータ、及びNMRスペクトルを得た。前記物質の粘度は、−50℃にて1.4x10−5/s(14センチストークス)であり、GCMS及びNMR(H&19F)の結果も、上記ハイドロフルオロエーテル生成物構造を確認した。
【0086】
化合物−4
CFCFHCFC(CHOCFCFHCFの調製
イソプロパノール(200.0g、3.32モル)及びルペロックス(LUPEROX)575(6g、0.024モル)を600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。前記反応器の温度を75℃に設定した。総量327.2g(2.2モル)のHFPを一定速度で反応器へ添加した。結果として得られた反応混合物を、16時間75℃にて攪拌して、残存ラジカル開始剤を分解した。次に、反応器の内容物を取り出し、剰余イソプロパノールを回転蒸発により除去した。次に、結果として得られた生成アルコールを、オルダーショウ型10段塔を使用して分留した。
【0087】
100g(0.47モル)の精製アルコール(99%、沸点=127℃)を、600mLのパール(Parr)社製反応器へ、炭酸カリウム(6.5g、0.047モル)及びアセトニトリル(200mL)と共に添加した。反応器の温度を35℃に設定し、HFPを一定速度にて、反応器へ総量が77.5g(0.51モル、10%過剰)になるまで添加した。前記反応器の内容物を取り出し、アセトニトリルを回転蒸発により除去した。次に、結果として得られた生成物を、同心円管カラムを使用して蒸留した。結果として得られた精製生成物(99%、沸点=140℃)の試料を、基本的には上記の通り、粘度測定、GCMS、NMR、及び引火点測定によって検査した。前記精製生成物の粘度は、−50℃にて1.8×10−5/s(18センチストークス)であり、その引火点は測定の結果54℃(130°F)であった。GCMS及びNMR(H&19F)にて、上記ハイドロフルオロエーテル生成物構造を確認した。
【0088】
化合物−5
CFCFHCFC(CHOCFCFHOCFCFCFの調製
イソプロパノール(200.0g、3.32モル)及びルペロックス(LUPEROX)575(6g、0.024モル)を600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。前記反応器の温度を75℃に設定した。圧力が増大し始めるまで、総量327.2g(2.2モル)のHFPを一定速度で反応器へ添加した。結果として得られた反応混合物を、16時間75℃にて攪拌して、残存ラジカル開始剤を分解した。次に、反応器の内容物を取り出し、剰余イソプロパノールを回転蒸発により除去した。次に、結果として得られた生成アルコールを、オルダーショウ型10段塔を使用して分留した。
【0089】
100g(0.47モル)の結果として得られた精製アルコール(99%、沸点=127℃)を、600mLのパール(Parr)社製反応器へ、炭酸カリウム(6.5g、0.047モル)、アセトニトリル(200mL)、及びペルフルオロプロピルビニルエーテル(COCF=CF、109g、0.52モル)と共に添加した。反応器温度を40℃に設定し、結果として得られた反応混合物を16時間(この間に、反応器の圧力がゼロまで下降する)かき混ぜた。前記反応器の内容物を取り出し、アセトニトリルを回転蒸発により除去した。結果として得られた生成物を、同心円管カラムを使用して精製した。精製生成物(99%、沸点=171℃)の試料を、基本的には上記の通り、粘度測定、GCMS、NMR、及び引火点測定によって検査した。前記精製生成物の粘度は、−50℃にて5.7×10−5/s(57センチストークス)であり、引火点は観測されなかった。GCMS及びNMR(H&19F)にて、上記ハイドロフルオロエーテル生成物構造を確認した。
【0090】
化合物−6
CFCF(CHOCFCFHCF)CFHCF(CF及びCFCFH(CHOCFCFHCF)CFCF(CFの調製
HFP二量体(106.5g、0.35モル)、ルペロックス(LUPEROX)575(6g、0.024モル)、及びメタノール(200g、6.25モル)を、600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。反応器温度を75℃に設定し、結果として得られた反応混合物を16時間攪拌した。反応器の内容物を取り出し、余剰メタノールを回転蒸発により除去した。
【0091】
結果として得られた生成アルコール(100g、0.03モル)を、炭酸カリウム(4.1g、0.03モル)及びアセトニトリル(150mL)と、600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。反応器温度を40℃に設定し、HFPを一定速度にて、総量が50g(0.33モル)になるまで当該反応器へ添加した。前記反応器の内容物を取り出し、アセトニトリルを回転蒸発により除去した。所望のハイドロフルオロエーテル生成物のオレフィンが存在し、室温での無水HFとの反応によって除去した。結果として得られた生成物を、同心円管カラム(沸点=155℃、93%の所望の生成物(上記の2つの異性体のほぼ50/50混合物))を使用して蒸留した。GCMS及びNMR(H&19F)にて、上記ハイドロフルオロエーテル生成物構造を確認した。
【0092】
化合物−7
CFCFHCFCH(OCFCFHCF)CHOCFCFHCFの調製
エチレングリコール(1.0モル)及びルペロックス(LUPEROX)575(5g、0.02モル)を600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせる。反応器温度を75℃に設定し、HFP(1.1モル)を一定速度にて当該反応器に添加する。結果として得られた反応混合物を、この温度で16時間かき混ぜる。結果として得られた粗製反応物質を、減圧下に蒸留して、ジアステレオマー混合物としてのCFCFHCFCH(OH)CHOHを得る。
【0093】
結果として得られたジオール(1.0モル)を、反応器内にて炭酸カリウム(0.1モル)及びアセトニトリル(100mL)と混ぜ合わせ、40℃に加熱する。HFP(2.19モル)を一定速度で反応器に添加し、結果として得られた反応混合物を18時間40℃にて攪拌する。前記反応器の内容物を取り出し、アセトニトリルを回転蒸発により除去する。結果として得られた生成物は、所望のハイドロフルオロエーテル生成物の脱フッ化水素オレフィンを含有し、これは室温での無水HFとの反応によって、ジエーテル生成物に変換される。前記生成物は、同心円管カラムを使用して分留する。
【0094】
化合物−8
CFCFHCFCHOCFCFHOCの調製
ヘキサフルオロブタノール、CFCFHCFCHOH(75g、基本的には上記(化合物2)の通りに調製した)を炭酸カリウム(11.4g、0.082モル)、COCF=CF(120.5g、0.45モル)、及び100mLのアセトニトリルと共に、600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。反応器温度を45℃まで上げ、結果として得られた反応混合物を約96時間攪拌した。反応器を冷却し、当該反応器の内容物を水中に注ぎ込んだ。結果として得られた下側の相を分離し、等容積の水で更に2回洗浄した。結果として得られた生成物(98.5%純度;ガス/液体クロマトグラフィー(GLC)による、150g)を、同心円管カラムを使用して蒸留した(144〜146℃での沸騰にて、生成物をカットした)。前記生成物の構造は、GCMSによって確認した。前記反応で形成された約1%のオレフィンは、基本的には上記の通り、ジグリム中での重フッ化カリウムとの反応によって除去した。
【0095】
化合物−9
CFCFHCFCHOCFCFHOCFの調製
ヘキサフルオロブタノール、CFCFHCFCHOH(65.3g、0.34モル)(基本的には上記(化合物2)の通りに調製した)を、炭酸カリウム(9.9g、0.072モル)及び133gのアセトニトリルと共に、600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。反応器温度を45℃まで上げ、CFOCF=CF(65.6g、0.39モル)を、約2時間に亘って気体として添加した。結果として得られた反応混合物を、約18時間45℃にて攪拌した。反応器を冷却し、反応器の内容物を濾過して、炭酸カリウムを除去した。結果として得られた生成物含有ろ液を、同心円管カラムを使用して蒸留した(115℃〜119℃での沸騰にて、生成物をカットした)。前記生成物の構造は、GCMSによって確認した。
【0096】
化合物−10
CFOCF(CF)CFOCFHCFC(CHOCFCFHCFの調製
CFOCF(CF)CFOCFHCFC(CHOHは、ルペロックス(LUPEROX)575(11.4g)を、75℃にてラジカル開始剤として使用して、CFOCF(CF)CFOCF=CF(52.9g、0.16モル)のイソプロパノール(202g、3.37モル)との反応により調製した。結果として得られた生成反応混合物を蒸留し、沸点範囲が161〜166℃の蒸留留分を次工程にて使用した。
【0097】
CFOCF(CF)CFOCFHCFC(CHOH(37.6g、0.096モル)、炭酸カリウム(4.4g、0.032モル)、及び無水アセトニトリル(144g)を600mLのパール(Parr)社製反応器内に置き、密閉して45℃まで加熱した。HFP(34.7g、0.23モル)を、前記容器へ気体として約1時間に亘って添加し、結果として得られた反応混合物を攪拌下に18時間45℃に保持した。上記反応容器を室温まで冷却し、余剰HFPを換気後、反応容器を開け、反応混合物を濾過して炭酸カリウムを除去し、アセトニトリル溶媒の大部分を回転蒸発により除去した。次に、結果として得られた残留物を同心円管カラムにて、主留分を沸点186℃純度90%超にて蒸留した。上記生成物構造は、GCMSによって確認した。
【0098】
化合物−11
CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOCの調製
エタノール(100.0g、2.17モル)及びルペロックス(LUPEROX)575(10.6g、0.434モル)を600mLの反応器内で混ぜ合わせた。前記反応器の温度を75℃に設定した。圧力が増大し始めるまで、総量181.0g(1.2モル)のHFPを一定速度で反応器へ添加した。結果として得られた反応混合物を、16時間75℃にて攪拌して、残存ラジカル開始剤を分解した。前記混合物を分液漏斗に注ぎ込み、結果として得られた下層にあるフルオロケミカル相を分離し、5倍の水で洗浄した。結果として得られた下側の相を分離し、1段蒸留して120〜129℃の沸点にて90.0gを生じた。ガスクロマトグラフィによる分析は、本物質が92.0%の所望の生成アルコール、CFCFHCFCH(CH)OHを含有していることを示した。
【0099】
結果として得られた生成アルコール(90.0g、0.46モル)を、炭酸カリウム(0.62g、0.004モル)及びアセトニトリル(300mL)と、600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。前記反応器を約82℃まで加熱し、100mLの物質を当該反応器から蒸留して、アセトニトリル又は炭酸カリウム内に最初に存在する水を除去した。反応器を室温まで冷却し、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(COCF=CF、122.9g、0.46モル)を添加した。反応器を密閉し、40℃まで加熱し、その内容物を16時間攪拌した。ガスクロマトグラフィによる分析は、反応が生じなかったことを示した。炭酸カリウム(6.2g、0.045モル)の追加充填を、前記反応器に行い、内容物を更に16時間40℃にて攪拌した。次に、前記反応器の内容物を取り出し、アセトニトリルを回転蒸発により除去した。結果として得られた反応混合物を水洗し、結果として得られた下層にあるフルオロケミカル相を分離した。所望のハイドロフルオロエーテル生成物のオレフィンが存在し、室温での無水HFによる処理によって除去した。結果として得られた生成物を、同心円管カラム(沸点=154℃、86.6g、99.4%が望ましい)を使用して蒸留した。GCMSにより、上記ハイドロフルオロエーテル構造を確認した。
【0100】
化合物−12
OCFHCFCH(OCFCFHCF)CHの調製
エタノール(50g、1.08モル)、ルペロックス(LUPEROX)575(7g、0.028モル)、及びペルフルオロプロピルビニルエーテル(290g、1.09モル)を、600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。反応器温度を75℃に設定し、結果として得られた反応混合物を16時間攪拌した。次に、反応器を空にして、過剰なエタノールを3つの250mLの蒸留水により洗浄して除去した。
【0101】
結果として得られた生成アルコール(COCFHCFCH(OH)CH;216g、0.7モル)を、炭酸カリウム(9.6g、0.07モル)及びアセトニトリル(100mL)と、600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。反応器温度を35℃に設定し、ヘキサフルオロプロペンを一定速度にて、総量が115.5g(0.77モル)になるまで添加した。結果として得られた反応混合物を、2時間この温度で攪拌した。反応器の内容物を取り出して、炭酸カリウムを濾過により除去した。前記アセトニトリル溶媒は、回転蒸発によって除去した。結果として得られた物質は、所望のエーテルのオレフィンを含有するが、これは当該物質(100g、0.24モル)を重フッ化カリウム(15g、0.19モル)と、溶媒としてのジグリム(100mL)及び相間移動触媒としての少量のアドゲン464(5g)と共に、110℃にて24時間、600mLのパール(Parr)社製反応器内にて反応させることによって最終生成物に変換した。次に、反応器の内容物を取り出して、ジグリムを水で洗浄することにより除去した。結果として得られたエーテルは、同心円管カラム(沸点=155℃)を使用して精製した。GCMSデータは、上記構造と一致した。
【0102】
化合物−13
CHCH(OCFCFHCF)CF(CF)CFHCF(CF及び(CFCFCF[CH(OCFCFHCF)CH]CFHCFの調製
エタノール(60g、1.3モル)、ルペロックス(LUPEROX)575(7g、0.028モル)、及びヘキサフルオロプロペン二量体(370g、1.23モル)を、600mLのパール(Parr)社製反応器内で混ぜ合わせた。反応器温度を75℃に設定し、結果として得られた混合物を16時間攪拌した。初期反応後、ルペロックス(LUPEROX)575の追加充填を前記反応器に対して行い、その混合物を更に16時間75℃で攪拌した。次に、当該反応器を取り出して、過剰のヘキサフルオロプロペン二量体及びエタノールを回転蒸発により除去した。
【0103】
結果として得られた生成アルコールCHCH(OH)CF(CF)CFHCF(CF及び(CFCFCF[CH(OH)CH]CFHCF(248g、0.72モル)を炭酸カリウム(9.9g、0.072モル)及び100mLのアセトニトリルと、600mLのパール(Parr)社製反応器中にて混ぜ合わせた。反応器温度を35℃に設定し、ヘキサフルオロプロペンを連続的に、総量118g(0.78モル)になるまで添加した。結果として得られた混合物を、6時間この温度で攪拌した。反応器の内容物を取り出して、炭酸カリウムを濾過により除去した。前記アセトニトリル溶媒は、回転蒸発によって除去した。結果として得られた生成エーテルは、同心円管カラム(沸点=165℃)を使用して精製した。GCMSデータは、上記構造と一致した(約70/30の比で)。
【0104】
化合物−14
CFCFHCF[CH(OCFCFHCF)CH]CFCF及びCFCFCFHCF[CH(OCFCFHCF)CH]CFの調製
エタノール(100g、2.17モル)、ルペロックス(LUPEROX)575(7g、0.028モル)、及びペルフルオロ−2−ペンテン(153g、0.612モル)を600mLのパール(Parr)社製反応器中にて混ぜ合わせ、75℃にて16時間加熱した。初期反応後、ルペロックス(LUPEROX)575の追加充填を前記反応器に対して行い、結果として得られた混合物を更に16時間75℃で攪拌した。次に、反応器の内容物を取り出して、エタノールを2つの250mL水洗浄により除去した。
【0105】
結果として得られた生成アルコールCFCFHCF[CH(OH)CH]CFCF及びCFCFCFH[CH(OH)CH]CFCF(約50/50比で)(165g、0.55モル)を、炭酸カリウム(9g、0.065モル)及び150mLのアセトニトリルと共に、600mLのパール(Parr)社製反応器中にて混ぜ合わせた。ヘキサフルオロプロペンを連続的に35℃の温度で、総量が105g(0.7モル)になるまで添加した。結果として得られた反応混合物を30分間攪拌し、次に空にして、炭酸カリウムを濾過により除去した。前記アセトニトリル溶媒は、回転蒸発によって除去した。得られた生成物は、所望のエーテルのオレフィンを含有し、これを無水HFにて室温で処理して、最終生成物に変換した。次に、前記生成物を同心円管カラム(純度=99%、沸点=155℃、粘度(−50℃)8.5×10−5/s(85センチストークス))を使用して分留した。GCMSデータは、上記構造と一致した。
【0106】
(実施例1〜65)
本発明の電解質組成物の安定性を測定するために、実施例1〜65を実施した。試料は、1モルのリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)を1Lの溶媒混合液中に溶解させ、次に所定の温度で平衡させることにより調製した。前記溶媒混合液は、各種割合のエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、及び本発明のハイドロフルオロエーテル(HFE)を含有した。実施例1〜83にて使用したHFEは、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF又は上記化合物−3である。上記電解質組成物の安定性は、試料の透明度、均一性及び多相の存在を目視検査することによって測定した。所定温度にて、透明、均一且つ単相の電解質組成物は、その温度にて安定であると結論づけた。下表Iは、目視観察の結果、当該観察が行われた温度、並びに溶媒混合液中に存在する各種構成成分の割合を、実施例1〜65の各々についてまとめたものである。
【0107】
【表2−1】

【0108】
【表2−2】

【0109】
(実施例66)
本発明の電解質組成物の可燃性を試験するために、楕円形ガラスフィルタ(1cm幅、5cm長)を電解質組成物(1モルのリチウムビス−ペンタフルオロエタンスルホンイミド(LiBETI)を、1Lの溶媒混合液(EC、DEC、及びHFEを5/45/50の容積比で含有する)に溶解させることにより調製した)に浸漬した。過剰の電解質を前記ガラスフィルタから抜き取った後、アルコールランプの炎にくぐらせた。前記ガラスフィルタは、その幅に亘って毎秒約20cmの速さで炎にくぐらせた(その長さの約1cmを炎の中に入れた)。当該試験は、ガラスフィルタを炎に連続的にあてないようにして、2秒間隔で5回繰り返した。実施例66の電解質組成物は、3回目にくぐらす際に瞬間的に炎を上げたが、前記ガラスフィルタを炎から離すと、連続的に炎を上げることなく自己消火した。瞬間的な発火及び自己消火は、4回目及び5回目に炎にくぐらす際に、繰り返し観察された。
【0110】
比較例A
比較例Aを、電解質組成物が1モルのLiBETIを1Lの溶媒混合液(EC及びDECを5/95の容積比で含有する)中に溶解させることにより調製された点を除いて、実施例66と同様に実施した。発火は、最初に炎にくぐらせた際に観察され、ガラスフィルタを炎から遠ざけても連続的な燃え上がりが発生した。
【0111】
(実施例67)
実施例67は、前記電解質組成物で飽和させたガラスフィルタを炎を横切らせる際に、それを炎の中に入れずに炎の先端の真上へ約3cm離して横切らせた点を除いて、実施例66と同様に実施した。上記試験を通して、発火は観察されなかった。
【0112】
比較例B
比較例Bを、電解質組成物が1モルのLiBETIを1Lの溶媒混合液(EC及びDECを5/95の容積比で含有する)中に溶解させることにより調製された点を除いて、実施例67と同様に実施した。発火は、最初に炎の上方を通過させた際に観察され、ガラスフィルタを炎から遠ざけても連続的な燃え上がりが発生した。
【0113】
(実施例68)
実施例68を、電解質組成物が1モルのLiBETIを1Lの溶媒混合液(EC、DEC及びHFEを30/20/50の容積比で含有する)中に溶解させることにより調製された点を除いて、実施例66と同様に実施した。実施例68の電解質組成物は、3回目にくぐらす際に瞬間的に炎を上げたが、前記ガラスフィルタを炎から離すと、連続的に炎を上げることなく自己消火した。瞬間的な発火及び自己消火は、4回目及び5回目に炎にくぐらす際に、繰り返し観察された。
【0114】
比較例C
比較例Cを、電解質組成物が1モルのLiBETIを1Lの溶媒混合液(EC及びDECを30/70の容積比で含有する)中に溶解させることにより調製された点を除いて、実施例66と同様に実施した。発火は、最初に炎にくぐらせた際に観察され、ガラスフィルタを炎から遠ざけても連続的な燃え上がりが発生した。
【0115】
(実施例69)
実施例69は、前記電解質組成物で飽和させたガラスフィルタを炎を横切らせる際にそれを炎の中に入れずに、炎の先端の真上へ約3cm離して横切らせた点を除いて、実施例68と同様に実施した。上記試験を通して、発火は観察されなかった。
【0116】
比較例D
比較例Dを、電解質組成物が1モルのLiBETIを1Lの溶媒混合液(EC及びDECを30/70の容積比で含有する)中に溶解させることにより調製された点を除いて、実施例69と同様に実施した。発火は、最初に炎にくぐらせた際に観察され、ガラスフィルタを炎から遠ざけても連続的な燃え上がりが発生した。
【0117】
実施例70〜76並びに比較例E及びF
本発明の電解質組成物の表面張力を、比較例E及びFの電解質組成物の表面張力との比較で測定するために、実施例70〜76を実施した。各実施例の試料は、1モルのLiBETIを、各種割合のEC、DEC、EMC、及びHFEを含有する1Lの溶媒混合液中に溶解させることにより調製した。次に、前記電解質組成物の表面張力を25℃にて測定した。
【0118】
下表IIは、表面張力並びに実施例70〜76並びに比較例E及びF各々の溶媒混合液中に存在する各種構成成分の割合をまとめたものである。
【0119】
【表3】

【0120】
表IIで明らかなように、本発明の電解質組成物を用いた実施例は、HFEを全く含有しない比較例の電解質組成物よりも小さな表面張力を有する。より小さな表面張力を有する電解質組成物は、セルパッケージによりスムーズに入り、セパレータの微細孔を素早く貫通し、電極をコーティングするので、組立をより容易且つ素早く行うためには、電解質組成物にはより小さな表面張力が好ましいと考えられている。
【0121】
(実施例77)
透明且つ均一のTEABF溶液(0.1モル/L)(γ−ブチロラクトン(GBL)及びHFEを1/1の容積比で含有する溶媒混合液中)を調製した。結果として得られた溶液を、−90℃未満の露点を持つ乾燥アルゴン雰囲気下にて3個の電極セル内に充填し、自動ポラライゼーションシステム(HZ−3000、伯東株式会社(Hokuto Denko Co.)(日本、東京))を使用して、10mV/秒の電位掃引速度にて、サイクリックボルタンメトリ分析を行った。作用電極はガラス状炭素、対極は白金線且つ参照電極はリチウムであった。本試験に続いて、GBL中に溶解させた少量のフェロセンを含む溶液を、上記溶液に添加して、最終フェロセン濃度0.01モル/Lを得た。次に、結果として得られた溶液に対して第2のサイクリックボルタンメトリを実施した(同一条件下にて)。フェロセンの酸化還元からの電流をおよそ3.62V(対Li/Li+)で観察した。過去の文献において、既知のデータに基づいて計算されたフェロセンの酸化還元電位は、3.31V(対Li/Li+)であるので、本試験でのリチウム参照電極がむしろ妥当であり、且つ添付図1にて確認できる電位窓が適切であることが確認された。
【0122】
比較例G
比較例Gは、TEABFを溶解させるために使用した溶媒混合液がGBLのみを含有する点を除いて、実施例77と同様に実施した。
【0123】
実施例77及び比較例Gのボルタモグラムを図1に示す。実施例77及び比較例Gのボルタモグラム対比から、本発明の実施例77の電解質組成物、より具体的には、HFEが、GBLと少なくとも同一レベルの抗酸化特性を有し、それがおよそ8.5V(対Li/Li)まで酸化しないと結論づけられる。6.0V(対Li/Li)近辺で観測される少量の酸化電流が、実施例77及び比較例Gの両方のボルタモグラムにて観察された。従って、この少量の電流がGBL自体又はGBLに含まれる任意の未知の不純物からのものであり、HFEからのものではないと考えられている。従って、本発明の電解質組成物が、充電デバイスのための最大電圧がより大きい(例えば、リチウムイオン電池が4.2V超で充電される)用途のために好適である(溶媒の電気化学的分解が少なく安定している)と考えられている。
【0124】
実施例78〜80並びに比較例H、I及びJ
コイン型、2電極セルのリチウムイオン堆積/溶解効率を測定するために、比較例H、I、及びJのものとの比較で本発明の電解質組成物を使用して、実施例78〜80を実施した。前記コイン型2電極セルは、作用電極としてのニッケル基材、対極としてのリチウム、セパレータとしてのポリプロピレンミクロ孔質フィルム及び特定の電解質組成物(実施例78〜80並びに比較例H、I、及びJの各々のもの)を使用して組み立てた。各セルについて、まず、リチウムをニッケル基材上に0.1mA/cmの定電流密度にて3時間電気化学的に堆積させ、引き続いて10分間中断した。次に、前記ニッケル基材上のリチウムを、0.1mA/cm2の定電流密度にてセル電位が1.5Vになるまで電気化学的に溶解させ、この時点で更に10分間の中断を加えた。このリチウム堆積/溶解過程を1サイクルとして、試験を40サイクル繰り返した。全サイクルは、25℃にて実施した。対極は、30mg超のリチウムを含有し、これは110mAhより大きい容量に相当するので、リチウム量は本試験のために十分であった。サイクル効率は、次式を使用して計算した。
【0125】
リチウム堆積/溶解効率(%)=[(リチウム溶解での電気量(mAh))/(リチウム堆積での電気量(mAh))]×100
下表IIIaは、電解質組成物(即ち、支持電解質塩及び溶媒混合液の種別)についてまとめたものであり、下表IIIbは実施例78〜80並びに比較例H、I、及びJの各々について、対応するコイン型、2電極セルのリチウム堆積/溶解効率をまとめたものである。全ての実施例及び比較例において、電解質組成物は、対応する溶媒混合液1L中に1モルの支持電解質塩を溶解させることにより調製した。
【0126】
【表4】

【0127】
【表5】

【0128】
実施例81並びに比較例K、L、及びM
実施例81は、本発明の電解質組成物を使用して作製された電池の放電率性能を測定するために、最大充電電圧4.2Vにて、比較例K、L、及びMの電解質組成物を使用した電池性能との比較において、実施した。
【0129】
実施例81では、正極及び負極、ポリプロピレンミクロ孔質セパレータ膜及び電解質組成物を含有するコインセルを組み立てた。正極は、活性物質としてのコバルト酸リチウム、導電性物質としてのアセチレンブラック、結合剤としてのポリフッ化ビニリデン及びコーティング溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンを含有するスラリーをアルミホイル上にコーティングし、当該コーティングを乾燥させ、且つ適切なサイズの円に打ち抜きすることにより作製した。負極は、活性物質としてのメソフェーズ炭素マイクロビーズ、導電性物質としてのグラファイト、結合剤としてのポリフッ化ビニリデン及びコーティング溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンを含有するスラリーを銅箔上にコーティングし、当該コーティングを乾燥させ、且つ適切なサイズの円に打ち抜きすることにより作製した。セル容量が、正極のコバルト酸リチウムの重量によって確実に決定されるために、正極の活性物質重量を、その計算された理論容量が負極より僅かに少なくなるように調整した。電解質組成物は、EC/DC/HFEを5/45/50の容積比で含有する1Lの溶媒混合液中に、1モルのLiPFを溶解させることにより調製した。
【0130】
セルを安定化するために、3回の充電/放電サイクルを25℃で実行した。各サイクルは、セルを4.2Vまで0.2CmAの定電流で充電すること、及び次に2.5Vまで0.2mAの定電流で放電することから構成した。充電及び放電の間に、10分の開回路中断を追加した。セルが安定した充電/放電容量にて動作することを確認するために、10回の充電/放電サイクルを25℃にて実施した。各サイクルの間、セルは0.5CmAの定電流にて4.2Vまで充電し、次に4.2Vの定電圧にて連続充電した。総充電時間が3時間に到達した時点、又は電流が0.01CmAまで減衰した時点で充電を終了させた。10分の開回路中断時間に続いて、セルを0.5CmAの定電流にて2.5Vまで放電し、10分の開回路中断を設けた。次に、上記の方法によって安定であると確認したセルをもう1度充電し、0.2CmA、1CmA、3CmA、9CmA又は12CmAの定電流にて、セル電圧が2.5Vに到達するまで放電し、各放電率でのセル容量を測定した。実施例81の場合、0.2CmAの電流でのセル放電容量は、セル内のコバルト酸リチウム1gあたり、129mAh超であった(理論上のセル容量は、コインセル内のコバルト酸リチウムの重量に基いて計算され、CmAhとして定義された)。0.2CmAでの放電容量を100%と定義して、放電率と得られた放電容量との間の相関関係を、図2にてプロットした。
【0131】
電解質組成物を調製するために使用した溶媒混合液が、比較例Kの場合、EC/DECを1/1の容積比で含み、比較例Lの場合、EC/DECを5/95の容積比で含み、且つ比較例Mの場合、EC/DEC/DMCを5/45/59の容積比でそれぞれ含む点を除いて、比較例K、L、及びMのコイン型セルを作製し、安定化させ、安定であることを確認し且つ実施例81のセルと同様に試験した。比較例K、L、及びMのセルの放電容量を、図2にプロットした。
【0132】
図2に示すように、本発明の電解質組成物を含む実施例81のセルの測定された容量が、比較例のセルのものより大きい(特に、より大きな放電電流条件にて)ことは明らかである。
【0133】
次に、実施例81の試験用セルを再使用して、最大充電電圧が4.2Vである電池の充電率性能(charge rate performance)を試験した。本試験に先だって、前記充電/放電安定性及び前記セル容量を、8回のみの充電/放電サイクルを完了させた点を除いて、前述した同一方法によって再確認した。本サイクルの8番目の充電及び放電容量は、127mAh超(セル内のコバルト酸リチウム1g当たり)であり、セルが問題なく動作することを確認した。この8番目のサイクルの充電容量、即ち2つの充電工程(即ち、定電流充電及び定電圧充電の合計)の総充電容量を100%と定義した。次に、0.5CmA、1CmA、3CmA又は6CmAの定電流にて、セル電圧が4.2Vに達するまで、前記セルを充電した。この場合、定電圧充電は追加しなかった。
【0134】
同様に、比較例K、L及びMの試験用セルを再試験して、最大充電電圧が4.2Vである電池の充電率性能(charge rate performance)を求めた。前記試験方法は、実施例81のセルの再試験のために使用したものと同一であった。実施例81並びに比較例K、L、及びMのセルについて、充電率と得られた充電容量との間の相関関係を、図3にプロットした。
【0135】
実施例81(定電流充電での本発明の電解質組成物を含む)のセルの充電容量は、より大きな充電電流条件にて、比較例K、L、及びMのセルより大きい。
【0136】
更に、実施例81のセルの試験用セルを再使用して、最大充電電圧が4.2Vである電池の低温放電性能を試験した。本試験に先だって、前記充電/放電安定性及び前記セル容量を、前述した同一方法によって再確認し、当該セルが何の問題もなく良好に動作することが確認された。本工程の25℃での最終放電容量を100%として定義した。
【0137】
次に、前記コインセルをもう1度上記と同様に充電し、次に10℃、0℃、−10℃又は−20℃の大気温度にて、セル電圧が2.5Vに達するまで放電した。各温度での容量を測定した。試験中、放電温度は試験ごとに変化したにもかかわらず、充電温度は同一(即ち、25℃)であった。
【0138】
同様に、比較例K、L及びMの試験用セルを更に再試験して、最大充電電圧が4.2Vである電池の低温放電性能を求めた。前記試験方法は、実施例81のセルを更に試験するために使用したものと同一であった。放電温度と得られた放電容量との間の相関関係をプロットし、且つ実施例81並びに比較例K、L、及びMのセルについて、得られた放電容量を図4にプロットした。
【0139】
図4から、実施例81のセル(本発明の電解質化合物を含む)が、低温にて比較例のセルよりも優れた放電容量を有することが明らかである。加えて、実施例81のセルは、室温(25℃)での放電容量との比較で、極低温(−10℃又は−20℃)においてすら90%超の放電容量を有した。これは、本発明のデバイスを含む電気器具が、たとえ低温においても有用であり、動作時間、例えば携帯電話の連続呼出時間が、低温において、室温のそれよりも短くならないことを意味する。
【0140】
(実施例82)
実施例82では、正極及び負極、ポリプロピレンミクロ孔質セパレータ膜及び電解質組成物を含有するコインセルを、前記カソード活物質がLi1.08Ni0.38Co0.16Mn0.38であり(有用な物質の部類の1つ、LiNiCoMn、式中、0.8≦a≦1.2、0≦b≦1、0≦c≦1、且つ0≦d≦1)且つ電解質化合物が、1モルのLiPF6溶液及び1Lの溶媒混合液(EC/EMC/HFEの5/45/50容積比)である点を除いて、実施例81にて記載の通り組み立てた。理論上のセル容量は、セル内のLi1.08Ni0.38Co0.16Mn0.38の重量に基いて計算され、CmAhとして定義した。25℃にて、セルは最初に0.5CmAの定電流にて4.4Vまで充電し、次に4.4Vの定電圧にて連続充電した。総充電時間が3時間に達するか又は電流が0.05CmAまで減衰した時点で充電を停止させ、その後、10分の開回路中断時間を与えた。次に、前記セルを0.5CmAの定電流にて、3.0Vまで放電し、10分の開回路中断時間を与えた。本充電/放電サイクルを30回繰り返し、セルが安定した充電/放電容量にて動作することが確認された。ここで、30サイクル目での放電容量は、1gのLi1.08Ni0.38Co0.16Mn0.38当たり、150mAh/gであった。
【0141】
次に、前記セルを再度4.5Vまで充電し、且つ当該セルを上記充電/放電サイクルを使用して、更に30分4.5Vにて試験した。サイクル数と放電容量(最大30サイクル、4.5Vにて)との間の相関関係を、図5に示す。
【0142】
実施例83並びに比較例N及びP
本発明の電解質組成物を使用して、4.2V超の最大充電電圧にて作製された電池の内部インピーダンスを測定するために、且つそれを比較例N及びPに従って作製された電池の内部インピーダンスと比較するために、実施例83を実施した。
【0143】
実施例83では、実施例82のものに似たコイン型セルを組み立てた。前記セルに、4.4Vの最大充電電圧にて、10回の充電/放電サイクルを施した。次に、それぞれ4.5V及び4.6Vの最大充電電圧にて、更に10回の充電/放電サイクルを実施し、全体で30回の充電/放電サイクル(4.4V、4.5V、及び4.6Vでの各最大充電電圧にて、10回の充電/放電サイクル)を実施した。次に、前記セルをもう1度、25℃にて4.6Vの最大充電電圧で充電し、回路を開け、自動ポラライゼーションシステム・HZ−3000(伯東株式会社(Hokuto Denko Co.)(日本、東京))及び周波数応答アナライザ・5020を使用して、コインセルのACインピーダンスを測定した。前記セルの実インピーダンス値は、曲線適合法を適用するによって、cole−coleプロット半円の直径から決定した。cole−coleプロットが2つ又はそれ以上の半円を有する場合には、低周波側にて観察された最大のもの1つを使用して、セルインピーダンスを計算した。実施例83のセルのコインセルのインピーダンスは、130オームであった。次に、同一コインセルを4.6V定電圧充電状態にて全40時間維持し、上記方法を使用してインピーダンスを再計算したが、245オームであった。最後に、全140時間の定電圧充電を実施後、第3のインピーダンス測定を行ったが、最終インピーダンス値は401オームであった。
【0144】
比較例N及びPのための類似コイン型セルを作製し、比較例N及びPのセルの電解質溶媒混合物が、EC/EMCをそれぞれ50/50及び5/95の容積比で含有している点を除いて、実施例83のセルと同様に試験した。下表IVは、実施例83並びに比較例N及びPそれぞれについて、セルの内部インピーダンスについてまとめたものである。
【0145】
【表6】

【0146】
表IVで明らかなように、本発明の電解質組成物を含むセルが、最初からより小さいインピーダンスを有しているだけでなく、長時間の定電圧充電の後においてさえインピーダンスの増大は少なく、細流充電として知られている状態が加えられた。加えて、本実施例では、Li1.08Ni0.38Co0.16Mn0.38がカソードとして使用され、且つ同時に、最大充電電圧が4.6Vに設定され、本発明に従って作製されたセルのセルインピーダンスの可制御性が、高電圧型リチウムイオン電池の場合であっても非常に有効となるようにした。
【0147】
更に、実施例83並びに比較例N及びPのインピーダンス値はここで、相対的な結果と考えるべきであり、絶対値ではない。一般に、セルインピーダンスは、各種要因、例えば電極活性物質の粒子形状、コーティング又は非コーティング電極の作製方法、セル組立方法、2つの電極間の距離及び対向面積並びに円柱、角柱、薄い層状、コイン形又はその他などのセル形状によって決定される。従って、任意の第三者が、本例と完全に同一の電解質を使用してセルを作製しようとしても、例えばそのセル形状が異なる場合には、完全に同一のインピーダンス値は必ずしも得られない。しかし、唯一の違いが電解質の配合であって、他の条件の全てが同一であれば、インピーダンスの類似した相対値を観測することが可能である。
【0148】
本発明への様々な予測し難い改良及び変更が、本発明の範囲及び精神から逸脱せずに実施できることは、当業者には明らかである。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、又、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。
【0149】
添付の図面と共に以下の本発明の様々な実施形態の詳細な説明を検討することで、本発明はより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】実施例77及び比較例Gのボルタモグラム。
【図2】実施例81並びに比較例K、L、及びMについての、放電容量対放電電流のプロット。
【図3】実施例81並びに比較例K、L、及びMについての、充電容量対定充電電流のプロット。
【図4】実施例81並びに比較例K、L、及びMについての、放電容量対放電温度のプロット。
【図5】実施例82についての、放電容量及びサイクル数のプロット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のハイドロフルオロエーテル化合物を含む溶媒組成物であって、当該化合物が2つの末端フルオロアルキル基及び鎖中に介在する置換又は非置換オキシメチレン基を含み、当該オキシメチレン基が非置換である場合は、当該末端フルオロアルキル基の少なくとも1つが分岐状である及び/又は鎖中で連結された少なくとも1つのヘテロ原子を含むことを条件として、当該フルオロアルキル基のそれぞれが、水素原子を1つだけ含み、そして鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含んでもよい、溶媒組成物と、
(b)少なくとも1種の電解質塩と
を含む、組成物。
【請求項2】
前記オキシメチレン基が、置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オキシメチレン基の、炭素に結合した水素原子の少なくとも1つが、鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいアルキル基によって置き換えられている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記オキシメチレン基の、炭素に結合した水素原子の少なくとも1つが、鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいフルオロアルキル基によって置き換えられている、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記フルオロアルキル基の水素原子が、モノフルオロメチレン部分の一部である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物が、次の一般式(I):
'−CF(CFH−R'')−CR−O−CF(R')−CFH−R''' (I)
[式中、R'及びR'''はそれぞれ独立して、フッ素原子、又は直鎖、分岐鎖、環状若しくはそれらの組み合わせであって且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいペルフルオロアルキル基であり;各R''は独立して、直鎖、分岐鎖、環状又はそれらの組み合わせであって且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいペルフルオロアルキル基であり;R及びRが独立して、水素原子、直鎖、分岐鎖、環状若しくはこれらの組み合わせであって且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいアルキル基、又は直鎖、分岐鎖、環状若しくはこれらの組み合わせであって且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいフルオロアルキル基である。]
で表される部類の1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記Rが、水素、又は直鎖、分岐鎖、環状若しくはこれらの組み合わせのアルキル基であり、前記Rが、水素、又は直鎖、分岐鎖、環状、若しくはこれらの組み合わせのアルキル基、又は−(CR−O−CF(R')−CFH−R''(式中、Rは、水素、又は直鎖、分岐鎖、環状若しくはこれらの組み合わせのアルキル基)、又は−CF(Rf')−CFH−R''であり、nが1〜約8の整数である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記Rが、直鎖、分岐鎖、環状又はこれらの組み合わせのアルキル基である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物が、次の一般式(II):
H(CF−CR−O−CF(R')−CFH−R' (II)
[式中、pは2〜約10の整数であり;R及びRは独立して、水素原子、直鎖、分岐鎖、環状、若しくはこれらの組み合わせであって且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいアルキル基、又は直鎖、分岐鎖、環状若しくはこれらの組み合わせであって且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいフルオロアルキル基であり;R'は、フッ素原子、又は直鎖、分岐鎖、環状若しくはそれらの組み合わせであって且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいペルフルオロアルキル基である。]
で表される部類の1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記Rが、水素、又は直鎖、分岐鎖、環状若しくはこれらの組み合わせのアルキル基であり、前記Rが、水素、又は直鎖、分岐鎖、環状若しくはこれらの組み合わせのアルキル基、又は−(CR−O−CF(R')−CFH−R''(式中、Rは、水素、又は直鎖、分岐鎖、環状若しくはこれらの組み合わせのアルキル基)、又は−CF(R')−CFH−R''であり、nが1〜約8の整数である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記Rが、直鎖、分岐鎖、環状又はこれらの組み合わせのアルキル基である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記化合物が、
CFCFHCFCHOCFCFHOC、CFCFHCFCHOCFCFHOCOCF、CFCFHCFCHOCFCFHOCF、CFCFHCFCHOCFCFHOCFCF(CF)OC、CFCFHCFCHOCFCFHOC、CFCFHCFCHOCFCFHC、CFCF(CHOCFCFHCF)CFHCF(CF、CFCFHCF(CHOCFCFHCF)CF(CF、CFCF(CHOCFCFHCF)CFHCFCF、CFCFCF(CHOCFCFHCF)CFHCF、CFCFHCFCHOCF(CF)CFHC
CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOC、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOCOCF、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOCF、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOCFCF(CF)OC、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOC、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHC、CFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCF(CF、CFCFH[CH(CH)OCFCFHCF]CFCF(CF、CFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCFCF、CFCFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCF、CFCFHCFCH(CH)OCF(CF)CFHC
CFCFHCFC(CHOCFCFHCF、CFCFHCFC(CHOCFCFHOC、CFCFHCFC(CHOCFCFHOCOCF、CFCFHCFC(CHOCFCFHOCF、CFCFHCFC(CHOCFCFHOCFCF(CF)OC、CFCFHCFC(CHOCFCFHOC、CFCFHCFC(CHOCFCFHC、CFCF[C(CHOCFCFHCF]CFHCFCF、CFCFCF[C(CHOCFCFHCF]CFHCF
OCFHCFCHOCFCFHCF、COCFHCFCHOCFCFHOC、COCFHCFCHOCFCFHOCOCF、COCFHCFCHOCFCFHOCF、COCFHCFCHOCFCFHOCFCF(CF)OC、COCFHCFCHOCFCFHOC、COCFHCFCHOCFCFHC、CFCF(CHOCFCFHOC)CFHCF(CF、CFCF(CHOCFCFHOC)CFHCFCF、CFCFCF(CHOCFCFHOC)CFHCF
OCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、COCFHCFCH(CH)OCFCFHOC、COCFHCFCH(CH)OCFCFHOCOCF、COCFHCFCH(CH)OCFCFHOCF、COCFHCFCH(CH)OCFCFHOCFCF(CF)OC、COCFHCFCH(CH)OCFCFHOC、COCFHCFCH(CH)OCFCFHC、CFCF(CH(CH)OCFCFHOC)CFHCF(CF、CFCF(CH(CH)OCFCFHOC)CFHCFCF、CFCFCF(CH(CH)OCFCFHOC)CFHCF
OCFHCFC(CHOCFCFHCF、COCFHCFC(CHOCFCFHOC、COCFHCFC(CHOCFCFHOCOCF、COCFHCFC(CHOCFCFHOCF、COCFHCFC(CHOCFCFHOCFCF(CF)OC、COCFHCFC(CHOCFCFHOC、COCFHCFC(CHOCFCFHC、CFCF(C(CHOCFCFHOC)CFHCF(CF、CFCF(C(CHOCFCFHOC)CFHCFCF、CFCFCF(C(CHOCFCFHOC)CFHCF
CFCFHCFCH(OCFCFHCF)CHOCFCFHCF
CFOCF(CF)CFOCFHCFC(CHOCFCFHCF
[CFCFHCFOCH(CFCFHCF)]CH
CFCFHCFOCHCHCH(CFCFHCF)OCFCFHCF
CHCH(CFCFHCF)OCFCFHCF
CHC(OCFCFHCF)(CFCFHCF)CHOCFCFHCF
CHCH(OCFCFHCF)CH(OCFCFHCF)CFCFHCF
【化1】

【化2】

CFCFHCFCH(CH)OCFCFH、HCCH(CH)OCFCFHCF及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記化合物が、
CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、CFCFHCFCHOCFCFHOC、COCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、CFCFH[CH(CH)OCFCFHCF]CFCF(CF、CFCFHCFCH(OCFCFHCF)CHOCFCFHCF、CFCFHCFCHOCFCFHOC、CFCFHCFCHOCFCFHOCF、CFCF(CHOCFCFHCF)CFHCF(CF、CFCFHCF(CHOCFCFHCF)CF(CF、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHOC、CFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCF(CF、CFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCFCF、CFCFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCF、CFCFHCFC(CHOCFCFHCF、CFCFHCFC(CHOCFCFHOC、COCFHCFCHOCFCFHCF、CFOCF(CF)CFOCFHCFC(CHOCFCFHCF、CFCFHCFOCHCHCH(CFCFHCF)OCFCFHCF、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記溶媒組成物が、前記少なくとも1種のハイドロフルオロエーテル化合物とは異なる、少なくとも1種の有機又はフッ素含有電解質溶媒を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種の有機又はフッ素含有電解質溶媒が、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、ジグリム、テトラグリム、テトラヒドロフラン、アルキル置換テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル置換1,3−ジオキソラン、モノフルオロエチレンカーボネート、テトラヒドロピラン、アルキル置換テトラヒドロピラン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記溶媒組成物が、ゼロ体積パーセントより大きく且つ80体積パーセントまでの前記少なくとも1種の有機又はフッ素含有電解質溶媒を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記溶媒組成物が、10体積パーセント〜80体積パーセントの前記少なくとも1種の有機又はフッ素含有電解質溶媒を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種の有機又はフッ素含有電解質溶媒が、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、0.1〜2.0モル/Lの無機電解質塩を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、0.1〜2.0モル/Lの無機電解質塩を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記電解質塩が、少なくとも1種のカチオン及び少なくとも1種の弱配位アニオンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記カチオンが、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族金属、IIIB族金属、遷移金属、希土類金属及びアンモニウムのカチオンから選択される、請求項21の組成物。
【請求項23】
前記カチオンが、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のカチオンから選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記電解質塩が、フッ素含有無機アニオン;ClO;HSO;HPO;アルカン、アリール及びアルカリールスルホネート;フッ素含有及び非フッ素化テトラアリールボレート;カルボランアニオン;ハロゲン−、アルキル−又はハロアルキル−置換カルボランアニオン;並びにフッ素含有有機アニオンから選択される少なくとも1種のアニオンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記アニオンが、フッ素含有無機アニオン及びフッ素含有有機アニオンから選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記電解質塩が、リチウム塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
(a)(i)次の一般式(I)及び(II):
'−CF(CFH−R'')−CR−O−CF(R')−CFH−R''' (I)
H(CF−CR−O−CF(R')−CFH−R' (II)
[式中、R'及びR'''はそれぞれ独立して、フッ素原子、又は直鎖、分岐鎖、環状若しくはそれらの組み合わせのペルフルオロアルキル基であり;各R''は独立して、直鎖、分岐鎖、環状又はそれらの組み合わせであって且つ鎖中で連結された少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいペルフルオロアルキル基であり;pは2〜約10の整数であり;Rは、水素又は約3個までの炭素原子を有するアルキル基であり;Rは、約3個までの炭素原子を有するアルキル基である。]の1つで表される少なくとも1種のハイドロフルオロエーテル化合物、及び
(ii)前記少なくとも1種のハイドロフルオロエーテル化合物とは異なる、少なくとも1種の有機又はフッ素含有電解質溶媒
を含む、溶媒組成物と、
(b)フッ素含有アニオンを含む、少なくとも1種のリチウム電解質塩と
を含む、組成物。
【請求項28】
前記R'の各々が、独立してフッ素又はC−であり、前記Rf''の各々が、独立してCO−、CO−、COCO−、CFOCO−、及びCF−から選択され;前記Rが、水素又はメチルであり;前記Rが、メチルであり;前記R'''が、フッ素、CO−、CO−、COCO−、CFOCO−、及びCF−から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
正極、負極及び請求項1に記載の組成物を含む、電池。
【請求項30】
前記正極が、リチウム及び1以上の遷移金属元素を含む複合酸化物である、請求項29に記載の電池。
【請求項31】
前記負極が、炭素材、リチウム、リチウム含有合金及びリチウムとのアロイにした化合物から成る群から選択される、請求項29に記載の電池。
【請求項32】
前記負極が、リチウムである、請求項29に記載の電池。
【請求項33】
リチウム種が、Li/Li+に対して3V以上の電位にて酸化又は還元される、請求項30に記載の電池。
【請求項34】
リチウム種が、Li/Li+に対して4.2〜8.5Vの電位にて酸化又は還元される、請求項30に記載の電池。
【請求項35】
前記カソードが、LiNiCoMnであり、式中、0.8≦a≦1.2、0≦b≦1、0≦c≦1、及び0≦d≦1である、請求項33に記載の電池。
【請求項36】
前記アノードが、炭素材、リチウム及びリチウム合金から成る群から選択される、請求項33に記載の電池。
【請求項37】
前記アノードが、炭素材及びリチウムから選択され、ここで当該炭素材が、黒鉛化炭素、部分的黒鉛化炭素、又は非黒鉛化炭素から成る群から選択される、請求項36に記載の電池。
【請求項38】
前記電池が、黒鉛化炭素アノードを有し、前記組成物が、Li/Li+に対して8Vまでの酸化安定性を有する、請求項29に記載の電池。
【請求項39】
前記電池が、黒鉛化炭素アノードを有し、前記組成物中のハイドロフルオロエーテル化合物が、Li/Li+に対して8Vまでの酸化安定性を有する、請求項29に記載の電池。
【請求項40】
前記電池が、黒鉛化炭素アノードを有し、前記組成物が、Li/Li+に対して5Vまでの酸化安定性を有する、請求項29に記載の電池。
【請求項41】
前記電池が、黒鉛化炭素アノードを有し、前記組成物中のハイドロフルオロエーテル化合物が、Li/Li+に対して5Vまでの酸化安定性を有する、請求項29に記載の電池。
【請求項42】
前記電池が、12CmAまでの放電電流にて、80%より大きい放電容量を有する、請求項29に記載の電池。
【請求項43】
前記電池が、12CmAまでの放電電流にて、50%より大きい放電容量を有する、請求項29に記載の電池。
【請求項44】
前記電池が、6CmAまでの充電電流にて、約60%より大きい充電容量を有する、請求項29に記載の電池。
【請求項45】
前記電池が、6CmAまでの充電電流にて、約40%より大きい充電容量を有する、請求項29に記載の電池。
【請求項46】
前記電池が、0℃〜−20℃の周囲温度に曝された場合に、25℃にてその放電容量の90%超を保持する、請求項29に記載の電池。
【請求項47】
前記電池が、最大4.5Vにて最大30回にわたる(over up to 30)充電サイクルを行った場合に、カソードの1グラム当たり150mAhより大きい放電容量を保持する、請求項29に記載の電池。
【請求項48】
請求項29に記載の電池を含む物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−508304(P2009−508304A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530068(P2008−530068)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/032439
【国際公開番号】WO2007/030297
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】