説明

露光用放電励起レーザ装置

【課題】レーザ光の低空間コヒーレンス化をはかり、スペックルノイズの発生によるレジストパターン形成への悪影響を低減化すること。
【解決手段】発振段レーザ(MO)10からのビームは、MOビームステアリングユニット30を介して増幅段レーザ(PO)20の共振器内に注入され増幅発振される。増幅段レーザ(PO)20からのビームは、POビームステアリングユニット40を介してOPS50に入射し、OPS50からの光はコヒーレンスモニタ60を介して出力される。レーザコヒーレンスコントローラ66は、コヒーレンスモニタ60の検出値に基づいて、増幅段レーザ(PO)20の共振器のミラー、MOビームステアリングユニット30のミラー、POビームステアリングユニット40のミラー等のアクチュエータに駆動信号を送り、これらのミラーの角度などを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は露光用放電励起レーザ装置に関し、特に、レーザ光の低空間コヒーレンス化をはかり、露光装置のマスク及びウエハ上に発生するスペックル(干渉縞)を低減化することができる露光用放電励起レーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置用光源としてはエキシマレーザが使用されている。特に、60nm以下のテクノロジーノードにおいては、高出力(40W以上)でかつ超狭帯域化(0.2pm以下)にされたArFレーザ光源が採用されている
露光装置用光源のArFレーザ光源の要求を以下に示す。
1.高ドーズ安定性の確保と高スループット化に伴いさらに高出力の90W以上の出力が要求されている。かつ、レーザ光源の長寿命化が要求されている。
2.上記光源の要求を満たすために、ダブルチャンバ方式のArFレーザが実用化されている。ダブルチャンバ方式のレーザ装置の形態としては、アンプ側に共振器ミラーを設けないMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)方式と共振器ミラーを設けるMOPO(Master Oscillator Power Oscillator)方式とに大別される。
3.露光装置の照明光学装置により照明されたマスク上に干渉縞(スペックル)が発生し、露光斑を抑制するために、レーザ光源の低空間コヒーレンス化や露光装置の照明光学装置の工夫による干渉縞(スペックル)の低減が行われている。
そこで、(i)ダブルチャンバ方式のレーザ光源の低空間コヒーレンス化と、(ii)露光装置の照明光学装置において、スペックルを消すための手法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、発振段レーザ(MO)からのシード光を、増幅段レーザ(PO)の低コヒーレンス共振器に注入するMOPO方式のレーザ装置が提案されている。
低空間コヒーレンスのMOPO方式を採用することにより、MOPA方式に比べて、ビーム品位をMOPAと同等に維持した状態で、高い増幅効率と長いパルス幅を実現している。
図25は特許文献1に記載されるMOPO方式の概略構成を示す図である。
発振段レーザ(MO)100から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)200はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。
発振段レーザ(MO)100、増幅段レーザ(PO)200は各々レーザチャンバ101,201を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極(図示せず)が設置され、これらの一対の電極に高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0004】
発振段レーザ100は拡大プリズム301とグレーティング(回折格子)302によって構成された狭帯域化モジュール(LNM)300を有し、この狭帯域化モジュール300内の光学素子とフロントミラー102とでレーザ共振器を構成する。
発振段レーザ100からのレーザビーム(シードレーザビーム)は反射ミラー等を含む変換光学系400を介して増幅段レーザ(PO)200に注入され、増幅されて出力される。
増幅段レーザ(PO)200はリアミラー211、フロントミラー212からなる1組の光安定共振器が配置される。そして、注入されたシードレーザビームは同図の矢印のようにフロントミラー212、リアミラー211間で反射し、放電部を有効に通過してレーザビームが増幅されることによりパワーが増大して、フロントミラー212からレーザ光が出力される。
特許文献1に記載のものでは、発振段レーザ(MO)100からのシード光を増幅段レーザ(PO)200の安定共振器に注入するMOPO方式が採用されており、低空間コヒーレンスのMOPO方式を採用することにより、露光装置のマスク上での干渉縞(スペックル)の発生を抑制していた。
【0005】
特許文献2には、露光装置の照明光学装置を工夫して、干渉縞(スペックル)の低減を図る技術が開示されている。すなわち、ステップアンドスキャンによる露光装置では、レーザビームには、空間コヒーレンスが高い方向があり、その方向に、マスクとウエハを移動させることにより、スペックルの影響を低減している。
図26に上記照明光学装置の概略構成を示す。
図26において、エキシマレーザ光源300から射出されたレーザビームは、反射ミラー等からなる光学系301、フライアイレンズ302を経て、振動ミラー303に入射する。振動ミラー303は水平面上の所定の角度範囲内でレーザビームを走査する。
振動ミラー303で走査されたレーザビームは、光学系304を介してレチクルR上の短辺方向の幅がDの長方形の照明領域310に照射される。その照明領域310内のパターン像が投影光学系PLを介してウエハW上の長方形の露光領域311内に結像投影される。
【0006】
照明領域310に対してレチクルRを走査方向SRに走査し、照明領域310と共役な露光領域311に対してウエハWを走査方向SWに走査し、レチクルRのパターンを逐次ウエハW上に露光する。
以上のように、特許文献2に記載のものは、照明光学系中のフライアイレンズ(オプチカルインテグレータ)の手前に振動ミラーを配置し、オプティカルインテグレータに入射するレーザ光をその振動ミラーで走査することにより、マスク(レチクル)上に発生するスペックルパターンの位相を変えながら露光を行うことにより、スペックルによる露光斑を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/095661号パンフレット
【特許文献2】特開平6−349701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、テクノロジーノードが45nm以下の微細なパターンの露光では、上述した従来のダブルチャンバ方式のレーザ光源と露光装置の照明系によるスペックル低減方式を組合せたとしても、マスクパターン上の微細なスペックルノイズが消しきれていない。
このため、45nm以下の微細なスペックルノイズが発生したマスク像を投影レンズでウエハ上に回路パターンを結像させることになり、45nm以下のレジストパターンの形成に影響を及ぼしていた。
本発明は上述した事情に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、レーザ光の低空間コヒーレンス化をはかり、45nm以下の微細なパターンの露光に際して、スペックルノイズの発生によるレジストパターン形成への悪影響を低減化することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、安定共振器内に波面を調節する波面調節機構を設置し、この波面調節機構により一方の方向に対して波面を変化させることにより上記課題を解決する。また、上記安定共振器に入射するレーザビームの方向を変動させる入射角変動手段を設け、上記レーザビームのずれる方向に直交する方向あるいは波面を変化させる方向に、上記入射角を変動させるようにしたり、増幅段レーザ(PO)から出力されるレーザビームの方向を変動させる出射角変動手段を設け、波面を変化させる方向に対して直交する方向に、上記出射角を変動させるように構成してもよい。
さらに、コヒーレンスモニタにより最終出力ビームのコヒーレンスを検出して、所定のコヒーレンスとなるように、上記波面調節機構のアクチュエータを制御するようにしてもよい。
すなわち、本発明においては、次のようにして前記課題を解決する。
(1)レーザ光を出力するように構成された狭帯域発振段レーザと、レーザガスが封入されたチャンバと、該チャンバ内に設けられた一対の放電電極と、前記放電電極間の放電空間を挟むように配置された共振器と、該共振器内に配置されてレーザ光の波面を調節する波面調節機構とを含み、前記狭帯域発振段レーザからのレーザ光を前記共振器に注入し、前記放電電極に高電圧パルスを印加して放電させて、前記レーザ光を増幅するように構成された増幅段レーザと、前記波面調節機構を制御する制御手段とを設ける。
(2)上記(1)において、前記制御手段は、前記一対の放電電極の放電方向に対して垂直な面内でレーザ光の波面が変化するように前記波面調節機構を制御する。
(3)上記(1)または(2)において、前記波面調節機構は、凹凸の一対のシリンドリカルレンズおよび曲率が変更可能なミラーのうち少なくとも一方と、前記凹シリンドリカルレンズを移動、もしくは、前記ミラーの曲率を変化させる波面制御手段とを含む。
(4)上記(3)において、前記制御手段は、少なくとも前記狭帯域発振段レーザがレーザ光を出力している間、前記波面制御手段を制御して前記凹シリンドリカルレンズを移動、もしくは、前記ミラーの曲率を変化させる。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記増幅段レーザに注入される前記レーザ光の注入角度を変動させる注入角変動手段をさらに設け、前記制御手段は、前記波面を変化させる方向に対して直交する方向に前記注入角度が変動するように前記注入角変動手段を制御する。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記増幅段レーザから出力されるレーザ光の出射角度を変動させる出射角変動手段をさらに設け、前記制御手段は、前記波面を変化させる方向に対して直交する方向に前記出射角度が変動するように前記出射角変動手段を制御する。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記増幅段レーザから出力される出力レーザ光の空間コヒーレンスまたは空間コヒーレンスと相関するパラメータを計測する計測手段をさらに設け、前記制御手段は、出力レーザ光の空間コヒーレンスまたは空間コヒーレンスが予め定められた上限及び下限の範囲内となるように、前記計測手段の計測結果に基づいて前記波面調節機構を制御する。
(8)上記(7)において、前記計測手段は、ビームダイバージェンスを計測する装置とする。
(9)上記(7)において、前記計測手段は、ヤングの干渉計またはシェアリング干渉計とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)増幅段レーザ(PO)の安定共振器内に波面を調節する波面調節機構を設置し、該波面調節機構により一方方向に対して波面を変化させるようにしたので、出射ビームの空間コヒーレンス及びビームダイバージェンスが変化し、増幅段レーザ(PO)から出力される光の空間コヒーレンスが低下させることができる。
(2)波面制御手段により、少なくとも上記レーザ光が出射されている間、波面調節機構を制御することにより、上記と同様、レーザ光が出射している間、光の空間コヒーレンスを安定に保つことができる。
(3)放電励起レーザ装置から出力されるレーザ光は、一対の放電電極の放電方向に垂直なH方向の方が、放電方向に平行なV方向より空間コヒーレンスの高い。
従って、共振器から出力されるレーザビームの波面を変化させる方向を、上記一対の放電電極の放電に対して垂直な方向とすることで、露光装置のマスク面でのスペックルを大幅に低減することができる。
(4)上記増幅段レーザ(PO)に入射するレーザビームの入射角を、上記レーザビームの波面の変化する方向に対して直交する方向に、変動させることにより、レーザ光をより効果的に低コヒーレント化することができる。
また、増幅段レーザ(PO)から出力されるレーザビームの方向をレーザビームの波面の変化する方向に対して直交する方向に変動させることにより、レーザ光をより効果的に低コヒーレント化することができる。
(5)出力される出力レーザ光の空間コヒーレンスまたは空間コヒーレンスと相関するパラメータを計測する計測手段を設け、上記計測手段の計測結果に基づいて、出力レーザ光の空間コヒーレンスが、予め定められた上限及び下限の範囲内となるように、上記波面調節機構によりレーザビームの波面を制御することにより、出力される光の空間コヒーレンスをより安定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のレーザ装置の基本構成を示す図である。
【図2】図2は、コヒーレンスモニタとしてビームダイバージェンスモニタを使用した場合の構成例を示す図である。
【図3】図3は、コヒーレンスモニタとしてヤングの干渉計を使用した場合の構成例を示す図である。
【図4】図4は、コヒーレンスモニタとしてシェアリングの干渉計を使用した場合の構成例を示す図である。
【図5】図5は、増幅段レーザ(PO)の共振器のミラーの姿勢角度を光軸に対してずらすことにより低空間コヒーレンスを実現する第1の実施例を示す図である。
【図6】図6は、増幅段レーザ(PO)の共振器のミラーの姿勢角度を光軸に対してずらすことにより低空間コヒーレンスを実現する第2の実施例を示す図である。
【図7】図7は、リアミラー、OC等を駆動するための一般的な2軸のジンバル機構付きのミラーホルダを有するアクチュエータの構成例を示す図である。
【図8】図8は、増幅段レーザ(PO)20の共振器に波面調節器を設置することにより低空間コヒーレンスを実現する実施例を示す図である。
【図9】図9は、シリンドリカルの凹凸レンズを組合せた、波面調節器の実施例を示す図である。
【図10】図10は、共振器としてリング型共振器を採用し、リング共振器を往復する毎に光の方向がずれるように設置した場合の第1の実施例を示す図である。
【図11】図11は、共振器としてリング型共振器を採用し、リング共振器を往復する毎に光の方向がずれるように設置した場合の第2の実施例を示す図である。
【図12】図12は、共振器としてリング型共振器を採用し、ミラーの曲率を変化させてリング共振器の光の波面を調整できるようにした場合の実施例を示す図である。
【図13】図13は、共振器としてリング型共振器を採用し、リング共振器の光路中に波面調節器を設置した実施例を示す図である。
【図14】図14は、POのビームステアリングユニットによって、ビームの角度を振るためのアクチュエータの構成例を示す図である。
【図15】図15は、MOのビームステアリングユニットによって、ビームの角度を振るためのアクチュエータの構成例を示す図である。
【図16】図16は、低コヒーレンスを実現するフローチャートのメインフローを示す図である。
【図17】図17は、空間コヒーレンスを低く安定化するため、共振器のミラーのアクチュエータを駆動するサブルーチン及び出射ビームの集光位置での集光状態を示す図である。
【図18】図18は、ビームステアリングユニットのミラー等を駆動するアクチュエータの駆動サブルーチン及び角度振りのプログラムパターン例を示す図である。
【図19】図19は、空間コヒーレンスをフィードバック制御する場合のメインフローを示す図である。
【図20】図20は、出力レーザ光の空間コヒーレンスと相関性のあるビームパラメータを検出するサブルーチン例を示す。
【図21】図21は、出力レーザ光の空間コヒーレンスの移動積算値で評価するサブルーチンの第1の実施例を示す図である。
【図22】図22は、出力レーザ光の空間コヒーレンスの移動積算値で評価するサブルーチンの第2の実施例を示す図である。
【図23】図23は、出力レーザ光の空間コヒーレンスの評価値に基づいてアクチュエータを駆動するサブルーチンの実施例を示す図である。
【図24】図24は、調整発振するためのサブルーチン例を示す図である。
【図25】図25は、特許文献1に記載されるMOPO方式の概略構成を示す図である。
【図26】図26は、マスクとウエハを移動させることにより、スペックルの影響を低減する照明光学装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明のレーザ装置の基本構成を示す図である。
同図において、本発明のレーザ装置は、大きく分けると、スペクトル幅の狭いレーザ光を出力する発振段レーザ(MO:MasterOscillator)10と、発振段レーザ(MO)10から出力されたシード光を増幅共振させるための増幅段レーザ(PO:PowerOscillator)20から構成される。
また、発振段レーザ(MO)10から出力されたシード光の増幅段レーザ(PO)20への注入角度を調整するためのMOビームステアリングユニット30と、増幅段レーザ(PO)20の光共振器から出力された増幅光の角度を調整するためのPOビームステアリングユニット40と光のパルス幅を伸ばすための光学パルスストレッチャ(OPS:Optical Pulse Stretcher)50を有する。
さらに、レーザ光のコヒーレンスをモニタするコヒーレンスモニタ60と、レーザの出力ビームを遮断するためのレーザシャッタ65と、レーザ光のコヒーレンスをフィードバック制御するコヒーレンスコントローラ66を有する。
【0013】
発振段レーザ(MO)10は出力結合ミラー(OC)14と放電電極1aが設置されたレーザチャンバ11とスペクトル線幅を狭くするための狭帯域化モジュール(LNM)3で構成されている。
レーザチャンバ11内の放電電極1aに高電圧が印加され放電すると、OC14とLNM3の光共振器間でレーザ発振し、OC14からスペクトル幅が狭いレーザ光が出力される。LNM3はプリズムビームエキスパンダ3aとリトロー配置された回折格子3bで構成されており、このモジュールで波長が選択されスペクトルが狭くなる。放電電極1aは紙面と同一平面上にアノードとカソード電極が配置されている。発振段レーザ(MO)10のレーザビームは放電方向に対して長い長方形のビーム形状で出力される。
この発振段レーザ(MO)10からのビームは、MOビームステアリングユニット30に配置されている2枚の高反射ミラー30a,30bにより反射されて増幅段レーザ(PO)20の共振器内にシード光を注入する。
この高反射ミラー30bの図示しないミラーホルダにはミラーの姿勢角度を変化させるためのアクチュエータが内蔵されている。
【0014】
増幅段レーザ(PO)20はリアミラー25と放電電極2aが設置されたPOレーザチャンバ21とOC24から構成されている。シード光が増幅段レーザ(PO)20の共振器内に注入されると同期して、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21内部の放電電極2aに高電圧が印加され、放電する。これにより、シード光はリアミラー25とOC24間で共振し、増幅発振する。
増幅段レーザ(PO)20の共振器の光学素子を、共振器から出力されるレーザビームの方向が、上記共振器を往復する毎にずれるように配置することにより、往復回数毎に、OC2から出力される増幅ビームの方向をずらすことができ、これにより、増幅段レーザ(PO)20から出力される光の空間コヒーレンスが低下させることができる。
また、増幅段レーザ(PO)20の共振器内に波面を調節する波面調節機構を設置し、該波面調節機構により一方方向に対して波面を変化させることにより、同様に、増幅段レーザ(PO)20から出力される光の空間コヒーレンスを低下させることができる。
【0015】
この増幅段レーザ(PO)20から出力されたビームは、POビームステアリングユニット40に配置されている2枚の高反射ミラー40a、40bにより反射されて、OPS50に入射する。
OPS50には、メインビームを分岐するためのビームスプリッタ50aと分岐された光を遅延し、かつ、転写結像させるためのリレーレンズ50b,50cと高反射ミラー50d−50gにより構成されている。
OPS50を出力した光はコヒーレンスを検出するためのコヒーレンスモニタ60を透過し、出力レーザ光に異常が発生した場合に、レーザ光を露光装置に伝達させないようするために設置されたシャッタ65を介して出力される。
レーザコヒーレンスコントローラ66は、後述するようにコヒーレンスモニタ60の検出値に基づいて、PO共振器光軸コントローラ67に指令値を送出し、PO共振器光軸コントローラ67は、増幅段レーザ(PO)20の共振器の光学素子、あるいは共振器内に設置された波面を調節する波面調節機構(図示せず)を制御する。また、MOビームステアリングユニット30のミラー、POビームステアリングユニット40のミラーのアクチュエータに駆動信号を送り、これらのミラーの角度などを制御し、出力レーザ光のコヒーレンスが所望の値になるように制御する。
【0016】
次に上記コヒーレンスモニタ60の構成例を示す。
図2に本発明のコヒーレンスモニタとしてビームダイバージェンスモニタを使用した場合の構成例を示す。
図2(a)に上記ビームダイバージェンスモニタの側面図を示し、(b)に斜視図を示す。OPS50から出力されたレーザ光はビームスプリッタ61aにより一部の光を集光レンズ61bに導入し、集光レンズ61bの焦点面に2次元のCCD61cを配置して、そのプロファイルを計測する。
ビームダイバージェンスDは以下のように計算される。
D=BD/f…(1)
ここで、f:集光レンズ61bの焦点距離、BD:集光レンズ61bの焦点位置での集光面上でのプロファイル幅である。例えば、プロファイル幅BDは1/e2の値における全幅で計算してもよい。
【0017】
空間コヒーレンスのコヒーレント長XcとレーザビームダイバージェンスDとの間には以下の(2)式のような反比例の関係があるので(文献:Proceedings.SPIE Vol.1138 Optical Microlithography and Metrology for Microcircuit Fabrication(1989)pp137−143参照)、ビームダイバージェンスDが計算されると、以下の式から空間コヒーレンスのコヒーレント長Xcを求めることができる。ここでλ:波長である。
D・Xc=2λ…(2)
ここで、空間コヒーレンスのコヒーレント長Xcとは、干渉縞のコントラストが所定量(例えば1/e2)以下となるシェア間隔(またはピンホール間隔)である。なお、シェア間隔(またはピンホール間隔)に関しては後述する。
一般に、放電励起エキシマレーザビームダイバージェンスは、放電方向と同じ方向をV方向と定義し、放電に対して垂直な方向をH方向と定義すると、V方向のビームダイバージェンスDvとH方向のビームダイバージェンスDhは以下のような関係がある。
Dv>Dh…(3)
ビームダイバージェンスの評価として、放電方向Vと放電に対して垂直な方向Hに対して評価することが可能となる。
【0018】
上述したビームダイバージェンスモニタ計測によるコヒーレンスモニタのメリットは以下の通りである。
(1)計測システムの構成が比較的簡単で容易に構成できる。
(2)レーザのポインティング(出射方向)も計測可能であり、ポインティングの監視装置にもなる。
(3)ポインティングの計測により、低コヒーレンス化のためのミラーの姿勢角の量及び方向を検出して、その検出値に基づいてフィードバック制御できる。
【0019】
図3にコヒーレンスモニタとしてヤングの干渉計を使用した場合の構成例を示す。
図3(a)はヤングの干渉計の光学配置図を示し、同図(b)に、CCDにより検出された干渉縞の模式図を示す。
図3(a)において、ビームスプリッタ62aによりOPS50から出力されたレーザビームの一部がサンプルされ、所定の間隔Xのピンホール間隔のダブルピンホール62bにレーザビームを照射する。ダブルピンホール62bを透過した光は互いに干渉して干渉縞を発生させる。この干渉縞のプロファイルをCCD62cにより測定する。
(b)は、CCDにより検出された干渉縞の模式図を示す。干渉縞のコントラストCは次の式(4)により計算される。
【0020】
【数1】

【0021】
ここで、Imax:干渉縞の最大値、Imin:干渉縞の最小値である。
この干渉縞のコントラストCが高くなるほど、空間コヒーレンスは高くなり、低くなるほど空間コヒーレンスは低くなる。
放電方向V及び放電の垂直方向Hのコヒーレンスを計測する場合はそれぞれダブルピンホール62bをV方向とH方向に並べるように透過型の回転ステージ62dを回転させることによりそれぞれ計測することが可能なる。
また、別の実施例としては、V方向とH方向に対して並べるように、4個のピンホールを設置してCCDによりV方向とH方向のプロファイルを検出してもよい。
また、上記ピンホール間隔は露光装置に設けられているフライアイレンズの間隔(隣り合うフライアイレンズ単体同士の間隔)と略一致させるのがよい。すなわち、フライアイレンズの間隔が露光面における干渉の程度を決めており、これと同じ間隔でピンホールを設けることで、露光面での干渉の程度をそのまま反映させることができる。
ただし、フライアイレンズのピッチ間隔がダブルピンホールを製作できないくらい細かな間隔の場合はこの限りではなく、所定のピンホール間隔で製作し、コントラストを計測して、空間コヒーレンスの高さの相対値を比較してもよい。
【0022】
図4に、コヒーレンスモニタとしてシェアリングの干渉計を使用した場合の構成例を示す。
図4(a)はシェアリングの干渉計の光学配置図を示し、同図(b)にシェア量ΔSとCCDで観測された干渉縞のコントラストの関係を示す。
図4(a)において、シェアリング干渉計は光を回折するための回折格子63b、平行光を集光するための集光レンズ63c、0次光をカット±1次光を透過させる2ホール遮光板63d、回折格子63bの像を結像させるためのコリメータレンズ63eと干渉縞のプロファイルを計測するCCD63fで構成されている。
集光レンズ63cの前側焦点面に回折格子63b、後ろ側焦点面に±1次光を透過させる2ホール遮光板63dを配置する。また、±1次光を透過させる2ホール遮光板63dの位置がコリメータレンズ63eの前側焦点面となるように、コリメータレンズ63eが配置され、コリメータレンズ63eの後ろ側焦点面に回折格子63bの像が結像する。CCD63fは、この回折像の位置の基準位置からZの距離分だけ離れた位置に配置している。
【0023】
ビームスプリッタ63aによりOPS50から出力されたレーザビームの一部がサンプルされ、所定の間隔αの回折格子63bにレーザビームを照射する。回折格子63bを透過した光は回折し、集光レンズ63cに入射する。集光レンズ63cの焦点面には回折格子63bにより回折した光が各次数毎に集光する。ここで、±1次光の集光点の間隔をdとする。±1次光は2ホール遮光板63dを透過し、その他の次数(0次光、±2次光、)は遮光される。+1次光と−1次光はコリメータレンズ63eを介してコリメータレンズ83eの後ろ側焦点面に回折格子の像を結像する。
一般に回折の式は以下のように表される。
mλ=a(sinα+sinβ)…(5)
ここで、m:回折光の次数、a:回折格子の溝間隔、α:回折格子の入射角度(=0)、β:回折光の出射角度である。
1次光の回折角βは(5)式から
β=sin-1(λ/a)…(6)
±1次光の間隔dは以下の式により求めることができる。
d=2tanβ・f…(7)
【0024】
この回折格子63bの像とCCD63fの距離をZとするとシェア量ΔSは以下の式で表される。
ΔS=(d/f)Z…(8)
図4(b)にはシェア量ΔSとCCD63fで観測された干渉縞のコントラストCの関係が示されており、コントラストCの計算は前記(4)式で計算される。
シェア量ΔS=0(CCD63fの位置が回折格子の結像面にあるときZ=0)におけるコントラストCは1であり、CCD63fの位置少しずつ変化させて、その時の干渉縞の評価を行うことで、コントラストが計算できる。
一般的に、シェア量ΔSが大きくなるにつれて干渉縞のコントラストは小さくなる。例えば、コントラストが1/e2のコントラストになるシェア量を空間的コヒーレント長Xcとして空間コヒーレンスの指標とすることができる。
【0025】
コヒーレンスの計測としては、露光装置のフライアイレンズのピッチ間隔とシェア量ΔSが略一致するようにCCD63fの位置を固定して、干渉縞のコントラストを評価してもよいし、CCD63fの位置をスキャンさせてシェア量ΔSとCCD63fで観測された干渉縞のコントラストの関係を計測して評価してもよい。また、放電方向V及び放電に対して垂直な方向Hのコヒーレンスをそれぞれ計測する場合は回折格子63bのピッチ方向をV方向とH方向に並べるように透過型の回転ステージ63gを回転させることによりそれぞれ計測することにより可能となる。
ヤングの干渉計に比べてシェアリング干渉計のメリットを以下に示す。
(1)シェア量ΔSを任意に設定可能であることである(ダブルピンホールが製作できないシェア量でも計測可能)。
(2)シェア量ΔSと干渉縞のコントラストCの関係を計測して、空間コヒーレンスのコヒーレント長Xcを計測できる。
【0026】
図5に、増幅段レーザ(PO)20の共振器のミラーの姿勢角度を光軸に対してずらすことにより低空間コヒーレンスを実現する第1の実施例を示す。
図5(a)に、本実施例の発振段レーザ10と増幅段レーザ(PO)20の側面図を示す。
発振段レーザ(MO:Master Oscillator)10はOC14と放電電極1aが設置されたMOレーザチャンバ11とスペクトル線幅を狭くするための狭帯域化モジュール(LNM)3で構成されている。レーザチャンバ11内の放電電極1aに高電圧が印加され、放電するとOC14とLNM3の光共振器間でレーザ発振し、OC14からスペクトル幅が狭いレーザ光が出力される。
LNM3はプリズムビームエキスパンダ3aとリトロー配置された回折格子3bで構成されており、このモジュールで波長が選択されスペクトルが狭くなる。放電電極1aは紙面と同一平面上にアノードとカソード電極が配置されている。発振段レーザ(MO)10のレーザビームは放電方向に対して長い長方形のビーム形状で出力される。このビームの空間コヒーレンスは放電方向Vにくらべて放電に対して垂直な方向Hのほうが高い。
【0027】
このMOのビームは、MOビームステアリングユニット30に配置されている2枚の高反射ミラー30a,30bにより反射されて増幅段レーザ(PO)20の共振器内にシード光を注入する。
増幅段レーザ(PO)20はリアミラー25と放電電極2aが設置されたPOレーザチャンバ21とOC24から構成されている。シード光が増幅段レーザ(PO)20の共振器内に注入されるのと同期して、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21の内部の放電電極2aに高電圧が印加され放電する。
これにより、シード光はリアミラー25とOC24間で共振し、増幅発振する。ここで増幅段レーザ(PO)20の共振器のリアミラーの姿勢角度を増幅光の往復する回数によって、ビームの出射角度がずれるように配置する。また、このPO共振器の光路長は、MOレーザ光の時間的コヒーレント長よりながくなるように構成されている。このようにすることにより、増幅段レーザ(PO)20で増幅された各往復回数のビームどうしは干渉することはない。
【0028】
図5(b)に増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
スペクトルの狭いMOビームは高反射ミラー30bにより反射されて、部分反射膜が施されたPO共振器のリアミラー25からウインド22aを介して斜めに放電空間に入射し、放電領域の放電に対して垂直な方向Hの端部を透過し増幅されて、ウインド22bを透過して部分反射膜が施されたOC24を透過して0.5往復の光として出力される。
そして、OC24で反射された光は反射角度α1でウインド22bを介して、POチャンバ21内の放電領域を透過増幅して、ウインド22aを介してリアミラー25に到達する。
リアミラー25の姿勢角度はOC24の法線に対して、H方向(放電に対して垂直な方向)にミラーの姿勢角度をずらした状態で設置してある。このリアミラー25では反射角度β1で反射し、再びウインド22aを介して放電領域に入射し、放電領域を透過し増幅され、ウインド22bを介してOC24を透過して出力される。
反射光はα2の角度で反射して、再び、ウインド22bを介して放電空間を透過増幅して、ウインド22aを介してリアミラー24により、反射角度β2で反射され、ウインド22aを介して放電空間を透過増幅して、ウインド22bを介してOC24に到達して、透過光は出力光として取り出され、反射光はフィードバック光として戻される。
各ミラーの入反射角度はα1>β1>α2>β2>・・・・・の関係が成立している。
【0029】
この実施例では、リアミラー25の姿勢角度をH方向にOC24との軸をずらすことにより、各往復回数毎に、OC24から出力される増幅ビームの方向がずれる。
これにより、ビームダイビームダイバージェンスを大きくすることができる。すなわち、OC24を透過した光と反射して再びレーザ共振器を往復して出力された光は互いに干渉性はない。複数の干渉性のない光源の位置をずらし光源の大きさを大きくしたのと同じ効果をもたらす。この結果として増幅段レーザ(PO)から出力される光の空間コヒーレンスが低下する。
この例のリアミラー25は部分反射膜がコートされており、60%から90%の範囲であれば正常に動作する。
【0030】
図6に、増幅段レーザ(PO)の共振器のミラーの姿勢角度を光軸に対してずらすことにより低空間コヒーレンスを実現する第2の実施例を示す。
図6は増幅段レーザ(PO)の上面図を示し、増幅段レーザ(PO)の側面図は、図5と同様である。図5と異なる点は以下の通りである。
(1)リアミラー25の共振器側の面に、シード光を全て透過させるための反射防止(AR)膜がコートされた領域が設けられ、また、シード光が共振して反射させる領域には高反射(HR)膜がコートされている。他方の面にはAR膜がコートされている。
(2)OC25の表面に、共振器側の面に、OC25とし機能させるための部分反射(PR)膜と、OC25側からシード光を注入するために、シード光を高反射させる高反射(HR)膜がコートされた領域が設けられ、もう一面は反射防止(AR)膜がコートされている。
【0031】
スペクトルの狭いMOビームは高反射ミラー30bにより反射されて、PO共振器のリアミラー25のARコート領域からウインド22aを介して斜めに放電領域をはずして透過しウインド22bを介してOC24の高反射膜がコートされた領域に到達する。
そして、OC24の高反射膜で全反射された光は反射角度α1でウインド22bを介して、POチャンバ21内の放電領域のH方向の端部を透過増幅して、ウインド22aを介してリアミラー25のHR部に到達する。リアミラー25の姿勢角度はOC24の法線に対して、H方向にミラーの姿勢角度をずらした状態で設置してある。このリアミラー25では反射角度β1で反射し、再びウインド22aを介して、放電領域を透過増幅して、ウインド22bを介してOC24を透過して出力される(1往復光)。
反射光はα2の角度で反射して、再び、ウインド22bを介して放電空間を透過増幅して、ウインド22aを介してリアミラー25により、反射角度β2で反射される。そして、ウインド22aを介して放電空間を透過増幅して、ウインド22bを介してOC24に到達して、透過光は出力光(2往復光)として取り出され、反射光はフィードバック光として戻される。
各ミラーの入反射角度はα1>β1>α2>β2>・・・・・の関係が成立している。
【0032】
この実施例では、リアミラー25の姿勢角度をH方向にOC24との軸をずらすことにより、各往復回数毎に、OC24から出力される増幅ビームの方向がずれる。これにより、ビームダイバージェンスを大きくすることができる。
すなわち、OC24を透過した光と反射して再びレーザ共振器を往復して出力された光は互いに干渉性はない。複数の干渉性のない光源の位置をずらし光源の大きさを大きくしたのと同じ効果をもたらす。この結果として増幅段レーザ(PO)から出力される光の空間コヒーレンスが低下する。
図5の実施例に対し、図6の実施例のメリットは、シード光の注入効率を高くして、なおかつ、空間コヒーレンスをH方向に対して低下させ、露光装置のマスク及び露光面でのスペックルを低減することができる点にある。
【0033】
ここで、一般に放電励起式エキシマレーザの放電断面は、放電電極の放電方向(V方向)の幅は放電に対して垂直な方向(H方向)の幅に比べて長い。したがって、レーザビームの断面は長方形(例えばH方向2mm、V方向12mm)の形で出力される。ビームダイバージェンスは(例えばH方向1mrad、V方向1.5mrad)したがって、V方向の空間コヒーレンスはH方向に比べて低くなる。
そこで、空間コヒーレンスの高いH方向に、OC24から出力されたビームが方向往復毎にずれることにより、V方向と同等のH方向の空間コヒーレンスにすることができ、露光装置のマスク面でのスペックルを大幅に低減することができる。
例えば、増幅段レーザ(PO)から出力された、H方向のビーム幅とビームダイバージェンスをそれぞれWpohとDpohとし、V方向のビーム幅とビームダイバージェンスをそれぞれ WpovとDpovとすると、次の(9)式が成立するように、PO共振器のミラーのアライメントを調整して、固定しておくことで、露光装置でのスペックルを著しく低減可能となる。
Wpoh・Dpoh=Wpov・Dpov…(9)
【0034】
この方式のメリットは、空間コヒーレンスの高い方向(すなわち放電に対して垂直な方向(H方向))に対して、PO共振器のアライメントずらすことにより、露光装置のマスク上でのスペックルを低減できる。
また、(9)式のような関係となるようにPO共振器のミラーの姿勢角度を調節し、固定することにより、レーザ光をV方向とH方向の大きさが同じになるように、H方向をビームエキスパンドしても、空間コヒーレンスは同じとなるため、露光装置の照明光学系のフライアイレンズに入射しても、スペックルの発生は非常に小さくなり、方向性がなくなる。
【0035】
本発明は上記実施例に限定されることなく例えば以下のように構成してもよい。
(1)リアミラー25の姿勢角度をずらしたが、OC24の角度をずらしてもよい。
(2)図5の実施例において、リアミラーとして図6の実施例に使用されているAR膜がコートされている領域とHR膜がコートされているリアミラーを設置してもよい。この場合は発振段レーザ(MO)10のシード光の注入位置を上記領域コートされたリアミラーのARコートされた領域とし、この領域からPO共振器中に注入しても同様な動作が可能である。要するに、PO共振器のアライメントをずらして、往復毎のビームの方向を変化させる方式であればよい。
(3)図5及び図6の実施例において、OC24の方向から出力レーザ光とかさならないように斜めにシード光を注入して、PO共振器のアライメントをずらして、往復毎のビームの方向を変化させる方式であってもよい。
また、図5及び図6の実施例では、平面ミラーのリアミラー25と平面ミラーのOC24の共振器構成としているが、安定共振器であれば曲率がついたリアミラー25及びOC24で共振器を構成し、OC24とリアミラー25の光軸をずらすことにより、出射されるレーザビームの方向が往復毎にずれるようにOC24とリアミラー24のアライメントをずらしてもよい。
【0036】
ここで、上記リアミラー25等を振るアクチュエータの構成例について説明する。
図7に、リアミラー、OC等を駆動するための一般的な2軸のジンバル機構付きのミラーホルダを有するアクチュエータの構成例を示す。
このジンバル機構付きミラーホルダはL型プレート72と、ミラー70が取り付けられたプレート71がパルスモータ73aの移動ピン76aとパルスモータ73bの移動ピン76bと支点77の3点で支持されている。これらの板の固定は引っ張りバネ75a及び75bにより行われている。
このミラーホルダの動作はパルスモータ73a,73bの移動ピン76a,76bが出し入れされることによりプレート71の姿勢角度が変化する。さらに、この例では、移動ピン76a,76bとプレート71との間にPZT(ピエゾ素子)74a,74bを設置してある。PZT74a,74bに高電圧を印加することにより、高速に厚みを変化させることができる。したがって、パルス毎にPZT74a,74bを駆動して、ミラーの姿勢角度を振ることが可能となる。
また、パルスモータ73a及びパルスモータ73bを駆動させることにより、2軸のミラー70の姿勢角度を変化させることができる。
なお、増幅段レーザ(PO)20の共振器から出力されるビームの方向を往復毎に変化させるには、制御の必要がないため、パルスモータの代わりにマイクロメータを設置して、所定の目盛り位置で調整し、固定してもよい。
また、ミラーの調整機構はシンバル機構に限定されることなく、ミラーの姿勢角度を調節可能な機構がついていればよい。なお、図7では、ミラーをプレート上に配置する場合について示したが、リアミラー、OCのようにレーザ光を透過させる場合には、ミラーの端部を上記プレートに取り付け、レーザ光が透過できるようにする。
【0037】
図8に、増幅段レーザ(PO)20の共振器に波面調節器80を設置することにより低空間コヒーレンスを実現する実施例を示す。
図8(a)に本発明の発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の側面図を示す。
この発振段レーザ(MO)10のビームは、MOビームステアリングユニット30に配置されている2枚の高反射ミラー30a,30bにより反射されて増幅段レーザ(PO)20の共振器内にシード光として注入される。
増幅段レーザ(PO)20は部分反射コートされたリアミラー25(反射率R=60%〜90%)と放電電極が設置されたPOレーザチャンバ21と、波面調節器80とOC24から構成されている。
シード光が増幅段レーザ(PO)20の共振器内に注入されると同期して、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21内部の放電電極2aに高電圧が印加され放電する。これにより、シード光はリアミラー25とOC24間で共振し、増幅発振する。
【0038】
ここで増幅段レーザ(PO)20の共振器のPOチャンバ21とOC24の間には波面調節器80が設置され、波面調節器80によって、出射ビームの空間コヒーレンス及びビームダイバージェンスを変化させることができる。そして、増幅段レーザ(PO)の共振器長LはMOレーザ光の時間的コヒーレント長lc/2のより長くなるように構成されている。ここで、レーザの時間的コヒーレント長lcは以下の式で表される。
lc=λ2/Δλ
λ:レーザの中心波長、Δλ:MOのスペクトル線幅。
このようにすることにより、増幅段レーザ(PO)20で増幅された各往復回数のビームどうしは干渉することはない。
図8(b)に増幅段レーザ(PO)の上面図を示す。
スペクトルの狭いMOビームは高反射ミラー30bにより反射されて、PO共振器のリアミラー25からウインド22aを介して放電領域に入射し、放電領域を透過し増幅されてウインド22bを介して、波面調節器80を透過し、波面が放電方向に対して垂直な平面内でシリンドリカル状に変化する。そして、OC24を透過して0.5往復の光として出力される。
OC24で反射された光は再び波面調節器80により、H方向の面内で波面が変化しウインド22bを介して、POチャンバ21内の放電領域を透過増幅し、ウインド22aを介してリアミラー25に到達する。この光はリアミラー25で反射し、再びウインド22aを介して、放電領域を透過増幅して、ウインド22bを介して、波面調節器80によりH方向に対して波面が変化してOC24を透過して出力される。反射光はフィードバック光として戻されこれを繰り返す。
【0039】
この例のリアミラー25は部分反射膜がコートされており、60%から90%の範囲であれば正常に動作する。
波面調整器として、凹凸のシリンドリカルレンズを組合せることにより、V方向の波面を変化させずに、H方向の波面を調節することができる。
この例では、増幅段レーザ(PO)のOC24とPOチャンバ21の間に波面調節器80を設置したが、これに限定されることなく、リアミラー25とPOチャンバ21の間に設置してもよい。
また、リアミラー25またはOC24の曲率が自由に変更できるようなデフォーマブルミラーを設置して、波面を調節してもよい。
【0040】
図9に、シリンドリカルの凹凸レンズを組合せた、波面調整器の実施例を示す。
図9(a)及び図9(b)に波面調節器の上面図と側面図をそれぞれ示す。
シリンドリカル凹レンズ80aは光軸方向に移動する1軸の自動ステージ81上に固定され、シリンドリカル凸レンズ80bはプレート84上に固定されている。1軸の自動ステージ81には、パルスモータ85とPZT86が設置され、高速で小さく移動させる時はPZT86でパルス毎に移動させることが可能となる。
大きく移動させる時はパルスモータ85により大きくステージ81を移動させることができる。このような自動ステージ81は、空間コヒーレンスを露光装置が要求する所望の範囲に空間コヒーレンスを調節する場合に必要となる。
【0041】
図10に増幅段レーザ(PO)20の共振器としてリング型共振器を採用し、少なくとも1枚のミラーの姿勢角度を、リング共振器を往復する毎にOC25から出力される光の方向がずれるように設置した場合の第1の実施例を示す。
図10(a)及び(b)は発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の上面図と側面図をそれぞれ示す。
図10(b)に示すように、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21の出力側には、45度入射で部分反射するOC24と45度で高反射する高反射ミラー31aが、その互いの面の角度が90度をなすように配置されている。また、POチャンバ21のリア側には、2枚の45度入射で高反射する高反射ミラー31bと31cが設けられ、その互いの面の角度が90度よりもやや小さな角度βになるように配置されている。
そして、OC24、高反射ミラー31a、31b及び31cのミラー面は電極の放電面に平行に設置されている。すなわち、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の光軸は放電面に対して垂直な面内を含むように配置されている。また、OC24と高反射ミラー31aのミラー面の交点と高反射ミラー31b,及び31cのミラー面の交点が一致するよう配置されている。
【0042】
MOビームは高反射ミラー30cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部に入射角度45度で入射する。このビームの一部はOC24を透過して、高反射ミラー31aに45度で入反射する。そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21内に入射する。このシード光は放電電極2aに対して、略平行な光軸で透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過する。
さらに、このシード光は高反射ミラー31bに45度で入反射し、高反射ミラー31cに45度よりも多少小さな角度で入反射する。45度で入反射する場合はβの角度は90度であり、同図の点線の矢印のように光が進みOCでの注入位置と一致するところに光が戻る。
一方、本発明では、高反射ミラー31cの反射角度を45度よりも多少小さくして放電空間を透過させ増幅し、OC24には、同図に示すように注入位置から移動した位置に入射する。このOC24での透過光は、出力レーザ光として出力(1往復による増幅光)される。
【0043】
一方、OC24での反射光は、1往復目のPASSに対して多少傾いた光軸で再び全反射ミラー31aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射ミラー31b及び31cに入射する。そして、再びレーザチャンバ21に戻され、1往復目のPASSに対して所定の距離だけ平行移動した光軸で、放電空間内を透過し、増幅される。この増幅光は、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24に入射し、反射光はレーザ光として出力され、透過光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が傾き移動して増幅発振する。その結果、OC24から出力されるビームは、往復毎に方向が変化する。
【0044】
この実施例では、リング共振器の姿勢角度をH方向に軸をずらすことにより、各往復回数毎に、OC24から出力される増幅ビームの方向をずらしている。これにより、前記ファブリペロ型共振器の場合と同様にビームダイバージェンスを大きくすることができる。すなわち、増幅段レーザ(PO)20の共振器長LはMOレーザ光の時間的コヒーレント長lc/2のより長くなるように構成されている。このため、OC24を透過した光と反射して再びレーザ共振器を往復して出力された光は互いに干渉性はない。複数の干渉性のない光源の位置をずらし光源の大きさを大きくしたのと同じ効果をもたらす。この結果として増幅段レーザ(PO)20から出力される光の空間コヒーレンスが低下する。
【0045】
以上のように、MOレーザ光を増幅段レーザ(PO)20の前記リング共振器に注入し、その注入された光が、往復毎に注入位置が、増幅段レーザ(PO)20レーザの放電の面に対して略垂直方向(H方向)に移動しながら往復し、往復毎に増幅される光共振器を配置することにより図5の実施例のメリットに加えて以下のメリットがある。
(1)図5の実施例のようなリアミラーの裏面からの注入方式にくらべて、注入効率が高い。
(2)往復毎にリング共振器内部レーザ光のビームが移動しビーム幅が広がるので、POレーザのリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)の光学素子の寿命が長くなる。
【0046】
また、この実施例では、高反射ミラー31cの角度を放電方向に対して垂直な面内で反射角度を45度より大きな角度で反射させることによって、往復毎のビームの位置を移動させたが、この実施例に限定されることなく、リング共振器を構成するミラーの中で少なくとも1枚のミラーの入反射角度を他のミラーの入反射角(ここでは45度)からずらして、往復毎のOC上でのビーム位置が移動させ、OC24から出射するビームが往復毎にH方向にずれるようにすればよい。
さらに、この実施例では、平面ミラーで構成されたリング共振器の例を示したが、この例に限定されることなく、安定共振器を構成した曲率のついたミラーで構成されたリング共振器においても同様にOCから出力されるレーザ光の方向を共振器の往復毎にずらすように、曲率のついたミラーの姿勢角度を放電方向の垂直な平面内でずらしても同様な効果を得ることができる。
【0047】
図11に、増幅段レーザ(PO)20の共振器としてリング型共振器を採用し、少なくとも1枚のミラーの姿勢角度を、リング共振器を往復する毎にOC24から出力される光の方向がずれるように設置した場合の第2の実施例を示す。
図10の実施例との違いは以下の点である。
(1)リング共振器として往路と復路両方で放電空間を通過して増幅するタイプのリング共振器を採用している。
(2)OC24と高反射ミラー31aの面の交点とレーザの光軸中心(放電方向に直交し、放電領域の中心を通る線)との距離をAとし高反射ミラー31bと31cの面の交点とレーザの光軸中心の距離をBとして、AとBの大きさが略等しくなるように配置されている。
この実施例でも、OC24及び高反射ミラー31a、31b及び31cの面は、放電方向の面に対して平行に設置されリング共振器の光は放電方向の面に対して垂直な面内を進む。
【0048】
以下この共振器の動作を説明する。
MOビームは高反射ミラー30cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部にβ1=45度で入射する。45度の部分反射(PR)膜をコートしたOC24を透過し高反射ミラー31aに入射角度α1(45度よりも数mrad小さな角度)で入反射し、ウインド22aを透過し、増幅段レーザ(PO)20のレーザチャンバ21の放電空間に傾いて入射され、放電電極2aにシード光に同期して、電圧が印加され放電する。
そして放電空間を透過したシード光は増幅され、ウインド22bを透過し高反射ミラー31cに入射角度α2(=α1)で入反射する。
【0049】
そして、高反射ミラー31bに入射角度β2で45度よりも多少小さな角度で入反射し、放電電極の長手方向と平行な光軸でウインド22bを透過し、再び放電している放電空間に導かれ、増幅される。そして、ビームは注入部から放電方向の面に対して垂直な面内で移動し、OC24に入射し一部透過して、レーザの出力光(1往復光)となり、一部は反射され再び高反射ミラー31aに入射し、同様に放電空間を1往復目のPASSに対してずれた光軸で透過し、高反射ミラー31b及び31cにより再び放電空間を1往復目のPASSに対してずれた光軸で透過し、1往復目に対して移動してビームは再びOC24のPR部(部分反射領域)に入射し、透過光はレーザ光として出力され、反射光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路がずれて移動して増幅発振する。 その結果、OC24から出力されるビームは、往復毎に方向が変化する。
【0050】
この実施例では、リング共振器の姿勢角度をH方向に軸をずらすことにより、各往復回数毎に、OC24から出力される増幅ビームの方向がずれる。これにより、ファブリペロ型共振器の場合と同様にビームダイバージェンスを大きくすることができる。すなわち、増幅段レーザ(PO)20の共振器長LはMOレーザ光の時間的コヒーレント長lc/2のより長くなるように構成されている。このため、OC24を透過した光と反射して再びレーザ共振器を往復して出力された光は互いに干渉性はない。複数の干渉性のない光源の位置をずらし光源の大きさを大きくしたのと同じ効果をもたらす。この結果として増幅段レーザ(PO)20から出力される光の空間コヒーレンスが低下する。
以上のように、MOレーザ光を増幅段レーザ(PO)20の前記リング共振器に注入し、その注入された光が往復毎に注入位置が増幅段レーザ(PO)20の放電の面に対して略垂直方向(H方向)に移動しながら往復毎に増幅する光共振器を配置することにより図10の実施例のメリットに加えて、往路と復路で増幅するため、増幅効率が高くなるというメリットがある。
【0051】
また、この実施例では、高反射ミラー31cの角度を放電方向に対して垂直な面内で反射角度を45度より小さな角度で反射させることによって、往復毎のビームの位置を移動させたが、この実施例に限定されることなく、リング共振器を構成するミラーの中で少なくとも1枚のミラーの入反射角度を他のミラーの入反射角(ここでは45度)からずらして、往復毎のOC上でのビーム位置が移動させ、OC2から出射するビームが往復毎にH方向にずれるようにすればよい。
さらに、この実施例では、平面ミラーで構成されたリング共振器の例を示したが、この例に限定されることなく、安定共振器を構成した曲率のついたミラーで構成されたリング共振器においても同様にOCから出力されるレーザ光の方向を共振器の往復毎にずらすように、曲率のついたミラーの姿勢角度を放電方向の垂直な平面内でずらしても同様な効果を得ることができる。
【0052】
図12に、増幅段レーザ(PO)20の共振器としてリング型共振器を採用し、少なくとも1枚のミラーの曲率を変化させてリング共振器の光の波面を調整できるようにした場合の実施例を示す。
以下この共振器の動作を説明する。
MOビームは高反射ミラー30cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部に45度で入射する。45度入射で部分反射する部分反射(PR)膜をコートしたOC24を透過し高反射ミラー31aに入射角度α(45度よりも数mrad小さな角度)で入反射し、ウインド22aを透過し、増幅段レーザ(PO)20のレーザチャンバ21の放電空間に傾いて入射され、放電電極2aにシード光に同期して、電圧が印加され放電する。 そして放電空間を透過したシード光は増幅され、ウインド22bを透過し高反射ミラー31cに入射角度αで入反射する。そして、高反射ミラー31bに入射角度45度で入反射する。
【0053】
この高反射ミラー31bの裏面には複数の伸縮自在のアクチュエータ32が取り付けられており。これらのアクチュエータ32を制御することにより、任意の曲率のミラー面を形成することができる、このミラーをデフォーマブルミラーと呼ぶ。このデフォーマブルミラーにより波面が放電方向に対して垂直な平面内で変化させることができる。このデフォーマブルミラーを反射した光はウインド22bを介して、再び放電している放電空間に導かれ、増幅される。そして、ビームはOC24に入射し一部透過して、レーザの出力光(1往復光)となり、一部は反射され、フィードバック光としてリング共振器内に戻される。
この実施例では、以上のように、リング共振器のデフォーマブルミラーによりを放電方向に対して垂直な平面内で波面を調節することにより、出射ビームの空間コヒーレンス及びビームダイバージェンスが変化する。
【0054】
以上のように、MOレーザ光を増幅段レーザ(PO)20の前記リング共振器に注入し、リング共振器を構成するミラーを波面調節可能なデフォーマブルミラーとすることにより、図8の実施例のメリットに加えて以下のメリットがある。
(1)OC24から注入するため注入効率が高くなる。
(2)往路と複路で増幅するため、増幅効率が高くなる。
(3)反射型の波面調整器であるため、リング共振器に余分な素子が必要なく、効率が高い。
また、この実施例では、高反射ミラー31bをデフォーマブルミラーとしたが、これに限定されることなく、リング共振器を構成する高反射ミラーのどれかをデフォーマブルミラーとすればよい。
【0055】
図13に、増幅段レーザ(PO)の共振器としてリング型共振器を採用し、リング共振器の光路中に波面調節器を設置した実施例を示す。
以下この共振器の動作を説明する。
MOビームは高反射ミラー30cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部に45度で入射する。45度入射で部分反射する部分反射(PR)膜をコートしたOC24を透過し高反射ミラー31aに入射角度α(45度よりも数mrad小さな角度)で入反射し、ウインド22aを透過し、増幅段レーザ(PO)20のレーザチャンバ21の放電空間に傾いて入射され、放電電極2aにシード光に同期して、電圧が印加され放電する。 そして、放電空間を透過したシード光は増幅され、ウインド22bを透過し高反射ミラー31cに入射角度αで入反射する。そして、高反射ミラー31bに入射角度45度で入反射する。
【0056】
この反射光はシリンドリカルの凹凸レンズで構成された波面調節器80に入射する。この波面調節器80には、シリンドリカルレンズが光軸方向に移動できるようにアクチュエータが取り付けられており。これらのアクチュエータを制御することにより、任意の曲率の波面を形成することができる。
この波面調節器80により波面が放電方向に対して垂直な平面内で変化させることができる。この波面調節器80を透過した光はウインド22bを介して、再び放電している放電空間に導かれ増幅される。そして、ビームはOC24に入射し一部透過して、レーザの出力光(1往復光)となり、一部は反射され、フィードバック光としてリング共振器内に戻される。
【0057】
この実施例では、リング共振器中に設けた波面調節器80により放電方向に対して垂直な平面内で波面を調節し、出射ビームの空間コヒーレンス及びビームダイバージェンスを変化させる。
以上のように、MOレーザ光を増幅段レーザ(PO)20の前記リング共振器に注入し、リング共振器の光路中に波面調節可能な波面調節器80を設けることにより、図8の実施例のメリットに加えて以下のメリットがある。
(1)OC24から注入するため注入効率が高くなる。
(2)往路と複路で増幅するため、増幅効率が高くなる。
また、この実施例では、波面調節器80を高反射ミラー31bとレーザチャンバ21の光路間に設置したが、これに限定されることなく、リング共振器の光路中であればどこに設置してもよい。
【0058】
以上では、共振器のミラーの姿勢角度を光軸に対してずらしたり、波面調節器を用いて低空間コヒーレンス化を図る場合について説明したが、前述したように、MOビームステアリングユニット30のミラー、POビームステアリングユニット40のミラーの角度を制御することにより、出力レーザ光の低コヒーレンス化を図ることもできる。
以下、これらのミラーの角度を振ることにより低コヒーレンス化を図る場合の実施例について説明する。
【0059】
図14に、POのビームステアリングユニットによって、ビームの角度を振るためのアクチュエータの構成例を示す。
図14(a)は、POビームステアリングユニット内のミラーの姿勢角度を変えてビームを振る例を示す図である。
増幅段レーザ(PO)20から出力されたレーザビームを高反射ミラー41aにより反射させ、さらに高反射ミラー41bによりOPS50に導く場合において、同図に示すように高反射ミラー41bのミラーホルダ44としてジンバル機構付きのホルダを使用し、パルス毎にミラーの姿勢角度を変化させる。ミラーホルダの機構44としては、図7に示したものと同じものでよい。
ビームを振る方向としては、レーザの放電に対して垂直な方向(H方向)に振るのが好ましいが、前述したように共振器のミラーの姿勢角度をずらしたり、波面調節器を用いて、波面を変化させる場合には、POビームステアリングユニット内のミラーにより、共振器から出力されるレーザビームのずれる方向、あるいは波面を変化させる方向に対して直交する方向に、ビームを振るのが望ましい。
【0060】
図14(b)は、光路中にウエッジ基板を配置し、ウエッジ基板への入射角度を変化させることにより、ビームの出射角度を振る例を示す図である。
増幅段レーザ(PO)20から出力されたレーザビームを高反射ミラー41aにより反射させ、ウエッジ基板45aに入射屈折させてビームの方向を変化させ、さらに高反射ミラー41bによりOPS50に導くシステムとなっている。ここでウエッジ基板45aはこの基板への入射角度を変化させられるように自動回転ステージ45bに固定されている。
自動回転ステージ45bはパルスモータ42aの移動ピンの先にはPZT42bが設置されており、回転ステージ45bに固定されているプレート42dと当接されこのプレート42dの背面側にはプランジャネジ42cのピンが当接されている。粗動回転を行うときはパルスモータのピンが移動することにより回転ステージ45bを回転制御する。高速で、微調回転させる時は、PZT42bにより駆動させることにより、回転制御が可能となっている。
図14(c)はウエッジ基板47aを入射光軸中心に回転させることによりレーザのビームの方向を変更する場合の構成例を示す図であり、(c−1)は(c−2)をAAから見た図である。
ウエッジ基板47aは透過型の回転ステージ47bに設置されており、歯車46bをパルスモータ42aで回転させることにより、歯車46aが回転する。歯車46aの上にはウエッジ基板47aが固定されており、レーザビームの方向が円周上を回転するような形でビームを振ることができる。例えば、露光装置の露光パルス数がNパルスであれば、Nパルスの間にウエッジ基板47aが1回転するように回転スピードを制御することにより、全方向での低コヒーレンス化が可能となる。
なお、上記(b)(c)に示す構成の場合にも、共振器から出力されるレーザビームのずれる方向、あるいは波面を変化させる方向に対して直交する方向に、ビームを振るのが望ましい。
【0061】
図15に、MOのビームステアリングユニットによって、ビームの角度を振るためのアクチュエータの構成例を示す。
ビームステアリングユニットの構成は図14の実施例と機能的には同じである。
図15(a)は、MOビームステアリングユニット内のミラーの姿勢角度を振る例である。
発振段レーザ(MO)10から出力されたレーザビームを高反射ミラー31aにより反射させ、さらに高反射ミラー31bにより増幅段レーザ(PO)20に導く場合において、高反射ミラー31bのミラーホルダ34としてジンバル機構付きのホルダを使用し、パルス毎にミラー31bの姿勢角度を変化させる。ミラーホルダの機構34としては、図7に示したものと同じものでよい。
ビームを振る方向としては、レーザの放電に対して垂直な方向(H方向)に振るのが好ましいが、前述したように共振器のミラーの姿勢角度をずらしたり、波面調節器を用いて、波面を変化させる場合には、共振器から出力されるレーザビームのずれる方向、あるいは波面を変化させる方向に対して直交する方向に、ビームを振るのが望ましい。
【0062】
図15(b)は、光路中にウエッジ基板35aを配置し、ウエッジ基板35aへの入射角度を変化させることにより、ビームの出射角度を振る例である。
発振段レーザ(MO)10から出力されたレーザビームを高反射ミラー31aにより反射させ、ウエッジ基板35aに入射屈折させてビームの方向を変化させ、さらに高反射ミラー31bにより増幅段レーザ(PO)20に導く構成となっている。ここでウエッジ基板35aはこの基板への入射角度を変化させられるように自動回転ステージ35bに固定されている。回転ステージ35bはパルスモータ32aの移動ピンの先にはPZT32bが設置されており、回転ステージ35bに固定されているプレート32dと当接されこのプレート32dの背面側にはプランジャネジ32cのピンが当接されている。粗動回転を行うときはパルスモータのピンが移動することにより回転ステージ35bを回転制御する。高速で、微調回転させる時は、PZT32bにより駆動させることにより、回転制御可能となっている。
【0063】
図15(c)はウエッジ基板を入射光軸中心に回転させることによりレーザのビームの方向を変更する例である。
ウエッジ基板37aは透過型の回転ステージ37bに設置されており、歯車36bをパルスモータ32aで回転させることにより、歯車36aが回転する。歯車36aの上にはウエッジ基板37aが固定されており、レーザビームの方向が円周上を回転するような形でビームを振ることができる。例えば、露光装置の露光パルス数がNパルスであれば、Nパルスの間にウエッジ基板37aが1回転するように回転スピードを制御することにより、全方向での低コヒーレンス化が可能となる。
【0064】
次に、上記実施例に示した低コヒーレンス化の制御例について説明する。
まず、空間コヒーレンスの指標値または空間コヒーレンスを検出せずに、パルス毎にレーザビームの角度を所定のプログラムにしたがって変化させる場合について説明する。
図16に、前記アクチュエータを駆動して、低コヒーレンスを実現するフローチャートのメインフローを示す。
低空間コヒーレンス化の制御のスタートはまず、ステップ101でレーザが発振したかどうかを検出する。この場合、実際の発光したことを検出しなくても、露光装置からの発光のトリガ信号を受信して、レーザ発振したと判断してもよい。
レーザの発光を検出すると、次のステップ102に移行し、空間コヒーレンスを低くするためのアクチュエータを駆動するサブルーチンにはいる。
このサブルーチンで空間コヒーレンスを低下させるための、例えば共振器のミラーの姿勢角度等を駆動させる。
【0065】
図17(a)は、空間コヒーレンスを低く安定化するため、共振器のミラーのアクチュエータを駆動するサブルーチンを示す。
このサブルーチンでは、増幅段レーザ(PO)20からの出射ビームの方向が往復毎に、出射ビームの角度がずれるように、図5及び図6に示した実施例のように、PO共振器のミラー等姿勢角度を固定制御する。または、図15及び16の実施例のように、POの共振器内の光の波面を制御固定してもよい。
図17(b)は、前記図5の実施例において、集光位置でのビームの形を示す。増幅段レーザ(PO)20からの出射ビームの集光像が0.5往復(A)に対して、1.5往復光(B)、2.5往復光(C)、3.5往復(D)でH方向に出射ビームの集光像がずれ、この場合のH方向のビームダイバージェンスは約4倍となり、H方向の空間コヒーレンスは低下する。
この実施例のメリットはパルス毎に例えばミラーの姿勢角度を変化させなくても、上記のようにある所望の固定値に固定しておくだけで、空間コヒーレンスが低くできるメリットがある。だだし、露光装置へのビームの許容角度の範囲内であれば、上記ミラー等の姿勢角度を変化させることにより、さらに、空間コヒーレンスを低くすることが可能となる。
【0066】
図18(a)に、低コヒーレンスを実現するため、PO及びMOビームステアリングユニットのミラー等を駆動するアクチュエータの駆動サブルーチンを示す。
このサブルーチンではまずステップ201でビーム振りのプログラムパターンを呼び出す。
そして、ステップ202に移行し、ステップ201で呼び出したプログラムパターンとなるようにMOまたはPOのビームステアリングユニットから出射するレーザビームの方向を変化させる。そして、メインルーチンに戻る。
図18(b)にビームの角度振りのプログラムパターンの例を示す。
このビームの角度振りのパターンを、ビームのポインティング(ビームの方向の指標)の点で表し、点が1パルスを表している。
ビームのポインティングを計測する場合は、前記図2に示したように、サンプル光を集光レンズで集光し、集光レンズの焦点面にCCDカメラを配置することによって計測できる。CCDカメラに計測された集光プロファイルの重心を計算することにより、ビームのポインティングすなわち方向を計測できる。
【0067】
この図の点の位置は例えば、パルス毎の集光ビームの重心位置を表しており、V方向はレーザの放電方向、H方向は放電に対して垂直な方向である。ここでは、H方向にビームを振る場合を示しているが、前記したように、共振器から出力されるレーザビームのずれる方向、あるいは波面を変化させる方向に対して直交する方向に変動させのが望ましい。
パルス毎にビームの出射角度を、図に示すような点に集光するように、ミラーの角度やウエッジ基板の角度を変化させる。例えば、露光装置での露光積算パルス数を24パルスとすると、ビーム振りの周期は24パルスとし、25パルス目は開始点に戻るようにする。これにより、効率的な空間コヒーレンス化を行うことができる。
ここで、ポインティングの角度は、露光装置のビーム許容角度内で変化させる。ポインティングの変化の周期を露光装置の露光積算パルス数と一致させればよい。
【0068】
以下に具体例を示す。
(i)はH方向に開始点から終点まで直線的に所定の間隔でビームポインティングを変化させ、25パルス発振後に最初のポインティングに戻すパターンである。
(ii)はビームポインティングを結ぶ線が長方形の形になるように、開始点から終点まで所定の間隔でビームポインティングを変化させ、25パルス発振後に開始点ポインティングに戻すパターンである。
(iii)はビームポインティングを結ぶ線が円の形になるように、所定の間隔でビームポインティングを変化させ、25パルス発振後とに最初のポインティングに戻すパターンである。このようなパターンを形成する例として図14(c)及び図15の(c)の実施例のようにウエッジ基板を光軸を回転軸として回転させることにより実施できる。
(iv)はビームポインティングを結ぶ線が楕円の形になるように、所定の間隔でビームポインティングを変化させ、25パルス発振後とに最初のポインティングに戻すパターンである。
上記(ii),(iii),(iv)の実施例では、開始点から終点の距離が小さいために、角度振りがスムーズに行うことができる点がメリットである。
ビームの角度振りのプログラムパターンはパルス毎のポインティングを結ぶ線が一筆書きになっていれば、どの露光装置のどの露光面においても略同じ、低空間コヒーレンスビームで露光できる。
【0069】
次に前記コヒーレンスモニタを用いて空間コヒーレンスをフィードバック制御する場合について説明する。
図19に空間コヒーレンスをフィードバック制御する場合のメインフローを示す。
低空間コヒーレンス化の制御のスタートはまず、ステップ400の調整発振サブルーチンに入る。このルーチンでは、レーザの出口のシャッタ65(図1参照)を閉じ、空間コヒーレンスが露光装置の要求仕様に対してOKとなるまで、調整発振し空間コヒーレンスを制御し、OKとなった所で露光準備OKの信号を露光装置に送信し、出射口のシャッタ65を開ける。
そして、実露光モードに入りステップ401でレーザが発振したかどうかを検出する。発振を検出したら、ステップ402に移行し、出力レーザ光の空間コヒーレンスと相関性のあるパラメータを検出する。
具体的には、ビームの集光プロファイルやヤングの干渉計や、シェアリング干渉計で生成された干渉縞のプロファイルである。この検出プロファイルはステップ403に移行し、空間コヒーレンスの移動積算値(または積算値)で評価するサブルーチンにはいる。
【0070】
空間コヒーレンスの移動積算値または積算値で評価するサブルーチンでは、集光プロファイルまたは干渉縞のプロファイルを積算し、空間コヒーレンスを評価する。
そして、ステップ404では出力レーザ光の空間コヒーレンスの評価値に基づいて、例えば共振器のミラー等の姿勢角度を駆動するアクチュエータを制御するサブルーチンが実行され、再びスタートに戻る。
ここで、移動積算パルス数や積算値を測定するパルス数は、露光装置で実際にレジストが露光される積算パルス数と同じにすることによって、空間コヒーレンスはどのウエハ上の任意の位置でのスペックルの発生を均一性よく抑制することができる。
【0071】
図20に、出力レーザ光の空間コヒーレンスと相関性のあるビームパラメータを検出するサブルーチン例を示す。
図20(a)は、図2に示したように、出力ビームを集光レンズで集光して、集光レンズの焦点面にCCDを配置して、この焦点面での集光プロファイルを計測した場合の実施例を示す。
まず、ステップ411において、集光プロファイルPnを検出する。具体的にはCCDの各ピクセルにおける光強度を検出する。
次に、ステップ412に移行し、集光プロファイルPnを記憶する。具体的にはCCDの各ピクセルにおける光強度のデータを記憶する。
図20(b)には、図3及び図4に示したように、ヤングの干渉計またはシェアリング干渉計により発生した干渉縞をCCDにより検出した場合の実施例を示す。
まず、ステップ421において、干渉縞のパターンFnを検出する。具体的にはCCDの各ピクセルにおける光強度を検出する。
次に、ステップ412に移行し、干渉縞のパターンFnを記憶する。具体的にはCCDの各ピクセルにおける光強度のデータを記憶する。そして、メインルーチンに戻る。
ここで、nはパルスの順番を示している。
【0072】
図21に、出力レーザ光の空間コヒーレンスの移動積算値で評価するサブルーチンの第1の実施例を示す。
この実施例は、空間コヒーレンスの検出器として出力レーザ光の集光レンズの焦点面でのプロファイルを検出する場合を示す。以下の実施例は移動積算値を評価している例である。サンプル数はk個とする。
まず、ステップ431においては、前回までの集光プロファイルの移動積算値SPn-1と移動積算パルス数k前の集光プロファイルPn-kと今回の集光プロファイルPnを記憶装置から呼び出す。
次のステップ432では、以下の式により、今回の積算サンプル数kの集光プロファイルの移動積算値SPnを計算する。
SPn=SPn-1−Pn-k+Pn
【0073】
次に、ステップ433に移行し、集光プロファイルの移動積算値SPnから、前記図2で説明した(1)式(D=BD/f)により、ビームダイバージェンス幅Dnを計算する。
そして、目標のビームダイバージェンス値Dtと実際のビームダイバージェンスDnとの差ΔDを計算する。
次のステップ435では、ビームダイバージェンスの目標値との差ΔDが、露光装置の要求仕様に対して、許容範囲に入っているか判断する。許容範囲に入っていれば、メインルーチンに戻る。一方、許容範囲に入っていなければ、ステップ436に移行し、空間コヒーレンスまたはビームの出射角度異常を露光装置に通知し、調整発振サブルーチンへ飛ぶ。
【0074】
図22に、出力レーザ光の空間コヒーレンスの移動積算値で評価するサブルーチンの第2の実施例を示す。
この実施例は空間コヒーレンスの検出器としてヤングの干渉計またはシェアリング干渉計での干渉縞のプロファイルを検出する場合を示す。以下の実施例は移動積算値を評価している例である。サンプル数はk個とする。
まず、ステップ441においては、前回までの干渉縞プロファイルの移動積算値SFn-1と移動積算パルス数k前の干渉縞プロファイルFn-kと今回の干渉縞プロファイルFnを記憶装置から呼び出す。
次のステップ442では、以下の式により今回の積算サンプル数kの集光プロファイルの移動積算値SFnを計算する。
SFn=SFn-1−Fn-1+Fn
【0075】
次に、ステップ443に移行し、干渉縞プロファイルの移動積算値SFnからコントラストCn(可視度:ビジビリティ)を、図3で説明した(4)式により計算する。そして、ステップ444で目標のコントラスト値Ctと実際のコントラストCnとの差ΔCを計算する。
次のステップ445では、コントラストの目標値Ctとの差ΔCが露光装置の要求仕様に対して、許容範囲に入っているか判断する。許容範囲に入っていれば、メインルーチンに戻る。一方、許容範囲に入っていなければ、ステップ446に移行し、空間コヒーレンスを露光装置に通知し、調整発振サブルーチンへ飛ぶ。
【0076】
図23に、出力レーザ光の空間コヒーレンスの評価値に基づいてアクチュエータを駆動するサブルーチンの実施例を示す。
図23(a)は空間コヒーレンスの検出器として、出力レーザ光のビームダイバージェンスを評価制御する場合の例を示す。
ステップ451ではビームダイバージェンスの目標値との差ΔDに基づいて、空間コヒーレンスを目標値に安定化するためのアクチュエータを駆動する。
このアクチュエータの具体例としては増幅段レーザ(PO)20または発振段レーザ(MO)10のビームステアリングユニットからのビームの出射角度を制御するアクチュエータに制御値を送信する。また、出力されるビームダイバージェンスが目標の値となるように共振器のミラーの姿勢角度を制御する。
【0077】
図23(b)は出力レーザ光の干渉縞のコントラストを評価制御する場合の例を示す。 ステップ452では干渉縞のコントラストの目標値との差ΔCに基づいて、空間コヒーレンスを目標値に安定化するためのアクチュエータを駆動する。このアクチュエータの具体例としては増幅段レーザ(PO)20または発振段レーザ(MO)10のビームステアリングユニットからのビームの出射角度を制御するアクチュエータに制御値を送信する。また、出力されるビームダイバージェンスが目標の値となるように共振器のミラーの姿勢角度を制御する。
【0078】
図24に、本発明の調整発振するためのサブルーチン例を示す。
調整発振サブルーチンでは、レーザの出口のシャッタ65(図1参照)を閉じ、空間コヒーレンスが露光装置の要求仕様に対してOKとなるまで、調整発振し空間コヒーレンスを制御し、OKとなった所で露光準備OKの信号を露光装置に送信し、出射口のシャッタ65を開ける。
以下フローチャートにより説明する。
まず、ステップ461において、レーザから露光装置にレーザビームが伝送されないように、レーザの出射口65を閉じ、露光装置に露光の準備NG信号を送る。
そして、メインルーチンと同様に、ステップ462でレーザが発振したかどうかを検出する。発振を検出したら、ステップ463に移行し、出力レーザ光の空間コヒーレンスと相関性のあるパラメータを検出する。具体的には、ビームの集光プロファイルやヤングの干渉計や、シェアリング干渉計で生成された干渉縞のプロファイルである。
【0079】
次にステップ464に移行し、この検出プロファイルに基づき、空間コヒーレンスの移動積算値または積算値で評価するサブルーチンにはいる。
このサブルーチンでは、集光プロファイルまたは干渉縞のプロファイルを積算し、空間コヒーレンスを評価する。
そして、ステップ465では出力レーザ光の空間コヒーレンスの評価値に基づいて、例えばミラー等の姿勢角度を駆動するアクチュエータを制御するサブルーチンが実行される。
そして、ステップ466で空間コヒーレンスの評価値が露光装置の要求仕様の許容範囲に入っているか判断する。許容範囲に入っていなければ、ステップ462に移行しこのルーチンを繰り返す。
そして、許容範囲に入れば、ステップ467に移行し出射光のシャッタ65を開け、露光装置に露光準備OK信号を送信し、メインルーチンに戻る。
【符号の説明】
【0080】
10 発振段レーザ(MO)
11 チャンバ
20 増幅段レーザ(PO)
21 チャンバ
30 MOビームステアリングユニット
40 POビームステアリングユニット
50 光パルスストレッチャ(OPS)
60 コヒーレンスモニタ
65 シャッタ
66 レーザコヒーレンスコントローラ
67 PO共振器光軸コントローラ
80 波面調節器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力するように構成された狭帯域発振段レーザと、
レーザガスが封入されたチャンバと、該チャンバ内に設けられた一対の放電電極と、前記放電電極間の放電空間を挟むように配置された共振器と、該共振器内に配置されてレーザ光の波面を調節する波面調節機構とを含み、前記狭帯域発振段レーザからのレーザ光を前記共振器に注入し、前記放電電極に高電圧パルスを印加して放電させて、前記レーザ光を増幅するように構成された増幅段レーザと、
前記波面調節機構を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする露光用放電励起レーザ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記一対の放電電極の放電方向に対して垂直な面内でレーザ光の波面が変化するように前記波面調節機構を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の露光用放電励起レーザ装置。
【請求項3】
前記波面調節機構は、凹凸の一対のシリンドリカルレンズおよび曲率が変更可能なミラーのうち少なくとも一方と、前記凹シリンドリカルレンズを移動、もしくは、前記ミラーの曲率を変化させる波面制御手段とを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の露光用放電励起レーザ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、少なくとも前記狭帯域発振段レーザがレーザ光を出力している間、前記波面制御手段を制御して前記凹シリンドリカルレンズを移動、もしくは、前記ミラーの曲率を変化させる
ことを特徴とする請求項3に記載の露光用放電励起レーザ装置。
【請求項5】
前記増幅段レーザに注入される前記レーザ光の注入角度を変動させる注入角変動手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記波面を変化させる方向に対して直交する方向に前記注入角度が変動するように前記注入角変動手段を制御する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の露光用放電励起レーザ装置。
【請求項6】
前記増幅段レーザから出力されるレーザ光の出射角度を変動させる出射角変動手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記波面を変化させる方向に対して直交する方向に前記出射角度が変動するように前記出射角変動手段を制御する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の露光用放電励起レーザ装置。
【請求項7】
前記増幅段レーザから出力される出力レーザ光の空間コヒーレンスまたは空間コヒーレンスと相関するパラメータを計測する計測手段をさらに備え、
前記制御手段は、出力レーザ光の空間コヒーレンスまたは空間コヒーレンスが予め定められた上限及び下限の範囲内となるように、前記計測手段の計測結果に基づいて前記波面調節機構を制御する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の露光用放電励起レーザ装置。
【請求項8】
前記計測手段は、ビームダイバージェンスを計測する装置である
ことを特徴とする請求項7に記載の露光用放電励起レーザ装置。
【請求項9】
前記計測手段は、ヤングの干渉計またはシェアリング干渉計である
ことを特徴とする請求項7に記載の露光用放電励起レーザ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2012−151495(P2012−151495A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−68169(P2012−68169)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2007−120921(P2007−120921)の分割
【原出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】