露光装置及び画像形成装置
【課題】マルチビーム方式のレーザについて、APCにより得られる閾値電流の誤差を適切に補正して当該レーザを駆動する技術を提供する。
【解決手段】本発明の露光装置は、像担持体にレーザビームを照射する複数のレーザ光源に供給すべき閾値電流とスイッチング電流とをAPCにより決定し、決定した閾値電流を、当該複数のレーザの発光特性から予め定められた補正値で補正する。具体的には、複数のレーザ光源のそれぞれ1つのレーザ光源について、当該1つのレーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流と、当該1つのレーザ光源以外の他のレーザ光源にはバイアス電流を供給している状態で当該1つのレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流との差分を、補正値として使用する。さらに、補正後の閾値電流とスイッチング電流とに基づいて複数のレーザ光源から出力されるレーザビームで像担持体の表面を露光する。
【解決手段】本発明の露光装置は、像担持体にレーザビームを照射する複数のレーザ光源に供給すべき閾値電流とスイッチング電流とをAPCにより決定し、決定した閾値電流を、当該複数のレーザの発光特性から予め定められた補正値で補正する。具体的には、複数のレーザ光源のそれぞれ1つのレーザ光源について、当該1つのレーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流と、当該1つのレーザ光源以外の他のレーザ光源にはバイアス電流を供給している状態で当該1つのレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流との差分を、補正値として使用する。さらに、補正後の閾値電流とスイッチング電流とに基づいて複数のレーザ光源から出力されるレーザビームで像担持体の表面を露光する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、及び当該露光装置を使用する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、一般に、レーザ光源が発光するレーザビームで感光体等の像担持体の表面を露光及び走査することによって、画像情報に基づく静電潜像を当該像担持体の表面に形成する。画像形成装置で用いる露光方式としては、例えば、帯電した感光体の表面において、画像情報に基づいて画像を形成しない部分(非画像領域)を露光して、画像を形成する部分(画像領域)を露光しないバックグラウンド露光方式(BAE)が知られている。
【0003】
BAE方式の画像形成装置において、静電潜像を現像剤(トナー等)により現像して得られる画像に濃度むらを発生させずに、画質を維持するためには、感光体の静電潜像の表面電位(暗部電位及び明部電位)を均一にすることが必要となる。感光体の表面電位を均一にするための技術としては、特許文献1の技術が提案されている。特許文献1では、感光体の表面における感度の補正値に応じて、光源に通電されるバイアス電流及びスイッチング電流を制御することによって、光源から発光するレーザビームの光量を制御する技術が提案されている。特許文献1の光量制御では、所定の目標光量及びその1/4の光量でレーザをそれぞれ発光させるための駆動電流を、自動光量制御(APC)により決定し、決定した駆動電流に基づいて発光開始電流(閾値電流)値を算出する。さらに、算出した発光開始電流値に、感度補正値に応じた電流値を加えることで、バイアス電流を制御している。
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、レーザの発光開始電流を正確に算出できれば、感光体の表面の電位むらが解消されるように、レーザビームの光量制御を行うことが可能であろう。しかしながら、感光体を露光及び走査するための光源として、マルチビームレーザを用いた場合には、以下で説明するように、感光体の表面電位むらを十分に低減できなくなる可能性がある。
【0005】
ここで、図6Aは、レーザチップ内に光源として配置された単一のレーザを発光させた場合の駆動電流Iと、当該レーザチップ内に配置されたフォトダイオード(PD)で検出される光量Lとの関係を表す、レーザ発光特性の一例を示す図である。同図に示すように、当該レーザは、駆動電流Iが0から閾値電流Ith未満の領域においてはレーザ発振せずに微小に発光する一方で、駆動電流Iが閾値電流Ith以上の領域においてはレーザ発振によりレーザ発光してレーザビームを出力する。この閾値電流Ithは、光量Po及びその1/4の光量を目標光量としてAPCを行って得られる駆動電流IH及びILとから、レーザ発光領域の特性が同図に示すように直線の特性であることを利用して算出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−275901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、レーザチップ内に光源として複数のレーザを配置したマルチビームレーザについてAPCを行う場合には、当該複数のレーザのそれぞれについてAPCを行う必要がある。図6Bは、マルチビームレーザにおいて、レーザチップ内に配置された複数のレーザのうち、何れか1つのレーザを対象としてAPCを行うことによって得られる発光特性の一例(605)を示す図である。なお、601は、APCの対象となっているレーザの実際の発光特性の例、602〜604は、APCの対象となっているレーザ以外の3つのレーザの各々がレーザ発振せずに発光している場合の発光特性の例を示している。
【0008】
マルチビームレーザにおいて、対象とするレーザについてAPCを適切に行うことができた場合には、601に示す発光特性を得ることができるであろう。しかし、一般に、マルチビームレーザにおいては、複数のレーザのうちの何れか1つを対象としてAPCを実行している間も、それ以外の他のレーザには、閾値電流に満たないバイアス電流が供給されている。このバイアス電流は、レーザの発光応答性を高めるために供給される電流である。この場合、APCの対象となるレーザ以外の他のレーザは、そのバイアス電流によって、レーザ発振はしないものの微小に発光している状態(バイアス発光状態)にある。このような状態で、対象とする1つのレーザについて、例えば、光量Poの1/4を目標光量としてAPCを行うと、PDでは、対象とするレーザの光量に、他のレーザの光量が重畳された光量が検出される。このため、PDの検出結果に基づき得られる駆動電流は、図6Bに示すように、本来のILからIL'に変化し得る。その結果、算出される閾値電流が、本来のIthよりもΔだけ少ないIth'(<Ith)となり、誤差が生じてしまう。
【0009】
このように、算出された閾値電流に誤差が生じた場合、特許文献1に記載の技術を用いて駆動電流を補正して、感光体の電位むらを解消しようとしても、電位むらを十分に低減できなくなる問題が起こり得る。ここで、図6Cは、感光体の感度補正値に基づく駆動電流に対する補正の様子を一例として示しており、611は感光体の電位むらを解消するために補正すべき駆動電流の量を示している。この場合に、同図に示すように、算出された閾値電流が本来の値IthよりもΔだけ小さいIth'であると、612に示す量しか駆動電流が補正されず、613に示す駆動電流の量に対応する電位むらが感光体に残留してしまう。従って、マルチビームレーザについてAPCにより求めた閾値電流に誤差が生じると、感光体を露光して画像を形成する際に感光体の電位むらを十分に低減することが困難となる。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、マルチビーム方式のレーザについて、APCにより得られる閾値電流の誤差を適切に補正して当該レーザを駆動する技術を提供することを目的としている。さらに、レーザに供給する閾値電流の誤差を適切に補正することによって、像担持体の表面をレーザビームで走査して静電潜像を形成する場合に、当該像担持体の表面の電位むらを低減可能にする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、例えば、露光装置として実現できる。露光装置は、複数のレーザ光源を備え、当該複数のレーザ光源が駆動電流に応じて出力する複数のレーザビームで像担持体の表面を露光する露光装置であって、複数のレーザ光源から出力されたレーザビームの光量を検出する検出手段と、複数のレーザ光源のうちの1つのレーザ光源に供給する駆動電流を制御して、検出手段によって検出される光量を目標光量に制御する光量制御を行うことで、当該1つのレーザ光源に供給する電流を増加させた際に当該1つのレーザ光源がレーザ発振を開始する閾値に相当する閾値電流と、目標光量に対応する駆動電流及び当該閾値電流の差分に相当するスイッチング電流と、を決定する決定手段であって、当該1つのレーザ光源以外の他のレーザ光源に閾値電流に満たないバイアス電流を供給している状態で光量制御を行う、決定手段と、1つのレーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる第1の閾値電流値と、他のレーザ光源にバイアス電流を供給している状態で1つのレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる第2の閾値電流値との差分に相当する、予め定められた補正値で、決定手段によって決定された閾値電流を補正する補正手段と、補正手段によって補正された閾値電流とスイッチング電流とに応じた駆動電流を、1つのレーザ光源に供給する電流供給手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、例えば、露光装置として実現できる。露光装置は、第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源を含む複数のレーザ光源を備え、当該複数のレーザ光源が駆動電流に応じて出力する複数のレーザビームで像担持体の表面を露光する露光装置であって、複数のレーザ光源から出力されたレーザビームの光量を検出する検出手段と、第1のレーザ光源に供給する駆動電流を制御して、検出手段によって検出される光量を目標光量に制御する光量制御を行うことで、第1のレーザ光源に供給する電流を増加させた際に1つのレーザ光源がレーザ発振を開始する閾値に相当する閾値電流と、目標光量に対応する駆動電流及び当該閾値電流の差分に相当するスイッチング電流と、を決定する決定手段であって、第2のレーザ光源に閾値電流に満たないバイアス電流を供給している状態で光量制御を行う、決定手段と、第1のレーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる第1の閾値電流値と、第2のレーザ光源にバイアス電流を供給している状態で第1のレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる第2の閾値電流値との差分に相当する、予め定められた補正値で、決定手段によって決定された閾値電流を補正する補正手段と、補正手段によって補正された閾値電流とスイッチング電流とに応じた駆動電流を、第1のレーザ光源に供給する電流供給手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、マルチビーム方式のレーザについて、APCにより得られる閾値電流の誤差を適切に補正して当該レーザを駆動する技術を提供できる。さらに、当該閾値電流の誤差を適切に補正することによって、像担持体の表面をレーザビームで走査して静電潜像を形成する場合に当該像担持体の表面に残留する電位むらを低減可能にする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る画像形成装置100の概略的な断面図である。
【図2A】第1の実施形態に係る露光制御部10の構成を示す図である。
【図2B】第1の実施形態に係る露光制御部10及び光量制御部47の接続関係を示すブロック図である。
【図3A】第1の実施形態に係るレーザ駆動装置31の構成を示す図である。
【図3B】第1の実施形態に係るAPC回路403の構成を示す図である。
【図3C】第1の実施形態に係るレーザ駆動装置31における発光シーケンスを示す図である。
【図3D】第1の実施形態に係るレーザ駆動装置31に設けられたレーザチップ43の発光特性を示す図である。
【図4A】感光体11の表面に生じる電位むらを概念的に示す図である。
【図4B】感光体11の表面に生じる電位むらの補正する際の、レーザ駆動電流について示す図である。
【図5A】マルチビームレーザの温度の上昇に伴う発光特性の変化の様子を示す図である。
【図5B】第2の実施形態に係る露光制御部10及び光量制御部47の接続関係を示すブロック図である。
【図5C】第2の実施形態に係る、マルチビームレーザの温度と、閾値電流の補正値を調整するための係数αとの関係を示す図である。
【図6A】単一のレーザ光源を使用した場合の、APCによって得られる発光特性を示す図である。
【図6B】複数のレーザ光源を使用した場合の、APCによって得られる発光特性を示す図である。
【図6C】複数のレーザ光源を使用した場合に、APCによって得られた閾値電流に生じる誤差の影響について示す図である。
【図7】第1の実施形態に係る、画像形成装置100における画像形成動作の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0016】
[第1の実施形態]
<画像形成装置100の構成>
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る露光装置及び画像形成装置の基本的な動作について説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置100の概略的な断面図である。
【0017】
画像形成装置100において、原稿給紙装置1に積載された原稿は、1枚ずつ順に原稿台ガラス2の表面に搬送される。原稿が原稿台ガラス2の表面に搬送されると、読取りユニット4のランプ部3が点灯し、かつ、読取りユニット4が矢印110の方向に移動しながら原稿に光を照射する。原稿からの反射光は、ミラー5,6,7を介してレンズ8を通過した後、イメージセンサ部9に入力されて、画像信号に変換される。イメージセンサ部9から出力される画像信号は、画像メモリ(図示せず)に一時的に格納される。その後、画像信号は、画像メモリから読み出されて、露光制御部10に入力される。
【0018】
露光制御部10は、入力された画像信号(画像情報)に応じて感光体11の表面にレーザビームを照射して、当該レーザビームで感光体11の表面を走査することによって、当該レーザビームで感光体11の表面を露光する。これにより、感光体11の表面に静電潜像が形成される。ここで、感光体11は像担持体の一例である。また、電位センサ30は、感光体11の表面電位を検知するととともに、当該表面電位が所望の値になっているか監視する。感光体11の表面に形成された静電潜像が現像器13によって現像されることで、記録材に転写すべき画像(トナー像)が感光体11の表面に形成される。感光体11の表面にトナー像は、感光体11の回転に伴って転写部16まで移動して、そこで記録材の表面に転写される。
【0019】
転写部16においてトナー像が転写される記録材は、当該トナー像が転写部16に到達するタイミングに合わせて、記録材積載部14又は15から給紙及び搬送される。転写部16においてトナー像が転写された記録材は、定着部17に搬送される。定着部17は、トナー像を記録材の表面に定着させる。定着部17による定着処理の後、記録材は排紙部18から画像形成装置100の外部に排紙される。
【0020】
転写部16における転写が行われた後、クリーナ25は、感光体11の表面に残留するトナーを回収することによって、感光体11の表面を清掃する。次に、補助帯電器26が感光体11の表面を除電することによって、次の画像形成の際に、1次帯電器28による帯電により、感光体11が良好な帯電特性を得られるようにする。さらに、感光体11の表面の残留電荷を前露光ランプ27が消去した後、1次帯電器28が感光体11の表面を帯電させる。画像形成装置100は、以上の処理を繰り返すことによって、複数枚の記録材に対する画像形成を実行する。
【0021】
<露光制御部10の構成>
図2A及び図2Bを参照して、本実施形態に係る露光制御部10、及び露光制御部10を制御する光量制御部47について説明する。なお、本実施形態において、露光制御部10及び光量制御部47は、複数のレーザ光源を備え、当該複数のレーザ光源が駆動電流に応じて出力する複数のレーザビームで像担持体の表面を露光する露光装置の一例である。図2Aに示すように、露光制御部10は、レーザ駆動装置31、コリメータレンズ35、絞り32、ポリゴンミラー33、f−θレンズ34、及びBD(Beam Detect)センサ36を備える。レーザ駆動装置31は、複数のレーザ光源に相当する複数の半導体レーザ(レーザダイオード(LD))と、1個のフォトダイオード(PD)とを備える。また、光量制御部47は、CPUを備え、当該CPUによって露光制御部10を制御する。
【0022】
光量制御部47の制御に基づく露光制御部10の動作について説明する。画像形成装置100において画像形成が開始されると、光量制御部47は、レーザ駆動装置31に対して制御信号S47を出力する。光量制御部47は、レーザチップ43内の複数のLD(複数のレーザ光源)が後述する発光シーケンスに従って所望の光量で各光ビーム(レーザビーム)を発光するように、制御信号S47によってレーザ駆動装置31を制御する。レーザチップ43から出射した各レーザビームは、コリメータレンズ35及び絞り32を通過することによってほぼ平行光となった後に、所定のビーム径でポリゴンミラー33に入射する。
【0023】
ポリゴンミラー33は、矢印201の方向に等角速度で回転しており、当該回転に伴って、入射した各レーザビームを連続的な角度で反射する。これにより、ポリゴンミラー33は、入射した各レーザビームを偏向する。ポリゴンミラー33によって偏向された各レーザビームは、f−θレンズ34に入射する。f−θレンズ34は、入射した複数のレーザビームに対して、集光作用を与えるとともに、感光体11の表面を当該複数のレーザビームが走査する際の時間的な直線性を保証するような歪曲収差の補正を行う。これにより、当該複数のレーザビームは、感光体11の表面で結合して、当該表面を矢印202の方向に等速で走査する。
【0024】
ここで、BDセンサ36は、ポリゴンミラー33からの反射光を検出するためのセンサである。BDセンサ36は、ポリゴンミラー33の各鏡面によって反射されるレーザビームのうち、走査開始側におけるレーザビームを検知する位置に配置されている。BDセンサ36は、レーザビームを検出したことに応じて、検出信号(BD信号)S36を光量制御部47へ出力する。光量制御部47は、入力されたBD信号S36を、ポリゴンミラー33の回転と、レーザ駆動装置31における画像信号の書き込み開始タイミングとの同期処理のための同期信号として用いる。
【0025】
光量制御部47は、BD信号S36が示すレーザビームの検出周期を監視する。さらに、光量制御部47は、当該監視結果に基づいて、ポリゴンミラー33の1回転周期が常に一定となるように、ポリゴンミラー33を駆動するポリゴンモータドライバ(図示せず)を、加速又は減速させる制御を行う。かかる制御によって、光量制御部47は、ポリゴンミラー33を安定した回転状態にさせる。
【0026】
<レーザ駆動装置31の構成>
図3A、図3B及び図3Cを参照して、レーザ駆動装置31の動作について説明する。まず、図3Aを参照して、レーザ駆動装置31の構成について説明する。
【0027】
レーザチップ43は、複数のレーザダイオード(LD1〜LDn)と1個のフォトダイオード(PD)とを備える。レーザチップ43内のPDは、検出手段として機能し、検知した光量に応じた電流Imを、電流/電圧変換器401に出力する。電流/電圧変換器401は、入力された電流Imを電圧に変換して出力する。増幅器402は、電流/電圧変換器401から出力された電圧のゲインを調整するための増幅器である。増幅器402においてゲインが調整された電圧Vpdは、APC回路403に与えられる。
【0028】
APC回路403には、光量制御部47からの制御信号S47が入力される。光量制御部47による制御によって、APC回路403は、複数の(n個の)LD1〜LDnを一定の光量で発光させるために、LD1〜LDnの光量を調整する光量制御を行う。変調部413は、LD1〜LDnに供給される駆動電流について、不図示のメモリ等から入力される画像データを用いて変調するための画像変調信号を、論理素子412に出力する。例えば、駆動電流に対してPWMを行う場合には、変調部413は、画像データに応じた幅にパルス信号を、画像変調信号として論理素子412に出力する。論理素子412は、変調部413から出力される画像変調信号と、光量制御部47から出力されるフル点灯信号Fullとの論理和を、インバータ411とスイッチ409−1とに出力する。
【0029】
インバータ411は、論理素子412からの出力信号の論理値を反転させて出力する。即ち、インバータ411は、入力された信号がハイレベル(Hi)の信号である場合、ローレベル(Lo)の信号を出力し、入力された信号がローレベル(Lo)の信号である場合、ハイレベル(Hi)の信号を出力する。インバータ411の出力信号は、スイッチ410−1に供給される。
【0030】
レーザ駆動装置31内には、レーザチップ43内のLD1へ電流を供給する(通電させる)ための電流源404−1〜407−1と、これらの電流源からLD1への電流の供給状態を切り替えるスイッチ408−1〜410−1が設けられている。以下では、LD1に対応するこれらの電流源404−1〜407−1及びスイッチ408−1〜410−1について説明する。ただし、図3Aに示すように、LD2〜LDnに対しても、それぞれ、LD1と同様の電流源及びスイッチ(404−2〜410−2、・・・、404−n〜410−n)が設けられている。
【0031】
以下の説明において、閾値電流とは、レーザ光源(LD1〜LDn)に供給する電流を増加させた際に当該レーザ光源がレーザ発振を開始する閾値(図6AにおいてIth)に相当する。また、スイッチング電流とは、目標光量に対応する電流から当該閾値電流を減算した電流(図6AにおいてIH−Ith)であり、目標光量に対応する電流と当該閾値電流との差分に相当する。また、LD1へ電流を供給するための電流源404−1〜407−1は、閾値電流とスイッチング電流とに応じた駆動電流をLD1へ供給する電流供給手段として機能する。また、他のLD(LD2〜LDn)へ電流を供給する電流源についても同様であり、例えば、LDnへ電流を供給するための電流源404−n〜407−nは、閾値電流とスイッチング電流とに応じた駆動電流をLDnへ供給する電流供給手段として機能する。
【0032】
閾値電流源407−1は、電源とLD1との間に接続されている。閾値電流源407−1からLD1へ供給される電流は、APC回路403によって可変制御される。閾値電流源407−1は、APC回路403によって決定された閾値電流IthをLD1に供給するための電流源であり、本実施形態では第1の電流源として機能する。
【0033】
スイッチング電流源404−1は、電源とLD1間との間に接続されており、閾値電流源407−1と並列にLD1に接続されている。スイッチング電流源404−1から供給される電流は、APC回路403によって可変制御される。スイッチング電流源404−1は、APC回路403によって決定されたスイッチング電流IswをLD1に供給するための電流源であり、本実施形態では第2の電流源として機能する。
【0034】
スイッチング電流源404−1とLD1との間には、スイッチ409−1が設けられている。図3Aに示すように、スイッチ409−1は、閾値電流源407−1と並列にLD1に接続され、かつ、LD1とスイッチング電流源404−1との間に接続されている。スイッチ409−1のON/OFFに応じて、スイッチング電流源404−1からLD1への電流の供給がON/OFFされる。即ち、スイッチ409−1は、スイッチング電流源404−1からLD1への電流の供給状態及び非供給状態をスイッチングさせる。これにより、スイッチング電流源404−1から出力される電流が、画像データ(画像情報)に応じてスイッチングさせたスイッチング電流Iswとして、LD1に供給される。
【0035】
電位むら補正電流源405−1は、電源とLD1との間に接続されている。電位むら補正電流源405−1とLD1との間に設けられたスイッチ410−1のON/OFFに応じて、電位むら補正電流源405−1からLD1への電流の供給がON/OFFされる。また、電位むら補正電流源405−1から供給される電流は、光量制御部47から与えられる電位むら補正値に応じて可変制御される。
【0036】
閾値補正電流源406−1は、スイッチング電流源404−1とLD1との間に接続され、スイッチング電流源404−1に対してスイッチ409−1と並列に接続されている。また、閾値補正電流源406−1は、スイッチ408−1を介してLD1に対して接続されている。閾値補正電流源406−1は、スイッチング電流源404−1からの電流の一部を、スイッチ409−1を介さずにLD1へ供給する(バイパスさせる)電流源であり、本実施形態では第3の電流源として機能する。なお、スイッチング電流源404−1からの電流のうち、閾値補正電流源406−1によってLD1へバイパスされる電流は、後述するように、閾値電流を補正するための補正値に対応する一部の電流である。
【0037】
光量制御部47からの指示によるスイッチ408−1のON/OFFに応じて、閾値補正電流源406−1を介したスイッチング電流源404−1からのLD1への電流の供給が、ON/OFFされる。
【0038】
(APC動作)
次に、図3A〜図3Dを参照して、APC動作について説明する。なお、説明の簡略化のため、LD1を第1のレーザ光源、LD2〜LDnのそれぞれを第2のレーザ光源として、LD1に対するAPC動作についてのみ説明する。しかし、他のレーザ(LD2〜LDn)についても、LD1と同様の制御を行うことによって、LD1〜LDnのそれぞれについてAPC実現できる。
【0039】
まず、閾値補正電流源406−1からLD1に電流を供給しない状態(スイッチ408−1をOFF)におけるAPC動作について説明する。光量制御部47は、LD1を発光させるために、閾値電流源407−1からLD1に供給される閾値電流がIth1となるように、閾値電流源407−1を制御する。また、光量制御部47は、スイッチング電流源404−1からLD1に供給されるスイッチング電流がIsw1となるように、スイッチング電流源404−1を制御する。なお、Ith1及びIsw1には、予め定められた電流値が一時的に設定されてもよいし、前回のAPCで決定した閾値電流及びスイッチング電流が設定されてもよい。
【0040】
図3Cの区間1(最初のAPC動作区間)において、光量制御部47は、閾値電流源407−1及びスイッチング電流源404−1の電流値を、それぞれIth1及びIsw1とした後、フル点灯信号Full(波形301)をLoからHiにする。これにより、論理素子412からHiが出力される。その結果、スイッチ409−1がONに切り替わり、スイッチング電流源404−1からスイッチング電流Isw1がLD1に流れ始める。また、論理素子412からインバータ411に入力された信号は、インバータ411によって論理が反転した状態(Hi→Lo)で、スイッチ410−1に出力される。これにより、スイッチ410−1はOFFとなり、電位むら補正電流源405−1からLD1に電流が流れなくなる。従って、フル点灯信号FullがHiである間は、LD1には閾値電流Ith1とスイッチング電流Isw1とを加算した加算電流が流れることになる。
【0041】
PDは、閾値電流Ith1とスイッチング電流Isw1とを加算した電流の通電によりLD1から発光したレーザビームの光量を測定し、光量に応じた電流を電流/電圧変換器401に出力する。電流/電圧変換器401に入力された電流は電圧に変換され、変換後の電圧は増幅器402で増幅される。増幅された電圧Vpdは、APC回路403に入力される。
【0042】
図3Bに示すように、APC回路403に入力された電圧Vpdは、抵抗501を介してアナログスイッチ502に入力される。アナログスイッチ502は、光量制御部47からのサンプル/ホールド信号H_S/H*(波形305)に応じて、抵抗501及びコンデンサ503によって定まる時定数でコンデンサ503を充電する。具体的には、アナログスイッチ502は、サンプル/ホールド信号H_S/H*がHiの場合に、サンプル状態となり、コンデンサ503を充電する。また、アナログスイッチ502は、サンプル/ホールド信号H_S/H*がHiからLoに切り替わると、ホールド状態となる。これにより、コンデンサ503は、その電圧VshH(波形307)をホールドする。
【0043】
次に、光量制御部47は、フル点灯信号FullをHiからLoに切り替えるとともに、閾値電流についてはIth1から変更せずに、スイッチング電流をIsw2(≒(1/4)Isw1)に変更する。その後、光量制御部47は、フル点灯信号をLoからHiに切り替えて、スイッチング電流Isw2と閾値電流Ith1とを加算した電流を、LD1に通電させることによって、LD1を発光させる。これにより、LD1から発光したレーザビームの光量がPDによって測定されて、上述と同様、測定された光量に応じた電圧VpdがAPC回路403に入力される。
【0044】
APC回路403に入力された電圧Vpdは、抵抗505を介してアナログスイッチ506に入力される。アナログスイッチ506は、光量制御部47からのサンプル/ホールド信号L_S/H*(波形306)に応じて、抵抗505及びコンデンサ507によって定まる時定数でコンデンサ507を充電する。具体的には、アナログスイッチ506は、サンプル/ホールド信号L_S/H*がHiの場合に、サンプル状態となり、コンデンサ507を充電する。また、アナログスイッチ506は、サンプル/ホールド信号L_S/H*がHiからLoに切り替わると、ホールド状態となる。これにより、コンデンサ507は、その電圧VshL(波形308)をホールドする。その後、光量制御部47は、フル点灯信号FullをHiからLoに切り替える。
【0045】
Isw1のスイッチング電流をLD1に通電させた場合のホールド電圧VshHは、比較器504に入力される。比較器504は、入力されたホールド電圧VshHと、目標光量に対応する基準電圧Vrefとを比較して、それらの差分を表す差分信号VapcHを出力する。同様に、Isw2のスイッチング電流をLD1に通電させた場合のホールド電圧VshLは、比較器508に入力される。比較器508は、入力されたホールド電圧VshLと、目標光量に対応する基準電圧に対して1/4の電圧(Vref/4)とを比較して、それらの差分を表す差分信号VapcLを出力する。
【0046】
比較器504、508からそれぞれ出力された差分信号VapcH、VapcLは、ホールド電圧VshH、VshLとともに、演算部509に入力される。演算部509は、LD1に通電される電流が(Ith1+Isw1)である場合のホールド電圧VshHと、LD1に通電される電流が(Ith1+Isw2)である場合のホールド電圧VshLとから、次式により閾値電流Ith2を算出する。
Ith2={VshH(Ith1+Isw2)−VshL(Ith1+Isw1)}
/(VshH−VshL)
【0047】
また、差分信号VapcH、VapcLに対応する電流をIapcH、IapcLとすると、次のAPC動作で使用すべきスイッチング電流Isw1',Isw2'は、次式により算出される。
Isw1'=Ith1+Isw1+IapcH−Ith2
Isw2'=Ith1+Isw2+IapcL−Ith2
以上のように算出されたIth2,Isw1',及びIsw2'は、次のAPC動作(図3Cの区間2において実行されるAPC動作)において用いられる。
【0048】
次に、APC回路403では、区間1のAPC動作の次のAPC動作として、図3Cの区間2において上述のAPC動作と同様の処理が実行される。区間2におけるAPC動作によって得られたホールド電圧をVshH',VshL'とすると、次のAPC動作で使用すべき閾値電流Ith3と、スイッチング電流Isw1'',Isw2''は、次式によって算出される。
Ith3={VshH'(Ith2+Isw2')−VshL'(Ith2+Isw1')}
/(VshH'−VshL')
Isw1''=Ith2+Isw1'+IapcH'−Ith3
Isw2''=Ith2+Isw2'+IapcL'−Ith3
【0049】
上述したAPC動作を繰り返すことによって、差分信号VapcH,VapcLが徐々に0に近づいていき、閾値電流及びスイッチング電流ともに安定するとともに、LD1の光量も安定する。以下では、図3Cに示す区間1及び区間2において上述のように実行された2回のAPCによって、閾値電流IthがIth3で、スイッチング電流IswがIsw1'',Isw2''で、それぞれ安定したものとする。なお、APCによって得られるスイッチング電流Iswのうち、Isw1''は、目標光量に対応するスイッチング電流、Isw2''は、当該目標光量の1/4の光量に対応するスイッチング電流である。このように、光量制御部47及びAPC回路403は、複数のレーザ光源のそれぞれに対して供給すべき閾値電流とスイッチング電流とを決定する決定手段の一例として機能する。
【0050】
ところが、図6A〜図6Cを用いて説明したように、マルチビーム方式のレーザチップにおける各レーザについてAPCを行った場合に得られる各レーザの発光特性の閾値電流は、実際の閾値電流よりも低い値となってしまう。これは、1つのレーザのAPCの実行中に、当該1つのレーザ以外の他のレーザも、閾値電流に満たないバイアス電流により微小に発光(バイアス発光)しており、上述のように、PDを用いて検出される光量に誤差が生じ得るためである。
【0051】
図3Dは、マルチビーム方式のレーザチップに含まれる1つのレーザについてのAPCによって得られる発光特性312,313と、実際の発光特性311との一例を示している。ここでは、上述したように、目標光量に対応する基準電圧Vrefと、目標光量の1/4(以下、1/4光量)に対応する電圧(Vref/4)とを基準として、APCを行った場合を示している。図3Dの発光特性312は、区間1において実行される1回目のAPCによって得られた閾値電流Ith2及びスイッチング電流Isw1'に基づく発光特性である。また、図3Dの発光特性313は、区間2において実行される2回目のAPCによって得られた閾値電流Ith3及びスイッチング電流Isw1''に基づく発光特性である。図3Dに示すように、APCによって安定した閾値電流Ith3は、実際の発光特性311の閾値電流Ith_realに対してΔIthだけ低い値となっている。これは、上述のように、1/4光量についてのAPC動作において検出される電流値に誤差が生じるためである。
【0052】
本実施形態では、各レーザについて、APC動作によって得られた閾値電流を補正するための電流を当該レーザに供給するために、閾値補正電流源406−1〜406−nを使用する。閾値補正電流源406−1〜406−nのうち、LD1に対して電流を供給する閾値補正電流源406−1は、以下のように動作する。
【0053】
閾値補正電流源406−1は、対応するレーザ光源(LD1)についてのAPCにより得られた、上述の誤差の影響を受けている閾値電流Ith3と、当該誤差の影響を受けていない閾値電流Ith_realとの差分(ΔIth)に相当する補正値を使用する。ここで、閾値電流Ith_realは、対応するレーザ光源(LD1)のみを動作させ、当該レーザ光源以外の他のレーザ光源(LD2〜LDn)をOFFにした状態で、APCにより得られた閾値電流である。当該補正値は、レーザ光源(LD1)を発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流Ith3と、他のレーザ光源(LD2〜LDn)をレーザ発振させずに(LD2〜LDnにバイアス電流を供給している状態で)レーザ光源(LD1)を発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流との差分(差分値ΔIth)に相当する。閾値補正電流源406−1は、画像形成のためにレーザLD1〜LDnからのレーザビームで感光体を走査(露光)する際には、当該差分値ΔIthを閾値電流に対する補正値として使用して、当該補正値に相当する量の電流をLD1に供給する。
【0054】
差分値ΔIthについては、例えば、画像形成装置100の工場調整時にIth3及びIth_realをそれぞれ測定し、それらの差分値として事前に算出しておけばよい。なお、本実施形態において、Ith3とIth_realは、第1の閾値電流値と第2の閾値電流値にそれぞれ相当する。このように、差分値ΔIthは、予め定められた補正値として用意され、不図示のメモリ等に予め格納されていればよい。さらに、閾値補正電流源406−1が、算出された差分値の電流ΔIthをレーザLD1に対して供給するように、各電流源に含まれる可変抵抗や電子ボリウム等を調整すればよい。なお、電子ボリウムで調整する場合には、必要な調整値を不図示のメモリ等に予め記憶させておけばよい。
【0055】
閾値補正電流源406−1が差分値ΔIthの電流を供給可能な状態で、当該電流源に接続されたスイッチ408−1を光量制御部47がONにすることによって、当該電流源からLD1に供給(通電)される。これにより、閾値電流源407―1からの閾値電流Ith3を、ΔIthに対応する量だけ増加させた電流が、補正後の閾値電流としてLD1に供給されることになる。
【0056】
また、スイッチング電流源404−1からは、画像変調信号(画像情報)に基づくスイッチ409−1のON/OFFに応じて、画像情報に応じてスイッチングされたスイッチング電流がLD1に供給される。スイッチ409−1がONになると、スイッチング電流源404−1からはIsw1''−ΔIthのスイッチング電流がLD1に供給される。一方で、スイッチ409−1がOFFになると、スイッチング電流源404−1からLD1にスイッチング電流は供給されなくなる。
【0057】
このように、スイッチ409−1がONである場合には、APCによって得られたスイッチング電流Isw1''をΔIthに対応する量だけを減少させた電流が、スイッチング電流源404−1からLD1に供給される。これにより、閾値電流源407―1からの閾値電流Ith3が補正値(ΔIth)で補正される一方で、スイッチング電流源404−1からのスイッチング電流Isw''が同一の補正値(ΔIth)で補正される。これは、ΔIthを用いた閾値電流の補正前及び補正後で、スイッチング電流を通電した場合のLD1の光量が、目標光量から変化することを防ぐためである。即ち、光量制御部47は、スイッチ408−1をONにして、回路内で閾値補正電流源406−1を動作させた状態にすることによって、閾値電流及びスイッチング電流の双方を補正値(ΔIth)で補正する。なお、本実施形態で光量制御部47は補正手段として機能する。
【0058】
さらに、LD2〜LDnについても、LD1と同様に、差分値ΔIthを事前に算出しておき、当該差分値に相当する電流を、閾値補正電流源406−2〜406−nがそれぞれLD2〜LDnに供給する。また、スイッチング電流源404−2〜n及びスイッチ409−2〜409−nの動作についても、スイッチング電流源404−1及びスイッチ409−1と同様である。
【0059】
本実施形態では、光量制御部47とレーザ駆動装置31とがこのように動作することによって、各レーザについて、本来の閾値電流よりも低い閾値電流がAPCにより得られた場合にも、閾値電流を本来の閾値電流に補正して画像形成を行うことが可能である。即ち、マルチビーム方式のレーザチップにおいても、各レーザに対して適切な閾値電流を通電させることが可能になる。さらに、APCによって得られた閾値電流に補正値(差分値)ΔIthの電流を上述のように加算するだけでなく、ΔIthだけ減算したスイッチング電流を、スイッチング電流源404−1〜nからLD1〜LDnにそれぞれ供給する。これにより、ΔIthによる閾値電流の補正前及び補正後における、スイッチング電流と閾値電流との総和を一定に維持することが可能になり、目標光量を変化させることなく、LD1〜LDnを発光させることが可能になる。
【0060】
<画像形成時の補正動作>
次に、図4A、図4Bを参照しながら、感光体11の表面における主走査方向の感度のむらに起因して生じる、感光体11の表面電位のむらを低減するための、画像形成装置100において実行される画像形成動作について説明する。ここで、図7は、画像形成装置100における画像形成動作の手順を示すフローチャートである。図7に示す各ステップの処理は、光量制御部47のCPU(図示せず)が、メモリ等に予め格納された制御プログラムをRAM(図示せず)に読み出して実行することによって実行される。当該画像形成動作には、上述したAPC動作による補正動作も含まれる。なお、説明の簡略化のため、以下では主としてLD1についての動作のみ説明するが、他のレーザ(LD2〜LDn)についてもLD1と同様である。
【0061】
まず、光量制御部47のCPU(以下、単に「CPU」と称する。)は、画像形成コマンドの入力等に応じて、画像形成動作を開始して、S101〜S105の処理を開始する。CPUは、101〜S105の処理を、感光体11の表面における1主走査ラインごとに実行する。CPUは、各ラインの画像領域における画像形成(S105)の前に、S101で、非画像領域において上述のAPC動作を開始する。このとき、CPUは、スイッチ408−1、410−1をOFFにすることで、電位むら補正電流源405−1及び閾値補正電流源406−1をOFFにした状態で、APC動作を実行する。このLD1についてのAPC動作は、上述のように、レーザの発光応答性を高めるためのバイアス電流を、閾値電流源407−2〜407−nからLD2〜LDnに対してそれぞれ供給している状態で行われる。
【0062】
APC動作の開始後、S102で、CPUは、当該APC動作により、LD1に供給すべき駆動電流として、閾値電流Ith3とスイッチング電流Isw1''とを決定する。次に、上述のように、マルチビーム方式においてAPCによって閾値電流Ith3に生じる誤差を補正するための補正値ΔIthで、閾値電流Ith3を補正する。具体的には、APC動作が完了して画像形成動作に移行する前に、S103で、光量制御部47は、閾値補正電流ΔIthを閾値補正電流源406−1からLD1に供給させるために、スイッチ408−1をONにして、閾値補正電流源406−1をOFFからONに切り替える。これにより、閾値電流源407−1からの閾値電流Ith3が、Ith3+ΔIthに補正されて、LD1に供給され始める。
【0063】
次に、S104で、CPUは、感光体11の表面における主走査方向の感度のむらに起因して生じる、感光体11の表面電位のむらを低減するために、当該電位むらの補正動作を開始する。具体的には、CPUは、後述するように、入力される画像データに基づいてスイッチ410−1のON又はOFFにすることによって、当該画像データに基づいて電位むら補正電流源405−1からLD1への電流の供給状態をON又はOFFにする制御を開始する。
【0064】
ここで、BAE方式の画像形成装置100では、感光体11の表面を均一な電位となるように帯電させようとしても、感光体11の感度のむらに起因して、当該表面の位置に応じて異なる電位となる電位むらが発生し得る。図4Aは、感光体11の主走査方向に発生した電位むらの様子を示したものである。同図に示すように、感光体の表面電位421とその理想電位422との間には、主走査方向の位置に応じて異なる誤差が生じていることがわかる。これは、感光体11の表面が位置に応じて異なる感度を有するためである。このような電位むらを低減するために、画像形成装置100は、画像変調信号がLoであって、スイッチング電流をLD1に通電させない場合のLD1の光量を、感光体11の主走査方向における走査位置ごとの補正値に応じて増減させる制御を行う。
【0065】
レーザ駆動装置31において、入力される画像データに基づく画像変調信号(図4Bのパルス信号431)がHiである場合には、スイッチ409−1がONとなるため、スイッチング電流源404−1からLD1に電流が供給される。一方で、インバータ411に入力されたパルス信号431は、極性が反転(Hi→Lo)した状態でスイッチ410−1に与えられる。このため、スイッチ410−1はOFFとなり、電位むら補正電流源405−1からLD1に電流は供給されない。このように、パルス信号431がHiである場合、閾値電流源407−1からの電流Ith3と、閾値補正電流源406−1からの電流ΔIthと、スイッチング電流源404−1からの電流(Isw1''−ΔIth)との和が、LD1に供給される。即ち、LD1には、(Ith3+Isw1'')の大きさの駆動電流432が供給される。
【0066】
また、レーザ駆動装置31において、入力される画像データに基づく画像変調信号(パルス信号431)がLoである場合には、スイッチ409−1がOFFとなるため、スイッチング電流源404−1からLD1に電流は供給されない。一方で、インバータ411に入力されたパルス信号431は、極性が反転(Lo→Hi)した状態でスイッチ410−1に与えられる。このため、スイッチ410−1がONとなり、電位むら補正電流源405−1からLD1に電流が供給される。このように、パルス信号431がLoである場合、閾値電流源407−1からの電流Ith3と、閾値補正電流源406−1からの電流ΔIthと、電位むら補正電流源405−1からの電流Itとの和が、駆動電流432としてLD1に供給される。
【0067】
光量制御部47のCPUは、S104で、感光体11の表面電位のむらの補正動作を開始した後、S105で、画像領域における画像データに基づく画像形成を実行する。CPUは、S105における画像形成の際に、電位むらを補正するための補正電流Itを、電位むら補正電流源405−1からLD1に供給するように、レーザ駆動回路31を制御する。具体的には、光量制御部47のCPUは、BD信号に同期して、主走査方向における走査位置ごとに予め定められた補正値に対応する大きさの補正電流Itを、電位むら補正電流源405−1からLD1に供給させる制御を行う。なお、BD信号は、上述のBDセンサ36から出力される信号であり、主走査同期信号に相当する。補正電流Itは、図4Bに示すように、閾値電流Ith_realの近傍で、感光体11の主走査方向における走査位置(主走査位置)ごとに変化する。
【0068】
光量制御部47のCPUは、感光体11の主走査方向における走査位置に応じた補正値を、その内部のメモリに記憶しており、BD信号に同期して当該補正値を読み出して使用する。光量制御部47は、電位むら補正電流源405−1に出力する制御信号によって、メモリから読み出した補正値に応じて、電位むら補正電流源405−1からLD1に供給される補正電流Itの大きさを変化させる。即ち、補正電流Itは、感光体11の測定値に応じて変化する電流となる。
【0069】
この補正値は、例えば、工場調整時に、感光体11の表面における各主走査位置の感度を測定して得られた測定値から作成され、光量制御部47内のメモリに格納される。感光体11の感度は、例えば、1次帯電器28によって帯電した感光体11の表面に、主走査位置によらず一定の光量のレーザビームを照射した場合の、表面電位の測定値として得られる。補正値は、測定された表面電位の主走査方向における変化が一定となる光量でLD1を発光させるために、電位むら補正電流源405−1からLD1に供給させる補正電流Itに対応する値とすればよい。
【0070】
画像変調信号がLoである場合には、LD1から感光体11に照射されるレーザビームの光量が、上述の補正値に応じて感光体11の主走査位置ごとに増減することで、当該レーザビームの照射後における感光体11の表面電位が主走査位置によらず均一となる。
【0071】
その後、1ラインの画像形成が完了すると、S106で、CPUは、入力された画像データについて、画像形成を実行すべき次のラインが残っているか否かを判定することによって、画像形成を終了するか否かを判定する。ここで、CPUは、画像形成を終了しないと判定した場合、処理をS101に戻す一方で、画像形成を終了すると判定した場合には、図7に示す一連の画像形成動作を終了する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態では、複数のレーザ光源(LD1〜LDn)のそれぞれから照射するレーザビームの光量を目標光量に制御するAPCを行って、当該複数のレーザ光源のそれぞれに供給すべき閾値電流とスイッチング電流とを決定する。さらに、複数のレーザ光源のそれぞれについて、当該レーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流と、当該レーザ光源以外の他のレーザ光源をレーザ発振させずに複数のレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流との差分を示す、予め定められた補正値で、決定した閾値電流を補正する。このようにして得られた補正後の閾値電流と、スイッチング電流とを複数のレーザ光源に供給することで、感光体11に複数のレーザビームを照射するとともに、照射した当該複数のレーザビームで感光体11の表面を走査する。
【0073】
本実施形態によれば、APCにより決定された閾値電流が、マルチビーム方式に起因して、本来の電流値よりも減少してしまった場合にも、本来の電流値に補正することができる。その結果、感光体11の感度の測定値に応じた電流をレーザ光源に供給することで、感光体11の表面の電位むらに対処する場合に、マルチビーム方式においても当該電位むらを低減することが可能となる。
【0074】
なお、本実施形態では、BAE方式の画像形成装置に本発明を適用した形態について説明してきたが、本発明は、BAE方式の画像形成装置に限らず、イメージ露光方式の画像形成装置に対しても同様に適用可能である。本発明をイメージ露光方式の画像形成装置に対して適用した場合にも、適切に補正した閾値電流でレーザ光源を駆動させることが可能である。かかる画像形成装置において画像形成を行った場合、レーザ光源の光の立ち上がりがよりシャープになるため、形成される画像をより高画質にすることが可能になる。
【0075】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、マルチビームレーザに対する閾値電流を補正するために、本来の閾値電流Ith_realと、APCにより得られる閾値電流Ith3との差分値に相当する補正電流を、閾値電流Ith3とともに各レーザに供給している。また、工場調整時に、閾値電流Ith_realと閾値電流Ith3とを測定するとともに、それらの差分値を閾値補正電流源406−2〜406−nに対して固定的に与えている。
【0076】
ここで、マルチビームレーザの各レーザの発光特性は、温度に依存して変化する可能性があり、その場合には閾値電流も変化する。例えば、赤外レーザ等のレーザは、温度に依存して発光特性がほとんど変化しないのに対して、赤色レーザ等のレーザは、温度に依存して発光特性が大きく変化して、閾値電流も変化することが知られている。
【0077】
図5Aは、マルチビームレーザの各レーザにおける、温度の上昇に伴う発光特性の変化の様子を示す図である。同図において、温度上昇前のレーザの発光特性521は、第1の実施形態で示した発光特性(図3D及び図4B)と同一である。従って、発光特性521についてのAPCによって得られる閾値電流、及び当該閾値電流を補正するための補正電流は、第1の実施形態と同様、それぞれIth3及びΔIthである。同図において、レーザの温度が上昇すると、その発光特性が521から522に変化して、閾値電流も上昇している。即ち、APCによって得られる閾値電流は、Ith3からIth3'に変化している。この場合に、閾値電流Ith3'に対して補正電流がΔIthで固定されていると、変化後の発光特性522における本来の閾値電流523に対して、524に示す量だけ電流が不足してしまう。
【0078】
このように温度の変化に起因して閾値電流が変化する場合、第1の実施形態のように閾値電流を補正するための補正電流を固定的に設定していると、温度に依存して変化した閾値電流を適切に補正できなくなるおそれがある。これにより、各レーザに供給される閾値電流が本来の閾値電流からずれてしまい、結果的に感光体11の表面電位の電位むらを低減できなくなるおそれがある。
【0079】
第2の実施形態では、閾値電流に対する補正電流を、第1の実施形態のように固定するのではなく、レーザの温度を検知するとともに、検知した温度の変化に応じて変化させる実施形態について説明する。なお、以下では、説明の簡略化のために、第1の実施形態と共通する部分については可能な限りその説明を省略する。
【0080】
図5Bは、本実施形態に係る露光制御部10及び光量制御部47の接続関係を示すブロック図である。同図では、第1の実施形態における図2Bと比較して、露光制御部10内のサーミスタ500と、光量制御部47に接続されたメモリ510とが追加されている。露光制御部10内においてレーザ駆動装置31の近傍に配置されたサーミスタ500は、レーザ近傍の温度を検知すると、検知した温度を示す検知信号S500を光量制御部47に伝送する。光量制御部47は、サーミスタ500によって検知された温度に基づいて、閾値補正電流源406−1〜406−nからLD1〜LDnへ供給される電流を調整する。このように、サーミスタ500は、温度検知手段の一例である。
【0081】
ここで、閾値補正電流源406−1〜406−nは、第1の実施形態と同様、電子ボリウムで調整可能である。メモリ510には、工場調整時に、各レーザについて所定の温度(図5Cでは20℃)で測定されたΔIthに対応する補正電流値が格納されている。光量制御部47は、メモリ510に格納された当該補正電流値に対して、サーミスタ500によって検出された温度に応じて決定した係数αを乗じて得た電流値を、閾値補正電流源406−1〜406−nにそれぞれ設定する。このようにして、複数のレーザ光源(LD1〜LDn)のそれぞれにおける温度の変化に起因したΔIthの変化を補償するように、検知されたレーザ光源の温度に応じて、閾値補正電流源406−1〜406−nについての補正電流値が調整される。この係数αについては、例えば、当該係数αとレーザ光源の温度とを対応付けたテーブルとして、メモリ510に格納されていればよい。この場合、メモリ510に格納された当該テーブルに含まれる、サーミスタ500によって検知された温度に対応する係数αを、同じくメモリ510に格納された、20℃に対応する補正電流値に乗算して得られた値を、調整後の補正電流値とすればよい。
【0082】
レーザの温度とレーザの閾値電流との関係を示す、レーザの温度特性は、1次関数で近似することが可能である。図5Cは、レーザの温度特性に基づいて決定したものであり、サーミスタ500によって検出された温度と、検出された温度に対応して使用すべき係数αとの関係を示している。本実施形態において、光量制御部47は、サーミスタ500によって検出された温度と、図5Cに示す特性とから、検出された温度に対する係数αを決定する。光量制御部47は、決定した係数αを、メモリ510に予め格納された閾値電流値に乗じることで、新たな閾値電流値を算出する。メモリ510にはα=1に対応する、工場調整時に得られた閾値電流値が予め格納されている。
【0083】
図5Cでは、温度20℃に対するαを1としている。光量制御部47は、メモリ510に格納された、20℃に対応する補正電流値に、サーミスタ500によって検出された温度に対応する係数αを乗じることで、閾値補正電流源406−1〜406−nに対して設定すべき補正電流値を決定する。さらに、光量制御部47は、決定した閾値電流値を閾値補正電流源406−1〜406−nに対してそれぞれ設定する。これにより、閾値補正電流源406−1〜406−nは、設定された値の閾値電流を、LD1〜LDnに対してそれぞれ供給する。
【0084】
本実施形態によれば、複数のレーザにおける温度の変化に起因して、当該複数のレーザの発光特性が変化した場合においても、APCにより決定された閾値電流を適切に補正することができるとともに、感光体11の表面電位のむらを低減することが可能となる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、及び当該露光装置を使用する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、一般に、レーザ光源が発光するレーザビームで感光体等の像担持体の表面を露光及び走査することによって、画像情報に基づく静電潜像を当該像担持体の表面に形成する。画像形成装置で用いる露光方式としては、例えば、帯電した感光体の表面において、画像情報に基づいて画像を形成しない部分(非画像領域)を露光して、画像を形成する部分(画像領域)を露光しないバックグラウンド露光方式(BAE)が知られている。
【0003】
BAE方式の画像形成装置において、静電潜像を現像剤(トナー等)により現像して得られる画像に濃度むらを発生させずに、画質を維持するためには、感光体の静電潜像の表面電位(暗部電位及び明部電位)を均一にすることが必要となる。感光体の表面電位を均一にするための技術としては、特許文献1の技術が提案されている。特許文献1では、感光体の表面における感度の補正値に応じて、光源に通電されるバイアス電流及びスイッチング電流を制御することによって、光源から発光するレーザビームの光量を制御する技術が提案されている。特許文献1の光量制御では、所定の目標光量及びその1/4の光量でレーザをそれぞれ発光させるための駆動電流を、自動光量制御(APC)により決定し、決定した駆動電流に基づいて発光開始電流(閾値電流)値を算出する。さらに、算出した発光開始電流値に、感度補正値に応じた電流値を加えることで、バイアス電流を制御している。
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、レーザの発光開始電流を正確に算出できれば、感光体の表面の電位むらが解消されるように、レーザビームの光量制御を行うことが可能であろう。しかしながら、感光体を露光及び走査するための光源として、マルチビームレーザを用いた場合には、以下で説明するように、感光体の表面電位むらを十分に低減できなくなる可能性がある。
【0005】
ここで、図6Aは、レーザチップ内に光源として配置された単一のレーザを発光させた場合の駆動電流Iと、当該レーザチップ内に配置されたフォトダイオード(PD)で検出される光量Lとの関係を表す、レーザ発光特性の一例を示す図である。同図に示すように、当該レーザは、駆動電流Iが0から閾値電流Ith未満の領域においてはレーザ発振せずに微小に発光する一方で、駆動電流Iが閾値電流Ith以上の領域においてはレーザ発振によりレーザ発光してレーザビームを出力する。この閾値電流Ithは、光量Po及びその1/4の光量を目標光量としてAPCを行って得られる駆動電流IH及びILとから、レーザ発光領域の特性が同図に示すように直線の特性であることを利用して算出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−275901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、レーザチップ内に光源として複数のレーザを配置したマルチビームレーザについてAPCを行う場合には、当該複数のレーザのそれぞれについてAPCを行う必要がある。図6Bは、マルチビームレーザにおいて、レーザチップ内に配置された複数のレーザのうち、何れか1つのレーザを対象としてAPCを行うことによって得られる発光特性の一例(605)を示す図である。なお、601は、APCの対象となっているレーザの実際の発光特性の例、602〜604は、APCの対象となっているレーザ以外の3つのレーザの各々がレーザ発振せずに発光している場合の発光特性の例を示している。
【0008】
マルチビームレーザにおいて、対象とするレーザについてAPCを適切に行うことができた場合には、601に示す発光特性を得ることができるであろう。しかし、一般に、マルチビームレーザにおいては、複数のレーザのうちの何れか1つを対象としてAPCを実行している間も、それ以外の他のレーザには、閾値電流に満たないバイアス電流が供給されている。このバイアス電流は、レーザの発光応答性を高めるために供給される電流である。この場合、APCの対象となるレーザ以外の他のレーザは、そのバイアス電流によって、レーザ発振はしないものの微小に発光している状態(バイアス発光状態)にある。このような状態で、対象とする1つのレーザについて、例えば、光量Poの1/4を目標光量としてAPCを行うと、PDでは、対象とするレーザの光量に、他のレーザの光量が重畳された光量が検出される。このため、PDの検出結果に基づき得られる駆動電流は、図6Bに示すように、本来のILからIL'に変化し得る。その結果、算出される閾値電流が、本来のIthよりもΔだけ少ないIth'(<Ith)となり、誤差が生じてしまう。
【0009】
このように、算出された閾値電流に誤差が生じた場合、特許文献1に記載の技術を用いて駆動電流を補正して、感光体の電位むらを解消しようとしても、電位むらを十分に低減できなくなる問題が起こり得る。ここで、図6Cは、感光体の感度補正値に基づく駆動電流に対する補正の様子を一例として示しており、611は感光体の電位むらを解消するために補正すべき駆動電流の量を示している。この場合に、同図に示すように、算出された閾値電流が本来の値IthよりもΔだけ小さいIth'であると、612に示す量しか駆動電流が補正されず、613に示す駆動電流の量に対応する電位むらが感光体に残留してしまう。従って、マルチビームレーザについてAPCにより求めた閾値電流に誤差が生じると、感光体を露光して画像を形成する際に感光体の電位むらを十分に低減することが困難となる。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、マルチビーム方式のレーザについて、APCにより得られる閾値電流の誤差を適切に補正して当該レーザを駆動する技術を提供することを目的としている。さらに、レーザに供給する閾値電流の誤差を適切に補正することによって、像担持体の表面をレーザビームで走査して静電潜像を形成する場合に、当該像担持体の表面の電位むらを低減可能にする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、例えば、露光装置として実現できる。露光装置は、複数のレーザ光源を備え、当該複数のレーザ光源が駆動電流に応じて出力する複数のレーザビームで像担持体の表面を露光する露光装置であって、複数のレーザ光源から出力されたレーザビームの光量を検出する検出手段と、複数のレーザ光源のうちの1つのレーザ光源に供給する駆動電流を制御して、検出手段によって検出される光量を目標光量に制御する光量制御を行うことで、当該1つのレーザ光源に供給する電流を増加させた際に当該1つのレーザ光源がレーザ発振を開始する閾値に相当する閾値電流と、目標光量に対応する駆動電流及び当該閾値電流の差分に相当するスイッチング電流と、を決定する決定手段であって、当該1つのレーザ光源以外の他のレーザ光源に閾値電流に満たないバイアス電流を供給している状態で光量制御を行う、決定手段と、1つのレーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる第1の閾値電流値と、他のレーザ光源にバイアス電流を供給している状態で1つのレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる第2の閾値電流値との差分に相当する、予め定められた補正値で、決定手段によって決定された閾値電流を補正する補正手段と、補正手段によって補正された閾値電流とスイッチング電流とに応じた駆動電流を、1つのレーザ光源に供給する電流供給手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、例えば、露光装置として実現できる。露光装置は、第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源を含む複数のレーザ光源を備え、当該複数のレーザ光源が駆動電流に応じて出力する複数のレーザビームで像担持体の表面を露光する露光装置であって、複数のレーザ光源から出力されたレーザビームの光量を検出する検出手段と、第1のレーザ光源に供給する駆動電流を制御して、検出手段によって検出される光量を目標光量に制御する光量制御を行うことで、第1のレーザ光源に供給する電流を増加させた際に1つのレーザ光源がレーザ発振を開始する閾値に相当する閾値電流と、目標光量に対応する駆動電流及び当該閾値電流の差分に相当するスイッチング電流と、を決定する決定手段であって、第2のレーザ光源に閾値電流に満たないバイアス電流を供給している状態で光量制御を行う、決定手段と、第1のレーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる第1の閾値電流値と、第2のレーザ光源にバイアス電流を供給している状態で第1のレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる第2の閾値電流値との差分に相当する、予め定められた補正値で、決定手段によって決定された閾値電流を補正する補正手段と、補正手段によって補正された閾値電流とスイッチング電流とに応じた駆動電流を、第1のレーザ光源に供給する電流供給手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、マルチビーム方式のレーザについて、APCにより得られる閾値電流の誤差を適切に補正して当該レーザを駆動する技術を提供できる。さらに、当該閾値電流の誤差を適切に補正することによって、像担持体の表面をレーザビームで走査して静電潜像を形成する場合に当該像担持体の表面に残留する電位むらを低減可能にする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る画像形成装置100の概略的な断面図である。
【図2A】第1の実施形態に係る露光制御部10の構成を示す図である。
【図2B】第1の実施形態に係る露光制御部10及び光量制御部47の接続関係を示すブロック図である。
【図3A】第1の実施形態に係るレーザ駆動装置31の構成を示す図である。
【図3B】第1の実施形態に係るAPC回路403の構成を示す図である。
【図3C】第1の実施形態に係るレーザ駆動装置31における発光シーケンスを示す図である。
【図3D】第1の実施形態に係るレーザ駆動装置31に設けられたレーザチップ43の発光特性を示す図である。
【図4A】感光体11の表面に生じる電位むらを概念的に示す図である。
【図4B】感光体11の表面に生じる電位むらの補正する際の、レーザ駆動電流について示す図である。
【図5A】マルチビームレーザの温度の上昇に伴う発光特性の変化の様子を示す図である。
【図5B】第2の実施形態に係る露光制御部10及び光量制御部47の接続関係を示すブロック図である。
【図5C】第2の実施形態に係る、マルチビームレーザの温度と、閾値電流の補正値を調整するための係数αとの関係を示す図である。
【図6A】単一のレーザ光源を使用した場合の、APCによって得られる発光特性を示す図である。
【図6B】複数のレーザ光源を使用した場合の、APCによって得られる発光特性を示す図である。
【図6C】複数のレーザ光源を使用した場合に、APCによって得られた閾値電流に生じる誤差の影響について示す図である。
【図7】第1の実施形態に係る、画像形成装置100における画像形成動作の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0016】
[第1の実施形態]
<画像形成装置100の構成>
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る露光装置及び画像形成装置の基本的な動作について説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置100の概略的な断面図である。
【0017】
画像形成装置100において、原稿給紙装置1に積載された原稿は、1枚ずつ順に原稿台ガラス2の表面に搬送される。原稿が原稿台ガラス2の表面に搬送されると、読取りユニット4のランプ部3が点灯し、かつ、読取りユニット4が矢印110の方向に移動しながら原稿に光を照射する。原稿からの反射光は、ミラー5,6,7を介してレンズ8を通過した後、イメージセンサ部9に入力されて、画像信号に変換される。イメージセンサ部9から出力される画像信号は、画像メモリ(図示せず)に一時的に格納される。その後、画像信号は、画像メモリから読み出されて、露光制御部10に入力される。
【0018】
露光制御部10は、入力された画像信号(画像情報)に応じて感光体11の表面にレーザビームを照射して、当該レーザビームで感光体11の表面を走査することによって、当該レーザビームで感光体11の表面を露光する。これにより、感光体11の表面に静電潜像が形成される。ここで、感光体11は像担持体の一例である。また、電位センサ30は、感光体11の表面電位を検知するととともに、当該表面電位が所望の値になっているか監視する。感光体11の表面に形成された静電潜像が現像器13によって現像されることで、記録材に転写すべき画像(トナー像)が感光体11の表面に形成される。感光体11の表面にトナー像は、感光体11の回転に伴って転写部16まで移動して、そこで記録材の表面に転写される。
【0019】
転写部16においてトナー像が転写される記録材は、当該トナー像が転写部16に到達するタイミングに合わせて、記録材積載部14又は15から給紙及び搬送される。転写部16においてトナー像が転写された記録材は、定着部17に搬送される。定着部17は、トナー像を記録材の表面に定着させる。定着部17による定着処理の後、記録材は排紙部18から画像形成装置100の外部に排紙される。
【0020】
転写部16における転写が行われた後、クリーナ25は、感光体11の表面に残留するトナーを回収することによって、感光体11の表面を清掃する。次に、補助帯電器26が感光体11の表面を除電することによって、次の画像形成の際に、1次帯電器28による帯電により、感光体11が良好な帯電特性を得られるようにする。さらに、感光体11の表面の残留電荷を前露光ランプ27が消去した後、1次帯電器28が感光体11の表面を帯電させる。画像形成装置100は、以上の処理を繰り返すことによって、複数枚の記録材に対する画像形成を実行する。
【0021】
<露光制御部10の構成>
図2A及び図2Bを参照して、本実施形態に係る露光制御部10、及び露光制御部10を制御する光量制御部47について説明する。なお、本実施形態において、露光制御部10及び光量制御部47は、複数のレーザ光源を備え、当該複数のレーザ光源が駆動電流に応じて出力する複数のレーザビームで像担持体の表面を露光する露光装置の一例である。図2Aに示すように、露光制御部10は、レーザ駆動装置31、コリメータレンズ35、絞り32、ポリゴンミラー33、f−θレンズ34、及びBD(Beam Detect)センサ36を備える。レーザ駆動装置31は、複数のレーザ光源に相当する複数の半導体レーザ(レーザダイオード(LD))と、1個のフォトダイオード(PD)とを備える。また、光量制御部47は、CPUを備え、当該CPUによって露光制御部10を制御する。
【0022】
光量制御部47の制御に基づく露光制御部10の動作について説明する。画像形成装置100において画像形成が開始されると、光量制御部47は、レーザ駆動装置31に対して制御信号S47を出力する。光量制御部47は、レーザチップ43内の複数のLD(複数のレーザ光源)が後述する発光シーケンスに従って所望の光量で各光ビーム(レーザビーム)を発光するように、制御信号S47によってレーザ駆動装置31を制御する。レーザチップ43から出射した各レーザビームは、コリメータレンズ35及び絞り32を通過することによってほぼ平行光となった後に、所定のビーム径でポリゴンミラー33に入射する。
【0023】
ポリゴンミラー33は、矢印201の方向に等角速度で回転しており、当該回転に伴って、入射した各レーザビームを連続的な角度で反射する。これにより、ポリゴンミラー33は、入射した各レーザビームを偏向する。ポリゴンミラー33によって偏向された各レーザビームは、f−θレンズ34に入射する。f−θレンズ34は、入射した複数のレーザビームに対して、集光作用を与えるとともに、感光体11の表面を当該複数のレーザビームが走査する際の時間的な直線性を保証するような歪曲収差の補正を行う。これにより、当該複数のレーザビームは、感光体11の表面で結合して、当該表面を矢印202の方向に等速で走査する。
【0024】
ここで、BDセンサ36は、ポリゴンミラー33からの反射光を検出するためのセンサである。BDセンサ36は、ポリゴンミラー33の各鏡面によって反射されるレーザビームのうち、走査開始側におけるレーザビームを検知する位置に配置されている。BDセンサ36は、レーザビームを検出したことに応じて、検出信号(BD信号)S36を光量制御部47へ出力する。光量制御部47は、入力されたBD信号S36を、ポリゴンミラー33の回転と、レーザ駆動装置31における画像信号の書き込み開始タイミングとの同期処理のための同期信号として用いる。
【0025】
光量制御部47は、BD信号S36が示すレーザビームの検出周期を監視する。さらに、光量制御部47は、当該監視結果に基づいて、ポリゴンミラー33の1回転周期が常に一定となるように、ポリゴンミラー33を駆動するポリゴンモータドライバ(図示せず)を、加速又は減速させる制御を行う。かかる制御によって、光量制御部47は、ポリゴンミラー33を安定した回転状態にさせる。
【0026】
<レーザ駆動装置31の構成>
図3A、図3B及び図3Cを参照して、レーザ駆動装置31の動作について説明する。まず、図3Aを参照して、レーザ駆動装置31の構成について説明する。
【0027】
レーザチップ43は、複数のレーザダイオード(LD1〜LDn)と1個のフォトダイオード(PD)とを備える。レーザチップ43内のPDは、検出手段として機能し、検知した光量に応じた電流Imを、電流/電圧変換器401に出力する。電流/電圧変換器401は、入力された電流Imを電圧に変換して出力する。増幅器402は、電流/電圧変換器401から出力された電圧のゲインを調整するための増幅器である。増幅器402においてゲインが調整された電圧Vpdは、APC回路403に与えられる。
【0028】
APC回路403には、光量制御部47からの制御信号S47が入力される。光量制御部47による制御によって、APC回路403は、複数の(n個の)LD1〜LDnを一定の光量で発光させるために、LD1〜LDnの光量を調整する光量制御を行う。変調部413は、LD1〜LDnに供給される駆動電流について、不図示のメモリ等から入力される画像データを用いて変調するための画像変調信号を、論理素子412に出力する。例えば、駆動電流に対してPWMを行う場合には、変調部413は、画像データに応じた幅にパルス信号を、画像変調信号として論理素子412に出力する。論理素子412は、変調部413から出力される画像変調信号と、光量制御部47から出力されるフル点灯信号Fullとの論理和を、インバータ411とスイッチ409−1とに出力する。
【0029】
インバータ411は、論理素子412からの出力信号の論理値を反転させて出力する。即ち、インバータ411は、入力された信号がハイレベル(Hi)の信号である場合、ローレベル(Lo)の信号を出力し、入力された信号がローレベル(Lo)の信号である場合、ハイレベル(Hi)の信号を出力する。インバータ411の出力信号は、スイッチ410−1に供給される。
【0030】
レーザ駆動装置31内には、レーザチップ43内のLD1へ電流を供給する(通電させる)ための電流源404−1〜407−1と、これらの電流源からLD1への電流の供給状態を切り替えるスイッチ408−1〜410−1が設けられている。以下では、LD1に対応するこれらの電流源404−1〜407−1及びスイッチ408−1〜410−1について説明する。ただし、図3Aに示すように、LD2〜LDnに対しても、それぞれ、LD1と同様の電流源及びスイッチ(404−2〜410−2、・・・、404−n〜410−n)が設けられている。
【0031】
以下の説明において、閾値電流とは、レーザ光源(LD1〜LDn)に供給する電流を増加させた際に当該レーザ光源がレーザ発振を開始する閾値(図6AにおいてIth)に相当する。また、スイッチング電流とは、目標光量に対応する電流から当該閾値電流を減算した電流(図6AにおいてIH−Ith)であり、目標光量に対応する電流と当該閾値電流との差分に相当する。また、LD1へ電流を供給するための電流源404−1〜407−1は、閾値電流とスイッチング電流とに応じた駆動電流をLD1へ供給する電流供給手段として機能する。また、他のLD(LD2〜LDn)へ電流を供給する電流源についても同様であり、例えば、LDnへ電流を供給するための電流源404−n〜407−nは、閾値電流とスイッチング電流とに応じた駆動電流をLDnへ供給する電流供給手段として機能する。
【0032】
閾値電流源407−1は、電源とLD1との間に接続されている。閾値電流源407−1からLD1へ供給される電流は、APC回路403によって可変制御される。閾値電流源407−1は、APC回路403によって決定された閾値電流IthをLD1に供給するための電流源であり、本実施形態では第1の電流源として機能する。
【0033】
スイッチング電流源404−1は、電源とLD1間との間に接続されており、閾値電流源407−1と並列にLD1に接続されている。スイッチング電流源404−1から供給される電流は、APC回路403によって可変制御される。スイッチング電流源404−1は、APC回路403によって決定されたスイッチング電流IswをLD1に供給するための電流源であり、本実施形態では第2の電流源として機能する。
【0034】
スイッチング電流源404−1とLD1との間には、スイッチ409−1が設けられている。図3Aに示すように、スイッチ409−1は、閾値電流源407−1と並列にLD1に接続され、かつ、LD1とスイッチング電流源404−1との間に接続されている。スイッチ409−1のON/OFFに応じて、スイッチング電流源404−1からLD1への電流の供給がON/OFFされる。即ち、スイッチ409−1は、スイッチング電流源404−1からLD1への電流の供給状態及び非供給状態をスイッチングさせる。これにより、スイッチング電流源404−1から出力される電流が、画像データ(画像情報)に応じてスイッチングさせたスイッチング電流Iswとして、LD1に供給される。
【0035】
電位むら補正電流源405−1は、電源とLD1との間に接続されている。電位むら補正電流源405−1とLD1との間に設けられたスイッチ410−1のON/OFFに応じて、電位むら補正電流源405−1からLD1への電流の供給がON/OFFされる。また、電位むら補正電流源405−1から供給される電流は、光量制御部47から与えられる電位むら補正値に応じて可変制御される。
【0036】
閾値補正電流源406−1は、スイッチング電流源404−1とLD1との間に接続され、スイッチング電流源404−1に対してスイッチ409−1と並列に接続されている。また、閾値補正電流源406−1は、スイッチ408−1を介してLD1に対して接続されている。閾値補正電流源406−1は、スイッチング電流源404−1からの電流の一部を、スイッチ409−1を介さずにLD1へ供給する(バイパスさせる)電流源であり、本実施形態では第3の電流源として機能する。なお、スイッチング電流源404−1からの電流のうち、閾値補正電流源406−1によってLD1へバイパスされる電流は、後述するように、閾値電流を補正するための補正値に対応する一部の電流である。
【0037】
光量制御部47からの指示によるスイッチ408−1のON/OFFに応じて、閾値補正電流源406−1を介したスイッチング電流源404−1からのLD1への電流の供給が、ON/OFFされる。
【0038】
(APC動作)
次に、図3A〜図3Dを参照して、APC動作について説明する。なお、説明の簡略化のため、LD1を第1のレーザ光源、LD2〜LDnのそれぞれを第2のレーザ光源として、LD1に対するAPC動作についてのみ説明する。しかし、他のレーザ(LD2〜LDn)についても、LD1と同様の制御を行うことによって、LD1〜LDnのそれぞれについてAPC実現できる。
【0039】
まず、閾値補正電流源406−1からLD1に電流を供給しない状態(スイッチ408−1をOFF)におけるAPC動作について説明する。光量制御部47は、LD1を発光させるために、閾値電流源407−1からLD1に供給される閾値電流がIth1となるように、閾値電流源407−1を制御する。また、光量制御部47は、スイッチング電流源404−1からLD1に供給されるスイッチング電流がIsw1となるように、スイッチング電流源404−1を制御する。なお、Ith1及びIsw1には、予め定められた電流値が一時的に設定されてもよいし、前回のAPCで決定した閾値電流及びスイッチング電流が設定されてもよい。
【0040】
図3Cの区間1(最初のAPC動作区間)において、光量制御部47は、閾値電流源407−1及びスイッチング電流源404−1の電流値を、それぞれIth1及びIsw1とした後、フル点灯信号Full(波形301)をLoからHiにする。これにより、論理素子412からHiが出力される。その結果、スイッチ409−1がONに切り替わり、スイッチング電流源404−1からスイッチング電流Isw1がLD1に流れ始める。また、論理素子412からインバータ411に入力された信号は、インバータ411によって論理が反転した状態(Hi→Lo)で、スイッチ410−1に出力される。これにより、スイッチ410−1はOFFとなり、電位むら補正電流源405−1からLD1に電流が流れなくなる。従って、フル点灯信号FullがHiである間は、LD1には閾値電流Ith1とスイッチング電流Isw1とを加算した加算電流が流れることになる。
【0041】
PDは、閾値電流Ith1とスイッチング電流Isw1とを加算した電流の通電によりLD1から発光したレーザビームの光量を測定し、光量に応じた電流を電流/電圧変換器401に出力する。電流/電圧変換器401に入力された電流は電圧に変換され、変換後の電圧は増幅器402で増幅される。増幅された電圧Vpdは、APC回路403に入力される。
【0042】
図3Bに示すように、APC回路403に入力された電圧Vpdは、抵抗501を介してアナログスイッチ502に入力される。アナログスイッチ502は、光量制御部47からのサンプル/ホールド信号H_S/H*(波形305)に応じて、抵抗501及びコンデンサ503によって定まる時定数でコンデンサ503を充電する。具体的には、アナログスイッチ502は、サンプル/ホールド信号H_S/H*がHiの場合に、サンプル状態となり、コンデンサ503を充電する。また、アナログスイッチ502は、サンプル/ホールド信号H_S/H*がHiからLoに切り替わると、ホールド状態となる。これにより、コンデンサ503は、その電圧VshH(波形307)をホールドする。
【0043】
次に、光量制御部47は、フル点灯信号FullをHiからLoに切り替えるとともに、閾値電流についてはIth1から変更せずに、スイッチング電流をIsw2(≒(1/4)Isw1)に変更する。その後、光量制御部47は、フル点灯信号をLoからHiに切り替えて、スイッチング電流Isw2と閾値電流Ith1とを加算した電流を、LD1に通電させることによって、LD1を発光させる。これにより、LD1から発光したレーザビームの光量がPDによって測定されて、上述と同様、測定された光量に応じた電圧VpdがAPC回路403に入力される。
【0044】
APC回路403に入力された電圧Vpdは、抵抗505を介してアナログスイッチ506に入力される。アナログスイッチ506は、光量制御部47からのサンプル/ホールド信号L_S/H*(波形306)に応じて、抵抗505及びコンデンサ507によって定まる時定数でコンデンサ507を充電する。具体的には、アナログスイッチ506は、サンプル/ホールド信号L_S/H*がHiの場合に、サンプル状態となり、コンデンサ507を充電する。また、アナログスイッチ506は、サンプル/ホールド信号L_S/H*がHiからLoに切り替わると、ホールド状態となる。これにより、コンデンサ507は、その電圧VshL(波形308)をホールドする。その後、光量制御部47は、フル点灯信号FullをHiからLoに切り替える。
【0045】
Isw1のスイッチング電流をLD1に通電させた場合のホールド電圧VshHは、比較器504に入力される。比較器504は、入力されたホールド電圧VshHと、目標光量に対応する基準電圧Vrefとを比較して、それらの差分を表す差分信号VapcHを出力する。同様に、Isw2のスイッチング電流をLD1に通電させた場合のホールド電圧VshLは、比較器508に入力される。比較器508は、入力されたホールド電圧VshLと、目標光量に対応する基準電圧に対して1/4の電圧(Vref/4)とを比較して、それらの差分を表す差分信号VapcLを出力する。
【0046】
比較器504、508からそれぞれ出力された差分信号VapcH、VapcLは、ホールド電圧VshH、VshLとともに、演算部509に入力される。演算部509は、LD1に通電される電流が(Ith1+Isw1)である場合のホールド電圧VshHと、LD1に通電される電流が(Ith1+Isw2)である場合のホールド電圧VshLとから、次式により閾値電流Ith2を算出する。
Ith2={VshH(Ith1+Isw2)−VshL(Ith1+Isw1)}
/(VshH−VshL)
【0047】
また、差分信号VapcH、VapcLに対応する電流をIapcH、IapcLとすると、次のAPC動作で使用すべきスイッチング電流Isw1',Isw2'は、次式により算出される。
Isw1'=Ith1+Isw1+IapcH−Ith2
Isw2'=Ith1+Isw2+IapcL−Ith2
以上のように算出されたIth2,Isw1',及びIsw2'は、次のAPC動作(図3Cの区間2において実行されるAPC動作)において用いられる。
【0048】
次に、APC回路403では、区間1のAPC動作の次のAPC動作として、図3Cの区間2において上述のAPC動作と同様の処理が実行される。区間2におけるAPC動作によって得られたホールド電圧をVshH',VshL'とすると、次のAPC動作で使用すべき閾値電流Ith3と、スイッチング電流Isw1'',Isw2''は、次式によって算出される。
Ith3={VshH'(Ith2+Isw2')−VshL'(Ith2+Isw1')}
/(VshH'−VshL')
Isw1''=Ith2+Isw1'+IapcH'−Ith3
Isw2''=Ith2+Isw2'+IapcL'−Ith3
【0049】
上述したAPC動作を繰り返すことによって、差分信号VapcH,VapcLが徐々に0に近づいていき、閾値電流及びスイッチング電流ともに安定するとともに、LD1の光量も安定する。以下では、図3Cに示す区間1及び区間2において上述のように実行された2回のAPCによって、閾値電流IthがIth3で、スイッチング電流IswがIsw1'',Isw2''で、それぞれ安定したものとする。なお、APCによって得られるスイッチング電流Iswのうち、Isw1''は、目標光量に対応するスイッチング電流、Isw2''は、当該目標光量の1/4の光量に対応するスイッチング電流である。このように、光量制御部47及びAPC回路403は、複数のレーザ光源のそれぞれに対して供給すべき閾値電流とスイッチング電流とを決定する決定手段の一例として機能する。
【0050】
ところが、図6A〜図6Cを用いて説明したように、マルチビーム方式のレーザチップにおける各レーザについてAPCを行った場合に得られる各レーザの発光特性の閾値電流は、実際の閾値電流よりも低い値となってしまう。これは、1つのレーザのAPCの実行中に、当該1つのレーザ以外の他のレーザも、閾値電流に満たないバイアス電流により微小に発光(バイアス発光)しており、上述のように、PDを用いて検出される光量に誤差が生じ得るためである。
【0051】
図3Dは、マルチビーム方式のレーザチップに含まれる1つのレーザについてのAPCによって得られる発光特性312,313と、実際の発光特性311との一例を示している。ここでは、上述したように、目標光量に対応する基準電圧Vrefと、目標光量の1/4(以下、1/4光量)に対応する電圧(Vref/4)とを基準として、APCを行った場合を示している。図3Dの発光特性312は、区間1において実行される1回目のAPCによって得られた閾値電流Ith2及びスイッチング電流Isw1'に基づく発光特性である。また、図3Dの発光特性313は、区間2において実行される2回目のAPCによって得られた閾値電流Ith3及びスイッチング電流Isw1''に基づく発光特性である。図3Dに示すように、APCによって安定した閾値電流Ith3は、実際の発光特性311の閾値電流Ith_realに対してΔIthだけ低い値となっている。これは、上述のように、1/4光量についてのAPC動作において検出される電流値に誤差が生じるためである。
【0052】
本実施形態では、各レーザについて、APC動作によって得られた閾値電流を補正するための電流を当該レーザに供給するために、閾値補正電流源406−1〜406−nを使用する。閾値補正電流源406−1〜406−nのうち、LD1に対して電流を供給する閾値補正電流源406−1は、以下のように動作する。
【0053】
閾値補正電流源406−1は、対応するレーザ光源(LD1)についてのAPCにより得られた、上述の誤差の影響を受けている閾値電流Ith3と、当該誤差の影響を受けていない閾値電流Ith_realとの差分(ΔIth)に相当する補正値を使用する。ここで、閾値電流Ith_realは、対応するレーザ光源(LD1)のみを動作させ、当該レーザ光源以外の他のレーザ光源(LD2〜LDn)をOFFにした状態で、APCにより得られた閾値電流である。当該補正値は、レーザ光源(LD1)を発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流Ith3と、他のレーザ光源(LD2〜LDn)をレーザ発振させずに(LD2〜LDnにバイアス電流を供給している状態で)レーザ光源(LD1)を発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流との差分(差分値ΔIth)に相当する。閾値補正電流源406−1は、画像形成のためにレーザLD1〜LDnからのレーザビームで感光体を走査(露光)する際には、当該差分値ΔIthを閾値電流に対する補正値として使用して、当該補正値に相当する量の電流をLD1に供給する。
【0054】
差分値ΔIthについては、例えば、画像形成装置100の工場調整時にIth3及びIth_realをそれぞれ測定し、それらの差分値として事前に算出しておけばよい。なお、本実施形態において、Ith3とIth_realは、第1の閾値電流値と第2の閾値電流値にそれぞれ相当する。このように、差分値ΔIthは、予め定められた補正値として用意され、不図示のメモリ等に予め格納されていればよい。さらに、閾値補正電流源406−1が、算出された差分値の電流ΔIthをレーザLD1に対して供給するように、各電流源に含まれる可変抵抗や電子ボリウム等を調整すればよい。なお、電子ボリウムで調整する場合には、必要な調整値を不図示のメモリ等に予め記憶させておけばよい。
【0055】
閾値補正電流源406−1が差分値ΔIthの電流を供給可能な状態で、当該電流源に接続されたスイッチ408−1を光量制御部47がONにすることによって、当該電流源からLD1に供給(通電)される。これにより、閾値電流源407―1からの閾値電流Ith3を、ΔIthに対応する量だけ増加させた電流が、補正後の閾値電流としてLD1に供給されることになる。
【0056】
また、スイッチング電流源404−1からは、画像変調信号(画像情報)に基づくスイッチ409−1のON/OFFに応じて、画像情報に応じてスイッチングされたスイッチング電流がLD1に供給される。スイッチ409−1がONになると、スイッチング電流源404−1からはIsw1''−ΔIthのスイッチング電流がLD1に供給される。一方で、スイッチ409−1がOFFになると、スイッチング電流源404−1からLD1にスイッチング電流は供給されなくなる。
【0057】
このように、スイッチ409−1がONである場合には、APCによって得られたスイッチング電流Isw1''をΔIthに対応する量だけを減少させた電流が、スイッチング電流源404−1からLD1に供給される。これにより、閾値電流源407―1からの閾値電流Ith3が補正値(ΔIth)で補正される一方で、スイッチング電流源404−1からのスイッチング電流Isw''が同一の補正値(ΔIth)で補正される。これは、ΔIthを用いた閾値電流の補正前及び補正後で、スイッチング電流を通電した場合のLD1の光量が、目標光量から変化することを防ぐためである。即ち、光量制御部47は、スイッチ408−1をONにして、回路内で閾値補正電流源406−1を動作させた状態にすることによって、閾値電流及びスイッチング電流の双方を補正値(ΔIth)で補正する。なお、本実施形態で光量制御部47は補正手段として機能する。
【0058】
さらに、LD2〜LDnについても、LD1と同様に、差分値ΔIthを事前に算出しておき、当該差分値に相当する電流を、閾値補正電流源406−2〜406−nがそれぞれLD2〜LDnに供給する。また、スイッチング電流源404−2〜n及びスイッチ409−2〜409−nの動作についても、スイッチング電流源404−1及びスイッチ409−1と同様である。
【0059】
本実施形態では、光量制御部47とレーザ駆動装置31とがこのように動作することによって、各レーザについて、本来の閾値電流よりも低い閾値電流がAPCにより得られた場合にも、閾値電流を本来の閾値電流に補正して画像形成を行うことが可能である。即ち、マルチビーム方式のレーザチップにおいても、各レーザに対して適切な閾値電流を通電させることが可能になる。さらに、APCによって得られた閾値電流に補正値(差分値)ΔIthの電流を上述のように加算するだけでなく、ΔIthだけ減算したスイッチング電流を、スイッチング電流源404−1〜nからLD1〜LDnにそれぞれ供給する。これにより、ΔIthによる閾値電流の補正前及び補正後における、スイッチング電流と閾値電流との総和を一定に維持することが可能になり、目標光量を変化させることなく、LD1〜LDnを発光させることが可能になる。
【0060】
<画像形成時の補正動作>
次に、図4A、図4Bを参照しながら、感光体11の表面における主走査方向の感度のむらに起因して生じる、感光体11の表面電位のむらを低減するための、画像形成装置100において実行される画像形成動作について説明する。ここで、図7は、画像形成装置100における画像形成動作の手順を示すフローチャートである。図7に示す各ステップの処理は、光量制御部47のCPU(図示せず)が、メモリ等に予め格納された制御プログラムをRAM(図示せず)に読み出して実行することによって実行される。当該画像形成動作には、上述したAPC動作による補正動作も含まれる。なお、説明の簡略化のため、以下では主としてLD1についての動作のみ説明するが、他のレーザ(LD2〜LDn)についてもLD1と同様である。
【0061】
まず、光量制御部47のCPU(以下、単に「CPU」と称する。)は、画像形成コマンドの入力等に応じて、画像形成動作を開始して、S101〜S105の処理を開始する。CPUは、101〜S105の処理を、感光体11の表面における1主走査ラインごとに実行する。CPUは、各ラインの画像領域における画像形成(S105)の前に、S101で、非画像領域において上述のAPC動作を開始する。このとき、CPUは、スイッチ408−1、410−1をOFFにすることで、電位むら補正電流源405−1及び閾値補正電流源406−1をOFFにした状態で、APC動作を実行する。このLD1についてのAPC動作は、上述のように、レーザの発光応答性を高めるためのバイアス電流を、閾値電流源407−2〜407−nからLD2〜LDnに対してそれぞれ供給している状態で行われる。
【0062】
APC動作の開始後、S102で、CPUは、当該APC動作により、LD1に供給すべき駆動電流として、閾値電流Ith3とスイッチング電流Isw1''とを決定する。次に、上述のように、マルチビーム方式においてAPCによって閾値電流Ith3に生じる誤差を補正するための補正値ΔIthで、閾値電流Ith3を補正する。具体的には、APC動作が完了して画像形成動作に移行する前に、S103で、光量制御部47は、閾値補正電流ΔIthを閾値補正電流源406−1からLD1に供給させるために、スイッチ408−1をONにして、閾値補正電流源406−1をOFFからONに切り替える。これにより、閾値電流源407−1からの閾値電流Ith3が、Ith3+ΔIthに補正されて、LD1に供給され始める。
【0063】
次に、S104で、CPUは、感光体11の表面における主走査方向の感度のむらに起因して生じる、感光体11の表面電位のむらを低減するために、当該電位むらの補正動作を開始する。具体的には、CPUは、後述するように、入力される画像データに基づいてスイッチ410−1のON又はOFFにすることによって、当該画像データに基づいて電位むら補正電流源405−1からLD1への電流の供給状態をON又はOFFにする制御を開始する。
【0064】
ここで、BAE方式の画像形成装置100では、感光体11の表面を均一な電位となるように帯電させようとしても、感光体11の感度のむらに起因して、当該表面の位置に応じて異なる電位となる電位むらが発生し得る。図4Aは、感光体11の主走査方向に発生した電位むらの様子を示したものである。同図に示すように、感光体の表面電位421とその理想電位422との間には、主走査方向の位置に応じて異なる誤差が生じていることがわかる。これは、感光体11の表面が位置に応じて異なる感度を有するためである。このような電位むらを低減するために、画像形成装置100は、画像変調信号がLoであって、スイッチング電流をLD1に通電させない場合のLD1の光量を、感光体11の主走査方向における走査位置ごとの補正値に応じて増減させる制御を行う。
【0065】
レーザ駆動装置31において、入力される画像データに基づく画像変調信号(図4Bのパルス信号431)がHiである場合には、スイッチ409−1がONとなるため、スイッチング電流源404−1からLD1に電流が供給される。一方で、インバータ411に入力されたパルス信号431は、極性が反転(Hi→Lo)した状態でスイッチ410−1に与えられる。このため、スイッチ410−1はOFFとなり、電位むら補正電流源405−1からLD1に電流は供給されない。このように、パルス信号431がHiである場合、閾値電流源407−1からの電流Ith3と、閾値補正電流源406−1からの電流ΔIthと、スイッチング電流源404−1からの電流(Isw1''−ΔIth)との和が、LD1に供給される。即ち、LD1には、(Ith3+Isw1'')の大きさの駆動電流432が供給される。
【0066】
また、レーザ駆動装置31において、入力される画像データに基づく画像変調信号(パルス信号431)がLoである場合には、スイッチ409−1がOFFとなるため、スイッチング電流源404−1からLD1に電流は供給されない。一方で、インバータ411に入力されたパルス信号431は、極性が反転(Lo→Hi)した状態でスイッチ410−1に与えられる。このため、スイッチ410−1がONとなり、電位むら補正電流源405−1からLD1に電流が供給される。このように、パルス信号431がLoである場合、閾値電流源407−1からの電流Ith3と、閾値補正電流源406−1からの電流ΔIthと、電位むら補正電流源405−1からの電流Itとの和が、駆動電流432としてLD1に供給される。
【0067】
光量制御部47のCPUは、S104で、感光体11の表面電位のむらの補正動作を開始した後、S105で、画像領域における画像データに基づく画像形成を実行する。CPUは、S105における画像形成の際に、電位むらを補正するための補正電流Itを、電位むら補正電流源405−1からLD1に供給するように、レーザ駆動回路31を制御する。具体的には、光量制御部47のCPUは、BD信号に同期して、主走査方向における走査位置ごとに予め定められた補正値に対応する大きさの補正電流Itを、電位むら補正電流源405−1からLD1に供給させる制御を行う。なお、BD信号は、上述のBDセンサ36から出力される信号であり、主走査同期信号に相当する。補正電流Itは、図4Bに示すように、閾値電流Ith_realの近傍で、感光体11の主走査方向における走査位置(主走査位置)ごとに変化する。
【0068】
光量制御部47のCPUは、感光体11の主走査方向における走査位置に応じた補正値を、その内部のメモリに記憶しており、BD信号に同期して当該補正値を読み出して使用する。光量制御部47は、電位むら補正電流源405−1に出力する制御信号によって、メモリから読み出した補正値に応じて、電位むら補正電流源405−1からLD1に供給される補正電流Itの大きさを変化させる。即ち、補正電流Itは、感光体11の測定値に応じて変化する電流となる。
【0069】
この補正値は、例えば、工場調整時に、感光体11の表面における各主走査位置の感度を測定して得られた測定値から作成され、光量制御部47内のメモリに格納される。感光体11の感度は、例えば、1次帯電器28によって帯電した感光体11の表面に、主走査位置によらず一定の光量のレーザビームを照射した場合の、表面電位の測定値として得られる。補正値は、測定された表面電位の主走査方向における変化が一定となる光量でLD1を発光させるために、電位むら補正電流源405−1からLD1に供給させる補正電流Itに対応する値とすればよい。
【0070】
画像変調信号がLoである場合には、LD1から感光体11に照射されるレーザビームの光量が、上述の補正値に応じて感光体11の主走査位置ごとに増減することで、当該レーザビームの照射後における感光体11の表面電位が主走査位置によらず均一となる。
【0071】
その後、1ラインの画像形成が完了すると、S106で、CPUは、入力された画像データについて、画像形成を実行すべき次のラインが残っているか否かを判定することによって、画像形成を終了するか否かを判定する。ここで、CPUは、画像形成を終了しないと判定した場合、処理をS101に戻す一方で、画像形成を終了すると判定した場合には、図7に示す一連の画像形成動作を終了する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態では、複数のレーザ光源(LD1〜LDn)のそれぞれから照射するレーザビームの光量を目標光量に制御するAPCを行って、当該複数のレーザ光源のそれぞれに供給すべき閾値電流とスイッチング電流とを決定する。さらに、複数のレーザ光源のそれぞれについて、当該レーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流と、当該レーザ光源以外の他のレーザ光源をレーザ発振させずに複数のレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる閾値電流との差分を示す、予め定められた補正値で、決定した閾値電流を補正する。このようにして得られた補正後の閾値電流と、スイッチング電流とを複数のレーザ光源に供給することで、感光体11に複数のレーザビームを照射するとともに、照射した当該複数のレーザビームで感光体11の表面を走査する。
【0073】
本実施形態によれば、APCにより決定された閾値電流が、マルチビーム方式に起因して、本来の電流値よりも減少してしまった場合にも、本来の電流値に補正することができる。その結果、感光体11の感度の測定値に応じた電流をレーザ光源に供給することで、感光体11の表面の電位むらに対処する場合に、マルチビーム方式においても当該電位むらを低減することが可能となる。
【0074】
なお、本実施形態では、BAE方式の画像形成装置に本発明を適用した形態について説明してきたが、本発明は、BAE方式の画像形成装置に限らず、イメージ露光方式の画像形成装置に対しても同様に適用可能である。本発明をイメージ露光方式の画像形成装置に対して適用した場合にも、適切に補正した閾値電流でレーザ光源を駆動させることが可能である。かかる画像形成装置において画像形成を行った場合、レーザ光源の光の立ち上がりがよりシャープになるため、形成される画像をより高画質にすることが可能になる。
【0075】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、マルチビームレーザに対する閾値電流を補正するために、本来の閾値電流Ith_realと、APCにより得られる閾値電流Ith3との差分値に相当する補正電流を、閾値電流Ith3とともに各レーザに供給している。また、工場調整時に、閾値電流Ith_realと閾値電流Ith3とを測定するとともに、それらの差分値を閾値補正電流源406−2〜406−nに対して固定的に与えている。
【0076】
ここで、マルチビームレーザの各レーザの発光特性は、温度に依存して変化する可能性があり、その場合には閾値電流も変化する。例えば、赤外レーザ等のレーザは、温度に依存して発光特性がほとんど変化しないのに対して、赤色レーザ等のレーザは、温度に依存して発光特性が大きく変化して、閾値電流も変化することが知られている。
【0077】
図5Aは、マルチビームレーザの各レーザにおける、温度の上昇に伴う発光特性の変化の様子を示す図である。同図において、温度上昇前のレーザの発光特性521は、第1の実施形態で示した発光特性(図3D及び図4B)と同一である。従って、発光特性521についてのAPCによって得られる閾値電流、及び当該閾値電流を補正するための補正電流は、第1の実施形態と同様、それぞれIth3及びΔIthである。同図において、レーザの温度が上昇すると、その発光特性が521から522に変化して、閾値電流も上昇している。即ち、APCによって得られる閾値電流は、Ith3からIth3'に変化している。この場合に、閾値電流Ith3'に対して補正電流がΔIthで固定されていると、変化後の発光特性522における本来の閾値電流523に対して、524に示す量だけ電流が不足してしまう。
【0078】
このように温度の変化に起因して閾値電流が変化する場合、第1の実施形態のように閾値電流を補正するための補正電流を固定的に設定していると、温度に依存して変化した閾値電流を適切に補正できなくなるおそれがある。これにより、各レーザに供給される閾値電流が本来の閾値電流からずれてしまい、結果的に感光体11の表面電位の電位むらを低減できなくなるおそれがある。
【0079】
第2の実施形態では、閾値電流に対する補正電流を、第1の実施形態のように固定するのではなく、レーザの温度を検知するとともに、検知した温度の変化に応じて変化させる実施形態について説明する。なお、以下では、説明の簡略化のために、第1の実施形態と共通する部分については可能な限りその説明を省略する。
【0080】
図5Bは、本実施形態に係る露光制御部10及び光量制御部47の接続関係を示すブロック図である。同図では、第1の実施形態における図2Bと比較して、露光制御部10内のサーミスタ500と、光量制御部47に接続されたメモリ510とが追加されている。露光制御部10内においてレーザ駆動装置31の近傍に配置されたサーミスタ500は、レーザ近傍の温度を検知すると、検知した温度を示す検知信号S500を光量制御部47に伝送する。光量制御部47は、サーミスタ500によって検知された温度に基づいて、閾値補正電流源406−1〜406−nからLD1〜LDnへ供給される電流を調整する。このように、サーミスタ500は、温度検知手段の一例である。
【0081】
ここで、閾値補正電流源406−1〜406−nは、第1の実施形態と同様、電子ボリウムで調整可能である。メモリ510には、工場調整時に、各レーザについて所定の温度(図5Cでは20℃)で測定されたΔIthに対応する補正電流値が格納されている。光量制御部47は、メモリ510に格納された当該補正電流値に対して、サーミスタ500によって検出された温度に応じて決定した係数αを乗じて得た電流値を、閾値補正電流源406−1〜406−nにそれぞれ設定する。このようにして、複数のレーザ光源(LD1〜LDn)のそれぞれにおける温度の変化に起因したΔIthの変化を補償するように、検知されたレーザ光源の温度に応じて、閾値補正電流源406−1〜406−nについての補正電流値が調整される。この係数αについては、例えば、当該係数αとレーザ光源の温度とを対応付けたテーブルとして、メモリ510に格納されていればよい。この場合、メモリ510に格納された当該テーブルに含まれる、サーミスタ500によって検知された温度に対応する係数αを、同じくメモリ510に格納された、20℃に対応する補正電流値に乗算して得られた値を、調整後の補正電流値とすればよい。
【0082】
レーザの温度とレーザの閾値電流との関係を示す、レーザの温度特性は、1次関数で近似することが可能である。図5Cは、レーザの温度特性に基づいて決定したものであり、サーミスタ500によって検出された温度と、検出された温度に対応して使用すべき係数αとの関係を示している。本実施形態において、光量制御部47は、サーミスタ500によって検出された温度と、図5Cに示す特性とから、検出された温度に対する係数αを決定する。光量制御部47は、決定した係数αを、メモリ510に予め格納された閾値電流値に乗じることで、新たな閾値電流値を算出する。メモリ510にはα=1に対応する、工場調整時に得られた閾値電流値が予め格納されている。
【0083】
図5Cでは、温度20℃に対するαを1としている。光量制御部47は、メモリ510に格納された、20℃に対応する補正電流値に、サーミスタ500によって検出された温度に対応する係数αを乗じることで、閾値補正電流源406−1〜406−nに対して設定すべき補正電流値を決定する。さらに、光量制御部47は、決定した閾値電流値を閾値補正電流源406−1〜406−nに対してそれぞれ設定する。これにより、閾値補正電流源406−1〜406−nは、設定された値の閾値電流を、LD1〜LDnに対してそれぞれ供給する。
【0084】
本実施形態によれば、複数のレーザにおける温度の変化に起因して、当該複数のレーザの発光特性が変化した場合においても、APCにより決定された閾値電流を適切に補正することができるとともに、感光体11の表面電位のむらを低減することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザ光源を備え、当該複数のレーザ光源が駆動電流に応じて出力する複数のレーザビームで像担持体の表面を露光する露光装置であって、
前記複数のレーザ光源から出力されたレーザビームの光量を検出する検出手段と、
前記複数のレーザ光源のうちの1つのレーザ光源に供給する駆動電流を制御して、前記検出手段によって検出される光量を目標光量に制御する光量制御を行うことで、当該1つのレーザ光源に供給する電流を増加させた際に当該1つのレーザ光源がレーザ発振を開始する閾値に相当する閾値電流と、前記目標光量に対応する駆動電流及び当該閾値電流の差分に相当するスイッチング電流と、を決定する決定手段であって、当該1つのレーザ光源以外の他のレーザ光源に前記閾値電流に満たないバイアス電流を供給している状態で前記光量制御を行う、前記決定手段と、
前記1つのレーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる第1の閾値電流値と、前記他のレーザ光源に前記バイアス電流を供給している状態で前記1つのレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる第2の閾値電流値との差分に相当する、予め定められた補正値で、前記決定手段によって決定された閾値電流を補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された閾値電流と前記スイッチング電流とに応じた駆動電流を、前記1つのレーザ光源に供給する電流供給手段と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記補正手段は、
前記決定手段によって決定された閾値電流を、前記補正値に対応する量だけ増加させることによって、当該閾値電流を補正することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記補正手段は、さらに、
前記決定手段によって決定されたスイッチング電流を、前記補正値に対応する量だけ減少させることによって、当該スイッチング電流を補正し、
前記電流供給手段は、
前記補正手段によって補正された閾値電流及びスイッチング電流に応じた駆動電流を、前記1つのレーザ光源に供給する
ことを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記電流供給手段は、
前記1つのレーザ光源に接続され、前記決定手段によって決定された閾値電流を前記1つのレーザ光源に供給するための第1の電流源と、
前記第1の電流源と並列に前記1つのレーザ光源に接続され、前記決定手段によって決定されたスイッチング電流を前記1つのレーザ光源に供給するための第2の電流源と、
前記第1の電流源と並列に前記1つのレーザ光源に接続され、かつ、前記1つのレーザ光源と前記第2の電流源との間に接続されたスイッチであって、前記第2の電流源から前記1つのレーザ光源への電流の供給状態及び非供給状態をスイッチングさせる前記スイッチと、
前記第2の電流源と前記1つのレーザ光源との間に接続され、前記第2の電流源から出力された電流のうち、前記補正値に対応する一部の電流を、前記スイッチを介さずに前記1つのレーザ光源にバイパスさせる第3の電流源と、
を備えることを特徴とする請求項1又は3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記第3の電流源を動作させない状態で前記光量制御を行うことで、前記閾値電流を決定し、
前記補正手段は、前記第3の電流源を動作させることによって、前記決定手段によって決定された閾値電流及びスイッチング電流を補正する
ことを特徴とする請求項4に記載の露光装置。
【請求項6】
前記複数のレーザ光源の温度を検知する温度検知手段をさらに備え、
前記補正手段は、
前記補正値で前記閾値電流を補正する前に、前記複数のレーザ光源の温度の変化に起因した前記差分の変化を補償するように、前記温度検知手段によって検知された温度に応じて前記補正値を調整する調整手段を備える
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の露光装置。
【請求項7】
レーザ光源の温度と、前記補正値を調整するための係数とを対応付けたテーブルが格納された記憶手段をさらに備え、
前記調整手段は、
前記記憶手段に格納された前記テーブルに含まれる、前記温度検知手段によって検知された温度に対応する係数を前記補正値に乗算することで、前記補正値を調整する
ことを特徴とする請求項6に記載の露光装置。
【請求項8】
第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源を含む複数のレーザ光源を備え、当該複数のレーザ光源が駆動電流に応じて出力する複数のレーザビームで像担持体の表面を露光する露光装置であって、
前記複数のレーザ光源から出力されたレーザビームの光量を検出する検出手段と、
前記第1のレーザ光源に供給する駆動電流を制御して、前記検出手段によって検出される光量を目標光量に制御する光量制御を行うことで、前記第1のレーザ光源に供給する電流を増加させた際に前記1つのレーザ光源がレーザ発振を開始する閾値に相当する閾値電流と、前記目標光量に対応する駆動電流及び当該閾値電流の差分に相当するスイッチング電流と、を決定する決定手段であって、前記第2のレーザ光源に前記閾値電流に満たないバイアス電流を供給している状態で前記光量制御を行う、前記決定手段と、
前記第1のレーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる第1の閾値電流値と、前記第2のレーザ光源に前記バイアス電流を供給している状態で前記第1のレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる第2の閾値電流値との差分に相当する、予め定められた補正値で、前記決定手段によって決定された閾値電流を補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された閾値電流と前記スイッチング電流とに応じた駆動電流を、前記第1のレーザ光源に供給する電流供給手段と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項9】
前記像担持体を備える画像形成装置であって、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電手段と、
複数のレーザ光源を備え、画像情報に応じてスイッチングさせたスイッチング電流を前記複数のレーザ光源に供給することにより、当該画像情報に応じた複数のレーザビームで前記像担持体の表面を露光する、請求項1乃至8の何れか1項に記載の露光装置と、
前記露光装置による複数のレーザビームの露光により前記像担持体の表面に形成された静電潜像を現像して、記録材に転写すべき画像を当該像担持体の表面に形成する現像手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記電流供給手段は、さらに、
前記像担持体の表面における主走査方向の感度のむらに起因した、前記像担持体の表面電位のむらを低減するように、当該感度の測定値に応じた電流を、前記複数のレーザ光源に供給することを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項1】
複数のレーザ光源を備え、当該複数のレーザ光源が駆動電流に応じて出力する複数のレーザビームで像担持体の表面を露光する露光装置であって、
前記複数のレーザ光源から出力されたレーザビームの光量を検出する検出手段と、
前記複数のレーザ光源のうちの1つのレーザ光源に供給する駆動電流を制御して、前記検出手段によって検出される光量を目標光量に制御する光量制御を行うことで、当該1つのレーザ光源に供給する電流を増加させた際に当該1つのレーザ光源がレーザ発振を開始する閾値に相当する閾値電流と、前記目標光量に対応する駆動電流及び当該閾値電流の差分に相当するスイッチング電流と、を決定する決定手段であって、当該1つのレーザ光源以外の他のレーザ光源に前記閾値電流に満たないバイアス電流を供給している状態で前記光量制御を行う、前記決定手段と、
前記1つのレーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる第1の閾値電流値と、前記他のレーザ光源に前記バイアス電流を供給している状態で前記1つのレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる第2の閾値電流値との差分に相当する、予め定められた補正値で、前記決定手段によって決定された閾値電流を補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された閾値電流と前記スイッチング電流とに応じた駆動電流を、前記1つのレーザ光源に供給する電流供給手段と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記補正手段は、
前記決定手段によって決定された閾値電流を、前記補正値に対応する量だけ増加させることによって、当該閾値電流を補正することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記補正手段は、さらに、
前記決定手段によって決定されたスイッチング電流を、前記補正値に対応する量だけ減少させることによって、当該スイッチング電流を補正し、
前記電流供給手段は、
前記補正手段によって補正された閾値電流及びスイッチング電流に応じた駆動電流を、前記1つのレーザ光源に供給する
ことを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記電流供給手段は、
前記1つのレーザ光源に接続され、前記決定手段によって決定された閾値電流を前記1つのレーザ光源に供給するための第1の電流源と、
前記第1の電流源と並列に前記1つのレーザ光源に接続され、前記決定手段によって決定されたスイッチング電流を前記1つのレーザ光源に供給するための第2の電流源と、
前記第1の電流源と並列に前記1つのレーザ光源に接続され、かつ、前記1つのレーザ光源と前記第2の電流源との間に接続されたスイッチであって、前記第2の電流源から前記1つのレーザ光源への電流の供給状態及び非供給状態をスイッチングさせる前記スイッチと、
前記第2の電流源と前記1つのレーザ光源との間に接続され、前記第2の電流源から出力された電流のうち、前記補正値に対応する一部の電流を、前記スイッチを介さずに前記1つのレーザ光源にバイパスさせる第3の電流源と、
を備えることを特徴とする請求項1又は3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記第3の電流源を動作させない状態で前記光量制御を行うことで、前記閾値電流を決定し、
前記補正手段は、前記第3の電流源を動作させることによって、前記決定手段によって決定された閾値電流及びスイッチング電流を補正する
ことを特徴とする請求項4に記載の露光装置。
【請求項6】
前記複数のレーザ光源の温度を検知する温度検知手段をさらに備え、
前記補正手段は、
前記補正値で前記閾値電流を補正する前に、前記複数のレーザ光源の温度の変化に起因した前記差分の変化を補償するように、前記温度検知手段によって検知された温度に応じて前記補正値を調整する調整手段を備える
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の露光装置。
【請求項7】
レーザ光源の温度と、前記補正値を調整するための係数とを対応付けたテーブルが格納された記憶手段をさらに備え、
前記調整手段は、
前記記憶手段に格納された前記テーブルに含まれる、前記温度検知手段によって検知された温度に対応する係数を前記補正値に乗算することで、前記補正値を調整する
ことを特徴とする請求項6に記載の露光装置。
【請求項8】
第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源を含む複数のレーザ光源を備え、当該複数のレーザ光源が駆動電流に応じて出力する複数のレーザビームで像担持体の表面を露光する露光装置であって、
前記複数のレーザ光源から出力されたレーザビームの光量を検出する検出手段と、
前記第1のレーザ光源に供給する駆動電流を制御して、前記検出手段によって検出される光量を目標光量に制御する光量制御を行うことで、前記第1のレーザ光源に供給する電流を増加させた際に前記1つのレーザ光源がレーザ発振を開始する閾値に相当する閾値電流と、前記目標光量に対応する駆動電流及び当該閾値電流の差分に相当するスイッチング電流と、を決定する決定手段であって、前記第2のレーザ光源に前記閾値電流に満たないバイアス電流を供給している状態で前記光量制御を行う、前記決定手段と、
前記第1のレーザ光源のみを発光させた場合の発光特性から求まる第1の閾値電流値と、前記第2のレーザ光源に前記バイアス電流を供給している状態で前記第1のレーザ光源を発光させた場合の発光特性から求まる第2の閾値電流値との差分に相当する、予め定められた補正値で、前記決定手段によって決定された閾値電流を補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された閾値電流と前記スイッチング電流とに応じた駆動電流を、前記第1のレーザ光源に供給する電流供給手段と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項9】
前記像担持体を備える画像形成装置であって、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電手段と、
複数のレーザ光源を備え、画像情報に応じてスイッチングさせたスイッチング電流を前記複数のレーザ光源に供給することにより、当該画像情報に応じた複数のレーザビームで前記像担持体の表面を露光する、請求項1乃至8の何れか1項に記載の露光装置と、
前記露光装置による複数のレーザビームの露光により前記像担持体の表面に形成された静電潜像を現像して、記録材に転写すべき画像を当該像担持体の表面に形成する現像手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記電流供給手段は、さらに、
前記像担持体の表面における主走査方向の感度のむらに起因した、前記像担持体の表面電位のむらを低減するように、当該感度の測定値に応じた電流を、前記複数のレーザ光源に供給することを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【公開番号】特開2013−55158(P2013−55158A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191068(P2011−191068)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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