説明

露出設定方法及び装置

【課題】簡単な構成で手ブレ及び被写体ブレによる撮影ミスを防止できる露出設定方法及び装置を提供する。
【解決手段】測光して求めたEV値に基づいて感度と絞り値とシャッタ速度とを設定する露出設定方法において、手ブレ限界シャッタ速度よりも所定段速いシャッタ速度を下限シャッタ速度として規定し、シャッタ速度が、常に下限シャッタ速度以上になるように、感度と絞り値とシャッタ速度とを設定し、感度と絞り値が設定限界に達すると、シャッタ速度を下限シャッタ速度よりも遅く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は露出設定方法及び装置に係り、特に撮影時の手ブレ、被写体ブレを軽減するデジタルカメラの露出設定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影時に手ブレが生じると、画像がブレ、ぼやけた画像が撮影されてしまうという欠点がある。このため手ブレ補正機能を搭載したデジタルカメラが増えている。
【0003】
従来の手ブレ補正機構としては、ブレを打ち消すように、撮影光学系の一部を平行移動させてブレを補正するレンズシフト方式や、ブレを打ち消すように、撮像素子を平行移動させてブレを補正する撮像素子シフト方式などが知られている。
【特許文献1】特開2005−128092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レンズシフト方式や撮像素子シフト方式の手ブレ補正機構をデジタルカメラに搭載すると、デジタルカメラの構成が複雑かつ大型化し、またコスト高になるという欠点があった。また、手ブレによる撮影ミスは防止できるが、被写体が動いて撮影ミスする被写体ブレは防止できないという欠点もあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で手ブレ及び被写体ブレによる撮影ミスを防止できる露出設定方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、測光して求めた測光値に基づいて感度と絞り値とシャッタ速度とを設定する露出設定方法において、手ブレ限界シャッタ速度よりも所定段速いシャッタ速度を下限シャッタ速度として規定し、シャッタ速度が、常に前記下限シャッタ速度以上になるように、感度と絞り値とシャッタ速度とを設定し、感度と絞り値が設定限界に達すると、シャッタ速度を前記下限シャッタ速度よりも遅く設定することを特徴とする露出設定方法を提供する。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、感度と絞りの設定限界に達するまで、シャッタ速度が下限シャッタ速度以上に維持される。これにより、手ブレと被写体ブレを効果的に抑止でき、撮影ミスを防止できる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、感度を一定にした状態で常にシャッタ速度が前記下限シャッタ速度以上になるように、絞り値とシャッタ速度とを設定し、絞り値が設定限界に達すると、感度を上げてシャッタ速度を前記下限シャッタ速度以上に設定し、感度が設定限界値に達すると、シャッタ速度を前記下限シャッタ速度よりも遅く設定することを特徴とする請求項1に記載の露出設定方法を提供する。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、まず、感度を一定にした状態でシャッタ速度が下限シャッタ速度以上になるように、絞り値とシャッタ速度とが設定される。そして、絞り値が設定限界に達すると、感度を上げてシャッタ速度が下限シャッタ速度以上になるように設定される。これにより、手ブレ、被写体ブレによる撮影ミスを防止できる。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、ブレ軽減を目的とする撮影モードに設定されると、請求項1又は2に記載の露出設定方法で感度と絞り値とシャッタ速度を設定し、通常モードに設定されると、シャッタ速度が、常に前記手ブレ限界シャッタ速度以上になるように、感度と絞り値とシャッタ速度とを設定し、感度と絞り値が設定限界値に達すると、シャッタ速度を前記手ブレ限界シャッタ速度よりも遅く設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の露出設定方法を提供する。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、通常モードに設定されると、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上に維持され、ブレ軽減を目的とする撮影モードに設定されると、下限シャッタ速度以上に維持される。これにより、撮影目的に応じた撮影方法を選択できるようになる。すなわち、通常モードを選択すれば、感度アップによる画質低下を抑えることができ、ブレ軽減を目的とする撮影モードを選択すれば、手ブレ、被写体ブレによる撮影ミスを防止できる。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、測光して求めた測光値に基づいて感度と絞り値とシャッタ速度とを設定する露出設定装置において、手ブレ限界シャッタ速度よりも所定段速いシャッタ速度を下限シャッタ速度として記憶する記憶手段と、シャッタ速度が、常に前記下限シャッタ速度以上になるように、感度と絞り値とシャッタ速度とを設定し、感度と絞り値が設定限界に達すると、シャッタ速度を前記下限シャッタ速度よりも遅く設定する露出設定手段と、を備えたことを特徴とする露出設定装置を提供する。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、感度と絞りの設定限界に達するまで、シャッタ速度が下限シャッタ速度以上に維持される。これにより、手ブレと被写体ブレを効果的に抑止でき、撮影ミスを防止できる。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、前記露出設定手段は、感度を一定にした状態で常にシャッタ速度が前記下限シャッタ速度以上になるように、絞り値とシャッタ速度とを設定し、絞り値が設定限界に達すると、感度を上げてシャッタ速度を前記下限シャッタ速度以上に設定し、感度が設定限界値に達すると、シャッタ速度を前記下限シャッタ速度よりも遅く設定することを特徴とする請求項4に記載の露出設定装置を提供する。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、まず、感度を一定にした状態でシャッタ速度が下限シャッタ速度以上になるように、絞り値とシャッタ速度とが設定される。そして、絞り値が設定限界に達すると、感度を上げてシャッタ速度が下限シャッタ速度以上になるように設定される。これにより、手ブレ、被写体ブレによる撮影ミスを防止できる。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記目的を達成するために、撮影モードとして通常モードに切り換える切換手段を有し、該通常モードに切り換えられると、前記露出設定手段は、シャッタ速度が、常に前記手ブレ限界シャッタ速度以上になるように、感度と絞り値とシャッタ速度とを設定し、感度と絞り値が設定限界に達すると、シャッタ速度を前記手ブレ限界シャッタ速度よりも遅く設定することを特徴とする請求項4又は5に記載の露出設定装置を提供する。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、撮影モードが、通常モードに設定されると、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上に維持される。これにより、撮影目的に応じた撮影方法を選択できるようなる。すなわち、通常モードを選択すれば、感度アップによる画質低下を抑えることができ、他のモードを選択すれば、手ブレ、被写体ブレによる撮影ミスを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る露出設定方法及び装置によれば、簡単な構成で効果的に手ブレ及び被写体ブレによる撮影ミスを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明に係る露出設定方法及び装置を実施するための最良の形態について詳説する。
【0020】
図1は、本発明が適用されたデジタルカメラの構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施の形態のデジタルカメラ10は、撮影光学系12、撮像素子14、タイミングジェネレータ(TG)16、アナログ信号処理部18、A/D変換器20、画像入力コントローラ22、デジタル信号処理部24、エンコーダ28、画像表示部30、圧縮・伸張処理部32、メディアコントローラ34、記憶メディア36、AE検出部38、AF検出部40、CPU42、ROM44、RAM46、フラッシュROM48、操作部50等で構成されている。
【0021】
デジタルカメラ10の全体の動作は、CPU42によって統括制御されており、CPU42は操作部50からの入力に基づき所定のプログラムに従ってデジタルカメラ10の各部を制御する。
【0022】
ROM44には、このCPU42が実行するプログラムの他、プログラム線図等の各種制御に必要なデータが格納されている。CPU42は、このROM44に格納されたプログラムをRAM46に展開し、RAM46を作業メモリとして使用しながら各種処理を実行する。また、フラッシュROM48には、ユーザ設定情報等のデジタルカメラ10の動作に関する各種設定情報等が格納されている。
【0023】
撮影光学系12は、ズームレンズ12z、フォーカスレンズ12f、絞り(たとえば、虹彩絞り)12iを含み、それぞれズームモータ60z、フォーカスモータ60f、アイリスモータ60iに駆動されて作動する。すなわち、ズームレンズ12zは、ズームモータ60zに駆動されて撮影光軸上を前後移動し、これにより、焦点距離を変化させる。また、フォーカスレンズ12fは、フォーカスモータ60fに駆動されて撮影光軸上を前後移動し、これにより結像位置を変化させる。また、絞り12iは、アイリスモータ60iに駆動されて開口量が段階的に変化し、これにより絞り値を変化させる。CPU42は、ズームモータドライバ62z、フォーカスモータドライバ62f、アイリスモータドライバ62iを介してズームモータ60z、フォーカスモータ60f、アイリスモータ60iの駆動を制御し、ズームレンズ12z、フォーカスレンズ12f、絞り12iの動作を制御する。
【0024】
撮像素子14は、所定のカラーフィルタ配列(たとえば、ベイヤ配列)のカラーCCDで構成されている。撮影光学系12を介して撮像素子14の受光面に入射した光は、その受光面に配列された各フォトダイオードによって入射光量に応じた量の信号電荷に変換される。そして、各フォトダイオードに蓄積された信号電荷は、タイミングジェネレータ(TG)16から加えられるタイミング信号に従って読み出され、電圧信号(画像信号)として撮像素子14から順次出力される。
【0025】
なお、この撮像素子14は、シャッタゲートとシャッタドレインを備えており、シャッタゲートにシャッタゲートパルスを印加することで各フォトダイオードに蓄積された信号電荷をシャッタドレインに掃き出すことができるようにされている。CPU42は、TG16を介してシャッタゲートへのシャッタゲートパルスの印加を制御することにより、各フォトダイオードに蓄積される信号電荷の電荷蓄積時間(シャッタ速度)を制御する(いわゆる電子シャッタ機能)。
【0026】
アナログ信号処理部18は、撮像素子14から順次出力される画像信号を相関二重サンプリング処理するとともに増幅する。A/D変換器20は、このアナログ信号処理部18から出力されたアナログの画像信号をデジタルの画像信号に変換する。
【0027】
画像入力コントローラ22は、所定容量のバッファメモリを内蔵しており、A/D変換器20から出力された画像信号を1コマ分蓄積して、RAM46に格納する。
【0028】
デジタル信号処理部24は、同時化回路、ガンマ補正回路、輪郭補正回路、輝度・色差信号生成回路等を含み、CPU42からの指令に従ってRAM46に格納された画像信号を処理し、輝度信号と色差信号とからなるYUV信号を生成する。
【0029】
画像表示部30にスルー画像を表示させる場合は、撮像素子14で画像を連続的に撮像し、得られた画像信号を連続的に処理してYUV信号を生成する。生成されたYUV信号は、RAM46を介してエンコーダ28に加えられ、表示用の信号形式に変換されて画像表示部30に出力される。これにより、画像表示部30にスルー画像が表示される。
【0030】
画像を記録する場合は、操作部50からの撮影指令に応じて撮像素子14で画像を撮像し、得られた画像信号を処理してYUV信号を生成する。生成されたYUV信号は、圧縮・伸張処理部32に加えられ、所定の圧縮画像データ(たとえば、JPEG)とされたのち、メディアコントローラ34を介して記憶メディア36に格納される。
【0031】
記憶メディア36に格納された圧縮画像データは、再生指令に応じて記憶メディア36から読み出され、圧縮・伸張処理部32で非圧縮のYUV信号とされたのち、エンコーダ28を介して画像表示部30に出力される。これにより、記憶メディア36に記録された画像が画像表示部30に再生表示される。
【0032】
AE検出部38は、CPU42からの指令に従い、入力された画像信号からAE制御に必要な物理量を算出する。たとえば、AE制御に必要な物理量として、1画面を複数のエリア(例えば、16×16)に分割し、分割したエリアごとにR、G、Bの画像信号の積算値を算出する。CPU42は、このAE検出部38から得た積算値に基づいて被写体の明るさを検出して測光値(EV値)を求め、求めたEV値に基づいて撮影時の露出を設定する。この露出設定方法については、のちに詳述する。
【0033】
AF検出部40は、CPU42からの指令に従い、入力された画像信号からAF制御に必要な物理量を算出する。本実施の形態のデジタルカメラ10では、画像のコントラストによりAF制御を行うものとし、AF検出部40は、入力された画像信号から画像の鮮鋭度を示す焦点評価値を算出する。CPU42は、このAF検出部40で算出される焦点評価値が極大となるように、フォーカスモータドライバ62fを介してフォーカスモータ60fを駆動し、フォーカスレンズ12fの移動を制御する。
【0034】
本実施の形態のデジタルカメラ10は以上のように構成される。
【0035】
次に、本実施の形態のデジタルカメラ10における露出設定方法について説明する。上記のように、本実施の形態のデジタルカメラ10では、被写体の明るさを検出してEV値を求め、求めたEV値に基づいて露出を設定する。
【0036】
この際、本実施の形態のデジタルカメラ10では、手ブレ、被写体ブレによる撮影ミスを防止するため、常にシャッタ速度が規定のシャッタ速度(下限シャッタ速度)以上に設定され、感度と絞り値が設定限界に達すると、シャッタ速度が下限シャッタ速度よりも遅く設定される。
【0037】
ここで、下限シャッタ速度とは、手ブレ限界シャッタ速度よりも所定段速い値に設定されたシャッタ速度であって、たとえば手ブレ限界シャッタ速度よりも3段分速いシャッタ速度が設定される。
【0038】
また、手ブレ限界シャッタ速度は、一般に焦点距離(35mmフィルム換算値)に依存し、1/焦点距離[秒]が規定される。たとえば、焦点距離が35mmフィルム換算で60mmの場合、1/60秒が手ブレ限界シャッタ速度となる。
【0039】
なお、焦点距離に依存せずに一律に設定してもよい。たとえば、一律に1/60秒を手ブレ限界シャッタ速度としてもよい。
【0040】
図2は、本実施の形態のデジタルカメラ10で用いるプログラム線図の一例を示す図であり、焦点距離45mm(35mmフィルム換算)の時のプログラム線図を示している。
【0041】
焦点距離が45mmの場合、手ブレ限界シャッタ速度は1/45秒となり、下限シャッタ速度は、それよりも3段速い1/360秒となる。
【0042】
したがって、常にシャッタ速度が1/360秒よりも速くなるように、感度、絞り値、シャッタ速度が設定され、絞り値と感度が設定限界に達すると、シャッタ速度が1/360秒よりも遅く設定される。
【0043】
ここで、本実施の形態のデジタルカメラ10では、感度としてISO200、ISO400、ISO800、ISO1600が設定できるものとし、絞り値としてF2.8、F4、F5.6、F8、F11が設定できるものとすると、感度の限界がISO1600、絞り値の限界がF2.8となる。したがって、感度ISO1600、絞り値F2.8になるまでは、シャッタ速度が下限シャッタ速度(1/360秒)上に維持され、感度ISO1600、絞り値F2.8になると、シャッタ速度が下限シャッタ速度よりも遅く設定される。
【0044】
図2に示すプログラム線図の場合、EV18〜EV11.5の範囲では、感度を一定(ISO200)にして、絞り値を段階的に変えることにより、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に維持する。
【0045】
絞り値はEV11.5で設定限界(F2.8)に達するので、EV8.5〜EV11.5の範囲では、絞り値を一定(F2.8)にして、感度を段階的に変えることにより、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に維持する。
【0046】
また、感度はEV8.5で設定限界(ISO1600)に達するので、EV8.5以下の範囲では、感度、絞り値共に一定とし、シャッタ速度のみを変えて露出を設定する。この場合、シャッタ速度が下限シャッタ速度以下に設定される。
【0047】
このようにシャッタ速度を可能な限り下限シャッタ速度以上に設定することにより、常に速いシャッタ速度を確保することができ、手ブレ、被写体ブレを効果的に抑止することができる。
【0048】
また、この場合において、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に保つために、まず、感度を固定し、絞り値を段階的に変化させることにより、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に保ち、絞り値が設定限界に達すると、感度を段階的に変化させて、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に保つようにする。
【0049】
なお、実際の撮影は次のように行われる。まず、シャッタボタンの半押しで操作部50からCPU42にS1オン信号が入力される。CPU42は、この操作部50から入力されるS1オン信号の入力に応動して、AE、AF処理を実行する。すなわち、AE処理として、撮像素子14から測光用の画像信号を取り込み、AE検出部38に加える。AE検出部38は、入力された画像信号から積算値を算出し、CPU42に出力する。CPU42は、このAE検出部38から得た積算値に基づいてEV値を算出し、上記のプログラム線図に従って露出を設定する。
【0050】
また、CPU42は、AF処理として、撮像素子14からAF用の画像信号を取り込み、AF検出部40に加える。AF検出部40は、入力された画像信号から焦点評価値を算出し、CPU42に出力する。CPU42は、このAF検出部40から得た焦点評価値が極大となるように、フォーカスモータ60fの駆動を制御し、主要被写体にピントを合わせる。
【0051】
この後、シャッタボタンが全押しされると、操作部50からCPU42にS2オン信号が入力される。CPU42は、この操作部から入力されるS2オン信号に応動して、画像の撮影、記録処理を実行する(再度シャッタボタンが半押しされた場合は、もう一度AE、AF処理を実行する。)。すなわち、記録用の画像信号を撮像素子14から取り込み、デジタル信号処理部24に加える。デジタル信号処理部24は、入力された画像信号に所要の信号処理を施してYUV信号を作成する。作成されたYUV信号は、圧縮・伸張処理部32で圧縮処理され、メディアコントローラ34を介して記憶メディア36に記録される。以上一連の工程で画像が、撮影され、記憶メディア36に記録される。
【0052】
図3は、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に維持するための他の露出設定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0053】
この方法では、まず、測光によりEV値を求め(ステップS10)、求めたEV値が限界値よりも小さいか否か判定する(ステップS11)。この限界値は、設定感度の下で絞り値を変えることにより、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に保てる値として設定され、感度ごとに設定される。たとえば、図2に示すように、感度がISO200の下ではEV11.5、ISO400の下ではEV10.5、ISO800の下ではEV9.5、ISO1600の下ではEV8.5に設定される(ただし、下限シャッタ速度が1/360秒のとき)。
【0054】
測光により求めたEV値が、現在設定されている感度における限界値よりも大きい場合は、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に設定できるので、シャッタ速度を下限シャッタ速度よりも速いシャッタ速度に設定する(ステップS12)。たとえば、下限シャッタ速度が1/360秒なので、1/500秒付近に設定する。そして、設定したシャッタ速度の下で絞り値を決定する(ステップS13)。
【0055】
一方、測光により求めたEV値が、現在設定されている感度における限界値よりも小さい場合は、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に設定できないので、感度をアップする。この場合、感度も設定限界があるので、現在の設定感度が、設定限界に達しているか否か判定する(ステップS14)。この判定の結果、感度が設定限界に達していない場合は、感度を一段アップする(ステップS15)。感度を一段アップすると、限界値も変わるので、再度、測光により求めたEV値と新たな限界値とを比較し、EV値が限界値より小さいか否か判定する(ステップS16)。
【0056】
測光により求めたEV値が、新たな限界値よりも大きい場合は、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に設定できるので、シャッタ速度を下限シャッタ速度よりも速いシャッタ速度に設定し(ステップS12)、設定したシャッタ速度の下で絞り値を決定する(ステップS13)。
【0057】
一方、測光により求めたEV値が、限界値よりも小さい場合は、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に設定できないので、ステップS14に戻り、感度をアップできるか否か判定する。すなわち、感度が設定限界に達しているか否かを判定する。
【0058】
感度が設定限界に達している場合は、感度、絞り値共に変えることができないので、通常のシャッタ速度を設定し(ステップS17)、設定したシャッタ速度の下で絞り値を決定する(ステップS13)。
【0059】
このように、本例の場合でも、可能な限りシャッタ速度を下限シャッタ速度以上に設定することができ、これにより、手ブレ、被写体ブレを効果的に抑止することができる。
【0060】
次に、本発明に係る露出設定方法の第2の実施の形態について説明する。
【0061】
上記第1の実施の形態の露出設定方法では、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に維持することにより、手ブレ、被写体ブレを防止するようにしているが、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に維持すると、感度アップにより画質が低下するという問題がある。
【0062】
そこで、第2の実施の形態では、露出設定の方法として、通常撮影モードと、ブレ軽減を目的とするブレ軽減撮影モードとを選択できるように構成し、ブレ軽減撮影モードが選択された場合にのみシャッタ速度を下限シャッタ速度以上に維持し、通常撮影モードが選択された場合は、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に維持するように露出制御を行う。
【0063】
図4は通常撮影モードで用いるプログラム線図の一例を示す図であり、焦点距離45mm(35mmフィルム換算)の時のプログラム線図を示している。この場合、手ブレ限界シャッタ速度は1/45秒となる。
【0064】
図4に示すように、EV18〜EV8.5の範囲では、感度を一定(ISO200)にして、絞り値を段階的に変えることにより、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に維持する。
【0065】
絞り値はEV8.5で設定限界(F2.8)に達するので、EV5.5〜EV8.5の範囲では、絞り値を一定(F2.8)にして、感度を段階的に変えることにより、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に維持する。
【0066】
また、感度はEV5.5で設定限界(ISO1600)に達するので、EV5.5以下の範囲では、感度、絞り値共に一定とし、シャッタ速度のみを変えて露出を設定する。この場合、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以下に設定される。
【0067】
ブレ軽減撮影モードでは、図2に示したようなプログラム線図を使用して露出設定を行い、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に維持する。
【0068】
ブレ軽減撮影モードと通常撮影モードとの切り換えは、操作部50で行い、たとえば専用の切換スイッチをカメラボディに設置し、この切換スイッチの設定により、モードの切り換えを行う。この他、画像表示部30を利用したGUIによりモードの設定を行うようにしてもよいし、特定の撮影モードに連動して自動で切り替わるようにしてもよい。また、三脚への取り付けを検知して、自動で切り換えるようにしてもよい。すなわち、カメラ本体を三脚に取り付けた場合は、手ブレのおそれがないので、自動的に通常撮影モードに設定するようにしてもよい。
【0069】
図5は、通常撮影モード時における他の露出設定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0070】
この方法では、まず、測光によりEV値を求め(ステップS20)、求めたEV値が手ブレ限界値よりも小さいか否か判定する(ステップS21)。この手ブレ限界値は、設定感度の下で絞り値を変えることにより、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に保てる値として設定され、感度ごとに設定される。たとえば、図4に示すように、感度がISO200の下ではEV8.5、ISO400の下ではEV7.5、ISO800の下ではEV6.5、ISO1600の下ではEV5.5に設定される(ただし、手ブレ限界シャッタ速度が1/45秒のとき)。
【0071】
測光により求めたEV値が、現在設定されている感度における手ブレ限界値よりも大きい場合は、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に設定できるので、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度よりも速いシャッタ速度に設定する(ステップS22)。そして、設定したシャッタ速度の下で絞り値を決定する(ステップS23)。
【0072】
一方、測光により求めたEV値が、現在設定されている感度における限界値よりも小さい場合は、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に設定できないので、感度をアップする。この場合、感度も設定限界があるので、現在の設定感度が、設定限界に達しているか否か判定する(ステップS24)。この判定の結果、感度が設定限界に達していない場合は、感度を一段アップする(ステップS25)。感度を一段アップすると、手ブレ限界値も変わるので、再度、測光により求めたEV値と新たな手ブレ限界値とを比較し、EV値が手ブレ限界値より小さいか否か判定する(ステップS26)。
【0073】
測光により求めたEV値が、手ブレ限界値よりも大きい場合は、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に設定できるので、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度よりも速いシャッタ速度に設定し(ステップS22)、設定したシャッタ速度の下で絞り値を決定する(ステップS23)。
【0074】
一方、測光により求めたEV値が、手ブレ限界値よりも小さい場合は、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に設定できないので、ステップS24に戻り、感度をアップできるか否か判定する。すなわち、感度が設定限界に達しているか否かを判定する。
【0075】
感度が設定限界に達している場合は、感度、絞り値共に変えることができないので、通常のシャッタ速度を設定し(ステップS27)、設定したシャッタ速度の下で絞り値を決定する(ステップS23)。
【0076】
以上の方法によっても可能な限りシャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に設定することができる。
【0077】
図6は、通常撮影モード時における他の露出設定方法の処理手順を示すフローチャートであり、絞りが一定の場合の露出設定方法を示している。
【0078】
まず、測光によりEV値を求め(ステップS30)、絞り値を設定する(ステップS31)。絞り値はユーザが設定してもよいし、他の条件により自動で設定してもよい。
【0079】
次に、設定された絞り値からEV値に基づいて仮のシャッタ速度Sを求める(ステップS32)。求めたシャッタ速度Sが、手ブレ限界シャッタ速度Sよりも速いか否か判定する(ステップS33)。仮のシャッタ速度Sが、手ブレ限界シャッタ速度Sよりも速い場合は、その仮のシャッタ速度を撮影のシャッタ速度に設定する(ステップS34)。
【0080】
一方、仮のシャッタ速度Sが、手ブレ限界シャッタ速度Sよりも遅い場合は、感度が設定限界に達しているか否か判定する(ステップS35)。感度が設定限界に達していない場合は、感度を一段アップし(ステップS36)、変更した感度の下で仮のシャッタ速度を再度設定する(ステップS32)。そして、そのシャッタ速度Sが、手ブレ限界シャッタ速度Sよりも速いか否か判定する(ステップS33)。
【0081】
一方、ステップS35で感度が設定限界に達している場合は、感度を上げることができないので、仮のシャッタ速度Sを撮影のシャッタ速度に設定する(ステップS34)。
【0082】
以上の方法によっても可能な限りシャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に設定することができる。
【0083】
図7は、ブレ軽減撮影モード時における他の露出設定方法の処理手順を示すフローチャートであり、絞りが一定の場合の露出設定方法を示している。
【0084】
まず、測光によりEV値を求め(ステップS40)、絞り値を設定する(ステップS41)。絞り値はユーザが設定してもよいし、他の条件により自動で設定してもよい。
【0085】
次に、求めたEV値が限界値よりも小さいか否か判定する(ステップS42)。この限界値は、設定されている感度、絞り値の下でシャッタ速度を下限シャッタ速度以上に保てる値として設定され、感度、絞り値ごとに設定される。
【0086】
測光により求めたEV値が、現在設定されている感度、絞り値における限界値よりも大きい場合は、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に設定できるので、シャッタ速度を下限シャッタ速度よりも速いシャッタ速度に設定する(ステップS43)。
【0087】
一方、測光により求めたEV値が、現在設定されている感度、絞り値における限界値よりも小さい場合は、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に設定できないので、感度をアップする。この場合、感度も設定限界があるので、現在の設定感度が設定限界に達しているか否か判定し(ステップS44)、感度が設定限界に達していない場合は、感度を一段アップする(ステップS45)。感度を一段アップすると、限界値も変わるので、再度、測光により求めたEV値と新たな限界値とを比較し、EV値が限界値より小さいか否か判定する(ステップS46)。そして、測光により求めたEV値が、新たに設定した限界値よりも大きい場合は、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に設定できるので、シャッタ速度を下限シャッタ速度よりも速いシャッタ速度に設定する(ステップS43)。
【0088】
一方、測光により求めたEV値が、限界値よりも小さい場合は、シャッタ速度を下限シャッタ速度以上に設定できないので、ステップS44に戻り、感度をアップできるか否か判定する。すなわち、感度が設定限界に達しているか否かを判定する。
【0089】
感度が設定限界に達している場合は、感度を変えることができないので、通常のシャッタ速度を設定する(ステップS47)。
【0090】
このように、本例の場合でも、可能な限りシャッタ速度を下限シャッタ速度以上に設定することができ、これにより、手ブレ、被写体ブレを効果的に抑止することができる。なお、この方法は上述した第1の実施の形態の露出設定方法においても使用することができる。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態の露出設定方法によれば、感度アップによる画質低下を防止できる通常撮影モードと、速いシャッタ速度を確保して手ブレ、被写体ブレを防止できるブレ軽減モードとを選択できることにより、用途に応じた撮影を行うことができる。
【0092】
なお、上記実施の形態のデジタルカメラ10では、撮像素子14から得た画像信号に基づいてEV値を求めているが、EV値を求める方法については、これに限定されるものではなく、他の測光センサ等を用いてEV値を求めるようにしてもよい。
【0093】
また、本実施の形態では、本発明をデジタルカメラに適用した場合を例に説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、撮像素子を用いて静止画撮影を行う機能を備えた機器全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】デジタルカメラの構成を示すブロック図
【図2】プログラム線図の一例を示す図
【図3】露出設定方法の処理手順を示すフローチャート
【図4】通常撮影モードで用いるプログラム線図の一例
【図5】通常撮影モード時における露出設定方法の処理手順を示すフローチャート
【図6】通常撮影モード時における露出設定方法の処理手順を示すフローチャート
【図7】ブレ軽減撮影モード時における露出設定方法の処理手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0095】
10…デジタルカメラ、12…撮影光学系、14…撮像素子、16…タイミングジェネレータ(TG)、18…アナログ信号処理部、20…A/D変換器、22…画像入力コントローラ、24…デジタル信号処理部、28…エンコーダ、30…画像表示部、32…圧縮・伸張処理部、34…メディアコントローラ、36…記憶メディア、38…AE検出部、40…AF検出部、42…CPU、44…ROM、46…RAM、48…フラッシュROM、50…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測光して求めた測光値に基づいて感度と絞り値とシャッタ速度とを設定する露出設定方法において、
手ブレ限界シャッタ速度よりも所定段速いシャッタ速度を下限シャッタ速度として規定し、
シャッタ速度が、常に前記下限シャッタ速度以上になるように、感度と絞り値とシャッタ速度とを設定し、
感度と絞り値が設定限界に達すると、シャッタ速度を前記下限シャッタ速度よりも遅く設定することを特徴とする露出設定方法。
【請求項2】
感度を一定にした状態で常にシャッタ速度が前記下限シャッタ速度以上になるように、絞り値とシャッタ速度とを設定し、
絞り値が設定限界に達すると、感度を上げてシャッタ速度を前記下限シャッタ速度以上に設定し、
感度が設定限界値に達すると、シャッタ速度を前記下限シャッタ速度よりも遅く設定することを特徴とする請求項1に記載の露出設定方法。
【請求項3】
ブレ軽減を目的とする撮影モードに設定されると、
請求項1又は2に記載の露出設定方法で感度と絞り値とシャッタ速度を設定し、
通常モードに設定されると、
シャッタ速度が、常に前記手ブレ限界シャッタ速度以上になるように、感度と絞り値とシャッタ速度とを設定し、
感度と絞り値が設定限界値に達すると、シャッタ速度を前記手ブレ限界シャッタ速度よりも遅く設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の露出設定方法。
【請求項4】
測光して求めた測光値に基づいて感度と絞り値とシャッタ速度とを設定する露出設定装置において、
手ブレ限界シャッタ速度よりも所定段速いシャッタ速度を下限シャッタ速度として記憶する記憶手段と、
シャッタ速度が、常に前記下限シャッタ速度以上になるように、感度と絞り値とシャッタ速度とを設定し、感度と絞り値が設定限界に達すると、シャッタ速度を前記下限シャッタ速度よりも遅く設定する露出設定手段と、
を備えたことを特徴とする露出設定装置。
【請求項5】
前記露出設定手段は、感度を一定にした状態で常にシャッタ速度が前記下限シャッタ速度以上になるように、絞り値とシャッタ速度とを設定し、絞り値が設定限界に達すると、感度を上げてシャッタ速度を前記下限シャッタ速度以上に設定し、感度が設定限界値に達すると、シャッタ速度を前記下限シャッタ速度よりも遅く設定することを特徴とする請求項4に記載の露出設定装置。
【請求項6】
撮影モードとして通常モードに切り換える切換手段を有し、該通常モードに切り換えられると、前記露出設定手段は、シャッタ速度が、常に前記手ブレ限界シャッタ速度以上になるように、感度と絞り値とシャッタ速度とを設定し、感度と絞り値が設定限界に達すると、シャッタ速度を前記手ブレ限界シャッタ速度よりも遅く設定することを特徴とする請求項4又は5に記載の露出設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−25129(P2007−25129A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205622(P2005−205622)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】