説明

静磁波発振装置

【課題】静磁波素子が出力する発振信号の発振周波数が高いときでも小型化することのできる静磁波発振装置を提供することを目的とする。
【解決手段】静磁波素子に印加する磁界の強さを変えることで発振信号の周波数を調整する1つ以上の電磁コイルを、永久磁石の外側で且つ筐体の内部に配置することにより、永久磁石の幅寸法を電磁コイルの幅寸法より小さくすると共に、発振周波数が高いことで永久磁石が大きくなることで永久磁石の高さ寸法が大きくなっても、永久磁石が固定される筐体上面部材の凹部の深さ寸法を永久磁石の高さ寸法に合わせて大きくすることにより、静磁波発振装置の小型化を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静磁波素子を用いた静磁波発振装置に係り、更に詳しくは、静磁波発振装置の小型化、接地性及び耐振動性の向上、発振周波数の調整に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静磁波発振装置に使用される静磁波素子には、GGG(ガドリニウム・ガリウム・ガーネット)非磁性単結晶基板上に、フェリ磁性体であるYIG(イットリウム・鉄・ガーネット)薄膜を液相エピタキシャル成長させた素子が一般的に用いられる。この静磁波素子は強い磁界を印加し磁気スピンを共鳴させることにより共振子として動作する。この静磁波素子の動作により、静磁波素子に強い磁界を印加すると、発振信号(マイクロ波帯の信号)を出力する。このときの共振周波数(発振信号の周波数)は印加する磁界の強さを変えることで、マイクロ波帯の周波数で2〜3オクターブの広帯域にわたり可変することができる。なお、周波数が1オクターブ高くなるとは、周波数が2倍になることで、周波数が1オクターブ低くなることとは、周波数が1/2になることにより、2〜3オクターブの広帯域とは、帯域幅(最小周波数から最大周波数までの周波数範囲)が、最小周波数から最小周波数の2〜3倍の周波数までのことである。
【0003】
従来の静磁波発振装置について、図6を用いて説明する。図6は、従来の一例である静磁波発振装置の構造を示す断面図である。この構造の静磁波発振装置では、発振回路基板12に実装された静磁波素子1に磁界10(図中では模式的に複数の点線で示す。)を印加すると、前述の通り、静磁波素子1は発振信号を出力する。磁界10は、永久磁石2により発生されるが、この磁界が外部に漏れることがないように、強磁性体材料であるフタ3、外部ヨーク4、底板5により、密閉構造となっている。密閉構造であるだけでなく、永久磁石2の一方の極(N極またはS極)に上部磁極7が取り付けられ、永久磁石2の他方の極(一方の極がN極の場合、S極。逆に、一方の極がS極の場合、N極。)にフタ3が取り付けられ、底板5には下部磁極6が、下部磁極6には銅板13が、銅板13には発振回路基板12が取り付けられている。更に、電磁コイル8が底板5に、FMコイル9が上部磁極7に固定されている。電磁コイル8、FMコイル9については、後で詳述する。
【0004】
この構造により、永久磁石2で発生した磁界10は、外部に漏れることがないと共に、上部磁極7と下部磁極6との間の空隙11(矢印が示す間隔)に磁界10を集中させることができる。そして、上部磁極7と下部磁極6の中心は、磁界10が均一で磁束密度が最大であるため、図6の中心線上に静磁波素子1を配置することにより安定した発振周波数の発振信号が得られる。
【0005】
静磁波素子1より出力される発振信号の発振周波数は、静磁波素子1に印加される磁界の強さに依存する。この磁界の強さは、電磁コイル8及びFMコイル9の各コイルに流れる電流の大きさ(電流値)を調整することにより、例えば比帯域(周波数可変幅/中心周波数)で約20%程度変化させることが可能である。即ち、中心周波数をf0とすると、0.9×f0〜1.1×f0の幅で周波数を変えることができる。
【0006】
また、電磁コイル8及びFMコイル9に電流が流れていないとき、上部磁極7及び下部磁極6の間に印加される磁界10の強さは、永久磁石2の磁力の強さ及び空隙11の大きさに依存する。
【0007】
なお、前述の従来の静磁波発振装置の様に、静磁波素子に磁界を加えることにより発振信号を出力する静磁波発振装置に関する特許文献として、特許文献1(特開2005−94208号公報)がある。
【特許文献1】特開2005−94208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の従来の静磁波発振装置では、高い発振周波数を所望する場合、強い磁界が必要となる。電磁コイル及びFMコイルに流れる電流の大きさ(電流値)を調整することにより発振周波数を調整することができるものの、調整できる発振周波数の範囲は限られている。そこで、電磁コイル及びFMコイルで調整できる範囲外の発振周波数に設定する場合、電磁コイル及びFMコイルに電流を流すのをやめて、上部磁極及び下部磁極の間に印加する磁界の強さを変える必要がある。前述の通り、電磁コイル及びFMコイルに電流が流れていないときの上部磁極及び下部磁極の間に印加する磁界の強さは、永久磁石の磁力の強さ及び空隙の大きさに依存するため、永久磁石の磁力を強くするか、空隙を小さくすることにより、磁界の強さを変えることができる。
【0009】
永久磁石の磁力を強くするには、外部から強力な磁力を永久磁石に加えればよいものの、永久磁石に加えることができる最大の磁力の強さは、永久磁石の材質、厚み、面積等で決まり、通常、強い磁界が得られる材質(例えば、鉄を主成分とする鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルトの合金)の永久磁石を用いるため、永久磁石に加えることができる最大の磁力を強くするには、永久磁石の厚さ、面積を大きくする、即ち、永久磁石を大きくする必要がある。その結果、永久磁石を大きくすることで永久磁石の磁力を強くすることとなるために、高い発振周波数を所望すると、静磁波発振装置の小型化が困難になるという欠点がある。また、空隙を小さくしようにも、従来の静磁波発振装置では空隙を変えることができない構造であることにより、空隙を小さくすることで磁界の強さを大きくすることで、高い発振周波数を得るように調整することは不可能であるという欠点がある。
【0010】
更に、前述の従来の静磁波発振装置は、空隙に磁界を集中させるために、永久磁石に固定された上部磁極を空隙の上方に、底板に固定された下部磁極を空隙の下方に設ける構造としているが、この構造では発振回路基板を固定した銅板が薄く、その周辺に空間ができてしまうため、接地が十分とれない、外部からの振動に弱いという欠点がある。
【0011】
そこで本発明では、前述の欠点を除去することにより、発振周波数が高いときでも小型化することのできる静磁波発振装置を提供すること、空隙を調整できることで広範囲に発振周波数を調整することができる静磁波発振装置を提供すること、更に、外部からの振動に強く接地性能を向上させた静磁波発振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述の目的を達成するために、静磁波素子と、該静磁波素子に磁界を印加する永久磁石とを、強磁性体材料から成る筐体の内部に内蔵し、前記永久磁石から印加された磁界で前記静磁波素子が発振信号を出力する静磁波発振装置において、前記静磁波素子に印加する磁界の強さを変えることで前記発振信号の周波数を調整する1つ以上の電磁コイルを、前記永久磁石の外側で且つ前記筐体の内部に配置し、該配置により前記永久磁石の幅寸法を前記電磁コイルの幅寸法より小さくすることで、小型化するように構成するようにしたものである。
【0013】
また、強磁性体材料から成り、上面部材を含む筐体の内部に、静磁波素子と、該静磁波素子を実装する基板と、前記静磁波素子に磁界を印加する永久磁石とを内蔵すると共に、前記永久磁石を前記上面部材に固定し、前記永久磁石から印加された磁界で前記静磁波素子が発振信号を出力する静磁波発振装置において、前記静磁波素子の真下の位置に凸部を有する底面部材を前記筐体に設けると共に、前記凸部の外側に前記凸部と同じ厚さの銅板を設け、前記底面部材の凸部と前記銅板とに前記基板を固定することで、外部からの振動による基板の揺れを抑えられ、且つ、十分な接地が得られるように構成したものである。
【0014】
更に、強磁性体材料から成り、上面部材を含む筐体の内部に、静磁波素子と、該静磁波素子を実装した基板と、前記静磁波素子に磁界を印加する永久磁石とを内蔵し、該永久磁石から印加された磁界で前記静磁波素子が発振信号を出力する静磁波発振装置において、前記上面部材にネジ穴を設けると共に、前記ネジ穴に噛み合うネジ部を有し前記永久磁石が固定される磁石台座とを設け、該磁石台座を移動させることで変化する前記永久磁石と前記静磁波素子との距離に応じて前記磁界の強さを変化することで、前記磁石台座を移動させて前記静磁波素子が出力する発振信号の周波数を調整するように構成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電磁コイルを、永久磁石の外側で且つ筐体の外部に配置することで、永久磁石の幅寸法を電磁コイルの幅寸法より小さくなるように抑えることができるため、静磁波発振装置の小型化が可能である。また、静磁波素子を実装した基板が筐体の底面部材の凸部と銅板に固定されることにより、静磁波素子を実装した基板の厚さが薄くて基板の周囲に空間ができてしまう構造の従来の静磁波発振装置に比べて、接地が十分にとれると共に外部からの振動にも強くなる。更に、磁石台座を移動させることで変化する永久磁石と静磁波素子との距離に応じて磁界の強さが変化することにより、磁石台座を移動させて静磁波素子が出力する発振信号の周波数を広範囲に調整することができる。なお、前述の通り、磁石台座のネジ部は筐体の上面部材に設けたネジ穴と噛み合うことにより、ピッチ(ネジにおいて、互いに隣接する山(または谷)同士の間隔)の小さいネジを用いることにより、永久磁石と静磁波素子との距離を微細に調整することが可能となり、その結果、発振周波数の調整精度の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例である静磁波発振装置について、図1〜図5を用いて説明する。図1は、本発明の第一実施例である静磁波発振装置の構造を示す断面図である。図2は、本発明の第一実施例である静磁波発振装置へのドライバ回路基板の取付構造を示す断面図である。図3は、本発明の第一実施例である静磁波発振装置のシールドケースへの取付構造を示す断面図である。図4は本発明の第一実施例である静磁波発振装置のシールドケースへの取付構造を示す側面図である。図5は本発明の第二実施例である静磁波発振装置の構造を示す断面図である。
【0017】
まず、本発明の第一実施例である静磁波発振装置の構造について、図1を用いて説明する。図1に示す第一実施例の静磁波発振装置では、発振回路基板12に実装された静磁波素子1に磁界10(図中では模式的に複数の点線で示す。)を印加すると、前述の通り、静磁波素子1は発振信号を出力する。磁界10は、永久磁石2により発生されるが、この磁界が外部に漏れることがないように、強磁性材料であるフタ3、外部ヨーク4、底板5により、密閉構造となっている。密閉構造であるだけでなく、永久磁石2の一方の極(N極またはS極)に上部磁極7が固定され、永久磁石2の他方の極(一方の極がN極の場合、S極。逆に、一方の極がS極の場合、N極。)がフタ3の凹部に挿入されて固定される構造となっている。この構造により、永久磁石2の中心ずれを小さくでき、生産性を向上させることができる。更に、底板5には凸部を有し、この凸部の外側には凸部と同じ厚さの銅板13が底板5に固定されており、底板5の凸部と銅板13に静磁波素子1を実装した発振回路基板12が固定されることにより、底板5の凸部は下部磁極6として動作する。底板5の凸部が下部磁極6として動作する以外にも、前述の通り、底板5に固定された下部磁極6及び銅板13とに発振回路基板12が固定されることにより、外部からの振動による発振回路基板12の揺れを抑えることができると共に、十分な接地も可能である。その上、第一実施例の静磁波発振装置は、銅板13を外部ヨーク4と底板5とに挟み込まれることで銅板13を底板5に押し付ける構造であるため、銅板13の底板5への固定が強固に行われることにより、外部からの振動に対して更に強くなると共に、接地性能も更に向上する。なお、銅板13は、静磁波発振装置内に発生した磁界に影響を与えない性質を有することにより、発振回路基板12を固定するのに用いている。
【0018】
外部からの振動に対して強く、且つ、十分な接地が取れる以外にも、第一実施例の静磁波発振装置では、永久磁石2で発生した磁界10が外部に漏れることがないと共に、上部磁極7と下部磁極6との間の空隙11(矢印が示す間隔)に磁界10を集中させることができ、上部磁極7と下部磁極6の中心において、磁界10が均一で磁束密度が最大であるため、中心線上に静磁波素子1を配置することにより安定した発振周波数の発振信号が得られる。
【0019】
この発振信号の発振周波数は、前述の通り、静磁波素子1に印加される磁界の強さに依存し、この静磁波素子1に印加される磁界の強さは、永久磁石2の磁力の強さと、電磁コイル8及びFMコイル9の磁力の強さとによって決まる。そして、永久磁石2の磁力の強さは一定であるのに対して、電磁コイル8及びFMコイル9は、前述の通り、両方ともコイルを流れる電流の大きさ(電流値)に応じて磁力の強さが変わるため、電磁コイル8及びFMコイル9の各コイルを流れる電流の大きさ(電流値)を変えることにより、静磁波素子1に印加される磁界の強さが変わることで、静磁波素子1出力の発振信号の発振周波数が変化する。その結果、電磁コイル8及びFMコイル9の各コイルを流れる電流の大きさ(電流値)を変えることにより、静磁波素子1出力の発振信号の発振周波数を調整する。なお、電磁コイル8は粗調整用電磁コイルであり、FMコイル9は微調整用コイルであることにより、静磁波素子1出力の発振信号の発振周波数の調整を行う際、まず、電磁コイル8のコイルを流れる電流の大きさ(電流値)を変えることで粗調整を行い、次に、FMコイル9のコイルを流れる電流の大きさ(電流値)を変えることで微調整を行う。
【0020】
前述の発振周波数の調整に用いる電磁コイル8及びFMコイル9は両方とも空芯コイルであること、永久磁石2は円柱形状を有していることにより、図1の通り、永久磁石2の外側に、電磁コイル8及びFMコイル9を配置する構造とすることが可能であるが、この構造とすることにより、永久磁石2の直径を両電磁コイルの内、小さい方の電磁コイル(図1では、FMコイル9)の内径寸法未満に抑えることができるため、永久磁石2を小型化し、その結果、静磁波発振装置を小型化することができる。なお、静磁波素子1出力の発振信号の発振周波数が高いことで、前述の通り、永久磁石2を大きくしなければならない場合でも、永久磁石2の高さ寸法を大きくすると共に、永久磁石2の高さ寸法に応じてフタ3の凹部の深さ寸法を変えることにより、即ち、永久磁石2の高さ寸法が大きいとき、ふた3の凹部の深さ寸法を大きくすることにより、静磁波発振装置を小型化することができる。また、前述の通り、永久磁石2の直径が小さく抑えることができるため、即ち、磁石の断面積Amを小さく抑えることができるため、下記(2)式の通り、パーミアンス係数Pcを大きくすることができる。なお、パーミアンス係数Pcとは、下記(1)式の通り、磁石にかかる反磁界の強さHdと磁石中の磁束密度Bdとの比であり、パーミアンス係数Pcが大きいと、永久磁石2の熱減磁を小さく押さえる効果がある。即ち、温度変化により、永久磁石2が空隙11に作る磁束量が小さくなるのを抑えることができるという効果がある。
【0021】
Pc=Bd/(μ0×Hd)………(1)
Pc:パーミアンス係数
Bd:磁石中の磁束密度(T)
μ0:真空の透磁率(H/m) μ0=4π×10−7(H/m)
Hd:磁石にかかる反磁界の強さ(A/m)
Pc=(F×Ag×Lm)/(r×Am×Lg)………(2)
Pc:パーミアンス係数
F:漏れ係数
Ag:空隙の断面積(m
Lm:磁石の長さ(m)
r:磁気損失係数
Am:磁石の断面積(m
Lg:空隙の長さ(m)
更に、第一実施例の静磁波発振装置は、静磁波素子1から発振信号が出力されることにより、発振回路基板12には静磁波素子1等の電気部品により構成された発振回路が形成される。この発振回路への電源の供給のためのケーブルとして、通常のケーブルを用いても良いが、電源線と接地線とを有する同軸ケーブル14を使用することにより、電源線用のケーブルと接地線用のケーブルを使用する必要がなくなるため、静磁波発振装置を更に小型化することができる。
【0022】
以上の通り、第一実施例の静磁波発振装置では、各コイル(電磁コイル8、FMコイル9)を永久磁石2の外側に配置すること、発振回路基板12に形成された発振回路へ同軸ケーブル14を用いて電源供給を行うことにより、小型化することができる。更に、底板5に固定された下部磁極6及び銅板13に発振回路基板12が固定されること、銅板13を外部ヨーク4と底板5とに挟み込まれることで銅板13が底板5に押し付けられることにより、耐振動性及び接地性能が向上する。
【0023】
なお、第一実施例の静磁波発振装置では、空隙11に磁界10をより集中させるために上部磁極7及び下部磁極6を配置し、上部磁極7と下部磁極6の間の空隙11の中心に静磁波素子1を配置する構造となっているが、所望の磁界が得られる場合には、上部磁極7及び下部磁極6の一方もしくは両方を配置しないことも可能である。なお、下部磁極6を配置しない場合には、底板5に固定された銅板に発振回路基板12を固定する構造とする。
【0024】
第一実施例の静磁波発振装置は、前述の通り、各コイル(電磁コイル8、FMコイル9)に流れる電流の大きさ(電流値)を変えることにより、静磁波素子1出力の発振信号の発振周波数を変えるようにしているが、各コイル(電磁コイル8、FMコイル9)に流れる電流の大きさ(電流値)は、ドライバ回路基板により調整される。即ち、ドライバ回路基板で調整された電流値で、各コイル(電磁コイル8、FMコイル9)に電流が流れることにより、静磁波素子1出力の発振信号の発振周波数は、ドライバ回路基板で各コイル(電磁コイル8、FMコイル9)の電流値を変えることにより、調整される。ドライバ回路基板は、以下の通り、第一実施例の静磁波発振装置に取付可能な構造であることにより、各コイル(電磁コイル8、FMコイル9)の電流値を変えるための外部装置を第一実施例の静磁波発振装置を接続することなく、静磁波素子1出力の発振信号の発振周波数を調整することが可能となる。
【0025】
以下、第一実施例の静磁波発振装置へのドライバ回路基板の取付構造について、図2を用いて説明する。ドライバ回路基板19は、スペーサ20を挟んでネジ21で第一実施例の静磁波発振装置に固定される。なお、スペーサ20及びネジ21は、磁界が第一実施例の静磁波発振装置から漏れることがないようにするために、磁性体でないことが望ましい。そして、スペーサ20及びネジ21で固定されたドライバ回路基板19と、第一実施例の静磁波発振装置の電磁コイル8、FMコイル9とは、それぞれ、電磁コイル引き出し線22、FMコイル引き出し線23で接続され、電源線と接地線とを有する同軸ケーブル14が発振回路基板12に接続される。図2では、FMコイル引き出し線23が電磁コイル8の外周を回るように配線しているが、電磁コイル8の下側を通して配線するようにしても良い。前述の通り、発振回路基板12には、同軸ケーブル14で電源が供給されるのに対し、ドライバ回路基板19には、コネクタ等(図示せず)を介して電源が供給される。ドライバ回路基板19への制御信号の入出力も、コネクタ等(図示せず)を介して行われる。
【0026】
以上の通り、第一実施例の静磁波発振装置にはドライバ回路基板19が取り付けられるが、更に、ドライバ回路基板19が取り付けられた状態で第一実施例の静磁波発振装置は、シールドケース24にも取り付けられる。第一実施例の静磁波発振装置はシールドケース24に取り付けられることにより、外部の磁界を遮蔽することができるため、静磁波素子1に、永久磁石2、電磁コイル8、FMコイル9だけでなく、外部の磁界が印加することにより、第一実施例の静磁波発振装置が誤動作する(所望の発振周波数とは異なる周波数の発振信号を静磁波素子1が出力する)のを防ぐことができる。
【0027】
以下、第一実施例の静磁波発振装置へのシールドケースへの取付構造について、図3、図4を用いて説明する。第一実施例の静磁波発振装置は、スペーサ25を挟んでネジ26でシールドケース24に固定される。なお、スペーサ25を挟んでネジでシールドケース20に固定する以外にも、シールドケース20と静磁波発振装置の隙間を全て衝撃吸収用弾性体等で補填して固定するようにしても良い。図3の通り、スペーサ25を挟んでネジ26でシールドケース24に固定する場合、スペーサ25及びネジ26は、磁界が第一実施例の静磁波発振装置から漏れることがないようにするために、磁性体でないことが望ましい。そして、スペーサ25には、金属もしくは衝撃吸収用弾性体等の材質を用いることにより、万一、シールドケース24に衝撃が作用したことによる破損等の影響が、最小限となるようにしている。スペーサ25に金属もしくは衝撃吸収用弾性体等の材質を用いる以外でも、第一実施例の静磁波発振装置の上部及び裏側、ドライバ回路基板15の下部に、空間29を設けることにより、シールドケース24に衝撃が作用した場合、この衝撃が、第一実施例の静磁波発振装置に伝達させないようにしている。
【0028】
次に、本発明の第二実施例である静磁波発振装置について、図5を用いて説明する。図1に示す前述の第一実施例の静磁波発振装置は永久磁石2がフタ3に固定される構造であるのに対して、図5に示す第二実施例の静磁波発振装置は、永久磁石2がフタ3に固定されるのではなく、永久磁石2が磁石台座15に固定される。この磁石台座15はネジ部を有し、フタ3に設けたネジ穴17に磁石台座15のネジ部が噛み合うことにより、磁石台座15を上下に移動させることが可能である。磁石台座15を上下に移動させると、永久磁石2も上下に移動することで、空隙11が変わるため、磁界10の強さが変わり、その結果、静磁波素子1が出力する発振信号の発振周波数も変わる。即ち、第二実施例の静磁波発振装置では、磁界10の強さを変えることで静磁波素子1が出力する発振信号の発振周波数を調整する際、電磁コイル8及びFMコイル9の各コイルに流れる電流の大きさ(電流値)を調整するだけでなく、磁石台座15を上下に移動させることによっても行うこともできる。
【0029】
更に、第二実施例の静磁波発振装置では、磁石台座15を下方に移動させた場合、上部磁極7が静磁波素子1に衝突して、静磁波素子1を破損することがないように、上部磁極7が静磁波素子1に衝突する前に、磁石台座15の移動を停止させるためのストッパ機構を有している。具体的には、フタ3のネジ穴17の下方では、穴の直径が磁石台座15の外径(ネジの山同士の直径)より小さく、且つ、永久磁石2の直径よりも大きくしていることにより、磁石台座15を下方に移動させた場合、上部磁極7が静磁波素子1に衝突する前に、磁石台座15がフタ3に設けた突起部18に接触して停止する構造となっている。
【0030】
以上の通り、第二実施例の静磁波発振装置では、第一実施例の静磁波発振装置と同様にして、小型化すると共に、耐振動性及び接地性能が向上するだけでなく、磁石台座15を上下に移動させることにより静磁波素子1出力の発振信号の発振周波数を調整することもできる。また、磁石台座15を下方に移動させた場合、上部磁極7が静磁波素子1に衝突することによる静磁波素子1の破損を防止することもできる。なお、第二実施例の静磁波発振装置では、フタ3に設けたネジ穴17に磁石台座15に設けたネジ部が噛み合うことにより、磁石台座15が上下する構造となっているが、ネジ穴17ではなくフタに穴を設けると共に、穴の側面にガイドレールを設け、ガイドレールに沿って磁石台座2を摺動させるようにしても、同様にして、磁石台座15を上下に移動させることにより静磁波素子1出力の発振信号の発振周波数を調整することもできる。更に、静磁波素子1出力の発振信号の発振周波数が所望の発振周波数となるように、磁石台座15を上下させて磁界10の強さを調整した後、磁石台座15が動かないように固定するために、例えば、ネジ止め剤を塗布する。なお、磁石台座15を突起部18に接触させたまま固定する場合、締め付けネジ16で締め付けた後、ネジ止め剤を塗布する。
【0031】
そして、第二実施例の静磁波発振装置も、第一実施例の静磁波発振装置と同様にして、スペーサを介してドライバ回路基板が取り付けられると共に、ドライバ回路基板を取り付けた静磁波発振装置は、シールドケースに取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一実施例である静磁波発振装置の構造を示す断面図。
【図2】本発明の第一実施例である静磁波発振装置へのドライバ回路基板の取付構造を示す断面図。
【図3】本発明の第一実施例である静磁波発振装置のシールドケースへの取付構造を示す断面図。
【図4】本発明の第一実施例である静磁波発振装置のシールドケースへの取付構造を示す側面図。
【図5】本発明の第二実施例である静磁波発振装置の構造を示す断面図。
【図6】従来の一例である静磁波発振装置の構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0033】
1:静磁波素子 2:永久磁石
3:フタ 4:外部ヨーク
5:底板 6:下部磁極
7:上部磁極 8:電磁コイル
9:FMコイル 10:磁界
11:空隙 12:発振回路基板
13:銅板 14:同軸線
15:磁石台座 16:締め付けネジ
17:ネジ穴 18:突起部
19:ドライバ回路基板 20:スペーサ
21:ネジ 22:電磁コイル引き出し線
23:FMコイル引き出し線 24:シールドケース
25:スペーサ 26:ネジ
27:RFコネクタ 28:静磁波発振装置
29:空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁波素子と、該静磁波素子に磁界を印加する永久磁石とを、強磁性体材料から成る筐体の内部に内蔵し、前記永久磁石から印加された磁界で前記静磁波素子が発振信号を出力する静磁波発振装置において、
前記静磁波素子に印加する磁界の強さを変えることで前記発振信号の周波数を調整する1つ以上の電磁コイルを、前記永久磁石の外側で且つ前記筐体の内部に配置し、該配置により前記永久磁石の幅寸法を前記電磁コイルの幅寸法より小さくすることで、小型化するように構成したことを特徴とする静磁波発振装置。
【請求項2】
強磁性体材料から成り、上面部材を含む筐体の内部に、静磁波素子と、該静磁波素子を実装する基板と、前記静磁波素子に磁界を印加する永久磁石とを内蔵すると共に、前記永久磁石を前記上面部材に固定し、前記永久磁石から印加された磁界で前記静磁波素子が発振信号を出力する静磁波発振装置において、
前記静磁波素子の真下の位置に凸部を有する底面部材を前記筐体に設けると共に、前記凸部の外側に前記凸部と同じ厚さの銅板を設け、前記底面部材の凸部と前記銅板とに前記基板を固定することで、外部振動に対する基板の揺れを抑えると共に、十分な接地が得られるように構成したことを特徴とする静磁波発振装置。
【請求項3】
強磁性体材料から成り、上面部材を含む筐体の内部に、静磁波素子と、該静磁波素子を実装した基板と、前記静磁波素子に磁界を印加する永久磁石とを内蔵し、該永久磁石から印加された磁界で前記静磁波素子が発振信号を出力する静磁波発振装置において、
前記上面部材にネジ穴を設けると共に、前記ネジ穴に噛み合うネジ部を有し前記永久磁石が固定される磁石台座を設け、該磁石台座を移動させることで変化する前記永久磁石と前記静磁波素子との距離に応じて前記磁界の強さが変化することで、前記磁石台座を移動させて前記静磁波素子が出力する発振信号の周波数を調整するように構成したことを特徴とする静磁波発振装置。
【請求項4】
請求項1記載の静磁波発振装置において、
前記電磁コイルとして、粗調整用電磁コイルと、微調整用電磁コイルとを有し、前記粗調整用電磁コイルで前記発振信号の発振周波数の粗調整を行い、前記微調整用電磁コイルで前記発振信号の発振周波数の微調整を行うように構成したことを特徴とする静磁波発振装置。
【請求項5】
請求項2記載の静磁波発振装置において、
前記筐体は、底面部材と側面部材とを有し、前記銅板を側面部材と底面部材との間に挟みこむことで、外部振動に対する基板の揺れを抑えると共に、十分な接地が得られるように構成したことを特徴とする静磁波発振装置。
【請求項6】
請求項3記載の静磁波発振装置において、
前記磁石台座が下方に移動して所定位置にきた場合に前記磁石台座の底面が接触するよう、前記上面部材のネジ穴の下方にストッパを設け、前記磁石台座の移動による前記永久磁石の前記静磁波素子への衝突を防止するように構成したことを特徴とする静磁波発振装置。
【請求項7】
請求項2乃至3記載の静磁波発振装置において、
前記基板に実装され、前記静磁波素子を含む全ての電子部品に、電源線と接地線とを有する同軸ケーブルで電源を供給するようにしたことを特徴とする静磁波発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−78797(P2008−78797A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253200(P2006−253200)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】