説明

静電植毛ブラシ、現像装置、および画像形成装置

【課題】ブラシ毛と接着剤層との接着を強固にするとともに、ブラシ毛の強度を低減し得る静電植毛ブラシ、現像装置、および画像形成装置を実現する。
【解決手段】現像剤供給ロール13は、基材34の接着剤層32にブラシ毛31を静電植毛している。ブラシ毛31は、中空になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置において例えば帯電・除電、または現像剤の供給・クリーニング等に使用される静電植毛ブラシ、および現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式を採用する画像形成装置の現像装置として、例えば、特許文献1に開示された現像装置がある。
【0003】
この特許文献1に開示された現像装置100は、図11に示すように、ケーシング101内に、トナー102を表面に担持して感光体111に該トナー102を供給する現像ローラ103と、この現像ローラ103上にトナー102を供給するトナー供給ローラ104と、現像ローラ103に当接して現像ローラ103上に供給されたトナー102の帯電を行ない、トナー102の均一薄層を形成するトナー規制ブレード105とを有している。
【0004】
また、特許文献2には、図12に示すように、ブラシ繊維207を植毛保持するための接着剤層206を設け、ブラシ繊維207の根元側部位に接着剤層206の表面よりもブラシ繊維207の先端側にブラシ繊維207に沿って接着剤が立ち上がり形成されているファーブラシ現像ローラが開示されている。
【特許文献1】特開昭63−155069号公報(1988年6月28日公開)
【特許文献2】特開平10−97135号公報(1998年4月14日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、以下のような問題を生じる。すなわち、上記特許文献1に記載の構成では、ブラシ毛(ブラシ繊維)の外周部および底部で接着剤層と接着しているのみなので接着強度が弱く、ブラシ毛が抜けやすい。特に、ブラシ毛が細繊度になると接着面積が少なくなるため、接着強度がさらに弱くなる。また、特許文献2では、ブラシ毛に沿って、接着剤が立ち上がり形成されているが、ブラシ毛の外周部および底部でのみ接着されていることには変わりがなく、接着強度は弱い。よって、ブラシ毛が抜けやすい。
【0006】
また、従来のブラシ毛では、ブラシ毛が固いことにより、ブラシ毛と接触する部材を傷めるという弊害があった。特に、静電植毛では、ブラシ毛が短いため、より固くなる傾向があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブラシ毛と接着剤層との接着を強固にするとともに、ブラシ毛の強度を低減し得る静電植毛ブラシ、現像装置、および画像形成装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電植毛ブラシは、基台の接着剤層にブラシ毛を静電植毛している静電植毛ブラシにおいて、上記ブラシ毛は、中空になっていることを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、静電植毛ブラシのブラシ毛が中空になっている。これにより、ブラシ毛と接着剤層とが接着するときに、ブラシ毛の外側の面と底面だけでなく、ブラシ毛の中空となっている側の面が、ブラシ毛と接着剤層との接着面となる。よって、ブラシ毛と接着剤層との接着面積が大きくなり、ブラシ毛を接着剤層に、より強固に接着することができる。
【0010】
また、静電植毛ブラシのブラシ毛が中空になっているので、ブラシ毛の中身がつまっている(中実)場合と比較して、ブラシ毛を柔らかくすることができる。すなわち、短くても柔らかいブラシ毛を実現できる。よって、ブラシ毛と接触する部材を傷める可能性を低くすることができる。
【0011】
例えば、静電植毛ブラシが現像ローラの場合、ブラシが接触する感光体を傷める可能性を低くすることができる。
【0012】
本発明に係る静電植毛ブラシでは、上記ブラシ毛は、長手方向に対し垂直に切断したときの断面が、輪状およびCの字状のいずれか一方であることが好ましい。
【0013】
このように、ブラシ毛の断面を輪状またはCの字状とすることによって、中空を形成し易い簡単な構成でブラシ毛の内部を均一に中空とすることができる。
【0014】
本発明に係る静電植毛ブラシでは、上記ブラシ毛は、長手方向の面に中空部と外部とを接続している孔が設けられているものであってもよい。
【0015】
上記の構成によれば、ブラシ毛は、長手方向の面に中空部と外部とを接続している孔が設けられる。これにより、中空部の空気を容易に抜くことができるので、ブラシ毛の中空部への粉状物(例えば、現像剤)の出入りを容易にすることができる。
【0016】
例えば、静電植毛ブラシが現像剤供給ローラの場合、現像剤をブラシ毛の外側の面だけでなく中空部側の面に容易に入れることができ、また、容易に出すことができる。そして、これにより、より多くの現像剤を送り出すことが可能となる。
【0017】
本発明に係る静電植毛ブラシでは、上記ブラシ毛は、該ブラシ毛の中空部側の面の面積を内層面積、外側の面の面積と中空部側の面の面積との和を外層面積としたときに、中空率=(内層面積/外層面積)×100で示される中空率が5〜50%であってもよい。
【0018】
上記の構成とすることによって、ブラシ毛と接着剤層との接着面積の増大機能と、ブラシ毛を柔らかくする機能との両方を適切に満たすことができる。
【0019】
本発明の現像装置は、上記静電植毛ブラシを現像剤供給ローラとして備えているので、上述した効果を奏することができる。
【0020】
本発明の画像形成装置は、上記静電植毛ブラシを帯電ブラシとして備えているので、上述した効果を奏することができる。
【0021】
本発明の画像形成装置は、上記静電植毛ブラシを現像剤帯電用帯電ブラシとして備えているので、上述した効果を奏することができる。
【0022】
本発明の画像形成装置は、上記静電植毛ブラシを除電ブラシとして備えているので、上述した効果を奏することができる。
【0023】
本発明の画像形成装置は、上記静電植毛ブラシをクリーニングブラシとして備えているので、上述した効果を奏することができる。
【0024】
本発明の画像形成装置は、上記静電植毛ブラシを固体潤滑剤供給兼用クリーニングブラシとして備えているので、上述した効果を奏することができる。
【0025】
本発明の画像形成装置は、上記静電植毛ブラシを転写ブラシとして備えているので、上述した効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明に係る静電植毛ブラシは、ブラシ毛は、中空になっている構成である。
【0027】
また、本発明の現像装置は、上記現像剤供給ローラが、上記記載の静電植毛ブラシにて構成されている。
【0028】
それゆえ、ブラシ毛と接着剤層との接着を強固にするとともに、ブラシ毛の強度を低減し得る静電植毛ブラシ、現像装置、および画像形成装置を実現するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の一実施形態について図1から図10に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0030】
図4は、本実施の形態の現像装置を備えた画像形成装置における画像形成部の構造を模式的に示す正面図である。
【0031】
なお、画像形成装置は、画像形成装置が備えるスキャナにて読み込まれたデータや、画像形成装置に接続された外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等の画像処理装置)からのデータを画像として出力するものである。
【0032】
図4に示すように、画像形成部30は、感光体ドラム1と、帯電ブラシ2と、露光装置3と、現像装置10と、転写ブラシ4と、搬送ベルト5と、クリーニング装置20と、図示しない除電手段とを備えており、感光体ドラム1の周囲に、回転方向に沿って、帯電ブラシ2、露光装置3、現像装置10、転写ブラシ4及び搬送ベルト5、クリーニング装置20、及び除電手段をこの順序で配置した構成となっている。
【0033】
感光体ドラム1は、画像形成装置における本発明の静電潜像担持体となるものであり、円柱形状を有している。
【0034】
帯電ブラシ2は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面を一様に所定の電位まで帯電させるためのものである。帯電ブラシ2は、感光体ドラム1と互いの回転軸を平行にして隣接対向して設置されている。
【0035】
露光装置3は、帯電ブラシ2によって帯電された感光体ドラム1の表面を、例えばパーソナルコンピュータ等の画像処理装置からのデータに基づき、レーザ光等により露光して、感光体ドラム1の表面に静電潜像を形成させるためのものである。露光装置3として、例えば半導体レーザや発光ダイオードを用いることができる。
【0036】
現像装置10は、感光体ドラム1の表面に現像剤を供給し、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤像として顕像化するつまり現像するためのものである。この現像装置10については、後で詳述する。
【0037】
搬送ベルト5は、感光体ドラム1の表面に現像剤像が形成された後に、PPC(Plain Paper Copy)用紙等の記録媒体6を感光体ドラム1に運搬するためのものである。
【0038】
転写ブラシ4は、感光体ドラム1の表面の現像剤像を、記録媒体6に転写するためのものである。転写ブラシ4は、板金に、板金と接する面を底面とした見かけ上直方体のブラシ体を貼り付けた固定型ブラシである。転写ブラシ4は、例えば、パイル織り生地からなり、板金の上にブラシ毛を板金の面方向に垂直な方向に起毛したものである。転写ブラシ4は、板金の面方向と記録媒体6の面方向とを平行にして、搬送ベルト5を間に挟んで感光体ドラム1と隣接対向するように設置されている。
【0039】
クリーニング装置20は、クリーニングブラシ(固体潤滑剤供給兼用クリーニングブラシ)21と、固体潤滑剤供給装置22と、クリーニングブレード23とを備えており、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去するためのものである。
【0040】
クリーニングブラシ21は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去するためのものである。また、クリーニングブラシ21は、例えば、固体潤滑剤塗布ブラシとしての機能を兼ねており、固体潤滑剤供給装置22から供給される固体潤滑剤を、感光体ドラム1の表面に塗布するためのものである。クリーニングブラシ21は、円柱形状の基材にブラシ毛を起毛したロール型ブラシであり、感光体ドラム1の回転軸方向と円柱形状の基材の軸方向とを互いに平行にして、感光体ドラム1に隣接対向するように設置されている。
【0041】
クリーニングブレード23は、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を物理的に掻き落とすためのものである。クリーニングブレード23は、感光体ドラム1の回転方向に沿って、クリーニングブラシ21の後側に備えられ、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を均一に除去するために、感光体ドラム1の法線方向に対して鋭角に摺接している。
【0042】
固体潤滑剤供給装置22は、クリーニングブラシ21及びクリーニングブレード23によるクリーニング効率を高くするためのものである。固体潤滑剤供給装置22は、固体潤滑剤を、クリーニングブラシ21を介して、感光体ドラム1の表面に塗布する。また、固体潤滑剤供給装置22は、クリーニングブラシ21に固体潤滑剤が均一に塗布されるように、クリーニングブラシ21のシャフトの軸方向に広がった略四角柱の形状を有している。固体潤滑剤供給装置22は、クリーニングブラシ21の表面全体に固体潤滑剤が行き渡るように、クリーニングブラシ21と隣接対向して設置されている。使用する固体潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0043】
除電手段は、感光体ドラム1の表面を除電するためのものである。除電手段としては、例えば除電ブラシ等が挙げられる。
【0044】
上記構成の画像形成装置において、画像を形成する動作を、図3に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0045】
感光体ドラム1の表面は、帯電ブラシ2と接触することにより、均一に帯電する。表面が帯電された感光体ドラム1は、露光装置3によって、データに基づき露光され、感光体ドラム1の表面に静電潜像が形成される。そして、現像装置10の現像ロール12により、感光体ドラム1の表面に現像剤が供給され、感光体ドラム1の表面の静電潜像が、現像されて顕像化される。
【0046】
続いて、搬送ベルト5によって記録媒体6が感光体ドラム1へ運搬され、転写ブラシ4によって、感光体ドラム1の表面の現像剤像が、記録媒体6に転写される。転写後の感光体ドラム1は、固体潤滑剤が表面に塗布されたクリーニングブラシ21によって、表面に固体潤滑剤が塗布され、残留した現像剤や紙粉等が、クリーニングブラシ21及びクリーニングブレード23によって除去される。最後に図示しない除電手段により、感光体ドラム1の表面が除電される。このようなサイクルで画像形成は行われる。
【0047】
次に、本実施の形態の現像装置10の詳細について、図2に基づいて以下に説明する。
【0048】
まず、本実施の形態の現像装置10では、非磁性1成分トナーからなる現像剤が使用されており、いわゆる非磁性1成分現像方式を採用している。この現像方式は、磁性1成分トナーに対して透明性の高い非磁性1成分トナーが使用できるのでフルカラーの現像に適していると共に、現像ロール12に磁石を用いない点で画像形成装置の小型軽量化に対して非常に有利である。特に、近年開発が盛んになっている小型のパーソナル用複写機、プリンタ、及び普通紙ファックス、並びにフルカラー複写機、フルカラープリンタに対してはこの現像方法を用いる例が多くなってきている。
【0049】
図3に示すように、現像装置10は、現像剤容器11内に、現像剤担持体としての現像ロール12と現像剤供給部材としての現像剤供給ロール13と現像剤規制ブレード14とを備えており、感光体ドラム1の表面に現像剤Tを供給し、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤像として顕像化するつまり現像する。
【0050】
上記現像ロール12は、感光体ドラム1と物理的に接触して、現像剤供給ロール13から供給される現像剤を感光体ドラム1の表面に供給するためのものである。現像ロール12は、円柱形状を有しており、感光体ドラム1と互いの回転軸を平行にして隣接対向するように設置されている。
【0051】
上記現像剤供給ロール13は、現像ロール12と物理的に接触して、現像ロール12に現像剤を供給するためのものであり、現像剤を保持すると共に、現像剤を現像ロール12の表面に供給する。現像剤供給ロール13は、例えば、円柱形状の基材にブラシ毛を起毛したロール型ブラシからなっている。現像剤供給ロール13は、現像ロール12の回転軸方向と円柱形状の基材の軸方向とを互いに平行にして、現像ロール12に隣接対向するように設置されている。
【0052】
上記現像剤規制ブレード14は、現像ロール12に当接して現像ロール12上に供給された現像剤Tの帯電を行ない、現像剤Tの均一薄層を形成する。
【0053】
上記構成の現像装置10では、送り羽根16によって現像ロール12近傍に送り込まれた現像剤Tは、現像剤供給ロール13で現像ロール12に塗布され、現像剤規制ブレード14で薄層化された後に、感光体ドラム1との接触部分で感光体ドラム1の潜像の現像に用いられる。そして、現像残りの現像剤Tは再度現像装置10内に戻り、撹乱が行われた後、現像剤供給ロール13によって現像ロール12から剥離されて現像装置10内の現像剤Tと混合される。
【0054】
ここで、本実施の形態の特徴である、現像剤供給ロール(静電植毛ブラシ)13のブラシ毛31について説明する。図1は、現像剤供給ロール13の円柱形上の基材(基台)34に接着剤層32を備え、ブラシ毛31が接着されている状態を示す現像剤供給ロール13の断面図である。また、図2は、ブラシ毛31を示す図である。
【0055】
従来は、図12に示すようにブラシ繊維207は、中身までつまっている(中実)ものである。よって、ブラシ繊維207は接着剤層206とブラシ繊維207の外周部および底部でのみ接着する。よって、ブラシ繊維207と接着剤層206との接着面積が少なく、接着力が弱い。特に、ブラシ繊維207が細繊度になればなるほど、接着面積は少なくなるので、接着力が弱くなる。そして、接着力が弱いためにブラシ繊維207が抜けやすい。
【0056】
また、ブラシ繊維207は中実であるので、剛性やトルクが高く、現像ローラのブラシとして用いた場合、感光体を傷めるおそれがある。特に、静電植毛では、ブラシ毛(ブラシ繊維)の長さを5mm程度以下にする必要があり、ブラシ毛の長さが短いために固くなりやすい。
【0057】
本実施の形態のブラシ毛31は、上記問題点を解決するために、図1に示すように、ブラシ毛31を中空のストロー上にしたものである。ブラシ毛31を中空のストロー状にすることにより、ブラシ毛31と接着剤層32との接着面が、ブラシ毛31の外周部、底部、および中空部の側面となる。これにより、ブラシ毛31と接着剤層32との接着面積が大きくなり、ブラシ毛31と接着剤層32とのより強固な接着が可能となる。
【0058】
また、ブラシ毛31の中空部は、毛細管現象により接着剤層32の接着剤が接着剤層32の表面に比べて盛り上がるので、ブラシ毛31と接着剤層32とは、さらにより強固に接着される。
【0059】
さらに、ブラシ毛31は中空なので、中実のブラシ毛と比較して、剛性、トルクともに小さい。よって、ブラシ毛31を現像剤供給ロール13に用いることにより、中実のブラシ毛を用いるよりも、現像ロール12を傷める可能性を低くすることができる。
【0060】
また、ブラシ毛31の側面には、図2にも示すように、外と中空部とをつなぐ孔33が1ヶ所以上設けられている。そして、ブラシ毛31を現像剤供給ロール13に用いた場合、この孔33によりブラシ毛31の中空部の空気を抜くことができるので、現像剤がブラシ毛31の表面だけでなく、ブラシ毛31の中空部にも入りやすく、そして出やすくなる。これにより、現像剤の供給量を増やすことができ、現像ロール12のスピードアップを図ることができる。
【0061】
なお、ブラシ毛31は上述したストロー状(円筒形状)に限られるものではなく、他の形状であってもよい。図5(a)〜(d)に、ブラシ毛31の形状の例を示す。
【0062】
図5(a)(b)は、ストロー状(円筒形状)のブラシ毛31を示し、図5(a)と比較して図5(b)は、中の空洞が大きい場合を示す。図5(c)は、ブラシ毛31を長手方向に対し垂直に切断したときの断面が「Cの字形状」となるものである。図5(d)は、ブラシ毛31を長手方向に対し垂直に切断した時の断面が「井の字形状」となるものである。
【0063】
次に、ブラシ毛31をブラシに植毛する方法について図6(a)(b)に基づいて説明する。
【0064】
本実施の形態では、ブラシ毛31は、静電植毛方法を用いている。したがって、ブラシ毛31を現像剤供給ブラシ等のブラシに植毛するときには、図6(a)に示すように、金属管等の基材34に接着剤(接着剤層32)を塗布する。この接着剤(接着剤層32)の塗布方法については、例えば、スクリーン印刷や、インクジェット方式による塗布が可能である。
【0065】
次いで、所定の立毛長さにしたブラシ毛31の群をこの接着剤層32の対向位置に配置し、高圧静電界を印加する。これにより、図6(b)に示すように、ブラシ毛31が静電吸引力によって金属管等の基材34に引き寄せられ、金属管等の基材34の表面である接着剤(接着剤層32)の塗布面に垂直にブラシ毛31が突き刺さる。
【0066】
なお、本発明の静電植毛ブラシは、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、現像剤の供給用に使用される現像剤供給ブラシ(現像剤供給ロール13)およびクリーニングブラシ21に限らず、他の用途にも使用できる。
【0068】
具体的には、本発明の静電植毛ブラシは、感光体ドラム1の帯電に用いられる帯電ブラシ2、または近年のクリーナレスの感光体ドラム1における現像剤の帯電ブラシ、転写後のクリーニングを行いやすくするために現像剤(トナー)の極性をそろえる現像剤帯電用帯電ブラシ、除電ブラシ、感光体に残存する現像剤の除去を行うクリーニングブラシ、図示しない中間転写体に残存している現像剤を除去するクリーニングブラシ、および転写ブラシ4に適用することも可能である。
【実施例】
【0069】
本実施の形態のブラシ毛31における、接着強度と硬さ(剛性、トルク)の効果を確認するための実験を行った。図7(a)〜(c)に、ブラシ毛31の効果を確認するために行った実験方法を示す。なお、以下の実験において、図7(a)に示すように、中空率は、“中空率=内層面積/外層面積”(内層面積=ブラシ毛31の中空部側の面の面積、外層面積=ブラシ毛31の外側の面の面積と中空部側の面の面積との和)で求めた。また、使用したブラシ毛31は、導電性ナイロンで繊度6T(デシテックス)、パイル長(ブラシ毛31の長さ)1.5mmで、接着剤の厚みは、200μmである。なお、デシテックス(T)とは、「長さ10,000mの繊維(糸)の重さがNグラムであるとき、その繊維(糸)はNデシテックス(T)である」と定義される。
【0070】
接着強度の測定は、図7(b)に示すように、ロードセルにブラシ毛31を接着した測定対象物を載せ、ブラシ毛31を上方向に持ち上げた時の加重変化量を測定する方法で行った。そして、ロードセルで測定された荷重の最小値を接着強度とした。この結果を図8に示す。図8は、ブラシ毛31の中空率と接着強度との関係を示す図である。
【0071】
図8において、縦軸は接着強度(ブラシ毛1本あたりの持ち上げられた重さ)を示し、横軸は中空率を示す。図8に示すように、中空率が上がるにつれて、接着強度が上昇している。よって、中空率が上がると接着強度も上がることが分かる。
【0072】
また、剛性の測定は、図7(c)に示すように、ブラシ毛31を備えたブラシを回転させながら、ブラシ毛31の先端をロードセルに接触させ、ロードセルにかかる負荷を測定する方法で行った。なお、ブラシ毛31の先端0.2mmがロードセルに接触するようにした。この結果を図9に示す。図9は、ブラシ毛31の中空率と剛性との関係を示す図である。
【0073】
図9において、縦軸は剛性を示し、横軸は中空率を示す。図9に示すように、中空率が上がるにつれて、剛性が低下している。よって、中空率が上がると剛性は低下することが分かる。
【0074】
また、トルクの測定については、以下の方法によって行った。非磁性1成分トナーからなる現像剤を収容した現像装置10内において、現像ロール12に現像剤供給ロール13のブラシ毛31を所定量、食い込ませた後、現像剤規制ブレード14を現像ロール12に接触させる。そして、この状態において、現像剤供給ロール13を回転させるときの総和の回転トルクを測定した。そして、この方法で測定した回転トルクを、本実施例のトルクの測定値とした。この結果を図10に示す。図10は、ブラシ毛31の中空率とトルクとの関係を示す図である。
【0075】
図10は、縦軸はトルクを示し、横軸は中空率を示す。図10に示すように、中空率が上がるにつれて、トルクが低下している。よって、中空率が上がるとトルクは低下することが分かる。
【0076】
以上の結果から、中空率があがると、接着強度はあがり、剛性およびトルクは低下することが分かる。よって、中空のブラシ毛は、中実(中空率0%)のブラシ毛と比較して、より接着強度が強く、剛性およびトルク等の固さは、より柔らかいということが分かる。
【0077】
また、中空率が5〜50%程度であれば、中空率が零(すなわち、中実)の場合と比較して、接着強度は上がり、剛性、トルクは低下している。よって、中空率が5〜50%程度であれば、上述した効果を奏することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
ブラシ毛が基材の接着剤層と強固に接着しているので、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置のブラシに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態を示すものであり、ブラシ毛が接着されている状態を示す現像剤供給ロールの断面図である。
【図2】上記実施の形態における、ブラシ毛を示す斜視図である。
【図3】上記実施の形態における、現像装置の構成を示す断面図である。
【図4】上記現像装置を備えた画像形成装置の画像形成部を示す全体構成図である。
【図5】(a)〜(d)は、上記実施の形態における、ブラシ毛の例を示す図である。
【図6】上記実施の形態における、静電植毛ブラシの製造方法を示すものであり、(a)は、ブラシ毛が接着する前を示す断面図、(b)は、ブラシ網が接着した後の断面図である。
【図7】上記実施の形態における、ブラシ毛の効果を確認するための実験方法を示すものであり、(a)は中空率の計算方法を示す斜視図、(b)は接着強度を測定するための実験方法を示す図、(c)はブラシ毛の剛性を測定するための実験方法を示す図である。
【図8】上記実施の形態における、ブラシ毛の中空率と接着強度との関係を調べる実験結果を示すグラフである。
【図9】上記実施の形態における、ブラシ毛の中空率と剛性との関係を調べる実験結果を示すグラフである。
【図10】上記実施の形態における、ブラシ毛を用いた現像剤供給ロールを回転させたときのブラシ毛の中空率とトルクとの関係を調べる実験結果を示すグラフである。
【図11】従来の現像装置の構成を示す断面図である。
【図12】従来のブラシ繊維の接着方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 感光体ドラム(静電潜像担持体)
2 帯電ブラシ
4 転写ブラシ
10 現像装置
12 現像ロール
13 現像剤供給ロール(静電植毛ブラシ)
21 クリーニングブラシ(固体潤滑剤供給兼用クリーニングブラシ)
31 ブラシ毛
32 接着剤層
33 孔
34 基材(基台)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台の接着剤層にブラシ毛を静電植毛している静電植毛ブラシにおいて、
上記ブラシ毛は、中空になっていることを特徴とする静電植毛ブラシ。
【請求項2】
上記ブラシ毛は、長手方向に対し垂直に切断したときの断面が、輪状またはCの字状であることを特徴とする請求項1に記載の静電植毛ブラシ。
【請求項3】
上記ブラシ毛は、長手方向の面に中空部と外部とを接続している孔が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の静電植毛ブラシ。
【請求項4】
上記ブラシ毛は、該ブラシ毛の中空部側の面の面積を内層面積、外側の面の面積と中空部側の面の面積との和を外層面積としたときに、中空率=(内層面積/外層面積)×100で示される中空率が5〜50%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電植毛ブラシ。
【請求項5】
静電潜像担持体への現像を行う現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給ローラを備えている現像装置において、
上記現像剤供給ローラは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電植毛ブラシにて構成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
静電潜像担持体の帯電を行う帯電ブラシを備えている画像形成装置において、
上記帯電ブラシは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電植毛ブラシにて構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
静電潜像担持体における転写後の現像剤の極性をそろえるように帯電を行う現像剤帯電用帯電ブラシを備えている画像形成装置において、
上記現像剤帯電用帯電ブラシは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電植毛ブラシにて構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
静電潜像担持体の表面の除電を行う除電ブラシを備えている画像形成装置において、
上記除電ブラシは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電植毛ブラシにて構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
静電潜像担持体における転写後に残存する現像剤を除去するクリーニングブラシを備えている画像形成装置において、
上記クリーニングブラシは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電植毛ブラシにて構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
静電潜像担持体の現像を中間転写体へ転写し、その中間転写体から記録媒体への転写後に残存する中間転写体の現像剤を除去するクリーニングブラシを備えている画像形成装置において、
上記クリーニングブラシは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電植毛ブラシにて構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
静電潜像担持体における転写後に残存する現像剤を除去するとともに、固体潤滑剤を該静電潜像担持体の表面に塗布する固体潤滑剤供給兼用クリーニングブラシを備えている画像形成装置において、
上記固体潤滑剤供給兼用クリーニングブラシは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電植毛ブラシにて構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
静電潜像担持体の現像剤像を記録媒体に転写する転写ブラシを備えている画像形成装置において、
上記転写ブラシは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電植毛ブラシにて構成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−288724(P2009−288724A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143878(P2008−143878)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(390026147)東英産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】