説明

静電気植毛ガラス

【課題】ガラス板に静電気植毛した有機高分子繊維が、使用中に剥がれて製品の機能が損なわれることのない静電気植毛ガラスを提供すること。
【解決手段】ガラス板(1)に飛散防止フィルム(2)を貼り、接着剤(3)を塗布した後、静電気植毛により有機高分子繊維(4)を接着し、乾燥して固着することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板に有機高分子繊維を静電気植毛で固着した静電気植毛ガラスおよび静電気植毛ガラスを用いた光学式マウス用マウスパッド、建築材料、テーブル、容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス板の表面に静電気植毛により有機高分子繊維を接着する手段としては、ガラス板に接着剤を塗布し、静電気植毛する方法が知られている。
【0003】
この方法では、静電気植毛の接着強度が弱く、使用中に有機高分子繊維が剥がれる、という問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、ガラス板に静電気植毛した有機高分子繊維が使用中に剥がれて製品の機能が損なわれること、を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、ガラス板(1)に飛散防止フィルム(2)を貼り付け、飛散防止フィルム(2)の上に接着剤(3)を塗布し、静電気植毛で有機高分子繊維(4)を接着し、乾燥して固着する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の静電気植毛ガラスにおいて、飛散防止フィルム(2)がポリエステル製またはポリカーボネート製または塩化ビニール製のいずれか一方である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載の静電気植毛ガラスにおいて、接着剤(3)がアクリル系またはウレタン系またはエポキシ系または酢酸ビニル系のいずれか一方である、もしくはこれらの混合物である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1に記載の静電気植毛ガラスにおいて、有機高分子繊維(4)がレーヨン製またはナイロン製のいずれか一方である、もしくはこれらの混合物である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の静電気植毛ガラスにおいて、ガラス板(1)を強化ガラスとした。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の静電気植毛ガラスよりなるガラス製光学式マウス用マウスパッドである。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の静電気植毛ガラスよりなるガラス製建築材料である。
【0012】
請求項8の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の静電気植毛ガラスよりなるガラス製テーブルである。
【0013】
請求項9の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の静電気植毛ガラスよりなるガラス製容器である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜請求項5の発明を使用することによって、ガラス板に貼りつけた飛散防止フィルムに静電気植毛で有機高分子繊維を強固に固着させるので、有機高分子繊維の剥がれを防止でき、製品の機能が損なわれない。
【0015】
請求項1〜請求項5の発明を使用することによって、ガラス板には飛散防止フィルムを貼っているので、ガラスが割れた際に飛散を防止できる。
【0016】
請求項1〜請求項5の発明を使用することによって、廃棄する際は飛散防止フィルムを剥がせば、ガラスのみを分別回収できる。
【0017】
請求項6の発明によれば、有機高分子繊維(4)によりガラス板の光反射率が上昇することによって光学式マウスに対する応答性が向上したマウスパッドがえられる。
【0018】
請求項7の発明によれば、視界をさえぎるための窓やパーテーション、壁材などのガラス製建築材料がえられる。
【0019】
請求項8の発明によれば、静電気植毛面が衝撃を和らげるため、ガラスにキズが付きにくくなり、割れを防止できる、ガラス製テーブルがえられる。
【0020】
請求項9の発明によれば、静電気植毛面が衝撃を和らげるため、キズが付きにくい容器がえられ、静電気植毛面を内側に使えば、保管品による容器へのキズが付きにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の最良の形態を説明する。図1は本発明にかかる静電気植毛ガラスの構成を示す平面図である。本静電気植毛ガラスは以下の(イ)〜(ニ)の工程で製造される。
(イ)ガラス板(1)にガラスが割れたときの飛散を防止するポリエステル製飛散防止フィルム(2)を貼る。
(ロ)飛散防止フィルム(2)の上にアクリルエマルジョン接着剤(3)を塗布する。
図2は静電気植毛法の1つであるダウンメソッド法による静電気植毛の概略構成を示す図である。
(ハ)平板上の電極(6)間に直流高電圧を印加する。繊維散布装置(7)から落下したナイロン製有機高分子繊維(4)が高電圧発生装置(5)によって形成された電界を通過する際に電界に沿って平行に揃い、アクリルエマルジョン接着剤(3)に突き刺さる。
(ニ)上記を乾燥し、アクリルエマルジョン接着剤(3)を硬化させることで、ナイロン製有機高分子繊維(4)を固着させる。
【実施例1】
【0022】
ガラス板にポリエステル製飛散防止フィルム(リンテック社製ルミクール)を貼った後、アクリルエマルジョン接着剤をガン吹きで塗布し、太さ1.7T(デシテック)のナイロン製有機高分子繊維を静電気植毛で接着後、乾燥した。ガラス板面へのナイロン製有機高分子繊維の接着力を評価するために飛散防止フィルムを使用した場合と使用しない場合でJIS K5600−5−6塗料一般試験方法−塗膜の機械的性質−付着性(クロスカット法)に準じた試験をおこなった。
試験は以下の方法でおこなった。
方法:カッターナイフで1mm間隔で6本の切込みを入れる。カットはガラス表面まで貫通させた。この切込みに対し90°で6本の切込みを入れ、5×5ヶの格子パターンを作成した。試験片上の静電気植毛繊維に、市販のJIS Z1522セロハン粘着テープを貼り、剥がした後の静電気植毛繊維の付着状態を観察する。静電気植毛繊維の剥がれ具合によって、静電気植毛繊維の付着度合いを0〜5分類で評価する。
各分類は以下の通り説明できる。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を上回ることはない。
分類5:分類4でも分類できないはがれ程度のいずれか。
結果:A、B、C、Dの4点を評価し、分類の平均値を算出した。
飛散防止フィルムルミクール使用時
A点 分類0 B点 分類0 C点 分類0 D点 分類0 平均値0
接着剤のみ使用時
A点 分類4 B点 分類2 C点 分類2 D点 分類3 平均値3
以上、飛散防止フィルムを使用することで、JIS K5600−5−6に準じたクロスカットテストで良好な結果が得られた。
【実施例2】
【0023】
図3は本発明の応用例で、十文字型柄を静電気植毛で描いたときの構成図である。静電気植毛をしない面をテープでマスキングし、静電気植毛後にマスキングテープ(8)を剥がすことで十文字型柄が得られる。
【実施例3】
【0024】
図4は本発明にかかる静電気植毛ガラスを用いたガラス製光学式マウス用マウスパッドの外観図である。静電気植毛によりガラス板表面の光反射率が増加し、静電気植毛を施さない場合に比べ光学式マウスに対する応答性が向上した。
【実施例4】
【0025】
図5は本発明にかかる静電気植毛ガラスを用いたガラス製テーブルの外観図である。静電気植毛面は衝撃を和らげる効果があるので、静電気植毛を施さない場合に比べガラスにキズが付きにくく、割れを防止しやすくなった。
【実施例5】
【0026】
図6は本発明にかかる静電気植毛ガラスを用いたガラス製容器の外観図である。静電気植毛面は衝撃を和らげる効果があるので、静電気植毛を施さない場合に比べ容器にキズが付きにくくなった。静電気植毛面を内側に使ったところ、保管品によるガラスへのキズが付きにくくなった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
静電気植毛によりガラス板の光反射率が増加するので、マウスパッドとして使用すると光学式マウスに対する応答性が向上する。
【0028】
可視光透過率を減少させる効果を利用して、視界をさえぎるための窓やパーテーション、壁材などの建築材料に使用できる。また、柄を静電気植毛で描く、あるいは柄入り飛散防止フィルムを使用し、柄を入れることもできる。
【0029】
静電気植毛面は衝撃を和らげるため、ガラスにキズが付きにくく割れを防止できるので、テーブルに使用できる。
【0030】
静電気植毛面は衝撃を和らげるため、容器として使用するとキズが付きにくい。静電気植毛面を内側に使えば、保管品によるガラスへのキズが付きにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】 本発明にかかる静電気植毛ガラスの構成を示す平面図
【図2】 ダウンメソッド法による静電気植毛の概略構成を示す図
【図3】 応用例 十文字型柄を静電気植毛で描いたときの構成図
【図4】 本発明にかかる静電気植毛ガラスを用いたガラス製光学式マウス用マウスパッドの外観図
【図5】 本発明にかかる静電気植毛ガラスを用いたガラス製テーブルの外観図
【図6】 本発明にかかる静電気植毛ガラスを用いたガラス製容器の外観図
【符号の説明】
【0032】
1 ガラス板
2 飛散防止フィルム
3 接着剤
4 有機高分子繊維
5 高電圧発生装置
6 電極
7 繊維散布装置
8 マスキングテープ
9 静電気植毛ガラス
10 ガラス製光学式マウス用マウスパッド
11 光学式マウス
12 ガラス製テーブル
13 ガラス製容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板(1)に飛散防止フィルム(2)を貼り付け、飛散防止フィルム(2)の上に接着剤(3)を塗布し、静電気植毛で有機高分子繊維(4)を接着し、乾燥して固着させたことを特徴とする静電気植毛ガラス
【請求項2】
飛散防止フィルム(2)がポリエステル製またはポリカーボネート製または塩化ビニール製のいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の静電気植毛ガラス
【請求項3】
接着剤(3)がアクリル系またはウレタン系またはエポキシ系または酢酸ビニル系のいずれか一方である、もしくはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の静電気植毛ガラス
【請求項4】
有機高分子繊維(4)がレーヨン製またはナイロン製のいずれか一方である、もしくはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の静電気植毛ガラス
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の静電気植毛ガラスにおいて、ガラス板(1)を強化ガラスとしたことを特徴とする静電気植毛ガラス
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の静電気植毛ガラスよりなるガラス製光学式マウス用マウスパッド
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の静電気植毛ガラスよりなるガラス製建築材料
【請求項8】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の静電気植毛ガラスよりなるガラス製テーブル
【請求項9】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の静電気植毛ガラスよりなるガラス製容器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−37079(P2008−37079A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231248(P2006−231248)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(504473407)株式会社キョーカ (3)
【Fターム(参考)】