非メチル化CpGモチーフを含むDNAに特異的に結合するタンパク質を用いて原核生物DNAの濃縮または分離のうち少なくともいずれか一方を行う方法
本発明は、原核生物DNAの分離および濃縮のうち少なくともいずれか一方を行う方法に関し、該方法は、(a)溶液中に存在する少なくとも1つの原核生物DNAを、原核生物DNAに特異的に結合し、野生型のCGPBタンパク質と25%〜35%の相同性を有するタンパク質と接触させることによって、タンパク質‐DNA複合体を形成する工程と、(b)前記複合体を分離する工程とからなる。本発明は前記方法を実施するためのキットにも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAの非メチル化シチジン‐ホスフェート‐グアノシンジヌクレオチド(CpGモチーフ)に特異的に結合するタンパク質を用いて、原核生物DNAの濃縮または分離のうち少なくともいずれか一方、または生理学的液体からの前記DNAの除去を行う方法、ならびに前記方法を実施するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
細菌感染は炎症性疾患の最大の原因のうちの一つである。臨床的要因の予後を診断するため、ならびに、特に適切な治療手段を適時に選択するために、病原性細菌の早期検出は決定的に重要である。
【0003】
病原性細菌の検出においては、今日でもとりわけ種々の細胞培養法が用いられている。しかしながら、最新の研究から、病原体の検出のために培養に依存した方法を用いることは不適切であることが明白に示されている(非特許文献1、2)。これらの研究によれば、検査した全ての血液培養物のおよそ15〜16%でしか病原体を特定することができなかった。これらの方法には欠点があるので、特にこの10年間、分子生物学の急速な技術的発展と併行して代替法を見出す一層の取り組みがなされてきた。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の原理に基づく、培養に依存しない病原性細菌検出法の使用に関する最初の報告は、1990年代初期にさかのぼる。例えば、ミラーら(非特許文献3)は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の検出について培養を用いない方法が古典的な培養および顕微鏡観察の方法よりも優れていることを示すことができた。しかしながら、病原体に特異的な核酸の検出に基づくさらなる分子生物学的手法(例えば非特許文献4〜7)が重要となってきている。
【0004】
このような分子生物学的手法の高い特異性に加えて、従来の培養を用いる方法に対する実質的な利点として言及すべきなのは所要時間の縮小である。しかしながら、前処理済みの試験材料ではなく、体液から直接原核生物DNAを検出する感度は、微生物の培養に比べて非常に低いものであった。前処理されていない試験材料から病原体を直接検出するのに十分な細菌核酸の量は、細菌染色体上の16S領域のPCRと該PCR断片の配列分析による16S‐rRNA分析については限られた範囲でのみ達成されるが、これは多くの場合、16S‐rRNAをコードする部分が染色体上に数コピー見出されるからである。16S‐rRNA分析を用いて病原体を特異的に直接検出するには、検査する試料中に病原体が1種類しか存在しないことが必要である。試料中に異なる種類の病原体が存在する場合、16S‐rRNA領域の配列決定による特異的検出は不可能となる。これは、使用されるプライマーがほとんどの細菌について共通するからである。さらに、16S‐rRNA分析による病原体の検出には、検出しようとする細菌が代謝状態にあって十分に16S‐rRNAを発現していることが必須条件である。この条件は通常、特に抗生物質の予測治療を受けている患者においては当てはまらない。さらに、細菌のある種の病原性因子は、その遺伝子が細菌ゲノム上に存在はしていても常に発現しているわけではない。その結果、誤った陰性結果が臨床医へと伝わってしまう。従って、抗生物質を選択した治療が全く開始されないか、開始が遅すぎてしまう可能性がある。そのような場合、医師は経験による自身の知識と一般的ガイドライン(パウル・エールリッヒ・ゲゼルシャフトのガイドラインなど)を頼りにしなければならず、従って非常に特異性の低い抗生物質治療を行うことになる。抗生物質の非特異的な使用は、個々の患者に対するリスク(腎臓障害などの不必要な副作用など)だけでなく、社会全体に対しても(MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などのさらなる抗生物質耐性菌の出現など)多くのリスクを有している。
従って、臨床上重要な細菌の病原性因子および耐性を染色体レベルおよびプラスミドレベル、すなわち最終的にはDNAレベルで検出することは、多くの感染症や敗血症の診断に大きな利点をもたらす。このことは、そのレベルであれば病原細菌と共生細菌の区別もできるので一層妥当である。
【0005】
病原体特異的な核酸の検出は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)による原核生物DNAの増幅などの核酸増幅技術(NAT)によりそれぞれ行われることが最も多い。その結果は特異性が高く迅速に得られるが、一方でコンタミネーションや臨床試料由来の強力な反応阻害因子により影響を受けやすい。
【0006】
従来のPCRによる検出法では、血液中の病原体を十分に検出するには、理論上10μlの血液中に少なくとも1つの標的病原体DNAが存在している必要がある。これは、1mlの血液中約100個の標的、あるいは10mlの血液中約1000個の標的にそれぞれ相当する。感染性病原体の検出のための血液培養物については事情が異なる。この場合は、検出限界は血液10mlあたり細菌約3〜5個である。
【0007】
現在、PCR法では、染色体上の16S‐rRNA領域周辺に標的配列を有するPCR法であってもまだこの検出限界に達していない。16S‐rRNAをコードする領域は数個、大抵は3〜6個、細菌染色体上に位置しているが、少なくとも1分子の鋳型DNAがPCR反応混合物中にあるという必須条件には満たない。
【0008】
微生物の染色体またはプラスミド上の特異的標的配列が種特異的なタンパク質をコードするPCR法については、診断上の安全性の向上が期待される。検出限界に関する上述の見解がここでも当てはまる。特に現行の抗生物質療法の作用のもとでは、最終的に使用される抗生物質が最適な効果を有していなくても、病原体の増殖が大幅に減速、制限または阻害される可能性がある。この状況は、特に抗生物質治療をすでに受けている患者、従ってその血液培養物またはその他の試料(例えば気管スミア、気管支肺洗浄物(BAL)など)から病原性細菌が増殖できない患者において見られることが多い。
【0009】
感度が不十分なため、増幅工程を伴わず原核生物DNAを直接検出すること(プローブ法、FISH法)による病原体特異的な核酸の検出は、試験材料中の病原菌数が十分高い場合にのみ診断上重要となる。
【0010】
体液中の病原性細菌を特定するための原核生物DNAの検出に関する本質的な問題点は、試験材料中のPCR阻害成分に加えて、主に、原核生物DNA濃度が低いこと、その結果真核生物DNAと原核生物DNAとの比が非常に大きいことにある。このことに関しては、特に、DNA分析における競合的プロセスならびに原核生物DNAの量を、病原体の定性的かつ定量的検出に対する障害とみなすことができる。
【0011】
通常のDNA単離方法では、体液の全DNAが濃縮されて、宿主DNAと微生物DNAとの比が1:10−6〜1:10−8になる。この差から、体液中の微生物DNAの検出が困難であることが極めて容易に理解される。
【0012】
原核生物DNAは、例えば非メチル化CpGモチーフの存在という点で真核生物DNAとは異なっている(非特許文献8)。原核生物DNAには、真核生物DNAの16倍のCpGモチーフが存在しているが、真核生物DNAはそのようなモチーフを、例えばがん細胞やプロモーター領域において一時的にのみ含んでいる。これらのモチーフは原核生物DNAではメチル化されていないが、真核生物DNAでは大多数がメチル化されており、このことは両DNAの区別を増補するものである。非メチル化CpGモチーフとは、原核生物ゲノムまたはその断片の中の、メチル化されていないデオキシシチジル酸‐デオキシグ
アニル酸‐ジヌクレオチドである。
【0013】
さらに、ヒトDNA中のメチル化パターンの差異に基づいて、がんについて診断することが可能である(非特許文献9)。ゲノム中のメチル化シトシンおよび非メチル化シトシンは、組織特異的パターンならびに疾患特異的なパターンとして特定されうる。疾患の特異的メチル化パターンは、一方では非常に早い時点での診断を可能にし、他方では疾患の分子レベルの分類や、特定の治療に対する患者の応答の予測を可能にする。このことに関する詳細な情報については、例えば非特許文献10、エピゲノミクス・アーゲー(Epigenomics AG)のホームページ(http://www.epigenomics.de )、または特許文献1を参照されたい。
【0014】
非特許文献11には、メチル化CpGモチーフをタンパク質に結合させることによって、メチル化されたヒトゲノムDNAを分離することが可能であることが示されている。従って、この方法はメチル化CpGモチーフを含むDNAを結合させる働きを有する。非メチル化DNAとメチル化DNAとを十分に単離することは、技術的理由から、すなわち用いられるタンパク質が非メチル化DNAにも弱く結合することから、不可能である。また、これらの方法を用いて非メチル化DNAを濃縮することについても、用いられるタンパク質の許容能力が大過剰のメチル化DNAがある場合にも十分非メチル化DNAを分離するほど十分ではないため、不可能である。さらに、メチル化DNAの結合によって非メチル化DNAの存在する初期容量が変化することはないので、濃縮は達成されない。
【0015】
従って、真核生物DNAから原核生物DNAを、あるいはメチル化状態の異なるヒトDNAをそれぞれ互いに分離するために、非メチル化DNAをメチル化DNAから分離し、非メチル化DNAを濃縮可能とすることが望ましいであろう。さらに、非メチル化DNAの単離および濃縮が、大過剰のメチル化DNAを含む混合物(例えば全血)からも可能となれば、健康の経済学の観点からも望ましく非常に興味深いこととなろう。
【0016】
ブー(Voo)らによれば、ヒトCpG結合タンパク質(hCGBP)は非メチル化CpGモチーフに結合することができる。この報告には、CpGモチーフ内の遺伝子発現の制御において役割を果たすことが示されている転写活性化因子hCGBPについて記載されている。
【0017】
特許文献2には、非メチル化DNAに特異的に結合するタンパク質に原核生物DNAを結合させることによって、原核生物DNAと真核生物DNAとの混合物からの原核生物DNAの単離および濃縮を可能とする方法が示されている。
【特許文献1】国際公開公報第2004/067775号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第02020904号明細書(EP02020904)
【非特許文献1】ヘレブラント、ヴェー.(Hellebrand W.)、ケーニッヒ‐ブルーンス、ツェー.(Koenig‐Bruhns C.)、ハス、ヴェー.(Hass W.)、「Studie zur Blutkulturdiagnostik im Jahr 2002」、Poster Jahrestagung der Deutschen Gesellschaft fuer Hygiene und Mikrobiologie、ゲッティンゲン(Goettingen)、2004年
【非特許文献2】シュトラウベ、エー(Straube E)、2003年、「Spesis‐microbiological diagnosis」、Infection、第31巻、p.284
【非特許文献3】ミラー、エヌ(Miller N)、J.Clin.Microbiol.、1994年2月、第32巻第2号、p.393‐7
【非特許文献4】エム.グリジャルバ(M.Grijalva)ら、Heart、第89巻、2003年、p.263‐268
【非特許文献5】ウィッテンデーレ、エム(Uyttendaele M.)ら、Lett Appl Microbiol.、2003年、第37巻第5号、p.386‐91
【非特許文献6】ソーッコリッピ、エイ(Saukkoriipi A)ら、Mol Diagn.、2003年3月、第7巻第1号、p.9‐15
【非特許文献7】ツァナカキ、ジー(Tzanakaki G)ら、FEMS Immunl Med Microbiol.、2003年10月24日、第39巻第1号、p.31‐6
【非特許文献8】ハルトマン、ゲー(Hartmann G)ら、ドイツ医師会誌(Deutsches Aerzteblatt)、Jg 98/15:A981−A985、2001年
【非特許文献9】「Epigenetics in Cancer Prevention:Early Detection and Risk Assessment」、Annals of the New York Academy of Sciences、第983巻、ムーケシュ フェルマ(Mukesh Verma)編、ISBN 1−57331−431−5
【非特許文献10】ベック、エス(Beck S)、オレク、エイ(Olek A)、ウォルター、ジェイ(Walter J)、「From genomics to epigenomics:a loftier view of life」、Nature Biotechnology、1999年12月、第17巻第12号、p.1144
【非特許文献11】クロス、エスエイチ(Cross SH)、チャールトン、ジェイエイ(Charlton JA)、ナン、エックス(Nan X)、バード、エイピー(Bird AP)、「Purification of CpG islands using a methylated DNA binding column」、Nat Genet.、1994年3月、第6号第3号、p.236−44
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の目的は、特に感染患者由来の、真核生物DNAを大量に含有する検査試料から、原核生物DNAの分離および濃縮のうち少なくともいずれか一方を実施する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、上記課題は非メチル化CpGモチーフに結合するタンパク質により達成され、前記タンパク質は野生型のCPGBタンパク質と25〜35%、特に約27.6%の相同性を有し、野生型CPGBタンパク質に対して最大限で結合部位の長さまで短縮されたものである。
【0020】
ヒトCPGBタンパク質(ブー(Voo)ら、Mol.Cell.Biol.、2000年3月、第20巻第6号、p.2108−21)を、以降本明細書中では野生型CPGB(またはCPGbP656)と呼ぶ。本発明のタンパク質を以降本明細書中ではCPGbP181と呼ぶ。特許文献2に記載の、野生型CPGBタンパク質の短縮型バリアントであり本発明のタンパク質の基礎となったタンパク質を、以降本明細書中ではCPGbP241と呼ぶ。
【0021】
本発明について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0022】
野生型CPGBタンパク質であるCPGbP656は、原核生物DNAの非メチル化CpGモチーフに結合することにより、タンパク質‐DNA複合体を形成する。この複合体
を、例えば担体に結合させてもよいし、結合するようにしてもよく、そうすることによってDNAの分離および濃縮のうち少なくともいずれか一方が実施可能である。ここで、本発明は、野生型CPGBタンパク質(656アミノ酸からなるCPGbP656)よりも短く、野生型CPGBタンパク質と25〜35%、特に約27.6%の相同性を示すタンパク質が、野生型CPGBタンパク質や80%以上の相同性を有するそのバリアントよりも、原核生物DNAの非メチル化CpGモチーフに対し高い結合性を有するという驚くべき発見に基づくものである。そのような短縮型タンパク質の例は、181アミノ酸のCPGbP181である。
【0023】
原核生物DNAは、例えば非メチル化CpGモチーフの存在という点で真核生物DNAとは異なっている(非特許文献8)。本発明は、真核生物DNAと原核生物DNAとでCpGモチーフの割合が異なっているという発見に基づいている。原核生物DNAでは、CpGモチーフが真核生物DNAに比べて20倍過剰に存在するが、真核生物DNAはそのようなモチーフを、例えばがん細胞やプロモーター領域において一時的にしか含まない(非特許文献8)。原核生物DNAではこれらのモチーフはメチル化されていないが、真核生物DNAではそのほとんどがメチル化されており、このことにより両者の識別性がさらに高まっている。非メチル化CpGモチーフとは、原核生物ゲノムまたはその断片の中の、メチル化されていないデオキシシチジル酸‐デオキシグアニル酸ジヌクレオチドである。
【0024】
本発明はさらに、本発明のタンパク質が非メチル化CpGモチーフに特異的に結合するという発見に基づく。本発明のタンパク質の特異的結合性は、原核生物DNAを結合し、続いて、例えば大多数の真核生物DNAを含む試料から原核生物DNAを濃縮、分離、および単離するために利用される。
【0025】
用語「非メチル化CpGモチーフを含むDNA」とは、真核生物DNAおよび原核生物DNAのいずれをも意味する。前記DNAは精製かつ再溶解されていてもよいし(例えば組織から単離された非メチル化DNA)、元の供給源(例えば、血液、血清、気管吸引物、尿、気管支肺洗浄物、鼻スミア物、皮膚スミア物、穿刺液などの体液など)の中に直接存在していてもよい。
【0026】
好適な実施形態によれば、非メチル化CpGモチーフを含むDNAは原核生物DNA、特に細菌DNAである。
【0027】
本発明の意味における用語「相同性」とは、2つのタンパク質の配列の一致の度合いに関するものである。例えば、60%の相同性とは、それらの配列中の100個のアミノ酸部位のうち60個が一致していることを意味する。本発明のタンパク質を特徴付けるために用いられる用語「短縮型」とは、本発明のタンパク質(例えば、CPGbP181)のアミノ酸配列の長さが、野生型のCPGBタンパク質(CPGbP656)のアミノ酸配列の長さよりも短いことを意味する。野生型タンパク質配列はそのN末端およびC末端において短縮される(図1)。最大限短縮化されると、該タンパク質のDNA結合部位に相当する。
【0028】
本発明で使用されるタンパク質は、分子量が例えば約19,959ダルトン(天然型)または21,444ダルトン(プラスミドpQE60内)である。別の好適な実施形態では、本発明のタンパク質の等電点は約10.09(天然型タンパク質)または10.15(プラスミドpQE60内)である。本発明で使用される特に好適なタンパク質は、配列番号2または図1に示すアミノ酸配列を有する。このタンパク質は、原核生物DNAの非メチル化CpGモチーフに対して特に良好な結合性を有する。
【0029】
特許文献2に記載のタンパク質(CPGbP241)は、野生型CPGBタンパク質(CPGbP656)の短縮型バリアントであり、本発明で用いられるタンパク質(例えばCPGbP181)の基礎の役割を果たしたものであるが、長さは241アミノ酸であり、分子量は約33,650ダルトン(天然型)または28,138ダルトン(プラスミドpQE60内)であり、等電点は9.89(天然型)または9.88(プラスミドpQE60内)である。そのcDNA配列およびアミノ酸配列を図1および図2に示す。
【0030】
野生型CPGBタンパク質は長さが656アミノ酸であり、135個の正に荷電した残基と94個の負に荷電した残基とを有し、分子量は約75,684ダルトンで、等電点は8.15である。そのcDNA配列およびアミノ酸配列を図1に示す。
【0031】
本発明で使用される配列番号2のタンパク質CPGbP181と、特許文献2に記載のタンパク質(CPGbP241)との比較を、図1および図2に示す。
【0032】
本発明で使用されるタンパク質は、対応するcDNA配列をプラスミドにクローニングして大腸菌で発現させることにより生産されることが好ましい。本発明のタンパク質を発現する大腸菌株は、2004年2月16日にドイツ微生物・培養生物保存機関(Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkulturen)に番号DSM16229として寄託されている。別例として、当技術分野で知られたその他の製造法を適用することも可能である。プラスミドpQE9の使用は可能な例を表すものであり、その他の任意の適切なプラスミドがベクターとして有用である。大腸菌における発現もまた単に1実施例にすぎない。その他の原核生物系および真核生物系における発現ならびに化学合成もしくは酵素的合成または天然供給源(例えば植物のタバコなど)からの精製は、タンパク質を抽出するために可能な別の実施形態である。該タンパク質は、実験室規模で(例えばエルレンマイヤーフラスコで)生産してもよいし産業規模で(例えば発酵槽で)生産してもよい。例えば、本発明のタンパク質は、同タンパク質の先端または末端に導入されたヒスチジンタグ(Hisタグ)を適切なニッケル含有マトリクスに結合させることによって精製することも可能であり、これは当技術分野で周知の方法である。
【0033】
精製のさらなる可能性としては、適切なマトリクス(カラム、ゲル、ビーズなど)を介した精製を可能にする任意の種類の融合タンパク質がありうる。その他の形態のタグは、ストレプトアビジンタグ、Mycタグなどの融合ペプチド/融合タンパク質でありうる。
【0034】
本発明により使用されるタンパク質の好適な形態は天然型であるが、変性型も非メチル化CpGモチーフを結合するのに適している。本発明の意味における「変性型」とは、天然状態で見られる二次構造以外の二次構造として理解される。
【0035】
本発明により使用されるタンパク質の天然型または変性型は、例示的実施形態である。本発明は、タンパク質のin vitro合成ならびにその他の任意の化学修飾または酵素的修飾、例えばジスルフィド架橋の導入、グリコシル化、リン酸化、アシル化、アミノ酸交換ならびにタンパク質その他の分子との融合などを含む。そのような修飾は、例えば組換え、発現、1つまたは複数のアミノ酸の化学修飾もしくは酵素的修飾のうち少なくともいずれか1つにより達成可能である。
【0036】
本発明で使用されるタンパク質は様々な利点を有している。同タンパク質は、野生型CPGBタンパク質または80%以上の相同性を有するそのバリアントよりも、非メチル化CpGモチーフを介した原核生物DNAの結合において好都合である。このことにより、原核生物DNAと真核生物DNAとの混合物から原核生物DNAを特異的に分離および/または濃縮することが可能となる。最終的には、病原体の迅速かつ簡単な検出ならびに病
原性細菌による感染症の早期診断が可能となる。逆に言えば、本発明は、患者の体液、特に血液中に細菌またはその切断産物が非生理的に存在している臨床状態について、精製するという意味で微生物DNAを除去するために使用することも可能である。このことは、細菌およびその切断産物、例えば細菌DNAなどが、患者に対して有害な種々の生物学的作用の原因であることが良く実証されていることからみても、一層妥当なことである。
【0037】
本発明で使用されるタンパク質が原核生物DNAの非メチル化CpGモチーフに良好に結合しうることから、本発明は、原核生物DNAの分離および濃縮のうち少なくともいずれか一方を行う方法に関し、該方法は、
(a)溶液中に存在する少なくとも1つの原核生物DNAを、原核生物DNAに特異的に結合し、野生型のCGPBタンパク質と25%〜35%の相同性を有するタンパク質と接触させることによって、タンパク質‐DNA複合体を形成する工程と、
(b)前記複合体を分離する工程と
からなる。
【0038】
DNAは精製されて再溶解されていてもよいし、元の供給源(例えば、血液、血清、気管吸引物、尿、気管支肺洗浄物、鼻スミア物、皮膚スミア物、穿刺液など)の中に直接存在していてもよい。
【0039】
分離は、DNA‐タンパク質複合体またはDNA‐ポリペプチド複合体を分離、単離もしくは濃縮するための、当技術分野の技術者に周知の種々の方法により実施することが可能である。実施に際しては、試料溶液からDNAを分離および/または濃縮するために、DNA結合タンパク質を担体に固定化する(または固定化されている)方法を使用することが好ましいであろう。
【0040】
好適な実施形態によれば、分離の次に、前記複合体中の本発明のタンパク質からDNAを分離する工程が続く。この工程は、例えば、当技術分野の技術者に周知の従来のDNA精製法により実施可能である。最も簡単な例では、媒体/緩衝液のpH値または塩濃度を変化させる(例えば塩濃度を1M NaClにする)ことにより、あるいはカオトロピック試薬を添加することなど、すなわちタンパク質‐DNA複合体を分離させる適切なパラメータにより、実施される。そのような方法は当技術分野の技術者に周知である。
【0041】
さらに好適な実施形態によれば、本発明のタンパク質は担体に連結される。この実施形態は、原核生物DNAを濃縮するための特に簡単な方法に該当するが、それは、例えば溶液からチャージされた状態の担体を物理的に(例えば遠心分離により)除去することにより、溶液からの分離が特に容易であるからである。
【0042】
原核生物DNAの溶液については、任意の適切な溶媒が基本的に想定される。しかしながら、本方法は、種々の生体分子、特に様々な種類のDNAを含有する溶液からの原核生物DNAの濃縮に特に有用である。好ましくは本発明は、原核生物DNAと真核生物DNAとの混合物から原核生物DNAまたはウイルスDNAを分離および濃縮する方法に関する。その実施に際しては、例えば、体液中に存在する原核生物DNAが、本発明のタンパク質への特異的結合により真核生物DNAから分離され、濃縮される。こうして濃縮された原核生物DNAにより、分子生物学的方法を利用した病原性原核生物の検出が容易になり、病原性病原体による疾患の診断にも貢献しうる。
【0043】
特に、DNA結合タンパク質が担体の表面に固定化される実施形態は、体液、好ましくは血液から原核生物DNAを吸着するのに適している。さらに、この手法により、血液その他の体液中に存在する微生物DNAを該体液から除去することも可能となる。次いで、それ自体患者に重篤な炎症反応を引き起こしうる微生物DNAについてこのように精製さ
れた体液(例えば全血、血清または髄液)を、体内に戻すこともできる。この原理は、本発明のタンパク質の特異的結合性を利用した、精製という意味での生理学的液体からの原核生物DNAの除去についても使用することができる。
【0044】
DNAの非メチル化CpGモチーフに関する結合能および結合効率を増大させるために、本発明は、該タンパク質の結合能および結合効率を強化してメチル化DNAと非メチル化DNAとの混合物からの非メチル化DNAの分離および/または濃縮を改善する方法を提供する。
【0045】
本発明によれば、このことは本発明のタンパク質をマトリクスに間接的に連結させることにより達成される。この方法については図9および図10を参照しながら後述する。
【0046】
非メチル化CpGモチーフを含むDNAに関するCpGbP181タンパク質の結合能および結合効率を強化するために、本発明は、該タンパク質の、スペーサーを介したマトリクスへの間接的結合に関する。スペーサーを介してマトリクスにタンパク質を連結することにより、CpGbP181タンパク質の可動性および空いている結合部位の数が増大する。従って、結合能および結合効率が増大する。このことにより、使用するタンパク質量の低減もさらに可能となる。
【0047】
本発明の意味におけるスペーサーとは、マトリクスと本発明で使用されるタンパク質、例えばCpGbP181タンパク質との間に空間的距離をもたらす、短い鎖状の分子として理解される。そのようなスペーサーは、例えばアフィニティ(親和性)クロマトグラフィまたはタンパク質の固定化などの当技術分野において周知である。そのような鎖状の分子は、C原子およびH原子ならびに任意選択でヘテロ原子(例えばN)から構成される。これらの鎖状分子はC原子を基本とする個々の鎖要素(例えばCH2)と、存在しうるものとしてはヘテロ原子を基本とする鎖要素(例えばNH)とで構成される。特に、スペーサーは4〜20個、好ましくは7〜10個の鎖要素を含んでなる。特に好ましいスペーサーはジアミンヘキサン(NH2(CH2)6‐NH2)由来のものである。本発明の意味における抗体は、スペーサーとしてはみなされない。
【0048】
本発明の意味におけるマトリクスとは、スペーサーおよび本発明のタンパク質のための担体として機能する物質のことである。担体材料は、例えば、セファロース、パールセルロース(Perlzellulose)、シリカ、または当技術分野で周知の類似の物質であってよい。
【0049】
本発明の意味における体液は、ヒトなどの哺乳動物の体を起源とする全ての液体、特に、血液、尿、髄液、胸膜液、心嚢液、腹膜液ならびに滑液などの病原体が見出されうる液体として理解される。ヒト血液に関する本発明の記載は限定的なものではなく、単に例示的な適用としての記載にすぎない。
【0050】
病原性細菌とは、好ましくは敗血症の病原体として理解されるが、感染症についてのその他の任意の病原性細菌としても理解される。病原性細菌は、共生病原体、すなわち正常な生物集団の一部であって患者由来の試験試料中にも見出される場合があるが臨床上何ら問題のない病原体とは異なるものであってよい。
【0051】
感染した体液から全DNAを単離するとき、宿主DNAと病原体DNAとの比率は多くの場合わずか1:10−6〜1:10−8またはそれ未満であろう。原核生物DNAが本発明のタンパク質に特異的に結合することにより、本発明の方法で1指数関数単位以上の濃縮が可能となる。
【0052】
本発明で用いられるタンパク質は直接的または間接的に担体に連結させることができる。連結の種類は担体および担体材料によって変わる。適切な担体には、特に、メンブレン、微小粒子および樹脂、または類似のアフィニティ(親和性)マトリクス用の材料が挙げられる。本発明のタンパク質を結合させるため、ならびに(材料の種類に応じて)そのような結合を実施するために適した材料は、当業者には周知である。間接的な連結については、本発明のタンパク質またはペプチドに対する特異抗体が適しており、例えば、該抗体を周知の方法で担体に結合させる。
【0053】
本発明の方法の1つの応用は、原核生物DNAを濃縮することにある。別の応用は、例えばマトリクスに固定化されている本発明のタンパク質に原核生物DNAを結合させることにより、真核生物DNAと原核生物DNAとの混合物から原核生物DNAを分離することにある。生体自身のDNAと原核生物DNAとの混合物を、適切な手段によりアフィニティマトリクスと接触させると、その間に原核生物DNAは固定化されたタンパク質に結合するが、真核生物DNAは例えば分離カラムを通過し、別途回収することができる。アフィニティマトリクスには、例えば、アガロースなどのポリマー多糖、その他のバイオポリマー、合成ポリマー、または多孔質ガラスなどのケイ酸骨格を有する担体もしくはその他本発明のDNA結合タンパク質が固定化される固体担体もしくは可撓性担体が挙げられる。真核生物DNAから原核生物DNAを分離した後、アフィニティマトリクスを適切な試薬ですすぎ、原核生物DNAが結合している結合タンパク質をマトリクスから分離するか、あるいは原核生物DNAを結合タンパク質から分離するかのうち少なくともいずれかを実施してその後の処理工程に十分な量を得るようにする。
【0054】
本発明の方法の別の応用は、微小粒子上に固定化されている本発明のタンパク質に原核生物DNAを結合させることにより、真核生物DNAから原核生物DNAを分離および濃縮することにある。これに関しては、本発明のDNA結合タンパク質を固定化させることが可能なあらゆる微小粒子が適用可能である。そのような微小粒子は、ラテックス、プラスチック(例えば発泡スチレン、ポリマー)、金属、または強磁性体で構成されるものであってよい。さらに、蛍光性微小粒子、例えばLuminex社から入手可能な蛍光性微小粒子などを使用することもできる。微小粒子上に固定化された本発明のタンパク質に原核生物DNAを結合させた後、ろ過、遠心分離、沈殿、蛍光強度測定によるソーティング、または磁力を用いる方法などの適切な方法で、物質混合物から前記微小粒子を分離する。微小粒子から分離した後には、原核生物DNAをさらなる処理に用いることができる。
【0055】
本発明の方法の別の応用は、本発明のタンパク質に原核生物DNAを結合させることにより、真核生物DNAから原核生物DNAを分離および濃縮した後、電気泳動により混合物中のその他の成分から原核生物DNAを分離することにある。
【0056】
本発明の方法の別の応用は、本発明のタンパク質に原核生物DNAを結合させることにより、真核生物DNAから原核生物DNAを分離および濃縮することにある。続いて本発明のタンパク質を対応する抗体に結合させる。該抗体は、ガラス、プラスチック、シリコーン、微小粒子、メンブレンなどの固体物質または可撓性物質に結合していてもよいし、溶液状態であってもよい。原核生物DNAが本発明のタンパク質に結合し、同タンパク質が特異抗体に結合した後、当業者に周知の方法により物質混合物からの分離を実施する。
【0057】
本発明の方法は、体液から原核生物DNAを除去して体液を精製するために使用することもできる。これに関しては、体液を再度体内に戻すことが可能なように、分離を体外で無菌条件下にて実施して、前記体液に含まれる原核生物DNAの除去により生体自身の免疫系が感染を除去するのを助けるようにすると好都合である。
【0058】
任意の適切な化学的、機械的、または電気化学的手法が、体外で体液から原核生物DN
Aを除去するために検討可能である。さらに、その他の体外的手法、例えば血液潅流、心肺装置またはエンドトキシン吸着器などとの併用はさらに好都合な応用である。
【0059】
本発明のタンパク質は、原核生物DNAの検出に使用することもできる。この場合、原核生物DNAの濃縮に続いて前記原核生物DNAを増幅する工程となり、該工程にはあらゆる増幅方法(PCR、LCR、LM−PCRなど)が適している。
【0060】
本発明の方法、特に上述の実施形態では、非メチル化状態のCpGモチーフに富む原核生物DNAを、そのような構造に特異的親和性を有するタンパク質に特異的に結合させることにより、感染した宿主の全DNAから原核生物DNAを首尾よく濃縮し、よって体液中の病原体DNAの検出感度を著しく向上させる。
【0061】
特異的結合タンパク質を用いて真核生物DNAから原核生物DNAを分離する可能性は、全DNAを単離する周知の方法よりも時間を要するものではない。しかしながら、その後の検出はPCRだけで実施可能である。多くの場合、ネスティドPCRは必要なく、診断の時間をかなり節約することが可能である。
【0062】
生理学的体液中の原核生物DNAを除去するために本発明の方法を使用することについてはすでに上述した。本発明の意味における除去とは、原核生物DNAの量を低減させることを意味する。このような原核生物DNAを低減させるという可能性はまた、環境技術、廃水管理および空調技術における本発明のタンパク質の利用をも可能にする。
【0063】
本発明はさらに、非メチル化状態のゲノムDNAとメチル化状態のゲノムDNAとの混合物から非メチル化状態のゲノムDNAを分離かつ濃縮する方法にも関する。メチル化状態のゲノムDNAは、マトリクスに連結させたCpGbP181タンパク質に非メチル化状態のゲノムDNAを結合させることによって分離される。この手法は実質的に、メチル化状態のゲノムDNAのメチル化パターンの簡易検査を提供することになり、特定のメチル化パターンを有する疾患の診断を可能にする。
【0064】
さらに、本発明は上述の方法のうちの1つにより原核生物DNAを濃縮するためのキットに関し、前記キットは少なくとも1つの本発明のタンパク質と、任意選択で、前記方法を実施するのに適したさらなる試薬とを備える。
【0065】
本発明のタンパク質に加えて、前記キットは、標準的な条件下で特定の原核生物のゲノムDNAを増幅するのに適した少なくとも一組のプライマーを備えていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
本発明について、実施例を参照しながら以下に詳細に説明するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0067】
本発明のタンパク質の調製
完全長CPGbPタンパク質のDNA配列を用いて、CpGに結合する短縮型タンパク質CPGbP181をコードする短いDNA断片を増幅するプライマー1(GGATCCGGTGGAGGGCGCAAGAGGCCTG(順方向)、配列番号3)およびプライマー2(AAGCTTAGAGGTAGGTCCTCAT‐CTGAG(逆方向)、配列番号4)を構築した。該DNA断片を、制限酵素BamHIおよびHindIIIで切断済みのpQE9ベクター(キアゲン(Qiagen))にライゲーションした。pQE9ベクター内では、6×HisタグをコードするDNA断片が5’末端に融合したオープンリーディングフレーム(pQE9[6HisCPGbP181])が形成される。融合タ
ンパク質6His‐CPGbP181をコードする全アミノ酸配列を本明細書に後述するが、太字で示されている部分はCPGbP181ペプチドを表し、イタリック体で示されている部分はプラスミドpQE9由来の融合された外来アミノ酸を示している。
【0068】
プラスミドpQE9[6HisCPGbP181]で、発現用大腸菌株M15[pREP4](キアゲン)を形質転換した。このクローンを本明細書では以降M15[pCPGbP181]と呼び、発現されるタンパク質をrCPGbP181と呼ぶ。rCPGbP181タンパク質の発現は以下のプロトコールに従って行われる。すなわち、発現菌株M15[pCPGbP181]のコロニーを、100μg/mlのアンピシリンと25μg/mlのカナマイシンとを含む2mlのルリア(Luria)培地で37℃にて振蕩しながら一晩増殖させる。次いで、この前培養物を、同濃度の抗生物質を含有する200mlの予熱済み栄養培地に移す。37℃にて振蕩しながら3時間増殖させた後、IPTGを添加して発現を誘導し、インキュベーションを5時間継続する。その後、遠心分離により細菌を分離し、沈殿物を5mlの0.2Mトリス緩衝液(pH7.5)に再懸濁させる。この細菌を、氷冷槽中で5×1分間超音波処理する。遠心分離後、沈殿物を10mlの0.2Mトリス、0.2M尿素(pH7.5)に再懸濁させて、15分間振蕩する。遠心分離を実施した後、残存沈殿物を取り出して0.2Mトリス、6M塩酸グアニジン、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)、0.02Mイミダゾール中に入れて懸濁させる。この封入体を撹拌しながら室温で1時間溶解させる。遠心分離後、上清中には粗製タンパク質が存在し、3mlのNi‐アガロースカラムに直接かけることができる。その後の工程は4℃〜6℃の冷却チャンバ内で実施しなければならない。最初に、0.2Mトリス、6M塩酸グアニジン、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)、0.02Mイミダゾールの緩衝液(pH7.5)を用いて、吸光度がゼロの線に達するまでカラムを洗浄する。この時点からは、異なる方法でrCPGbP181を得ることが可能である。すなわち、方法1:6M塩酸グアニジンまたは6M尿素に溶解して変性タンパク質として得る。方法2:生理学的濃度の緩衝液に溶解した天然型タンパク質として得る。方法2の場合は収率が低くなる。
【0069】
方法1による精製(変性型):
0.2Mトリス、6M塩酸グアニジン、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)、0.02Mイミダゾールの緩衝液(pH7.5)中で、0‐0.5Mイミダゾールのグラジエントにより、Ni‐NTAアガロースからrCPGbP181タンパク質を塩基性物として溶出させる。実施の際には、rCPGbP181は0.2‐0.3Mイミダゾールでカラムから脱離する。こうして得られたタンパク質を、0.2Mトリス、6M尿素、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)(pH7.5)に対して透析し、凍結させる。生理学的緩衝液に対して透析すると、精製rCPGbP181が沈殿する。
【0070】
方法2による精製(天然型):
本方法では、rCPGbP181が結合したNi‐NTAアガロース上で塩酸グアニジンの濃度を6Mから0Mまでのグラジエントにより変化させる。このときのベースは0.2Mトリス、0.15M NaCl、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)、0.02Mイミダゾールの緩衝液(pH7.5)とする。この場合、流速は0.5ml/分を選択した。続いて、0.2Mトリス、0.5M NaCl、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)の緩衝液(pH7.5)をベースとして0‐0.5Mイミダゾールのグラジエントで溶出させた。この場合も、結合したタンパク質のかなりの比率(20%)が0.2‐0.3Mイミダゾールで溶出した。この天然型rCPGbP181溶出物はPBS中での透析後も上記緩衝液に溶解状態のままであった。しかしながら、これらの条件ではNi‐NTAアガロースに結合したrCPGbP181の約80%がカラムに残り、その後は方法1の変性条件でしか抽出できないことが欠点である。このことは、使用した方法2の収率が、わずか20%の、生理学的緩衝液に可溶な天然型rCPGbP181で
あったことを意味している。
【実施例2】
【0071】
ネスティドPCRによる病原体の検出
コロニー形成単位で1mlあたり103の化膿連鎖球菌(Streptococcus
pyogenes)を病原体として含む、ヘパリン処理した新鮮なヒト血液を、病原体の検出のために使用した。体液から全DNAを単離するための市販のキットを用いて、製造業者の指示書の変法によりDNA結合マトリクスに吸着させることでDNAを単離した。このために、プロテイナーゼKおよびSDSを含む200μlの全体溶解緩衝液を、エッペンドルフチューブに入った100μlの感染血液に添加する。この混合物を37℃で30分間インキュベートし、次いで95℃で20分間加熱する。冷却後、20μgのムタノリシンを添加して37℃でさらに60分間インキュベートする。遠心分離後、該混合物を、DNA結合マトリクスを備えた遠心分離カラムに供し、製造業者の指示書に従ってDNAを精製する。精製されたDNAは、最終容量100μlの0.01Mトリス緩衝液(pH7.5)、または等容量の製造業者提供の溶出用緩衝液に含める。病原体の検出用に、ストレプトリシンO遺伝子(slo)を特定するためのプライマーを選択した。
【0072】
1.PCR(465bp断片の増幅)
前方向プライマー1:5’‐AGCATACAAGCAAATTTTTTACACCG
逆方向プライマー2:5’‐GTTCTGTTATTGACACCCGCAATT
プライマー濃度 1mg/ml
出発材料:5μl 単離DNA
0.5μl 前方向プライマー1
0.5μl 逆方向プライマー2
14μl 蒸留水
Ready to go(商標)キット(アマシャム・ファルマシア)で総量25μl
反応:
95℃で5分間
40サイクル(95℃で30秒、51℃で30秒、72℃で3分、72℃で7分を1回)。
【0073】
ヒト血液中の連鎖球菌DNAの最初のPCRについて図1に示す(出発材料25μlのうち各10μlを分離に供した。1)5μlの鋳型DNAを含むPCR出発材料、2)1:10に希釈した5μlの鋳型を含む出発材料、3)陽性対照:血液由来の真核生物DNAを含まない、0.2μlの鋳型連鎖球菌DNA、ST)分子量マーカー)。
結果:最初の一次PCRでは陽性反応は得られていない。従って、続いて第2のPCR(ネスティドPCR)を実施した。
【0074】
2.PCR(ネスティド)(上記slo断片中の348bp断片の増幅)
前方向プライマー3:5’‐CCTTCCTAATAATCCTGCGGATGT
逆方向プライマー4:5’‐CTGAAGGTAGCATTAGTCTTTGATAACG
プライマー濃度 1mg/ml
出発材料:PCR1(図1の試料1)から5μl
0.5μl 前方向プライマー1
0.5μl 逆方向プライマー2
14μl 蒸留水
Ready to go(商標)キット(アマシャム・ファルマシア)で総量25μl
反応:
95℃で5分間
40サイクル(95℃で30秒、54℃で30秒、72℃で3分、72℃で7分を1回)。
【0075】
図4は、図3の一次PCRの出発材料からのPCR産物を鋳型として用いたネスティドPCRを示している。試料は図3の試料に対応している。
結果:ネスティドPCRでは、血液100μlあたり連鎖球菌の細胞100個の濃度で所望のsloDNA断片が増幅された(試料1)。1回目のPCR(図3)における出発材料5μlについては、鋳型約5〜10個に相当する。1:10希釈の場合(試料2)、感度が限界となっている(鋳型0.5〜1個)。
【0076】
これらの実験から、血液中の病原体のPCRによる検出に成功するには、少なくとも1〜5mlの血液から全DNAを単離する必要があることが示される。しかしながら、その全DNAの濃度は直接PCRに使用するには高すぎる。
【0077】
細菌DNAを直接検出することによる、増幅工程を伴わないその他の病原体特異的核酸の検出、例えばDNAハイブリダイゼーションによる検出も感度が非常に低いが、これは細菌DNAに対してヒトDNAが非常に過剰であることが主な原因である。さらに、DNA分析の際の競合的過程ならびに細菌DNA量が少ないことが、定性分析および定量分析の障害であると考えられる。一般的なDNA単離方法では体液の全DNAが濃縮されて宿主DNAと微生物DNAとの比が1:10−6〜1:10−8になりうる。この差から、体液中の微生物DNAを検出する難しさが容易に理解される。
【実施例3】
【0078】
rCPGbP181の結合能の測定
ゲル遅延度アッセイで、変性型および天然型rCPGbP181タンパク質の、メチル化および非メチル化状態のCpGモチーフ含有DNA分子に対する結合について調べた。大腸菌プラスミドpUC18に溶血性C群連鎖球菌(Streptococcus dysgalactiae subsp.equisimilis)のMタンパク質遺伝子部分を挿入して試験DNAとして使用した(ガイヤー(Geyer)ら、FEMS Immuno.Med.Microbiol.第26巻、p.11−24、1999年)。プラスミド調製物を分け、半分をニュー・イングランド・バイオラボ(New England BioLabs)のCpGメチラーゼキットでメチル化した。調製物をいずれもrCPGbP181(天然型または変性型)と混合し、アガロースゲルで電気泳動により分離した。結果を図5および図6に示す。rCPGbP181の天然型および変性型のいずれも非メチル化状態のプラスミドDNAに高い親和性を示し、このことから非メチル化状態のCpGに富むDNAに対する選択的結合性が確認される。
【0079】
図5のゲル遅延度アッセイの説明:5μl(72ng)のメチル化pUC18emm DNAと1μl(142ng)の非メチル化pUC18emm DNAをそれぞれ5μl(0.5μg)の天然型rCPGbP181と混合し、次の緩衝液、すなわち0.01Mトリス、0.08M NaCl、0.001M EDTA、0.005M DTE、5%グリセリン、pH7.8で容量を35μlとした。20℃で30分間インキュベートした後、この混合物を1.5%アガロースで電気泳動により分離した。メチル化DNAをレーン1および3に、非メチル化DNAをレーン2および4に載せた。レーン1および2ではDNAを天然型rCPGbP181と混合した。レーン2は、非メチル化pUC18emmがrCPGbP181と相互作用することを示しているが、これに対し、rCPGbP181はメチル化pUC18emmとの相互作用を示さなかった(レーン1)。レーン4および5はrCPGbP181を添加していない対照としてのプラスミドである。
【0080】
変性型rCPGbP181とともにインキュベートした後の非メチル化pUC18emmおよびメチル化pUC18emmに関する、図6のゲル遅延度アッセイの説明。濃度は図5の濃度と対応する。メチル化DNAをレーン1および3に、非メチル化DNAをレーン2および4に載せた。レーン1〜4において、DNAを2種類の異なるバッチの変性型rCPGbP181と混合した。レーン2および4は、非メチル化pUC18emmが変性型rCPGbP181とも相互作用することを示しているが、rCPGbP181はメチル化pUC18emmとの相互作用は示さなかった(レーン1および3)。レーン5はrCPGbP181を添加していない対照としてのpUC18emmである。
【実施例4】
【0081】
子ウシ胸腺DNAおよび細菌DNAの混合物の、固定化されたCPGbP181への結合および分離
精製CPGbP181を、キャンビアッソ(Cambiasso)らのプロトコール(キャンビアッソ、シー(Cambiasso、C)ら、Immunochemistry
第12巻、p.273−278、1975年)に従ってグルタルアルデヒドを用いてアミノヘキシルセファロース(アマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham−Biosciences))に連結させた。固定化タンパク質の濃度はセファロース1mlあたり0.3mgとした。300μlのセファロースを、DNAもタンパク質も吸着しないがセファロースを担持するガラス材料を含んだ遠心ろ過チューブに入れた。
【0082】
200ngの子ウシ胸腺DNAおよび25ngのpUC18emmを100μlの20mMトリス‐HCl緩衝液(pH7.5)に溶解し、上記のように調製したカラムに供した。各工程の後、液体をそれぞれ新たなエッペンドルフチューブに入れてエッペンドルフ遠心分離機にて14,000RPMで0.5分間遠心分離した。こうして2段階でNaCl濃度を0Mから1Mに増大させた。各チューブに10μlの4M酢酸(pH4.5)および250μlの無水エタノールを添加し、混合し、14,000RPMで15分間遠心分離することによってDNA沈殿を実施した。その後、上清を廃棄して沈殿物を300μlの70%エタノールで洗浄した。上清を廃棄した後、残留物を真空遠心分離機で5分間乾燥させ、次いで15μlの蒸留水(PCR好適品)に溶解した。一方では、各試料10μlについて254nmでの吸光度を測定し(図7)、他方では、各試料3μlを用いてpUC18用のシーケンスプライマーでPCRを実施した(図8)。
【0083】
結果(図7、8)は、真核生物の子ウシ胸腺DNAが最初に0〜0.1M NaClでカラムから洗い出され、原核生物DNA(pUC18emm)が0.3M NaClのフラクションに溶出されたことを示している。このことは、真核生物DNAのCPGbP181に対する親和性が低く、従って各DNAのフラクションが明確に分離されたことを示している。
【実施例5】
【0084】
スペーサーを介してCPGbP181タンパク質をマトリクスに間接的に結合させることによる、同タンパク質の結合性の増強
結合性について調べるために、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびヒトDNAのDNA混合物から、CNBrセファロースに直接連結させたCPGbP181タンパク質、またはジアミノヘキシル・スペーサー(AH)を介してセファロース(以下のAHセファロース)に間接的に連結させたCPGbP181タンパク質を用いて、原核生物DNAを濃縮した。
【0085】
最初に、AHセファロースにグルタルアルデヒドを添加して室温で15分間インキュベートした。次に、AHセファロースを0.1M Na2HPO4で洗浄した。次いで、0
.24mgのCPGbP181タンパク質を該マトリクス上に載置した。室温で2時間インキュベートすることによりCPGbP181タンパク質をAHセファロースに結合させた。過剰なCPGbP181タンパク質を取り除いた。
【0086】
続いて0.1M Na2HPO4でCPGbP181‐AHセファロースを洗浄して0.1Mグリシンを添加した後、CPGbP181‐AHセファロースを室温で2時間インキュベートして空いている結合部位を飽和させた。次いで、CPGbP181‐AHセファロースを再度0.1M Na2HPO4で洗浄した。シッフ塩基を還元し結合を安定化させるために、CPGbP181‐AHセファロースを水素化ホウ素ナトリウムと混合して室温で1時間インキュベートした。
【0087】
次に、CPGbP181‐AHセファロースを0.1M Na2HPO4で洗浄した。
【0088】
CPGbP181‐AHセファロースの4℃における保存性は20%エタノールを添加することにより達成される。次に、CPGbP181‐AHセファロースをカラムに分配した。CPGbP181‐AHセファロースで作製したカラムを次にトリス緩衝液で洗浄し、非メチル化CpGモチーフを含むDNAの分離/濃縮に利用可能とした。
【0089】
2)DNA混合物の濃縮後の、原核生物DNAの溶出およびPCRによる原核生物DNAの濃度測定
DNA混合物を、各々330ngのヒトDNAと150ngの原核生物DNA(黄色ブドウ球菌DNA)とから構成されるものとした。このDNA混合物を、CNBrセファロースまたはAHセファロースで作製されたカラムにそれぞれ載置し、室温で1分間インキュベートした。次いで、カラムを遠心分離して100μlのトリス緩衝液(10μM、pH7)で洗浄した。この洗浄および遠心分離の工程を5回繰り返した。
【0090】
上清を注意深く取り除いてから、100μlの溶出用緩衝液(10μMトリス緩衝液、0.5M NaCl、pH7)を各々カラムに添加して遠心分離した。溶出工程を5回繰り返した。次いで、各試料の個々のフラクションに10μlの3M酢酸ナトリウムと250μlのエタノールを加えてから混合して遠心分離(15,000gで15分間)することにより沈殿を生じさせた。上清を注意深く廃棄し、ペレットを1μlのエタノール(70%)で洗浄して15,000gで遠心分離した。次に再度上清を取り除き、ペレットを真空遠心分離機で乾燥させて30μlのDEPC水に溶解した。各5μlをPCR検出に使用した。
【0091】
PCRには16S‐RNA遺伝子に対するユニバーサルプライマーを使用した。PCRを実施した後、個々のフラクション各15μlを2%アガロースに載置した。
【0092】
図9(CpG181タンパク質をCNBrセファロースへ直接結合)および図10(スペーサー(AH)を介してCpG181タンパク質をセファロースに間接的に結合)は、個々のフラクションについてのPCRの結果を示している。AHスペーサーの使用により、より多くの原核生物DNAが濃縮されたことが明らかである(フラクション1、溶出フラクション)。このような結合性の向上は、本発明の方法において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】CPGbP181のアミノ酸配列(太字)を野生型のCPGBタンパク質(CPGbP656)およびCPGbP241(イタリック体)と比較して示す図。
【図2】完全長のCPG結合タンパク質CPGbP656の、DNA配列およびアミノ酸配列への翻訳を示す図。短縮型のCPG結合ペプチドCPGbP241(太字)およびCPGbP181(イタリック体)も示されている。
【図3】ヒト血液中の連鎖球菌のPCRについて示す図。
【図4】図3の一次PCRのPCR産物を鋳型として用いたネスティドPCRについて示す図。
【図5】ゲル遅延度アッセイについて示す図。
【図6】別のゲル遅延度アッセイについて示す図。
【図7】rCpG181セファロースによる子ウシ胸腺DNAおよびpUC18emmの溶出について示す図。
【図8】254nmの吸光度の測定によりフラクション中の溶出DNAを測定し、NaClグラジエントの関数として示す図。
【図9】黄色ブドウ球菌およびヒトのDNAのDNA混合物から、CNBrセファロースに連結させたCpGbP181タンパク質を用いて原核生物DNAを濃縮した後の、PCRの結果を示す図。
【図10】黄色ブドウ球菌およびヒトのDNAのDNA混合物から、AHセファロースに連結させたCpGbP181タンパク質を用いて原核生物DNAを濃縮した後の、PCRの結果を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAの非メチル化シチジン‐ホスフェート‐グアノシンジヌクレオチド(CpGモチーフ)に特異的に結合するタンパク質を用いて、原核生物DNAの濃縮または分離のうち少なくともいずれか一方、または生理学的液体からの前記DNAの除去を行う方法、ならびに前記方法を実施するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
細菌感染は炎症性疾患の最大の原因のうちの一つである。臨床的要因の予後を診断するため、ならびに、特に適切な治療手段を適時に選択するために、病原性細菌の早期検出は決定的に重要である。
【0003】
病原性細菌の検出においては、今日でもとりわけ種々の細胞培養法が用いられている。しかしながら、最新の研究から、病原体の検出のために培養に依存した方法を用いることは不適切であることが明白に示されている(非特許文献1、2)。これらの研究によれば、検査した全ての血液培養物のおよそ15〜16%でしか病原体を特定することができなかった。これらの方法には欠点があるので、特にこの10年間、分子生物学の急速な技術的発展と併行して代替法を見出す一層の取り組みがなされてきた。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の原理に基づく、培養に依存しない病原性細菌検出法の使用に関する最初の報告は、1990年代初期にさかのぼる。例えば、ミラーら(非特許文献3)は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の検出について培養を用いない方法が古典的な培養および顕微鏡観察の方法よりも優れていることを示すことができた。しかしながら、病原体に特異的な核酸の検出に基づくさらなる分子生物学的手法(例えば非特許文献4〜7)が重要となってきている。
【0004】
このような分子生物学的手法の高い特異性に加えて、従来の培養を用いる方法に対する実質的な利点として言及すべきなのは所要時間の縮小である。しかしながら、前処理済みの試験材料ではなく、体液から直接原核生物DNAを検出する感度は、微生物の培養に比べて非常に低いものであった。前処理されていない試験材料から病原体を直接検出するのに十分な細菌核酸の量は、細菌染色体上の16S領域のPCRと該PCR断片の配列分析による16S‐rRNA分析については限られた範囲でのみ達成されるが、これは多くの場合、16S‐rRNAをコードする部分が染色体上に数コピー見出されるからである。16S‐rRNA分析を用いて病原体を特異的に直接検出するには、検査する試料中に病原体が1種類しか存在しないことが必要である。試料中に異なる種類の病原体が存在する場合、16S‐rRNA領域の配列決定による特異的検出は不可能となる。これは、使用されるプライマーがほとんどの細菌について共通するからである。さらに、16S‐rRNA分析による病原体の検出には、検出しようとする細菌が代謝状態にあって十分に16S‐rRNAを発現していることが必須条件である。この条件は通常、特に抗生物質の予測治療を受けている患者においては当てはまらない。さらに、細菌のある種の病原性因子は、その遺伝子が細菌ゲノム上に存在はしていても常に発現しているわけではない。その結果、誤った陰性結果が臨床医へと伝わってしまう。従って、抗生物質を選択した治療が全く開始されないか、開始が遅すぎてしまう可能性がある。そのような場合、医師は経験による自身の知識と一般的ガイドライン(パウル・エールリッヒ・ゲゼルシャフトのガイドラインなど)を頼りにしなければならず、従って非常に特異性の低い抗生物質治療を行うことになる。抗生物質の非特異的な使用は、個々の患者に対するリスク(腎臓障害などの不必要な副作用など)だけでなく、社会全体に対しても(MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などのさらなる抗生物質耐性菌の出現など)多くのリスクを有している。
従って、臨床上重要な細菌の病原性因子および耐性を染色体レベルおよびプラスミドレベル、すなわち最終的にはDNAレベルで検出することは、多くの感染症や敗血症の診断に大きな利点をもたらす。このことは、そのレベルであれば病原細菌と共生細菌の区別もできるので一層妥当である。
【0005】
病原体特異的な核酸の検出は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)による原核生物DNAの増幅などの核酸増幅技術(NAT)によりそれぞれ行われることが最も多い。その結果は特異性が高く迅速に得られるが、一方でコンタミネーションや臨床試料由来の強力な反応阻害因子により影響を受けやすい。
【0006】
従来のPCRによる検出法では、血液中の病原体を十分に検出するには、理論上10μlの血液中に少なくとも1つの標的病原体DNAが存在している必要がある。これは、1mlの血液中約100個の標的、あるいは10mlの血液中約1000個の標的にそれぞれ相当する。感染性病原体の検出のための血液培養物については事情が異なる。この場合は、検出限界は血液10mlあたり細菌約3〜5個である。
【0007】
現在、PCR法では、染色体上の16S‐rRNA領域周辺に標的配列を有するPCR法であってもまだこの検出限界に達していない。16S‐rRNAをコードする領域は数個、大抵は3〜6個、細菌染色体上に位置しているが、少なくとも1分子の鋳型DNAがPCR反応混合物中にあるという必須条件には満たない。
【0008】
微生物の染色体またはプラスミド上の特異的標的配列が種特異的なタンパク質をコードするPCR法については、診断上の安全性の向上が期待される。検出限界に関する上述の見解がここでも当てはまる。特に現行の抗生物質療法の作用のもとでは、最終的に使用される抗生物質が最適な効果を有していなくても、病原体の増殖が大幅に減速、制限または阻害される可能性がある。この状況は、特に抗生物質治療をすでに受けている患者、従ってその血液培養物またはその他の試料(例えば気管スミア、気管支肺洗浄物(BAL)など)から病原性細菌が増殖できない患者において見られることが多い。
【0009】
感度が不十分なため、増幅工程を伴わず原核生物DNAを直接検出すること(プローブ法、FISH法)による病原体特異的な核酸の検出は、試験材料中の病原菌数が十分高い場合にのみ診断上重要となる。
【0010】
体液中の病原性細菌を特定するための原核生物DNAの検出に関する本質的な問題点は、試験材料中のPCR阻害成分に加えて、主に、原核生物DNA濃度が低いこと、その結果真核生物DNAと原核生物DNAとの比が非常に大きいことにある。このことに関しては、特に、DNA分析における競合的プロセスならびに原核生物DNAの量を、病原体の定性的かつ定量的検出に対する障害とみなすことができる。
【0011】
通常のDNA単離方法では、体液の全DNAが濃縮されて、宿主DNAと微生物DNAとの比が1:10−6〜1:10−8になる。この差から、体液中の微生物DNAの検出が困難であることが極めて容易に理解される。
【0012】
原核生物DNAは、例えば非メチル化CpGモチーフの存在という点で真核生物DNAとは異なっている(非特許文献8)。原核生物DNAには、真核生物DNAの16倍のCpGモチーフが存在しているが、真核生物DNAはそのようなモチーフを、例えばがん細胞やプロモーター領域において一時的にのみ含んでいる。これらのモチーフは原核生物DNAではメチル化されていないが、真核生物DNAでは大多数がメチル化されており、このことは両DNAの区別を増補するものである。非メチル化CpGモチーフとは、原核生物ゲノムまたはその断片の中の、メチル化されていないデオキシシチジル酸‐デオキシグ
アニル酸‐ジヌクレオチドである。
【0013】
さらに、ヒトDNA中のメチル化パターンの差異に基づいて、がんについて診断することが可能である(非特許文献9)。ゲノム中のメチル化シトシンおよび非メチル化シトシンは、組織特異的パターンならびに疾患特異的なパターンとして特定されうる。疾患の特異的メチル化パターンは、一方では非常に早い時点での診断を可能にし、他方では疾患の分子レベルの分類や、特定の治療に対する患者の応答の予測を可能にする。このことに関する詳細な情報については、例えば非特許文献10、エピゲノミクス・アーゲー(Epigenomics AG)のホームページ(http://www.epigenomics.de )、または特許文献1を参照されたい。
【0014】
非特許文献11には、メチル化CpGモチーフをタンパク質に結合させることによって、メチル化されたヒトゲノムDNAを分離することが可能であることが示されている。従って、この方法はメチル化CpGモチーフを含むDNAを結合させる働きを有する。非メチル化DNAとメチル化DNAとを十分に単離することは、技術的理由から、すなわち用いられるタンパク質が非メチル化DNAにも弱く結合することから、不可能である。また、これらの方法を用いて非メチル化DNAを濃縮することについても、用いられるタンパク質の許容能力が大過剰のメチル化DNAがある場合にも十分非メチル化DNAを分離するほど十分ではないため、不可能である。さらに、メチル化DNAの結合によって非メチル化DNAの存在する初期容量が変化することはないので、濃縮は達成されない。
【0015】
従って、真核生物DNAから原核生物DNAを、あるいはメチル化状態の異なるヒトDNAをそれぞれ互いに分離するために、非メチル化DNAをメチル化DNAから分離し、非メチル化DNAを濃縮可能とすることが望ましいであろう。さらに、非メチル化DNAの単離および濃縮が、大過剰のメチル化DNAを含む混合物(例えば全血)からも可能となれば、健康の経済学の観点からも望ましく非常に興味深いこととなろう。
【0016】
ブー(Voo)らによれば、ヒトCpG結合タンパク質(hCGBP)は非メチル化CpGモチーフに結合することができる。この報告には、CpGモチーフ内の遺伝子発現の制御において役割を果たすことが示されている転写活性化因子hCGBPについて記載されている。
【0017】
特許文献2には、非メチル化DNAに特異的に結合するタンパク質に原核生物DNAを結合させることによって、原核生物DNAと真核生物DNAとの混合物からの原核生物DNAの単離および濃縮を可能とする方法が示されている。
【特許文献1】国際公開公報第2004/067775号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第02020904号明細書(EP02020904)
【非特許文献1】ヘレブラント、ヴェー.(Hellebrand W.)、ケーニッヒ‐ブルーンス、ツェー.(Koenig‐Bruhns C.)、ハス、ヴェー.(Hass W.)、「Studie zur Blutkulturdiagnostik im Jahr 2002」、Poster Jahrestagung der Deutschen Gesellschaft fuer Hygiene und Mikrobiologie、ゲッティンゲン(Goettingen)、2004年
【非特許文献2】シュトラウベ、エー(Straube E)、2003年、「Spesis‐microbiological diagnosis」、Infection、第31巻、p.284
【非特許文献3】ミラー、エヌ(Miller N)、J.Clin.Microbiol.、1994年2月、第32巻第2号、p.393‐7
【非特許文献4】エム.グリジャルバ(M.Grijalva)ら、Heart、第89巻、2003年、p.263‐268
【非特許文献5】ウィッテンデーレ、エム(Uyttendaele M.)ら、Lett Appl Microbiol.、2003年、第37巻第5号、p.386‐91
【非特許文献6】ソーッコリッピ、エイ(Saukkoriipi A)ら、Mol Diagn.、2003年3月、第7巻第1号、p.9‐15
【非特許文献7】ツァナカキ、ジー(Tzanakaki G)ら、FEMS Immunl Med Microbiol.、2003年10月24日、第39巻第1号、p.31‐6
【非特許文献8】ハルトマン、ゲー(Hartmann G)ら、ドイツ医師会誌(Deutsches Aerzteblatt)、Jg 98/15:A981−A985、2001年
【非特許文献9】「Epigenetics in Cancer Prevention:Early Detection and Risk Assessment」、Annals of the New York Academy of Sciences、第983巻、ムーケシュ フェルマ(Mukesh Verma)編、ISBN 1−57331−431−5
【非特許文献10】ベック、エス(Beck S)、オレク、エイ(Olek A)、ウォルター、ジェイ(Walter J)、「From genomics to epigenomics:a loftier view of life」、Nature Biotechnology、1999年12月、第17巻第12号、p.1144
【非特許文献11】クロス、エスエイチ(Cross SH)、チャールトン、ジェイエイ(Charlton JA)、ナン、エックス(Nan X)、バード、エイピー(Bird AP)、「Purification of CpG islands using a methylated DNA binding column」、Nat Genet.、1994年3月、第6号第3号、p.236−44
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の目的は、特に感染患者由来の、真核生物DNAを大量に含有する検査試料から、原核生物DNAの分離および濃縮のうち少なくともいずれか一方を実施する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、上記課題は非メチル化CpGモチーフに結合するタンパク質により達成され、前記タンパク質は野生型のCPGBタンパク質と25〜35%、特に約27.6%の相同性を有し、野生型CPGBタンパク質に対して最大限で結合部位の長さまで短縮されたものである。
【0020】
ヒトCPGBタンパク質(ブー(Voo)ら、Mol.Cell.Biol.、2000年3月、第20巻第6号、p.2108−21)を、以降本明細書中では野生型CPGB(またはCPGbP656)と呼ぶ。本発明のタンパク質を以降本明細書中ではCPGbP181と呼ぶ。特許文献2に記載の、野生型CPGBタンパク質の短縮型バリアントであり本発明のタンパク質の基礎となったタンパク質を、以降本明細書中ではCPGbP241と呼ぶ。
【0021】
本発明について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0022】
野生型CPGBタンパク質であるCPGbP656は、原核生物DNAの非メチル化CpGモチーフに結合することにより、タンパク質‐DNA複合体を形成する。この複合体
を、例えば担体に結合させてもよいし、結合するようにしてもよく、そうすることによってDNAの分離および濃縮のうち少なくともいずれか一方が実施可能である。ここで、本発明は、野生型CPGBタンパク質(656アミノ酸からなるCPGbP656)よりも短く、野生型CPGBタンパク質と25〜35%、特に約27.6%の相同性を示すタンパク質が、野生型CPGBタンパク質や80%以上の相同性を有するそのバリアントよりも、原核生物DNAの非メチル化CpGモチーフに対し高い結合性を有するという驚くべき発見に基づくものである。そのような短縮型タンパク質の例は、181アミノ酸のCPGbP181である。
【0023】
原核生物DNAは、例えば非メチル化CpGモチーフの存在という点で真核生物DNAとは異なっている(非特許文献8)。本発明は、真核生物DNAと原核生物DNAとでCpGモチーフの割合が異なっているという発見に基づいている。原核生物DNAでは、CpGモチーフが真核生物DNAに比べて20倍過剰に存在するが、真核生物DNAはそのようなモチーフを、例えばがん細胞やプロモーター領域において一時的にしか含まない(非特許文献8)。原核生物DNAではこれらのモチーフはメチル化されていないが、真核生物DNAではそのほとんどがメチル化されており、このことにより両者の識別性がさらに高まっている。非メチル化CpGモチーフとは、原核生物ゲノムまたはその断片の中の、メチル化されていないデオキシシチジル酸‐デオキシグアニル酸ジヌクレオチドである。
【0024】
本発明はさらに、本発明のタンパク質が非メチル化CpGモチーフに特異的に結合するという発見に基づく。本発明のタンパク質の特異的結合性は、原核生物DNAを結合し、続いて、例えば大多数の真核生物DNAを含む試料から原核生物DNAを濃縮、分離、および単離するために利用される。
【0025】
用語「非メチル化CpGモチーフを含むDNA」とは、真核生物DNAおよび原核生物DNAのいずれをも意味する。前記DNAは精製かつ再溶解されていてもよいし(例えば組織から単離された非メチル化DNA)、元の供給源(例えば、血液、血清、気管吸引物、尿、気管支肺洗浄物、鼻スミア物、皮膚スミア物、穿刺液などの体液など)の中に直接存在していてもよい。
【0026】
好適な実施形態によれば、非メチル化CpGモチーフを含むDNAは原核生物DNA、特に細菌DNAである。
【0027】
本発明の意味における用語「相同性」とは、2つのタンパク質の配列の一致の度合いに関するものである。例えば、60%の相同性とは、それらの配列中の100個のアミノ酸部位のうち60個が一致していることを意味する。本発明のタンパク質を特徴付けるために用いられる用語「短縮型」とは、本発明のタンパク質(例えば、CPGbP181)のアミノ酸配列の長さが、野生型のCPGBタンパク質(CPGbP656)のアミノ酸配列の長さよりも短いことを意味する。野生型タンパク質配列はそのN末端およびC末端において短縮される(図1)。最大限短縮化されると、該タンパク質のDNA結合部位に相当する。
【0028】
本発明で使用されるタンパク質は、分子量が例えば約19,959ダルトン(天然型)または21,444ダルトン(プラスミドpQE60内)である。別の好適な実施形態では、本発明のタンパク質の等電点は約10.09(天然型タンパク質)または10.15(プラスミドpQE60内)である。本発明で使用される特に好適なタンパク質は、配列番号2または図1に示すアミノ酸配列を有する。このタンパク質は、原核生物DNAの非メチル化CpGモチーフに対して特に良好な結合性を有する。
【0029】
特許文献2に記載のタンパク質(CPGbP241)は、野生型CPGBタンパク質(CPGbP656)の短縮型バリアントであり、本発明で用いられるタンパク質(例えばCPGbP181)の基礎の役割を果たしたものであるが、長さは241アミノ酸であり、分子量は約33,650ダルトン(天然型)または28,138ダルトン(プラスミドpQE60内)であり、等電点は9.89(天然型)または9.88(プラスミドpQE60内)である。そのcDNA配列およびアミノ酸配列を図1および図2に示す。
【0030】
野生型CPGBタンパク質は長さが656アミノ酸であり、135個の正に荷電した残基と94個の負に荷電した残基とを有し、分子量は約75,684ダルトンで、等電点は8.15である。そのcDNA配列およびアミノ酸配列を図1に示す。
【0031】
本発明で使用される配列番号2のタンパク質CPGbP181と、特許文献2に記載のタンパク質(CPGbP241)との比較を、図1および図2に示す。
【0032】
本発明で使用されるタンパク質は、対応するcDNA配列をプラスミドにクローニングして大腸菌で発現させることにより生産されることが好ましい。本発明のタンパク質を発現する大腸菌株は、2004年2月16日にドイツ微生物・培養生物保存機関(Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkulturen)に番号DSM16229として寄託されている。別例として、当技術分野で知られたその他の製造法を適用することも可能である。プラスミドpQE9の使用は可能な例を表すものであり、その他の任意の適切なプラスミドがベクターとして有用である。大腸菌における発現もまた単に1実施例にすぎない。その他の原核生物系および真核生物系における発現ならびに化学合成もしくは酵素的合成または天然供給源(例えば植物のタバコなど)からの精製は、タンパク質を抽出するために可能な別の実施形態である。該タンパク質は、実験室規模で(例えばエルレンマイヤーフラスコで)生産してもよいし産業規模で(例えば発酵槽で)生産してもよい。例えば、本発明のタンパク質は、同タンパク質の先端または末端に導入されたヒスチジンタグ(Hisタグ)を適切なニッケル含有マトリクスに結合させることによって精製することも可能であり、これは当技術分野で周知の方法である。
【0033】
精製のさらなる可能性としては、適切なマトリクス(カラム、ゲル、ビーズなど)を介した精製を可能にする任意の種類の融合タンパク質がありうる。その他の形態のタグは、ストレプトアビジンタグ、Mycタグなどの融合ペプチド/融合タンパク質でありうる。
【0034】
本発明により使用されるタンパク質の好適な形態は天然型であるが、変性型も非メチル化CpGモチーフを結合するのに適している。本発明の意味における「変性型」とは、天然状態で見られる二次構造以外の二次構造として理解される。
【0035】
本発明により使用されるタンパク質の天然型または変性型は、例示的実施形態である。本発明は、タンパク質のin vitro合成ならびにその他の任意の化学修飾または酵素的修飾、例えばジスルフィド架橋の導入、グリコシル化、リン酸化、アシル化、アミノ酸交換ならびにタンパク質その他の分子との融合などを含む。そのような修飾は、例えば組換え、発現、1つまたは複数のアミノ酸の化学修飾もしくは酵素的修飾のうち少なくともいずれか1つにより達成可能である。
【0036】
本発明で使用されるタンパク質は様々な利点を有している。同タンパク質は、野生型CPGBタンパク質または80%以上の相同性を有するそのバリアントよりも、非メチル化CpGモチーフを介した原核生物DNAの結合において好都合である。このことにより、原核生物DNAと真核生物DNAとの混合物から原核生物DNAを特異的に分離および/または濃縮することが可能となる。最終的には、病原体の迅速かつ簡単な検出ならびに病
原性細菌による感染症の早期診断が可能となる。逆に言えば、本発明は、患者の体液、特に血液中に細菌またはその切断産物が非生理的に存在している臨床状態について、精製するという意味で微生物DNAを除去するために使用することも可能である。このことは、細菌およびその切断産物、例えば細菌DNAなどが、患者に対して有害な種々の生物学的作用の原因であることが良く実証されていることからみても、一層妥当なことである。
【0037】
本発明で使用されるタンパク質が原核生物DNAの非メチル化CpGモチーフに良好に結合しうることから、本発明は、原核生物DNAの分離および濃縮のうち少なくともいずれか一方を行う方法に関し、該方法は、
(a)溶液中に存在する少なくとも1つの原核生物DNAを、原核生物DNAに特異的に結合し、野生型のCGPBタンパク質と25%〜35%の相同性を有するタンパク質と接触させることによって、タンパク質‐DNA複合体を形成する工程と、
(b)前記複合体を分離する工程と
からなる。
【0038】
DNAは精製されて再溶解されていてもよいし、元の供給源(例えば、血液、血清、気管吸引物、尿、気管支肺洗浄物、鼻スミア物、皮膚スミア物、穿刺液など)の中に直接存在していてもよい。
【0039】
分離は、DNA‐タンパク質複合体またはDNA‐ポリペプチド複合体を分離、単離もしくは濃縮するための、当技術分野の技術者に周知の種々の方法により実施することが可能である。実施に際しては、試料溶液からDNAを分離および/または濃縮するために、DNA結合タンパク質を担体に固定化する(または固定化されている)方法を使用することが好ましいであろう。
【0040】
好適な実施形態によれば、分離の次に、前記複合体中の本発明のタンパク質からDNAを分離する工程が続く。この工程は、例えば、当技術分野の技術者に周知の従来のDNA精製法により実施可能である。最も簡単な例では、媒体/緩衝液のpH値または塩濃度を変化させる(例えば塩濃度を1M NaClにする)ことにより、あるいはカオトロピック試薬を添加することなど、すなわちタンパク質‐DNA複合体を分離させる適切なパラメータにより、実施される。そのような方法は当技術分野の技術者に周知である。
【0041】
さらに好適な実施形態によれば、本発明のタンパク質は担体に連結される。この実施形態は、原核生物DNAを濃縮するための特に簡単な方法に該当するが、それは、例えば溶液からチャージされた状態の担体を物理的に(例えば遠心分離により)除去することにより、溶液からの分離が特に容易であるからである。
【0042】
原核生物DNAの溶液については、任意の適切な溶媒が基本的に想定される。しかしながら、本方法は、種々の生体分子、特に様々な種類のDNAを含有する溶液からの原核生物DNAの濃縮に特に有用である。好ましくは本発明は、原核生物DNAと真核生物DNAとの混合物から原核生物DNAまたはウイルスDNAを分離および濃縮する方法に関する。その実施に際しては、例えば、体液中に存在する原核生物DNAが、本発明のタンパク質への特異的結合により真核生物DNAから分離され、濃縮される。こうして濃縮された原核生物DNAにより、分子生物学的方法を利用した病原性原核生物の検出が容易になり、病原性病原体による疾患の診断にも貢献しうる。
【0043】
特に、DNA結合タンパク質が担体の表面に固定化される実施形態は、体液、好ましくは血液から原核生物DNAを吸着するのに適している。さらに、この手法により、血液その他の体液中に存在する微生物DNAを該体液から除去することも可能となる。次いで、それ自体患者に重篤な炎症反応を引き起こしうる微生物DNAについてこのように精製さ
れた体液(例えば全血、血清または髄液)を、体内に戻すこともできる。この原理は、本発明のタンパク質の特異的結合性を利用した、精製という意味での生理学的液体からの原核生物DNAの除去についても使用することができる。
【0044】
DNAの非メチル化CpGモチーフに関する結合能および結合効率を増大させるために、本発明は、該タンパク質の結合能および結合効率を強化してメチル化DNAと非メチル化DNAとの混合物からの非メチル化DNAの分離および/または濃縮を改善する方法を提供する。
【0045】
本発明によれば、このことは本発明のタンパク質をマトリクスに間接的に連結させることにより達成される。この方法については図9および図10を参照しながら後述する。
【0046】
非メチル化CpGモチーフを含むDNAに関するCpGbP181タンパク質の結合能および結合効率を強化するために、本発明は、該タンパク質の、スペーサーを介したマトリクスへの間接的結合に関する。スペーサーを介してマトリクスにタンパク質を連結することにより、CpGbP181タンパク質の可動性および空いている結合部位の数が増大する。従って、結合能および結合効率が増大する。このことにより、使用するタンパク質量の低減もさらに可能となる。
【0047】
本発明の意味におけるスペーサーとは、マトリクスと本発明で使用されるタンパク質、例えばCpGbP181タンパク質との間に空間的距離をもたらす、短い鎖状の分子として理解される。そのようなスペーサーは、例えばアフィニティ(親和性)クロマトグラフィまたはタンパク質の固定化などの当技術分野において周知である。そのような鎖状の分子は、C原子およびH原子ならびに任意選択でヘテロ原子(例えばN)から構成される。これらの鎖状分子はC原子を基本とする個々の鎖要素(例えばCH2)と、存在しうるものとしてはヘテロ原子を基本とする鎖要素(例えばNH)とで構成される。特に、スペーサーは4〜20個、好ましくは7〜10個の鎖要素を含んでなる。特に好ましいスペーサーはジアミンヘキサン(NH2(CH2)6‐NH2)由来のものである。本発明の意味における抗体は、スペーサーとしてはみなされない。
【0048】
本発明の意味におけるマトリクスとは、スペーサーおよび本発明のタンパク質のための担体として機能する物質のことである。担体材料は、例えば、セファロース、パールセルロース(Perlzellulose)、シリカ、または当技術分野で周知の類似の物質であってよい。
【0049】
本発明の意味における体液は、ヒトなどの哺乳動物の体を起源とする全ての液体、特に、血液、尿、髄液、胸膜液、心嚢液、腹膜液ならびに滑液などの病原体が見出されうる液体として理解される。ヒト血液に関する本発明の記載は限定的なものではなく、単に例示的な適用としての記載にすぎない。
【0050】
病原性細菌とは、好ましくは敗血症の病原体として理解されるが、感染症についてのその他の任意の病原性細菌としても理解される。病原性細菌は、共生病原体、すなわち正常な生物集団の一部であって患者由来の試験試料中にも見出される場合があるが臨床上何ら問題のない病原体とは異なるものであってよい。
【0051】
感染した体液から全DNAを単離するとき、宿主DNAと病原体DNAとの比率は多くの場合わずか1:10−6〜1:10−8またはそれ未満であろう。原核生物DNAが本発明のタンパク質に特異的に結合することにより、本発明の方法で1指数関数単位以上の濃縮が可能となる。
【0052】
本発明で用いられるタンパク質は直接的または間接的に担体に連結させることができる。連結の種類は担体および担体材料によって変わる。適切な担体には、特に、メンブレン、微小粒子および樹脂、または類似のアフィニティ(親和性)マトリクス用の材料が挙げられる。本発明のタンパク質を結合させるため、ならびに(材料の種類に応じて)そのような結合を実施するために適した材料は、当業者には周知である。間接的な連結については、本発明のタンパク質またはペプチドに対する特異抗体が適しており、例えば、該抗体を周知の方法で担体に結合させる。
【0053】
本発明の方法の1つの応用は、原核生物DNAを濃縮することにある。別の応用は、例えばマトリクスに固定化されている本発明のタンパク質に原核生物DNAを結合させることにより、真核生物DNAと原核生物DNAとの混合物から原核生物DNAを分離することにある。生体自身のDNAと原核生物DNAとの混合物を、適切な手段によりアフィニティマトリクスと接触させると、その間に原核生物DNAは固定化されたタンパク質に結合するが、真核生物DNAは例えば分離カラムを通過し、別途回収することができる。アフィニティマトリクスには、例えば、アガロースなどのポリマー多糖、その他のバイオポリマー、合成ポリマー、または多孔質ガラスなどのケイ酸骨格を有する担体もしくはその他本発明のDNA結合タンパク質が固定化される固体担体もしくは可撓性担体が挙げられる。真核生物DNAから原核生物DNAを分離した後、アフィニティマトリクスを適切な試薬ですすぎ、原核生物DNAが結合している結合タンパク質をマトリクスから分離するか、あるいは原核生物DNAを結合タンパク質から分離するかのうち少なくともいずれかを実施してその後の処理工程に十分な量を得るようにする。
【0054】
本発明の方法の別の応用は、微小粒子上に固定化されている本発明のタンパク質に原核生物DNAを結合させることにより、真核生物DNAから原核生物DNAを分離および濃縮することにある。これに関しては、本発明のDNA結合タンパク質を固定化させることが可能なあらゆる微小粒子が適用可能である。そのような微小粒子は、ラテックス、プラスチック(例えば発泡スチレン、ポリマー)、金属、または強磁性体で構成されるものであってよい。さらに、蛍光性微小粒子、例えばLuminex社から入手可能な蛍光性微小粒子などを使用することもできる。微小粒子上に固定化された本発明のタンパク質に原核生物DNAを結合させた後、ろ過、遠心分離、沈殿、蛍光強度測定によるソーティング、または磁力を用いる方法などの適切な方法で、物質混合物から前記微小粒子を分離する。微小粒子から分離した後には、原核生物DNAをさらなる処理に用いることができる。
【0055】
本発明の方法の別の応用は、本発明のタンパク質に原核生物DNAを結合させることにより、真核生物DNAから原核生物DNAを分離および濃縮した後、電気泳動により混合物中のその他の成分から原核生物DNAを分離することにある。
【0056】
本発明の方法の別の応用は、本発明のタンパク質に原核生物DNAを結合させることにより、真核生物DNAから原核生物DNAを分離および濃縮することにある。続いて本発明のタンパク質を対応する抗体に結合させる。該抗体は、ガラス、プラスチック、シリコーン、微小粒子、メンブレンなどの固体物質または可撓性物質に結合していてもよいし、溶液状態であってもよい。原核生物DNAが本発明のタンパク質に結合し、同タンパク質が特異抗体に結合した後、当業者に周知の方法により物質混合物からの分離を実施する。
【0057】
本発明の方法は、体液から原核生物DNAを除去して体液を精製するために使用することもできる。これに関しては、体液を再度体内に戻すことが可能なように、分離を体外で無菌条件下にて実施して、前記体液に含まれる原核生物DNAの除去により生体自身の免疫系が感染を除去するのを助けるようにすると好都合である。
【0058】
任意の適切な化学的、機械的、または電気化学的手法が、体外で体液から原核生物DN
Aを除去するために検討可能である。さらに、その他の体外的手法、例えば血液潅流、心肺装置またはエンドトキシン吸着器などとの併用はさらに好都合な応用である。
【0059】
本発明のタンパク質は、原核生物DNAの検出に使用することもできる。この場合、原核生物DNAの濃縮に続いて前記原核生物DNAを増幅する工程となり、該工程にはあらゆる増幅方法(PCR、LCR、LM−PCRなど)が適している。
【0060】
本発明の方法、特に上述の実施形態では、非メチル化状態のCpGモチーフに富む原核生物DNAを、そのような構造に特異的親和性を有するタンパク質に特異的に結合させることにより、感染した宿主の全DNAから原核生物DNAを首尾よく濃縮し、よって体液中の病原体DNAの検出感度を著しく向上させる。
【0061】
特異的結合タンパク質を用いて真核生物DNAから原核生物DNAを分離する可能性は、全DNAを単離する周知の方法よりも時間を要するものではない。しかしながら、その後の検出はPCRだけで実施可能である。多くの場合、ネスティドPCRは必要なく、診断の時間をかなり節約することが可能である。
【0062】
生理学的体液中の原核生物DNAを除去するために本発明の方法を使用することについてはすでに上述した。本発明の意味における除去とは、原核生物DNAの量を低減させることを意味する。このような原核生物DNAを低減させるという可能性はまた、環境技術、廃水管理および空調技術における本発明のタンパク質の利用をも可能にする。
【0063】
本発明はさらに、非メチル化状態のゲノムDNAとメチル化状態のゲノムDNAとの混合物から非メチル化状態のゲノムDNAを分離かつ濃縮する方法にも関する。メチル化状態のゲノムDNAは、マトリクスに連結させたCpGbP181タンパク質に非メチル化状態のゲノムDNAを結合させることによって分離される。この手法は実質的に、メチル化状態のゲノムDNAのメチル化パターンの簡易検査を提供することになり、特定のメチル化パターンを有する疾患の診断を可能にする。
【0064】
さらに、本発明は上述の方法のうちの1つにより原核生物DNAを濃縮するためのキットに関し、前記キットは少なくとも1つの本発明のタンパク質と、任意選択で、前記方法を実施するのに適したさらなる試薬とを備える。
【0065】
本発明のタンパク質に加えて、前記キットは、標準的な条件下で特定の原核生物のゲノムDNAを増幅するのに適した少なくとも一組のプライマーを備えていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
本発明について、実施例を参照しながら以下に詳細に説明するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0067】
本発明のタンパク質の調製
完全長CPGbPタンパク質のDNA配列を用いて、CpGに結合する短縮型タンパク質CPGbP181をコードする短いDNA断片を増幅するプライマー1(GGATCCGGTGGAGGGCGCAAGAGGCCTG(順方向)、配列番号3)およびプライマー2(AAGCTTAGAGGTAGGTCCTCAT‐CTGAG(逆方向)、配列番号4)を構築した。該DNA断片を、制限酵素BamHIおよびHindIIIで切断済みのpQE9ベクター(キアゲン(Qiagen))にライゲーションした。pQE9ベクター内では、6×HisタグをコードするDNA断片が5’末端に融合したオープンリーディングフレーム(pQE9[6HisCPGbP181])が形成される。融合タ
ンパク質6His‐CPGbP181をコードする全アミノ酸配列を本明細書に後述するが、太字で示されている部分はCPGbP181ペプチドを表し、イタリック体で示されている部分はプラスミドpQE9由来の融合された外来アミノ酸を示している。
【0068】
プラスミドpQE9[6HisCPGbP181]で、発現用大腸菌株M15[pREP4](キアゲン)を形質転換した。このクローンを本明細書では以降M15[pCPGbP181]と呼び、発現されるタンパク質をrCPGbP181と呼ぶ。rCPGbP181タンパク質の発現は以下のプロトコールに従って行われる。すなわち、発現菌株M15[pCPGbP181]のコロニーを、100μg/mlのアンピシリンと25μg/mlのカナマイシンとを含む2mlのルリア(Luria)培地で37℃にて振蕩しながら一晩増殖させる。次いで、この前培養物を、同濃度の抗生物質を含有する200mlの予熱済み栄養培地に移す。37℃にて振蕩しながら3時間増殖させた後、IPTGを添加して発現を誘導し、インキュベーションを5時間継続する。その後、遠心分離により細菌を分離し、沈殿物を5mlの0.2Mトリス緩衝液(pH7.5)に再懸濁させる。この細菌を、氷冷槽中で5×1分間超音波処理する。遠心分離後、沈殿物を10mlの0.2Mトリス、0.2M尿素(pH7.5)に再懸濁させて、15分間振蕩する。遠心分離を実施した後、残存沈殿物を取り出して0.2Mトリス、6M塩酸グアニジン、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)、0.02Mイミダゾール中に入れて懸濁させる。この封入体を撹拌しながら室温で1時間溶解させる。遠心分離後、上清中には粗製タンパク質が存在し、3mlのNi‐アガロースカラムに直接かけることができる。その後の工程は4℃〜6℃の冷却チャンバ内で実施しなければならない。最初に、0.2Mトリス、6M塩酸グアニジン、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)、0.02Mイミダゾールの緩衝液(pH7.5)を用いて、吸光度がゼロの線に達するまでカラムを洗浄する。この時点からは、異なる方法でrCPGbP181を得ることが可能である。すなわち、方法1:6M塩酸グアニジンまたは6M尿素に溶解して変性タンパク質として得る。方法2:生理学的濃度の緩衝液に溶解した天然型タンパク質として得る。方法2の場合は収率が低くなる。
【0069】
方法1による精製(変性型):
0.2Mトリス、6M塩酸グアニジン、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)、0.02Mイミダゾールの緩衝液(pH7.5)中で、0‐0.5Mイミダゾールのグラジエントにより、Ni‐NTAアガロースからrCPGbP181タンパク質を塩基性物として溶出させる。実施の際には、rCPGbP181は0.2‐0.3Mイミダゾールでカラムから脱離する。こうして得られたタンパク質を、0.2Mトリス、6M尿素、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)(pH7.5)に対して透析し、凍結させる。生理学的緩衝液に対して透析すると、精製rCPGbP181が沈殿する。
【0070】
方法2による精製(天然型):
本方法では、rCPGbP181が結合したNi‐NTAアガロース上で塩酸グアニジンの濃度を6Mから0Mまでのグラジエントにより変化させる。このときのベースは0.2Mトリス、0.15M NaCl、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)、0.02Mイミダゾールの緩衝液(pH7.5)とする。この場合、流速は0.5ml/分を選択した。続いて、0.2Mトリス、0.5M NaCl、0.001Mジチオエリスリトール(DTE)の緩衝液(pH7.5)をベースとして0‐0.5Mイミダゾールのグラジエントで溶出させた。この場合も、結合したタンパク質のかなりの比率(20%)が0.2‐0.3Mイミダゾールで溶出した。この天然型rCPGbP181溶出物はPBS中での透析後も上記緩衝液に溶解状態のままであった。しかしながら、これらの条件ではNi‐NTAアガロースに結合したrCPGbP181の約80%がカラムに残り、その後は方法1の変性条件でしか抽出できないことが欠点である。このことは、使用した方法2の収率が、わずか20%の、生理学的緩衝液に可溶な天然型rCPGbP181で
あったことを意味している。
【実施例2】
【0071】
ネスティドPCRによる病原体の検出
コロニー形成単位で1mlあたり103の化膿連鎖球菌(Streptococcus
pyogenes)を病原体として含む、ヘパリン処理した新鮮なヒト血液を、病原体の検出のために使用した。体液から全DNAを単離するための市販のキットを用いて、製造業者の指示書の変法によりDNA結合マトリクスに吸着させることでDNAを単離した。このために、プロテイナーゼKおよびSDSを含む200μlの全体溶解緩衝液を、エッペンドルフチューブに入った100μlの感染血液に添加する。この混合物を37℃で30分間インキュベートし、次いで95℃で20分間加熱する。冷却後、20μgのムタノリシンを添加して37℃でさらに60分間インキュベートする。遠心分離後、該混合物を、DNA結合マトリクスを備えた遠心分離カラムに供し、製造業者の指示書に従ってDNAを精製する。精製されたDNAは、最終容量100μlの0.01Mトリス緩衝液(pH7.5)、または等容量の製造業者提供の溶出用緩衝液に含める。病原体の検出用に、ストレプトリシンO遺伝子(slo)を特定するためのプライマーを選択した。
【0072】
1.PCR(465bp断片の増幅)
前方向プライマー1:5’‐AGCATACAAGCAAATTTTTTACACCG
逆方向プライマー2:5’‐GTTCTGTTATTGACACCCGCAATT
プライマー濃度 1mg/ml
出発材料:5μl 単離DNA
0.5μl 前方向プライマー1
0.5μl 逆方向プライマー2
14μl 蒸留水
Ready to go(商標)キット(アマシャム・ファルマシア)で総量25μl
反応:
95℃で5分間
40サイクル(95℃で30秒、51℃で30秒、72℃で3分、72℃で7分を1回)。
【0073】
ヒト血液中の連鎖球菌DNAの最初のPCRについて図1に示す(出発材料25μlのうち各10μlを分離に供した。1)5μlの鋳型DNAを含むPCR出発材料、2)1:10に希釈した5μlの鋳型を含む出発材料、3)陽性対照:血液由来の真核生物DNAを含まない、0.2μlの鋳型連鎖球菌DNA、ST)分子量マーカー)。
結果:最初の一次PCRでは陽性反応は得られていない。従って、続いて第2のPCR(ネスティドPCR)を実施した。
【0074】
2.PCR(ネスティド)(上記slo断片中の348bp断片の増幅)
前方向プライマー3:5’‐CCTTCCTAATAATCCTGCGGATGT
逆方向プライマー4:5’‐CTGAAGGTAGCATTAGTCTTTGATAACG
プライマー濃度 1mg/ml
出発材料:PCR1(図1の試料1)から5μl
0.5μl 前方向プライマー1
0.5μl 逆方向プライマー2
14μl 蒸留水
Ready to go(商標)キット(アマシャム・ファルマシア)で総量25μl
反応:
95℃で5分間
40サイクル(95℃で30秒、54℃で30秒、72℃で3分、72℃で7分を1回)。
【0075】
図4は、図3の一次PCRの出発材料からのPCR産物を鋳型として用いたネスティドPCRを示している。試料は図3の試料に対応している。
結果:ネスティドPCRでは、血液100μlあたり連鎖球菌の細胞100個の濃度で所望のsloDNA断片が増幅された(試料1)。1回目のPCR(図3)における出発材料5μlについては、鋳型約5〜10個に相当する。1:10希釈の場合(試料2)、感度が限界となっている(鋳型0.5〜1個)。
【0076】
これらの実験から、血液中の病原体のPCRによる検出に成功するには、少なくとも1〜5mlの血液から全DNAを単離する必要があることが示される。しかしながら、その全DNAの濃度は直接PCRに使用するには高すぎる。
【0077】
細菌DNAを直接検出することによる、増幅工程を伴わないその他の病原体特異的核酸の検出、例えばDNAハイブリダイゼーションによる検出も感度が非常に低いが、これは細菌DNAに対してヒトDNAが非常に過剰であることが主な原因である。さらに、DNA分析の際の競合的過程ならびに細菌DNA量が少ないことが、定性分析および定量分析の障害であると考えられる。一般的なDNA単離方法では体液の全DNAが濃縮されて宿主DNAと微生物DNAとの比が1:10−6〜1:10−8になりうる。この差から、体液中の微生物DNAを検出する難しさが容易に理解される。
【実施例3】
【0078】
rCPGbP181の結合能の測定
ゲル遅延度アッセイで、変性型および天然型rCPGbP181タンパク質の、メチル化および非メチル化状態のCpGモチーフ含有DNA分子に対する結合について調べた。大腸菌プラスミドpUC18に溶血性C群連鎖球菌(Streptococcus dysgalactiae subsp.equisimilis)のMタンパク質遺伝子部分を挿入して試験DNAとして使用した(ガイヤー(Geyer)ら、FEMS Immuno.Med.Microbiol.第26巻、p.11−24、1999年)。プラスミド調製物を分け、半分をニュー・イングランド・バイオラボ(New England BioLabs)のCpGメチラーゼキットでメチル化した。調製物をいずれもrCPGbP181(天然型または変性型)と混合し、アガロースゲルで電気泳動により分離した。結果を図5および図6に示す。rCPGbP181の天然型および変性型のいずれも非メチル化状態のプラスミドDNAに高い親和性を示し、このことから非メチル化状態のCpGに富むDNAに対する選択的結合性が確認される。
【0079】
図5のゲル遅延度アッセイの説明:5μl(72ng)のメチル化pUC18emm DNAと1μl(142ng)の非メチル化pUC18emm DNAをそれぞれ5μl(0.5μg)の天然型rCPGbP181と混合し、次の緩衝液、すなわち0.01Mトリス、0.08M NaCl、0.001M EDTA、0.005M DTE、5%グリセリン、pH7.8で容量を35μlとした。20℃で30分間インキュベートした後、この混合物を1.5%アガロースで電気泳動により分離した。メチル化DNAをレーン1および3に、非メチル化DNAをレーン2および4に載せた。レーン1および2ではDNAを天然型rCPGbP181と混合した。レーン2は、非メチル化pUC18emmがrCPGbP181と相互作用することを示しているが、これに対し、rCPGbP181はメチル化pUC18emmとの相互作用を示さなかった(レーン1)。レーン4および5はrCPGbP181を添加していない対照としてのプラスミドである。
【0080】
変性型rCPGbP181とともにインキュベートした後の非メチル化pUC18emmおよびメチル化pUC18emmに関する、図6のゲル遅延度アッセイの説明。濃度は図5の濃度と対応する。メチル化DNAをレーン1および3に、非メチル化DNAをレーン2および4に載せた。レーン1〜4において、DNAを2種類の異なるバッチの変性型rCPGbP181と混合した。レーン2および4は、非メチル化pUC18emmが変性型rCPGbP181とも相互作用することを示しているが、rCPGbP181はメチル化pUC18emmとの相互作用は示さなかった(レーン1および3)。レーン5はrCPGbP181を添加していない対照としてのpUC18emmである。
【実施例4】
【0081】
子ウシ胸腺DNAおよび細菌DNAの混合物の、固定化されたCPGbP181への結合および分離
精製CPGbP181を、キャンビアッソ(Cambiasso)らのプロトコール(キャンビアッソ、シー(Cambiasso、C)ら、Immunochemistry
第12巻、p.273−278、1975年)に従ってグルタルアルデヒドを用いてアミノヘキシルセファロース(アマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham−Biosciences))に連結させた。固定化タンパク質の濃度はセファロース1mlあたり0.3mgとした。300μlのセファロースを、DNAもタンパク質も吸着しないがセファロースを担持するガラス材料を含んだ遠心ろ過チューブに入れた。
【0082】
200ngの子ウシ胸腺DNAおよび25ngのpUC18emmを100μlの20mMトリス‐HCl緩衝液(pH7.5)に溶解し、上記のように調製したカラムに供した。各工程の後、液体をそれぞれ新たなエッペンドルフチューブに入れてエッペンドルフ遠心分離機にて14,000RPMで0.5分間遠心分離した。こうして2段階でNaCl濃度を0Mから1Mに増大させた。各チューブに10μlの4M酢酸(pH4.5)および250μlの無水エタノールを添加し、混合し、14,000RPMで15分間遠心分離することによってDNA沈殿を実施した。その後、上清を廃棄して沈殿物を300μlの70%エタノールで洗浄した。上清を廃棄した後、残留物を真空遠心分離機で5分間乾燥させ、次いで15μlの蒸留水(PCR好適品)に溶解した。一方では、各試料10μlについて254nmでの吸光度を測定し(図7)、他方では、各試料3μlを用いてpUC18用のシーケンスプライマーでPCRを実施した(図8)。
【0083】
結果(図7、8)は、真核生物の子ウシ胸腺DNAが最初に0〜0.1M NaClでカラムから洗い出され、原核生物DNA(pUC18emm)が0.3M NaClのフラクションに溶出されたことを示している。このことは、真核生物DNAのCPGbP181に対する親和性が低く、従って各DNAのフラクションが明確に分離されたことを示している。
【実施例5】
【0084】
スペーサーを介してCPGbP181タンパク質をマトリクスに間接的に結合させることによる、同タンパク質の結合性の増強
結合性について調べるために、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびヒトDNAのDNA混合物から、CNBrセファロースに直接連結させたCPGbP181タンパク質、またはジアミノヘキシル・スペーサー(AH)を介してセファロース(以下のAHセファロース)に間接的に連結させたCPGbP181タンパク質を用いて、原核生物DNAを濃縮した。
【0085】
最初に、AHセファロースにグルタルアルデヒドを添加して室温で15分間インキュベートした。次に、AHセファロースを0.1M Na2HPO4で洗浄した。次いで、0
.24mgのCPGbP181タンパク質を該マトリクス上に載置した。室温で2時間インキュベートすることによりCPGbP181タンパク質をAHセファロースに結合させた。過剰なCPGbP181タンパク質を取り除いた。
【0086】
続いて0.1M Na2HPO4でCPGbP181‐AHセファロースを洗浄して0.1Mグリシンを添加した後、CPGbP181‐AHセファロースを室温で2時間インキュベートして空いている結合部位を飽和させた。次いで、CPGbP181‐AHセファロースを再度0.1M Na2HPO4で洗浄した。シッフ塩基を還元し結合を安定化させるために、CPGbP181‐AHセファロースを水素化ホウ素ナトリウムと混合して室温で1時間インキュベートした。
【0087】
次に、CPGbP181‐AHセファロースを0.1M Na2HPO4で洗浄した。
【0088】
CPGbP181‐AHセファロースの4℃における保存性は20%エタノールを添加することにより達成される。次に、CPGbP181‐AHセファロースをカラムに分配した。CPGbP181‐AHセファロースで作製したカラムを次にトリス緩衝液で洗浄し、非メチル化CpGモチーフを含むDNAの分離/濃縮に利用可能とした。
【0089】
2)DNA混合物の濃縮後の、原核生物DNAの溶出およびPCRによる原核生物DNAの濃度測定
DNA混合物を、各々330ngのヒトDNAと150ngの原核生物DNA(黄色ブドウ球菌DNA)とから構成されるものとした。このDNA混合物を、CNBrセファロースまたはAHセファロースで作製されたカラムにそれぞれ載置し、室温で1分間インキュベートした。次いで、カラムを遠心分離して100μlのトリス緩衝液(10μM、pH7)で洗浄した。この洗浄および遠心分離の工程を5回繰り返した。
【0090】
上清を注意深く取り除いてから、100μlの溶出用緩衝液(10μMトリス緩衝液、0.5M NaCl、pH7)を各々カラムに添加して遠心分離した。溶出工程を5回繰り返した。次いで、各試料の個々のフラクションに10μlの3M酢酸ナトリウムと250μlのエタノールを加えてから混合して遠心分離(15,000gで15分間)することにより沈殿を生じさせた。上清を注意深く廃棄し、ペレットを1μlのエタノール(70%)で洗浄して15,000gで遠心分離した。次に再度上清を取り除き、ペレットを真空遠心分離機で乾燥させて30μlのDEPC水に溶解した。各5μlをPCR検出に使用した。
【0091】
PCRには16S‐RNA遺伝子に対するユニバーサルプライマーを使用した。PCRを実施した後、個々のフラクション各15μlを2%アガロースに載置した。
【0092】
図9(CpG181タンパク質をCNBrセファロースへ直接結合)および図10(スペーサー(AH)を介してCpG181タンパク質をセファロースに間接的に結合)は、個々のフラクションについてのPCRの結果を示している。AHスペーサーの使用により、より多くの原核生物DNAが濃縮されたことが明らかである(フラクション1、溶出フラクション)。このような結合性の向上は、本発明の方法において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】CPGbP181のアミノ酸配列(太字)を野生型のCPGBタンパク質(CPGbP656)およびCPGbP241(イタリック体)と比較して示す図。
【図2】完全長のCPG結合タンパク質CPGbP656の、DNA配列およびアミノ酸配列への翻訳を示す図。短縮型のCPG結合ペプチドCPGbP241(太字)およびCPGbP181(イタリック体)も示されている。
【図3】ヒト血液中の連鎖球菌のPCRについて示す図。
【図4】図3の一次PCRのPCR産物を鋳型として用いたネスティドPCRについて示す図。
【図5】ゲル遅延度アッセイについて示す図。
【図6】別のゲル遅延度アッセイについて示す図。
【図7】rCpG181セファロースによる子ウシ胸腺DNAおよびpUC18emmの溶出について示す図。
【図8】254nmの吸光度の測定によりフラクション中の溶出DNAを測定し、NaClグラジエントの関数として示す図。
【図9】黄色ブドウ球菌およびヒトのDNAのDNA混合物から、CNBrセファロースに連結させたCpGbP181タンパク質を用いて原核生物DNAを濃縮した後の、PCRの結果を示す図。
【図10】黄色ブドウ球菌およびヒトのDNAのDNA混合物から、AHセファロースに連結させたCpGbP181タンパク質を用いて原核生物DNAを濃縮した後の、PCRの結果を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原核生物DNAの分離または濃縮のうち少なくともいずれか一方を行う方法であって、
(a)溶液中に存在する少なくとも1つの原核生物DNAを、原核生物DNAに特異的に結合し、野生型のCGPBタンパク質と25%〜35%の相同性を有するタンパク質と接触させることによって、タンパク質‐DNA複合体を形成する工程と、
(b)前記複合体を分離する工程と
からなる方法。
【請求項2】
前記タンパク質が配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質が非メチル化CpGモチーフを認識可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離工程の後に複合体のタンパク質からDNAを分離する工程が続くことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質が担体に結合していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質が担体に直接結合していることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質が同タンパク質に対する抗体を介して担体に結合していることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質がスペーサーを介して担体に結合していることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
スペーサーとしてジアミノヘキサン残基が使用されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
担体が、マトリクス、微小粒子、またはメンブレンとして提供される、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
マトリクスとしてセファロースが用いられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
分離工程が前記タンパク質に対する抗体または抗血清を用いて実施される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
分離が電気泳動によって実施される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質が非メチル化CpGモチーフに対する抗体または抗血清である、請求項6〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
溶液が真核生物DNAおよび原核生物DNAの混合物を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
原核生物DNAは細菌DNAである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
溶液が体液または体液に由来する溶液であり、特に全血、血清、血漿、全血からの細胞
調製物、尿、髄液、胸膜液、心嚢液、腹膜液、滑液ならびに気管支肺洗浄物である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
分離工程が前記DNA‐タンパク質複合体をろ過するフィルタを用いて実施される、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
タンパク質がフィルタのマトリクスに固定化されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
環境技術、水管理および廃水管理ならびに空調技術において使用するための請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
工程(b)の後で工程(c)において原核生物DNAが増幅される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
(a)タンパク質‐DNA複合体から原核生物DNAを単離する工程と、
(b)該二本鎖DNAを変性させる工程と、
(c)個々のDNA鎖を相補的プライマーとハイブリダイズさせる工程と、
(d)ポリメラーゼ反応により二本鎖の断片を生成させる工程と、
(e)上記工程を所望の程度に増幅されるまで繰り返す工程と
からなる請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(a)単離した原核生物DNA配列をベクターにクローニングする工程と、
(b)上記ベクターで適当な宿主細胞を形質転換する工程と、
(c)上記形質転換細胞を培養する工程と、
(d)上記細胞からベクターを単離する工程と、
(e)DNAを単離する工程と
からなる請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法を用いて原核生物DNAの分離または濃縮のうち少なくともいずれか一方を行うためのキット。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法を用いて、1組または数組の特異的プライマーを使用して原核生物DNAを検出するための試験キット。
【請求項1】
原核生物DNAの分離または濃縮のうち少なくともいずれか一方を行う方法であって、
(a)溶液中に存在する少なくとも1つの原核生物DNAを、原核生物DNAに特異的に結合し、野生型のCGPBタンパク質と25%〜35%の相同性を有するタンパク質と接触させることによって、タンパク質‐DNA複合体を形成する工程と、
(b)前記複合体を分離する工程と
からなる方法。
【請求項2】
前記タンパク質が配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質が非メチル化CpGモチーフを認識可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離工程の後に複合体のタンパク質からDNAを分離する工程が続くことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質が担体に結合していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質が担体に直接結合していることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質が同タンパク質に対する抗体を介して担体に結合していることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質がスペーサーを介して担体に結合していることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
スペーサーとしてジアミノヘキサン残基が使用されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
担体が、マトリクス、微小粒子、またはメンブレンとして提供される、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
マトリクスとしてセファロースが用いられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
分離工程が前記タンパク質に対する抗体または抗血清を用いて実施される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
分離が電気泳動によって実施される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質が非メチル化CpGモチーフに対する抗体または抗血清である、請求項6〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
溶液が真核生物DNAおよび原核生物DNAの混合物を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
原核生物DNAは細菌DNAである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
溶液が体液または体液に由来する溶液であり、特に全血、血清、血漿、全血からの細胞
調製物、尿、髄液、胸膜液、心嚢液、腹膜液、滑液ならびに気管支肺洗浄物である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
分離工程が前記DNA‐タンパク質複合体をろ過するフィルタを用いて実施される、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
タンパク質がフィルタのマトリクスに固定化されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
環境技術、水管理および廃水管理ならびに空調技術において使用するための請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
工程(b)の後で工程(c)において原核生物DNAが増幅される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
(a)タンパク質‐DNA複合体から原核生物DNAを単離する工程と、
(b)該二本鎖DNAを変性させる工程と、
(c)個々のDNA鎖を相補的プライマーとハイブリダイズさせる工程と、
(d)ポリメラーゼ反応により二本鎖の断片を生成させる工程と、
(e)上記工程を所望の程度に増幅されるまで繰り返す工程と
からなる請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(a)単離した原核生物DNA配列をベクターにクローニングする工程と、
(b)上記ベクターで適当な宿主細胞を形質転換する工程と、
(c)上記形質転換細胞を培養する工程と、
(d)上記細胞からベクターを単離する工程と、
(e)DNAを単離する工程と
からなる請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法を用いて原核生物DNAの分離または濃縮のうち少なくともいずれか一方を行うためのキット。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法を用いて、1組または数組の特異的プライマーを使用して原核生物DNAを検出するための試験キット。
【図1】
【図2】
【図2】
【図2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図2】
【図2】
【図2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2007−525982(P2007−525982A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501210(P2007−501210)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002198
【国際公開番号】WO2005/085440
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(502412190)ジルス−ラプ ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】SIRS−Lab GmbH
【住所又は居所原語表記】Winzerlaer Strasse 2a D−07745 Jena Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002198
【国際公開番号】WO2005/085440
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(502412190)ジルス−ラプ ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】SIRS−Lab GmbH
【住所又は居所原語表記】Winzerlaer Strasse 2a D−07745 Jena Germany
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]