説明

非常用誘導装置

【課題】二次電池から見た負荷の状態が変動する回路を備えた非常用誘導装置において、二次電池の状態を適正に判断可能とする。
【解決手段】二次電池16と、常用電源1から二次電池16を充電する充電回路部12と、二次電池16の電圧V16を検出する検出部8と、非常時には二次電池16を電源として動作する負荷と、二次電池16を点検するための点検信号を受けて、負荷に電力供給した際に前記検出部8により二次電池16の異常の有無を判断する判断部10とを備え、非常時の上記負荷の動作状態においては二次電池16から見た出力電流が周期的に瞬時変動する非常用誘導装置において、前記判断部10は二次電池16の電圧V16が安定する安定期で二次電池16の状態を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘導灯や誘導音装置のような非常用誘導装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘導灯や非常灯のような非常用照明装置は、常用の電源が停電した時或いは火災など重大な災害が発生した時に、二次電池などの非常用の電源で光源を点灯もしくは点滅させるものであり、二次電池による動作が正常に行われるか否かの点検を定期的に行うように消防庁告示及び建築基準法などで義務づけられている。規定では、誘導灯の場合には20分間又は60分間、非常灯の場合には30分間、それぞれ光源を有効に点灯させなければならないことになっている。点検者はこのような長時間点灯を継続させるために、例えば点検スイッチの引き輪に重りをぶら下げて、点灯維持可能かどうかを1つ1つ見て回って点検する必要があり、点検者にとっては非常に手間のかかる作業であった。
【0003】
そこで、特開2004−119151号公報(特許文献1)においては、点検手段により所定の点検時間以上強制的にランプを点灯させて、二次電池の点検を行う技術が開示されている。図9に従来例の構成を示す。図9に示すように非常用電源となる二次電池2と、白熱ランプや放電ランプなどのランプ6と、常用電源(商用電源)1から供給される交流を降圧し、安定化して所望の直流を得て、二次電池2を充電する充電回路部3と、二次電池2からの電力供給でランプ6を点灯させる点灯回路部5と、二次電池2から点灯回路部5への給電路を開閉するスイッチ素子4と、スイッチ素子4をオン、オフし且つ点灯回路部5を動作させる信号を生成するとともに二次電池2の異常を検出する制御部7とを備え、常時は商用電源1から電力供給を受けて二次電池2を充電し、停電時には二次電池2からの電力供給でランプ6を点灯させるものである。
【0004】
制御部7はタイマ機能を内蔵したマイクロコンピュータを主構成要素とし、二次電池2の電圧(以下「電池電圧」と称する)を検出する電圧検出部8と、電圧検出部8の検出結果から二次電池2の異常を判断する判断部10とを具備している。また、制御部7は通信部11を有しており、外部から点検信号を受信すると、充電回路部3による二次電池2への充電を停止させるとともに点灯回路部5により所定の点検時間以上強制的にランプ6を点灯させて二次電池2の点検を行う点検機能を有している。
【0005】
外部より点検信号を受信すると、制御部7はランプ6を点灯させることにより二次電池2を放電させる。この時二次電池2が満充電状態であるかを判断し、満充電でない場合には点検を中断する。満充電である場合には継続して二次電池2の容量を放電していく。この時、電圧検出部8による電池電圧が所定時間内は放電基準電圧以上を維持することで二次電池2の容量に異常がないと判定している。
【0006】
図10に二次電池2の放電時における電池電圧と放電時間の関係を示す。実線Aでは規定時間内では電池電圧は放電基準電圧以上であるため二次電池は正常と判断する。また、同図における破線Bでは電池電圧は規定時間内に放電基準電圧以下になっているため二次電池は寿命であると判断している。このように放電時における二次電池2の電池電圧を監視し、異常判定のための基準値と比較することによって二次電池2の良否を点検することができる。
【特許文献1】特開2004−119151号公報
【特許文献2】特開平10−241457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、誘導灯器具の中には一般の誘導灯よりも更に誘導効果を高めた点滅形誘導灯なるものがある。この点滅形誘導灯は常用電源が遮断されただけでは動作せず、非常時に外部の信号装置からの動作信号を受けて光源を点滅動作させることで誘導効果を得られるようにした器具である。
【0008】
この点滅形誘導灯の光源には、例えば特開平10−241457号公報(特許文献2)に開示されるように、キセノンフラッシュランプが使用されることが多い。この点滅形誘導灯の点灯回路例を図11に示す。この点灯回路において、キセノンフラッシュランプ15が点滅した際の各部の波形を図12に示す。図中、V17はコンデンサ17の両端電圧、V16は二次電池16の両端電圧、I15はランプ15に流れる電流である。キセノンフラッシュランプ15が放電(点灯)すると、コンデンサ17の電荷が放出され、電圧が低下する。コンデンサ17の電圧とキセノンフラッシュランプ15の電圧は同じである。電荷が放出されると二次電池16を電源としてコンデンサ17を再度充電するためにコンデンサ17に電流が流れる。そのとき二次電池16の電圧は変動し、コンデンサ17が充電されたのち二次電池16の電圧は安定する。そのためタイミングによって電池電圧が変動するため二次電池16の容量に異常が無いか否かを電池電圧で判定することが難しい。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、二次電池から見た負荷の状態が変動する回路を備えた非常用誘導装置において、二次電池の状態を適正に判断可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記の課題を解決するために、図1に示すように、二次電池16と、常用電源1から二次電池16を充電する充電回路部12と、二次電池16の電圧V16を検出する検出部8と、非常時には二次電池16を電源として動作する負荷と、二次電池16を点検するための点検信号を受けて、負荷に電力供給した際に前記検出部8により二次電池16の異常の有無を判断する判断部10とを備え、非常時の上記負荷の動作状態においては二次電池16から見た出力電流が周期的に瞬時変動する非常用誘導装置において、前記判断部10は二次電池16の電圧V16が安定する安定期で二次電池16の状態を判断することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非常時の負荷の動作状態において二次電池から見た出力電流が周期的に瞬時変動しても、二次電池の電圧が安定する安定期で二次電池の状態を判断するので、二次電池の状態を適正に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の構成を図1に示す。本実施の形態は、図9の従来例において、スイッチ素子4、点灯回路部5、ランプ6に替えて、図11のキセノンランプ15とその点灯回路を接続した構成を有している。図9と同じ構成については説明を省略し、キセノンランプ15とその点灯回路について説明する。
【0013】
ランプ15の点灯時には、二次電池16の電圧を昇圧回路13によりランプ15の放電電圧以上に昇圧する。この時、コンデンサ19には昇圧回路12によって昇圧された電圧を電源として抵抗18→コンデンサ19→トランス20の一次側巻線L1のように電流が流れ、コンデンサ19には電荷が蓄積される。
【0014】
ここで、制御回路部9によりサイリスタ21のゲート・カソード間に電圧を印加するとサイリスタ21はオン動作を行う。その際、コンデンサ19に蓄えられたエネルギーはトランス20の一次側巻線L1を通じて急峻に放出される。この時、トランス20の一次側巻線L1にはパルス状の電圧が発生するため、トランス20の二次側巻線L2に巻数比に応じたパルス電圧が発生する。このパルス電圧がキセノンフラッシュランプ15のトリガ電極に印加されることによりランプ15が点灯する。この時、ランプ15の放電エネルギーは二次電池16の電圧を昇圧回路13を経てコンデンサ17に充電されている電荷であり、ランプ15の発光により電荷が放出されてコンデンサ17の電圧が最小発光電圧を下回るとランプ15の放電が停止する。
【0015】
その後、ランプ15が消灯している間にコンデンサ17に電荷を充電しつつ、所定時間後に上記と同様にサイリスタ21のゲート・カソード間に電圧を印加させてランプ15を点灯させる動作を繰り返すことでランプ15を点滅させて照明の誘導効果を高めている。なお、充電回路部12は二次電池16を充電するための要素である。
【0016】
本実施の形態では、点検時に電池電圧V16を測定することによって二次電池16の容量を求めている。また、その検出タイミングとしてはキセノンフラッシュランプ15が放電していない時に二次電池16の電池電圧V16を電圧検出部8によって検出する。このタイミングについてはマイクロコンピュータ等を用いて制御部7を構成することにより、ランプ15が放電してからある所定の時間T毎に電池電圧値を検出し、基準電圧と比較することによって規定時間内に電池電圧が基準電圧を下回らなければ二次電池16は正常と判断する。
【0017】
各部の波形のタイムチャートを図2に示す。所定の時間Tの設定として、ランプ15が放電を開始した後、コンデンサ17が充電され、その両端電圧V17が安定になるのに必要な時間T1以上で且つ次にランプ15が点灯するタイミング(V22がHになるタイミング)T2以下とする。すなわちT1≦T≦T2で規定された所定時間Tのタイミングで二次電池16の電圧V16を測定し、これを基準電圧と比較することによって、二次電池16の状態を判別する。これによって二次電池16の電圧が不安定な領域で電池の状態を判断することがないため、精度のよい判別が可能となる。
【0018】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2を図3に示す。図3の装置は非常時に音声を発声して避難口に誘導する非常用誘導装置である。商用電源1が通電時には二次電池16を充電回路部12を介して充電し、非常時には充電された二次電池16を利用して、制御部7により音声出力部18を動作させ、スピーカ19に音声信号電圧を印加することによって予め設定された音声内容を出力する。
【0019】
ここで、制御部7はタイマ機能を内蔵したマイクロコンピュータを主構成要素とし、二次電池16の電圧(以下「電池電圧」と称する)を検出する電圧検出部8と、電圧検出部8の検出結果から二次電池2の異常の有無を判断する判断部10とを具備している。
【0020】
また、制御部7は通信部11を有しており、外部から点検信号を受信すると、充電回路部12による二次電池16への充電を停止させる。更に所定の点検時間以上強制的にスピーカ19から音声を発声させて二次電池16の点検を行う点検機能と、二次電池16が満充電状態であるか常時監視する監視機能とを有している。
【0021】
ここで、二次電池16の電圧は音声を発声しているときにはスピーカ19に電流I19が流れるため、図4にように電圧V16が変動する。そこで、二次電池16の状態を判断するため、二次電池16の電圧V16を読み込むタイミングとしては、音声が発生していない状態で、二次電池16の電圧V16が安定している時、すなわち、図4のT1≦T≦T2なる所定時間Tのタイミングに読み込み、基準電圧と比較することで二次電池16の状態を精度よく判断することが可能である。
【0022】
また、音声の発声時間、休止時間はJILによって規定されている。図5に音声の発声時間の概念図を示す。図5の1サイクルは警報音と音声からなり、このサイクルを繰り返す。図5で1サイクル中のA、B、C、Dの区間は音声を発声していない区間であり、このタイミングに合わせて二次電池16の電池電圧を読み込むことで安定した電池電圧を読み込むことができる。
【0023】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3の構成を図6に示す。図6の回路では、二次電池16の電圧検出のための構成として、抵抗30、31及びコンデンサ32よりなる平均化回路を付加している。その他の構成は図1と同じである。
【0024】
各部の波形のタイムチャートを図7に示す。二次電池16の状態を検出するために、コンデンサ32の両端電圧V32を読み込む。この構成によれば、ランプ15が放電し、二次電池16の電圧が変動している状態においても、検出電圧V32はコンデンサ32により平滑され、安定な電圧となるように抵抗30、31及びコンデンサ32の定数を設定しておく。この検出電圧V32と基準電圧を比較することによって二次電池16の状態を判別する。この構成によって、比較的容易に精度の良い電池の判定ができる。
【0025】
なお、図1の構成においても二次電池16の電圧をランプ15の放電の1サイクルの間に複数回読み込み、制御部7のマイクロコンピュータで平均値を計算する方法でも電池電圧を平均化した値を検出することが可能である。
【0026】
本実施の形態では、図1または図6のようなランプ15を点滅させる誘導灯装置について説明したが、図3のような音声を発声させる誘導音装置であっても電池電圧を平均化して検出することで、電池の状態を精度良く判別することができる。
【0027】
(実施の形態4)
本実施の形態は二次電池の状態を点検する際は一定の音圧の音声を発声させるものである。そのため、予め非常時とは異なる点検用の音声を設定しておく。図8に点検時の二次電池16の電圧V16とスピーカ19に流れる電流I19を示す。これにより、点検時には二次電池16の電圧V16は安定するため、電池電圧の読み込むタイミングはどこでもよく、その値を基準電圧と比較することによって精度よく電池の状態を判別することが可能となる。また、非常時に発声する音声とは異なるため、非常時と間違う恐れもない。
【0028】
(実施の形態5)
実施の形態5は二次電池の点検結果を音声を用いてお知らせする機能を付加したことを特徴とする。回路構成は図3と同じで良い。予め、音声合成LSI等に点検結果の状況に応じた音声内容を記憶させておくことで、点検が終了した段階で結果を発声させる。これにより、従来、器具に具備していたLED等の表示を用いることなく、点検結果がわかる。もちろん、LED等の表示と音声によるお知らせ機能を併用しても良い。
【0029】
以上の各実施の形態において、複数の非常用照明装置を通信手段を介して監視制御装置と接続し、監視制御装置で設定された定期点検・週間点検のための自動点検スケジュールに従って、監視制御装置からの遠隔制御により各非常用照明装置の点検動作を自動的に実施するように構成しても良く、メンテナンス性を向上させることで非常用照明システム全体の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を示すブロック回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1の動作説明図である。
【図3】本発明の実施の形態2の構成を示すブロック回路図である。
【図4】本発明の実施の形態2の動作説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2の動作説明図である。
【図6】本発明の実施の形態3の構成を示すブロック回路図である。
【図7】本発明の実施の形態3の動作説明図である。
【図8】本発明の実施の形態4の動作説明図である。
【図9】従来例1の構成を示すブロック回路図である。
【図10】従来例1の動作説明図である。
【図11】従来例2の構成を示すブロック回路図である。
【図12】従来例2の動作説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 商用電源
8 電圧検出部
10 判断部
12 充電回路部
15 ランプ
16 二次電池
18 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、常用電源から二次電池を充電する充電回路部と、二次電池の電圧を検出する検出部と、非常時には二次電池を電源として動作する負荷と、二次電池を点検するための点検信号を受けて、負荷に電力供給した際に前記検出部により二次電池の異常の有無を判断する判断部とを備え、非常時の上記負荷の動作状態においては二次電池から見た出力電流が周期的に瞬時変動する非常用誘導装置において、前記判断部は二次電池の電圧が安定する安定期で二次電池の状態を判断することを特徴とする非常用誘導装置。
【請求項2】
請求項1において、負荷はキセノンランプとキセノンランプを駆動する点灯回路であって、安定期とはキセノンランプが放電していない区間であることを特徴とする非常用誘導装置。
【請求項3】
請求項1において、負荷はスピーカとスピーカに音声信号を供給することにより音声を発声させる音声出力回路であって、安定期とは無音部であることを特徴とする非常用誘導装置。
【請求項4】
請求項1において、負荷の周期的変動による二次電池の電圧変動を平均化した値を安定期の値としたことを特徴とする非常用誘導装置。
【請求項5】
請求項1において、負荷はスピーカとスピーカに音声信号を供給することにより音声を発声させる音声出力回路であって、音声出力回路は点検時には非常時に比べて出力音圧の変動を少なくしたことを特徴とする非常用誘導装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、判断部による点検結果を音声により発声させる出力手段を設けたことを特徴とする非常用誘導装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−188345(P2007−188345A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6605(P2006−6605)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】