説明

非接触型ICモジュール及び非接触型ICモジュールの製造方法

【課題】非接触に特性値を計測実施しつつコンデンサ容量の合わせ込み精度の高い非接触型ICモジュールを提供する。
【解決手段】アンテナコイル3と、このアンテナコイルに接続するICチップ5と、絶縁基板2の表面上の基準特性部4A特性増加調整部4Bと他方の面に形成された共通電極Pbとで構成する平行平板コンデンサ4とで構成する共振回路を有し、特性増加調整部4Bとして、前記絶縁基板の一方の面に形成された複数の選択電極P1〜P7のうちの選択された一つ又は複数を導電ペーストを焼成して形成される導電体6を基準特性部4Aに接続することにより、周波数特性を非接触で測定しながら平行平板コンデンサ容量4を調整し、所定の共振周波数を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読み書き装置との間で情報と電力との伝達を非接触で行う非接触型識別タグや非接触型ICカード等の非接触型ICモジュールに係り、特にアンテナコイルで構成される共振回路の共振周波数を最適化した非接触型ICモジュール及び非接触型ICモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触型識別タグや非接触型ICカード等の非接触型ICモジュールのように非接触状態でデータの送受信を行ってデータの記録、消去などが行える情報記録メディア(RFID(Radio Frequency I Dentification))の用途に用いられる非接触型データ送受信体が、種々の目的で使用されている。この種の非接触型ICモジュールでは、絶縁基板の表裏面の相対向する部位に1個のコンデンサを構成するための1対の容量パッドを形成し、この容量パッドとアンテナコイルとを予めリードパターンを介して接続し、アンテナコイルに接続されるICチップの周波数特性に応じてアンテナコイルに接続される容量パッドの面積を減少し、半導体モジュールのインピーダンスを許容範囲内に調整するようにしている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−53216号公報(第3頁−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の非接触型ICモジュールは、ICチップをアンテナコイルに接続するに先立ち、ICチップの周波数特性を測定して、ICチップが接続された半導体モジュールについて所望のインピーダンスを得るに必要なアンテナコイルの静電容量を算出し、これに基づいて所望の静電容量を有する容量パッドの面積を求め、これに応じて容量パッドの過剰分をトリミング等で除去するが、過剰分の除去に手間が掛かるなど工程管理が煩雑となるという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、アンテナコイルやコンデンサ容量を容易に調整できる非接触型ICモジュール及び非接触型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
〔形態1〕 上記目的を達成するために、形態1の非接触型ICモジュールは、基板と、前記基板の一方の面に形成されたアンテナ部と、前記一方の面に形成されたICチップと、前記基板の他方の面に形成された共通電極と、を有し、前記アンテナ部は、螺旋状パターンのアンテナコイルと、前記アンテナコイルの外周に沿って螺旋状に位置する導体部と、を備えることを特徴とする。
【0005】
〔形態2〕 また、形態2の非接触型ICモジュールは、形態1の非接触型ICモジュールにおいて、前記アンテナコイルの内周側に第1ランドが形成され、前記ICチップは、前記アンテナコイルの内周側に位置し、且つ、前記第1ランドと前記アンテナコイルの一部とに電気的に接続されていることを特徴とする。
〔形態3〕 また、形態3の非接触型ICモジュールは、形態2の非接触型ICモジュールにおいて、前記第1ランドは、前記共通電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
【0006】
〔形態4〕 また、形態4の非接触型ICモジュールは、形態2または3の非接触型ICモジュールにおいて、前記導体部の一端に第2ランドが形成され、前記基板の他方の面に導電パターンが形成され、前記第1ランドと前記第2ランドとは、前記導電パターンを介して電気的に接続されていることを特徴とする。
〔形態5〕 また、形態5の非接触型ICモジュールは、形態1ないし4の何れかの非接触型ICモジュールにおいて、前記導体部の一部と前記アンテナコイルの一部とを電気的に接続する導電体をさらに有することを特徴とする。
【0007】
〔形態6〕 また、形態6の非接触型ICモジュールは、形態1ないし5の何れかの非接触型ICモジュールにおいて、前記一方の面に形成された基準特性部を備え、前記基準特性部は、前記アンテナコイルの内周側の、前記共通電極と対向する位置に形成されることを特徴とする。
〔形態7〕 また、形態7の非接触型ICモジュールは、形態1ないし6の何れかの非接触型ICモジュールにおいて、前記一方の面に形成された特性増加調整部を備え、前記特性増加調整部は、前記アンテナコイルの内周側の、前記共通電極と対向する位置に形成されることを特徴とする。
【0008】
〔形態8〕 また、形態8の非接触型ICモジュールは、形態7の非接触型ICモジュールにおいて、前記特性増加調整部は、複数の電極部を備えることを特徴とする。
〔形態9〕 また、形態9の非接触型ICモジュールは、形態7の非接触型ICモジュールにおいて、前記特性増加調整部は、面積の異なる複数の電極部を備えることを特徴とする。
【0009】
〔形態10〕 また、形態10の非接触型ICモジュールは、形態6または7の非接触型ICモジュールにおいて、前記特性増加調整部は、前記複数の電極部を前記アンテナ部に接続する導電体を備えることを特徴とする。
〔形態11〕 また、形態11の非接触型ICモジュールは、形態1ないし11の何れかの非接触型モジュールにおいて、前記導体部は、前記アンテナ部のアンテナ径を調整するものであることを特徴とする。
【0010】
〔形態12〕 また、形態12の非接触型ICモジュールは、形態1ないし11の何れかの非接触型モジュールにおいて、前記ICチップは、外部からの電磁誘導によって電力が供給されることを特徴とする。
〔形態13〕 さらに、形態13の非接触型ICモジュールは、形態1ないし12の何れかの非接触型モジュールにおいて、前記ICチップは、外部との情報の伝達を行うことを特徴とする。
【0011】
〔形態14〕 また、形態14の非接触型ICモジュールは、基板上に、螺旋状のアンテナコイル及び前記アンテナコイルの周囲に螺旋状の導体部を形成する工程と、前記アンテナコイルの一部に接触するようにICチップを配置する工程と、前記ICチップの周波数を測定する工程と、前記ICチップの周波数に応じて前記アンテナコイルの一部と前記導体部の一部とを電気的に接続する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態を示す要部平面図であり、図2は、図1のA−A断面図である。この第1の実施形態では本発明を非接触型ICモジュールとしての非接触識別タグ1に適用している。
この非接触識別タグ1は、RFIDシステムにおいて用いられるもので、一般にデータキャリアなどとも呼ばれている。その形状には、ラベル型、カード型、コイン型、スティック型等の様々なものがある。これらの形状はアプリケーションと密接な関係があり、例えば、人が持つものは、カード形あるいはラベル形をキーホルダ形状に加工したものがある。また、半導体のキャリアIDとしてはスティック形が主流となっている。なお、リネン関連の服に縫い込まれるものはコイン形が主流となっている。また、カード型などにおいては、表示部を備えるものもある。
【0013】
また、非接触識別タグは、データ読取専用、あるいは、データの読み書きが自由に行える記憶領域を備えており、更に、アンテナ側からの非接触電力伝送により電池がなくても動作可能なものもある。
また、RFIDシステムとは、媒体に電波・電磁波を用いたIDシステムであり、非接触識別タグが、(1)携帯容易な大きさであること、(2)情報を電子回路に記憶すること、(3)非接触通信により交信することの3つの特徴を備えている。
従って、RFIDシステムは、非接触識別タグを持つ人・物・車などと、その情報とを一元化させる目的で使用される。つまり、人・物・車がある場所で随時、必要な情報を取り出すことができ、かつ必要に応じて新たな情報を書き込むことができる。
【0014】
また、RFIDシステムの代表的な種類としては、主に、交流磁界によるコイルの相互誘導を利用して非接触識別タグとの交信を行なう電磁結合方式、主に、250KHz以下、あるいは、13.56MHz帯の長・中波帯の電磁波を利用して非接触識別タグとの交信を行なう電磁誘導方式、リーダ/ライタ側のアンテナと非接触識別タグ間で、2.45GHz帯のマイクロ波によりデータ交信を行なうマイクロ波方式、光の発生源としてLEDを、受光器としてはフォトトランジスタ等を配置し、光の空間伝送を利用して非接触識別タグとの交信を行なう光方式の4つがある。
【0015】
また、アクセス方式は、主に、シングルアクセスモード、FIFO(First In First
Out)アクセスモード、マルチアクセスモード、セレクティブアクセスモードの4つがある。
シングルアクセスモードは、アンテナ交信領域内に存在する非接触識別タグは1個であり、複数の非接触識別タグがアンテナの交信領域内にあると交信エラ−となり、交信できなくなる。
【0016】
FIFOアクセスモードは、アンテナの交信領域内に順番に入ってくる非接触識別タグと順番に交信することができる。交信を終了した非接触識別タグにはアクセス禁止処理を行なうので、交信終了したタグがアンテナの交信領域内に複数存在しても、新たなタグが1個だけアンテナの交信領域内に入ってくれば交信ができる。同時に非接触識別タグが交信領域内にはいると、交信エラーとなり交信できなくなる。アクセス禁止された非接触識別タグは、交信領域外にでると再び交信が可能となる。
【0017】
マルチアクセスモードは、アンテナの交信領域内に複数の非接触識別タグが存在しても、全ての非接触識別タグと交信できる。
セレクティブアクセスモードは、交信領域内にある複数の非接触識別タグのうち、特定の非接触識別タグと交信ができるもので、交信領域内の非接触識別タグに番号を割り当てるコマンドと、割り当てた番号をもとに、特定の非接触識別タグとの交信を行なうコマンドで実現される。
【0018】
非接触識別タグ1の具体的構成は、絶縁基板2と、これに形成された共振回路を構成するアンテナコイル3及び平行平板コンデンサ4と、アンテナコイル3に接続され外部のリーダライタからの電磁誘導によって電力が供給されると共に、読み書き装置としてのリーダライタとの間で情報の伝達を行うICチップ5とで構成されている。
絶縁基板2は公知のガラス繊維入りエポキシ樹脂などで形成されており、表裏面に銅箔で所要のパターンが公知のエッチング法などにより形成されている。
【0019】
アンテナコイル3は絶縁基板2の表面上における外周側に絶縁基板2の各辺に沿う方形螺旋状パターン3aが形成され、この方形螺旋状パターン3aの内周端に内周端ランド3bが形成され、外周端に外周端ランド3cが形成されている。
ここで、方形螺旋状パターン3aは約3ターン程度形成されている。
ICチップ5はアンテナコイル3の内周端ランド3bと、外周端ランド3cが二つの電気的に接続されたビアホール3e、3fさらにアンテナコイル3を絶縁基板2の裏面上で跨ぐ導電パターン3dとを介して導通された表面上のランド3gとに、例えば公知のCOB(Chip On Board)などの方法で実装されている。
【0020】
平行平板コンデンサ4は方形螺旋状のアンテナコイル3の内側に形成された基準特性部4Aと特性増加調整部4Bとで構成されている。
基準特性部4Aは絶縁基板2の表面側に形成された所定面積の表面電極Paと絶縁基板2の裏面側に形成されたアンテナコイル3の内周側に形成された共通電極Pbとでコンデンサが形成されている。
【0021】
特性増加調整部4Bは予め複数、例えば7個の同一面積で互いに絶縁されて形成された選択電極P1〜P7を有し、これら選択電極P1〜P7のうち選択された所要数の選択電極が、各電極間及び基準特性部4Aの表面電極Paとこれに隣接する選択電極P1との間をインクジェット方式によって塗布される導電ペーストを焼成して形成される導電体6によって電気的に接続される。これらの選択電極P1〜P7はインクジェット方式の走査方向例えば絶縁基板2の外周に沿う方向に並列配置されている。
【0022】
導電体6は、例えば、公知の熱硬化型あるいは光硬化型の導電ペーストをスクリーン印刷や定量吐出装置などで塗布して形成することができるが、例えば独立分散銀ナノ粒子を原料とする金属微粒子分散液などの導電性液体を、インクジェット方式で微少液滴を飛翔させて形成するのが、より作業性の良い調整や合わせ込み精度の高い調整が可能となる。
なお、独立分散銀ナノ粒子を原料とする金属微粒子分散液などの導電性液体は、室温付近では、安定した液体状態を保ち、200℃以上(200℃〜300℃)の温度で焼成することにより単一焼結金属化する。この基準特性部4Aと特性増加調整部4Bとで外部の読み書き装置としてのリーダライタと非接触で通信可能な周波数特性における許容範囲の上限を超える容量に相当する面積のコンデンサが形成されている。
【0023】
そして、ICチップ5を装着した状態で又はその前にICチップ5の周波数特性を測定し、不足するコンデンサ容量を算出し、算出した不足コンデンサ容量に基づいて不足する電極面積を算出する。算出した電極面積に相当する選択電極数を算出し、基準特性部4Aの表面電極Paに隣接する選択電極からインクジェット方式での塗布方向に必要な選択電極を選択し、これら選択された電極間をインクジェット方式によって導電ペーストを塗布し、その後焼成して導電体6を形成し、この導電体6によって電極間を導通する。
【0024】
ICチップ5を装着した後の測定方法としては、リーダライタで周波数を変えながらICチップ5との情報伝達が可能な周波数を測定し、測定した周波数から予め設定された基準周波数範囲に収めるために必要な不足コンデンサ容量を算出し、この不足コンデンサ容量から必要とする電極面積を算出し、算出した電極面積から必要な選択電極数を算出して、前記と同様にインクジェット方式で形成される導電体6で必要な選択電極数を連結する。
ここで、アンテナコイル3と平行平板コンデンサ4とで構成される共振回路の共振周波数fは、一般に次式によって与えられる。
【0025】
f=1/(2×π×√(L×C))……(1)
【0026】
なお、式(1)中のLはアンテナコイル3のインダクタンス、Cはアンテナコイル3に接続される平行平板コンデンサ4のコンデンサ容量である。上記(1)式より、コンデンサ容量C及び又はアンテナコイルのインダクタンスLが増加すれば共振周波数fは低くなる。共振周波数fが一定ならば、コンデンサ容量Cを増加すればアンテナコイルのインダクタンスLは小さくてすむ。さらにアンテナコイルのインダクタンスLはその巻数や外形寸法に依存し、巻数が多く外形及び内径が大きいほど大きなインダクタンスLとなるが、アンテナ出力を低下させるので、インダクタンスは小さいほうが望ましい。
このように、第1の実施形態によると、前記絶縁基板2の裏面上の共通電極Pbと表面上の基準特性部4Aの表面電極Pa及び特性増加調整部4Bの各選択電極P1〜P7は、平行平板コンデンサ4とアンテナコイル3が平面から見て重ならないので、アンテナコイル3の磁場を遮る不必要なパターンの増加が抑えられている。
【0027】
また、これら選択電極は、特性増加調整部4Bに予め各選択電極P1〜P7を形成しておき、選択された電極間に導電ペーストを塗布してから焼成して導電体6を形成するので、導電ペーストの塗布量が少なくて済むと共に塗布時間を短縮して作業性の良い調整を行なうことができる。しかも、電極の選択をインクジェット方式の走査方向に行なうことにより、より効率良く導電ペーストの塗布を行なうことができる。
なお、上記第1の実施形態では特性増加調整部4Bを7個の選択電極P1〜P7で形成した場合で説明したが、これに限定されるものではなく、選択電極の構成個数や面積は、必要に応じて任意に設定可能である。
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態を図3について説明する。第2の実施形態は前述した第1の実施形態における特性増加調整部4Bの電極構成を変更したものである。
すなわち、第2の実施形態では、図3に示すように、特性増加調整部4Bが予め例えば各々面積の異なる7個の選択電極Q1〜Q7で構成され、これら選択電極Q1〜Q7が、基準特性部4Aの表面電極Paの外周部を取り囲むように配置されて、いずれも絶縁基板2の裏面上に形成された前記共通電極Pbとでコンデンサが構成されていることを除いては上記第1の実施形態例と同様の構成を有し、図1との対応部分には同一の符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0029】
この第2の実施形態では、第1の実施形態と同様にICチップ5を装着した状態で又はその前にICチップ5の周波数特性を測定し、不足するコンデンサ容量を算出し、算出した不足コンデンサ容量に基づいて不足電極面積を算出する。算出した電極面積に相当する選択電極を選択し、特性増加調整部4Bの表面電極Paと選択した選択電極間を前記実施例と同様にインクジェット方式によって導電体6を形成することにより導通される。ここで、ICチップ5を装着した後の測定方法は、第1の実施形態と同様に行なう。
【0030】
この第2の実施形態によると、特性増加調整部4Bの各選択電極Q1〜Q7の面積が異なる値に設定されているので、不足面積に正確に対応させた選択電極を選択することが可能となり、前述した第1の実施形態に比較してコンデンサ容量の微調整ができ、コンデンサ容量を高精度で調整することができる。さらに、選択電極Q1〜Q7は基準特性部4Aの表面電極Paの外周部を取り囲むように配置してあるので、選択された電極を容易に表面電極Paに導通させることができ、より作業性の良い調整を行なうことができる。
なお、上記第2の実施形態は特性増加調整部4Bを7個の選択電極Q1〜Q7で構成したが、選択電極の構成個数や各々の面積は必要に応じて任意に設定することができる。
【0031】
次に、本発明の第3の実施形態を図4について説明する。この第3の実施形態は前述した第1及び第2の実施形態における特性増加調整部4Bの電極構成を変更したものである。すなわち、第3の実施形態では、基準特性部4Aの表面電極Paに連続する特性増加調整部4Bをインクジェット方式によって導電ペーストを塗布した後、焼成して形成される調整導電体Pcと、絶縁基板2の裏面上に形成された前記共通電極Pbとで構成したことを除いては上記第1の実施形態と同様の構成を有し、図1との対応部分には同一の符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0032】
この第3の実施形態では、図8に示すように、ICチップ5を装着した状態で又はその前にICチップ5の周波数特性を測定し(ステップS1)、測定した周波数特性に基づいて不足するコンデンサ容量を算出し(ステップS2)、算出した不足コンデンサ容量に基づいて不足面積を算出する(ステップS3)。次いで算出した面積に相当する領域にインクジェット方式によって前記基準特性部4Aの表面電極Paに導通するように導電ペーストを塗布し(ステップS4)、その後焼成して形成することによって特性増加調整部4Bの調整導電体Pcを形成する。
【0033】
この第3の実施形態によれば、特性増加調整部の調整導電体Pcを不足容量に対応する面積分だけインクジェット方式で導電ペーストを塗布することで形成するので、予め設定された基準周波数に高精度で調整することができる。
また、特性増加調整部4Bに予め特性増加調整部を形成する必要がないと共に、必要最小限の特性増加調整部が形成されるので浮遊容量の発生を確実に防止することができる。
【0034】
次に、本発明の第4の実施形態を図5及び図6について説明する。ここで図5は要部平面図。図6は、図5のB−B断面図である。
第4の実施形態は前述した第1〜第3の実施形態における特性増加調整部4Bの電極構成を変更したものである。この第3の実施形態では、特性増加調整部は所要面積の金属箔7を基準特性部4Aの表面電極Paと導通するように例えば粘着テープ8で絶縁基板2に貼り付け固定され、絶縁基板2の裏面上に形成された前記共通電極Pbとでコンデンサが形成されていることを除いては上記第1の実施形態と同様の構成を有し、図1との対応部分には同一の符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0035】
ここで、金属箔7は、例えばアルミニュームなどの導電性金属の箔であり、所定の共振周波数を得るための不足容量を補う面積を有し、基準特性部4Aの表面電極Paと導通するように例えば粘着テープ8を前記金属箔7の上面に重ねて絶縁基板2に貼り付け固定され、絶縁基板2の裏面上に形成された前記共通電極Pbとでコンデンサが形成されている。
この特性増加調整部としての金属箔7は、ICチップの容量特性を測定して、不足面積を算出し、算出した不足面積に基準特性電極4Aの表面電極Paとのオーバーラップ分を付加した面積となるように加工することにより形成される。
【0036】
このように、第4の実施形態によると、前述の第1の実施形態〜第3の実施形態において、コンデンサ容量がさらに不足する場合の調整手段とすることで、より広い調整範囲を得ることが可能となり、非接触型ICタグ1を再加工あるいは廃棄するなどの無駄が排除できる。
なお、第4の実施形態では金属箔がアルミニュームを加工した場合で説明したが、材質は導電性を有していれば任意の金属箔を適用することができる。
【0037】
次に、本発明の第5の実施形態を図7について説明する。この第5の実施形態は前述した第1〜第4の実施形態におけるアンテナコイル3のアンテナ径を調整するものであって、アンテナコイル3はコイル状基準部3hとコイル状基準部3hの外周側に絶縁して形成された導体部3iとで構成され、所望とするアンテナ径に対応する前記コイル状基準部3hと導体部3iの対向位置間を選択し、この対向位置にインクジェット方式によって導電ペーストを塗布した後、焼成して導電体9を形成することによって電気的に接続されていることを除いては上記第1の実施形態と同様の構成を有し、図1との対応部分には同一の符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0038】
アンテナコイル3は、前述した第1〜第4の実施形態におけるアンテナコイルの方形螺旋状パターン3aを中途で切断した形状であり、内周端ランド3bに電気的に接続された例えば約2ターン程度のコイル状基準部3hと外周端ランド3cに電気的に接続された例えば約1ターン程度の導体部3iとが絶縁して形成されている。なお、外周端ランド3cが第2ランドに対応し、ランド3gが第1ランドに対応している。
【0039】
このコイル状基準部3hと導体部3iとの対向位置間を前述の各実施形態と同様にインクジェット方式によって塗布される導電ペーストを焼成して形成した特性増加調整部としてのコイル導電体9aで電気的に接続されている。
平行平板コンデンサ4は、絶縁基板2の裏面側の共通電極Pbと表面側の表面電極Paとで形成された基準特性部4Aと、前記裏面側の共通電極Pbと表面側の選択電極Rとで形成された特性増加調整部4Bとがインクジェット方式によって塗布される導電ペーストを焼成して形成される導電体6によって電気的に接続されている。
【0040】
この第5の実施形態の調整方法としては、ICチップ5を装着した状態で、導電プローブ等でコイル状基準部3hと前記導体部3iの任意の対向位置間を導通させて周波数を測定し、導電プローブを順次対向位置を移動しながら周波数を測定し、予め設定された基準周波数の得られるコイル状基準部3hと前記導体部3iの対向位置を求め、この求めた対向位置間にインクジェット方式によって塗布される導電ペーストを焼成して形成した特性増加調整部としてのコイル導電体9aで接続する。
【0041】
コイル導電体9aは、アンテナ径を調整するものであって、コイル状基準部3hと導体部3iの対向位置間を、例えば実線図示の位置に形成する場合にはアンテナ径が小さくなり、点線図示の符号9bで示す位置に形成することによりアンテナ径を増加することができる。
このように第5の実施形態によると、周波数を測定しながらコイル導電体9aを形成するので、予め設定された基準周波数に高精度に調整することができる。
さらに、コイル導電体9aや9bの形成によるアンテナ径調整と、基準特性部4Aと特性増加調整部4Bを導電体6の形成による平行平板コンデンサ4の容量調整は、インクジェット方式によって導電ペーストを塗布し形成することが同時にでき、作業性の良い調整と広い調整範囲を確保することができる。
【0042】
なお、上記の第5の実施形態では、コイル導電体9aや9bは、一箇所形成した場合について説明したが、所定の共振周波数を得るためにこれに限定されるものではなく一箇所以上ならば何箇所形成してもよい。また、アンテナコイル3の方形螺旋状パターン3aを、約2ターンのコイル状基準部3hと約1ターンの導体部3iで形成する場合で説明したがターン数やコイル状基準部3hと導体部3iの絶縁位置はこれらに限定されるものではない。
さらに、コイル導電体9aや9bは、インクジェット方式によって塗布される導電ペーストを焼成して形成した場合で説明したが、第4の実施形態に示した金属箔で形成する場合であってもよい。
【0043】
また、上記の第1〜第3及び第5の各実施形態においては、インクジェット方式で導電ペーストを塗布した後に焼成して導電体やコイル導電体を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、熱硬化型又は光硬化型の導電ペーストをスクリーン印刷や定量吐出装置で塗布した後に硬化させるようにしても良い。この定量吐出装置を使用する場合には非接触識別タグの周波数特性を測定しながら塗布量を調整することができる。
また、上記第1〜第5の実施形態においては、本発明を非接触識別タグに適用した場合で説明したが、これに限定されるものではなく、他の非接触型ICカード等の非接触ICモジュールに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す非接触型ICモジュールの要部平面図。
【図2】第1図のA−A方向の断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す非接触型ICモジュールの要部平面図。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す非接触型ICモジュールの要部平面図。
【図5】本発明の第4の実施形態を示す非接触型ICモジュールの要部平面図。
【図6】第5図のB−B方向の断面図。
【図7】本発明の第5の実施形態を示す非接触型ICモジュールの要部平面図。
【図8】本発明に係る非接触型ICモジュールの周波数特性調整方法示すフローチャート。
【符号の説明】
【0045】
1.非接触識別タグ、2.絶縁基板、3.アンテナコイル、3a.方形螺旋状パターン、3b.内周端ランド、3c.外周端ランド、3h.コイル状基準部、3i.導体部4.平行平板コンデンサ、4A.基準特性部、4B.特性増加調整部、Pa.表面電極、Pb.共通電極、Pc.調整導電体、P1〜P7.選択電極、Q1〜Q7.選択電極、5.ICチップ、6.導電体、7.金属箔、8.粘着テープ、9a.9b.コイル導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の面に形成されたアンテナ部と、
前記一方の面に形成されたICチップと、
前記基板の他方の面に形成された共通電極と、を有し、
前記アンテナ部は、
螺旋状パターンのアンテナコイルと、
前記アンテナコイルの外周に沿って螺旋状に位置する導体部と、を備えることを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触型ICモジュールにおいて、
前記アンテナコイルの内周側に第1ランドが形成され、
前記ICチップは、前記アンテナコイルの内周側に位置し、且つ、前記第1ランドと前記アンテナコイルの一部とに電気的に接続されていることを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の非接触型ICモジュールにおいて、
前記第1ランドは、前記共通電極と電気的に接続されていることを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項4】
請求項2または3に記載の非接触型ICモジュールにおいて、
前記導体部の一端に第2ランドが形成され、
前記基板の他方の面に導電パターンが形成され、
前記第1ランドと前記第2ランドとは、前記導電パターンを介して電気的に接続されていることを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1項に記載の非接触型ICモジュールにおいて、
前記導体部の一部と前記アンテナコイルの一部とを電気的に接続する導電体をさらに有することを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1項に記載の非接触型ICモジュールにおいて、
前記一方の面に形成された基準特性部を備え、
前記基準特性部は、前記アンテナコイルの内周側の、前記共通電極と対向する位置に形成されることを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1項に記載の非接触型ICモジュールにおいて、
前記一方の面に形成された特性増加調整部を備え、
前記特性増加調整部は、前記アンテナコイルの内周側の、前記共通電極と対向する位置に形成されることを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の非接触型ICモジュールにおいて、
前記特性増加調整部は、複数の電極部を備えることを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項9】
請求項7に記載の非接触型ICモジュールにおいて、
前記特性増加調整部は、面積の異なる複数の電極部を備えることを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項10】
請求項6または7に記載の非接触型ICモジュールにおいて、
前記特性増加調整部は、前記複数の電極部を前記アンテナ部に接続する導電体を備えることを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項11】
請求項1ないし11の何れか1項に記載の非接触型モジュールにおいて、
前記導体部は、前記アンテナ部のアンテナ径を調整するものであることを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか1項に記載の非接触型モジュールにおいて、
前記ICチップは、外部からの電磁誘導によって電力が供給されることを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項13】
請求項1ないし12の何れか1項に記載の非接触型モジュールにおいて、
前記ICチップは、外部との情報の伝達を行うことを特徴とする非接触型ICモジュール。
【請求項14】
基板上に、螺旋状のアンテナコイル及び前記アンテナコイルの周囲に螺旋状の導体部を形成する工程と、
前記アンテナコイルの一部に接触するようにICチップを配置する工程と、
前記ICチップの周波数を測定する工程と、
前記ICチップの周波数に応じて前記アンテナコイルの一部と前記導体部の一部とを電気的に接続する工程と、を含むことを特徴とする非接触型ICモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−310898(P2007−310898A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166382(P2007−166382)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【分割の表示】特願2003−72569(P2003−72569)の分割
【原出願日】平成15年3月17日(2003.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】