説明

非接触通信担体

【課題】長寿命にして秘密情報のセキュリティ性に優れた非接触通信担体を提供する。
【解決手段】非接触通信担体1Aを、基体2と、当該基体2上に搭載されたIC素子3と、当該IC素子3の入出力端子3a〜3dに接続された第1及び第2のタグ側アンテナ4,5とから構成し、IC素子3には、第1のタグ側アンテナ4が接続された第1の通信回路6と、第2のタグ側アンテナ5が接続された第2の通信回路7と、メモリ領域8と、メモリ領域8を複数の小領域8a,8bに分割して設定する領域切替手段9とを備える。タグ側アンテナ4,5としては、互いに通信可能なキャリア周波数が異なるアンテナを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICタグなどと称される非接触通信担体に係り、特に、情報の盗用や改竄に対するセキュリティ性能の改善手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC素子と当該IC素子の入出力端子に接続されたアンテナとを備えた無線ICタグを用いて質問器との間で非接触にて情報の通信を行う技術(RFID;Radio Frequency Identification)が、例えば定期券機能とプリペイドカード機能とを有する「Suica」などとして実用化されている。
【0003】
RFIDは、無線ICタグと質問器との間の情報のやり取りを無線で行うので、アクセス方法が適合する質問器を用いれば、質問器を無線ICタグの通信距離内に近づけるだけで無線ICタグから無断で情報を得ることが可能であり、質問器が不正使用された場合のセキュリティ性に問題がある。例えば、不正使用者によって質問器がバスや電車などの乗物内に持ち込まれ、乗客に近づけられると、それだけで「Suica」を所持している乗客の定期券情報とプリペイドカード情報とが盗まれることになる。
【0004】
従来より、かかる不都合を解決するための手段として、外部装置で実行するアプリケーションとの通信を許容する通信インタフェースと書き換え可能な記憶手段とを備えたIC記憶媒体であって、記憶手段を、複数の異なるアプリケーション用に区分した複数の固有領域と、各アプリケーションがアクセス可能な共通領域とで構成し、少なくとも固有領域のそれぞれに、上記アプリケーションから受信したキーと一致した場合に通信処理を許容するアクセスキーを設定したものが提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。かかる手段によれば、アクセスキーにより各固有領域に記憶された情報が保護されるので、厳重な管理が必要な情報を固有領域に記憶することにより、情報の保護が図られる。
【0005】
また、他の手段として、ユーザ本人の本人性を保証する本人認証情報とユーザ本人の個人情報への他者のアクセスを承諾する本人承諾情報を表す承認情報を生成し、承認情報を高セキュリティの下で一定期間保持する。そして、他者からユーザ本人の個人情報へのアクセスが要求された場合に、承認情報の有効期間内に、承認情報によって指定された端末からのユーザ本人の個人情報へのアクセスを許可するというものも従来より提案されている(例えば、非特許文献2参照。)。かかる手段によれば、承認情報を高セキュリティの下で一定時間のみ保持するので、個人情報の高セキュリティを保証することができる。
【0006】
さらに、他の手段として、外部装置とそれぞれ異なる方式で通信を行う複数の通信手段と、これら複数の通信手段のうちのいずれの通信手段が外部装置を通信を行うかを検知する通信検知手段と、情報を記憶する記憶手段と、通信検知手段が検知した内容に基づいて外部装置から受信した要求に応じて行う処理における記憶手段へのアクセスを制限するアクセス制限手段とを備えたICカードも従来より提案されている(例えば、非特許文献3参照。)。かかる手段によれば、例えば非接触式のリーダライタを使用してICカードとの通信を行う場合には、記憶手段の接触通信用領域に記憶されている情報へのアクセスを禁止することができるので、非接触式のリーダライタを用いた第三者による不正なアクセスを防止することができる。
【特許文献1】特開2004−295176号公報
【特許文献2】特開2004−38270号公報
【特許文献3】特開2004−206542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に記載の技術のように、ソフトウエア的な手段で個人情報などの秘密情報のセキュリティを高める方法は、アクセスキーや承認情報などのセキュリティを保証する情報が漏洩した場合に秘密情報の盗用や改竄を防止することができない。また、特許文献3に記載の技術のように、ICカードに接触端子を備えると、接触端子の汚損や破損による信頼性や寿命の低下が問題になる。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の不備を解消するためになされたものであり、その目的は、長寿命にして秘密情報のセキュリティ性に優れた非接触通信担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するため、第1に、IC素子と当該IC素子の入出力端子に接続されたタグ側アンテナとを備え、端末側アンテナが備えられた質問器との間で非接触で情報の通信を行う非接触通信担体において、前記タグ側アンテナと前記端末側アンテナとの間の通信距離に応じて、アクセス可能な前記IC素子のメモリ領域が異なるという構成にした。
【0010】
乗物内における情報の盗難や改竄を考慮した場合、タグ側アンテナと端末側アンテナとの間の通信可能な距離が小さく設定されているほど、真正なユーザが所有する非接触通信担体への不正使用者の使用に係る質問器の接近の機会を減らすことができ、情報の盗難や改竄を未然に防止しやすくなる。しかしながら、非接触通信担体は、複数のアプリケーションに対応できるように構成されるのが普通であり、例えば1枚の非接触通信担体に定期券情報とプリペイドカード情報と入場許可用の認証情報とが記憶されている場合において、タグ側アンテナと端末側アンテナとの間の通信可能な距離が小さく設定されていると、入場の際にもいちいち非接触通信担体を部屋外に備えられた質問器に近接しなくてはならないので、入場許可システムの使い勝手が悪いものになる。そこで、タグ側アンテナと端末側アンテナとの間の通信距離に応じてアクセス可能なIC素子のメモリ領域が異なるようにすると、例えば定期券情報やプリペイドカード情報などの高いセキュリティレベルによる保護が必要な情報については近距離で通信された場合のみアクセス可能とし、例えば入場許可用の認証情報などのより低いセキュリティレベルでの保護で足りる情報については遠距離で通信された場合にもアクセスできるようにすると、必要な情報のセキュリティ性を高めつつ非接触通信担体の使い勝手も良好なものにすることができる。
【0011】
また、本発明は、前記の課題を解決するため、第2に、IC素子と当該IC素子の入出力端子に接続されたタグ側アンテナとを備え、端末側アンテナが備えられた質問器との間で非接触で情報の通信を行う非接触通信担体において、前記タグ側アンテナと前記端末側アンテナとの間の通信距離に応じて、前記IC素子のメモリ領域に対する情報のリード・ライト制御が、情報のリードのみを許容する制御又は情報のリード及びライトの双方を許容する制御に切り換えられるという構成にした。
【0012】
このように、タグ側アンテナと端末側アンテナとの間の通信距離に応じてIC素子のメモリ領域に対する情報のリード・ライト制御を情報のリードのみ又はリード及びライトの双方を許容する制御に切り換えた場合にも、アクセス可能なIC素子のメモリ領域を異ならせた場合と同様に、必要な情報のセキュリティ性能と非接触通信担体の使い勝手を両立させることができる。
【0013】
また、本発明は、前記第2の非接触通信担体において、前記IC素子のメモリ領域に対する情報のリード・ライト制御が情報のリードのみを許容する制御に切り換えられている場合とリード及びライトの双方を許容する制御に切り換えられている場合とで、アクセス可能な前記IC素子のメモリ領域が異なるという構成にした。
【0014】
このように、タグ側アンテナと端末側アンテナとの間の通信距離に応じてIC素子のメモリ領域に対する情報のリード・ライト制御を切り換えると共にアクセス可能なIC素子のメモリ領域を異ならせると、2段階のセキュリティ管理を行うことができるので、情報のセキュリティ性をより高めることができる。
【0015】
また、本発明は、前記第1又は第2の非接触通信担体において、前記タグ側アンテナとして、通信可能なキャリア周波数が異なる複数のアンテナを備えるという構成にした。
【0016】
キャリア周波数が低い無線信号は通信距離が短く、キャリア周波数が高い無線信号は通信距離が長くなる。よって、非接触通信担体に通信可能なキャリア周波数が異なる複数のアンテナを備えると、通信距離に応じたアクセス可能なメモリ領域の使い分け及びリード・ライト制御の切り換えを自動的に行うことができる。
【0017】
また、本発明は、前記第1又は第2の非接触通信担体において、前記IC素子として、当該IC素子上に絶縁層を介して前記タグ側アンテナが形成されたコイルオンチップを用いるという構成にした。
【0018】
コイルオンチップに形成可能なアンテナのサイズは必然的に小さなものとなるので、コイルオンチップを搭載してなる非接触通信担体が通信可能な質問器との距離は小さくなる。よって、真正なユーザが所有する非接触通信担体への不正使用者の使用に係る質問器の接近の機会を減らすことができ、非接触通信担体のセキュリティ性能を高めることができる。
【0019】
また、本発明は、前記第1又は第2の非接触通信担体において、前記タグ側アンテナとして単一のアンテナを備えると共に、前記質問器から前記端末側アンテナ及び前記タグ側アンテナを介して送信された情報の受信エネルギの大きさを検出するモニタ手段と、当該モニタ手段によって検出された前記受信エネルギの大きさに応じてアクセス可能な前記IC素子のメモリ領域を切り替える切替手段とを備えるという構成にした。
【0020】
通信距離が短い場合にはアンテナ両端の受信エネルギ(具体的には、電圧又は消費電力)が大きくなり、通信距離が長い場合にはアンテナ両端の受信エネルギが小さくなる。よって、アンテナ両端の受信エネルギの大きさをモニタし、検出された受信エネルギの大きさに応じてアクセス可能なIC素子のメモリ領域を切り替えると、通信距離に応じたアクセス可能なメモリ領域の使い分けを自動的に行うことができる。
【0021】
また、本発明は、前記第1又は第2の非接触通信担体において、前記タグ側アンテナとして単一のアンテナを備えると共に、前記質問器から前記端末側アンテナ及び前記タグ側アンテナを介して送信された情報の受信エネルギの大きさを検出するモニタ手段と、当該モニタ手段によって検出された前記受信エネルギの大きさに応じて前記IC素子のメモリ領域に対する情報のリード・ライト制御を、情報のリードのみを許容する制御又は情報のリード及びライトの双方を許容する制御に切り替える切替手段とを備えるという構成にした。
【0022】
前述の通り、通信距離が短い場合にはアンテナ両端の受信エネルギが大きくなり、通信距離が長い場合にはアンテナ両端の受信エネルギが小さくなるので、アンテナ両端の受信エネルギの大きさをモニタし、検出された受信エネルギの大きさに応じてIC素子のメモリ領域に対する情報のリード・ライト制御を切り替えると、通信距離に応じたリード・ライト制御の切り換えを自動的に行うことができる。
【0023】
また、本発明は、前記第1又は第2の非接触通信担体において、前記IC素子のメモリ領域を任意の記録容量を有する複数の小領域に分割して設定する領域切替手段を備えるという構成にした。
【0024】
メモリ領域の分割数及び分割された各小領域の記録容量の比は、アプリケーションによって異なる。したがって、非接触通信担体にIC素子のメモリ領域を任意の記録容量を有する複数の小領域に分割して設定する領域切替手段を備えると、各種のアプリケーションに適用可能な各種の非接触通信担体の作製を容易に行うことができる。
【0025】
また、本発明は、前記各構成の非接触通信担体において、前記タグ側アンテナと前記端末側アンテナとの間で通信される情報のキャリア周波数が、13.56MHz、868MHz、915MHz、950MHz、2.4GHz、5.8GHzのいずれかであるという構成にした。
【0026】
従来より非接触通信担体用の周波数帯域としては13.56MHzが割り振られていたが、近年、868MHz〜950MHzが非接触通信担体用に割り振られ、さらに近い将来には、2.4GHz〜5.8GHzも非接触通信担体用に割り振られる見込みになっている。したがって、これらの各周波数帯域を利用することにより、各種のアプリケーションに適用可能な非接触通信担体を作製できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の非接触通信担体は、IC素子と当該IC素子の入出力端子に接続されたタグ側アンテナとを備え、端末側アンテナが備えられた質問器との間で非接触で情報の通信を行う非接触通信担体において、タグ側アンテナと端末側アンテナとの間の通信距離に応じて、アクセス可能なIC素子のメモリ領域を異ならせるか、或いは、IC素子のメモリ領域に対する情報のリード・ライト制御を情報のリードのみを許容する制御又は情報のリード及びライトの双方を許容する制御に切り換えるので、必要な情報のセキュリティ性を高めつつ非接触通信担体の使い勝手も良好なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
〈第1実施形態〉
まず、本発明に係る非接触通信担体の第1例を図1及び図2に基づいて説明する。図1は第1実施形態に係る非接触通信担体の機能ブロック図、図2は第1実施形態に係る非接触通信担体に備えられるコイルオンチップの平面図である。
【0029】
図1に示すように、本例の非接触通信担体1Aは、基体2と、当該基体2上に搭載されたIC素子3と、当該IC素子3の入出力端子3a〜3dに接続された第1及び第2のタグ側アンテナ4,5とから構成されている。
【0030】
基体2は、所要の絶縁性材料をもって構成され、非接触通信担体1Aの使用環境に応じてカード状、コイン状又はディスク状などの所望の形状に形成される。
【0031】
IC素子3には、第1のタグ側アンテナ4が接続された第1の通信回路6と、第2のタグ側アンテナ5が接続された第2の通信回路7と、メモリ領域8と、メモリ領域8を複数の小領域8a,8bに分割して設定する領域切替手段9とが備えられている。
【0032】
第1及び第2のタグ側アンテナ4,5は、図2に示すように、IC素子3の表面に図示しない絶縁膜を介して形成されており、両端部がそれぞれIC素子3の入出力端子3a,3b又は3c,3dに接続されている。第1のタグ側アンテナ4を含む第1の通信回路6は、キャリア周波数が13.56MHzの信号を0〜2.5mmの通信距離で受信するように構成され、第2のタグ側アンテナ5を含む第2の通信回路7は、キャリア周波数が950MHzの信号を0〜22mmの通信距離で送受信するように構成されている。
【0033】
メモリ領域8は、情報の読み出しと書き込みとが可能なRAMをもって構成される。領域切替手段9によって分割された第1の小領域8aには、例えば定期券情報やプリペイドカード情報などの高いセキュリティレベルで保護すべき情報が記憶され、第2の小領域8bには、入場許可用の認証情報などのより低いセキュリティレベルでの保護で足りる情報が記憶される。図1に示すように、第1の通信回路6は、第1及び第2の小領域8a,8bの双方にアクセスできるように配線され、第2の通信回路7は、第2の小領域8bにのみアクセスできるように配線される。
【0034】
領域切替手段9は、非接触通信担体1Aの製造時に、当該非接触通信担体1Aの使用環境に応じた適宜の比率で各小領域8a,8bの記憶容量を配分する。なお、図1の例では、メモリ領域8が2つの小領域8a,8bに分割されているが、メモリ領域8の分割数はこれに限定されるものではなく、3つ以上の数とすることもできる。
【0035】
本例のIC素子3は、多数の第1及び第2のタグ側アンテナ4,5、第1及び第2の通信回路6,7、メモリ領域8、領域切替手段9及び必要な配線が一括形成されたウエハより切り出される。
【0036】
本例の非接触通信担体1Aは、図1に示すように、キャリア周波数が13.56MHzの信号を0〜2.5mmの通信距離で送信する第1の端末側アンテナ101と、キャリア周波数が950MHzの信号を0〜22mmの通信距離で送受信する第2の端末側アンテナ102とを備えた質問器100との間で情報のやり取りを行う。そして、非接触通信担体1Aと質問器100との距離が0〜2.5mmの範囲にある状態で、第1の端末側アンテナ101からキャリア周波数が13.56MHzの信号が送信された場合には、第1及び第2の小領域8a,8bへのアクセスを可能とし、第1及び第2の小領域8a,8bに記憶された情報の読み出しと、第1及び第2の小領域8a,8bへの情報の記憶とを行う。一方、非接触通信担体1Aと質問器100との距離が0〜22mmの範囲にある状態で、第2の端末側アンテナ102からキャリア周波数が950MHzの信号が送信された場合には、第2の小領域8bへのアクセスのみを可能とし、第2の小領域8bに記憶された情報の読み出しと、第2の小領域8bへの情報の記憶とを行う。
【0037】
このように、本例の非接触通信担体1Aは、質問器100との距離が0〜2.5mmの範囲になった場合にのみ、高いセキュリティレベルで保護すべき情報が記憶された第1の小領域8aへのアクセスを可能としたので、真正なユーザが所有する非接触通信担体1Aへの不正使用者の使用に係る質問器の接近の機会をほとんどなくすことができ、乗物内などにおける情報の盗難や改竄を有効に防止することができる。また、より低いセキュリティレベルでの保護で足りる情報については、0〜22mmの距離で通信できるようにしたので、入場許可等に用いる際の利便性も確保される。さらに、本例の非接触通信担体1Aは、IC素子3として表面に第1及び第2のタグ側アンテナ4,5が形成されたコイルオンチップを用いたので、製造が容易で安価に製造できると共に、その構成上、タグ側アンテナ4,5の断線や接触端子の破損又は汚損を生じるということがあり得ないので、信頼性に優れる。加えて、メモリ領域8を複数の小領域8a,8bに分割して設定する領域切替手段9を備えたので、小領域8a,8bに記憶すべき情報の情報量が異なる各種のアプリケーションに適用可能な各種の非接触通信担体を容易かつ安価に製造することができる。
【0038】
なお、第1実施形態に係る非接触通信担体1Aは、2つのタグ側アンテナ4,5を備えると共にメモリ領域8を2つの小領域8a,8bに分割したが、タグ側アンテナの設定数を3つ以上とし、メモリ領域8の分割数を3つ以上とすることもできる。
【0039】
また、第1実施形態に係る非接触通信担体1Aは、キャリア周波数が13.56MHzの信号を通信可能な第1のタグ側アンテナ4とキャリア周波数が950MHzの信号を通信可能な第2のタグ側アンテナ5とを備えたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、キャリア周波数が13.56MHz、868MHz、915MHz、950MHz、2.4GHz又は5.8GHzの信号を通信可能な適宜のタグ側アンテナを組み合わせて用いることができる。
【0040】
さらに、第1実施形態に係る非接触通信担体1Aは、タグ側アンテナ4,5が表面に形成されたコイルオンチップを用いたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、巻線コイル等の基体2上に設定される他のアンテナを用いることもできる。アンテナを基体2上に設定すると、アンテナサイズを大型化できるので、質問器100との間の通信距離を延長することができる。また、IC素子3上に形成されたアンテナと基体2上に設定された他のアンテナとを組み合わせて用いることも可能である。
【0041】
〈第2実施形態〉
次に、本発明に係る非接触通信担体の第2例を図3及び図4に基づいて説明する。図3は第2実施形態に係る非接触通信担体の機能ブロック図、図4は第2実施形態に係る非接触通信担体に備えられるコイルオンチップの平面図である。
【0042】
図3に示すように、本例の非接触通信担体1Bは、IC素子3として、タグ側アンテナ11が接続された通信回路12と、タグ側アンテナ11の両端の電圧を検出する電圧モニタ回路13と、メモリ領域8と、メモリ領域8を複数の小領域8a,8bに分割して設定する領域切替手段9と、メモリ領域8からの情報の読み出しを制御するリード回路14と、メモリ領域8への情報の書き込みを制御するライト回路15と、電圧モニタ回路13の検出電圧値に応じて通信回路12とライト回路15とを接続する回路を断続する第1の切替手段16と、電圧モニタ回路13の検出電圧値に応じてリード回路14と第1の小領域8aとを接続する回路を断続する第2の切替手段17とを有するものを備えたことを特徴とする。
【0043】
タグ側アンテナ11は、図4に示すように、IC素子3の表面に図示しない絶縁膜を介して形成されており、両端部がそれぞれIC素子3の入出力端子3e,3fに接続されている。このタグ側アンテナ11を含む通信回路12は、キャリア周波数が950MHzの信号を送受信するように構成されており、質問器200から950MHzの信号を0〜2.5mmの通信距離で受信した場合にはタグ側アンテナ11の両端部に6V以上の電圧が発生し、質問器200から950MHzの信号を2.5mm以上22mm以下の通信距離で受信した場合にはタグ側アンテナ11の両端部に6V以下の電圧が発生するように構成されている。
【0044】
第1の切替手段16は、電圧モニタ回路13の検出電圧値が6V以上であったとき、通信回路12とライト回路15との接続回路を接続状態に切り替え、リード回路14によるメモリ領域8からの情報の読み出しとライト回路15によるメモリ領域8への情報の書き込みを可能にする。また、電圧モニタ回路13の検出電圧値が6V以下であったときには、通信回路12とライト回路15との接続回路を切断状態に切り替え、リード回路14によるメモリ領域8からの情報の読み出しのみを可能にする。
【0045】
一方、第2の切替手段17は、電圧モニタ回路13の検出電圧値が6V以上であったとき、リード回路14と第1の小領域8aとの接続回路を接続状態に切り替え、第1及び第2の小領域8a,8bからの情報の読み出しを可能にする。また、電圧モニタ回路13の検出電圧値が6V以下であったときには、リード回路14と第1の小領域8aとの接続回路を切断状態に切り替え、第2の小領域8bからの情報の読み出しのみを可能にする。
【0046】
その他の部分については、第1実施形態に係る非接触通信担体1Aと同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する
本例の非接触通信担体1Bは、図3に示すように、キャリア周波数が950MHzの信号を0〜22mmの通信距離で送信する端末側アンテナ201を備えた質問器200との間で情報のやり取りを行う。そして、非接触通信担体1Bと質問器200との距離が0〜2.5mmの範囲にある状態では、電圧モニタ回路13の検出電圧値が6V以上となり、第1の切替手段16が通信回路12とライト回路15との接続回路を接続する側に切り替えられると共に第2の切替手段17がリード回路14と第1の小領域8aとの接続回路を接続する側に切り替えられるので、第1及び第2の小領域8a,8bからの情報の読み出し及び第1及び第2の小領域8a,8bへの情報の書き込みが可能になる。一方、非接触通信担体1Bと質問器200との距離が2.5以上22mm以下の範囲にある状態では、電圧モニタ回路13の検出電圧値が6V以下となり、第1の切替手段16が通信回路12とライト回路15との接続回路を切断する側に切り替えられると共に第2の切替手段17がリード回路14と第1の小領域8aとの接続回路を切断する側に切り替えられるので、第2の小領域8bからの情報の読み出しのみが可能になる。
【0047】
本例の非接触通信担体1Bによっても、第1実施形態に係る非接触通信担体1Aと同様の効果が得られる。
【0048】
なお、第2実施形態に係る非接触通信担体1Bは、電圧モニタ回路13によりタグ側アンテナ11の両端の電圧を2段階にモニタすると共にメモリ領域8を2つの小領域8a,8bに分割したが、電圧モニタ回路13によって検出可能な電圧値を3段階以上とし、メモリ領域8の分割数を3つ以上とすることもできる。
【0049】
また、第2実施形態に係る非接触通信担体1Bは、キャリア周波数が950MHzの信号を通信可能なタグ側アンテナ11を備えたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、キャリア周波数が13.56MHz、868MHz、915MHz、2.4GHz又は5.8GHzの信号を通信可能なタグ側アンテナを用いることもできる。
【0050】
さらに、第2実施形態に係る非接触通信担体1Bは、タグ側アンテナ11が表面に形成されたコイルオンチップを用いたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、巻線コイル等の基体2上に設定される他のアンテナを用いることもできる。アンテナを基体2上に設定すると、アンテナサイズを大型化できるので、質問器100との間の通信距離を延長することができる。
【0051】
その他、第1実施形態に係る非接触通信担体1Aにおいては、通信可能なキャリア周波数即ち通信距離が異なる2つのタグ側アンテナ4,5を備え、質問器100からの送信信号を受信したタグ側アンテナに応じてアクセス可能なメモリ領域8の小領域を切り替えるようにしたが、第2実施形態に係る非接触通信担体1Bと同様に、1つのタグ側アンテナと、当該タグ側アンテナの両端の電圧を検出する電圧モニタ回路と、当該電圧モニタ回路の検出電圧値に応じてアクセス可能なメモリ領域8の小領域を小領域8bのみ、又は小領域8a,8bの双方に切り替えるようにすることもできる。図5に本例に係る非接触通信担体1Cの構成例を示す。
【0052】
また、第2実施形態に係る非接触通信担体1Bにおいては、1つのタグ側アンテナ11と、当該タグ側アンテナ11の両端の電圧を検出する電圧モニタ回路13と、当該電圧モニタ回路13の検出電圧値に応じて通信回路12とライト回路15との接続回路を断続する第1の切替手段16とを備え、質問器200と非接触通信担体1Bとの通信距離に応じてライト回路15の駆動を制限したが、第1実施形態に係る非接触通信担体1Aと同様に、通信可能なキャリア周波数即ち通信距離が異なる2つのタグ側アンテナを備え、質問器100からの送信信号を受信したタグ側アンテナに応じてライト回路15の駆動を制限することもできる。図6に本例に係る非接触通信担体1Dの構成例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態に係る非接触通信担体の機能ブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る非接触通信担体に備えられるコイルオンチップの平面図である。
【図3】第2実施形態に係る非接触通信担体の機能ブロック図である。
【図4】第2実施形態に係る非接触通信担体に備えられるコイルオンチップの平面図である。
【図5】第3実施形態に係る非接触通信担体の機能ブロック図である。
【図6】第4実施形態に係る非接触通信担体の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1A,1B,1C,1D 非接触通信担体
2 基体
3 IC素子
3a〜3f 入出力端子
4,5,11 タグ側アンテナ
6,7,12 通信回路
8 メモリ領域
9 領域切替手段
13 電圧モニタ回路
14 リード回路
15 ライト回路
16,17 切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IC素子と当該IC素子の入出力端子に接続されたタグ側アンテナとを備え、端末側アンテナが備えられた質問器との間で非接触で情報の通信を行う非接触通信担体において、前記タグ側アンテナと前記端末側アンテナとの間の通信距離に応じて、アクセス可能な前記IC素子のメモリ領域が異なることを特徴とする非接触通信担体。
【請求項2】
IC素子と当該IC素子の入出力端子に接続されたタグ側アンテナとを備え、端末側アンテナが備えられた質問器との間で非接触で情報の通信を行う非接触通信担体において、前記タグ側アンテナと前記端末側アンテナとの間の通信距離に応じて、前記IC素子のメモリ領域に対する情報のリード・ライト制御が、情報のリードのみを許容する制御又は情報のリード及びライトの双方を許容する制御に切り換えられることを特徴とする非接触通信担体。
【請求項3】
前記IC素子のメモリ領域に対する情報のリード・ライト制御が情報のリードのみを許容する制御に切り換えられている場合とリード及びライトの双方を許容する制御に切り換えられている場合とで、アクセス可能な前記IC素子のメモリ領域が異なることを特徴とする請求項2に記載の非接触通信担体。
【請求項4】
前記タグ側アンテナとして、通信可能なキャリア周波数が異なる複数のアンテナを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非接触通信担体。
【請求項5】
前記IC素子として、当該IC素子上に絶縁層を介して前記タグ側アンテナが形成されたコイルオンチップを用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非接触通信担体。
【請求項6】
前記タグ側アンテナとして単一のアンテナを備えると共に、前記質問器から前記端末側アンテナ及び前記タグ側アンテナを介して送信された情報の受信エネルギの大きさを検出するモニタ手段と、当該モニタ手段によって検出された前記受信エネルギの大きさに応じてアクセス可能な前記IC素子のメモリ領域を切り替える切替手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の非接触通信担体。
【請求項7】
前記タグ側アンテナとして単一のアンテナを備えると共に、前記質問器から前記端末側アンテナ及び前記タグ側アンテナを介して送信された情報の受信エネルギの大きさを検出するモニタ手段と、当該モニタ手段によって検出された前記受信エネルギの大きさに応じて前記IC素子のメモリ領域に対する情報のリード・ライト制御を、情報のリードのみを許容する制御又は情報のリード及びライトの双方を許容する制御に切り替える切替手段とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の非接触通信担体。
【請求項8】
前記IC素子のメモリ領域を任意の記録容量を有する複数の小領域に分割して設定する領域切替手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の非接触通信担体。
【請求項9】
前記タグ側アンテナと前記端末側アンテナとの間で通信される情報のキャリア周波数が、13.56MHz、868MHz、915MHz、950MHz、2.4GHz、5.8GHzのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の非接触通信担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−350541(P2006−350541A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173921(P2005−173921)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.コイル オン チップ
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】