非接触通信装置およびアンテナ装置
【課題】別途の制御ケーブルを接続しなくとも、伝送ケーブル1本によって通信と共にアンテナ部の制御も可能とする非接触通信装置およびアンテナ装置を提供する。
【解決手段】指向方向を変更できるアンテナ部を備えて該アンテナ部により非接触通信を行う指向性可変アンテナと、該指向性可変アンテナに伝送ケーブルで接続されて該伝送ケーブルを介して通信用信号を送受信して通信制御を行うリーダライタとを備えた非接触通信装置であって、前記リーダライタに、前記アンテナ部の指向方向を切り替える指向方向切替用信号を前記通信用信号と共に前記伝送ケーブルを通じて送信する切替信号送信手段を備え、前記指向性可変アンテナに、前記指向方向切替用信号を検知して前記アンテナ部の指向方向を切り替えるアンテナ動作切替手段を備えた非接触通信装置。
【解決手段】指向方向を変更できるアンテナ部を備えて該アンテナ部により非接触通信を行う指向性可変アンテナと、該指向性可変アンテナに伝送ケーブルで接続されて該伝送ケーブルを介して通信用信号を送受信して通信制御を行うリーダライタとを備えた非接触通信装置であって、前記リーダライタに、前記アンテナ部の指向方向を切り替える指向方向切替用信号を前記通信用信号と共に前記伝送ケーブルを通じて送信する切替信号送信手段を備え、前記指向性可変アンテナに、前記指向方向切替用信号を検知して前記アンテナ部の指向方向を切り替えるアンテナ動作切替手段を備えた非接触通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば非接触IC媒体と非接触で通信するような非接触通信装置およびこの非接触通信装置に用いるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RF−IDタグやRF−IDカード等と呼ばれる非接触IC媒体と、この非接触IC媒体に対して非接触で通信する非接触通信装置とが提供されている。この非接触通信装置は、非接触IC媒体と非接触通信を行うスキャンアンテナと、該スキャンアンテナと信号を送受信して通信制御するリーダライタとが設けられている。このスキャンアンテナとリーダライタは、同軸ケーブルなどの伝送ケーブルで接続され、両者間でRF信号が送受信される。
【0003】
一方、このような非接触通信装置として、非接触通信をする指向性を変更できるリーダが出願人より提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1には、リーダライタの制御によってスキャンアンテナに備えられているアンテナ部の指向性を変化させることで、フィールドホールを減らすことができることが記載されている(段落[0080]参照)。
【0004】
ここで、アンテナ部は、リーダライタと伝送ケーブルで接続され、送信データが変調された変調信号をこの伝送ケーブルによってリーダライタとの間で送受信する。そして、アンテナ部の指向性を制御するためには、この伝送ケーブルに加えて、特許文献1の図1に示されるアンテナ指定信号28を送信する制御ケーブルや、特許文献1の図7に示されるスキャン制御信号54を送信する制御ケーブルが必要となる。
【0005】
しかし、このようにケーブルが2本になると、スキャンアンテナとリーダライタを別々の場所に設置して接続するような場合に、接続作業が煩雑という問題点があった。
【特許文献1】特開2007−292744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述した問題点に鑑み、別途の制御ケーブルを接続しなくとも、伝送ケーブル1本によって通信と共にアンテナ部の制御も可能とする非接触通信装置およびアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、指向方向を変更できるアンテナ部を備えて該アンテナ部により非接触通信を行う指向性可変アンテナと、該指向性可変アンテナに伝送ケーブルで接続されて該伝送ケーブルを介して通信用信号を送受信して通信制御を行うリーダライタとを備えた非接触通信装置であって、前記リーダライタに、前記アンテナ部の指向方向を切り替える指向方向切替用信号を前記通信用信号と共に前記伝送ケーブルを通じて送信する切替信号送信手段を備え、前記指向性可変アンテナに、前記指向方向切替用信号を検知して前記アンテナ部の指向方向を切り替えるアンテナ動作切替手段を備えた非接触通信装置であることを特徴とする。
【0008】
前記指向方向切替用信号は、切り替えのみを示すトリガ信号、または、どの指向方向にするかを指示する指示信号など、少なくとも指向方向を切り替えて良いタイミングをアンテナ動作切替手段が認識可能な信号とすることができる。
【0009】
また、前記指向方向切替用信号は、通信用信号の出力ON、出力OFF、出力ONと出力OFFの組み合わせ、通信用信号が出力OFFとなった時間、通信用信号に重畳する直流電圧の電圧差、通信用信号に重畳する直流電圧の立ち上がりまたは立ち下がり、通信用信号に重畳する直流電圧を振幅変調した信号、通信用信号に重畳する異なる周波数の信号など、通信用信号を損なわずに別系統の信号を付加する適宜の方法による信号とすることができる。
【0010】
前記切替信号送信手段は、通信用信号の出力ON、出力OFF、あるいは通信用信号を出力OFFとする時間を制御する通信用信号送信手段、通信用信号に重畳する直流電圧の電圧差の切り替え制御、通信用信号に重畳する直流電圧の立ち上がりまたは立ち下がり制御、通信用信号に重畳する直流電圧を振幅変調する制御を行う電圧制御手段、通信用信号に重畳する異なる周波数の信号を送信する指示用信号送信手段など、通信用信号を損なわずに別系統の信号を付加する適宜の方法による信号とすることができる。
【0011】
前記アンテナ動作切替手段は、アンテナ部の指向方向を定める複数種類の位相パターンを不揮発性メモリ等の適宜の記憶手段に記憶しておきトリガ信号を受信する毎に予め定めた順番またはランダムに位相パターンを切り替える手段、あるいは、指向方向を指定する指示信号を受信して該指示信号に対応する位相パターンに切り替える手段など、指向方向を切り替える手段で構成することができる。
【0012】
この発明により、別途の制御ケーブルを接続しなくとも、伝送ケーブル1本によって通信と共にアンテナ部の指向方向制御ができる非接触通信装置を提供することができる。また、指向性可変アンテナでの指向方向の切り替えタイミングを、リーダライタからの指示を受けてからとすることを確実にできる。このため、リーダライタが通信処理をしている最中に指向性可変アンテナが独立して指向方向を変化させて通信が切断されるといったことを防止できる。
【0013】
この発明の態様として、前記リーダライタに、前記アンテナ部の指向方向を人間が認識可能に出力する出力手段を備えることができる。
前記出力手段は、画像を表示する液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の画像表示手段、LEDなどの発光手段を複数備えて指向方向を示す発光表示手段、音声により通知する音声出力手段など、適宜の報知手段とすることができる。
この態様により、利用者は現在の指向方向を容易に認識することができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記切替信号送信手段を、前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方によって指向方向の切り替えを指示する構成とし、前記アンテナ動作切替手段を、前記出力ONと出力OFFの少なくとも一方を検知して前記アンテナ部の指向方向を切り替える構成とすることができる。
【0015】
これにより、通信用信号の出力ONや出力OFFを利用するという簡潔な構成で、伝送ケーブルを通じてのリーダライタの通信処理を妨げることなく該伝送ケーブルを通じてアンテナ部の指向方向を切り替えることを実現できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記リーダライタの前記切替信号送信手段と前記伝送ケーブルの間に、前記通信用信号に直流電圧を重畳させる電力供給手段を備え、前記指向性可変アンテナの前記アンテナ動作切替手段を、前記通信用信号の出力を検知する電力検出部と、前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方を前記指向方向切替用信号として前記位相制御部の制御を行う制御回路部とで構成することができる。
【0017】
これにより、リーダライタは、簡便な構成で通信用信号に直流電圧の重畳と指向方向の切り替えのトリガとなる指向方向切替用信号を付加することができる。また、指向性可変アンテナは、簡便な構成で前記指向方向切替用信号を検知してアンテナ部の指向方向を切り替えるができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記アンテナ動作切替手段を、前記通信用信号の出力を検知する電力検出部と、前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方に基づいて前記位相制御部の制御を行う制御回路部と、前記伝送ケーブルから来る通信用信号の一部を整流し直流電圧を取り出して各部に供給する直流電圧取出部とを備えることができる。
【0019】
これにより、指向性可変アンテナを用意すれば、既存のリーダライタにソフトウェアをインストールするだけで利用できる。
【0020】
またこの発明は、指向方向を変更できるアンテナ部と、伝送ケーブルから受信する通信用信号の出力を検知する電力検出部と、前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方に基づいて前記位相制御部の制御を行う制御回路部と、前記伝送ケーブルから受信する通信用信号の一部を整流し直流電圧を取り出して各部に供給する直流電圧取出部とを備えたアンテナ装置とすることができる。
【0021】
これにより、リーダライタからの指示を受けて指向方向を変えられるアンテナ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明により、別途の制御ケーブルを接続しなくとも、伝送ケーブル1本によって通信と共にアンテナ部の制御も可能とする非接触通信装置およびアンテナ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、RF−IDタグやRF−IDカード等と呼ばれる非接触IC媒体との非接触通信を行う非接触通信システム1の構成を示すブロック図である。図2は、スキャンアンテナ30の外観構成を示す斜視図である。
【0025】
非接触通信システム1は、主にPC2、リーダライタ10、スキャンアンテナ30により構成されている。リーダライタ10とスキャンアンテナ30は、同軸ケーブル20で接続されており、この同軸ケーブル20で接続されたリーダライタ10とスキャンアンテナ30により非接触通信装置5が構成されている。
【0026】
PC2は、パーソナルコンピュータであり、マウスやキーボード等の入力手段、CRTディスプレイ等の表示手段、LANカードなどの通信手段、CPUとROMとRAM等で構成される制御手段、およびハードディスクなどで構成される記憶手段等、適宜の構成要素で構成されている。
【0027】
リーダライタ10は、RF送受信部11と、該RF送受信部11の後段に接続されたコンデンサ12が設けられ、該コンデンサ12の後段には同軸ケーブル20が接続されている。また、リーダライタ10には、直流電源15と、該直流電源15の後段に接続されたコイル16が設けられ、該コイル16の後段に同軸ケーブル20が接続されている。従って、1本の同軸ケーブル20から枝分かれし、一方にはコンデンサ12とRF送受信部11がこの順で直列に接続され、他方にはコイル16と直流電源15がこの順で直列に接続されている。
【0028】
RF送受信部11は、コントロール部や変調部や増幅部などを有する適宜の回路構成に形成されており、スキャンアンテナ30に対してコンデンサ12を介してRF信号の送受信を実行する。
【0029】
直流電源15は、交流電源4から供給される交流電源を平滑化して直流電圧とし、この直流電圧をコイル16を介してRF信号に重畳する。この重畳された信号は、同軸ケーブル20を介してスキャンアンテナ30に送信される。
【0030】
また、リーダライタ10は、LANケーブル3を介してPC2に接続されている。従って、PC2からLANケーブル3を介して制御信号を受け取ると、この制御信号に従ってRF送受信部11が動作を実行できる。
【0031】
スキャンアンテナ30は、アンテナ部31、位相制御部32、コンデンサ33、コイル35、RF電力検出器39、表示器41、及び制御回路部40が設けられている。
【0032】
前記アンテナ部31には、後段に位相制御部32が接続され、その後段にコンデンサ33が接続され、このコンデンサ33の後段に同軸ケーブル20が接続されている。また、前記位相制御部32には、制御回路部40も接続されている。この制御回路部40には、コンデンサ33と同軸ケーブル20との間で分岐してコンデンサ33と並列に設けられるコイル35が接続されている。また、同様に前記分岐部と同軸ケーブル20との間で分岐してコンデンサ33と並列に設けられるRF電力検出器39が制御回路部40に接続されている。また、制御回路部40には、表示器41も接続されている。
【0033】
アンテナ部31は、指向方向を変更することができる。具体的には、例えば、指向方向を35°〜−35°まで調節可能な3素子アレーアンテナによりアンテナ部31を構成することができる。また、この指向方向の変更は、複数設けられたアンテナ素子のそれぞれに対して給電する位相差を制御することによって実行する。指向方向としては、例えばパターン1(35°,交信領域51)、パターン2(0°,交信領域52)、パターン3(−35°,交信領域53)の3方向とするなど、適宜の方向に設定することができる。
【0034】
位相制御部32は、複数の位相パターンを記憶しており、この位相パターンに従って、アンテナ部31に設けられている複数のアンテナ素子のそれぞれに対して給電する位相差を制御する。これによって位相制御を行い、アンテナ部31の指向方向を変化させる。
【0035】
RF電力検出器39は、同軸ケーブル20から電力が供給されているか否か、すなわちアンテナ部31から電波が出ているか否かを検知し、検知信号を制御回路部40に送信する。
【0036】
表示器41は、図2に示すように複数のLED41a〜41cで構成されている。この表示器41は、LED41a〜41cのいずれか1つを点灯することで、アンテナ部31の現在の指向方向を人間が認識できるように表示する。
【0037】
制御回路部40は、図1に示すように、同軸ケーブル20からRF電力検出器39を介して受信する切替信号に従って、位相制御部32に制御信号を送信してアンテナ部31の指向方向を変化させる。また制御回路部40は、この指向方向を変化させるために、制御回路部40は、指向方向切替法則をメモリ等の記憶部に記憶している。なお、この実施例1では、制御回路部40は、RF信号のON、OFF、一定時間OFFまたはこれらの複数を切替信号として検知し、この切替信号を検知すると、指定方向切替法則(所定の順番、またはランダムなど)に従ってアンテナ部31の指向方向を位相制御部32に切り替えさせる。
【0038】
なお、RF信号がOFFとなっているOFF時間別にアンテナ部31の指向方向を定めた指向方向切替設定を制御回路部40の記憶部に記憶しておく構成としてもよい。この場合、制御回路部40は、RF信号がOFFとなった時間に対応する指向方向を指定方向切替設定に基づいて決定し、この決定した指向方向となるようにアンテナ部31の指向方向を位相制御部32に切り替えさせるとよい。このように構成した場合は、スキャンアンテナ30にどの指向方向で非接触通信させるかリーダライタ10が制御することができる。
【0039】
図3は、非接触通信システム1の動作を説明するフローチャートである。
リーダライタ10のRF送受信部11は、変数nに1を代入して該変数nを初期化し(ステップS1)、アンテナ部31の指向性をセットするようにスキャンアンテナ30に対して指示する(ステップS2)。この指示は、RF信号の出力ON、OFF、または一定時間OFFなど、予め定めた適宜の信号によって行うとよい。この実施例では、一定時間OFFを行う場合について、以降の説明を行う。
【0040】
スキャンアンテナ30の制御回路部40は、指向性セットの指示をRF電力検出器39により検知し、位相制御部32に信号を送信してアンテナ部31による指向方向をセットする(ステップS11)。このとき、制御回路部40は、表示器41による指向方向の表示も、前記セットした指向方向を示す表示にセットする。
【0041】
リーダライタ10のRF送受信部11は、RF信号の送信を開始し(ステップS3)、非接触通信装置5と非接触IC媒体との間での通信を実行する(ステップS4)。
【0042】
RF送受信部11は、現在の指向方向におけるアンテナ部31の交信領域内にある全ての非接触IC媒体と通信が完了するまで前記通信を続行する(ステップS5:No)。この全ての非接触IC媒体との通信は、アンチコリジョン(anti-collision)により行う。
【0043】
交信領域内の全ての非接触IC媒体との通信が完了すると(ステップS5:Yes)、RF送受信部11は、RF信号を停止し(ステップS6)、アンテナ部31の指向性を変更するようにスキャンアンテナ30に対して指示する(ステップS7)。この指示は、RF信号のON、OFF、または一定時間OFFなど、予め定めた適宜の信号によって行うとよい。
【0044】
スキャンアンテナ30の制御回路部40は、指向性変更の指示をRF電力検出器39により検知し、位相制御部32に信号を送信してアンテナ部31による指向方向を変更する(ステップS12)。このとき、指向方向の変更は、予め定められた順序に従って次の指向方向にセットする、あるいはランダムにセットするなど、定められた適宜の基準によって変更後の指向方向を定める。なお、指向方向の変更順などの設定は、制御回路部40に設けた図示省略するメモリなどに記憶しておくと良い。また、このとき制御回路部40は、表示器41による指向方向の表示も、前記変更した指向方向を示す表示に変更する。
【0045】
RF送受信部11は、指向方向を変更させてからステップS3に処理を戻してステップS3〜S6までの通信動作を繰り返す。この通信動作を、全ての指向方向で実行することにより、アンテナ部31の各指向方向で通信可能な領域をすべた合わせた交信領域全体について、そのどこかに存在する非接触IC媒体全てと通信することができる。
【0046】
以上の構成および動作により、リーダライタ10とスキャンアンテナ30の間の接続に制御ケーブルを別途設けずとも、同軸ケーブル20のみによって非接触IC媒体との通信とスキャンアンテナ30の指向方向の切替を実現することができる。従って、従来のようにリーダライタ10とスキャンアンテナ30を同軸ケーブルと制御ケーブルの2本のケーブルで接続するといった手間を排除することができる。
【0047】
スキャンアンテナ30の指向方向の切替は、スキャンアンテナ30が勝手に行うのではなくリーダライタ10からの指示によって行うため、非接触IC媒体と非接触通信装置5との確実な通信を実現することができる。つまり、スキャンアンテナ30が、リーダライタ10の動作と独立して適宜のタイミングで勝手に指向方向を切り替えると、リーダライタ10による通信途中で指向方向が切り替わって通信エラーとなる場合が生じる。このように通信エラーが生じた場合、交信領域内の全ての非接触IC媒体との通信が完了していないにも関わらず、別の交信領域に指向方向を変えてしまったことになる。これに対し、リーダライタ10からの指示に従ったタイミングで指向方向を切り替えることにより、上述のように通信途中に指向方向を切り替えてしまうことを防止でき、確実な通信を実現できる。特に、交信領域内の非接触IC媒体が複数ある場合、アンチコリジョンにより全ての非接触IC媒体と通信完了する時間は、非接触IC媒体が存在する個数によって変わってくる。このような場合も、リーダライタ10が全ての非接触IC媒体と通信完了してから指向方向の切替を指示でき、この指示を受けてスキャンアンテナ30が指向方向を変更できる。このため、読取時間が短時間で完了すればすぐに次の指向方向を変更して次の交信領域で通信を行うことができ、読取時間が長時間であれば、全ての通信が完了するまで待ってから指向方向を変更できて、効率よく確実に各指向方向での通信を行うことができる。
【0048】
また、スキャンアンテナ30の制御回路部40に、指向方向切替法則または指向方向切替設定を記憶しているため、同軸ケーブル20を介して受け取る指向方向変更のための信号を単純なON/OFFによる信号とすることができる。これにより、簡潔な回路構成でリーダライタ10からの指示に基づくスキャンアンテナ30の指向方向の変更を実現することができる。
【0049】
また、表示器41を備えているため、スキャンアンテナ30の指向方向がどの方向であるか、人間が目で見て確認することができる。従って、アンテナ部31による交信の指向方向という人間の目に見えないものを、表示器41によって視覚化することができる。これにより、スキャンアンテナ30の設置の調整を容易にすることができる。
【実施例2】
【0050】
図4は、実施例2の非接触通信システム1aの構成を示すブロック図である。
非接触通信装置5aのリーダライタ10aは、実施例1の直流電源15の代わりに、電圧制御部17が設けられている。この電圧制御部17は、通信用信号に重畳する直流電圧を複数種類の電圧に切り替えるものである。
【0051】
スキャンアンテナ30aは、実施例1のRF電力検出器39が省略されており、それ以外は実施例1と同一である。なお、表示器(実施例1の表示器41)については図示省略している。
【0052】
その他の構成は実施例1と同一であるから、その詳細な説明を省略する。
このように構成された非接触通信システム1aは、実施例1の図3で説明したフローチャートと同様に動作するが、ステップS2,S7での指向性セット、およびステップS11,S12での指向性変更指示の方法のみが異なる
すなわち、ステップS2では、電圧制御部17がRF信号に重畳する電圧の差によって指向性のセット指示を出す。
ステップS11では、前記セット指示を受けたスキャンアンテナ30aが、受け取った電圧に対応する指向性をセットし、通信を開始する。詳述すると、制御回路部40によって電圧を検知し、制御回路部40は、検知した電圧に従って指向性を決定し、アンテナ部31の指向性をこの決定した指向性に変化させる。
【0053】
ステップS7では、電圧制御部17がRF信号に重畳する電圧の差によって指向性のセット指示を出す。
ステップS12では、これを受けたスキャンアンテナ30の制御回路部40が、検知した電圧に従って指向性を決定し、アンテナ部31の指向性をこの決定した指向性に変化させる。
【0054】
以上の構成および動作により、実施例1と同一の作用効果を奏することができる。また、重畳する電圧を異ならせることができるため、アンテナ部31が当該重畳された電圧を受け取ると、この電圧値に対応する指向方向に向けて交信領域51〜53を変更するようアンテナ部31を制御することができる。
【0055】
なお、この実施例では、電圧の差によって指向方向を変化させる構成としたが、直流電圧を利用した他の方法によって指向方向を変化させても良い。
例えば図5(A)のタイミングチャートに示すように、RF信号に重畳する直流電圧の立ち上がりと立ち下がりによって指向方向を変化させてもよい。この場合、直流電圧が立ち上がると、図示するように例えばパターン1の指向方向とし、直流電圧が立ち下がるとRF出力を停止すると良い。また、次に直流電圧が立ち上がると、今度はさきほどと異なるパターン2でRF信号を送信すると良い。このパターン1〜3の順序は、数字の順でも良いし、ランダムに選択する構成にしてもよい。この場合でも、上述と同一の作用効果が得られる。またこのように直流電圧の立ち上がりや立ち下がりを利用することで、電圧を変化させる必要がなく、回路構成をシンプルにすることができる。
【0056】
また、図5(B)のタイミングチャートに示すように、RF信号に重畳する直流電圧を振幅変調して指向方向を変化させてもよい。この場合、制御回路部40は、振幅変調された直流電圧を受けて、図示するように例えばパターン1の指向方向とし、次に振幅変調された直流電圧を受けてパターン3の指向方向とするといったように、振幅変調の種類に応じた指向方向にすると良い。この場合でも、上述と同一の作用効果が得られる。
【実施例3】
【0057】
図6は、実施例3の非接触通信システム1bの構成を示すブロック図である。
非接触通信装置5bのリーダライタ10bは、実施例1の構成に加えて、HPF(ハイパスフィルター)13、LPF(ローパスフイルター)14、およびスキャン制御用RF送受信部18が設けられている。
【0058】
HPF13は、同軸ケーブル20がRF送受信部11と直流電源15へ分岐する分岐部よりもRF送受信部11側に接続されている。
LPF14は、上記分岐部と同軸ケーブル20との間に設けられた分岐の先に接続され、コイル16と並列に接続されている。
スキャン制御用RF送受信部18は、LPF14の前段に接続されている。
【0059】
この構成により、リーダライタ10bは、通信用信号として高周波を利用し、指向方向の制御用信号として低周波を使用することができる。すなわち、RF送受信部11にて送受信される通信用信号は、HPF13によって高周波にされ、直流電源15からコイル16を介して供給される直流電圧が重畳される。スキャン制御用RF送受信部18から送信される指向方向を切替制御する信号は、LPF14によって低周波にされ、通信用信号に直流電圧が重畳された信号にさらに重畳されて同軸ケーブル20でスキャンアンテナ30bへ送信される。
【0060】
スキャンアンテナ30bは、実施例1のスキャンアンテナ30と比べて、RF電力検出器39の代わりにLPF(ローパスフィルター)36が設けられており、その他の構成要素は同一に構成されている。
【0061】
このスキャンアンテナ30bは、LPF36にて取り出した低周波成分により指向方向の制御用信号を得、この制御用信号に従って制御回路部40が位相制御部32を制御する。これによってアンテナ部31の指向方向を制御する。
その他の構成は実施例1と同一であるから、その詳細な説明を省略する。
【0062】
このように構成された非接触通信システム1bは、実施例1の図3で説明したフローチャートと同様に動作するが、ステップS2,S7での指向性セット、およびステップS11,S12での指向性変更指示の方法のみが異なる。
【0063】
すなわち、ステップS2,S7では、スキャン制御用RF送受信部18が低周波の制御用信号をRF信号に重畳する。ステップS11,S12では、スキャンアンテナ30の制御回路部40は、この低周波成分をLPF36によってRF信号から分離取得して制御用信号を得、この制御用信号によって位相制御部32を制御してアンテナ部31の指向方向を変化させる。
【0064】
以上の構成および動作により、実施例1と同一の作用効果を奏することができる。また、重畳する制御用信号を異ならせることができるため、アンテナ部31が当該重畳された制御用信号を受け取ると、この制御用信号に対応する指向方向に向けて交信領域51〜53を変更するようアンテナ部31を制御することができる。
【0065】
なお、この実施例の場合、制御回路部40に記憶されているプログラムを、リーダライタ10から更新できるように構成してもよい。この場合、スキャン制御用RF送受信部18から低周波によって新しいプログラムを送信し、制御回路部40のメモリに記憶されている古いプログラムを新しいプログラムに書き換えれば良い。これにより、スキャンアンテナ30を動作させるプログラムの更新が必要となった場合にリーダライタ10から更新することができる。
【実施例4】
【0066】
図7は、実施例4の非接触通信システム1cの構成を示すブロック図である。
非接触通信装置5cのリーダライタ10cは、実施例1の構成からコンデンサ12、直流電源15、およびコイル16を削除して構成されている。すなわち、このリーダライタ10cは、指向方向の制御のための特別な構成要素を持っておらず、既存のリーダライタと同様の構成に作製されている。
【0067】
RF送受信部11の適宜の記憶部には、スキャンアンテナ30のアンテナ部31の指向方向制御用プログラムが記憶されている。このプログラムは、RF送受信部11から送信する通信用信号の出力ON、出力OFF、または出力ONと出力OFFの組み合わせによって指向方向制御用の制御信号を送信する。出力ONと出力OFFの組合せでは、例えば出力OFFしてから出力ONするまでのOFF時間を複数種類用意しておき、このOFF時間によって指向方向を特定するとった利用が可能である。
【0068】
スキャンアンテナ30cは、実施例1のスキャンアンテナ30と比べて、コンデンサ33がなく、コイル35の変わりにRF整流回路部37および蓄電部38が直列に設けられており、その他の構成要素は同一に構成されている。
【0069】
このスキャンアンテナ30cは、通信用信号の出力ONや出力OFFをRF電力検出器39により検知し、この出力ONや出力OFFによって制御回路部40が位相制御部32を制御する。これによってアンテナ部31の指向方向を制御する。
【0070】
また、RF整流回路部37は、同軸ケーブル20から供給される通信用信号の一部を整流して直流電圧を取り出す。そして、蓄電部38は、取り出した直流電圧を蓄電し、動作を安定させる。
【0071】
この蓄電部38は、バッテリーとして各部への電力供給を継続して行う機能を有し、同軸ケーブル20から供給される通信用信号がアンテナ部31の指向方向の変更のために途切れた(出力OFFされた)場合でも、蓄電している電力によって継続して各部へ電力供給する。これにより、指向方向の変更のたびに制御回路部40がOFFとなって最初から動作を開始するといったことを防止し、連続動作を可能にしている。
その他の構成は実施例1と同一であるから、その詳細な説明を省略する。
【0072】
このように構成された非接触通信システム1cは、実施例1の図3で説明したフローチャートと同様に動作するが、ステップS2,S7での指向性セット、およびステップS11,S12での指向性変更指示の方法のみが異なる。
【0073】
すなわち、ステップS2,S7では、スキャン制御用RF送受信部18が通信用信号の出力のONまたはOFFを実行する。スキャンアンテナ30cの制御回路部40は、ステップS11,S12にて、前記ONまたはOFFをRF電力検出器39により検知し、この検知によって位相制御部32を制御してアンテナ部31の指向方向を変化させる。
【0074】
以上の構成および動作により、実施例1と同一の作用効果を奏することができる。また、リーダライタ10cに既存のリーダライタを使用することができ、ソフトウェアの更新のみで対応することができる。
【実施例5】
【0075】
図8は、実施例5の非接触通信システム1dの構成を示すブロック図である。
リーダライタ10dは、実施例1の構成に対してコンデンサ12の代わりにHPF13、コイル16の代わりにLPF14、直流電源15の代わりにスキャン制御用RF送受信部18を備えている。
【0076】
この構成により、リーダライタ10dは、通信用信号として高周波を利用し、指向方向の制御用信号として低周波を使用することができる。すなわち、RF送受信部11にて送受信される通信用信号は、HPF13によって高周波にされ、スキャン制御用RF送受信部18から送信される指向方向を切替制御する信号は、LPF14によって低周波にされ、通信用信号に重畳されて同軸ケーブル20でスキャンアンテナ30dへ送信される。
【0077】
スキャンアンテナ30dは、実施例1のスキャンアンテナ30と比べて、コンデンサ33の代わりにHPF34、コイル35の変わりにRF整流回路部37、およびRF電力検出器39の代わりにLPF36が設けられており、その他の構成要素は同一に構成されている。
【0078】
このスキャンアンテナ30dは、LPF36にて取り出した低周波成分により指向方向の制御用信号を得、この制御用信号に従って制御回路部40が位相制御部32を制御する。これによってアンテナ部31の指向方向を制御する。
その他の構成は実施例1と同一であるから、その詳細な説明を省略する。
【0079】
このように構成された非接触通信システム1bは、実施例1の図3で説明したフローチャートと同様に動作するが、ステップS2,S7での指向性セット、およびステップS11,S12での指向性変更指示の方法のみが異なる。
【0080】
すなわち、ステップS2,S7では、スキャン制御用RF送受信部18が低周波の制御用信号をRF信号に重畳する。ステップS11,S12では、スキャンアンテナ30の制御回路部40が、この低周波成分をLPF36によってRF信号から分離取得して制御用信号を得、この制御用信号によって位相制御部32を制御してアンテナ部31の指向方向を変化させる。
【0081】
以上の構成および動作により、実施例1と同一の作用効果を奏することができる。また、重畳する制御用信号として複数種類の信号を使用できるため、アンテナ部31が当該重畳された制御用信号を受け取ると、この制御用信号に対応する指向方向に向けて交信領域51〜53を変更するようアンテナ部31を制御することができる。
【0082】
なお、上述した各実施例におけるスキャンアンテナ30の表示器41の構成、および変化させる指向方向の設定は、適宜の構成および設定とすることができる。
例えば、図9(A)の斜視図に示すように、印刷表示42とLED41a〜41eの組み合わせにより、パターン1〜パターン5(交信領域51〜55)の指向方向を表示してもよい。この場合、印刷表示42は、図9(B)に示すように、角度表示文字43と方向表示線44を印刷しておくとよい。
【0083】
これにより、LED41a〜41eのいずれか1つを点灯すれば、利用者は、印刷表示42と合わせて視認し、現在の指向方向を容易に確認できる。また、図示の例では指向方向を5段階に設定しているが、この5段階のどの方向を現在の交信領域としているか利用者が容易に認識できる。
【0084】
また、図10(A)に示すように表示器41として液晶ディスプレイを備えても良い。この場合、液晶ディスプレイには、図10(B)に示すように矢印45と、角度46を表示すればよい。
【0085】
この場合も、利用者が指向方向を容易に認識することができる。また、指向方向の設定種類を利用者の希望によって3段階、5段階といったように異なる設定にする場合、ハードウェアを変更せずともソフトウェアの設定だけで対応でき、汎用性を増すことができる。
【0086】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の切替信号送信手段は、実施形態のRF送受信部11、電圧制御部17、またはスキャン制御用RF送受信部18に対応し、
以下同様に、
電力供給手段は、直流電源15に対応し、
伝送ケーブルは、同軸ケーブル20に対応し、
指向性可変アンテナおよびアンテナ装置は、スキャンアンテナ30に対応し、
アンテナ動作切替手段は、位相制御部32および制御回路部40に対応し、
直流電圧取出部は、RF整流回路部37に対応し、
電力検出部は、RF電力検出器39に対応し、
出力手段は、表示器41に対応し、
通信用信号は、RF信号に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】非接触通信システムの構成を示すブロック図。
【図2】スキャンアンテナの外観構成を示す斜視図。
【図3】非接触通信システムの動作を説明するフローチャート。
【図4】実施例2の非接触通信システムの構成を示すブロック図。
【図5】タイミングチャートの説明図。
【図6】実施例3の非接触通信システムの構成を示すブロック図。
【図7】実施例4の非接触通信システムの構成を示すブロック図。
【図8】実施例5の非接触通信システムの構成を示すブロック図。
【図9】表示器の他の構成例を示す説明図。
【図10】表示器の他の構成例を示す説明図。
【符号の説明】
【0088】
5…非接触通信装置、10…リーダライタ、11…RF送受信部、15…直流電源、17…電圧制御部、18…スキャン制御用RF送受信部、20…同軸ケーブル、30…スキャンアンテナ、31…アンテナ部、32…位相制御部、37…RF整流回路部、39…RF電力検出器、40…制御回路、41…表示器
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば非接触IC媒体と非接触で通信するような非接触通信装置およびこの非接触通信装置に用いるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RF−IDタグやRF−IDカード等と呼ばれる非接触IC媒体と、この非接触IC媒体に対して非接触で通信する非接触通信装置とが提供されている。この非接触通信装置は、非接触IC媒体と非接触通信を行うスキャンアンテナと、該スキャンアンテナと信号を送受信して通信制御するリーダライタとが設けられている。このスキャンアンテナとリーダライタは、同軸ケーブルなどの伝送ケーブルで接続され、両者間でRF信号が送受信される。
【0003】
一方、このような非接触通信装置として、非接触通信をする指向性を変更できるリーダが出願人より提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1には、リーダライタの制御によってスキャンアンテナに備えられているアンテナ部の指向性を変化させることで、フィールドホールを減らすことができることが記載されている(段落[0080]参照)。
【0004】
ここで、アンテナ部は、リーダライタと伝送ケーブルで接続され、送信データが変調された変調信号をこの伝送ケーブルによってリーダライタとの間で送受信する。そして、アンテナ部の指向性を制御するためには、この伝送ケーブルに加えて、特許文献1の図1に示されるアンテナ指定信号28を送信する制御ケーブルや、特許文献1の図7に示されるスキャン制御信号54を送信する制御ケーブルが必要となる。
【0005】
しかし、このようにケーブルが2本になると、スキャンアンテナとリーダライタを別々の場所に設置して接続するような場合に、接続作業が煩雑という問題点があった。
【特許文献1】特開2007−292744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述した問題点に鑑み、別途の制御ケーブルを接続しなくとも、伝送ケーブル1本によって通信と共にアンテナ部の制御も可能とする非接触通信装置およびアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、指向方向を変更できるアンテナ部を備えて該アンテナ部により非接触通信を行う指向性可変アンテナと、該指向性可変アンテナに伝送ケーブルで接続されて該伝送ケーブルを介して通信用信号を送受信して通信制御を行うリーダライタとを備えた非接触通信装置であって、前記リーダライタに、前記アンテナ部の指向方向を切り替える指向方向切替用信号を前記通信用信号と共に前記伝送ケーブルを通じて送信する切替信号送信手段を備え、前記指向性可変アンテナに、前記指向方向切替用信号を検知して前記アンテナ部の指向方向を切り替えるアンテナ動作切替手段を備えた非接触通信装置であることを特徴とする。
【0008】
前記指向方向切替用信号は、切り替えのみを示すトリガ信号、または、どの指向方向にするかを指示する指示信号など、少なくとも指向方向を切り替えて良いタイミングをアンテナ動作切替手段が認識可能な信号とすることができる。
【0009】
また、前記指向方向切替用信号は、通信用信号の出力ON、出力OFF、出力ONと出力OFFの組み合わせ、通信用信号が出力OFFとなった時間、通信用信号に重畳する直流電圧の電圧差、通信用信号に重畳する直流電圧の立ち上がりまたは立ち下がり、通信用信号に重畳する直流電圧を振幅変調した信号、通信用信号に重畳する異なる周波数の信号など、通信用信号を損なわずに別系統の信号を付加する適宜の方法による信号とすることができる。
【0010】
前記切替信号送信手段は、通信用信号の出力ON、出力OFF、あるいは通信用信号を出力OFFとする時間を制御する通信用信号送信手段、通信用信号に重畳する直流電圧の電圧差の切り替え制御、通信用信号に重畳する直流電圧の立ち上がりまたは立ち下がり制御、通信用信号に重畳する直流電圧を振幅変調する制御を行う電圧制御手段、通信用信号に重畳する異なる周波数の信号を送信する指示用信号送信手段など、通信用信号を損なわずに別系統の信号を付加する適宜の方法による信号とすることができる。
【0011】
前記アンテナ動作切替手段は、アンテナ部の指向方向を定める複数種類の位相パターンを不揮発性メモリ等の適宜の記憶手段に記憶しておきトリガ信号を受信する毎に予め定めた順番またはランダムに位相パターンを切り替える手段、あるいは、指向方向を指定する指示信号を受信して該指示信号に対応する位相パターンに切り替える手段など、指向方向を切り替える手段で構成することができる。
【0012】
この発明により、別途の制御ケーブルを接続しなくとも、伝送ケーブル1本によって通信と共にアンテナ部の指向方向制御ができる非接触通信装置を提供することができる。また、指向性可変アンテナでの指向方向の切り替えタイミングを、リーダライタからの指示を受けてからとすることを確実にできる。このため、リーダライタが通信処理をしている最中に指向性可変アンテナが独立して指向方向を変化させて通信が切断されるといったことを防止できる。
【0013】
この発明の態様として、前記リーダライタに、前記アンテナ部の指向方向を人間が認識可能に出力する出力手段を備えることができる。
前記出力手段は、画像を表示する液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の画像表示手段、LEDなどの発光手段を複数備えて指向方向を示す発光表示手段、音声により通知する音声出力手段など、適宜の報知手段とすることができる。
この態様により、利用者は現在の指向方向を容易に認識することができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記切替信号送信手段を、前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方によって指向方向の切り替えを指示する構成とし、前記アンテナ動作切替手段を、前記出力ONと出力OFFの少なくとも一方を検知して前記アンテナ部の指向方向を切り替える構成とすることができる。
【0015】
これにより、通信用信号の出力ONや出力OFFを利用するという簡潔な構成で、伝送ケーブルを通じてのリーダライタの通信処理を妨げることなく該伝送ケーブルを通じてアンテナ部の指向方向を切り替えることを実現できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記リーダライタの前記切替信号送信手段と前記伝送ケーブルの間に、前記通信用信号に直流電圧を重畳させる電力供給手段を備え、前記指向性可変アンテナの前記アンテナ動作切替手段を、前記通信用信号の出力を検知する電力検出部と、前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方を前記指向方向切替用信号として前記位相制御部の制御を行う制御回路部とで構成することができる。
【0017】
これにより、リーダライタは、簡便な構成で通信用信号に直流電圧の重畳と指向方向の切り替えのトリガとなる指向方向切替用信号を付加することができる。また、指向性可変アンテナは、簡便な構成で前記指向方向切替用信号を検知してアンテナ部の指向方向を切り替えるができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記アンテナ動作切替手段を、前記通信用信号の出力を検知する電力検出部と、前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方に基づいて前記位相制御部の制御を行う制御回路部と、前記伝送ケーブルから来る通信用信号の一部を整流し直流電圧を取り出して各部に供給する直流電圧取出部とを備えることができる。
【0019】
これにより、指向性可変アンテナを用意すれば、既存のリーダライタにソフトウェアをインストールするだけで利用できる。
【0020】
またこの発明は、指向方向を変更できるアンテナ部と、伝送ケーブルから受信する通信用信号の出力を検知する電力検出部と、前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方に基づいて前記位相制御部の制御を行う制御回路部と、前記伝送ケーブルから受信する通信用信号の一部を整流し直流電圧を取り出して各部に供給する直流電圧取出部とを備えたアンテナ装置とすることができる。
【0021】
これにより、リーダライタからの指示を受けて指向方向を変えられるアンテナ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明により、別途の制御ケーブルを接続しなくとも、伝送ケーブル1本によって通信と共にアンテナ部の制御も可能とする非接触通信装置およびアンテナ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、RF−IDタグやRF−IDカード等と呼ばれる非接触IC媒体との非接触通信を行う非接触通信システム1の構成を示すブロック図である。図2は、スキャンアンテナ30の外観構成を示す斜視図である。
【0025】
非接触通信システム1は、主にPC2、リーダライタ10、スキャンアンテナ30により構成されている。リーダライタ10とスキャンアンテナ30は、同軸ケーブル20で接続されており、この同軸ケーブル20で接続されたリーダライタ10とスキャンアンテナ30により非接触通信装置5が構成されている。
【0026】
PC2は、パーソナルコンピュータであり、マウスやキーボード等の入力手段、CRTディスプレイ等の表示手段、LANカードなどの通信手段、CPUとROMとRAM等で構成される制御手段、およびハードディスクなどで構成される記憶手段等、適宜の構成要素で構成されている。
【0027】
リーダライタ10は、RF送受信部11と、該RF送受信部11の後段に接続されたコンデンサ12が設けられ、該コンデンサ12の後段には同軸ケーブル20が接続されている。また、リーダライタ10には、直流電源15と、該直流電源15の後段に接続されたコイル16が設けられ、該コイル16の後段に同軸ケーブル20が接続されている。従って、1本の同軸ケーブル20から枝分かれし、一方にはコンデンサ12とRF送受信部11がこの順で直列に接続され、他方にはコイル16と直流電源15がこの順で直列に接続されている。
【0028】
RF送受信部11は、コントロール部や変調部や増幅部などを有する適宜の回路構成に形成されており、スキャンアンテナ30に対してコンデンサ12を介してRF信号の送受信を実行する。
【0029】
直流電源15は、交流電源4から供給される交流電源を平滑化して直流電圧とし、この直流電圧をコイル16を介してRF信号に重畳する。この重畳された信号は、同軸ケーブル20を介してスキャンアンテナ30に送信される。
【0030】
また、リーダライタ10は、LANケーブル3を介してPC2に接続されている。従って、PC2からLANケーブル3を介して制御信号を受け取ると、この制御信号に従ってRF送受信部11が動作を実行できる。
【0031】
スキャンアンテナ30は、アンテナ部31、位相制御部32、コンデンサ33、コイル35、RF電力検出器39、表示器41、及び制御回路部40が設けられている。
【0032】
前記アンテナ部31には、後段に位相制御部32が接続され、その後段にコンデンサ33が接続され、このコンデンサ33の後段に同軸ケーブル20が接続されている。また、前記位相制御部32には、制御回路部40も接続されている。この制御回路部40には、コンデンサ33と同軸ケーブル20との間で分岐してコンデンサ33と並列に設けられるコイル35が接続されている。また、同様に前記分岐部と同軸ケーブル20との間で分岐してコンデンサ33と並列に設けられるRF電力検出器39が制御回路部40に接続されている。また、制御回路部40には、表示器41も接続されている。
【0033】
アンテナ部31は、指向方向を変更することができる。具体的には、例えば、指向方向を35°〜−35°まで調節可能な3素子アレーアンテナによりアンテナ部31を構成することができる。また、この指向方向の変更は、複数設けられたアンテナ素子のそれぞれに対して給電する位相差を制御することによって実行する。指向方向としては、例えばパターン1(35°,交信領域51)、パターン2(0°,交信領域52)、パターン3(−35°,交信領域53)の3方向とするなど、適宜の方向に設定することができる。
【0034】
位相制御部32は、複数の位相パターンを記憶しており、この位相パターンに従って、アンテナ部31に設けられている複数のアンテナ素子のそれぞれに対して給電する位相差を制御する。これによって位相制御を行い、アンテナ部31の指向方向を変化させる。
【0035】
RF電力検出器39は、同軸ケーブル20から電力が供給されているか否か、すなわちアンテナ部31から電波が出ているか否かを検知し、検知信号を制御回路部40に送信する。
【0036】
表示器41は、図2に示すように複数のLED41a〜41cで構成されている。この表示器41は、LED41a〜41cのいずれか1つを点灯することで、アンテナ部31の現在の指向方向を人間が認識できるように表示する。
【0037】
制御回路部40は、図1に示すように、同軸ケーブル20からRF電力検出器39を介して受信する切替信号に従って、位相制御部32に制御信号を送信してアンテナ部31の指向方向を変化させる。また制御回路部40は、この指向方向を変化させるために、制御回路部40は、指向方向切替法則をメモリ等の記憶部に記憶している。なお、この実施例1では、制御回路部40は、RF信号のON、OFF、一定時間OFFまたはこれらの複数を切替信号として検知し、この切替信号を検知すると、指定方向切替法則(所定の順番、またはランダムなど)に従ってアンテナ部31の指向方向を位相制御部32に切り替えさせる。
【0038】
なお、RF信号がOFFとなっているOFF時間別にアンテナ部31の指向方向を定めた指向方向切替設定を制御回路部40の記憶部に記憶しておく構成としてもよい。この場合、制御回路部40は、RF信号がOFFとなった時間に対応する指向方向を指定方向切替設定に基づいて決定し、この決定した指向方向となるようにアンテナ部31の指向方向を位相制御部32に切り替えさせるとよい。このように構成した場合は、スキャンアンテナ30にどの指向方向で非接触通信させるかリーダライタ10が制御することができる。
【0039】
図3は、非接触通信システム1の動作を説明するフローチャートである。
リーダライタ10のRF送受信部11は、変数nに1を代入して該変数nを初期化し(ステップS1)、アンテナ部31の指向性をセットするようにスキャンアンテナ30に対して指示する(ステップS2)。この指示は、RF信号の出力ON、OFF、または一定時間OFFなど、予め定めた適宜の信号によって行うとよい。この実施例では、一定時間OFFを行う場合について、以降の説明を行う。
【0040】
スキャンアンテナ30の制御回路部40は、指向性セットの指示をRF電力検出器39により検知し、位相制御部32に信号を送信してアンテナ部31による指向方向をセットする(ステップS11)。このとき、制御回路部40は、表示器41による指向方向の表示も、前記セットした指向方向を示す表示にセットする。
【0041】
リーダライタ10のRF送受信部11は、RF信号の送信を開始し(ステップS3)、非接触通信装置5と非接触IC媒体との間での通信を実行する(ステップS4)。
【0042】
RF送受信部11は、現在の指向方向におけるアンテナ部31の交信領域内にある全ての非接触IC媒体と通信が完了するまで前記通信を続行する(ステップS5:No)。この全ての非接触IC媒体との通信は、アンチコリジョン(anti-collision)により行う。
【0043】
交信領域内の全ての非接触IC媒体との通信が完了すると(ステップS5:Yes)、RF送受信部11は、RF信号を停止し(ステップS6)、アンテナ部31の指向性を変更するようにスキャンアンテナ30に対して指示する(ステップS7)。この指示は、RF信号のON、OFF、または一定時間OFFなど、予め定めた適宜の信号によって行うとよい。
【0044】
スキャンアンテナ30の制御回路部40は、指向性変更の指示をRF電力検出器39により検知し、位相制御部32に信号を送信してアンテナ部31による指向方向を変更する(ステップS12)。このとき、指向方向の変更は、予め定められた順序に従って次の指向方向にセットする、あるいはランダムにセットするなど、定められた適宜の基準によって変更後の指向方向を定める。なお、指向方向の変更順などの設定は、制御回路部40に設けた図示省略するメモリなどに記憶しておくと良い。また、このとき制御回路部40は、表示器41による指向方向の表示も、前記変更した指向方向を示す表示に変更する。
【0045】
RF送受信部11は、指向方向を変更させてからステップS3に処理を戻してステップS3〜S6までの通信動作を繰り返す。この通信動作を、全ての指向方向で実行することにより、アンテナ部31の各指向方向で通信可能な領域をすべた合わせた交信領域全体について、そのどこかに存在する非接触IC媒体全てと通信することができる。
【0046】
以上の構成および動作により、リーダライタ10とスキャンアンテナ30の間の接続に制御ケーブルを別途設けずとも、同軸ケーブル20のみによって非接触IC媒体との通信とスキャンアンテナ30の指向方向の切替を実現することができる。従って、従来のようにリーダライタ10とスキャンアンテナ30を同軸ケーブルと制御ケーブルの2本のケーブルで接続するといった手間を排除することができる。
【0047】
スキャンアンテナ30の指向方向の切替は、スキャンアンテナ30が勝手に行うのではなくリーダライタ10からの指示によって行うため、非接触IC媒体と非接触通信装置5との確実な通信を実現することができる。つまり、スキャンアンテナ30が、リーダライタ10の動作と独立して適宜のタイミングで勝手に指向方向を切り替えると、リーダライタ10による通信途中で指向方向が切り替わって通信エラーとなる場合が生じる。このように通信エラーが生じた場合、交信領域内の全ての非接触IC媒体との通信が完了していないにも関わらず、別の交信領域に指向方向を変えてしまったことになる。これに対し、リーダライタ10からの指示に従ったタイミングで指向方向を切り替えることにより、上述のように通信途中に指向方向を切り替えてしまうことを防止でき、確実な通信を実現できる。特に、交信領域内の非接触IC媒体が複数ある場合、アンチコリジョンにより全ての非接触IC媒体と通信完了する時間は、非接触IC媒体が存在する個数によって変わってくる。このような場合も、リーダライタ10が全ての非接触IC媒体と通信完了してから指向方向の切替を指示でき、この指示を受けてスキャンアンテナ30が指向方向を変更できる。このため、読取時間が短時間で完了すればすぐに次の指向方向を変更して次の交信領域で通信を行うことができ、読取時間が長時間であれば、全ての通信が完了するまで待ってから指向方向を変更できて、効率よく確実に各指向方向での通信を行うことができる。
【0048】
また、スキャンアンテナ30の制御回路部40に、指向方向切替法則または指向方向切替設定を記憶しているため、同軸ケーブル20を介して受け取る指向方向変更のための信号を単純なON/OFFによる信号とすることができる。これにより、簡潔な回路構成でリーダライタ10からの指示に基づくスキャンアンテナ30の指向方向の変更を実現することができる。
【0049】
また、表示器41を備えているため、スキャンアンテナ30の指向方向がどの方向であるか、人間が目で見て確認することができる。従って、アンテナ部31による交信の指向方向という人間の目に見えないものを、表示器41によって視覚化することができる。これにより、スキャンアンテナ30の設置の調整を容易にすることができる。
【実施例2】
【0050】
図4は、実施例2の非接触通信システム1aの構成を示すブロック図である。
非接触通信装置5aのリーダライタ10aは、実施例1の直流電源15の代わりに、電圧制御部17が設けられている。この電圧制御部17は、通信用信号に重畳する直流電圧を複数種類の電圧に切り替えるものである。
【0051】
スキャンアンテナ30aは、実施例1のRF電力検出器39が省略されており、それ以外は実施例1と同一である。なお、表示器(実施例1の表示器41)については図示省略している。
【0052】
その他の構成は実施例1と同一であるから、その詳細な説明を省略する。
このように構成された非接触通信システム1aは、実施例1の図3で説明したフローチャートと同様に動作するが、ステップS2,S7での指向性セット、およびステップS11,S12での指向性変更指示の方法のみが異なる
すなわち、ステップS2では、電圧制御部17がRF信号に重畳する電圧の差によって指向性のセット指示を出す。
ステップS11では、前記セット指示を受けたスキャンアンテナ30aが、受け取った電圧に対応する指向性をセットし、通信を開始する。詳述すると、制御回路部40によって電圧を検知し、制御回路部40は、検知した電圧に従って指向性を決定し、アンテナ部31の指向性をこの決定した指向性に変化させる。
【0053】
ステップS7では、電圧制御部17がRF信号に重畳する電圧の差によって指向性のセット指示を出す。
ステップS12では、これを受けたスキャンアンテナ30の制御回路部40が、検知した電圧に従って指向性を決定し、アンテナ部31の指向性をこの決定した指向性に変化させる。
【0054】
以上の構成および動作により、実施例1と同一の作用効果を奏することができる。また、重畳する電圧を異ならせることができるため、アンテナ部31が当該重畳された電圧を受け取ると、この電圧値に対応する指向方向に向けて交信領域51〜53を変更するようアンテナ部31を制御することができる。
【0055】
なお、この実施例では、電圧の差によって指向方向を変化させる構成としたが、直流電圧を利用した他の方法によって指向方向を変化させても良い。
例えば図5(A)のタイミングチャートに示すように、RF信号に重畳する直流電圧の立ち上がりと立ち下がりによって指向方向を変化させてもよい。この場合、直流電圧が立ち上がると、図示するように例えばパターン1の指向方向とし、直流電圧が立ち下がるとRF出力を停止すると良い。また、次に直流電圧が立ち上がると、今度はさきほどと異なるパターン2でRF信号を送信すると良い。このパターン1〜3の順序は、数字の順でも良いし、ランダムに選択する構成にしてもよい。この場合でも、上述と同一の作用効果が得られる。またこのように直流電圧の立ち上がりや立ち下がりを利用することで、電圧を変化させる必要がなく、回路構成をシンプルにすることができる。
【0056】
また、図5(B)のタイミングチャートに示すように、RF信号に重畳する直流電圧を振幅変調して指向方向を変化させてもよい。この場合、制御回路部40は、振幅変調された直流電圧を受けて、図示するように例えばパターン1の指向方向とし、次に振幅変調された直流電圧を受けてパターン3の指向方向とするといったように、振幅変調の種類に応じた指向方向にすると良い。この場合でも、上述と同一の作用効果が得られる。
【実施例3】
【0057】
図6は、実施例3の非接触通信システム1bの構成を示すブロック図である。
非接触通信装置5bのリーダライタ10bは、実施例1の構成に加えて、HPF(ハイパスフィルター)13、LPF(ローパスフイルター)14、およびスキャン制御用RF送受信部18が設けられている。
【0058】
HPF13は、同軸ケーブル20がRF送受信部11と直流電源15へ分岐する分岐部よりもRF送受信部11側に接続されている。
LPF14は、上記分岐部と同軸ケーブル20との間に設けられた分岐の先に接続され、コイル16と並列に接続されている。
スキャン制御用RF送受信部18は、LPF14の前段に接続されている。
【0059】
この構成により、リーダライタ10bは、通信用信号として高周波を利用し、指向方向の制御用信号として低周波を使用することができる。すなわち、RF送受信部11にて送受信される通信用信号は、HPF13によって高周波にされ、直流電源15からコイル16を介して供給される直流電圧が重畳される。スキャン制御用RF送受信部18から送信される指向方向を切替制御する信号は、LPF14によって低周波にされ、通信用信号に直流電圧が重畳された信号にさらに重畳されて同軸ケーブル20でスキャンアンテナ30bへ送信される。
【0060】
スキャンアンテナ30bは、実施例1のスキャンアンテナ30と比べて、RF電力検出器39の代わりにLPF(ローパスフィルター)36が設けられており、その他の構成要素は同一に構成されている。
【0061】
このスキャンアンテナ30bは、LPF36にて取り出した低周波成分により指向方向の制御用信号を得、この制御用信号に従って制御回路部40が位相制御部32を制御する。これによってアンテナ部31の指向方向を制御する。
その他の構成は実施例1と同一であるから、その詳細な説明を省略する。
【0062】
このように構成された非接触通信システム1bは、実施例1の図3で説明したフローチャートと同様に動作するが、ステップS2,S7での指向性セット、およびステップS11,S12での指向性変更指示の方法のみが異なる。
【0063】
すなわち、ステップS2,S7では、スキャン制御用RF送受信部18が低周波の制御用信号をRF信号に重畳する。ステップS11,S12では、スキャンアンテナ30の制御回路部40は、この低周波成分をLPF36によってRF信号から分離取得して制御用信号を得、この制御用信号によって位相制御部32を制御してアンテナ部31の指向方向を変化させる。
【0064】
以上の構成および動作により、実施例1と同一の作用効果を奏することができる。また、重畳する制御用信号を異ならせることができるため、アンテナ部31が当該重畳された制御用信号を受け取ると、この制御用信号に対応する指向方向に向けて交信領域51〜53を変更するようアンテナ部31を制御することができる。
【0065】
なお、この実施例の場合、制御回路部40に記憶されているプログラムを、リーダライタ10から更新できるように構成してもよい。この場合、スキャン制御用RF送受信部18から低周波によって新しいプログラムを送信し、制御回路部40のメモリに記憶されている古いプログラムを新しいプログラムに書き換えれば良い。これにより、スキャンアンテナ30を動作させるプログラムの更新が必要となった場合にリーダライタ10から更新することができる。
【実施例4】
【0066】
図7は、実施例4の非接触通信システム1cの構成を示すブロック図である。
非接触通信装置5cのリーダライタ10cは、実施例1の構成からコンデンサ12、直流電源15、およびコイル16を削除して構成されている。すなわち、このリーダライタ10cは、指向方向の制御のための特別な構成要素を持っておらず、既存のリーダライタと同様の構成に作製されている。
【0067】
RF送受信部11の適宜の記憶部には、スキャンアンテナ30のアンテナ部31の指向方向制御用プログラムが記憶されている。このプログラムは、RF送受信部11から送信する通信用信号の出力ON、出力OFF、または出力ONと出力OFFの組み合わせによって指向方向制御用の制御信号を送信する。出力ONと出力OFFの組合せでは、例えば出力OFFしてから出力ONするまでのOFF時間を複数種類用意しておき、このOFF時間によって指向方向を特定するとった利用が可能である。
【0068】
スキャンアンテナ30cは、実施例1のスキャンアンテナ30と比べて、コンデンサ33がなく、コイル35の変わりにRF整流回路部37および蓄電部38が直列に設けられており、その他の構成要素は同一に構成されている。
【0069】
このスキャンアンテナ30cは、通信用信号の出力ONや出力OFFをRF電力検出器39により検知し、この出力ONや出力OFFによって制御回路部40が位相制御部32を制御する。これによってアンテナ部31の指向方向を制御する。
【0070】
また、RF整流回路部37は、同軸ケーブル20から供給される通信用信号の一部を整流して直流電圧を取り出す。そして、蓄電部38は、取り出した直流電圧を蓄電し、動作を安定させる。
【0071】
この蓄電部38は、バッテリーとして各部への電力供給を継続して行う機能を有し、同軸ケーブル20から供給される通信用信号がアンテナ部31の指向方向の変更のために途切れた(出力OFFされた)場合でも、蓄電している電力によって継続して各部へ電力供給する。これにより、指向方向の変更のたびに制御回路部40がOFFとなって最初から動作を開始するといったことを防止し、連続動作を可能にしている。
その他の構成は実施例1と同一であるから、その詳細な説明を省略する。
【0072】
このように構成された非接触通信システム1cは、実施例1の図3で説明したフローチャートと同様に動作するが、ステップS2,S7での指向性セット、およびステップS11,S12での指向性変更指示の方法のみが異なる。
【0073】
すなわち、ステップS2,S7では、スキャン制御用RF送受信部18が通信用信号の出力のONまたはOFFを実行する。スキャンアンテナ30cの制御回路部40は、ステップS11,S12にて、前記ONまたはOFFをRF電力検出器39により検知し、この検知によって位相制御部32を制御してアンテナ部31の指向方向を変化させる。
【0074】
以上の構成および動作により、実施例1と同一の作用効果を奏することができる。また、リーダライタ10cに既存のリーダライタを使用することができ、ソフトウェアの更新のみで対応することができる。
【実施例5】
【0075】
図8は、実施例5の非接触通信システム1dの構成を示すブロック図である。
リーダライタ10dは、実施例1の構成に対してコンデンサ12の代わりにHPF13、コイル16の代わりにLPF14、直流電源15の代わりにスキャン制御用RF送受信部18を備えている。
【0076】
この構成により、リーダライタ10dは、通信用信号として高周波を利用し、指向方向の制御用信号として低周波を使用することができる。すなわち、RF送受信部11にて送受信される通信用信号は、HPF13によって高周波にされ、スキャン制御用RF送受信部18から送信される指向方向を切替制御する信号は、LPF14によって低周波にされ、通信用信号に重畳されて同軸ケーブル20でスキャンアンテナ30dへ送信される。
【0077】
スキャンアンテナ30dは、実施例1のスキャンアンテナ30と比べて、コンデンサ33の代わりにHPF34、コイル35の変わりにRF整流回路部37、およびRF電力検出器39の代わりにLPF36が設けられており、その他の構成要素は同一に構成されている。
【0078】
このスキャンアンテナ30dは、LPF36にて取り出した低周波成分により指向方向の制御用信号を得、この制御用信号に従って制御回路部40が位相制御部32を制御する。これによってアンテナ部31の指向方向を制御する。
その他の構成は実施例1と同一であるから、その詳細な説明を省略する。
【0079】
このように構成された非接触通信システム1bは、実施例1の図3で説明したフローチャートと同様に動作するが、ステップS2,S7での指向性セット、およびステップS11,S12での指向性変更指示の方法のみが異なる。
【0080】
すなわち、ステップS2,S7では、スキャン制御用RF送受信部18が低周波の制御用信号をRF信号に重畳する。ステップS11,S12では、スキャンアンテナ30の制御回路部40が、この低周波成分をLPF36によってRF信号から分離取得して制御用信号を得、この制御用信号によって位相制御部32を制御してアンテナ部31の指向方向を変化させる。
【0081】
以上の構成および動作により、実施例1と同一の作用効果を奏することができる。また、重畳する制御用信号として複数種類の信号を使用できるため、アンテナ部31が当該重畳された制御用信号を受け取ると、この制御用信号に対応する指向方向に向けて交信領域51〜53を変更するようアンテナ部31を制御することができる。
【0082】
なお、上述した各実施例におけるスキャンアンテナ30の表示器41の構成、および変化させる指向方向の設定は、適宜の構成および設定とすることができる。
例えば、図9(A)の斜視図に示すように、印刷表示42とLED41a〜41eの組み合わせにより、パターン1〜パターン5(交信領域51〜55)の指向方向を表示してもよい。この場合、印刷表示42は、図9(B)に示すように、角度表示文字43と方向表示線44を印刷しておくとよい。
【0083】
これにより、LED41a〜41eのいずれか1つを点灯すれば、利用者は、印刷表示42と合わせて視認し、現在の指向方向を容易に確認できる。また、図示の例では指向方向を5段階に設定しているが、この5段階のどの方向を現在の交信領域としているか利用者が容易に認識できる。
【0084】
また、図10(A)に示すように表示器41として液晶ディスプレイを備えても良い。この場合、液晶ディスプレイには、図10(B)に示すように矢印45と、角度46を表示すればよい。
【0085】
この場合も、利用者が指向方向を容易に認識することができる。また、指向方向の設定種類を利用者の希望によって3段階、5段階といったように異なる設定にする場合、ハードウェアを変更せずともソフトウェアの設定だけで対応でき、汎用性を増すことができる。
【0086】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の切替信号送信手段は、実施形態のRF送受信部11、電圧制御部17、またはスキャン制御用RF送受信部18に対応し、
以下同様に、
電力供給手段は、直流電源15に対応し、
伝送ケーブルは、同軸ケーブル20に対応し、
指向性可変アンテナおよびアンテナ装置は、スキャンアンテナ30に対応し、
アンテナ動作切替手段は、位相制御部32および制御回路部40に対応し、
直流電圧取出部は、RF整流回路部37に対応し、
電力検出部は、RF電力検出器39に対応し、
出力手段は、表示器41に対応し、
通信用信号は、RF信号に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】非接触通信システムの構成を示すブロック図。
【図2】スキャンアンテナの外観構成を示す斜視図。
【図3】非接触通信システムの動作を説明するフローチャート。
【図4】実施例2の非接触通信システムの構成を示すブロック図。
【図5】タイミングチャートの説明図。
【図6】実施例3の非接触通信システムの構成を示すブロック図。
【図7】実施例4の非接触通信システムの構成を示すブロック図。
【図8】実施例5の非接触通信システムの構成を示すブロック図。
【図9】表示器の他の構成例を示す説明図。
【図10】表示器の他の構成例を示す説明図。
【符号の説明】
【0088】
5…非接触通信装置、10…リーダライタ、11…RF送受信部、15…直流電源、17…電圧制御部、18…スキャン制御用RF送受信部、20…同軸ケーブル、30…スキャンアンテナ、31…アンテナ部、32…位相制御部、37…RF整流回路部、39…RF電力検出器、40…制御回路、41…表示器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向方向を変更できるアンテナ部を備えて該アンテナ部により非接触通信を行う指向性可変アンテナと、該指向性可変アンテナに伝送ケーブルで接続されて該伝送ケーブルを介して通信用信号を送受信して通信制御を行うリーダライタとを備えた非接触通信装置であって、
前記リーダライタに、前記アンテナ部の指向方向を切り替える指向方向切替用信号を前記通信用信号と共に前記伝送ケーブルを通じて送信する切替信号送信手段を備え、
前記指向性可変アンテナに、前記指向方向切替用信号を検知して前記アンテナ部の指向方向を切り替えるアンテナ動作切替手段を備えた
非接触通信装置。
【請求項2】
前記リーダライタに、前記アンテナ部の指向方向を人間が認識可能に出力する出力手段を備えた
請求項1記載の非接触通信装置。
【請求項3】
前記切替信号送信手段を、前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方によって指向方向の切り替えを指示する構成とし、
前記アンテナ動作切替手段を、前記出力ONと出力OFFの少なくとも一方を検知して前記アンテナ部の指向方向を切り替える構成とした
請求項1または2記載の非接触通信装置。
【請求項4】
前記リーダライタの前記切替信号送信手段と前記伝送ケーブルの間に、前記通信用信号に直流電圧を重畳させる電力供給手段を備え、
前記指向性可変アンテナの前記アンテナ動作切替手段を、
前記通信用信号の出力を検知する電力検出部と、
前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、
前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方に基づいて前記位相制御部の制御を行う制御回路部とで構成した
請求項3記載の非接触通信装置。
【請求項5】
前記アンテナ動作切替手段を、
前記通信用信号の出力を検知する電力検出部と、
前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、
前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方を前記指向方向切替用信号として前記位相制御部の制御を行う制御回路部と、
前記伝送ケーブルから来る通信用信号の一部を整流し直流電圧を取り出して各部に供給する直流電圧取出部とを備えた
請求項3記載の非接触通信装置。
【請求項6】
指向方向を変更できるアンテナ部と、
伝送ケーブルから受信する通信用信号の出力を検知する電力検出部と、
前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、
前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方に基づいて前記位相制御部の制御を行う制御回路部と、
前記伝送ケーブルから受信する通信用信号の一部を整流し直流電圧を取り出して各部に供給する直流電圧取出部とを備えた
アンテナ装置。
【請求項1】
指向方向を変更できるアンテナ部を備えて該アンテナ部により非接触通信を行う指向性可変アンテナと、該指向性可変アンテナに伝送ケーブルで接続されて該伝送ケーブルを介して通信用信号を送受信して通信制御を行うリーダライタとを備えた非接触通信装置であって、
前記リーダライタに、前記アンテナ部の指向方向を切り替える指向方向切替用信号を前記通信用信号と共に前記伝送ケーブルを通じて送信する切替信号送信手段を備え、
前記指向性可変アンテナに、前記指向方向切替用信号を検知して前記アンテナ部の指向方向を切り替えるアンテナ動作切替手段を備えた
非接触通信装置。
【請求項2】
前記リーダライタに、前記アンテナ部の指向方向を人間が認識可能に出力する出力手段を備えた
請求項1記載の非接触通信装置。
【請求項3】
前記切替信号送信手段を、前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方によって指向方向の切り替えを指示する構成とし、
前記アンテナ動作切替手段を、前記出力ONと出力OFFの少なくとも一方を検知して前記アンテナ部の指向方向を切り替える構成とした
請求項1または2記載の非接触通信装置。
【請求項4】
前記リーダライタの前記切替信号送信手段と前記伝送ケーブルの間に、前記通信用信号に直流電圧を重畳させる電力供給手段を備え、
前記指向性可変アンテナの前記アンテナ動作切替手段を、
前記通信用信号の出力を検知する電力検出部と、
前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、
前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方に基づいて前記位相制御部の制御を行う制御回路部とで構成した
請求項3記載の非接触通信装置。
【請求項5】
前記アンテナ動作切替手段を、
前記通信用信号の出力を検知する電力検出部と、
前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、
前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方を前記指向方向切替用信号として前記位相制御部の制御を行う制御回路部と、
前記伝送ケーブルから来る通信用信号の一部を整流し直流電圧を取り出して各部に供給する直流電圧取出部とを備えた
請求項3記載の非接触通信装置。
【請求項6】
指向方向を変更できるアンテナ部と、
伝送ケーブルから受信する通信用信号の出力を検知する電力検出部と、
前記アンテナ部に送信する信号の位相を制御する位相制御部と、
前記電力検出部が検知した前記通信用信号の出力ONと出力OFFの少なくとも一方に基づいて前記位相制御部の制御を行う制御回路部と、
前記伝送ケーブルから受信する通信用信号の一部を整流し直流電圧を取り出して各部に供給する直流電圧取出部とを備えた
アンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−41599(P2010−41599A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204585(P2008−204585)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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