説明

非晶質または半結晶性の銅マンガン酸化物のカソード材料を有する非水セルのための寿命終末期の指示システムおよび方法

本開示は、概して電気化学的装置の寿命終末期状態を指示すること、更に詳細には、非水電気化学セルへの使用に適した高容量のカソード材料を含むセルにおける寿命終末期状態を検知および決定するシステムおよび方法に関する。高容量のカソード材料は、非晶質または半結晶性の銅マンガン酸化物および任意にフッ素化炭素を有する。更に、本開示は、決定した寿命終末期状態をセルのユーザーまたは監視装置に送信することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許出願第12/614,667号(2009年11月9日提出)、米国特許仮出願第61/157,827号(2009年3月5日提出)、米国特許仮出願第61/161,303号(2009年3月18日提出)、米国特許仮出願第61/161,300号(2009年3月18日提出)および米国特許仮出願第61/173,534号(2009年4月28日提出)の優先権を主張するものであり、それぞれの全内容を参照することにより本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、概して電気化学的装置の寿命終末期状態を指示すること、更に詳細には、非水電気化学セルへの使用に適した高容量のカソード材料を含むセルにおける寿命終末期状態を検知および決定するシステムおよび方法に関する。高容量のカソード材料は、非晶質または半結晶性の銅マンガン酸化物および任意にフッ素化炭素を含む。更に、本開示は、決定した寿命終末期状態をセルのユーザーに送信することに関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学的装置で動く製品は、その電気化学的装置の有用寿命(即ち、その電気化学的装置がアプリケーションにエネルギーを供給する能力)によって制限される。例えば、懐中電灯の有用寿命は、十分な電流を懐中電灯のランプまたは発光ダイオードに供給するセルの能力によって制限される。この有用寿命は、放電率、電気化学的装置の年齢、またはその装置の使用環境等、ユーザーによって管理されないいくつかの要因に依存している。電気化学的装置が有用寿命の終わりに達する時期を、その装置の「寿命終末期」(EOL)と称することがある。
【0004】
一次セルを含む電気化学的装置で動くアプリケーションにおいて、セルのEOL状態を知ることは、セルを交換する時期であるというユーザーに対しての警告となり得る。二次セルを含む電気化学的装置で動くアプリケーションにおいて、EOL状態は、セルを充電する時期であるというユーザーに対しての合図となり得る。例えば、懐中電灯のユーザーがセルのEOL状態が近いことに気付けば、懐中電灯を使用していない時にセルを交換または充電し、それにより懐中電灯は、その使用時はいつでも光を供給することができる。
【0005】
リチウム電気化学セルは、一般にバッテリーと称され、軍事製品や消費者製品の分野において広く用いられている。これら製品の多くは、高エネルギーおよび高電力のバッテリーを利用する。携帯用電子機器の小型化もあって、電源能力や耐用年数が向上したより一層小型のリチウムバッテリーを開発することが望ましい。耐用年数が延びたより小型のバッテリーを開発する一つの方法として、より高エネルギーのカソード材料を開発することがある。
【0006】
高エネルギーのカソード材料の一例として、フッ素化炭素(即ちCF)がある。CFは、とりわけ軍事用装置や埋め込み医療装置用の再充電可能でない(一次)バッテリーにおいてリチウムアノードとともにしばしば用いられる。CF(ここではx=1.0)は、比エネルギーがおよそ860mAh/gである。高エネルギーのカソード材料の他の例としては酸化バナジウム銀および二酸化マンガンが挙げられ、比容量はそれぞれ約315および308mAh/gである。
【0007】
Liイオンバッテリー等の再充電可能な(二次)バッテリー用のカソードは、一般的に、一次バッテリーのカソードよりもエネルギー貯蔵能力が低い。しかしながら、二次バッテリーは通常数百回もの再充電が可能であり、それにより生涯コストおよびバッテリーの処理コストを著しく低減することができる。Liイオンバッテリーに用いられる二次バッテリーのカソードの例としてコバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウムおよびニッケルコバルト酸リチウムが挙げられる。
【0008】
より長寿命またはより小型のバッテリーに対する需要を満たすため、一次バッテリーのように高エネルギーを示し、かつ二次バッテリーのように部分的または完全に再充電ができる可能性を有し、従って寿命が延び、また全体コストを効率的に低減するカソードの開発が、依然として必要とされている。かかる改善された一次および/または二次バッテリーを実現するための有力なアプローチの一つとして、混合したカソード材料が提案されてきた。混合したカソード材料の他の利益としては、放電率能および/またはカソードの安定性を強化しながらも、重量あたりおよび/または体積あたりのエネルギー密度を維持する点が挙げられる。かかる利益を得るためのアプローチは通常、ハイレート放電が可能なカソード材料と高いエネルギー密度のカソード材料とを混合することを含む。
【0009】
米国特許第7,476,467号は、リチウム二次バッテリー用のカソード材料を開示している。そのカソード活物質は、(A)スピネル型構造のリチウム−マンガン金属複合酸化物と、(B)層状構造のリチウム−ニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物との混合物を含む。かかるカソード活物質は、リチウムと金属酸化物の特性が改善されたことにより、室温と高温の両方において優れた安全性および長期間の耐用年数を有すると考えられている。
【0010】
セルによっては、放電時に、セルの放電電圧が比較的一定となる間隔を示すものがある(例えばCF系のセル)。セルのEOLが近づくと、放電電圧は、放電容量および/または時間に対して急速に減少する。つまり、特定の容量または時間に対する放電電圧のプロットである電圧放電曲線は、大きな負の傾きを示す。比較的一定の放電電圧からの電圧の減少は、放電電圧の急低下と同時に起こるため、EOL状態についての有用な情報を提供し得ない。言い換えれば、急激な電圧低下の始まりとセルの実際のEOLとの間には時間がほとんど存在しない。更に、セル材料やセルの製造プロセスに特有の相違点が存在するため、電圧放電曲線の傾きはセルによって異なる。電圧放電曲線の大きな負の傾き、およびセルによって異なるそのばらつきは、電気化学的装置の各端子での電圧計測を用いてセルのEOL状態を決定する際の正確性、再現性および実用性に影響を及ぼす。
【0011】
重要なアプリケーション、または直ちにセルにアクセスできない(即ち、容易にセルを交換することができない)アプリケーションにおいては、EOL状態に関する情報を装置のユーザーまたは他の関係者に送信することがある。これらのアプリケーションの種類の例としては、埋め込み可能な医療装置や、地震、火山、津波またはその他の環境状態のリモートセンシングに用いる装置や、訓練および戦闘任務時に用いる軍用/警察の通信用装置がある。これらの例のそれぞれにおいては、直ちにセルにアクセスできず、また、低バッテリー状態のせいで必要な機能を実行することができないという結末を許容することはできない。
【0012】
フッ素化炭素と他の金属酸化物とを含む複合カソードを、バッテリーに寿命終末期(EOL)の指標をもたらす(即ち、比較的一定の放電電圧の間隔の後に有用な放電電圧の短い間隔をもたらす)目的で使用することは、当業者に知られている。例えば、米国特許第5,667,916号には、CFと、酸化銅、その他の材料またはその他の材料の混合物等の寿命終末期の指標として機能する他の材料とのカソード混合物を有するバッテリーが記載されている。同様に、米国特許第5,180,642号には、二酸化マンガン(MnO)、一フッ化炭素(CF、ここではx=1である)またはこれら2つの混合物と、酸化バナジウム、バナジン酸銀、フッ化ビスマスおよび硫化チタンから成る群より選択される寿命終末期の添加剤とを含むカソード混合物を有する電気化学セルまたはバッテリーが記載されている。米国特許第4,259,415号は、主正極活物質および前駆体を含む、寿命終末期(EOL)の指標としてのカソード材料を提供している。好適な主正極活物質としては、酸化モリブデン(MoO)、酸化銀(AgO)およびフッ化黒鉛(CF)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7,476,467号
【特許文献1】米国特許第5,667,916号
【特許文献2】米国特許第5,180,642号
【特許文献3】米国特許第4,259,415号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
今まで開発されたバッテリーまたはセルの多くは寿命終末期(EOL)の指標を含むが、そのエネルギー密度は所望の値に満たない。CFに加えるEOLの添加剤(例えば酸化銀バナジウム、即ちSVO)の容量(mAh/gmまたはmAh/cc)はCF材料の容量よりも低く、それゆえ複合電極の全容量はCFそのものの容量よりも低い。更に、または或いは、今まで開発された電気化学的装置、バッテリーまたはセルの多くは、放電の開始時に初期電圧の低下または降下を示す。従って、改善されたセルの必要性、更に詳細には、かかるセルに用いる改善されたカソード材料、かかるセルにおけるEOL状態の検出、およびセルのユーザーへのEOL状態の送信の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、簡潔に言うと、本開示は非水電気化学セルにおける寿命終末期状態の検出、およびかかる寿命終末期状態の指示の提供に関する。かかるセルは(i)アノードと、(ii)銅マンガン酸化物を含むカソード材料を含むカソードと、(iii)アノードとカソードとの間に配置されたセパレータと、(iv)アノード、カソードおよびセパレータと流体連結した非水電解質とを具える。
【0016】
更に、本開示は、寿命終末期状態の指示を選択的に提供するシステムおよび方法に関する。かかるシステムは電気化学的装置、検知部品およびコントローラを具える。電気化学的装置は、正極端子、負極端子およびセルを具える。セルのカソードは、非晶質または半結晶性の銅マンガン酸化物のカソード材料を含む。検知部品は、電気化学的装置の正極端子に接続された正入力と、電気化学的装置の負極端子に接続された負入力と、電気化学的装置の電圧を検知するための電圧センサーとを含む。コントローラは、検知部品の出力に接続され、電気化学的装置の電圧を示す信号を受信する。コントローラは、受信した信号に応じて寿命終末期状態の指示を提供すべきかを決定し、その決定に応じて寿命終末期状態の指示を選択的に提供する。
【0017】
また、本開示は、負荷装置、電気化学的装置および寿命終末期センサーを具える電子機器、並びにかかる電気化学的装置の寿命終末期状態の指示を選択的に提供する方法に関するものでもある。電気化学的装置は、負荷装置の正極端子に接続された正極と、負荷装置の負極端子に接続された負極と、非晶質または半結晶性の銅マンガン酸化物のカソード材料を含むカソードを持ったセルとを有する。電気化学的装置は、負荷装置に電力を供給する。寿命終末期センサーは、検知部品とコントローラとを含む。検知部品は、電気化学的装置の正極端子に接続された正入力と、電気化学的装置の負極端子に接続された負入力と、電気化学的装置の電圧を検知するための電圧センサーとを含む。コントローラは検知部品の出力に接続され、電気化学的装置の電圧を示す信号を受信する。コントローラは、受信した信号に応じて寿命終末期状態の指示を提供すべきかを決定し、その決定に応じて寿命終末期状態の指示を選択的に提供する。
【0018】
以下で詳述する1つ以上の更なる特徴を、本開示の範囲から逸脱することなく上述の1つ以上の実施形態に組み込んでもよいことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本開示の様々な実施形態を試験するための第1の例示的試験セルを示す。
【図2】本開示の銅マンガン酸化物のカソード材料の実施形態によるX線回折グラフを示す。
【図3】本開示の銅マンガン酸化物(CuMn)のカソード材料の更なる実施形態による放電電圧のプロファイルを示す。
【図4】本開示の銅マンガン酸化物(CuMn)/CF(15/85)のカソード材料の更に別の実施形態による、CFだけの試料と比べた放電電圧のプロファイルを示す。
【図5】本開示の別の実施形態によるサイクリックボルタンメトリーを示す。
【図6】リチウムCFの放電プロファイルを示す。
【図7】リチウムCF/CuOの放電プロファイルを示す。
【図8】本開示の様々な実施形態による、様々なCuMn試料の焼きなまし温度に応じた密度を示す表である。
【図9】本開示の別の様々な実施形態の試験に用いたコインセルの概略図を示す。
【図9A】本開示の別の様々な実施形態の試験に用いたコインセルの概略図を示し、ここで、図9Aは図9の9Aの線に沿ったセルの概略断面図である。
【図10】本開示の様々な実施形態により作製したカソード材料(CuMn)の密度を示し、特にCu:Mnのモル比に応じた密度の変化を示す。
【図11】本開示の様々な実施形態により作製したカソード材料のX線回折グラフを示し、特にCu:Mnのモル比に応じた変化を示す。
【図12A】本開示の様々な実施形態により作製したカソード材料の走査電子顕微鏡画像を示す。
【図12B】本開示の様々な実施形態により作製したカソード材料の走査電子顕微鏡画像を示す。
【図13A】本開示の様々な実施形態により作製したカソード材料のX線光電子分光の結果を示し、ここで、図13AはXPS−Cuである。
【図13B】本開示の様々な実施形態により作製したカソード材料のX線光電子分光の結果を示し、ここで、図13BはXPS−Mnである。
【図14】本開示の様々な実施形態により作製したカソード材料の熱分解を示し、特にCu:Mnのモル比に応じた変化を示す。
【図15】本開示の更なる実施形態により作製したセルの放電電圧のプロファイルを示す(ここでのカソード材料のCu:Mnのモル比は3:1である)。
【図16】本開示の更に別の実施形態により作製したセルの放電電圧のプロファイルを示す。
【図17】本開示の更に別の実施形態により作製したセルの放電プロファイルを示す。
【図18】本開示の様々な実施形態によるLiCF、Li/CFおよびLi/(CF+CuMn)のセルにおけるICD試験の電圧プロファイルを示す。
【図19】負荷装置、バッテリーおよびEOLセンサーを含んだ様々な実施形態による装置のブロック図を示す
【図20】送信機および受信機とともに検知機能および制御機能を利用した様々な実施形態による装置のブロック図を示す。
【図21】コントローラ内に様々な機能要素を含んだ様々な実施形態による装置のブロック図を示す。
【図22】セルのEOL状態を検知および送信する方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.カソード材料組成およびセル部品
本開示に基づき、また本明細書の以下において更に詳述するように、銅マンガン酸化物、更に詳細には非晶質または半結晶性の銅マンガン酸化物を含むカソード材料を用いると、非水電気化学セルの1つ以上の性能特性が改善され、または強化され得ることを発見した。本開示の特定の一実施形態においては、銅マンガン酸化物、更に詳細には非晶質または半結晶性の銅マンガン酸化物を、フッ素化炭素(即ち、CF)と組み合わせて用いると、かかる非水セルの性能が改善され、または強化され得ることを更に発見した。
【0021】
この点において、本明細書で使用する「非水」とは、電解質として有機溶媒または有機溶媒の混合物を無機または有機の塩とともに含んだ、または利用した電気化学セルを指すことに留意すべきである。従って、非水電解質は水を全く含有せず;つまり、その別成分または特異成分として電解質に水を加えないが、電解質の調製に用いる有機溶媒の微量のまたは潜在的な成分または不純物としては水が存在することがある。例えば、本開示の1つ以上の限定されない実施形態において、電解質の含水量は通常約1000ppm未満、約750ppm未満、約500ppm未満、約250ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約25ppm未満、約20ppm未満または更にそれ未満となることがある。
【0022】
この点において、電気化学セルはこの他、本明細書においてバッテリー、キャパシタ、セル、電気化学的装置等とも称されることがあることにも更に留意すべきである。当然のことながら、これらの呼称は限定されず、電極と電解質との間での電子移動が伴う何れのセルも、本開示の範囲内であると考える。
【0023】
この点において、「改善された」または「強化された」性能特性とは、一般に、本開示の非水電気化学セルが、例えば本明細書にて詳述する銅マンガン酸化物のカソード材料を含めずに同様に調製または設計した非水電気化学セルと比べ、比エネルギー、エネルギー密度、作動電圧、放電率能および/または寿命終末期の挙動若しくは指標において改善または強化されたことを指すことにも、更に一層留意すべきである。
【0024】
本開示の銅マンガン酸化物のカソード材料は、一般的に式:CuMnで表され、1つ以上の特定の実施形態においては、式:CuMn・nHO[式中、「nHO」はカソード材料中に存在する構造上の水および/または表面水を表す]で表される。カソード材料において、銅は約+1〜約+3の酸化状態となることがあり、マンガンは約+2〜約+7の酸化状態となることがある。また、a、bおよびcは、それぞれ独立して0よりも大きい値であり、更に(i)a+bの和は約1〜約3の範囲となることがあり、ここで(ii)cは、実験的に決定され得る値であり、a、b並びに銅およびマンガンの酸化状態の値に整合する値であり、1つ以上の実施形態においては、銅の酸化状態がおよそ+2またはそれよりも高くなるような値である。
【0025】
この点において、本開示の銅マンガン酸化物は結晶性ではない(例えば、当技術分野で周知のようにスピネル型構造ではない)ことに留意すべきである。もっと正確に言えば、本開示の銅マンガン酸化物は、非晶質または半結晶性の形態をとっている。本材料が有する非晶質または半結晶性の性質は、少なくとも一部が銅のマンガンに対するモル比に依存していると考えられている。特に、非晶質の銅マンガン酸化物の式がCuMn[式中、Cu対Mnの平均モル比は約1:1またはそれ以上であり、かかる比は、例えば約1:1と(約)3:1未満との間(Cu:Mn)、約1.25:1と約2.75:1未満との間(Cu:Mn)、または約1.5:1と約2.5:1未満との間(Cu:Mn)である]であるような実施形態も、本開示の様々な実施形態の1つである。銅マンガン酸化物が半結晶性であり式がCuMnである別の様々な実施形態においては、Cu:Mnの平均モル比が約3:1またはそれ以上であり、かかる比は、例えば(約)3:1と約6:1との間(Cu:Mn)、約3.25:1と約5.75:1との間(Cu:Mn)、または約3.5:1と約5.5:1との間(Cu:Mn)である。
【0026】
更に、本開示の非晶質または半結晶性の銅マンガン酸化物のカソード材料は、有利にはその平均密度が約4g/cm、約4.5g/cm、約5g/cm、約5.5g/cm、約6g/cmまたはそれ以上であることに留意すべきである(本密度は、例えば約4g/cm〜約6g/cmまたは約4.5g/cm〜約4.5g/cmの範囲となり得る)。更に、または或いは、カソード材料の表面積(例えばBET法等の、当技術分野で一般に周知の方法を用いて測定された)は、少なくとも約50m/g、約75m/g、約100m/g、約125m/g、約150m/gまたはそれ以上となることがあり、1つ以上の実施形態においては、BET表面積が、例えば約50〜約150m/gまたは約75〜約125m/gの範囲となり得る。この点において、表面積および本明細書で記述されるそれに関する範囲は、その材料を調製する条件に依存することにも更に留意すべきであり、従って、それらを限定された意味で捉えるべきではない。
【0027】
本明細書で詳述する銅マンガン酸化物のカソード材料に加え、非水電気化学セルの他の構成要素を、当技術分野で周知のものから選択してもよい。例えば、本開示の様々な実施形態によれば、カソードは、任意に粉末状とし得るポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)のようなポリマー結合剤等の結合剤を含有してもよい。更に、カーボンブラック(例えばティムカル社製のスーパーP)、天然黒鉛や人造黒鉛および様々なそれらの誘導体(グラフェン、グラファイトナノプレートレットおよびティムカル社製のKS4等の膨張黒鉛を含む)、カーボンナノファイバー、並びにコークや炭や活性炭等の非黒鉛系炭素等の炭素材料を、導電性充填剤としてカソードに用いてもよい。
【0028】
しかしながら、特定の一実施形態においては、本開示のカソード材料は更に炭素質の活物質を含み、また天然黒鉛や人造黒鉛およびグラフェンやグラファイトナノプレートレットや膨張黒鉛を含む全てのそれらの誘導体、カーボンナノファイバー、並びにコークや炭や活性炭等の非黒鉛系炭素等の黒鉛材料を含む。好適な一実施形態において、この炭素質材料は、好ましくは炭素とフッ素から調製する(即ち、これはフッ素化炭素材料である)。このフッ素化炭素材料は、一般的に式:(CF)n[式中、xは通常、約0.1〜1.9の間で変化し、好ましくは約0.4〜1.2の間で変化し、より好ましくは約0.6〜1.0の間で変化する]で表される。また、このフッ素化炭素は、(CFx1)nおよび(CFx2)mの混合物[式中、x1は好ましくは約0.8〜1.2であり、x2は好ましくは約0.4〜0.8である]とすることもできる。この点において、式:(CF)n、(CFx1)nおよび(CFx2)mにおけるnおよびmはモノマー単位の数を指し、これはばらつきが大きいが、例えば約1〜約5の範囲内となり得ることに留意すべきである。従って、(CFx1)対(CFx2)の比は、例えば約5:1と約1:5との間、約4:1と約1:4との間、約3:1と約1:3との間、約2:1と約1:2との間、または約1:1の比とさえなることがあり;別の言い方をすれば、本開示のカソード材料は、様々な実施形態において、例えばCF/CF0.6の混合物のようなCFの混合物を含有することがあり、ここでこの混合物は、例えば約90%のCFと約10%のCF0.6、約80%のCFと約20%のCF0.6、約75%のCFと約25%のCF0.6、約67%のCFと約33%のCF0.6、若しくは約50%のCFと約50%のCF0.6を含有し、また、その逆も同様である。
【0029】
カソード材料に存在する銅マンガン酸化物の正確な組成、フッ素化炭素の正確な組成、並びに/または銅マンガン酸化物および/若しくはフッ素化炭素のそれぞれの濃度を、当技術分野で一般に周知の方法で、任意のアプリケーションまたは用途向けに最適化してもよいことに留意すべきである。例えば、特定の一実施形態においては、これら因子の1つ以上を操作または最適化することで、電気化学セルの寿命終末期の挙動を改善または強化できる。更に詳細には、これら因子の1つ以上を操作または最適化することで、電気化学セルはある期間の使用または放電後において電圧の平坦域を保有するまたは示すようになり、それが有用な寿命終末期の指標として機能し得る。この点において、フッ素化炭素の放電電圧は通常約2.5ボルト(V)〜約2.8Vであり、放電率に依存することに更に留意すべきである。その一方、本開示の銅マンガン酸化物は、例えば図3に示すように、約2〜約2.4Vまたは約2.3〜約2.4Vの間で電圧平坦域を示す。
【0030】
本明細書で使用する「電圧平坦域」は通常、実質的または相対的に平坦であり、上述の電圧範囲内であり、測定可能または検出可能な期間(例えば、比容量値が測定可能な範囲で)持続する放電曲線の一部を指す。この電圧平坦域は、本開示によるフッ素化炭素/銅マンガン酸化物の非水電気化学セルにおける寿命終末期の指標によく適している。銅マンガン酸化物とフッ素化炭素の量(即ち、濃度および/または比率)、組成および/または形態を最適化して、種々のアプリケーションのための所望の寿命終末期の挙動を得ることができる(これら2つのカソード材料の濃度または比率は、例えばこの平坦域が観察される比容量の範囲に影響を及ぼす)。
【0031】
カソード材料に存在する銅マンガン酸化物および/またはフッ素化炭素のそれぞれの濃度を、当技術分野で一般に周知の方法で、任意のアプリケーションまたは用途向けに最適化してもよい。しかしながら、特定の一実施形態において、本開示のカソード混合物は約1重量%〜約99重量%のフッ素化炭素を含んでもよく、場合によっては約10重量%〜約98重量%、約20重量%〜約97重量%、約40重量%〜約96重量%、または約60重量%〜約95重量%のフッ素化炭素を含んでもよく、いくつかの実施形態においては約65重量%〜約90重量%または約70重量%〜約85重量%である。更に、かかるカソード混合物は約1重量%〜約99重量%の銅マンガン酸化物を含んでもよく、場合によっては約2重量%〜約90重量%、約3重量%〜約80重量%、約4重量%〜約60重量%、または約5重量%〜約40重量%の銅マンガン酸化物を含んでもよく、いくつかの実施形態においては約10重量%〜約35重量%または約15重量%〜約30重量%であってもよい。この点、カソード材料に銅マンガン酸化物およびフッ素化炭素が含まれるようないくつかの実施形態において、かかるカソード材料はこれらの成分から基本的に構成されてもよく;つまり、銅マンガン酸化物およびフッ素化炭素の濃度(または重量パーセント)の合計がほぼ100%となってもよいことに留意すべきである。しかしながら、この点においては、かかる濃度を限定された意味で捉えるべきではないことにも留意すべきである。例えば、別の様々な実施形態において、銅マンガン酸化物は、(例えばフッ素化炭素よりもむしろ)カソード材料の主要な成分となってもよい。
【0032】
また、カソード材料がリチウム化されていないような実施形態も、本開示の様々な実施形態の一つであることに留意すべきである。別の言い方をすれば、少なくとも最初は(即ち、使用する前は)基本的にリチウムまたはリチウムイオンを含まずにカソード材料を調製する(即ち、調製中はカソード材料の成分としてリチウムまたはリチウムイオンを意図的に加えない)。特定の一実施形態において、カソード材料は、基本的に銅マンガン酸化物、フッ素化炭素並びに任意に結合剤材料および/または導電性添加剤(両方とも、本明細書の以下の他の段落で更に詳述する)から構成される。例えば、好適な一実施形態において、カソード材料はフッ素化炭素を約81重量%、銅マンガン酸化物を約12重量%、結合剤材料を約3重量%、および導電性添加剤を約4重量%含み、または基本的にこれらから構成される。しかしながら、かかるカソード材料を、リチウム(Li)アノードを有する一次(再充電可能でない)または二次(再充電可能な)バッテリーとしての電気化学セルに利用してもよい。結果的に、使用時には、リチウムまたはリチウムイオンがカソード材料中に存在し得る。従って、使用時におけるリチウムまたはリチウムイオンの存在を限定された意味で捉えるべきではない。
【0033】
如何なる特定の理論に捉われるものでもないが、銅マンガン酸化物とフッ素化炭素との組み合わせは、これら成分の個々の容量に基づく予想に比して驚くほど大きな容量を持つ材料を生み出すことからも特に有利であると考えられている。別の言い方をすれば、本明細書の他の段落において更に説明するように、この混合したカソード材料の容量は、銅マンガン酸化物およびフッ素化炭素単独の個々の容量の合計よりも大きいことが観察されている。
【0034】
本開示の電気化学セルは、非水電気化学セルへの使用に適した任意のアノード材料を実質的に含んでもよいアノードを更に具える。しかしながら、アノードは通常、例えばリチウム、マグネシウム、ナトリウムおよびカリウム等の、元素の周期表のIA族またはIIA族から選択される金属、並びに、例えばLi−Mg、Li−Al、Li−Al−Mg、Li−Si、Li−BおよびLi−Si−Bの合金および金属間化合物等の、かかる金属の合金および金属間化合物を含む。アノードの形状を変えることができるが、通常はアノード金属の薄箔、および延長タブまたは導線をアノード薄箔に装着した電流コレクタとして作られる。
【0035】
前述の通り、本開示の電気化学セルは、非水でかつイオン導電性の電解質を更に含み、かかる電解質は、セルの電気化学反応時にイオンがアノード電極とカソード電極との間を移動するための通り道として機能する。電解質は、液体状若しくは固体状またはその両方とすることができる。電極での電気化学反応は、アノードからカソードへ移動する原子形態または分子形態のイオンの変換を伴う。従って、本開示に適した非水電解質は、実質的にアノード材料およびカソード材料に対して化学的に不活性である。更に、液体状の好適な電解質は、イオンの移送にとって有益な物理的特性を示す(例えば低粘性、低表面張力、および/または良好な湿潤性)。
【0036】
様々な電解質の成分を、本明細書の他の段落において詳述するカソード材料との併用に適しているとして当技術分野で周知の成分から選択してもよい。しかしながら、好ましくは、本開示による用途に適した電解質は、有機または無機でイオン導電性の非水溶媒(または、溶媒の混合液を用いる場合は溶媒系)に溶ける塩を有する。より好ましくは、電解質は、低粘性の溶媒と高誘電率の溶媒とを含む非プロトン性の有機溶媒または溶媒混合液に溶解したイオン性アルカリ金属塩を含む。如何なる特定の理論に捉われるものでもないが、無機でイオン導電性の塩は、カソード活物質と反応するアノードのイオンの移動媒体として機能すると考えられている。従って、好ましくは、イオン性のアルカリ金属塩は、アノードを含むアルカリ金属に類似している。
【0037】
本開示の特定の一実施形態において、電解質にとってのイオン導電性の塩は、好ましくは一般式:MM’FまたはMM’F[式中、Mはアノード中の少なくとも一種の金属と同一のアルカリ金属であり、また、M’はリン、ヒ素、アンチモンおよびホウ素から成る群より選択される元素である]を有する。式:M’Fを得るのに適した塩としては、例えばヘキサフルオロリン酸塩(PF)、ヘキサフルオロヒ酸塩(AsF)およびヘキサフルオロアンチモン酸塩(SbF)が挙げられ、一方、式:M’Fを得るのに適した塩としては、例えばテトラフルオロホウ酸塩(BF)が挙げられる。或いは、対応するナトリウム塩またはカリウム塩を用いてもよい。従って、リチウムのアノードにとって、電解質のアルカリ金属塩は、例えばLiPF、LiAsF、LiSbFおよびLiBF並びにそれらの混合物より任意に選択してもよい。リチウムのアノードとの併用が有用である他の塩としては、例えばLiClO、LiAlCl、LiGaCl、LiC(SOCF、LiB(C、LiN(CFSOおよびLi(CFSO)並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
電気化学セルにおいて本開示による用途に適し得る低粘性溶媒としては、例えば炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸メチル(MA)、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、および例えば環状炭酸エステル、環状エステルおよび環状アミド等の高誘電率溶媒(プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン(GBL)、N−メチル−ピロリドン(NMP)等)、並びにそれらの様々な混合液または組み合わせが挙げられる。
【0039】
電解質に用いる溶媒の種類および組成、並びに/またはその中に存在する塩の種類および組成を、本開示の電気化学セルの1つ以上の物理的特性および/または性能特性を最適化するために選択してもよい。例えば、本開示の1つ以上の実施形態において、電解質中の塩の濃度は、約0.5M〜約2.5Mの範囲、約0.75M〜約2.25Mの範囲または約1M〜約2Mの範囲としてもよい。混合溶媒系を用いる本開示のこれらのまたは他の実施形態においては、第1の溶媒(例えばプロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒)と第2の溶媒(例えば1,2−ジメトキシエタン等の置換アルカン溶媒)が、例えば約1:9〜約9:1の範囲の比率(容積)となってもよく;つまり、溶媒系は、第1の溶媒を約10容量%〜約90容量%、約20容量%〜約80容量%、または約30容量%〜約70容量%含んでもよく、溶媒系の残りの全てまたは実質的に全ては第2の溶媒である。しかしながら、好適な一実施形態において、アノードはリチウム金属であり、好適な電解質は1.0M〜1.8MのLiBFが入ったPC/DMEの混合溶媒系である(この溶媒系の濃度は、約10容量%のPC/90容量%のDMEと、約70容量%のPC/90容量%のDMEとの間である)。
【0040】
本開示の電気化学セルは、好適なセパレータ材料を更に具え、かかる材料を選択することでカソード/カソード材料とIA族またはIIA族のアノード/アノード材料とを分離し、内部短絡状態を防止する。セパレータは通常、電気絶縁性(および、時にはイオン導電性)であり、アノードおよびカソード活物質と化学的に反応せず、電解質と化学的に反応せず、また電解質に不溶である当技術分野で公知の材料より選択される。更に、セパレータ材料は、セルの電気化学反応時において電解質が流れるのに十分な程度の空隙率を有するものが選択される。最後に、セパレータ材料は通常、厚みが例えば約15ミクロン〜約75ミクロンの範囲、または約20ミクロン〜約40ミクロンの範囲のものが選択される。
【0041】
従って、好適なセパレータ材料としては通常、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド(例えばナイロン)、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル(PVC)および類似の物質、およびそれらの組み合わせ(例えばポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン三層膜等の三層膜)、並びに、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−co−ヒドロフルオロプロピレン(PVDF−HFP)、テトラフルオロエチレン−エチレンコポリマー(PETFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレンコポリマー、およびそれらの組み合わせ等のフルオロポリマー繊維で織った織物等の、多孔質または非多孔質のポリマー膜が挙げられ、またはそれらより選択することができる。これらフルオロポリマー繊維で織った織物は、単独で、または積層されて、微孔フィルム(例えばフルオロポリマー微孔フィルム)として用いることができる。
【0042】
本開示の電気化学セルの形態または構造は、一般に当技術分野で周知のものから選択してもよい。しかしながら、特定の一実施形態において、電気化学セルの形態または構造はケースネガティブデザインであり、この場合においては、導電性金属のケーシングによってカソード/アノード/セパレータ/電解質部品が密閉されており、かかるケーシングがケースネガティブ構造におけるアノードの電流コレクタに接続されるようになっているが、これはケースニュートラルデザインでもまた好適である。ケーシングとして好適な材料はチタンであるが、ステンレス鋼、ニッケルおよびアルミニウムもまた好適である。ケーシングのヘッダーは、カソード電極用にガラス−金属間のシール/端子ピンフィードを中に収納するのに十分な数の開口を有する金属の蓋を具える。アノード電極は、好ましくはこのケースに接続されている。また、電解質の充填用に、更なる開口が具わっている。ケーシングのヘッダーは、電気化学セルの他の構成要素との互換性を有する元素を含み、耐食性がある。そして、上述した電解質溶液でセルを満たし、ステンレス鋼のプラグで充填口を溶接等により密閉する。しかしながら、この点において、本開示のセルをケースポジティブデザインで組み立ててもよいことに留意すべきである。従って、本明細書で提供する記述を限定された意味で捉えるべきではない。
【0043】
この点において、電気化学セルの他の部品(例えば、電流コレクタ等)を、本開示の範囲から逸脱することなく当技術分野で周知の部品より選択してもよいことに更に留意すべきである。
【0044】
カソード材料を調製した時点で、それを単一で、実質的に均質な混合物状でカソードの電流コレクタ上に堆積させてもよい(例えば、カソード材料のうちどれが主成分でどれが微量成分であるかに基づいて、銅マンガン酸化物の微粒子をCFの微粒子に分散させ、またはその逆を行った後、この混合物を単層状にカソードの電流コレクタ上に堆積させる)。しかしながら、もう一方で、カソードの成分または材料の混合物を用いる場合、これらの材料を層状に(i)電流コレクタの同じ側に堆積させても(例えば、銅マンガン酸化物の層を電流コレクタの表面に堆積させた後にCFの層を銅マンガン酸化物の層上に堆積させるか、またはその逆を行う)、(ii)電流コレクタの反対側に堆積させてもよい。
【0045】
特に明記がない限り、本明細書で列挙した様々な濃度、濃度の範囲、比率等は、説明のみの目的で提供するものであり、従って、それらを限定された意味で捉えるべきではないことに留意すべきである。また、全ての様々な組成、濃度、比率、成分等の組み合わせおよび置き換えは、本開示の範囲内として意図するものであり、また本開示により裏付けられることに更に留意すべきである。
【0046】
2.カソード材料の調製
銅マンガン酸化物のカソード材料の調製を、例えば様々な銅とマンガンの塩または両金属の酸化物を固相反応または湿式反応の何れかにより化学的に反応させる(例えば熱処理、ソルゲルおよび混合状態での熱水合成を含む)等の、当技術分野で一般に周知の方法で行ってもよい。
【0047】
しかしながら、1つ以上の特定の実施形態においては、銅マンガン酸化物の材料を、それらが非晶質または半結晶性の形状または状態で提供され、または生成される方法で調製してもよい。例えば、かかる銅マンガン酸化物の材料を、過硫酸カリウムまたは過塩素酸カリウム等の銅塩およびマグネシウム塩の酸化剤の存在下または不存在下で、水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウム等の沈殿剤による共沈法で調製してもよい。或いは、カソード材料を、適切な環境において銅塩およびマグネシウム塩を熱分解させたときの生成物としてもよい。例えば、出発原料におけるマグネシウムに対する銅のモル比を、銅マンガン酸化物の反応生成物中のその平均モル比が上記で詳述した範囲内となるように制御することにより、銅マンガン酸化物の反応生成物を非晶質、半結晶性またはそれらの混合物とすることができる。
【0048】
調製を行うと、(直ちに、または何らかの製粉工程若しくは粉砕工程の後に)平均粒径が約10ナノメートル〜約300ナノメートルの範囲、約50ナノメートル〜約225ナノメートルの範囲、または約80ナノメートル〜約150ナノメートルの範囲の微粒子状の銅マンガン酸化物が得られる。この微粒子を任意に凝集させ、例えば平均粒径が約5ミクロン〜約45ミクロンの範囲、約7.5ミクロン〜約30ミクロンの範囲、または約10ミクロン〜約15ミクロンの範囲の比較的大きな粒子を形成してもよい。
【0049】
3.電気化学セルの用途および性能特性
銅マンガン酸化物および/またはカソード材料(例えば銅マンガン酸化物とCFとの混合物)の正確な組成を、所望の性能特性および/またはそれを有する電気化学セルの所望の最終用途のアプリケーションに応じて最適化するように選択してもよいことに留意すべきである。更には、他の多くのカソード材料も同様に、CuMnを追加してそれらのハイブリッドカソードを作製する利益が得られるかもしれないことを、本開示内で予測していることにも留意すべきである。従って、CFへの言及を限定された意味で捉えるべきではない。
【0050】
本開示のカソード材料は、一般に、当技術分野で周知の基本的に何れの非水電気化学セルへの使用にも適している。更に、上記のカソード材料を含有する本開示の電気化学セルは、一般に、多くの周知のアプリケーションおよび装置に適しており、その中でも特に、例えば医療装置(ペースメーカー、除細動器、心臓モニター、薬物送達システム、疼痛管理システム等)、軍用の携帯用電子機器(ラジオ、応答装置、武器照準器等)、海洋装置(ソノブイ、魚雷等)、航空宇宙装置(深宇宙探査機、指令破壊装置、バックアップ電源システム等)、軍用および商用センサー、遠隔データ収集装置に適している。かかるカソード材料、更に詳細にはそれを含有する電気化学セルは、容量の終わり部分におけるセルの電圧平坦域(本明細書の下の段落において更に説明する)による寿命終末期の指標が必要とされる装置(例えば医療装置)への使用に特に有利であるかもしれない。
【0051】
特定の一実施形態においては、本開示の非水電気化学セルを保存バッテリーまたは保存セルとして構成してもよく、それにより非水電解質を電極と分離して保持でき、広い温度範囲でのバッテリーの有効な保存期間が増大する。必要に応じて非水電解質と電極とを自動的に接触させ、通常の方法でバッテリーを機能させるようにしてもよい。
【0052】
本開示のカソード材料、およびそれを含む非水電気化学セルは、当技術分野で一般に周知の他の材料およびセルと比べて改善または強化されたとは言わないまでも、それらに類似した、更に1つ以上の他の性能特性を保有することがある。例えば、様々な実施形態において、CuMnのカソード材料を含有するカソードを含む電気化学セルまたはバッテリーは、CF等の現在使用されている他の高エネルギーのカソードと比べて優れたとは言わないまでも、実質的に類似した容量を示すことが観察されている。例えば、本開示の1つ以上の実施形態においては、本開示のカソード材料によって、セルが室温で約800、約900、約1000、若しくは約1100ミリアンペア−時間毎グラム(mAh/g)の容量または更に大きな容量を生み出すことができる。本開示のカソード材料と比較して、CFのカソード材料を含むセルは、室温で約820mAh/gを提供することができる。しかしながら、他の様々な実施形態においては、本開示のカソード材料を含む電気化学セルは、例えばカソード材料として銅マンガン酸化物を含有しないカソード材料を使用する従来の非水電気化学セルと比較して、改善または強化された比エネルギー、エネルギー密度、作動電圧および/または放電率能を示すことがある。
【0053】
更に、また前述の通り、CuMnのカソード材料は、他の高エネルギーのカソードと比べて増大した密度を示すこともあり、つまりはCF等の競合する材料よりも高いエネルギー密度を提供することがある。異なる材料の例示的な密度を、図8および図10に示す。しかし当然のことながら、密度は、様々な側面に従い、材料を調製するプロセス条件(例えば焼きなまし温度)によって変化する。
【0054】
本開示の他の特定の実施形態において、非水電気化学セルは内部充電または内部再充電性を示すことがあり;即ち、本開示のCuMnのカソード材料は、本開示の非水電気化学セルに使用する場合に少なくとも部分的に充電または再充電する能力を示すことがある点に更に留意すべきである。具体的には、数週間の寿命試験の間、かかるカソード材料、特にCuMnおよびCFを含むカソード材料を使用する電気化学セルまたはバッテリーを開路状態のままにしたとき、かかるセルは徐々に増大する開放電圧を示した。更に、その後の放電において、セルの総容量は理論的予想を上回った。従って、本開示のカソード材料は、如何なる外部電源をも使用せずに内部で再充電する挙動をとるという予想外の利益を示した。
【0055】
極めて高い一次エネルギーに加え、少なくとも部分的な内部充電または内部再充電の潜在性により、本開示の実施形態による電気化学セルまたはバッテリーは、例えば様々な装置への使用にとって比類なく適したものとなる。例えば、かかるセルは埋め込み医療装置(例えばペースメーカー)用に良く適したものとなることがある。或いは、かかるセルは、訓練および軍事行動のシチュエーション用に設計された装置に使用することができる。1つの例が、短期間の訓練時、および長期間の軍事行動時または戦闘時に活用すべき軍用無線または警察無線である。かかる装置は一般に、異なる2種のバッテリー、即ち訓練用の短寿命で再充電可能なバッテリーおよび戦闘用の長寿命の一次バッテリーを活用する。CuMnで強化したバッテリーは、単一ユニットで両機能を結合した利点を提供することがあり、従って性能、物流およびコスト削減を強化することがある。
【0056】
この点において、本明細書で使用する「内部充電」または「内部再充電」およびそれらの変形用語は一般に、CuMnのカソード材料を本開示の非水電気化学セルに用いた場合に、何らかの外部電源をも利用せず、CuMnのカソード材料が少なくとも部分的に初期容量を再生または回復させる能力を指すことに留意すべきである。
【0057】
如何なる特定の理論に捉われるものでもないが、本開示のCuMn/CFのカソード材料を含む電気化学セルまたはバッテリーにおける内部充電または内部再充電のメカニズムは、次の一連の反応によって説明できると考えられている。

バッテリーの放電時:
アノード:
Li → Li+ + e (1)

カソード(CuaMnbOc / CFx / その他の酸化物):
CFx + xLi+ + xe → C + xLiF (2)
CuO + 2Li+ + 2e → Li2O + Cu (3)
CuaMnbOc + nLi+ + ne → LinCuaMnbOc (4)
MnbOc + mLi+ + me → LimMnbOc (5)

カソードでの自己充電または内部再充電:
2LiF + 2Cu → CuF2 + 2e + 2Li+ (6)
MnbOc + me + mLi+ → LimMnbOc (7)
【0058】
CuFは、約537mAh/gmの比容量を供給することができる魅力的なカソード材料である。CuFは、非水電解質中で、LiFおよびCuから以下に示す中間生成物を介して形成され得る:

【0059】
本開示の他の特定の実施形態において、非水電気化学セルは改善された寿命終末期の挙動を示すことがあることに更に留意すべきである。更に詳細には、特定の一実施形態において、その組成(例えばマンガンに対する銅の比率)および/または銅マンガン酸化物の形態(例えば非晶質または半結晶性)、並びに任意にセルのカソード材料中でのフッ素化炭素に対するそれらの比率または濃度によって、電気化学セルは、銅マンガン酸化物の不存在下で同様に調製したカソード材料に比べ、改善された寿命終末期の挙動を示すことができ、例えば、かかるセルは、放電時に第1の明確な電圧平坦域(例えば図4の150)よりも低い第2の明確な電圧平坦域(例えば図4の152)を示し、セルの寿命終末期が近いことを示す。以下の1つ以上の実施例において、例示的な寿命終末期の挙動を更に示す(例えば、図3および図4並びにそれらに関する詳解を参照されたい)。
【0060】
4.電気化学セルの寿命終末期の検出と指示
電気化学的装置はこの他、本明細書においてバッテリー、キャパシタ、セル、電気化学セル等とも称されることがある。当然のことながらこれらの呼称は限定されず、電極と電解質との間で電子移動が伴う何れの装置も、本開示の範囲内であると考える。
【0061】
更に、電気化学的装置は、エネルギーを負荷装置に供給することのできる単一接続または複数接続の電気化学的装置、電気化学セル、バッテリーまたはキャパシタを指すこともあり、本明細書における何れの特定の装置についての表現も、決して本開示を限定するものと考えるべきではない。
【0062】
様々な実施形態は、セルのEOL状態を検知および決定し、また、EOL状態に関する情報を提供または送信するシステムおよび方法を提供し得る。セルのEOL状態についての先験的情報(例えば、装置の化学的性質およびその他の設計変数に基づく装置の電気化学的な挙動について知られている情報)により、セルで動く電子機器(即ち電気化学的装置)が目に見えて機能低下することなく、セルの交換または充電が可能になるかもしれない。
【0063】
セルのEOL状態までの残り時間を、寿命初期のセルの容量およびセルの放電率から推定することができる。この時間推定の妥当性は、セルの寿命初期の容量の正確な決定、並びにセルの周囲環境およびセルの使用が見込まれる環境の条件(例えば温度および湿度)に左右されることがある。負荷および/または環境の些細な変化でさえも、算出が極めて複雑となることがある。
【0064】
たとえば、任意のセルの化学的性質として、放電電圧曲線(即ち、放電容量または放電時間に対してプロットした放電電圧)において2つの電圧平坦域[セルの有用寿命の間に生じる第1の電圧平坦域(図4の150を参照)、およびセルのEOL近くで生じる第2の電圧平坦域(図4の152を参照))]を示すことがある。この第2の電圧平坦域を検知することにより、本開示の様々な実施形態は、EOLの到達前にセルを充電および/または交換することを促すことができる。
【0065】
様々な実施形態によれば、EOL状態に関する情報の用途は、2つの要素が存在し得る。1つ目は、セルが働く環境条件および/または遠隔地において正確かつ繰り返し可能な方法でEOL状態を検知することである。2つ目は、是正措置(セルの充電または交換)をとれるようにEOL状態をユーザーに送信または合図することである。セルに関するEOL情報の送信としては、監視装置および/またはセルのユーザー若しくはセルで動く電子機器のユーザーとの視覚通信、音響通信、無線通信、デジタル通信、電子通信、および/またはアナログ通信が挙げられる。EOL情報を検知および/または送信する手段は何れも、現在周知のものであっても今後開発されるものであっても、本開示の範囲内であると考える。
【0066】
様々な実施形態に従い、図19は、負荷装置104、バッテリー106(即ち電気化学的装置)およびEOLセンサー108を含む装置102(即ち、電子機器)のブロック図を示す。装置102はコンピューター、通信装置、埋め込み医療装置、センサー、またはバッテリー106から負荷装置104に電力を供給するその他の任意の装置であってもよい。装置102を使用すると、バッテリー106がEOL状態まで放電し、バッテリー106は負荷装置104にエネルギーを供給し続けることができなくなる。
【0067】
様々な実施形態において、バッテリー106は、再充電可能なタイプ(二次)のバッテリーでも、再充電可能でないタイプ(一次)のバッテリーであってもよい。バッテリー106が二次バッテリーである場合には、バッテリー106を交換する代わりに、バッテリー106を有効な電圧レベルまで充電することができる。一実施形態においては、装置102の使用を実質的に妨げることなく、バッテリー106を再充電または交換する旨の十分な警告を装置102のユーザーに出す。
【0068】
EOLセンサー108の様々な実施形態は、バッテリー106、装置102、負荷装置104およびそれらの部品に関する先験的情報を提供し、バッテリー106のEOL状態に関する情報を容易に決定することができる。このEOLの情報を、バッテリー106のEOL状態が近づいている装置102のユーザーおよび/またはその装置102と関連する監視装置に合図または通知するのに使用してもよい。装置102の使用を実質的に妨げることなく、バッテリーを交換または再充電する旨の十分な警告を出すことができる。
【0069】
図20は、様々な実施形態による送信部品116、受信部品118および出力120を示す。EOLセンサー108は、バッテリー106のEOL状態を検知および/または決定できるように構成された検知部品112およびコントローラ114を具える。直接的または間接的な方法を利用し、バッテリー106のEOL状態を予測するために使用できるバッテリー106の物理的パラメータ(例えば温度、電圧、電流、歪み、湿度等)を測定してもよい。
【0070】
バッテリー106の1つ以上の物理的パラメータを検知してバッテリー106のEOL状態を容易に決定できるように検知部品112を構成してもよい。物理的パラメータとしては、(これらに限定されないが、)電圧、電流、時間、温度および歪みが挙げられる。検知部品112とバッテリー106との直接接触を利用し、これらのパラメータの正確な測定を容易に行ってもよい。例えば、電圧の測定には電圧計のプローブとバッテリー106との直接接続を利用することができ、温度の測定にはサーミスターまたは温度計とバッテリー106との直接的な物理的接触を利用することができる。直接的な方法としては、(これらに限定されないが、)アナログ技術、デジタル技術および/またはその他の類似技術が挙げられる。
【0071】
様々な実施形態によれば、直接接触が利用できないか、不可能であるため、間接的な方法を利用してEOL状態に関する物理的パラメータを測定してもよい。例えば、埋め込みペースメーカーのバッテリーの電圧は、かかるバッテリーを直接的な測定にさらすことができないため、測定できない。間接的な測定技術としては、(これらに限定されないが)、誘導、キャパシタンス、ライトカップリングおよびサウンドカップリングが挙げられ、以下で更に述べる。
【0072】
様々な実施形態においては、コントローラ114をハードウェア、ソフトウェアまたはその両方の組み合わせとして組み込んでもよい。コントローラ114はプログラム可能であってもよく、検知部品112からの入力を受信し得る。コントローラは、例えば検知部品112から受信した信号等の入力信号に応用理論を適用してもよく、更なるシステムの用途に出力信号を提供することができる。コントローラ114は、検知部品112によって測定されるバッテリー106の物理的パラメータに基づくバッテリー106のEOL状態の決定方法に影響を及ぼすことがある。
【0073】
様々な実施形態によれば、および図21を参照すると、コントローラ114は、アナログ−デジタル変換器122、スリープタイマー124、EOL機能126および通信機能128等の様々な機能要素を具えてもよい。本開示の範囲から逸脱することなく、他の機能がコントローラ114中に存在してもよい。
【0074】
コントローラ114を、バッテリー106からエネルギーを受け取れるように構成してもよい。従って、コントローラ114はバッテリー106に対する追加的な負荷装置として働くことがあり、この場合、バッテリー106の予想寿命は更に縮まる。様々な実施形態によれば、コントローラ114を、自身がバッテリー106から取り出すエネルギーを低減または排除できるように構成してもよい。例えば、コントローラ114が必要でない場合にはスリープタイマー124を用いてそれをスリープモードにすることにより、コントローラ114に必要なエネルギー量を最小限に抑えることができる(従って、バッテリー106の寿命が延びる)。スリープモードでは、特定のコントロール機能だけが動き、従ってコントローラ114に利用するエネルギーを大幅に低減できる。コントローラ114は、指令または内蔵タイマー(即ち、スリープタイマー124)によりスリープモードから呼び起こされ、その後、他の機能の実行を開始できる。一実施形態において、コントローラ114は、自身の内部にエネルギー源を持っていることがあり、それ故バッテリー106の予想寿命には影響を及ぼさない。
【0075】
様々な実施形態によれば、EOL状態が間近であることに関する情報を伝達できるように送信要素116を構成してもよい。また、バッテリー106がEOL状態間近である装置102のユーザーに伝達でき、またはかかるユーザーに警告できるように送信要素116を構成してもよい。装置102の使用を実質的に妨げることなく、バッテリー106を再充電または交換する旨の十分な警告を出すことができる。EOL状態が間近であることを伝達するのに、ベル、笛および点滅光等の、現場で聞こえるおよび/または見える警報を使用してもよい。送信要素116は、EOLセンサー108やコントローラ114と一体になっていてもよく、分離していてもよい。
【0076】
様々な実施形態において、送信部品116は送信機であり、例えば長距離間での送信を行う場合に、EOLが間近であることを伝達するのに無線送信を使用してもよい。無線送信には、装置102および/またはバッテリー106付近に配置した送信機116を利用してもよい。受信機118を、装置102から少し離れた位置に配置してもよく、バッテリー106のEOL状態が間近であることに関する情報を受信できるように構成してもよい。送受信の技術はアナログ、デジタルまたはその両方の組み合わせであってもよい。情報を送受信する技術は何れも、現在周知のものであっても今後開発されるものであっても、本開示の範囲内であると考える。受信機118を、例えばインターネット、ブルートゥース通信、無線周波通信、ネットワーク基盤の通信等を介した様々な出力120を発生させることができるように構成してもよい。出力120は、EOL状態に関する情報を監視装置および/またはユーザーに提供してバッテリー106の交換または充電を促すように構成されていれば、任意の形式でよい。
【0077】
本明細書で使用する「ネットワーク」という用語は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの部品を組み入れた任意の電子通信システムまたは電子通信方式を含み得る。当事者間の通信は、例えば電話回線、エクストラネット、イントラネット、インターネット、相互作用時点管理装置(販売時点管理装置、携帯情報端末(例えばパームパイロット(登録商標)、ブラックベリー(登録商標))、携帯電話、キオスク等)、オンライン通信、衛星通信、オフライン通信、無線通信、トランスポンダー通信、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、仮想プライベートネットワーク(VPN)、ネットワーク装置若しくはリンク装置、キーボード、マウスおよび/または任意の好適な通信様式若しくはデータ入力様式等の、任意の好適な通信経路を介して達成することができる。
【0078】
様々な実施形態に従い、および図22に示すように、EOL状態が近いことを検知および伝達する方法を開示する。手順130では、例えばバッテリーの放電電圧等のバッテリー106に関する状態を確認する時間であるか否かを、スリープタイマー124が決定し得る。かかる状態を確認する時間でなければ、コントローラ114はスリープモードのままである。かかる状態を確認する時間であれば、コントローラ114は呼び起こされ、手順132で状態を検知する。かかる状態が所定の閾値(例えば電圧レベル)を満たしていなければ、コントローラ114はスリープモードに戻る。かかる状態が所定の閾値を満たしていれば、コントローラ114は手順136で送信機116に対し受信機118への送信信号の合図を供給する。その後、受信機118は手順138において、かかる送信信号を受信する。そして、かかる送信信号の受信により、バッテリー106の監視装置および/またはユーザーは、EOL状態が間近であることを容易に知ることができる。
【0079】
上述の通り、様々な実施形態においては、バッテリー106の状態を検知するために直接接触の測定技術を利用してもよい。しかしながら、特定の実施形態においては、バッテリー106が物理的に隔離され、従って直接接触の測定装置がアクセスできず、直接接触の測定が困難または不可能であることがある。例えば、バッテリー106の機能性および/または完全性を犠牲にしないように破れない保護カバーを設けることにより、バッテリー106を物理的に隔離してもよい。
【0080】
一実施形態においては、キャパシタンスの技術として、保護カバーを含むバッテリー106の状態の検知に電場測定を利用してもよい。バッテリー106内の内部プレートをバッテリーの限界まで充電し、これにより電場を作ることができる。検知部品112は、バッテリー106の外側で外部プレートを具えてもよく、これを保護カバーを貫通せずに内部プレートに隣接して配置することができる。かかる外部プレートは、内部プレートによって作られた電場を保護カバーを介して容易に検知することができる。そして、コントローラ114は、検知された電場を利用してその電場の情報を計算および/または解読し、バッテリーの状態(例えば電圧)を決定することができる。状態の情報によりバッテリー106のEOL状態が間近であることが示されれば、この情報を送信機116から受信機118へ送信してバッテリー106の交換または充電を促すことができる。様々な実施形態において、この方法では、バッテリー106の状態を検知するのにバッテリー106からのエネルギーを必要とせず、従って、バッテリーの負荷を低減することができる。
【0081】
更に様々な実施形態によれば、バッテリー106の状態の検知を容易に行うのに、光透過技術を利用してもよい。バッテリー106は電圧検知回路を含んでもよく、バッテリー106を囲う同一の保護カバー内にかかる電圧検知回路を配置することができる。検知部品112は、保護カバーの内部の一部分および/または保護カバーの外部の一部分を構成してもよい。例えば、保護カバー内の電圧検知回路はバッテリー106を動力源としてもよく、バッテリーの放電電圧を検知できるようにかかる電圧検知回路を構成してもよく、その結果、検知した電圧を光に変換することができる。様々な実施形態においては、アナログ信号またはデジタル信号を用い、かかる光の振幅または周波数を調整してもよい。その結果、保護カバーを介してこの光の情報を送信し、検知部品112の一部分により保護コーティングの反対側で受信することができる。また、検知した電圧を決定する目的で光の情報を解読できるようにコントローラ114を構成してもよく、検知した電圧を送受信し、バッテリー106の交換または再充電を促すことができる。様々な実施形態においては、検出器による読み込みおよび/または測定が可能な任意の波長で、可視光または不可視光を送信してもよい。
【0082】
様々な実施形態によれば、バッテリー106の寿命終末期状態の検知を容易に行うのに、音響送信技術を利用してもよい。装置102および/またはバッテリー106の構造および/または組成に基づき、音波が装置102および/またはバッテリー106中の様々な物質を伝播することに関する情報が、バッテリー106の寿命終末期状態の検知を容易にすることがある。また、寿命終末期状態の検知を容易に行うのに、スペクトルにわたる可聴音および/または不可聴音を使用してもよい。バッテリー106は電圧検知回路を含んでもよく、バッテリー106を囲う同一の保護カバー内にかかる電圧検知回路を配置することができる。検知部品112は、保護カバー内の一部分および保護カバーの外部の一部分を構成してもよい。例えば、保護カバー内の電圧検知回路はバッテリー106を動力源としてもよく、バッテリー106の放電電圧を検知できるようにかかる電圧検知回路を構成してもよく、その結果、検知した電圧を音に変換することができる。様々な実施形態においては、アナログ信号またはデジタル信号を用い、かかる音の振幅または周波数を調整してもよい。その結果、保護カバーを介してこの音の情報を送信し、検知部分112の一部分により保護コーティングの反対側で受信することができる。また、検知した電圧を決定する目的で音の情報を解読できるようにコントローラ114を構成してもよく、バッテリー106の寿命終末期状態を決定するために検知した電圧を送受信し、バッテリー106の交換または再充電を促すことができる。
【0083】
様々な実施形態によれば、電磁場測定を用いてバッテリー106の寿命終末期状態を検知するのに、誘導技術を利用してもよい。バッテリー106の内部の、および/またはバッテリー106の周囲の保護カバー内のコイルをバッテリー106の限界まで充電し、それにより電磁場を発生させてもよい。バッテリー106の周囲の保護カバーを介して電磁場を検知できるように、検知部品112を構成してもよい。例えば、検知部品112は、保護カバーを貫通せずに、またバッテリー106からエネルギーを取り出さずに、保護カバー内に配置されたコイルを通過し得る外部コイルを含んでもよい。電磁場は外部コイルに電流を誘導し、コントローラ114はかかる誘導電流を解読してバッテリー106の放電電圧および/または他の物理的パラメータを決定することができる。その後、検知した電圧を送受信し、バッテリーの寿命終末期状態の決定に応じてバッテリー106の交換または再充電を促すことができる。
【0084】
様々な実施形態によれば、バッテリー106の状態の非接触的な検知を容易に行うのに、機械的技術を利用してもよい。例えば、状態の決定を容易に行うのに動作検知および/または動作認識を利用してもよい。装置102および/またはバッテリー106の周知の構造および/または組成に基づき、装置102および/またはバッテリー106中の様々な物質を介した機械的エネルギー(例えば圧力および振動)の伝達に関する情報が、バッテリー106の状態の決定を容易にすることがある。検知部品112は、保護カバー内の一部分および保護カバーの外部の一部分を構成してもよい。例えば、電圧検知回路は保護カバー内に配置してもよく、バッテリー106を動力源としてもよい。放電電圧を検知できるようにかかる電圧検知回路を構成してもよく、その結果、検知した電圧は機械的反応および/または機械的動作を誘発することができる。様々な実施形態においては、アナログ信号またはデジタル信号を用い、かかる機械的反応の振幅または周波数を調整してもよい。その結果、保護カバーを介してこの機械的反応を送信し、検知部分112の一部分により保護コーティングの反対側で受信することができる。また、検知した電圧を決定する目的で機械的反応(例えば物理的反応、圧力検知、振動検知)を解読できるようにコントローラ114を構成してもよく、検知した電圧を送受信し、バッテリーの寿命終末期状態の決定に応じてバッテリー106の交換または再充電を促すことができる。
【0085】
様々な実施形態によれば、バッテリー106の状態の非接触的な検知を容易に行うのに、電気的技術を利用してもよい。例えば、バッテリー106の状態の検知を容易に行うのに、電気周波数の信号が種々の媒体(例えばアンテナを経由した空気)を伝播することに関する性質を用いた、全体の電気周波数スペクトルにわたる無線(RF)通信を利用してもよい。装置102および/またはバッテリー106の周知の構造および/または組成に基づき、装置102および/またはバッテリー106中の様々な物質および/または媒体を介したRF信号の伝達に関する情報によって、容易にバッテリー106の状態を決定することができる。かかる電気的技術によって、より長距離間で容易にバッテリー106の状態を伝達することができる。例えば、電圧検知回路をバッテリー106の一部分としてもよく、またはバッテリー106として保護カバーと同じ側に配置してもよく、また電圧検知回路はバッテリー106からのエネルギーを利用してもよい。電圧検知回路によって検知した放電電圧を電気周波数の信号に変換してもよく、アナログ信号またはデジタル信号を用い、かかる電気信号の振幅または周波数を調整することができる。その結果、バッテリー106の保護カバーを介して、様々な電気信号が伝わり得る任意の距離で、かかる電気信号を送信することができる。また、コントローラ114は、検知したバッテリー106の電圧の決定のために電気信号を解読してもよく、検知した電圧を送受信し、バッテリーの寿命終末期状態の決定に応じてバッテリー106の交換または再充電を促すことができる。
【0086】
様々な実施形態によれば、装置102は、検知要素112および/またはコントローラ114の部品に動力を与えるためにバッテリー106からのエネルギーを利用してもよい。かかるエネルギーの利用によって負荷が追加されるため、バッテリー106は有用寿命が短くなり得る。かかる追加的な負荷を最小限にし、低減し、および/または排除するため、スリープモード技術、外部割り込み技術および/または外部の代替電源等の様々な技術を、単独でまたは組み合わせて利用してもよい。
【0087】
スリープモード技術を実行するのに、例えばコントローラ114内の、マイクロプロセッサーシステムまたはマイクロコントローラシステムを用いてもよい。コントローラ114、検知要素112または他の装置102の部品が、固定的な、周期的な、および/または事前に定めた時間間隔で呼び起こされるように、スリープ機能124を構成してもよい。様々な装置の部品が一定期間休止する(例えば内蔵タイマーを除く内部のサブシステムが停止する)ことにより、バッテリー106の負荷を低減することができる。装置102の様々な部品を稼動させてバッテリー106の物理的パラメータを容易に検知することができるように、内蔵タイマー(例えばスリープタイマー124)を構成してもよい。その結果、バッテリーの寿命終末期状態の決定に応じて、必要な場合にかかるパラメータを検知および伝達し、バッテリー106の交換または再充電を促すことができる。もしもその状態が許容できるレベルであれば、装置102の様々な部品は、スリープタイマー124によって再びスリープ状態或いは休止状態に戻ってもよい。
【0088】
様々な実施形態によれば、バッテリー106の追加的な負荷を低減するために外部割り込み技術を利用してもよい。ある状況下においては、上述のような一定間隔の電圧チェックは必要でなく、例えば、新しいバッテリーは、古いバッテリーほど頻繁なチェックが必要ではない。外部割り込み技術では、コントローラ114または検知要素112が検知し得る外部指令を利用してもよく、かかる外部指令では、検知要素112にバッテリー106の放電電圧を検知するよう指示することができる。物理的パラメータおよび/または特性の如何なる変化をも、バッテリー106の電圧を検知するきっかけとして利用してもよい。例えば、バッテリー106が圧力をかけられた場合に、それをきっかけとして検知要素112がバッテリー106の電圧を検知してもよい。必要なときにのみバッテリー106の電圧を検知することにより、バッテリー106の負荷を更に軽減することができ、従ってバッテリー106の有用寿命を延ばすことができる。
【0089】
様々な実施形態による技術では、バッテリー106の負荷を低減する目的でバッテリーの寿命終末期状態の指示を容易に検知、決定および/または送信するのに、バッテリー106以外の別の電源を利用してもよい。例えば、追加的なバッテリーを単独で用い、負荷装置104以外の装置102の部品に動力を与えてもよい。更に、負荷装置104以外の装置102の部品に動力を与えるため、体温、血流および/または血圧等の別の源からエネルギーを変換してもよい。装置102の様々な部品に動力を与える方法は何れも、本開示の範囲内であると考える。
【0090】
本開示に従い、EOL状態の検知を容易にする放電特性を示すセルの化学的性質は、本開示の範囲内であると考える。ある実施形態によれば、カソードの活性成分として銅マンガン酸化物(CuMnO)を有するリチウム(Li)一フッ化炭素(CFx)セルは、セルのEOL状態の検知を容易にする放電特性を示すことがある。図4を参照すると、CuMnOは、放電時に、比較的一定の傾きをもった2つの間隔または平坦域を示している。第1の間隔150は、セルの寿命初期に現れるかもしれない。第2の間隔152は、セルのEOLに向かうところで現れるかもしれない。EOL状態に関連した先験的なこの第2の平坦域152を、CuMnOセルのEOLが近いことの指標として用いてもよい。EOL状態の検知を容易にし得る放電のプロファイル、傾き、間隔および/または平坦域をもった他のセルの化学的特性は何れも、本開示の範囲内であると考える。
【0091】
当然のことながら、本開示の様々な性質を、実施例で述べている。しかしながら、具体的に述べていないものに加えて、本発明の実施に用いた上述の処方、比率、要素、材料および部品を、それらの原理から逸脱することなく様々に組み合わせるおよび改良することができ、また特定の環境および操作要件に個別に適応させることができる。本開示以外のバリエーションおよび改良は当業者にとって明白であり、かかるバリエーションおよび改良は本開示に含まれると意図している。
【0092】
更に、本明細書の様々な実施形態の説明は、実例として実施形態を示すが限定されない添付の図面について言及している。当業者が本発明を実施できるように、これら実施形態を十分詳細に記載しているが、当然のことながら他の実施形態も実現することができ、および本発明の精神と範囲から逸脱することなく論理上および機構上の変更を行うこともできる。従って、本明細書の開示は説明のみの目的のものであり、限定されるものではない。例えば、何れの方法または手順の説明において列挙される工程も、任意の順序で遂行されてもよく、提示する順序に限定されるものではない。更に、何れの機能または工程も、1以上の第三者に外注してもよく、またはかかる者が実施してもよい。なお更に、単数の表現は何れも複数の実施形態を含み、および1つ以上の要素の表現は何れも単数の実施形態を含むことがある。
【0093】
当業者は、本明細書に記載の慣用的なデータネットワーキング、アプリケーション開発およびシステムの従来型の電気回路(およびシステムの個々の操作部品の部品)を熟知しており、これら周知の部品、アプリケーションおよびネットワークの詳細な説明は、本明細書において不要である。更に、本明細書に含まれる様々な図に示される接続線は、様々な要素間の典型的な機能的関係および/または物理的結合を表すためのものである。別の、または追加的な多くの機能的関係または物理的結合も、実際のシステムに存在し得ることに留意すべきである。
【0094】
また、本明細書に示されるブロック図およびフローチャート図の機能ブロックは、特定の機能を実行する方法の組み合わせ、特定の機能を実行する工程の組み合わせ、および特定の機能を実行するプログラム命令の方法を裏付けている。更に当然のことながら、ブロック図およびフローチャート図の各機能ブロック、並びにブロック図およびフローチャート図の機能ブロックの組み合わせを、特殊用途のハードウェア系電子機器および/または特定の機能若しくは工程を実行するコンピューターシステムで実行してもよく、または特殊用途のハードウェアとコンピューター命令の適切な組み合わせで実行してもよい。
【0095】
本明細書では、利益、他の利点、および問題解決策を、特定の実施形態について記載している。しかしながら、かかる利益、利点、問題解決策および何れの利益、利点または解決法を生じさせ、またはより顕著にし得る任意の要素は、本発明にとって重大な、必要な、または不可欠な特徴若しくは要素として解釈されるものではない。従って、本発明の範囲は、本願の利益を主張する願書であって、ある単数の要素の表現が、特に明記がない限り「唯一の」ではなく「1つまたはそれ以上」を意味することを意図している願書に含まれる特許請求の範囲以外には限定されない。更に、特許請求の範囲において「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」と同様の表現を用いているところでは、かかる表現は、ある実施形態においてはAが単独で存在することがあり、ある実施形態においてはBが単独で存在することがあり、ある実施形態においてはCが単独で存在することがあり、または一実施形態においては要素A、BおよびCのうちの任意の組み合わせが存在することがある(例えば、AとB、AとC、BとC、またはAとBとC等)ことを意味すると解釈されるべきであるという意図がある。特定の実施形態を一方法として記載したが、かかる方法を、磁気メモリ若しくは光メモリまたは磁気ディスク若しくは光ディスク等の、コンピューターが読み取れる有形のキャリアおよび/またはメディアに関するコンピュータープログラム命令として具現化することができると考える。当業者にとって周知である上述の実施形態の要素と構造的、化学的および機能的に同等な要素は全て、本開示の範囲内であると考える。
【0096】
先に本開示を詳述したことから、添付の特許請求の範囲で定義した本開示の範囲から逸脱することなく改良や変更が可能であることは明白であろう。
【0097】
本開示の様々な詳細および実施形態を更に説明するため、限定されない実施例を以下に示す。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
CuMnを、次のように調製した:
【0099】
CuSO・5HO(0.25モル)およびMnSO・HO(0.25モル)を適量の脱イオン水に溶解させ、溶液を作製した。約100グラムの水酸化カリウム溶液(20%)を、銅およびマンガンの硫酸塩の撹拌溶液に一滴ずつ加えた。得られた沈殿物をろ過で採取し、脱イオン水で十分に洗浄し、60℃で約24時間乾燥させた。その後、この乾燥物をオーブンに入れ、空気中にて約250℃で約15時間加熱した。最後に、この生成物をすり鉢とすりこぎを用いて粉末状にし、60ミクロンメッシュの篩にかけた。
【0100】
(実施例2)
CuMnを、次のように調製した:
【0101】
CuSO・5HO(0.05モル)およびMnSO・HO(0.05モル)を適量の脱イオン水に溶解させ、溶液を作製した。その後、得られた溶液を、酸化剤として使用されるKClO(0.0125モル)を含有した20%KOHの撹拌溶液に、一滴ずつ加えた。溶液の添加が終了したら、この反応混合物を約4時間撹拌した。得られた沈殿物をろ過し、十分に洗浄し、水で脱イオン化させた。この物質を、約60℃で約24時間乾燥させた。この乾燥した試料を、カソード活物質として使用する前に、約250℃で最長24〜72時間、または約400℃で約2時間加熱処理した。任意に、この乾燥した試料を、約250℃で約15時間加熱処理してもよい。
【0102】
(実施例3)
CuSO・5HO(0.05モル)、MnSO・HO(0.05モル)およびK(0.0125モル)を適量の脱イオン水に溶解させ、溶液を作製した。その後、得られた溶液を、20%KOHの撹拌溶液に一滴ずつ加えた。この操作が終了したら、沈殿物を母液中で撹拌しながら室温で約4時間熟成させた。この熟成した試料をろ過し、脱イオン水で十分に洗浄した。この物質を、約60℃で約24時間乾燥させた。この乾燥した試料を、カソード活物質として使用する前に、約250℃で最長24〜72時間、または約400℃で約2時間加熱処理した。任意に、この乾燥した試料を、約250℃で約15時間加熱処理してもよい。
【0103】
(実施例4)
CuMnを、次のように調製した:
【0104】
CuSO・5HO(1.5モル)およびMnSO・HO(0.25モル)を適量の脱イオン水に溶解させ、溶液を作製した。約100グラムの水酸化カリウム溶液(20%)を、銅およびマンガンの硫酸塩の撹拌溶液に一滴ずつ加えた。得られた沈殿物をろ過で採取し、脱イオン水で十分に洗浄し、60℃で約24時間乾燥させた。その後、この乾燥物をオーブンに入れ、空気中にて約250℃で約15時間加熱した。最後に、この生成物をすり鉢とすりこぎを用いて粉末状にし、60ミクロンメッシュの篩にかけた。
【0105】
上述の方法を用い、6:1以外の種々のCu:Mnのモル比を含有する前駆体からのCuMn材料を調製できることに留意すべきである。
【0106】
(実施例5)
CuMnを、次のように調製した:
【0107】
CuSO・5HO(1.5モル)およびMnSO・HO(0.25モル)を適量の脱イオン水に溶解させ、溶液を作製した。その後、得られた溶液を、酸化剤として使用されるKClO(0.125モル)を含有した20%KOHの撹拌溶液に、一滴ずつ加えた。溶液の添加が終了したら、この反応混合物を約4時間撹拌した。得られた沈殿物をろ過し、十分に洗浄し、水で脱イオン化させた。この物質を、約60℃で約24時間乾燥させた。この乾燥した試料を、カソード活物質として使用する前に、約250℃で約15時間、および約400℃で約2時間加熱処理した。
【0108】
上述の方法を用い、6:1以外の種々の銅:マンガンのモル比を含有する前駆体からのCuMn材料もまた、調製できることに留意すべきである。
【0109】
(実施例6)
CuSO・5HO(1.5モル)、MnSO・HO(0.25モル)およびK(0.0125モル)を適量の脱イオン水に溶解させ、溶液を作製した。その後、得られた溶液を、20%KOHの撹拌溶液に一滴ずつ加えた。この操作が終了したら、沈殿物を母液中で撹拌しながら室温で約4時間熟成させた。この熟成した試料をろ過し、脱イオン水で十分に洗浄した。この物質を、約60℃で約24時間乾燥させた。この乾燥した試料を、カソード活物質として使用する前に、約250℃で約15時間、および約400℃で約2時間加熱処理した。
【0110】
(実施例7)
CuSO・5HO(1.5モル)、MnSO・HO(0.25モル)、C(2モル)およびK(0.0125モル)を適量の脱イオン水に溶解させ、pHが約1.3の溶液を作製した。その後、この撹拌溶液に20%KOHの溶液を、生成物の沈殿が完了するpH約13に達するまで、一滴ずつ加えた。この操作が終了したら、沈殿物を母液中で撹拌しながら室温で約45分間熟成させた。この熟成した試料をろ過し、脱イオン水で十分に洗浄した。この物質を、約60℃で約24時間乾燥させた。この乾燥した試料を、カソード活物質として使用する前に、約250℃で約15時間加熱処理した。対応する銅:マンガンのモル比は、6:1であった。
【0111】
(実施例8)
混合溶液中の銅:マンガンのモル比が5:1であったことを除き、CuMnの試料を実施例7に記載のように調製した。
【0112】
(実施例9)
混合溶液中の銅:マンガンのモル比が4:1であったことを除き、CuMnの試料を実施例7に記載のように調製した。
【0113】
(実施例10)
混合溶液中の銅:マンガンのモル比が3:1であったことを除き、CuMnの試料を実施例7に記載のように調製した。
【0114】
(実施例11:試験セル)
上記実施例1〜3で調製したCuMnを含むカソードの特性を説明するため、第1の例示的試験セルを作製した。図1に示すように、ハウジングX7、アノードX1、カソードX3、セパレータX5および非水電解質を含む例示的試験セルを作製した。このセルは、再充電可能な電気化学セルか、再充電可能でない電気化学セルのどちらかとして使用することができる。このセルにおいては、アノードX1を陰極リードX2と電気的に接触するように構成し、カソードX3を陽極リードX4と電気的に接触するように構成し、セパレータX5をアノードX1およびカソードX3と電気的に分離するように構成し、電解質をセパレータX5に浸透させた。アノードX1、カソードX3、セパレータX5および電解質を、ハウジングX7内に含まれるように構成した。ハウジングX7の一端はキャップX6で閉じられ、環状の断熱ガスケットまたはOリングX8を、気密シールおよび液密シールがなされるように構成した。陽極リードX4を、カソードX3とキャップX6が接続されるように構成した。
【0115】
様々な実施形態による電気化学セルは、例えば円筒巻きセル、ボタン若しくはコインセル、角形セル、剛性の薄膜セルまたはフレキシブルパウチや封筒状やバッグ状のセルなど、任意の形状であってもよい。
【0116】
(実施例12:試験セルを用いたCuMnの分析/試験)
250℃で加熱処理した上述の実施例3のCuMnO材料について行ったX線分析により、図2に示すような非晶質構造が明らかになった(PDF系のピークで、およそ30、36、38、44、54、58、64、68、72、76、81、84および88においての、目立ったまたはくっきりとしたピークまたはシグナル)。約400℃で約2時間加熱処理した試料についても、同様の構造を得た。
【0117】
実施例3のCuMnの電気化学的挙動を、アノードとしてリチウム金属を用い、上述の詳細に従って作製したパウチセルにおいて評価した。カソードを、活物質として70%のCuMn、14%のスーパーP(カーボン)、導電性充填剤として8%のKS4(黒鉛)、および結合剤として8%のPVDFで構成した。CuMn、スーパーPおよびKS4を、ボールミル粉砕を介して最初に混合した。その後、得られた乾燥混合物を、N−メチリ−2−ピロリデン(NMP)溶液に溶解させたPVDFに加え、スラリーを作製した。最後に、このスラリーを、NMPを蒸発させるためのオーブンを搭載した電極塗布機を用いて炭素被覆したアルミホイル基板に塗布し、カソードを作製した。
【0118】
図3は、アノードとしてリチウム金属を用いたパウチセルにおける、上記の実施例3のCuMnのカソード材料についての放電プロファイルを示す。カソード活物質の放電率を10ミリアンペア毎グラム(mA/g)とし、定電流の条件下で室温にて測定を実施した。1.5ボルトに対する放電容量は、約1060mAh/gである。その一方、図4に示すように、CF電極を有するセルの比容量は、約860mAh/gを示す。従って、本開示のCuMn材料は、CFのカソードを含む装置に比べて比容量の増加をもたらす。
【0119】
(実施例13:寿命終末期の指示)
本開示の様々な実施形態によれば、CuMnを含むカソードは、寿命終末期の指示を促す放電特性を示し得ることが観察された。例えば図3に示すように、セルの電圧出力は、約200mAh/gの後に第2の放電平坦域へと減少し、約700mAh/gまで2.2Vで横ばいである。本開示の様々な態様によれば、この第2の平坦域を、例えばセルが放電プロセスの終了に近づいている時期であるバッテリーの寿命終末期の検知に有利に使用することができる。かかる寿命終末期の指示は、医療装置に適用するのが望ましいことがあり、その場合、バッテリーが寿命終末期に到達する前であって早すぎない時期に、医療装置を摘出するのが望ましいことがある。
【0120】
(実施例14:再充電可能なバッテリー)
更に別の実施形態において、CuMnは、少なくとも部分的な再充電性および/または可逆性を示すことがある。図5は、パウチセルにおけるCuMnカソードのサイクリックボルタンメトリーを示し、約4.0Vから2.5Vにかけてカソードの良好な可逆性が示されている。戻って図3に示すように、CuMnカソードを含む本開示の例示的な実施形態は、容量の最初の約200mAh/gの間は可逆的となり得る。従って、例示的なバッテリーもやはり、CFを含む電極と実質的に似た容量をもつことがある。
【0121】
(実施例15:CuMnおよびCFを有する電極)
前述の通り、本開示の特定の一実施形態において、カソード材料は、フッ素化炭素(例えばCF)等の高い比容量を有する1つ以上の他のカソード材料と組み合わさったCuMnを含んでもよい。CuMnおよびCFを含むカソードを有するバッテリーは、CFだけを有するバッテリーと比べて強化された電気化学的性能(例えば比エネルギー、エネルギー密度、作動電圧および放電率能)を示すことがある。また、かかるバッテリーは、その容量の最終部分においてより予測可能な電圧の変化を示すことがあり、従って、信頼性のある有用寿命の終末期の指標をもたらす。
【0122】
特定の実施形態においては、上述の実施例3に従って作製したCuMnを、フッ素化炭素、更に詳細にはCF(CF/CF0.6の組成物を80/20の比率で有する)と混合し、カソードを作製した。85重量%のフッ化炭素と15重量%のCuMnから成る混合物のカソード活性部分を、スーパーPおよびKS4と混合した。
【0123】
上記のカソード混合物から調製したカソードを用いて作製したセルの、10mA/gの放電率における放電プロファイルを図4に示す。比較のため、活性物としてフッ化炭素だけを用いて作製したセルの放電データも図4に示す。カソード材料としてフッ化炭素およびCuMnの混合物を用いて作製したセルの、1.5ボルトに対する比容量は、約1100mAh/gである。単独で評価すると、フッ化炭素系のセルは、1.5ボルトに対して約820mAh/gの比容量をもたらした。
【0124】
予測される容量が704mAh/gであるCFx85%と、予測される容量が1060mAh/gであるCuMn15%との混合物によって、約810mAh/gの容量をもたらすハイブリッドカソードが作製されるべきであったことに留意すべきである。その代わりに、新しいカソードは、予想外にも36%増加である1100mAh/gの容量をもたらした。従って、本開示の実施形態によるCuMnをフッ化炭素(更に詳細にはフッ素化炭素)へ取り込んで作製したセルは、カソード活物質としてフッ化炭素だけを用いて作製したセルと比べて容量が約56%改善された。
【0125】
また、かかるセルは、比較的一定の放電電圧である2つの間隔または平坦域を示すことにも留意すべきである。第1の間隔150は、セルの寿命初期に現れる。第2の間隔152は、セルのEOLに向かうところで現れる。EOL状態に関連した先験的なこの第2の平坦域152を、セルのEOLが近いことの指示に用いてもよい。EOL状態の検知を容易にし得る放電のプロファイル、傾き、間隔および/または平坦域をもった他のセルの化学的特性は何れも、本開示の範囲内であると考える。
【0126】
(実施例16:試験セル)
上記実施例4〜10で調製したCuMnを含むカソードの特性を更に説明するため、第2の例示的試験セルを作製した。具体的には、(特に明記がない限り)図9および9Aに示すような例示的コインセルバッテリーを試験媒体として用い、CuMnを含むカソードの放電特性を評価した。図9および9A(図9Aは、9Aの線に沿った図9の断面図である)に示すように、例示的試験セルは、セル缶(Y1)、カソード(Y2)、セパレータ(Y3)、非水電解質、ステンレス製のスペーサー(Y4)、ガスケット(Y5)、皿バネ(Y6)、セルキャップ(Y7)およびアノード(Y8)を具えた。このセルは、再充電可能な電気化学セルか、再充電可能でない電気化学セルのどちらかとして使用することができる。アノード、カソード、セパレータおよび電解質を、セル缶およびセルキャップ内に含まれるように構成した。
【0127】
様々な実施形態による他の電気化学セルは、例えば円筒巻きセル、角形セル、剛性の薄膜セルまたはフレキシブルパウチや封筒状やバッグ状のセルなど、任意の形状であってもよい。
【0128】
(実施例17:試験セルを用いたCuMnの分析/試験)
CuMnの密度測定結果を図10に示す。例示の銅マンガン酸化物の密度は、約4.2〜約5.5g/cmの間にあることがわかった。また、実施例7、8、9および10に示す250℃で加熱処理した物質のX線図を図11に示す。図に示すように、基本的には結晶性の物質に特有のくっきりとしたピークがない。しかしながら、実施例8によって調製した試料において、CuOに起因する2つの小さなピークが観察された。実施例8、9および10によって調製した試料のXRD図は、暫定的にCuOに起因する小さなピークを示した。本開示の物質の半結晶性の性質は、典型的に、高い銅濃度(例えばCu:Mnのモル比が6:1)に伴って現れる。低い銅濃度を用いると、得られる物質は、XRDによって明らかなように、基本的に非晶質である。
【0129】
この物質の表面積をBET法で測定し、約70m/gであることがわかった。図12Aの走査電子顕微鏡画像は、ミクロン径の粒子を表しており;しかしながら、より高倍率の画像(図12Aの挿入部分)によれば、ナノ径の粒子が凝集してミクロン径の粒子を形成していることが明らかである。凝集した粒子は、高い表面積を持った、より「細孔のような」構造をもたらす。図21Bは、2つの異なる表面の特徴を表したSEM画像を示しており、これは2つの異なる成分に由来している可能性がある。1つの成分は、非常に導電性が高いCuOであって、より黒ずんでおり(図12Bにて矢印で示す)、また、低導電性の成分は非晶質形態のマンガン酸化物および/または銅マンガン酸化物である可能性があり、導電性性質がより低いため、示した図においては比較的明るい。
【0130】
図13Aよび13Bは、実施例7によって作製した試料のX線光電子分光(XPS)の結果を示す。Cuの詳細のピーク分析では、934.1eVおよび954.0eVにおいて2つのピークを示し、これはCuOおよびCuMnそれぞれの特有の結合エネルギーに起因している。更に、マンガン元素の分析では、642.8eVおよび654.1eVにおいて、マンガン(IV)酸化物(MnO2)に帰属する結合エネルギーのピークを示している。Mnピークにおけるこの大きなショルダーは、高酸化状態である物質の一部に起因していることがある。例えば、酸素に対する金属の算出比率は0.44であり;CuMnスピネルの酸素に対する金属の比率が0.6であり、CuO/MnOが0.5であることはよく知られている。これらの結果は、この化合物がスピネル形態のCuMnよりも高酸化状態である可能性があることを示唆している。
【0131】
この説明の場合において、XRDの結果は、CuOが半結晶性および/または結晶性の物質であり、マンガン酸化物および銅マンガン酸化物が非晶質であることを示す。XPSおよび元素分析では、Cu、MnおよびOを含有する物質の組成を確認する。更に、XPSによる詳細な元素走査は、CuO、MnOおよびCuMnの存在を示す。高倍率のSEM画像は、試料中の種々の元素の存在を示す。これらの結果は、本開示の物質が非晶質および/または半結晶性の性質を示すことを示唆している。
【0132】
図14は、様々なモル比を用いて合成した銅マンガン酸化物の熱分解を示す。空気中にて10℃/minの加熱速度で、熱分解を実施した。図14は、これらの物質の全てが500℃において熱的に安定であることを示しており、約4%の重量損失が観察されたが、これは表面水または結晶水に起因しているものとすることができる。カソード(本開示のカソード材料で構成されている)を電解質(PC/DME/LiBF)中で60℃にて22日間保存する場合、CuおよびMnの平均溶解量はそれぞれ約5ppmおよび1ppmである。このデータにより、本開示の様々な実施形態の物質の化学的安定性および熱的安定性が良好であることを実証している。
【0133】
本開示の様々な実施形態によるカソード材料の電気化学的挙動を、アノードとしてリチウム金属を用いた2325型のコインセルにおいて評価した。カソードを、活物質として70%のCuMn、導電性充填剤として27%のKS4(黒鉛)と、結合剤として3%のPTFEで構成した。CuMnおよびKS4を、すり鉢とすりこぎを用いて最初に混合した。その後、得られた混合物を混合しながらPTFEの粉末を加え、カソードシートを作製した。得られたシートから、型打ち機で電極を切り取った。このカソードを、2325型のコインセルで実験する前に、120℃にて約4時間真空乾燥した。
【0134】
図15は、アノードとしてリチウム金属を用いたコインセルにおける、実施例10のカソード材料についての放電プロファイルを示す。電気化学的性能を、マッコーバッテリー試験装置を用いて測定した。セルの最初の放電は10mA/gとし、2.6ボルトまで下がり、2度目は5mA/gとし、2.3ボルトまで下がり、3度目は1mA/gとし、1.5ボルトまで下がった(シグネチャ試験)。従って、様々な実施形態によるCuMnは、約2.4ボルトで平坦域を有し、約2ボルトで約900mAh/gの比容量を示した。
【0135】
更なる実施形態においては、CuMnをフッ化炭素(CF/CF0.6の比率が約80/20)とともに混合し、カソードを作製した。約90重量%のフッ化炭素と10重量%のCuMnを含有した混合物のカソード活性部分を、カーボンブラックおよび黒鉛とともに混合した。(特に明記がない限り、本明細書で示したパーセントは全て、重量パーセントである。)試験対象のカソードを、上述の通りに調製した。得られたカソードを用いて作製したセルの、10mA/gの放電率における放電プロファイルを図16に示す。比較のため、活性物としてフッ化炭素だけを用いて作製したセルの放電データも図16に示す。本開示により、カソード材料としてフッ化炭素およびCFの混合物を用いて作製したセルの、1.5ボルトに対する比容量は、約1007mAh/gである。単独で評価すると、フッ化炭素系のセルは、1.5ボルトに対して約820mAh/gの比容量をもたらした。
【0136】
予測される容量が746mAh/gであるCFx90%と、予測される容量が1000mAh/gであるCuMn10%との混合物によって、約846mAh/gの容量をもたらすハイブリッドカソードが作製されると予測されていたことに留意すべきである。しかしながら、新しいカソードは、1007mAh/gという、予想外にも約19%増加の容量値をもたらした。従って、本開示の様々な実施形態によるCuMnをフッ化炭素(更に詳細にはフッ素化炭素)へ取り込んで作製したセルは、カソード活物質としてフッ化炭素だけを用いて作製したセルと比べて容量が約35%改善された。
【0137】
(実施例18:内部充電可能なバッテリー)
前述の通り、CFおよび本開示の銅マンガン混合酸化物を含むセルは、自己充電能力(即ち、内部充電能力または内部再充電能力)を示すことが観察された。如何なる特定の理論に捉われるものでもないが、このことは、少なくとも一部は前述のカソード内での放電生成物を伴う酸化還元反応に起因していると考えられている。図17は、自己充電を5サイクル行った後の、3mA/gにおけるセルの放電挙動を示す。ここでは、シグネチャ試験(即ち、2.5ボルトに対して10mA/g、2.0ボルトに対して30mA/g、その後1mA/g)を用いて最初にセルを放電したことに留意すべきである。その後、それを試験から引き上げ、放電する前に約5日間放置した。放置の間、セルのOCVは約1.7ボルトから約2.9ボルトにまで上がり、このことが内部充電または自己充電の過程を示唆している。
【0138】
図18は、CFおよび本開示のカソード材料であるCuMnを含むパウチセルのICD試験における電圧プロファイルを示す。かかるカソードは、約90重量%のCFと、約10重量%のCuMnを含んだ。放電プロトコルを次の通りとした:一連を4時間おきとし、4つのパルスがあった。このパルスの振幅を、活物質グラム当たり、0.7Aで算出した。図18に示すように、本開示のCuMn材料をカソードに取り込むことにより、第1のパルス列の電圧のくぼみが小さくなるか、除去される。この結果は、CFおよび本開示のカソード材料を含むセルが、CFを含みCuMnを含まないセルと比較して、放電の初期段階において良好な放電率能を有することを示唆している。
【0139】
本開示の要素またはそれらの好適な実施形態を提供するとき、「ある」、「かかる」、「該」および「前記」という冠詞には、1つ以上の要素があることを意味するような意図がある。また、「含む」、「含有する」および「有する」という用語には、包括的で、記載された要素以外にも追加的な要素があり得ることを意味するような意図がある。
【0140】
上述の実施形態における様々な変更(例えばカソード材料の組成、電気化学セルの部品および構造等)を本開示の範囲から逸脱することなく行うことができたように、上記の説明に含まれ、および添付の図面に示される全ての事項は一例として解釈されるものとし、限定された意味ではないことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寿命終末期状態の指示を選択的に提供するシステムであって、
正極端子と、負極端子と、非晶質または半結晶性の銅マンガン酸化物のカソード材料を含むカソードを具えるセルと、を具える電気化学的装置と、
該電気化学的装置の電圧を検知するための電圧センサーを具え、正入力、負入力および出力を有し、ここで該正入力は該電気化学的装置の正極端子に接続され、該負入力は該電気化学的装置の負極端子に接続される検知部品と、
該検知部品の出力に接続され、該電気化学的装置の電圧を示す該検知部品からの信号を受信し、受信した信号に応じて寿命終末期状態の指示を提供すべきかを決定し、該決定に応じて寿命終末期状態の指示を選択的に提供するコントローラと
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記電気化学的装置は、バッテリーおよびキャパシタの1つであり、および前記セルと実質的に同一の複数の電気化学セルを含み、
前記コントローラは、寿命終末期が決定されたことをユーザーに警告することにより寿命終末期状態の指示を選択的に提供する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カソードはフッ素化炭素と組み合わさった銅マンガン酸化物を含み、
該銅マンガン酸化物とフッ素化炭素との組み合わせはフッ素化炭素よりも高い比放電容量でより大きな放電電圧を有し、
前記カソードは結合剤材料および導電性添加剤を更に含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記セルは、
元素の周期表の1A族および2A族から成る群より選択される金属を含むアノードと、
該アノードと前記カソードとの間に配置され、ポリマー膜を含むセパレータと、
比較的低粘性の溶媒と比較的高誘電率の溶媒とを含む非プロトン性の有機溶媒または溶媒混合液に溶解したイオン性アルカリ金属塩を含み、該アノード、前記カソードおよび該セパレータと流体連結した、非水でかつイオン導電性の電解質と
を更に具える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電気化学的装置は第1の放電電圧において第1の平坦域を、および第1の放電電圧未満である第2の放電電圧において第2の平坦域を有し、
前記コントローラは、受信した信号により電気化学的装置の電圧が該第1の放電電圧と該第2の放電電圧との間である第1の電圧閾値以下に下がったことが示される場合に、寿命終末期状態の1回目の指示を提供すべきであることを決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電気化学的装置は第1の放電電圧において第1の平坦域を、および第1の放電電圧未満である第2の放電電圧において第2の平坦域を有し、
前記コントローラは、受信した信号により電気化学的装置の電圧が該第2の放電電圧未満である第2の電圧閾値以下に下がったことが示される場合に、寿命終末期状態の2回目の指示を提供すべきであることを決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記検知部品は、
前記電気化学的装置の温度を測定するための温度センサーを更に具え、
前記コントローラは、前記電気化学的装置の温度に応じて寿命終末期状態の指示を提供すべきかを決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記検知部品は、
前記電気化学的装置がもたらす電流を測定するための電流モニターを更に具え、
前記コントローラは、前記電気化学的装置がもたらす電流に応じて寿命終末期状態の指示を提供すべきかを決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラはエネルギー利用が低減された状態で動作可能であり、
該コントローラは所定の時間に該コントローラをエネルギー利用が低減された状態から呼び起こすためのスリープタイマーを更に具え、
該コントローラは該呼び起こしに応じて寿命終末期状態の指示を提供すべきかを決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラはエネルギー利用が低減された状態で動作可能であり、
該コントローラはエネルギー利用が低減された状態から呼び起こすための外部割り込みからの指令に応じ、寿命終末期状態の指示を提供すべきかを決定し、
該外部割り込みは、システムと物理的には直接接触していない、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、寿命終末期状態を示す信号を受信機に送信することによって寿命終末期状態の指示を提供するための送信部品を更に具える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
負荷装置、電気化学的装置および寿命終末期センサーを具える電子機器であって、
該負荷装置は、正極端子と負極端子とを有し、
該電気化学的装置は、正極端子と、負極端子と、カソードを含むセルとを具え、該カソードは非晶質または半結晶性の銅マンガン酸化物のカソード材料を含み、該電気化学的装置の正極端子は該負荷装置の正極端子に接続され、該電気化学的装置の負極端子は該負荷装置の負極端子に接続され、および該電気化学的装置は該負荷装置に電力を供給し、
該寿命終末期センサーは、検知部品とコントローラとを具え、
該検知部品は、該電気化学的装置の電圧を検知するための電圧センサーを具え、正入力と、負入力と、出力とを有し、該正入力は該電気化学的装置の正極端子に接続され、および該負入力は該電気化学的装置の負極端子に接続され、
該コントローラは、該検知部品の出力に接続され、該電気化学的装置の電圧を示す該検知部品からの信号を受信し、該受信した信号に応じて寿命終末期状態の指示を提供すべきかを決定し、および該決定に応じて寿命終末期状態の指示を選択的に提供する
ことを特徴とする、電子機器。
【請求項13】
前記カソードはフッ素化炭素と組み合わさった銅マンガン酸化物を含み、
該銅マンガン酸化物とフッ素化炭素との組み合わせはフッ素化炭素よりも高い比放電容量でより大きな放電電圧を有し、
前記カソードは結合剤材料および導電性添加剤を更に含む、
請求項12に記載の電子機器。
【請求項14】
前記セルは、
元素の周期表の1A族および2A族から成る群より選択される金属を含むアノードと、
該アノードと前記カソードとの間に配置され、ポリマー膜を含むセパレータ材料と、
比較的低粘性の溶媒と比較的高誘電率の溶媒とを含む非プロトン性の有機溶媒または溶媒混合液に溶解したイオン性アルカリ金属塩を含み、該アノード、前記カソードおよび該セパレータと流体連結した、非水でかつイオン導電性の電解質と
を更に具える、請求項12に記載の電子機器。
【請求項15】
前記電気化学的装置は第1の放電電圧において第1の平坦域を、および第1の放電電圧未満である第2の放電電圧において第2の平坦域を有し、
前記コントローラは、受信した信号により電気化学的装置の電圧が該第1の放電電圧と該第2の放電電圧との間である第1の電圧閾値以下に下がったことが示される場合に、寿命終末期状態の1回目の指示を提供すべきであることを決定する、
請求項12に記載の電子機器。
【請求項16】
前記電気化学的装置は第1の放電電圧において第1の平坦域を、および第1の放電電圧未満である第2の放電電圧において第2の平坦域を有し、
前記コントローラは、受信した信号により電気化学的装置の電圧が該第2の放電電圧未満である第2の電圧閾値以下に下がったことが示される場合に、寿命終末期状態の2回目の指示を提供すべきであることを決定する、
請求項12に記載の電子機器。
【請求項17】
非晶質または半結晶性の銅マンガン酸化物のカソード材料を含むカソードを有するセルにおいて寿命終末期状態の指示を選択的に提供する方法であって、
該方法は、
該セルを具える電気化学的装置を寿命終末期センサーに接続する工程と、
該電気化学的装置の放電電圧を、該寿命終末期センサーの検知部品を介して検知する工程と、
寿命終末期状態の指示を提供すべきかを決定する工程と、
該決定に応じて該寿命終末期状態の指示を選択的に提供する工程と
を含み、
前記電気化学的装置は正極と負極とを更に具え、該寿命終末期センサーは正入力と負入力とを含み、該電気化学的装置の正極端子は該寿命終末期センサーの正入力に接続され、および該電気化学的装置の負極端子は該寿命終末期センサーの負入力に接続され、
前記検知部品は、該電気化学的装置の放電電圧を検知するための電圧センサーを具え、および検知した放電電圧を示す信号を該検知部品の出力を介して該寿命終末期センサーのコントローラに提供し、
前記決定は、少なくとも一部は該電圧センサーが該コントローラに提供した信号に応じてなされる
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記電気化学的装置は第1の放電電圧において第1の平坦域を、および第1の放電電圧未満である第2の放電電圧において第2の平坦域を有し、
前記コントローラは、受信した信号により電気化学的装置の電圧が該第1の放電電圧と該第2の放電電圧との間である第1の電圧閾値以下に下がったことが示される場合に、寿命終末期状態の1回目の指示を提供すべきであることを決定する、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記電気化学的装置は第1の放電電圧において第1の平坦域を、および第1の放電電圧未満である第2の放電電圧において第2の平坦域を有し、
前記コントローラは、受信した信号により電気化学的装置の電圧が該第2の放電電圧未満である第2の電圧閾値以下に下がったことが示される場合に、寿命終末期状態の2回目の指示を提供すべきであることを決定する、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
エネルギー利用が低減された状態で前記寿命終末期センサーを動作させる工程と、所定の時間に前記寿命終末期センサーを呼び起こす工程を更に含み、
前記コントローラは該呼び起こしに応じて寿命終末期状態の指示を提供すべきかを決定する、
請求項17に記載の方法。
【請求項21】
エネルギー利用が低減された状態で前記寿命終末期センサーを動作させる工程と、外部割り込みからの指令に応じて前記寿命終末期センターを呼び起こす工程を更に含み、
該外部割り込みは所定の時間においては前記寿命終末期センサーに物理的に直接接触せず、
前記コントローラは該呼び起こしに応じて寿命終末期状態の指示を提供すべきかを決定する、
請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記寿命終末期状態の指示を提供する工程は、寿命終末期センサーの送信機を介して信号を受信機に送信する工程を含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図9A】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2012−519940(P2012−519940A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553144(P2011−553144)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/026408
【国際公開番号】WO2010/102239
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(510238959)イーグルピッチャー テクノロジーズ,エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】