説明

非真球高分子微粒子、その製造方法、該微粒子を含有するインクジェットインク組成物、これを用いた平版印刷版およびその製造方法、該微粒子を含有する電気泳動粒子組成物

【課題】帯電性に優れた非真球の微粒子、さらには、該微粒子を用いて、電場応答性に優れたインクジェットインク組成物、該インクジェットインク組成物を用いた平版印刷版およびその製造方法、該微粒子を用いた電気泳動粒子組成物を提供すること。
【解決手段】非水溶媒中で分散安定用樹脂の存在下、(A)求核性基を有するラジカル重合性モノマーおよび(B)前記求核性基と反応して共有結合を形成する基を有するラジカル重合性モノマーをラジカル重合することにより得られた非真球高分子微粒子、その製造方法、該微粒子を含有する組成物、これを用いた平版印刷版およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非真球高分子微粒子、その製造方法、該微粒子を含有するインクジェットインク組成物、これを用いた平版印刷版およびその製造方法、該微粒子を含有する電気泳動粒子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子微粒子は、塗料用有機顔料、紙塗被用有機顔料、診断薬用担体、インクジェットインク、電気泳動粒子などの分野に広く利用されている。
液状インクをインク滴と呼ばれる小さな液滴として記録媒体上に吹き付けて記録ドットを形成する方式により画像を記録する記録装置は、インクジェットプリンタとして実用化されている。インクジェットプリンタは、他の記録方式のプリンタと比べて騒音が少なく、現像や定着などの処理が不要であるという利点を有し、普通紙記録技術として注目されている。インクジェットプリンタの方式は、現在までに数多く考案されているが、特に(a)発熱体の熱により発生する蒸気の圧力でインク滴を飛翔させる方式(例えば、特許文献1及び2)や、(b)圧電素子によって発生される機械的な圧力パルスによりインク滴を飛翔させる方式(例えば、特許文献3)が代表的なものである。
【0003】
インクジェットプリンタに使用される記録ヘッド(以下、インクジェットヘッドという)は、キャリッジに搭載されて記録紙の搬送方向(以下、副走査方向)に対し直交する方向(以下、主走査方向)に移動しながら記録を行なうシリアル走査型ヘッドが実用化されている。このシリアル走査型ヘッドは、記録速度を高速にすることは困難である。そこで、記録ヘッドの長さを記録紙の幅と同一にした長尺ヘッドを用いて高速化したライン走査型プリンタも考えられているが、このようなライン走査型ヘッドを実用化することは、次の理由により容易なことではない。
【0004】
インクジェット記録装置は、解像度に対応する個別の細かいノズルが多数設けられているが、本質的に溶媒の蒸発や揮発によって局部的なインクの濃縮が生じやすく、これが前記ノズルの目詰まりの原因となっている。さらに、インクジェットの形成に蒸気の圧力を使う方式では、インクと熱的あるいは化学的に反応して形成された不溶物質の付着がノズルの目詰まりを誘起し、また圧電素子による圧力を使う方式では、インク流路等の複雑な構造がさらに目詰まりを誘起しやすくしている。数十から百数十個程度のノズルを使用するシリアル走査型ヘッドよりもさらに多い数千にものぼる多数のノズルを用いるライン走査型ヘッドでは、確率的にかなり高い頻度で目詰まりが発生し、実用上の信頼性を欠くという問題を有していた。
【0005】
さらに、蒸気の圧力を用いる方法では、記録紙上で直径50数μmの記録ドットに相当する直径20μm以下の粒径のインク粒を生成するのが難しいために、解像度の高いヘッドを製造するのが困難である。また圧電素子が発生する圧力を使う方式では、記録ヘッドが複雑な構造となるために加工技術上の問題で解像度の高いヘッドを製造することが困難である。このため、従来のインクジェット記録装置においては、いずれの方式のものであっても、解像度の向上を図ることが困難であるという問題を有していた。
【0006】
これらの問題を解決するために、基板上に薄膜により形成された複数の個別電極を配列して形成された電極アレイに電圧を印加し、静電力を用いてインク液面からインクあるいはその中の色材成分をインク滴として飛翔させるインクジェット記録方式が提案されてい
る。具体的には、静電的引力を用いてインク滴を飛翔させる方式(例えば、特許文献4及び5)や、帯電した色材粒子を含むインクを用い色剤の濃度を高めてインク滴を飛翔させる方式(特許文献6)などが提案されている。これらの方式では、記録ヘッドの構成が個別のドット毎のノズルを必要としないスリット状ノズル構造か、あるいは個別のドット毎のインク流路の隔壁を必要としないノズルレス構造であるために、ライン走査型記録ヘッドを実現する上で大きな障害であった目詰まりの防止と復旧に対して有効である。また、後者は非常に小さい径のインク粒子を安定に生成し飛翔させることができるため、高解像度化にも適している。
【0007】
上記の静電方式のインクジェット用重合体粒子としては、特許文献7に記載されるようにアクリル系ラジカル重合性モノマーを用い、非水溶媒中で、ラジカル重合することにより得られる、真球状の重合体粒子が一般に用いられている。
【0008】
また、近年に至って、着色高分子微粒子であって、電気泳動表示セル内で電気的に帯電して、泳動させる帯電性着色高分子微粒子に係わって、電気泳動表示装置が提案されている。例えば、特許文献8には、単純マトリックス駆動による表示コントラストを可能にさせる電気泳動表示装置が提案され、シリコーンオイル、トルエン、キシレン、高純度石油等の透明有機絶縁液体セルに装填される着色帯電泳動微粒子として黒、白又はRGBに係わる着色粒子が記載されている。また、このような泳動粒子として、絶縁性液体中で帯電特性を発揮するポリエチレン、ポリスチレン等の平均粒子径0.5〜20μmの高分子粒子が開示されている。
【0009】
以上のような状況下にあって、例えば、電気泳動表示セル内に充装する絶縁性の無色透明又は着色透明流体中を、帯電着色高分子微粒子を電気的に泳動させて画像及び/又は印字表示させるペーパーライクディスプレイ(PLD)には、電界系で帯電する染顔料で着色されている着色樹脂微粒子なる機能性定形ポリマー粒子が係わっている。また、この着色高分子微粒子がPLDとしての表示形態を可能にさせるには、対向する電極表示セル内での帯電性、電気泳動性が極めて重要である。従って、このPLDに用いる機能性定形ポリマー粒子は、電界系にあって電気的に応答し易い帯電性を呈する着色高分子粒子である。
【0010】
また、泳動粒子の凝集を防止させて泳動ディスプレイ性をスムーズにさせる観点から、粒子形状が定形で、好ましくは球状粒子で、好ましくは、その粒子径の分布度(バラツキ度)の少ない単分散粒子であることが望ましい。更には、複写機、レザープリンター、ファクシミリー等の電子写真画像形成装置には、静電トナーなる帯電性の機能性着色高分子微粒子が係わっている。このような帯電性着色樹脂微粒子は、前者のセル内の電界系で、泳動時に凝集粗大化を起こし難く、後者の転写・定着系でも凝集し難くい、粒子径の均斉度の高い単分散性の機能性定形粒子が求められる。
【0011】
静電式インクジェット記録用インク粒子または電気泳動表示用粒子等に用いる帯電性の微粒子においては、電界に対する応答性を高めることが技術的課題となっている。電界に対する応答性を高めるためには、粒子表面の帯電性を増大させる必要がある。粒子の帯電性は、粒子表面の化学的組成、表面積に大きく依存する。一定粒子径の粒子においては、粒子の表面積は、真球状のものに比べ、非球形のものが大きくなる。しかし、非水系の帯電性高分子微粒子としては、非球形微粒子の例は知られていない。
【0012】
近年、塗料などの白色度、光沢を高めたり、診断薬の機能を高めるために、前記の真球密実重合体微粒子とは異なる形態を有する重合体微粒子が開発されている。例えば、特許文献9には扁平粒子、特許文献10には表面に多数のくぼみがある粒子、特許文献11には、表面凹部を多数有する高分子微粒子の製造方法、特許文献12には異形高分子微粒子
の製造方法及び異形微粒子状高分子 、特許文献13には非球形粒子を含有するインクジェット記録用インクが開示されている。
しかし、これらの非真球微粒子は、いずれも水または高極性溶剤中で合成されたものであり、低極性の非水溶媒中で合成できない。このため、静電式インクジェット記録用インク粒子または電気泳動表示用粒子等に用いることはできなかった。
【0013】
【特許文献1】特公昭56−9429号公報
【特許文献2】特公昭61−59911号公報
【特許文献3】特公昭53−12138号公報
【特許文献4】特開昭49−62024号公報
【特許文献5】特開昭56−4467号公報
【特許文献6】特表平7−502218号公報
【特許文献7】特開平10−204354号公報
【特許文献8】特開2001−249366号公報
【特許文献9】特開2000−38455号公報
【特許文献10】特開平6−287244号公報
【特許文献11】特開2002−179708号公報
【特許文献12】特開2003−226708号公報
【特許文献13】特開平8−259863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、帯電性に優れた、非真球の微粒子を提供することであり、さらには、該微粒子を用いて、電場応答性に優れたインクジェットインク組成物、該インクジェットインク組成物を用いた平版印刷版およびその製造方法、該微粒子を用いた電気泳動粒子組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下のとおりである。
(1)非水溶媒中で分散安定用樹脂の存在下、(A)求核性基を有するラジカル重合性モノマーおよび(B)前記求核性基と反応して共有結合を形成する基を有するラジカル重合性モノマーをラジカル重合することにより得られた非真球高分子微粒子。
【0016】
(2)非水溶媒中に、分散安定用樹脂、(A)求核性基を有するラジカル重合性モノマー、(B)前記求核性基と反応して共有結合を形成する基を有するラジカル重合性モノマーを溶解し、ラジカル重合開始剤を加え、加熱することにより、ラジカル重合反応を行うことを特徴とする非真球高分子微粒子の製造方法。
【0017】
(3)前記(1)に記載の非真球高分子微粒子を含有するインクジェットインク組成物。
【0018】
(4)前記(3)に記載のインクジェットインク組成物を、親水性支持体上に吐出し、着弾させた後、放射線を照射して前記インクジェットインク組成物を硬化させることにより疎水性領域を形成することを特徴とする平版印刷版の製造方法。
【0019】
(5)前記(4)に記載の平版印刷版の製造方法によって製造された平版印刷版。
【0020】
(6)前記(1)に記載の非真球高分子微粒子、非水溶媒及び荷電調整剤を含有する電気泳動粒子組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非真球高分子微粒子は、平均粒径が同じ粒子と比較して、粒子表面積が大きいため粒子荷電量が増大し、また他の物体との接触面積が小さくなるため、粒子再分散性、付着粒子の洗浄性が良好となる。
本発明の非真球高分子微粒子により、電場応答性に優れ長期間の吐出安定なインクジェットインク組成物が得られる。また、再分散性にも優れるインクジェットインク組成物が得られる。
また本発明の非真球高分子微粒子により、画像品質に優れた平版印刷版が得られる。
また本発明の非真球高分子微粒子により、電気泳動性に優れた電気泳動粒子組成物が得られる。
この非真球高分子微粒子は、静電式インクジェットインク、インクジェット式製版印刷版用インク組成物、電気泳動式ディスプレイ、電気泳動式電子ペーパー、静電荷現像用のトナー等種々の用途に応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明について詳細に述べる。
〔非真球高分子微粒子〕
本発明における、インクジェットインク組成物、電気泳動粒子組成物などに有用な、帯電性に優れた高分子微粒子は、非真球状であることが特徴である。
非真球状であることの尺度として、粒子の電子顕微鏡を用いて粒子の形状観察し、画像解析を行うことにより平均円形度を求めることができる。
本発明における、帯電性に優れた非真球高分子微粒子とは、平均円形度が0.95以下である非真球高分子微粒子である。
【0023】
高分子微粒子の平均円形度は、シスメックス(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−2100を用いて、粒子画像を取得し、画像解析により、容易に求めることができる。本発明の非真球高分子微粒子は、平均円形度が0.95以下であり、好ましくは0.95〜0.5である。
また、SEM画像の画像処理により平均円形度を求めることもできる。
【0024】
円形度とは、粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長を、粒子の投影像の周囲長で除した値として定義され、平均円形度(Ca)は、次式(I)により求められる値である。
【0025】
【化1】

【0026】
上記式において、nは円形度Ciを求めた粒子の個数である。上記式においてCiは0.6〜400μmの円相当径の粒子群の各粒子について測定された円周長を元に次式により算出された各粒子の円形度である。
円形度(Ci)=粒子の投影面積に等しい円の周囲長/粒子投影像の周囲長
上記式において、fiは円形度Ciの粒子の頻度である。
【0027】
平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、微粒子の凹凸の度合いを示す指標である。平均円形度は、微粒子が完全な球形の場合に1を示し、微粒子の表面形状が複雑になるほど小さな値となる。
【0028】
本発明においては、平均円形度が0.95以下である非真球高分子微粒子が、非水溶媒中で、分散安定用樹脂の存在下、ラジカル重合性モノマーのラジカル重合により得られることを見出した。
以下に、平均円形度が0.95以下である非真球高分子微粒子の合成方法について述べる。
【0029】
[非水溶媒]
非水溶媒は、比誘電率1.5〜20および表面張力15〜60mN/m(25℃において)を有する非極性の絶縁性溶剤が好ましく、毒性の少ないこと、引火性が少ないこと、臭気が少ないものがよい。このような非水溶媒の例としては、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、石油ナフサおよびこれらのハロゲン置換体等から選ばれた溶媒が挙げられる。例えばヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、エクソン社のアイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、フィリップ石油社のソルトール、出光石油化学社のIPソルベント、石油ナフサではシェル石油化学社のS.B.R.、シェルゾール70、シェルゾール71、モービル石油社のベガゾール等から選ばれた溶媒を単独あるいは混合して用いる。
【0030】
好ましい炭化水素溶剤としては、沸点が150〜350℃の範囲にある高純度のイソパラフィン系炭化水素が挙げられ、市販品としては前述のエクソン化学製のアイソパーG,H,L,M,V(商品名)、ノーパー12,13,15(商品名)、出光石油化学製のIPソルベント1620,2028(商品名)、日本石油化学製のアイソゾール300,400(商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)等が挙げられる。これらの製品は、極めて純度の高い脂肪族飽和炭化水素であり、25℃における粘度は3cSt以下、25℃における表面張力は22.5〜28.0mN/m、25℃における比抵抗は1010Ω・cm以上である。また、反応性が低く安定であり、低毒性で安全性が高く、臭気も少ないという特徴がある。
【0031】
ハロゲン置換の炭化水素系溶媒としてフルオロカーボン系溶媒があり、例えばC716
、C818などのCn2n+2で表されるパーフルオロアルカン類(住友3M社製「フロリナートPF5080」、「フロリナートPF5070」(商品名)等)、フッ素系不活性液体(住友3M社製「フロリナートFCシリーズ」(商品名)等)、フルオロカーボン類(デュポンジャパンリミテッド社製「クライトックスGPLシリーズ」(商品名)等)、フロン類(ダイキン工業株式会社製「HCFC−141b 」(商品名)等)、[F(CF24CH2CH2I]、[F(CF26I]等のヨウ素化フルオロカーボン類(ダイキンファインケミカル研究所製「I−1420」、「I−1600」(商品名)等)等がある。
【0032】
本発明で使用される非水溶媒として、更に高級脂肪酸エステルや、シリコーンオイルも使用できる。シリコーンオイルの具体例としては、低粘度の合成ジメチルポリシロキサンが挙げられ、市販品としては、信越シリコーン製のKF96L(商品名)、東レ・ダウコーニング・シリコーン製のSH200(商品名)等がある。
シリコーンオイルとしてはこれらの具体例に限定されるものではない。これらのジメチルポリシロキサンは、その分子量により非常に広い粘度範囲のものが入手可能であるが、1〜20cStの範囲のものを用いるのが好ましい。これらのジメチルポリシロキサンは、イソパラフィン系炭化水素同様、1010Ω・cm以上の体積抵抗率を有し、高安定性、高安全性、無臭性といった特徴を有している。またこれらのジメチルポリシロキサンは、表面張力が低いことに特徴があり、18〜21mN/mの表面張力を有している。
【0033】
これらの有機溶媒とともに、混合して使用できる溶媒としては、アルコール類(例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、フッ化
アルコール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)およびハロゲン化炭化水素類(例えばメチレンジクロリド、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、メチルクロロホルム等)、等の溶媒が挙げられる。
【0034】
〔分散安定用樹脂(P)〕
本発明に用いられる分散安定用樹脂(P)は、非水溶媒中で、ラジカル重合性モノマーを重合して生成した非真球高分子微粒子(CR)を安定な分散物とするために用いられる。分散安定用樹脂(P)は、下記一般式(II)で示される繰返し単位を少なくとも有する非水溶媒に可溶性の重合体であることが好ましい。一般式(II)で示される部分は、前記非水溶媒に可溶性となる部分である。
【0035】
【化2】

【0036】
一般式(II)中、V0は、好ましくは−COO−、−OCO−、−CH2COO−、−CH2OCO−又は−O−を表し、より好ましくは−COO−、−OCO−、−CH2COO−を表す。
【0037】
Lは好ましくは炭素数8〜32の置換されてもよい、アルキル基又はアルケニル基を表す。置換基としては、例えばハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、−O−D2、−COO−D2、−OCO−D2(ここで、D2は炭素数6〜22のアルキル基を表し、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等である)等が挙げられる。より好ましくは、Lは、炭素数10〜22のアルキル基またはアルケニル基を表す。例えば、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、エイコシル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ドコセニル基等が挙げられる。
【0038】
1およびb2は、互いに同じでも異なってもよく、好ましくは、各々水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基、−COO−D3または−CH2COO−D3(ここで、D3は炭素数1〜22の脂肪族基を表し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられ、これら脂肪族基は前記Lで表したと同様の置換基を有していてもよい)を表す。より好ましくは、b1およびb2は、各々、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、−COO−D4または−CH2COO−D4(ここで、D4は炭素数1〜12のアルキル基またはアルケニル基を表し、例えば、メチル基
、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、等が挙げられ、これらアルキル基、アルケニル基は前記Lで表したものと同様の置換基を有していてもよい)を表す。
【0039】
本発明の分散安定用樹脂(P)は、好ましくは、上記一般式(II)で示される繰返し単位に相当する単量体と、該単量体と共重合し得る他の単量体とを共重合して得られる共重合体成分を含有する共重合体である。
【0040】
共重合し得る他の単量体としては、重合性二重結合基を含有すればいずれでもよく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;炭素数6以下の不飽和カルボン酸のエステル誘導体もしくはアミド誘導体;カルボン酸類のビニルエステル類もしくはアリルエステル類;スチレン類;メタクリロニトリル;アクリロニトリル;重合性二重結合基含有の複素環化合物等が挙げられる。
【0041】
より具体的には、例えば炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、モノクロロ酢酸等)のビニルエステル類あるいはアリルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸の炭素数1〜4の置換されてもよいアルキルエステル類またはアミド類(アルキル基として例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−ニトロエチル基、2−メトキシエチル基、2−メタンスルホニルエチル基、2−ベンゼンスルホニルエチル基、2−カルボキシエチル基、4−カルボキシブチル基、3−クロロプロピル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基、2−フルフリルエチル基、2−チエニルエチル基、2−カルボキシアミドエチル基等);
【0042】
スチレン誘導体(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルベンゼンカルボン酸、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、メトキシメチルスチレン、ビニルベンゼンカルボキシアミド、ビニルベンゼンスルホアミド等);アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;マレイン酸、イタコン酸の環状酸無水物;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;重合性二重結合基含有のヘテロ環化合物(具体的には、例えば高分子学会編「高分子データハンドブック−基礎編−」、p175〜184、培風舘(1986年刊)に記載の化合物、例えば、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、ビニルチオフェン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルオキサゾリン、ビニルチアゾール、N−ビニルモルホリン等)等が挙げられる。これらの他の単量体は2種以上を併用してもよい。
【0043】
分散安定用樹脂(P)における重合体成分中、一般式(II)で示される繰返し単位の成分は、重合体全成分中、少なくとも50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。また、分散安定用樹脂(P)において、非水溶媒に可溶性となる一般式(II)で示される共重合成分と共重合し得る他の単量体との重合方法は、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであってもよい。好ましくはブロック共重合である。なお、本発明における分散安定用樹脂(P)はポリマー主鎖間に架橋構造を有さない。
【0044】
更に本発明の分散安定用樹脂(P)の好ましい態様としては、重合体主鎖の片末端もしくは重合体を構成する繰り返し成分の置換基中に、下記一般式(III)で示される重合性二重結合基を結合してなるもので(以下、分散安定用樹脂(PG)と称することもある)、この重合性二重結合性基は、非真球高分子微粒子を構成する後述のラジカル重合性モノマーと共重合するいずれの官能基でもよい。
【0045】
【化3】

【0046】
一般式(III)中、V1は−COO−、−OCO−、−(CH2tCOO−、−(CH2tOCO−、−O−、−SO2−、−CONHCOO−、−CONHCONH−、−CON(D2)−、−SON(D2)(ここでD2 は水素原子または炭素数1〜22のアルキル基等の炭化水素基を示し、tは1〜4の整数を示す)または
【0047】
【化4】

【0048】
(ここでD3は単なる結合、−O−、−OCO−又は−COO−を表す)を表す。
【0049】
1およびc2は、同じでも異なってもよく、各々一般式(II)中のb1およびb2と同義である。c1およびc2のいずれか一方が水素原子であることがより好ましい。
【0050】
また、V1において、−CON(D2)−、−SO2N(D2)−の連結基におけるD2は、好ましくは水素原子又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基を表す。
【0051】
重合性二重結合基が重合体主鎖の片末端に結合した樹脂(PG)の態様としては、例えば下記一般式(Pa)で示されるものが挙げられる。
【0052】
【化5】

【0053】
一般式(Pa)中、G以外は、式(II)および(III)中の各記号と同義である。Gは重合体主鎖の片末端に直接連結する結合、または任意の連結基を介した結合基を表す。
【0054】
結合基としては炭素原子−炭素原子結合(一重結合あるいは二重結合)、炭素原子−ヘテロ原子結合(ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、ヘテロ原子−ヘテロ原子結合の原子団の任意の組合せで構成されるものである。例えば、
【0055】
【化6】

【0056】
1、z2は各々、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)等を示す。z3、z4は各々、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基等)または−Oz5(z5は、z3における炭化水素基と同義である)を表す)等が挙げられる。
【0057】
以上の如き重合体主鎖の片末端に結合する一般式(III)で示される重合性二重結合基について、以下に具体的に示す。ただし、以下の具体例において、Aは−H、−CH3または−CH2COOCH3を表し、Bは−Hまたは−CH3を表す。また、nは2〜10の整数を表し、mは2または3を表し、tは1、2または3を表し、pは1〜4の整数を表し、qは1または2を表す。
【0058】
【化7】

【0059】
【化8】

【0060】
【化9】

【0061】
【化10】

【0062】
重合体主鎖の片末端に重合性二重結合基を結合してなる本発明の分散安定用樹脂(PG)は、従来公知のラジカル重合(例えばiniferter 法等)、アニオン重合あるいはカチオン重合によって得られるリビングポリマーの末端に種々の二重結合基を含有する試薬を反応させるか、あるいはこのリビングポリマーの末端に特定の反応性基(例えば−OH、−COOH、−SO3H、−NH2、−SH、−PO32、−NCO、−NCS、
【0063】
【化11】

【0064】
−COCl、−SO2Cl等)を含有した試薬を反応させた後、高分子反応により重合性二重結合基を導入する方法(イオン重合法による方法)、または分子中に上記特定の反応性基を含有する重合開始剤および/または連鎖移動剤を用いてラジカル重合させた後、重合体主鎖の片末端に結合した特定の反応性基を利用して高分子反応を行うことにより重合性二重結合基を導入する方法等の合成法によって容易に製造することができる。
【0065】
具体的には、大津隆行、高分子、33 (No.3) 、222 (1984)、P.Dreyfuss & R.P.Quirk, Encycl. Polym. Sci. Eng., 7 , 551 (1987)、中條善樹、山下雄也「染料と薬品」、30, 232 (1985)、上田明、永井進「化学と工業」、60、57 (1986)、P.F.Rempp & E.Franta, Advances in Polymer Science 、58、1 (1984)、伊藤浩一「高分子加工」、35、262(1986)、V.Percec, Applied Polymer Science 、285 、97 (1984) 等の総説およびそれに引用の文献等に記載の方法に従って重合性二重結合基を導入することができる。
【0066】
さらに、具体的には、(a)一般式(II)で示される繰り返し単位に相当する単量体の少なくとも1種、および分子中に上記特定の反応性基を含有する連鎖移動剤の混合物を重合開始剤(例えばアゾビス系化合物、過酸化物等)により重合する方法、(b)上記連鎖移動剤を用いずに、分子中に上記特定の反応性基を含有する重合開始剤を用いて重合する方法、あるいは(c)連鎖移動剤および重合開始剤のいずれにも分子中に上記特定の反応性基を含有する化合物を用いる方法、等により重合体主鎖の片末端に特定の反応性基を結合した重合体を合成し、次にこの特定の反応性基を利用して、高分子反応により重合性二重結合基を導入する方法が挙げられる。
【0067】
用いる連鎖移動剤としては、例えば特定の反応性基または特定の反応性基に誘導しうる置換基を含有するメルカプト化合物{例えば、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−[N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル]プロピオン酸、3−[N−(2−メルカプトエチル)アミノ]プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール等}、あるいは特定の反応性基または特定の反応性基に誘導しうる置換基を含有するヨード化アルキル化合物(例えばヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2−ヨードエタノール、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸等)が挙げられる。好ましくはメルカプト化合物が挙げられる。
【0068】
また、特定の反応性基または特定の反応性基に誘導しうる置換基を含有する重合開始剤としては、例えば、アゾビス化合物{例えば、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロライド)、2,2'−アゾビス(2−シアノプロパノール)、2,2'−アゾビス(2−シアノペンタノール)、2,2'−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオアミド}、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオアミド}、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオアミド]、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)}、チオカルバメート化合物{例えば、ベンジルN−メチル−N−ヒドロキシエチルジチオカルバメート、2−カルボキシエチルN,N−ジエチルジチオカルバメート、3−ヒドロキシプロピルN,N−ジメチルジチオカルバメート}等が挙げられる。
【0069】
これらの連鎖移動剤または重合開始剤の使用量は、各々全単量体100質量部に対して0.05〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。
【0070】
また、重合体中の重合成分の置換基中に重合性二重結合基を含有した樹脂(PG)の具体的態様としては、例えば下記一般式(Pb)で示されるものが挙げられる。
【0071】
【化12】

【0072】
式(Pb)中、b1、b2、V0、L、c1、c2は上記と同義である。x成分とy成分は、樹脂(P)中に2種以上含有してもよい。t1、t2は各々前記b1、b2と同義である。V2およびV3は、各々、式(III)中のV1と同義である。GOは、結合基V2と結合基V3とを連結する基で、少なくとも1つの炭素原子、酸素原子、イオウ原子、ケイ素原子又は窒素原子からなるものを表す。
【0073】
結合基としては炭素原子−炭素原子結合(一重結合または二重結合)、炭素原子−ヘテロ原子結合(ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、ヘテロ原子−ヘテロ原子結合の原子団、ヘテロ環基等の任意の組合わせで構成されるものである。例えば、上記原子団としては、
【0074】
【化13】

【0075】
〔r1 〜r4は各々、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)等を示す。r5〜r7は各々、水素原子、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)等を示す。r8〜r9は各々、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基等)または−Or10(r10は、r8における炭化水素基と同義である)を表す〕等が挙げられる。
【0076】
また、ヘテロ環基としては、酸素原子、イオウ原子、窒素原子等のヘテロ原子含有の複素環(例えばチオフェン環、ピリジン環、ピラン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、フラン環、ピペリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピペラジン環等)等が挙げられる。
【0077】
一般式(Pb)中のy成分において、結合基:〔−V3−GO−V2−〕で構成される連結主鎖は、原子数の総和が8以上から構成されるものが好ましい。ここで、連結主鎖の原子数とは、例えば、V3が−COO−、−CONH−を表す場合、オキソ基(=O基)や水素原子はその原子数として含まれず、連結主鎖を構成する炭素原子、エーテル型酸素原子、窒素原子はその原子数として含まれる。従って、−COO−や−CONH−は原子数2として数えられる。
【0078】
以下に、重合性二重結合基を含む繰り返し単位(y成分)についての具体例を示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。下記式中、各記号は以下の内容を表す。
【0079】
【化14】

【0080】
【化15】

【0081】
【化16】

【0082】
重合成分の置換中に重合性二重結合基を含有する分散安定用樹脂(PG)は、従来公知の合成方法によって容易に合成することができる。すなわち、樹脂中に、重合性二重結合基を含有した重合成分(y成分)を導入する方法としては、予め特定の反応性基(例えば
−OH、−COOH、−SO3H、−NH2、−SH、−PO32、−NCO、−NCS、−COCl、−SO2Cl、エポキシ基等)を含有した単量体を一般式(Pb)におけるx成分に相当する単量体とともに重合反応させた後に、重合性二重結合基を含有する反応性試薬を反応させて、高分子反応により重合性二重結合基を導入する方法が挙げられる。
【0083】
具体的には、前記した重合体主鎖の片末端に重合性二重結合基含有の樹脂(PG)で例示した総説およびそれに引用の文献等に記載の方法に従って重合性二重結合基を導入することができる。
【0084】
また他の方法としては、ラジカル重合反応における重合反応性が異なる二官能性単量体を用いて、x成分に相当する単量体とともに重合反応させて、ゲル化反応を生じることなく一般式(Pb)で示される共重合体を合成する特開昭60−185962号記載の方法等が挙げられる。
【0085】
一般式(Pb)で示される樹脂において、x成分/y成分の存在割合は、90/10〜99/1質量比であり、好ましくは92/8〜98/2質量比である。この範囲内において、重合造粒反応時において、反応混合物のゲル化あるいは生成する樹脂粒子の粗大粒径化を生じる恐れがない。
【0086】
また、本発明に供される分散安定用樹脂(PG)は、一般式(Pa)、(Pb)の各繰り返し単位とともに、他の繰り返し単位を共重合成分として含有してもよい。他の共重合成分としては、一般式(Pa)、(Pb)の各々の繰り返し単位に相当する単量体と共重合可能な単量体よりなるものであればいずれの化合物でもよい。しかし、分散樹脂粒子の良好な分散安定性を得るために、多くても全重合性成分100質量部中の20質量部を超えない範囲で用いられることが好ましい。
【0087】
本発明の分散安定用樹脂(P)の好ましい態様の一つとしては、非水分散媒に可溶性の主鎖部分を構成するモノマーの少なくとも1種と、非水分散媒に不溶性のグラフト部分(側鎖部分)を構成するマクロモノマーの少なくとも1種とを含有するグラフトポリマー(以下、分散安定用樹脂(PF)と称することもある)である。
【0088】
本発明においてグラフトポリマーとは、主鎖に、側鎖としてグラフト鎖を有するポリマーであって、溶媒に可溶なものであれば限定されるものではないが、好ましくは重量平均分子量が500以上のポリマー成分であるグラフト鎖を側鎖として含む、重量平均分子量1,000以上のポリマーである。分散剤として特に好ましいグラフトポリマーは、分散媒に対して主鎖部分は溶解されず、側鎖部分(グラフト鎖)は溶解されているものである。
【0089】
「分散媒に対して主鎖部分が溶解されない」とは、側鎖部を有さない主鎖部のみから構成されるポリマーが、分散媒に対して溶解しないことを意味し、具体的には、分散媒100gに対して3g以下の溶解度(25℃)であることが好ましい。
「分散媒に対して側鎖部分が溶解される」とは、主鎖部を有さない側鎖部のみから構成されるポリマーが、分散媒に対して溶解することを意味し、具体的には、分散媒100gに対して5g以上の溶解度(25℃)であることが好ましい。
主鎖部が溶解されず、側鎖部が溶解されるグラフトポリマーは、分散媒に対して透明から白濁した状態となり、溶解または分散される。このようなグラフトポリマーを用いると、主鎖部が分散媒に対して溶解されないことにより、主鎖部が粒子に強く吸着し、一方、側鎖部が分散媒に対して溶解されることにより、側鎖部の分散媒へ親和性が向上し、結果として、粒子の分散媒に対する分散性が向上する。
【0090】
本発明において好適に用いることができるグラフトポリマーは、下記一般式(IV)で表される構成単位と下記一般式(V)で表される構成単位を少なくとも含有する重量平均分子量1,000以上のポリマーである。
【0091】
【化17】

【0092】
一般式(IV)及び(V)中、
51、R52、R61及びR62は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ水素原子またはメチル基を示す。
53は、水素原子または、置換基を有していてもよい炭素数1から30の炭化水素基を示す。R53の炭化水素基中に、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、カーバメート結合、アミノ基、ヒドロキシル基、または、ハロゲン置換基を含んでいても良い。
51及びX61は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ単結合または、C、H、N、O、S、Pより選ばれた2種以上の原子よりなる総原子数が50個以下の2価の連結基を示す。
1は、下記一般式(VI)で示される構成単位を少なくとも含む重量平均分子量が500以上のポリマー成分、または、重量平均分子量500以上のポリジメチルシロキサン基を示す。
【0093】
【化18】

【0094】
一般式(VI)中、
71およびR72は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ水素原子またはメチル基を示す。
73は、水素原子または、置換基を有していてもよい炭素数1から30の炭化水素基を示す。R73の炭化水素基中に、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、カーバメート結合、アミノ基、ヒドロキシル基、または、ハロゲン置換基を含んでいても良い。
71は、単結合または、C、H、N、O、S、Pより選ばれた2種以上の原子よりなる
総原子数が50個以下の2価の連結基を示す。
なお、R73の総原子数が、R53の総原子数より多いほうが、分散安定性の観点から好ましい。
【0095】
本発明において好適に用いる一般式(IV)で表される構成単位と一般式(V)で表される構成単位とを少なくとも含有するグラフトポリマーは、一般式(IV)に対応するラジカル重合性モノマーと一般式(V)に対応するラジカル重合性マクロモノマーとを、公知のラジカル重合開始剤を用いて、重合することにより得ることができる。ここで一般式(IV)に対応するモノマーとは、下記一般式(IVM)で示されるモノマーであり、一般式(V)に対応するマクロモノマーとは、下記一般式(VM)で示されるマクロモノマーである。
【0096】
【化19】

【0097】
尚、一般式(IVM)及び(VM)中の各記号は、一般式(IV)及び(V)におけるものと同じ意味である。
【0098】
一般式(IVM)で表されるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、及び、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン類、1−ブテン等の炭化水素類、及び酢酸ビニル類、ビニルエーテル類、ビニルピリジン類等が挙げられる。
【0099】
一般式(VM)で表されるマクロモノマーは、一般式(VI)に対応する下記一般式(VIM)のラジカル重合性モノマーを、必要に応じて連鎖移動剤存在下で重合し、得られたポリマーの末端にラジカル重合性官能基を導入することにより得られる末端にラジカル重合性官能基を有するポリマーである。
なお、一般式(VM)で表されるマクロモノマーの重量平均分子量は500〜500,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜7.0の範囲内であるマクロモノマーが好ましい。また、一般式(VM)で表されるマクロモノマーは、末端にラジカル重合性官能基を有するポリジメチルシロキサンであってもよい。
【0100】
【化20】

【0101】
尚、一般式(VIM)中の各記号は、一般式(VI)におけるものと同じ意味である。
一般式(VIM)で表されるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、及び、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン類、1−ブテン等の炭化水素類、及び酢酸ビニル類、ビニルエーテル類、ビニルピリジン類等が挙げられる。
【0102】
本発明に用いるグラフトポリマーは、一般式(IV)および(V)で示される構成単位のみを有していてもよいが、他の構成成分を含有していても良い。本発明において好適に用いるグラフトポリマーの具体例としては、下記の構造式で示されるポリマー[BZ−1]〜[BZ−8]が挙げられる。
【0103】
【化21】

【0104】
【化22】

【0105】
(式中のnは、ポリマーであることを示し、5以上である。)
分散媒に対して主鎖部分が溶解されないとは、上記一般式(V)で示される構成単位を含まないポリマーが、分散媒100gに対して3g以下の溶解度であることを意味し、また分散媒に対して側鎖部分が溶解されるとは、一般式(V)中のGのポリマー、または、一般式(VM)のマクロモノマーが、分散媒100gに対して5g以上の溶解度であることを意味する。
【0106】
本発明においては、粒子の長期間保存安定性と吐出安定性の観点から、分散剤は、重量平均分子量が1,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分
子量/数平均分子量)が、1.0〜7.0の範囲内であるグラフトポリマーであるのが好ましい。
また、グラフトポリマーの重量平均分子量は、グラフト鎖(好ましくは、上記一般式(7)で表されるマクロマー成分)の重量平均分子量に対して1.5倍以上であることが好ましい。
さらに、主鎖を構成する単位とグラフト鎖を構成する単位の質量比は、30:70〜95:5の範囲内にあることが好ましい。これらのポリマーは、分散剤として単独で使用しても良いが、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0107】
前述の様に、前記一般式(IV)で表される構成単位と下前記一般式(V)で表される構成単位を少なくとも含有するで示される可溶性成分と不溶性成分のグラフト共重合体から成る分散安定用樹脂(PF)を用いることが好ましい。この場合には、不溶性樹脂粒子に分散安定用樹脂(PF)の不溶性成分の主鎖部が充分に吸着する。更に、重合性二重結合基を含有する分散安定用樹脂(PG)を用いることが好ましい。この場合には、樹脂(PG)が不溶性樹脂粒子と化学結合する。これにより、分散樹脂粒子に充分に吸着もしくは化学結合した分散安定用樹脂(P)の可溶性成分の分散媒への親和性向上により、いわゆる立体反発効果をもたらし、分散性が更に向上すると考えられる。
【0108】
本発明の分散剤(P)の質量平均分子量(Mw)は、2×104 〜1×106が好ましく、より好ましくは3×104〜2×105である。
【0109】
〔ラジカル重合性モノマー〕
本発明で使用される少なくとも2種のラジカル重合性モノマーは、(A)求核性基を有するラジカル重合性モノマーおよび(B)前記求核性基と反応して共有結合を形成する基(親電子性基)を有するラジカル重合性モノマー(以下、(A)および(B)のラジカル重合性モノマーということがある)を含む。
(A)および(B)のラジカル重合性モノマーの具体例は、例えば「大学院講義有機化学I(分子構造と反応・有機金属化学)」野依良治他編集(東京化学同人)、「有機化学」モリソンボイド著(東京化学同人)、「有機化学」マクマリー(東京化学同人)、等の有機化学の専門書に記載されている。
なお、(A)および(B)のラジカル重合性モノマーの組み合わせはとくに制限されないが、好ましい組み合わせとしては、(A)カルボキシル基、1級アミノ基、2級アミノ基、フェノキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、チオール基、チオアルコキシ基、チオフェノキシ基、−COCHCO−基、−COCHSO−基、−CONHSO−基、−SONHSO−基を有するラジカル重合性モノマーと、(B)エポキシ基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキセタン基、フルオロアルキル基、クロロアルキル基、ブロモアルキル基、ヨードアルキル基、スルホン酸アルキル基、トリフルオロメタンスルホン酸アルキル、ペンタフルオロエタンスルホン酸アルキル等のパーフルオロアルカンスルホン酸アルキル基、トシル酸アルキル基、パーフルオロアルカンカルボン酸アルキル基を有するラジカル重合性モノマーと、の組み合わせが挙げられる。
さらに好ましい組み合わせとしては、(A)カルボキシル基、アルコキシ基、2級アミノ基、チオール基を有するラジカル重合性モノマーと、(B)エポキシ基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、クロロアルキル基、ブロモアルキル基を有するラジカル重合性モノマーとの組み合わせである。
【0110】
(A)および(B)のラジカル重合性モノマーの反応による共有結合の形成反応の例を以下に挙げる。R1〜R3は、任意の置換基を示す。
【0111】
【化23】

【0112】
以下に(A)のラジカル重合性モノマーの具体例を示す。
【0113】
【化24】

【0114】
以下に(B)のラジカル重合性モノマーの具体例を示す。
【0115】
【化25】

【0116】
本発明に用いられるラジカル重合性モノマーとして、粒子形成性、粒子分散性、粒子荷電性を制御するために、上記(A)および(B)のラジカル重合性モノマーの他に、公知のラジカル重合性モノマーを使用してもかまわない。その他のラジカル重合性モノマーは、非水溶媒には可溶であるが重合することによって不溶化する一官能性単量体であるものが好ましい。具体的には、例えば下記一般式(X)で表される単量体が挙げられる。
【0117】
【化26】

【0118】
一般式(X)中、V2は、単結合、−COO−、−OCO−、−CH2OCO−、−CH2COO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHOCO−、−SO2−、−CON(Q1)−、−SO2N(Q1)−、またはフェニレン基(以下、フェニレン基を「−Ph−」と記載することもある。なお、フェニレン基は、1,2−、1,3−および1,4−フエニレン基を包含する。)を表す。ここでQ1は、水素原子または炭素数1〜8の置換されていてもよい脂肪族基(たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、ベンジル基、クロロベンジル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ジメチルベンジル基、フロロベンジル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表す。
【0119】
Tは水素原子または炭素数1〜6の置換されてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、2−ニトロエチル基、2−メトキシエチル基、2−メタンスルホニル
エチル基、2−エトキシエチル基、3−ブロモプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−フルフリルエチル基、2−チエニルエチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、4−カルボキシブチル基、2−カルボキシアミドエチル基、2−N−メチルカルボキシアミドエチル基、シクロペンチル基、クロロシクロヘキシル基、ジクロロヘキシル基等)を表す。
【0120】
1およびa2は、互いに同じでも異なってもよく、好ましくは各々水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基等)、−COO−Q2または−CH2−COO−Q2〔ここでQ2は水素原子、または置換されてもよい炭素数10以下の炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基等を表す)を表す。
【0121】
具体的なラジカル重合性モノマーの例としては、例えば炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、モノクロロ酢酸等)のビニルエステル類あるいはアリルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸の炭素数1〜4の置換されてもよいアルキルエステル類またはアミド類(アルキル基として例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−ニトロエチル基、2−メトキシエチル基、2−メタンスルホニルエチル基、2−ベンゼンスルホニルエチル基、2−カルボキシエチル基、4−カルボキシブチル基、3−クロロプロピル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基、2−フルフリルエチル基、2−チエニルエチル基、2−カルボキシアミドエチル基等);
【0122】
スチレン誘導体(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルベンゼンカルボン酸、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、メトキシメチルスチレン、ビニルベンゼンカルボキシアミド、ビニルベンゼンスルホアミド等);アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;マレイン酸、イタコン酸の環状酸無水物;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;重合性二重結合基含有のヘテロ環化合物(具体的には、例えば高分子学会編「高分子データハンドブック−基礎編−」、p175〜184、培風舘(1986年刊)に記載の化合物、例えば、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、ビニルチオフェン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルオキサゾリン、ビニルチアゾール、N−ビニルモルホリン等)等が挙げられる。
【0123】
本発明の微粒子においては、非水溶媒中で粒子に正荷電を付与する目的で、カチオン性基を有するラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。カチオン性基を有するラジカル重合性モノマーは、一般式(Y)で表されるアミノ基を少なくとも1種分子内に含有するモノマー及び、含窒素複素環を有する重合性モノマーである。
【0124】
【化27】

【0125】
一般式(Y)中、R11及びR12は、同じでも異なってもよく、それぞれ水素、炭素数1〜22の炭化水素基を表す。R11及びR12は、結合して窒素原子と共に環を形成してもよ
い。
含窒素複素環のとしては、ピリジン、イミダゾール、インドール、カルバゾール、キノリンをあげることができる。好ましい構造としては、前記ラジカル重合性モノマーの一般式(X)において、Tで表される原子団に、一般式(Y)で表されるアミノ基が結合しているものを挙げることができる。具体的には、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジブチルアミノエチル、4−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾールをあげることができる。
【0126】
樹脂粒子の表面に正荷電を付与する場合には、上記カチオン性モノマーは、前記のラジカル重合性モノマーと任意の割合で混合して用いることができる。この場合のカチオン性モノマーの割合は、前記のラジカル重合性モノマーとカチオン重合性モノマーの合計質量の、1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。
このようなラジカル重合性モノマーは2種以上を併用してもよい。
【0127】
重合において使用するラジカル重合性モノマーのうち、(A)および(B)のラジカル重合性モノマーの総量の割合は、全モノマーのモル量に対し、0.1〜100モル%、好ましくは、1〜95モル%、更に好ましくは、10〜90モル%である。
(A)のラジカル重合性モノマー/(B)のラジカル重合性モノマーのモル比は、一般的に9/1〜1/9、好ましくは8/2〜2/8である。
【0128】
〔重合開始剤〕
重合に用いる重合開始剤としては、通常ラジカル重合に用いられる過酸化物系あるいはアゾ系開始剤が利用できる。一例を挙げると、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メメチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2´−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4´−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート等がある。該重合開始剤は、ラジカル重合性モノマーに対して、0.01〜20質量%、特に、0.1〜10質量%使用されるのが好ましい。
【0129】
〔非真球高分子微粒子(CR)の合成〕
本発明の非真球高分子微粒子(CR)の合成は、非水溶媒中、前記分散安定樹脂(P)存在下、前記(A)および(B)のラジカル重合性モノマーを、ラジカル重合することにより得ることができる。
具体的には、分散安定用樹脂(P)、前記(A)および(B)のラジカル重合性モノマー、及び非水溶媒の混合物中に重合開始剤を添加する方法、分散安定用樹脂(P)を非水溶媒に溶解し、前記(A)および(B)のラジカル重合性モノマー、重合開始剤を必要に応じ非水溶媒とともに滴下していく方法等があり、いずれの方法を用いても製造することができる。
重合において、モノマー濃度は、重合に用いる全重合性モノマー、非水溶媒、分散安定用樹脂(P)の合計に対し、5〜50質量%の範囲が好ましく、10〜40質量%が更に好ましい。
加熱温度は、使用する重合開始剤の分解温度に応じて定めることができ、一般に30〜120℃であり、50〜100℃が好ましい。
重合は、窒素等の不活性ガス気流下で行うことが好ましい。
【0130】
得られる非真球高分子微粒子(CR)の平均粒径は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。このような粒子を用いることで、平均粒径が0.1〜5μm程度で単分散性が良好な本発明の樹脂粒子を容易に製造することができる。
非真球高分子微粒子(CR)は、非水溶媒中で、必要に応じ濃縮または希釈してもよい。または、樹脂粒子を精製するために、遠心分離により粒子を沈降させ、上澄み液と分離し、非水溶媒に再分散して使用してもよい。
【0131】
上記非真球高分子微粒子(CR)は、前記(A)および(B)のラジカル重合性モノマーを含有しないラジカル重合性モノマーによって、樹脂粒子(CR0)を形成したあと、この粒子をシード粒子とし、前記(A)および(B)のラジカル重合性モノマーを含有するラジカル重合性モノマー(フィードモノマー)と重合開始剤を加えて、粒子を形成することもできる。
【0132】
この場合、樹脂粒子(CR0)と前記(A)および(B)のラジカル重合性モノマーを含有するラジカル重合性モノマー(フィードモノマー)の総量との使用割合は、樹脂粒子(CR0)/フィードモノマーの総量の質量比で、5/95〜95/5が好ましく、より好ましくは10/90〜80/20である。樹脂粒子(CR0)と全ラジカル重合性モノマーとの合計量は、非水溶媒100質量部に対して、好ましくは10〜150質量部であり、より好ましくは10〜100質量部である。
【0133】
分散安定用樹脂(P)の使用量は、用いられる全単量体100質量部に対して、好ましくは3〜40質量部であり、より好ましくは5〜30質量部である。重合開始剤の量は全単量体の0.1〜10質量%が適当である。また、重合温度は40〜180℃程度が好ましく、より好ましくは50〜120℃である。反応時間は5〜20時間程度が好ましい。
【0134】
〔インクジェットインク組成物、インクジェット式平版印刷版用油性インク組成物及び電気泳動粒子組成物〕
上記の非真球高分子微粒子は、インクジェットインク組成物、インクジェット式平版印刷版用油性インク組成物、電気泳動粒子組成物(以下、総じて、単に組成物という)などにおける荷電粒子として有用である。
【0135】
〔染色〕
本発明の高分子微粒子を、インクジェットインク、電気泳動表示装置に使用するために、必要に応じ粒子を着色することが好ましい。着色剤としては、油性インク組成物あるいは、静電写真用液体現像剤用の公知の着色剤である顔料および染料であればどれでも使用可能である。
【0136】
顔料としては、無機顔料,有機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー,チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、ブルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、等の従来公知の顔料を特に限定することなく用いることができる。
【0137】
染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料、等の油溶性染料が好ましい。
【0138】
これらの顔料および染料は、単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて使用することも可能であるが、組成物全体に対して0.01〜5質量%の範囲で含有されることが望ましい。
【0139】
これらの着色剤は、分散した非真球高分子微粒子とは別に色材自身を分散粒子として非水溶媒中に分散させてもよいし、高分子微粒子中に含有させてもよい。含有させる場合の方法の1つとしては、特開昭57−48738号などに記載されている如く、高分子微粒子を、好ましい染料で染色する方法がある。あるいは、他の方法として、特開昭53−54029号などに開示されている如く、高分子微粒子と染料を化学的に結合させる方法があり、あるいは、又、特公昭44−22955号等に記載されている如く、重合造粒法で製造する際に、予め色素を含有した単量体を用い、色素含有の共重合体とする方法がある。
【0140】
前記非水溶媒中で前記分散安定樹脂(P)の存在下、前記ラジカル重合性モノマーの重合により得た非真球高分子微粒子を染色するためには、色素粉体と非真球高分子微粒子の分散液を混合し加熱攪拌する方法、色素溶液を、非真球高分子微粒子の分散液に混合し加熱攪拌する方法が挙げられるが、染色の均一性の観点から、有機溶剤を用いた色素溶液を用いることができる。この場合に用いることができる。有機溶剤としては、前記色素を溶解し、非真球高分子微粒子の非水溶媒分散液に添加した場合に、高分子微粒子を溶解または凝集させない溶剤を使用することができる。また僅かに膨潤させるものであってもよい。具体例として、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム等をあげることができる。
色素溶液の濃度としては、0.01〜10質量%の範囲が好ましく、0.1〜5質量%の範囲がより好ましい。また、非真球高分子微粒子の非水溶媒分散液100質量部に対し、1〜20質量部の範囲で色素溶液を添加するのが好ましい。加熱温度としては25℃〜100℃が好ましく。30℃〜80℃がより好ましい。色素溶解に使用した溶剤は、加熱後に溜去してもよい。
【0141】
非水溶媒と、前記アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類等の極性溶媒を併用した場合あるいは、重合時のラジカル重合性単量体の未反応物が残存する場合、極性溶媒あるいは単量体の沸点以上に加温して留去するか減圧留去することによって除く、あるいは非真球高分子微粒子を遠心分離によって溶媒と分離することもできる。
【0142】
以上の如くして得られた非真球高分子微粒子は、微細でかつ粒度分布が均一な粒子として存在する。その平均粒径は、好ましくは0.1〜3.0μm、より好ましくは0.15〜2.0μmである。この粒径は遠心沈降式粒度分布測定装置(例えばCAPA−700、堀場製作所(株)製)あるいはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(例えばLA−920、堀場製作所(株)製)などにより求めることができる。
本発明のインクジェットインク組成物において、非真球高分子微粒子は担体液体である非水溶媒100質量部に対して0.001〜10質量部程度用いるのが好ましい。
【0143】
〔荷電調節剤〕
次に、本発明に使用できる荷電調節剤としては、従来、公知のものを使用することができる。例えばナフテン酸、オクテン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸の金属塩、スルホコハク酸エステルの金属塩、特公昭45−556号、特開昭52−37435号、
特開昭52−37049号の各公報等に示されている油溶性スルホン酸金属塩、特公昭45−9594号公報に示されているリン酸エステル金属塩、特公昭48−25666号公報に示されているアビエチン酸もしくは水素添加アビエチン酸の金属塩、特公昭55−2620号公報に示されているアルキルベンゼンスルホン酸Ca塩類、特開昭52−107837号、同52−38937号、同57−90643号、同57−139753号の各公報に示されている芳香族カルボン酸あるいはスルホン酸の金属塩類、ポリオキシエチル化アルキルアミンのような非イオン性界面活性剤、レシチン、アマニ油等の油脂類、ポリビニルピロリドン、多価アルコールの有機酸エステル、特開昭57−210345号公報に示されているリン酸エステル系界面活性剤、特公昭56−24944号公報に示されているスルホン酸樹脂等を使用することができる。また特開昭60−21056号、同61−50951号の各公報に記載されたアミノ酸誘導体も使用することができる。また特開昭60−173558号、同60−179750号の各公報に記載されているマレイン酸ハーフアミド成分を含む共重合体等が挙げられる。さらに特開昭54−31739号、特公昭56−24944号の各公報等に示されている4級化アミンポリマーを挙げることが出来る。
【0144】
これらの内で好ましいものとしては、ナフテン酸の金属塩、ジオクチルスルホコハク酸の金属塩、前記マレイン酸ハーフアミド成分を含む共重合体、レシチン、前記アミノ酸誘導体を挙げることができる。これらの荷電調節剤としては、2種以上の化合物を併用することも可能である。上述の様な荷電調節剤の濃度は、組成物の総量に対して0.0001〜2.0質量%の範囲であることが好ましい。すなわち、荷電調節剤の濃度は、粒子の高い比伝導度の点で0.0001質量%以上が好ましく、組成物の体積抵抗率を低下させず、必要な印字濃度を維持する点で2.0質量%以下が好ましい。
【0145】
〔その他の添加剤〕
本発明における基本的な構成材料は以上のような成分であるが、本発明の組成物には、所望により各種添加剤を加えてもよい。インクジェット方式あるいはインクジェット吐出ヘッド、インク供給部、インク循環部の材質・構造等によって、任意に選択されインク組成物として含有される。例えば、甘利武司監修「インクジェットプリンタ−技術と材料」第17章、(株)シーエムシー刊(1998年)等に記載されている添加剤が使用される。
【0146】
具体的には、脂肪酸類(例えば、炭素数6〜32のモノカルボン酸、多塩基酸;例えば、2−エチルヘキシン酸、ドデセニルコハク酸、ブチルコハク酸、2−エチルカプロン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、エライジン酸、リノレイン酸、リシノール酸、オレイン酸、ステアリン酸、エナント酸、ナフテン酸、エチレンジアミン四酢酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、水添ロジン等)、樹脂酸、アルキルフタル酸、アルキルサリチル酸等の金属塩(金属イオンの金属としては、Na、K、Li、B、Al、Ti、Ca、Pb、Mn、Co、Zn、Mg、Ce、Ag、Zr、Cu、Fe、Ba等)、界面活性化合物類(例えば、有機リン酸またはその塩類として、炭素数3〜18のアルキル基から成るモノ、ジまたはトリアルキルリン酸等、有機スルホン酸またはその塩類として、長鎖脂肪族スルホン酸、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸等またはその金属塩、両性界面活性化合物として、レシチン、ケファリン等のリン脂質等が挙げられる)、フッ素原子および/またはジアルキルシロキサン結合基を含有するアルキル基含有の界面活性剤類、脂肪族アルコール類(例えば、炭素数9〜20の分岐状アルキル基から成る高級アルコール類、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、シクロヘキシルアルコール等)、多価アルコール類{例えば、炭素数2〜18のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ドデカンジオールなど)};炭素数4〜1000のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);炭素数5〜18の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);炭素数12〜23のビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)の炭素数2〜18のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイドなど)付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のポリオール類;3価〜8価またはそれ以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類の炭素数2〜18のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数は2〜20)、上記多価アルコールのエーテル誘導体(ポリグリコールアルキルエーテル類、アルキルアリールポリグリコールエーテル等)、多価アルコールの脂肪酸エステル誘導体、多価アルコールのエーテルオレート誘導体(例えば、エチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノブチルプロピオレート、ソルビタンモノメチルジオキサルト等)、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルアリールスルホネート等の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
各種添加剤の使用量は、組成物の表面張力が15〜60mN/m(25℃において)および粘度が1.0〜40cPの範囲となるように調整して用いることが好ましい。
【0147】
〔インクジェットインク組成物〕
本発明の非真球高分子微粒子を含有する組成物は、インクジェットインク組成物として、インクジェット記録装置にて、インクジェット記録に供することができる。
図1は本発明のインク組成物を用いるに好適なインクジェット記録装置の構成を示す図であり、各記録ドットに対応した個別電極を含む周辺部分の断面を示している。同図において、ライン走査型インクジェットヘッド1は、インク溜2aを有するヘッドブロック2と、このヘッドブロック2のインク突出側に設けられると共にインク溜2aに対応して基板貫通孔5aが穿設された絶縁性基板5と、帯電性のインク9に電圧を印加するために前記基板貫通孔5aを囲むように設けられた制御電極6と、この制御電極6に常に一定のバイアス電圧を供給するバイアス電圧源7と、制御電極6に記録すべき画像に対応する信号電圧を供給する信号電圧源8と、インク溜2aおよび基板貫通孔5a内に配置される突起状インクガイド10とを備えている。
【0148】
前記ヘッドブロック2の両側には、インクを循環させるためのインク供給流路2bおよびインク回収流路2cが形成されており、これらインク供給流路2bおよび回収流路2cにはインク供給管3aおよびインク回収管3bがそれぞれ連結され、これらのインク供給管3aおよび回収管3bにはインク環流機構4が接続されている。
【0149】
前記突起状インクガイド10は、前記ヘッドブロック2の底部に位置するヘッド基板15に所定の方法により保持されている。さらに、この突起状インクガイド10は、同一の厚さを有して両側に傾斜する傾斜部12を有する将棋の駒の形状をしており、前記傾斜部12の交差する頂点部分から中心線に沿って所定幅だけ切り欠かれてインク案内溝13となっており、このインク案内溝13を毛管現象により伝い上がったインクはインク滴飛翔位置14からインク滴16として対向電極17側へ飛翔する。対向電極17は接地電源18により所定の電圧レベルを与えられると共に、この対向電極17はプラテンとして被記録媒体19を保持する。
【0150】
このインクジェットヘッド1は、各記録ドットに対応した個数の個別電極を備えており、また、図1においてインク9は、108 Ωcm以上の抵抗率を有する絶縁性の溶媒中に、プラスの帯電性を有するインク粒子をコロイド状に分散させて浮遊させたものである。
このインク9は、ポンプ(図示されず)を含むインク環流機構4およびインク供給管3aから、ヘッドブロック2に形成されたインク供給流路2bを通して、ヘッド基板15と絶縁性基板5との間のインク溜2aに向けて供給され、同じくヘッドブロック2に形成されたインク回収流路2cおよびインク回収管3bを通してインク環流機構4に回収される。
【0151】
前記絶縁性基板5は、基板貫通孔5aを有する絶縁性の基板であり、この絶縁性基板5の被記録媒体側で前記基板貫通孔5aの周囲に形成されている制御電極6とから制御電極基板が構成されている。一方、ヘッド基板15上には、前記突起状インクガイド10が前記基板貫通孔5aの略中心に位置するように配置されている。
【0152】
〔インクジェット式平版印刷版用油性インク組成物〕
本発明の非真球高分子微粒子を含有する組成物は、インクジェット式平版印刷版用油性インク組成物として、印刷版の作製に供することができる。
平版印刷可能な親水性表面を有する耐水性支持体は、平版印刷に適した親水性表面を提供するものであればよく、従来オフセット印刷版に供される支持体をそのまま用いることができる。具体的には、プラスチックシート、耐刷性を施した紙、アルミニウム板、亜鉛板、銅−アルミニウム板、銅−ステンレス板、クロム−銅板等のバイメタル板、クロム−銅−アルミニウム板、クロム−鉛−鉄板、クロム−銅−ステンレス板等のトライメタル板等の親水性表面を有する基板が用いられる。その厚さは0.1〜3mm、特に0.1〜1mmが好ましい。
【0153】
アルミニウムの表面を有する支持体の場合には、砂目立て処理、ケイ酸ナトリウム、フッ化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理、又は陽極酸化処理等の表面処理がなされていることが好ましい。また、米国特許2,714,066号に記載されている如く、砂目立てしたのちにケイ酸ナトリウム水溶液に浸漬処理されたアルミニウム板、特公昭47−5125号に記載されているように、アルミニウム板を陽極酸化処理したのち、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸漬処理したものも好適に使用される。
【0154】
上記陽極酸化処理は、例えば、燐酸、クロム酸、硫黄、ほう酸等の無機酸、もしくはシュウ酸、スルファミン酸等の有機酸又はこれらの塩の水溶液又は非水溶液の単独又は二種以上を組み合わせた電解液中でアルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施される。
【0155】
また、米国特許3,658,662号に記載されているようなシリケート電着も有効である。西独特許公開1,621,478号に記載のポリビニルスルホン酸による処理も適当である。
【0156】
これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とするために施される他に、その上に設けられるインク画像との密着性向上のために施されるものである。また、支持体とインク画像との間との接着性を調節するために、支持体表面に表面層を設けてもよい。
【0157】
プラスチックシート又は紙を支持体とする場合には、当然のことながら、インク画像部以外が親水性でなければならないことから、親水性を有する表面層を設けたものが供される。具体的には、公知の直描型平版印刷用原版又はかかる原版の画像受理層と同様の層を有する版材を用いることができる。
【0158】
例えば、画像受理層としては、水溶性バインダー、無機顔料及び耐水化剤を主成分として構成される。バインダーとしてはPVA、カルボキシPVAのような変性PVA、澱粉及びその誘導体、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル〜クロトン酸共重合体、スチレン〜マレイン酸共重合体等の水
溶性樹脂が使用される。
【0159】
耐水化剤としてはグリオキザール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアミノブラストの初期縮合物、メチロール化ポリアミド樹脂のような変性ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン・エビクロルヒドリン付加物、ポリアミドエビクロルヒドリン樹脂、変性ポリアミドポリイミド樹脂等が挙げられる。無機顔料としてはカオンリンクレー、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、アルミナ等が挙げられるが、中でシリカが好ましい。
【0160】
その他、画像受理層中には塩化アンモニウム、シランカップリング剤等の架橋触媒を併用できる。
【0161】
次に、前記した平版印刷版原版(以下「マスター」とも称する)上に画像を形成する方法を説明する。このような方法を実施する装置系としては例えば以下のような油性インクを使用するインクジェット記録装置がある。
【0162】
まず、マスターに形成すべき画像(図形や文章)のパターン情報を、コンピュータのような情報供給源から、パスのような伝達手段を通し、油性インクを使用するインクジェット記録装置に供給する。記録装置のインクジェット記録用ヘッドは、その内部に油性インクを貯え、記録装置内にマスターが通過すると、前記情報に従い、インクの微小な液滴をマスターに吹き付ける。これにより、マスターに前記パターンでインクが付着する。
【0163】
こうしてマスターに画像を形成し終え、平版印刷版を得る。
【0164】
インクジェット記録装置に備えられているヘッドは、上部ユニットと下部ユニットとで挟まれたスリットを有し、その先端は吐出スリットとなっており、スリット内には吐出電極が配置され、スリット内には油性インクが満たされた状態になっている。
【0165】
ヘッドでは、画像のパターン情報のデジタル信号に従って、吐出電極に電圧が印加される。吐出電極に対向する形で対向電極が設置されており、対向電極上にはマスターが設けられている。電圧の印加により、吐出電極と、対向電極との間には回路が形成され、ヘッドの吐出スリットから油性インクが吐出され対向電極に設けられたマスター上に画像が形成される。
【0166】
吐出電極の幅は、高画質の画像形成、例えば印字を行うためにその先端はできるだけ狭いことが好ましい。
【0167】
例えば油性インクをヘッドに満たし、先端が20μm幅の吐出電極を用い、吐出電極と対向電極の間隔を1.5mmとして、この電極間に3KVの電圧を0.1ミリ秒印加することで40μmのドットの印字をマスター上に形成することができる。
【0168】
なお本発明では、インクジェット式平版印刷版用油性インク組成物に、特開2003−192943号公報や特開2006−8880号公報に記載の放射線硬化型化合物を添加し、上記の支持体上に吐出し、着弾させた後、放射線を照射してインク組成物を硬化させることにより疎水性領域を形成し、平版印刷版とすることも好ましい。
【0169】
〔電気泳動粒子組成物〕
本発明の非真球高分子微粒子、非水溶媒及び荷電調整剤を含有する組成物は、本発明の非真球高分子微粒子を電気泳動粒子とする電気泳動粒子組成物として、電気泳動式表示装置に適用することができる。
電気泳動式表示装置は、特に限定されないが、例えば、図2に示した電気泳動式表示装置を挙げることができる。
図2に示す電気泳動式表示装置は、 第1基板21と、第1基板21上に配置される第1表示電極24及び第2表示電極3を包含する絶縁膜28、前記第1基板21に対向して配置される絶縁膜29を有する第2基板22と、各電極に所望の電圧を印加する手段を有し、前記第1表示電極24と第2表示電極23との間に、構造障壁31上に制御電極25が配置され、前記第1基板21及び第2基板22間に、電気泳動粒子組成物27を充填し、該電気泳動粒子26を第1表示電極24および第2表示電極23間で移動させることによって表示の切り換えを行なう構造単位を隔壁30を介して複数有するものである。
なお、特開2001−249366号では、図2における該制御電極上面と前記第1基板表面との間隔が、前記第1表示電極上面と前記第1基板表面との間隔、及び前記第2表示電極上面と前記第1基板表面との間隔に対して、それぞれ大きい電気泳動表示装置を開示している。
【0170】
まず、第1基板21上に、第1表示電極24及び第2表示電極23を形成しパターンニングする。基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)等のボリマーフィルム或いはガラス、石英等の無機材料を使用することができる。表示電極材料は、パターニング可能な導電性材料ならどのようなものを用いてもよく、第1制御電極材料としては、酸化インジウムすず(ITO)などの透明電極を用いる。
【0171】
次に表示電極上に絶縁層を形成する。絶縁層の材料としては薄膜でピンホールが形成しづらく、かつ誘電率の低い材料が好ましく、例えば、アモルファスフッ素樹脂、高透明ポリイミド、PET、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等を使用できる。絶縁層の膜厚としては、100nm〜1μm程度が好適である。
【0172】
次に構造障壁31を形成する。障壁用厚膜、制御電極膜、レジスト膜を順次全面に形成した後、最上面のレジスト膜をパターンニングし、制御電極膜、段差用厚膜を順次ドライエッチングまたはウエットエッチングすればよい。
障壁または段差材料としてはポリマー樹脂を使用する。制御電極膜または第2表示電極膜材料は、パターニング可能な導電性材料ならどのようなものを用いてもよく、金属薄膜の成膜の他、マグネトロンスパッタ法によってITOを低温成膜してもいいし、ポリアニリンなどの有機導電性材料を印刷法によって成膜してもよい。必要に応じて制御電極5上に絶縁層を形成してもよい。
【0173】
制御電極25の色は透明でもよいが、第1表示電極か第2表示電極のいずれか一方に一致させてもよい。表示電極面23、24及び制御電極面25の着色は、電極材料、あるいは電極材料の上に形成される絶縁層材料そのものの色を利用してもよく、又は所望の色の材料層を電極上、絶縁層上、基板面上に形成してもよい。また、絶縁層などに着色材料を混ぜ込んでもよい。
【0174】
次に、第2基板上に絶縁層29及び隔壁30を形成する。絶緑層の材料、膜厚については前述のとうりである。隔壁30の配置に制限はないが、画素間で泳動粒子26が移動しないように、各画素の周囲を取り囲むように配置するのがよい。隔壁材料としてはポリマー樹脂を使用する。隔壁形成はどのような方法を用いてもよい。例えば、光感光性樹脂層を塗布した後露光及びウエット現像を行う方法、又は別に作製した障壁を接着する方法、印刷法によって形成する方法、或いは光透過性の第1基板表面にモールドによって形成しておく方法等を用いることができる。
【0175】
次に隔壁で囲まれた各画素空間に、本発明の電気泳動粒子組成物を充填する。
電気泳動粒子の粒径に制限はないが、通常は平均粒子径0.5μm〜10μm、好ましくは1μm〜5μmのものを使用する。
【0176】
最後に、第1基板21の第2基板22との接合面に接着層を形成した後、第1基板及び第2基板の位置合わせを行い、熱をかけて接着する。これに、電圧印加手段を接続して表示装置が完成する。
【0177】
図2の電気泳動式表示装置を単位として、例えば、図3に示すような表示装置を作製することができる。図3において、制御電極25を走査ライン(S1〜S3)、第1表示電極24を第1信号ライン(I1〜I3)とした。
【実施例】
【0178】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0179】
〔実施例1:微粒子分散物1の合成〕
メタクリル酸グリシジル51g、メタクリル酸4g、下記構造の分散安定用樹脂(P−1、質量平均分子量52000)8gをアイソパーG135gに溶解し、窒素気流下、温度70℃に加温し、1時間攪拌を行った。これに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8gを添加し、2時間加熱攪拌した後、更に2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8g添加し2時間過熱攪拌した。次いで温度を100℃に上げ、減圧度200mmHg(約26.6kPa)下で2時間攪拌し未反応のモノマーを溜去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は、重合率98%で、粒子の濃度は、26.7%のラテックスであった。体積平均粒径を超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定した所、平均粒径1.84μmであった。
日本電子(株)製電子顕微鏡JSM−6700Fにて粒子を撮影したところ、粒子形状は表面に凹凸がある非真球状粒子であることが観察された(図4:樹脂微粒子1の粒子画像)。
粒子画像を、試料台に対して垂直方向から撮影し、得られた画像を、画像解析プログラム・Mac−View(株式会社マウンテンテック製)を用いて、平均円形度を求めた結果0.95であった。
【0180】
【化28】

【0181】
〔比較例1:比較微粒子分散物Aの合成〕
アクリル酸メチル51g、メタクリル酸4g、上記構造の分散安定用樹脂(P−1、質量平均分子量52000)8gをアイソパーG135gに溶解し、窒素気流下、温度70℃に加温し、1時間攪拌を行った。これに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8gを添加し、2時間加熱攪拌した後、更に2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8g添加し2時間過熱攪拌した。次いで温度を100℃に上げ、減圧度200mmHg(約26.6kPa)下で2時間攪拌し未反応のモノマー
を溜去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は、重合率99%で、粒子の濃度は、25.8%のラテックスであった。体積平均粒径を超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定した所、平均粒径1.65μmであった。
日本電子(株)製電子顕微鏡JSM−6700Fにて粒子を撮影したところ、粒子形状は真球状粒子であることが観察された。
粒子画像を、試料台に対して垂直方向から撮影し、得られた画像を、画像解析プログラム・Mac−View(株式会社マウンテンテック製)を用いて、平均円形度を求めた結果1.00であった。
【0182】
〔実施例2:微粒子分散物2の合成〕
メタクリル酸グリシジル41g、メタクリル酸4g、メタクリル酸ジメチルアミノメチル10g、上記構造の分散安定用樹脂(P−1、質量平均分子量52000)8gをアイソパーG135gに溶解し、窒素気流下、温度70℃に加温し、1時間攪拌を行った。これに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8gを添加し、2時間加熱攪拌した後、更に2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8g添加し2時間過熱攪拌した。次いで温度を100℃に上げ、減圧度200mmHg(約26.6kPa)下で2時間攪拌し未反応のモノマーを溜去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は、重合率98%で、粒子の濃度は、26.6%のラテックスであった。体積平均粒径を超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定した所、平均粒径1.70μmであった。
日本電子(株)製電子顕微鏡JSM−6700Fにて粒子を撮影したところ、粒子形状は表面に凹凸がある非真球状粒子であることが観察された。
粒子画像を、試料台に対して垂直方向から撮影し、得られた画像を、画像解析プログラム・Mac−View(株式会社マウンテンテック製)を用いて、平均円形度を求めた結果0.90であった。
【0183】
〔比較例2:比較微粒子分散物Bの合成〕
アクリル酸メチル41g、メタクリル酸4g、メタクリル酸ジメチルアミノメチル10g、上記構造の分散安定用樹脂(P−1、質量平均分子量52000)8gをアイソパーG135gに溶解し、窒素気流下、温度70℃に加温し、1時間攪拌を行った。これに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8gを添加し、2時間加熱攪拌した後、更に2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8g添加し2時間過熱攪拌した。次いで温度を100℃に上げ、減圧度200mmHg(約26.6kPa)下で2時間攪拌し未反応のモノマーを溜去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は、重合率99%で、粒子の濃度は、26.3%のラテックスであった。体積平均粒径を超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定した所、平均粒径1.91μmであった。
日本電子(株)製電子顕微鏡JSM−6700Fにて粒子を撮影したところ、粒子形状は真球状粒子であることが観察された。
粒子画像を、試料台に対して垂直方向から撮影し、得られた画像を、画像解析プログラム・Mac−View(株式会社マウンテンテック製)を用いて、平均円形度を求めた結果0.99であった。
【0184】
〔実施例3:微粒子分散物3の合成〕
メタクリル酸グリシジル35g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10g、メタクリル酸ジメチルアミノメチル10g、上記構造の分散安定用樹脂(P−1、質量平均分子量52000)8gをアイソパーG200gに溶解し、窒素気流下、温度70℃に加温し、1時間攪拌を行った。これに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8gを添加し、2時間加熱攪拌した後、更に2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8g添加し2時間過熱攪拌した。次いで温度を100℃に上げ、減圧度200mmHg(約26.6kPa)下で2時間攪拌し未反応のモノマーを溜去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は、重合率98%で、粒子の濃度は、19.1%のラテックスであった。体積平均粒径を超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定した所、平均粒径1.65μmであった。
日本電子(株)製電子顕微鏡JSM−6700Fにて粒子を撮影したところ、粒子形状は表面に凹凸がある非真球状粒子であることが観察された。
粒子画像を、試料台に対して垂直方向から撮影し、得られた画像を、画像解析プログラム・Mac−View(株式会社マウンテンテック製)を用いて、平均円形度を求めた結果0.92であった。
【0185】
〔比較例3:比較微粒子分散物Cの合成〕
アクリル酸メチル35g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10g、メタクリル酸ジメチルアミノメチル10g、上記構造の分散安定用樹脂(P−1、質量平均分子量52000)8gをアイソパーG135gに溶解し、窒素気流下、温度70℃に加温し、1時間攪拌を行った。これに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8gを添加し、2時間加熱攪拌した後、更に2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8g添加し2時間過熱攪拌した。次いで温度を100℃に上げ、減圧度200mmHg(約26.6kPa)下で2時間攪拌し未反応のモノマーを溜去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は、重合率99%で、粒子の濃度は、18.9%のラテックスであった。体積平均粒径を超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定した所、平均粒径1.77μmであった。
日本電子(株)製電子顕微鏡JSM−6700Fにて粒子を撮影したところ、粒子形状は真球状粒子であることが観察された。
粒子画像を、試料台に対して垂直方向から撮影し、得られた画像を、画像解析プログラム・Mac−View(株式会社マウンテンテック製)を用いて、平均円形度を求めた結果0.99であった。
【0186】
〔実施例4:微粒子分散物4の合成〕
カレンズMOI(昭和電工社製商品名、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)35g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10g、メタクリル酸ジメチルアミノメチル10g、上記構造の分散安定用樹脂(P−1、質量平均分子量52000)8gをアイソパーG200gに溶解し、窒素気流下、温度70℃に加温し、1時間攪拌を行った。これに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8gを添加し、2時間加熱攪拌した後、更に2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8g添加し2時間過熱攪拌した。次いで温度を100℃に上げ、減圧度200mmHg(約26.6kPa)下で2時間攪拌し未反応のモノマーを溜去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は、重合率99%で、粒子の濃度は、19.5%のラテックスであった。体積平均粒径を超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定した所、平均粒径1.79μmであった。
日本電子(株)製電子顕微鏡JSM−6700Fにて粒子を撮影したところ、粒子形状は表面に凹凸がある非真球状粒子であることが観察された。
粒子画像を、試料台に対して垂直方向から撮影し、得られた画像を、画像解析プログラム・Mac−View(株式会社マウンテンテック製)を用いて、平均円形度を求めた結果0.90であった。
【0187】
〔実施例5:微粒子分散物5の合成〕
以下に記載の(Y−1)35g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10g、メタクリル酸ジメチルアミノメチル10g、上記構造の分散安定用樹脂(P−1、質量平均分子量52000)8gをアイソパーG200gに溶解し、窒素気流下、温度70℃に加温し、
1時間攪拌を行った。これに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8gを添加し、2時間加熱攪拌した後、更に2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8g添加し2時間過熱攪拌した。次いで温度を100℃に上げ、減圧度200mmHg(約26.6kPa)下で2時間攪拌し未反応のモノマーを溜去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は、重合率99%で、粒子の濃度は、19.5%のラテックスであった。体積平均粒径を超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA700(堀場製作所)にて測定した所、平均粒径1.65μmであった。
日本電子(株)製電子顕微鏡JSM−6700Fにて粒子を撮影したところ、粒子形状は表面に凹凸がある非真球状粒子であることが観察された。
粒子画像を、試料台に対して垂直方向から撮影し、得られた画像を、画像解析プログラム・Mac−View(株式会社マウンテンテック製)を用いて、平均円形度を求めた結果0.88であった。
【0188】
【化29】

【0189】
〔着色分散物1〜5、比較着色分散物A〜Cの合成〕
上記で合成した微粒子分散物1〜5、比較微粒子分散物A〜CをアイソパーGにて希釈し、12質量%とした。次に、それにビクトリアピュアブルー(保土谷化学(株)製)を、分散液の固形分に対し5質量%加え、85℃で6時間攪拌した。室温まで冷却した後、200メッシュのナイロン布を通し、着色粒子分散物1〜5および比較着色分散物A〜Cを得た。
【0190】
〔インク組成物の調製〕
次に、上記着色粒子分散物1〜5および比較着色分散物A〜Cを、固形分濃度が7.0質量%になるようにアイソパーGで希釈した。次いで荷電調節剤としてオクタデセン−半マレイン酸オクタデシルアミド共重合体を、0.02質量%になる様に添加してインク組成物1〜5、A〜Cを調液した。
【0191】
〔インクジェット装置での吐出性評価〕
図1の構成を有するインクジェット記録装置を作成し、前記インク組成物1を、装置内に送液した。エアーポンプ吸引により記録媒体であるコート記録紙表面の埃除去を行った後、吐出ヘッドを描画位置までコート記録紙に近づけ、描画解像度600dpiでインクを吐出し描画した。この際、制御電極6に500Vのパルス電圧を印加してドット径15μmから60μmの範囲で16段階でドット面積を変化させながら描画した。描画画像は滲みのない均一なドットで安定に印字されていて、満足し得る濃度の良質の明瞭な画像を与えた。インクヘッドからの吐出安定性も良好で、つまりを生じることが無く、10時間の連続画像描画でも安定したドット形状の印字ができた。
【0192】
インク組成物2〜5、A〜Cについても、上記と同様な操作を行い画像品質、ヘッドつまりを調べた。結果を第1表に示す。
【0193】
〔易動度評価〕
レーザードップラー原理を用いたζ電位測定装置を用いて、易動度を測定し、着色分散物1の易動度を100とし、相対易動度で示した。なお、相対易動度は数字が大きいほど
粒子の電気泳動性が高いことを示し、好ましい。結果を第1表に示した。
【0194】
【表1】

【0195】
[支持体の作成]
厚さ0.30mm、幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、以下に示す表面処理を行った。
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(f)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃でエッチング処理を行い、アルミニウム板を5g/m2溶解した。その後水洗を行った。
(b)温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後水洗した。
(c)60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。この時の電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%、アンモニウムイオン0.007質量%含む)、温度30℃であった。交流電源は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが2msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/cm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後水洗を行った。
(d)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を35℃で行い、アルミニウム板を0.2g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後水洗した。
(e)温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
(f)硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、温度33℃、電流密度が5(A/dm2)で、50秒間陽極酸化処理を行った。その後水洗を行った。この時の陽極酸化皮膜質量が2.7g/m2であった。
【0196】
上記で作成した支持体上に、下記式で表される化合物UL−1(x/y/z/w=20/30/30/20、重量平均分子量10000)のメタノール溶液を塗布した後、70℃、30秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量15mg/m2の下塗り層を形成した。
【0197】
【化30】

【0198】
[平版印刷板の作成]
上記で作成した各実施例のインク組成物を、上記で作成したアルミ基板上に、上記のインクジェット装置、方法を用いて、インクジェット画像を形成した。画像のインク量は、1.1g/m2であった。次に画像記録したアルミ板を、乾燥後、150℃のオーブンで10分間加熱し、インク画像をアルミ支持体に定着し、平版印刷版を作成した。
【0199】
[印刷性能評価]
上で得られた平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、毎時5000枚の印刷速度で印刷を行った。その結果、いずれのインク組成物を用いた場合であっても、非画像部の汚れが無く良好な印刷物が得られた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。ベタ画像部のインキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した結果、3万枚の印刷が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】本発明のインク組成物を用いるに好適なインクジェット記録装置の構成を示す図である。
【図2】電気泳動表示装置の構造単位を示す図である。
【図3】電気泳動表示装置の概略図である。
【図4】電子顕微鏡によって撮影した実施例1で合成の樹脂微粒子1の粒子画像である。
【符号の説明】
【0201】
1 ライン走査型インクジェットヘッド
2 ヘッドブロック
2b インク供給流路
2c インク回収流路
3a インク供給管
3b インク回収管
4 インク環流機構
5 絶縁性基板
6 制御電極
9 インク
10 突起状インクガイド
16 インク滴
17 対向電極
19 被記録媒体
21 第1基板
22 第2基板
23 第2表示電極
24 第1表示電極
25 制御電極
26 電気泳動粒子
27 電気泳動粒子組成物
28 絶縁膜
29 絶縁膜
30 隔壁
31 構造障壁
I1〜I3 信号ライン
S1〜S3 走査ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒中で分散安定用樹脂の存在下、(A)求核性基を有するラジカル重合性モノマーおよび(B)前記求核性基と反応して共有結合を形成する基を有するラジカル重合性モノマーをラジカル重合することにより得られた非真球高分子微粒子。
【請求項2】
非水溶媒中に、分散安定用樹脂、(A)求核性基を有するラジカル重合性モノマー、(B)前記求核性基と反応して共有結合を形成する基を有するラジカル重合性モノマーを溶解し、ラジカル重合開始剤を加え、加熱することにより、ラジカル重合反応を行うことを特徴とする非真球高分子微粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の非真球高分子微粒子を含有するインクジェットインク組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェットインク組成物を、親水性支持体上に吐出し、着弾させた後、放射線を照射して前記インクジェットインク組成物を硬化させることにより疎水性領域を形成することを特徴とする平版印刷版の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の平版印刷版の製造方法によって製造された平版印刷版。
【請求項6】
請求項1に記載の非真球高分子微粒子、非水溶媒及び荷電調整剤を含有する電気泳動粒子組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−326904(P2007−326904A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157229(P2006−157229)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】