説明

非磁性一成分現像剤を用いた現像装置、及び該現像装置を備えた画像形成装置

【課題】
複数の層厚規制部材を用いることなく、単一の層厚規制部材を用いるだけでも、トナー層内のトナーの帯電の不均一性を解消できる現像装置及び該現像装置を備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
非磁性一成分現像剤を表面に担持して回転する現像ローラと、現像ローラ上の非磁性一成分現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を備え、層厚規制部材で規制されたのち搬送される非磁性一成分現像剤を、現像ローラと対向配置された感光体上に飛翔させて、静電潜像を可視化する現像装置において、層厚規制部材と現像ローラで囲まれる空間を有するように、層厚規制部材は、L字型形状とされ、かつ現像ローラと2箇所の接触点をもつことで、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられ、感光体上に形成された静電潜像に、非磁性一成分現像剤を付着させて可視像化する現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体を帯電し、露光することにより感光体に静電潜像を形成し、現像装置から帯電したトナーを感光体上の静電潜像に付着させ、画像を可視像化する。可視像化されたトナー像は静電的に転写用紙に転写され、その後、トナー像は定着装置により転写用紙上に加熱定着されることによって、出力画像が得られる。
【0003】
画像形成装置の現像剤としては、トナーのみからなる一成分現像剤と、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤とが知られている。一般に、二成分現像剤を用いた現像方法では、トナーとキャリアとを現像槽内で撹拌することにより、トナーを帯電させ、現像ローラにより、感光体と現像ローラとの対向位置にある現像領域に、キャリアの表面にトナーを付着させた二成分現像剤を搬送する。このため、充分な搬送量が得られ、画像濃度の高い出力画像を得ることができる。
【0004】
しかしながら、二成分現像剤では、出力画像の濃度を一定に維持するために、トナーとキャリアの混合比を一定に維持する必要があり、現像装置全体の構成が複雑になるといった問題がある。
【0005】
これに対し、一成分現像剤を用いる現像装置では、取扱が簡便である。一成分現像剤としては、非磁性一成分現像剤が知られており、この非磁性一成分現像剤を用いる非磁性一成分現像装置は、トナーを現像ローラ上に吸着保持するための磁力を与えるマグネットローラが不必要であるため、構成は簡単となる。磁性材料が不要で、トナーのカラー化が容易になる利点も有している。
【0006】
非磁性一成分現像装置では、現像ローラに対向して配置された層厚規制部材で所定の層厚のトナー層を形成するとともに、層厚規制部材とトナーを接触させることでトナーを摩擦帯電する。帯電したトナー層が形成された現像ローラは、感光体に非接触或いは接触して、感光体上に形成された静電潜像を可視化する。
【0007】
この現像方式における層厚規制部材としては、一般に、薄い金属板やゴム、或いはこれらを貼り合わせたもの等が用いられ、回転駆動される現像ローラに加圧接触して、現像ローラ上にトナー層を形成している。
【0008】
ところが、このような利点を備えた非磁性一成分現像装置においても、以下のような問題点が指摘されている。層厚規制部材と現像ローラとが常に1点で加圧接触しているため、長期に亙って現像装置を使用する場合、摩擦熱やその圧力、或いは機内温度等の環境的要因等が相俟って、層厚規制部材における現像ローラと接触する当接部やその近傍位置に、トナーが軟化して固着する現象が発生しやすくなる。固着したトナーは、初期的には表面に薄い膜を張ったような僅かなものであり、出力画像上も問題にならないが、使用を重ねるにしたがって成長していき、やがて出力画像に悪影響を及ぼす。固着したトナーは、層厚規制部材によるトナーの帯電性を悪化させたり、現像ローラとの間のトナーの流入を塞いでしまったり、或いは現像ローラと接触する表面で凹凸が形成され、局所的なトナー層厚の低下やスリ抜けを招き、均一なトナー層の形成ができなくなる。その結果、出力画像上で、画像濃度の低下や、出力画像の画像部分に白筋等の欠陥が生じるという問題がある。
【0009】
このような問題に対処するために、例えば、特開平8-254892号公報(特許文献1)では、トナー薄層を形成する層厚規制部材として、第1ブレード及び第2ブレードを現像ローラに押圧し、第1ブレードの押圧力が第2ブレードの押圧力と同じか小さくなるように構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8-254892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の構成のように、複数の層厚規制部材で、押圧を2度繰り返せば、トナー層の厚みを低減でき、トナーの帯電量を上昇させることは可能であるが、層厚規制部材を複数用いて、トナー層内のトナーの帯電の不均一性を解消するに過ぎなかった。
【0012】
本願は上記の課題に鑑みてなされたものであり、複数の層厚規制部材を用いることなく、単一の層厚規制部材を用いるだけでも、トナー層内のトナーの帯電の不均一性を解消できる現像装置及び該現像装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、非磁性一成分現像剤を表面に担持して回転する現像ローラと、前記現像ローラ上の前記非磁性一成分現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を備え、前記層厚規制部材で規制されたのち搬送される前記非磁性一成分現像剤を、前記現像ローラと空隙を設けて対向配置された感光体上に飛翔させて、静電潜像を可視化する現像装置において、前記層厚規制部材は、前記現像ローラと2箇所の接触点をもつことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、前記層厚規制部材はL字型形状であり、前記層厚規制部材と前記現像ローラで囲まれる空間が存在することが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記2箇所の接触点のうち、第1接触点は、前記現像ローラの回転方向の上流側であって、前記L字型形状の前記層厚規制部材の端部とすることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記2箇所の接触点のうち、第2接触点は、第1接触点より、前記回転方向の下流側であって、前記L字型形状の前記層厚規制部材の平坦部であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記L字型形状の前記層厚規制部材は、弾性ゴム部材であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、前記空間に向かって、前記弾性ゴム部材の前記平坦部を貫通する電極部材を配設することが好ましい。
【0019】
また、本発明は、前記電極部材は、T字型形状の薄板金属部材の一辺であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、前記T字型形状の薄板金属部材の他辺は、前記平坦部の面のうち、前記空間と対向しない面に接することが好ましい。
【0021】
また、本発明は、前記T字型形状の薄板金属部材に現像バイアスが印加されていることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、前記層厚規制部材が前記現像ローラを押圧する押圧力は、第1接触点のほうが第2接触点よりも大きいことが好ましい。
【0023】
また、本発明は、前記感光体と、前記感光体の表面を帯電させる帯電装置と、前記感光体の表面に前記静電潜像を形成する露光装置と、上記の現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを含む画像形成装置を提供することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、層厚規制部材と現像ローラで囲まれる空間を有するように、層厚規制部材は、L字型形状とされ、かつ現像ローラと2箇所の接触点をもつことで、複数の層厚規制部材を用いることなく、単一の層厚規制部材を用いただけでも、トナー層内のトナーの帯電の不均一性を解消できる。また、この非磁性一成分現像剤であるトナーを用いた現像装置及び該現像装置を備えた画像形成装置においては、長期に亙って安定した出力画像が得られる。
【0025】
また、本発明によれば、第1接触点で流入したトナーは、第2接触点から流出するまでの間に、層厚規制部材と前記現像ローラで囲まれる空間内で、層厚規制部材の壁面と衝突を繰り返すため、トナー層内のトナーの帯電の不均一性を解消できる。
【0026】
また、本発明によれば、現像バイアスが印加される電極部材は、層厚規制部材と前記現像ローラで囲まれる空間内に、層厚規制部材を貫通して配設されるため、空間内を通過するトナーに直接、電荷を付与することができる。
【0027】
また、本発明によれば、層厚規制部材が現像ローラを押圧する押圧力は、第1接触点のほうが第2接触点よりも大きいため、トナーが、層厚規制部材と前記現像ローラで囲まれる空間内で滞留して、第2接触点から流出できなくなることはない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例となる現像装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態の実施例である層厚規制部材の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態の他の実施例である層厚規制部材の構成を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態の他の実施例である薄板金属部材と電極部材で構成される部材を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態の他の実施例である薄板金属部材と電極部材で構成される部材を示す概略図である。
【図6】本発明の比較例となる現像装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態の現像装置について図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、本願発明の現像装置1の構成を示す概略断面図である。以下には、本願発明の現像装置に関して説明するが、その他の構成については、電子写真複写装置の一般的な技術が適用できることはいうまでもない。
【0031】
本願発明の現像装置1は、トナーである非磁性一成分現像剤60を担持する現像ローラ62と、非磁性一成分現像剤60を収容する現像槽61と、現像槽61の中で非磁性一成分現像剤60を撹拌搬送する第1、第2及び第3撹拌搬送部材63、64、65と、トナー供給ローラ66と、層厚規制部材としてのウレタンゴム67、及び薄板金属部材68を含む。第1、第2及び第3撹拌搬送部材63、64、65は、現像槽61内に回転自在に設けられ、各々、矢印で示す反時計方向に回転している。
【0032】
現像槽61内において、第1撹拌搬送部材63及び第2撹拌搬送部材64は、主として、回転方向に非磁性一成分現像剤60を撹拌及び搬送する役割を果たす。第1撹拌搬送部材63及び第2撹拌搬送部材64は、不図示の回転軸部と、回転軸部から半径方向外方に突出する不図示の複数の羽根片を含んで構成され、その羽根片は、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)等の樹脂を用いて薄板状に形成される。また、第3撹拌搬送部材65は、硬質の合成樹脂を用いて形成されるスクリュー状の回転部材であって、主として、軸方向に非磁性一成分現像剤60を撹拌及び搬送する役割を果たす。
【0033】
また、現像槽61内には、第1撹拌搬送部材63とトナー供給ローラ66との間に、中間壁部材80が設けられる。中間壁部材80は、例えば、合成樹脂等からなる平板状の部材であり、現像槽61の長手方向、即ち現像ローラ62の軸線方向に延びて、現像槽61の底部から立ち上がるようにして設けられる。そして、中間壁部材80には、その中央部に開口穴81が形成されている。このような中間壁部材80によって、現像槽61内には、第1撹拌搬送部材63からトナー供給ローラ66へ向う非磁性一成分現像剤60の流れが形成される。
【0034】
トナー供給ローラ66は、芯金の周りに円筒状の例えば、発泡ウレタン等の多孔性弾性部材が設けられたものであり、表面の空孔に非磁性一成分現像剤60を吸着しつつ、現像ローラ62を摺擦することで、非磁性一成分現像剤60を現像ローラ62に供給し、かつ、現像後に現像ローラ62に残存した余分の非磁性一成分現像剤60をクリーニングする。
【0035】
トナー供給ローラ66と現像ローラ62の接触部の食い込み量は、0.5mm、この接触部の長手方向、即ちトナー供給ローラ66の軸線方向の幅は、330mmで設定されている。なお、トナー供給ローラ66は、アスカーC硬度で5度のウレタンスポンジを用いた。直径は、16mmとした。
【0036】
現像槽61は、例えば、硬質の合成樹脂等からなり、外観が略直方体形状を有する容器部材である。なお、本願では、非磁性一成分現像剤60として、ポリエステル樹脂を主成分とし、粉砕法で作製され、体積平均粒子径が7μmのトナーを用いた。
【0037】
現像ローラ62は、現像槽61内に回転自在に設けられ、現像槽61に収容される非磁性一成分現像剤60を担持して、感光体30に搬送する。現像ローラ62は、感光体30を臨み、軸線が感光体30の回転軸線と平行になるように配置され、現像槽61本体の不図示のフレーム部に支持される。現像ローラ62の回転方向は、感光体30の回転方向と逆方向である。本願では、現像ローラ62は、アルミニウムからなり、直径16mm、肉厚が1mmで、表面の算術平均粗さRaが、0.3〜0.8μmとなるようにサンドブラスト処理されたものである。また、現像ローラ62は、周速度145mm/secで、軸線周りに回転駆動される。
【0038】
なお、感光体30の周速度は、145mm/sec、トナー供給ローラ66の周速度は、116mm/secとし、第1、第2及び第3撹拌搬送部材63、64、65の回転数は、157rpm、157rpm、38rpmとした。
【0039】
また、感光体30の直径は、30mmであり、現像ローラ62と対向して配設されている感光体30との間隙は、不図示の間隙保持部材により、200±20μmに設定されている。
【0040】
図2は、本発明の実施形態の実施例である層厚規制部材の構成を示す、現像ローラ62の軸線方向から見た概略断面図である。
【0041】
図2に示すように、層厚規制部材は、薄板金属部材68及びウレタンゴム67から構成される。薄板金属部材68は、例えば、リン青銅やステンレス製の薄い板金である。薄板金属部材68の反固定側の先端には、ウレタンゴム67が固定されている。67と68は接着剤等で固定しても良いし、両部材を同時成型で一体製造しても良い。
【0042】
ウレタンゴム67の断面はL字型形状をしており、かつ、長手方向、即ち軸線方向に現像ローラ62と同じ幅を持っている。更に、薄板金属部材68の材料弾性力によって、ウレタンゴム67は、現像ローラ62に対して、2箇所の接触点、即ち、第1接触点a及び第2接触点bの位置において押圧されている。これにより、単一のウレタンゴム67上に、2箇所の接触点があるため、複数の層厚規制部材を準備する必要がなく、部品点数を削減できる。一方、不図示のトナー供給ローラ66により、その表面に吸着された不図示の非磁性一成分現像剤60は、矢印Aの方向にて、現像ローラ62上に一定量の非磁性一成分現像剤60を供給している。
【0043】
第1接触点aを通過した非磁性一成分現像剤60は、第1接触点a及び第2接触点bの間で、現像ローラ62とウレタンゴム67によって形成される空間Sに流入する。流入した非磁性一成分現像剤60は、ウレタンゴム67の空間Sに対向する内壁67a、67bと衝突を繰り返しながら、 第2接触点bに向かう。第2接触点bを通過した非磁性一成分現像剤60は、矢印Bの方向にて、不図示の感光体30と対向する現像位置へ搬送後、現像される。
【0044】
第1接触点aと第2接触点bとの間に、現像ローラ62の回転方向の上流側から搬送された非磁性一成分現像剤60が流入、及び流出できる空間Sがあることにより、空間S内で搬送される非磁性一成分現像剤60がウレタンゴム67の内壁67a、67bと衝突が繰り返され、トナー層の上層部と下層部の非磁性一成分現像剤60の入れ替わりが促進され、帯電したトナーの電荷の均一化が図れる。
【0045】
また、第1接触点aは、L字型形状のウレタンゴム67の端部としているが、これは、流入してきた非磁性一成分現像剤60を確実にあらかじめ層厚規制しておき、均一に薄層化させるためである。これにより、ウレタンゴム67と現像ローラ62は、強く接することができ、更に、第1接触点aで摩擦力も受けて、帯電が付与される。
【0046】
一方、第2接触点bは、L字型形状のウレタンゴム67の平坦部としているが、これは、空間S内のトナー層が、現像ローラ62の回転方向の下流側へ流出し易くするためだけではない。
【0047】
トナー層への機械的なストレスが少なく、帯電を充分に付与させるためであり、そのために、ウレタンゴム67と現像ローラ62が接触する幅を大きく取る必要があった。
【0048】
また、ウレタンゴム67の平坦部が、第2接触点bにされたのは、ウレタンゴム67の部品精度バラツキ等により、ウレタンゴム67の取り付け位置が上下方向に多少変動しても、現像ローラ62への荷重が大きく変わらない場所である必要もあったためである。
【0049】
以上により、第2接触点bで、トナー層は、更に均一に層規制が行なわれ、トナー層への機械的なストレスが少なく、均一な帯電を付与できるので、層厚規制部材を通過した後のトナー帯電量が安定する。その結果、濃度ムラや画像カブリ等を伴わない良好な出力画像が得られた。
【0050】
図2に示す、層厚規制部材を現像ローラ62に押圧する押圧力Pの設定方法については、下記の通りである。前述したように、押圧力Pは、薄板金属部材68の材料弾性力を利用している。即ち、現像ローラ62に薄板金属部材68をどの程度、撓ませた状態で、当接するかで押圧力Pを調整している。理論的には、下記の片持ち梁の式(1)で表される。
【0051】
【数1】

【0052】
ここで、Eは薄板金属部材68のヤング率、Iは断面2次モーメント、δは撓み量、Lは薄板金属部材68の自由長である。
【0053】
なお、実際の測定においては、ウレタンゴム67と現像ローラ62の間に短冊状にカットしたPET製の部材の一端を挟んでおき、他端をテンションゲージ(アイコーエンジニアリング社製、型番:RX-5)に繋いで、一定の速度でPET部材を引き抜いたときの力で代用評価した。これを、引抜力としている。
【0054】
本実施例においては、第1接触点aにおける現像ローラ62にウレタンゴム67が押圧される押圧力Pは、第2接触点bで押圧される押圧力Pよりも大きく設定される。具体的には、第1接触点aにおける引抜力を0.030〜0.050kgf、第2接触点bにおける引抜力を0.030kgf未満となるよう調整した。
【0055】
これにより、現像ローラ62とウレタンゴム67によって形成される空間S内に搬送された非磁性一成分現像剤60は、滞留することなく、第2接触点bを円滑に通過する。
【0056】
また、本実施例においては、L字型形状のウレタンゴム67は、弾性ゴム部材であるため、所望の形状に、容易に金型一体成型することができる。
【0057】
また、本実施例において、ウレタンゴム67の形状をL字型形状としたが、これに限定されるものではなく、同様の作用をもたらす様々な変更は可能である。
【0058】
なお、図2に示す、ウレタンゴム67を構成する材料としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム等を挙げることができる。また、ウレタンゴム67の硬度は、JIS−A硬度で65〜85°に設定されるのが好ましく、本実施例では、70〜80°に設定される。
【0059】
次に、本発明の実施形態の他の実施例である層厚規制部材の構成について、図3を用いて説明する。図3に示すように、薄板金属部材68の一部と接する針状の電極部材69が、ウレタンゴム67を貫通して、空間S内に達するよう配設されている。即ち、電極部材69の周囲は、ウレタンゴム67で覆われているが、電極部材69の先端69aは、ウレタンゴム67から露出している。電極部材69は、薄板金属部材68と一体であっても別部品であっても良いが、現像バイアスが印加できるように、導電性を有しており、バイアス電源70に連結されている必要がある。また、電極部材69は、長手方向、即ち、現像ローラ62の軸線方向に単独或いは複数配設されている。複数配設されていれば、現像ローラ62の長手方向に亙って、トナー層を更に均一に帯電させることができる。
【0060】
このことで、現像バイアスが印加された、空間S内に露出した電極部材69の先端69aにより、空間S内を通過するトナーに直接、電荷を付与することができる。
【0061】
その結果、更に、帯電したトナー層の電荷の均一化が図れ、濃度ムラや画像カブリ等の無い良好な出力画像を得ることができる。
【0062】
また、本実施例においては、図3の形状に限定されるものではなく、同様の作用をもたらす様々な変更は可能である。例えば、薄板金属部材68と電極部材69で構成される部材の形状をT字型形状とする、例えば、図4及び図5が挙げられる。
【0063】
図4では、電極部材69と薄板金属部材68は別部品であり、溶接、カシメ等で連結されている。これにより、針状の電極部材69を複数配設する製造工程が不要になる。
【0064】
一方、図5では、電極部材69と薄板金属部材68は一体であり、電極部材69は薄板金属部材68の一部を下方に、L曲げして、形成されている。即ち、薄板金属部材68の一部を金属曲げ加工するだけなので、部品点数も減らすことができる。なお、ウレタンゴム67は、図4、図5に示す位置、即ち薄板金属部材68と接し、電極部材69がこのウレタンゴム67を貫通する位置にある。
【0065】
また、T字型形状の薄板金属部材68の平坦部は、ウレタンゴム67の上面に接して固定されているので、ウレタンゴム67を現像ローラ62に所定の押圧で、均一に押圧することができる。その結果、部分的なトナー層のスリ抜けが発生しなくなる。
【0066】
次に、本願発明の比較例となる現像装置について図面を参照して説明する。図6は、本願発明の比較例となる現像装置2の構成を示す概略断面図である。
【0067】
現像ローラ62の上方には、一定量のトナー層を形成するためのドクターブレード168が設けられている。このドクターブレード168は、本願発明の薄板金属部材68と同様のものであるが、層厚規制部材であるウレタンゴム167の形状が異なることにより、薄板金属部材68の材質等も異なる可能性が有るため、比較例においては、「ドクターブレード」という用語を用いている。ドクターブレード168の先端にはドクターブレード168と一体化されたウレタンゴム167があり、もう一方の先端は、固定用の板金71及び72によって、ドクターブレード168を挟み、ビス73によって現像槽61本体に固定されている。
【0068】
本比較例では、ドクターブレード168を現像ローラ62に押圧させるときの押圧力は、15gf/cmに設定される。なお、本比較例と前述の実施例は、このドクターブレード168の構成が異なるのみである。
【0069】
本比較例では、前述の実施例と異なり、ウレタンゴム167とドクターブレード168の接合方法に関して、ドクターブレード168が撓まないようにウレタンゴム167と接合しなければならなかった上に、ウレタンゴム167とドクターブレード168の間に空気が侵入しないようにしなければならない等の課題があった。
【0070】
ドクターブレード168は薄く、バネ性を有した金属板金であり、このバネ性によってウレタンゴム167を一定の圧力で、接触点pの位置において、現像ローラ62上に押圧している。
これにより、現像ローラ62上に一定の帯電を有したトナー層が担持される。この帯電した電荷を有するトナー層が、現像ローラ62と感光体30との電位差に応じて、現像ローラ62から感光体30に供給されて静電潜像を現像し、トナー像を形成する。
【0071】
しかし、本比較例では、押圧される箇所が1箇所であるため、単に、トナー層の層厚を圧力により薄層が形成されるだけであり、トナー層の上層部と下層部でトナー層の帯電の不均一が発生していた。その結果、層厚規制部材を通過した後のトナー帯電量が安定せず、出力画像の劣化を招いていた。
【0072】
また、トナー層の帯電及び、薄層形成を単一の層厚規制部材により1個所で規制しているため、トナー帯電量を安定させるために、ドクターブレード168を現像ローラ62に強く押し当てても、トナー層が現像ローラ62との間を通過する際に受ける反発力で、ドクターブレード168が定位置から大幅に上方に逃げてしまう恐れがあり、安定したトナー帯電量及び均一な層厚が得られにくい。その結果、トナー層が厚くなって、トナー帯電量の不足が生じ、濃度ムラや画像カブリ等を伴う出力画像となってしまっていた。
【0073】
ウレタンゴム167を構成する材料としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム等を挙げることができる。また、ウレタンゴム167の硬度は、JIS−A硬度で65〜85°に設定されるのが好ましく、本比較例では、70〜80°に設定される。また、ウレタンゴム167は、厚み1mm、長さ8mm、幅333mmに設定されており、導電性カーボンブラックまたはイオン導電剤が添加されて、抵抗値が10〜10Ωcmに調整されている。
【0074】
また、本比較例では、ウレタンゴム167は、現像ローラ62の回転方向の上流側に、ゴム部材の切欠き167cを設けている。これは、非磁性一成分現像剤60の進入を滑らかにするためであり、これは非磁性一成分現像剤60の特性や現像ローラ62の寸法等、各種使用条件に応じて適宜、設定されるものである。
【0075】
ドクターブレード168は、弾性を有する板状に形成されて、ウレタンゴム167を支持する。ドクターブレード168を構成する材料としては、弾性を有すること、並びにウレタンゴム167を金型成型加工するときの加熱に耐え得ることを満足すれば、特に限定されるものではないが、例えば、リン青銅板、ステンレス板、ベリリウム銅板等を挙げることができる。本比較例では、厚みが0.12mmのリン青銅板からなり、ドクターブレード168の長さは、25mmに設定されている。
【0076】
【表1】

【0077】
表1は、上述の比較例及び実施例の層厚規制部材を本願発明の現像装置に適用した画像形成装置を用いて、体積平均粒子径が7μmの非磁性一成分現像剤60及び画像面積率4%のA4原稿を用い、普通紙(ネコサ紙)を横連続通紙して、常温常湿環境下で40000枚の実写試験を行ったものである。
【0078】
出力画像のベタ画像部における普通紙上のトナー付着量は、0.5mg/cm、非画像部におけるトナー付着量は、最も少なくなるように、感光体30の表面電位及び現像バイアスをそれぞれ調整した。
【0079】
なお、現像ローラ62上の初期のトナー付着量が、常に一定であるように設定したのは、トナー層の厚みを均一にするためである。これにより、画像濃度にバラツキが生じたり、出力画像上にスジが発生することはなくなる。
【0080】
以下に、種々の評価及び測定方法を記載する。画像濃度等の画像評価は、初期及び40000枚目に下記測定方法にて、トナー帯電量、画像濃度、カブリ濃度を測定することで行った。
【0081】
トナー帯電量の評価としては、吸引式小型帯電量測定装置(トレックジャパン社製、型番:210HS−2A)を用いて測定した。
【0082】
測定箇所は、比較例の場合、図6で示す、ウレタンゴム167と現像ローラ62が接触する接触部のうち、現像ローラ62の回転方向の上流側と下流側について、それぞれ測定した。測定にあたっては、現像ローラ軸線方向にも、10箇所測定した上で、最小値と最大値を示した。
【0083】
一方、実施例の場合、図2及び図3で示す、第1接触点aと第2接触点bの帯電量をそれぞれ測定した。現像ローラ軸線方向の測定にあたっても、同様に行った。トナー帯電量は、測定箇所によるバラツキが少なく、高いことが望ましい。
【0084】
画像濃度の評価としては、初期及び40000枚目に、分光測色濃度計(X−Rite社製:X−Rite938)を用いて、出力画像の画像部の光学濃度を測定した。画像濃度は、1.30以上であることが望ましい。
【0085】
カブリ濃度については、非画像部の濃度を次の手順により算出する。白度計(日本電色工業社製:Z−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM)を用いて、あらかじめプリント前の普通紙の白色度を測定した。次に、プリント後の普通紙の非画像部における白色度を、白度計を用いて測定したのち、プリント前の白色度との差を求める。この差をカブリ濃度とした。
【0086】
カブリ濃度の評価としては、初期及び40000枚目に測定を行った。1.0未満であれば良好だが、1.0以上では、肉眼でカブリが明確に見える状態であるため、望ましくない。
【0087】
表1に示すように、図2で示す層厚規制部材を本願発明の現像装置に適用した実施例1では、後述する比較例1に比べて、第1接触点aと第2接触点bの帯電量は高く、バラツキも小さく、帯電の不均一性が解消されている。更に、40000枚後でも、カブリ濃度が1.0を超えることはなく、濃度ムラや画像カブリの無い良好な出力画像を得ることができた。
【0088】
図3で示す層厚規制部材を本願発明の現像装置に適用した実施例2では、現像バイアスが印加された針状の電極部材69の先端69aが空間S内に貫通されているため、空間S内を通過するトナー層に直接、電荷を付与することができ、実施例1に比べて、第1接触点aと第2接触点bの帯電量は高く、バラツキも小さく、帯電したトナーの電荷の均一化が図れている。更に、40000枚後でも、カブリ濃度が1.0を超えることはなく、濃度ムラや画像カブリの無い良好な出力画像を得ることができた。
【0089】
なお、電極部材69は、長手方向、即ち現像ローラ62の軸線方向に単独配設されている。
【0090】
実施例3は、実施例2で示した電極部材69の先端69aを空間S内に貫通させない場合の実施例である。この場合、現像バイアスが印加された針状の電極部材69の先端69aが空間S内に貫通されていないため、空間S内を通過するトナー層に直接、電荷を付与することができない。その結果、実施例2に比べて、第2接触点bの帯電量は低く、バラツキも大きくなり、帯電したトナーの電荷の均一化の効果が低減している。
【0091】
図5で示す層厚規制部材を本願発明の現像装置に適用した実施例4は、実施例2の針状の電極部材69が、現像ローラ62の軸線方向全面に亙って、多数配設されているのと同等の構成を有する。更に、薄板金属部材68の一部を下方にL曲げして形成された電極部材69の先端は、空間S内に貫通されているため、空間S内を通過するトナー層に、直接、電荷が付与される効果を一層増大させることができる。実際、実施例2に比べて、第1接触点aと第2接触点bの帯電量は高く、バラツキも小さく、帯電したトナーの電荷の均一化が更に向上している。更に、40000枚後でも、カブリ濃度が1.0を超えることはなく、濃度ムラや画像カブリの無い良好な出力画像を長期に亙って得ることができた。
【0092】
図6で示す層厚規制部材を本願発明の現像装置に適用した比較例1では、上流側のトナー帯電量が低く、下流側では、トナー帯電量が比較的高い箇所もあるものの、後述するいずれの実施例よりもバラツキも大きく、帯電の均一性も乏しい。更に、40000枚後には、カブリ濃度が1.0を超えてしまい、濃度ムラや画像カブリを伴う出力画像となってしまった。
【0093】
比較例2は、図3で示す層厚規制部材を本願発明の現像装置に適用した実施例2とは、第1接触点aと第2接触点bの引抜力が異なる。具体的には、実施例2では、第1接触点aにおける引抜力は、0.032kgf、第2接触点bにおける引抜力は、0.028kgfである。つまり、第1接触点aにおける引抜力は、第2接触点bにおける引抜力よりも大きく設定されている。これに対して、比較例2では、第1接触点aにおける引抜力は、0.032kgf、第2接触点bにおける引抜力は、0.035kgfである。即ち、第2接触点bにおける引抜力のほうが、第1接触点aにおける引抜力よりも大きく設定されている。
【0094】
この結果、第2接触点bにおける帯電量は、実施例2に比べて高くなるものの、40000枚後で、画像濃度が1.30未満となる、出力画像上での画像濃度の低下が発生してしまった。これは、ウレタンゴム67と現像ローラ62で囲まれた空間S内で、非磁性一成分現像剤60が、滞留してしまい、第2接触点bを円滑に通過することができず、トナー層厚の低下が発生してしまったことに起因する。
【0095】
なお、上述した実施形態では、現像ローラに供給される非磁性一成分現像剤の量を規制する層厚規制部材を備えて、トナー層の厚さを規制するようにした画像形成装置であれば、上述したような構成の画像形成装置に限定されるものではなく、その他の画像形成装置等に展開が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 現像装置(2)
a 第1接触点
b 第2接触点
p 接触点
A 矢印(B)
P 押圧力
S 空間
30 感光体
60 非磁性一成分現像剤
61 現像槽
62 現像ローラ
63 第1撹拌搬送部材
64 第2撹拌搬送部材
65 第3撹拌搬送部材
66 トナー供給ローラ
67 層厚規制部材
67a 内壁(67b)
68 薄板金属部材
69 電極部材
69a 先端
70 バイアス電源
71 板金(72)
73 ビス
80 中間壁部材
81 開口穴
167 ウレタンゴム
167c 切欠き
168 ドクターブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性一成分現像剤を表面に担持して回転する現像ローラと、前記現像ローラ上の前記非磁性一成分現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を備え、前記層厚規制部材で規制されたのち搬送される前記非磁性一成分現像剤で静電潜像を可視化する現像装置において、前記層厚規制部材は、単一の部材であって前記現像ローラと2箇所の接触点を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記層厚規制部材はL字型形状であり、前記層厚規制部材と前記現像ローラで囲まれる空間が存在することを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記2箇所の接触点のうち、第1接触点は、前記現像ローラの回転方向の上流側であって、前記L字型形状の前記層厚規制部材の端部としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記2箇所の接触点のうち、第2接触点は、第1接触点より、前記回転方向の下流側であって、前記L字型形状の前記層厚規制部材の平坦部としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記L字型形状の前記層厚規制部材は、弾性ゴム部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記空間に向かって、前記弾性ゴム部材の前記平坦部を貫通する電極部材を配設したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項7】
前記電極部材は、T字型形状の薄板金属部材の一辺であることを特徴とする請求項6に記載の現像装置。
【請求項8】
前記T字型形状の薄板金属部材の他辺は、前記平坦部の面のうち、前記空間と対向しない面に接することを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項9】
前記T字型形状の薄板金属部材に現像バイアスが印加されていることを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項10】
前記層厚規制部材が前記現像ローラを押圧する押圧力は、第1接触点のほうが第2接触点よりも大きいことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項11】
前記感光体と、前記感光体の表面を帯電させる帯電装置と、前記感光体の表面に前記静電潜像を形成する露光装置と、現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを含み、前記現像装置は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−242614(P2011−242614A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114879(P2010−114879)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】