説明

非磁性一成分現像用トナーの製造方法、現像剤、オイルレス定着方法及び画像形成方法

【課題】定着分離性及びブレード固着の抑制に有利な非磁性一成分現像用トナー、該トナーの製造方法、該トナーを用いて形成されたトナー像を定着するオイルレス定着方法を提供する。
【解決手段】トナー材料を、混練機で溶融混練する工程と、圧延冷却工程とを含むトナーの製造方法であって、該混練機は、独立した一つの分散部(A)と、該分散部(A)を挟む独立した第1搬送部(B1)と第2搬送部(B2)の二つの搬送部を有し、前記独立分散部(A)のヒータ加熱温度の平均実温度(D)が15<D<40(℃)であり、独立分散部(A)の平均ヒータ実温度と、第2搬送部(B2)の平均ヒータ実温度との差(E)の関係が、60<E<100(℃)であり、前記トナー圧延物のワックスは小粒子径群の平均分散粒子径(Y1)(μm)が0.6<Y1<1.0であることを特徴とする非磁性一成分現像用トナーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性一成分現像用トナーの製造方法、現像剤、オイルレス定着方法及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーの定着方式として、加熱ロール方式が広く採用されている。加熱ロール方式において、トナー像は、加熱溶融状態で加熱ロールの表面と圧接触する。このため、トナー像の一部が加熱ロール表面に付着して転移し、次の被定着シート上に汚れを生じさせる現象(オフセット現象)の防止が課題となっている。また、この加熱ロール方式では、ロール部に分離爪等の分離機構を設けて、紙等の被定着シートがロール部を通過した後、ロールに巻きつく分離不良を防止している。しかしながら、近年、複写機/プリンタの小型化によりオイル塗布機構を設けない、いわゆるオイルレス定着が主流を占めてきており、従来の加熱ロール方式では、定着器側とトナー側で工夫しないと分離不良が発生するという問題が生じる。
【0003】
このため、トナー中にポリプロピレン、ポリエチレン等のワックスを多量に含有させることにより、加熱溶融時のトナーの離型性を向上させる方法や、加熱ロール表面をフッ素系樹脂等の分離性の優れた樹脂で被覆する方法が提案されている。しかしながら、ポリプロピレン、ポリエチレン等のワックスは、トナー製造で使用されるような比較的極性の強いポリエステル樹脂との相溶性が悪く、多量に充填することが難しいという課題がある。このような問題を解決するために、分子末端に極性基を有する酸化型ポリオレフィンワックス等の変性ワックスを使用して、ポリエステル樹脂とワックスとの相溶性を改善し、ワックスの分散性とワックスの高充填を両立させる技術が提案されている。しかしながら、これらの技術では、ワックスの分散性は向上するものの、変性ワックスは未変性のワックスと比較して溶融粘度が高くなるために、混練時に加えられるズレ応力を充分受け止める敏感なものであるので過分散され易く、逆に分散径が小さくなりすぎてワックス本来の機能である離型性が低下し、オフセット現象が生じる問題がある。
【0004】
また、オフセット性及び分離性についての問題は、特に、フルカラートナーにおいて顕著である。すなわち、フルカラートナーは、黒トナーと比較して定着加熱時の熱溶融性を高め、低粘度化し、光沢や透明性、色再現性を得る必要がある。しかしながら、このような要求特性を達成する樹脂を用いたフルカラートナーは、熱溶融時の分子間凝集力が低下しやすくなるため、定着ローラ通過時に加熱ローラヘのトナー付着性が増して、分離不良、高温オフセットがより顕著に発生しやすくなる。この分離不良、高温オフセットを防止するために、トナー中にワックスを高充填して、定着ローラヘのトナーの付着性を低減することが行なわれている。しかしながら、ワックス高充填に伴う、ワックス分散径の大径化により遊離ワックスによる画像ノイズ等が課題となっており、上記ワックスの分散をより均一に制御する技術が大きな課題となっている。
【0005】
上記ワックスを均一に分散させる技術手段として、トナー材料設計からのアプローチとトナー製造装置改良におけるアプローチがある。従来技術では、トナー材料、特に結着樹脂とワックスによる相溶性を考慮した樹脂設計、ワックス設計による技術の提案が多く見られる。また、トナー製造装置改良による技術としては、混練装置などの材料分散機での温度設定等の制御因子を調整することにより、任意のワックス分散径に制御できることも多数提案されている。
【0006】
そこで、最近ではトナー中におけるワックスの分散径やトナー混練装置を規定することで、上記課題を解決する技術が提案されている。
トナー表面におけるワックス粒子の平均個数密度が100μm当たり1〜6個である非磁性一成分用トナー(特許文献1:2006−071667号公報参照)、2種類のワックスを含有し、標準偏差が0.4以上2.0未満であり、トップピークが1.0〜1.5μmの間にあり、1.0μm以上1.5μm未満のワックス粒子の個数比率が20%以上40%未満であり、2.5μm以上のワックス粒子の個数比率が20%未満であるトナー組成物(特許文献2:特開2004−126268号公報参照)が知られている。しかしながら、特許文献1の技術や特許文献2の技術では、トナー中におけるワックスの表面露出量が少ないもしくはワックスの分散径が極めて小さいので、オイルレス定着を前提とした場合、満足な定着分離性能を得ることができない。また、特許文献2の技術では2種類のワックスを含有しているため、トナー中のワックス分散径がブロードになりやすく、シャープなワックス分散径にコントロールするのが難しい。故に、ワックスをかなり高充填しないと定着分離性能を達成することは難しく、その際、一成分現像特有のブレード固着の防止との両立が極めて困難である。特許文献3(特許第3677490号公報)の技術でも、トナー中のワックス分散径が小さすぎるので、トナー中へのワックス添加量が少ないと満足な定着分離性能を得ることができない。従って上記の技術では、オイルレス定着システムにおける一成分現像システムを達成できない。
【0007】
【特許文献1】特開2006−071667号公報
【特許文献2】特開2004−126268号公報
【特許文献3】特許第3677490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、定着分離性及びブレード固着の抑制に有利な非磁性一成分現像用トナー、該非磁性一成分現像用トナーの製造方法、該非磁性一成分現像用トナーを含有する現像剤、該非磁性一成分現像用トナー又は該現像剤を用いて形成されたトナー像を定着するオイルレス定着方法及び該非磁性一成分現像用トナー又は該現像剤を用いて画像を形成する画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
(1)「トナー材料を、混練機で溶融混練する工程と、圧延冷却工程とを含むトナーの製造方法であって、該混練機は、独立した一つの分散部(A)と、該分散部(A)を挟む独立した第1搬送部(B1)と第2搬送部(B2)の二つの搬送部を有し、該第1搬送部(B1)の実温度(C)が10<C<25であり、前記独立分散部(A)のヒータ加熱温度の平均実温度(D)(以降平均ヒータ実温度とも記載)が、15<D<40(℃)であり、独立分散部(A)の平均ヒータ実温度と、第2搬送部(B2)の平均ヒータ実温度との差(E)の関係が、60<E<100(℃)であり、混練後圧延冷却した際のトナー圧延物の厚み(X)(mm)が2.5<X<3.2であり、前記トナー圧延物はワックスを粒子状態で分散しており、該ワックスの小粒子径群の平均分散粒子径(Y1)(μm)が0.6<Y1<1.0であり、該ワックスの大粒子径群の平均分散粒子径(Z1)(μm)が2.0<Z1<3.5であり、更にはそれらをトナー化した時のトナー中におけるワックス小粒子径群の平均分散粒子径(Y2)(μm)が分散径の0.2<Y2<0.6で、ワックスの大粒子径群の平均分散粒子径(Z2)(μm)が1.0<Z2<2.5であることを特徴とする非磁性一成分現像用トナーの製造方法」、
(2)「前記第1搬送部(B1)で、前記トナー材料を搬送しつつ、少なくとも樹脂並びにワックスで合成されるハイブリッド樹脂と着色剤を配合してなるドライブレンド品を形成し、前記分散部(A)で、前記ドライブレンド品を溶融混練して溶融混練物となし、前記第2搬送部(B2)で、該溶融混練物を搬送し押出成形することを特徴とする前記第(1)項に記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法」、
(3)「前記第1搬送部(B1)が、筒型搬送スクリュウであり、前記分散部(A)が、外部砥石と内部砥石との間の間隙で前記トナー材料を薄膜上に延伸する臼式のヒータ加熱式混練機であり、前記第2搬送部(B2)が、筒型搬送スクリュウであることを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法」、
(4)「前記ワックスが、パラフィンワックスを含有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法」、
(5)「前記バインダー樹脂が、前記ワックスの存在下で合成された樹脂を含有し、更には前記バインダー樹脂は、少なくとも縮重合系樹脂及びビニル系樹脂からなるハイブリッド樹脂であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法」、
(6)「前記ワックスの軟化点が、70℃以上80℃以下であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法」、
(7)「前記バインダー樹脂及び前記ワックスの総重量に対する前記ワックスの重量の比は、3.0%以上3.5%以下であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法」、
(8)「前記非磁性一成分現像用トナーの軟化点は、121℃以上135℃以下であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法」、
(9)「前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法により製造された非磁性一成分現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法」、
(10)「像担持体と対向配置され、現像剤を担持して前記像担持体に形成される潜像を現像するための現像剤担持部材と、前記現像剤担持部材と接触状に対向配置され、前記現像剤担持部材に現像剤を供給するための供給部材と、前記現像剤担持部材の移動方向における前記供給部材との対向位置と前記像担持体との対向位置との間において、前記現像剤担持部材と対向配置され、前記供給部材によって供給された現像剤を前記現像剤担持部材に薄層状に担持させるための層厚規制部材とを備える現像装置において、前記現像装置の上側にトナー補給機構を持つ縦型構成を持ち該縦型現像装置に用いるトナーが前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法により製造された非磁性一成分現像用トナーであって、前記規制部材と前記現像剤担持部材が接触している部分が前記現像剤担持部材に対して腹当て状態であることを特徴とする現像装置」、
(11)「少なくとも前記第(10)項に記載された現像装置を備え、画像形成装置に着脱自在としたことを特徴とするプロセスカートリッジ」、
(12)「定着器が加熱ローラ及び加圧ローラにより構成される2ロール定着方式であり、更には定着器が定着部材にオイル塗布を必要としないオイルレス定着を特徴とする前記第(9)項に記載の画像形成方法を用いた画像形成装置」。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、定着分離性及び遊離ワックスが起因となる感光体フィルミングや現像ブレードへの固着のない優れた非磁性一成分現像用トナー、該非磁性一成分現像用トナーを製造する方法、該非磁性一成分現像用トナーを含有する現像剤、該非磁性一成分現像用トナー又は該現像剤を用いて形成されたトナー像を定着するオイルレス定着方法及び該非磁性一成分現像用トナー又は該現像剤を用いて画像を形成する画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
本発明の非磁性一成分現像用トナーの製造方法は、少なくともバインダー樹脂、ワックス及び着色剤を含有し、特にワックスは、バインダー樹脂中にあらかじめワックスが特定の粒子径で微分散されていることが好ましい。ここで、本発明の非磁性一成分現像用トナーは、バインダー樹脂、ワックス、着色剤等のトナー材料を、独立した一つの分散部が、独立した二つの搬送部によって挟まれているヒータ加熱式混練機で溶融混練し、混練物を冷却、粉砕及び分級して得られるトナーだけでなく、冷却後の混練物も含む概念で使用する。すなわち、ワックスの粒子径分布は、トナーにおいてだけでなく、冷却後の混練物においてもある一定の範囲内に制御されていることが要求されている。
【0012】
本発明の非磁性一成分現像用トナーの製造方法においては、トナー中におけるワックス表面分散状態が特定の分散状態を持つことが好ましい。この特定の分散状態が、これまでのトナー中における一般的なワックス分散粒径よりもやや大径寄りにシフトしているものの、比較的シャープな粒度分布をもつことで、トナー中へのワックス添加量を抑制することが可能になり、結果としてオイルレス定着においても良好な定着分離性能を維持すると共に、一成分現像システムにおいても遊離ワックス成分を起因とした感光体フィルミングや現像ブレード固着が発生しない、優れた非磁性一成分現像用トナーを得ることができる。
【0013】
本発明の非磁性一成分現像用トナーの製造方法においては、トナー材料を独立した一つの分散部が、独立した二つの搬送部によって挟まれているヒータ加熱式混練機で溶融混練する工程と圧延冷却工程を含み、該混練機は、分散部(A)と第1搬送部(B1)と第2搬送部(B2)を有し、第1搬送部(B1)の実温度(C)が10<C<25であり、独立分散部(A)のヒータ加熱温度の平均実温度(D)(以降平均ヒータ実温度と記載)が、15<D<40であり、独立分散部(A)の平均ヒータ実温度と、第2搬送部(B2)の平均ヒータ実温度との差(E)の関係が、60<E<100(℃)、更には混練後圧延冷却する際の、混練後圧延冷却した際のトナー圧延物の厚み(X)(mm)が2.5<X<3.2であり、更には前記圧延物中のワックスを粒子状態で分散し、ワックスの小粒子径群の平均分散粒子径(Y1)(μm)が0.6<Y1<1.0、更にはワックスの大粒子径群の平均分散粒子径(Z1)(μm)が2.0<Z1<3.5、更にはそれらをトナー化した時のトナー中におけるワックス小粒子径群の平均分散粒子径(Y2)(μm)が分散径の0.2<Y2<0.6、更にはワックスの大粒子径群の平均分散粒子径(Z2)(μm)が1.0<Z2<2.5であることを特徴とする非磁性一成分現像用トナーの製造方法である。
【0014】
前記(D)が15未満であると、圧延物中の小径ワックス成分の平均分散径(Y1)が0.6μよりも小さくなり、更にはトナー化した際の小径ワックス成分の平均分散径(Y2)も0.2μよりも小さくなり、定着加熱時に十分な定着離型性効果が得られにくい。また、前記(D)が40を超えると、逆に圧延物中の小径ワックス成分の平均分散径(Y1)が1.0μよりも大きくなりやすく、トナー化した際の小径ワックス成分の平均分散径(Y2)も同様に0.6μを超え、遊離ワックス起因による現像ブレードへの固着が発生し易くなる。これは樹脂に包含されたワックスが混練時の温度が低いと半溶融状態となり、せん断的に最もストレスを受け易く、混練時の樹脂に繰り返し施されるせん断効果に随伴して石臼上で餅米がお餅になるが如く、よく捏ねられて材料分散が進むものと思われる。
【0015】
次に前記温度差(E)は、60〜100(℃)であることが好ましく、70〜90(℃)であることがより好ましい。前記温度差(E)が60未満であると、混練機の出口付近でバックプレッシャーを受け易く、ワックスの再凝集が起こり易い。逆に前記温度差(E)が100を超えると混練機の出口付近の試料温度が上昇し、次工程の圧延工程での冷却不足による圧延不良が発生し易くなる。更にはトナー圧延物の厚み(X)が2.5mm未満であると、混練吐出後の圧延機の影響を受け、圧延時におけるワックス分散粒子の再凝集により、大粒径成分の分散径が大きくなりやすく、圧延物中の大径ワックス成分の平均分散径(Z1)が3.5μを超え、トナー化した際の大径ワックス成分の平均分散径(Z2)も2.5μを超え、結果としてトナー中に分散されたそれら大径ワックス成分が現像ブレードへの固着が誘発しやすい。逆に3.2mmを超えると圧延機での十分な冷却効果が得られず、冷却不十分な圧延物として、次工程での粗粉砕工程で粉砕不良を起こしやすくなる。
【0016】
このように本発明によれば、ワックスの粒子径を上記のように規定することにより、定着時にオイル塗布をしないオイルレス定着システムにおいても優れた定着分離性を達成することができる。また、混練冷却後の圧延工程でのトナー圧延物の厚みを規定することでトナー中に添加するワックスの分散径の再凝集を抑制し、大径成分のワックス分散比率を抑えることが可能となる。それに伴い、ワックスのトナー表面への露出又は突出することを抑制できる。この大径ワックス成分の抑制効果により、ワックスの粒子がトナー撹拌時等において、トナーから離脱し、ブレードへの固着発生を抑制することができる。本発明により、定着分離機能維持のためにワックスの添加量を必要以上に増量する必要性がなくなり、感光体、中間転写体、現像スリーブ等の部材の表面へのワックスの汚染を抑制して、部材の耐久寿命をより長くすることができ、画質の優れる画像を長期に亘って提供することができる。
【0017】
[大径ワックス分散径測定法]
本発明においては、大径ワックスの分散径として、紡錘状粒子の長軸分散粒子径のみを用いた。具体的には、トナーをエポキシ樹脂に包埋して約100μmに超薄切片化し、四酸化ルテニウムで染色したものを、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて倍率8千倍で観察し、写真撮影により得られる視野中における紡錘状粒子の全個数に対する25個数%群(約25%)を対象にそれら紡錘状粒子の長軸分散粒子径を大径ワックス分散径とした。
なお、紡錘状粒子の長軸分散粒子径が5.0μm以上は、製造工程中でトナー粒子から離脱し易いため、対象のカウント数から削除した。
【0018】
[小径ワックス分散径測定法]
小径ワックスの分散径としては、圧延で紡錘状になっていない球状粒子の分散粒子径を用いた。詳細は大径ワックス分散径測定法に準じており、同測定による視野中での球状粒子径の全個数に対する25個数%群(約25%)を対象にそれら球状粒子の分散粒子径を小径ワックス分散径とした。なお、0.1μm未満は、離型剤としての影響力が小さいと判断し、対象のカウント数から削除した。
【0019】
本発明の非磁性一成分現像用トナーの製造方法は、通常、ワックスをあらかじめ微分散させたハイブリッド樹脂、着色剤等を独立した一つの分散部が独立した二つの搬送部によって挟まれているヒータ加熱式混練機で溶融混練し、混練物を冷却、粉砕及び分級して得られるが、ワックスの分散粒子径は、混練機及び混練機の諸条件を適宜選択することにより、制御することができる。混練機としては、外部砥石と内部砥石との間に被処理物を導入し、回転剪断力を付加して混練を行う臼式混練機(コロクドミル等)を用いることが好ましい。この臼式混練機は、その外部砥石と内部砥石との間のギャップ(空隙)を調節することにより、その混練に際して溶融混練物に付加される回転剪断力をコントロールすることができる。
本発明においては、大半がこの臼式混練機を用いて、ワックスをあらかじめ微分散させたハイブリッド樹脂と着色剤とを、それらの溶融温度で溶融混練し、得られた溶融混練物を押出して押出し物を得ている。
【0020】
上記臼式混練機を用いて溶融混練物(ブレンド)を得る場合、臼式混練機の外部砥石と内部砥石との間のギャップを調節することによりトナー中におけるワックス分散相のサイズを微妙に制御することが可能である。外部砥石と内部砥石との間のギャップは、一般的には0.05〜5mm、好ましくは0.1〜2mmである。通常、ギャップは0.1mmから3mmの間での任意の値を0.01mm間隔で設定可能であり、設定温度やその他諸条件とのバランスで任意に設定してやれば良い。
【0021】
図1にその臼式混練機(側面)の概略を示した。試料は、供給フィーダ(11)から投入され、第1搬送部(B1)の構成部材例である搬送スクリュー(16A)を経て、分散部(A)の構成部材例である外部砥石(12)と内部砥石(13)との薄膜間隙で混練され、再度送り部(16B)を経た後、シリンダ(15)の中にあり第2搬送部(B2)の構成部材例である搬送スクリュー(16C)を経て、排出口(14)から排出され、その後プレスローラ(17)で圧延冷却される。混練条件としては、外部砥石(12)と内部砥石(13)との薄膜間隙、各砥石構成部の内部温度を適宜選択すればよい。臼式混練機の場合、上記外部砥石(12)と内部砥石(13)の組み合わせが一般的に分散部とされている。故に、外部砥石(12)と内部砥石(13)以外のスクリュー構成全般が搬送部ということになる。図1では、搬送スクリュー(16A)と搬送スクリュー(16C)が本発明における搬送部(B1)と(B2)の定義であると共に、分散部(A)を挟む二つの搬送スクリューである。なお、二軸混練機の場合においても同様で、搬送スクリューを搬送部と定義し、スクリュー形状以外のディスクタイプの組み合わせを分散部(A)と定義づけた。
【0022】
一般的には、外部砥石(12)と内部砥石(13)との薄膜間隙を狭くしたりすると、ワックスの粒子径は、小さくなる。逆に、外部砥石(12)と内部砥石(13)との薄膜間隙を広くしたりすると、ワックスの粒子径は、逆に大きくなる。
内部砥石と外部砥石は共に円板で、外部砥石(12)はドーナツ型の円板状である。更には、内部砥石(13)と外部砥石(12)の組み合わせ部分には、外側にシリンダー(15)は装備されない。直接ヒーターカバー(15H)が付くのみになる。
本発明におけるワックスの粒子径分布を達成するためには、外部砥石(12)と内部砥石(13)との薄膜間隙は0.75mmから1.25mmが更に好適である。
【0023】
本発明での平均ヒータ実温度とは、各ヒータバンド部ごとに結線をつなぎ、稼動中のそれらのヒータ実温度を平均した値を平均実温度とした。具体的には、稼動中の毎秒1回の温度数値を1000回累積したものを平均値として算出した。
第一搬送部(B1)並びに分散部(A)の平均ヒータ実温度は、バインダー樹脂のガラス転移温度以下であることが好ましく、第二搬送部(B2)の平均ヒータ実温度は、バインダー樹脂の軟化点より10から20℃低い程度がワックスや顔料の分散を考慮すると、特に好ましい。分散部(A)の内部温度は、好ましくは、30℃以上60℃以下であり、30℃以上50℃以下が更に好ましい。なお、軟化点としては、2種類以上の樹脂が混合されているバインダー樹脂を使用する場合は、混合樹脂の軟化点を用い、ワックスが添加されているバインダー樹脂を使用する場合は、ワックスを含むバインダー樹脂の軟化点を用いる。
【0024】
一般的にスクリューの回転数は、通常、50rpm以上100rpm以下であり、60rpm以上90rpm以下が適度なトルクがかかり好適である。
【0025】
本発明でのトナー圧延物の厚みは、以下のように算出した。混練機から吐出された吐出物が、瞬時に2本の冷却ロールで板状に圧延され、次工程の破砕工程へと進むが、破砕工程へ進む直前にサンプリングし、ノギスで実測することでその実測値をトナー圧延物の厚みとした。なお、信頼性向上の観点で、10点サンプリングし、ノギス測定した10点の実測値の平均値を最終的な、測定値とした。
【0026】
本発明において、トナー中へ添加するワックスは、バインダー樹脂中へのワックスの分散性の観点から、1種類であることが好ましい。これにより、トナー中でのワックスの粒子径をより制御しやすくなる。
【0027】
本発明において、ワックスの融点は、70℃以上80℃以下であることが好ましい。融点が70℃より低くなると、耐熱性が低下し、80℃より高くなると、光沢や低温定着性が低下する。なお、ワックスの融点は、DSC曲線におけるピーク温度から求められる。本発明では、示差走査熱量計DSC−200(セイコー電子社製)を用いて融点を測定しているが、DSC曲線が得られる装置であれば、特に限定されない。
【0028】
本発明において、バインダー樹脂及びワックスの総重量に対するワックスの重量の比は、3.0%以上3.5%以下であることが好ましい。この比が3.0%より少なくなると、オイルレス定着における定着分離性が低下し、3.5%より多くなると、遊離ワックスに起因するブレード固着等の原因となる。
【0029】
本発明においては、2種類以上のワックスを用いてもよい。その場合、ワックスの重量の和が上記の範囲内であればよい。また、粒子径分布及び軟化点に関しては、使用するワックスの混合物によって達成されていればよい。
【0030】
本発明で用いられるワックスは、バインダー樹脂、着色剤等を混合するときに添加してもよいが、バインダー樹脂の合成時に添加することがより好ましい。これにより、ワックスは、樹脂中に予備分散されるので、混練時のワックスの局在化を回避し、ワックス分散の安定化が可能となる。
【0031】
本発明で用いられるバインダー樹脂は、特に制限されず、静電潜像現像用トナーの分野で公知のバインダー樹脂を用いることができる。具体的には、ポリエステル系樹脂等の縮重合系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体等のビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、TOPAS−COC(Ticona社製)等の環状オレフィン樹脂(COC)等が挙げられる。オイルレス定着システムにおいては、縮重合系樹脂及びビニル系樹脂からなるハイブリッド樹脂が好ましく使用される。
【0032】
本発明において、縮重合系樹脂としては、多価アルコールと多価カルボン酸を重縮合させることにより得られるポリエステル樹脂を使用することができる。
多価アルコールのうち、2価アルコールとしては、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0033】
3価以上のアルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0034】
また、多価カルボン酸のうち、2価のカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる
【0035】
3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0036】
また、本発明においては、縮重合系樹脂の原料モノマーと、ビニル系樹脂の原料モノマーと、両方の樹脂の原料モノマーと反応するモノマーとを同一容器中で混合し、縮重合系樹脂を得る縮重合反応及びビニル系樹脂を得るラジカル重合反応を並行して行わせて得られる、縮重合系樹脂及びビニル系樹脂からなるハイブリッド樹脂も好適に用いることができる。なお、両方の樹脂の原料モノマーと反応するモノマーとは、縮重合反応及びラジカル重合反応し得るモノマーである。例えば、縮重合反応し得るカルボキシル基とラジカル重合反応し得るビニル基を有するモノマーとして、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0037】
縮重合系樹脂の原料モノマーとしては、上述した多価アルコール、多価カルボン酸等が挙げられる。
ビニル系樹脂の原料モノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸3−メチルブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸3−メチルブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等のアクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリロニトリル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0038】
ビニル系樹脂を合成する際に用いるラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトン過酸化物、イソプロピルパーオキシカーボネート、過酸化ラウロイル、ジクミルパーオキシド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0039】
本発明において、バインダー樹脂の酸価は、通常、5KOHmg/g以上50KOHmg/g以下であり、10KOHmg/g以上40KOHmg/g以下が望ましい。特に、ポリエステル系樹脂を用いる場合、このような酸価を有する樹脂を用いることにより、カーボンブラック等の着色剤等の分散性を向上させると共に、十分な帯電量を有するトナーとすることができる。
【0040】
本発明においては、特に、オイルレス定着システムにおける定着分離性及び耐オフセット性をさらに向上させるため、3種類の樹脂を用いることが好ましい。樹脂A、樹脂B及び樹脂Cとしては上記のような各種ポリエステル系樹脂が好ましく使用されるが、中でも、オイルレス定着用トナーとしての分離性および耐オフセット性をさらに向上させる観点から、以下に示す樹脂A、樹脂Bおよび樹脂Cを使用することがより好ましい。
より好ましい樹脂Cとしては、上述した多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させて得られたポリエステル樹脂、特に多価アルコール成分としてビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を用い、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸およびフマル酸を用いて得られたポリエステル樹脂である。
【0041】
より好ましい樹脂A並びに樹脂Bとしてはビニル系ポリエステル樹脂、特にポリエステル樹脂の原料モノマーとしてビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸およびコハク酸を用い、ビニル系樹脂の原料モノマーとしてスチレンおよびブチルアクリレートを用い、両反応性モノマーとしてフマル酸を用いて得られたビニル系ポリエステル樹脂である。
【0042】
本発明においては上述したように樹脂A、樹脂Bの合成時に炭化水素系ワックスが内添される。樹脂A並びに樹脂Bに炭化水素系ワックスを予め内添するには、樹脂A並びに樹脂Bを合成する際に、樹脂A並びに樹脂Bを合成するためのモノマー中に炭化水素系ワックスを添加した状態で樹脂A並びに樹脂Bの合成を行なえば良い。例えば、樹脂A並びに樹脂Bとしてのポリエステル系樹脂を構成する酸モノマーおよびアルコールモノマーに炭化水素系ワックスを添加した状態で縮重合反応を行なえば良い。樹脂A並びに樹脂Bがビニル系ポリエステル樹脂の場合には、ポリエステル樹脂の原料モノマーに炭化水素系ワックスを添加した状態で、当該モノマーを撹拌および加熱しながら、これにビニル系樹脂の原料モノマーを滴下して重縮合反応およびラジカル重合反応を行なえばよい。
【0043】
また、樹脂A、B、Cのそれぞれの重量比率は、樹脂Aが10〜25%、樹脂Bが30〜50%、樹脂Cが35〜50%であることが好ましい。これらの範囲の重量比率で組み合わせることにより、トナーの粘度を制御し、カラートナーとしての色再現性を確保すると同時に、ポリエステル特有の強靭性を維持し、現像ブレードへの固着の抑制、更には、定着分離性能維持が可能になる。詳細には、性能が一部重複するが、樹脂Aが10%未満だと現像ブレードへの固着の抑制は困難、25%を超えると色再現性が大きく低下、樹脂Bが30%未満だと定着分離性が低下、50%を超えると現像ブレードへの固着の抑制は困難、樹脂Cが35%未満だと色再現性が大きく低下、50%を超えるとポリエステル特有の強靭性が弱まり、現像ブレードへの固着の発生を抑えきれない。
【0044】
さらに、ワックスを内添する樹脂Aの軟化点は135〜145℃、ワックスを内添する樹脂Bの軟化点は130〜140℃、ワックスを内添しない樹脂Cの軟化点は105〜115℃であることが好ましい。詳細には、これも性能が一部重複するが、樹脂Aの軟化点が135℃未満だと現像ブレードへの固着の抑制は困難、145℃を超えると色再現性が大きく低下、樹脂Bの軟化点が130℃未満だと定着分離性が低下、140℃を超えると色再現性が低下、樹脂Cの軟化点が105℃未満だと現像ブレードへの固着の抑制は困難、115℃を超えると色再現性の調整が困難になる。
【0045】
一般に、ワックスの極性が低いほうが定着部材ローラとの離型性に優れている。
本発明に用いられるワックスは、極性の低い炭化水素系ワックスである。
<炭化水素系ワックス>
炭化水素系ワックスとは、炭素原子と水素原子のみからなるワックスであり、エステル基、アルコール基、アミド基などを含まない。具体的な炭化水素系ワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンの共重合体、などのポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス、フィッシャートロプシュワックス、などの合成ワックスなどが挙げられる。このうち、本発明において好ましいものは、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスであり、本発明の非磁性一成分現像用トナーに用いられる好ましいワックスとしては、パラフィンワックスが挙げられる。
パラフィンワックスは、他のワックスに比べて粘度が低く、トナー表面にワックスが染み出しやすい性質が非常に強い、その結果として必要最小限にワックス量を抑制することが可能になる。
【0046】
本発明において、着色剤としては、従来から静電潜像現像用トナーの着色剤として使用されている公知の顔料及び染料を用いることができる。具体的には、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、銅フタロシアニン、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド184、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ソルベント・イエロー162、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー185、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が挙げられる。バインダー樹脂の重量(バインダー樹脂にワックスが添加されている場合にはワックスの重量を含む)に対する着色剤の重量の比は、2%以上10%以下であることが好ましい。
【0047】
トナー中での分散性の観点から、着色剤は、バインダー樹脂と溶融混練し、冷却及び粉砕して得られるマスターバッチの形態で使用されることが好ましい。着色剤をマスターバッチの形態で使用する場合、マスターバッチの添加量は、着色剤の重量が上記の範囲内となるようにすればよい。
【0048】
本発明の非磁性一成分現像用トナーは、帯電制御剤等の添加剤を含有してもよい。
帯電制御剤としては、従来から静電潜像現像用トナーの分野で帯電性を制御するために添加されている公知の帯電制御剤を用いることができる。具体的には、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属錯体、アゾ系金属化合物等の含金属染料、マレイン酸を単量体成分として含む共重合体のような高分子酸、カリックスアレーン化合物、有機ホウ素化合物等が挙げられる。
【0049】
本発明で得られたトナーの流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、2nm〜2μmであることが好ましく、特に5nm〜500mμであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0050】
本発明の非磁性一成分現像用トナーは、バインダー樹脂、ワックス及び着色剤並びに所望の添加剤を独立した一つの分散部が独立した二つの搬送部によって挟まれているヒータ加熱式混練機で溶融混練して冷却した後、粉砕及び分級することによって得ることができる。その際、本発明で提示したように、特定の混練機及び混練条件を適宜選択することによって、非磁性一成分現像用トナーのワックスの粒子径分布を達成することができる。ワックスは、バインダー樹脂、着色剤等のトナー材料と同時に混合されても、バインダー樹脂の合成時に添加されてもよいが、ワックス分散粒度分布のシャープ化といった観点から後者がより好ましい。
【0051】
本発明の非磁性一成分現像用トナーは、軟化点が121℃以上135℃以下であることが好ましい。軟化点が121℃より低いと、定着分離性能が低下すると共に現像ブレードでの固着発生率が高くなり、135℃より高いと、画像光沢度が低下する。
また、非磁性一成分現像用トナーの体積平均粒子径は、通常、6μm以上10μm以下であり、7μm以上9μm以下が好適である。
【0052】
本発明の現像剤は、本発明の非磁性一成分現像用トナーを含有する。このため、定着分離性及び一成分現像システムにおいてもワックスを起因とした感光体フィルミングや現像ブレード固着のない優れた現像剤が得られる。
【0053】
本発明の非磁性一成分現像用トナー又は現像剤から得られるトナー像を定着させる際には、加熱部材と、加熱部材に圧接して配置された加圧部材との圧接部(又は加圧加熱部材との圧接部)に、トナー像を担持した用紙等の記録シートを通過させる、定着用オイルを必要としないオイルレス定着方法を採用することが好適である。さらに、加熱部材の表面は、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂から形成されていることが好ましい。
【0054】
このような定着方法を採用したオイルレス定着装置として、図2に概略的に示す定着装置を好ましく用いることができる。図2の定着装置は、加熱部材として、加熱ローラ(22)、加圧部材として、加圧ローラ(21)を用いている。詳しくは、加熱ローラ(22)、加熱ローラ(22)に圧接される加圧ローラ(21)、定着後のシートを加熱ローラ(22)から分離するための分離板(23)を備えている。加熱ローラ(22)は、通常、アルミ芯金(24)上に弾性体層(25)及び表層(26)を有しており、アルミ芯金(24)内部にヒーター(27)を備えている。加圧ローラ(21)は、通常、アルミ芯金(28)上に弾性体層(29)及び表層(30)を有している。弾性体層(25)及び(29)の材質は、特に制限されないが、シリコーンゴムであることが好ましい。表層(26)及び(30)の材質は、特に制限されないが、フッ素系樹脂が好ましく、PFAが特に好ましい。
【0055】
図2において、加熱ローラ(22)と加圧ローラ(21)の圧接部には、ニップ(31)が形成され、圧接部のニップ構成が、図中、上に凸となっていることが定着分離性を有利にする観点から好ましい。これにより、フルカラー画像を定着する場合に、加熱ローラ(22)の側に記録シート(32)が巻き付く現象を抑制することができる。なお、トナー像(33)を担持した記録シート(32)を、圧接部に、図中、右から左に通過させることにより、定着が行なわれる。
本発明の画像形成方法は、本発明の非磁性トナー又は現像剤を用いて画像を形成する。このため、定着分離性が良好な画像を得ることができる。
【0056】
<現像器構成>
図3は本発明の実施形態に係る現像装置とプロセスカートリッジユニットの断面図である。
現像装置は、トナーを収容するトナー収容室(101)と、トナー収容室(101)の下方に設けられたトナー供給室(102)から構成され、トナー供給室(102)の下部には、現像ローラ(103)と、現像ローラ(103)に当接して設けられた層規制部材(104)および供給ローラ(105)が設けられる。現像ローラ(103)は感光体ドラム(2)に接触して配置され、図示しない高圧電源から所定の現像バイアスが印加される。トナー収容室(101)内にはトナー攪拌部材(106)が設けられ、反時計回りの方向で回転する。トナー攪拌部材(106)は軸方向において、その先端部が開口部近傍を通過しない部分(軸方向の左右両側端部域部分)では、回転駆動によるトナー搬送面の面積を大きくしてあり、収容されたトナーを充分に流動させ攪拌する。また、その先端部が開口部近傍を通過する部分(軸方向での中央域部分)では、回転駆動によるトナー搬送面の面積を小さくした形状をしてあり、過剰な量のトナーを開口部(107)へ導くことを防止している。開口部(107)近傍のトナーは、トナー攪拌部材(106)によって適度にほぐされ、自重によって開口部(107)を通過しトナー供給室(102)へと落下移動する。供給ローラ(105)の表面には空孔(セル)を有した構造の発泡材料が被覆されており、トナー供給室(102)内に運ばれてきたトナーを効率よく付着させて取り込むと共に、現像ローラ(103)との当接部での圧力集中によるトナー劣化を防止している。発泡材料は3乗〜14乗Ωの電気抵抗値に設定される。
【0057】
供給ローラ(105)には、現像バイアスに対してトナーの帯電極性と同方向にオフセットさせた値の供給バイアスが印加される。この供給バイアスは、現像ローラ(103)との当接部で予備帯電されたトナーを現像ローラ(103)に押し付ける方向に作用する。ただし、オフセットの方向はこれに限ったものではなく、トナーの種類によってはオフセットを0もしくはオフセットの方向を変えてもよい。供給ローラ(105)は反時計回りの方向に回転し、表面に付着させたトナーを現像ローラ(103)の表面に塗布供給する。現像ローラ(103)には、弾性ゴム層を被覆したローラが用いられ、さらに表面にはトナーと逆の極性に帯電し易い材料からなる表面コート層が設けられる。弾性ゴム層は、感光体ドラム(2)との接触状態を均一に保つために、JIS‐Aで50度以下の硬度に設定され、さらに現像バイアスを作用させるため3乗〜10乗Ωの電気抵抗値に設定される。表面粗さはRaで0.2〜2.0μmに設定され、必要量のトナーが表面に保持される。現像ローラ(103)は反時計回りの方向に回転し、表面に保持したトナーを層規制部材(104)および感光体ドラム(2)との対向位置へと搬送する。層規制部材(104)は、SUS304CSPやSUS301CSPまたはリン青銅等の金属板バネ材料を用い、自由端側を現像ローラ(103)表面210〜100N/mの押圧力で当接させたもので、その押圧力下を通過したトナーを薄層化すると共に摩擦帯電によって電荷を付与する。さらに層規制部材(104)には、摩擦帯電を補助するために、現像バイアスに対してトナーの帯電極性と同方向にオフセットさせた値の規制バイアスが印加される。感光体ドラム(2)は時計回りの方向に回転しており、従って現像ローラ(103)表面は感光体ドラム(2)との対向位置において感光体ドラム(2)の進行方向と同方向に移動する。薄層化されたトナーは、現像ローラ(103)の回転によって感光体ドラム(2)との対向位置へ搬送され、現像ローラ(103)に印加された現像バイアスと感光体ドラム(2)上の静電潜像によって形成される潜像電界に応じて、感光体ドラム(2)表面に移動し現像される。感光体ドラム(2)上に現像されずに現像ローラ(103)上に残されたトナーが再びトナー供給室(102)内へと戻る部分には、封止シール(108)が現像ローラ(103)に当接して設けられ、トナーは現像装置外部に漏れでないように封止される。
【実施例】
【0058】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部はすべて重量部を表わす。
【0059】
ビニル系樹脂の単量体として、スチレン(St)及びアクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸エチルヘキシル(EhA)、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を表1に示す組成で滴下ロートに入れた。次に、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を取り付けたガラス製4つ口フラスコに、ポリエステル樹脂の単量体のアルコール成分として、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(BPA−EO)及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(BPA−PO)、酸成分として、アクリル酸(AA)、コハク酸誘導体(DSA)、フマル酸(FA)、トリメリット酸(TMA)及びテレフタル酸(TPA)、エステル化触媒として、ジブチルパーオキシド(DBO)をベース樹脂(樹脂A)に対応する組成(表1参照)で仕込み、さらに、ワックスを表2に示す添加量で仕込んだ後、窒素雰囲気下、マントルヒーター中で加熱撹拌しながら、ビニル系樹脂の単量体及び重合開始剤を滴下した。その後、一定の温度に保持し、付加重合反応を熟成させた後、再び昇温して縮重合反応を行なった。なお、反応の進行は、軟化点を測定することにより追跡した。所定の軟化点に達した時点で反応を停止させて室温まで冷却し、複合ポリエステル樹脂A1WIを得た。
また、複合ポリエステル樹脂AW、BWと同様に、表1記載の組成のビニル系樹脂単量体およびポリエステル樹脂の単量体をベース樹脂(樹脂A並びに樹脂B)に対する組成で仕込み、更にワックスを表2に示す添加量で仕込み、複合ポリエステル樹脂A1WII〜A1WV、A2WI、A3WI、B1WI〜B1WIV、B3WIを得た。
【0060】
なお、表2の内添ワックスの73パラ、78天然、67パラ、82FTは、それぞれ融点が73℃のパラフィンワックス、融点が78℃のカウナウバワックス、融点が67℃のパラフィンワックス、融点が82℃のフィッシャートロプシュワックスを意味し、ワックス内添量は、樹脂の製造に使用するモノマー及びワックスの総重量に対するワックスの重量の割合を意味する。
【0061】
<樹脂Cの作成>
(ワックスを内添しないポリエステル樹脂(C1樹脂、C2樹脂およびC3樹脂)の製造)
温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、および窒素導入管を取り付けたガラス製4つ口フラスコに、表1に示す量のアルコール成分および酸成分を重合開始剤(ジブチル錫オキシド)とともに入れた。これをマントルヒーター中において窒素気流下にて、撹拌加熱しながら加熱することにより反応させた。そして、この反応の進行は、軟化点を測定することにより追跡した。所定の軟化点に達した時点でそれぞれ反応を終了させて室温まで冷却し、ポリエステル樹脂C1を得た。得られた各ポリエステル樹脂は1mm以下に粗砕したものを以下のトナーの製造で用いた。なお、ここで得られたポリエステル樹脂の物性は、表2に示す通りのガラス転移温度(Tg)、軟化点(Tm)を有する。
【0062】
(樹脂の合成 C2〜C3)
ビニル系樹脂の単量体、重合開始剤及びワックスを使用せず、表2に示す組成でポリエステル樹脂の単量体のアルコール成分及び酸成分を使用し、工程中の重合条件を調整したこと以外、上記と同様に、樹脂C2、C3を製造した。
また、得られた樹脂の軟化点Tm及びガラス転移温度Tgを表1及び表2に示した。
【0063】
Tmは、以下のようにして測定した。試料1.0gを秤量し、フローテスターCFT−500(島津製作所社製)及び直径0.5mm、高さ1.0mmのダイを使用し、昇温速度3.0℃/分、予熱時間3分、荷重30kgの条件で、40℃から140℃の範囲で測定を行ない、試料が1/2流出したときの温度をTmとした。
【0064】
Tgは、以下のようにして測定した。示差走査熱量計DSC−200(セイコー電子社製)を用い、試料10mgを精密に秤量して、アルミニウムパンに入れ、昇温速度30℃/分で常温から200℃まで昇温した後、冷却し、次に、昇温速度10℃/分で20℃から120℃の間で測定を行ない、この昇温過程で30℃から90℃の範囲におけるメイン吸熱ピークのショルダー値をTgとした。なお、リファレンスとして、アルミナをアルミニウムパンに入れたものを使用した。
【0065】
得られた各樹脂を1mm以下に粗砕したものを以下のトナーの製造で用いた。
また、C.I.Pigment Red 57−1(富士色素社製)50部、実施例及び比較例で使用するバインダー樹脂50部、水30部をヘンシェルミキサーで混合したものを、ロールの表面温度を130℃に設定した2本ロールで1時間混練し、冷却後、パルベライザーで直径1mmの粒子に粉砕し、マスターバッチとして使用した。
【0066】
(実施例1)
バインダー樹脂として、表3に示すように樹脂AWI及び樹脂BWI、樹脂Cを表に示す重量比で混合した樹脂を用いた。バインダー樹脂100部(ワックスの重量を含む)及びC.I.Pigment Red 57−1を5.0部含有するマスターバッチをヘンシェルミキサーで混合した後、図1に示すような臼式混練機を使用して表3に示す条件で溶融混練した。得られた混練物を冷却プレスローラで圧延し、2.85mm厚の試料になるように延伸し、ベルトで搬送した後、フェザーミルで粗粉砕した。その後、機械式粉砕機(100AFG:ホソカワミクロン社製)で粗粉分級しながら粉砕した後、微粉分級をロータ型分級機(ティープレックス型分級機タイプ:50ATP:ホソカワミクロン社製)を使用して行ない8ミクロンのトナー粒子1を得た。
得られたトナー粒子100部に対して、疎水性シリカR972(日本アエロジル社製)1.0部と、疎水性シリカAEROSIL 90G(日本アエロジル社製)のヘキサメチレンジシラザン処理品(BET比表面積65m/g、pH6.0、疎水化度65%以上)1.0部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて周速40m/秒で90秒間混合処理し、目開き75μmの篩で篩って、トナーを得た。
【0067】
(実施例2〜13及び比較例1〜7、参考例)
バインダー樹脂を構成する樹脂の種類及び混合比率、ワックスの種類及び添加率を表3に示すように、また混練条件も表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にトナーを製造した。
なお、実施例6、比較例2、比較例4、参考例については、材料組成を表3に示す以外に、混練機が、臼式混練機ではなく従来の二軸混練機、更には参考例に関しては開放型のロール混練機を用いて表3に示す条件で混練した以外は、実施例1とほぼ同様にトナーを得た。
【0068】
表3記載のワックス量は、バインダー樹脂及びワックスの総重量に対するワックスの重量の割合を意味する。表中のAwax量、Bwax量は、樹脂A、樹脂B中にそれぞれあらかじめ内添された樹脂中のワックス量である。また、トナーのTmは、上述した方法で測定した。
【0069】
(評価及び評価結果)
得られたトナー(一成分現像剤)の定着分離性、耐熱保存性、画像光沢度、フィルミング及び固着を評価した。リコー製ipsio CX7500の定着機を取り外した改造機に、トナー5部とシリコーン樹脂コートキャリア95部を混合攪拌して作成した二成分現像剤を入れ、転写紙(リコー製タイプ6200Y目紙)に縦方向の先端余白3mmを有するベタ画像で、1.0±0.1mg/cmのトナーが現像される様に調整を行ない、未定着状態の転写紙を6枚出力した。なお、使用した転写紙は、リコー製タイプ6200Y目紙を用いて評価した。
<定着分離性>
リコー製ipsio CX2500の定着部分のみを取り出し、定着ベルトの温度およびベルト線速度を所望の値になるように改造した定着試験装置を用い、ベルト線速度125mm/secに設定して、定着ベルトの温度を140℃から190℃の範囲で10℃刻みの温度で先端余白3mmのほうから転写紙の定着を行なった。転写紙が定着ベルトに巻きついたり、定着機の出口で蛇腹のようになって詰まったりすることなく、下記基準に基づき評価した。
○:正常に定着できた枚数が5枚以上。
△:正常に定着できた枚数が3〜4枚。
×:正常に定着できた枚数が2枚以下。
「○」および「△」を合格とした。
<光沢度>
リコー製ipsio CX2500の定着部分のみを取り出し、定着ベルトの温度およびベルト線速度を所望の値になるように改造した定着試験装置を用い、ベルト線速度125mm/sec、定着ベルト温度170℃に設定して、定着強度の評価と同様の方法で出力した未定着状態の転写紙の定着を行なった。定着後の画像の光沢度を、日本電色工業株式会社製のグロスメーターにより入射角60°により計測した。オフィスで使用されるフルカラー画像としては適度な光沢が好まれ、5〜15%程度が好ましい。
光沢度が、5以上のものを○、3以上5未満のものを△(実用上問題ない)、3未満のものを×(実用上問題あり)として判定した。
【0070】
<規制ブレード固着>
リコー製ipsio CX3000を用いて、印字率6%の所定のプリントパターンを、H/H環境下(27℃、80%)の2500枚連続複写後(耐久後)に現像器の現像ローラの状態および複写画像を目視により観察し、評価した。判定基準は以下の通りである。
スリーブにスジ又はムラの発生がないものを○、スリーブにスジ又はムラが若干発生しているものの、複写画像上に縦スジがなく、実用上問題ないものを△、スリーブにスジ又はムラが多数発生しており、異音、トナー固着、トナーこぼれ等、実用上問題があるものを×として判定した。
【0071】
<フィルミング>
リコー製ipsio CX3000を用いて、印字率6%の所定のプリントパターンをN/N環境下(27℃、80%)で連続印字した。N/N環境下の2500枚連続印字後(耐久後)に、感光体および中間転写体ベルト上を目視で観察評価した。判断基準は以下の通りである。
感光体及び中間転写体にフィルミング及びブラックスポット(BS)の発生がなく、全く問題ないものを○、感光体及び中間転写体の一方でフィルミング及びBSの発生が見られたが、複写画像上には見えず、実用上問題ないものを△、感光体及び/又は中間転写体にフィルミング及びBSの発生があり、画像上でも確認でき、実用上問題があるものを×として判定した。これらの評価結果を表3に示した。
評価結果より、実施例1〜13で得られたトナーは、比較例1〜7並びに参考例と比べて、現像ブレードへの固着性能に非常に優れていることがわかった。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の臼式混練機の概略説明図である。
【図2】本発明の定着方法を採用したオイルレス定着装置の概略説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る現像装置とプロセスカートリッジユニットの断面図である。
【符号の説明】
【0076】
(図1について)
11 供給フィーダ
12 外部砥石
13 内部砥石
14 排出口
15 シリンダ
15H ヒーターカバー
16A 搬送スクリュー
16B 送り部
16C 搬送スクリュー
17 プレスローラ
(図2について)
21 加圧ローラ
22 加熱ローラ
23 分離板
24 アルミ芯金
25 弾性体層
26 表層
27 ヒータ
28 アルミ芯金
29 弾性体層
30 表層
31 ニップ
32 記録シート
33 トナー像
(図3について)
2 感光体ドラム
5 クリーニングブレード
7 中間転写ベルト
8 クリーニングローラ
101 トナー収容室
102 トナー供給室
103 現像ローラ
104 層規制部材
105 供給ローラ
106 トナー攪拌部材
107 開口部
108 封止シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー材料を、混練機で溶融混練する工程と、圧延冷却工程とを含むトナーの製造方法であって、該混練機は、独立した一つの分散部(A)と、該分散部(A)を挟む独立した第1搬送部(B1)と第2搬送部(B2)の二つの搬送部を有し、該第1搬送部(B1)の実温度(C)が10<C<25であり、前記独立分散部(A)のヒータ加熱温度の平均実温度(D)(以降平均ヒータ実温度とも記載)が、15<D<40(℃)であり、独立分散部(A)の平均ヒータ実温度と、第2搬送部(B2)の平均ヒータ実温度との差(E)の関係が、60<E<100(℃)であり、混練後圧延冷却した際のトナー圧延物の厚み(X)(mm)が2.5<X<3.2であり、前記トナー圧延物はワックスを粒子状態で分散しており、該ワックスの小粒子径群の平均分散粒子径(Y1)(μm)が0.6<Y1<1.0であり、該ワックスの大粒子径群の平均分散粒子径(Z1)(μm)が2.0<Z1<3.5であり、更にはそれらをトナー化した時のトナー中におけるワックス小粒子径群の平均分散粒子径(Y2)(μm)が分散径の0.2<Y2<0.6で、ワックスの大粒子径群の平均分散粒子径(Z2)(μm)が1.0<Z2<2.5であることを特徴とする非磁性一成分現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
前記第1搬送部(B1)で、前記トナー材料を搬送しつつ、少なくとも樹脂並びにワックスで合成されるハイブリッド樹脂と着色剤を配合してなるドライブレンド品を形成し、前記分散部(A)で、前記ドライブレンド品を溶融混練して溶融混練物となし、前記第2搬送部(B2)で、該溶融混練物を搬送し押出成形することを特徴とする請求項1に記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
前記第1搬送部(B1)が、筒型搬送スクリュウであり、前記分散部(A)が、外部砥石と内部砥石との間の間隙で前記トナー材料を薄膜上に延伸する臼式のヒータ加熱式混練機であり、前記第2搬送部(B2)が、筒型搬送スクリュウであることを特徴とする請求項1又は2に記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
前記ワックスが、パラフィンワックスを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
前記バインダー樹脂が、前記ワックスの存在下で合成された樹脂を含有し、更には前記バインダー樹脂は、少なくとも縮重合系樹脂及びビニル系樹脂からなるハイブリッド樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
前記ワックスの軟化点が、70℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法。
【請求項7】
前記バインダー樹脂及び前記ワックスの総重量に対する前記ワックスの重量の比は、3.0%以上3.5%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法。
【請求項8】
前記非磁性一成分現像用トナーの軟化点は、121℃以上135℃以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法により製造された非磁性一成分現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
像担持体と対向配置され、現像剤を担持して前記像担持体に形成される潜像を現像するための現像剤担持部材と、前記現像剤担持部材と接触状に対向配置され、前記現像剤担持部材に現像剤を供給するための供給部材と、前記現像剤担持部材の移動方向における前記供給部材との対向位置と前記像担持体との対向位置との間において、前記現像剤担持部材と対向配置され、前記供給部材によって供給された現像剤を前記現像剤担持部材に薄層状に担持させるための層厚規制部材とを備える現像装置において、前記現像装置の上側にトナー補給機構を持つ縦型構成を持ち該縦型現像装置に用いるトナーが請求項1乃至9のいずれかに記載の非磁性一成分現像用トナーの製造方法により製造された非磁性一成分現像用トナーであって、前記規制部材と前記現像剤担持部材が接触している部分が前記現像剤担持部材に対して腹当て状態であることを特徴とする現像装置。
【請求項11】
少なくとも請求項10に記載された現像装置を備え、画像形成装置に着脱自在としたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
定着器が加熱ローラ及び加圧ローラにより構成される2ロール定着方式であり、更には定着器が定着部材にオイル塗布を必要としないオイルレス定着を特徴とする請求項9に記載の画像形成方法を用いた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−63927(P2009−63927A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233254(P2007−233254)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】