説明

面取りされる切削刃の形状を測定する方法及び装置

ドリルの機械加工(1)は、二段階で行われる切削刃(8)の面取り操作を含む。第一段階においては、回転する砥石(15)が切削刃(8)の様々な位置に向けて動かされ、電子機器(17)によって接触点が検出され、その電子モジュール(19)が砥石を制御して停止させ、初期の位置に戻す。また、接触時の砥石の位置を記録する。第二段階においては、砥石(15)は、第一段階の間に記録された接触点を連結して得られる曲線をたどるように制御される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ドリル、エンドミル、特にボールエンドミル、ある種のボーリングバー等の切削工具は、正確さ、切削品質、速度及び耐久性などの性能に関して、益々増大する要求を満たさなければならない。ある特定の場合、特にドリルの場合においては、その間にかなり鋭い稜角を形成する2つの面の接合によって空間内に定められる曲線に沿って切削刃が延在する。このような工具は、一般に、CNC機械で研削することによって機械加工される。機械加工の後、切削刃は非常に精巧に研がれた線として現れ、使用開始直後から、刃こぼれを起こす危険性が高く、従って早期に寿命が尽きる危険性がある。さらに、切削刃がすぐに不規則になってしまうので、このような工具によって機械加工された部品の品質を低下させてしまう。このような事情故に、切削刃の縁部を再研削して保護チャンファを設けることが一般に行われている。
【0002】
特にドリルの場合においては、切削刃は複雑な形状の三次元の曲線を有している。計算によってこの曲線の形状を得るのは、勿論、可能である。しかしながら、特に、工具のネジ筋の両側における研削操作が不正確であることによって、実のところ、その実際の形状は計算された理論曲線とは大きく異なっている。それ故に、この曲線の正確な形状が、実際には、面取り操作の直前に物理的に決定されている。この曲線の形状の決定は、砥石車の駆動支持体上の、砥石車の回転軸に近接する位置に設けられ、スイッチに接続されたプロービングブレードによって一般に行われている。このブレードは、様々な場所において工具の刃に近付けられ一連の接触点を読み取って記録し(通常、30〜50の計測がなされる)、その後、読み取られた点の座標に従って、切削刃を再研削して保護チャンファを設けるように砥石車を制御する。この操作は刃の面取りと呼ばれている。
【0003】
しかしながら、特に、プロービングブレードそれ自体とその動きとによって生じる誤差、そしてこの方法の複雑さに起因した誤差による正確さの欠如によって、この方法では不満足であることがわかっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、所定の幅及び角度と永続する品質とを有するチャンファを備えたレギュラー切削刃を得るのに今までに知られてきた手段よりも効率のよい方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、自動制御された研削操作によってこの刃の面取りを行うために、工具の切削刃の形状寸法を測定する方法に関する。この方法は、刃に沿って隣接する点の位置を検出して記録し、該刃に沿った砥石車の動きをプログラム制御することにおいて、接触検出器が砥石車に連結され、該砥石車は、回転しながら、まず、前記隣接した複数の点において切削刃を横切る線に沿って切削刃の方向に移動し、接触したことが検出されると、すぐに前記接触検出器が前記砥石車の移動を止めて到達した位置を記録し、次いで、前記砥石車が、切削刃の面取りを行うために前記位置の記録によって制御されることを特徴とする。
【0006】
本発明は、また、前記方法を実施する装置にも関し、該装置は、機械加工工具の切削刃用に装備されたCNC研削機械に、接触検出器と記録手段及び制御手段とが接続された砥石車支持体を備え、該接触検出器と記録手段及び制御手段とが、第一段階において、回転する砥石車によって工具の切削刃に沿う一連の点を探知し、探知された接触点に対応する砥石車の位置を記録し、次いで、第二段階において、探知された位置に応じて切削刃の面取りを行うように砥石車を制御することを特徴とする。
【0007】
本発明は、また、前記方法で得られる工具、特にドリルに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
添付の図面を参照しながら、ドリルの切削刃を面取りする方法の一態様について、例を用いて以下に記載する。
【0009】
図1及び図2は、例えば、強化鋼に穴を開けるためのドリル1の形状の詳細を示している。このドリルは円筒形の側面2を有しており、該側面には、工具の作用端に向かって延在する、直径を挟んで対向する2本の螺旋形の溝3が設けられている。これらの溝は、溝と溝との間に2本のネジ筋4を定めており、その軸方向の幅は、工具の作用端の近傍まで一定であるが、ネジ筋4の後部側面に設けられた連続する3つの斜面5,6,7を通って先端に近付く段階では狭くなって行く。最後の斜面7は、後で詳述する三次元の切削刃線8に沿って、ネジ筋の前面に繋がる。斜面5,6,7の傾斜と長さとは、ドリルに望まれる性能によって決定される。実際、図2より理解されるように、隣接する斜面6とそれぞれの斜面7とを隔てる2本の境界線9は真っ直ぐであり、直径方向に対向しており、ドリルの直径を含む面において、この工具の特徴である鈍角を定めている。斜面5と6との間の2本の境界線10についても同様である。
【0010】
2つの斜面7の境界を定める切削刃線8に関しては、各斜面5とそれに隣接する斜面7との間に補助斜面5a, 5b, 5cを挟んで、この切削刃線がドリルの先端から円筒形の側面2まで三次元空間における輪郭線に沿って延在していることを理解することができる。したがって、切削刃線8の各々の道筋は複雑である。この複雑さは、その間に鋭い稜角20を形成する複数の三次元の面の接合部に由来する。これら切削刃線は非常に尖っていて使用中にぎざぎざになってしまう危険性が高い。
【0011】
この問題を避けるために、ドリルの機械加工中に、切削刃線8を面取りする追加的な操作が行われる。この操作においては、その第一段階で、切削刃線8に沿って分布する、多数、例えば30〜50個の点の正確な位置を測定して記録することからなる検知を行う。図3は、このように、切削刃線8に沿って間隔をあけて配された3つの点11、12、13の位置を概略的に示しており、これらの点の座標が測定されて、記録される。
【0012】
この操作は、その支持体16に取り付けられた砥石車15を用いて、工具を研削するCNC機械14で行われる。面取りされる切削刃を有するドリル1は、この機械の工作物受台18の、固定位置、又は回転可能な位置に取り付けられる。この例においては電子超音波検出器である接触検出器17が、ドリル近傍の適切な位置に配置され、その後、図3に示されているように、砥石車16を制御して、様々な方向から切削刃線8に近付くように回転させる。砥石車がドリルに接触すると、すぐに検出器17が砥石車の位置を電子装置19に記録し、砥石車を制御して後退させる。このようにして、空間における曲線8の道筋が確立されれば、あとは、面取り操作を行うために、記録された道筋をたどるように砥石車に指令するだけである。以上のようにして、非常に狭いが一律である最終的な表面が各ネジ筋4の縁部に形成される。数値制御された研削操作によって製造されているので、この表面は連続的に延びており、工具の先端から、斜面5、6、7の接触点、2つの斜面7の間であって斜面5b、5cと溝3によって定められるネジ筋4の前側との間を通り、工具のシャンク2に至っている。
【0013】
回転する砥石車を用いて検知することによって切削刃の形状を計測し、その砥石車自身が引き続いて面取りを行うことは、プロービングブレードを使用する従来からある方法に比べて、特に有利である。これは、検知の最中に、砥石車が次に面取りを行うときと同じ点で接触するからである。これによって、機械の校正ミスをなくすことができる。さらに、検知の間、必然的に、砥石車は既に回転していなければならないのであるから、この砥石車の偏心度も考慮されることになる。
【0014】
この方法を用いて行われた実験によると、ドリルは、それまでのものよりも迅速に製造され、製造されたドリルの正確さと耐久性とが優れる一方で、製造コストを低減することができる。
【0015】
大きさが異なるドリル又は溝の数が多いドリル、及びエンドミル、ボーリングバー、リーマーなどの、他の型の工具についても、同じ効果を得ることができる。
【0016】
砥石車と切削刃との接触の検出には、回転する砥石車が切削刃と接触することによって発生する振動又は超音波を検出することのできる様々な型の検出器を使用することができる。先に記載した超音波検出器の外にも、圧電検出器又はフーコー電流検出器によって前記感知動作を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ドリル端部の切削部分の拡大斜視図である。
【図2】図1に示したドリル端部の端面図である。
【図3】探知点の位置を示している、ドリルの側面図である。
【図4】この方法を実施する機械加工装置の主要な要素を示す略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動制御された研削操作によって切削刃の面取りを行うために、工具の切削刃(8)の形状寸法を測定する方法であって、該方法は、前記切削刃に沿って隣接する点(11、12、13)の位置を検出して記録し、該切削刃に沿った砥石車(15)の動きをプログラム制御することにおいて、接触検出器(17)が前記砥石車に連結され、該砥石車は、回転しながら、まず、前記隣接した複数の点において切削刃を横切る線に沿って切削刃(8)の方向に移動し、接触したことが検出されると、すぐに前記接触検出器が前記砥石車の移動を止めて到達した位置を記録し、次いで、前記砥石車(15)が、刃の面取りを行うために前記位置の記録によって制御されることを特徴とする方法。
【請求項2】
機械加工工具の切削刃用に装備されたCNC研削機械(14)に、接触検出器(17)と記録手段及び制御手段(19, 16)とが接続された砥石車支持体(16)を備え、該接触検出器と記録手段及び制御手段とが、第一段階において、回転する砥石車(15)によって工具の切削刃(8)に沿う一連の点を探知し、探知された接触点に対応する砥石車の位置を記録し、次いで、第二段階において、探知された位置に従って切削刃(8)の面取りを行うように砥石車(15)を制御することを特徴とする、請求項1に記載の方法を実施する装置。
【請求項3】
前記接触検出器(17)が、工具のシャンク(1)の近傍に配設された超音波検出器であることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記接触検出器(17)が、フーコー電流センサであることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記接触検出器(17)が、圧電センサであることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
請求項1に記載の方法で得られ、研削によって三次元曲線に従って面取りされた少なくとも1つの切削刃(8)を有することを特徴とする工具、特にドリル(1)。
【請求項7】
前記切削刃(8)が、前記工具(1)の先端から、面と面との間に異なる稜角を有して繋がる複数の面(7、3、5c、5b)の間を通って、工具の円筒形の側面(2)へと連続的に延びていることを特徴とする、請求項6に記載の工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−502528(P2009−502528A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523505(P2008−523505)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052488
【国際公開番号】WO2007/013005
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(507030586)
【氏名又は名称原語表記】ROLLOMATIC SA
【住所又は居所原語表記】Rue des Pres Bugnons,CH−2525 Le Landeron,Switzerland
【Fターム(参考)】