説明

面状ヒータ

【課題】 加熱斑と熱伝導不良の問題とが同時に解消された面状ヒータを提供する。
【解決手段】 所望形状の両面粘着シートの表面で且つ該シートの縁部に沿ってヒータ線を固着・配置してから、さらに該シート表面に金属箔を直接貼付し、その際、該金属箔の貼代部は該シートの縁部を経て裏面に折り返して貼付する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状ヒータに関する。就中、本発明は、電子炊飯器、足温浴器、さらには洋式便器の便座などの加熱・保湿用に適した面状ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今は面状ヒータが組み込まれる機器本体の小型化が進み、これにともない、面状ヒータ自身にも外形寸法のさらなる縮小が要求されてきている。この要求に応える面状ヒータの一例が、その外縁部の断面として図6に示されている。この例では、表面(3a)にヒータ線(2)を固着・配置した両面粘着シート(3)(以下、“粘着シート(3)”と略記する。)は、ヒータ線(2)の外縁部から内縁部に向かって折り返し状態にある(例えば、特許文献1参照。)。この粘着シート(3)の折り返し部分が、所謂貼代(余り代)部である。また、(4)は、粘着シート(3)の裏面(3b)側の離型紙である。
【0003】
上記の粘着シート(3)の表面には、さらに金属箔(5)が貼付されるが、その端面(P)は、単に離型紙(4)に直交状態で接触しているに過ぎない。このため、金属箔(5)は、該接触面を起点として、極めて剥がれ易い状況にある。そして、この状況は、ヒータ線(2)のはみ出しや位置ずれによる加熱斑を招来する。さらに、この先行技術で見逃してならないのは、熱効率の問題である。すなわち、ヒータ線(2)は、粘着シート(3)で包み込まれているので、熱伝導性の低下は免れない。
【0004】
【特許文献1】特開2007−35385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、上記の加熱斑と熱伝導不良の問題とが同時に解消された面状ヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、熱伝導低下を招来する粘着シートの貼代部を割愛し、代わりに、ヒータ線を配置した粘着シート表面に、貼代部を設けた金属箔を直接被覆し、その際、該貼代部を粘着シートの縁部を経て粘着シート裏面に向かって折り返すことにより、上記の課題を一挙に解決するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明の面状ヒータにあっては、その粘着シート表面が金属箔で直接被覆され、さらに該金属箔の貼代部が粘着シートの縁部を経てその裏面にまで延展した状態で貼付されているので、以下のような顕著な効果が奏される。
(1)ヒータ線のずれや浮きが生じず、加熱時の温度分布が均一化される。
(2)粘着シートの貼代部を割愛したので、熱伝導性が向上し、温度分布の均一化が促進される。
(3)粘着シートの貼代部を割愛したので、面状ヒータの面積が縮小化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、粘着シートを形容する“所望の形状”とは、面状ヒータが組み込まれる機器内の配置スペースの形状に対応する。具体的には、円環状(電子炊飯器用)、足形状(足温浴器用)、さらには馬蹄形状(洋式便器の便座用)が挙げられる。そのほか、機器内での設置スペースに応じて 矩形状、多角形状も採用され、この場合も、必要に応じて、内部に刳り抜き部分(中空部分)を設けてもよい。また、シートの“縁部”とは、シート形状に付随する外縁部、あるいは外縁部と内縁部とを指す。
【0009】
以下、本発明を、電子炊飯器のフタ用として適用する円環状面状ヒータの場合について説明する。
図1は、本発明に係る面状ヒータの一態様を示す上面(表面)図である。
図2は、本発明に係る面状ヒータの一態様を示す下面(裏面)図である。
図3は、本発明に係る面状ヒータの一態様を示す縁部横断面図(A−A断面)である。
図4は、本発明に使用する金属箔の上面図である。
図5は、本発明に係る面状ヒータの別の態様を示す縁部横断面図(A−A断面)である。
図6は、従来の面状ヒータの一態様を示す縁部横断面図である。
【0010】
図1〜図5を通して、符号(1)〜(5)は、既に述べた図6の場合と同じである。図1の面状ヒータ形状は円環状で、その外縁部の断面図(図1のA−A線に沿う断面図)が図3に示されている。図3において、貼代部が割愛された粘着シート(3)の表面(3a)でその外縁部(3c)に沿って、ヒータ線(2)が固着・配置されている。このヒータ線(2)は、片端に接続コネクタ(10)が装着された2本のリード線(9)に接続子(8)を介して接続される。そして、このヒータ線(2)上部から、貼代(折り返し)部(5a)を設けた金属箔(5)が直接貼付され、その際、該貼代部(5a)は、粘着シートの外縁部(3c)を経てその裏面(3b)にまで延展して貼付されている。この貼代部(5a)には、後述するように、粘着シート裏面(3b)への折り返し貼付を容易にするための、末広がり状の切込部(5b)が設けられている。
【0011】
再度、図1を参照するに、面状ヒータ(1)の表面で金属箔(5)の上には、温度ヒューズ(6)が金属箔テープ(7)で固定されている。このとき、金属箔テープ(7)は面状ヒータ(1)の外縁部および内縁部を跨ぐ形で貼付される。温度ヒューズ(6)自身は、接続子(8a)を介して2本のリード線(9a)に接続され、このリード線(9a)の他端は接続コネクタ(10)に接続される。
【0012】
図1〜図3に示した面状ヒータに特徴的なことは、ヒータ線(2)を直接被覆する金属箔(5)のうち、貼代部(5a)が、粘着シート(3)の外縁部(3c)を経て粘着シート(3)の裏面(3b)に向かって折り返され、粘着シート(3)の外縁部(3c)を覆っていることである。こうすることにより、面状ヒータ(1)が機器に取り付けられた際には、貼代部(5a)が前記機器本体と粘着シート(3)との間に狭持される。したがって、このような面状ヒータにあっては、金属箔(5)の先端面(P)からの剥離が起こりにくくなり、均一な温度分布効果が得られる。
【0013】
以上の例においては、粘着シート(3)の内縁部、ひいては面状シートの内縁部は、円状ではなく、彎曲形状で示した。これは、面状ヒータが設置される機器の部品との“当り”を避けるためである。したがって、この彎曲形状(刳り抜き形状)は機種により異なってくる。同様に、ヒータ線(2)の一部も彎曲配置されているが、これは、温度分布を均一にするため、あるいは機器側部品との沿面距離(絶縁距離)を稼ぐためである。
【0014】
図1〜図3に示した面状ヒータ(1)の作成に際しては、先ず離型紙付きの両面粘着シート(3)を、それに固着されるヒータ線(2)の配置形状に応じてカットする。次いで、上面(表面)側の離型紙を剥ぎ取り、表面側の粘着面(3a)を露出させ、その上にヒータ線(2)を固着・配置する。配置後のヒータ線(2)には、接続子(8)を介して2本のリード線(9)を接続する。そして、リード線(9)の他端には接続コネクタ(10)を設ける。
【0015】
さらに、粘着シート(3)の裏面側の離型紙外周面を貼代部(5a)形状に合わせて剥ぎ取る。図3で、離型紙(4)は、この外周面の離型紙を剥ぎ取った後に残された部分である。この部分は、面状ヒータ(1)を機器内に取り付ける際に、はじめて剥ぎ取られる。
【0016】
ただ、上記の離型紙外周面の剥ぎ取りを省略することもできる。例えば、粘着シート(3)の裏面側離型紙の外周部分を一担持ち上げて形成した空間に、貼代部(5a)を挿入した後、再度前記の外周部分の離型紙を元に戻してもよい。この方策では、粘着側裏面(3b)でその外周面の離型紙の切断・剥ぎ取り工程が省略されるとともに、貼代部(5a)自身も離型紙で保護される。
【0017】
面状ヒータ(1)の実使用上の発熱量は、最大3,000W/mである。この発熱量をヒータ表面温度に換算すると、150℃程度になるので、粘着シート(3)は耐熱性のものが好ましく採用される。また、ヒータ線(2)は、面状ヒータ(1)の仕様に応じて、外径、全長および配置形状が決定される。
【0018】
ヒータ線(2)が配置された粘着シート表面(3a)には、図4に示す形状の金属箔(5)を貼付する。次いで、斜線で示す貼代部(5a)を粘着シート(3)の外縁部(3c)に沿って折り返し処理する。破線で示す(Q)は、外縁部(3c)に一致する、貼代部(5a)の折り返し線である。
【0019】
上記の折り返し処理にあたっては、貼代部(5a)の折り返しを容易にし且つ重なり部を避ける意味で、貼代部(5a)に末広がり状の切込部(5b)を予め設けておくのが有利である。このとき、切込部(5b)は、リード線引き出し部(5c)を除いて、貼代部(5a)の周方向に等間隔に設けるのが好ましい。貼代部(5a)の幅は、固定力とスペースを考慮し、3mm〜20mmとすればよい。金属箔(5)自体は、ヒータ線(2)や粘着シート表面(3a)との固着力を向上させるため、粘着剤付であってもよい。
【0020】
さらに、図5には、図3の態様を変形した例が示されている。この例では、図3の粘着シート(3)の裏面(3b)側の離型紙全体を剥ぎ取った状態で、別体の粘着シート(11)が、該裏面(3b)および貼代部(5a)全面に亘って被覆されている。(12)は、粘着シート(11)の裏面側の離型紙である。こうすることで、貼代部(5a)はもちろんその先端面(P)が、粘着シート(3)と粘着シート(11)との間でさらに堅固に狭持・固着される。しかも、離型紙(12)を剥ぎ取ってから面状ヒータ(1)を機器へ取り付ける際の接着面積も増加するので、取付強度が格段に向上する。
【0021】
上記の態様に代わるものとして、貼代部(5a)の表面(非接着面)のみに粘着シート(11)の小片の複数枚を用意し、それらの端部を重ねながら貼付することも考えられる。ただ、この方策では、貼代部(5a)の固定力がやや劣りかねない。
【0022】
以上の態様は、1本のヒータ線(2)を用い、且つ面状ヒータ(1)の裏面でその外周面全体に貼代部(5a)が適用された例である。しかし、貼代部(5a)は局部的にも適用される。つまり、ヒータ線(2)が粘着シートの外縁部(3c)から局部的に離間し、金属箔(5)の貼代部(5a)のスペースが表面(3a)側で十分確保できる場合には、貼代部(5a)の折返し処理は不要である。他方、ヒータ線(2)が粘着シートの外縁部(3c)に接近している箇所については、選択的に折り返し処理を施す。このことは、例えば、2本のヒータ線をそれぞれ、円環状粘着シートの外縁部および内縁部に沿って固着・配置する場合にも言える。
【0023】
本発明においては、図1に示すように、金属箔(5)上に温度ヒューズ(6)を付設してもよい。この場合、金属箔(5)の外縁部および内縁部を跨ぐ金属箔テープ(7)にて温度ヒューズ(6)を金属箔(5)上に固定すればよい。このような金属箔テープ(7)の幅は、温度ヒューズ(6)の長さに応じて選定されるが、通常は10mm〜40mm程度である。また、金属箔テープ(7)の長さも、温度ヒューズ(6)の外径および該ヒューズ(6)の固定箇所の寸法に応じて適宜選定される。通常、この長さは20mm〜60mm程度にすればよい。さらに、金属箔テープ(7)の厚さは金属箔(5)のそれと同等であるのがよい。もちろん、この金属箔テープ(7)に代えて片面粘着テープを用いてもよいが、前者の方が薄いので、面状ヒータの厚み方向の嵩張りを抑える利点がある。
【実施例】
【0024】
外径118mm、厚さ0.2mm(本体厚さ0.12mm、離型紙(4)の厚さ 0.08mm)の粘着シート(3)を図1に示すような形状に刳り抜いた。このときの刳り抜きの程度は、金属箔テープ(7)の直線距離(粘着シート(3)の内縁部―外縁部間の直線距離)が9mmになる程度とした。次いで、この粘着シート(3)の表面(3a)の外縁部(3c)に沿って、ヒータ線(2)を固着・配置した(図1)。用いたヒータ線(2)は、100V20W、抵抗値500オーム、そしてワット密度58.5W/mのガラス芯にニクロム線を横巻きしたものをシリコーンゴムにて被覆したヒータ線である。
【0025】
次に、フッ素樹脂で被覆され、片端に接続コネクタ(10)が装着されたリード線加工品(全長約300mm)の内、2本のリード線(9)とヒータ線(2)とを接続子(8)にて接続し、所定の位置に固着・配置した。
【0026】
この状態で、図4に示すような形状のアルミニウム金属箔(5)を上方から貼付した。用いたアルミニウム金属箔(5)は、外径132mm、厚さ0.05mmで、貼代部(5a)の半径方向の幅は7mmとした。また、内部の刳り抜き形状は、粘着シート(3)の刳り抜き形状に一致させた。
【0027】
次いで、金属箔(5)の貼代部(5a)を折り返し線(Q)に沿って、粘着シート(3)の裏面(3b)側に折返しながら固着した。このとき、折り返し線(Q)は、粘着シート(3)の外縁部(3c)に対応しているので、粘着シート(3)の外径に等しい外径118mmの円形治具を使用することで、粘着シート(3)の外縁部(3c)を損傷させることなく、円形に折り込むことができた。
【0028】
さらに、リード線加工品(全長約300mm)の内、残りの2本のリード線(9a)と温度ヒューズ(6)とを接続子(8a)にて接続した。次いで、ヒータ線(2)側の接続子(8)近傍の金属箔(5)上で、温度ヒューズ(6)を金属箔テープ(7)にて固定した。用いた金属箔テープ(7)は、長さ40mm、幅20mm、厚さ0.05mmのアルミ二ウム箔の片面に粘着剤層を設けたテープである。この際、金属箔テープ(7)両端の貼代部(それぞれ3mm)を粘着シート(3)の裏面側に折り返して貼付した。このようにして、図1〜図3に示す面状ヒータ(1)が完成した。
【0029】
上記の実施例では発熱体としてのニクロム線をシリコーンゴムにて被覆したヒータ線を使用したが、このほかに、ふっ素樹脂等他の被覆材にて被覆されたヒータ線を使用してもよい。また、上記のように、温度ヒューズ(6)を金属箔テープ(7)で直接固定する代わりに、温度ヒューズ(6)と接続子(8a)とを接続したものを編組チューブ等の保護チューブ内に挿入し、保護チューブを金属箔テープ(7)にて固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の面状ヒータにあっては、ヒータ線の固定効果が向上するとともに、機器内の狭小箇所にでも設置できるので、従来は設置が難しかった設置面の端部や複雑な形状面への対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る面状ヒータの一態様を示す上面(表面)図。
【図2】本発明に係る面状ヒータの一態様を示す下面(裏面)図。
【図3】本発明に係る面状ヒータの一態様を示す部分横断面図(A−A断面)。
【図4】本発明に使用する金属箔の上面図。
【図5】本発明に係る面状ヒータの別の態様を示す部分横断面図(A−A断面)。
【図6】従来の面状ヒータの一態様を示す部分横断面図。
【符号の説明】
【0032】
1 面状ヒータ
2 ヒータ線
3 粘着シート
3a 粘着シートの表面
3b 粘着シートの裏面
3c 粘着シートの外縁部
4 粘着シートの裏面側離型紙
5 金属箔
5a 金属箔の貼代部(折り返し部)
5b 貼代部に設けた切込部
5c 貼代部に設けたリード線引き出し部
6 温度ヒューズ
7 金属箔テープ
8 接続子
8a 接続子
9 リード線
9a リード線
10 接続コネクタ
11 別体の粘着シート
12 別体の粘着シートの裏面側離型紙
P 金属箔(5)の先端面
Q 金属箔(5)の折り返し線



【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望形状の両面粘着シートの表面で且つ該シートの縁部に沿ってヒータ線が固着・配置され、さらに該シート表面に金属箔が直接貼付され、その際、該金属箔の貼代部が該シートの縁部を経て裏面に折り返し状態で貼付されていることを特徴とする面状ヒータ。
【請求項2】
該所望形状が円環状である請求項1に記載の面状ヒータ。
【請求項3】
該縁部が円環状シートの外縁部である請求項2に記載の面状ヒータ。
【請求項4】
該金属箔の形状が円環状である請求項2または3に記載の面状ヒータ。
【請求項5】
該円環状金属箔の貼代部に、末広がり状の切込部が形成されている請求項2〜4のいずれかに記載の面状ヒータ。
【請求項6】
該金属箔上に、温度ヒューズが金属箔テープにより固定されている請求項1〜5のいずれかに記載の面状ヒータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−288009(P2008−288009A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131234(P2007−131234)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000226932)日星電気株式会社 (98)
【Fターム(参考)】