面状発熱体およびその製造方法
【課題】本発明は耐久性があり節電効果の高い面状発熱体を提供することを課題とする。
【解決手段】加熱により酸化物を与えるスズとアンチモンとの化合物を含む溶液を塗布した基材を加熱して酸化スズと酸化アンチモンとを含む薄膜を基材上に形成する。該薄膜はPTC特性を有し、また高い熱転換率を示し、かつ昇温速度も大きく、更に耐酸化性、耐水性、耐化学性に優れている。
【解決手段】加熱により酸化物を与えるスズとアンチモンとの化合物を含む溶液を塗布した基材を加熱して酸化スズと酸化アンチモンとを含む薄膜を基材上に形成する。該薄膜はPTC特性を有し、また高い熱転換率を示し、かつ昇温速度も大きく、更に耐酸化性、耐水性、耐化学性に優れている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安定性に富む面状発熱体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基材上に酸化亜鉛または酸化スズの薄膜を形成した面状発熱体が提供されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−216936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記面状発熱体は安定性に乏しく、繰返し通電加熱によって抵抗値が次第に変動すると云う問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、酸化スズと酸化アンチモンとを含む薄膜を基材上に形成した面状発熱体、または酸化スズと、酸化アンチモンと、酸化ストロンチウム、酸化銅、および酸化銀から選ばれる一種または二種以上の酸化金属と、を含む薄膜を基材上に形成した面状発熱体を提供するものである。
上記該基材は、通常セラミック、ガラスあるいは陶磁器である。
【0006】
本発明にあっては、更に加熱により酸化物を与えるスズおよびアンチモンの金属化合物を含む溶液を基材に塗布した後、該基材を加熱し、該基材表面に酸化スズと酸化アンチモンとを含む薄膜を形成せしめる面状発熱体の製造方法、また加熱により酸化物を与えるスズとアンチモンの化合物と更にストロンチウム、銅、および銀の化合物から選ばれた一種または二種以上の金属化合物を含む溶液を塗布した基材を加熱し、該基材表面に酸化スズと酸化アンチモンとを含み、更に酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀から選ばれた一種または二種以上の酸化金属を含む薄膜を形成せしめる面状発熱体の製造方法が提供される。
上記加熱温度は、750〜1000℃に調節され、酸化スズと酸化アンチモンに加えて更に酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀から選ばれた一種または二種以上の酸化金属を含む場合は、250〜1000℃に調節されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の面状発熱体は安価に提供出来、しかも電力消費量は例えば従来のチタン酸バリウム塩の焼結体薄膜に比して35%以上もありかつ昇温速度が大であり、ニクロム線ヒーターに比べると約2倍の昇温速度となり、高い熱転換率を示す。更に特筆すべきは、本発明の面状発熱体は温度の上昇につれて抵抗値が上昇するPTC特性を有する。したがって所定温度に達するとそれ以上温度が上昇せず、略一定になるので、複雑かつ高価な温度制御素子を挿入する必要がなくなる。更に本発明の面状発熱体は、赤外線放射率が高いと云う特性を有する。
また長時間の通電あるいは繰返し通電でも定常状態における抵抗値は殆んど変化せず安定であって、更に耐水性、耐酸性等耐化学性にも優れ、良好な耐久性を有する。
本発明の面状発熱体は家庭用温水器、調理器、保温器、オーブン、ストーブ、電熱式アイロン等各種の加熱製品に適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を以下に詳細に説明する。
本発明の面状発熱体は、基材上に酸化スズと酸化アンチモン、更に所望なれば酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀から選ばれた一種または二種以上の酸化金属を含む薄膜を形成したものである。
上記酸化スズとしてはSnO、Sn3O4、SnO2のいずれもが含まれる。
上記酸化アンチモンとしては、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5のいずれもが含まれる。
上記酸化ストロンチウムは、SrOである。
上記酸化銅は、Cu2O、CuOのいずれもが含まれる。
上記酸化銀は、Ag2O、Ag2O3、AgOのいずれもが含まれる。
上記酸化スズと上記酸化アンチモンとの比率は、所定の面状発熱体の性質によって種々に設定されてよいが、通常は40:60〜80:20質量比の範囲で安定性に富む面状発熱体が得られる。
上記酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀は、微量要素であり、通常は0.01〜0.1質量%の範囲に設定される。
【0009】
上記酸化スズ以外に所望なれば酸化ビスマス、酸化鉛、酸化ガリウム、酸化インジウム、ITO等の他の金属酸化物が少量含有されてもよい。上記金属酸化物としては種々の原子価の酸化物が使用されることが出来る。
更に本発明の薄膜にはスズ、アンチモン、ストロンチウム、銅、銀、ビスマス、鉛、ガリウム、インジウム等の金属単体が含まれてもよい。
一般的に高原子価酸化物は高抵抗値を与え、低原子価酸化物および金属単体は低抵抗値を与える。
【0010】
本発明で基材として使用される材料は一般に、雲母、セラミックス、ガラス、デビトロセラミックス、陶磁器である。上記セラミックスとしてはアルミナ、ジルコニア、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ペタライト等が例示される。
なお上記本発明において使用される基材は、赤外線放射率があらゆる生物、有機物の固有振動波長が集中している2.5〜15μmの帯域で85%以上であることが望ましい。
本発明で基材として使用される雲母、セラミックス、ガラス、デビトロセラミックス、陶器等は、一般に高い赤外線放射率であるが、必要に応じてCoO、MnO2、Fe2O3、CuO等の赤外線放射材料を混合した全帯域赤外線放射塗料(例えばオキツモ(株)製B−600)を放射面に塗布するか、該基材に前記CoO、MnO2、Fe2O3、CuO等の赤外線放射材料を添加して全帯域放射基材としてもよい。
【0011】
本発明の面状発熱体は、スズおよびアンチモンと、所望なれば上記ストロンチウム、銅、銀、あるいは更に所望なれば上記他の金属とを、塩化物、硫化物、水酸化物、酸化水酸化物、炭酸水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、シュウ酸塩、アルコシド等の加熱によって金属酸化物を与える金属化合物の形で、水あるいは有機溶剤に溶解した溶液を上記基材に塗布し焼成する方法、あるいは高温反応室内に上記基材をセットし、該室内に上記溶液をスプレーする方法等によって製造される。
上記有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類、あるいはエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、あるいは酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等の酢酸エステル類、あるいはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、あるいはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、あるいはピリジン、アニリンなどが使用される。上記有機溶剤は、単独で使用されてもよく、あるいは二種類以上を混合して、あるいは単独または二種類以上を水と混合して使用されてもよい。
特にアルコール類、エーテル類、ケトン類等の含酸素溶剤は上記金属化合物、なかでも金属塩化物に対して良好な溶剤性を示す。
【0012】
上記金属塩化物の溶液には、更に低原子価酸化物あるいは金属単体を生成して薄膜の抵抗を下げるために、弗化アンモニウム、弗化水素酸等の弗化物、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸などが添加されてもよい。
更に上記溶液には、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ホリビニルアルコール等の水溶性樹脂、あるいはポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂、あるいはアクリルゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブテンゴム、イソブテン−イソプレンゴム、アクリレート−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、アクリロニトリル−クロロプレンゴム、スチレン−クロロプレンゴム等の合成ゴムなどが増粘剤として添加されてもよい。増粘剤を添加することによって該溶液の塗布量を増やし、膜厚を増大させることが出来る。
【0013】
上記溶液を上記基材表面に塗布するには、スプレー塗装、ロールコーター塗装、ナイフコーター塗装、カーテンフロー塗装、デッピング塗装、シルクスクリーン印刷等の一般的な塗布方法が適用される。塗布後は所望なれば上記塗膜を常温または加熱して乾燥させた上で焼成を行なう。焼成は通常750〜1000℃、望ましくは780〜950℃の温度で行われる。
【0014】
上記焼成において、上記溶液に含まれていた金属化合物は酸化し、酸化スズと酸化アンチモンとを含む、あるいは更に酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀から選ばれた一種または二種以上の金属酸化物を含む薄膜を形成する。また高温反応室内に基材をセットして、該室内に上記溶液をスプレーする方法では、該室内の温度を通常750〜1000℃、望ましくは780〜950℃に調節する。この場合該室内にスプレーした溶液に含まれる金属化合物は、金属酸化物となって基材表面に沈積する。
【0015】
このようにして基材上に形成された薄膜は通常直流または交流で3〜380ボルトの広範囲の電圧をかければ、速やかに昇温し、最高温度は900℃程度になり、高い熱転換率を示す。そして長時間連続的あるいは断続的な通電によっても定常時の抵抗値は殆んど変化せず安定であり、また電力消費量も従来のものより少ない。
前記したように、本発明の面状発熱体は輻射(放射)伝熱が主体であり、他の加熱手段(熱伝導、対流)は考慮しなくてもよい。
前記したように、特に2.5〜15μmの帯域は、あらゆる生物、有機物の固有振動波長が集中しているため、高い放射率(通常85%以上)を確保することが望ましい。
【0016】
上記薄膜の抵抗値を調節するためには更にインジウム化合物あるいは上記弗化物、ヒドロキシカルボン酸等を添加する。インジウム化合物の場合はスズ化合物と共に焼成によりITOが生成され、薄膜の抵抗が高くなり、また弗化物はスズの抵抗を下げ、薄膜に低抵抗を与える。
【0017】
〔実施例1〕
二塩化スズ:三塩化アンチモン/70:30質量比の混合金属塩化物の40質量%水溶液を調製した。
145mm×225mm、厚さ4mmのSiC基板上に上記水溶液をスプレー塗布し、80℃で30分間加熱乾燥せしめ、その後850℃で30分間焼成して該基材表面に酸化スズと酸化アンチモンとからなる薄膜を形成し、面状発熱体を得た。
このようにして得られた面状発熱体の両端に銀ペーストを塗布し、その上から銅箔を被覆して電極を形成した。
図1は面状発熱体1の説明斜視図である。図において2は基板、3は基板2上に形成された発熱層である薄膜、4は該薄膜3の両端に形成された電極である。
本実施例の面状発熱体は、AC100V/300W定格であるが、PTC特性により、電源投入がコールドスタートの場合は、約20%大きな電力値から始まり、その後温度上昇に比例して指数関数的に下がり、定常状態になると定格の一定電力を保つ。実施例では、電源投入の3.5分後に表面温度は400℃、消費電力は300Wで落ち着く。これが本発熱体の特徴であるPTC(Positive Temperature Coefficient)特性である。
一方ニクロムヒーターでは、電源投入後の温度上昇が緩やかで、且つ消費電力も温度上昇に比例して上昇するNTC(Negative Temperature Coefficient)となり、複雑な温度制御が必要になる。
図2、図3、図4に本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)の昇温特性、消費電力特性、赤外線放射(分光放射出力)特性をそれぞれ示す。
【0018】
〔昇温特性〕
図2によれば通電後、本実施例の面状発熱体の表面温度は略4分で400℃に達し、以後平衡した。一方ニクロム線の場合には、表面温度は漸増し、平衡に達しなかった。
上記昇温テストを100回繰返したが、毎回のテストでも図2に示す時間−温度曲線は殆んど変化せず、100回繰返し後の薄膜の抵抗値の上昇もみられなかった。
上記面状発熱体に35℃において50g/Lの塩化ナトリウム溶液を24時間噴霧し、その後抵抗値を測定したが抵抗値に変化はなかった。
この面状発熱体の熱転換率は98%であり、節電作用が高いことが確認された。
【0019】
〔消費電力特性〕
図3によれば通電後、本発明の面状発熱体(実線)の消費電力比は漸減し、約5分で平衡に達するが、ニクロムヒータ(点線)の場合には、漸増し通電後6分でも平衡に達しない。
【0020】
〔赤外線放射(分光放射出力)特性〕
図4は、本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)および黒体炉(一点鎖線)の400℃における赤外線放射(分光放射出力)特性を示す。
図4に示すように、本実施例の面状発熱体の赤外線放射特性は、黒体炉と略同レベルにあるが、ニクロムヒータの場合はそれに比して格段に低い。
【0021】
〔実施例2〕
上記〔実施例1〕で使用した混合金属塩化物の40質量%水溶液(水溶液1とする)と、硝酸ストロンチウム:硝酸銅:硝酸銀/1:1:2質量比の水溶液(水溶液2とする)を調製した。上記水溶液中の混合金属硝酸塩の濃度は、16質量%に設定した。
基材として145mm×225mm、厚さ4mmのデビトロセラミックスを使用し、該基材を高温反応室内にセットする。該高温反応室内の雰囲気を酸素:窒素/85:15体積比の混合気体雰囲気とし、反応室内の温度を900℃に設定し、水溶液1と水溶液2とを100:10質量比の割合で上記高温反応室内にスプレーし、該基材表面に酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ストロンチウム、酸化銅および酸化銀とからなる薄膜を沈積形成した。
このようにして得られた面状発熱体の両端に銀ペーストを塗布し、その上から銅箔を被覆して電極を形成して図1に示す面状発熱体と同様な面状発熱体を作製した。
図5、図6、図7に本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)の昇温特性、消費電力特性、赤外線放射(分光放射出力)特性をそれぞれ示す。
【0022】
〔昇温特性〕
図5によれば通電後、面状発熱体の表面温度は略4分で400℃に達し、以後平衡した。
上記昇温テストを100回繰返したが、毎回のテストでも図5に示す時間−温度曲線は殆んど変化せず、100回繰返し後の薄膜の抵抗値の上昇もみられなかった。
上記面状発熱体に35℃において50g/Lの塩化ナトリウム溶液を24時間噴霧し、その後抵抗値を測定したが抵抗値に変化はなかった。
この面状発熱体の熱転換率は98%であり、節電作用が高いことが確認された。
【0023】
〔消費電力特性〕
図6によれば通電後、本発明の面状発熱体(実線)の消費電力比は漸減し、約5分で平衡に達するが、ニクロムヒータ(点線)の場合には、漸増し通電後6分でも平衡に達しない。
【0024】
〔赤外線放射(分光放射出力)特性〕
図7は、本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)および黒体炉(一点鎖線)の400℃における赤外線放射(分光放射出力)特性を示す。
図7に示すように、本実施例の面状発熱体の赤外線放射特性は、黒体炉と略同レベルにあるが、ニクロムヒータの場合はそれに比して格段に低い。
【0025】
〔実施例3〕
二塩化スズ:三塩化アンチモン:三塩化インジウム/65:35:5質量比の混合金属化合物の40質量%のイソプロパノール溶液100質量部に、更に増粘剤としてポリメチルメタクリレート15質量%を溶解した酢酸エチル溶液10質量部を添加した。
上記溶液を145mm×225mm、厚さ4mmのペタライト基板表面にシルクスクリーン印刷によって塗布し、1日室温に放置して乾燥せしめ、その後900℃、20分焼成して該基材表面に酸化スズと、酸化アンチモンと、酸化インジウムと若干のITOとからなる薄膜を形成した。
このようにして得られた面状発熱体の両端に実施例1,2と同様にして電極を形成した。
図8、図9、図10に本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)の昇温特性、消費電力特性、赤外線放射(分光放射出力)特性をそれぞれ示す。
【0026】
〔昇温特性〕
図8によれば通電後、面状発熱体の表面温度は略4分で400℃に達し、以後平衡した。
上記昇温テストを100回繰返したが、毎回のテストでも図8に示す時間−温度曲線は殆んど変化せず、100回繰返し後の薄膜の抵抗値の上昇もみられなかった。
上記面状発熱体に35℃において50g/Lの塩化ナトリウム溶液を24時間噴霧し、その後抵抗値を測定したが抵抗値に変化はなかった。
この面状発熱体の熱転換率は98%であり、節電作用が高いことが確認された。
【0027】
〔消費電力特性〕
図9によれば通電後、本発明の面状発熱体(実線)の消費電力比は漸減し、約5分で平衡に達するが、ニクロムヒータ(点線)の場合には、漸増し通電後6分でも平衡に達しない。
【0028】
〔赤外線放射(分光放射出力)特性〕
図10は、本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)および黒体炉(一点鎖線)の400℃における赤外線放射(分光放射出力)特性を示す。
図10に示すように、本実施例の面状発熱体の赤外線放射特性は、黒体炉と略同レベルにあるが、ニクロムヒータの場合はそれに比して格段に低い。
【0029】
〔実施例4〕
実施例2の水溶液1で100質量部に更に10質量%の弗化アンモニウム水溶液1質量部を追加して充分混合した。上記混合溶液を使用し、145mm×225mm、厚さ4mmのアルミナ基板を使用して実施例2と同様なプロセスによって面状発熱体を製造した。
図11、図12、図13に本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)の昇温特性、消費電力特性、赤外線放射(分光放射出力)特性をそれぞれ示す。
【0030】
〔昇温特性〕
図11によれば通電後、面状発熱体の表面温度は略4分で400℃に達し、以後平衡した。
上記昇温テストを100回繰返したが、毎回のテストでも図11に示す時間−温度曲線は殆んど変化せず、100回繰返し後の薄膜の抵抗値の上昇もみられなかった。
上記面状発熱体に35℃において50g/Lの塩化ナトリウム溶液を24時間噴霧し、その後抵抗値を測定したが抵抗値に変化はなかった。
この面状発熱体の熱転換率は85%であり、節電作用が高いことが確認された。
【0031】
〔消費電力特性〕
図12によれば通電後、本発明の面状発熱体(実線)の消費電力比は漸減し、約5分で平衡に達するが、ニクロムヒータ(点線)の場合には、漸増し通電後6分でも平衡に達しない。
【0032】
〔赤外線放射(分光放射出力)特性〕
図13は、本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)および黒体炉(一点鎖線)の400℃における赤外線放射(分光放射出力)特性を示す。
図13に示すように、本実施例の面状発熱体の赤外線放射特性は、黒体炉と略同レベルにあるが、ニクロムヒータの場合はそれに比して格段に低い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の面状発熱体の一実施例の斜視図。
【図2】実施例1における昇温特性グラフ。
【図3】実施例1における消費電力特性グラフ。
【図4】実施例1における赤外線放射(分光放射出力)特性グラフ。
【図5】実施例2における昇温特性グラフ。
【図6】実施例2における消費電力特性グラフ。
【図7】実施例2における赤外線放射(分光放射出力)特性グラフ。
【図8】実施例3における昇温特性グラフ。
【図9】実施例3における消費電力特性グラフ。
【図10】実施例3における赤外線放射(分光放射出力)特性グラフ。
【図11】実施例4における昇温特性グラフ。
【図12】実施例4における消費電力特性グラフ。
【図13】実施例4における赤外線放射(分光放射出力)特性グラフ。
【符号の説明】
【0034】
1 面状発熱体
2 基板
3 薄膜(発熱層)
4 電極
【技術分野】
【0001】
本発明は安定性に富む面状発熱体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基材上に酸化亜鉛または酸化スズの薄膜を形成した面状発熱体が提供されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−216936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記面状発熱体は安定性に乏しく、繰返し通電加熱によって抵抗値が次第に変動すると云う問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、酸化スズと酸化アンチモンとを含む薄膜を基材上に形成した面状発熱体、または酸化スズと、酸化アンチモンと、酸化ストロンチウム、酸化銅、および酸化銀から選ばれる一種または二種以上の酸化金属と、を含む薄膜を基材上に形成した面状発熱体を提供するものである。
上記該基材は、通常セラミック、ガラスあるいは陶磁器である。
【0006】
本発明にあっては、更に加熱により酸化物を与えるスズおよびアンチモンの金属化合物を含む溶液を基材に塗布した後、該基材を加熱し、該基材表面に酸化スズと酸化アンチモンとを含む薄膜を形成せしめる面状発熱体の製造方法、また加熱により酸化物を与えるスズとアンチモンの化合物と更にストロンチウム、銅、および銀の化合物から選ばれた一種または二種以上の金属化合物を含む溶液を塗布した基材を加熱し、該基材表面に酸化スズと酸化アンチモンとを含み、更に酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀から選ばれた一種または二種以上の酸化金属を含む薄膜を形成せしめる面状発熱体の製造方法が提供される。
上記加熱温度は、750〜1000℃に調節され、酸化スズと酸化アンチモンに加えて更に酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀から選ばれた一種または二種以上の酸化金属を含む場合は、250〜1000℃に調節されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の面状発熱体は安価に提供出来、しかも電力消費量は例えば従来のチタン酸バリウム塩の焼結体薄膜に比して35%以上もありかつ昇温速度が大であり、ニクロム線ヒーターに比べると約2倍の昇温速度となり、高い熱転換率を示す。更に特筆すべきは、本発明の面状発熱体は温度の上昇につれて抵抗値が上昇するPTC特性を有する。したがって所定温度に達するとそれ以上温度が上昇せず、略一定になるので、複雑かつ高価な温度制御素子を挿入する必要がなくなる。更に本発明の面状発熱体は、赤外線放射率が高いと云う特性を有する。
また長時間の通電あるいは繰返し通電でも定常状態における抵抗値は殆んど変化せず安定であって、更に耐水性、耐酸性等耐化学性にも優れ、良好な耐久性を有する。
本発明の面状発熱体は家庭用温水器、調理器、保温器、オーブン、ストーブ、電熱式アイロン等各種の加熱製品に適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を以下に詳細に説明する。
本発明の面状発熱体は、基材上に酸化スズと酸化アンチモン、更に所望なれば酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀から選ばれた一種または二種以上の酸化金属を含む薄膜を形成したものである。
上記酸化スズとしてはSnO、Sn3O4、SnO2のいずれもが含まれる。
上記酸化アンチモンとしては、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5のいずれもが含まれる。
上記酸化ストロンチウムは、SrOである。
上記酸化銅は、Cu2O、CuOのいずれもが含まれる。
上記酸化銀は、Ag2O、Ag2O3、AgOのいずれもが含まれる。
上記酸化スズと上記酸化アンチモンとの比率は、所定の面状発熱体の性質によって種々に設定されてよいが、通常は40:60〜80:20質量比の範囲で安定性に富む面状発熱体が得られる。
上記酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀は、微量要素であり、通常は0.01〜0.1質量%の範囲に設定される。
【0009】
上記酸化スズ以外に所望なれば酸化ビスマス、酸化鉛、酸化ガリウム、酸化インジウム、ITO等の他の金属酸化物が少量含有されてもよい。上記金属酸化物としては種々の原子価の酸化物が使用されることが出来る。
更に本発明の薄膜にはスズ、アンチモン、ストロンチウム、銅、銀、ビスマス、鉛、ガリウム、インジウム等の金属単体が含まれてもよい。
一般的に高原子価酸化物は高抵抗値を与え、低原子価酸化物および金属単体は低抵抗値を与える。
【0010】
本発明で基材として使用される材料は一般に、雲母、セラミックス、ガラス、デビトロセラミックス、陶磁器である。上記セラミックスとしてはアルミナ、ジルコニア、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ペタライト等が例示される。
なお上記本発明において使用される基材は、赤外線放射率があらゆる生物、有機物の固有振動波長が集中している2.5〜15μmの帯域で85%以上であることが望ましい。
本発明で基材として使用される雲母、セラミックス、ガラス、デビトロセラミックス、陶器等は、一般に高い赤外線放射率であるが、必要に応じてCoO、MnO2、Fe2O3、CuO等の赤外線放射材料を混合した全帯域赤外線放射塗料(例えばオキツモ(株)製B−600)を放射面に塗布するか、該基材に前記CoO、MnO2、Fe2O3、CuO等の赤外線放射材料を添加して全帯域放射基材としてもよい。
【0011】
本発明の面状発熱体は、スズおよびアンチモンと、所望なれば上記ストロンチウム、銅、銀、あるいは更に所望なれば上記他の金属とを、塩化物、硫化物、水酸化物、酸化水酸化物、炭酸水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、シュウ酸塩、アルコシド等の加熱によって金属酸化物を与える金属化合物の形で、水あるいは有機溶剤に溶解した溶液を上記基材に塗布し焼成する方法、あるいは高温反応室内に上記基材をセットし、該室内に上記溶液をスプレーする方法等によって製造される。
上記有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類、あるいはエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、あるいは酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等の酢酸エステル類、あるいはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、あるいはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、あるいはピリジン、アニリンなどが使用される。上記有機溶剤は、単独で使用されてもよく、あるいは二種類以上を混合して、あるいは単独または二種類以上を水と混合して使用されてもよい。
特にアルコール類、エーテル類、ケトン類等の含酸素溶剤は上記金属化合物、なかでも金属塩化物に対して良好な溶剤性を示す。
【0012】
上記金属塩化物の溶液には、更に低原子価酸化物あるいは金属単体を生成して薄膜の抵抗を下げるために、弗化アンモニウム、弗化水素酸等の弗化物、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸などが添加されてもよい。
更に上記溶液には、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ホリビニルアルコール等の水溶性樹脂、あるいはポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂、あるいはアクリルゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブテンゴム、イソブテン−イソプレンゴム、アクリレート−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、アクリロニトリル−クロロプレンゴム、スチレン−クロロプレンゴム等の合成ゴムなどが増粘剤として添加されてもよい。増粘剤を添加することによって該溶液の塗布量を増やし、膜厚を増大させることが出来る。
【0013】
上記溶液を上記基材表面に塗布するには、スプレー塗装、ロールコーター塗装、ナイフコーター塗装、カーテンフロー塗装、デッピング塗装、シルクスクリーン印刷等の一般的な塗布方法が適用される。塗布後は所望なれば上記塗膜を常温または加熱して乾燥させた上で焼成を行なう。焼成は通常750〜1000℃、望ましくは780〜950℃の温度で行われる。
【0014】
上記焼成において、上記溶液に含まれていた金属化合物は酸化し、酸化スズと酸化アンチモンとを含む、あるいは更に酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀から選ばれた一種または二種以上の金属酸化物を含む薄膜を形成する。また高温反応室内に基材をセットして、該室内に上記溶液をスプレーする方法では、該室内の温度を通常750〜1000℃、望ましくは780〜950℃に調節する。この場合該室内にスプレーした溶液に含まれる金属化合物は、金属酸化物となって基材表面に沈積する。
【0015】
このようにして基材上に形成された薄膜は通常直流または交流で3〜380ボルトの広範囲の電圧をかければ、速やかに昇温し、最高温度は900℃程度になり、高い熱転換率を示す。そして長時間連続的あるいは断続的な通電によっても定常時の抵抗値は殆んど変化せず安定であり、また電力消費量も従来のものより少ない。
前記したように、本発明の面状発熱体は輻射(放射)伝熱が主体であり、他の加熱手段(熱伝導、対流)は考慮しなくてもよい。
前記したように、特に2.5〜15μmの帯域は、あらゆる生物、有機物の固有振動波長が集中しているため、高い放射率(通常85%以上)を確保することが望ましい。
【0016】
上記薄膜の抵抗値を調節するためには更にインジウム化合物あるいは上記弗化物、ヒドロキシカルボン酸等を添加する。インジウム化合物の場合はスズ化合物と共に焼成によりITOが生成され、薄膜の抵抗が高くなり、また弗化物はスズの抵抗を下げ、薄膜に低抵抗を与える。
【0017】
〔実施例1〕
二塩化スズ:三塩化アンチモン/70:30質量比の混合金属塩化物の40質量%水溶液を調製した。
145mm×225mm、厚さ4mmのSiC基板上に上記水溶液をスプレー塗布し、80℃で30分間加熱乾燥せしめ、その後850℃で30分間焼成して該基材表面に酸化スズと酸化アンチモンとからなる薄膜を形成し、面状発熱体を得た。
このようにして得られた面状発熱体の両端に銀ペーストを塗布し、その上から銅箔を被覆して電極を形成した。
図1は面状発熱体1の説明斜視図である。図において2は基板、3は基板2上に形成された発熱層である薄膜、4は該薄膜3の両端に形成された電極である。
本実施例の面状発熱体は、AC100V/300W定格であるが、PTC特性により、電源投入がコールドスタートの場合は、約20%大きな電力値から始まり、その後温度上昇に比例して指数関数的に下がり、定常状態になると定格の一定電力を保つ。実施例では、電源投入の3.5分後に表面温度は400℃、消費電力は300Wで落ち着く。これが本発熱体の特徴であるPTC(Positive Temperature Coefficient)特性である。
一方ニクロムヒーターでは、電源投入後の温度上昇が緩やかで、且つ消費電力も温度上昇に比例して上昇するNTC(Negative Temperature Coefficient)となり、複雑な温度制御が必要になる。
図2、図3、図4に本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)の昇温特性、消費電力特性、赤外線放射(分光放射出力)特性をそれぞれ示す。
【0018】
〔昇温特性〕
図2によれば通電後、本実施例の面状発熱体の表面温度は略4分で400℃に達し、以後平衡した。一方ニクロム線の場合には、表面温度は漸増し、平衡に達しなかった。
上記昇温テストを100回繰返したが、毎回のテストでも図2に示す時間−温度曲線は殆んど変化せず、100回繰返し後の薄膜の抵抗値の上昇もみられなかった。
上記面状発熱体に35℃において50g/Lの塩化ナトリウム溶液を24時間噴霧し、その後抵抗値を測定したが抵抗値に変化はなかった。
この面状発熱体の熱転換率は98%であり、節電作用が高いことが確認された。
【0019】
〔消費電力特性〕
図3によれば通電後、本発明の面状発熱体(実線)の消費電力比は漸減し、約5分で平衡に達するが、ニクロムヒータ(点線)の場合には、漸増し通電後6分でも平衡に達しない。
【0020】
〔赤外線放射(分光放射出力)特性〕
図4は、本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)および黒体炉(一点鎖線)の400℃における赤外線放射(分光放射出力)特性を示す。
図4に示すように、本実施例の面状発熱体の赤外線放射特性は、黒体炉と略同レベルにあるが、ニクロムヒータの場合はそれに比して格段に低い。
【0021】
〔実施例2〕
上記〔実施例1〕で使用した混合金属塩化物の40質量%水溶液(水溶液1とする)と、硝酸ストロンチウム:硝酸銅:硝酸銀/1:1:2質量比の水溶液(水溶液2とする)を調製した。上記水溶液中の混合金属硝酸塩の濃度は、16質量%に設定した。
基材として145mm×225mm、厚さ4mmのデビトロセラミックスを使用し、該基材を高温反応室内にセットする。該高温反応室内の雰囲気を酸素:窒素/85:15体積比の混合気体雰囲気とし、反応室内の温度を900℃に設定し、水溶液1と水溶液2とを100:10質量比の割合で上記高温反応室内にスプレーし、該基材表面に酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ストロンチウム、酸化銅および酸化銀とからなる薄膜を沈積形成した。
このようにして得られた面状発熱体の両端に銀ペーストを塗布し、その上から銅箔を被覆して電極を形成して図1に示す面状発熱体と同様な面状発熱体を作製した。
図5、図6、図7に本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)の昇温特性、消費電力特性、赤外線放射(分光放射出力)特性をそれぞれ示す。
【0022】
〔昇温特性〕
図5によれば通電後、面状発熱体の表面温度は略4分で400℃に達し、以後平衡した。
上記昇温テストを100回繰返したが、毎回のテストでも図5に示す時間−温度曲線は殆んど変化せず、100回繰返し後の薄膜の抵抗値の上昇もみられなかった。
上記面状発熱体に35℃において50g/Lの塩化ナトリウム溶液を24時間噴霧し、その後抵抗値を測定したが抵抗値に変化はなかった。
この面状発熱体の熱転換率は98%であり、節電作用が高いことが確認された。
【0023】
〔消費電力特性〕
図6によれば通電後、本発明の面状発熱体(実線)の消費電力比は漸減し、約5分で平衡に達するが、ニクロムヒータ(点線)の場合には、漸増し通電後6分でも平衡に達しない。
【0024】
〔赤外線放射(分光放射出力)特性〕
図7は、本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)および黒体炉(一点鎖線)の400℃における赤外線放射(分光放射出力)特性を示す。
図7に示すように、本実施例の面状発熱体の赤外線放射特性は、黒体炉と略同レベルにあるが、ニクロムヒータの場合はそれに比して格段に低い。
【0025】
〔実施例3〕
二塩化スズ:三塩化アンチモン:三塩化インジウム/65:35:5質量比の混合金属化合物の40質量%のイソプロパノール溶液100質量部に、更に増粘剤としてポリメチルメタクリレート15質量%を溶解した酢酸エチル溶液10質量部を添加した。
上記溶液を145mm×225mm、厚さ4mmのペタライト基板表面にシルクスクリーン印刷によって塗布し、1日室温に放置して乾燥せしめ、その後900℃、20分焼成して該基材表面に酸化スズと、酸化アンチモンと、酸化インジウムと若干のITOとからなる薄膜を形成した。
このようにして得られた面状発熱体の両端に実施例1,2と同様にして電極を形成した。
図8、図9、図10に本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)の昇温特性、消費電力特性、赤外線放射(分光放射出力)特性をそれぞれ示す。
【0026】
〔昇温特性〕
図8によれば通電後、面状発熱体の表面温度は略4分で400℃に達し、以後平衡した。
上記昇温テストを100回繰返したが、毎回のテストでも図8に示す時間−温度曲線は殆んど変化せず、100回繰返し後の薄膜の抵抗値の上昇もみられなかった。
上記面状発熱体に35℃において50g/Lの塩化ナトリウム溶液を24時間噴霧し、その後抵抗値を測定したが抵抗値に変化はなかった。
この面状発熱体の熱転換率は98%であり、節電作用が高いことが確認された。
【0027】
〔消費電力特性〕
図9によれば通電後、本発明の面状発熱体(実線)の消費電力比は漸減し、約5分で平衡に達するが、ニクロムヒータ(点線)の場合には、漸増し通電後6分でも平衡に達しない。
【0028】
〔赤外線放射(分光放射出力)特性〕
図10は、本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)および黒体炉(一点鎖線)の400℃における赤外線放射(分光放射出力)特性を示す。
図10に示すように、本実施例の面状発熱体の赤外線放射特性は、黒体炉と略同レベルにあるが、ニクロムヒータの場合はそれに比して格段に低い。
【0029】
〔実施例4〕
実施例2の水溶液1で100質量部に更に10質量%の弗化アンモニウム水溶液1質量部を追加して充分混合した。上記混合溶液を使用し、145mm×225mm、厚さ4mmのアルミナ基板を使用して実施例2と同様なプロセスによって面状発熱体を製造した。
図11、図12、図13に本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)の昇温特性、消費電力特性、赤外線放射(分光放射出力)特性をそれぞれ示す。
【0030】
〔昇温特性〕
図11によれば通電後、面状発熱体の表面温度は略4分で400℃に達し、以後平衡した。
上記昇温テストを100回繰返したが、毎回のテストでも図11に示す時間−温度曲線は殆んど変化せず、100回繰返し後の薄膜の抵抗値の上昇もみられなかった。
上記面状発熱体に35℃において50g/Lの塩化ナトリウム溶液を24時間噴霧し、その後抵抗値を測定したが抵抗値に変化はなかった。
この面状発熱体の熱転換率は85%であり、節電作用が高いことが確認された。
【0031】
〔消費電力特性〕
図12によれば通電後、本発明の面状発熱体(実線)の消費電力比は漸減し、約5分で平衡に達するが、ニクロムヒータ(点線)の場合には、漸増し通電後6分でも平衡に達しない。
【0032】
〔赤外線放射(分光放射出力)特性〕
図13は、本実施例の面状発熱体(実線)とニクロムヒータ(点線)および黒体炉(一点鎖線)の400℃における赤外線放射(分光放射出力)特性を示す。
図13に示すように、本実施例の面状発熱体の赤外線放射特性は、黒体炉と略同レベルにあるが、ニクロムヒータの場合はそれに比して格段に低い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の面状発熱体の一実施例の斜視図。
【図2】実施例1における昇温特性グラフ。
【図3】実施例1における消費電力特性グラフ。
【図4】実施例1における赤外線放射(分光放射出力)特性グラフ。
【図5】実施例2における昇温特性グラフ。
【図6】実施例2における消費電力特性グラフ。
【図7】実施例2における赤外線放射(分光放射出力)特性グラフ。
【図8】実施例3における昇温特性グラフ。
【図9】実施例3における消費電力特性グラフ。
【図10】実施例3における赤外線放射(分光放射出力)特性グラフ。
【図11】実施例4における昇温特性グラフ。
【図12】実施例4における消費電力特性グラフ。
【図13】実施例4における赤外線放射(分光放射出力)特性グラフ。
【符号の説明】
【0034】
1 面状発熱体
2 基板
3 薄膜(発熱層)
4 電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化スズと酸化アンチモンとを含む薄膜を基材上に形成したことを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
酸化スズと、酸化アンチモンと、酸化ストロンチウム、酸化銅、および酸化銀から選ばれる一種または二種以上の酸化金属と、を含む薄膜を基材上に形成したことを特徴とする面状発熱体。
【請求項3】
該基材は雲母、セラミック、ガラス、あるいは陶磁器からなる請求項1または請求項2に記載の面状発熱体。
【請求項4】
加熱により酸化物を与えるスズおよびアンチモンの金属化合物を含む溶液を基材に塗布した後、該基材を加熱し、該基材表面に酸化スズと酸化アンチモンとを含む薄膜を形成せしめることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項5】
該加熱温度は750〜1000℃に調節されている請求項4に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項6】
加熱により酸化物を与えるスズとアンチモンの化合物に更にストロンチウム、銅、および銀の化合物から選ばれた一種または二種以上の金属化合物を含む溶液を塗布した基材を加熱し、該基材表面に酸化スズと酸化アンチモンとを含み、更に酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀から選ばれた一種または二種以上の酸化金属を含む薄膜を形成せしめることを特徴とする請求項2または3に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項7】
該加熱温度は250〜1000℃に調節されている請求項6に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項1】
酸化スズと酸化アンチモンとを含む薄膜を基材上に形成したことを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
酸化スズと、酸化アンチモンと、酸化ストロンチウム、酸化銅、および酸化銀から選ばれる一種または二種以上の酸化金属と、を含む薄膜を基材上に形成したことを特徴とする面状発熱体。
【請求項3】
該基材は雲母、セラミック、ガラス、あるいは陶磁器からなる請求項1または請求項2に記載の面状発熱体。
【請求項4】
加熱により酸化物を与えるスズおよびアンチモンの金属化合物を含む溶液を基材に塗布した後、該基材を加熱し、該基材表面に酸化スズと酸化アンチモンとを含む薄膜を形成せしめることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項5】
該加熱温度は750〜1000℃に調節されている請求項4に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項6】
加熱により酸化物を与えるスズとアンチモンの化合物に更にストロンチウム、銅、および銀の化合物から選ばれた一種または二種以上の金属化合物を含む溶液を塗布した基材を加熱し、該基材表面に酸化スズと酸化アンチモンとを含み、更に酸化ストロンチウム、酸化銅、酸化銀から選ばれた一種または二種以上の酸化金属を含む薄膜を形成せしめることを特徴とする請求項2または3に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項7】
該加熱温度は250〜1000℃に調節されている請求項6に記載の面状発熱体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−21028(P2010−21028A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180613(P2008−180613)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(500171604)香港青柳有限公司 (2)
【住所又は居所原語表記】Unit A&C,5/F.,WAYLEE INDUSTRIAL CENTER,No.30−38 TSUEN KING CIRCUIT,TSUEN WAN,N.T.HONGKONG
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(500171604)香港青柳有限公司 (2)
【住所又は居所原語表記】Unit A&C,5/F.,WAYLEE INDUSTRIAL CENTER,No.30−38 TSUEN KING CIRCUIT,TSUEN WAN,N.T.HONGKONG
【Fターム(参考)】
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