面発光レーザ素子、光走査装置及び画像形成装置
【課題】素子抵抗の上昇を招くことなく、発光効率を向上させることができる面発光レーザ素子を提供する。
【解決手段】 発光部は基板、バッファ層、下部半導体DBR、共振器構造体、上部半導体DBR、上部電極、下部電極などを有している。上部半導体DBRは、第1の上部半導体DBR、及び第2の上部半導体DBRを有している。第1の上部半導体DBRは、p−Al0.5In0.5Pからなる低屈折率層を含み、該低屈折率層は、第2の上部半導体DBRにおけるp−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層と接している。第1の上部半導体DBRの低屈折率層(p−Al0.5In0.5P)と第2の上部半導体DBRにおける第1の上部半導体DBRに接している低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)は、屈折率が同じである。
【解決手段】 発光部は基板、バッファ層、下部半導体DBR、共振器構造体、上部半導体DBR、上部電極、下部電極などを有している。上部半導体DBRは、第1の上部半導体DBR、及び第2の上部半導体DBRを有している。第1の上部半導体DBRは、p−Al0.5In0.5Pからなる低屈折率層を含み、該低屈折率層は、第2の上部半導体DBRにおけるp−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層と接している。第1の上部半導体DBRの低屈折率層(p−Al0.5In0.5P)と第2の上部半導体DBRにおける第1の上部半導体DBRに接している低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)は、屈折率が同じである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザ素子、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、基板に垂直な方向にレーザ発振を行う面発光レーザ素子、該面発光レーザ素子を有する光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光レーザ素子(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)は、基板に垂直な方向にレーザ発振を行う半導体レーザ素子であり、基板に平行な方向にレーザ発振を行う端面発光型の半導体レーザ素子に比べて、(1)消費電力が少ない、(2)モード安定性に優れる、(3)高集積化が容易であることから、通信分野や画像記録分野への応用が期待され、盛んに研究開発が行われている。
【0003】
半導体レーザの発振波長は、活性層の材料のバンドギャップによって決定される。発振波長が可視領域〜近赤外領域においては、AlGaAs、(Al)GaInP、(Al)GaInPAs系材料等が研究されている。
【0004】
このうち、AlGaAs系材料については、特に古くから多く研究報告がなされている。多くの面発光レーザ素子においては、高い効率の電流注入、及びメサ側面での無効電流の影響の低減のため、活性層近傍に何らかの電流狭窄手段を設けている。その手法としては、AlAs層を高温水蒸気中で酸化することによって得られるAlOxによる電流狭窄を用いる手法が広く用いられている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0005】
上記電流狭窄を用いる手法では、電流経路が制限されているため、素子抵抗が高くなりやすい。また、素子抵抗を低減するため半導体層中に添加されるドーパントは、レーザ光の吸収源となりうるため、必要最小限且つ効果的に添加する必要がある。
【0006】
特許文献1には、DBR反射膜を構成する多層GaAs/AlAs膜の不純物濃度を均一に上げる代りに、光共振器内に発生する活性層からの出力光の定在波の電界強度が最小になる点のみにおいて選択的に上げる面発光半導体レーザが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
面発光レーザ素子における反射鏡の材料としては、低屈折率層と高屈折率層の屈折率差を比較的大きく設定することが可能で、反射鏡全体の膜厚を薄くすることが可能なAlGaAs系材料が広く用いられている。
【0008】
活性層の材料としては、AlGaAs系材料を用いることも可能ではあるが、AlGaAs系材料は、設定波長によって一義的に組成が決定され、高利得化のために格子歪みを大きく設定することが不可能であるとともに、Alを含む材料であることから高い信頼性が要求されるデバイスに対し適用するのは望ましくない。
【0009】
これに対し、(Al)GaInPAs系材料は、2種類以上のIII族元素・V族元素によって構成されているため、波長と格子歪みを独立して設定することが可能である。そこで、格子歪み量を大きく設定しAlを含まない組成も設定可能であることから、高利得化・高信頼性についても比較的容易に達成可能である。
【0010】
AlGaAs系材料よりなる反射鏡と、(Al)GaInPAs系材料よりなる活性層を組み合わせた面発光レーザ素子の例が、非特許文献2及び非特許文献3に記載されている。
【0011】
しかしながら、AlGaAs系材料からなる反射鏡と(Al)GaInPAs系材料からなる活性層を組み合わせた構造体を、MOCVD法を用いて結晶成長させる場合、該2つの材料系の界面(以下では、「P/As界面」という)において、成長雰囲気をAsH3+PH3の雰囲気からAsH3の雰囲気へ、あるいはAsH3の雰囲気からAsH3+PH3の雰囲気へ切り替えなければならないが、その際にP/As界面に結晶欠陥が生じやすい。
【0012】
例えば、AlGaInPの上にAlGaAsを成長させる場合は、AlGaInP層の成長終了時点でPH3の雰囲気となっているが、AlGaAs層の成長開始以前(または同時)に成長雰囲気をAsH3に切り替える必要がある。
【0013】
その際、AlGaInP層の表面のPが脱離し、成長後の膜中に格子欠陥として残留する。そのような格子欠陥を含む層を用いて面発光レーザ素子を作成すると、格子欠陥もレーザ光の吸収源として機能するため、発振閾値の上昇や動作電流の増加など様々な弊害を引き起こす。
【0014】
共振器構造体の光学的厚さが発振波長の整数倍である場合に、上記弊害を回避するためには、特許文献1と同様の発想で、電界強度分布が最小となる位置にP/As界面を配置すれば良い。
【0015】
しかしながら、低屈折率層を(Al)GaInPAs系材料とし、高屈折率層をAlGaAs系材料とする場合、両者の価電子帯のエネルギー差が大きく(図17参照)、素子抵抗が大幅に上昇する。
【0016】
(Al)GaInPAs系材料、及びAlGaAs系材料におけるAl組成を、素子抵抗が低減するように調整すると、(Al)GaInPAs系材料におけるAl組成がAlGaAs系材料におけるAl組成よりも大きくなる。このとき、必然的に高屈折率層が(Al)GaInPAs系材料となり、低屈折率層がAlGaAs系材料とならざるを得ない。その場合、電界強度分布が最大となる位置にP/As界面が設定されるため、面発光レーザ素子の発光効率は著しく低下する。
【0017】
一方、共振器構造体の光学的厚さが発振波長の1/2の整数倍で、且つ共振器構造体の材料が(Al)GaInPAs系材料であり、反射鏡の材料がAlGaAs系材料である場合、電界強度分布が最小となる位置にP/As界面を設定することができる。このとき、共振器構造体は低屈折率層であり、反射鏡における共振器構造体に接する層は高屈折率層となる。その場合、図17に示されるように、価電子帯のエネルギー差が大きくなり、素子抵抗が大幅に上昇する。
【0018】
素子抵抗を低減するため、共振器構造体上に共振器構造体よりも屈折率の高い(Al)GaInPAs系材料を積層すると、該(Al)GaInPAs層は高屈折率層として機能し、必然的に電界強度が最大となる位置にP/As界面が設定されるため、面発光レーザ素子の発光効率は著しく低下する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、第1の観点からすると、基板上に下部反射鏡、活性層を含む共振器構造体、及び上部反射鏡が積層されているメサ構造の発光部を有する面発光レーザ素子において、前記上部反射鏡と前記共振器構造体との間に積層された(Al1−aGaa)1−bInbPcAs1−c(0≦a≦1、b≠0、c≠0)からなる半導体層を含み、前記上部反射鏡は、前記半導体層と接し、該半導体層と同じ屈折率を有する、Al1−dGadAs(0≦d≦1)からなる低屈折率層を含む面発光レーザ素子である。
【0020】
本発明は、第2の観点からすると、光によって被走査面を走査する光走査装置であって、本発明の面発光レーザ素子を有する光源と、前記光源からの光を偏向する光偏向器と、前記光偏向手段で偏向された光を前記被走査面上に集光する走査光学系と、を備える光走査装置である。
【0021】
本発明は、第3の観点からすると、少なくとも1つの像担持体と、前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報に応じて変調された光を走査する本発明の光走査装置と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の面発光レーザ素子によれば、素子抵抗の上昇を招くことなく、発光効率を向上させることができる。
【0023】
本発明の光走査装置によれば、被走査面の光走査を精度良く行うことができる。
【0024】
本発明の画像形成装置によれば、高品質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置を説明するための図(その1)である。
【図3】図1における光走査装置を説明するための図(その2)である。
【図4】図1における光走査装置を説明するための図(その3)である。
【図5】図1における光走査装置を説明するための図(その4)である。
【図6】面発光レーザアレイを説明するための図である。
【図7】面発光レーザアレイにおける複数の発光部の配列状態を説明するための図である。
【図8】各発光部の平面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は、それぞれ面発光レーザアレイの基板を説明するための図である。
【図11】AlxGa1−xAs及び(AlxGa1−x)0.5In0.5Pにおけるxの値と屈折率との関係を説明するための図である。
【図12】本実施形態におけるP/As界面を説明するための図である。
【図13】Al0.9Ga0.1Asと(Al0.9Ga0.1)0.5In0.5Pの価電子帯エネルギーの差を説明するための図である。
【図14】Al0.3Ga0.7Asと(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの価電子帯エネルギーの差を説明するための図である。
【図15】比較例1におけるP/As界面を説明するための図である。
【図16】Al0.9Ga0.1Asと(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pの価電子帯エネルギーの差を説明するための図である。
【図17】比較例2におけるP/As界面を説明するための図である。
【図18】AlxGa1−xAsと(AlxGa1−x)0.5In0.5Pの価電子帯エネルギーを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図17に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
【0027】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0028】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向に沿った方向をX軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をZ軸方向として説明する。
【0029】
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0030】
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、通信制御装置2080を介して受信した上位装置からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)を光走査装置2010に通知する。
【0031】
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
【0032】
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
【0033】
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
【0034】
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
【0035】
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転する。
【0036】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
【0037】
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報に基づいて色毎に変調された光束で、対応する帯電された感光体ドラムの表面を走査する。これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像装置の方向に移動する。なお、光走査装置の構成については後述する。
【0038】
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
【0039】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0040】
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。該レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出す。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。カラー画像が転写された記録紙は、定着装置2050に送られる。
【0041】
定着装置2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。トナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
【0042】
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
【0043】
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
【0044】
光走査装置2010は、一例として図2〜図5に示されるように、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、4つのシリンドリカルレンズ(2204a、2204b、2204c、2204d)、光偏向器2104、4つの走査レンズ(2105a、2105b、2105c、2105d)、6枚の折り返しミラー(2106a、2106b、2106c、2106d、2108b、2108c)、及び不図示の走査制御装置などを備えている。
【0045】
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0046】
光源2200aとカップリングレンズ2201aと開口板2202aとシリンドリカルレンズ2204aと走査レンズ2105aと折り返しミラー2106aは、感光体ドラム2030aに潜像を形成するための光学部材である。
【0047】
光源2200bとカップリングレンズ2201bと開口板2202bとシリンドリカルレンズ2204bと走査レンズ2105bと折り返しミラー2106bと折り返しミラー2108bは、感光体ドラム2030bに潜像を形成するための光学部材である。
【0048】
光源2200cとカップリングレンズ2201cと開口板2202cとシリンドリカルレンズ2204cと走査レンズ2105cと折り返しミラー2106cと折り返しミラー2108cは、感光体ドラム2030cに潜像を形成するための光学部材である。
【0049】
光源2200dとカップリングレンズ2201dと開口板2202dとシリンドリカルレンズ2204dと走査レンズ2105dと折り返しミラー2106dは、感光体ドラム2030dに潜像を形成するための光学部材である。
【0050】
各カップリングレンズは、対応する光源から射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
【0051】
各開口板は、開口部を有し、対応するカップリングレンズを介した光束を整形する。
【0052】
各シリンドリカルレンズは、対応する開口板の開口部を通過した光束を、光偏向器2104の偏向反射面近傍にY軸方向に関して結像する。
【0053】
光偏向器2104は、2段構造のポリゴンミラーを有している。各ポリゴンミラーは、4面の偏向反射面を有している。そして、1段目(下段)のポリゴンミラーではシリンドリカルレンズ2204aからの光束及びシリンドリカルレンズ2204dからの光束がそれぞれ偏向され、2段目(上段)のポリゴンミラーではシリンドリカルレンズ2204bからの光束及びシリンドリカルレンズ2204cからの光束がそれぞれ偏向されるように配置されている。なお、1段目のポリゴンミラー及び2段目のポリゴンミラーは、互いに位相が略45°ずれて回転し、書き込み走査は1段目と2段目とで交互に行われる。
【0054】
光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204aからの光束は、走査レンズ2105a、及び折り返しミラー2106aを介して、感光体ドラム2030aに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030aの長手方向に移動する。
【0055】
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204bからの光束は、走査レンズ2105b、及び2枚の折り返しミラー(2106b、2108b)を介して、感光体ドラム2030bに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030bの長手方向に移動する。
【0056】
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204cからの光束は、走査レンズ2105c、及び2枚の折り返しミラー(2106c、2108c)を介して、感光体ドラム2030cに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030cの長手方向に移動する。
【0057】
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204dからの光束は、走査レンズ2105d、及び折り返しミラー2106dを介して、感光体ドラム2030dに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030dの長手方向に移動する。
【0058】
各感光体ドラムにおける光スポットの移動方向が、「主走査方向」であり、感光体ドラムの回転方向が、「副走査方向」である。
【0059】
光偏向器2104と各感光体ドラムとの間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。
【0060】
各光源は、一例として図6に示されるように、32個の発光部が2次元配列されている面発光レーザアレイ100を有している。ここでは、レーザ発振方向をz軸方向とし、z軸方向に直交する面内における互いに直交する2つの方向をx軸方向及びy軸方向とする。そして、x軸方向が主走査対応方向となり、y軸方向が副走査対応方向となるように設定されている。
【0061】
32個の発光部は、図7に示されるように、全ての発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しく(図7では「d1」)なるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。
【0062】
ここでは、各発光部は、発振波長が780nm帯の垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。
【0063】
各発光部は、図8及び図9に示されるように、基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109、上部電極113、下部電極114、及び誘電体層116などを有している。なお、図8は、1つの発光部の平面図であり、図9は、図8のA−A断面図である。
【0064】
基板101は、表面が鏡面研磨面であり、図10(A)に示されるように、鏡面研磨面(主面)の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって15度(θ=15度)傾斜したn−GaAs単結晶基板である。すなわち、基板101はいわゆる傾斜基板である。ここでは、図10(B)に示されるように、結晶方位[0 −1 1]方向が+x方向、結晶方位[0 1 −1]方向が−x方向となるように配置されている。
【0065】
図9に戻り、バッファ層102は、基板101の+z側の面上に積層され、n−GaAsからなる層である。
【0066】
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+z側に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40.5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
【0067】
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0068】
活性層105は、下部スペーサ層104の+z側に積層され、Ga0.8In0.2As0.8P0.2/Ga0.5In0.5Pの3重量子井戸構造(TQW構造)の活性層である。量子井戸層は780nm帯の発振波長を得るために、GaInP混晶にAsを導入したものであり0.7%の圧縮歪みを有する。バリア層は、0.6%の引張歪みを導入することによってバンドギャップを大きくし、高いキャリア閉じ込めを実現するとともに、量子井戸層の歪み補償構造を形成している。
【0069】
上部スペーサ層106は、活性層105の+z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0070】
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
【0071】
上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、p−Al0.5In0.5Pからなる半導体層H(図9では、図示省略)を1層有している。この半導体層Hは、屈折率が3.074で、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0072】
上部半導体DBR107は、半導体層Hの+z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを29.5ペア有している。
【0073】
上部半導体DBR107における半導体層Hに接している層は、低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)である。該低屈折率層は、屈折率が3.074で、2λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0074】
すなわち、半導体層Hと、上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)は、屈折率が同じであり、該2つの層は光学的には1つの層とみなすことができる。
【0075】
上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層を除く各屈折率層はいずれも、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0076】
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層が厚さ30nmで挿入されている。
【0077】
この被選択酸化層の挿入位置は、電界の定在波分布において、活性層105から3番目となる節に対応する位置である。
【0078】
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+z側に積層され、p−GaAsからなる。
【0079】
なお、このように基板101上に複数の層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
【0080】
次に、面発光レーザアレイ100の製造方法について説明する。
【0081】
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する。
【0082】
ここでは、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、ジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
【0083】
(2)積層体の表面に所望のメサ形状に対応する1辺が25μmの正方形状のレジストパターンを形成する。
【0084】
(3)誘導結合型(ICP)ドライエッチング法で、上記レジストパターンをフォトマスクとして四角柱状のメサを形成する。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
【0085】
(4)フォトマスクを除去する。
【0086】
(5)積層体を水蒸気中で熱処理する。ここでは、メサの外周部から被選択酸化層108中のAlが選択的に酸化される。そして、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bを残留させる。これにより、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、酸化狭窄構造体が作成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。ここでは、種々の予備実験の結果から、電流通過領域108bが所望の大きさとなるように、熱処理の条件(保持温度、保持時間等)を適切に選択している。
【0087】
(6)積層体の表面に、分離用(チップ切り出し用)の溝を形成するためのレジストマスクを設ける。
【0088】
(7)上述したレジストマスクをエッチングマスクとして、ドライエッチング法により分離用(チップ切り出し用)の溝を形成する。
【0089】
(8)プラズマCVD法を用いて、SiNからなる保護層111を形成する。ここでは、保護層111の光学的厚さがλ/4となるようにした。具体的には、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、実際の膜厚(=λ/4n)は約105nmに設定した。
【0090】
(9)レーザ光の射出面となるメサ上部に、いわゆる窓開けを行うためのエッチングマスク(マスクMという)を作成する。ここでは、メサ上面の周囲、及びメサ上面の低反射率領域となる領域がエッチングされないようにマスクMを作成する。
【0091】
(10)BHFにて保護層111をエッチングする。
【0092】
(11)マスクMを除去する。上部電極113の開口部となる領域内に残っている保護層111が、前記誘電体層116である。この誘電体層116は、反射率を中心部の反射率よりも低くする機能を有している。
【0093】
(12)メサ上部の光射出部となる領域(射出領域)に一辺10μmの正方形状のレジストパターンを形成し、p側の電極材料の蒸着を行なう。p側の電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
【0094】
(13)光射出部となる領域に蒸着された電極材料をリフトオフし、上部電極113を形成する。この上部電極113で囲まれた領域が射出領域である。
【0095】
(14)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば100μm程度)まで研磨した後、下部電極114を形成する(図9参照)。ここでは、下部電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
【0096】
(15)アニールによって、上部電極113と下部電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
【0097】
(16)チップ毎に切断し、それぞれセラミックパッケージに実装する。
【0098】
このように製造された面発光レーザアレイ100では、半導体層H(Al0.5In0.5P)と、上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層(Al0.9Ga0.1As)は、図11に示されるように屈折率が略同一となるため、これら2層は光学的には1層とみなすことができる。
【0099】
この場合は、任意の位置にP/As界面を設定することが可能である。そして、図12に示されるように、界面における吸収が最小となる電界強度の節の位置にP/As界面を設定することができるため、高効率とすることができる。
【0100】
また、P/As界面における価電子帯のエネルギー差は、図13における符号γで示される。これは、従来の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層とAl0.3Ga0.7As層を用いる場合の価電子帯のエネルギー差(図14における符号α参照)よりも小さくすることができる。そこで、素子抵抗を小さくすることができる。
【0101】
ところで、面発光レーザにおいては、活性層で発生した光が共振器構造体を挟む上部半導体DBR及び下部半導体DBRの間で反射を繰り返すことによって増幅され、射出領域よりレーザ光として取り出されるため、下部半導体DBR〜共振器構造体〜上部半導体DBR内部の損失(光吸収)は最小限に抑制しなければならない。
【0102】
光吸収の吸収源となるもののひとつに層中のキャリアが良く知られている。これに対しては特許文献1に示されているように、面発光レーザ内部の電界強度分布を考慮し、それが最小となる箇所(節)に選択的に高ドープしている。
【0103】
半導体DBRの材料として、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きく設定できることからAlGaAs系材料が広く用いられている。活性層の材料としては、格子歪みを導入することで高利得化が可能で、且つAlを含まない材料を選択できることから(Al)GaInPAs系材料が望ましい。
【0104】
しかしながら、AlGaAs系材料と(Al)GaInPAs系材料を組み合わせた場合、P/As界面において、成長雰囲気をAsH3+PH3とAsH3との間で切り替える必要がある。
【0105】
その際、(Al)GaInPAs系材料もしくはAlGaAs系材料表面のP原子あるいはAs原子が脱離して格子欠陥が形成され、この格子欠陥もキャリアと同様に吸収源となりうる。
【0106】
すなわち、電界強度が節の箇所に選択的に高ドープするのと同様に、P/As界面についても電界強度を節の箇所に設定するのが望ましい。
【0107】
しかしながら、(Al)GaInPAs系材料と、AlGaAs系材料を接合する場合、価電子帯エネルギー差に起因する素子抵抗の増加についても配慮しなければならない。
【0108】
(Al)GaInPAs系材料とAlGaAs系材料の接合面を電界強度の節の位置に設定する場合、定在波の位相反転を考慮すると、該接合面における(Al)GaInPAs系は低屈折率層、AlGaAs系材料は高屈折率層でなければならない(図15参照)。(Al)GaInPAs系材料を(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pとし、AlGaAs系材料をAl0.3Ga0.7Asとすると、価電子帯のエネルギー差が大きいため(図14参照)、素子抵抗が高くなる可能性がある。
【0109】
一方、P/As界面の一側を(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層とし、他側をAl0.9Ga0.1Asからなる層とした場合、該P/As界面での価電子帯のエネルギー差は、図16における符号βで表され、比較的エネルギー差が小さいため、素子抵抗に与える影響は小さい。
【0110】
しかしながら、両者の屈折率を比較すると、図11から、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pの屈折率>Al0.9Ga0.1Asの屈折率であるため、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層を高屈折率層、Al0.9Ga0.1Asからなる層を低屈折率層と設定せざるを得ず、必然的に図17に示されるような構成になり、P/As界面は電界強度分布における腹の位置に設定され、該P/As界面に存在する格子欠陥により吸収が増加する可能性がある。
【0111】
以上説明したように、本実施形態に係る面発光レーザアレイによると、各発光部は基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、共振器構造体、上部半導体DBR107、上部電極113、下部電極114、配線部材115、及び誘電体層116などを有している。
【0112】
上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、p−Al0.5In0.5Pからなる半導体層Hが設けられている。この半導体層Hは、屈折率が3.074で、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0113】
上部半導体DBR107における半導体層Hに接している層は、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層である。該低屈折率層は、屈折率が3.074で、2λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0114】
すなわち、半導体層H(p−Al0.5In0.5P)と上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)は、屈折率が同じであり、該2つの層は光学的には1つの層とみなすことができる。
【0115】
この場合は、P/As界面が電界強度の節の位置に配置され、且つP/As界面に隣接する2つの層の価電子帯のエネルギー差が小さくなり、素子抵抗の上昇を招くことなく、発光効率を向上させることができる。
【0116】
また、光走査装置2010によると、各光源が面発光レーザアレイ100を有しているため、各感光体ドラムの光走査を精度良く行うことができる。
【0117】
カラープリンタ2000は、光走査装置2010を備えているため、結果として、高品質の画像を形成することができる。
【0118】
ところで、面発光レーザアレイ100では、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔d1であるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
【0119】
そして、例えば、上記間隔d2を2.65μm、光走査装置2010の光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書き込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、副走査対応方向のピッチd2(図7参照)を狭くして間隔d1を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
【0120】
また、この場合には、カラープリンタ2000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
【0121】
また、面発光レーザアレイ100を効率良く活用することで、寿命が向上するので、書き込みユニットもしくは光源ユニットの再利用が可能となる。
【0122】
なお、上記実施形態では、半導体層H(p−Al0.5In0.5P)の光学的厚さがλ/4の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、m1を自然数とすると、(2m1−1)×λ/4であれば良い。
【0123】
また、上記実施形態では、上部半導体DBR107における半導体層Hに接する低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)の光学的厚さが2λ/4の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、m2を自然数とすると、m2×λ/2であれば良い。
【0124】
また、上記実施形態では、半導体層Hがp−Al0.5In0.5Pからなる層であり、上部半導体DBR107における半導体層Hに接する低屈折率層がp−Al0.9Ga0.1Asからなる層の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、半導体層Hが、(Al1−aGaa)1−bInbPcAs1−c(0≦a≦1、b≠0、c≠0)からなる半導体層であり、上部半導体DBR107における半導体層Hに接する低屈折率層が、半導体層Hと同じ屈折率を有する、Al1−dGadAs(0≦d≦1)からなる低屈折率層であれば良い。
【0125】
また、上記実施形態では、上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、半導体層Hのみが設けられる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、半導体層Hを低屈折率層とする半導体DBRが設けられても良い。
【0126】
また、上記実施形態では、メサの横断面の外形形状が略正方形の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、メサの横断面の外形形状を、円形、楕円形あるいは長方形など任意の形状とすることができる。
【0127】
また、上記実施形態では、基板の主面の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって傾斜している場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、主面の法線方向が、結晶方位<1 0 0>の一の方向に対して、結晶方位<1 1 1>の一の方向に向かって傾斜している基板であれば良い。
【0128】
また、上記実施形態では、各光源が面発光レーザアレイ100を有する場合について説明したが、これに限らず、各光源が面発光レーザアレイ100と同様にして作成され、発光部が1つの面発光レーザ素子を有していても良い。
【0129】
また、上記実施形態では、発光部の発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。感光体の特性に応じて、発光部の発振波長を変更しても良い。
【0130】
また、面発光レーザアレイ100は、画像形成装置以外の用途に用いることができる。その場合には、発振波長は、その用途に応じて、650nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯等の波長帯であっても良い。
【0131】
また、上記実施形態では、画像形成装置として多色のカラープリンタの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、単色のプリンタであっても良い。
【0132】
また、上記実施形態では、トナー画像を記録紙に転写する画像形成装置について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
【0133】
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
【符号の説明】
【0134】
100…面発光レーザアレイ、101…基板、103…下部半導体DBR(下部反射鏡)、104…下部スペーサ層(共振器構造体の一部)、105…活性層、106…上部スペーサ層(共振器構造体の一部)、107…上部半導体DBR(上部反射鏡)、113…上部電極、115…配線部材、116…誘電体層、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、2030a〜2030d…感光体ドラム(像担持体)、2104…光偏向器、2105a〜2105d…走査レンズ(走査光学系の一部)、2200a〜2200d…光源。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0135】
【特許文献1】特許第2757633号公報
【非特許文献】
【0136】
【非特許文献1】Ueki,N、他8名、「Single−transverse−mode 3.4−mW emission of oxide confined 780−nm VCSELs」、PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS、IEEE、VOL.11、NO.12、DECENBER、1999、p1539−p1541
【非特許文献2】Ya−Hsien Chang Kuo、他4名、「Fabrication and Characteristics of high−speed oxide−confined VCSELs using InGaAsP−InGaP strained−conpensated MQWs」、JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY、VOL.22、NO.12、DECEMBER、2004、p2828−p2833
【非特許文献3】R.P.Schneider、他1名、「GaInAsP/AlGaInP−based near−IR(780nm) vertical−cavity surface−emitting lasers」、ELECTRONICS LETTERS 30th、March、1995、Vol.31、No.7、p554−556
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザ素子、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、基板に垂直な方向にレーザ発振を行う面発光レーザ素子、該面発光レーザ素子を有する光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光レーザ素子(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)は、基板に垂直な方向にレーザ発振を行う半導体レーザ素子であり、基板に平行な方向にレーザ発振を行う端面発光型の半導体レーザ素子に比べて、(1)消費電力が少ない、(2)モード安定性に優れる、(3)高集積化が容易であることから、通信分野や画像記録分野への応用が期待され、盛んに研究開発が行われている。
【0003】
半導体レーザの発振波長は、活性層の材料のバンドギャップによって決定される。発振波長が可視領域〜近赤外領域においては、AlGaAs、(Al)GaInP、(Al)GaInPAs系材料等が研究されている。
【0004】
このうち、AlGaAs系材料については、特に古くから多く研究報告がなされている。多くの面発光レーザ素子においては、高い効率の電流注入、及びメサ側面での無効電流の影響の低減のため、活性層近傍に何らかの電流狭窄手段を設けている。その手法としては、AlAs層を高温水蒸気中で酸化することによって得られるAlOxによる電流狭窄を用いる手法が広く用いられている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0005】
上記電流狭窄を用いる手法では、電流経路が制限されているため、素子抵抗が高くなりやすい。また、素子抵抗を低減するため半導体層中に添加されるドーパントは、レーザ光の吸収源となりうるため、必要最小限且つ効果的に添加する必要がある。
【0006】
特許文献1には、DBR反射膜を構成する多層GaAs/AlAs膜の不純物濃度を均一に上げる代りに、光共振器内に発生する活性層からの出力光の定在波の電界強度が最小になる点のみにおいて選択的に上げる面発光半導体レーザが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
面発光レーザ素子における反射鏡の材料としては、低屈折率層と高屈折率層の屈折率差を比較的大きく設定することが可能で、反射鏡全体の膜厚を薄くすることが可能なAlGaAs系材料が広く用いられている。
【0008】
活性層の材料としては、AlGaAs系材料を用いることも可能ではあるが、AlGaAs系材料は、設定波長によって一義的に組成が決定され、高利得化のために格子歪みを大きく設定することが不可能であるとともに、Alを含む材料であることから高い信頼性が要求されるデバイスに対し適用するのは望ましくない。
【0009】
これに対し、(Al)GaInPAs系材料は、2種類以上のIII族元素・V族元素によって構成されているため、波長と格子歪みを独立して設定することが可能である。そこで、格子歪み量を大きく設定しAlを含まない組成も設定可能であることから、高利得化・高信頼性についても比較的容易に達成可能である。
【0010】
AlGaAs系材料よりなる反射鏡と、(Al)GaInPAs系材料よりなる活性層を組み合わせた面発光レーザ素子の例が、非特許文献2及び非特許文献3に記載されている。
【0011】
しかしながら、AlGaAs系材料からなる反射鏡と(Al)GaInPAs系材料からなる活性層を組み合わせた構造体を、MOCVD法を用いて結晶成長させる場合、該2つの材料系の界面(以下では、「P/As界面」という)において、成長雰囲気をAsH3+PH3の雰囲気からAsH3の雰囲気へ、あるいはAsH3の雰囲気からAsH3+PH3の雰囲気へ切り替えなければならないが、その際にP/As界面に結晶欠陥が生じやすい。
【0012】
例えば、AlGaInPの上にAlGaAsを成長させる場合は、AlGaInP層の成長終了時点でPH3の雰囲気となっているが、AlGaAs層の成長開始以前(または同時)に成長雰囲気をAsH3に切り替える必要がある。
【0013】
その際、AlGaInP層の表面のPが脱離し、成長後の膜中に格子欠陥として残留する。そのような格子欠陥を含む層を用いて面発光レーザ素子を作成すると、格子欠陥もレーザ光の吸収源として機能するため、発振閾値の上昇や動作電流の増加など様々な弊害を引き起こす。
【0014】
共振器構造体の光学的厚さが発振波長の整数倍である場合に、上記弊害を回避するためには、特許文献1と同様の発想で、電界強度分布が最小となる位置にP/As界面を配置すれば良い。
【0015】
しかしながら、低屈折率層を(Al)GaInPAs系材料とし、高屈折率層をAlGaAs系材料とする場合、両者の価電子帯のエネルギー差が大きく(図17参照)、素子抵抗が大幅に上昇する。
【0016】
(Al)GaInPAs系材料、及びAlGaAs系材料におけるAl組成を、素子抵抗が低減するように調整すると、(Al)GaInPAs系材料におけるAl組成がAlGaAs系材料におけるAl組成よりも大きくなる。このとき、必然的に高屈折率層が(Al)GaInPAs系材料となり、低屈折率層がAlGaAs系材料とならざるを得ない。その場合、電界強度分布が最大となる位置にP/As界面が設定されるため、面発光レーザ素子の発光効率は著しく低下する。
【0017】
一方、共振器構造体の光学的厚さが発振波長の1/2の整数倍で、且つ共振器構造体の材料が(Al)GaInPAs系材料であり、反射鏡の材料がAlGaAs系材料である場合、電界強度分布が最小となる位置にP/As界面を設定することができる。このとき、共振器構造体は低屈折率層であり、反射鏡における共振器構造体に接する層は高屈折率層となる。その場合、図17に示されるように、価電子帯のエネルギー差が大きくなり、素子抵抗が大幅に上昇する。
【0018】
素子抵抗を低減するため、共振器構造体上に共振器構造体よりも屈折率の高い(Al)GaInPAs系材料を積層すると、該(Al)GaInPAs層は高屈折率層として機能し、必然的に電界強度が最大となる位置にP/As界面が設定されるため、面発光レーザ素子の発光効率は著しく低下する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、第1の観点からすると、基板上に下部反射鏡、活性層を含む共振器構造体、及び上部反射鏡が積層されているメサ構造の発光部を有する面発光レーザ素子において、前記上部反射鏡と前記共振器構造体との間に積層された(Al1−aGaa)1−bInbPcAs1−c(0≦a≦1、b≠0、c≠0)からなる半導体層を含み、前記上部反射鏡は、前記半導体層と接し、該半導体層と同じ屈折率を有する、Al1−dGadAs(0≦d≦1)からなる低屈折率層を含む面発光レーザ素子である。
【0020】
本発明は、第2の観点からすると、光によって被走査面を走査する光走査装置であって、本発明の面発光レーザ素子を有する光源と、前記光源からの光を偏向する光偏向器と、前記光偏向手段で偏向された光を前記被走査面上に集光する走査光学系と、を備える光走査装置である。
【0021】
本発明は、第3の観点からすると、少なくとも1つの像担持体と、前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報に応じて変調された光を走査する本発明の光走査装置と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の面発光レーザ素子によれば、素子抵抗の上昇を招くことなく、発光効率を向上させることができる。
【0023】
本発明の光走査装置によれば、被走査面の光走査を精度良く行うことができる。
【0024】
本発明の画像形成装置によれば、高品質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置を説明するための図(その1)である。
【図3】図1における光走査装置を説明するための図(その2)である。
【図4】図1における光走査装置を説明するための図(その3)である。
【図5】図1における光走査装置を説明するための図(その4)である。
【図6】面発光レーザアレイを説明するための図である。
【図7】面発光レーザアレイにおける複数の発光部の配列状態を説明するための図である。
【図8】各発光部の平面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は、それぞれ面発光レーザアレイの基板を説明するための図である。
【図11】AlxGa1−xAs及び(AlxGa1−x)0.5In0.5Pにおけるxの値と屈折率との関係を説明するための図である。
【図12】本実施形態におけるP/As界面を説明するための図である。
【図13】Al0.9Ga0.1Asと(Al0.9Ga0.1)0.5In0.5Pの価電子帯エネルギーの差を説明するための図である。
【図14】Al0.3Ga0.7Asと(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの価電子帯エネルギーの差を説明するための図である。
【図15】比較例1におけるP/As界面を説明するための図である。
【図16】Al0.9Ga0.1Asと(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pの価電子帯エネルギーの差を説明するための図である。
【図17】比較例2におけるP/As界面を説明するための図である。
【図18】AlxGa1−xAsと(AlxGa1−x)0.5In0.5Pの価電子帯エネルギーを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図17に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
【0027】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0028】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向に沿った方向をX軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をZ軸方向として説明する。
【0029】
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0030】
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、通信制御装置2080を介して受信した上位装置からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)を光走査装置2010に通知する。
【0031】
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
【0032】
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
【0033】
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
【0034】
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
【0035】
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転する。
【0036】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
【0037】
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報に基づいて色毎に変調された光束で、対応する帯電された感光体ドラムの表面を走査する。これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像装置の方向に移動する。なお、光走査装置の構成については後述する。
【0038】
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
【0039】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0040】
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。該レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出す。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。カラー画像が転写された記録紙は、定着装置2050に送られる。
【0041】
定着装置2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。トナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
【0042】
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
【0043】
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
【0044】
光走査装置2010は、一例として図2〜図5に示されるように、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、4つのシリンドリカルレンズ(2204a、2204b、2204c、2204d)、光偏向器2104、4つの走査レンズ(2105a、2105b、2105c、2105d)、6枚の折り返しミラー(2106a、2106b、2106c、2106d、2108b、2108c)、及び不図示の走査制御装置などを備えている。
【0045】
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0046】
光源2200aとカップリングレンズ2201aと開口板2202aとシリンドリカルレンズ2204aと走査レンズ2105aと折り返しミラー2106aは、感光体ドラム2030aに潜像を形成するための光学部材である。
【0047】
光源2200bとカップリングレンズ2201bと開口板2202bとシリンドリカルレンズ2204bと走査レンズ2105bと折り返しミラー2106bと折り返しミラー2108bは、感光体ドラム2030bに潜像を形成するための光学部材である。
【0048】
光源2200cとカップリングレンズ2201cと開口板2202cとシリンドリカルレンズ2204cと走査レンズ2105cと折り返しミラー2106cと折り返しミラー2108cは、感光体ドラム2030cに潜像を形成するための光学部材である。
【0049】
光源2200dとカップリングレンズ2201dと開口板2202dとシリンドリカルレンズ2204dと走査レンズ2105dと折り返しミラー2106dは、感光体ドラム2030dに潜像を形成するための光学部材である。
【0050】
各カップリングレンズは、対応する光源から射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
【0051】
各開口板は、開口部を有し、対応するカップリングレンズを介した光束を整形する。
【0052】
各シリンドリカルレンズは、対応する開口板の開口部を通過した光束を、光偏向器2104の偏向反射面近傍にY軸方向に関して結像する。
【0053】
光偏向器2104は、2段構造のポリゴンミラーを有している。各ポリゴンミラーは、4面の偏向反射面を有している。そして、1段目(下段)のポリゴンミラーではシリンドリカルレンズ2204aからの光束及びシリンドリカルレンズ2204dからの光束がそれぞれ偏向され、2段目(上段)のポリゴンミラーではシリンドリカルレンズ2204bからの光束及びシリンドリカルレンズ2204cからの光束がそれぞれ偏向されるように配置されている。なお、1段目のポリゴンミラー及び2段目のポリゴンミラーは、互いに位相が略45°ずれて回転し、書き込み走査は1段目と2段目とで交互に行われる。
【0054】
光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204aからの光束は、走査レンズ2105a、及び折り返しミラー2106aを介して、感光体ドラム2030aに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030aの長手方向に移動する。
【0055】
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204bからの光束は、走査レンズ2105b、及び2枚の折り返しミラー(2106b、2108b)を介して、感光体ドラム2030bに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030bの長手方向に移動する。
【0056】
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204cからの光束は、走査レンズ2105c、及び2枚の折り返しミラー(2106c、2108c)を介して、感光体ドラム2030cに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030cの長手方向に移動する。
【0057】
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204dからの光束は、走査レンズ2105d、及び折り返しミラー2106dを介して、感光体ドラム2030dに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030dの長手方向に移動する。
【0058】
各感光体ドラムにおける光スポットの移動方向が、「主走査方向」であり、感光体ドラムの回転方向が、「副走査方向」である。
【0059】
光偏向器2104と各感光体ドラムとの間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。
【0060】
各光源は、一例として図6に示されるように、32個の発光部が2次元配列されている面発光レーザアレイ100を有している。ここでは、レーザ発振方向をz軸方向とし、z軸方向に直交する面内における互いに直交する2つの方向をx軸方向及びy軸方向とする。そして、x軸方向が主走査対応方向となり、y軸方向が副走査対応方向となるように設定されている。
【0061】
32個の発光部は、図7に示されるように、全ての発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しく(図7では「d1」)なるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。
【0062】
ここでは、各発光部は、発振波長が780nm帯の垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。
【0063】
各発光部は、図8及び図9に示されるように、基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109、上部電極113、下部電極114、及び誘電体層116などを有している。なお、図8は、1つの発光部の平面図であり、図9は、図8のA−A断面図である。
【0064】
基板101は、表面が鏡面研磨面であり、図10(A)に示されるように、鏡面研磨面(主面)の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって15度(θ=15度)傾斜したn−GaAs単結晶基板である。すなわち、基板101はいわゆる傾斜基板である。ここでは、図10(B)に示されるように、結晶方位[0 −1 1]方向が+x方向、結晶方位[0 1 −1]方向が−x方向となるように配置されている。
【0065】
図9に戻り、バッファ層102は、基板101の+z側の面上に積層され、n−GaAsからなる層である。
【0066】
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+z側に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40.5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
【0067】
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0068】
活性層105は、下部スペーサ層104の+z側に積層され、Ga0.8In0.2As0.8P0.2/Ga0.5In0.5Pの3重量子井戸構造(TQW構造)の活性層である。量子井戸層は780nm帯の発振波長を得るために、GaInP混晶にAsを導入したものであり0.7%の圧縮歪みを有する。バリア層は、0.6%の引張歪みを導入することによってバンドギャップを大きくし、高いキャリア閉じ込めを実現するとともに、量子井戸層の歪み補償構造を形成している。
【0069】
上部スペーサ層106は、活性層105の+z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
【0070】
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
【0071】
上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、p−Al0.5In0.5Pからなる半導体層H(図9では、図示省略)を1層有している。この半導体層Hは、屈折率が3.074で、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0072】
上部半導体DBR107は、半導体層Hの+z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを29.5ペア有している。
【0073】
上部半導体DBR107における半導体層Hに接している層は、低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)である。該低屈折率層は、屈折率が3.074で、2λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0074】
すなわち、半導体層Hと、上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)は、屈折率が同じであり、該2つの層は光学的には1つの層とみなすことができる。
【0075】
上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層を除く各屈折率層はいずれも、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0076】
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層が厚さ30nmで挿入されている。
【0077】
この被選択酸化層の挿入位置は、電界の定在波分布において、活性層105から3番目となる節に対応する位置である。
【0078】
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+z側に積層され、p−GaAsからなる。
【0079】
なお、このように基板101上に複数の層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
【0080】
次に、面発光レーザアレイ100の製造方法について説明する。
【0081】
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する。
【0082】
ここでは、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、ジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
【0083】
(2)積層体の表面に所望のメサ形状に対応する1辺が25μmの正方形状のレジストパターンを形成する。
【0084】
(3)誘導結合型(ICP)ドライエッチング法で、上記レジストパターンをフォトマスクとして四角柱状のメサを形成する。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
【0085】
(4)フォトマスクを除去する。
【0086】
(5)積層体を水蒸気中で熱処理する。ここでは、メサの外周部から被選択酸化層108中のAlが選択的に酸化される。そして、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bを残留させる。これにより、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、酸化狭窄構造体が作成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。ここでは、種々の予備実験の結果から、電流通過領域108bが所望の大きさとなるように、熱処理の条件(保持温度、保持時間等)を適切に選択している。
【0087】
(6)積層体の表面に、分離用(チップ切り出し用)の溝を形成するためのレジストマスクを設ける。
【0088】
(7)上述したレジストマスクをエッチングマスクとして、ドライエッチング法により分離用(チップ切り出し用)の溝を形成する。
【0089】
(8)プラズマCVD法を用いて、SiNからなる保護層111を形成する。ここでは、保護層111の光学的厚さがλ/4となるようにした。具体的には、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、実際の膜厚(=λ/4n)は約105nmに設定した。
【0090】
(9)レーザ光の射出面となるメサ上部に、いわゆる窓開けを行うためのエッチングマスク(マスクMという)を作成する。ここでは、メサ上面の周囲、及びメサ上面の低反射率領域となる領域がエッチングされないようにマスクMを作成する。
【0091】
(10)BHFにて保護層111をエッチングする。
【0092】
(11)マスクMを除去する。上部電極113の開口部となる領域内に残っている保護層111が、前記誘電体層116である。この誘電体層116は、反射率を中心部の反射率よりも低くする機能を有している。
【0093】
(12)メサ上部の光射出部となる領域(射出領域)に一辺10μmの正方形状のレジストパターンを形成し、p側の電極材料の蒸着を行なう。p側の電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
【0094】
(13)光射出部となる領域に蒸着された電極材料をリフトオフし、上部電極113を形成する。この上部電極113で囲まれた領域が射出領域である。
【0095】
(14)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば100μm程度)まで研磨した後、下部電極114を形成する(図9参照)。ここでは、下部電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
【0096】
(15)アニールによって、上部電極113と下部電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
【0097】
(16)チップ毎に切断し、それぞれセラミックパッケージに実装する。
【0098】
このように製造された面発光レーザアレイ100では、半導体層H(Al0.5In0.5P)と、上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層(Al0.9Ga0.1As)は、図11に示されるように屈折率が略同一となるため、これら2層は光学的には1層とみなすことができる。
【0099】
この場合は、任意の位置にP/As界面を設定することが可能である。そして、図12に示されるように、界面における吸収が最小となる電界強度の節の位置にP/As界面を設定することができるため、高効率とすることができる。
【0100】
また、P/As界面における価電子帯のエネルギー差は、図13における符号γで示される。これは、従来の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層とAl0.3Ga0.7As層を用いる場合の価電子帯のエネルギー差(図14における符号α参照)よりも小さくすることができる。そこで、素子抵抗を小さくすることができる。
【0101】
ところで、面発光レーザにおいては、活性層で発生した光が共振器構造体を挟む上部半導体DBR及び下部半導体DBRの間で反射を繰り返すことによって増幅され、射出領域よりレーザ光として取り出されるため、下部半導体DBR〜共振器構造体〜上部半導体DBR内部の損失(光吸収)は最小限に抑制しなければならない。
【0102】
光吸収の吸収源となるもののひとつに層中のキャリアが良く知られている。これに対しては特許文献1に示されているように、面発光レーザ内部の電界強度分布を考慮し、それが最小となる箇所(節)に選択的に高ドープしている。
【0103】
半導体DBRの材料として、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きく設定できることからAlGaAs系材料が広く用いられている。活性層の材料としては、格子歪みを導入することで高利得化が可能で、且つAlを含まない材料を選択できることから(Al)GaInPAs系材料が望ましい。
【0104】
しかしながら、AlGaAs系材料と(Al)GaInPAs系材料を組み合わせた場合、P/As界面において、成長雰囲気をAsH3+PH3とAsH3との間で切り替える必要がある。
【0105】
その際、(Al)GaInPAs系材料もしくはAlGaAs系材料表面のP原子あるいはAs原子が脱離して格子欠陥が形成され、この格子欠陥もキャリアと同様に吸収源となりうる。
【0106】
すなわち、電界強度が節の箇所に選択的に高ドープするのと同様に、P/As界面についても電界強度を節の箇所に設定するのが望ましい。
【0107】
しかしながら、(Al)GaInPAs系材料と、AlGaAs系材料を接合する場合、価電子帯エネルギー差に起因する素子抵抗の増加についても配慮しなければならない。
【0108】
(Al)GaInPAs系材料とAlGaAs系材料の接合面を電界強度の節の位置に設定する場合、定在波の位相反転を考慮すると、該接合面における(Al)GaInPAs系は低屈折率層、AlGaAs系材料は高屈折率層でなければならない(図15参照)。(Al)GaInPAs系材料を(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pとし、AlGaAs系材料をAl0.3Ga0.7Asとすると、価電子帯のエネルギー差が大きいため(図14参照)、素子抵抗が高くなる可能性がある。
【0109】
一方、P/As界面の一側を(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層とし、他側をAl0.9Ga0.1Asからなる層とした場合、該P/As界面での価電子帯のエネルギー差は、図16における符号βで表され、比較的エネルギー差が小さいため、素子抵抗に与える影響は小さい。
【0110】
しかしながら、両者の屈折率を比較すると、図11から、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pの屈折率>Al0.9Ga0.1Asの屈折率であるため、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層を高屈折率層、Al0.9Ga0.1Asからなる層を低屈折率層と設定せざるを得ず、必然的に図17に示されるような構成になり、P/As界面は電界強度分布における腹の位置に設定され、該P/As界面に存在する格子欠陥により吸収が増加する可能性がある。
【0111】
以上説明したように、本実施形態に係る面発光レーザアレイによると、各発光部は基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、共振器構造体、上部半導体DBR107、上部電極113、下部電極114、配線部材115、及び誘電体層116などを有している。
【0112】
上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、p−Al0.5In0.5Pからなる半導体層Hが設けられている。この半導体層Hは、屈折率が3.074で、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0113】
上部半導体DBR107における半導体層Hに接している層は、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層である。該低屈折率層は、屈折率が3.074で、2λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
【0114】
すなわち、半導体層H(p−Al0.5In0.5P)と上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)は、屈折率が同じであり、該2つの層は光学的には1つの層とみなすことができる。
【0115】
この場合は、P/As界面が電界強度の節の位置に配置され、且つP/As界面に隣接する2つの層の価電子帯のエネルギー差が小さくなり、素子抵抗の上昇を招くことなく、発光効率を向上させることができる。
【0116】
また、光走査装置2010によると、各光源が面発光レーザアレイ100を有しているため、各感光体ドラムの光走査を精度良く行うことができる。
【0117】
カラープリンタ2000は、光走査装置2010を備えているため、結果として、高品質の画像を形成することができる。
【0118】
ところで、面発光レーザアレイ100では、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔d1であるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
【0119】
そして、例えば、上記間隔d2を2.65μm、光走査装置2010の光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書き込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、副走査対応方向のピッチd2(図7参照)を狭くして間隔d1を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
【0120】
また、この場合には、カラープリンタ2000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
【0121】
また、面発光レーザアレイ100を効率良く活用することで、寿命が向上するので、書き込みユニットもしくは光源ユニットの再利用が可能となる。
【0122】
なお、上記実施形態では、半導体層H(p−Al0.5In0.5P)の光学的厚さがλ/4の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、m1を自然数とすると、(2m1−1)×λ/4であれば良い。
【0123】
また、上記実施形態では、上部半導体DBR107における半導体層Hに接する低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)の光学的厚さが2λ/4の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、m2を自然数とすると、m2×λ/2であれば良い。
【0124】
また、上記実施形態では、半導体層Hがp−Al0.5In0.5Pからなる層であり、上部半導体DBR107における半導体層Hに接する低屈折率層がp−Al0.9Ga0.1Asからなる層の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、半導体層Hが、(Al1−aGaa)1−bInbPcAs1−c(0≦a≦1、b≠0、c≠0)からなる半導体層であり、上部半導体DBR107における半導体層Hに接する低屈折率層が、半導体層Hと同じ屈折率を有する、Al1−dGadAs(0≦d≦1)からなる低屈折率層であれば良い。
【0125】
また、上記実施形態では、上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、半導体層Hのみが設けられる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、半導体層Hを低屈折率層とする半導体DBRが設けられても良い。
【0126】
また、上記実施形態では、メサの横断面の外形形状が略正方形の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、メサの横断面の外形形状を、円形、楕円形あるいは長方形など任意の形状とすることができる。
【0127】
また、上記実施形態では、基板の主面の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって傾斜している場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、主面の法線方向が、結晶方位<1 0 0>の一の方向に対して、結晶方位<1 1 1>の一の方向に向かって傾斜している基板であれば良い。
【0128】
また、上記実施形態では、各光源が面発光レーザアレイ100を有する場合について説明したが、これに限らず、各光源が面発光レーザアレイ100と同様にして作成され、発光部が1つの面発光レーザ素子を有していても良い。
【0129】
また、上記実施形態では、発光部の発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。感光体の特性に応じて、発光部の発振波長を変更しても良い。
【0130】
また、面発光レーザアレイ100は、画像形成装置以外の用途に用いることができる。その場合には、発振波長は、その用途に応じて、650nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯等の波長帯であっても良い。
【0131】
また、上記実施形態では、画像形成装置として多色のカラープリンタの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、単色のプリンタであっても良い。
【0132】
また、上記実施形態では、トナー画像を記録紙に転写する画像形成装置について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
【0133】
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
【符号の説明】
【0134】
100…面発光レーザアレイ、101…基板、103…下部半導体DBR(下部反射鏡)、104…下部スペーサ層(共振器構造体の一部)、105…活性層、106…上部スペーサ層(共振器構造体の一部)、107…上部半導体DBR(上部反射鏡)、113…上部電極、115…配線部材、116…誘電体層、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、2030a〜2030d…感光体ドラム(像担持体)、2104…光偏向器、2105a〜2105d…走査レンズ(走査光学系の一部)、2200a〜2200d…光源。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0135】
【特許文献1】特許第2757633号公報
【非特許文献】
【0136】
【非特許文献1】Ueki,N、他8名、「Single−transverse−mode 3.4−mW emission of oxide confined 780−nm VCSELs」、PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS、IEEE、VOL.11、NO.12、DECENBER、1999、p1539−p1541
【非特許文献2】Ya−Hsien Chang Kuo、他4名、「Fabrication and Characteristics of high−speed oxide−confined VCSELs using InGaAsP−InGaP strained−conpensated MQWs」、JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY、VOL.22、NO.12、DECEMBER、2004、p2828−p2833
【非特許文献3】R.P.Schneider、他1名、「GaInAsP/AlGaInP−based near−IR(780nm) vertical−cavity surface−emitting lasers」、ELECTRONICS LETTERS 30th、March、1995、Vol.31、No.7、p554−556
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に下部反射鏡、活性層を含む共振器構造体、及び上部反射鏡が積層されているメサ構造の発光部を有する面発光レーザ素子において、
前記上部反射鏡と前記共振器構造体との間に積層された(Al1−aGaa)1−bInbPcAs1−c(0≦a≦1、b≠0、c≠0)からなる半導体層を含み、
前記上部反射鏡は、前記半導体層と接し、該半導体層と同じ屈折率を有する、Al1−dGadAs(0≦d≦1)からなる低屈折率層を含む面発光レーザ素子。
【請求項2】
前記半導体層は、発振波長λ、自然数m1を用いて、光学的厚さが(2m1−1)×λ/4であり、
前記上部反射鏡の前記低屈折率層は、自然数m2を用いて、光学的厚さがm2×λ/2であることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ素子。
【請求項3】
前記半導体層は、反射鏡の低屈折率層を構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の面発光レーザ素子。
【請求項4】
光によって被走査面を走査する光走査装置であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子を有する光源と、
前記光源からの光を偏向する光偏向器と、
前記光偏向器で偏向された光を前記被走査面上に集光する走査光学系と、を備える光走査装置。
【請求項5】
少なくとも1つの像担持体と、
前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報に応じて変調された光を走査する請求項4に記載の光走査装置と、を備える画像形成装置。
【請求項6】
前記画像情報は、多色の画像情報であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項1】
基板上に下部反射鏡、活性層を含む共振器構造体、及び上部反射鏡が積層されているメサ構造の発光部を有する面発光レーザ素子において、
前記上部反射鏡と前記共振器構造体との間に積層された(Al1−aGaa)1−bInbPcAs1−c(0≦a≦1、b≠0、c≠0)からなる半導体層を含み、
前記上部反射鏡は、前記半導体層と接し、該半導体層と同じ屈折率を有する、Al1−dGadAs(0≦d≦1)からなる低屈折率層を含む面発光レーザ素子。
【請求項2】
前記半導体層は、発振波長λ、自然数m1を用いて、光学的厚さが(2m1−1)×λ/4であり、
前記上部反射鏡の前記低屈折率層は、自然数m2を用いて、光学的厚さがm2×λ/2であることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ素子。
【請求項3】
前記半導体層は、反射鏡の低屈折率層を構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の面発光レーザ素子。
【請求項4】
光によって被走査面を走査する光走査装置であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子を有する光源と、
前記光源からの光を偏向する光偏向器と、
前記光偏向器で偏向された光を前記被走査面上に集光する走査光学系と、を備える光走査装置。
【請求項5】
少なくとも1つの像担持体と、
前記少なくとも1つの像担持体に対して画像情報に応じて変調された光を走査する請求項4に記載の光走査装置と、を備える画像形成装置。
【請求項6】
前記画像情報は、多色の画像情報であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−16616(P2013−16616A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148046(P2011−148046)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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