面発光型半導体レーザおよびその製造方法
【課題】 外部接続用の電極パッド等の金属層が形成される領域の絶縁耐圧を高くし、歩留まりを向上させコスト低減を図る。
【解決手段】 VCSELは、n型GaAs基板10上に、n型の下部DBR12、活性層14、電流狭窄層16、p型の上部DBR18を含み、上部DBR18から下部DBR12の一部に至る半導体層を除去することによりポストPが形成され、ポスト頂部の上部DBR18と電気的に接続された電極パッド28とn型下部DBR12との間に多層絶縁膜が形成されている。多層絶縁膜により絶縁耐圧が向上する。
【解決手段】 VCSELは、n型GaAs基板10上に、n型の下部DBR12、活性層14、電流狭窄層16、p型の上部DBR18を含み、上部DBR18から下部DBR12の一部に至る半導体層を除去することによりポストPが形成され、ポスト頂部の上部DBR18と電気的に接続された電極パッド28とn型下部DBR12との間に多層絶縁膜が形成されている。多層絶縁膜により絶縁耐圧が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報処理あるいは高速光通信の光源として利用される面発光型半導体レーザおよびその製造方法に関し、特に、高次横モードの発振を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信や光記録等の技術分野において、面発光型半導体レーザ(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser diode:以下VCSELと呼ぶ)への関心が高まっている。VCSELは、しきい値電流が低く消費電力が小さい、円形の光スポットが容易に得られる、ウエハ状態での評価や光源の二次元アレイ化が可能であるといった、端面発光型半導体レーザにはない優れた特長を有する。これらの特長を生かし、通信分野における光源としての需要がとりわけ期待されている。
【0003】
素子の動作特性を安定化させかつ長い動作寿命を得るため、電極パッド等の金属層下で使用される絶縁膜の耐湿性や耐圧性を向上させる必要がある。このような技術に関する提案が幾つか成されている。例えば特許文献1の半導体装置は、基板上の上層配線を含む絶縁膜上に、第1のSiN層、SiO2層、及び第2のSiN層を順次積層し、表面保護膜を形成している。これにより、表面保護膜の上層を形成する第2のSiN層にごくわずかに存在するピンホールを透過して浸入する水分を吸水性のあるSiO2層で吸収するようにしている。
【0004】
特許文献2は、LEDアレイにおいて、配線層と基板との層間絶縁膜がアルミナ膜と第二絶縁膜の積層膜で構成され、アルミナ膜および第二絶縁膜の形成時にそれぞれピンホールが生じても両膜のピンホール同士が重なる確率は非常に低く、結果的にピンホールが少ない絶縁膜を得るものである。
【0005】
特許文献3は、共振型ダイオードにおいて、絶縁材料からなる耐湿性保護膜を形成し、耐湿性保護膜の膜厚を波長の1/2の整数倍とするものである。好ましくは、耐湿性保護膜は、酸化ケイ素および窒化ケイ素から構成される。
【0006】
特許文献4は、VCSEL構造を部分的に貫通する酸化空洞を形成し、酸化空洞の表面上に第1のパッシベーションとして窒化珪素(SiN)を形成し、この上に第2のパッシベーションとして、シリコンオキシナイトライド(SiON)を形成し、いずれか一方のパッシベーションに存在しうるピンホールを他方のパッシベーションで覆うようにしている。
【0007】
特許文献5は、VCSELのレーザ構造部の表面に熱線膨張係数が50×10-6℃-1以下のポリイミド保護膜を形成し、特許文献6は、レーザ構造部の表面に全応力が2.5×102Pa・m以下のポリイミド保護膜を形成し、ポリイミド保護膜のクラック発生やはく離を防止している。
【0008】
【特許文献1】特開平5−218015号
【特許文献2】特開平7−122781号
【特許文献3】特開2004−281929号
【特許文献4】特開2004−241777号
【特許文献5】特開2002−335045号
【特許文献6】特開2004−31633号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図19は、従来のVCSELの平面図とそのA−A線断面図である。VCSELは、n型のGaAs半導体基板10上に、n型の下部DBR(Distributed Bragg Reflector:分布ブラッグ型反射鏡)12、活性層14、電流狭窄層16、p型の上部DBR18、p型のGaAsコンタクト層20の半導体層を積層している。半導体基板10上に積層された半導体層は、下部DBR12の一部が露出するまでエッチングされ、これにより、基板上に円筒状のポストPが形成されている。ポストPは、その頂部、側面および底部を層間絶縁膜または保護膜22によって覆われている。ポスト頂部において、保護膜22にはコンタクトホール24が形成され、そこにp側電極26が形成される。p側電極26の中央には、レーザ光を出射するための開口が形成されている。ポスト底部には、層間絶縁膜22を介して円形状の外部接続用の電極パッド28が形成され、電極パッド28は、引き出し配線30によりp側電極26に接続されている。また、半導体基板10の裏面にn側電極32が形成されている。
【0010】
このようなVCSELにおいて、n型DBR12上の絶縁膜22として単一の保護膜を用い、保護膜上に金属電極パッド28を配置した場合、次のような課題があった。
【0011】
n型DBR12と電極パッド28直下に挟まれた保護膜22に、着膜時のコンタミネーション、ピンホールまたは微小クラック等による低抵抗部分があると、例えばプローブピンを電極パッド28に接触させて逆方向に電流を印加する異常リーク電流測定を行うときやバーンインテストにおいて順方向の電流を印加するときに、異常電流経路により過剰電流がn型下部DBR12またはn型基板10に流れ、VCSEL素子が破壊されてしまう。このため、VCSELの製造歩留まりの低下や素子信頼性に悪影響を与えていた。
【0012】
また、n型DBR12上に電極パッド28以外の目的で形成された位置合わせ用電極34が形成されている場合に、位置合わせ用電極34の下方の保護膜に上記したようなピンホール等の異常があり、かつ誤ってプローブピンを位置合わせ用電極34にコンタクトしてバーンインを行うと、異常電流経路により過剰電流が流れてVCSELが破壊してしまう。さらに、図19示す構成とは異なるが、電極パッド28をp型DBR18上に絶縁膜を介して形成するタイプのVCSELにおいても、絶縁膜にピンホール等の欠陥があると、その絶縁耐圧が低下し、電極パッドに電圧が印加されたときに同様の問題を生じていた。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決し、外部接続用の電極パッド等の金属層が形成される領域の絶縁耐圧を増加させ、歩留まりの向上およびコスト低減を図った面発光型半導体レーザおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る面発光型半導体レーザは、電極パッド等の金属部下にある保護膜のコンタミネーション、ピンホールやクラックによる異常電流経路を抑制するため、保護膜の絶縁性を向上させる。第1の解決手段として、保護膜を形成する半導体層表面に絶縁処理(プロトン注入)を施し絶縁耐圧を向上させる。第2の解決手段として、電極パッド等の金属部下にある保護膜を2層以上の多層構造にし、絶縁耐圧を向上させる。
【0015】
本発明に係る面発光型半導体レーザは、基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を含み、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストが形成され、当該ポスト頂部からレーザ光を出射するものであり、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続される電極パッドと、前記電極パッドとポスト底部の第1の半導体多層反射膜との間に形成される多層絶縁膜とを有する。
【0016】
好ましくは多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜はポスト底部の第1の半導体多層反射膜を覆い、第2の絶縁膜は第1の絶縁膜を覆いかつポスト側面を覆う。あるいは、第1の絶縁膜がポスト底部の第1の半導体多層反射膜およびポスト側面を覆い、第2の絶縁膜が電極パッド下において第1の絶縁膜を覆うようにしてもよい。
【0017】
基板上の半導体膜の一部に溝を形成することでレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから分離されたパッド形成領域を形成する面発光型半導体レーザの場合には、電極パッドは、多層絶縁膜を介してパッド形成領域上に形成されるようにしてもよい。この場合、多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜は第2の半導体多層反射膜上に形成され、第2の絶縁膜は第1の絶縁膜を覆いかつポスト側面を覆う。あるいは、第1の絶縁膜が第2の半導体多層反射膜およびポスト側面を覆い、第2の絶縁膜が電極パッド下において第1の絶縁膜を覆うようにしてもよい。好ましくは、多層絶縁膜は、SiO2膜またはSiN膜を含み、SiO2膜またはSiN膜の膜厚は、少なくとも0.4ミクロンである。
【0018】
さらに本発明に係る面発光型半導体レーザは、基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を含み、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストが形成され、当該ポスト頂部からレーザ光を出射し、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続される電極パッドと、ポスト底部の第1の半導体多層反射膜と電極パッドとの間に形成される絶縁膜とを有し、少なくともポスト底部の第1の半導体多層反射膜の表面が絶縁処理されている。
【0019】
基板上の半導体膜の一部に溝を形成することでレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから分離されたパッド形成領域を形成する面発光型半導体レーザの場合には、電極パッドは、パッド形成領域上において、絶縁処理された第2の半導体多層反射膜上に絶縁膜を介して形成されるようにしてもよい。
【0020】
好ましくは、絶縁処理は、プロトンイオン注入によって処理される。基板は、第1導電型の半導体基板、例えばGaAs基板であり、当該基板の裏面に下部電極が形成されている。さらに、第1の半導体多層反射膜は、n型のAlGaAs層を含み、第2の半導体多層反射膜は、p型のAlGaAs層を含む。好ましくは、第2の半導体多層反射膜は、屈折率の異なる対の半導体層を複数積層するDBRを含み、最上層に不純物濃度の高いコンタクト層を含むようにしてもよい。さらに第2の半導体多層反射膜は、第2導電型のAlAs等の電流狭窄層を含むようにしてもよい。なお、半導体多層反射膜は、AlGaAsのほかにも、GaInやGaNなどの他の化合物半導体を用いることができる。
【0021】
本発明に係る面発光型半導体レーザの製造方法は、基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストを形成するステップと、ポスト底部で露出された第1の半導体多層反射膜上に第1の絶縁膜を形成するステップと、第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成するステップと、第2の絶縁膜上に、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続された電極パッドを形成するステップとを有する。
【0022】
さらに本発明に係る面発光型半導体レーザの製造方法は、基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストを形成するステップと、ポスト底部で露出された第1の半導体多層反射膜にプロトンイオン注入を行い第1の半導体多層反射膜の表面を絶縁処理するステップと、絶縁処理された第1の半導体多層反射膜上に絶縁膜を形成するステップと、絶縁膜上にポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続された電極パッドを形成するステップとを有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電極パッドやその他の金属層等が形成される金属部下の絶縁膜を多層構造にし、あるいは絶縁膜を形成する下層を絶縁処理することにより、絶縁耐圧を向上させることができる。その結果、異常リーク電流測定やバーンイン時に異常電流経路により過剰電流が素子内部に流れることが防止され、面発光型半導体レーザの歩留まりが向上し、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0025】
図1は本発明の第1の実施例に係るVCSELの平面図とそのB−B線断面図である。なお、従来の説明で用いた図19と同一構成については、同一参照番号を付してある。第1の実施例に係るVCSELは、ポストPの形成後に露出されたn型の下部DBR12の表面を一様にプロトンイオン注入することより絶縁処理を施し、DBR12の表面に絶縁領域100を形成している。好ましくは、基板上の半導体層をエッチングしてポストPを形成した後、ポストPをフォトレジストによりマスキングし、次いで、露出されたn型DBR12を一様にプロトンインプランテーションを実施する。その後、レジストを剥離し、洗浄を行った後、層間絶縁膜22を着膜する。
【0026】
n型の下部DBR12は、屈折率を異にする1対の半導体層を複数積層したももであり、例えば、Alの含有量を異にする1対のAlGaAs層を30対以上積層する。n型の不純物として、例えばSiを用い、下部DBR12の厚さは、約4ミクロンである。下部DBR12の下層は、例えばSi不純物を含んだn型のGaAs基板である。下部DBR12へのプロトン注入は、好ましくはGaAs基板まで到達するように200KeV以上の加速電圧を与える。この際、インプランテーションの深さは4ミクロン以上となる。
【0027】
第1の実施例によれば、下部DBR12の表面を絶縁処理し、そこに絶縁領域100を形成し、その上に層間絶縁膜22を形成するようにしたので、仮に、層間絶縁膜22にピンホールや微小クラックが生じたり、層間絶縁膜22が汚染されていたとしても、絶縁領域100が介在するため、電極パッド28および位置合わせ用電極34と下部DBR12間の絶縁耐圧が向上される。従って、電極パッド28を利用したリーク電流測定やバーンインの際に、低抵抗化による異常電流経路に過剰電流が流れてVCSELが破壊するのが防止される。同様に、プローブピンを誤って位置合わせ用電極34に接触させたときにVCSELが破壊されることが防止される。なお、位置合わせ用電極34は、必ずしも必須のものとして形成される必要はない。
【0028】
次に、本発明の第2の実施例について図2を参照して説明する。第2の実施例に係るVCSELは、ポストPを形成するときに露出されたn型の下部DBR12の表面に絶縁保護膜110を形成し、絶縁保護膜110上に層間絶縁膜22を形成し、層間絶縁膜22上に電極パッド28や位置合わせ用電極34を形成している。
【0029】
好ましくは、基板上の半導体層をエッチングしてポストPを形成した後、ポストPをフォトレジストでマスキングし、露出されたn型下部DBR12上に、Si酸化膜、あるいはSi窒化膜単層、またはこれらの多層からなる絶縁保護膜110を着膜する。その後にレジストを剥離することでポスト上に着膜された絶縁保護膜はレジストと一緒に剥離される。絶縁保護膜110の着膜時の膜厚は、0.4ミクロン以上が好ましい。この膜厚であればピンホールが生じ難いためである。
【0030】
第2の実施例によれば、電極パッド28や位置合わせ用電極34とn型下部DBR112との間の絶縁膜を多層構造にしたので、仮に、層間絶縁膜22や絶縁保護膜110にピンホールや微小クラックが生じたり、それらが汚染されていたとしても、いずれか一方の膜が他方の膜を補完するため、電極パッド28と下部DBR12間の絶縁耐圧が向上される。このため、電極パッド28を利用したリーク電流測定やバーンインの際に、低抵抗化による異常電流経路を過剰電流が流れてVCSELが破壊することが防止される。同様に、プローブピンを誤って位置合わせ用電極34に接触させたときにVCSELが破壊されることが防止される。
【0031】
次に、本発明の第3の実施例について図3を参照して説明する。第3の実施例は、第2の実施例のVCSELの変形である。すなわち、第2の実施例では、絶縁略膜110は、ポストPを除く下部DBR12の全面に形成され、その絶縁保護膜110を覆うように層間絶縁膜22が形成されたが、第3の実施例では、層間絶縁膜22を形成し、層間絶縁膜22上に絶縁保護膜110aが形成されている。また、絶縁保護膜110aは、電極パッド28や位置合わせ用電極34が形成される領域にのみ形成されている。
【0032】
次に、本発明の第4の実施例について図4を参照して説明する。第4の実施例は、第1の実施例のVCSELの変形である。すなわち、第1の実施例では、ポストP以外の下部DBR12の全面に一様に絶縁処理を行ったが、第4の実施例では、電極パッド28や位置合わせ用電極34が形成される領域においてのみに下部DBR12の表面に絶縁処理を施し、絶縁領域100を形成している。
【0033】
次に、本発明の第5の実施例について図5を参照して説明する。第5の実施例では、n型のGaAs基板上に、下部DBR12、活性層14、電流狭窄層18、上部DBR20およびコンタクト層22を積層し、次いで、コンタクト層22から下部DBR12の一部に至る深さの環状またはリング状のトレンチ120を形成している。トレンチ120により、レーザ光を出射する発光部である円筒状のポストPが形成され、またポストPから隔てられたパッド形成領域130が形成されている。トレンチ120の形成と同時に、パッド形成領域130の外縁に沿う外縁溝140を形成するようにしてもよい。外縁溝140は、ウエハから各VCSELを切り出すときのスクライブ領域とすることができる。
【0034】
パッド形成領域130の上部DBR18の表面は、プロトンイオン注入によって絶縁処理された絶縁領域150が形成されている。絶縁処理された上部DBR18およびポストPを含む全面に層間絶縁膜22が形成されている。p側電極26は、ポスト頂部においてコンタクトホールを介してコンタクト層20にオーミック接続され、さらに引き出し配線30を介して電極パッド28に接続されている
【0035】
好ましくは、ポストPを含んだトレンチ120をフォトレジストでマスキングした後、露出されたp型DBR18(コンタクト層20を含む)表面からプロトンインプランテーションにより絶縁処理を行い、表面に絶縁領域150を形成する。p型の上部DBR18は、屈折率を異にする1対の半導体層を複数積層したももであり、例えば、Alの含有量を異にする1対のAlGaAs層を30対以上積層する。p型の不純物として、例えば炭素(C)を用い、上部DBR18の厚さは、約3ミクロンである。上部DBR12の最上層は、p型GaAsコンタクト層20である。上部DBR18へのプロトン注入は、150KeV以上の加速電圧が好ましい。このとき、プロトンインプランテーションの深さは、1ミクロン以上である。
【0036】
第5の実施例によれば、層間絶縁膜22に仮にピンホールやクラック等の欠陥があっても、絶縁領域150による低抵抗化による異常電流経路を抑制することができ、電極パッド28や位置決め用電極34とp型上部DBR18との間の絶縁耐圧を向上させることができる。
【0037】
次に、本発明の第6の実施例について図6を参照して説明する。第6の実施例は、パッド形成領域130において上部DBR18(コンタクト層20)上に絶縁保護膜160が形成され、絶縁保護膜160を覆うように層間絶縁膜22が形成されている。好ましくは、ポストPを含んだトレンチ形成部をフォトレジストでマスキングし、露出されたp型上部DBR18上にSi酸化膜あるいはをSi窒化膜を単層または多層で着膜し、その後、フォトレジスト上の絶縁保護膜をレジストと一緒に剥離する。絶縁保護膜の着膜時の膜厚は、0.4ミクロン以上が好ましい。さらに、ポスト上部をフォトレジストでマスキングし、2層目の絶縁保護膜を着膜し、上記と同様にレジスト上の絶縁保護膜とレジストと一緒に除去するようにしてもよい。
【0038】
第6の実施例によれば、層間絶縁膜22と絶縁保護膜160によって、パッド電極28や位置決め用電極34と上部DBR18間の絶縁を行うようにしたので、絶縁耐圧を向上させることができる。
【0039】
次に、第1の実施例のVCSELの製造方法について図7および図8を参照して説明する。先ず、図7(a)に示すように、有機金属気相成長(MOCVD)法により、n型GaAs基板10上に、Siキャリア濃度1×1018cm-3、膜厚0.2μm程度のn型GaAsバッファ層11を積層し、その上に、Al0.9Ga0.1AsとAl0.12Ga0.88Asとをそれぞれの膜厚が媒質内波長の1/4となるように交互に40.5周期積層され、キャリア濃度1×1018cm-3で総膜厚が約4μmとなる下部n型DBR12、アンドープ下部Al0.6Ga0.4Asスぺーサー層とアンドープ量子井戸活性層(膜厚70nmGaAs量子井戸層3層と膜厚50nmAl0.3Ga0.7As障壁層4層とで構成されている)とアンドープ上部Al0.6Ga0.4Asスぺーサー層とで構成された膜厚が媒質内波長となる活性領域14、p型のAlAs層16、その上にAl0.9Ga0.1AsとAl0.12Ga0.88Asとをそれぞれの膜厚が媒質内波長の1/4となるように交互に30周期積層した炭素キャリア濃度が1×1018cm-3、総膜厚が約3μmとなる上部p型DBR18、キャリア濃度1×1019cm-3となる膜厚20nm程のp型のGaAsコンタクト層20を順次積層する。なお、DBRの電気的抵抗を下げるために、Al0.9Ga0.1AsとAl0.12Ga0.88Asの界面にAl組成を90%から30%に段階的に変化させた膜厚が20nm程度の領域を設けることも可能である。
【0040】
次に、図7(b)に示すように、フォトリソ工程により結晶成長層上にレジストマスクRを形成し、三塩化ホウ素をエッチングガスとして用いた反応性イオンエッチングにより下部DBR12の途中までエッチングし、図7(c)に示すように、円柱状のポストPを形成する。ポストPは、10〜30μm程度の径を有する。勿論、円柱以外にも角柱のポストであってもよい。
【0041】
次に、図7(d)に示すように、例えば340℃の水蒸気雰囲気に基板を一定時間晒し、酸化処理を行う。電流狭窄層16を構成するAlAs層は、同じくその一部を構成するAl0.9Ga0.1As層やAl0.12Ga0.88As層と比べ著しく酸化速度が速いため、ポストPの側面からポスト形状を反映した酸化領域16aが形成され、酸化されずに残った非酸化領域(導電領域)が電流注入領域あるいは導電領域となる。
【0042】
次に、図8(e)に示すように、レジストRを除去した後、ポストPを取り囲むレジストR1を形成する。次に、図8(f)に示すように、レジストR1をマスクに用い、ポストPの底部において露出されたn型の下部DBR12の表面からプロトンイオン注入を行う。好ましくは、下部DBR12へのプロトン注入をGaAs基板まで到達させ、200KeV以上の加速電圧を与える。この際、インプランテーションの深さは、4ミクロン以上が好ましい。こうして、n型下部DBR12の表面に絶縁領域100が形成される。
【0043】
次に、レジストR1を除去した後、図8(g)に示すように、プラズマCVD装置を用いて、ポストPを含む基板全面にSiNからなる層間絶縁膜22を蒸着する。その後、図8(h)に示すように、フォトリソ工程を用いて層間絶縁膜122をエッチングし、ポストPの頂部の円形状のコンタクトホールを形成し、コンタクト層20を露出させる。
【0044】
その後、p側電極材料としてAuを100〜1000nm、望ましくは600nm蒸着し、リフトオフ工程により、p側電極26、電極パッド28、引き出し配線30、および位置合わせよう電極34を形成する。また、p側電極26の中央には、レーザ光を出射するための開口26aが形成される。
【0045】
そして、基板裏面には、n電極32としてAu/Geが蒸着される。その後、アニール温度250℃〜500℃、望ましくは300℃〜400℃で10分間アニールを行う。こうして、プロトン注入により絶縁耐圧が向上された第1の実施例のVCSELが得られる。
【0046】
次に、第2の実施例のVCSELの製造方法について説明する。第2の実施例のVCSELは、図7(a)から図8(e)に示す工程は第1の実施例と同様である。次に、第2の実施例では、図9(i)に示すように、絶縁保護膜110を基板全面に形成する。次に、図9(j)に示すように、レジストR1を除去すると、レジストR1上の絶縁保護膜110が一緒に除去される。その結果、ポスト底部において露出された下部DBR12上に絶縁保護膜110がパターニングされる。
【0047】
次に、図9(k)に示すように、層間絶縁膜22を形成し、図9(l)に示すように、層間絶縁膜22をパターニングし、第1の実施例のときと同様に、p側上部電極26、電極パッド28、引き出し配線30、および位置合わせよう電極34を形成する。
【0048】
第3および第4の実施例のVCSELを製造する場合には、プロトン注入または絶縁保護膜を形成するときのレジストマスクの形状を変更すればよい。
【0049】
次に、第5の実施例に係るVCSELの製造方法について説明する。第1の実施例と同様にGaAs基板上に半導体層を積層し、図10(a)に示すように、レジストマスクRを形成し、三塩化ホウ素をエッチングガスとして用いた反応性イオンエッチングにより下部DBR12の途中までエッチングし、図10(b)に示すように、環状のトレンチ120を形成する。これにより、10〜30μm程度の径の円柱もしくは角柱のポストPと、その周囲にパッド形成領域130を形成する。
【0050】
次に、図10(c)に示すように、電流狭窄層16を構成するAlAsをポストPの側面から酸化し、酸化領域16aが形成される。次に、図11(d)に示すように、レジストRを除去した後、ポストPを取り囲むレジストR1を形成する。次に、図11(e)に示すように、レジストR1をマスクに用い、パッド形成領域130において露出されたp型のコンタクト層20の表面からp型の上部DBR内へプロトンイオン注入を行う。好ましくは、150KeV以上の加速電圧を与える。この際、インプランテーションの深さは、3ミクロン以上が好ましい。こうして、コンタクト層20から上部DBR18の一部に絶縁領域150が形成される。
【0051】
次に、レジストR1を除去した後、図11(f)に示すように、プラズマCVD装置を用いて、ポストPを含む基板全面にSiNからなる層間絶縁膜22を蒸着する。以後の工程は、第1の実施例と同様である。
【0052】
図12は、VCSELチップが実装された半導体レーザ装置のパッケージ(モジュール)例を示す概略断面を示す図である。パッケージ300では、金属ステム330上のサブマウント320上に、VCSELアレイが形成されたチップ310が固定されている。導電性のリード340、342は、ステム330の貫通孔(図示省略)内に挿入され、一方のリード340は、チップ310の裏面に形成されたn側の下部電極32に電気的に接続され、他方のリード342は、チップ310の上面に形成されたp側電極26(電極パッド28)にボンディングワイヤ等を介して電気的に接続される。
【0053】
キャップ350の出射窓352内にボールレンズ360が固定されている。ボールレンズ360の光軸は、上部電極130の開口132のほぼ中心と一致するように位置決めされる。また、チップ310とボールレンズ360との距離は、チップ310からのレーザ光の放射角度θ内にボールレンズ360が含まれるように調整される。リード340、342間に順方向の電圧が印加されると、チップ310からレーザ光が出射され、ボールレンズ360を介して外部へ出力される。なお、キャップ内に、VCSELの発光状態をモニターするための受光素子を含ませるようにしてもよい。
【0054】
図13は、さらに他のパッケージの構成を示す図であり、好ましくは、後述する空間伝送システムに使用される。同図に示すパッケージ302は、ボールレンズ360を用いる代わりに、キャップ350の中央の出射窓352内に平板ガラス362を固定している。平板ガラス362の中心は、チップ310の光軸と一致するように位置決めされる。チップ310と平板ガラス362との距離は、平板ガラス362の開口径がチップ310からのレーザ光の放射角度θ以上になるように調整されている。
【0055】
図14は、図12に示すパッケージまたはモジュールを光送信装置に適用したときの構成を示す断面図である。光送信装置400は、ステム330に固定された円筒状の筐体410と、筐体410の端面に一体に形成されたスリーブ420と、スリーブ420の開口422内に保持されるフェルール430と、フェルール430によって保持される光ファイバ440とを含んで構成される。
【0056】
ステム330の円周方向に形成されたフランジ332には、筐体410の端部が固定される。フェルール430は、スリーブ420の開口422に正確に位置決めされ、光ファイバ440の光軸がボールレンズ360の光軸に整合される。フェルール430の貫通孔432内に光ファイバ440の芯線が保持されている。
【0057】
チップ310の表面から出射されたレーザ光は、ボールレンズ360によって集光され、集光された光は、光ファイバ440の芯線に入射され、送信される。上記例ではボールレンズ360を用いているが、これ以外にも両凸レンズや平凸レンズ等の他のレンズを用いることができる。さらに、光送信装置400は、リード340、342に電気信号を印加するための駆動回路を含むものであってもよい。さらに、光送信装置400は、光ファイバ440を介して光信号を受信するための受信機能を含むものであってもよい。
【0058】
図15は、図13に示すパッケージを空間伝送システムに用いたときの構成を示す図である。空間伝送システム500は、パッケージ300と、集光レンズ510と、拡散板520と、反射ミラー530とを含んでいる。空間伝送システム500では、パッケージ300に用いられたボールレンズ360を用いる代わりに、集光レンズ510を用いている。集光レンズ510によって集光された光は、反射ミラー530の開口532を介して拡散板520で反射され、その反射光が反射ミラー530へ向けて反射される。反射ミラー530は、その反射光を所定の方向へ向けて反射させ、光伝送を行う。空間伝送の光源の場合には、マルチスポット型のVCSELを用い、高出力を得るようにしてもよい。
【0059】
図16は、VCSELを光源に利用した光伝送システムの一構成例を示す図である。光伝送システム600は、VCSELが形成されたチップ310を含む光源610と、光源610から放出されたレーザ光の集光などを行う光学系620と、光学系620から出力されたレーザ光を受光する受光部630と、光源610の駆動を制御する制御部640とを有する。制御部640は、VCSELを駆動するための駆動パルス信号を光源610に供給する。光源610から放出された光は、光学系620を介し、光ファイバや空間伝送用の反射ミラーなどにより受光部630へ伝送される。受光部630は、受光した光をフォトディテクターなどによって検出する。受光部630は、制御信号650により制御部640の動作(例えば光伝送の開始タイミング)を制御することができる。
【0060】
次に、光伝送システムに利用される光伝送装置の構成について説明する。図17は、光伝送装置の外観構成を示している。光伝送装置700は、ケース710、光信号送信/受信コネクタ接合部720、発光/受光素子730、電気信号ケーブル接合部740、電源入力部750、動作中を示すLED760、異常発生を示すLED770、DVIコネクタ780、送信回路基板/受信回路基板790を有している。
【0061】
光伝送装置700を用いた映像伝送システムを図18に示す。映像伝送システム800は、映像信号発生装置810、画像表示装置820、DVI用電気ケーブル830、送信モジュール840、受信モジュール850、映像信号伝送光信号用コネクタ860、光ファイバ870、制御信号用ケーブルコネクタ880、電源アダプタ890、DVI用電気ケーブル900を含んでいる。映像信号発生装置810で発生された映像信号を液晶ディスプレイなどの画像表示装置820に伝送するため、図17に示す光伝送装置を利用している。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る面発光型半導体レーザは、光情報処理や光高速データ通信の分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施例に係るVCSELの平面図とそのB−B線断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係るVCSELの平面図とそのC−C線断面図である。
【図3】本発明の第3の実施例に係るVCSELの平面図とそのD−D線断面図である。
【図4】本発明の第4の実施例に係るVCSELの平面図とそのE−E線断面図である。
【図5】本発明の第5の実施例に係るVCSELの平面図とそのF−F線断面図である。
【図6】本発明の第6の実施例に係るVCSELの平面図とそのG−G線断面図である。
【図7】本発明の第1の実施例に係るVCSELの製造方法を説明する工程断面図である。
【図8】本発明の第1の実施例に係るVCSELの製造方法を説明する工程断面図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係るVCSELの製造方法を説明する工程断面図である。
【図10】本発明の第5の実施例に係るVCSELの製造方法を説明する工程断面図である。
【図11】本発明の第5の実施例に係るVCSELの製造方法を説明する工程断面図である。
【図12】VCSELが形成された半導体チップを実装したパッケージの構成を示す概略断面図である。
【図13】他のパッケージの構成を示す概略断面図である。
【図14】図12に示すパッケージを用いた光送信装置の構成を示す概略断面図である。
【図15】図13に示すパッケージを空間伝送システムに用いたときの構成を示す図である。
【図16】光伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図17】光伝送装置の外観構成を示す図である。
【図18】図17の光伝送装置を利用した映像伝送システムを示す図である。
【図19】従来のVCSELを示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10:GaAs半導体基板 12:下部下部DBR
14:活性層 16:電流狭窄層
18:上部DBR 20:コンタクト層
22:層間絶縁膜 24:コンタクトホール
26:p側電極 28:電極パッド
30:引き出し配線 32:n側電極
34:位置合わせ用電極 100:絶縁領域
110:絶縁保護膜 120:トレンチ
130:パッド形成領域 140:外縁溝
150:絶縁領域 P:ポスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報処理あるいは高速光通信の光源として利用される面発光型半導体レーザおよびその製造方法に関し、特に、高次横モードの発振を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信や光記録等の技術分野において、面発光型半導体レーザ(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser diode:以下VCSELと呼ぶ)への関心が高まっている。VCSELは、しきい値電流が低く消費電力が小さい、円形の光スポットが容易に得られる、ウエハ状態での評価や光源の二次元アレイ化が可能であるといった、端面発光型半導体レーザにはない優れた特長を有する。これらの特長を生かし、通信分野における光源としての需要がとりわけ期待されている。
【0003】
素子の動作特性を安定化させかつ長い動作寿命を得るため、電極パッド等の金属層下で使用される絶縁膜の耐湿性や耐圧性を向上させる必要がある。このような技術に関する提案が幾つか成されている。例えば特許文献1の半導体装置は、基板上の上層配線を含む絶縁膜上に、第1のSiN層、SiO2層、及び第2のSiN層を順次積層し、表面保護膜を形成している。これにより、表面保護膜の上層を形成する第2のSiN層にごくわずかに存在するピンホールを透過して浸入する水分を吸水性のあるSiO2層で吸収するようにしている。
【0004】
特許文献2は、LEDアレイにおいて、配線層と基板との層間絶縁膜がアルミナ膜と第二絶縁膜の積層膜で構成され、アルミナ膜および第二絶縁膜の形成時にそれぞれピンホールが生じても両膜のピンホール同士が重なる確率は非常に低く、結果的にピンホールが少ない絶縁膜を得るものである。
【0005】
特許文献3は、共振型ダイオードにおいて、絶縁材料からなる耐湿性保護膜を形成し、耐湿性保護膜の膜厚を波長の1/2の整数倍とするものである。好ましくは、耐湿性保護膜は、酸化ケイ素および窒化ケイ素から構成される。
【0006】
特許文献4は、VCSEL構造を部分的に貫通する酸化空洞を形成し、酸化空洞の表面上に第1のパッシベーションとして窒化珪素(SiN)を形成し、この上に第2のパッシベーションとして、シリコンオキシナイトライド(SiON)を形成し、いずれか一方のパッシベーションに存在しうるピンホールを他方のパッシベーションで覆うようにしている。
【0007】
特許文献5は、VCSELのレーザ構造部の表面に熱線膨張係数が50×10-6℃-1以下のポリイミド保護膜を形成し、特許文献6は、レーザ構造部の表面に全応力が2.5×102Pa・m以下のポリイミド保護膜を形成し、ポリイミド保護膜のクラック発生やはく離を防止している。
【0008】
【特許文献1】特開平5−218015号
【特許文献2】特開平7−122781号
【特許文献3】特開2004−281929号
【特許文献4】特開2004−241777号
【特許文献5】特開2002−335045号
【特許文献6】特開2004−31633号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図19は、従来のVCSELの平面図とそのA−A線断面図である。VCSELは、n型のGaAs半導体基板10上に、n型の下部DBR(Distributed Bragg Reflector:分布ブラッグ型反射鏡)12、活性層14、電流狭窄層16、p型の上部DBR18、p型のGaAsコンタクト層20の半導体層を積層している。半導体基板10上に積層された半導体層は、下部DBR12の一部が露出するまでエッチングされ、これにより、基板上に円筒状のポストPが形成されている。ポストPは、その頂部、側面および底部を層間絶縁膜または保護膜22によって覆われている。ポスト頂部において、保護膜22にはコンタクトホール24が形成され、そこにp側電極26が形成される。p側電極26の中央には、レーザ光を出射するための開口が形成されている。ポスト底部には、層間絶縁膜22を介して円形状の外部接続用の電極パッド28が形成され、電極パッド28は、引き出し配線30によりp側電極26に接続されている。また、半導体基板10の裏面にn側電極32が形成されている。
【0010】
このようなVCSELにおいて、n型DBR12上の絶縁膜22として単一の保護膜を用い、保護膜上に金属電極パッド28を配置した場合、次のような課題があった。
【0011】
n型DBR12と電極パッド28直下に挟まれた保護膜22に、着膜時のコンタミネーション、ピンホールまたは微小クラック等による低抵抗部分があると、例えばプローブピンを電極パッド28に接触させて逆方向に電流を印加する異常リーク電流測定を行うときやバーンインテストにおいて順方向の電流を印加するときに、異常電流経路により過剰電流がn型下部DBR12またはn型基板10に流れ、VCSEL素子が破壊されてしまう。このため、VCSELの製造歩留まりの低下や素子信頼性に悪影響を与えていた。
【0012】
また、n型DBR12上に電極パッド28以外の目的で形成された位置合わせ用電極34が形成されている場合に、位置合わせ用電極34の下方の保護膜に上記したようなピンホール等の異常があり、かつ誤ってプローブピンを位置合わせ用電極34にコンタクトしてバーンインを行うと、異常電流経路により過剰電流が流れてVCSELが破壊してしまう。さらに、図19示す構成とは異なるが、電極パッド28をp型DBR18上に絶縁膜を介して形成するタイプのVCSELにおいても、絶縁膜にピンホール等の欠陥があると、その絶縁耐圧が低下し、電極パッドに電圧が印加されたときに同様の問題を生じていた。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決し、外部接続用の電極パッド等の金属層が形成される領域の絶縁耐圧を増加させ、歩留まりの向上およびコスト低減を図った面発光型半導体レーザおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る面発光型半導体レーザは、電極パッド等の金属部下にある保護膜のコンタミネーション、ピンホールやクラックによる異常電流経路を抑制するため、保護膜の絶縁性を向上させる。第1の解決手段として、保護膜を形成する半導体層表面に絶縁処理(プロトン注入)を施し絶縁耐圧を向上させる。第2の解決手段として、電極パッド等の金属部下にある保護膜を2層以上の多層構造にし、絶縁耐圧を向上させる。
【0015】
本発明に係る面発光型半導体レーザは、基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を含み、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストが形成され、当該ポスト頂部からレーザ光を出射するものであり、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続される電極パッドと、前記電極パッドとポスト底部の第1の半導体多層反射膜との間に形成される多層絶縁膜とを有する。
【0016】
好ましくは多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜はポスト底部の第1の半導体多層反射膜を覆い、第2の絶縁膜は第1の絶縁膜を覆いかつポスト側面を覆う。あるいは、第1の絶縁膜がポスト底部の第1の半導体多層反射膜およびポスト側面を覆い、第2の絶縁膜が電極パッド下において第1の絶縁膜を覆うようにしてもよい。
【0017】
基板上の半導体膜の一部に溝を形成することでレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから分離されたパッド形成領域を形成する面発光型半導体レーザの場合には、電極パッドは、多層絶縁膜を介してパッド形成領域上に形成されるようにしてもよい。この場合、多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜は第2の半導体多層反射膜上に形成され、第2の絶縁膜は第1の絶縁膜を覆いかつポスト側面を覆う。あるいは、第1の絶縁膜が第2の半導体多層反射膜およびポスト側面を覆い、第2の絶縁膜が電極パッド下において第1の絶縁膜を覆うようにしてもよい。好ましくは、多層絶縁膜は、SiO2膜またはSiN膜を含み、SiO2膜またはSiN膜の膜厚は、少なくとも0.4ミクロンである。
【0018】
さらに本発明に係る面発光型半導体レーザは、基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を含み、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストが形成され、当該ポスト頂部からレーザ光を出射し、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続される電極パッドと、ポスト底部の第1の半導体多層反射膜と電極パッドとの間に形成される絶縁膜とを有し、少なくともポスト底部の第1の半導体多層反射膜の表面が絶縁処理されている。
【0019】
基板上の半導体膜の一部に溝を形成することでレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから分離されたパッド形成領域を形成する面発光型半導体レーザの場合には、電極パッドは、パッド形成領域上において、絶縁処理された第2の半導体多層反射膜上に絶縁膜を介して形成されるようにしてもよい。
【0020】
好ましくは、絶縁処理は、プロトンイオン注入によって処理される。基板は、第1導電型の半導体基板、例えばGaAs基板であり、当該基板の裏面に下部電極が形成されている。さらに、第1の半導体多層反射膜は、n型のAlGaAs層を含み、第2の半導体多層反射膜は、p型のAlGaAs層を含む。好ましくは、第2の半導体多層反射膜は、屈折率の異なる対の半導体層を複数積層するDBRを含み、最上層に不純物濃度の高いコンタクト層を含むようにしてもよい。さらに第2の半導体多層反射膜は、第2導電型のAlAs等の電流狭窄層を含むようにしてもよい。なお、半導体多層反射膜は、AlGaAsのほかにも、GaInやGaNなどの他の化合物半導体を用いることができる。
【0021】
本発明に係る面発光型半導体レーザの製造方法は、基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストを形成するステップと、ポスト底部で露出された第1の半導体多層反射膜上に第1の絶縁膜を形成するステップと、第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成するステップと、第2の絶縁膜上に、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続された電極パッドを形成するステップとを有する。
【0022】
さらに本発明に係る面発光型半導体レーザの製造方法は、基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストを形成するステップと、ポスト底部で露出された第1の半導体多層反射膜にプロトンイオン注入を行い第1の半導体多層反射膜の表面を絶縁処理するステップと、絶縁処理された第1の半導体多層反射膜上に絶縁膜を形成するステップと、絶縁膜上にポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続された電極パッドを形成するステップとを有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電極パッドやその他の金属層等が形成される金属部下の絶縁膜を多層構造にし、あるいは絶縁膜を形成する下層を絶縁処理することにより、絶縁耐圧を向上させることができる。その結果、異常リーク電流測定やバーンイン時に異常電流経路により過剰電流が素子内部に流れることが防止され、面発光型半導体レーザの歩留まりが向上し、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0025】
図1は本発明の第1の実施例に係るVCSELの平面図とそのB−B線断面図である。なお、従来の説明で用いた図19と同一構成については、同一参照番号を付してある。第1の実施例に係るVCSELは、ポストPの形成後に露出されたn型の下部DBR12の表面を一様にプロトンイオン注入することより絶縁処理を施し、DBR12の表面に絶縁領域100を形成している。好ましくは、基板上の半導体層をエッチングしてポストPを形成した後、ポストPをフォトレジストによりマスキングし、次いで、露出されたn型DBR12を一様にプロトンインプランテーションを実施する。その後、レジストを剥離し、洗浄を行った後、層間絶縁膜22を着膜する。
【0026】
n型の下部DBR12は、屈折率を異にする1対の半導体層を複数積層したももであり、例えば、Alの含有量を異にする1対のAlGaAs層を30対以上積層する。n型の不純物として、例えばSiを用い、下部DBR12の厚さは、約4ミクロンである。下部DBR12の下層は、例えばSi不純物を含んだn型のGaAs基板である。下部DBR12へのプロトン注入は、好ましくはGaAs基板まで到達するように200KeV以上の加速電圧を与える。この際、インプランテーションの深さは4ミクロン以上となる。
【0027】
第1の実施例によれば、下部DBR12の表面を絶縁処理し、そこに絶縁領域100を形成し、その上に層間絶縁膜22を形成するようにしたので、仮に、層間絶縁膜22にピンホールや微小クラックが生じたり、層間絶縁膜22が汚染されていたとしても、絶縁領域100が介在するため、電極パッド28および位置合わせ用電極34と下部DBR12間の絶縁耐圧が向上される。従って、電極パッド28を利用したリーク電流測定やバーンインの際に、低抵抗化による異常電流経路に過剰電流が流れてVCSELが破壊するのが防止される。同様に、プローブピンを誤って位置合わせ用電極34に接触させたときにVCSELが破壊されることが防止される。なお、位置合わせ用電極34は、必ずしも必須のものとして形成される必要はない。
【0028】
次に、本発明の第2の実施例について図2を参照して説明する。第2の実施例に係るVCSELは、ポストPを形成するときに露出されたn型の下部DBR12の表面に絶縁保護膜110を形成し、絶縁保護膜110上に層間絶縁膜22を形成し、層間絶縁膜22上に電極パッド28や位置合わせ用電極34を形成している。
【0029】
好ましくは、基板上の半導体層をエッチングしてポストPを形成した後、ポストPをフォトレジストでマスキングし、露出されたn型下部DBR12上に、Si酸化膜、あるいはSi窒化膜単層、またはこれらの多層からなる絶縁保護膜110を着膜する。その後にレジストを剥離することでポスト上に着膜された絶縁保護膜はレジストと一緒に剥離される。絶縁保護膜110の着膜時の膜厚は、0.4ミクロン以上が好ましい。この膜厚であればピンホールが生じ難いためである。
【0030】
第2の実施例によれば、電極パッド28や位置合わせ用電極34とn型下部DBR112との間の絶縁膜を多層構造にしたので、仮に、層間絶縁膜22や絶縁保護膜110にピンホールや微小クラックが生じたり、それらが汚染されていたとしても、いずれか一方の膜が他方の膜を補完するため、電極パッド28と下部DBR12間の絶縁耐圧が向上される。このため、電極パッド28を利用したリーク電流測定やバーンインの際に、低抵抗化による異常電流経路を過剰電流が流れてVCSELが破壊することが防止される。同様に、プローブピンを誤って位置合わせ用電極34に接触させたときにVCSELが破壊されることが防止される。
【0031】
次に、本発明の第3の実施例について図3を参照して説明する。第3の実施例は、第2の実施例のVCSELの変形である。すなわち、第2の実施例では、絶縁略膜110は、ポストPを除く下部DBR12の全面に形成され、その絶縁保護膜110を覆うように層間絶縁膜22が形成されたが、第3の実施例では、層間絶縁膜22を形成し、層間絶縁膜22上に絶縁保護膜110aが形成されている。また、絶縁保護膜110aは、電極パッド28や位置合わせ用電極34が形成される領域にのみ形成されている。
【0032】
次に、本発明の第4の実施例について図4を参照して説明する。第4の実施例は、第1の実施例のVCSELの変形である。すなわち、第1の実施例では、ポストP以外の下部DBR12の全面に一様に絶縁処理を行ったが、第4の実施例では、電極パッド28や位置合わせ用電極34が形成される領域においてのみに下部DBR12の表面に絶縁処理を施し、絶縁領域100を形成している。
【0033】
次に、本発明の第5の実施例について図5を参照して説明する。第5の実施例では、n型のGaAs基板上に、下部DBR12、活性層14、電流狭窄層18、上部DBR20およびコンタクト層22を積層し、次いで、コンタクト層22から下部DBR12の一部に至る深さの環状またはリング状のトレンチ120を形成している。トレンチ120により、レーザ光を出射する発光部である円筒状のポストPが形成され、またポストPから隔てられたパッド形成領域130が形成されている。トレンチ120の形成と同時に、パッド形成領域130の外縁に沿う外縁溝140を形成するようにしてもよい。外縁溝140は、ウエハから各VCSELを切り出すときのスクライブ領域とすることができる。
【0034】
パッド形成領域130の上部DBR18の表面は、プロトンイオン注入によって絶縁処理された絶縁領域150が形成されている。絶縁処理された上部DBR18およびポストPを含む全面に層間絶縁膜22が形成されている。p側電極26は、ポスト頂部においてコンタクトホールを介してコンタクト層20にオーミック接続され、さらに引き出し配線30を介して電極パッド28に接続されている
【0035】
好ましくは、ポストPを含んだトレンチ120をフォトレジストでマスキングした後、露出されたp型DBR18(コンタクト層20を含む)表面からプロトンインプランテーションにより絶縁処理を行い、表面に絶縁領域150を形成する。p型の上部DBR18は、屈折率を異にする1対の半導体層を複数積層したももであり、例えば、Alの含有量を異にする1対のAlGaAs層を30対以上積層する。p型の不純物として、例えば炭素(C)を用い、上部DBR18の厚さは、約3ミクロンである。上部DBR12の最上層は、p型GaAsコンタクト層20である。上部DBR18へのプロトン注入は、150KeV以上の加速電圧が好ましい。このとき、プロトンインプランテーションの深さは、1ミクロン以上である。
【0036】
第5の実施例によれば、層間絶縁膜22に仮にピンホールやクラック等の欠陥があっても、絶縁領域150による低抵抗化による異常電流経路を抑制することができ、電極パッド28や位置決め用電極34とp型上部DBR18との間の絶縁耐圧を向上させることができる。
【0037】
次に、本発明の第6の実施例について図6を参照して説明する。第6の実施例は、パッド形成領域130において上部DBR18(コンタクト層20)上に絶縁保護膜160が形成され、絶縁保護膜160を覆うように層間絶縁膜22が形成されている。好ましくは、ポストPを含んだトレンチ形成部をフォトレジストでマスキングし、露出されたp型上部DBR18上にSi酸化膜あるいはをSi窒化膜を単層または多層で着膜し、その後、フォトレジスト上の絶縁保護膜をレジストと一緒に剥離する。絶縁保護膜の着膜時の膜厚は、0.4ミクロン以上が好ましい。さらに、ポスト上部をフォトレジストでマスキングし、2層目の絶縁保護膜を着膜し、上記と同様にレジスト上の絶縁保護膜とレジストと一緒に除去するようにしてもよい。
【0038】
第6の実施例によれば、層間絶縁膜22と絶縁保護膜160によって、パッド電極28や位置決め用電極34と上部DBR18間の絶縁を行うようにしたので、絶縁耐圧を向上させることができる。
【0039】
次に、第1の実施例のVCSELの製造方法について図7および図8を参照して説明する。先ず、図7(a)に示すように、有機金属気相成長(MOCVD)法により、n型GaAs基板10上に、Siキャリア濃度1×1018cm-3、膜厚0.2μm程度のn型GaAsバッファ層11を積層し、その上に、Al0.9Ga0.1AsとAl0.12Ga0.88Asとをそれぞれの膜厚が媒質内波長の1/4となるように交互に40.5周期積層され、キャリア濃度1×1018cm-3で総膜厚が約4μmとなる下部n型DBR12、アンドープ下部Al0.6Ga0.4Asスぺーサー層とアンドープ量子井戸活性層(膜厚70nmGaAs量子井戸層3層と膜厚50nmAl0.3Ga0.7As障壁層4層とで構成されている)とアンドープ上部Al0.6Ga0.4Asスぺーサー層とで構成された膜厚が媒質内波長となる活性領域14、p型のAlAs層16、その上にAl0.9Ga0.1AsとAl0.12Ga0.88Asとをそれぞれの膜厚が媒質内波長の1/4となるように交互に30周期積層した炭素キャリア濃度が1×1018cm-3、総膜厚が約3μmとなる上部p型DBR18、キャリア濃度1×1019cm-3となる膜厚20nm程のp型のGaAsコンタクト層20を順次積層する。なお、DBRの電気的抵抗を下げるために、Al0.9Ga0.1AsとAl0.12Ga0.88Asの界面にAl組成を90%から30%に段階的に変化させた膜厚が20nm程度の領域を設けることも可能である。
【0040】
次に、図7(b)に示すように、フォトリソ工程により結晶成長層上にレジストマスクRを形成し、三塩化ホウ素をエッチングガスとして用いた反応性イオンエッチングにより下部DBR12の途中までエッチングし、図7(c)に示すように、円柱状のポストPを形成する。ポストPは、10〜30μm程度の径を有する。勿論、円柱以外にも角柱のポストであってもよい。
【0041】
次に、図7(d)に示すように、例えば340℃の水蒸気雰囲気に基板を一定時間晒し、酸化処理を行う。電流狭窄層16を構成するAlAs層は、同じくその一部を構成するAl0.9Ga0.1As層やAl0.12Ga0.88As層と比べ著しく酸化速度が速いため、ポストPの側面からポスト形状を反映した酸化領域16aが形成され、酸化されずに残った非酸化領域(導電領域)が電流注入領域あるいは導電領域となる。
【0042】
次に、図8(e)に示すように、レジストRを除去した後、ポストPを取り囲むレジストR1を形成する。次に、図8(f)に示すように、レジストR1をマスクに用い、ポストPの底部において露出されたn型の下部DBR12の表面からプロトンイオン注入を行う。好ましくは、下部DBR12へのプロトン注入をGaAs基板まで到達させ、200KeV以上の加速電圧を与える。この際、インプランテーションの深さは、4ミクロン以上が好ましい。こうして、n型下部DBR12の表面に絶縁領域100が形成される。
【0043】
次に、レジストR1を除去した後、図8(g)に示すように、プラズマCVD装置を用いて、ポストPを含む基板全面にSiNからなる層間絶縁膜22を蒸着する。その後、図8(h)に示すように、フォトリソ工程を用いて層間絶縁膜122をエッチングし、ポストPの頂部の円形状のコンタクトホールを形成し、コンタクト層20を露出させる。
【0044】
その後、p側電極材料としてAuを100〜1000nm、望ましくは600nm蒸着し、リフトオフ工程により、p側電極26、電極パッド28、引き出し配線30、および位置合わせよう電極34を形成する。また、p側電極26の中央には、レーザ光を出射するための開口26aが形成される。
【0045】
そして、基板裏面には、n電極32としてAu/Geが蒸着される。その後、アニール温度250℃〜500℃、望ましくは300℃〜400℃で10分間アニールを行う。こうして、プロトン注入により絶縁耐圧が向上された第1の実施例のVCSELが得られる。
【0046】
次に、第2の実施例のVCSELの製造方法について説明する。第2の実施例のVCSELは、図7(a)から図8(e)に示す工程は第1の実施例と同様である。次に、第2の実施例では、図9(i)に示すように、絶縁保護膜110を基板全面に形成する。次に、図9(j)に示すように、レジストR1を除去すると、レジストR1上の絶縁保護膜110が一緒に除去される。その結果、ポスト底部において露出された下部DBR12上に絶縁保護膜110がパターニングされる。
【0047】
次に、図9(k)に示すように、層間絶縁膜22を形成し、図9(l)に示すように、層間絶縁膜22をパターニングし、第1の実施例のときと同様に、p側上部電極26、電極パッド28、引き出し配線30、および位置合わせよう電極34を形成する。
【0048】
第3および第4の実施例のVCSELを製造する場合には、プロトン注入または絶縁保護膜を形成するときのレジストマスクの形状を変更すればよい。
【0049】
次に、第5の実施例に係るVCSELの製造方法について説明する。第1の実施例と同様にGaAs基板上に半導体層を積層し、図10(a)に示すように、レジストマスクRを形成し、三塩化ホウ素をエッチングガスとして用いた反応性イオンエッチングにより下部DBR12の途中までエッチングし、図10(b)に示すように、環状のトレンチ120を形成する。これにより、10〜30μm程度の径の円柱もしくは角柱のポストPと、その周囲にパッド形成領域130を形成する。
【0050】
次に、図10(c)に示すように、電流狭窄層16を構成するAlAsをポストPの側面から酸化し、酸化領域16aが形成される。次に、図11(d)に示すように、レジストRを除去した後、ポストPを取り囲むレジストR1を形成する。次に、図11(e)に示すように、レジストR1をマスクに用い、パッド形成領域130において露出されたp型のコンタクト層20の表面からp型の上部DBR内へプロトンイオン注入を行う。好ましくは、150KeV以上の加速電圧を与える。この際、インプランテーションの深さは、3ミクロン以上が好ましい。こうして、コンタクト層20から上部DBR18の一部に絶縁領域150が形成される。
【0051】
次に、レジストR1を除去した後、図11(f)に示すように、プラズマCVD装置を用いて、ポストPを含む基板全面にSiNからなる層間絶縁膜22を蒸着する。以後の工程は、第1の実施例と同様である。
【0052】
図12は、VCSELチップが実装された半導体レーザ装置のパッケージ(モジュール)例を示す概略断面を示す図である。パッケージ300では、金属ステム330上のサブマウント320上に、VCSELアレイが形成されたチップ310が固定されている。導電性のリード340、342は、ステム330の貫通孔(図示省略)内に挿入され、一方のリード340は、チップ310の裏面に形成されたn側の下部電極32に電気的に接続され、他方のリード342は、チップ310の上面に形成されたp側電極26(電極パッド28)にボンディングワイヤ等を介して電気的に接続される。
【0053】
キャップ350の出射窓352内にボールレンズ360が固定されている。ボールレンズ360の光軸は、上部電極130の開口132のほぼ中心と一致するように位置決めされる。また、チップ310とボールレンズ360との距離は、チップ310からのレーザ光の放射角度θ内にボールレンズ360が含まれるように調整される。リード340、342間に順方向の電圧が印加されると、チップ310からレーザ光が出射され、ボールレンズ360を介して外部へ出力される。なお、キャップ内に、VCSELの発光状態をモニターするための受光素子を含ませるようにしてもよい。
【0054】
図13は、さらに他のパッケージの構成を示す図であり、好ましくは、後述する空間伝送システムに使用される。同図に示すパッケージ302は、ボールレンズ360を用いる代わりに、キャップ350の中央の出射窓352内に平板ガラス362を固定している。平板ガラス362の中心は、チップ310の光軸と一致するように位置決めされる。チップ310と平板ガラス362との距離は、平板ガラス362の開口径がチップ310からのレーザ光の放射角度θ以上になるように調整されている。
【0055】
図14は、図12に示すパッケージまたはモジュールを光送信装置に適用したときの構成を示す断面図である。光送信装置400は、ステム330に固定された円筒状の筐体410と、筐体410の端面に一体に形成されたスリーブ420と、スリーブ420の開口422内に保持されるフェルール430と、フェルール430によって保持される光ファイバ440とを含んで構成される。
【0056】
ステム330の円周方向に形成されたフランジ332には、筐体410の端部が固定される。フェルール430は、スリーブ420の開口422に正確に位置決めされ、光ファイバ440の光軸がボールレンズ360の光軸に整合される。フェルール430の貫通孔432内に光ファイバ440の芯線が保持されている。
【0057】
チップ310の表面から出射されたレーザ光は、ボールレンズ360によって集光され、集光された光は、光ファイバ440の芯線に入射され、送信される。上記例ではボールレンズ360を用いているが、これ以外にも両凸レンズや平凸レンズ等の他のレンズを用いることができる。さらに、光送信装置400は、リード340、342に電気信号を印加するための駆動回路を含むものであってもよい。さらに、光送信装置400は、光ファイバ440を介して光信号を受信するための受信機能を含むものであってもよい。
【0058】
図15は、図13に示すパッケージを空間伝送システムに用いたときの構成を示す図である。空間伝送システム500は、パッケージ300と、集光レンズ510と、拡散板520と、反射ミラー530とを含んでいる。空間伝送システム500では、パッケージ300に用いられたボールレンズ360を用いる代わりに、集光レンズ510を用いている。集光レンズ510によって集光された光は、反射ミラー530の開口532を介して拡散板520で反射され、その反射光が反射ミラー530へ向けて反射される。反射ミラー530は、その反射光を所定の方向へ向けて反射させ、光伝送を行う。空間伝送の光源の場合には、マルチスポット型のVCSELを用い、高出力を得るようにしてもよい。
【0059】
図16は、VCSELを光源に利用した光伝送システムの一構成例を示す図である。光伝送システム600は、VCSELが形成されたチップ310を含む光源610と、光源610から放出されたレーザ光の集光などを行う光学系620と、光学系620から出力されたレーザ光を受光する受光部630と、光源610の駆動を制御する制御部640とを有する。制御部640は、VCSELを駆動するための駆動パルス信号を光源610に供給する。光源610から放出された光は、光学系620を介し、光ファイバや空間伝送用の反射ミラーなどにより受光部630へ伝送される。受光部630は、受光した光をフォトディテクターなどによって検出する。受光部630は、制御信号650により制御部640の動作(例えば光伝送の開始タイミング)を制御することができる。
【0060】
次に、光伝送システムに利用される光伝送装置の構成について説明する。図17は、光伝送装置の外観構成を示している。光伝送装置700は、ケース710、光信号送信/受信コネクタ接合部720、発光/受光素子730、電気信号ケーブル接合部740、電源入力部750、動作中を示すLED760、異常発生を示すLED770、DVIコネクタ780、送信回路基板/受信回路基板790を有している。
【0061】
光伝送装置700を用いた映像伝送システムを図18に示す。映像伝送システム800は、映像信号発生装置810、画像表示装置820、DVI用電気ケーブル830、送信モジュール840、受信モジュール850、映像信号伝送光信号用コネクタ860、光ファイバ870、制御信号用ケーブルコネクタ880、電源アダプタ890、DVI用電気ケーブル900を含んでいる。映像信号発生装置810で発生された映像信号を液晶ディスプレイなどの画像表示装置820に伝送するため、図17に示す光伝送装置を利用している。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る面発光型半導体レーザは、光情報処理や光高速データ通信の分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施例に係るVCSELの平面図とそのB−B線断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係るVCSELの平面図とそのC−C線断面図である。
【図3】本発明の第3の実施例に係るVCSELの平面図とそのD−D線断面図である。
【図4】本発明の第4の実施例に係るVCSELの平面図とそのE−E線断面図である。
【図5】本発明の第5の実施例に係るVCSELの平面図とそのF−F線断面図である。
【図6】本発明の第6の実施例に係るVCSELの平面図とそのG−G線断面図である。
【図7】本発明の第1の実施例に係るVCSELの製造方法を説明する工程断面図である。
【図8】本発明の第1の実施例に係るVCSELの製造方法を説明する工程断面図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係るVCSELの製造方法を説明する工程断面図である。
【図10】本発明の第5の実施例に係るVCSELの製造方法を説明する工程断面図である。
【図11】本発明の第5の実施例に係るVCSELの製造方法を説明する工程断面図である。
【図12】VCSELが形成された半導体チップを実装したパッケージの構成を示す概略断面図である。
【図13】他のパッケージの構成を示す概略断面図である。
【図14】図12に示すパッケージを用いた光送信装置の構成を示す概略断面図である。
【図15】図13に示すパッケージを空間伝送システムに用いたときの構成を示す図である。
【図16】光伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図17】光伝送装置の外観構成を示す図である。
【図18】図17の光伝送装置を利用した映像伝送システムを示す図である。
【図19】従来のVCSELを示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10:GaAs半導体基板 12:下部下部DBR
14:活性層 16:電流狭窄層
18:上部DBR 20:コンタクト層
22:層間絶縁膜 24:コンタクトホール
26:p側電極 28:電極パッド
30:引き出し配線 32:n側電極
34:位置合わせ用電極 100:絶縁領域
110:絶縁保護膜 120:トレンチ
130:パッド形成領域 140:外縁溝
150:絶縁領域 P:ポスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を含み、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストが形成され、当該ポスト頂部からレーザ光を出射する面発光型半導体レーザであって、
ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続される電極パッドと、
前記電極パッドとポスト底部の第1の半導体多層反射膜との間に形成される多層絶縁膜とを有する、面発光型半導体レーザ。
【請求項2】
前記多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜はポスト底部の第1の半導体多層反射膜を覆い、第2の絶縁膜は第1の絶縁膜を覆いかつポスト側面を覆う、請求項1に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項3】
前記多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜はポスト底部の第1の半導体多層反射膜およびポスト側面を覆い、第2の絶縁膜は電極パッド下において第1の絶縁膜を覆う、請求項1に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項4】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、第1の半導体多層反射膜とともに共振器を構成する第2導電型の第2の半導体多層膜を含む半導体膜が積層され、前記半導体膜の一部に溝を形成することでレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから分離されたパッド形成領域を形成する面発光型半導体レーザであって、
ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続され、かつパッド形成領域上に配される電極パッドと、
前記電極パッドとパッド形成領域の第2の半導体多層反射膜との間に形成される多層絶縁膜とを有する、面発光型半導体レーザ。
【請求項5】
前記多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜は第2の半導体多層反射膜を覆い、第2の絶縁膜は第1の絶縁膜を覆いかつポスト側面を覆う、請求項4に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項6】
前記多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜は第2の半導体多層反射膜およびポスト側面を覆い、第2の絶縁膜は電極パッド下において第1の絶縁膜を覆う、請求項4に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項7】
前記多層絶縁膜は、少なくともSiO2膜またはSiN膜のいずれかを含む、請求項1ないし6いずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項8】
前記SiO2膜またはSiN膜の膜厚は、少なくとも0.4ミクロンである、請求項7に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項9】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を含み、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストが形成され、当該ポスト頂部からレーザ光を出射する面発光型半導体レーザであって、
ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続される電極パッドと、
ポスト底部の第1の半導体多層反射膜と電極パッドとの間に形成される絶縁膜とを有し、前記絶縁膜が形成される下層の第1の半導体多層反射膜の表面が絶縁処理されている、面発光型半導体レーザ。
【請求項10】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層膜、活性領域、第1の半導体多層膜とともに共振器を構成する第2導電型の第2の半導体多層膜を含む半導体膜が積層され、前記半導体膜の一部に溝を形成することでレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから分離されたパッド形成領域を形成する面発光型半導体レーザであって、
ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続され、かつパッド形成領域上に配される電極パッドと、
電極パッド形成領域の第2の半導体多層反射膜と電極パッドとの間に形成される絶縁膜とを有し、前記絶縁膜が形成される下層の第2の半導体多層反射膜の表面が絶縁処理されている、面発光型半導体レーザ。
【請求項11】
前記絶縁処理は、プロトンイオン注入によって行われる、請求項10または11に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項12】
前記基板は、第1導電型の半導体基板であり、当該半導体基板の裏面に下部電極が形成されている、請求項1ないし11いずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項13】
前記ポスト頂部には、第2の半導体多層反射膜と電気的に接続され、かつレーザ光の出射口が形成された上部電極が形成され、前記上部電極と前記電極パッドが電気的に接続されている、請求項1ないし12いずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項14】
第1の半導体多層反射膜は、n型のAlGaAs層を含み、第2の半導体多層反射膜は、p型のAlGaAs層を含む、請求項1ないし13いずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項15】
請求項1ないし14いずれか1つに記載の面発光型半導体レーザと光学部材を実装したモジュール。
【請求項16】
請求項15に記載されたモジュールと、モジュールから発せられたレーザ光を光媒体を介して送信する送信手段とを備えた、光送信装置。
【請求項17】
請求項15に記載されたモジュールと、モジュールから発せられた光を空間伝送する伝送手段とを備えた、光空間伝送装置。
【請求項18】
請求項15に記載されたモジュールと、モジュールから発せられたレーザ光を送信する送信手段とを備えた、光送信システム。
【請求項19】
請求項15に記載されたモジュールと、モジュールから発せられた光を空間伝送する伝送手段とを備えた、光空間伝送システム。
【請求項20】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、
第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストを形成するステップと、
ポスト底部で露出された第1の半導体多層反射膜上に第1の絶縁膜を形成するステップと、
第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成するステップと、
第2の絶縁膜上に、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続される電極パッドを形成するステップと、
を有する面発光型半導体レーザの製造方法。
【請求項21】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、
第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストを形成するステップと、
ポスト底部で露出された第1の半導体多層反射膜にプロトンイオン注入を行い第1の半導体多層反射膜の表面を絶縁処理するステップと、
絶縁処理された第1の半導体多層反射膜上に絶縁膜を形成するステップと、
前記絶縁膜上に、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続された電極パッドを形成するステップと、
を有する面発光型半導体レーザの製造方法。
【請求項22】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、
第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去する溝を形成し、当該溝によってレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから隔離されたパッド形成領域とを形成するステップと、
パッド形成領域で露出された第2の半導体多層反射膜上に第1の絶縁膜を形成するステップと、
第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成するステップと、
第1の絶縁膜上に、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続された電極パッドを形成するステップと、
を有する面発光型半導体レーザの製造方法。
【請求項23】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、
第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去する溝を形成し、当該溝によってレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから隔離されたパッド形成領域とを形成するステップと、
パッド形成領域で露出された第2の半導体多層反射膜にプロトンイオン注入を行い第2の半導体多層反射膜の表面を絶縁処理するステップと、
絶縁処理された第2の半導体多層反射膜上に絶縁膜を形成するステップと、
前記絶縁膜上に、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続された電極パッドを形成するステップと、
を有する面発光型半導体レーザの製造方法。
【請求項24】
前記製造方法はさらに、ポストを形成した後に、ポスト内の第1または第2の半導体多層反射膜内に含まれる電流狭窄層をポスト側面から酸化するステップを含む、請求項20ないし23いずれか1つに記載の製造方法。
【請求項1】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を含み、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストが形成され、当該ポスト頂部からレーザ光を出射する面発光型半導体レーザであって、
ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続される電極パッドと、
前記電極パッドとポスト底部の第1の半導体多層反射膜との間に形成される多層絶縁膜とを有する、面発光型半導体レーザ。
【請求項2】
前記多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜はポスト底部の第1の半導体多層反射膜を覆い、第2の絶縁膜は第1の絶縁膜を覆いかつポスト側面を覆う、請求項1に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項3】
前記多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜はポスト底部の第1の半導体多層反射膜およびポスト側面を覆い、第2の絶縁膜は電極パッド下において第1の絶縁膜を覆う、請求項1に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項4】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、第1の半導体多層反射膜とともに共振器を構成する第2導電型の第2の半導体多層膜を含む半導体膜が積層され、前記半導体膜の一部に溝を形成することでレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから分離されたパッド形成領域を形成する面発光型半導体レーザであって、
ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続され、かつパッド形成領域上に配される電極パッドと、
前記電極パッドとパッド形成領域の第2の半導体多層反射膜との間に形成される多層絶縁膜とを有する、面発光型半導体レーザ。
【請求項5】
前記多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜は第2の半導体多層反射膜を覆い、第2の絶縁膜は第1の絶縁膜を覆いかつポスト側面を覆う、請求項4に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項6】
前記多層絶縁膜は、少なくとも第1の絶縁膜および第2の絶縁膜を含み、第1の絶縁膜は第2の半導体多層反射膜およびポスト側面を覆い、第2の絶縁膜は電極パッド下において第1の絶縁膜を覆う、請求項4に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項7】
前記多層絶縁膜は、少なくともSiO2膜またはSiN膜のいずれかを含む、請求項1ないし6いずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項8】
前記SiO2膜またはSiN膜の膜厚は、少なくとも0.4ミクロンである、請求項7に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項9】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を含み、第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストが形成され、当該ポスト頂部からレーザ光を出射する面発光型半導体レーザであって、
ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続される電極パッドと、
ポスト底部の第1の半導体多層反射膜と電極パッドとの間に形成される絶縁膜とを有し、前記絶縁膜が形成される下層の第1の半導体多層反射膜の表面が絶縁処理されている、面発光型半導体レーザ。
【請求項10】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層膜、活性領域、第1の半導体多層膜とともに共振器を構成する第2導電型の第2の半導体多層膜を含む半導体膜が積層され、前記半導体膜の一部に溝を形成することでレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから分離されたパッド形成領域を形成する面発光型半導体レーザであって、
ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続され、かつパッド形成領域上に配される電極パッドと、
電極パッド形成領域の第2の半導体多層反射膜と電極パッドとの間に形成される絶縁膜とを有し、前記絶縁膜が形成される下層の第2の半導体多層反射膜の表面が絶縁処理されている、面発光型半導体レーザ。
【請求項11】
前記絶縁処理は、プロトンイオン注入によって行われる、請求項10または11に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項12】
前記基板は、第1導電型の半導体基板であり、当該半導体基板の裏面に下部電極が形成されている、請求項1ないし11いずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項13】
前記ポスト頂部には、第2の半導体多層反射膜と電気的に接続され、かつレーザ光の出射口が形成された上部電極が形成され、前記上部電極と前記電極パッドが電気的に接続されている、請求項1ないし12いずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項14】
第1の半導体多層反射膜は、n型のAlGaAs層を含み、第2の半導体多層反射膜は、p型のAlGaAs層を含む、請求項1ないし13いずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項15】
請求項1ないし14いずれか1つに記載の面発光型半導体レーザと光学部材を実装したモジュール。
【請求項16】
請求項15に記載されたモジュールと、モジュールから発せられたレーザ光を光媒体を介して送信する送信手段とを備えた、光送信装置。
【請求項17】
請求項15に記載されたモジュールと、モジュールから発せられた光を空間伝送する伝送手段とを備えた、光空間伝送装置。
【請求項18】
請求項15に記載されたモジュールと、モジュールから発せられたレーザ光を送信する送信手段とを備えた、光送信システム。
【請求項19】
請求項15に記載されたモジュールと、モジュールから発せられた光を空間伝送する伝送手段とを備えた、光空間伝送システム。
【請求項20】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、
第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストを形成するステップと、
ポスト底部で露出された第1の半導体多層反射膜上に第1の絶縁膜を形成するステップと、
第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成するステップと、
第2の絶縁膜上に、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続される電極パッドを形成するステップと、
を有する面発光型半導体レーザの製造方法。
【請求項21】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、
第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去することによりポストを形成するステップと、
ポスト底部で露出された第1の半導体多層反射膜にプロトンイオン注入を行い第1の半導体多層反射膜の表面を絶縁処理するステップと、
絶縁処理された第1の半導体多層反射膜上に絶縁膜を形成するステップと、
前記絶縁膜上に、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続された電極パッドを形成するステップと、
を有する面発光型半導体レーザの製造方法。
【請求項22】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、
第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去する溝を形成し、当該溝によってレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから隔離されたパッド形成領域とを形成するステップと、
パッド形成領域で露出された第2の半導体多層反射膜上に第1の絶縁膜を形成するステップと、
第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成するステップと、
第1の絶縁膜上に、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続された電極パッドを形成するステップと、
を有する面発光型半導体レーザの製造方法。
【請求項23】
基板上に、少なくとも第1導電型の第1の半導体多層反射膜、活性領域、および第2導電型の第2の半導体多層反射膜を積層するステップと、
第2の半導体多層反射膜から第1の半導体多層反射膜の一部に至る半導体膜を除去する溝を形成し、当該溝によってレーザ光を出射するポストを形成するとともにポストから隔離されたパッド形成領域とを形成するステップと、
パッド形成領域で露出された第2の半導体多層反射膜にプロトンイオン注入を行い第2の半導体多層反射膜の表面を絶縁処理するステップと、
絶縁処理された第2の半導体多層反射膜上に絶縁膜を形成するステップと、
前記絶縁膜上に、ポスト頂部の第2の半導体多層反射膜と電気的に接続された電極パッドを形成するステップと、
を有する面発光型半導体レーザの製造方法。
【請求項24】
前記製造方法はさらに、ポストを形成した後に、ポスト内の第1または第2の半導体多層反射膜内に含まれる電流狭窄層をポスト側面から酸化するステップを含む、請求項20ないし23いずれか1つに記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−34637(P2008−34637A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206611(P2006−206611)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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