説明

鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造

【課題】車体フレームの剛性向上に寄与すると共にバッテリ積載性能の向上を図ることができる鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造を提供する。
【解決手段】各バッテリモジュール17a〜17jは、それぞれ上面視で長辺及び短辺を有すると共に前記長辺よりも長い縦辺を有する四角柱状であり、車体フレーム11は、上面視で各メインフレーム13がヘッドパイプから外側方に膨らむように延びる膨出部Eと、膨出部Eの後方で各メインフレーム13が互いの距離を狭めるように延びる幅狭部Fとを有し、前記膨出部Eには、各バッテリモジュール17a〜17jの内の一部が前記長辺に沿う方向を車両左右方向に沿わせて配置され、前記幅狭部Fには、各バッテリモジュール17a〜17jの内の他の一部が前記長辺に沿う方向を車両前後方向に沿わせて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動二輪車等の鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリから供給される電力によりモータを駆動させて走行する電動二輪車が良く知られている。
例えば特許文献1には、電動式スクータにおいて、複数のバッテリの積載方向等を相互に変えることにより、バッテリ積載性能を向上して走行性能の向上(距離の増大)を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3592755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のバッテリは、単にスクータのフレームの車幅方向の寸法に合わせて配置したに過ぎず、フレームの剛性を補うことや配線の取り回しを容易にする等の思想は何ら考慮されていない。そして、近年のバッテリの小型化によりその搭載自由度が増している現状では、より良いバッテリ搭載構造が求められている。特に、スポーツタイプのオートバイにおいては、ヘッドパイプ近傍のフレーム剛性が重要であり、かつ高出力化のために多数のバッテリの搭載も求められており、これらへの配慮や思想は一層重要なポイントとなる。
【0005】
そこで本発明は、車体フレームの剛性向上に寄与すると共にバッテリ積載性能の向上を図ることができる鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、
ヘッドパイプ(12)から後方に延びる左右一対のメインフレーム(13)を有するツインチューブフレーム(11)と、複数のバッテリモジュール(17a〜17j)からなる走行用バッテリ(2)と、前記走行用バッテリ(2)から供給される電力により駆動するモータ(3)とを備える鞍乗り型電動車両(1)のバッテリ搭載構造において、
前記各バッテリモジュール(17a〜17j)は、それぞれ上面視で長辺(B)及び短辺(T)を有すると共に前記長辺(B)よりも長い縦辺(H)を有する四角柱状であり、前記ツインチューブフレーム(11)は、上面視で前記各メインフレーム(13)が前記ヘッドパイプ(12)から外側方に膨らむように延びる膨出部(E)と、前記膨出部(E)の後方で前記各メインフレーム(13)が互いの距離を狭めるように延びる幅狭部(F)とを有し、前記膨出部(E)には、前記各バッテリモジュール(17a〜17j)の内の一部が前記長辺(B)に沿う方向を車両左右方向に沿わせて配置され、前記幅狭部(F)には、前記各バッテリモジュール(17a〜17j)の内の他の一部が前記長辺(B)に沿う方向を車両前後方向に沿わせて配置されることを特徴とする。
なお、前記鞍乗り型電動車両には、車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、二輪車(スクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。
請求項2に記載した発明は、
前記走行用バッテリ(2)は、車両側面視で前記メインフレーム(13)を上下に縦断するように配置されることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、
前記走行用バッテリ(2)を収納するバッテリケース(18)と、前記バッテリケース(18)の外方を覆って車両外観の一部を形成する車体カバー(23)とを備え、前記膨出部(E)に配置した複数の前記バッテリモジュール(17a〜17g)の内、前記膨出部(E)の前端部に位置する前記バッテリモジュール(17a)は、その後方に位置する前記バッテリモジュール(17b〜17g)よりも上面高さを低くして配置されることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、
前記走行用バッテリ(2)を収納するバッテリケース(18)と、前記バッテリケース(18)の外方を覆って車両外観の一部を形成する車体カバー(23)とを備え、前記膨出部(E)に配置した複数の前記バッテリモジュール(17a〜17g)の内、前記膨出部(E)の前端部に位置する前記バッテリモジュール(17a)は、その後方に位置する前記バッテリモジュール(17b〜17g)が左右に複数並んで配置されるのに比して、左右数を少なくして配置されることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、
前記走行用バッテリ(2)を収納するバッテリケース(18)と、前記モータ(3)を収容するモータケース(38)と、前記バッテリケース(18)の下面から下方に延びるバッテリ支持ステー(18c)と、前記モータケース(38)に形成されるモータ支持ボス(35)とを備え、前記モータケース(38)は、前記バッテリケース(18)の下方で前記ツインチューブフレーム(11)に囲まれた部位に配置され、前記バッテリ支持ステー(18c)及びモータ支持ボス(35)は、前記ツインチューブフレーム(11)に設けられた取り付け部(13a)に同軸に支持されることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、
前記各バッテリモジュール(17a〜17j)は、それぞれの上端部における前記短辺(T)に沿う一対の角部の一方を切り欠いて面取り部(20b)を形成し、前記膨出部(E)に配置した複数の前記バッテリモジュール(17a〜17g)の少なくとも一部は、左右に一対並んで配置され、これら左右に並ぶバッテリモジュール(17b〜17g)の前記面取り部(20b)は、前記走行用バッテリ(2)の上端部の車幅方向外側に配置されることを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、
前記膨出部(E)に配置した複数の前記バッテリモジュール(17a〜17g)の少なくとも一部は、左右に一対並んで配置され、これら左右に並ぶバッテリモジュール(17b〜17g)の正極端子(19a)は、前記走行用バッテリ(2)の上端部の車幅方向外側に配置されることを特徴とする。
請求項8に記載した発明は、
前記幅狭部(F)に配置した前記バッテリモジュール(17h〜17j)の正極端子(19a)は、前記走行用バッテリ(2)の前後方向後側に配置されることを特徴とする。
請求項9に記載した発明は、
前記各バッテリモジュール(17a〜17j)は、前記膨出部(E)の車幅方向一側に配置された前記バッテリモジュール(17b〜17d)を含む第一バッテリパック(2a)と、前記膨出部(E)の車幅方向他側に配置された前記バッテリモジュール(17e〜17g)を含む第二バッテリパック(2b)とを並列に構成し、かつ前記各バッテリパック(2a,2b)の前後方向前側に正極側出力端子(19AL,19AR)を、前後方向後側に負極側出力端子(19BL,19BR)をそれぞれ設けるように接続され、
前記第一バッテリパック(2a)は、前記幅狭部(F)に左右に複数並んで配置された前記バッテリモジュール(17h〜17j)の内、前記車幅方向一側の最外側に位置する前記バッテリモジュール(17h)の正極端子(19a)に、前記膨出部(E)の後端部の前記車幅方向一側に位置する前記バッテリモジュール(17d)の負極端子(19b)を接続し、
前記第二バッテリパック(2b)は、前記幅狭部(F)に左右に複数並んで配置された前記バッテリモジュール(17h〜17j)の内、前記車幅方向他側の最外側に位置する前記バッテリモジュール(17j)の正極端子(19a)に、前記膨出部(E)の後端部の前記車幅方向他側に位置する前記バッテリモジュール(17g)の負極端子(19b)を接続することを特徴とする。
請求項10に記載した発明は、
前記走行用バッテリ(2)の下方に車幅方向に沿う駆動軸(39)を有する前記モータ(3)が配置され、前記膨出部(E)に配置した前記バッテリモジュール(17a〜17g)は、上面視で前記モータ(3)の駆動中心軸線(C1)よりも前方に配置され、前記幅狭部(F)に配置した前記バッテリモジュール(17h〜17j)は、上面視で前記モータ(3)の駆動中心軸線(C1)よりも後方に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、ツインチューブフレームといったスポーツバイク用のフレーム構造における幅狭部に比して剛性の確保が難しい膨出部において、各バッテリモジュールの内の一部をその長辺方向が車両左右方向(車幅方向)を指向するように(左右メインフレーム間に渡るように)配置することで、このバッテリモジュールをツインチューブフレームの剛性部材としても機能させることが可能となり、スポーツバイク用のバッテリ搭載構造として車体フレームの剛性向上を図ると共に、車幅方向に沿わせたバッテリモジュールを前後に複数並べることで、バッテリ積載性能の向上を図ることができる。
また、ツインチューブフレームの幅狭部において、各バッテリモジュールの内の他の一部をその長辺方向が車両前後方向を指向するように配置することで、このバッテリの積載量を幅狭部に合わせて任意に調整することが可能となり、バッテリ積載性能のさらなる向上を図ると共に、幅狭部の全幅を抑えてニーグリップのし易さを確保することができ、スポーツバイクの使い勝手としてのスポーツ走行をする上で、良好な車体フレームを備えた鞍乗り型電動車両を設計できる。
請求項2に記載した発明によれば、大型大容量の走行用バッテリの搭載を可能にできる。
請求項3に記載した発明によれば、車体カバーをその前端部の高さが低くなるように湾曲して形成でき、車体カバーの前部上面に丸みを持たせて外観性向上を図ることができる。
請求項4に記載した発明によれば、車体カバーをその前端部の左右幅が狭まるように湾曲して形成でき、車体カバーの前部側面に丸みを持たせて外観性向上を図ることができる。
請求項5に記載した発明によれば、バッテリケース及びモータケースの同軸支持によりこれらの組み付け性を向上できる。
請求項6に記載した発明によれば、膨出部内において、各バッテリモジュールに設けた面取り部により、走行用バッテリの上端部の車幅方向外側の角部を面取りでき、走行用バッテリを覆う車体カバーに丸みを持たせて外観性向上を図ることができる。
請求項7に記載した発明によれば、膨出部に配置したバッテリモジュールの正極端子を判別し易く、かつこの正極端子に配線を接続し易い配置となる。
請求項8に記載した発明によれば、幅狭部に配置したバッテリモジュールの正極端子を判別し易く、かつこの正極端子に配線を接続し易い配置となる。
請求項9に記載した発明によれば、幅狭部の最外側に配置したバッテリモジュールの前後方向前側の負極端子を、各バッテリパックの負極側出力端子とすることができ、車体中央に配置した電装部品への接続を容易にできる。
請求項10に記載した発明によれば、モータの駆動中心軸線の前後に走行用バッテリの重量を適宜分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態におけるバッテリ搭載構造を適用した鞍乗り型電動車両の左側面図である。
【図2】上記鞍乗り型電動車両の上面図である。
【図3】上記鞍乗り型電動車両の要部の左側面図である。
【図4】上記鞍乗り型電動車両の要部の上面図である。
【図5】上記鞍乗り型電動車両の要部の前面図である。
【図6】上記鞍乗り型電動車両の要部の後面図である。
【図7】上記鞍乗り型電動車両の要部を斜め左前方から見た斜視図である。
【図8】上記鞍乗り型電動車両のメインバッテリの上面図である。
【図9】上記鞍乗り型電動車両の主構成を示す構成図である。
【図10】上記鞍乗り型電動車両の駆動モータ周辺を斜め左前方から見た斜視図である。
【図11】上記駆動モータ周辺を斜め右後方から見た斜視図である。
【図12】上記メインバッテリの一バッテリモジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0010】
図1、図2に示す鞍乗り型電動車両1は、車体中央上部に走行用のメインバッテリ2を搭載すると共に、車体中央下部には走行用の駆動モータ(モータユニット)3を搭載し、メインバッテリ2からの電力により駆動モータ3を駆動させると共に、その駆動力を駆動輪たる後輪4に伝達して走行する。
【0011】
鞍乗り型電動車両1は、車体の前部から下部後側までをフルカウリングしたカウリング21を備え、高速でのスポーツ走行を可能としたスポーツタイプのモータサイクル(自動二輪車)としての態様をなし、その前輪5は左右一対のフロントフォーク6の下端部に軸支され、左右フロントフォーク6の上部はステアリングステム7を介して車体フレーム11前端のヘッドパイプ12に操向可能に枢支される。ステアリングステム7(又はフロントフォーク6)の上部には操向ハンドル8が取り付けられる。
【0012】
ヘッドパイプ12からは左右一対のメインフレーム13が後下がりに後方に延出し、左右メインフレーム13の後端部からはそれぞれピボットフレーム14が下方に延出する。左右ピボットフレーム14にはピボット軸14aを介してスイングアーム15の前端部が上下揺動可能に枢支され、スイングアーム15の後端部には後輪4が軸支される。すなわち、車体フレーム11はツインチューブフレームとして構成される。
【0013】
鞍乗り型電動車両1の車体前部は、その前方、側方及び下方からカウリング21により覆われる。左右メインフレーム13間にはメインバッテリ2が搭載され、左右メインフレーム13の下方には駆動モータ3が搭載される。左右メインフレーム13の前部下側には、それぞれ側面視逆三角形状のモータハンガ13aが下方に延出し、これら左右モータハンガ13aの下端部に駆動モータ3の前部が支持される。なお、図中線Lはメインフレーム13の下縁(モータハンガ13aとの境界)を示す。
【0014】
左右メインフレーム13の後端部及び左右ピボットフレーム14からは、シートフレーム16が後上がりに後方に延出し、このシートフレーム16上に乗員着座用のシート9が支持される。シートフレーム16の周囲はシートカウル22により覆われる。シートフレーム16を含む車体フレーム11は、複数種の金属部材を溶接や締結等により一体に結合してなる。
【0015】
シート9の前方には、左右メインフレーム13の上縁よりも上方に膨出するシート前カバー23が配置される。シート前カバー23は、シート9に着座した乗員の両膝間に挟み込まれる。シート前カバー23内には、メインバッテリ2の上部が収容される。
【0016】
図3、図4、図8に示すように、メインバッテリ2は、バッテリケース18内に収容された計十個のバッテリモジュール17a〜17jからなる。バッテリケース18は、上方に開放した略直方体状の箱型をなす例えば板金製のケース本体18aと、ケース本体18aの上部開口を閉塞する例えば樹脂成形品のケースカバー18bとを有する。ケース本体18aの外壁には、適宜開口が形成されている。なお、図8はケースカバー18bを取り外した状態を示す。
【0017】
各バッテリモジュール17a〜17jは、上下方向に沿って起立する厚板状をなし、メインバッテリ2の前端部及び前後中間部では厚さ方向が車両前後方向と直交するように配置され、メインバッテリ2の後部では厚さ方向が車両左右方向と直交するように配置される。
【0018】
メインバッテリ2の前端部では、一つのバッテリモジュール17aが車体左右中心線CLを跨いで配置され、メインバッテリ2の前後中間部では、車体左右中心線CLを挟んだ左右に三つずつ計六つのバッテリモジュール17b〜17gがそれぞれ前後に並んで配置され、メインバッテリ2の後部では、三つのバッテリモジュール17h〜17jが車体左右中心線CLを跨いで左右に並んで配置される。メインバッテリ2の前後中間部の各バッテリモジュール17b〜17gは左右対称に配置されるが、メインバッテリ2の前端部のバッテリモジュール17a及び後部のバッテリモジュール17h〜17jはやや右方に偏倚して配置される。
【0019】
図12を併せて参照し、各バッテリモジュール17a〜17jは、上面視で長辺B及び短辺Tを有すると共に長辺Bよりも長い縦辺Hを有する四角柱状(直方体状)とされる。なお、図12には各バッテリモジュール17a〜17jを代表してバッテリモジュール17bを示す。
各バッテリモジュール17a〜17gは、上面視で長辺Bに沿う方向(長辺方向)が左右方向(車幅方向)に沿うように配置され、バッテリモジュール17h〜17jは、上面視で長辺方向が前後方向に沿うように配置される。
【0020】
ここで、図8を参照し、左右メインフレーム13の前部中間部における車体フレーム11の外方に凸の湾曲形状をなす部位をその前方部位も含めて外湾曲部eとし、左右メインフレームの後部における車体フレーム11の内方に凸の湾曲形状をなす部位をその後方部位も含めて内湾曲部fとする。各バッテリモジュール17a〜17gは左右外湾曲部eの間(以下、車体フレーム11の膨出部Eという)に配置され、各バッテリモジュール17h〜17jは左右内湾曲部fの間(以下、車体フレーム11の幅狭部Fという)に配置される。
【0021】
このような各バッテリモジュール17a〜17jの配置により、メインバッテリ2及びバッテリケース18は、前端部及び後部に対して前後中間部の左右幅を広げるように設けられる。これにより、上面視で前後に長い楕円状をなすシート前カバー23内へのメインバッテリ2の納まりが良くなり(図2参照)、かつシート前カバー23後部の左右幅が抑えられてニーグリップが容易になる。
【0022】
また、メインバッテリ2の前端部に位置するバッテリモジュール17aは、その高さを他のバッテリモジュール17b〜17jに対して一段(後述する面取り部20bの上下幅程度)低くしている。この配置により、シート前カバー23の前端部における側面視での湾曲形状を緩やかにし、車両外観性の向上を図っている。なお、メインバッテリ2の後部に位置する各バッテリモジュール17h〜17jは、メインバッテリ2の前後中間部に位置する各バッテリモジュール17b〜17gと同一高さにあるが、メインバッテリ2後部の各バッテリモジュール17h〜17jの高さをバッテリモジュール17aと同様に一段低くすることで、シート前カバー23の後部における側面視での湾曲形状を緩やかにすることもできる。
【0023】
さらに、図3、図8を参照し、メインバッテリ2の内、前記膨出部Eに配置したバッテリモジュール17a〜17gは駆動モータ3の中心軸線C1よりも前方に位置し、前記幅狭部Fに配置したバッテリモジュール17h〜17jは、前記中心軸線C1よりも後方に位置する。メインバッテリ2における前記中心軸線C1よりも前方の部位(図3に範囲A1で示す)は、メインバッテリ2における前記中心軸線C1よりも後方の部位(図3に範囲A2で示す)よりも大きくかつ重量もある。このため、メインバッテリ2の後方に着座した運転者がニーグリップをし易く、かつ運転者の体重を含めた重量バランスが良好になる。
【0024】
図8を参照し、各バッテリモジュール17a〜17jは互いに間隙を空けて配置されており、バッテリケース18内に進入した外気(冷却風)を流通可能とする。各バッテリモジュール17a〜17jは適宜充放電可能なエネルギーストレージであり、例えばリチウムイオンバッテリ、ニッケル水素バッテリ、鉛バッテリ等からなる。
【0025】
各バッテリモジュール17a〜17jの上端には、正極端子19a及び負極端子19bがそれぞれ突設される。
図12を併せて参照し、各バッテリモジュール17a〜17jの上面には、上面視で長辺Bに沿って長い長円状をなして各端子19a,19bを任意の相互位置にて上方に突出させる端子カバー20aが取り付けられる。
【0026】
各バッテリモジュール17a〜17jの上端部における両短辺Tに沿う角部の一方には、これを斜めに平坦状に切り欠く面取り部20bが形成される。
メインバッテリ2の前後中間部に位置するバッテリモジュール17b〜17gは、それぞれの面取り部20bが車幅方向外側に位置するように(メインバッテリ2の上端部の車幅方向外側の角部に位置するように)配置される(図6参照)。
メインバッテリ2の後部に位置する各バッテリモジュール17h〜17jは、それぞれの面取り部20bが後側に位置するように(メインバッテリ2の上端部の後側の角部に位置するように)配置される(図3参照)。
この構成によっても、シート前カバー23の緩やかな湾曲形状の形成に寄与できる。
【0027】
ここで、各バッテリモジュール17a〜17jの内、メインバッテリ2前端部のバッテリモジュール17a、前後中間部左側のバッテリモジュール17b〜17d、及び後部左側のバッテリモジュール17hは互いに直列に結線され、所定の高電圧(48〜72V)の第一バッテリパック2aを形成する。
【0028】
一方、メインバッテリ2前後中間部右側のバッテリモジュール17e〜17g、及び後部右側のバッテリモジュール17i,17jは互いに直列に結線され、同じく高電圧の第二バッテリパック2bを形成する。
【0029】
各バッテリパック2a,2bは、一個当たり35〜40Vの各バッテリモジュール17a〜17jを五つ直列に結線することで、各バッテリパック2a,2b当たり175〜200Vの給電が可能である。
そして、各バッテリパック2a,2bが後述する第一及び第二モータ本体3a,3bのそれぞれに個別に電力を供給することで、250〜400ccクラスのエンジンと同等の出力を出すことが可能である。
【0030】
図4、図8を参照し、前記バッテリモジュール17aの正極端子19aは第一バッテリパック2aの正極側出力端子19ALとされ、この正極側出力端子19ALからは第一正極側出力ケーブル24Lが延びる。また、前記バッテリモジュール17eの正極端子19aは第二バッテリパック2bの正極側出力端子19ARとされ、この正極側出力端子19ARからは第二正極側出力ケーブル24Rが延びる。
同様に、前記バッテリパック17hの負極端子19bは第一バッテリパック2aの負極側出力端子19BLとされ、この負極側出力端子19BLからは第一負極側出力ケーブル25Lが延びる。また、前記バッテリモジュール17iの負極端子19bは第二バッテリパック2bの負極側出力端子19BRとされ、この負極側出力端子19BRからは第二負極側出力ケーブル25Rが延びる。
【0031】
なお、図中符号26,27は各バッテリパック2a,2bにおける正負極間を結線する電極間バスバー及びケーブルを、符号28は各バッテリパック2a,2bにおける電極間バスバー26の途中に設けられるヒューズを、符号29はケースカバー18bをケース本体18aに固定する固定ブラケットを、符号Mはメインバッテリ2の右方を迂回するように車体の前後に渡って延びるメインハーネスをそれぞれ示す。
【0032】
図3、図4を参照し、メインバッテリ2及びバッテリケース18は、車両側面視において、上部が左右メインフレーム13の上方に張り出すと共に、下部が左右メインフレーム13の下方に張り出すように配置される。換言すれば、メインバッテリ2及びバッテリケース18は、車両側面視で左右メインフレーム13を上下に横切るように配置される。
【0033】
メインフレーム13の前部には、これを車幅方向で貫通する前開口13bが形成されると共に、メインフレーム13の下縁部とモータハンガ13aの上端部とに跨ってこれらを車幅方向で貫通する後開口13cが形成される。各開口13b,13cは、車体フレーム11全体の剛性を調整すると共に、前開口13bは、メインバッテリ2への冷却風導入口としても用いられる。
【0034】
図1、図2を併せて参照し、前開口13bからは外気導入ダクト21aが前方に延出し、この外気導入ダクト21aの前端がカウリング21前端にて車両前方に向けて開口する。この外気導入ダクト21aを通じて、メインフレーム13間のメインバッテリ2に走行風(冷却風)が供給される。
【0035】
図3、図10に示すように、バッテリケース18の前部下面からは、斜め前下方に向けて左右一対のバッテリ前支持腕18cが延出し、これら左右バッテリ前支持腕18cの下端部が、車体フレーム11の左右モータハンガ13aの下端部13eに、車幅方向外方から着脱される左右方向に沿う長尺ボルト等の締結具B1により、後述するモータ前支持部35と共に支持、固定される。なお、図中符号13fは左右モータハンガ13aの下端部13eと左右バッテリ前支持腕18cとの間にそれぞれ介設されるディスタンスカラーを示す。
【0036】
一方、図3、図6に示すように、バッテリケース18の後部は、バッテリ後支持ブラケット31を介して車体フレーム11に支持される。バッテリ後支持ブラケット31は、バッテリケース18の後部下側に沿うように屈曲した帯状のブラケット本体31aと、その下辺部から後方に延出する連結片31bとを有する。ブラケット本体31aの左右辺部の上端部は、左右メインフレーム13の後部上側にそれぞれ突設されたバッテリ支持突部13dに、車幅方向外方から着脱される左右方向に沿うボルト等の締結具B4によりそれぞれ支持、固定される。
【0037】
また、連結片31bの後端部上には、バッテリケース18の後面下側に接合されて後方に突出する略水平な支持板18dと、連結片31bの後方で下方に延びる支持ステー32の上端部とが、上方から着脱される上下方向に沿うボルト等の締結具B5により固定される。
支持ステー32の下部には、後述するモータ後上支持部36を車体フレーム11に支持、固定する左右方向に沿う長尺ボルト等の締結具B2を挿通するカラー等が一体的に設けられる。
【0038】
支持ステー32ひいてはバッテリケース18の後部下側が、前記締結具B2により後述するモータ後上支持部36と共に車体フレーム11に支持、固定される。また、ブラケット本体31aの下辺部ひいてはバッテリケース18の後部下側は、後述するモータケース38の後端部上側に形成された支持台座32a上に当接支持される。
以上により、メインバッテリ2及びバッテリケース18が車体フレーム11に固定的に支持される。なお、図6、図11の符号14c,14dは、左右ピボットフレーム14の上下端部間に渡るリヤアッパクロスメンバ及びリヤロアクロスメンバをそれぞれ示す。
【0039】
図1、図3に示すように、駆動モータ3は、車両側面視でメインフレーム13、ピボットフレーム14及びモータハンガ13aで囲まれる部位内に収まるように設けられる。駆動モータ3は、その側面視での中央位置を左右方向に沿って貫通する単一の駆動軸39を有する。駆動軸39は、その中心軸線(軸心、駆動モータ3の重心位置に相当)C1がピボット軸14aの中心軸線(軸心)C2よりも上方に位置するように設けられる。
【0040】
図10、図11を併せて参照し、駆動モータ3は、左右幅(軸方向幅)を抑えた扁平状のモータ本体(単モータ)3a,3bを左右一対に有し、これらを互いに隣接させると共に同軸に連結して一体駆動可能とする。
駆動モータ3は、例えば四輪自動車のハイブリッドモータを採用することで、廉価に構成することも可能である。駆動モータ3は、一個当たり12〜18kw程度のモータ本体3a,3bを二個用いることで、スポーツタイプの250〜400ccクラスに設計することが好ましい。
【0041】
駆動モータ3は、左右メインフレーム13及びピボットフレーム14間の空間よりも左右幅を狭めて設けられる。以下、各モータ本体3a,3bの内の左側のものを第一モータ本体3a、右側のものを第二モータ本体3bという。また、各モータ本体3a,3bの合わせ面は駆動モータ3の車幅方向中心に相当し、これを図6、図13にモータ左右中心線として符号MCLで示す。
【0042】
各モータ本体3a,3bは、ステータの内方にロータを配置したインナーロータ型とされる。各モータ本体3a,3bは、環状の第一及び第二ケーシング33,34をそれぞれ有する。各ケーシング33,34の前端部上側には、斜め上前方に突出するモータ前支持部35がそれぞれ一体形成され、これらがバッテリケース18の左右バッテリ前支持腕18c間に挟まれた状態で、左右モータハンガ13aの下端に前記締結具B1により前記バッテリ前支持腕18cと共に支持、固定される。
【0043】
一方、各ケーシング33,34の後端部上側には、斜め上後方に向けて延出するモータ後上支持部36がそれぞれ一体形成され(図3参照)、これらが左右ピボットフレーム14の上端部前側のピボット上締結部36aの左右内側に、車幅方向外方から着脱される前記締結具B2により支持、固定される。
また、各ケーシング33,34の後端部下側には、斜め下後方に向けて延出するモータ後下支持部37がそれぞれ一体形成され(図3参照)、これらが左右ピボットフレーム14の下端部前側のピボット下締結部37aの左右内側に、車幅方向外方から着脱される左右方向に沿う長尺ボルト等の締結具B3により支持、固定される。
以上の三点により、駆動モータ3が車体フレーム11に固定的に支持される。
【0044】
図9に示すように、第一バッテリパック2aからの電力は、不図示のメインスイッチと連動する第一コンタクタ41を介して、モータドライバたる第一PDU(power driver unit)43に供給され、この第一PDU43にて直流から三相交流に変換された後、三相交流モータである第一モータ本体3aに供給される。
【0045】
同様に、第二バッテリパック2bからの電力は、同じくメインスイッチと連動する第二コンタクタ45を介して、モータドライバたる第二PDU47に供給され、この第二PDU47にて直流から三相交流に変換された後、三相交流モータである第二モータ本体3bに供給される。
【0046】
図7を併せて参照し、駆動モータ3の前部下方には、12Vのサブバッテリ51が配置され、このサブバッテリ51より、灯火器等の一般電装部品やECU(electric control unit)等の制御系部品に電力が供給される。
【0047】
第一PDU43には、ECUたる第一MCU(モータコントロールユニット)44が接続され、第二PDU47には、同じくECUたる第二MCU48が接続される。各MCU44,48には、スロットル(アクセル)センサ52からの出力要求信号が入力され、この出力要求信号に基づき、各MCU44,48が各PDU43,47を介して各モータ本体3a,3bを個別に駆動制御する。なお、本実施形態では各MCU44,48は相互監視や通信を行っていないが、図9に鎖線で示す如く各MCU44,48同士を通信可能に接続し、相互に各モータ本体の出力等を監視したり該出力等の協調制御や左右独立制御を行うことも可能である。
【0048】
なお、本実施形態の鞍乗り型電動車両1では、メインバッテリ2の充電時には、前記シート前カバー23を取り外す等によりメインバッテリ2を車外に露出させるのみの車載状態でメインバッテリ2の充電を行うか、メインバッテリ2を車体から取り外して単体にした状態でメインバッテリ2の充電を行う。
【0049】
図3、図5、図7に示すように、駆動モータ3の前端部の前方には、各モータ本体3a,3bに対応する各PDU43,47が左右に並んで配置される。各PDU43,47は厚板状をなし、その厚さ方向が車両前後方向と略直交するように(詳細には厚さ方向がやや前下がりとなるように)起立して配置される。各PDU43,47の直前には、これらと平行をなす板状のヒートシンク53が配置される。
【0050】
ヒートシンク53は、その前面に上下方向に沿う多数の放熱フィン53aを有し、後面には各PDU43,47の前面を接触させる。ヒートシンク53は、その上部が上ブラケット54を介して駆動モータ3のモータケース38の上部に支持され、下部が下ブラケット55を介してモータケース38の下部に支持される。下ブラケット55には、サブバッテリ51を支持するべくその前面及び下面に沿って側面視L字状に屈曲して延びるバッテリ支持ステー55aが一体的に設けられる。
【0051】
ヒートシンク53の上方には、各コンタクタ41,45及び各PDU43,47に対応する第一及び第二コンデンサ(キャパシタ)42,46が設けられる。各コンデンサ42,46は、前後に長い楕円状の断面を有して左右に延びる棒状をなし、上下二段に重なった状態でヒートシンク53の上方に配置される。各コンデンサ42,46は、コンデンサケース56内に一体的に収容されている。
【0052】
各コンデンサ42,46よりも左右外側でかつ側面視で各コンデンサ42,46の斜め上後方に位置する部位には、各コンタクタ41,45がそれぞれ配置される。各コンタクタ41,45は直方体状をなし、各コンデンサ42,46とこれらよりも左右外側に位置する左右モータハンガ13aとの間にそれぞれ配置される。各コンタクタ41,45の上方には、比較的小形のプリチャージコンタクタ41a,45aがそれぞれ配置される。
【0053】
各コンタクタ41,45よりも上方でかつメインバッテリ2の下部前方には、各MCU44,48が左右に並んで配置される。各MCU44,48は前後幅を抑えた直方体状をなし、バッテリケース18の下部前側に固定されたMCU支持ブラケット57に支持される。
【0054】
各MCU44,48の上方には、ヘッドパイプ12の後方で車体フレーム11に固定されたスロットルセンサ52が配置される。スロットルセンサ52は、ハンドル8のスロットル操作子たる右グリップ52aと操作ケーブル52bを介して連結される。右グリップ52aの開閉操作は、操作ケーブル52bを介してスロットルセンサ52に機械的に伝達される。この開閉操作に応じた制御信号が、スロットルセンサ52から各MCU44,48にそれぞれ出力される。
【0055】
図10、図11を参照し、各モータ本体3a,3bは、各ケーシング33,34の内周にそれぞれ固定的に支持された環状の第一及び第二ステータと、各ステータの内方に回転自在に配置された円筒状の第一及び第二ロータとを有する(何れも不図示)。各ロータは、これらを同軸に貫通する駆動軸39を介して一体に連結される。
【0056】
第一ケーシング33の左方には、その左開口を閉塞する左ケースカバー33aが取り付けられ、第二ケーシング34の右方には、その右開口を閉塞する右ケースカバー34aが取り付けられる。これら各ケーシング33,34及びケースカバー33a,34aがボルト締結により一体に結合されて、駆動モータ3のモータケース38が形成される。
【0057】
図1を併せて参照し、左ケースカバー33aの中央部からは駆動軸39の左端部が左方に突出し、この突出部分にドライブスプロケット58aが取り付けられる。このドライブスプロケット58aと、後輪4左側に取り付けたドリブンスプロケット58bと、各スプロケットに掛け回されたドライブチェーン58cとにより、駆動モータ3と後輪4との間のチェーン式伝動機構58が形成される。
【0058】
駆動モータ3は、例えばVVVF(variable voltage variable frequency)制御による可変速駆動がなされる。駆動モータ3の回転数は、不図示の回転センサにより検出される。
【0059】
図3、図7を参照し、各ケースカバー33a,34aの前端部には、各PDU43,47の左右外側から後方に延びる三相の給電片71u,71v,71wを接続する給電端子72u,72v,72wが設けられる。各給電片71u,71v,71w及び給電端子72u,72v,72wは、例えば下方から順にU相、V相、W相とされる。これら各給電片71u,71v,71w及び給電端子72u,72v,72wを通じて、各PDU43,47からの電流が、各モータ本体3a,3bのステータのコイルにそれぞれ供給される。
【0060】
各PDU43,47におけるU相及びW相の二相の給電片71u,71wの基端側には、それぞれ電流センサ73u,73wが設けられる。各PDU43,47の周囲はドライバカバー74により覆われ、各給電片71u,71v,71w及び給電端子72u,72v,72wの周囲は給電部カバー75により覆われる。
【0061】
以上説明したように、上記実施形態におけるバッテリ搭載構造は、ヘッドパイプ12から後方に延びる左右一対のメインフレーム13を有するツインチューブフレームである車体フレーム11と、複数のバッテリモジュール17a〜17jからなるメインバッテリ2と、前記メインバッテリ2から供給される電力により駆動する駆動モータ3とを備える鞍乗り型電動車両1に適用されるものであって、
前記各バッテリモジュール17a〜17jは、それぞれ上面視で長辺B及び短辺Tを有すると共に前記長辺Bよりも長い縦辺Hを有する四角柱状であり、前記車体フレーム11は、上面視で前記各メインフレーム13が前記ヘッドパイプ12から外側方に膨らむように延びる膨出部Eと、前記膨出部Eの後方で前記各メインフレーム13が互いの距離を狭めるように延びる幅狭部Fとを有し、前記膨出部Eには、前記各バッテリモジュール17a〜17jの内の一部(バッテリモジュール17a〜17g)が前記長辺Bに沿う方向を車両左右方向(車幅方向)に沿わせて配置され、前記幅狭部Fには、前記各バッテリモジュール17a〜17jの内の他の一部(バッテリモジュール17h〜17j)が前記長辺Bに沿う方向を車両前後方向に沿わせて配置されるものである。
【0062】
この構成によれば、ツインチューブフレームにおける幅狭部Fに比して剛性の確保が難しい膨出部Eにおいて、各バッテリモジュール17a〜17jの内の一部をその長辺方向が車両左右方向(車幅方向)を指向するように(左右メインフレーム13間に渡るように)配置することで、このバッテリモジュールを車体フレーム11の剛性部材としても機能させることが可能となり、車体フレーム11の剛性向上を図ると共に、車幅方向に沿わせたバッテリモジュールを前後に複数並べることで、バッテリ積載性能の向上を図ることができる。
また、車体フレーム11の幅狭部Fにおいて、各バッテリモジュール17a〜17jの内の他の一部をその長辺方向が車両前後方向を指向するように配置することで、このバッテリモジュールの積載量を幅狭部Fに合わせて任意に調整することが可能となり、バッテリ積載性能のさらなる向上を図ると共に、幅狭部Fの全幅を抑えてニーグリップのし易さを確保することができる。
【0063】
また、上記バッテリ搭載構造は、前記メインバッテリ2は、車両側面視で前記メインフレーム13を上下に縦断するように配置されるものである。
この構成によれば、大型大容量のメインバッテリ2の搭載を可能にできる。
【0064】
また、上記バッテリ搭載構造は、前記メインバッテリ2を収納するバッテリケース18と、前記バッテリケース18の外方を覆って車両外観の一部を形成するシート前カバー23とを備え、前記膨出部Eに配置した複数の前記バッテリモジュール17a〜17gの内、前記膨出部Eの前端部に位置する前記バッテリモジュール17aは、その後方に位置する前記バッテリモジュール17b〜17gよりも上面高さを低くして配置されるものである。
この構成によれば、シート前カバー23をその前端部の高さが低くなるように湾曲して形成でき、シート前カバー23に丸みを持たせて外観性向上を図ることができる。
【0065】
また、上記バッテリ搭載構造は、前記メインバッテリ2を収納するバッテリケース18と、前記バッテリケース18の外方を覆って車両外観の一部を形成するシート前カバー23とを備え、前記膨出部Eに配置した複数の前記バッテリモジュール17a〜17gの内、前記膨出部Eの前端部に位置する前記バッテリモジュール17aは、その後方に位置する前記バッテリモジュール17b〜17gが左右に複数並んで配置されるのに比して、左右数を少なくして配置されるものである。
この構成によれば、シート前カバー23をその前端部の左右幅が狭まるように湾曲して形成でき、シート前カバー23に丸みを持たせて外観性向上を図ることができる。
【0066】
また、上記バッテリ搭載構造は、前記メインバッテリ2を収納するバッテリケース18と、前記駆動モータ3を収容するモータケース38と、前記バッテリケース18の下面から下方に延びるバッテリ前支持腕18cと、前記モータケース38に形成されるモータ前支持部35とを備え、前記モータケース38は、前記バッテリケース18の下方で前記車体フレーム11に囲まれた部位に配置され、前記バッテリ前支持腕18c及びモータ前支持部35は、前記車体フレーム11に設けられたモータハンガ13aに同軸に支持されるものである。
この構成によれば、バッテリケース18及びモータケース38の同軸支持によりこれらの組み付け性を向上できる。
【0067】
また、上記バッテリ搭載構造は、前記各バッテリモジュール17a〜17jは、それぞれの上端部における一対の前記短辺T側の角部の一方を切り欠いて面取り部20bを形成し、前記膨出部Eに配置した複数の前記バッテリモジュール17a〜17gの少なくとも一部は、左右に複数並んで配置され、これら左右に並ぶバッテリモジュールの前記面取り部20bは、前記メインバッテリ2の上端部の車幅方向外側に配置されることを特徴とする。
この構成によれば、膨出部E内において、左右に並ぶバッテリモジュールに設けた面取り部20bにより、メインバッテリ2の上端部の車幅方向外側の角部を面取りでき、メインバッテリ2を覆うシート前カバー23に丸みを持たせて外観性向上を図ることができる。
【0068】
また、上記バッテリ搭載構造は、前記膨出部Eに配置した複数の前記バッテリモジュール17b〜17gが左右に一対並んで配置され、これら左右に並ぶバッテリモジュール17b〜17gの正極端子19aが、前記メインバッテリ2の上端部の車幅方向外側に配置されることで、膨出部Eに配置したバッテリモジュール17b〜17gの正極端子19aを判別し易く、かつこの正極端子19aに配線を接続し易い配置となる。
【0069】
また、上記バッテリ搭載構造は、前記幅狭部Fに配置した前記バッテリモジュール17h〜17jの正極端子19aが、前記メインバッテリ2の前後方向後側に配置されることで、幅狭部Fに配置したバッテリモジュール17h〜17jの正極端子19aを判別し易く、かつこの正極端子19aに配線を接続し易い配置となる。
【0070】
また、上記バッテリ搭載構造は、前記各バッテリモジュール17a〜17jが、前記膨出部Eの車幅方向一側に配置された前記バッテリモジュール17b〜17dを含む第一バッテリパック2aと、前記膨出部Eの車幅方向他側に配置された前記バッテリモジュール17e〜17gを含む第二バッテリパック2bとを並列に構成し、かつ前記各バッテリパック2a,2bの前後方向前側に正極側出力端子19AL,19ARを、前後方向後側に負極側出力端子19BL,19BRをそれぞれ設けるように接続される。
前記第一バッテリパック2aは、前記幅狭部Fに左右に複数並んで配置された前記バッテリモジュール17h〜17jの内、前記車幅方向一側の最外側に位置する前記バッテリモジュール17hの正極端子19aに、前記膨出部Eの後端部の前記車幅方向一側に位置する前記バッテリモジュール17dの負極端子19bを接続し、前記第二バッテリパック2bは、前記幅狭部Fに左右に複数並んで配置された前記バッテリモジュール17h〜17jの内、前記車幅方向他側の最外側に位置する前記バッテリモジュール17jの正極端子19aに、前記膨出部Eの後端部の前記車幅方向他側に位置する前記バッテリモジュール17gの負極端子19bを接続する。
これにより、幅狭部Fの最外側に配置したバッテリモジュール17h,17jの前後方向前側の負極端子19bを、各バッテリパック2a,2bの負極側出力端子19BL,19BRとすることができ、車体中央に配置した電装部品への接続を容易にできる。
【0071】
また、上記バッテリ搭載構造は、前記メインバッテリ2の下方に車幅方向に沿う駆動軸39を有する前記駆動モータ3が配置され、前記膨出部Eに配置した前記バッテリモジュール17a〜17gが、上面視で前記駆動モータ3の駆動中心軸線C1よりも前方に配置され、前記幅狭部Fに配置した前記バッテリモジュール17h〜17jが、上面視で前記駆動モータ3の駆動中心軸線C1よりも後方に配置されることで、駆動モータ3の駆動中心軸線C1の前後にメインバッテリ2の重量を適宜分散させることができる。
【0072】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、前記鞍乗り型電動車両には、車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、二輪車(スクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1 鞍乗り型電動車両
2 メインバッテリ(走行用バッテリ)
2a 第一バッテリパック
2b 第二バッテリパック
3 駆動モータ(モータ)
11 車体フレーム
12 ヘッドパイプ
13 メインフレーム
13a モータハンガ(取り付け部)
17a〜17j バッテリモジュール
18 バッテリケース
18c バッテリ前支持腕(バッテリ支持ステー)
19a 正極端子
19b 負極端子
19AL,19AR 正極側出力端子
19BL,19BR 負極側出力端子
20b 面取り部
23 シート前カバー(車体カバー)
35 モータ前支持部(モータ支持ボス)
38 モータケース
39 駆動軸
C1 駆動中心軸線
B 長辺
T 短辺
H 縦辺
E 膨出部
F 幅狭部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(12)から後方に延びる左右一対のメインフレーム(13)を有するツインチューブフレーム(11)と、複数のバッテリモジュール(17a〜17j)からなる走行用バッテリ(2)と、前記走行用バッテリ(2)から供給される電力により駆動するモータ(3)とを備える鞍乗り型電動車両(1)のバッテリ搭載構造において、
前記各バッテリモジュール(17a〜17j)は、それぞれ上面視で長辺(B)及び短辺(T)を有すると共に前記長辺(B)よりも長い縦辺(H)を有する四角柱状であり、前記ツインチューブフレーム(11)は、上面視で前記各メインフレーム(13)が前記ヘッドパイプ(12)から外側方に膨らむように延びる膨出部(E)と、前記膨出部(E)の後方で前記各メインフレーム(13)が互いの距離を狭めるように延びる幅狭部(F)とを有し、前記膨出部(E)には、前記各バッテリモジュール(17a〜17j)の内の一部が前記長辺(B)に沿う方向を車両左右方向に沿わせて配置され、前記幅狭部(F)には、前記各バッテリモジュール(17a〜17j)の内の他の一部が前記長辺(B)に沿う方向を車両前後方向に沿わせて配置されることを特徴とする鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造。
【請求項2】
前記走行用バッテリ(2)は、車両側面視で前記メインフレーム(13)を上下に縦断するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造。
【請求項3】
前記走行用バッテリ(2)を収納するバッテリケース(18)と、前記バッテリケース(18)の外方を覆って車両外観の一部を形成する車体カバー(23)とを備え、前記膨出部(E)に配置した複数の前記バッテリモジュール(17a〜17g)の内、前記膨出部(E)の前端部に位置する前記バッテリモジュール(17a)は、その後方に位置する前記バッテリモジュール(17b〜17g)よりも上面高さを低くして配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造。
【請求項4】
前記走行用バッテリ(2)を収納するバッテリケース(18)と、前記バッテリケース(18)の外方を覆って車両外観の一部を形成する車体カバー(23)とを備え、前記膨出部(E)に配置した複数の前記バッテリモジュール(17a〜17g)の内、前記膨出部(E)の前端部に位置する前記バッテリモジュール(17a)は、その後方に位置する前記バッテリモジュール(17b〜17g)が左右に複数並んで配置されるのに比して、左右数を少なくして配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造。
【請求項5】
前記走行用バッテリ(2)を収納するバッテリケース(18)と、前記モータ(3)を収容するモータケース(38)と、前記バッテリケース(18)の下面から下方に延びるバッテリ支持ステー(18c)と、前記モータケース(38)に形成されるモータ支持ボス(35)とを備え、前記モータケース(38)は、前記バッテリケース(18)の下方で前記ツインチューブフレーム(11)に囲まれた部位に配置され、前記バッテリ支持ステー(18c)及びモータ支持ボス(35)は、前記ツインチューブフレーム(11)に設けられた取り付け部(13a)に同軸に支持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造。
【請求項6】
前記各バッテリモジュール(17a〜17j)は、それぞれの上端部における前記短辺(T)に沿う一対の角部の一方を切り欠いて面取り部(20b)を形成し、前記膨出部(E)に配置した複数の前記バッテリモジュール(17a〜17g)の少なくとも一部は、左右に一対並んで配置され、これら左右に並ぶバッテリモジュール(17b〜17g)の前記面取り部(20b)は、前記走行用バッテリ(2)の上端部の車幅方向外側に配置されることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造。
【請求項7】
前記膨出部(E)に配置した複数の前記バッテリモジュール(17a〜17g)の少なくとも一部は、左右に一対並んで配置され、これら左右に並ぶバッテリモジュール(17b〜17g)の正極端子(19a)は、前記走行用バッテリ(2)の上端部の車幅方向外側に配置されることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造。
【請求項8】
前記幅狭部(F)に配置した前記バッテリモジュール(17h〜17j)の正極端子(19a)は、前記走行用バッテリ(2)の前後方向後側に配置されることを特徴とする請求項7に記載の鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造。
【請求項9】
前記各バッテリモジュール(17a〜17j)は、前記膨出部(E)の車幅方向一側に配置された前記バッテリモジュール(17b〜17d)を含む第一バッテリパック(2a)と、前記膨出部(E)の車幅方向他側に配置された前記バッテリモジュール(17e〜17g)を含む第二バッテリパック(2b)とを並列に構成し、かつ前記各バッテリパック(2a,2b)の前後方向前側に正極側出力端子(19AL,19AR)を、前後方向後側に負極側出力端子(19BL,19BR)をそれぞれ設けるように接続され、
前記第一バッテリパック(2a)は、前記幅狭部(F)に左右に複数並んで配置された前記バッテリモジュール(17h〜17j)の内、前記車幅方向一側の最外側に位置する前記バッテリモジュール(17h)の正極端子(19a)に、前記膨出部(E)の後端部の前記車幅方向一側に位置する前記バッテリモジュール(17d)の負極端子(19b)を接続し、
前記第二バッテリパック(2b)は、前記幅狭部(F)に左右に複数並んで配置された前記バッテリモジュール(17h〜17j)の内、前記車幅方向他側の最外側に位置する前記バッテリモジュール(17j)の正極端子(19a)に、前記膨出部(E)の後端部の前記車幅方向他側に位置する前記バッテリモジュール(17g)の負極端子(19b)を接続することを特徴とする請求項8に記載の鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造。
【請求項10】
前記走行用バッテリ(2)の下方に車幅方向に沿う駆動軸(39)を有する前記モータ(3)が配置され、前記膨出部(E)に配置した前記バッテリモジュール(17a〜17g)は、上面視で前記モータ(3)の駆動中心軸線(C1)よりも前方に配置され、前記幅狭部(F)に配置した前記バッテリモジュール(17h〜17j)は、上面視で前記モータ(3)の駆動中心軸線(C1)よりも後方に配置されることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の鞍乗り型電動車両のバッテリ搭載構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−192785(P2012−192785A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56884(P2011−56884)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】