説明

音叉型圧電振動片及び音叉型圧電振動デバイス

【課題】振動バラツキを抑制してこのことが原因となる直列共振抵抗値の増加を抑制する。
【解決手段】水晶振動片2には、基部21と、この基部21の一端面から突出した脚部22a,22bとから構成され、脚部22a,22bの間に叉部6が設けられている。叉部6には、脚部22a,22bから連続して成形された曲部61,62と、曲部61,62から連続して成形された平坦部63とが設けられている。平坦部63には、一方の脚部22aから連続して成形された曲部61に連続する一端点64と、他方の脚部22bから連続して成形された曲部62に連続する他端点65と、が構成されている。また、脚部22a,22b間の中間位置上(一点鎖線C上)に位置する叉部6上の中間点66から一端点64までの距離が、中間点66から他端点65までの距離よりも短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音叉型圧電振動片及び音叉型圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイスの一つとして、基部とこの基部から突出された2つの脚部を有する振動部とからなる音叉型水晶振動片を用いた音叉型水晶振動子がある(例えば、特許文献1参照。)。この音叉型水晶振動子は、正確なクロック周波数を得るためのものとして電子機器や携帯端末などに利用されている。
【0003】
上記したような音叉型水晶振動子は、その筐体がベースと蓋とから構成され、この筐体内部には、ベース上に導電性接合部材により接合して保持された音叉型水晶振動片が気密封止される。なお、導電性接合部材として、例えば、導電性接着剤が用いられる。この導電性接着剤を用いて音叉型水晶振動片の基部とベースとが接合されることにより、音叉型水晶振動片に設けられた励振電極とベースに設けられた電極パッドとが導通状態とされる。
【特許文献1】特開2004−260718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の音叉型圧電振動子に用いられる音叉型圧電振動片を湿式でエッチング成形する場合、基板材料の結晶方向へのエッチングスピードが異なるので、各脚部の形状にバラツキが生じる。そのため、この脚部の形状バラツキが起因して振動バラツキが生じ、その結果、直列共振抵抗値が増加する。
【0005】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、振動バラツキを抑制してこのことが原因となる直列共振抵抗値の増加を抑制する音叉型圧電振動片及び音叉型圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる音叉型圧電振動片は、基部と、この基部の一端面から突出した複数本の脚部とから構成され、前記基部の一端面の隣接する前記複数本の脚部の間に叉部が設けられた音叉型圧電振動片において、前記叉部には、隣接する前記脚部から連続して成形された曲部と、前記曲部から連続して成形された平坦部とが設けられ、前記平坦部には、前記隣接する脚部のうち一方の脚部から連続して成形された曲部に連続する一端点と、前記隣接する脚部のうち他方の脚部から連続して成形された曲部に連続する他端点と、が構成され、前記隣接する脚部間の中間位置上に位置する前記叉部上の中間点から前記平坦部の一端点までの距離が、前記中間点から前記平坦部の他端点までの距離よりも短いことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、前記叉部には前記曲部と前記平坦部とが設けられ、前記平坦部には前記一端点と前記他端点とが構成され、前記隣接する脚部間の中間位置上に位置する前記叉部上の中間点から前記平坦部の一端点までの距離が、前記中間点から前記平坦部の他端点までの距離よりも短いので、振動バラツキを抑制してこのことが原因となる直列共振抵抗値の増加を抑制することが可能となる。具体的に、本発明では、前記叉部に前記平坦部が設けているので、上記した特許文献1に示すように叉部がU形状の場合と比較して前記平坦部の成形により、当該音叉型圧電振動片のエッチング成形において生じる前記各脚部の形状バラツキを抑えることが可能となる。なお、ここでいう前記各脚部の形状バラツキは、前記各脚部の重量バラツキを意味し、この重量バラツキに関連する前記各脚部の外形バラツキも関係する。
【0008】
また、前記各脚部の形状バラツキを抑制するために前記各脚部を対称のものに成形することが想定されるが、この場合前記脚部自体が大きくなり当該音叉型圧電振動片の小型化を図る際に不具合の原因となる。そして、この不具合を解決するために脚部を縮小させるようにエッチングを行えばよいが、この場合エッチングを長時間行う必要がある。しかしながら、本発明によれば、このような不具合を解消することが可能となる。
【0009】
また、本発明によれば、前記叉部には前記曲部と前記平坦部とが設けられるので、当該音叉型圧電振動片の電極形成時に、前記叉部の不必要な部分にまで電極が形成される(金属が付着)のを抑制することが可能となる。具体的に、湿式でエッチング成形する場合、そのエッチング方向の関係から前記平坦部には電極が形成されずに、電極ショートを防止することが可能となる。
【0010】
前記構成において、前記平坦部の他端点近傍の前記脚部の側面から前記平坦部の一端点までの距離をaとし、当該脚部の側面から前記中間点までの距離をbとして、aに対するbの比率は0.665〜1.290であってもよい。
【0011】
この場合、前記平坦部の他端点近傍の前記脚部の側面から前記平坦部の一端点までの距離をaとし、当該脚部の側面から前記中間点までの距離をbとして、aに対するbの比率は0.665〜1.290であるので、前記平坦部を設けていない叉部と比較して直列共振抵抗値を低く抑えることが可能となる。特に、aに対するbの比率は1.04であることが最適である。なお、0.665〜1.290以外の比率では、前記平坦部の成形を行うことが難しい、もしくはできない。
【0012】
前記構成において、前記脚部の突出先端部は、当該脚部の他の部位と比べて突出方向に対して直交する方向に幅広に成形されてもよい。
【0013】
この場合、前記脚部の突出先端部は、当該脚部の他の部位と比べて突出方向に対して直交する方向に幅広に成形されるので、幅広に成形された前記脚部の先端領域を有効に利用することが可能となり、当該音叉型圧電振動片の小型化に有用であり、低周波化にも有用である。また、この場合、前記脚部の突出先端部が幅広に成形されるので、これにともなって前記叉部を成形する領域を大きくすることが可能となり、前記曲部と前記平坦部を成形する領域を十分に確保することが可能となる。その結果、前記平坦部を大きく成形した場合振動バラツキを抑制するのに好ましく、また、前記曲部を大きく成形した場合電極ショートを抑制するのに好ましい。また、1枚の素板から複数の当該音叉型圧電振動片を成形する場合、1枚の素板において廃棄する領域を減らして1枚の素板全てを有効に用いることができるので、当該音叉型圧電振動片の量産にも適している。
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、ベースと蓋とから内部空間を有する本体筐体が形成され、前記内部空間内の前記ベース上に、上記した本発明にかかる音叉型圧電振動片が前記基部において保持されたことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、上記した本発明にかかる音叉型圧電振動片を設けているので、上記した音叉型圧電振動片特有の作用効果を有して直列共振抵抗値を低く抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる音叉型圧電振動片及び音叉型圧電振動デバイスによれば、振動バラツキを抑制してこのことが原因となる直列共振抵抗値の増加を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、音叉型圧電振動デバイスとして音叉型水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0018】
本実施例にかかる音叉型水晶振動子1(以下、水晶振動子という)では、図1,2に示すように、フォトリソグラフィ法で成形された音叉型水晶振動片2(本発明でいう圧電振動片であり、以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片2を保持するベース3と、ベース3に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋4と、が設けられている。
【0019】
この水晶振動子1では、ベース3と蓋4とが接合されて本体筐体11が構成されている。これらベース3と蓋4とがろう材51を介して接合されて本体筐体11の内部空間12が形成され、この本体筐体11の内部空間12内のベース3上に導電性バンプ52を介して水晶振動片2が保持接合されているとともに、本体筐体11の内部空間12が気密封止されている。この際、図1,2に示すように、ベース3と水晶振動片2とは導電性バンプ52を用いてFCB(Flip Chip BonDing)法により超音波接合されるとともに電気機械的に接合されている。
【0020】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。
【0021】
ベース3は、図1,2に示すように、底部31と、この底部31から上方に延出した堤部32とから構成される箱状体に形成されている。このベース3は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。また、堤部32は、図1に示す底部31の表面外周に沿って成形されている。この堤部32の上面は蓋4との接合領域33であり、この接合領域33には、蓋4と接合するためのメタライズ層(図示省略)が設けられている。なお、メタライズ層は、例えば、タングステンメタライズ層、あるいはモリブデンメタライズ層上にニッケル,金の順でメッキした構成とからなる。また、セラミック材料が積層して凹状に一体的に焼成されたベース3の内部空間12における側壁には、図1,2に示すように、段部35が形成され、この段部35上に電極パッド34が形成され、これら電極パッド34上に水晶振動片2が片保持して設けられる。これら電極パッド4は、それぞれに対応した引回電極36を介して、ベース11の裏面に形成される端子電極(図示省略)に電気的に接続され、これら端子電極が外部部品や外部機器の外部電極に接続される。なお、これら電極パッド34、引回電極36、端子電極は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース11と一体的に焼成して形成される。そして、これら電極パッド34、引回電極36、端子電極のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0022】
蓋4は、金属材料からなり、図2に示すように、平面視矩形状の一枚板に成形されている。この蓋4の下面には、ろう材51が形成されている。この蓋4は、シーム溶接やビーム溶接、加熱溶融接合等の手法によりろう材51を介してベース3に電気機械的に接合されて、蓋4とベース3とによる水晶振動子1の本体筐体11が構成される。なお、蓋4は、例えば、4層の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されている。具体的に、ベース3との接合面となる蓋4の下面から、ろう材51である錫と金(錫と金の割合を約2対8とする)、あるいは錫と銀の層、ニッケル層、コバール層及びニッケル層が順に積層されている。なお、本実施例では、ろう材51が、蓋4の下面外周縁に沿った環状層に成形されている。
【0023】
次に、内部空間12に配された水晶振動片2の各構成について説明する。
【0024】
水晶振動片2は、図1〜3に示すように、異方性材料の水晶片である水晶素板(図示省略)から、エッチング形成された水晶Z板である。この水晶振動片2の基板21は、2本の脚部22a,22b(第1脚部22a,第2脚部22b)と基部23とから構成された外形からなり、2本の脚部22が基部23の一端部から突出して形成されている。基部23は脚部22a,22bより幅広に形成されている。また、2つの脚部22a,22bの両主面24(表側主面,裏側主面)には、水晶振動片2の小型化により劣化する直列共振抵抗値(本実施例ではCI値、以下同様)を改善させるために、溝部25a,25bが形成されている。また、図2に示すように、水晶振動片2の外形のうち側面28は両主面24に対して傾斜して成形されている。これは、水晶振動片2を湿式でエッチング成形する際に基板21材料の結晶方向(X,Y方向)へのエッチングスピードが異なることに起因している。
【0025】
この水晶振動片2の表面には、異電位で構成された2つの励振電極26a,26b(第1励振電極26a,第2励振電極26b)と、これらの励振電極26a,26bを電極パッド34に電気的に接続させるために励振電極26a,26bから引き出された引出電極27a,27bとが設けられている。なお、本実施例でいう引出電極27a,27bは、2つの励振電極26a,26bから引き出された電極パターンのことをいう。
【0026】
また、2つの励振電極26a,26bの一部は、溝部25a,25bの内部に形成されている。このため、水晶振動片2を小型化しても脚部22a,22bの振動損失が抑制され、CI値を低く抑えることができる。第1の励振電極26aは、第1脚部22aの両主面24(表側主面,裏側主面)と溝部25aに形成された第1主面電極と、第2脚部22bの両側面に形成された第2側面電極とにより構成される。そして、これら第1主面電極と第2側面電極とが引き回されて接続され、励振電極26aは引出電極27aに引き出されている。同様に、第2の励振電極26bは、第2脚部22bの両主面(表側主面,裏側主面)と溝部63bに形成された第2主面電極と、第1脚部22aの両側面に形成された第1側面電極とにより構成される。そして、これら第2主面電極と第1側面電極とが引き回されて接続され、励振電極26bは引出電極27bに引き出されている。
【0027】
上記した水晶振動片2の励振電極26a,26bは、例えば、クロムの下地電極層と、金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成される。また、上記した引出電極27a,27bは、例えば、クロムの下地電極層と、金の中間電極層と、クロムの上部電極層と、から構成された積層薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成され、クロムの上部電極層のみが部分的にマスクして真空蒸着法等の手法により形成される。なお、励振電極26a,26bがクロム,金の順に形成されているが、例えば、クロム,銀の順や,クロム,金,クロムの順や,クロム,銀,クロムの順等であってもよい。また、引出電極27a,27bがクロム,金,クロムの順に形成されているが、例えば、クロム,銀,クロムの順であってもよい。
【0028】
この水晶振動片2の基部23は、図1に示すように、基部23が振動部(脚部22a,22b)より幅広に形成されて、振動部と同じ幅に形成され振動部(脚部22a,22b)を延出する基部中央領域29aと、振動部よりその幅方向にはみ出した基部幅広領域29bとを有する。すなわち、図1に示すように、基部23は、基部幅広領域29bが基部中央領域29aに隣接して構成される。
【0029】
そして、水晶振動片2の引出電極27a,27bと、ベース3の電極パッド34とが、導電性バンプ52を介して接合されて、これら引出電極27a,27bと電極パッド34とが電気機械的に接続される。なお、本実施例で用いる導電性バンプ52は、金などの金属材料からなる接続バンプである。なお、本実施例ではろう材51に金(もしくは銀)と錫とからなる低融点材料が用いられている。
【0030】
また、この水晶振動片2には、図1,3に示すように、基部23の一端面の隣接する2本の脚部22a,22bの間に叉部6が設けられている。この叉部6には、図3に示すように、2本の隣接する脚部22a,22bから連続して成形された曲部61,62と、曲部61,62から連続して成形された平坦部63とが設けられている。平坦部63には、隣接する脚部22a,22bのうち一方の脚部22aから連続して成形された曲部61に連続する一端点64と、隣接する脚部22a,22bのうち他方の脚部22bから連続して成形された曲部62に連続する他端点65と、が構成されている。また、隣接する脚部22a,22b間の中間位置上(図1,3に示す一点鎖線C上)に位置する叉部6上の中間点66から平坦部63の一端点64までの距離が、中間点66から平坦部63の他端点65までの距離よりも短い。具体的に、本実施例では、中間点66から平坦部63の一端点64までを距離Aとし、中間点66から平坦部63の他端点65までを距離Bとし、これら距離の関係は、距離A:距離B=0.13:1.00に設定されている。言い換えると、脚部22bから平坦部63の一端点64までの距離をa(図3の場合a2)とし、脚部22bから中間点66までの距離をbとすると、aに対するbの比率(b/a)は0.665〜1.290とされ、本実施例では、a2に対するbの比率(b/a2)は1.040とされている。
【0031】
上記した構成からなる水晶振動片2によれば、叉部6には曲部61,62と平坦部63とが設けられ、平坦部63には一端点64と他端点65とが構成され、隣接する脚部22a,22b間の中間位置(一点鎖線C)上に位置する叉部6上の中間点66から平坦部63の一端点64までの距離が、中間点66から平坦部63の他端点65までの距離よりも短いので、振動バラツキを抑制してこのことが原因となるCI値の増加を抑制することができる。具体的に、本実施例では、叉部6に平坦部63が設けているので、上記した特許文献1に示すように叉部がU形状(平坦部がない曲部だけの形状)の場合と比較して平坦部63の成形により、水晶振動片2のエッチング成形において生じる各脚部22a,22bの形状バラツキを抑えることができる。なお、ここでいう各脚部22a,22bの形状バラツキは、各脚部22a,22bの重量バラツキを意味し、この重量バラツキに関連する各脚部22a,22bの外形バラツキも関係する。
【0032】
また、脚部22a,22bの形状バラツキを抑制するために各脚部22a,22bを対称のものに成形することが想定されるが、この場合脚部22a,22b自体が大きくなり水晶振動片2の小型化を図る際に不具合の原因となる。そして、この不具合を解決するために脚部22a,22bを縮小させるようにエッチングを行えばよいが、この場合エッチングを長時間行う必要がある。しかしながら、本実施例によれば、このような不具合を解消することができる。
【0033】
また、本実施例によれば、叉部6には曲部61,62と平坦部63とが設けられるので、水晶振動片2の電極(励振電極26a,26bと引出電極27a,27b)形成時に、叉部6の不必要な部分にまで電極(励振電極26a,26b)が形成される(金属が付着)のを抑制することができる。具体的に、湿式でエッチング成形する場合、そのエッチング方向の関係から平坦部63には電極が形成されずに、電極ショートを防止することができる。
【0034】
また、本実施例では、a2に対するbの比率(b/a2)は1.040に設定されているので、平坦部63を設けていない叉部(例えば、上記した特許文献1の記載内容)と比較してCI値を低く抑えることができる。なお、本実施例では、a2に対するbの比率(b/a2)は1.040としているが、これに限定されるものではない。すなわち、脚部22bから平坦部63の一端点64までの距離をaとし、脚部22bから中間点66までの距離をbとして、aに対するbの比率(b/a)が0.665〜1.290であればよい。具体的に、この比率(b/a)のうち4つの比率(1.290と1.040と0.790と0.540)を例にして各CI値を測定し、その結果を図4,5に示す。図4に示すb/aが1.290とは、図5を参照して脚部22bから平坦部63の一端点64までの距離をa1としたときの比率である。同様に、b/aが1.040とは脚部22bから平坦部63の一端点64までの距離をa2としたときの比率である(上記した本実施例)。また、b/aが0.790とは脚部22bから平坦部63の一端点64までの距離をa3としたときの比率である。また、b/aが0.540とは脚部22bから平坦部63の一端点64までの距離をa4としたときの比率であり、この設定の場合、叉部6は平坦部63を設けずに曲部61,62だけからなる。
【0035】
図4,5からわかるように、平坦部63を設けていない叉部(例えば、上記した特許文献1の記載内容)と比較してCI値を低く抑えることができる。特に、本実施例に示すように、aに対するbの比率は1.040であることが最適である。なお、図4,5に示すように、0.665〜1.290以外の比率では、平坦部63の成形を行うことが難しい、もしくはできなく(すなわち、本発明が不成立となる)、実際に比率を0.540とした場合、CI値が50kΩになり、好ましくない。
【0036】
また、上記した本実施例にかかる水晶振動子1によれば、上記した水晶振動片2を設けているので、上記した水晶振動片2特有の作用効果を有してCI値を低く抑えることができる。
【0037】
なお、本実施例では、導電性バンプ52を用いて水晶振動片2のベース3への接合を行っているが、これに限定されるものではなく、引出電極27a,27bが電極パッド34に電気的に接合されるとともに、水晶振動片2がベースに機械的に接合されるものであれば導電性接着剤などの他の形態の接着剤を用いてもよい。例えば、導電性バンプ52の材料として、例えば複数の銀フィラを含有したシリコーン性導電性接着剤を用いてもよい。この場合、導電性接着剤を硬化させることで、複数の銀フィラが結合して導電性物質となる。なお、複数の銀フィラを含有したシリコーンを適用しているが、これに限定されるものではない。
【0038】
また、本実施例では、脚部を2つとしているが、これに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0039】
また、本実施例では、基部23が、基部中央領域29aと基部幅広領域29bとから構成されているが、これに限定されるものではなく、基部が基部中央領域だけからなるストレートタイプの水晶振動片であってもよい。
【0040】
また、本実施例でいう溝部25a,25bは、図1に示すような断面凹形状としているが、これに限定されるものではなく、貫通孔であってもよく、窪み部であってもよい。
【0041】
また、本実施例では、脚部22a,22bに溝部25a,25bを形成しているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、例えば、図6に示すように脚部22a,22bに溝部が形成されていない水晶振動片1にも本発明を適用することができる。
【0042】
また、脚部22a,22bは、図1に示す形状に限定されるものではなく、例えば、図7に示す形状であっても本発明を適用することができる。
【0043】
具体的に、図7に示す水晶振動片2の脚部22a,22bの突出先端部221は、脚部22a,22bの他の部位と比べて突出方向に対して直交する方向に幅広に成形されている。この場合、幅広に成形された脚部22a,22bの突出先端部221(先端領域)を有効に利用することができ、水晶振動片2の小型化に有用であり、低周波化にも有用である。また、脚部22a,22bの突出先端部221が幅広に成形されるので、これにともなって叉部6を成形する領域Dを大きくすることができ、曲部61,62と平坦部63を成形する領域Dを十分に確保することができる。その結果、平坦部63を大きく成形した場合振動バラツキを抑制するのに好ましく、また、曲部61,62を大きく成形した場合電極ショートを抑制するのに好ましい。また、1枚の水晶素板から複数の当該水晶振動片2を成形する場合、1枚の水晶素板において廃棄する領域(水晶振動片2として用いない部位)を減らして1枚の水晶素板全てを有効に用いることができるので、当該水晶振動片2の量産にも適している。
【0044】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、音叉型圧電振動片及び音叉型圧電振動デバイスに適用でき、特に音叉型水晶振動片及び音叉型水晶振動子に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本実施例にかかる水晶振動子の内部を公開した概略平面図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる水晶振動子の図1に示すA−A線断面図である。
【図3】図3は、本実施例にかかる水晶振動片の叉部の概略構成図である。
【図4】図4は、本実施例にかかる水晶振動片の叉部の一端点を可変させたときの叉部の概略構成図である。
【図5】図5は、本実施例にかかる水晶振動片の叉部の一端点を可変させたときの比率b/aとCI値との関係を示したグラフ図である。
【図6】図6は、本実施の他の例にかかる水晶振動子の内部を公開した概略平面図である。
【図7】図7は、本実施の他の例にかかる水晶振動子の内部を公開した概略平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 音叉型水晶振動子(音叉型圧電振動デバイス)
11 本体筐体
12 内部空間
2 音叉型水晶振動片(音叉型圧電振動片)
22a,22b 脚部
221 突出先端部
23 基部
3 ベース
4 蓋
6 叉部
61,62 曲部
63 平坦部
64 一端点
65 他端点
66 中間点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、この基部の一端面から突出した複数本の脚部とから構成され、前記基部の一端面の隣接する前記複数本の脚部の間に叉部が設けられた音叉型圧電振動片において、
前記叉部には、隣接する前記脚部から連続して成形された曲部と、前記曲部から連続して成形された平坦部とが設けられ、
前記平坦部には、前記隣接する脚部のうち一方の脚部から連続して成形された曲部に連続する一端点と、前記隣接する脚部のうち他方の脚部から連続して成形された曲部に連続する他端点と、が構成され、
前記隣接する脚部間の中間位置上に位置する前記叉部上の中間点から前記平坦部の一端点までの距離が、前記中間点から前記平坦部の他端点までの距離よりも短いことを特徴とする音叉型圧電振動片。
【請求項2】
前記平坦部の他端点近傍の前記脚部の側面から前記平坦部の一端点までの距離をaとし、当該脚部の側面から前記中間点までの距離をbとして、
aに対するbの比率は0.665〜1.290であることを特徴とする請求項1に記載の音叉型圧電振動片。
【請求項3】
前記脚部の突出先端部は、当該脚部の他の部位と比べて突出方向に対して直交する方向に幅広に成形されたことを特徴とする請求項1または2に記載の音叉型圧電振動片。
【請求項4】
圧電振動デバイスにおいて、
ベースと蓋とから内部空間を有する本体筐体が形成され、前記内部空間内の前記ベース上に、請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の音叉型圧電振動片が前記基部において保持されたことを特徴とする音叉型圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−60667(P2008−60667A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231976(P2006−231976)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】