説明

音楽制御装置及び電子音楽システム

【課題】音楽制御装置に対する音楽編集装置の接続状態に適した通信形式で楽音信号処理パラメータを音楽制御装置から音楽編集装置乃至楽音信号処理装置に伝えること。
【解決手段】この電子音楽システムは、音楽編集装置ED、音楽制御装置MC及び楽音信号処理装置TGから成る。音楽制御装置MCは、音楽編集装置EDと通信可能な場合は、編集装置EDからの設定指示を第1通信手段UMcで受信すると、設定指示に応じた設定条件(テンプレートTM)に従ってノブ操作により楽音信号処理パラメータ(設定データ)を設定し、設定された楽音信号処理パラメータを第1通信形式(system exclusive)に従って編集装置EDに第1通信手段UMcで送信する。一方、編集装置EDとの通信が不可の場合には、ノブ操作により設定された楽音信号処理パラメータ(設定データ)を第2通信形式(control change)に従って第2通信手段DMcにて楽音信号処理装置TGに送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音楽制御装置により双方向通信で音楽編集装置を制御することができる電子音楽システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、音楽制御装置により双方向通信で音楽編集装置を制御するようにしたシステムが知られている。例えば、非特許文献1に示されたキーボード装置は、DAW( Digital Audio Workstation)アプリケーションソフトウエアが稼働しているコンピュータ即ち音楽編集装置(DAWコンピュータ)に対する音楽制御装置(コントローラ)として機能し、コントロールテンプレートにより楽音信号処理パラメータ(楽音生成パラメータ)が割り当てられたCONTROLノブ(制御ノブ)を操作することにより、音楽編集装置にてVSTi( Steinberg社商標:Virtual Studio Technology instrument)と呼ばれるソフトウエア楽音信号処理部(ソフトウェアシンセサイザー)のパラメータをリモートコントロールすることができる。
【0003】
また、非特許文献2に示された楽音信号処理ソフトウエアでは、DAW上において、楽音信号処理装置(音源装置:「 MOTIF-RACK XS」)のハードウェア楽音信号処理部(ハードウェア音源)を他のソフトウエアVSTiと同様の操作で扱う(ソフトウエアシンセサイザーのように振舞わせる)ことができ、コンピューター画面を使って、ハードウエア楽音信号処理部の設定を視覚的に確認しながら編集することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「KX25/KX49/KX61/KX8取扱説明書」、第12、28頁、ヤマハ株式会社、2008年( http://www2.yamaha.co.jp/manual/pdf/emi/japan/xg/kx8_ja_om_c0.pdf)
【非特許文献2】「MOTIF−RACK XSエディターVSTインストールガイド」、第3頁、ヤマハ株式会社、2008年(http://www.yamaha.co.jp/product/syndtm/dl/soft/mrxv120w.zip内のInstallGuide_ja_MOTIF-RACK_XS_Editor_VST.pdf)
【0005】
このような音楽制御装置(コントローラ)、音楽編集装置(DAWコンピュータ)及び楽音信号処理装置(音源装置)の具体的な使い方としては、自宅やスタジオでは、これら音楽制御装置、音楽編集装置及び楽音信号処理装置を縦続的に接続して音楽制作やライブ演奏の準備をし、後日、演奏会場において音楽制御装置及び楽音信号処理装置を用いてライブ演奏をする場合がある。この場合、例えば、自宅やスタジオでは、USBケーブルを用いて音楽制御装置(コントローラ)から音楽編集装置(DAWコンピュータ)を経由して楽音信号処理装置(音源装置)を制御し、演奏会場では、MIDIケーブルを用いて、音楽制御装置(コントローラ)から直接楽音信号処理装置(音源装置)を制御するものとすると、音楽制御装置からの通信設定が煩雑になってしまう。
【0006】
つまり、装置間の通信設定は、USBケーブル及びMIDIケーブルの何れを用いるかという物理的な通信経路のみならず、制御ノブの操作に基づくパラメータの内容を伝えるための通信形式(メッセージ伝送形式)をも切り替える必要がある。特に、音楽制御装置(コントローラ)内の各コントロールテンプレートによって、制御ノブに割り当てるパラメータだけでなく、通信形式をも規定しておき、所望のテンプレートを選択するようにした場合、上述のように、自宅やスタジオと演奏会場とで同様の設定条件に従って演奏制御したいときでも、パラメータの割り当てが同じで単に通信形式が異なるだけのテンプレートを用意しておき、用意された多数のテンプレート中から、いちいち、所望の割り当て及び通信形式をもつテンプレートを選択する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、このような事情に鑑み、音楽制御装置に対する音楽編集装置の接続状態に適した通信形式で、楽音信号処理パラメータの設定に関する情報を音楽制御装置から音楽編集装置乃至楽音信号処理装置に伝えることができるようにした電子音楽システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の主たる特徴に従うと、所定の楽音信号処理パラメータを設定するためのパラメータ設定操作子(5c)と、音楽編集装置(ED)との間で双方向に通信を行うための第1通信手段 (UMc)と、楽音信号処理装置(TG)に送信を行うための第2通信手段 (MDc)と、音楽編集装置(ED)と第1通信手段 (UMc)を通じて通信可能か否かを判別する通信判別手段(C5)と、通信判別手段(C5)により通信可能と判定された場合に(C5=YES)、音楽編集装置(ED)から第1通信手段 (UMc)を介して受信された設定指示情報 (E26)に基づいて設定条件を決定し (C64)、決定された設定条件の下にパラメータ設定操作子(5c)の操作に応じて設定された楽音信号処理パラメータを第1通信形式(system exclusive)に従って第1通信手段 (UMc)を介し音楽編集装置(ED)に送信する (C69-C6B)第1制御手段(C6:C61-C6E)と、通信判別手段(C5)により通信不可と判定された場合に (C5=NO)、パラメータ設定操作子(5c)の操作に応じて設定された楽音信号処理パラメータを第2通信形式(control change)に従い第2通信手段 (MDc)を介して楽音信号処理装置(TG)に送信する (C64)第2制御手段(C7)とを具備する音楽制御装置(MC)〔請求項1〕が提供される。尚、括弧書きは、理解の便のために付記した実施例の参照記号や用語等であり、以下同様である。
【0009】
この発明による音楽制御装置(MC)は、パラメータ設定操作子(5c)で設定される楽音信号処理パラメータの種類を含む複数の設定条件情報から成り楽音信号処理部種類情報(VSTi名)に対応付けられたテンプレート(TM)を複数(TM1,TM2,…)記憶するテンプレート記憶手段(TS)を具備し、第1制御手段(C6)は、設定指示情報として、音楽編集装置(ED)において楽音信号処理のために設けられた処理モジュール(音源モジュールML:ML1,ML2,…)に割り当てられている楽音信号処理部(VSTi)の種類を表わす楽音信号処理部種類情報(VSTi名)を受信し (C62=YES)、テンプレート記憶手段(TS)に記憶された複数のテンプレート(TM:TM1,TM2,…)から当該楽音信号処理部の種類に対応するテンプレート(TM)を選択し (C64)、選択されたテンプレート(TM)に示された設定条件の下にパラメータ設定操作子(5c)の操作に応じて楽音信号処理パラメータを設定する (C6A)〔請求項2〕ように構成することができる。
【0010】
また、この発明の別の特徴に従うと、音楽制御装置(MC)、音楽編集装置(ED)及び楽音信号処理装置(TG)から成る電子音楽システムであって、音楽制御装置(MC)は、所定の楽音信号処理パラメータを設定するためのパラメータ設定操作子(5c)と、音楽編集装置(ED)との間で双方向に通信を行うための第1通信手段 (UMc)と、楽音信号処理装置(TG)に送信を行うための第2通信手段 (MDc)と、音楽編集装置(ED)と第1通信手段 (UMc)を通じて通信可能か否かを判別する通信判別手段(C5)と、通信判別手段(C5)により通信可能と判定された場合に(C5=YES)、音楽編集装置(ED)から第1通信手段 (UMc)を介して受信された設定指示情報 (E26)に基づいて設定条件を決定し (C64)、決定された設定条件の下にパラメータ設定操作子(5c)の操作に応じて設定された楽音信号処理パラメータを第1通信形式(system
exclusive)に従って第1通信手段 (UMc)を介し音楽編集装置(ED)に送信する (C6B)第1制御手段(C6:C61-C6E)と、通信判別手段(C5)により通信不可と判定された場合に (C5=NO)、パラメータ設定操作子(5c)の操作に応じて設定された楽音信号処理パラメータを第2通信形式(control change)に従い第2通信手段 (MDc)を介して楽音信号処理装置(TG)に送信する第2制御手段(C7)とを具備し、音楽編集装置(ED)は、音楽制御装置(MC)及び楽音信号処理装置(TG)と双方向に通信を行うための双方向通信手段 (Ume)と、楽音信号処理装置(TG)内の楽音信号処理手段(SG)に対応する楽音信号処理部(例えば、音源モジュール ML2に割り当てられるVSTi)を含む複数の楽音信号処理部(音源モジュールML:ML1,ML2,…に割り当てられるVSTi)が夫々割り当てられた複数のデータ処理系列(トラックTR:TR1,TR2,…)を備えたシーケンサ(SQ)と、これらデータ処理系列(TR)のうちの何れかを指示する系列指示手段 (E24)と、系列指示手段 (E24)により何れかのデータ処理系列(TR)が指示されたときに (E24=YES)、当該データ処理系列(TR)に割り当てられている楽音信号処理部の種類を示す楽音信号処理部種類情報(VSTi名)を設定指示情報として双方向通信手段 (Ume)を介し音楽制御装置(MC)に送信する設定指示手段 (E26)と、音楽制御装置(MC)から第1通信形式(system exclusive)に従って送信された楽音信号処理パラメータを受信するパラメータ受信手段 (E23)と、系列指示手段 (E24)により指示されたデータ処理系列(例えば TR2)に割り当てられた楽音信号処理部(例えば、音源モジュール ML2に割り当てられるVSTi)が楽音信号処理装置(TG)に対応する場合は、パラメータ受信手段 (E23)により受信された楽音信号処理パラメータを双方向通信手段 (Ume)を介して楽音信号処理装置(TG)に送信するパラメータ送信手段 (E23)とを具備し、楽音信号処理装置(TG)は、音楽編集装置(ED)との間で双方向に通信を行うための第1通信手段 (UMt)と、音楽制御装置(MC)から受信を行うための第2通信手段 (MDt)と、音楽編集装置(ED)から第1通信手段 (UMt)を介して受信された楽音信号処理パラメータを楽音信号処理手段(SG)に設定する(T2)と共に、音楽制御装置(MC)から第2通信形式(control change)に従って送信され第2通信手段 (MDt)を介して受信された楽音信号処理パラメータを楽音信号処理手段(SG)に設定するパラメータ設定手段(T3)とを具備する電子音楽システム〔請求項3〕が提供される。
【発明の効果】
【0011】
この発明による音楽制御装置は(請求項1)、所定の楽音信号処理パラメータを設定するためにパラメータ設定操作子(5c)が設けられ、USBインターフェース(8c)のような第1通信手段 (UMc)により音楽編集装置(ED)と双方向に通信し、MIDIインターフェース (10c)のような第2通信手段 (MDc)により音源装置や効果付与装置のような楽音信号処理装置(TG)に情報を送信することができる。第1通信手段 (UMc)を通じて音楽編集装置(ED)と通信可能な場合は(C5=YES)、音楽編集装置(ED)から第1通信手段 (UMc)を介して設定指示情報(楽音信号処理部種類情報:E26)を受信すると、受信した設定指示情報に基づいて、所定の楽音信号処理パラメータを設定するための設定条件を決定し (C64)、決定された設定条件の下にパラメータ設定操作子(5c)の操作に応じて楽音信号処理パラメータを設定し (C6A)、設定された楽音信号処理パラメータをシステムエクスクルーシブ(system exclusive)のような第1通信形式に従って第1通信手段 (UMc)を介し音楽編集装置(ED)に送信する (C6B)。一方、第1通信手段 (UMc)を介した通信が不可の場合には (C5=NO)、パラメータ設定操作子(5c)の操作に応じて設定された楽音信号処理パラメータをコントロールチェンジ(control change)のような第2通信形式に従って第2通信手段 (MDc)を介し楽音信号処理装置(TG)に送信する(C7)。従って、この発明によれば、音楽編集装置と通信可能な場合はシステムエクスクルーシブのような第1通信形式に従ってパラメータ設定操作子の操作に基づく楽音信号処理パラメータを音楽編集装置に送信し、音楽編集装置との通信が不可の場合にはコントロールチェンジのような第2通信形式に従って楽音信号処理パラメータを楽音信号処理装置に送信するというように、音楽制御装置に音楽編集装置が接続されるのに応じて、その接続状態に適した通信形式で、楽音信号処理パラメータの設定に関する情報を音楽制御装置から音楽編集装置乃至楽音信号処理装置に伝えることができる。
【0012】
この発明による音楽制御装置では(請求項2)、テンプレート記憶手段(TS)に複数のテンプレート(TM:TM1,TM2,…)が用意されており、各テンプレート(TM)には、楽音信号処理パラメータを設定する際の設定条件を示す種々の設定条件情報が記録されている。また、各テンプレート(TM)は、音楽編集装置(ED)において楽音信号処理のために設けられた処理モジュール(音源モジュールML:ML1,ML2,…)に割り当てられている楽音信号処理部(VSTi)の種類を表わす楽音信号処理部種類情報(VSTi名)に対応付けられている。この音楽制御装置は、音楽編集装置(ED)から設定指示情報として楽音信号処理部種類情報(VSTi名)を受信すると (C62=YES)、テンプレート記憶手段(TS)から当該楽音信号処理部種類情報(VSTi名)に対応するテンプレート(TM)を選択し (C63)、選択されたテンプレート(TM)に示された設定条件の下にパラメータ設定操作子(5c)の操作に応じて楽音信号処理パラメータを設定する (C6A)。従って、この発明によれば、音楽編集装置と通信可能な場合には、音楽編集装置からの指示に対応するテンプレートに基づいて効果的に楽音信号処理パラメータを設定し、設定された楽音信号処理パラメータを第1通信形式に従って音楽編集装置に送信することができる。
【0013】
この発明による電子音楽システムは(請求項3)、音楽制御装置(MC)、音楽編集装置(ED)及び楽音信号処理装置(TG)で構成される。音楽制御装置(MC)は、上述したように、USBインターフェース(8c)のような第1通信手段 (UMc)で音楽編集装置(ED)と通信可能な場合は(C5=YES)、音楽編集装置(ED)から第1通信手段 (UMc)を介して受信した設定指示情報(楽音信号処理部種類情報:E26)に基づいてパラメータ設定条件を決定し (C64)、決定されたパラメータ設定条件の下でパラメータ設定操作子(5c)にて設定された楽音信号処理パラメータをシステムエクスクルーシブ(system exclusive)のような第1通信形式で第1通信手段 (UMc)を介して音楽編集装置(ED)に送信するが (C6B)、第1通信手段 (UMc)による通信が不可の場合には (C5=NO)、パラメータ設定操作子(5c)にて設定された楽音信号処理パラメータをコントロールチェンジ(control change)のような第2通信形式でMIDIインターフェース (10c)のような第2通信手段 (MDc)を介して音源装置や効果付与装置などの楽音信号処理装置(TG)に送信する(C7)。
【0014】
これに対して、音楽編集装置(ED)は、音楽制御装置(MC)及び楽音信号処理装置(TG)との間にUSBインターフェース(8e)のような双方向通信手段 (Ume)を有し、楽音信号処理のための複数の楽音信号処理部(処理モジュールML:ML1,ML2,…に割り当てられているVSTi)が夫々割り当てられた複数のデータ処理系列(トラックTR:TR1,TR2,…)から成るシーケンサ(SQ)を備え、これら楽音信号処理部には楽音信号処理装置(TG)内の楽音信号処理部(処理モジュール ML2に割り当てられているVSTi)が含まれる。これらデータ処理系列(TR)のうちの何れかが指示されると (E24=YES)、当該データ処理系列(TR)に割り当てられている楽音信号処理部の種類を示す楽音信号処理部種類情報(VSTi名)を設定指示情報として双方向通信手段 (Ume)を介し音楽制御装置(MC)に送信し (E26)、音楽制御装置(MC)から第1通信形式に従って送信された楽音信号処理パラメータを受信すると (E23)、系列指示手段 (E24)により指示されたデータ処理系列(例えば TR2)に割り当てられた楽音信号処理部(例えば、処理モジュール ML2に割り当てられているVSTi)が楽音信号処理装置(TG)に対応する場合、受信した楽音信号処理パラメータを双方向通信手段 (Ume)を介して楽音信号処理装置(TG)に送信する (E23)。また、楽音信号処理装置(TG)は、USBインターフェース(8t)のような第1通信手段 (UMt)により音楽編集装置(ED)と双方向に通信し、MIDIインターフェース (10t)のような第2通信手段 (MDt)により音楽制御装置(MC)から情報を受信することができ、音楽編集装置(ED)から第1通信手段 (UMt)を介して楽音信号処理パラメータを受信すると、受信した楽音信号処理パラメータを楽音信号処理手段(SG)に設定し(T2)、音楽制御装置(MC)から第2通信形式に従って送信された楽音信号処理パラメータを第2通信手段 (MDt)を介し受信すると、受信した楽音信号処理パラメータを楽音信号処理手段(SG)に設定する(T3)。
【0015】
例えば、自宅やスタジオでは、音楽制御装置(MC)、音楽編集装置(ED)及び楽音信号処理装置(TG)をUSBケーブル(CU)で接続し、音楽制御装置(MC)で設定した楽音信号処理パラメータをシステムエクスクルーシブ(system exclusive)のような第1通信形式で音楽編集装置(ED)に送り、更に音楽編集装置(ED)を経由して楽音信号処理装置(TG)に設定するというように、音楽制御装置(MC)から楽音信号処理装置(TG)をリモートコントロールする。また、ライブ会場では、楽制御装置(MC)と楽音信号処理装置(TG)をMIDIケーブル(CM)で接続し、楽音信号処理パラメータを自動的にコントロールチェンジ(control change)のような第2通信形式(control change)で、直接、楽音信号処理装置(TG)に送ってリモートコントロールする。従って、この発明によれば、音楽編集装置と通信可能な場合は、音楽編集装置からの指示に対応するテンプレートに基づいて所望の楽音信号処理パラメータを設定し、設定された楽音信号処理パラメータを第1通信形式に従って音楽編集装置に送信し、音楽編集装置を介して楽音信号処理装置に所望の楽音信号処理パラメータを設定することができ、音楽編集装置との通信が不可の場合には、楽音信号処理パラメータを自動的に第2通信形式で、直接、楽音信号処理装置に送信することができるというように、音楽制御装置に対する音楽編集装置或いは楽音信号処理装置の接続状態に適した通信形式で、楽音信号処理パラメータの設定に関する情報を音楽制御装置から音楽編集装置乃至楽音信号処理装置に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施例による電子音楽システムのハードウエア構成例を示す。
【図2】この発明の一実施例による電子音楽システムの概念図である。
【図3】この発明の一実施例による音楽制御装置におけるテンプレートの内容及びディスプレイの表示画面の例を示す。
【図4】この発明の一実施例によるシステム全体の処理フロー例である。
【図5】この発明の一実施例によるリモートモード1の処理フロー例の一部である。
【図6】この発明の一実施例によるリモートモード1の処理フロー例の他部である。
【図7】この発明の一実施例によるリモートモード2の処理フロー例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔システム構成例〕
図1は、この発明の一実施例による電子音楽システムのハードウエア構成例を示す図である。この電子音楽システムでは、楽音信号処理装置として音源装置TGが用いられ、システムは、音楽編集装置ED、音楽制御装置MC及び音源装置TGで構成される。音楽編集装置EDは、DAWアプリケーションソフトウエア(単にDAWともいう)を搭載したパーソナルコンピュータ(PC)が用いられ、図1の例では、中央処理装置(CPU)1e、ランダムアクセスメモリ(RAM)2e、読出専用メモリ(ROM)3e、外部記憶装置4e、キーボード及びマウス入力部5e,6e、表示部7e、USBホストインターフェース(USBホストI/F)8e、通信インターフェース(通信I/F)9e等の要素を備え、これら要素1e〜9eはバス20eを介して接続される。
【0018】
音楽編集装置ED全体を制御するCPU1eは、RAM2e及びROM3eと共に、DAWアプリケーションソフトウエアを含む各種制御プログラムに従って各種処理を実行するデータ処理部を構成し、DAWアプリケーションプログラムを含む各種制御プログラムに従い、タイマ12eによるクロックを利用して音楽編集処理を含む種々の処理を実行する。RAM2eは、これらの処理に際して必要な各種データを一時的に記憶し、ROM3eは、各種制御プログラムや必要な制御データを予め記憶しておくことができる。
【0019】
外部記憶装置4eは、ハードディスク(HD)や、コンパクトディスク・リード・オンリィ・メモリ(CD−ROM)、フレキシブルディスク(FD)、光磁気(MO)ディスク、ディジタル多目的ディスク(DVD)、メモリカード等の記憶媒体を用いた記憶手段であり、任意の記憶媒体に任意のデータを記録することができる。
【0020】
キーボード入力部5e及びマウス入力部6eは、それぞれ、文字及び機能入力用各種キーを含むキーボード及び画面に対する操作で情報を入力するマウスを備え、これら操作子の操作内容を操作情報としてデータ処理部(1e〜3e)に導入する。表示部7eは、LCD等のディスプレイを含み、操作に応じたデータ処理部からの指令に従ってディスプレイの表示内容を制御し、入力部5e,6eの操作に対する表示援助を行う。
【0021】
USBホストI/F8eは、これに接続された外部機器との間で種々の情報授受を行い、その接続スロットに、音楽制御装置MCや音源装置TGに接続されたUSBケーブルCUが装着(接続)された場合は、これら装置と音楽の演奏に関する各種情報を授受する電子音楽システムが構成される。通信I/F9eは、LANや電話回線などの通信ネットワークCNに接続される各種インターフェースであり、例えば、通信ネットワークCNに接続されるサーバ装置SVなどと各種情報を授受することができる。なお、図示しないが、任意のインターフェースを通じてサウンドシステムを外付けすることができる。
【0022】
音楽制御装置MCのハードウエアは、上述した音楽編集装置EDと同様に構成され、同様の機能を有するCPU1c、タイマ12c、RAM2c、ROM3c、外部記憶装置4c、表示部7c及びバス20cを備え、外部記憶装置4cの所定の記憶領域に設けられたテンプレート記憶部(TS)には、「制御テンプレート」と呼ばれるテンプレートデータ(TM)が記憶される。また、操作入力部として第1及び第2操作入力部5c,6cが設けられ、音楽編集装置EDのUSBホストI/F8eに対応してUSBターゲットインターフェース(USBターゲットI/F)8cが設けられると共に、音源装置TGに対してMIDIインターフェース(MIDII/F)10cが設けられる。
【0023】
第1操作入力部5cは、「制御ノブ」と呼ばれる複数の回転操作型の設定操作子(以下「ノブ」又は「ノブ操作子」という)を有し、各ノブの操作内容に対応するノブ操作情報をデータ処理部(1c〜3c)に導入する。各ノブには、後述するように、特定の楽音生成パラメータを割り当てることができ、ノブの操作によりこれらパラメータの値を設定することができる。第2操作入力部6cは、リモート(REMOTE)モードへの遷移、テンプレートの指定(選択)、通信形式(送信形式)の設定、通信経路の設定などを行うためのその他の設定操作子、並びに、演奏用鍵盤やホイール等の演奏操作子を有し、その他の設定操作子の操作内容に対応するその他の設定操作情報や、演奏操作子の操作内容に対応する演奏操作情報をデータ処理部に導入する。そして、データ処理部は、ノブ操作情報やその他の設定操作情報を所定形式の設定データに変換し、演奏操作情報を所定形式の演奏データに変換して、USBターゲットI/F8c及びUSBケーブルCU或いはMIDII/F10c及びMIDIケーブルCMを介して音楽編集装置ED或いは音源装置TGに出力する。なお、必要に応じて、破線で示すように、音源及び効果付与部11cを設けることができ、この場合は、データ処理部で生成(変換)された設定データ及び演奏データを音源及び効果付与部11cに出力することができる。
【0024】
音源装置TGのハードウエアも、音楽編集装置EDや音楽制御装置MCと同様に構成され、同様の機能を有するCPU1t、タイマ12t、RAM2t、ROM3t、外部記憶装置4t、表示部7t及びバス20tを備えており、操作入力部としては、スイッチやノブ等の設定操作子を有する設定操作入力部5tが設けられ、設定操作入力部5tは、設定操作子の操作内容に対応する各種設定操作情報をデータ処理部(1t〜3t)に導入する。また、音楽編集装置EDのUSBホストI/F8eに対応してUSBターゲットI/F8tが設けられ、音楽制御装置MCに対してMIDII/F10tが設けられる。
【0025】
音源装置TGには更に音源及び効果付与部11tが設けられる。音源及び効果付与部11tには、音楽編集装置ED或いは音楽制御装置MCからUSBケーブルCU及びUSBターゲットI/F8t或いはMIDIケーブルCM及びMIDII/F10tを介して入力される設定データや、設定操作入力部5tの設定操作情報に従い生成された設定データに基づいて楽音生成パラメータが設定される。同様にUSBターゲットI/F8t或いはMIDII/F10tを介して演奏データ(MIDI)が入力されると、音源及び効果付与部11tは、そのときに設定されている楽音生成パラメータに従って、入力された演奏データに基づくオーディオ形式の楽音信号を生成する。そして、音源及び効果付与部11tに接続されたサウンドシステム13tは、D/A変換部やアンプ、スピーカを備え、音源及び効果付与部11tからの楽音信号に基づく楽音を発生する。
【0026】
〔電子音楽システムの機能〕
図2は、この発明の一実施例による電子音楽システムの概念図である。この発明の一実施例による電子音楽システムでは、楽音信号処理装置に音源装置TGを用い、音楽編集装置EDに対して音楽制御装置MC及び音源装置TGをUSBケーブルCUで通信可能に接続して(実線)リモートモード遷移操作が行われると、これら3装置MC,ED,TGから成るリモートモード1の電子音楽システムが構成される。また、音楽制御装置MC及び音源装置TGをMIDIケーブルCMで接続して(破線)リモートモード遷移操作が行われると、両装置MC,TGから成るリモートモード2の電子音楽システムが構成される。
【0027】
ここで、音楽編集装置EDは、DAWが動作しているパーソナルコンピュータであり、大略、USB−MIDIドライバUMe及びDAWアプリケーション部EAで構成され、USB−MIDIドライバUMeは、DAWアプリケーション部EAとMIDI規格の音楽制御装置MC及び音源装置TGとの間でUSBケーブルCUを通じてMIDIプロトコルに従ったデータを送受信することができるようにしたインターフェースソフトウェアである。また、DAWアプリケーション部EAは、音楽制御装置用及び音源装置用エクステンションEXc,EXt、シーケンサ部SQ及び複数の音源モジュールML:ML1,ML2,…(記号“ML”は音源モジュールを代表的に表わす)から成る。
【0028】
音楽制御装置用エクステンションEXcは、USB−MIDIドライバUMeとシーケンサ部SQとの間でデータを仲介するドライバであり、ドライバUMeにおける音楽制御装置MCとのデータ送受部との間に2つのポートを有する。第1のポート1では、音楽制御装置MCから第2操作入力部6cの演奏操作子の操作(演奏操作)に基づく演奏データが受信される。また、第2のポート2では、DAWアプリケーション部EAから各種の通知データが音楽制御装置MC側に送信され、音楽制御装置MC側から、第1操作入力部5cのノブ操作子の操作(ノブ操作)或いは第2操作入力部6cの設定操作子の操作(その他の設定操作)に基づく設定データが受信される。
【0029】
音源装置用エクステンションEXtは、音源装置TGに割り当てられ実際には楽音信号生成機能を有しない特定の音源モジュール(この例では音源モジュールML2=音源モジュール2)と、ドライバUMeと間でデータを仲介するドライバであり、ドライバUMeにおける音源装置TGとのデータ送受部との間に1つのポートを有する。このポートでは、特定の音源モジュールML2について、割り当てられた音源装置TGへの問合せデータや音楽制御装置MCからの演奏データ及び設定データをDAWアプリケーション部EAから音源装置TG側に送信し、音源装置TG側からは応答データを受信することができる。
【0030】
シーケンサ部SQは、複数の「トラック」と呼ばれるデータ処理系列TR:TR1,TR2,…(記号“TR”は「トラック」乃至データ処理系列を代表的に表わす)を有し、各データ処理系列TRは各音源モジュールMLに対応している。音源モジュールMLには、ユーザ操作により、「VSTi」或いは「音源」と呼ばれる所定の楽音信号生成機能を割り当てることができ、通常は、所望の音源としてソフトウエアシンセサイザが割り当てられ、割り当てられた機能は、特にソフトウエアシンセサイザVSTiと呼ばれる。音源モジュールMLには、所望の音源として、外部の音源装置を割り当てることもでき、割り当てられた機能は、特に音源装置用VSTiと呼ばれ、図2の例では、トラック2 (TR2)に対応する音源モジュール2 (ML2)に音源装置TGが割り当てられている。ここで、音源装置用VSTiは、割り当てられた音源装置TGを指定するだけである。
【0031】
つまり、特定の音源モジュールML2以外の通常の音源モジュールに対応するデータ処理系列TRをアクティブにすると、当該データ処理系列TRに対応する音源モジュールMLに割り当てられたソフトウエアシンセサイザVSTiについて、音楽制御装置MCからの設定データに基づく楽音生成パラメータの設定や、演奏データに基づく楽音信号の生成が行われる。一方、音源装置用VSTiが割り当てられた特定の音源モジュールML2は、ユーザ操作に関し、ソフトウエアシンセサイザと同様のVSTiであるかのように振舞うだけで、対応するデータ処理系列TR2をアクティブにした場合は、音楽制御装置MCからの設定データや演奏データを音源装置用エクステンションEXcに出力し、エクステンションEXcは、この音源モジュールML2に割り当てられた音源装置用VSTiが指定する音源装置TGの楽音生成部SGに向かってデータを送り出す。
【0032】
音楽制御装置MCは、演奏操作機能を有するMIDI規格のコントローラであり、主たる機能を概略的にみると、第1及び第2操作入力部5c,6cの外に、テンプレート記憶部TS、通信制御部TCc並びに第1及び第2通信部MDc,UMcで構成される。テンプレート記憶部TSは、外部記憶装置音4cの所定の記憶領域に設けられ、各種設定条件を規定した複数のテンプレートデータTM:TM1,TM2,…(以下、単に「テンプレート」といい、記号“TM”はテンプレートデータを代表的に表わす)を記憶している。通信制御部TCcは、予め定められたルールに従ってテンプレート記憶部TSから所定のテンプレートTMを選択し、選択されたテンプレートTMが示す設定条件に従い、音楽編集装置EDとの通信状態に応じて通信経路及び通信形式を設定すると共に、第1操作入力部5cの操作に基づいて設定された通信形式の楽音生成パラメータ(設定データ)を生成する。また、第2操作入力部6cの演奏操作に基づいて演奏データを生成し、さらに、生成された設定データや演奏データを第1或いは第2通信部UMc,MDcに送る。
【0033】
第1通信部UMcは、USBケーブルCUを通じて音楽編集装置EDと双方向に通信するのに用いられ、USBインターフェース規格による通信経路上をMIDIプロトコルに従って設定データや演奏データ或いは通知データ等を送受することができる。また、第2通信部MDcは、MIDIケーブルCMを通じて音源装置TGと送受信のうち少なくとも送信を行うのに用いられ、MIDI規格による通信経路上をMIDIプロトコルに従って設定データや演奏データ或いはその他のデータを送信することができる。
【0034】
音源装置TGは、楽音生成機能を有するMIDI規格の電子音楽装置であり、主たる機能を概略的にみると、通信制御部TCt、第1及び第2通信部UMt,MDt並びに楽音生成部SGで構成される。第1通信部UMtは、USBケーブルCUを通じて音楽編集装置EDと双方向に通信するのに用いられ、USBインターフェース規格による通信経路上をMIDIプロトコルに従って応答データ或いは問合せデータや設定データ、演奏データ等を送受することができる。第2通信部MDtは、音楽制御装置MCの第2通信部MDcに対応しており、MIDIケーブルCMを通じて音源装置TGと送受信のうち少なくとも受信を行うのに用いられ、MIDI規格による通信経路上をMIDIプロトコルに従って設定データや演奏データ或いはその他のデータを受信することができる。
【0035】
通信制御部TCtは、第1通信部UMtで音楽編集装置EDからの問合せデータを受信すると、楽音生成部SGの設定状態を参照し応答データを作成して返信する。また、第1或いは第2通信部UMt,MDtで設定データ乃至演奏データを受信すると、これらデータを楽音生成部SGに送る。楽音生成部SGは、図1のハードウエア構成例の音源及び効果付与部11t並びにサウンドシステム13tに対応し、通信制御部TCtから送られてきた設定データに基づいて楽音生成パラメータを設定したり、通信制御部TCtからの演奏データに基づいて、設定されたパラメータに従った楽音を生成する。
【0036】
図3は、音楽制御装置MCにおいてテンプレート記憶部TSに記憶されるテンプレートTMの内容及び表示部7cのディスプレイに表示される画面の例を示す。テンプレート記憶部TSには、音源モジュールML:ML1,ML2,…に割り当て可能な音源(音楽編集装置EDに搭載されたソフトウエアシンセサイザ及びUSBで接続可能な音源装置)の数だけ記憶されている。つまり、音源テンプレートTMは、音源モジュールMLに割り当て可能な音源毎に1つ用意される。各音源テンプレートTMは、テンプレート番号、音源に対応する文字列、テンプレートの名称文字列Tn、通信形式の優先度、パラメータID、各ノブに対応するコントロールチェンジ番号などが記録されている。
【0037】
テンプレートの主な内容が図3(1)に説明され、音源に対応する文字列は、音源モジュールMLに割り当て可能な音源(VSTi)の名称(VSTi名)を示し、リモートモード1において、音楽編集装置EDから音源種類情報として音楽制御装置MCに送られ、テンプレートTMを選択する際に参照される。例えば、図2の音源モジュールML2のように、音源装置TGの音源(楽音生成部SG)が割り当て可能な音源(VSTi)である場合、この音源に対応する文字列は「 Tone Generator A VSTi」である。テンプレート名称文字列Tnは、テンプレートTMの名称を表わす文字列である。通信形式の優先度は、音楽制御装置MCが音楽編集装置EDと通信できる場合に、ノブ操作によるパラメータ情報をDAW専用システムエクスクルーシブ (SystemExclusive)〔音楽編集装置EDに搭載されたDAWに専用のシステムエクスクルーシブメッセージ。以下、DAW専用SysExという。〕で送信するか、汎用コントロールチェンジ (ControlChange)〔コントロールチェンジ番号16〜19,80〜83によるコントロールチェンジメッセージ。以下、汎用CntChという。〕で送信するかを規定したものである。パラメータIDは、このテンプレートTMを用いた場合に各ノブ5cに割り当てられる楽音生成パラメータのIDを規定したものであり、ノブ情報即ちノブ5cの操作に基づく設定データをDAW専用SysExで送信する場合に、各ノブ5cが夫々音源側のどのパラメータに対応するかを関連付ける。各ノブに対応するコントロールチェンジ番号は、汎用CntCh即ちコントロール番号16〜19,80〜83のコントロールチェンジメッセージで設定データを送信する場合に、各ノブ5cを操作したときに設定データと共に夫々出力される。
【0038】
図3(2),(3)は、リモートモード遷移操作がなされてリモートモード1,2の何れかの状態で、音源装置TGの音源(楽音生成部SG)に対応する音源モジュールMLの音源名(VSTi名)= Tone Generator A VSTiと通信形式の優先度=DAW専用SysExとが規定された第1テンプレートTM1に従ってノブ5cを操作する場合の画面7csの表示例である。この例では、画面7csの左上に「REMOTE」表記Mdが表示され、他の装置DE,TGと連係するリモートモードであることをユーザに示すと共に、音源装置TGの音源名(VSTi名)に対応したテンプレート名Tn=Tone Generator Aがテンプレート番号「01」と共に表示されている。このシステムでは、音楽制御装置MCが音楽編集装置EDと通信可能な場合(リモートモード1)、ノブ操作に基づく設定データの音楽編集装置EDへの送信は、ユーザ操作による通信形式の設定がないと、テンプレートTM1の優先度で定めた通信形式に従い、ユーザ操作により通信形式が設定されると、テンプレートTM1の優先度に拘わらず、ユーザ設定された通信形式に従う。一方、音楽制御装置MCが音楽編集装置EDと通信不可の場合は(リモートモード2)、テンプレートTM1で定めた通信形式の優先度やユーザによる通信形式設定操作に拘わらず、汎用CntChに従ってノブ操作に基づく設定データが音源装置TGに送信される。
【0039】
従って、音楽制御装置MCが音楽編集装置EDと通信できる場合(リモートモード1)に、(選択されたテンプレートTMの優先度が汎用CntChに定められていても)ユーザ設定された通信形式がDAW用専用SysExのとき、或いは、ユーザ設定がなく選択されたテンプレートTMの優先度がDAW用専用SysExに定められているときには、システムは、ノブ操作に基づく設定データの通信形式をDAW用専用SysExに決定する。この場合、画面7csには、図3(2)のように、「Remote」表記Cs1を表示することにより、DAW専用SysExで通信する状態(「Remote」モードという)であることをユーザに知らせる。「Remote」モードでは、選択されたテンプレートTMに対応する音源(VSTi)に設定されており各ノブ5cに対応付けられたパラメータ及びその値(ノブ対応パラメータ)が音楽編集装置EDから送られ、送られてきた各ノブ対応パラメータの内容を画面7csの主表示領域Maに表示する。この例では、選択されたテンプレートTM1に対応する音源(VSTi)を音源装置TGとしているので、音源装置TGに設定されているノブ対応パラメータがノブ操作による設定対象として表示される。具体的には、例えば、図3(2)の領域Maのように、各ノブのマークに続いてフィルタのカットオフ周波数やレゾナンス、DCA (Digital Contorolled Amplifier)のアタック時間やリリース時間などのパラメータが表示される。
【0040】
一方、音楽制御装置MCが音楽編集装置EDと通信できない場合は、選択されたテンプレートTMの優先度やユーザ設定された通信形式がDAW用専用SysExであっても、システムはリモートモード2となり、ノブ操作に基づく設定データの通信形式を汎用CntChに決定する。この場合、画面7csには、図3(3)のように、ControlChangeの略号である「CC」表記Cs2を表示することによって、汎用CntChで通信する状態(「CCモード」という)であることをユーザに知らせる。つまり、テンプレートTM1の優先度によりDAW専用SysExで通信することになっていても、音楽編集装置EDと通信できない場合はこのような表示になる。また、画面7csの主表示領域Maには、各ノブのマークに続いて、選択されたテンプレートTM1に規定された各ノブ対応コントロールチェンジ番号が表示され、各番号の右側のパラメータ値には、音楽制御装置MCの各ノブ操作に対応した設定値が表示される。
【0041】
ここで、この発明の一実施例による電子音楽システムの特徴を説明すると、このシステムは、音楽編集装置EDと、音楽制御装置MCと音源装置などの楽音信号処理装置TGから成る。音楽制御装置MCは、音楽編集装置EDと通信可能な場合は、音楽編集装置EDからの設定指示を第1通信手段UMcで受信すると、設定指示に応じた設定条件(テンプレートTM)に従ってノブ操作により楽音信号処理パラメータ(設定データ)を設定し、設定された楽音信号処理パラメータを第1通信形式(system exclusive)に従って音楽編集装置EDに第1通信手段UMcで送信する。一方、音楽編集装置EDとの通信が不可の場合には、ノブ操作により設定された楽音信号処理パラメータ(設定データ)を第2通信形式(control change)に従って第2通信手段DMcにて楽音信号処理装置TGに送る。
【0042】
〔処理フロー例〕
図4〜図7は、この発明の一実施例による電子音楽システムを構成する各装置の処理動作を表わすフローチャートである。まず、図4によりシステムで全体の処理の流れを説明する。音楽編集装置EDでは、図4中央部に示されるように、音楽編集装置側処理機能つまりDAWが起動すると、CPU1eは、最初のステップE1で起動通知処理を行い、音楽編集装置側処理機能(DAW)が起動したことをUSB経由で音楽制御装置MCに通知し、次のステップE2にて、図5右側に示される音楽編集処理を行う。なお、このような音楽編集装置EDの処理動作(E1,E2)は、ユーザの自宅やスタジオ等において音楽制御装
置(コントローラ)MCから音楽編集装置(PC+DAW)EDを経由して音源装置TGを制御する場合に実行され、ライブ演奏会場などで音楽制御装置MCから音楽編集装置EDを介さず直接音源装置TGを制御する場合には実行されない。また、音楽制御装置MCは、図4左側に示す音楽制御装置側処理機能を実行し、音源装置TGは、図4右側に示すように、ステップT1のノブ対応パラメータ送信処理、ステップT2,T3の楽音生成パラメータ設定処理及びステップT4のその他の処理を順次繰り返し行う(各ステップは、その処理条件が与えられない場合スルーする)音源装置側処理を実行する。
【0043】
音楽制御装置MCでは、音楽制御装置側処理機能が起動すると、CPU1cは、初期化を行い、例えば、ノブ操作に基づく情報の通信経路をUSBI/F8cを介するUSB−MIDIとし、第1のテンプレート番号=01のテンプレートTM1を選択するように、デフォルト設定し、最初のステップC1で、USB経由で音楽編集装置EDからの起動通知があったか否かを判定する。ここで、起動通知があったときは(C1=YES)、ステップC2にて、音楽編集装置EDと通信可能であることをRAM2e内の通信状態記憶エリアに記憶する。起動通知がないと判定したとき (C1=NO)或いはステップC2の記憶処理の後は、ステップC3で、リモート(REMOTE)モード遷移操作がなされたか否かを判定する。ここで、リモートモード遷移操作がないときは (C3=NO)、ステップC4で、第2装置入力部6cの操作に応じて、各種設定内容を外部記憶装置4cに保存し或いは読み出す等、音楽制御装置MC単独の処理を実行する。また、音源及び効果付与部11cを内蔵している場合、演奏操作(鍵盤操作など)に応じた発音処理やそのためのパラメータ設定を行い、自動演奏機能を有している場合は、パラメータ設定やその実行を行うことができる。
【0044】
ステップC3で、リモートモード遷移操作があったと判定したときは(C3=YES)、ステップC5で、通信状態記憶エリアの記憶内容を調べて音楽編集装置EDと通信可能か否かを判定する。ここで、音楽編集装置EDと通信可能であれば(C5=YES)、ステップC6でリモートモード1処理(図5及び図6)を実行し、通信可能でなければ (C5=NO)、ステップC7で、リモートモード2処理(図7)を実行する。そして、ステップC4,C6,C7の単独処理、リモートモード1処理或いはリモートモード2処理の後は、ステップC1に戻り、動作停止指示がある迄、上述のステップC1〜C7の処理を繰り返す。
【0045】
図5及び図6は、音楽制御装置MCにおけるリモートモード1処理(C6)及びリモートモード1処理に対応する音楽編集装置EDの音楽編集処理(E2)の具体例を表わすフローチャートである。音楽制御装置MCでは、リモートモード1処理の第1ステップC61で、リモートモードに遷移したことを音楽編集装置EDに通知し、ステップC62に進む。これに対して、音楽編集装置EDは、ステップE21で、音楽制御装置MCからの通知に応じて、現在アクティブなトラックに割り当てられている音源の音源種類情報(VSTi名)を設定指示情報としてUSB−MIDI経由で返送し、次のステップE22に進む。
【0046】
音楽制御装置MCでは、ステップC62で、音楽編集装置EDからUSB−MIDI経由で音源種類情報(VSTi名)が送られてきたか否かを判定し、音源種類情報(VSTi名)が送られてこないときは(C62=NO)、ステップC63に進んで、テンプレート選択操作がなされたか否かを判定し、音源種類情報(VSTi名)が送られてきたとき (C62=YES)、或いは、ユーザによるテンプレート選択操作がなされたときは (C63=YES)、順次ステップC64〜C67に進む。まず、ステップC64では、テンプレート記憶部TSから、音源種類情報(VSTi名)に対応付けられたテンプレートTM、或いは、ユーザ操作により指示されたテンプレートTMを選択する。次のステップC65では、選択されたテンプレートTMの優先度に応じて、ノブ操作に基づく設定データ(楽音生成パラメータ)の通信形式(送信形式)をDAW専用SysEx或いは汎用CntChに設定し、続くステップC66で、選択されたテンプレートTMに規定された他の設定条件に従ってノブ5cへの機能割当て等の必要な設定を行い、さらに、ステップC67で画面表示を更新する。
【0047】
ステップC67の表示更新処理では、送信形式がDAW専用SysExに設定されている場合、ノブに対応したパラメータの現在値を表示する文字列をUSB−MIDI経由で音楽編集装置EDに問い合わせる。音楽編集装置EDは、ステップE22にて、音楽制御装置MCからの問合せに応じて、現在アクティブなトラックTRの音源モジュールMLに割り当てられている音源(VSTi)のノブに対応したパラメータ値を調べ、これを表示用文字列(例えば、“100Hz”)に変換し、USB−MIDI経由で音楽制御装置MCに返送する。この場合、図2の音源モジュールMK2のように、割り当て音源(VSTi)が音源装置TGの場合は、ノブに対応したパラメータ値を音楽編集装置EDからUSB−MIDI経由(A)で音源装置TGに問い合わせる。これに対して、音源装置TGは、ステップT1(図4右)で、音楽編集装置EDからUSB端子で受信した問合わせに応じて、ノブに対応したパラメータ値をUSB−MIDI経由(A)で音楽編集装置EDに返送し、音楽編集装置EDは、これを表示用文字列に変換して音楽制御装置MCに送る。音楽制御装置MCは、このように、問合せに応答して音楽編集装置EDからUSB−MIDI経由で送られてくるノブに対応する表示用文字列を取得し、これを表示装置7cのディスプレイ画面7csに表示する〔図3(2)参照〕。一方、送信形式が汎用CntChに設定されている場合は、音楽制御装置MCにおいて、内部にノブに対応したパラメータ値を保持するようにし、保持しているパラメータ値をデフォルト値として、そのまま数値で表わすような汎用表示を行う〔図3(3)参照〕。
【0048】
ステップC63でテンプレート選択操作がなさないと判定したとき(C63=NO)或いはステップC67の表示更新処理の後は、ステップC68(図6)に進み、デフォルト設定に応じて情報送信経路をUSB−MIDIに設定し、或いは、通信経路の設定に関するユーザ操作があれば、ユーザ操作に応じて情報通信経路をUSB−MIDI又はMIDI端子に設定する。次のステップC69では、ノブ操作がなされたか否かを判定し、ノブ操作がなされたときは (C69=YES)、まず、ステップC6Aにて、ノブ操作に基づくパラメータ変更情報を、設定された送信形式で生成する。この送信形式は、DAW専用SysExでパラメータ値の増減を指示するもの或いは汎用CntChでパラメータ値を直接指示するものである。次いで、ステップC6Bにおいて、このパラメータ変更情報を、ステップC68で設定された送信経路(USB−MIDI或いはMIDI端子)を介して音楽編集装置EDに送信し、更にステップC6Cで、ノブ操作に応じて画面表示を更新する。ステップC6Cでは、ステップC67と同様に、送信形式がDAW専用SysExに設定されている場合は、USB−MIDI経由(H)で音楽編集装置EDからノブに対応したパラメータの現在値を表示する文字列を取得して表示し、送信形式が汎用CntChに設定されている場合には、音楽制御装置MC内に保持されたノブ操作を保持しているパラメータ値に反映させて更新したのち汎用表示をする。なお、ステップC6Bにおいて、パラメータ変更情報は、送信経路がUSB−MIDIの場合USB−MIDI経由(J)で送られるが、通信形式がDAW専用SysExならUSB−MIDIポート2で送られ、汎用CntChならUSB−MIDIポート1で送られる。また、送信経路がMIDI端子の場合は、汎用CntChのパラメータ情報をMIDI経由(D)で直接音源装置TGに送る。
【0049】
ステップC6Bで音楽制御装置MCからパラメータ変更情報を音楽編集装置EDに送信した場合、音楽編集装置EDでは、ステップE23にて、音楽制御装置MCからのパラメータ変更情報をアクティブなトラックTRに割り当てられている音源(VSTi)に設定する。その際、音楽制律用エクステンションExcが、パラメータ値の増減の指示であるパラメータ変更情報をパラメータ値そのものに変換する。ここで、図2の音源モジュールMK2のように、割り当て音源(VSTi)が音源装置TGの場合は、音楽制御装置MCからのパラメータ変更情報から変換されたパラメータ値をUSB−MIDI経由(B)でMIDIプロトコルにて音源装置TGに送り、音源装置TGでは、ステップT2にて、USB端子で受信したMIDIプロトコルのパラメータ情報を楽音生成部SGに設定する。
【0050】
音楽編集装置EDでは、次のステップE24で、アクティブなトラックTRの変更操作がされたか否かを判定し、トラック変更操作があれば (E24=YES)、ステップE25で、トラック変更処理を行いアクティブなトラックTRの設定を変更すると共に、表示部7eのディスプレイ画面の表示更新などを行い、続くステップE26にて、新しくアクティブに設定されたトラックTRに割り当てられている音源(VSTi)の音源種類情報(VSTi名)を新たな設定指示情報としてUSB−MIDI経由で音楽制御装置MCに送る。ステップE24でアクティブトラック変更操作がないと判定したとき(E24=NO)或いはステップE26における新たな音源種類情報(設定指示情報)の送信処理後は、ステップE27でその他の処理を行う。その他の処理の後は、ステップE21に戻り、音楽編集装置側処理機能(DAW)の終了指示があるまで、ステップE21〜E27の処理を繰り返す。なお、ステップE21〜E23,E27は、その処理条件が与えられない場合スルーする。
【0051】
さて、音楽制御装置MCにおいて、ステップC69でノブ操作がなされないと判定したとき(C69=NO)或いはステップC6Cの表示更新処理の後は、ステップC6Dに進んで、その他の処理を行う。その他の処理では、第2操作入力部6cにおけるその他の設定操作子の操作や演奏操作子の操作に基づく処理などが行われ、例えば、通信経路の設定に関するユーザ操作があれば、その旨をRAM2cの所定領域に記憶し(ステップC68で反映される)、演奏操作があれば楽音処理を行う。
【0052】
なお、ステップC6Dの楽音処理では、演奏操作に基づくノートオン/オフやモジュレーションやピッチペンドに対応する通常のMIDIメッセージで演奏データが生成される。ここで、情報送信経路がUSB−MIDIに設定されている場合は、USB−MIDI経由(K)即ち第1通信部UMc〜USBケーブルCU経由で音楽編集装置EDのUSB−MIDIドライバUMeに送信される。音楽編集装置EDでは、ステップE27のその他の処理で、音楽制御装置MCからの演奏データがドライバUMeからMIDIポート1を通じ音楽制御装置用エクステンションEXcを介してシーケンサ部SQのアクティブなトラックTRに対応する音源モジュールMLに出力される。例えば、アクティブトラックがトラック1 (TR1)なら、音源モジュールML1に割り当てられているソフトウェアシンセサイザで演奏データに基づく楽音信号が生成され、アクティブトラックがトラック2 (TR2)なら、音楽制御装置MCからの演奏データが更にUSB−MIDI経由(C)で音源装置TGに送られ、音源装置TGのステップT4で演奏データに基づく楽音信号が生成される。また、情報送信経路がMIDI端子に設定されている場合には、音楽制御装置MCから演奏データがMIDI経由(E)で直接音源装置TGに送られる。
【0053】
音楽制御装置MCでは、ステップC6Dの処理の後、ステップC6Eでリモートモード終了操作がなされたか否かを判定し、終了操作がないときは、ステップC62に戻り、上述したステップC62〜C6Eの処理を繰り返し、終了操作がなされたときは、リモートモード1処理を終了し音楽制御装置側処理の第1ステップC1(図4)にリターンする。
【0054】
図7は音楽制御装置MCにおけるリモートモード2処理(C7:図4)の例を表わすフローチャートである。リモートモード2処理の第1ステップC71では、デフォルト設定或いはユーザ操作に応じてテンプレートを選択し、次のステップC72では、選択されたテンプレートTMの優先度に拘わらず、ノブ操作に基づく情報の通信形式を汎用CntChに設定し、続くステップC73では、デフォルト設定やユーザ設定に拘わらず、情報送信経路をMIDI端子とする。さらに、ステップC74で、選択されたテンプレートTMのパラメータ設定条件を反映させ、画面に表示するテンプレート名称文字列やノブ操作時に出力する汎用CntChのコントロールチェンジ番号などを決定する。続いて、ステップC75において、ディスプレイ画面7csの表示を更新する〔図3(3)参照〕。ステップC75での処理は、ステップC67で送言形式が用CntChに設定されている場合と同様であり、内部に、ノブに対応したパラメータ値を保持するようにし、そのパラメータ値をデフオルト値に設定したのち、数値をそのまま表わすような汎用表示をする。
【0055】
ステップC75の表示更新の後、ステップC76に進み、ノブ操作がなされたか否かを判定し、ノブ操作がなされると(C76=YES)、順次ステップC77〜C79に進む。つまり
、ステップC77で、ノブ操作に基づくパラメータ情報を、設定された通信形式即ち汎用CntChで生成し、ステップC78で、ノブ操作に基づくパラメータ情報を設定された通信経路即ちMIDI端子 (10c)経由(F)で音源装置TGに送信し、ステップC79で画面7csの表示を更新する。音源装置TGでは、ステップT3で、音楽制御装置MCからMIDI経由(F)で送信されMIDI端子 (10t)で受信したパラメータ情報を楽音生成部SGに設定して楽音生成に反映させる(図3)。
【0056】
音楽制御装置MCでは、ノブ操作がなされないと判定したとき(C76=NO)或いはステップC79での表示更新処理の後は、ステップC7Aに進んで、第2操作入力部におけるその他の操作子の操作に基づくその他の処理を行う。その他の処理は、音楽的には、リモートモード1処理におけるその他の処理 (C6D)と同様であり、例えば、楽音処理で生成された演奏データは、MIDI端子経由(G)で直接音楽装置TGに送られる。その他の処理の後はステップC7Bで、リモートモード終了操作がなされたか否かを判定し、終了操作がないときは、ステップC7Cに進み、テンプレート選択操作がなされたか否かを判定する。ここで、テンプレート選択操作がなれたときは (C7C=YES)、ステップC71に戻ってステップC71〜C7Cの処理を繰り返し、テンプレート選択操作がなれないときには(C7C=NO)、ステップC76に戻ってステップC76〜C7Cの処理を繰り返す。そして、ステップC7Bで終了操作がなされたと判定したときに (C7B=YES)、リモートモード2処理を終了し音楽制御装置側処理の第1ステップC1(図4)にリターンする。
【0057】
〔種々の実施態様〕
以上、この発明の好適な一実施例について説明したが、これは単なる一例であって、この発明は、発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、種々の態様で実施することができる。実施例の説明では、楽音信号の処理を行う楽音信号処理装置として、MIDIなどの演奏データに従って楽音信号を生成する音源装置TGを挙げ、音源装置TGを音楽制御装置MCや音楽編集装置EDなどと共に使用する例を挙げた。別の実施態様としては、楽音信号処理装置を、音源装置TGに替えて、効果付与装置(リバーブ装置、ディレイ装置、ディストーション装置、イコライザ装置、など)TG’にしてもよい。
【0058】
楽音信号処理装置として効果付与装置TG’を用いる場合、自宅やスタジオでは、音楽制御装置MC、音楽編集装置ED及び効果付与装置TG’をUSBケーブルCUで接続して音楽制作をする。このとき、音楽編集装置ED上では、DAWアプリケーションEAが稼動しておりDAWアプリケーションEAのシーケンサ部SQが有する各トラックには音源モジュールMLのみならず効果付与モジュールML’を割り当てることができる。この効果付与モジュールML’は、所望のソフトウエアエフェクタVSTi’或いは外部の効果付与装置TG’に対応した効果付与装置用VSTi’である。ユーザは、DAWアプリケーションEAから所定のインターフェースを介して、効果付与装置TG’にオーディオ信号を渡し、効果付与されたオーディオ信号を再び戻すことによって、効果付与装置TG’を用いた音楽制作ができる。その際、音楽制御装置MCは、実施例における音源装置TGとの通信と同様に、効果付与装置TG’と通信をする。すなわち、音楽制御装置MC上で所定のテンプレートTMが選択され、選択されたテンプレートTMの設定に基づいて、音楽編集装置EDと通信し、更に音楽編集装置EDのシーケンサ部SQに含まれるトラックに関連付けられた効果付与モジュールML’経由で外部の効果付与装置TG’と通信を行う。この通信により、音楽制御装置MCのノブ操作で効果付与装置TG’のパラメータ(例えば、ディレイ装置のディレイ時間の設定やディストーション装置のゲイン値の設定など)を制御しパラメータ値を音楽制御装置MCの表示部7cに表示することができる。
【0059】
一方、ライブ会場では、音楽制御装置MCと効果付与装置TG’とをMIDIケーブルCMで接続し、音楽制御装置MCで効果付与装置TG’を制御する。これによりライブ会場であっても、自宅やスタジオで音楽制作をしているのと同様に、音楽制御装置MCで効果付与装置TG’を制御することができる。このように、楽音信号処理装置が効果付与装置TG’である場合も、音源装置TGの場合と同様に、音楽制御装置MCで効果付与装置TG’を制御することができる。そして、その通信設定を容易に行うことができる。
【0060】
また、実施例では、通信経路についてUSB端子及びMIDI端子の例を挙げたが、他のものでもよい。例えば、IEEE1394やEthernet(登録商標)やRS232Cなどがある。音楽編集装置との通信可能性については、実施例ではDAW起動時のメッセージ送信で判断するようにしたが、他の方法でもよい。例えば、単に、音楽編集装置のUSB端子に音楽制御装置が繋がっているか否かで判断してもよい。
【符号の説明】
【0061】
MC,ED,TG 音楽制御装置、音楽編集装置及び音源装置(楽音信号処理装置)、
TR:TR1,TR2,… データ処理系列又はトラック、
ML:ML1,ML2,… 音源機能(VSTi)が割り当てられる音源モジュール、
TM:TM1,TM2,… [制御]テンプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の楽音信号処理パラメータを設定するためのパラメータ設定操作子と、
音楽編集装置との間で双方向に通信を行うための第1通信手段と、
楽音信号処理装置に送信を行うための第2通信手段と、
音楽編集装置と第1通信手段を通じて通信可能か否かを判別する通信判別手段と、
通信判別手段により通信可能と判定された場合に、音楽編集装置から第1通信手段を介して受信された設定指示情報に基づいて設定条件を決定し、決定された設定条件の下にパラメータ設定操作子の操作に応じて設定された楽音信号処理パラメータを第1通信形式に従って第1通信手段を介し音楽編集装置に送信する第1制御手段と、
通信判別手段により通信不可と判定された場合に、パラメータ設定操作子の操作に応じて設定された楽音信号処理パラメータを第2通信形式に従い第2通信手段を介して楽音信号処理装置に送信する第2制御手段と
を具備することを特徴とする音楽制御装置。
【請求項2】
パラメータ設定操作子で設定される楽音信号処理パラメータの種類を含む複数の設定条件情報から成り楽音信号処理部種類情報に対応付けられたテンプレートを複数記憶するテンプレート記憶手段を具備し、
第1制御手段は、設定指示情報として、音楽編集装置において楽音信号処理のために設けられた処理モジュールに割り当てられている楽音信号処理部の種類を表わす楽音信号処理部種類情報を受信し、テンプレート記憶手段に記憶された複数のテンプレートから当該楽音信号処理部の種類に対応するテンプレートを選択し、選択されたテンプレートに示された設定条件の下にパラメータ設定操作子の操作に応じて楽音信号処理パラメータを設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の音楽制御装置。
【請求項3】
音楽制御装置、音楽編集装置及び楽音信号処理装置から成る電子音楽システムであって、
音楽制御装置は、
所定の楽音信号処理パラメータを設定するためのパラメータ設定操作子と、
音楽編集装置との間で双方向に通信を行うための第1通信手段と、
楽音信号処理装置に送信を行うための第2通信手段と、
音楽編集装置と第1通信手段を通じて通信可能か否かを判別する通信判別手段と、
通信判別手段により通信可能と判定された場合に、音楽編集装置から第1通信手段を介して受信された設定指示情報に基づいて設定条件を決定し、決定された設定条件の下にパラメータ設定操作子の操作に応じて設定された楽音信号処理パラメータを第1通信形式に従って第1通信手段を介し音楽編集装置に送信する第1制御手段と、
通信判別手段により通信不可と判定された場合に、パラメータ設定操作子の操作に応じて設定された楽音信号処理パラメータを第2通信形式に従い第2通信手段を介して楽音信号処理装置に送信する第2制御手段と
を具備し、
音楽編集装置は、
音楽制御装置及び楽音信号処理装置と双方向に通信を行うための双方向通信手段と、
楽音信号処理装置内の楽音信号処理手段に対応する楽音信号処理部を含む複数の楽音信号処理部が夫々割り当てられた複数のデータ処理系列を備えたシーケンサと、
これらデータ処理系列のうちの何れかを指示する系列指示手段と、
系列指示手段により何れかのデータ処理系列が指示されたときに、当該データ処理系列に割り当てられている楽音信号処理部の種類を示す楽音信号処理部種類情報を設定指示情報として双方向通信手段を介し音楽制御装置に送信する設定指示手段と、
音楽制御装置から第1通信形式に従って送信された楽音信号処理パラメータを受信するパラメータ受信手段と、
系列指示手段により指示されたデータ処理系列に割り当てられた楽音信号処理部が楽音信号処理装置に対応する場合に、パラメータ受信手段により受信された楽音信号処理パラメータを双方向通信手段を介して楽音信号処理装置に送信するパラメータ送信手段と
を具備し、
楽音信号処理装置は、
音楽編集装置との間で双方向に通信を行うための第1通信手段と、
音楽制御装置から受信を行うための第2通信手段と、
音楽編集装置から第1通信手段を介して受信された楽音信号処理パラメータを楽音信号処理手段に設定すると共に、音楽制御装置から第2通信形式に従って送信され第2通信手段を介して受信された楽音信号処理パラメータを楽音信号処理手段に設定するパラメータ設定手段と
を具備する
ことを特徴とする電子音楽システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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