音波センサ
【課題】従来に比べて不感帯を小さくすることが可能な音波センサを提供する。
【解決手段】音波を発生する送波素子は、ベース基板と、ベース基板の一表面側に形成された発熱体層と、ベース基板の上記一表面側でベース基板と発熱体層との間に介在する熱絶縁層とを備え、発熱体層への通電に伴う発熱体層の温度変化に伴って音波を発生する音波発生素子からなる。送波素子1が実装された送波素子側回路基板(第1の支持基板)3と、物体Obで反射された音波を受波する受波素子2が実装された受波素子側回路基板(第2の支持基板)4とはハウジング50内に収納される。ハウジング50には、送波素子1の送波面および各受波素子2の受波面を露出させる開口部として、送波素子1の送波面を露出させる第1の窓孔52aと、受波素子2の受波面を露出させる第2の窓孔52bとが形成されている。
【解決手段】音波を発生する送波素子は、ベース基板と、ベース基板の一表面側に形成された発熱体層と、ベース基板の上記一表面側でベース基板と発熱体層との間に介在する熱絶縁層とを備え、発熱体層への通電に伴う発熱体層の温度変化に伴って音波を発生する音波発生素子からなる。送波素子1が実装された送波素子側回路基板(第1の支持基板)3と、物体Obで反射された音波を受波する受波素子2が実装された受波素子側回路基板(第2の支持基板)4とはハウジング50内に収納される。ハウジング50には、送波素子1の送波面および各受波素子2の受波面を露出させる開口部として、送波素子1の送波面を露出させる第1の窓孔52aと、受波素子2の受波面を露出させる第2の窓孔52bとが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波振動子での超音波の送波から物体による反射波を受波するまでの時間差に基づいて物体までの距離を測定する超音波センサが知られている。
【0003】
上記超音波振動子は、一般的に、圧電セラミックスの両面に電極を設けた構成のものが用いられており、両電極間に電気エネルギを与えて機械的振動を発生させることにより、超音波を送波することができる。
【0004】
この種の超音波センサとしては、例えば、図11に示す構成のものが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
図11に示す構成の超音波センサは、有底筒状の金属製のケース41と、ケース41の内底面に接合され超音波を送受波する圧電素子からなる超音波振動子42と、ケース41内で超音波振動子42に対向配置された発泡性樹脂製のベース45と、一端部がベース45に固着され他端部がケース41外に突出して外部の回路基板(図示せず)に接続される一対の端子ピン43,43と、一方の端子ピン43と超音波振動子42の一表面(図11における上面)側の電極とを電気的に接続するリード48と、他方の端子ピン43と超音波振動子42の他表面(図11における下面)側の電極とをケース41を介して電気的に接続するリード49と、ケース41内で超音波振動子42の上記一表面側を覆うフェルトからなる吸音材46と、ケース41内でベース45の全体を覆うシリコンゴム44とを備えている。
【0006】
図11に示した構成の超音波センサでは、一対の端子ピン43,43を介して超音波振動子42の電極間に駆動電圧を印加して超音波振動子42を振動させ金属製のケース41の底壁41aを振動させることによって超音波が送波され、物体で反射された超音波によりケース41の底壁41aが振動し超音波振動子42が振動することによって超音波が受波される。
【特許文献1】特開2004−104521号公報(段落〔0014〕〜〔0020〕および図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、圧電素子を間欠的に駆動した場合、圧電素子から発生する音波は図12に示すような振動波形となり、共振のQ値が大きいほど、振動波形の振幅が最大となるまでの時間T1および残響振動が収束するまでの時間(残響時間)T2が長くなって、超音波を送波してから受波するまでの時間が短くなり、圧電素子の近傍に位置する物体を検出することができなくなる。ここで、超音波の音速c〔m/s〕は、温度をt〔℃〕とすれば、c=331.5+0.6tであるから、例えば、音速cが340〔m/s〕であり(この場合、超音波は1msで34cmだけ進む)、残響時間T2が2msであるとすれば、圧電素子からの距離が34cm以下の位置に存在する物体までの距離の測定が不可能となる。ここにおいて、物体の検出ができないところまでの距離を不感帯とすれば、例えば、超音波センサで物体を認識して回避動作する機能を有する自律移動ロボットや自律搬送車などの自律移動装置では、不感帯をより小さくしたいという要望がある。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された超音波センサでは、音波の送波時および受波時に超音波振動子42が取り付けられたケース41の底壁41aが振動する必要があり、しかも1つの超音波振動子42で超音波の送受波を行っているので、不感帯を十分に小さくすることができなかった。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、従来に比べて不感帯を小さくすることが可能な音波センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、音波を送波可能な送波素子と、送波素子から送波され物体で反射された音波を受波するとともに受波した音波を電気信号である受波信号に変換する受波素子と、送波素子および受波素子を収納するハウジングとを備え、送波素子により音波の送波から受波素子により音波が受波されるまでの時間差に基づいて物体までの距離を測定する音波センサであって、送波素子が、ベース基板と、ベース基板の一表面側に形成された発熱体層と、ベース基板の前記一表面側でベース基板と発熱体層との間に介在する熱絶縁層とを備え、発熱体層への通電に伴う発熱体層の温度変化に伴って音波を発生する音波発生素子からなり、送波素子と受波素子とがハウジング内で別々の支持基板のそれぞれの一表面側に取り付けられるとともに、ハウジングには送波素子の送波面および受波素子の受波面を露出させる開口部が形成されてなることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、送波素子が、ベース基板と、ベース基板の一表面側に形成された発熱体層と、支持基板の前記一表面側でベース基板と発熱体層との間に介在する熱絶縁層とを備え、発熱体層への通電に伴う発熱体層の温度変化に伴って超音波を発生する音波発生素子からなるので、送波素子から発生期間が短く且つ残響時間の短い音波を送波することができ、その上、送波素子と受波素子とがハウジング内で別々の支持基板それぞれの一表面側に取り付けられるとともに、ハウジングには送波素子の送波面および受波素子の受波面を露出させる開口部が形成されているので、送波素子から音波を送波する際に送波素子に発生する振動が各支持基板を介して受波素子へ伝達されるのを防ぐことができるから、従来よりも不感帯を小さくすることが可能となる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記受波素子から出力された受波信号を信号処理する信号処理回路を備え、当該信号処理回路が、前記送波素子を取り付けた支持基板とは別の基板に設けられてなることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、信号処理回路で信号処理する受波信号に前記送波素子の振動に起因したノイズが発生するのを防止することができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記信号処理回路が設けられる基板が前記受波素子を取り付けた支持基板とは別体であり、前記受波素子を取り付けた支持基板に、前記受波素子の出力を増幅して前記信号処理回路へ出力する増幅回路が設けられてなることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記信号処理回路を前記受波素子が取り付けられた支持基板とは別体の基板に設けることにより、前記ハウジング内への前記信号処理回路の配置の自由度を高めることができ、ひいてはセンサ全体を小型化することができ、しかも、前記受波素子の出力を増幅してから前記信号処理回路へ出力するので、伝送によるノイズの影響を低減することができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記ハウジングが合成樹脂もしくはセラミックにより形成されてなることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、前記ハウジングが金属により形成されている場合に比べて、前記ハウジングの密度を小さくすることができ、前記送波素子から送波される音波に前記ハウジングが共振しにくくなり、前記受波素子の受波信号に前記ハウジングの振動に起因したノイズが発生するのを防止することができる。なお、具体的には密度が2g/cm3以下の材料を用いるのが好ましい。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記ハウジングは、前記開口部として、前記送波素子の送波面を露出させる第1の窓孔と前記受波素子の受波面を露出させる第2の窓孔とが別々に形成されてなることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、第1の窓孔と第2の窓孔とが連続して形成されている場合に比べて、前記送波素子から前記受波素子へ音波が直接伝搬するのを抑制することができ、前記受波素子から出力される受波信号のノイズを低減することができる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記送波素子および前記受波素子が前記ハウジングにおいて前記各窓孔が形成された部位から後退して配置され、前記送波素子が取り付けられた支持基板である第1の支持基板と前記ハウジングにおける前記第1の窓孔の周部との間に介在し前記送波素子を囲む第1の吸音部材と、前記受波素子が取り付けられた支持基板である第2の支持基板と前記ハウジングにおける前記第2の窓孔の周部との間に介在し前記受波素子を囲む第2の吸音部材とを備えてなることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、前記送波素子から前記受波素子へ音波が直接伝搬するのをより確実に防止することができる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項5の発明において、前記各支持基板は、防振材を介して前記ハウジングへ取り付けられてなることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、前記各支持基板の振動が前記ハウジングへ伝わるを抑制することができ、前記ハウジングの振動により前記受波素子の受波信号に発生するノイズを低減できる。
【0024】
請求項8の発明は、請求項5または請求項6の発明において、前記第1の窓孔および前記第2の窓孔が、通音性を有する防水性シートにより覆われてなることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、塵、埃、昆虫などの異物が前記ハウジング内に侵入して回路がショートしたり、雨や水滴が前記ハウジング内に浸入して前記送波素子および前記受波素子が劣化したり破壊されたりするのを防止することができ、信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明では、従来よりも不感帯を小さくすることが可能となるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本実施形態の音波センサについて図1〜図10を参照しながら説明する。
【0028】
本実施形態の音波センサは、音波を送波可能な送波素子1と、送波素子1から送波され物体Obで反射された音波(反射波)を受波するとともに受波した音波を電気信号である受波信号に変換する複数の受波素子2と、送波素子1を駆動する駆動回路30と、各受波素子2それぞれから出力された受波信号を信号処理する信号処理回路40とを備え、送波素子1による音波の送波から受波素子2により音波が受波されるまでの時間差に基づいて物体Obまでの距離を測定する。
【0029】
また、本実施形態の音波センサは、送波素子1が一表面側に実装された矩形板状のガラスエポキシ基板からなる送波素子側回路基板3と、各受波素子2が一表面側に実装された矩形板状のガラスエポキシ基板からなる受波素子側回路基板4と、信号処理回路40が設けられた矩形板状の信号処理側回路基板5とは、後述のハウジング50内に収納される。なお、本実施形態では、送波素子側回路基板3が、送波素子1が一表面側に取り付けられた第1の支持基板を構成し、受波素子側回路基板4が、受波素子2が一表面側に取り付けられた第2の支持基板を構成している。
【0030】
送波素子1は、図4に示すように、単結晶のp形のシリコン基板からなるベース基板11の一表面(図4における上面)側に多孔質シリコン層からなる熱絶縁層(断熱層)12が形成され、熱絶縁層12上に金属薄膜からなる発熱体層13が形成され、ベース基板11の上記一表面側に発熱体層13と電気的に接続された一対のパッド14,14が形成された熱励起式の音波発生素子により構成してある。なお、ベース基板11の平面形状は長方形状であって、熱絶縁層12、発熱体層13それぞれの平面形状も長方形状に形成してある。
【0031】
上述の送波素子1では、発熱体層13の両端のパッド14,14間に通電して発熱体層13に温度変化を生じさせると、発熱体層13に接触している空気に温度変化が生じる。発熱体層13に接触している空気は、発熱体層13の温度上昇時には膨張し発熱体層13の温度下降時には収縮するから、発熱体層13への通電を適宜に制御することによって空気中を伝搬する音波を発生させることができる。
【0032】
上述の送波素子1は、ベース基板11としてp形のシリコン基板を用いており、熱絶縁層12を多孔度が略60〜略70%の多孔質シリコン層により構成しているので、ベース基板11として用いるシリコン基板の一部をフッ化水素水溶液とエタノールとの混合液からなる電解液中で陽極酸化処理することにより熱絶縁層12となる多孔質シリコン層を形成することができる。多孔質シリコン層は、多孔度が高くなるにつれて熱伝導率および熱容量が小さくなるので、熱絶縁層12の熱伝導度および熱容量をベース基板11の熱伝導度および熱容量に比べて小さくし、熱絶縁層12の熱伝導度と熱容量との積をベース基板11の熱伝導度と熱容量との積に比べて十分に小さくすることにより、発熱体層13の温度変化を空気に効率よく伝達することができ発熱体層13と空気との間で効率的な熱交換が起こる。
【0033】
なお、発熱体層13は、高融点金属の一種であるタングステンにより形成してあるが、発熱体層13の材料はタングステンに限らず、例えば、タンタル、モリブデン、イリジウム、アルミニウムなどを採用してもよい。また、上述の送波素子1では、ベース基板11の厚さを300〜700μm、熱絶縁層12の厚さを1〜10μm、発熱体層13の厚さを20〜100nm、各パッド14の厚さを0.5μmとしてあるが、これらの厚さは一例であって特に限定するものではない。また、ベース基板11の材料としてSiを採用しているが、ベース基板11の材料はSiに限らず、例えば、Ge,SiC,GaP,GaAs,InPなどの陽極酸化処理による多孔質化が可能な他の半導体材料でもよい。
【0034】
上述のように送波素子1は、一対のパッド14,14を介した発熱体層13への通電に伴う発熱体層13の温度変化に伴って音波を発生するものであり、発熱体層13へ与える駆動電圧波形あるいは駆動電流波形からなる駆動入力波形を例えば周波数がf1の正弦波波形とした場合、理想的には、発熱体層13で生じる温度振動の周波数が駆動入力波形の周波数f1の2倍の周波数f2となり、駆動入力波形f1の略2倍の周波数の音波を発生させることができる。すなわち、上述の送波素子1は、平坦な周波数特性を有しており、発生させる音波の周波数を広範囲にわたって変化させることができる。また、上述の送波素子1では、例えば正弦波波形の半周期の孤立波を駆動入力波形として駆動回路30から一対のパッド14,14間へ与えることによって、図5(a)に示すような残響の少ない略1周期の音波P1を発生させることができる。本実施形態では、図5(a)に示すような略1周期の音波P1を発生させる場合、当該音波P1の1周期の時間を50kHz〜70kHz程度の超音波の1周期の時間に設定してあるが、この数値は特に限定するものではない。
【0035】
また、上述の送波素子1では、一対のパッド14,14を介して発熱体層13へ与える駆動電圧の波形を図6(a)に示すようなガウス波形状の電圧波形とした場合、同図(b)に示すようなガウス波形状の音波を送波することができる。
【0036】
ここにおいて、送波素子1から図6(b)に示すようなガウス波形状の音波(ここでは、当該音波の発生期間を50kHz〜70kHz程度の超音波の1周期の時間に設定してある)を送波させるには、駆動回路30として、例えば図7に示す回路を採用すればよい。図7に示す構成の駆動回路30は、直流電源Eの両端間にスイッチSWを介してコンデンサCが接続され、コンデンサCの両端間にサイリスタThとインダクタLと抵抗R1と保護用抵抗R2との直列回路が接続され、保護用抵抗R2の両端間に送波素子1を接続するように構成されている。また、駆動回路30は、送波素子1から音波を送波させるタイミングを制御するためのタイミング制御回路(図示せず)を有しており、タイミング制御回路によってスイッチSWのオンオフが制御されるとともにサイリスタThへ制御信号を与えるタイミングが制御される。ここにおいて、駆動回路30では、スイッチSWのオン期間にコンデンサCが充電されるが、タイミング制御回路は、コンデンサCの両端電圧を検出しており、コンデンサCの両端電圧が所定のしきい値を超えるとスイッチSWをオフさせてからサイリスタThのゲートへ制御信号を与える。すなわち、図7に示す構成の駆動回路30では、直流電源EからコンデンサCに電荷を蓄積し、コンデンサCの両端電圧が所定のしきい値を超えると、タイミング制御回路(図示せず)からサイリスタThへ制御信号が与えられてサイリスタThがターンオンし、送波素子1のパッド14,14間に電圧が印加されて発熱体層13の温度変化に伴って音波が送波される。ここに、インダクタLのインダクタンスおよび抵抗R1の抵抗値を適宜設定することにより、図6(a)に示すようなガウス波形状の駆動電圧波形を送波素子1のパッド14,14間へ印加することができる。
【0037】
受波素子2としては、例えば、音波を圧電効果により電気信号に変換する圧電式の受波素子や、音波を静電容量の変化に変換する静電容量式の受波素子などの超音波用の受波素子として広く知られているものを採用することが考えられるが、送波素子1と同様に残響を少なくするために、静電容量式の受波素子の構造を採用することが望ましい。なお、受波素子2として圧電式の受波素子を用いた場合、受波素子2の受波信号に図5(c)に示すように受波素子2の残響に起因した信号P4が発生する可能性があり、しかも、物体Obによる反射波(間接波)に起因した受波信号P3の発生期間が、図5(b)に示すように送波素子1から送波された音波(図5(a)参照)P1に比べて長くなる。
【0038】
ここで、静電容量式の受波素子としては、例えば、シリコン基板などをマイクロマシンニング技術などにより加工して形成され、音波を受けるダイヤフラム部からなる可動電極と、ダイヤフラム部に対向する背板部からなる固定電極との間に、音波を受けていない状態でのダイヤフラム部と背板部とのギャップ長を規定する絶縁膜からなるスペーサ部が介在し、背板部に複数の排気孔が貫設された構造を有するものが知られている。このような静電容量式の受波素子では、ダイヤフラム部が音波を受けて変形してダイヤフラム部と背板部との距離が変化することにより、可動電極と固定電極との間の静電容量が変化する。なお、静電容量式の受波素子では、圧電式の受波素子のような共振の高いQ値を持たないから、受波周波数の範囲を広くとることが可能になる。
【0039】
ところで、本実施形態の音波センサでは、物体Obまでの距離だけでなく物体Obの存在する方位も測定できるように、受波素子側回路基板4の一表面上に8個の受波素子2を実装してある。具体的には、図3に示すように、受波素子側回路基板4の1辺に沿った方向に5個の受波素子2を所定ピッチで配列するとともに、上記1辺に直交する方向に3個の受波素子2を所定ピッチで配列してある。なお、説明を簡単にするために、受波素子2が同一平面上において上記1辺に沿った方向のみに所定ピッチで配列されているとし、受波素子2が配列された面に対する音波の波面の角度がθである場合を想定すると、音波の到来方向(すなわち、受波素子側回路基板4と各受波素子2とからなる受波装置に対して物体Obの存在する方位角)はθになり、音速をc、音波の波面が隣り合う受波素子2のうちの一方の受波素子2に到達する時刻における音波の波面と他方の受波素子2の中心との間の距離(遅延距離)をd、隣り合う受波素子2の中心間距離(上記所定ピッチ)をLとすれば、音波の波面が隣り合う受波素子2間に到達する時間差Δtは、Δt=d/c=L・sinθ/cになる。したがって、時間差Δtが分かれば、物体Obの存在する方位を演算することができる。ここにおいて、上記所定ピッチは、送波素子1から送波する音波の波長の0.5倍程度に設定することが望ましい。
【0040】
受波素子2から出力される受波信号は信号処理側回路基板5に設けられた信号処理回路40へ入力されるが、各受波素子2から出力される受波信号は100〜800μV程度の微小な電圧なので、各受波素子2それぞれから出力された受波信号をそのまま信号処理回路40へ伝送するとノイズによりS/N比が低下する可能性がある。そこで、受波素子側回路基板4の上記一表面側に各受波素子2それぞれの出力を増幅するプリアンプ32(プリアンプ32の電圧利得は20dBに設定してある)を設けてあり、各プリアンプ32にて増幅された受波信号を信号処理回路40へ伝送するようにしてある。なお、各プリアンプ32の出力は受波素子側回路基板4と信号処理側回路基板5とを電気的に接続しているコネクタ60を介して信号処理回路40へ伝送される。
【0041】
要するに、本実施形態では、信号処理回路40が設けられる基板である信号処理側回路基板5が、受波素子2が実装された受波素子側回路基板4とは別体であり、受波素子側回路基板4に、各受波素子2の出力を増幅して信号処理回路40へ出力する増幅回路としてプリアンプ32が設けられているので、信号処理回路40を受波素子2が取り付けられた支持基板である受波素子側回路基板4とは別体の基板である信号処理側回路基板5に設けることにより、ハウジング50内への信号処理回路40の配置の自由度を高めることができ、ひいてはセンサ全体を小型化することができ、しかも、受波素子2の出力を増幅してから信号処理回路40へ出力するので、伝送によるノイズの影響を低減することができる。
【0042】
信号処理回路40は、各受波素子2から出力されそれぞれプリアンプ32にて増幅された受波信号をそれぞれ増幅するアンプ41aを有する信号増幅部41と、各アンプ41aにて増幅されたアナログの受波信号それぞれをディジタルの受波信号に変換して出力するA/D変換部42と、A/D変換部42の出力が格納されるメモリ43と、上記タイミング制御回路から上記制御信号に同期して出力されるタイミング信号を受けたときにA/D変換部42を所定の受波期間だけ作動させメモリ43に格納された受波信号のデータを用いて物体Obまでの距離を求める演算および物体Obの存在する方位を求める演算を行うマイクロコンピュータからなる演算部44とを備えている。なお、演算部44は、物体Obまでの距離を求めるにあたって、上記タイミング信号を受けた時刻(つまり、送波素子1から音波を送波したタイミング)と、ディジタルの受波信号がメモリ43に格納された時刻(信号処理回路40内での遅れ時間を無視すれば、受波素子2により音波を受波したタイミング)との時間差に基づいて、物体Obまでの距離を演算する。一方、演算部44は、物体Obの存在する方位を求めるにあたって、メモリ43に格納されたデータに基づいて上述の時間差Δtを演算し、受波素子2の配置位置、時間差Δt、上記所定ピッチL、音速cに基づいて物体Obの存在する方位θを演算する。
【0043】
ところで、上述のハウジング50は、一面が開放された矩形箱状に形成された合成樹脂製のハウジング本体51と、ハウジング本体51の上記一面側に固着された矩形板状のハウジング蓋52とで構成され、上述のように、送波素子1が実装された送波素子側回路基板3、各受波素子2が実装された受波素子側回路基板4、信号処理回路40が設けられた信号処理側回路基板5などが収納される。ここにおいて、ハウジング蓋52には、送波素子1の送波面および各受波素子2の受波面を露出させる開口部として、送波素子1の送波面を露出させる第1の窓孔52aと各受波素子2の受波面を露出させる第2の窓孔52bとが別々に形成されているので、両窓孔52a,52bが連続して形成されている場合に比べて、送波素子1から各受波素子2へ音波が直接伝搬して図5(b),(c)に示すような直接波に起因した受波信号P2が発生するのを抑制することができ、各受波素子2それぞれから出力される受波信号のノイズを低減することができるとともに、音波を送波するタイミングと上記受波期間を開始するまでの期間T3,T4(図5(b),(c)参照)を短くすることが可能となる。なお、各窓孔52a,52bは、ハウジング蓋52の厚み方向に貫設されており、開口形状が矩形状となっている。
【0044】
また、本実施形態では、上述の送波素子1および各受波素子2がハウジング50内において各窓孔52a,52bが形成された部位から後退して配置されるとともに、送波素子側回路基板3と受波素子側回路基板4とがハウジング蓋52に平行な面内で離間して配置され、送波素子側回路基板3とハウジング蓋52における第1の窓孔52aの周部との間に介在し送波素子1を囲む矩形枠状の第1の吸音部材6aと、受波素子側回路基板4とハウジング蓋52における第2の窓孔52bの周部との間に介在し各受波素子2を囲む矩形枠状の第2の吸音部材6bとを備えているので、送波素子1から各受波素子2へ音波が直接伝搬するのをより確実に防止することができる。ここにおいて、各吸音部材6a,6bの厚みは、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4それぞれとハウジング蓋52との間の距離が等しくなるように等しく設定してある。なお、送波素子側回路基板3とハウジング蓋52との間に介在する第1の吸音部材6aは、送波素子側回路基板3およびハウジング蓋52それぞれと接着材により固着されている。また、受波素子側回路基板4とハウジング蓋52との間に介在する第2の吸音部材6bは、受波素子側回路基板4およびハウジング蓋52それぞれと接着材により固着されている。
【0045】
上述のように、本実施形態では、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4とハウジング蓋52との間にそれぞれ吸音部材6a,6bを介在させてあるが、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4は、それぞれ複数個(例えば、4つ)ずつの防振材17a,17b(図8(b)参照)を介してハウジング蓋52に取り付けられているので、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4それぞれの振動がハウジング50へ伝わるを抑制することができ、ハウジング50の振動により各受波素子2それぞれの受波信号に発生するノイズを低減できる。すなわち、受波素子2の受波信号に、ハウジング50の振動に起因したノイズP5(図5(c)参照)が発生するのを防止することが可能となる。なお、送波素子側回路基板3とハウジング蓋52との間に介在する各防振材17aは、送波素子側回路基板3およびハウジング蓋52それぞれと接着材により固着されている。また、受波素子側回路基板4とハウジング蓋52との間に介在する各防振材17bは、受波素子側回路基板4およびハウジング蓋52それぞれと接着材により固着されている。
【0046】
ここで、ハウジング本体51およびハウジング蓋52の材料としては、ポリアセタール、例えばデルリン(商品名)やジュラコン(商品名)など、を採用している。なお、本実施形態では、ハウジング本体51およびハウジング蓋52をポリアセタールなどの合成樹脂により形成してあるが、これらの材料は合成樹脂に限定するものではなく、金属に比べて密度が小さく絶縁性を有する材料であればよく、例えば、セラミックにより形成してもよい。ここにおいて、ハウジング本体51とハウジング蓋52とで構成されるハウジング50が合成樹脂やセラミックにより形成されていることにより、ハウジング50を金属により形成する場合に比べて、ハウジング50を形成する材料の密度を小さくすることができ、音波がハウジング50を伝わりにくくなるとともに、送波素子1から送波される音波にハウジング50が共振しにくくなり、各受波素子2の受波信号にハウジング50の振動に起因したノイズP5が発生するのを防止することができる。なお、ポリアセタールの密度は0.90〜1.57g/cm3程度であり、ハウジング50の材料としては、密度が2g/cm3以下の材料を採用することが好ましい。
【0047】
また、上述の信号処理側回路基板5は、上述のように送波素子側回路基板3とは別の基板により構成されており、ハウジング本体51の内底面に接着材により固着されており、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4と信号処理回路基板5との間には防振材7を介在させてあるので、送波素子1の振動が信号処理側回路基板5を介して受波素子側回路基板4へ伝わって信号処理回路40で信号処理する受波信号に送波素子1の振動に起因したノイズが発生するのを防止することができる。
【0048】
以上説明した本実施形態の音波センサでは、送波素子1が、ベース基板11と、ベース基板11の一表面側に形成された発熱体層13と、ベース基板11の上記一表面側でベース基板11と発熱体層13との間に介在する熱絶縁層12とを備え、発熱体層13への通電に伴う発熱体層13の温度変化に伴って音波を発生する音波発生素子からなるので、送波素子1から発生期間が短く且つ残響時間の短い音波を送波することができ、その上、送波素子1と各受波素子2とがハウジング50内で別々の支持基板のそれぞれの一表面側に取り付けられるとともに、ハウジング50には送波素子1の送波面および各受波素子2の受波面を露出させる開口部が形成されているので、送波素子1から音波を送波する際に送波素子1に発生する振動が各支持基板を介して各受波素子2へ伝達されるのを防ぐことができるから、従来よりも不感帯を小さくすることが可能となり、従来に比べて、より近距離に存在する物体Obまでの距離を測定することが可能となる。
【0049】
ところで、図8および図9に示すように、ハウジング蓋52の各窓孔52a,52bを、通音性を有する防水性シート(例えば、多孔質のプラスチック膜など)8により覆い、防水シート8の周部をハウジング蓋52と同じ材料により形成した枠状のベゼル9(図10参照)で固定する(ベゼル9とハウジング蓋52との間に防水性シート8の周部を挟持した形でベゼル9をハウジング蓋52の外面に固着するようにすれば、塵、埃、昆虫などの異物がハウジング50内に侵入して回路がショートしたり、雨や水滴がハウジング50内に浸入して送波素子1および各受波素子2が劣化したり破壊されたりするのを防止することができ、信頼性を高めることができる。なお、本実施形態では、防水性シート8の外周形状を矩形状とし、ベゼル9の形状を矩形枠状としてある。また、図9(a)に示した吸音部材6は、上述の吸音部材6a,6bを一体化して1部材としたものであり、このような1部材の吸音部材6を用いることにより、2つの吸音部材6a,6bを用いる場合に比べて、部品点数の削減を図れるとともに、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4それぞれとハウジング蓋52との間の距離を精度良く揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態を示す概略断面図である。
【図2】同上のブロック図である。
【図3】同上の要部斜視図である。
【図4】同上で用いる送波素子の概略断面図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【図6】同上で用いる送波素子の動作説明図である。
【図7】同上で用いる送波素子の駆動回路の一例を示す回路図である。
【図8】同上の他の構成例を示し、(a)は概略断面図、(b)はハウジング蓋を外した状態における要部概略平面図である。
【図9】同上におけるハウジング蓋に吸音材および防水性シートを取り付けた状態を示す図であって、(a)は下面図、(b)は平面図である。
【図10】同上におけるベゼルの平面図である。
【図11】従来例を示す概略断面図である。
【図12】一般的な超音波振動子の動作説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 送波素子
2 受波素子
3 送波素子側回路基板
4 受波素子側回路基板
5 信号処理側回路基板
6a 第1の吸音部材
6b 第2の吸音部材
7 防振材
50 ハウジング
51 ハウジング本体
52 ハウジング蓋
52a 第1の窓孔
52b 第2の窓孔
Ob 物体
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波振動子での超音波の送波から物体による反射波を受波するまでの時間差に基づいて物体までの距離を測定する超音波センサが知られている。
【0003】
上記超音波振動子は、一般的に、圧電セラミックスの両面に電極を設けた構成のものが用いられており、両電極間に電気エネルギを与えて機械的振動を発生させることにより、超音波を送波することができる。
【0004】
この種の超音波センサとしては、例えば、図11に示す構成のものが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
図11に示す構成の超音波センサは、有底筒状の金属製のケース41と、ケース41の内底面に接合され超音波を送受波する圧電素子からなる超音波振動子42と、ケース41内で超音波振動子42に対向配置された発泡性樹脂製のベース45と、一端部がベース45に固着され他端部がケース41外に突出して外部の回路基板(図示せず)に接続される一対の端子ピン43,43と、一方の端子ピン43と超音波振動子42の一表面(図11における上面)側の電極とを電気的に接続するリード48と、他方の端子ピン43と超音波振動子42の他表面(図11における下面)側の電極とをケース41を介して電気的に接続するリード49と、ケース41内で超音波振動子42の上記一表面側を覆うフェルトからなる吸音材46と、ケース41内でベース45の全体を覆うシリコンゴム44とを備えている。
【0006】
図11に示した構成の超音波センサでは、一対の端子ピン43,43を介して超音波振動子42の電極間に駆動電圧を印加して超音波振動子42を振動させ金属製のケース41の底壁41aを振動させることによって超音波が送波され、物体で反射された超音波によりケース41の底壁41aが振動し超音波振動子42が振動することによって超音波が受波される。
【特許文献1】特開2004−104521号公報(段落〔0014〕〜〔0020〕および図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、圧電素子を間欠的に駆動した場合、圧電素子から発生する音波は図12に示すような振動波形となり、共振のQ値が大きいほど、振動波形の振幅が最大となるまでの時間T1および残響振動が収束するまでの時間(残響時間)T2が長くなって、超音波を送波してから受波するまでの時間が短くなり、圧電素子の近傍に位置する物体を検出することができなくなる。ここで、超音波の音速c〔m/s〕は、温度をt〔℃〕とすれば、c=331.5+0.6tであるから、例えば、音速cが340〔m/s〕であり(この場合、超音波は1msで34cmだけ進む)、残響時間T2が2msであるとすれば、圧電素子からの距離が34cm以下の位置に存在する物体までの距離の測定が不可能となる。ここにおいて、物体の検出ができないところまでの距離を不感帯とすれば、例えば、超音波センサで物体を認識して回避動作する機能を有する自律移動ロボットや自律搬送車などの自律移動装置では、不感帯をより小さくしたいという要望がある。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された超音波センサでは、音波の送波時および受波時に超音波振動子42が取り付けられたケース41の底壁41aが振動する必要があり、しかも1つの超音波振動子42で超音波の送受波を行っているので、不感帯を十分に小さくすることができなかった。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、従来に比べて不感帯を小さくすることが可能な音波センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、音波を送波可能な送波素子と、送波素子から送波され物体で反射された音波を受波するとともに受波した音波を電気信号である受波信号に変換する受波素子と、送波素子および受波素子を収納するハウジングとを備え、送波素子により音波の送波から受波素子により音波が受波されるまでの時間差に基づいて物体までの距離を測定する音波センサであって、送波素子が、ベース基板と、ベース基板の一表面側に形成された発熱体層と、ベース基板の前記一表面側でベース基板と発熱体層との間に介在する熱絶縁層とを備え、発熱体層への通電に伴う発熱体層の温度変化に伴って音波を発生する音波発生素子からなり、送波素子と受波素子とがハウジング内で別々の支持基板のそれぞれの一表面側に取り付けられるとともに、ハウジングには送波素子の送波面および受波素子の受波面を露出させる開口部が形成されてなることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、送波素子が、ベース基板と、ベース基板の一表面側に形成された発熱体層と、支持基板の前記一表面側でベース基板と発熱体層との間に介在する熱絶縁層とを備え、発熱体層への通電に伴う発熱体層の温度変化に伴って超音波を発生する音波発生素子からなるので、送波素子から発生期間が短く且つ残響時間の短い音波を送波することができ、その上、送波素子と受波素子とがハウジング内で別々の支持基板それぞれの一表面側に取り付けられるとともに、ハウジングには送波素子の送波面および受波素子の受波面を露出させる開口部が形成されているので、送波素子から音波を送波する際に送波素子に発生する振動が各支持基板を介して受波素子へ伝達されるのを防ぐことができるから、従来よりも不感帯を小さくすることが可能となる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記受波素子から出力された受波信号を信号処理する信号処理回路を備え、当該信号処理回路が、前記送波素子を取り付けた支持基板とは別の基板に設けられてなることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、信号処理回路で信号処理する受波信号に前記送波素子の振動に起因したノイズが発生するのを防止することができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記信号処理回路が設けられる基板が前記受波素子を取り付けた支持基板とは別体であり、前記受波素子を取り付けた支持基板に、前記受波素子の出力を増幅して前記信号処理回路へ出力する増幅回路が設けられてなることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記信号処理回路を前記受波素子が取り付けられた支持基板とは別体の基板に設けることにより、前記ハウジング内への前記信号処理回路の配置の自由度を高めることができ、ひいてはセンサ全体を小型化することができ、しかも、前記受波素子の出力を増幅してから前記信号処理回路へ出力するので、伝送によるノイズの影響を低減することができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記ハウジングが合成樹脂もしくはセラミックにより形成されてなることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、前記ハウジングが金属により形成されている場合に比べて、前記ハウジングの密度を小さくすることができ、前記送波素子から送波される音波に前記ハウジングが共振しにくくなり、前記受波素子の受波信号に前記ハウジングの振動に起因したノイズが発生するのを防止することができる。なお、具体的には密度が2g/cm3以下の材料を用いるのが好ましい。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記ハウジングは、前記開口部として、前記送波素子の送波面を露出させる第1の窓孔と前記受波素子の受波面を露出させる第2の窓孔とが別々に形成されてなることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、第1の窓孔と第2の窓孔とが連続して形成されている場合に比べて、前記送波素子から前記受波素子へ音波が直接伝搬するのを抑制することができ、前記受波素子から出力される受波信号のノイズを低減することができる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記送波素子および前記受波素子が前記ハウジングにおいて前記各窓孔が形成された部位から後退して配置され、前記送波素子が取り付けられた支持基板である第1の支持基板と前記ハウジングにおける前記第1の窓孔の周部との間に介在し前記送波素子を囲む第1の吸音部材と、前記受波素子が取り付けられた支持基板である第2の支持基板と前記ハウジングにおける前記第2の窓孔の周部との間に介在し前記受波素子を囲む第2の吸音部材とを備えてなることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、前記送波素子から前記受波素子へ音波が直接伝搬するのをより確実に防止することができる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項5の発明において、前記各支持基板は、防振材を介して前記ハウジングへ取り付けられてなることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、前記各支持基板の振動が前記ハウジングへ伝わるを抑制することができ、前記ハウジングの振動により前記受波素子の受波信号に発生するノイズを低減できる。
【0024】
請求項8の発明は、請求項5または請求項6の発明において、前記第1の窓孔および前記第2の窓孔が、通音性を有する防水性シートにより覆われてなることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、塵、埃、昆虫などの異物が前記ハウジング内に侵入して回路がショートしたり、雨や水滴が前記ハウジング内に浸入して前記送波素子および前記受波素子が劣化したり破壊されたりするのを防止することができ、信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明では、従来よりも不感帯を小さくすることが可能となるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本実施形態の音波センサについて図1〜図10を参照しながら説明する。
【0028】
本実施形態の音波センサは、音波を送波可能な送波素子1と、送波素子1から送波され物体Obで反射された音波(反射波)を受波するとともに受波した音波を電気信号である受波信号に変換する複数の受波素子2と、送波素子1を駆動する駆動回路30と、各受波素子2それぞれから出力された受波信号を信号処理する信号処理回路40とを備え、送波素子1による音波の送波から受波素子2により音波が受波されるまでの時間差に基づいて物体Obまでの距離を測定する。
【0029】
また、本実施形態の音波センサは、送波素子1が一表面側に実装された矩形板状のガラスエポキシ基板からなる送波素子側回路基板3と、各受波素子2が一表面側に実装された矩形板状のガラスエポキシ基板からなる受波素子側回路基板4と、信号処理回路40が設けられた矩形板状の信号処理側回路基板5とは、後述のハウジング50内に収納される。なお、本実施形態では、送波素子側回路基板3が、送波素子1が一表面側に取り付けられた第1の支持基板を構成し、受波素子側回路基板4が、受波素子2が一表面側に取り付けられた第2の支持基板を構成している。
【0030】
送波素子1は、図4に示すように、単結晶のp形のシリコン基板からなるベース基板11の一表面(図4における上面)側に多孔質シリコン層からなる熱絶縁層(断熱層)12が形成され、熱絶縁層12上に金属薄膜からなる発熱体層13が形成され、ベース基板11の上記一表面側に発熱体層13と電気的に接続された一対のパッド14,14が形成された熱励起式の音波発生素子により構成してある。なお、ベース基板11の平面形状は長方形状であって、熱絶縁層12、発熱体層13それぞれの平面形状も長方形状に形成してある。
【0031】
上述の送波素子1では、発熱体層13の両端のパッド14,14間に通電して発熱体層13に温度変化を生じさせると、発熱体層13に接触している空気に温度変化が生じる。発熱体層13に接触している空気は、発熱体層13の温度上昇時には膨張し発熱体層13の温度下降時には収縮するから、発熱体層13への通電を適宜に制御することによって空気中を伝搬する音波を発生させることができる。
【0032】
上述の送波素子1は、ベース基板11としてp形のシリコン基板を用いており、熱絶縁層12を多孔度が略60〜略70%の多孔質シリコン層により構成しているので、ベース基板11として用いるシリコン基板の一部をフッ化水素水溶液とエタノールとの混合液からなる電解液中で陽極酸化処理することにより熱絶縁層12となる多孔質シリコン層を形成することができる。多孔質シリコン層は、多孔度が高くなるにつれて熱伝導率および熱容量が小さくなるので、熱絶縁層12の熱伝導度および熱容量をベース基板11の熱伝導度および熱容量に比べて小さくし、熱絶縁層12の熱伝導度と熱容量との積をベース基板11の熱伝導度と熱容量との積に比べて十分に小さくすることにより、発熱体層13の温度変化を空気に効率よく伝達することができ発熱体層13と空気との間で効率的な熱交換が起こる。
【0033】
なお、発熱体層13は、高融点金属の一種であるタングステンにより形成してあるが、発熱体層13の材料はタングステンに限らず、例えば、タンタル、モリブデン、イリジウム、アルミニウムなどを採用してもよい。また、上述の送波素子1では、ベース基板11の厚さを300〜700μm、熱絶縁層12の厚さを1〜10μm、発熱体層13の厚さを20〜100nm、各パッド14の厚さを0.5μmとしてあるが、これらの厚さは一例であって特に限定するものではない。また、ベース基板11の材料としてSiを採用しているが、ベース基板11の材料はSiに限らず、例えば、Ge,SiC,GaP,GaAs,InPなどの陽極酸化処理による多孔質化が可能な他の半導体材料でもよい。
【0034】
上述のように送波素子1は、一対のパッド14,14を介した発熱体層13への通電に伴う発熱体層13の温度変化に伴って音波を発生するものであり、発熱体層13へ与える駆動電圧波形あるいは駆動電流波形からなる駆動入力波形を例えば周波数がf1の正弦波波形とした場合、理想的には、発熱体層13で生じる温度振動の周波数が駆動入力波形の周波数f1の2倍の周波数f2となり、駆動入力波形f1の略2倍の周波数の音波を発生させることができる。すなわち、上述の送波素子1は、平坦な周波数特性を有しており、発生させる音波の周波数を広範囲にわたって変化させることができる。また、上述の送波素子1では、例えば正弦波波形の半周期の孤立波を駆動入力波形として駆動回路30から一対のパッド14,14間へ与えることによって、図5(a)に示すような残響の少ない略1周期の音波P1を発生させることができる。本実施形態では、図5(a)に示すような略1周期の音波P1を発生させる場合、当該音波P1の1周期の時間を50kHz〜70kHz程度の超音波の1周期の時間に設定してあるが、この数値は特に限定するものではない。
【0035】
また、上述の送波素子1では、一対のパッド14,14を介して発熱体層13へ与える駆動電圧の波形を図6(a)に示すようなガウス波形状の電圧波形とした場合、同図(b)に示すようなガウス波形状の音波を送波することができる。
【0036】
ここにおいて、送波素子1から図6(b)に示すようなガウス波形状の音波(ここでは、当該音波の発生期間を50kHz〜70kHz程度の超音波の1周期の時間に設定してある)を送波させるには、駆動回路30として、例えば図7に示す回路を採用すればよい。図7に示す構成の駆動回路30は、直流電源Eの両端間にスイッチSWを介してコンデンサCが接続され、コンデンサCの両端間にサイリスタThとインダクタLと抵抗R1と保護用抵抗R2との直列回路が接続され、保護用抵抗R2の両端間に送波素子1を接続するように構成されている。また、駆動回路30は、送波素子1から音波を送波させるタイミングを制御するためのタイミング制御回路(図示せず)を有しており、タイミング制御回路によってスイッチSWのオンオフが制御されるとともにサイリスタThへ制御信号を与えるタイミングが制御される。ここにおいて、駆動回路30では、スイッチSWのオン期間にコンデンサCが充電されるが、タイミング制御回路は、コンデンサCの両端電圧を検出しており、コンデンサCの両端電圧が所定のしきい値を超えるとスイッチSWをオフさせてからサイリスタThのゲートへ制御信号を与える。すなわち、図7に示す構成の駆動回路30では、直流電源EからコンデンサCに電荷を蓄積し、コンデンサCの両端電圧が所定のしきい値を超えると、タイミング制御回路(図示せず)からサイリスタThへ制御信号が与えられてサイリスタThがターンオンし、送波素子1のパッド14,14間に電圧が印加されて発熱体層13の温度変化に伴って音波が送波される。ここに、インダクタLのインダクタンスおよび抵抗R1の抵抗値を適宜設定することにより、図6(a)に示すようなガウス波形状の駆動電圧波形を送波素子1のパッド14,14間へ印加することができる。
【0037】
受波素子2としては、例えば、音波を圧電効果により電気信号に変換する圧電式の受波素子や、音波を静電容量の変化に変換する静電容量式の受波素子などの超音波用の受波素子として広く知られているものを採用することが考えられるが、送波素子1と同様に残響を少なくするために、静電容量式の受波素子の構造を採用することが望ましい。なお、受波素子2として圧電式の受波素子を用いた場合、受波素子2の受波信号に図5(c)に示すように受波素子2の残響に起因した信号P4が発生する可能性があり、しかも、物体Obによる反射波(間接波)に起因した受波信号P3の発生期間が、図5(b)に示すように送波素子1から送波された音波(図5(a)参照)P1に比べて長くなる。
【0038】
ここで、静電容量式の受波素子としては、例えば、シリコン基板などをマイクロマシンニング技術などにより加工して形成され、音波を受けるダイヤフラム部からなる可動電極と、ダイヤフラム部に対向する背板部からなる固定電極との間に、音波を受けていない状態でのダイヤフラム部と背板部とのギャップ長を規定する絶縁膜からなるスペーサ部が介在し、背板部に複数の排気孔が貫設された構造を有するものが知られている。このような静電容量式の受波素子では、ダイヤフラム部が音波を受けて変形してダイヤフラム部と背板部との距離が変化することにより、可動電極と固定電極との間の静電容量が変化する。なお、静電容量式の受波素子では、圧電式の受波素子のような共振の高いQ値を持たないから、受波周波数の範囲を広くとることが可能になる。
【0039】
ところで、本実施形態の音波センサでは、物体Obまでの距離だけでなく物体Obの存在する方位も測定できるように、受波素子側回路基板4の一表面上に8個の受波素子2を実装してある。具体的には、図3に示すように、受波素子側回路基板4の1辺に沿った方向に5個の受波素子2を所定ピッチで配列するとともに、上記1辺に直交する方向に3個の受波素子2を所定ピッチで配列してある。なお、説明を簡単にするために、受波素子2が同一平面上において上記1辺に沿った方向のみに所定ピッチで配列されているとし、受波素子2が配列された面に対する音波の波面の角度がθである場合を想定すると、音波の到来方向(すなわち、受波素子側回路基板4と各受波素子2とからなる受波装置に対して物体Obの存在する方位角)はθになり、音速をc、音波の波面が隣り合う受波素子2のうちの一方の受波素子2に到達する時刻における音波の波面と他方の受波素子2の中心との間の距離(遅延距離)をd、隣り合う受波素子2の中心間距離(上記所定ピッチ)をLとすれば、音波の波面が隣り合う受波素子2間に到達する時間差Δtは、Δt=d/c=L・sinθ/cになる。したがって、時間差Δtが分かれば、物体Obの存在する方位を演算することができる。ここにおいて、上記所定ピッチは、送波素子1から送波する音波の波長の0.5倍程度に設定することが望ましい。
【0040】
受波素子2から出力される受波信号は信号処理側回路基板5に設けられた信号処理回路40へ入力されるが、各受波素子2から出力される受波信号は100〜800μV程度の微小な電圧なので、各受波素子2それぞれから出力された受波信号をそのまま信号処理回路40へ伝送するとノイズによりS/N比が低下する可能性がある。そこで、受波素子側回路基板4の上記一表面側に各受波素子2それぞれの出力を増幅するプリアンプ32(プリアンプ32の電圧利得は20dBに設定してある)を設けてあり、各プリアンプ32にて増幅された受波信号を信号処理回路40へ伝送するようにしてある。なお、各プリアンプ32の出力は受波素子側回路基板4と信号処理側回路基板5とを電気的に接続しているコネクタ60を介して信号処理回路40へ伝送される。
【0041】
要するに、本実施形態では、信号処理回路40が設けられる基板である信号処理側回路基板5が、受波素子2が実装された受波素子側回路基板4とは別体であり、受波素子側回路基板4に、各受波素子2の出力を増幅して信号処理回路40へ出力する増幅回路としてプリアンプ32が設けられているので、信号処理回路40を受波素子2が取り付けられた支持基板である受波素子側回路基板4とは別体の基板である信号処理側回路基板5に設けることにより、ハウジング50内への信号処理回路40の配置の自由度を高めることができ、ひいてはセンサ全体を小型化することができ、しかも、受波素子2の出力を増幅してから信号処理回路40へ出力するので、伝送によるノイズの影響を低減することができる。
【0042】
信号処理回路40は、各受波素子2から出力されそれぞれプリアンプ32にて増幅された受波信号をそれぞれ増幅するアンプ41aを有する信号増幅部41と、各アンプ41aにて増幅されたアナログの受波信号それぞれをディジタルの受波信号に変換して出力するA/D変換部42と、A/D変換部42の出力が格納されるメモリ43と、上記タイミング制御回路から上記制御信号に同期して出力されるタイミング信号を受けたときにA/D変換部42を所定の受波期間だけ作動させメモリ43に格納された受波信号のデータを用いて物体Obまでの距離を求める演算および物体Obの存在する方位を求める演算を行うマイクロコンピュータからなる演算部44とを備えている。なお、演算部44は、物体Obまでの距離を求めるにあたって、上記タイミング信号を受けた時刻(つまり、送波素子1から音波を送波したタイミング)と、ディジタルの受波信号がメモリ43に格納された時刻(信号処理回路40内での遅れ時間を無視すれば、受波素子2により音波を受波したタイミング)との時間差に基づいて、物体Obまでの距離を演算する。一方、演算部44は、物体Obの存在する方位を求めるにあたって、メモリ43に格納されたデータに基づいて上述の時間差Δtを演算し、受波素子2の配置位置、時間差Δt、上記所定ピッチL、音速cに基づいて物体Obの存在する方位θを演算する。
【0043】
ところで、上述のハウジング50は、一面が開放された矩形箱状に形成された合成樹脂製のハウジング本体51と、ハウジング本体51の上記一面側に固着された矩形板状のハウジング蓋52とで構成され、上述のように、送波素子1が実装された送波素子側回路基板3、各受波素子2が実装された受波素子側回路基板4、信号処理回路40が設けられた信号処理側回路基板5などが収納される。ここにおいて、ハウジング蓋52には、送波素子1の送波面および各受波素子2の受波面を露出させる開口部として、送波素子1の送波面を露出させる第1の窓孔52aと各受波素子2の受波面を露出させる第2の窓孔52bとが別々に形成されているので、両窓孔52a,52bが連続して形成されている場合に比べて、送波素子1から各受波素子2へ音波が直接伝搬して図5(b),(c)に示すような直接波に起因した受波信号P2が発生するのを抑制することができ、各受波素子2それぞれから出力される受波信号のノイズを低減することができるとともに、音波を送波するタイミングと上記受波期間を開始するまでの期間T3,T4(図5(b),(c)参照)を短くすることが可能となる。なお、各窓孔52a,52bは、ハウジング蓋52の厚み方向に貫設されており、開口形状が矩形状となっている。
【0044】
また、本実施形態では、上述の送波素子1および各受波素子2がハウジング50内において各窓孔52a,52bが形成された部位から後退して配置されるとともに、送波素子側回路基板3と受波素子側回路基板4とがハウジング蓋52に平行な面内で離間して配置され、送波素子側回路基板3とハウジング蓋52における第1の窓孔52aの周部との間に介在し送波素子1を囲む矩形枠状の第1の吸音部材6aと、受波素子側回路基板4とハウジング蓋52における第2の窓孔52bの周部との間に介在し各受波素子2を囲む矩形枠状の第2の吸音部材6bとを備えているので、送波素子1から各受波素子2へ音波が直接伝搬するのをより確実に防止することができる。ここにおいて、各吸音部材6a,6bの厚みは、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4それぞれとハウジング蓋52との間の距離が等しくなるように等しく設定してある。なお、送波素子側回路基板3とハウジング蓋52との間に介在する第1の吸音部材6aは、送波素子側回路基板3およびハウジング蓋52それぞれと接着材により固着されている。また、受波素子側回路基板4とハウジング蓋52との間に介在する第2の吸音部材6bは、受波素子側回路基板4およびハウジング蓋52それぞれと接着材により固着されている。
【0045】
上述のように、本実施形態では、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4とハウジング蓋52との間にそれぞれ吸音部材6a,6bを介在させてあるが、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4は、それぞれ複数個(例えば、4つ)ずつの防振材17a,17b(図8(b)参照)を介してハウジング蓋52に取り付けられているので、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4それぞれの振動がハウジング50へ伝わるを抑制することができ、ハウジング50の振動により各受波素子2それぞれの受波信号に発生するノイズを低減できる。すなわち、受波素子2の受波信号に、ハウジング50の振動に起因したノイズP5(図5(c)参照)が発生するのを防止することが可能となる。なお、送波素子側回路基板3とハウジング蓋52との間に介在する各防振材17aは、送波素子側回路基板3およびハウジング蓋52それぞれと接着材により固着されている。また、受波素子側回路基板4とハウジング蓋52との間に介在する各防振材17bは、受波素子側回路基板4およびハウジング蓋52それぞれと接着材により固着されている。
【0046】
ここで、ハウジング本体51およびハウジング蓋52の材料としては、ポリアセタール、例えばデルリン(商品名)やジュラコン(商品名)など、を採用している。なお、本実施形態では、ハウジング本体51およびハウジング蓋52をポリアセタールなどの合成樹脂により形成してあるが、これらの材料は合成樹脂に限定するものではなく、金属に比べて密度が小さく絶縁性を有する材料であればよく、例えば、セラミックにより形成してもよい。ここにおいて、ハウジング本体51とハウジング蓋52とで構成されるハウジング50が合成樹脂やセラミックにより形成されていることにより、ハウジング50を金属により形成する場合に比べて、ハウジング50を形成する材料の密度を小さくすることができ、音波がハウジング50を伝わりにくくなるとともに、送波素子1から送波される音波にハウジング50が共振しにくくなり、各受波素子2の受波信号にハウジング50の振動に起因したノイズP5が発生するのを防止することができる。なお、ポリアセタールの密度は0.90〜1.57g/cm3程度であり、ハウジング50の材料としては、密度が2g/cm3以下の材料を採用することが好ましい。
【0047】
また、上述の信号処理側回路基板5は、上述のように送波素子側回路基板3とは別の基板により構成されており、ハウジング本体51の内底面に接着材により固着されており、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4と信号処理回路基板5との間には防振材7を介在させてあるので、送波素子1の振動が信号処理側回路基板5を介して受波素子側回路基板4へ伝わって信号処理回路40で信号処理する受波信号に送波素子1の振動に起因したノイズが発生するのを防止することができる。
【0048】
以上説明した本実施形態の音波センサでは、送波素子1が、ベース基板11と、ベース基板11の一表面側に形成された発熱体層13と、ベース基板11の上記一表面側でベース基板11と発熱体層13との間に介在する熱絶縁層12とを備え、発熱体層13への通電に伴う発熱体層13の温度変化に伴って音波を発生する音波発生素子からなるので、送波素子1から発生期間が短く且つ残響時間の短い音波を送波することができ、その上、送波素子1と各受波素子2とがハウジング50内で別々の支持基板のそれぞれの一表面側に取り付けられるとともに、ハウジング50には送波素子1の送波面および各受波素子2の受波面を露出させる開口部が形成されているので、送波素子1から音波を送波する際に送波素子1に発生する振動が各支持基板を介して各受波素子2へ伝達されるのを防ぐことができるから、従来よりも不感帯を小さくすることが可能となり、従来に比べて、より近距離に存在する物体Obまでの距離を測定することが可能となる。
【0049】
ところで、図8および図9に示すように、ハウジング蓋52の各窓孔52a,52bを、通音性を有する防水性シート(例えば、多孔質のプラスチック膜など)8により覆い、防水シート8の周部をハウジング蓋52と同じ材料により形成した枠状のベゼル9(図10参照)で固定する(ベゼル9とハウジング蓋52との間に防水性シート8の周部を挟持した形でベゼル9をハウジング蓋52の外面に固着するようにすれば、塵、埃、昆虫などの異物がハウジング50内に侵入して回路がショートしたり、雨や水滴がハウジング50内に浸入して送波素子1および各受波素子2が劣化したり破壊されたりするのを防止することができ、信頼性を高めることができる。なお、本実施形態では、防水性シート8の外周形状を矩形状とし、ベゼル9の形状を矩形枠状としてある。また、図9(a)に示した吸音部材6は、上述の吸音部材6a,6bを一体化して1部材としたものであり、このような1部材の吸音部材6を用いることにより、2つの吸音部材6a,6bを用いる場合に比べて、部品点数の削減を図れるとともに、送波素子側回路基板3および受波素子側回路基板4それぞれとハウジング蓋52との間の距離を精度良く揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態を示す概略断面図である。
【図2】同上のブロック図である。
【図3】同上の要部斜視図である。
【図4】同上で用いる送波素子の概略断面図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【図6】同上で用いる送波素子の動作説明図である。
【図7】同上で用いる送波素子の駆動回路の一例を示す回路図である。
【図8】同上の他の構成例を示し、(a)は概略断面図、(b)はハウジング蓋を外した状態における要部概略平面図である。
【図9】同上におけるハウジング蓋に吸音材および防水性シートを取り付けた状態を示す図であって、(a)は下面図、(b)は平面図である。
【図10】同上におけるベゼルの平面図である。
【図11】従来例を示す概略断面図である。
【図12】一般的な超音波振動子の動作説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 送波素子
2 受波素子
3 送波素子側回路基板
4 受波素子側回路基板
5 信号処理側回路基板
6a 第1の吸音部材
6b 第2の吸音部材
7 防振材
50 ハウジング
51 ハウジング本体
52 ハウジング蓋
52a 第1の窓孔
52b 第2の窓孔
Ob 物体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を送波可能な送波素子と、送波素子から送波され物体で反射された音波を受波するとともに受波した音波を電気信号である受波信号に変換する受波素子と、送波素子および受波素子を収納するハウジングとを備え、送波素子による音波の送波から受波素子により音波が受波されるまでの時間差に基づいて物体までの距離を測定する音波センサであって、送波素子が、ベース基板と、ベース基板の一表面側に形成された発熱体層と、ベース基板の前記一表面側でベース基板と発熱体層との間に介在する熱絶縁層とを備え、発熱体層への通電に伴う発熱体層の温度変化に伴って音波を発生する音波発生素子からなり、送波素子と受波素子とがハウジング内で別々の支持基板のそれぞれの一表面側に取り付けられるとともに、ハウジングには送波素子の送波面および受波素子の受波面を露出させる開口部が形成されてなることを特徴とする音波センサ。
【請求項2】
前記受波素子から出力された受波信号を信号処理する信号処理回路を備え、当該信号処理回路が、前記送波素子を取り付けた支持基板とは別の基板に設けられてなることを特徴とする請求項1記載の音波センサ。
【請求項3】
前記信号処理回路が設けられる基板が前記受波素子を取り付けた支持基板とは別体であり、前記受波素子を取り付けた支持基板に、前記受波素子の出力を増幅して前記信号処理回路へ出力する増幅回路が設けられてなることを特徴とする請求項2記載の音波センサ。
【請求項4】
前記ハウジングが合成樹脂もしくはセラミックにより形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の音波センサ。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記開口部として、前記送波素子の送波面を露出させる第1の窓孔と前記受波素子の受波面を露出させる第2の窓孔とが別々に形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の音波センサ。
【請求項6】
前記送波素子および前記受波素子が前記ハウジングにおいて前記各窓孔が形成された部位から後退して配置され、前記送波素子が取り付けられた支持基板である第1の支持基板と前記ハウジングにおける前記第1の窓孔の周部との間に介在し前記送波素子を囲む第1の吸音部材と、前記受波素子が取り付けられた支持基板である第2の支持基板と前記ハウジングにおける前記第2の窓孔の周部との間に介在し前記受波素子を囲む第2の吸音部材とを備えてなることを特徴とする請求項5記載の音波センサ。
【請求項7】
前記各支持基板は、防振材を介して前記ハウジングへ取り付けられてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の音波センサ。
【請求項8】
前記第1の窓孔および前記第2の窓孔が、通音性を有する防水性シートにより覆われてなることを特徴とする請求項5または請求項6記載の音波センサ。
【請求項1】
音波を送波可能な送波素子と、送波素子から送波され物体で反射された音波を受波するとともに受波した音波を電気信号である受波信号に変換する受波素子と、送波素子および受波素子を収納するハウジングとを備え、送波素子による音波の送波から受波素子により音波が受波されるまでの時間差に基づいて物体までの距離を測定する音波センサであって、送波素子が、ベース基板と、ベース基板の一表面側に形成された発熱体層と、ベース基板の前記一表面側でベース基板と発熱体層との間に介在する熱絶縁層とを備え、発熱体層への通電に伴う発熱体層の温度変化に伴って音波を発生する音波発生素子からなり、送波素子と受波素子とがハウジング内で別々の支持基板のそれぞれの一表面側に取り付けられるとともに、ハウジングには送波素子の送波面および受波素子の受波面を露出させる開口部が形成されてなることを特徴とする音波センサ。
【請求項2】
前記受波素子から出力された受波信号を信号処理する信号処理回路を備え、当該信号処理回路が、前記送波素子を取り付けた支持基板とは別の基板に設けられてなることを特徴とする請求項1記載の音波センサ。
【請求項3】
前記信号処理回路が設けられる基板が前記受波素子を取り付けた支持基板とは別体であり、前記受波素子を取り付けた支持基板に、前記受波素子の出力を増幅して前記信号処理回路へ出力する増幅回路が設けられてなることを特徴とする請求項2記載の音波センサ。
【請求項4】
前記ハウジングが合成樹脂もしくはセラミックにより形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の音波センサ。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記開口部として、前記送波素子の送波面を露出させる第1の窓孔と前記受波素子の受波面を露出させる第2の窓孔とが別々に形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の音波センサ。
【請求項6】
前記送波素子および前記受波素子が前記ハウジングにおいて前記各窓孔が形成された部位から後退して配置され、前記送波素子が取り付けられた支持基板である第1の支持基板と前記ハウジングにおける前記第1の窓孔の周部との間に介在し前記送波素子を囲む第1の吸音部材と、前記受波素子が取り付けられた支持基板である第2の支持基板と前記ハウジングにおける前記第2の窓孔の周部との間に介在し前記受波素子を囲む第2の吸音部材とを備えてなることを特徴とする請求項5記載の音波センサ。
【請求項7】
前記各支持基板は、防振材を介して前記ハウジングへ取り付けられてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の音波センサ。
【請求項8】
前記第1の窓孔および前記第2の窓孔が、通音性を有する防水性シートにより覆われてなることを特徴とする請求項5または請求項6記載の音波センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−234522(P2006−234522A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48074(P2005−48074)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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