説明

音波出力装置、通話装置、音波出力方法、及びプログラム

【課題】予め限定されない任意の方向又は場所に位置する対象に指向性を向けて音波を出力すること。
【解決手段】一実施形態において、所定の信号源から送信される無線信号を受信する受信部と、前記受信部により受信された前記無線信号から、前記信号源の位置に依存するパラメータ値を決定する決定部と、前記パラメータ値に基づいて、前記信号源の方向へ指向性を有する音波を出力する音波出力部と、を備える音波出力装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波出力装置、通話装置、音波出力方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声の聴取者に指向性を向けて音波を出力する様々な技術の開発が進められてきている。例えば、下記特許文献1では、音声信号を振幅変調して生成した超音波を空気中に放射して非線形パラメトリック作用により可聴音を得ている。また、下記特許文献2又は下記特許文献3では、音声信号を振幅変調して生成した超音波を2つのスピーカの一方から出力し、他方から無変調の超音波を出力することで、うなりを発生させて、そのうなりの2次成分によりユーザに音声を提供している。
【0003】
さらに、下記特許文献4には、撮像装置やセンサ等を用いてユーザの位置を検出し、可聴域の音波の指向性を最適化する手法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−119293号公報
【特許文献2】特開平11−145915号公報
【特許文献3】特開2004−147311号公報
【特許文献4】特開平7−87590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の手法では、対象の位置に適応的に指向性を調節することができなかった。そのため、聴取者の位置が予め予測可能な展示物の説明などにその用途が限定されていた。
【0006】
また、上記特許文献4に記載の手法では、予めスピーカに対向してマイクアレイを敷設しておき、そのマイクアレイからのフィードバックと予め組み立てた係数とに基づいて指向性を決定するという複雑な手順が要求されていた。さらに、当該手法では、スピーカとマイクアレイの位置関係の制約から配置を都度設定することが必要となり、従ってその用途が限定されるという課題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、予め限定されない任意の方向又は場所に位置する対象に指向性を向けて音波を出力することのできる、新規かつ改良された音波出力装置、通話装置、音波出力方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、所定の信号源から送信される無線信号を受信する受信部と、前記受信部により受信された前記無線信号から、前記信号源の位置に依存するパラメータ値を決定する決定部と、前記パラメータ値に基づいて、前記信号源の方向へ指向性を有する音波を出力する音波出力部と、を備える音波出力装置が提供される。
【0009】
また、前記受信部は、前記無線信号を受信する複数の受信アンテナを有し、前記音波出力部は、それぞれ所定の遅延量をもって音波を出力可能な複数のスピーカを有し、前記決定部は、前記無線信号の前記受信アンテナ間の到来時間差又は位相差に応じて、前記スピーカごとの前記遅延量を決定してもよい。
【0010】
また、前記受信部は、前記無線信号を受信する複数の受信アンテナを有し、前記決定部は、前記無線信号の前記受信アンテナ間の到来時間差又は位相差に応じて、当該無線信号の到来方向を決定してもよい。
【0011】
また、前記受信部は、前記無線信号を受信する3本以上の受信アンテナを有し、前記決定部は、前記無線信号の前記受信アンテナ間の2以上の到来時間差又は位相差に応じて、前記信号源の位置を決定してもよい。
【0012】
また、前記音波出力部の各スピーカは、前記受信部の各受信アンテナのそれぞれ近傍に設けられており、前記決定部は、前記無線信号の到来時間又は位相の前記受信アンテナごとの前後関係を反転させて前記スピーカごとの前記遅延量を決定してもよい。
【0013】
また、前記無線信号は、前記信号源の個体又は前記信号源を保持するユーザを識別する識別子を含むビーコンであり、前記音波出力装置は、前記ビーコンに含まれる前記識別子に応じて、前記音波出力部に音波を出力させるか否かを制御する制御部、をさらに備えてもよい。
【0014】
また、前記音波出力装置は、前記信号源の方向から集音された音声に基づいて、既知のユーザの中から当該音声の話し手のユーザを特定する音声解析部、をさらに備えてもよい。
【0015】
また、前記音波出力装置は、前記信号源の方向から集音された音声に所定の音声コマンドが含まれているか否かに応じて、前記音波出力部からの音波の出力を制御する制御部、をさらに備えてもよい。
【0016】
また、前記受信部は、前記無線信号としての赤外線を受光する複数の受光素子を有し、前記決定部は、前記赤外線を受光した前記受光素子の位置に応じて前記信号源の位置を決定してもよい。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、所定の信号源から送信される無線信号を受信する受信部と、前記受信部により受信された前記無線信号から、前記信号源の位置に依存するパラメータ値を決定する決定部と、前記パラメータ値に基づいて、前記信号源の方向へ指向性を有する音波を出力する音波出力部と、前記パラメータ値に基づいて、前記信号源の方向からの音声を集音する音声入力部と、を備える通話装置が提供される。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、所定の信号源から送信される無線信号を受信するステップと、受信された前記無線信号から、前記信号源の位置に依存するパラメータ値を決定するステップと、前記パラメータ値に基づいて、前記信号源の方向へ指向性を有する音波を出力するステップと、を含む音波出力方法が提供される。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、所定の信号源から送信される無線信号を受信可能な受信部と音波を出力可能なスピーカとを備える音波出力装置を制御するコンピュータを、前記受信部により受信された前記無線信号から、前記信号源の位置に依存するパラメータ値を決定する決定部と、前記パラメータ値に基づいて、前記スピーカから出力される音波の指向性を前記信号源の方向へ向けさせる音波出力部と、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係る音波出力装置、通話装置、音波出力方法、及びプログラムによれば、予め限定されない任意の方向又は場所に位置する対象に指向性を向けて音波を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
また、以下の順序にしたがって当該「発明を実施するための最良の形態」を説明する。
1.一実施形態に係る音波出力装置の概要
2.第1の実施形態の説明
3.第2の実施形態の説明
4.第3の実施形態の説明
5.第4の実施形態の説明
6.まとめ
【0023】
<1.一実施形態に係る音波出力装置の概要>
まず、図1〜図3を参照しながら、本発明の一実施形態に係る音波出力装置の概要について説明する。
【0024】
図1は、一実施形態に係る音波出力装置が使用される場面の一例を示す模式図である。図1を参照すると、音波出力装置100a、並びに音波出力装置100aの周囲に位置する信号源10a及びユーザ20aが示されている。
【0025】
図1の例において、信号源10aは、無線信号を周囲へ送信することにより、当該無線信号を受信した音波出力装置100aに自らの位置又は方向へ音波の指向性を向けさせる。図1では信号源10aの一例として携帯電話端末を示しているが、信号源10aは携帯電話端末に限定されない。例えば、信号源10aは、PC(Personal Computer)やPDA(Personal Digital Assistants)などの情報処理端末、ゲーム端末、又は専用の無線発信機などであってもよい。
【0026】
ユーザ20aは、信号源10aを保持しており、信号源10aから送信される無線信号に基づいて音波出力装置100aから指向性をもって出力される音波(に変調された音声信号)を聴取する。なお、図1ではユーザ20aが信号源10aを片手に保持している例を示しているが、かかる例に限定されず、ユーザ20aはどのような形で信号源10aを保持していてもよい。また、信号源10aは、必ずしもユーザ20aに保持されていなくてもよく、少なくともユーザ20aの近傍に位置していればよい。
【0027】
音波出力装置100aは、後に詳しく説明するように、かかる信号源10aから送信される無線信号に基づいて、信号源10aの位置又は方向へ指向性を有する音波を出力する。それにより、ユーザ20aは、音波出力装置100aから出力された音波を聴取することができる。
【0028】
なお、本明細書において、無線信号には、物理的な線を介さずに伝達可能な、例えば電磁波、音波、光、又は赤外線などの任意の信号が含まれるものとする。また、音波には、可聴音のみならず、可聴域外の周波数を持つ超音波なども含まれるものとする。
【0029】
図2は、一実施形態に係る音波出力装置が使用される場面の他の例を示す模式図である。図2を参照すると、音波出力装置100b、並びに音波出力装置100bの周囲に位置する信号源10b及びユーザ20bが示されている。
【0030】
図2の例においては、信号源10bは、ユーザ20bにより装着可能なアクセサリの形状をした無線発信機として示されている。一方、音波出力装置100bは、携帯電話端末として示されている。
【0031】
かかる例においても、図1の場合と同様に、信号源10bは、無線信号を周囲へ送信することにより、当該無線信号を受信した音波出力装置100bに自らの位置又は方向へ音波の指向性を向けさせる。そして、音波出力装置100bは、信号源10bから送信される無線信号に基づいて、信号源10bの位置又は方向へ指向性を有する音波を出力する。それにより、ユーザ20bは、音波出力装置100bから出力された音波を聴取することができる。
【0032】
図3は、一実施形態に係る音波出力装置が使用される場面のさらに別の例を示す模式図である。図3を参照すると、音波出力装置100c、並びに音波出力装置100cの周囲に位置する信号源10c及びユーザ20cが示されている。
【0033】
図3の例においては、信号源10cは、音波出力装置100cを操作するための遠隔操作装置として示されている。一方、音波出力装置100cは、テレビジョン受像機などに相当する表示装置として示されている。
【0034】
かかる例においても、図1及び図2の場合と同様に、信号源10cは、無線信号を周囲へ送信することにより、当該無線信号を受信した音波出力装置100cに自らの位置又は方向へ音波の指向性を向けさせる。そして、音波出力装置100cは、信号源10cから送信される無線信号に基づいて、信号源10cの位置又は方向へ指向性を有する音波を出力する。それにより、ユーザ20cは、音波出力装置100cから出力された音波を聴取することができる。
【0035】
ここまで、図1〜図3を用いて、本発明の一実施形態に係る音波出力装置が使用される場面の例を挙げながら、音波出力装置の概要について説明した。次に、かかる音波出力装置の好適な4つの実施形態について順に説明する。
【0036】
なお、以下の説明において、特に区別する必要が無い場合には、音波出力装置100a、100b、100cを音波出力装置100と総称する。また、信号源10a、10b、10c(信号源10)及びユーザ20a、20b、20c(ユーザ20)についても同様とする。
【0037】
<2.第1の実施形態の説明>
[2−1.音波出力装置の構成]
図4は、本発明の第1の実施形態に係る音波出力装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0038】
図4を参照すると、音波出力装置100は、n本の受信アンテナ110−1〜n(n≧1)、受信部120、決定部130、制御部150、メモリ152、音声変調部160、音波出力部170、及びm個のスピーカ180−1〜m(m≧1)を備える。また、受信部120には、n本の受信アンテナ110−1〜nにそれぞれ対応する無線受信部122−1〜nが含まれる。なお、ここでは、一例として、図1〜図3に例示した信号源10から音波出力装置100へ電磁波信号が送信されるものとして説明する。
【0039】
受信部120において、各無線受信部122−1〜nは、それぞれ対応する受信アンテナ110−1〜nを介して、信号源10から送信される無線信号を受信する。そして、各無線受信部122−1〜nは、それぞれ受信した信号を増幅し、AD(Analog to Digital)変換した後、決定部130へ出力する。
【0040】
決定部130は、受信部120により受信された無線信号(以下、受信信号という)から、信号源10の位置に依存して変動する所定のパラメータ値を決定する。例えば、決定部130により決定されるパラメータ値とは、信号源10から送信される無線信号の到来方向であってよい。また、例えば、決定部130により決定されるパラメータ値とは、信号源10の位置そのものであってもよい。さらに、例えば、決定部130により決定されるパラメータ値とは、信号源10に向けて出力される音波のスピーカ180−1〜mごとの遅延量であってもよい。決定部130による具体的な処理の内容については、後により詳しく説明する。
【0041】
制御部150は、例えばCPU(Central processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの制御装置を用いてメモリ152に記憶されたプログラムを実行し、音波出力装置100の動作全般を制御する。具体的には、制御部150は、例えば音波出力装置10の内部又は外部に設けられたアプリケーション(図示せず)からの要求を受け、ユーザ20に提供すべき音声信号を取得して音声変調部160へ出力する。メモリ152は、例えばROM(Random Access Memory)などの半導体メモリを用いて、制御部150により実行されるプログラムや制御データなどを記憶する。
【0042】
音声変調部160は、制御部150から入力される音声信号をアナログ信号に変調し、音波出力部170へ出力する。
【0043】
音波出力部170は、決定部130により決定された上述のいずれかのパラメータ値に基づいて、信号源10の方向へ指向性を有する音波をスピーカ180−1〜mから出力させる。例えば、音波出力部170は、無線信号の二次元平面上での到来方向を入力された場合には、当該方向に音波の指向性を向けてもよい。また、例えば、音波出力部170は、信号源10の位置を入力された場合には、当該位置へ音波の指向性を向けてもよい。さらに、例えば、音波出力部170は、信号源10に向けて出力される音波のスピーカ180−1〜mごとの位相遅延を入力された場合には、当該位相遅延に応じた遅延時間をもってスピーカ180−1〜mから音波を出力さてもよい。音波出力部170による具体的な処理の内容については、後により詳しく説明する。
【0044】
スピーカ180−1〜mは、例えば、それぞれ所定の位相遅延をもって音波を出力可能な、アレイ状に配置された複数のスピーカであってよい。また、スピーカ180−1〜mは、例えば、音波を発生させる振動面の向きを機械的に変えることのできる1つのスピーカであってもよい。また、スピーカ180−1〜mは、例えば、非線形パラメトリック作用により信号源10の位置にて可聴音を発生させる超音波出力用のスピーカなどであってもよい。
【0045】
ここまで、図4を用いて、本実施形態に係る音波出力装置100の構成の一例について説明した。次に、かかる構成において、音波出力装置100から出力される音波の指向性が制御される代表的なパターンについて具体的に説明する。
【0046】
[2−2.指向性制御の例]
[2−2−1.到来方向に応じた制御]
指向性制御の第1のパターンでは、音波出力装置100から出力される音波の指向性は、無線信号の到来方向に応じて制御される。この場合、決定部130は、受信部120により受信された無線信号の受信アンテナ110−1〜n間の到来時間差又は位相差に応じて、当該無線信号の到来方向を決定する。
【0047】
まず、決定部130が無線信号の到来時間差を求める手法の2つの例について説明する。第1の例として、決定部130は、例えば、無線受信部122−1〜nから入力された信号間で相関を計算し、得られた相関値のピークの位置から無線信号の受信アンテナ110−1〜n間の到来時間差を求めることができる。第2の例として、決定部130は、例えば、信号源10からインパルス信号や既知の信号パターンを持つ信号がビーコン信号として送信される場合に、当該ビーコン信号が到来した絶対時刻の差から上述した到来時間差を求めることができる。
【0048】
また、決定部130は、無線信号の到来時間差の代わりに、無線信号の位相差を求めてもよい。その場合には、決定部130は、まず、信号源10から送信されるビーコン信号に含まれる既知の周波数の周波数成分を、無線受信部122−1〜nから入力された各受信信号について抽出する。そして、決定部130は、抽出された周波数成分間の受信信号間の相関値を計算し、計算した相関値の位相から、無線信号の受信アンテナ110−1〜n間の位相差を求めることができる。
【0049】
なお、決定部130は、ここで述べた手法以外の手法を用いて、無線信号の受信アンテナ110−1〜n間の到来時間差又は位相差を求めてもよい。
【0050】
次に、決定部130は、無線信号の受信アンテナ110−1〜n間の到来時間差又は位相差から、受信アンテナ110−1〜n間の信号源10までの行路長の差を計算する。例えば、無線信号の受信アンテナ110−1〜n間の到来時間差をτ、光速をcとすると、受信アンテナ110−1〜n間の行路長の差dは次式で与えられる。
【0051】
【数1】

【0052】
また、例えば、無線信号の受信アンテナ110−1〜n間の位相差をφ、無線信号の波長をλとすると、受信アンテナ110−1〜n間の行路長の差dは次式で与えられる。
【0053】
【数2】

【0054】
そして、決定部130は、上記のように計算した受信アンテナ110−1〜n間の行路長の差dに基づいて、信号源10の到来方向を決定する。
【0055】
図5は、2つの受信アンテナ110−1及び110−2の間の行路長の差dとアンテナ間隔rから信号源10の到来方向を決定する処理について説明するための説明図である。
【0056】
図5を参照すると、座標(−1,0)に受信アンテナ110−1、座標(1,0)に受信アンテナ110−2が位置する二次元平面が示されている。また、かかる二次元平面上に、信号源10の位置の軌跡L0、L1、L2、L3、L4がプロットされている。これら軌跡L0、L1、L2、L3、L4は、上述した行路長の差dがアンテナ間隔rの0%、20%、40%、60%、80%であった場合の軌跡であり、いずれも双曲線軌道となる(L0は直線となる)。ここで、信号源10と音波出力装置100の間の距離がアンテナ間隔rよりも十分大きいと仮定すると、双曲線を直線に近似することができる。そこで、決定部130は、例えば、双曲線の軌跡を近似した直線と2つの受信アンテナ110−1及び110−2の基線BLとのなす角θを、信号源10の到来方向と決定する。
【0057】
このように、受信部120が無線信号を受信する2つ受信アンテナを有する場合には、決定部130は、信号源10から送信される無線信号の二次元平面上での到来方向を決定することができる。そして、決定部130は、決定した無線信号の到来方向θを、音波出力部170へ出力する。
【0058】
一方、音波出力部170は、決定部130から無線信号の到来方向θが入力されると、スピーカ180−1〜mに、指向性を到来方向θに向けた音波を出力させる。
【0059】
図6は、音波出力部170が2つのスピーカ180−1及び180−2を有し、各スピーカがそれぞれ所定の位相遅延をもって音波を出力可能である場合の、音波の指向性の制御について説明するための説明図である。
【0060】
図6を参照すると、音波出力部170には、変換部172と、2つのスピーカ180−1及び180−2にそれぞれ対応する2つの遅延回路174−1及び174−2とが含まれる。
【0061】
図6の例において、変換部172は、決定部130から入力される到来方向θの値をスピーカごとの遅延量に変換し、変換した遅延量を遅延回路174−1及び174−2へ入力する。そして、遅延回路174−1及び174−2は、入力された遅延量に応じて音声変調部160から入力された音声信号を遅延させた後、当該音声信号をスピーカ180−1及び180−2からそれぞれ出力させる。即ち、この場合には、スピーカ180−1及び180−2から出力される音波は平面波である。しかし、出力される平面波の位相を遅延回路174−1及び174−2によって互いにずらすことで、音波の波面を無線信号の到来方向と直交させ、音波の指向性を到来方向に向けることができる。
【0062】
図6の例では、遅延回路174−1における音声信号の遅延量はゼロ、遅延回路174−2における音声信号の遅延量はtである。それにより、信号源10からより遠い位置にあるスピーカ180−1からの音声信号が早く出力され、音波の指向性が信号源10の方向へ向けられる。
【0063】
なお、ここでは、音波出力部170が2つのスピーカ180−1及び180−2を用いて音波の指向性を制御する例について説明したが、さらに多くのスピーカが使用されてもよいことは言うまでもない。
【0064】
また、図7に示すように、受信部120に3本の受信アンテナ110−1〜3を設け、信号源10からの無線信号の到来方向を三次元空間上で特定してもよい。即ち、この場合、決定部130は、まず、受信アンテナ110−1及び110−2の間の行路長の差から、受信アンテナ110−1及び110−2の基線BL1に対する無線信号の到来方向θ1を決定する。次に、決定部130は、受信アンテナ110−2及び110−3の間の行路長の差から、受信アンテナ110−2及び110−3の基線BL2に対する無線信号の到来方向θ2を決定する。
【0065】
図7の例のように3本の受信アンテナ110−1〜3により三次元空間上で無線信号の到来方向を特定した場合には、図8に示すように、3つのスピーカ180−1〜3から音波を出力させるのが好適である。この場合、音波出力部170は、例えば、決定部130により決定された無線信号の到来方向θ1及びθ2に基づいて、スピーカ180−1〜3ごとの音声信号の遅延量を決定する。図8の例では、スピーカ180−1に対するスピーカ180−2の遅延量がt1、スピーカ180−3に対するスピーカ180−2の遅延量がt2と決定されている。そして、これら遅延量に応じてスピーカ180−1〜3からそれぞれ音波が出力されることで、3次元空間上で音波の指向性を信号源10の方向へ向けることができる。
【0066】
[2−2−2.信号源の位置に応じた制御]
また、上述した指向性制御の第1のパターンを拡張し、指向性制御の第2のパターンとして、無線信号を受信する3本以上の受信アンテナを用いて、音波出力装置100から出力される音波の指向性を信号源の位置に応じて制御してもよい。
【0067】
例えば、信号源10、受信アンテナ110−1、及び受信アンテナ110−2と同一の平面上に3つ目の受信アンテナ110−3を配置した場合には、決定部130は、図9に示すように、当該平面上で信号源10の位置を特定することができる。即ち、決定部130は、まず、受信アンテナ110−1と110−2との間の無線信号の行路長の差から、信号源10が双曲線L1上に位置することを知る。次に、決定部130は、受信アンテナ110−2と110−3との間の無線信号の行路長の差から、信号源10が双曲線L2上に位置することを知る。それにより、決定部130は、双曲線L1及びL2の交点P1又はP2の位置に信号源10が位置していると決定することができる。なお、この場合に、信号源10の位置がP1とP2のいずれであるかは、例えば、音波出力装置100の設置状況などから判断され得る。
【0068】
図9の例のように信号源10の位置を特定した場合には、例えば、図8に示したような3つのスピーカ180−1〜3を用いて、音波の指向性を信号源10の方向へ向けてもよい。その代わりに、例えば、図10に示したような振動面の向きを機械的に制御し得る1つのスピーカ180により、音波の指向性が信号源10の方向へ向けられてもよい。
【0069】
図10の例において、音波出力部170には、変換部173及び駆動回路176が含まれる。変換部173は、決定部130から入力された信号源の位置を、スピーカ180の振動面の向きを機械的に変化させる駆動量に変換し、駆動回路176へ入力する。そして、駆動回路176は、入力された駆動量に応じてスピーカ180の振動面の向きを変化させる。それにより、スピーカ180から出力される音波の指向性が信号源10の方向へ向けられる。
【0070】
なお、受信アンテナの数を4本以上使用して、三次元空間上で信号源10の位置を特定することも可能である。
【0071】
[2−2−3.位相遅延に応じた制御]
さらに、指向性制御の第3のパターンとして、受信アンテナ110−1〜nのそれぞれ近傍にスピーカ180−1〜mを設けた場合には、上述した無線信号の到来方向又は信号源10の位置を計算する処理を省略することができる。例えば、受信アンテナとスピーカが共に2つずつ設けられているとする。そうすると、2つの受信アンテナ間の行路長の差dと2つのスピーカの間の音波出力の遅延量tとの間には、音速をvとして次の関係式が成り立つ。
【0072】
【数3】

【0073】
即ち、式(1)と式(3)又は式(2)と式(3)を組み合わせて、無線信号の到来方向又は信号源10の位置を計算することなく、スピーカに適用すべき遅延量を計算し得る。かかる考え方を応用し、受信アンテナ及びスピーカがそれぞれ3つ以上設けられる場合には、決定部130は、無線信号の到来時間又は位相の受信アンテナごとの前後関係を反転させて、スピーカごとの遅延量を決定することができる。それにより、回路規模が低減されると共に、計算コストの減少による応答性の向上が期待される。
【0074】
図11は、指向性制御の第3のパターンを実現するための決定部130及び音波出力部170の具体的な構成を示すブロック図である。なお、ここでは音波出力装置100に受信アンテナ及びスピーカを3つずつ設けるものとして説明する。
【0075】
図11を参照すると、決定部130は、受信アンテナ110(及び対応する無線受信部122)の数に応じたFFT回路132−1〜3、減算器134−1及び2、IFFT回路136−1及び2、並びに遅延決定回路138を有する。一方、音波出力部180は、遅延回路174−1〜3、ADC(Analog to Digital Convertor)176、及びDAC(Digital to Analog Convertor)178−1〜3を有する。
【0076】
決定部130において、FFT回路132−1〜3は、それぞれ受信信号を高速フーリエ変換し、受信信号に含まれる時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。それにより、例えば、信号源10から送信されたビーコン信号に含まれる所定の周波数成分φ1、φ2、及びφ3がそれぞれ抽出される。次に、減算器134−1は、周波数成分φ1と周波数成分φ3の位相差Δφ1を計算する。また、減算器134−2は、周波数成分φ2と周波数成分φ3の位相差Δφ2を計算する。そして、位相差Δφ1は、IFFT回路136−1により高速逆フーリエ変換され、時間領域の信号となる。同様に、位相差Δφ2は、IFFT回路136−2により高速逆フーリエ変換され、時間領域の信号となる。
【0077】
遅延調整回路138は、このように算出された受信アンテナ110−1〜3ごとの相対的な無線信号の位相遅延の前後関係を反転させて、スピーカ180−1〜3ごとの遅延量を決定する。
【0078】
例えば、同一のウィンドウタイミングで採取された無線信号の位相が、受信アンテナ110−3を基準として、受信アンテナ110−1において時間τ1、受信アンテナ110−2において時間τ2(τ1>τ2)に相当する位相の分だけ遅れていたとする。即ち、この場合、アンテナ110−3、アンテナ110−2、アンテナ110−1の順で無線信号が受信されている。そうすると、遅延調整回路138は、スピーカ180−1の遅延量t1=0を基準とし、スピーカ180−2の遅延量t2=τ1−τ2、スピーカ180−3の遅延量t3=τ1と決定する。即ち、音波の出力は、スピーカ180−1、スピーカ180−2、スピーカ180−3の順で行われる。
【0079】
このように決定された遅延量t1、t2及びt3は、遅延調整回路138から音波出力部の遅延回路174−1〜3へそれぞれ出力される。そして、ADC176によりAD変換された音声信号が各遅延回路174−1〜3に入力されると、音声信号はそれぞれ遅延量t1、t2及びt3の分だけそれぞれ遅延され、対応するDAC178−1〜3へ出力される。そして、遅延された各音声信号は、DAC178−1〜3によりそれぞれDA変換された後、各スピーカ180−1〜3から出力される。
【0080】
なお、図11の例では、決定部130において無線信号間の位相遅延を減算器134−1及び134−2を用いて計算したが、その代わりに極座標平面における積により位相遅延を計算してもよい。また、遅延回路174−1〜3として、例えば、基準となる分岐におけるフィルタ特性が中央タップのみ1となるデルタ関数である遅延フィルタを用いてもよい。また、各周波数成分の振幅を調整する等化器が図11の回路に追加的に設けられてもよい。さらに、スピーカの配置はアレイ状の配置に限定されない。スピーカは、三次元空間上の任意の位置に配置されてよい。
【0081】
[2−2−4.変形例]
なお、無線信号が赤外線である場合には、受信部120に受信アンテナ110−1〜nを設ける代わりに、受信部120に赤外線を集光するレンズと集光された赤外線を受光する複数の受光素子とを設け、赤外線を受光した受光素子の受光面上の位置に応じて信号源10の位置を決定してもよい。例えば、信号源10が図3に示したような遠隔制御装置であって、遠隔制御信号が赤外線信号である場合には、かかる構成を用いることで、既存の遠隔制御装置をそのまま信号源10として使用することができる。
【0082】
ここまで、図4〜図11を用いて、本発明の第1の実施形態に係る音波出力装置100について説明した。かかる音波出力装置100によれば、信号源10から送信される無線信号から、信号源10の位置に依存する無線信号の到来方向などのパラメータ値が決定される。そして、そのパラメータ値に基づいて信号源10の方向へ指向性を有する音波が出力される。それにより、予め限定されない任意の方向又は場所に位置する対象に指向性を向けて音波を出力することが可能となる。
【0083】
<3.第2の実施形態の説明>
以下に説明する本発明の第2の実施形態に係る音波出力装置200は、さらに、無線信号に含められる識別子を用いて信号源10の個体又は信号源10を保持するユーザを識別し、その識別結果に応じて音波の出力の有無を制御する。
【0084】
[3−1.ビーコンの構成]
本発明の第2の実施形態において、信号源10は、例えば、図12に示したようなビーコンを周囲に送信するビーコン発信機として動作する。ここで、信号源10により送信されるビーコンは、例えば、パケット信号、遠隔制御装置から発せられる赤外線若しくは電磁波による制御信号、又はRFID(Radio Frequency IDentification)技術におけるICタグなどであってもよい。
【0085】
図12を参照すると、信号源10から送信され得るビーコン12の信号フォーマットの一例が示されている。ビーコン12には、例えば、その前半部に既知信号14、後半部に識別子16が含まれる。このうち、既知信号14は、ビーコン12を受信する音波出力装置200にとって既知である所定の信号パターンを有する。即ち、後述する音波出力装置200は、受信した信号の信号パターンを内部に予め保持される既知信号14の信号パターンと比較し、ビーコン12を受信したことを検知する。また、既知信号14は、音波出力装置200による受信アンテナ間のビーコン12の到来時間差又は位相差の計算に使用されてもよい。
【0086】
一方、識別子16は、信号源10の個体又は信号源10を保持するユーザを識別するための識別子である。識別子16は、音波出力装置200による音波出力の制御に使用される。
【0087】
[3−2.音波出力装置の構成]
図13は、本実施形態に係る音波出力装置200の構成の一例を示すブロック図である。
【0088】
図13を参照すると、音波出力装置200は、受信アンテナ110−1〜n、受信部220、決定部130、復調復号部240、制御部250、メモリ252、音声変調部160、音波出力部170、及びスピーカ180−1〜mを備える。また、受信部220には、n本の受信アンテナ110−1〜nにそれぞれ対応する無線受信部222−1〜nが含まれる。
【0089】
本実施形態において、各無線受信部222−1〜nは、それぞれ対応する受信アンテナ110−1〜nを介して、信号源10から送信される無線信号を受信する。そして、各無線受信部222−1〜nは、それぞれ受信した信号を増幅し、AD変換した後、決定部130及び復調復号部240へ出力する。
【0090】
復調復号部240は、各無線受信部122−1〜nから入力された受信信号を、位相変調や振幅変調又はこれらを組み合わせた任意の変調方式に従って復調し、さらに任意の符号化方式に従って復号する。そして、復調復号部240は、復号済みの受信信号を制御部250へ出力する。
【0091】
制御部250は、図12に例示した既知信号14の信号パターンが受信信号から検出されると、既知信号14に続いて受信される識別子16から信号源10が音波出力の対象であるか否かを判定する。そして、制御部250は、信号源10が音波出力の対象であると判定された場合には、決定部130に信号源10の位置に依存するパラメータ値の決定を指示し、及び音声信号を音声変調部160へ出力する。なお、受信信号からの既知信号14の信号パターンの検出は、受信部220、復調復号部240、又は制御部250のいずれかの処理ブロックで行われ得る。
【0092】
ここで、音波出力の対象となる識別子16は、例えば、予めメモリ252に登録されていてもよい。例えば、展示会場を訪れるユーザにビーコン発信機としての信号源10を配布して展示内容を説明する音声を提供する場合には、信号源10ごとの識別子16を予め音波出力装置200のメモリ252に登録しておくことが考えられる。その代わりに、音波出力の対象となる識別子16は、信号源10からの要求に応じて動的にメモリ252に登録されてもよい。
【0093】
かかる音波出力装置200の構成によれば、例えば、音波出力装置200の周囲に複数の無線信号の信号源10が存在している場合にも、音波出力装置200から音声を提供すべき特定の信号源10に対してのみ音波の指向性を向けることが可能となる。
【0094】
<4.第3の実施形態の説明>
次に、以下に説明する本発明の第3の実施形態では、受信信号から決定されるパラメータ値を利用し、マイクロフォンの指向性を制御して信号源10を保持するユーザ20(又は信号源10の近傍に位置するユーザ20)の発する音声が集音される。即ち、本実施形態では、指向性を有する音声出力と指向性を有する音声入力とを共に実現する通話装置300が構成される。
【0095】
図14は、本発明の第3の実施形態に係る通話装置300の構成の一例を示すブロック図である。
【0096】
図14を参照すると、通話装置300は、受信アンテナ110−1〜n、受信部120、決定部330、制御部350、メモリ352、音声変調部160、音波出力部170、スピーカ180−1〜m、マイクロフォン390−1〜L(L≧1)、及び音声入力部392を備える。
【0097】
本実施形態において、決定部330は、第1の実施形態に係る決定部130と同様に、無線信号の到来方向、信号源10の位置、又はスピーカ180−1〜mごとの遅延量などの信号源10の位置に依存して変動するパラメータ値を、受信信号から決定する。そして、決定部330は、決定したパラメータ値を、音波出力部170及び音声入力部390へ出力する。
【0098】
マイクロフォン390−1〜Lは、例えば、アレイ状に配置されたL個のマイクロフォンであってもよい。その代わりに、マイクロフォン390−1〜Lは、例えばガンマイクなどの、指向性をもって音声を集音可能な1つのマイクロフォンであってもよい。マイクロフォン390−1〜Lは、音声入力部392からの制御を受けて、その指向性を信号源10の方向へ向ける。
【0099】
音声入力部392は、決定部330から入力される上述したいずれかのパラメータ値に応じて、マイクロフォン390−1〜Lの指向性を信号源10の方向へ向けさせる。そして、音声入力部392は、マイクロフォン390−1〜Lを介して集音した音声を増幅し、AD変換した後、制御部350へ出力する。
【0100】
制御部350は、例えばCPUやMPUなどの制御装置を用いてメモリ352に記憶されたプログラムを実行し、通話装置300の動作全般を制御する。具体的には、制御部350は、例えば、マイクロフォン390−1〜Lを介して集音される音声と、スピーカ380−1〜mを介して出力される音声とにより、通話装置300のユーザに通話機能を提供する。メモリ352は、例えばROMなどの半導体メモリを用いて、制御部350により実行されるプログラムや制御データなどを記憶する。
【0101】
かかる通話装置300の構成によれば、スピーカ380−1〜m及びマイクロフォン390−1〜Lの指向性が決定部330により決定されたパラメータ値に応じて信号源10の方向へ向けられる。従って、例えば図2に示したユーザ20は、通話装置300(図2における音波出力装置100b)を手に取ることなく、通話をすることが可能となる。
【0102】
なお、本実施形態において、受信部120により受信される無線信号が音波である場合には、受信アンテナ110−1〜nの代わりにマイクロフォン390−1〜Lを用いて当該音波が受信されてもよい。
【0103】
<5.第4の実施形態の説明>
以下に説明する本発明の第4の実施形態では、マイクロフォンを用いて集音した音声を解析し、その解析結果に応じて音波の出力が制御する。
【0104】
図15は、本発明の第4の実施形態に係る音波出力装置400の構成の一例を示すブロック図である。
【0105】
図15を参照すると、音波出力装置400は、マイクロフォン410−1〜L、受信部420、決定部430、音声解析部440、制御部450、メモリ452、音声変調部160、音波出力部470、及びスピーカ180−1〜mを備える。また、受信部420には、マイクロフォン410−1〜Lにそれぞれ対応するADC422−1〜Lが含まれる。
【0106】
本実施形態において、マイクロフォン410−1〜Lは、例えば、信号源10の方向から発せられる音声を集音し、それぞれ対応する受信部420のADC422−1〜Lへ出力する。受信部420の各ADC422−1〜Lは、対応するマイクロフォン410−1〜Lから入力された音声をAD変換して音声信号を生成し、決定部430及び音声解析部440へ出力する。
【0107】
決定部430は、第1の実施形態に係る決定部130と同様に、音声信号の到来方向、信号源10の位置、又はスピーカ180−1〜mごとの遅延量などのパラメータ値を入力された音声信号から決定する。そして、決定部430は、決定したパラメータ値を、メモリ452に記憶させる。
【0108】
一方、音声解析部440は、例えば、受信部420から入力された音声信号の波形を予めメモリ452に記憶させておいた既知のユーザごとの声の波形と照合し、話し手のユーザ、即ち話者を特定する。そして、音声解析部440は、特定した話者を識別する識別子をメモリ452へ出力し、決定部430により決定された上述のパラメータ値と関連付けて記憶させる。
【0109】
制御部450は、例えば、音声を提供したいユーザの識別子と提供される音声信号とが音声提供用のアプリケーション(図示せず)から入力されると、まず、当該識別子と関連付けられたパラメータ値をメモリ452から取得する。そして、制御部450は、音声信号を音声変調部160に出力し、及び取得したパラメータ値を音波出力部470へ出力する。
【0110】
音波出力部470は、制御部450から入力されたパラメータ値に基づいてスピーカ180−1〜mの指向性を制御し、音声変調部160により変調された音声信号をスピーカ180−1〜mから音波として出力させる。
【0111】
かかる音波出力装置400の構成によれば、例えば、音波出力装置400の周囲に複数の信号源10又は複数のユーザ20が存在している場合にも、音声を提供すべき特定の信号源10又はユーザ20に対してのみ音波の指向性を向けることが可能となる。
【0112】
また、音声解析部440は、さらに、受信部420から入力された音声信号の波形から発音された内容を解析し、特定の単語又はフレーズと関連付けられる音声コマンドを検出してもよい。それにより、例えば、音波出力装置400は、予め定義される所定の音声コマンドがユーザ20から発せられた場合にのみ、当該ユーザ20に指向性を向けて音波を出力することが可能となる。
【0113】
<6.まとめ>
以上、図4〜図15を用いて、本発明の4つの実施形態に係る音波出力装置100、200、400又は通話装置300について説明した。
【0114】
ここで説明した各装置によれば、信号源10から送信される無線信号を用いて決定された信号源10の位置に依存するパラメータ値に基づいて、信号源10の方向へ指向性を有する音波が出力される。それにより、予め限定されない任意の方向又は場所に位置する対象に指向性を向けて適応的に音波を出力することが可能となる。そのため、例えば信号源10を保持するユーザ20が移動しても、その移動に追随して音波の指向性を調整することができる。また、展示物の説明などの用途においては、予めユーザの位置を指定することなくユーザに説明用の音声を聴かせることができる。
【0115】
また、出力する音波の指向性を制御するためのパラメータ値を無線信号の到来時間差又は位相差から少ない計算コストで算出することが可能なため、指向性制御に用いられる回路規模を低減することができる。
【0116】
また、信号源10から送信されるビーコンに識別子を含めておき、当該識別子から認識される特定のユーザに対してのみ音波の指向性を向けることもできる。
【0117】
さらに、上述したパラメータ値に基づいて信号源10の方向へ指向性を向けることのできるマイクロフォンを備えることで、ハンズフリーの通話装置を実現することもできる。
【0118】
なお、本明細書において説明した一連の処理は、ハードウェアで実現されてもよく、又はソフトウェアで実現されてもよい。一連の処理又はその一部をソフトウェアで実行させる場合には、例えば、ソフトウェアを構成するプログラムが予めROMに格納され、実行時にRAMに読み込まれてCPUにより実行される。
【0119】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】一実施形態に係る音波出力装置の使用場面の第1の例を示す模式図である。
【図2】一実施形態に係る音波出力装置の使用場面の第2の例を示す模式図である。
【図3】一実施形態に係る音波出力装置の使用場面の第3の例を示す模式図である。
【図4】第1の実施形態に係る音波出力装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】無線信号の到来方向を決定する処理について説明するための説明図である。
【図6】音波の指向性の制御について説明するための説明図である。
【図7】無線信号の到来方向を三次元空間上で決定する処理について説明するための説明図である。
【図8】3つのスピーカを用いた音波の指向性の制御について説明するための説明図である。
【図9】信号源の位置を決定する処理について説明するための説明図である。
【図10】機械的に制御されるスピーカを用いた音波の指向性の制御について説明するための説明図である。
【図11】指向性制御の第3のパターンを実現するための具体的な構成を示すブロック図である。
【図12】信号源から送信されるビーコンの構成の一例を示す説明図である。
【図13】第2の実施形態に係る音波出力装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図14】第3の実施形態に係る音波出力装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図15】第4の実施形態に係る音波出力装置の構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0121】
100、200、400 音波出力装置
300 通話装置
110 受信アンテナ
120、220、420 受信部
130、330、430 決定部
240 復調復号部
440 音声解析部
150、250、350、450 制御部
152、252、352、452 メモリ
160 音声変調部
170、470 音波出力部
180 スピーカ
390 音声入力部
392、410 マイクロフォン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の信号源から送信される無線信号を受信する受信部と;
前記受信部により受信された前記無線信号から、前記信号源の位置に依存するパラメータ値を決定する決定部と;
前記パラメータ値に基づいて、前記信号源の方向へ指向性を有する音波を出力する音波出力部と;
を備える音波出力装置。
【請求項2】
前記受信部は、前記無線信号を受信する複数の受信アンテナを有し、
前記音波出力部は、それぞれ所定の遅延量をもって音波を出力可能な複数のスピーカを有し、
前記決定部は、前記無線信号の前記受信アンテナ間の到来時間差又は位相差に応じて、前記スピーカごとの前記遅延量を決定する、
請求項1に記載の音波出力装置。
【請求項3】
前記受信部は、前記無線信号を受信する複数の受信アンテナを有し、
前記決定部は、前記無線信号の前記受信アンテナ間の到来時間差又は位相差に応じて、当該無線信号の到来方向を決定する、
請求項1に記載の音波出力装置。
【請求項4】
前記受信部は、前記無線信号を受信する3本以上の受信アンテナを有し、
前記決定部は、前記無線信号の前記受信アンテナ間の2以上の到来時間差又は位相差に応じて、前記信号源の位置を決定する、
請求項1に記載の音波出力装置。
【請求項5】
前記音波出力部の各スピーカは、前記受信部の各受信アンテナのそれぞれ近傍に設けられており、
前記決定部は、前記無線信号の到来時間又は位相の前記受信アンテナごとの前後関係を反転させて前記スピーカごとの前記遅延量を決定する、
請求項2に記載の音波出力装置。
【請求項6】
前記無線信号は、前記信号源の個体又は前記信号源を保持するユーザを識別する識別子を含むビーコンであり、
前記音波出力装置は、
前記ビーコンに含まれる前記識別子に応じて、前記音波出力部に音波を出力させるか否かを制御する制御部、
をさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の音波出力装置。
【請求項7】
前記音波出力装置は、
前記信号源の方向から集音された音声に基づいて、既知のユーザの中から当該音声の話し手のユーザを特定する音声解析部、
をさらに備える、請求項1に記載の音波出力装置。
【請求項8】
前記音波出力装置は、
前記信号源の方向から集音された音声に所定の音声コマンドが含まれているか否かに応じて、前記音波出力部からの音波の出力を制御する制御部、
をさらに備える、請求項1に記載の音波出力装置。
【請求項9】
前記受信部は、前記無線信号としての赤外線を受光する複数の受光素子を有し、
前記決定部は、前記赤外線を受光した前記受光素子の位置に応じて前記信号源の位置を決定する、
請求項1に記載の音波出力装置。
【請求項10】
所定の信号源から送信される無線信号を受信する受信部と;
前記受信部により受信された前記無線信号から、前記信号源の位置に依存するパラメータ値を決定する決定部と;
前記パラメータ値に基づいて、前記信号源の方向へ指向性を有する音波を出力する音波出力部と;
前記パラメータ値に基づいて、前記信号源の方向からの音声を集音する音声入力部と;
を備える通話装置。
【請求項11】
所定の信号源から送信される無線信号を受信するステップと;
受信された前記無線信号から、前記信号源の位置に依存するパラメータ値を決定するステップと;
前記パラメータ値に基づいて、前記信号源の方向へ指向性を有する音波を出力するステップと;
を含む、音波出力方法。
【請求項12】
所定の信号源から送信される無線信号を受信可能な受信部と音波を出力可能なスピーカとを備える音波出力装置を制御するコンピュータを:
前記受信部により受信された前記無線信号から、前記信号源の位置に依存するパラメータ値を決定する決定部と;
前記パラメータ値に基づいて、前記スピーカから出力される音波の指向性を前記信号源の方向へ向けさせる音波出力部と;
として機能させるための、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−148030(P2010−148030A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326032(P2008−326032)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】